JP7077481B2 - 質量分析装置および質量分析方法 - Google Patents
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Description
本発明は、質量分析装置および質量分析方法に関する。
質量分析装置で試料成分を定量する場合、目的の成分に由来するイオンのm/z値に着目し、そのイオン量の経時変化を測定する選択イオンモニタリング(SIM:Selected Ion Monitoring)や選択反応モニタリング(SRM:Selected Reaction Monitoring)と呼ばれる測定方法が一般に利用される。
これらの方法は、目的のm/z値に対し装置の制御条件を固定しているため、目的のイオンに対する感度は良いがm/z値のずれを直接測定することができない。
あらかじめm/z値が既知の試料を測定し装置を校正しておく必要があるが、温度や湿度などの変化が電極の部材や電気回路などに影響を与え、校正したm/z値がずれる場合がある。
従って、SIMやSRMによる測定の前後に試料そのものまたはm/z値が既知の成分をスキャン測定し、m/z値がずれていないことを確認している。もしくは、定量測定中に、SIMやSRMによる測定と、既知成分のm/z値の近くのスキャン測定を時間的に分割することで、m/z値に関する情報を得ている。いずれの方法もSIMやSRMで測定しているm/z値がずれていないであろうことを間接的に証明しようとしている。
例えば、特許文献1には、ロックマスと呼ばれる手法により、「外部検量物質又は参照化合物を用いて四重極マスフィルターの質量精度のずれを補正する手法」が記述されている(ここで外部検量物質や参照化合物はm/z値が既知の成分であり、質量精度のずれとは(ばらつきではなく)m/z値の真値からのずれを意味している)。
SIMやSRMによって測定する場合、試料成分に由来するイオンのm/z値に対し装置の制御条件を固定している。そのため、試料成分を正しく指定のm/z値で測定しているとの証憑を得られない。
特許文献1に記載の技術にあっては、質量精度のずれを補正する手法が開示されているが、SIMやSRMの測定結果から、正しく指定のm/z値で測定できているかを直接判定することはできない。つまり、温度や湿度の変化により目的のm/z値に対する装置制御条件が変化した場合、それを直接認識することが困難である。
m/z値対する装置制御条件が変化した場合、本来測定できるはずのイオンを取り逃がし、感度の低下を招く。さらには、定量測定そのものを無駄にする状況もあり得る。
本発明の目的は、制御条件の変化によるm/z値のずれを検知し、定量分析に必要な感度を維持しつつ、m/z値のずれに対する証憑を与え、m/z値のずれにより減少したイオン量を補うことができる質量分析装置および質量分析方法を実現することである。
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
試料成分をイオン化するイオン化部と、前記イオン化部により供給されたイオンを選別する質量分析部と、前記質量分析部により選別されたイオンの強度を測定する検出部と、前記イオン化部、前記質量分析部及び前記検出部の動作を制御する制御部とを備える質量分析装置において、前記制御部は、目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値を選択するため、前記質量分析部の制御条件を切り替える質量分析制御部と、前記質量分析制御部が選択したm/z値のイオン強度を検出するイオン強度検出部と、前記イオン強度検出部が検出したイオン強度の変化を計算する成分量の変化計算部と、成分量一定の状態での前記複数個所のm/z値のイオン強度の比率を求め、近傍パターンを計算する近傍パターン計算部と、前記近傍パターンに基づき測定したイオン強度の不足を補填するイオン強度補正部と、を備え、目的成分に由来するm/z値のイオン強度の経時変化を測定する。
また、試料成分をイオン化し、イオン化されたイオンを選別し、選別したイオンの強度を測定する質量分析方法において、目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値のイオン強度を連続して検出する近傍探索ステップと、検出したイオン強度の変化を計算する成分量の変化計算ステップと、成分量一定の状態での前記目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値のイオン強度の比率を求める近傍パターン計算ステップと、前記近傍パターンに基づき測定したイオン強度の不足を補填するイオン強度補正ステップと、を備え、目的成分に由来するm/z値のイオン強度の経時変化を測定する。
制御条件の変化によるm/z値のずれを検知し、定量分析に必要な感度を維持しつつ、m/z値のずれに対する証憑を与え、m/z値のずれにより減少したイオン量を補うことができる質量分析装置および質量分析方法を実現することができる。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明の実施の形態は、ここに示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1として、目的成分に由来するイオンのm/z値の近傍探索において、その両端に着目する質量分析装置及び質量分析方法を開示する。
実施例1として、目的成分に由来するイオンのm/z値の近傍探索において、その両端に着目する質量分析装置及び質量分析方法を開示する。
図1は実施例1の質量分析装置の概略構成図である。
図1において、試料供給装置110は質量分析装置120に試料成分を供給する。例えば、液体クロマトグラフやガスクロマトグラフ、試料を加熱することで成分を気化させる装置などが試料供給装置である。また、イメージング質量分析などにおいて試料を保持する機構も、試料供給装置の一種である。
質量分析装置120は、イオン化部121と、質量分析部122と、検出部123と、制御部124とを備える。試料供給装置110から供給される試料成分を、イオン化部121によりイオン化し、質量分析部122で、イオン化部121から供給されたイオンのうち所定のm/z値のイオンを選別し、検出部123においてイオン強度として測定する。
制御部124は、入出力装置130からの指示に従い、所定のm/z値を選別するよう質量分析部122を制御し、m/z値に対応するイオン強度のデータを入出力装置130に返す。
ここで、m/z値を所定の範囲でスキャンしつつ、m/z値とイオン強度の並び、すなわちマススペクトルを得る手法をスキャン測定と呼ぶ。また、質量分析部122で選別するm/z値を固定し、イオン強度の経時変化、すなわちクロマトグラムを得るのがSIMやSRMと呼ばれる定量測定である。
図2は質量分析部122の校正を説明する図である。
一般に、質量分析部122の校正では、m/z値が既知の試料成分を測定し、測定値と既知のm/z値が一致するよう質量分析部122の制御条件を調整する。図2において、m/z値がMの試料成分についてMを与えるピークの範囲(例えばM±2Da)をスキャンして得たピークが校正前のピーク210であり、そこから得られるm/z値をM’とした。
ここで、m/z値がMとなるように、質量分析部122の制御値を調整して得られたピークが校正後のピーク220である。また、両端に矢印を記載した直線230が示す幅は、校正後のピーク220の半値幅、すなわちピーク高さの半値におけるピークの横幅である。
なお、校正に際し、m/z値が既知の試料成分の供給量およびイオン化部121における効率は一定である必要がある。イオン化される試料成分の量が変化すると、検出部123で得られるイオン強度が変化し、図2におけるM’やMの値を正しく測定することができない。
次に、質量分析部122として四重極マスフィルターを採用した場合を想定し、制御の概要を説明する。
四重極マスフィルターの場合、それは一対の対向電極で構成される。これらに印加する電圧Φ(ファイ)は次式(1)で与えられる。
ただし、式(1)において、Φは四重極への印加電圧、Uは直流電圧(DC)、Vは交流電圧の最大値(RF)、cosは三角関数、ωは角周波数、tは時間である。
式(1)において、校正で調整する制御値は、直流電圧Uと交流電圧の最大値Vである。
次に、図3を用いて四重極マスフィルターの制御について説明する。図3は校正点のm/z値であるM1、M2、M3(M1<M2<M3)と、校正で求めたRFとDCの関係を示すグラフである。
図3において、質量分析装置120の制御部124は、各校正点を結んだ線分(校正曲線)310を参照し、校正点M1、M2、M3から内挿または外挿により、制御すべきm/z値に対応する点を求め、RFとDCの値を決定する。一般に定量の目的成分のm/z値は既知であるため、定量成分そのものを利用して校正してもよい。
なお、装置の校正とは、RFやDCなどの値を調整することで、目的とするピークのm/z値や、半値幅などで代表されるピーク形状を、目的とする値に合わせる作業となる。
図4は制御部124の動作フローチャートであり、図5は制御部124の概略ブロック図である。
以下、図4の動作フローチャートに従い、図5などを参照しつつ制御動作の詳細を説明する。
(1)初期設定ステップ410
初期設定として、定量分析の条件や、近傍探索の条件などを入出力装置130において設定し、制御部124に転送する。図5の制御部124における各処理ブロックは、初期設定された値を用いて処理を進める。
初期設定として、定量分析の条件や、近傍探索の条件などを入出力装置130において設定し、制御部124に転送する。図5の制御部124における各処理ブロックは、初期設定された値を用いて処理を進める。
初期設定の詳細は、近傍探索ステップ420以降の説明に含める。
また、入力装置130の表示部における条件設定画面の例を図11に示す。詳細は動作フローチャートの説明の後で説明する。
(2)近傍探索ステップ420
近傍探索は従来のSIMやSRMなどの定量測定に替わるものである。その処理は、図5のマスフィルター制御部(質量分析制御部)510とイオン強度検出部520で実施する。
近傍探索は従来のSIMやSRMなどの定量測定に替わるものである。その処理は、図5のマスフィルター制御部(質量分析制御部)510とイオン強度検出部520で実施する。
マスフィルター制御部510は、目的成分に由来するm/z値の近傍の探索点に対応する2または複数個所のm/z値を選択するため、マスフィルターである質量分析装部122の制御条件を順次切り替える。また、マスフィルター制御部(質量分析制御部)510は、近傍探索の探索点を、目的成分に由来するm/z値-0.5から+0.5の範囲においてスキャン測定することも可能である。
イオン強度検出部520は、マスフィルター制御部510で選択したm/z値のイオンを検出部123から検出する。
まず、近傍探索における探索点と基本的な考え方について図6を用いて説明する。
近傍探索は、従来のSIMやSRMが測定対象とする目的成分のm/z値に替わり、その近傍のm/z値に対するイオン強度の経時変化を求める処理である。ここでは、目的成分のm/z値も含む3点を探索点とする例を示す。なお、実施例1は、複数の探索点の両端に着目する方法であり、必ずしもm/z値に対応する探索点は必要ではない。
図6は、四重極マスフィルターの校正時のマススペクトル610を例示する図である。これは、目的成分のm/z値Mの前後をスキャン測定して得られるものであり、図6ではそのピークトップの近傍に着目して示している。
マススペクトル610から、ピークトップ630の左側の点620に対応するM-Δ、ピークトップ630のM、およびピークトップ630の右側の点640に対応するM+Δの3か所のm/z値を探索点として設定する。
すなわち、近傍探索として、M-Δ、M、M+Δの3点に対応するイオン強度の経時変化を求める。ここで、Δ(例えば0.1Da)と探索点は、マススペクトルのピークトップの近傍において、ピークの幅などを参考にして初期設定する。校正時のピークの幅が広ければΔを大きく、狭ければ小さい値を設定するなど、最適なΔの値はピーク形状に依存する。なお、目的成分に由来するm/z値(探索点)の近傍のm/z値のうち、目的成分に由来するm/z値の両端に位置するm/z値は、理想的にはピークトップから数%低下した位置であり、最大でもピークの半値以上となるm/z値が望ましい。
例えば、前者の例は、半値幅0.7のピークにおいて、Mのイオン強度を100%とし、m/z値(M-Δ)のイオン強度が98.6%となるΔ値0.05Daを採用する。また後者の例は、半値幅1.0のピークにおいて、m/z値M-Δのイオン強度が50%となるΔ値0.5Daを採用する。
なお、近傍探索では、初期設定であらかじめ指定された探索点の一式(この例ではM-Δ、M、M+Δ)のイオン強度を順に求める工程を1サイクルとし、それを繰り返す。
校正時は基本的に成分量が一定であるが、実試料の測定では成分量が変化する状況で測定する。
そこで、1サイクルの各点の測定の間に成分量が増加している例を、図6の点660(P1)、点670(P2)、および点680(P3)で示した。それぞれの点は対応するサイクルを明確にするために線分690で結んでいる。ここで、Pjは測定点を示し、jはサイクル内での探索点の番号かつサイクル内の測定順である。
参考として、成分量が増加している状況でスキャン測定した場合に得られるマススペクトルを点線650で示した(実際にはスキャン測定は行わない)。成分量が右肩上がりであることを受け、マススペクトル650はマススペクトル610に比べて右側が高くなっており、P3のイオン強度がP1に対して大きくなっていることがわかる。すなわち、成分量が一定でない場合、装置のm/z値のずれを正しく検出することができない。
ここで、マススペクトル610を得た際の成分量をQ0、ピークトップ630のイオン強度をIBとする。また、マススペクトル610における各探索点jについて、ピークトップとのイオン強度比をRjとする。
例えば、探索点1のイオン強度比(点620のイオン強度/IB)がR1、探索点2のイオン強度比(点630のイオン強度/IB)がR2(=1)、そして探索点3のイオン強度比(点640のイオン強度/IB)がR3とする。各探索点Pjにおいて、成分量をQj、イオン強度比をIjとすると、イオン強度は成分量に比例する前提で次式(2)が成り立つ。
ただし、式(2)において、Q0は校正時の成分量、IBは校正時のピークトップのイオン強度、下付添字jは探索点の番号、Rjは探索点jのイオン強度比(成分量一定でのイオン強度のピークトップ比)、Ijは探索点jのイオン強度、Qjは探索点jの成分量である。
ここで、Rjは校正時に求めることができ、初期設定において後の処理で参照できるように登録する。装置のm/z値がずれた場合、そのずれに応じてRjの値も変化する。その場合、(Ij/Qj)とRjが比例することから、探索点数が十分かつピークトップを含む必要があるが、(Ij/Qj)をその最大値で規格化することでRjを再計算することができる。
(3)成分量の変化計算ステップ430
近傍探索のサイクルで得られる各探索点のイオン強度から、成分量の変化を計算する処理であるステップ430について説明する。これは図5の成分量の変化計算部530において実施する。成分量の変化計算部530は、イオン強度検出部520が検出したイオンの強度変化を計算する。その詳細を、図7を参照しつつ説明する。成分量の変化計算部530は、イオン強度の変化を複数のサイクルにより計算し、前後のサイクルから2次式等で成分量の変化を計算する。
近傍探索のサイクルで得られる各探索点のイオン強度から、成分量の変化を計算する処理であるステップ430について説明する。これは図5の成分量の変化計算部530において実施する。成分量の変化計算部530は、イオン強度検出部520が検出したイオンの強度変化を計算する。その詳細を、図7を参照しつつ説明する。成分量の変化計算部530は、イオン強度の変化を複数のサイクルにより計算し、前後のサイクルから2次式等で成分量の変化を計算する。
図7は、成分量の変化計算の説明図であり、1サイクル3点の近傍探索を連続して実施した様子を示す図である。図7の横軸は時間、縦軸はイオン強度であり、1サイクル内の測定点を直線で結んだ。また、点線710、720、730は、それぞれ探索点1、2、3の経時変化を示している。また、各サイクルに対し測定順に1から番号を与え、C1~C5と表記した。
なお、本発明の実施例1においては、装置のm/z値のずれを検出するものであり、図7に示した例では説明のためピークトップをP2から、P1側にずらしている。
前述のイオン強度比Rjは、成分量が一定の条件で求めているため、各探索点すなわちm/z値におけるイオンの測定効率を示している。装置のm/z値がずれている場合、ずれ量に従いRjの値も変化するが、ずれているピークトップのm/z値に近い探索点の方がRjの値も大きくなる。一連のサイクルにおいて、Rjの値が維持されると考えると、ある時間領域において最も多くのイオンを計測した探索点が、最もピークトップに近いといえる。
例えば、図7では点線710、720、730が与える面積を考えれば、P2、P1、P3の順となるのは自明であり、ここではP2が最もピークトップに近い。
ここで、Rjはそのm/z値におけるイオンの測定効率であれば、各探索点において同じ時間範囲における面積Ajの比とRjの比は一致する。そこに着目し、面積AjからRjを求めるのが実施例1の方法である。
面積を求めるには、前述したように、個々の探索点のイオン強度では判断できない。ここでは、サイクルごとの時間範囲において、イオン強度の変化を示す関数を求め、その積分値から面積を得る。
例えば、k番目のサイクル(Ck)に着目すると、探索点jのイオン量の変化は前後のサイクルの各点にも着目し、(Tj,k-1,Ij,k-1)、(Tj,k,Ij,k)、(Tj,k+1,Ij,k+1)の3点から2次式を求めることができる。ここで、Tj,kは探索した時間、Ij,kはイオン強度である。
このようにして探索点jごとに求めた2次式について、Ckの時間区間での積分値を得る。
次に、k番目のサイクルにおける探索点jの変化を示す2次式(3)の例を示す。
ただし、式(3)において、下付添字jは探索点の番号、下付添字kはサイクルの番号、Tj,kは探索点jサイクルkにおける時間、Ij,kは探索点jサイクルkにおけるイオン強度、tは時間、f(j,k,t)は探索点j、サイクルk、時間tにおけるイオン強度を示す関数である。
ここではラグランジュ補間を採用し2次式を例に説明したが、1次式の利用も考えられる。すなわち、前後の点を直線(1次式)で結び、イオン強度の変化を示す関数f(j,k,t)とする。また、その他の補間法を採用してもよい。
関数f(j,k,t)について、サイクルkの時間範囲における面積をAjとする。このAjを例えば式(4)で求める。
ただし、式(4)において、tCkmaxはサイクルkの時間範囲の最大値、tCkminはサイクルkの時間範囲の最小値、Ajは(サイクルkの)探索点jに対応する面積である。
このようにして求めた面積Ajの比は、Rjの比に一致する。例えば、探索点が3点の場合、A1:A2:A3=R1:R2:R3となる。また、装置のm/z値がずれている場合、Rjはそれぞれの探索点におけるイオン強度比を示す。
なお、イオン強度の値が小さい場合は、面積の比は不安定であり、イオン強度が大きくなると真の値に近づく。そこで、複数のサイクルにおけるAjの値を順次Sjに加算し、後の近傍パターン計算450において利用する。Sjは面積Ajの積算値である。
(4)近傍パターン確定判定ステップ440
ステップ440では、成分量の変化計算ステップ430で求めた面積Ajの積算値Sjが安定したかどうかの判定を行う。
ステップ440では、成分量の変化計算ステップ430で求めた面積Ajの積算値Sjが安定したかどうかの判定を行う。
例えば、すべての積算値Sjの合計値が近傍パターン確定判定のしきい値を超えた場合、近傍パターンが安定したとみなしてYと判定し、イオン強度補正ステップ460に進む。近傍パターン確定判定ステップ440にて、近傍パターン確定判定のしきい値を越えていない場合は、近傍パターンは安定していないとみなしてNと判定し、近傍パターン計算ステップ450に進む。
別法として、積算値Sjに替わって、イオン強度Ijを積算した値を利用することもできる。さらに、当該サイクルのSjと一つ前のサイクルで得たSjについて、探索点ごとに差の絶対値を求め、その合計がしきい値以下になることで判定する方法なども考えられる。
(5)近傍パターン計算ステップ450
近傍パターン計算ステップ450は、図5における近傍パターン計算部540において実施する。
近傍パターン計算ステップ450は、図5における近傍パターン計算部540において実施する。
近傍パターン計算ステップ450では、近傍パターン計算部540が、成分量の変化計算部530において求めた探索点jにおける面積Ajの積算値Sjに基づき、その比率である近傍パターンを計算する。あるいは、近傍パターン計算部540は、成分量一定の状態での近傍のm/z値(目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値)のイオン強度の比率を求め、近傍パターンを計算する。また、近傍パターン計算部540は、2次式で計算された成分量の変化から、単位成分量あたりのイオン強度を近傍パターンとすることもできる。さらに、近傍パターンからスコアを求め、対応するRjやm/z値のずれを求める。
簡単のため、近傍探索が2点の場合について、図8を用いて説明する。
図8は、四重極マスフィルターのm/z値のずれとイオン強度の関係を示すグラフであり、m/z値と近傍パターンの変化を説明する図である。
図8において、校正直後のm/z値Mのマススペクトル810、m/z値が0.05ずれたマススペクトル820、m/z値が0.10ずれたマススペクトル830に対し、近傍探索で得られる2点(点840と点850)をそれぞれプロットし直線で結んだ。このように、m/z値のずれが大きくなるに従い、2点間のイオン強度の差も大きくなる。
すなわち、ピークトップ付近のマススペクトルの形状が安定している場合、近傍パターンからm/z値のずれを求めることができる。特に、近傍パターンの両端に着目し、その比から求めたスコアとm/z値のずれを対応づけることができる。
また、マススペクトルの形状は四重極マスフィルターの校正時に確定する。そのため、近傍パターンの差とm/z値のずれの関係を校正時に計算することが可能となる。
図9は、m/z値のずれとスコアの計算例を示す図であり、マススペクトルのピークが半値幅0.7の場合について、m/z値のずれ(m/z Error)910に対するスコアの計算方法について例示する表である。
図9において、イオン強度(I:Ion Intensity)920において、上段1はm/z値がM-0.05の探索点1であり、下段2はm/z値がM+0.05の探索点2であり、それぞれのm/z値のずれに対するイオン強度の値を示している。なお、説明のためイオン強度の最大値を100として規格化した値を記載している。
ここで、m/z値のずれが0.00、0.05、0.10の場合は、図8におけるマススペクトル810、820、830に対応する。このような数値は、校正時に実測したマススペクトルから求めることができる。もしくは半値幅から求めたガウシアン関数を適用することで、m/z値とイオン強度の関係を決定することもできる。
さらに、図8に示すように、m/z値がずれたマススペクトルを仮定することで、m/z値のずれと近傍探索で得られる各点のイオン強度の比率などを求めることができる。
図9において、イオン強度比(R:Ion Intensity Ratio)930は、イオン強度の値を最大強度(この場合は100)で規格化した数値である。また、イオン強度の測定予想比(R’)940は両端の探索点のイオン強度に着目し、大きい方を1として規格化し、R’max-R’1の値を差(Dif)とした。この例は2点であるため、R’のmaxは2となる。さらに差(Dif)を1000倍しスコア(Score)950としている。
図9においてR’は実測値から算出できる比率であり、そこから求めたスコアから、m/z値のずれや、Rjを決定できることを示している。
このようにして求めた、スコアとm/z値のずれの関係を図10に示す。図10の横軸は図9におけるスコア(Score)であり、縦軸はm/z値のずれ(m/z Error)である。また、線分1010はそれぞれのプロットを内挿、または外挿したものである。このようにして求めて作成したグラフを示す図10は、半値幅0.7におけるスコアとm/z値のずれの関係を示している。
ここで整理すると、初期設定において、図9に示すスコアとm/z値のずれ、およびRjの関係を登録しておく。さらに、近傍パターン計算で求めた両端のイオン強度比(R’1とR’max)からスコアを計算することで、初期設定で登録したRjやm/z値のずれを決定し、後述するイオン強度補正ステップ460やm/z値補正ステップ470で参照する。また、Sjは積算前の初期値に戻す。
この例では、高m/z値側にずれている場合を挙げたが、当然低m/z値側につても計算が可能である。また、近傍探索するピークトップ部分が左右対称であれば、片側のみの計算で済む。スコアの符号が逆になることで、どちら側にずれているか判断できる。
(6)イオン強度補正ステップ460
続いて、イオン強度補正ステップ460について説明する。これは図5におけるイオン強度補正部550での処理に相当する。イオン強度補正部550は、近傍パターン計算部540で計算された近傍パターンに基づき測定したイオン強度の不足を補填する。
続いて、イオン強度補正ステップ460について説明する。これは図5におけるイオン強度補正部550での処理に相当する。イオン強度補正部550は、近傍パターン計算部540で計算された近傍パターンに基づき測定したイオン強度の不足を補填する。
ここでは、イオン強度比Rjの値に基づいて測定したイオン強度を補正する方法を説明する。
探索点jに対する本来のイオン強度は、Ij/Rjで求めることができる。すなわち、サイクル内のイオン強度の合計は全ての探索点の合計、Σ(Ij/Rj)として表すことができる。この値は、一般的な定量測定におけるSIMやSRMのクロマトグラム1点のイオン強度に相当する。
なお、各Rjの値は、初期設定ステップ410で初期化値が設定され、近傍パターン計算ステップ450で更新される。さらに、m/z値補正が適用された場合は、初期値に戻される。
(7)m/z値補正ステップ470
m/z値補正ステップ470は、図5におけるm/z値補正部560において実施する。
m/z値補正ステップ470は、図5におけるm/z値補正部560において実施する。
m/z値補正ステップ470では、近傍パターン計算ステップ450で求めたm/z値のずれに基づき、m/z値を補正する。つまり、近傍パターン計算ステップ450で求めた近傍パターンに基づき質量分析制御部510の制御条件を修正する。近傍パターンが計算されていない場合は、m/z値補正を実施しない。
具体的には、次回の測定から、図3に示したように校正で得たm/z値と図3に示すRFおよびDCの関係に従い、ピークトップに対応するであろうずれたm/z値に相当するRFとDCの値を入出力装置130から出力する。また、m/z値の補正は四重極マスフィルターの質量精度などの仕様に応じ、しきい値を設けることも考えられる。
m/z値のずれを補正した場合、イオン強度補正ステップ460(イオン強度補正部550による処理)で参照するイオン強度比Rjの値をm/z値のずれがない校正直後の数値に戻す。
(8)終了判定ステップ480
図4の動作フローチャートには終了判定ステップ480とあるが、本発明の実施例1は目的成分の定量測定においてm/z値のずれに対応するものであり、その効果はピーク形状が大きく変わらなければ、一連の定量測定が続く限り継続できる。新たに四重極マスフィルターの校正がなされ、初期設定ステップ410が実施された場合、実質的な終了となる。
図4の動作フローチャートには終了判定ステップ480とあるが、本発明の実施例1は目的成分の定量測定においてm/z値のずれに対応するものであり、その効果はピーク形状が大きく変わらなければ、一連の定量測定が続く限り継続できる。新たに四重極マスフィルターの校正がなされ、初期設定ステップ410が実施された場合、実質的な終了となる。
以上、本発明における実施例1を、動作フローチャートに従い説明した。なお、この実施例1において、初期設定ステップ410の際に用いる条件設定画面(入出力装置130の表示画面)について図11を用いて説明する。図11は条件設定画面の例を示す図である。図11に示した例においては、説明のため定量測定の目的成分を一つに限定している。実際の条件設定画面では、複数の目的成分ごとに条件を設定するなどの応用が考えられる。
図11において、条件設定画面は目的成分のマススペクトルを規定したTarget1110、近傍探索の条件を規定したSearch1120、m/z値補正の条件を規定したCorrection1130に大別される。それぞれにおけるパラメータの意味を詳述する。
Target1110は、定量の目的成分の定義を行う表示領域を示し、Top1111は目的成分のピークトップのm/z値である。また、Width1112は目的成分のマススペクトルのピークにおける半値幅であり、Dwell Time1113は目的成分のイオン強度の取り込み時間であり、定量処理を行う際のクロマトグラムの1点の値を与える。
Search1120は、近傍探索条件を設定する領域を示し、Point Number1121は、近傍探索の探索点の点数であり、Dwell Time/Point Numberは近傍探索の1点の取り込み時間である。また、Delta1122は探索点のm/z値の間隔である。また、Threshold1123は近傍パターン確定判定のしきい値であり、実施例1ではすべてのSjの合計値がこの値を超えた場合、安定したとみなす。
Correction1130は、m/z値の補正条件を設定する領域を示す。また、Step1131はm/z値補正の刻みを示し、m/z値のずれがこの値以上になった場合に、補正を実施する。また、Maximum1132はm/z値補正の最大値であり、校正直後のm/z値に対し、これ以上の補正はエラー扱いとするしきい値である。
図11に示したような条件設定された、WidthやDeltaなどの値などから、図9に示すScore950とm/z Error910、およびイオン強度比Rjの関係を求める。ここで用いるマススペクトルは、四重極マスフィルターの校正で得たものを利用できる。マススペクトルのピーク形状をガウス関数(Gaussian function)で代用する場合、半値幅Wのピークに対応する標準偏差σ、およびその際のガウス関数の式は次のような式(5)、(6)に表すことができる。
ただし、式(5)、式(6)において、σは標準偏差、Wは半値幅、lnは自然対数、xは探索点のm/z値、yはイオン強度、Mは目的成分のm/z値、Eはm/z値のずれ、πは円周率、eはネイピア数である。
上記式(5)、(6)により、イオン強度yを求め、最大値を100として規格化すれば、図9に示したイオン強度(I:Ion Intensity)920に対応する値等を得ることができる。
図4に示す初期設定ステップ410では、図11に示した画面により設定された入力を受け、例えば、図6のマススペクトル610と探索点の表示や、図8のようなシミュレーション結果を表示することにより、より効果的にパラメータを設定することができる。
また、図12は、補正の状況を示すログ出力の例を示す図である。
図12において、1行目1210はログのタイトル、2行目1220は目的成分のm/z値を示す。3行目1230はログの項目を示し、左から順にログ日時、スコア、m/z値、m/z値のずれを意味する。4行目1240以下は、ログの実体を示す。
図12に示した例では、目的成分のm/z値693.10に対し、2018/09/01のずれていない状況から、2018/09/13に図11においてStepで規定したm/z値0.05のずれに相当するスコア55を超えたため、693.15から目的とするm/z値を693.10に補正している。2018/09/18のほぼ誤差なしの状況から2018/09/25には逆方向の低m/z値側にずれたため補正している。補正を実施した場合は、スコアの横にアスタリスクを付け識別している。
本発明の実施例1は上記のように構成されているので、制御条件の変化によるm/z値のずれを検知し、定量分析に必要な感度を維持しつつ、m/z値のずれに対する証憑を与え、m/z値のずれにより減少したイオン量を補うことができる質量分析装置および質量分析方法を実現することができる。
さらに、実施例1によれば、m/z値のずれを自動的に補正することができる質量分析装置および質量分析方法を実現することができる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
次に、本発明の実施例2について説明する。
実施例2は、近傍探索においてピークトップ近傍をスキャン測定する例である。なお、スキャン測定の両端に着目すれば実施例1が適用できる。ここでは、スキャン測定において、ピークトップに対応する探索点が含まれているものとして、スキャン測定で得たマススペクトルから、Rjやm/z値のずれを求める方法を説明する。
実施例2における質量分析装置の概略構成や動作フローチャートは実施例1と同様である。ここでは、実施例1と実施例2との違いを中心に説明する。
(1)初期設定ステップ410
実施例1と同様の初期設定を実施する。ただし、実施例2では、図11に示す条件設定画面においてm/z値の間隔Delta(Δ)を、探索に用いるスキャン測定の始点と終点のm/z値の差と読み替える。
実施例1と同様の初期設定を実施する。ただし、実施例2では、図11に示す条件設定画面においてm/z値の間隔Delta(Δ)を、探索に用いるスキャン測定の始点と終点のm/z値の差と読み替える。
(2)近傍探索ステップ420
近傍探索の探索点についての考え方を図13に示す。図13はスキャン測定による近傍探索の説明図である。
近傍探索の探索点についての考え方を図13に示す。図13はスキャン測定による近傍探索の説明図である。
図13において、校正時の成分量が一定の条件で取得できるマススペクトル1310にて、目的成分のm/z値M-Δ/2からM+Δ/2までスキャン測定すると、理想的には点1320から点1330に至るマススペクトル1340を得ることができる。このスキャン範囲M-Δ/2からM+Δ/2が探索の範囲となる。
また、探索点の点数は初期設定で指定されたものであり、その取得時間は同じく指定された取り込み時間(Dwell Time)を点数で割ったものとなる。探索点の点数(Point Number)が2または3のように少ない場合は実施例1と同等とみなすことができるが、ここではさらに大きい値を設定することを想定する。例えば、Δを0.2、点数200、Dwell Time100msとした場合、1点あたり500μs、各探索点のm/z値の刻みは0.001 (0.2/200)Daとなる。
なお、1回のスキャン測定を1サイクルとし、それを繰り返す。また、実施例1と同様に、成分量が増加する場合に得られるマススペクトル1350において、近傍探索では点1360から点1370に至るマススペクトル1380を得る。ここで、P1が最初の探索点であり、Pmaxが最後の探索点となる。上の例ではmaxは200となる。ここで探索点jのイオン強度をIjとする。
なお、実施例2の場合は1点あたりの測定時間が短いため、マススペクトル1340や1380のイオン強度はばらつきの大きいものとなる。そこで、マススペクトル1340や1380を、回帰分析等で求めた2次関数などの近似式に置き換えてもよい。
実施例2では実施例1と同様、イオン強度比Rjを算出することができる。マススペクトル1340のピークトップのイオン強度をIB、それを得た成分量をC0とし、マススペクトル1340の各探索点jについて、ピークトップとのイオン強度比をRjとすると、実施例1の式(2)を求めることができる。すなわち、実施例1の基本的な考え方は実施例2においても適用することができる。
(3)成分量の変化計算ステップ430
実施例2における成分量の変化計算ステップ430について、図14を参照しつつ説明する。
実施例2における成分量の変化計算ステップ430について、図14を参照しつつ説明する。
図14は、スキャン測定による成分量の変化計算の説明図である。
図14において、各サイクルのP1からPmaxまでが近傍探索の結果となる。また、点線1410は探索点1(P1)の経時変化を示し、点線1420は最後の探索点(Pmax)の経時変化を示している。
実施例1では、探索点の両端であるP1とPmaxの経時変化を2次式等で補間し、それらの面積A1とAmaxを、順次S1とSmaxに加算し、後の近傍パターン計算に利用している。
実施例2では、面積値が最大となる点線1430に着目した方法を提供する。ここで、面積値が最大となるとは、イオン強度比Rjの値が最大(=1)になる点、すなわち成分量が一定の場合のビークトップに相当するm/z値に対応する点を結んだものに他ならない。すなわち、点線1430は成分量の変化を示している。また、一連のサイクルにおけるスキャン測定の結果と点線1430の接点は、測定した時点での目的成分のm/z値に対応するため、m/z値のずれを検出することができる。また、成分量Qjの変化とマススペクトルのイオン強度IjからRjを求めることで、イオン強度補正も可能となる。
図15は、参考としてスキャン測定によるm/z値と近傍パターンの変化を例示した図である。図8に示した例と図15に示した例とを比較すると、図15に示した例の方が、より高密度にm/z値とイオン強度の関係をとらえていることがわかる。なお、スキャン測定の場合、1点あたりの測定時間が短くなるため、イオン強度のばらつきが大きくなる特徴がある。
次に、接線によって点線1430に相当する成分量の変化を求める方法について図16を参照しつつ説明する。
図16は、接線による成分量の変化計算の説明図である。成分量の変化計算部530がスキャン測定によるマススペクトルに外接する接線により成分量の変化を求める。
図16はサイクルkにおける成分量の変化を、二本の接線1610と1620で表している。すなわち、サイクルk-1(Ck-1)とサイクルk(Ck)のマススペクトル(スキャン測定によるマススペクトル)に外接する接線1610と、サイクルkとサイクルk+1(Ck+1)のマススペクトルに外接する接線1620を引き、それらの交点1630を得る。
このようにして、サイクルが進むに連れ、スペクトルの接戦の交点と交点を結ぶ線分を決定することができる。それを、図14の点線1430に相当するもの、すなわち成分量Qjの変化とする。
ここで、マススペクトルのイオン強度Ij/Qjが、成分量一定の条件におけるイオン強度となり、ピークトップを1としたイオン強度比Rjを求めることができる。
なお、この処理において求めたRjの値は、不安定であることが考えられる。そこで、実施例1のAjに替わり、各サイクルで求めたIj/Qjの値にそのサイクルでの交点のイオン強度を掛けた値を重みとして掛けた数値をAjとする。複数のサイクルにおけるAjの値を順次Sjに加算し、後の近傍パターン計算で利用する。
ここでは接線を求める方法を示したが、例えばサイクルkにおいて、サイクルk-1、サイクルk、サイクルk+1のマススペクトル(スキャン測定によるマススペクトル)に外接する2次関数などを採用してもよい。サイクルk-1、サイクルk、サイクルk+1に対応するマススペクトルの最大値を与える点、3か所を最初の候補として2次関数を仮定する。それが同じサイクル内のマススペクトルのピーク内に入り、別の場所から出るようなら、それらの点の中間にある点を新たな接点候補とし、最終的に3サイクルのマススペクトルと接する2次式を求める。
(4)近傍パターン確定判定ステップ440
近傍パターン確定判定ステップ440では、実施例2において成分量の変化計算ステップ430で求めた、積算値Sjが安定したかどうかを判定する。
近傍パターン確定判定ステップ440では、実施例2において成分量の変化計算ステップ430で求めた、積算値Sjが安定したかどうかを判定する。
例えば、すべての積算値Sjの合計値が近傍パターン確定判定ステップ440のしきい値を超えた場合、近傍パターンが安定しているとみなしてY(Yes)、そうでない場合はN(No)と判定する。
別法として、積算値Sjに替わって、イオン強度Ijを積算した値を利用することもできる。さらに、当該サイクルのSjと一つ前のサイクルで得たSjについて、探索点ごとに差の絶対値を求め、その合計がしきい値以下になることで判定する方法なども考えられる。
(5)近傍パターン計算ステップ450
近傍パターン計算ステップ450では、成分量の変化計算で求めたSjに対し、それらの最大値を1として格化した値を求めてRjとする。さらに、最大値に相当するjの値に対応するm/z値が、現在のm/z値であり、目的成分のm/z値とのずれを求めることができる。また、Rjは、イオン強度補正ステップ460で利用でき、m/z値のずれはm/z値補正ステップ470で利用する。
近傍パターン計算ステップ450では、成分量の変化計算で求めたSjに対し、それらの最大値を1として格化した値を求めてRjとする。さらに、最大値に相当するjの値に対応するm/z値が、現在のm/z値であり、目的成分のm/z値とのずれを求めることができる。また、Rjは、イオン強度補正ステップ460で利用でき、m/z値のずれはm/z値補正ステップ470で利用する。
ここで、Sjの値はクリアする。
(6)イオン強度補正ステップ460
イオン強度補正ステップ460は、実施例1と同様にして行う。なお、補正後に用いる各点のイオン強度Ijは2次式などで近似する前の値を採用することもできる。
イオン強度補正ステップ460は、実施例1と同様にして行う。なお、補正後に用いる各点のイオン強度Ijは2次式などで近似する前の値を採用することもできる。
(7)m/z値補正ステップ470
m/z値補正ステップ470は、実施例1と同様である。m/z値を補正した場合、イオン強度補正ステップ460で参照するRjを、m/z値がずれていない校正直後の数値に戻す。
m/z値補正ステップ470は、実施例1と同様である。m/z値を補正した場合、イオン強度補正ステップ460で参照するRjを、m/z値がずれていない校正直後の数値に戻す。
(8)終了判定ステップ480
終了判定ステップ480は実施例1と同様である。
終了判定ステップ480は実施例1と同様である。
以上、目的成分のm/z値Mの近傍探索にスキャン測定を採用した例を実施例2として示した。
実施例2においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。
次に、本発明の実施例3について説明する。
実施例3は、近傍探索においてピークトップ近傍をスキャン測定する実施例2の別法である。
(1)初期設定ステップ410
実施例2と同様である。
実施例2と同様である。
(2)近傍探索ステップ420
実施例2と同様である。
実施例2と同様である。
(3)成分量の変化計算ステップ430
実施例1で示したように、各サイクルの面積比はRjの比に一致する。そこで、実施例3においても、実施例1と同様にして、各探索点jについて面積Ajと、複数のサイクルにおけるAjの積算値Sjを求める。ここで、Sjを最大にするjに対応するm/z値が、その時点でのビークトップに対応する。また、SjはRjに対応する。
実施例1で示したように、各サイクルの面積比はRjの比に一致する。そこで、実施例3においても、実施例1と同様にして、各探索点jについて面積Ajと、複数のサイクルにおけるAjの積算値Sjを求める。ここで、Sjを最大にするjに対応するm/z値が、その時点でのビークトップに対応する。また、SjはRjに対応する。
(4)近傍パターン確定判定ステップ440
近傍パターン確定判定ステップ440では、成分量の変化計算ステップ430で求めた面積Ajの積算値Sjが安定したかどうかの判定を行う。
近傍パターン確定判定ステップ440では、成分量の変化計算ステップ430で求めた面積Ajの積算値Sjが安定したかどうかの判定を行う。
例えば、すべての積算値Sjの合計値が近傍パターン確定判定ステップ440のしきい値を超えた場合、近傍パターンが安定したとみなしてY(Yes)、そうでない場合はN(No)と判定する。
別法として、積算値Sjに替わって、イオン強度Ijを積算した値を利用することもできる。さらに、当該サイクルのSjと一つ前のサイクルで得たSjについて、探索点ごとに差の絶対値を求め、その合計がしきい値以下になることで判定する方法なども考えられる。
(5)近傍パターン計算ステップ450
近傍パターン計算ステップ450では、成分量の変化計算で求めたSjに対し、それらの最大値を1として格化した値を求めてRjとする。さらに、最大値に相当するjの値に対応するm/z値が、現在のm/z値であり、目的成分のm/z値とのずれを求めることができる。また、Rjは、イオン強度補正ステップ460で利用でき、m/z値のずれはm/z値補正ステップ470で利用する。
近傍パターン計算ステップ450では、成分量の変化計算で求めたSjに対し、それらの最大値を1として格化した値を求めてRjとする。さらに、最大値に相当するjの値に対応するm/z値が、現在のm/z値であり、目的成分のm/z値とのずれを求めることができる。また、Rjは、イオン強度補正ステップ460で利用でき、m/z値のずれはm/z値補正ステップ470で利用する。
ここで、Sjの値はクリアする。
(6)イオン強度補正ステップ460
イオン強度補正ステップ460は、実施例2と同様にして行う。
イオン強度補正ステップ460は、実施例2と同様にして行う。
(7)m/z値補正ステップ470
m/z値補正ステップ470は、実施例2と同様にして行う。
m/z値補正ステップ470は、実施例2と同様にして行う。
(8)終了判定ステップ480
終了判定ステップ480は、実施例2と同様にして行う。
終了判定ステップ480は、実施例2と同様にして行う。
実施例3においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
上述した実施例1、2、3は、それぞれ目的成分に由来するイオンの検出に関するものである。もし目的成分が量的に少ない場合、m/z値のずれが目的成分と同様である他の成分に対して本発明を適用し、目的成分のm/z値も併せて補正する応用が考えられる。
例えば、目的成分を構成する幾つかの炭素を安定同位体である炭素13(6個の陽子と7個の中性子で構成)に置き換えたものを内部標準物質として、定量測定において目的成分と同時に測定する。その際、目的成分に由来するイオンについては従来どおりSIMやSRMにより測定し、内部標準物質のイオンに対し本発明を適用し、イオン強度補正やm/z値の補正を実施する。その際、目的成分に由来するイオンのm/z値のずれも内部標準物質と同じとみなし、目的成分に対応するイオンのm/z値のずれに対応するイオン強度補正やm/z値補正を適用する。
上述した例は、内部標準物質を用いる例であるが、必ずしも内部標準物質を用いなくともよい。つまり、内部標準物質を用いることなく、イオン強度検出部520は、目的成分のm/z値と同じずれを示すイオンの近傍を探索し、近傍パターン計算部により、探索したイオンのイオン強度の近傍パターンを求め、その結果に基づいて、目的成分のイオン強度をイオン強度補正部550により補正し、m/z値補正部560によりm/z値を補正するように構成することができる。
上述した本発明の実施例1~3により、SIMやSRMによる定量測定において次の効果を得ることができる。
(1)m/z値のずれにより減少したイオン強度の補填
本来の定量測定では、目的成分のピークトップに対応するm/z値のイオン強度の経時変化を求めることが理想である。本発明によれば、温度・湿度等の影響により装置のm/z値がずれた場合でも、測定しているm/z値近傍の探索点のパターンから、ずれている状況を検出できる。さらに、測定したイオン強度を、本来測定できるはずのイオン強度に変換することが可能となる。m/z値のずれに起因する試料成分の単位量あたりのイオン強度の変動を防ぐことは、定量できる濃度範囲や精度の維持において重要である。
本来の定量測定では、目的成分のピークトップに対応するm/z値のイオン強度の経時変化を求めることが理想である。本発明によれば、温度・湿度等の影響により装置のm/z値がずれた場合でも、測定しているm/z値近傍の探索点のパターンから、ずれている状況を検出できる。さらに、測定したイオン強度を、本来測定できるはずのイオン強度に変換することが可能となる。m/z値のずれに起因する試料成分の単位量あたりのイオン強度の変動を防ぐことは、定量できる濃度範囲や精度の維持において重要である。
(2)m/z値がずれていない証憑の取得
SIMやSRMによる定量測定において、定量値とともにm/z値がずれていない証憑を直接得ることができる。
SIMやSRMによる定量測定において、定量値とともにm/z値がずれていない証憑を直接得ることができる。
(3)m/z値のずれの自動補正
目的成分の近傍パターンから、m/z値のずれを検出することができる。すなわち、リアルタイムにm/z値のずれ補正を可能とする。装置のm/z値が徐々にずれるような場合でも、より最適な定量性能を維持することが可能となる。
目的成分の近傍パターンから、m/z値のずれを検出することができる。すなわち、リアルタイムにm/z値のずれ補正を可能とする。装置のm/z値が徐々にずれるような場合でも、より最適な定量性能を維持することが可能となる。
副次的な効果として、例えば定量測定中にスキャン測定を挿入するような処理が不要となるとこから、より目的成分に由来するイオンの検出に装置の時間を割くことが可能となり、定量の感度向上等にも寄与する。
なお、上述した例においては、m/z値のずれを自動補正するように構成したが、m/z値のずれを自動補正することを省略しても本発明は成立する。
つまり、本発明によれば、制御条件の変化によるm/z値のずれを検知し、定量分析に必要な感度を維持しつつ、m/z値のずれに対する証憑を与え、m/z値のずれにより減少したイオン量を補うことができる質量分析装置および質量分析方法を実現することができる。
110:試料供給装置、120:質量分析装置、121:イオン化部、122:質量分析部、123:検出部、124:制御部、130:入出力装置、210:校正前のピーク、220:校正後のピーク、230:半値幅、310:校正曲線、410:初期設定ステップ、420:近傍探索ステップ、430:成分量の変化計算ステップ、440:近傍パターン確定判定ステップ、450:近傍パターン計算ステップ、460:イオン強度補正ステップ、470:m/z値補正ステップ、480:終了判定ステップ、510:マスフィルター制御部、520:イオン強度検出部、530:成分量の変化計算部、540:近傍パターン計算部、550:イオン強度補正部、560:m/z値補正部、610:校正時のマススペクトル、620:m/z値M-Δの探索点(探索点1)、630:m/z値Mの探索点(ピークトップ)(探索点2)、640:m/z値M+Δの探索点(探索点3)、650:成分量増加の場合のマススペクトルの例、660:探索点1の測定値、670:探索点2の測定値(ピークトップの測定値)、680:探索点3の測定値、690:1サイクル内の探索点を結んだ線分、710:探索点1の変化、720:探索点2の変化、730:探索点3の変化、810:校正直後のマススペクトル、820:高m/z値側に0.05ずれた状態、830:高m/z値側に0.10ずれた状態、840:探索点1の測定値、850:探索点2の測定値、910:m/z Error(m/z値のずれ)、920:I(イオン強度)、930:R(イオン強度比)、940:R’(イオン強度の測定予想比)、950:Score(スコア)、1010:Scoreとm/z値のずれの関係を示す線分、1110:Target(目的成分の定義領域)、1111:Top(ピートップのm/z値)、1112:Width(ピークの半値幅)、1113:Dwell Time(取り込み時間)、1120:Search(近傍探索条件の定義領域)、1121:Point Number(探索点の点数)、1122:Delta(探索点の間隔)、1123:Threshold(近傍パターン確定判定のしきい値)、1130:Correction(m/z値の補正条件の定義領域)、1131:Step(補正の刻み)、1132:Maximum(補正の最大値)、1210:ログのタイトル、1220:目的成分のm/z値、1230:ログの項目、1240:ログの実体、1310:成分量が一定の場合のマススペクトル、1320:m/z値M-Δ/2の探索点(探索点1)、1330:m/z値M+Δ/2の探索点(探索点max)、1340:成分量が一定の場合の測定されるマススペクトル、1350:成分量増加の場合のマススペクトル、1360:探索点1の測定値、1370:探索点maxの測定値、1380:成分量増加の場合の測定されるマススペクトル、1410:探索点1の変化、1420:探索点maxの変化、1430:ピークトップに対応する探索点の変化、1510:校正直後のマススペクトル、1520:高m/z値側に0.05ずれた状態、1530:高m/z値側に0.10ずれた状態、1540:探索点1の測定値、1550:探索点2の測定値、1560:ピークトップ、1610:接線1、1620:接線2、1630:接線1と接線2の交点
Claims (15)
- 試料成分をイオン化するイオン化部と、前記イオン化部により供給されたイオンを選別する質量分析部と、前記質量分析部により選別されたイオンの強度を測定する検出部と、前記イオン化部、前記質量分析部及び前記検出部の動作を制御する制御部とを備える質量分析装置において、
前記制御部は、
目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値を選択するため、前記質量分析部の制御条件を切り替える質量分析制御部と、
前記質量分析制御部が選択したm/z値のイオン強度を検出するイオン強度検出部と、
前記イオン強度検出部が検出したイオン強度の変化を計算する成分量の変化計算部と、
成分量一定の状態での前記複数個所のm/z値のイオン強度の比率を求め、近傍パターンを計算する近傍パターン計算部と、
前記近傍パターンに基づき測定したイオン強度の不足を補填するイオン強度補正部と、
を備え、目的成分に由来するm/z値のイオン強度の経時変化を測定する質量分析装置。 - 請求項1に記載の質量分析装置において、
前記制御部は、前記近傍パターンに基づき前記質量分析制御部の制御条件を修正するm/z値補正部を備えることを特徴とする質量分析装置。 - 請求項1に記載の質量分析装置において、
前記目的成分に由来するm/z値の近傍のm/z値のうち、前記目的成分に由来するm/z値の両端のm/z値は、ピークトップから数%低下した位置であり、最大でもピークの半値以上であることを特徴とする質量分析装置。 - 請求項1に記載の質量分析装置において、
前記質量分析制御部は、前記目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値を選択するため、前記目的成分に由来するm/z値-0.5から+0.5の範囲にてスキャン測定可能であることを特徴とする質量分析装置。 - 請求項1に記載の質量分析装置において、
前記成分量の変化計算部は、イオン強度の変化を複数のサイクルにより計算し、前後のサイクルから補間法で成分量の変化を計算することを特徴とする質量分析装置。 - 請求項5に記載の質量分析装置において、
前記近傍パターン計算部は、前記補間法で計算された成分量の変化から、単位成分量あたりのイオン強度を近傍パターンとすることを特徴とする質量分析装置。 - 請求項2に記載の質量分析装置において、
前記近傍パターン計算部は、登録された近傍パターンとスコア、m/z値のずれの関係を参照しスコアを決定し、前記イオン強度補正部は、前記スコアに対応するイオン強度比からイオン強度を補正し、前記m/z値補正部は、前記スコアに対応するm/z値のずれを補正することを特徴とする質量分析装置。 - 請求項4に記載の質量分析装置において、
成分量の変化計算部は、前記スキャン測定によるマススペクトルに外接する接線により成分量の変化を求めることを特徴とする質量分析装置。 - 請求項4に記載の質量分析装置において、
成分量の変化計算部は、前記スキャン測定によるマススペクトルに外接する2次関数により成分量の変化を求めることを特徴とする質量分析装置。 - 請求項2に記載の質量分析装置において、
前記イオン強度検出部は、前記目的成分に由来するm/z値と同じずれを示すイオンの近傍を探索し、前記近傍パターン計算部により、前記探索したイオンのイオン強度の近傍パターンを計算し、目的成分のイオン強度を前記イオン強度補正部により補正し、m/z値補正部によりm/z値を補正することを特徴とする質量分析装置。 - 試料成分をイオン化し、イオン化されたイオンを選別し、選別したイオンの強度を測定する質量分析方法において、
目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値のイオン強度を連続して検出する近傍探索ステップと、
検出したイオン強度の変化を計算する成分量の変化計算ステップと、
成分量一定の状態での前記目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値のイオン強度の比率を求める近傍パターン計算ステップと、
前記近傍パターンに基づき測定したイオン強度の不足を補填するイオン強度補正ステップと、
を備え、目的成分に由来するm/z値のイオン強度の経時変化を測定することを特徴とする質量分析方法。 - 請求項11に記載の質量分析方法において、
近傍の複数個所のm/z値のずれに基づき、検出したm/z値を補正するm/z値補正ステップをさらに備えることを特徴とする質量分析方法。 - 請求項11に記載の質量分析方法において、
前記目的成分に由来するm/z値の近傍のm/z値のうち、前記目的成分に由来するm/z値の両端のm/z値は、ピークトップから数%低下した位置であり、最大でもピークの半値以上であることを特徴とする質量分析方法。 - 請求項11に記載の質量分析方法において、
前記目的成分に由来するm/z値の近傍の複数個所のm/z値を選択するため、前記目的成分に由来するm/z値-0.5から+0.5の範囲にてスキャン測定可能であることを特徴とする質量分析方法。 - 請求項11に記載の質量分析方法において、
イオン強度の変化を複数のサイクルにより計算し、前後のサイクルから2次式で成分量の変化を計算することを特徴とする質量分析方法。
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