本発明の第1の課題は、ナット部材の共回りを規制してボルト軸を螺回動でき、しかも当該ナット部材の共回りを許容して、当該ナット部材に対する螺合が緩むことなく、当該ボルト軸を任意の方向に傾斜・回転させられるようにすることであり、その第2の課題は、空間配置される対象物を複数本のボルト軸により、振れを防止して構造物に対して固定配置するのに使用されるボルト軸取付け具の提供である。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、ボルト軸が螺合されるナット部を有するインナー部材と、前記ボルト軸が挿入される開口部を有し、前記インナー部材を、抜け出ない状態で、前記開口部の奥側及び手前側に移動可能に収容する収容空間を備えたアウター部材と、から成るナット部材と、
前記ナット部材を構造物に固定する固定手段とから成り、
前記インナー部材は、
前記収容空間における前記開口部の奥側に位置させることで、前記アウター部材と係合して、前記ボルト軸の螺回動による当該インナー部材の共回りが防止され、
前記インナー部材を、前記収容空間における前記開口部の手前側に位置させることで、前記係合が解除されて、前記収容空間内で、前記インナー部材と前記ボルト軸との共回りが可能となることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、アウター部材の開口部からインナー部材を挿入して、当該インナー部材を開口部の奥側に移動させると、当該インナー部材は、アウター部材と係合して、前記ボルト軸の螺回動(ボルトとナットとが螺合した状態で、両者を相対的に回動させること)による当該インナー部材の共回りが防止される。
また、ボルト軸の先端部にインナー部材が螺合された状態で、アウター部材に対して当該ボルト軸を引っ張ることで、前記インナー部材を、アウター部材の収容空間における開口部の手前側に配置させると、当該インナー部材は、アウター部材に対する係合が解除されて、前記収容空間内において、前記インナー部材とボルト軸との共回りが可能となる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記アウター部材の収容空間における前記開口部の奥側には、前記インナー部材と係合して、前記ボルト軸の螺回動による当該インナー部材の共回りを防止する規制部が設けられ、前記インナー部材を、前記収容空間における前記開口部の手前側に位置させることで、当該インナー部材は、前記規制部から係合離脱することを特徴としている。
請求項2の発明によれば、アウター部材の収容空間内に収容されたインナー部材を開口部の奥側に移動させると、当該インナー部材は、当該収容空間の奥側に設けられた共回りを規制する規制部と係合することで、当該インナー部材が共回りすることなく、当該インナー部材のナット部に対してボルト軸を螺回動できて、当該ボルト軸の先端部にインナー部材が螺合される。また、前記インナー部材を、前記収容空間における前記開口部の手前側に位置させることで、当該インナー部材は、前記規制部から係合離脱して、ボルト軸との共回りが可能となる。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記共回り状態で、前記ボルト軸は、当該ボルト軸の螺回動時における前記アウター部材に対する配置位置である基準配置位置に対して全方向に傾斜配置可能であることを特徴としている。
請求項3の発明において、ボルト軸のインナー部材のナット部に対する螺回動時における当該ボルト軸のアウター部材に対する配置位置を基準配置位置と定める。アウター部材の規制部に対してインナー部材が係合離脱されて、当該インナー部材がアウター部材の収容空間における開口部の手前側に配置された状態で、前記ボルト軸は、前記基準配置位置に対して、全方向(当該基準配置位置におけるボルト軸の無数の半径方向)において傾斜配置可能となる。
よって、請求項3の発明によれば、構造物にナット部材が固定され、当該ナット部材を構成するアウター部材の収容空間の手前側にインナー部材が、当該アウター部材に対して係合離脱して配置された状態で、当該ボルト軸は、前記基準配置位置に対して全方向において傾斜配置可能である。よって、当該ボルト軸は、空間配置されて、振れ防止を必要とする対象物との関係において、アウター部材に対して周方向に沿った最適な位置において、最適な角度だけ傾斜させることで、当該ボルト軸の他端部を前記対象物に対して接続して、当該対象物の振れを防止できる。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記インナー部材が、自身の自重により、前記アウター部材と係合した位置から、当該係合が解除される位置へと移動するのを防止する係合維持手段を有していることを特徴としている。
請求項4の発明によれば、インナー部材に対してボルト軸を螺合させる初期において、当該インナー部材は、係合維持手段によりアウター部材と係合しているので、当該インナー部材に対してボルト軸を押し込んで係合させる操作を不用として、当該インナー部材に対するボルト軸の螺合(螺回動)の操作を確実に行える。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記固定手段は、前記アウター部材に設けられて、当該アウター部材を構造物に固定可能な固定部から成ることを特徴としている。
請求項5の発明は、前記ナット部材を構造物に固定する固定手段としての固定部がアウター部材に設けられているため、ナット部材は、当該固定部を介して構造物に直接に固定されるため、ボルト軸取付け具としての部品点数が少なくなる。
請求項6の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記固定手段は、構造物に固定可能な固定部を有していて、前記アウター部材とは別体のベース部材で構成され、前記ナット部材は、当該ベース部材に設けられた被組付け部に組み付けられる組付け部を有することを特徴としている。
請求項6の発明は、構造物に対してナット部材を固定する固定手段は、アウター部材とは別体のベース部材で構成され、構造物に対してベース部材を固定した後に、当該ベース部材の被組付け部に、ナット部材の組付け部を組み付けることで、当該ベース部材に対してナット部材が組み付けられる。
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記ベース部材は、内部に前記ナット部材を収容可能な収容空間を有し、当該収容空間に対して開口部から前記ナット部材を押し込むことで、組付け可能であることを特徴としている。
請求項7の発明によれば、構造物に対してベース部材を固定した後に、当該ベース部材の開口部からナット部材を押し込むことで、当該ナット部材は、ベース部材の収容空間に収容されて、当該ベース部材に対して組み付けられるので、ボルト軸の先端部にナット部材を螺合した状態で、当該ボルト軸を手で持って、先端部のナット部材をベース部材に押し込んで組み付けられる。よって、ベース部材に対するナット部材の組付けを容易に行える。
本発明によれば、アウター部材の収容空間に収容されたインナー部材を開口部の奥側に移動させると、当該インナー部材は、アウター部材と係合されることで、当該インナー部材が共回りすることなく、当該インナー部材のナット部に対してボルト軸を螺回動できて、当該ボルト軸の先端部にインナー部材が螺合される。この状態で、アウター部材に対して当該ボルト軸を引っ張ることで、前記インナー部材を、アウター部材の収容空間における開口部の手前側に配置させると、当該インナー部材は、アウター部材に対する前記係合が解除されることで、ボルト軸の一端部に螺合されたインナー部材は、アウター部材の収容空間内において、当該ボルト軸との共回りが可能となる。
以下、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。本発明のボルト軸取付け具Sは、図11~図15に示されるように、コンクリート天井壁Wに固定されるベース部材Vと、ボルト軸Bの先端部が螺合されるナット部材Nとから成る。当該ナット部材Nは、図1及び図11に示されるように、球体状のインナー部材Aと、当該インナー部材Aを内部に収容するアウター部材Eとから成り、更に、アウター部材Eは、アウター部材本体E1 と、当該アウター部材本体E1 の収容空間14にインナー部材Aを収容した後に、当該アウター部材本体E1 の第2開口部16を閉塞した状態で、当該アウター部材本体E1 に対して一体に組み付けられる規制部形成体E2 とから成る。規制部形成体E2 には、アウター部材本体E1 の収容空間14に収容されたインナー部材Aとの共回りを防止して、当該インナー部材Aに対するボルト軸Bの螺回動を可能とする規制部25を形成するための部材である。ベース部材V、インナー部材A、アウター部材本体E1 及び規制部形成体E2 は、いずれも樹脂の射出成形により形成される。なお、本発明におけるボルト軸は、対象物の振れを防止するために、その一端部が構造物に固定支持され、その典型例は、長さが比較的長い「寸切りボルト(長ねじ)」である。
ナット部材Nを構成するインナー部材Aは、図1、図7及び図8に示されるように、全体形状が球体状であって、全体の一箇所のみに、当該球体の直径の約半分の直径を有するねじ孔の内周面に雌ねじが形成されることで、前記ボルト軸Bの先端部が螺合される非貫通状態のナット部1が形成されている。ナット部1の軸心C1 は、球体状のインナー部材Aの中心C0 を通り、当該ナット部1の軸心C1 に対して垂直な面で前記球体を二等分した部分のうち、前記ナット部1の非貫通部が存在する半球体状の部分には、断面直角三角形状であって、所定幅の多数個(実施例では、12個)の規制部係合溝2が周方向に沿って等間隔をおいて形成されている。図8(a)に示されるように、ナット部1の軸心C1 を通って、しかも前記規制部係合溝2が破断される部分で球体を破断した場合に、球体の中心C0 に最も近い部分に、直角三角形状の規制部係合溝2の直角部が存在するように、球体に対して多数の規制部係合溝2が形成されている。また、前記ナット部1の形成端の部分の外周面に配置されて、多数の規制部係合溝2で囲まれた球面部は、規制部形成体E2 に形成された後述の環状当接部26に当接する当接球面3となる。なお、多数の規制部係合溝2が形成されている半球体と別の半球体にも、多数の前記規制部係合溝2と対称形状の多数の空所が形成されているが、当該多数の空所は、全体の重心位置が、球体の中心C0 から大きく偏在するのを防止して、アウター部材Eの収容空間14内における球体状のインナー部材Aの配置バランスを良好にするための肉盗み部4を示す。
アウター部材Eは、図1~図5に示されるように、アウター部材本体E1 と、球体状の前記インナー部材Aを挿入する第2開口部16を閉塞して、前記アウター部材Eの収容空間14の内部に規制部25を形成するための規制部形成体E2 とから成る。アウター部材本体E1 は、段差短円筒部11の小径部11aの外周部の対向する部分に、板状の一対の弾性片12が片持ち支持状となって対向して形成され、各弾性片12の外側に、組付け爪13が当該弾性片12の幅方向の全長に亘って形成されている。図3(a)に示されるように、前記弾性片12は、前記段差短円筒部11の軸心C2 に対して基端部から先端部(自由端部)に向けて、その間隔が漸次広くなるように傾斜して形成されている。段差短円筒部11の内部の空間は、前記インナー部材Aを収容する貫通状の収容空間14となっていて、当該収容空間14における前記弾性片12の先端部の側の開口は、前記ボルト軸Bを挿入する第1開口部15となっていると共に、反対側の開口は、インナー部材Aを挿入する第2開口部16となっている。前記収容空間14は、中空段差円柱状に形成されて、段差短円筒部11の段差状態とは逆に、第1開口部15の側の内径は、インナー部材Aの直径Dに対応していると共に、第2開口部16の側の内径は、インナー部材Aの直径Dよりも大きく形成されている。
また、図3に示されるように、前記収容空間14における第1開口部15に接続する部分の内周面は、第1開口部15からインナー部材Aが抜け出るのを防止するために、当該インナー部材Aの分割球面(球体の中心を通る特定中心線に対して垂直な異なる分割面で分割される円盤状の分割球体の外周球面)が全周に亘って密着可能な分割球面密着面14aとなっている。なお、段差短円筒部11の大径部11bにおける前記収容空間14の前記分割球面密着面14aに接続する部分は、面取り面17となっている。
段差短円筒部11の大径部11bにおける前記一対の弾性片12の基端部には、規制部形成体E2 の一対の組付け爪27を挿入状態で係合させて、アウター部材本体E1 に対して規制部形成体E2 を組み付けるための被組付け孔18が形成されている。また、アウター部材本体E1 における弾性片12の基端部の内面であって、前記被組付け孔18に接続する面は、当該アウター部材本体E1 に対して規制部形成体E2 を組み付ける際に、後述の組付け爪27を弾接させて、後述の弾性片23を弾性変形し易くするための弾性変形補助傾斜面19となっている。前記弾性片12の下端部には、ベース部材Vに対してナット部材Nを組み付けた状態において、前記組付け爪13とで、当該ベース部材Vの被係合板部34を挟むように配置される係止解除板20が設けられ、ベース部材Vに対してナット部材Nが組み付けられた後に、各係止解除板20に対して互いに近接する方向の力を加えて、一対の弾性片12を内側に変形させて、ベース部材Vの被係止板部34と、ナット部材Nを構成するアウター部材本体E1 の組付け爪13との係止を解除させて、ベース部材Vとナット部材Nとの組み付けを解除する。
また、第2開口部16を通してアウター部材本体E1 の収容空間14にインナー部材Aを収容した後に、当該第2開口部16を閉塞する規制部形成体E2 は、インナー部材Aの規制部係合溝2に挿入係合されて、当該インナー部材Aのナット部1に対するボルト軸Bの螺回動時において、当該インナー部材Aの共回りを防止する規制部25を形成する本来の機能に加えて、蓋体としての機能も有しており、図1、図4~図6及び図9に示されるように、蓋板部21の裏面の外周縁部に、一対の円弧壁部22が対向して形成されていると共に、一対の弾性片23が、前記一対の円弧壁部22の対向方向と直交する方向に沿って対向して形成されている。一対の円弧壁部22の対向内周面の円弧方向に沿った中央部であって、しかも先端部から前記蓋板部21に対して垂直方向に沿った中央部までの部分は、収容空間14の奥側端に配置される球体状のインナー部材Aの一部を干渉することなく配置可能にするために、球体状のインナー部材Aの球面の一部に対応した球面凹部24がそれぞれ形成され、各球面凹部24には、インナー部材Aに形成された多数の規制部係合溝2のうち隣接して形成された2つの規制部係合溝2に挿入状態で係合される2つの突起状の規制部25が、それぞれ形成されている(図9参照)。
また、規制部形成体E2 の蓋板部21の裏面の中央部には、収容空間14の奥側端に配置されるインナー部材Aの球面状の当接球面3の一部を当接させて、当該インナー部材Aの奥側端の位置を定めるための環状当接部26が突出して形成されている。当該環状当接部26の環状端面にインナー部材Aが当接するため、当該環状端面における球体状のインナー部材Aの当接球面部26aは、球面の一部となるように面取りされている。一対の弾性片23の外面の下端部には、アウター部材本体E1 の段差短円筒部11の小径部11aに対向して形成された各被組付け孔18に、内側から挿入して係合状態となる組付け爪27が形成されている。アウター部材本体E1 の各被組付け孔18に、規制部形成体E2 の各組付け爪27が挿入状態で係合されることで、図6に示されるように、アウター部材本体E1 と規制部形成体E2 とは、一体に組み付けられて、アウター部材本体E1 の第2開口部16は、規制部形成体E2 で覆蓋される。なお、図6において、A(1) ,A(2) は、それぞれアウター部材本体E1 と規制部形成体E2 とで形成される収容空間14の奥側端及び手前側端にインナー部材Aが配置された状態を示す。なお、図1において、10は、アウター部材本体E1 の大径部11bに、小径部11aとの段差面に開口して軸心方向に設けられた多数の肉盗み溝部を示し、図4において、28は、規制部形成体E2 の一対の円弧壁部22の部分に蓋板部21の上面に開口して設けられた一対の肉盗み溝部を示す。
ベース部材Vは、図10及び図11に示されるように、ナット部材Nを挿入するナット部材挿入開口31の側が固定板部32の側に比較して僅かに外径が小さくなるようなテーパー円筒状の外周壁部33を備え、当該外周壁部33の外周面における対向部には、前記ナット部材Nの組付け爪13が挿入されて係止する被係止板部34を形成するための平壁状の外壁部35が、当該外周壁部33よりも傾斜角度が大きく、しかも前記外周壁部33から外方に突出して、当該外周壁部33の全高に亘って形成されている。前記外壁部35の内側には、肉盗み空間部36を介して同じく平壁状の内壁部37aが形成され、外壁部35と内壁部37aとは、その幅方向(前記外周壁部33の周方向)の両端部で連結壁部38により連結されている。よって、対向配置された各内壁部37aは、後述の釘挿通孔45の軸心C3 と平行に配置されている。各内壁部37aの前記ナット部材挿入開口31の側の端部は、欠落されて、前記ナット部材Nの組付け爪13を、前記肉盗み空間部36に挿入するための組付け爪挿入開口41となっている。当該組付け爪挿入開口41は、前記肉盗み空間部36の下端部に連通している。
前記外周壁部33の内側における前記各内壁部37aを除く部分には、円筒状の内周壁部37bが肉盗み空間部42を介して設けられている。内周壁部37bは、前記固定板部32から前記外周壁部33の高さ方向の中間部までの間のみに形成され、当該内周壁部37bの内側端部と前記外周壁部33の内周面とは、段差壁部43を介して直交して接続された形態となっている。ベース部材Vの内壁部37a及び内周壁部37bと、当該内周壁部37bに接続している外周壁部33とで形成される空間は、ナット部材Nの収容空間44となっている。
前記固定板部32における円筒状をした前記内周壁部37bの軸心位置には、釘挿通孔45が貫通して形成され、当該固定板部32の裏面には、ガス燃焼式釘打機(図示せず)により、前記ベース部材Vを1本の釘Gを用いて固定する際に、当該釘Gが挿通されるスリーブ46が、前記釘挿通孔45と同心に形成されている。当該スリーブ46の外周には、周方向に沿って複数のリブ片47が全高に亘って形成され、前記固定板部32の裏面における各リブ片47の外側には、規制壁48が設けられ、前記釘Gをガス燃焼式釘打機によりコンクリート天井壁Wに打ち込む際に、前記スリーブ46及び各リブ片47は、押し潰された押潰し塊51(図14参照)となって、前記規制壁48の内部に収容される。なお、図12において、49は、ベース部材Vを1本の釘Gによりコンクリート天井壁Wに固定する前に、コンクリート天井壁Wに対して当該ベース部材Vを横ずれしないように保持するために、固定板部32の上面から突出して形成された複数本のずれ止め突起を示す。
次に、上記したボルト軸取付け具Sを使用して、振れを防止して対象物Kを空間配置する方法について説明する。まず、図6に示されるように、アウター部材Eの収容空間14にインナー部材Aを収容配置して、ナット部材Nを形成する。即ち、アウター部材本体E1 の第2開口部16を通して、内部の収容空間14に球体状のインナー部材Aを収容配置させた後に、当該アウター部材本体E1 の第2開口部16に規制部形成体E2 を配置して、そのまま押圧させると、当該規制部形成体E2 の一対の弾性片23の下端部の外側に形成された各組付け爪27が、アウター部材本体E1 の弾性変形補助傾斜面19に案内されることで、各弾性片23が内側に弾性変形されて、各被組付け孔18に達すると、各弾性片23が原形状に復元して、規制部形成体E2 の各組付け片27が、アウター部材本体E1 の各被組付け孔18に挿入係合されることで、アウター部材本体E1 の第2開口部16が規制部形成体E2 で覆蓋される。この状態では、図6に示されるように、アウター部材Eの収容空間14に収容配置された球体状のインナー部材Aは、アウター部材Eの第1開口部15に対して符号A(1)で示される奥側端から、符号A(2)で示される手前側端の間において移動可能である。
ここで、ボルト軸Bの螺回動により、ナット部材Nを構成するインナー部材Aのナット部1に対してボルト軸Bの螺合を可能にするには、図9に示されるように、当該インナー部材Aを奥側端A(1)に配置して、インナー部材Aの当接球面3が、規制部形成体E2 の環状当接部26の当接球面部26aに当接した状態で、当該インナー部材Aの多数の規制部係合溝2のうち特定の規制部係合溝2に、規制部形成体E2 に形成された規制部25を挿入して係合された状態を維持することで、インナー部材Aのナット部1の軸心C1 を、規制部形成体E2 の蓋板部21に対して垂直に配置させる必要がある。上記した係合状態を維持する手段としては、インナー部材Aの規制部係合溝2に対して規制部形成体E2 の規制部25が圧入状態で挿入係合されるように、互いの寸法を設計する方法、又は接着剤、両面テープ等により、インナー部材Aの規制部係合溝2に対して規制部形成体E2 の規制部25が挿入係合状態を維持させる方法等が挙げられる。
そして、図12(a)に示されるように、アウター部材Eの収容空間14の奥側端A(1)にインナー部材Aが配置されて、ボルト軸の螺回動により、当該インナー部材Aが共回りしない状態で、当該アウター部材Eの第1開口部15からボルト軸Bを前記収容空間14に挿入して、当該ボルト軸Bの先端部をインナー部材Aのナット部1に螺合させて、当該インナー部材Aに対してボルト軸Bを螺回動させる。図12(b)に示されるように、ボルト軸Bの螺回動により、ナット部1の全雌ねじ部に対してボルト軸Bが螺合されると、当該ボルト軸Bの螺回動が不能となる。この状態で、ナット部材Nに対してボルト軸Bを引っ張ると、インナー部材Aは、アウター部材Eの収容空間14内において分割球面密着面14aに当接するまで、当該収容空間14内を移動することで、図12(c)に示されるように、規制部形成体E2 の各規制部25は、インナー部材Aの規制部係合溝2に対して相対的に係合離脱して、当該ボルト軸Bの先端部に螺合されたインナー部材Aは、当該ボルト軸Bに対して共回り可能となる。なお、図12では、ボルト軸Bの背面に現れるアウター部材本体E1 の弾性片12の下端部は、図示していない。
上記のようにして、ボルト軸Bの先端部に螺合状態で取付けられたナット部材Nは、予めコンクリート天井壁Wの壁面Waに固定されている前記ベース部材Vに対して一体に組み付けられる。ベース部材Vは、1本の釘Gによりコンクリート天井壁Wに固定される。即ち、ベース部材Vの固定板部32をコンクリート天井壁Wの壁面Waに密着させた状態で、ガス燃焼式釘打機のガス燃焼により生ずる衝撃力により、スリーブ46に挿入された1本の釘Gをコンクリート天井壁Wに打設すると、当該釘Gは、母材であるコンクリート天井壁を急激に周囲に押し拡げて嵌入されるため、当該母材が元に戻ろうとする反力により、打ち込まれた釘Gの周囲が締め付けられることで、当該母材に対して釘Gが大きな締付け力で固定される。
そして、図13及び図14に示されるように、コンクリート天井壁Wに固定されたベース部材Vの直下において、先端部にナット部材Nが取付けられたボルト軸Bを作業者の手で持って、先端部のナット部材Nをベース部材Vの収容空間44に向けて押圧すると、ナット部材Nの内部において、インナー部材Aは、アウター部材Eに設けられた複数の規制部25に当接することで、ベース部材Vの収容空間44に対してナット部材Nを構成するアウター部材Eが押圧される。アウター部材Eの各組付け爪13は、ベース部材Vの傾斜内端面34aを摺動することで、アウター部材Eの一対の弾性片12が僅かに内側に弾性変形された後に、ベース部材Vの組付け爪挿入開口41を通して肉盗み空間部36の下端部に挿入されて、ベース部材Vの各被係止板部34に係止されて、図15に示されるように、ベース部材Vに対してナット部材Nが一体に組み付けられる。なお、上記組付け時において、アウター部材Eの各係止解除板20は、ベース部材Vの各被係止板部34の下端面に当接するため、ベース部材Vの収容空間44に対してナット部材Nが過度に挿入されるのが防止される。
上記実施例では、作業者の手元において、ボルト軸Bの先端部にナット部材Nを予め取付けておいて、当該ボルト軸Bの下端側の部分を手で持って、当該ボルト軸Bの先端部に取付けられたナット部材Nを、コンクリート天井壁Wに固定されたベース部材Vの収容空間44に押し込むのみで、即ち、ボルト軸Bを螺回動させることなく、コンクリート天井壁Wに対してボルト軸Bを吊り下げられるので、当該ボルト軸Bの吊下げ作業が容易である利点がある。
上記のようにして、ベース部材Vに対してナット部材Nが組み付けられると、図15及び図16に示されるように、インナー部材Aのナット部1に対する螺回動時におけるボルト軸Bのアウター部材Eに対する配置位置を基準配置位置〔図15でB(0)で示される配置位置〕と定めると、球体状のインナー部材Aは、アウター部材Eの収容空間14の分割球面密着面14aに対して任意の方向に配置可能となるため、ボルト軸Bは、前記基準配置位置に対して、全方向において傾斜配置可能となる。ボルト軸Bは、インナー部材Aに連結された基端部が、アウター部材本体E1 の面取り面17に当接する最大傾斜角度(θ)まで傾斜可能である。
このため、図17に示されるように、アウター部材Eに対して傾斜配置位置及び基準配置位置に配置された複数本のボルト軸Bを、本発明に係るボルト軸取付け具Sを用いてコンクリート天井壁Wから組み合わせて吊り下げて、当該ボルト軸Bの傾斜下端部又は下端部を対象物Kに連結することで、空間配置された対象物Kの振れを防止して固定配置できる。傾斜配置位置に同一軸心上に配置される互いに逆ねじの関係にある2本のボルト軸B,B’は連結体61に連結されてターンバックル62を形成している。なお、図17において、63は、ターンバックル62を構成するボルト軸B’の傾斜端部を連結するために、対象物Kに取付けられたブラケットを示す。
また、上記実施例では、インナー部材Aに対するボルト軸Bの螺回動時における共回りを防止する手段として、アウター部材Eの収容空間14の奥側に形成された係合部である複数の規制部25と、当該係合部が係合される被係合部である前記インナー部材Aに設けられた多数の規制部係合溝2とで構成されているが、当該共回り防止手段は、上記した規制部25と規制部係合溝2との組み合わせに限定されない。他の共回り防止手段としては、インナー部材に形成された短角筒部(係合部)と、当該短角筒部が係合状態で挿入される短角孔部(被係合部)との組み合わせであってもよい。
上記実施例では、ナット部材Nを構造物であるコンクリート天井壁Wに固定するために、当該ナット部材Nとは別体のベース部材Vを使用しているが、ナット部材Nを構成するアウター部材Eのアウター部材本体E1 に、コンクリート天井壁Wに固定可能な固定部を直接に形成して、当該固定部をコンクリート天井壁Wに固定するようにしてもよい。
また、上記実施例では、作業者の手元において、ナット部材Nを構成するインナー部材Aに対してボルト軸Bを螺回動させて、当該ボルト軸Bの先端部にナット部材Nを取付け、この状態で、ボルト軸Bの下端部を持って、当該ボルト軸Bの先端部のナット部材Nを、予めコンクリート天井壁Wに固定されたベース部材Vの収容空間44に押し込む操作のみで、コンクリート天井壁Wに対してボルト軸Bを吊り下げられ、当該ボルト軸Bの吊下げ作業が容易であるが、従来のボルト軸の吊下げのように、コンクリート天井壁Wに対して固定されたナット部材Nを構成するインナー部材Aに対してボルト軸Bを螺回動させて、コンクリート天井壁Wに対してボルト軸Bを吊り下げてもよい。