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JP7052552B2 - 風切音解析装置及び風切音解析方法 - Google Patents
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JP7052552B2 - 風切音解析装置及び風切音解析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、移動中の構造物に発生する風切音を解析する風切音解析装置及び風切音解析方法に関する。特に、構造物のガラス製の部分における高周波領域の表面音圧変動に起因して発生する風切音を解析する風切音解析装置及び風切音解析方法に関する。
車両を始めとする構造物の移動中に発生する風切音を低減するための技術が研究、開発されている。例えば、特許文献1には、車両モデルを走行させるシミュレーションにより当該車両モデル表面の任意の位置における「圧力変動の振幅」と「平均流速」とを取得し、これらの値に基づいて当該任意の位置における風切音の音源の強度を所望の周波数帯毎に算出する技術が開示されている。なお、風切音とは、構造物周囲の流体の流れによって発生する騒音であり、本明細書では、特に、構造物内部にまで到達する騒音を意味する。
特開2017-062727号公報
風切音の強度は、上述した構造物表面の圧力変動の振幅と平均流速のうち、特に圧力変動の振幅と強く相関している。ここで、移動中の構造物の表面に生じる圧力は、流体流動圧力(convective pressure)と音圧(acoustic pressure)とにより構成されている。流体流動圧力は流体流速で移動しそれほど遠方まで伝播しないのに対し、音圧は音速で移動し遠方まで伝播する。加えて、流体流動圧力は波長が比較的に短く振幅が比較的に大きいのに対し、音圧は波長が比較的に長く振幅が比較的に小さい。具体的には、音圧変動の振幅は、流体流動圧力変動の振幅の約100分の1から1000分の1である。このため、通常は、移動中の構造物の表面における圧力の大半は流体流動圧力が占めており、風切音の強度は流体流動圧力変動の振幅と強く相関する。
しかしながら、高周波領域(例えば、2kHzの周波数帯)では音圧の波長がガラスの振動モードの波長と略等しくなる。このため、構造物の筐体が金属製及び/又は樹脂製の部分だけではなくガラス製の部分を有する場合、高周波領域では当該ガラス製の部分の表面における音圧変動によりガラス製の部分が共鳴してその振動が増大し、風切音の強度が高くなる。この場合、当該風切音の強度は、流体流動圧力変動の振幅ではなく音圧変動の振幅と強く相関する。なお、以下では、構造物表面における、圧力変動の振幅、音圧変動の振幅及び流体流動圧力変動の振幅を、それぞれ「表面圧力変動」、「表面音圧変動」及び「表面流体流動圧力変動」とも称する。
表面圧力変動(即ち、表面音圧変動と表面流体流動圧力変動との和)は、構造物周囲の流れ場(典型的には、流速及び渦度)の影響を受けて変化する。このため、高周波領域における構造物のガラス製の部分の表面音圧変動に起因して発生する風切音を低減するためには、当該ガラス製の部分のうち表面音圧変動が比較的に大きい位置を特定し、構造物周囲の流れ場のうちどの部分(位置)の流れ場が当該特定された位置の表面音圧変動に強く影響を与えているのかを特定し、上記特定された位置の表面音圧変動が低減するように当該部分の流れ場を変更する(即ち、構造物の部品形状を変更する)必要がある。しかしながら、「表面音圧変動に大きく寄与している流れ場の部分を特定する方法」には統一された手法があるわけではなく、実際には技術者が自身のノウハウ及び知見に基づいて当該流れ場の部分を特定している。このため、技術者によって検討結果にばらつきが生じ、試行錯誤が多く発生するという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、車両を始めとする構造物のガラス製の部分における高周波領域の表面音圧変動に大きく寄与している構造物周囲の流れ場の位置を適切に特定することが可能な技術を提供することにある。
本発明の風切音解析装置は、移動中の構造物のガラス製の部分であるガラス部の表面に発生する風切音を解析する。
この風切音解析装置は、
構造物をモデル化した構造物モデル(20)を移動させる非定常CFDシミュレーションを実行して、前記構造物モデル(20)の周囲の流れ場のうち所定領域(21)内の流れ場の所定時間における平均流速(U-)及び平均渦度(Ω-)を、当該所定領域(21)内の節点である空間節点(z)毎に算出するとともに、風切音の解析対象となる角周波数帯である着目角周波数帯([θ,θ])において、前記所定領域(21)内における乱れ流速の振幅(u~θ)に基づく値を、前記空間節点(z)毎に算出する非定常CFD計算手段(ステップ802、804、806)と、
前記構造物モデル(20)のガラス部(22)表面の風切音の解析対象点(x)における着目角周波数帯([θ,θ])の音圧変動の振幅である表面音圧変動(paθ)に対する前記所定領域(21)内の空間節点(z)における流れ場の寄与度を示す指標である音圧ソース密度(APDS)を、前記非定常CFD計算手段(ステップ802、804、806)によって算出された前記平均流速(U-)と、前記平均渦度(Ω-)と、前記乱れ流速の振幅(u~θ)に基づく値と、に基づいて算出する音圧ソース密度算出手段(ステップ808)と、
を備える。
本発明の風切音解析装置(以下、「本発明装置」とも称する。)は、構造物モデルを移動させる非定常CFDシミュレーションにより算出された物理量(平均流速、平均渦度及び乱れ流速)に基づいて着目角周波数帯の音圧ソース密度を算出する。この音圧ソース密度は、「構造物モデルのガラス製の部分(ガラス部)表面の解析対象点における着目角周波数帯の表面音圧変動」に対する「所定領域内の空間節点における流れ場」の寄与度を示す指標である。ここで、所定領域とは、構造物モデルの周囲の流れ場の一部であり、解析対象点における表面音圧変動に影響を与える可能性のある領域として規定された領域である。このため、音圧ソース密度を指標として用いることにより、着目角周波数帯の表面音圧変動に対する流れ場の寄与度を空間節点毎に算出できる。従って、本発明装置によれば、所定領域内のどの位置における流れ場が解析対象点における構造物モデルのガラス部における高周波領域の表面音圧変動に大きく寄与しているかを適切に特定することが可能となる。なお、表面音圧変動は風切音と強く相関しており、表面音圧変動が大きいときは風切音が大きくなる。このため、表面音圧変動を解析することは、広義には、風切音を解析することと同義である。
本発明装置の一側面では、
前記構造物モデル(20)のガラス部(22)表面の前記解析対象点(x)についての着目角周波数帯([θ,θ])の前記音圧ソース密度(APDS)を前記所定領域(21)で空間積分した値は、前記解析対象点(x)における前記表面音圧変動の関数(paθ)とその複素共役関数(paθ )との積を着目角周波数帯([θ,θ])で積分した値の近似値である。
この構成によれば、音圧ソース密度の挙動は、構造物モデルのガラス部における表面音圧変動の挙動と精度良く一致する。即ち、音圧ソース密度は、表面音圧変動に対する流れ場の寄与度を表す指標として高い信頼性を有する。このため、構造物のガラス部における高周波領域の表面音圧変動に大きく寄与している構造物周囲の流れ場の位置を高い精度で特定することができる。
本発明装置の一側面は、
更に、前記音圧ソース密度(APDS)を構成する複数のパラメータのうち、当該音圧ソース密度(APDS)への寄与が相対的に大きいパラメータである原因パラメータを特定する原因パラメータ特定手段を備える。
この構成によれば、APDSが高い原因となっているパラメータを容易に把握できるため、構造物モデルの形状をより効率的に検討、変更することができる。
本発明装置の一側面では、
前記複数のパラメータは、前記平均流速(U-)、前記平均渦度(Ω-)及び前記乱れ流速(u~θ)である。
本発明装置の一側面は、
更に、前記音圧ソース密度(APDS)が算出された複数の空間節点(z)の中から、外部から入力される値を有する音圧ソース密度(APDS)に対応している複数の空間節点(z)を抽出し、当該抽出された複数の空間節点(z)を画像処理して等値面(28、30、32)を作成し、当該等値面(28、30、32)を可視化する画像処理手段(ステップ820)を備える。
この構成によれば、APDSの等値面が表示されるため、作業者は、入力値を適宜設定することにより、所望のAPDS値を有する等値面を視認することができる。この結果、所望のAPDS値に対応している空間節点を効率的に選択することができ、構造物のガラス部における高周波領域の表面音圧変動に大きく寄与している構造物周囲の流れ場の位置を効率的に特定することができる。
本発明装置の一側面は、
更に、前記音圧ソース密度算出手段(ステップ808)によって算出された複数の音圧ソース密度(APDS)の最大値に対応している空間節点(z)を抽出する空間節点抽出手段を備える。
この構成によれば、最大のAPDS値に対応している空間節点を作業者が選択する必要がなくなるため、構造物のガラス部における高周波領域の表面音圧変動に大きく寄与している構造物周囲の流れ場の位置をより効率的に特定することができる。なお、「音圧ソース密度の最大値」とは、広義には、「音圧ソース密度がほぼ最大である値」を意味する。
本発明装置の一側面では、
前記音圧ソース密度(APDS)の計算式は、下記式によって定義される。
Figure 0007052552000001
加えて、本明細書は、計算装置を用いて移動中の構造物のガラス製の部分であるガラス部の表面に発生する風切音を解析する新規な風切音解析方法を開示する。
この風切音解析方法は、
前記計算装置が備える非定常CFD計算手段が、構造物をモデル化した構造物モデル(20)を移動させる非定常CFDシミュレーションを実行して、前記構造物モデル(20)の周囲の流れ場のうち所定領域(21)内の流れ場の流速の時刻歴データ(u(z,t))及び渦度の時刻歴データ(ω(z,t))を、当該所定領域(21)内の節点である空間節点(z)毎に所定時間に亘ってそれぞれ算出するステップ(ステップ802)と、
前記非定常CFD計算手段が、前記算出された流速の時刻歴データ(u(z,t))及び渦度の時刻歴データ(ω(z,t))をそれぞれ平均化処理して、平均流速(U-(z))及び平均渦度(Ω-(z))を前記空間節点(z)毎に算出するステップ(ステップ804)と、
前記非定常CFD計算手段が、前記算出された流速の時刻歴データ(u(z,t))を高速フーリエ変換処理して、乱れ流速(u~ θ (z))の振幅の関数とその複素共役関数との積を風切音の解析対象となる角周波数帯である着目角周波数帯([θ,θ])で積分した値である乱れ流速(u~ θ (z))の振幅の自己相関関数を前記空間節点(z)毎に算出するステップ(ステップ806)と、
前記計算装置が備える音圧ソース密度算出手段が、前記構造物モデル(20)のガラス部(22)表面の風切音の解析対象点(x)における着目角周波数帯([θ,θ])の音圧変動の振幅である表面音圧変動(paθ)に対する前記所定領域(21)内の空間節点(z)における流れ場の寄与度を示す指標である音圧ソース密度(APDS)を、予めROMに格納されている音圧ソース密度(APDS)の計算式であって、平均流速(U-(z))と、平均渦度(Ω-(z))と、乱れ流速(u~ θ (z))の振幅の自己相関関数と、をパラメータとして含む計算式、に、前記非定常CFD計算手段によって前記空間節点(z)毎に算出された前記平均流速(U-)と、前記平均渦度(Ω-)と、前記乱れ流速の振幅(u~θの自己相関関数と、のうち、対応する空間節点(z)における平均流速(U-(z))と、平均渦度(Ω-(z))と、乱れ流速(u~ θ (z))の振幅の自己相関関数と、を代入することにより算出するステップ(ステップ808)と、
を備える。
この風切音解析方法によれば、所定領域内のどの位置における流れ場が解析対象点における構造物モデルのガラス部における高周波領域の表面音圧変動に大きく寄与しているかを適切に特定することが可能となる。
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る風切音解析装置(以下、「本実施装置」又は「実施装置」と称する。)が有する計算装置を示すブロック図である。 非定常CFDシミュレーションの対象となる車両モデル及びフロードメインの模式図である。 車両モデルの解析表面(右側フロントサイドガラス)における表面音圧変動の分布図である。 表面音圧変動(風切音)の解析対象となる観測点の位置を示す図である。 着目評価点の選択方法を説明するために用いる図であり、APDSの参照値が基準値である等値面を示す図である。 APDSの参照値が基準値の16倍である等値面を示す図である。 APDSの参照値が基準値の256倍である等値面を示す図である。 原因パラメータ(平均流速)の分布図が作成される平面(着目評価点通過断面)の位置を示す図である。 着目評価点通過断面における右側サイドミラー周囲の平均流速の分布図である。 APDS計算式の導出方法を説明するために用いる図であり、剛体モデル及びフロードメインの模式図である。 剛体モデル及びフロードメインの模式図である。 風切音解析方法の手順を示すフローチャートである(その1)。 風切音解析方法の手順を示すフローチャートである(その2)。 車両モデルの形状を変更したときの表面音圧変動(風切音)の改善効果を説明するために用いる図であり、形状変更前の車両モデルの正面図の一部を示す。 形状変更前の右側サイドミラーの平面図である。 形状変更後の車両モデルの正面図の一部である。 形状変更後の右側サイドミラーの平面図である。 形状変更前の着目評価点通過断面における右側サイドミラー周囲の平均流速の分布図である。 形状変更後の着目評価点通過断面における右側サイドミラー周囲の平均流速の分布図である。 形状変更後の車両モデルの右側フロントサイドガラスにおける表面音圧変動の分布図である。 指標としてのAPDSの信頼性及び汎用性を説明するために用いる図であり、車両モデルの模式図を示す。 フォアステップモデルの模式図である。 車両モデルの右側フロントサイドガラスにおける、APDSを用いて算出される予測表面音圧変動の分布図である。 車両モデルの右側フロントサイドガラスにおける、ソフトウエアの非定常CFDシミュレーションにより算出される表面音圧変動の分布図である。 フォアステップモデルのステップの上面における、APDSを用いて算出される予測表面音圧変動の分布図である。 フォアステップモデルのステップの上面における、ソフトウエアの非定常CFDシミュレーションにより算出される表面音圧変動の分布図である。 表面音圧変動に対する予測表面音圧変動の誤差を車両モデル及びフォアステップモデルについて示したグラフである。
<本実施装置の概要>
まず、実施形態に係る風切音解析装置(以下、「本実施装置」とも称する。)の概要を説明する。本実施装置は、様々な構造物の移動時に発生する風切音を解析するが、本実施形態では、構造物のうち車両を例に挙げて説明する。車両走行時に発生する風切音(車内の乗員に聞こえる騒音)は、車両表面の複数の位置における種々の周波数帯の圧力変動の振幅(即ち、表面圧力変動であり、別言すれば、表面音圧変動と表面流体流動圧力変動との和)に起因した複合的な騒音である。これらの複合的な風切音のうち、高周波領域の風切音は、車両のガラス製の部分(例えば、フロントサイドガラス、リアサイドガラス、フロントガラス及びリアガラス。以下では、「ガラス部」とも称する。)における高周波領域の表面音圧変動と強く相関している。
この表面音圧変動は、車両周囲の流れ場(流速及び渦度)の影響を受けて変化する。本実施装置には、車両周囲の流れ場と表面音圧変動との関係を定量的に示す指標(別言すれば、「車両周囲の任意の位置における流れ場(の状態)」が「車両のガラス部の任意の位置における表面音圧変動」にどれくらい寄与しているかを示す指標)の計算式が予め格納されている。指標の値が大きいほど寄与度は高くなる。この指標は、車両周囲の任意の位置における流れ場の平均流速、乱れ流速及び平均渦度等の物理量をパラメータとして有する。加えて、車両のガラス部の任意の位置における表面音圧変動は、当該指標を所定領域内の流れ場で空間積分した値に基づいて算出(予測)することができる。このため、本実施装置は、非定常CFD(数値流体力学)計算により車両モデル周囲のうち所定領域内の流れ場の平均流速、乱れ流速及び平均渦度を所定領域内の位置毎に算出し、これらの値に基づいて、上記指標を所定領域内の位置毎に算出する。そして、当該指標に基づいて、走行中の車両モデルの表面音圧変動を、車両モデルのガラス部表面の位置毎、及び、周波数帯毎、に算出(予測)する。作業者は、当該算出結果に基づいて、表面音圧変動が比較的に大きい位置(別言すれば、大きな風切音の発生原因となっている位置)を選択する。なお、車両モデルは「構造物モデル」の一例に相当する。
作業者は、算出結果に基づいて、上記選択された位置についての指標であって、所定領域内の位置毎に算出されている複数の指標の中から、指標の値が比較的に大きい流れ場の位置(別言すれば、上記選択された位置における表面音圧変動に対する寄与度が比較的に高い位置)を選択し、当該選択された流れ場の位置における指標を構成する各物理量(即ち、平均流速、乱れ流速及び平均渦度)のうち、指標の値が大きい原因となっている物理量を特定する。作業者は、当該特定された物理量の値に基づいて、上記選択された流れ場の位置における指標値が低減するように車両モデルの形状を検討、変更する。この構成によれば、指標値が低減するように車両モデルの形状を変更することにより、「当該指標値を有する位置の流れ場の、上記選択された位置における表面音圧変動への寄与度」を低減することができる。このため、当該選択された位置における表面音圧変動を低減でき、結果として、風切音の低減を実現することができる。
<本実施装置の具体的な構成>
以下、図面を参照して本実施装置について具体的に説明する。図1に示すように、本実施装置は計算装置10を備える。計算装置10は、入力部12、演算部14及び出力部16を有する。出力部16は、作業者が視認可能な位置に表示画面18を有する。入力部12は、風切音の解析対象となる車両の三次元モデルのデータ、解析範囲を示すフロードメインのデータ、及び、非定常CFDシミュレーションに必要なデータ等を入力する。加えて、入力部12は、処理の途中で作業者により選択される座標のデータ、指標の参照値及び原因パラメータ等を入力する(後述)。
図2Aは、車両の三次元モデル20(以下、単に「車両モデル20」と称する。)及びフロードメイン21を模式的に示す図である。図2Aに示すように、車両モデル20の空間座標系はe1軸、e2軸及びe3軸からなり、当該座標系は、車両モデル20の前後方向における前方が+e1方向に一致し、且つ、左右方向における左方向が+e2方向に一致するように設定される。加えて、原点は、車両モデル20の基準点(例えば、重心)から所定の方向に所定の距離(ゼロ値を含む)だけ離れた位置に設定される。
フロードメイン21は、車両モデル20の周囲の空間のうち、非定常CFD計算が実施される範囲を示す領域である。本実施形態では、走行中の車両モデル20の右側フロントサイドガラス22における表面音圧変動に起因して発生する風切音の解析が行われる。このため、フロードメイン21は、「車両モデル20の周囲の流れ場のうち、右側フロントサイドガラス22における表面音圧変動に影響を与える可能性のある部分の流れ場を含んだ領域」として設定される。具体的には、フロードメイン21は、右側フロントサイドガラス22、右側サイドミラー23、右側フロントピラー及びフロントガラスの右半分等を含む略直方体形状の空間から車両モデル20と重複している部分がくりぬかれた形状を有する。フロードメイン21は、車両モデル20のうちどの部分を解析対象とするかによって自由に設定可能である。なお、フロードメイン21は、「所定領域」の一例に相当する。
入力部12にて入力されたこれらのデータは、演算部14のRAM(後述)に格納される。なお、以下では、非定常CFD計算を単に「CFD計算」とも称する。
図1に戻って説明を続ける。演算部14は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品として有する。演算部14は、各種インターフェースを有しており、このインターフェースを介して入力部12及び出力部16と信号を入出力可能に接続されている。
演算部14は、RAMに格納されている上述したデータを用いて車両モデル20を走行させる非定常CFDシミュレーションを実行する。CFD計算処理は、時刻歴データの算出処理、平均化処理及び高速フーリエ変換処理を含む。この計算処理は、フロードメイン21によって区画された範囲で行われる。以下、具体的に説明する。
(CFD計算処理)
1.時刻歴データの算出処理
演算部14は、フロードメイン21内の各空間節点zについて、流れ場の流速の時刻歴データu(z,t)及び渦度の時刻歴データω(z,t)を所定時間に亘ってそれぞれ算出する。以下では、空間節点zを単に「節点z」と称する。なお、フロードメイン21内の節点zの位置は、節点zが車両モデル20の表面上に存在することがないように(即ち、節点zが車両モデル20の表面から離間するように)予め設定されている。演算部14は、流速及び渦度の時刻歴データu(z,t)及びω(z,t)を、節点zの座標及び時刻tに関連付けてそのRAMに格納する。
2.平均化処理
演算部14は、RAMに格納されている流速及び渦度の時刻歴データu(z,t)及びω(z,t)をそれぞれ平均化処理して、フロードメイン21内の各節点zについて、平均流速U-(z)及び平均渦度Ω-(z)を算出する。なお、U-(z)及びΩ-(z)の「-」は何れも平均を表す表記であり、後述する式中の文字U及びΩの上に付されたバーに替わるものである。演算部14は、平均流速U-(z)及び平均渦度Ω-(z)を、節点zの座標に関連付けてそのRAMに格納する。平均流速U-(z)及び平均渦度Ω-(z)は、指標を算出する際に用いられる(後述)。
3.高速フーリエ変換処理
演算部14は、RAMに格納されている流速の時刻歴データu(z,t)を高速フーリエ変換処理して、フロードメイン21内の各節点zについて、周波数(角周波数)毎に乱れ流速(厳密には、乱れ流速の振幅)u~θ(z)の自己相関関数(後述)を算出する(θ:角周波数。θ=2πf)。なお、u~θ(z)の「~」は、流速uを平均化処理したときの乱れ成分を表す表記であり、後述する式中の文字uの上に付されたチルダに替わるものである。なお、乱れ流速の振幅u~θ(z)の自己相関関数が「乱れ流速の振幅に基づく値」の一例に相当する。
自己相関関数は、風切音の解析対象となる周波数帯において算出される(以下、当該周波数帯を「着目周波数帯」とも称する。)。着目周波数帯は作業者によって選択可能であり、例えば、中心周波数fが500Hz、1kHz、2kHz又は4kHzの周波数帯が選択され得る。本実施装置は高周波領域の表面音圧変動に起因した風切音を解析するため、典型的には2kHz以上の周波数帯が選択され得る。例えば、着目周波数帯として2kHz(下限周波数f=1420Hz、上限周波数f=2840Hz)が選択された場合、乱れ流速u~θ(z)の自己相関関数は、1420Hzから2840Hzの範囲内で、フロードメイン21内の各節点zについて算出される。
なお、任意の関数Fθの自己相関関数は、下記式(1)によって定義される。
Figure 0007052552000002
ここで、上記式(1)中のθ及びθは、着目角周波数帯の下限角周波数及び上限角周波数をそれぞれ表し、Fθ は、関数Fθの複素共役を表す。即ち、本明細書では、自己相関関数は、「任意の関数Fθとその複素共役関数Fθ との積(後述)を着目角周波数帯において積分した値」として定義される。
演算部14は、乱れ流速u~θ(z)の自己相関関数を、節点zの座標に関連付けてそのRAMに格納する。乱れ流速u~θ(z)の自己相関関数は、指標を算出する際に用いられる(後述)。演算部14は、以上の処理をCFD計算として実行する。
(APDSの算出)
車両モデル20の右側フロントサイドガラス22の表面を「解析表面」と規定すると、演算部14のROMには、フロードメイン21内の流れ場と、解析表面における着目周波数帯の表面音圧変動との関係を定量的に示す指標の計算式が予め格納されている。この指標は、別言すれば、「フロードメイン21内の任意の節点zにおける流れ場(の状態)」が「解析表面上の任意の表面節点x(以下、単に「節点x」と称する。)における着目周波数帯の表面音圧変動paθ(x)」にどれくらい寄与しているかを示す指標ということもできる。解析表面上の任意の基準節点から数えてi番目の節点xをx(i:1~m)と規定し、フロードメイン21内の任意の基準節点から数えてj番目の節点zをz(j:1~n)と規定すると、k番目の節点x(k:1~m)についての指標は、フロードメイン21内の全節点zにおいてそれぞれ算出される。
ここで、節点xについての着目周波数帯における指標をフロードメイン21内の全節点zで空間積分した値は、「節点xにおける着目周波数帯の表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数」の近似値である(後述)。このため、各節点zにおける着目周波数帯の指標の値は、フロードメイン21の単位体積当たりの「節点xにおける着目周波数帯の表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数」の近似値を表していると解釈することができる。従って、以下では、各節点zにおける着目周波数帯の指標を「APDS(Acoustic Pressure Density Source(音圧ソース密度))」とも称する。着目周波数帯のAPDS(x,z)は、「フロードメイン21内の節点zにおける流れ場」の「解析表面上の節点xにおける着目周波数帯の表面音圧変動paθ(x)」への寄与度を示す指標であり、その値が大きいほど寄与度が高いことを示す。APDSの計算式の表記及び導出方法については後述する。なお、以下では、ある節点xを他の節点xと区別する必要がない場合は、「k」及び「i」の表記を省略する。節点zについても同様である。加えて、以下では、着目周波数帯の表面音圧変動を単に「表面音圧変動」とも称し、着目周波数帯のAPDSを単に「APDS」とも称する。
演算部14は、CFD計算を終了すると、ROMに格納されているAPDSの計算式に基づいて、節点xについてのAPDSをフロードメイン21内の各節点zにおいて算出する処理を、解析表面上の全節点xについて行う。即ち、演算部14は、節点xについてのAPDSをn個(節点zの個数)算出するとともに、全部でmn個のAPDSを算出する。ここで、ある節点xについてのAPDS(x,z)の値は節点z毎に評価されるため、以下では、節点zを「評価点z」とも称する。演算部14は、APDS(x,z)の値を節点xの座標及び評価点zの座標に関連付けてそのRAMに格納する。APDSは、着目周波数帯の中心周波数fにおける予測表面音圧変動papθ(x)(後述)の分布図を作成する際に用いられるとともに、APDSの等値面を作成する際に用いられる(後述)。
(予測表面音圧変動の算出及び分布図表示指令)
上述したように、「任意の節点xについてのAPDSをフロードメイン21で空間積分した値」は、「当該節点xにおける表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数」の近似値である。このため、演算部14は、RAMに格納されているmn個のAPDS(x,z)のうち、節点xについてのn個のAPDS(x,z)を抽出し、抽出されたAPDS(x,z)を足し合わせる(即ち、APDS(x,z)をフロードメイン21で空間積分する)ことにより、節点xにおける表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数の近似値を算出する。そして、この近似値に基づいて、節点xにおける表面音圧変動paθ(x)を算出(予測)する。以下では、このようにして算出(予測)された表面音圧変動を、「予測表面音圧変動papθ」と称する。演算部14は、この処理を、解析表面上の全節点xについて行う。即ち、演算部14は、m個(節点xの個数)の予測表面音圧変動papθ(x)を算出する。演算部14は、予測表面音圧変動papθ(x)の値を節点xの座標に関連付けてそのRAMに格納する。
演算部14は、RAMに格納されている予測表面音圧変動papθ(x)にその大きさに応じた色データを対応づけたデータを各節点xについて作成し、作成したデータを表示画面18に画像表示させる表示指令を出力部16に送信する。予測表面音圧変動papθ(x)が大きいほど濃色の色データが対応づけられる。出力部16は、当該表示指令を受信すると、その表示画面18に当該データを画像表示する。
図3Aは、当該表示指令に基づいて表示画面18に画像表示された解析表面(右側フロントサイドガラス22)における予測表面音圧変動papθ(x)の分布図の一例である。着目周波数帯は2kHz(即ち、f=2kHz)に設定されている。作業者は、この分布図に基づいて予測表面音圧変動papθ(x)が比較的に大きい節点xを選択する。図3Aによると、着目周波数帯が2kHzのときは領域24及び領域26において予測表面音圧変動papθ(x)が顕著であるため、作業者は、領域24、26内の節点xの中から任意の節点を選択する。この例では、領域24内の節点xが選択される。作業者は、以後、当該節点における表面音圧変動の低減を目的として車両モデル20の形状を変更して当該節点における予測表面音圧変動の挙動を観測する。このため、以下では、上記選択された節点を「観測点x」とも称する(図3B参照)。観測点xは、「解析表面のうち、着目周波数帯における大きな風切音の発生原因となっている位置」を表す。作業者により観測点xが選択されると、入力部12は、当該観測点xの座標データを入力する。入力された座標データは演算部14のRAMに格納される。なお、観測点xは、「解析対象点」の一例に相当する。
(APDS等値面表示指令)
演算部14は、観測点xが選択されると、RAMに格納されているmn個のAPDS(x,z)の中から、観測点xについてのn個のAPDS(x,z)を抽出する。そして、抽出されたAPDS(x,z)の中から、作業者により設定された任意の値(以下、「参照値」とも称する。後述。)を有するAPDS(x,z)に関連付けられた評価点zの座標を更に抽出する。そして、抽出された複数の評価点z同士を接続した等値面を表す等値面データを作成し、作成した等値面データを表示画面18に画像表示させる表示指令を出力部16に送信する。出力部16は、当該表示指令を受信すると、その表示画面18に「参照値を有するAPDSの等値面データ」を画像表示する。即ち、演算部14は、観測点xが選択されると、APDSの参照値の入力を促すメッセージを表示画面18に表示させる。これにより、作業者により任意の参照値が入力される。演算部14は、上記表示指令の送信処理を、作業者により参照値が入力される毎に繰り返し行う。
図4A~図4Cは、参照値が互いに異なるAPDSの等値面を示す。図4Aは、参照値が基準値(本例では65.5)である等値面28を示し、図4Bは、参照値が基準値の16倍(1048.6)である等値面30を示し、図4Cは、参照値が基準値の256倍(67108.9)である等値面32を示す。着目周波数帯は何れも2kHzに設定されている。図4A~図4Cに示すように、等値面28、30、32は何れも閉曲面である。加えて、各等値面28、30、32は、複数の独立した等値面を有している。APDS(x,z)は、観測点x(図3B参照)から評価点zまでの距離rが減少するほど増加する性質を有する。即ち、評価点zが観測点xに接近するほどAPDSの値が増加する。このため、図4A~図4Cに示すように、参照値が増加するほど等値面28、30、32の表面積が減少している。加えて、等値面30は等値面28の内部に含まれており、等値面32は等値面30の内部に含まれている。即ち、ある参照値を有する等値面の内部には、当該参照値より大きい参照値を有する等値面が包含されている。このため、参照値が徐々に増加すると等値面の表面積が徐々に減少していき、最終的には数個の等値面が互いに離間して存在することになる。
図4Cにその一例を示す。図4Cに示すように、等値面32は3個の等値面32a、32b及び32cを有している(厳密には、右側フロントサイドガラス22上に複数の線上の等値面が形成されているが、本例ではこれらの等値面は解析対象から除外している。)。図3Bを参照すると、これら3個の等値面32a~32cの中では、等値面32bが観測点xに最も近く(即ち、距離rが最も短い)、等値面32aが観測点xに最も遠い(即ち、距離rが最も長い)。このため、等値面32bのAPDSは、等値面32a又は32cのAPDSよりも距離rの影響を強く受けている(即ち、距離rのAPDS値への寄与度が高い)と言える。ここで、上述したように、APDS(x,z)は、パラメータとして以下の物理量、即ち、平均流速U-(z)、乱れ流速u~θ(z)、及び、平均渦度Ω-(z)を有する。APDSの値は、これらの物理量が大きいほど大きくなる。このため、「等値面32bよりも距離rが長い等値面32a又は32c」が等値面32bと同一のAPDS値を有しているのは、等値面32a又は32cのAPDSが等値面32bのAPDSよりも上記物理量(U-(z)、u~θ(z)、Ω-(z))の少なくとも1つの影響を強く受けている(即ち、上記物理量のAPDS値への寄与度が高い)ためであると解釈することができる。加えて、距離rが最も長い等値面(本例では等値面32a)が上記物理量の少なくとも1つの影響を最も強く受けている(即ち、上記物理量のAPDS値への寄与度が最も高い)と解釈することができる。
従って、作業者は、距離rが最も長い等値面32a上の任意の評価点zを、APDS値が比較的に大きい(ほぼ最大である)評価点zとして選択する。以下では、選択された評価点zを「着目評価点z」とも称する(図5A参照)。着目評価点zは、「フロードメイン21内の流れ場のうち、観測点xにおける予測表面音圧変動に対する寄与度が比較的に高い(ほぼ最大である)位置」を表す。作業者により着目評価点zが選択されると、入力部12は、当該着目評価点zの座標データを入力する。入力された座標データは演算部14のRAMに格納される。
(APDSパラメータ表示指令)
演算部14は、RAMに格納されている着目評価点zにおけるAPDS(x,z)を構成している複数のパラメータ(物理量)の中から平均流速U-(z)、乱れ流速u~θ(z)、及び、平均渦度Ω-(z)を選択し、これらの数値データを表示画面18に表示させる表示指令を出力部16に送信する。出力部16は、当該表示指令を受信すると、その表示画面18に選択されたパラメータの数値データを表示する。作業者は、表示された数値データに基づいて、これらのパラメータの中でAPDS値への寄与が相対的に大きいパラメータ(即ち、APDS値が大きい原因となっているパラメータ)を特定する。このとき、必要に応じて他の評価点zにおけるAPDSを構成するパラメータの数値データが表示されてもよい。作業者は、これらの数値データを比較しながらパラメータを特定してもよい。作業者によりパラメータが特定されると、入力部12は、当該パラメータを入力する。入力されたパラメータは演算部14のRAMに格納される。以下では、このパラメータを「原因パラメータ」とも称する。
(物理量分布図表示指令)
演算部14は、RAMに格納されている評価点z群の座標データから、「着目評価点zを通りe1e2平面(図2A参照)に平行な平面(図5Aの破線L参照)」上に位置する評価点z群を抽出する。そして、抽出された評価点z群に関連付けられた原因パラメータの分布図を表す分布図データを作成し、作成した分布図データを表示画面18に画像表示させる表示指令を出力部16に送信する。出力部16は、当該表示指令を受信すると、その表示画面18に当該データを画像表示する。なお、以下では、「着目評価点zを通りe1e2平面に平行な平面」を「着目評価点通過断面」とも称する。
図5Bは、原因パラメータとして平均流速U-(z)が特定された場合における平均流速U-(z) [m/sec]の分布図を示す。平均流速U-(z)が大きいほど濃色で表示されている。図5Aに示すように、この例では着目評価点zが右側フロントサイドガラス22の前方と右側サイドミラー23との間に位置しているため、分布図の範囲は、右側フロントサイドガラス22の前方及び右側サイドミラー23を含む範囲とされている。なお、右側フロントサイドガラス22及び右側サイドミラー23の位置には、車両モデル20を平面視したときの右側フロントサイドガラス22及び右側サイドミラー23の画像がはめ込み表示されている。着目評価点zは、図5Bの領域34に含まれている。
作業者は、分布図に基づいて着目評価点zにおいて原因パラメータ(本例では平均流速U-(z))が大きくなっている原因を分析する。図5Bの例では、右側サイドミラー23の車体側近傍に位置している領域34の平均流速U-(z)が顕著である。一般に、流れ場の流速は空気抵抗が小さいほど大きい。このため、領域34では車両走行時における空気抵抗が小さいと考えられる。従って、作業者は、領域34の空気抵抗を増大できるような右側サイドミラー23の形状を検討してその形状を変更する。形状変更後の予測表面音圧変動papθ(x)の具体的な改善効果については後述する。
出力部16は、演算部14からの表示指令を受信して表示画面18に各種データを表示する。詳細は上述したとおりである。以上が、本実施装置の具体的な構成についての
説明である。
<APDS計算式の導出>
続いて、上述したAPDSの計算式の導出方法を剛体モデルを用いて説明する。APDSは、公知のパウエル(Powell)式に基づいて算出される「剛体モデルにおける表面圧力変動(即ち、表面音圧変動と表面流体流動圧力変動との和)とその周囲の流れ場との関係式」を時間ドメインから周波数ドメインに変換した式に基づいて定義される。但し、上記パウエル式は、APDS計算式の導出に適した形式で表現される。このため、以下では、まず、図6を参照して剛体モデル及びフロードメインについて説明し、続いて、APDS計算式の導出に適した形式のパウエル式の導出について説明する。次いで、時間ドメインにおける表面圧力変動と流れ場との関係式の導出について説明し、その後、APDS計算式の導出について説明する。
(剛体モデル及びフロードメイン)
図6は、剛体モデル36及びフロードメイン38の模式図を示す。剛体モデル36(以下、単に「剛体36」とも称する。)は、その表面S上に観測点xを有する。フロードメイン38は、剛体36の周囲の流れ場のうち、観測点xにおける表面圧力変動に影響を与える可能性のある部分の流れ場である。フロードメイン38は、その内部に複数の評価点zを有する。APDS(x,z)は、観測点xにおける表面音圧変動に対する評価点zにおける流れ場の寄与度を表す指標である。なお、図6中のその他の文字については後述する。
(パウエル式の導出)
下記式(2)は、体積力がゼロの場合のナビエ-ストークス方程式(Navier-Stokes equation)を示す。
Figure 0007052552000003
ここで、ρは流れ場の密度であり、uは流れ場の流速(ベクトル量)であり、D/Dtは物質微分であり、pは剛体36の表面における圧力(圧力変動、表面圧力変動)であり、ηは流れ場の粘性係数である。
上記式(2)の物質微分を偏微分を用いて書き直し、その後、以下の関係式;
Figure 0007052552000004
を用いて式変形すると、下記式(3)が得られる。なお、上記の関係式中のAは任意のベクトルを表す。
Figure 0007052552000005
ここで、νは流れ場の動粘性係数であり、ν=η/ρである。
続いて、上記式(3)を以下の関係式;
Figure 0007052552000006
を用いて式変形すると、下記式(4)が得られる。なお、ωは流れ場の渦度(ベクトル量)であり、Bはエンタルピーである。
Figure 0007052552000007
本実施形態の流れ場は非圧縮性流体又は微圧縮性流体であるが、この場合、以下の関係式;
Figure 0007052552000008
が成立するため、上記式(4)は下記式(5)によって近似できる。
Figure 0007052552000009
上記式(5)の両辺に流れ場の密度ρを乗算して発散をとると、下記式(6)が得られる。
Figure 0007052552000010
なお、上記式(6)中の「×」は乗算記号を表す。本明細書では基本的に乗算記号は省略して記載するが、明示したほうが理解し易い場合は例外的に記載する。
ここで、流れ場の流速uと流れ場の密度ρとの間には、下記式(7)に示す関係式が成立する。
Figure 0007052552000011
「流れ場の密度ρ」と「流れ場の流速uの時間についての偏微分」との積の発散(即ち、下記式(8)の左辺)を上記式(7)を用いて式変形すると、下記式(8)の右辺のようになる。
Figure 0007052552000012
ここで、cは流れ場の音速である。表面圧力変動p、流れ場の密度ρ、及び、流れ場の音速cとの間には以下の関係が成立する。
Figure 0007052552000013
ところで、本実施形態の流れ場は高レイノルズ数流れ(即ち、流速が比較的に大きい流れであり、例えば、100km/h~140km/h。)である。高レイノルズ数流れでは、以下の関係式;
Figure 0007052552000014
が成立する。なお、レイノルズ数Reは、Re=uL/νとして定義され、Lは流れ場の代表長さを表す。上記式(8)の右辺の括弧内の項を以下に示すように式変形して上記関係式を適用すると、式(8)の右辺の括弧内の項は下記式(9)によって近似される。
Figure 0007052552000015
上記式(6)を上記式(8)及び式(9)を用いて式変形(近似)すると、下記式(10)が得られる。
Figure 0007052552000016
ここで、本実施形態の流れ場は低マッハ数流れ(即ち、音速に対する流体の流速の比が比較的に低い流れ場)である。低マッハ数流れでは以下の関係式;
Figure 0007052552000017
が成立するため、上記式(10)をこれらの関係式を用いて式変形すると、下記式(11)に示すパウエル式が得られる。なお、上記の関係式のcは静止状態のときの流れ場の音速であり、ρは静止状態のときの流れ場の密度である。
Figure 0007052552000018
(時間ドメインにおける表面圧力変動と流れ場との関係式の導出)
グリーン(Green)関数Gは、下記式(12)の関係式を満たす。
Figure 0007052552000019
ここで、観測点x及び評価点zは上述したとおりであり(図6参照)、τは過去の時刻である。なお、δ(x)はディラックデルタ関数である。加えて、上記式(12)中のグリーン関数Gは、自由空間においては下記式(13)のように表される。
Figure 0007052552000020
物体境界条件を考慮すると、上記式(11)に示すパウエル式は、下記式(14)のように表される。
Figure 0007052552000021
H(z)はヘビサイド関数(Heaviside Unit Function)であり、下記式(15)によって定義される。
Figure 0007052552000022
ここで、図6に示すように、Vはフロードメイン38を表すかたまりであり、S+は剛体36の表面Sを取り囲む仮想表面である。上記式(15)中の「z in V」とは、評価点zがフロードメイン38の内部に位置している場合を示し、「z inside S+」とは、評価点zが仮想表面S+の内部に位置している場合を示す。
このヘビサイド関数H(z)は、下記式(16)の積分方程式を満たす。
Figure 0007052552000023
ここで、式中の(・)は任意の値との内積を表す。加えて、図6に示すように、剛体36は、その表面Sのうち観測点xとは異なる位置に評価点yを有する。式中のnは、当該評価点yの法線ベクトルn(y)を表し、dSは、評価点y近傍の表面面積dS(y)を表す。
上記式(14)の左辺の1項目、2項目及び右辺は、それぞれ下記式(14-1)、(14-2)及び(14-3)のように変形できる。
Figure 0007052552000024
上記式(14-1)~(14-3)を上記式(14)に代入すると、下記式(17)が得られる。
Figure 0007052552000025
上記式(17)の右辺の2項目(-符号は省略)は、下記式(17-1)のように式変形できる。
Figure 0007052552000026
上記式(17-1)を上記式(17)に代入すると、下記式(18)が得られる。
Figure 0007052552000027
上記式(13)を用いると、上記式(18)の積分表示は下記式(19)のようになる。
Figure 0007052552000028
上記式(19)の右辺の1項目を上記式(18)を用いて展開すると、下記式(19-1)が得られる。なお、以下では、表記の都合上、上記式(19)の右辺の各項の式変形を記載する際は、時間積分を省略して記載する。
Figure 0007052552000029
上記式(19)の右辺の2項目及び3項目を上記式(18)を用いて展開すると、下記式(19-2)が得られる。
Figure 0007052552000030
上記式(19)の右辺の4項目は、下記式(19-3)のように式変形できる。
Figure 0007052552000031
上記式(19-1)~(19-3)を上記式(19)に代入すると、下記式(20)が得られる。
Figure 0007052552000032
仮想表面S+を剛体36の表面Sに収束させると、上記式(20)は下記式(21)のように書き直すことができる。
Figure 0007052552000033
ここで、高レイノルズ数流れでは、上記式(21)の右辺の3項目は4項目に対して無視できるほど小さい。加えて、剛体36が静止している場合は流速がないため、当該右辺の2項目はゼロに等しい。従って、上記式(21)は、下記式(22)のように簡略化できる。
Figure 0007052552000034
静止物体表面上では流速がないため、エンタルピーBは下記式のように表される。
Figure 0007052552000035
上記式の右辺p/ρをp/ρ=pと定義してエンタルピーBを上記式(22)に代入すると、下記式(23)の関係式が得られる。この関係式が、「時間ドメインにおける表面圧力変動と流れ場との関係式」である。
Figure 0007052552000036
(APDS計算式の導出)
上記式(23)の関係式は、表面圧力変動pに基づく値(関数)p(=p/ρ)をその両辺に含むため、観測点xにおける表面圧力変動pを流速u及び渦度ωから直接的に計算することができない。このため、以下では、式変形により右辺からpを含む項を消去し、「観測点xにおける表面圧力変動p」と「流れ場の流速u及び渦度ω」との関係式を導出する。
図7に示すように、剛体36の表面S上の観測点xの近傍領域を表面領域Sxと定義し、表面領域Sxの法線ベクトルをn(x)とする。表面領域Sxは十分に大きい平面である。加えて、法線ベクトルn(x)上に、観測点xからの距離が等しい2個の点x+、x-を定義する。点x+は剛体36の外部に位置しており、点x-は剛体36の内部に位置している。なお、その他の文字については後述する。点x+、x-をそれぞれ観測点として上記式(22)に代入すると、下記式(22-1)、(22-2)が得られる。
Figure 0007052552000037
式(22-1)と式(22-2)の両辺をそれぞれ足し合わせてx-とx+についてxに近づくときの極限をとると、下記式(24)が得られる。なお、以下の式変形では、H(x+)=1及びH(x-)=0を利用している(式(15)参照)。
Figure 0007052552000038
上記式(24)の右辺の1項目及び2項目は、それぞれ下記式(24-1)及び(24-2)のように式変形できる。なお、式中のS\Sxは、剛体36の表面Sのうち表面領域Sxを含まない部分を表す(図7参照)。
Figure 0007052552000039
Figure 0007052552000040
上記式(24-1)、(24-2)を上記式(24)に代入すると、下記式(25)が得られる。
Figure 0007052552000041
フーリエ変換は下記式によって定義される。
Figure 0007052552000042
ここで、式中のAθ(x)は角周波数θにおける関数A(x,t)の大きさ(振幅)を表す。Aθ(x)は複素数であり、その複素共役Aθ (x)は下記(26)の関係式を満たす。
Figure 0007052552000043
上記式(24)にフーリエ変換を作用し、畳み込み積分のフーリエ変換結果を用いると、下記式(27)が得られる。
Figure 0007052552000044
ここで、グリーン関数Gをフーリエ変換したGθ(x,z)は下記式(28)のように表され、下記式(29)の関係式(いわゆるヘルムホルツ(Helmholtz)方程式)を満たす。
Figure 0007052552000045
ここで、kは角周波数θ成分の波数(いわゆる音響波数)であり、k=θ/cである。rは観測点xと評価点zとの距離である。
θ(x,z)の勾配は、上記式(28)を用いて下記式(30)のように表すことができる。なお、式中のベクトルrは、観測点xから評価点zへ向かうベクトルである。
Figure 0007052552000046
ここで、剛体36の表面に生じる圧力は流体流動圧力変動と音圧とにより構成されている。流体流動圧力変動は流体流速で移動しそれほど遠方まで伝播しないため、音響コンパクト条件(kr<<1)を満たす。従って、上記式(30)のGθ(x,z)の勾配のうち表面流体流動圧力変動に寄与する部分は、下記式(30-1)で表されるように角周波数θに依存しておらず、距離rの関数のみ近似できる。
Figure 0007052552000047
一方、音圧は音速で移動し遠方まで伝播するため、音響コンパクト条件は成立しない(即ち、遠方点では(kr>>1)となる。)。このため、上記式(30)のGθ(x,z)の勾配のうち表面音圧変動に寄与する部分は下記式(30-2)のように表される。
Figure 0007052552000048
上記式(27)の左辺である「観測点xにおける表面圧力変動pθ(x)に基づく関数p*θ(x)」の自己相関関数(上記式(1)参照)は、下記式(31)のように表される。
Figure 0007052552000049
上記式(31)は、Gθ(x,z)の勾配(式(30)参照)の音響コンパクト条件を用いて下記式(32)のように表される。
Figure 0007052552000050
ここで、着目角周波数帯[θ,θ]における任意の観測点xの物理量の相関距離lx,cr、相関面積Sx,cr(図7参照)及び相関体積Vx,crをそれぞれ下記式(33-1)、(33-2)及び(33-3)によって定義する。なお、式中のθは着目角周波数帯の中心角周波数である(θ=2πf)。
Figure 0007052552000051
即ち、相関面積Sx,crは平均流速の二乗に比例しており、相関体積Vx,crは平均流速の三乗に比例している。
本実施形態の着目角周波数帯は比較的に大きいため、相関距離lx,crは比較的に小さい。従って、相関面積Sx,cr及び相関体積Vx,crも比較的に小さい。このため、図7に示すように、相関面積Sx,crは表面領域Sx内に含まれている(Sx,cr⊂Sx)。ここで、上記式(32)の右辺の1項目の被積分項には剛体36の表面S上の評価点yが含まれており、表面Sのうち表面領域Sxを含まない領域(S\Sx)で積分されている。このため、観測点xの物理量は評価点yの物理量と無相関となり、この結果、上記式(32)の右辺の1項目はゼロに等しくなる。
加えて、以下では、任意の関数Fθとその複素共役関数Fθ との積を「関数Fθのノルム」と称し、下記式(34)のように定義する。
Figure 0007052552000052
即ち、自己相関関数(式(1)参照)は、任意の関数Fθのノルムを着目角周波数帯において積分した値である。
これにより、上記式(32)は、下記式(35)のように表すことができる。
Figure 0007052552000053
上記式(35)によると、着目角周波数帯における観測点xの表面圧力変動pθ(x)は、フロードメイン38内の流れ場の渦度ωと流速uの外積に依存している。本願発明者はこの点に着目し、上記式(35)の右辺の空間積分の自己相関関数の値を低減すれば、観測点xにおける表面圧力変動pθ(x)を低減でき、結果として表面音圧変動paθ(x)も低減できると考えた。この自己相関関数は、下記式(36)に示すように式変形できる。
Figure 0007052552000054
ここで、式中のz1、z2は、フロードメイン38内の任意の評価点であり、z1≠z2である。着目角周波数帯における評価点z1の物理量と評価点z2の物理量との相関は、評価点z1が評価点z2の相関体積Vz2,crに含まれていない場合は無視することができる。このため、上記式(36)は、更に下記式(37)のように変形できる。
Figure 0007052552000055
上記式(37)の右辺の「着目角周波数帯について積分される部分」のうち表面音圧変動に寄与する部分は、上記式(30-2)を用いて下記式(38)のように近似できる。
Figure 0007052552000056
上記式(38)の流速uは、下記式(39-1)、(39-2)に示すように、平均成分としての平均流速U-と、乱れ成分としての乱れ流速u~に分解でき、渦度ωは、平均成分としての平均渦度Ω-と、乱れ成分としての乱れ渦度ω~に分解できる。
Figure 0007052552000057
加えて、 剛体36の空間座標系において、ベクトルrを下記式(40)によって規定する。
Figure 0007052552000058
ここで、r1、r2及びr3は、観測点xを原点としたときのベクトルrのe1成分、e2成分及びe3成分である。
これらの式(39-1)、(39-2)及び(40)を上記式(38)の右辺に代入すると、当該右辺は、下記式(41)のように式変形できる。なお、乱れ成分同士の積は無視できるほど小さいため、下記式(41)では、その記載を省略している。
Figure 0007052552000059
ここで、2つの任意な関数Eθと関数Fθの相関関数を着目角周波数帯において下記式(42)のように定義する。
Figure 0007052552000060
上記式(1)及び式(42)を用いると、渦一様等方性仮説より、下記式(43-1)~(43-6)に示す関係式が得られる。
Figure 0007052552000061
ここで、kは流速uθと渦度ωθとの関係を規定した定数である。
表面流体流動圧力変動への寄与度を算出する際は、空間微分と時間微分との間に以下の関係式;
Figure 0007052552000062
が成立するため、乱れ渦度ω~の自己相関関数は下記式(43-7)のように近似できる。
Figure 0007052552000063
一方、表面音圧変動への寄与度を算出する際は、音速で移動する音圧の空間微分と時間微分との間に以下の関係式;
Figure 0007052552000064
が成立するため、乱れ渦度ω~の自己相関関数は下記式(43-8)のように近似できる。
Figure 0007052552000065
上記式(43-1)~(43-8)を用いて上記式(41)の右辺を整理すると、上記式(38)の左辺は、最終的に下記式(44)のように表される。
Figure 0007052552000066
上記式(44)の右辺は、上記式(37)の右辺の「着目角周波数帯について積分される部分」のうち表面音圧変動に寄与する部分に相当する。このため、式(44)の右辺を式(37)の該当部分に代入すると、下記式(45)が得られる。
Figure 0007052552000067
上記式(45)の右辺の被積分項に「流れ場の密度の二乗ρ」を乗算し、評価点z2を一般の表記zに書き換えると、下記式(46)に定義されるAPDSの計算式が得られる。本明細書では、このようにして導出された式(46)を、「剛体36の観測点xにおける表面音圧変動paθ(x)」に対する「フロードメイン38内の評価点zにおける流れ場」の寄与度を表す指標として定義している。なお、ρを乗算するのは、APDS計算式の導出過程でp=p/ρを用いたことによるものである。
Figure 0007052552000068
なお、観測点xにおける表面音圧変動paθ(x)とAPDS(x,z)との間には、下記式(47)に示す近似式が成立する(式(35)、(45)及び(46)参照)。
Figure 0007052552000069
即ち、「観測点xにおける表面音圧変動paθ(x)のノルム」の着目角周波数帯における積分値(別言すれば、観測点xにおける表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数)は、「観測点xについてのAPDSをフロードメインで空間積分した値」として近似することができる。このため、APDSは、観測点xにおける表面音圧変動paθ(x)に対する評価点zにおける流れ場の寄与度を表す指標として高い精度で機能する。以上が、APDS計算式の導出についての説明である。
<風切音解析方法>
続いて、走行中の車両モデル20の風切音解析方法について具体的に説明する。計算装置10の演算部14のCPUは、図8にフローチャートにより示したルーチンを実行するようになっている。CPUは、図8のステップ800から処理を開始して以下に述べるステップ802~ステップ812の処理を順に行う。
ステップ802:CPUは、車両モデル20を走行させる非定常CFDシミュレーションを開始し、解析範囲(フロードメイン21内)において、流速の時刻歴データu(z,t)及び渦度の時刻歴データω(z,t)を所定時間に亘ってそれぞれ算出する。これらのデータは節点z毎に算出される。
ステップ804:CPUは、ステップ802で算出された流速及び渦度の時刻歴データu(z,t)及びω(z,t)をそれぞれ平均化処理して、節点z毎に、平均流速U-(z)及び平均渦度Ω-(z)を算出する。
ステップ806:CPUは、ステップ802で算出された流速の時刻歴データu(z,t)を高速フーリエ変換処理して、着目角周波数帯における乱れ流速u~θ(z)の自己相関関数を算出する。この自己相関関数は節点z毎に算出される。ステップ802~ステップ806までの処理が非定常CFD計算処理に相当する。
ステップ808:CPUは、演算部14のROMに格納されているAPDS計算式(式(46)参照)を用いて、解析表面上の節点xについての着目角周波数帯のAPDSを節点z毎に算出する。CPUは、この処理を解析表面上の全ての節点xについて行う。即ち、APDSは、全部でmn個算出される(m:節点xの個数、n:節点zの個数)。この計算式には、ステップ804で算出された平均流速U-(z)及び平均渦度Ω-(z)並びにステップ806で算出された乱れ流速u~θ(z)の自己相関関数等が代入される。
ステップ810:CPUは、ステップ808で算出されたmn個のAPDSから、任意の節点xについてのn個のAPDSを抽出し、抽出されたAPDSをフロードメイン21で空間積分することにより当該節点xにおける着目角周波数帯の表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数の近似値を算出する。そして、当該近似値に基づいて当該節点xにおける予測表面音圧変動papθ(x)を算出(予測)する。CPUは、この処理を解析表面上の全ての節点xについて行う。即ち、予測表面音圧変動papθ(x)は全部でm個算出される。
ステップ812:CPUは、ステップ810で算出された着目角周波数帯の予測表面音圧変動papθ(x)に基づいて、「着目角周波数帯の中心角周波数θにおける予測表面音圧変動papθ(x)の分布図を表すデータ」を作成し、当該データの表示指令を出力部16に送信する。これにより、予測表面音圧変動papθ(x)の分布図が表示画面18に画像表示される(図3A参照)。その後、CPUは、ステップ814に進む。
ステップ814では、CPUは、作業者により観測点xが選択されたか否かを判定する。この観測点xは、予測表面音圧変動papθ(x)の分布図(ステップ812参照)に基づいて作業者により選択される。観測点xが選択されたと判定した場合、CPUは、ステップ814にて「Yes」と判定し、後述するステップ816の処理を行う。これに対し、観測点xが選択されていないと判定した場合、CPUは、ステップ814にて「No」と判定し、再度ステップ814の判定を行う。CPUは、観測点xが選択されたと判定するまでこの処理を所定の演算時間が経過する毎に繰り返す。
ステップ816:CPUは、APDSの参照値の入力を促すメッセージの表示指令を出力部16に送信する。これにより、当該メッセージが表示画面18に表示され、作業者はAPDSの参照値を入力できる。その後、CPUは、ステップ818に進む。
ステップ818では、CPUは、作業者によりAPDSの参照値が入力されたか否かを判定する。参照値が入力されたと判定した場合、CPUは、ステップ818にて「Yes」と判定し、以下のステップ820の処理を行う。
ステップ820:CPUは、ステップ808で算出されたmn個のAPDSの中から、ステップ814で選択された観測点xについてのn個のAPDSを抽出する。そして、抽出されたAPDSの中から、ステップ818で入力された参照値を有するAPDSの等値面を表すデータを作成し、当該データの表示指令を出力部16に送信する。これにより、作業者が入力した参照値を有するAPDSの等値面が表示画面18に画像表示される(図4A~図4C参照)。その後、CPUは、ステップ822に進む。
ステップ822では、CPUは、作業者により着目評価点zが選択されたか否かを判定する。この着目評価点zは、APDSの等値面(ステップ820参照)に基づいて作業者により選択される。着目評価点zが選択されたと判定した場合、CPUは、ステップ822にて「Yes」と判定し、後述するステップ824(図9)の処理を行う。
これに対し、着目評価点zが選択されていないと判定した場合(具体的には、作業者が現時点におけるAPDS等値面からは着目評価点zを選択できない場合、又は、作業者が着目評価点zを選択中の場合)、CPUは、ステップ822にて「No」と判定し、再度ステップ818の判定を行う。
そして、ステップ818にて参照値が入力されたと判定した場合(即ち、作業者によりAPDSの参照値が再入力された場合)、CPUは、ステップ818にて「Yes」と判定してステップ820の処理を行い、ステップ822にて着目評価点zが選択されたか否かを再度判定する。一方、ステップ818にて参照値が入力されていないと判定した場合、CPUは、ステップ818にて「No」と判定してステップ822に進み、ステップ822にて着目評価点zが選択されたか否かを再度判定する。CPUは、着目評価点zが選択されたと判定するまでステップ818~ステップ822の処理を繰り返す。
これに対し、ステップ816から直接ステップ818に進んだ場合において参照値が入力されていないと判定した場合(即ち、初回の参照値が入力されていない場合)、CPUは、ステップ818にて「No」と判定してステップ822に進む。上述したように、着目評価点zはAPDSの等値面に基づいて選択される(即ち、ステップ820を経て選択される)ため、初回の参照値が入力されていない場合(即ち、ステップ820を経ていない場合)、CPUはステップ822にて「No」と判定する。
ステップ824(図9):CPUは、ステップ818で入力された参照値を有するAPDS(x,z)の中から、ステップ822で選択された着目評価点zにおけるAPDS(x,z)を抽出し、抽出されたAPDS(x,z)を構成するパラメータの数値データの表示指令を出力部16に送信する。これらのパラメータは、具体的には、着目評価点zにおける平均流速U-(z)、乱れ流速u~θ(z)、及び、平均渦度Ω-(z)である(ステップ804、806参照)。これにより、APDS(x,z)を構成するパラメータの数値データが表示画面18に表示される。その後、CPUは、ステップ826に進む。
ステップ826では、CPUは、原因パラメータが特定されたか否かを判定する。この原因パラメータは、APDS(x,z)を構成するパラメータの数値データ(ステップ824参照)に基づいて、作業者により特定される。原因パラメータが特定されたと判定した場合、CPUは、ステップ826にて「Yes」と判定し、後述するステップ828の処理を行う。これに対し、原因パラメータが特定されていないと判定した場合、CPUは、ステップ826にて「No」と判定し、再度ステップ826の判定を行う。CPUは、原因パラメータが特定されたと判定するまでこの処理を所定の演算時間が経過する毎に繰り返す。
ステップ828:CPUは、ステップ822で選択された着目評価点zを通る所定の平面(典型的には、e1e2平面に平行な平面。即ち、着目評価点通過断面。)上における原因パラメータの分布図を表すデータを作成する。CPUは、当該データの表示指令を出力部16に送信する。これにより、原因パラメータの分布図が表示画面18に表示される(図5B参照)。その後、CPUは、ステップ830に進み、本ルーチンを終了する。
<本実施装置による表面音圧変動(風切音)の改善効果>
次に、本実施装置を用いて車両モデル20の解析範囲の形状を変更したときの着目周波数帯(本例では2kHz)の表面音圧変動paθ(x)の改善効果について図10A~図13を参照して具体的に説明する。図5A及び図5Bの例では、領域34における空気抵抗を増大できるような右側サイドミラー23の形状が検討される。図10Aは、車両モデル20の正面図の-e2方向側の一部を示し、図10Bは右側サイドミラー23の平面図の概形を示す。図10A及び図10Bに示すように、右側サイドミラー23の車体側(e2方向側)の面23aは、車両モデル20の前進方向(e1方向)と略平行となっている。本願発明者は、これにより面23a近傍の空気抵抗が小さくなっていると考え、面23a近傍の空気抵抗を増大できる形状を検討した。図11Aは、この検討に基づいて形状が変更された車両モデル120の正面図の-e2方向側の一部を示し、図11Bは車両モデル120の右側サイドミラー123の平面図の概形を示す。図11A及び図11Bに示すように、右側サイドミラー123の車体側(e2方向側)の面123aは、車両モデル120の前進方向(e1方向)に対して交差する向きとなっており、これにより、面123a近傍の空気抵抗を増大させている。
図12Aは、形状変更前(車両モデル20)の着目評価点通過断面(図10Aの破線L参照)における右側サイドミラー23の周囲の平均流速U-(z)の分布図を示す。図12Bは、形状変更後(車両モデル120)の着目評価点通過断面(図11Aの破線L参照)における右側サイドミラー123の周囲の平均流速U-(z)の分布図を示す。図12A及び図12Bに示すように、右側サイドミラーの形状を変更することにより右側サイドミラー123の車体側近傍の領域の平均流速U-(z)は領域34と比べて大幅に低減している。
図13は、形状変更後の解析表面(右側フロントサイドガラス122)における予測表面音圧変動papθ(x)の分布図を示す。図3A(形状変更前の解析表面における予測表面音圧変動papθ(x)の分布図)と比較すると、図13では、観測点xにおける予測表面音圧変動papθ(x)が大幅に低減している。以上より、本実施装置によれば、APDSを利用して車両モデルの表面音圧変動に大きく寄与している流れ場の位置を特定することにより、車両モデルの高周波領域における表面音圧変動(風切音)を効率的に且つ確実に低減できることが示された。
<指標としてのAPDSの信頼性及び汎用性>
上述したように、「節点xについての着目周波数帯のAPDSをフロードメインで空間積分した値」は、「当該節点xにおける着目周波数帯の表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数」の近似値である(式(47)参照)。本実施装置は、これを利用してAPDSに基づいて節点xにおける予測表面音圧変動papθ(x)を算出している。以下では、予測表面音圧変動papθの近似精度を検証してAPDSの指標としての信頼性について検討する。具体的には、予測表面音圧変動papθを、非定常CFD計算用のソフトウエアによって算出される表面音圧変動paθと比較することにより、予測表面音圧変動papθの近似精度を検証する。本実施形態では上記ソフトウエアとしてPowerFLOWが使用されるが、ソフトウエアの種類はこれに限られない。なお、本実施装置が表面音圧変動を非定常CFD計算により算出するのではなくAPDSに基づいて算出(予測)する(ステップ810参照)のは、非定常CFD計算による算出方法では多大な時間がかかるからである。例えば、車両モデル20の右側フロントサイドガラス22の表面音圧変動を節点x毎に算出する場合、非定常CFD計算では3ヶ月かかるのに対し、APDSに基づく計算では2日で済む。
更に、以下では、車両モデルだけではなく、車両モデルとは異なる形状を有するフォアステップモデルについても上記近似精度を検証することにより、APDSの指標としての汎用性についても検討する。
図14Aは、上記の説明で用いられた車両モデル20である。図14Bは、フォアステップモデル40の模式図である。フォアステップモデル40は、基準面42と、基準面42上に配置された直方体形状を有するステップ44と、基準面42上にステップ44から離間して配置されたノズル46と、を有する。ステップ44の上面44aは基準面42と平行である。ステップ44の側面44b(ノズル46側の面)と基準面42との間には段差が形成されている。ノズル46は、ステップ44の側面44bと平行に対向している送風口46aを有する。送風口46aは、ステップ44に向かって風を送る。送風方向と直交する方向を「幅方向」と規定すると、幅方向におけるステップ44の長さaは、幅方向におけるノズル46の長さbよりも長い。ステップ44の高さはノズル46の高さよりも低い。ノズル46の幅方向における中心は、ステップ44の幅方向における中心と、幅方向において一致している。本検証では、車両モデル20の右側フロントサイドガラス22とフォアステップモデル40のステップ44の上面44aが解析対象とされる。
図15A及び図15Bは、それぞれ、車両モデル20の右側フロントサイドガラス22における予測表面音圧変動papθ及び表面音圧変動paθの分布図である。着目周波数帯は2kHzに設定されている。図16A及び図16Bは、それぞれ、フォアステップモデル40のステップ44の上面44aにおける予測表面音圧変動papθ及び表面音圧変動paθの分布図である。着目周波数帯は2kHzに設定されている。予測表面音圧変動papθ及び表面音圧変動paθが大きいほど濃色で表示されている。図15Aと図15Bを比較すると、予測表面音圧変動papθの大きさ及び位置は、特に値が大きい領域において、表面音圧変動paθの大きさ及び位置と精度良く一致している。同様に、図16Aと図16Bを比較すると、予測表面音圧変動papθの大きさ及び位置は、特に値が大きい領域において、表面音圧変動paθの大きさ及び位置と精度良く一致している。以上より、APDSに基づいて算出される予測表面音圧変動papθは、ソフトウエアのCFD計算により算出される表面音圧変動paθに対して高い近似精度を有することが示された。これは、APDSが指標として高い信頼性を有することを示している。
図17は、「表面音圧変動paθに対する予測表面音圧変動papθの誤差」を車両モデル20及びフォアステップモデル40についてそれぞれ示したグラフである。車両モデル20についての誤差は、図15A及び図16Bに示す2つの分布図の対応する各節点xにおける「表面音圧変動paθに対する予測表面音圧変動papθの差」の平均を音圧変動レベル(dB)に変換した値である。フォアステップモデル40についての誤差は、図16A及び図16Bに示す2つの分布図の対応する各節点xにおける「表面音圧変動paθに対する予測表面音圧変動papθの差」の平均を音圧変動レベル(dB)に変換した値である。車両モデル20の誤差とフォアステップモデル40の誤差を比較すると、何れも約3dBでありほぼ一致している。以上より、表面音圧変動paθに対する予測表面音圧変動papθの誤差は、解析対象モデルの形状に関係なくほぼ一定であることが示された。これは、APDSが指標として高い汎用性を有することを示している。
本実施装置の作用効果について説明する。本実施装置では、車両モデルを走行させる非定常CFDシミュレーションにより算出された物理量(平均流速U-、平均渦度Ω-及び乱れ流速u~θ)に基づいて着目角周波数帯のAPDSを算出する。このAPDS(x,z)は、「車両モデル20の解析表面(右側フロントサイドガラス22)上の観測点xにおける着目角周波数帯の表面音圧変動paθ(x)」に対する「解析範囲(フロードメイン21)内の評価点zにおける流れ場」の寄与度を示す指標である。このため、APDSを指標として用いることにより、着目角周波数帯の表面音圧変動paθ(x)に対する流れ場の寄与度を評価点z毎に算出できる。従って、フロードメイン21内のどの位置における流れ場が観測点xにおける車両モデル20のガラス製の部分(本実施形態では右側フロントサイドガラス22)における高周波領域の表面音圧変動paθ(x)に大きく寄与しているかを適切に特定することが可能となる。
加えて、本実施装置では、観測点xについてのAPDSをフロードメイン21で空間積分した値は、当該観測点xにおける表面音圧変動paθ(x)の自己相関関数の近似値である。このため、APDSの挙動は、表面音圧変動paθ(x)の挙動と精度良く一致する。即ち、APDSは、表面音圧変動paθ(x)に対する流れ場の寄与度を表す指標として高い信頼性を有する(図14A~図17参照)。このため、車両モデルのガラス製の部分における高周波領域の表面音圧変動paθ(x)に大きく寄与している流れ場の位置を高い精度で特定することができる。
具体的には、従来は、上記関係を定量的に評価することができなかったため、技術者によって流れ場の解釈が異なることがあった。加えて、解析は、流れ場の断面における物理量の分布に基づいて行われるため、三次元空間における流れ場の情報が欠落し、表面音圧変動が大きい原因を見逃してしまう可能性があった。これに対し、本実施装置によれば、APDSを用いることにより表面音圧変動paθ(x)と流れ場との関係を定量的に評価できるため、技術者間で流れ場の解釈が異なる可能性を大幅に低減でき、風切音の解析精度を向上することができる。加えて、本実施装置では、表面音圧変動への寄与度が高い流れ場の位置を特定してから当該位置を通る断面における物理量の分布を評価するため、流れ場の情報が欠落する可能性を大幅に低減でき、結果として、表面音圧変動が大きい原因を確実に発見することができる。
更に、本実施装置では、表示画面18にAPDSの等値面が表示されるため、作業者は、参照値を適宜設定することにより、所望のAPDS値を有する等値面を視認することができる。この結果、所望のAPDS値に対応している評価点zを効率的に選択することができ、車両モデル20のガラス製の部分における高周波領域の表面音圧変動paθ(x)に大きく寄与している流れ場の位置を効率的に特定することができる。
更に、本実施装置では、観測点xは、APDSに基づいて算出(予測)された予測表面音圧変動papθの大きさに基づいて選択される。予測表面音圧変動papθは風切音と強い相関を有している。このため、この構成によれば、風切音をより適切に解析することができる。
(変形例1)
次に、変形例1に係る風切音解析装置(以下、「第1変形装置」とも称する。)について説明する。第1変形装置は、原因パラメータの特定が作業者ではなく装置により行われる点で上記実施装置と異なっている。具体的には、第1変形装置は、図9のステップ824及び826の処理に代えて、以下の処理を実行する。即ち、第1変形装置の計算装置の演算部は、ステップ822で選択された着目評価点zにおけるAPDSを構成する3つのパラメータ(平均流速U-、平均渦度Ω-及び乱れ流速u~θ)の中からAPDS値への寄与が相対的に大きいパラメータを原因パラメータとして特定する。具体的には、演算部は、着目評価点zにおける3つのパラメータの数値を、「着目評価点zにおけるAPDS値よりも低いAPDS値に対応している評価点z」における3つのパラメータの数値と比較することにより原因パラメータを特定する。この構成によれば、原因パラメータを作業者が特定する必要がなくなるため、APDSが高い原因となっているパラメータを容易に把握でき、車両モデルの形状をより効率的に検討、変更することができる。
(変形例2)
続いて、変形例2に係る風切音解析装置(以下、「第2変形装置」とも称する。)について説明する。第2変形装置は、着目評価点zの選択(抽出)が作業者ではなく装置により行われる点で上記実施装置と異なっている。具体的には、第2変形装置は、図8のステップ816~ステップ822の処理に代えて、以下の処理を実行する。即ち、第2変形装置の計算装置の演算部は、ステップ814にて「Yes」と判定した場合、任意の値を有するAPDSの等値面データを作成し、当該データにより示される等値面が数個になるまでAPDSの値を変更しながら等値面データを作成する(厳密には、数個になってからも各等値面の表面積ができるだけ小さくなるまでAPDSの値を増加する。)。そして、観測点xまでの距離が最も長い等値面上の任意の点を着目評価点zとして抽出する。この構成によれば、着目評価点zを作業者が選択する必要がなくなるため、車両モデルのガラス製の部分における高周波領域の表面音圧変動に大きく寄与している流れ場の位置をより効率的に特定することができる。なお、第2変形装置では最大(ほぼ最大)のAPDS値に対応している評価点zが着目評価点zとして抽出されるが、この構成に限られず、予め設定された条件を満たす着目評価点zが抽出される構成であっても良い。
以上、実施形態及び変形例の風切音解析装置及び風切音解析方法について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び変形例では解析対象となる構造物モデルとして車両モデルが用いられたが、この構成に限られず、例えば、航空機及び船舶等の構造物モデル等が用いられてもよい。
加えて、上記実施形態及び変形例では、表面音圧変動が比較的に大きい観測点が解析対象とされたが、この構成に限られず、例えば、所定範囲における表面音圧変動の平均値を有する節点xを観測点として解析してもよい。
更に、上記実施形態及び変形例では、等値面上の節点zが着目評価点zとして選択可能であったが、この構成に限られず、例えば、等値面内部の節点zが着目評価点zとして選択可能であってもよい。
更に、上記実施形態及び変形例では、観測点xは作業者により選択されたが、この構成に限られず、例えば、表面音圧変動の値に基づいて風切音解析装置により選択されてもよい。
更に、上記実施形態及び変形例では、観測点xは表面音圧変動の分布図に基づいて選択されたが、この構成に限られず、例えば、表面音圧変動以外の物理量に基づいて選択されてもよいし、任意の節点xが作業者により観測点xとして選択されてもよい。
10:計算装置、12:入力部、14:演算部、16:出力部、18:表示画面、20:車両モデル、21:フロードメイン、22:右側フロントサイドガラス、23:右側サイドミラー、24,26:領域、28,30,32(32a,32b,32c):等値面、34:領域、36:剛体モデル、38:フロードメイン、40:フォアステップモデル、42:基準面、44:ステップ、46:ノズル

Claims (8)

  1. 移動中の構造物のガラス製の部分であるガラス部の表面に発生する風切音を解析する風切音解析装置であって、
    構造物をモデル化した構造物モデルを移動させる非定常CFDシミュレーションを実行して、前記構造物モデルの周囲の流れ場のうち所定領域内の流れ場の所定時間における平均流速及び平均渦度を、当該所定領域内の節点である空間節点毎に算出するとともに、風切音の解析対象となる角周波数帯である着目角周波数帯において、前記所定領域内における乱れ流速の振幅に基づく値を、前記空間節点毎に算出する非定常CFD計算手段と、
    前記構造物モデルのガラス部表面の風切音の解析対象点における着目角周波数帯の音圧変動の振幅である表面音圧変動に対する前記所定領域内の空間節点における流れ場の寄与度を示す指標である音圧ソース密度を、前記非定常CFD計算手段によって算出された前記平均流速と、前記平均渦度と、前記乱れ流速の振幅に基づく値と、に基づいて算出する音圧ソース密度算出手段と、
    を備える風切音解析装置。
  2. 請求項1に記載の風切音解析装置であって、
    前記構造物モデルのガラス部表面の前記解析対象点についての着目角周波数帯の前記音圧ソース密度を前記所定領域で空間積分した値は、前記解析対象点における前記表面音圧変動の関数とその複素共役関数との積を着目角周波数帯で積分した値の近似値である、
    風切音解析装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の風切音解析装置であって、
    更に、前記音圧ソース密度を構成する複数のパラメータのうち、当該音圧ソース密度への寄与が相対的に大きいパラメータである原因パラメータを特定する原因パラメータ特定手段を備える、
    風切音解析装置。
  4. 請求項3に記載の風切音解析装置であって、
    前記複数のパラメータは、前記平均流速、前記平均渦度及び前記乱れ流速である、
    風切音解析装置。
  5. 請求項1~4の何れか一項に記載の風切音解析装置であって、
    更に、前記音圧ソース密度が算出された複数の空間節点の中から、外部から入力される値を有する音圧ソース密度に対応している複数の空間節点を抽出し、当該抽出された複数の空間節点を画像処理して等値面を作成し、当該等値面を可視化する画像処理手段を備える、
    風切音解析装置。
  6. 請求項1~4の何れか一項に記載の風切音解析装置であって、
    更に、前記音圧ソース密度算出手段によって算出された複数の音圧ソース密度の最大値に対応している空間節点を抽出する空間節点抽出手段を備える、
    風切音解析装置。
  7. 請求項1~6の何れか一項に記載の風切音解析装置であって、
    前記音圧ソース密度の計算式は、下記数1により表される式によって定義される、
    風切音解析装置。
    Figure 0007052552000070
  8. 計算装置を用いて移動中の構造物のガラス製の部分であるガラス部の表面に発生する風切音を解析する風切音解析方法であって、
    前記計算装置が備える非定常CFD計算手段が、構造物をモデル化した構造物モデルを移動させる非定常CFDシミュレーションを実行して、前記構造物モデルの周囲の流れ場のうち所定領域内の流れ場の流速の時刻歴データ及び渦度の時刻歴データを、当該所定領域内の節点である空間節点毎に所定時間に亘ってそれぞれ算出するステップと、
    前記非定常CFD計算手段が、前記算出された流速の時刻歴データ及び渦度の時刻歴データをそれぞれ平均化処理して、平均流速及び平均渦度を前記空間節点毎に算出するステップと、
    前記非定常CFD計算手段が、前記算出された流速の時刻歴データを高速フーリエ変換処理して、乱れ流速の振幅の関数とその複素共役関数との積を風切音の解析対象となる角周波数帯である着目角周波数帯で積分した値である乱れ流速の振幅の自己相関関数を前記空間節点毎に算出するステップと、
    前記計算装置が備える音圧ソース密度算出手段が、前記構造物モデルのガラス部表面の風切音の解析対象点における着目角周波数帯の音圧変動の振幅である表面音圧変動に対する前記所定領域内の空間節点における流れ場の寄与度を示す指標である音圧ソース密度を、予めROMに格納されている音圧ソース密度の計算式であって、平均流速と、平均渦度と、乱れ流速の振幅の自己相関関数と、をパラメータとして含む計算式、に、前記非定常CFD計算手段によって前記空間節点毎に算出された前記平均流速と、前記平均渦度と、前記乱れ流速の振幅の自己相関関数と、のうち、対応する空間節点における平均流速と、平均渦度と、乱れ流速の振幅の自己相関関数と、を代入することにより算出するステップと、
    を備える風切音解析方法。
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