本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の10%モジュラスは、75kgf/cm2以下であり、前記塗膜の動的粘弾性を測定して得られる150℃の貯蔵弾性率(E’)が1.0×107Pa以上であり、ゴルフボール本体表面に設けられた状態で、ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さが、1250nm以上であり、前記ゴルフボールの直径は、40mm~45mmであり、ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から、終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量が3.0mm以下であることを特徴とする。
本発明者らは、動的粘弾性装置を用いて、塗膜の貯蔵弾性率(E’)の温度変化を測定したときに、低温領域では、貯蔵弾性率(E’)にほとんど差がない塗膜であっても、120℃~150℃の高温領域では、貯蔵弾性率に差が生じ、この120℃~150℃の温度範囲における貯蔵弾性率(E’)が、ショートアイアンショットのスピン性能に影響していることを見出している。
本発明のゴルフボールにおいて、塗膜の動的粘弾性を測定して得られる150℃における貯蔵弾性率(E’150)が、1.00×107Pa以上である塗膜を用いることにより、ショートアイアンショットにおいて、打出角を低く、スピン量を高くすることができる。その結果、本発明のゴルフボールは、ショートアイアンショットのコントロール性が高くなる。この観点から、150℃における貯蔵弾性率(E’150)は1.20×107Pa以上が好ましく、1.50×107Pa以上がより好ましい。また、150℃における貯蔵弾性率(E’150)は、1.00×108Pa以下であることが好ましく、9.00×107Pa以下であることがより好ましく、8.00×107Pa以下であることがさらに好ましい。
本発明のゴルフボールにおいて、塗膜の動的粘弾性を測定したときに、120℃~150℃の領域で、貯蔵弾性率(E’)がほぼ一定になる平坦領域を有することが好ましい。この観点から、動的粘弾弾性装置を用いて測定した120℃における貯蔵弾性率(E’120)は、1.00×107Pa以上であることが好ましく、1.20×107Pa以上であることがより好ましく、1.50×107Pa以上であることがさらに好ましい。また、120℃における貯蔵弾性率(E’120)は、9.00×107Pa以下が好ましく、8.00×107Pa以下がより好ましい。
本発明のゴルフボールにおいて、塗膜の動的粘弾性を測定したときに、損失正接tanδのピーク温度は、60℃以下であることが好ましく、56℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましく、40℃以下であることが特に好ましく、-40℃以上であることが好ましく、-35℃以上であることがより好ましく、-30℃以上であることがさらに好ましい。損失正接(tanδ)のピーク温度が、前記範囲内であれば、ショートアイアンショット時に粘性が優位になり良好な打感となるからである。
本発明のゴルフボールにおいて、塗膜の動的粘弾性を測定して得られる損失正接tanδのピーク高さは、0.8未満であり、0.79以下であることが好ましく、0.78以下であることがより好ましい。損失正接(tanδ)のピーク高さが、0.8未満であれば、エネルギー伝達効率が良くなるためせん断力が大きくなりスピン性能が良好となるからである。前記損失正接tanδのピーク高さは、0.3以上であることが好ましく、0.31以上であることがより好ましく、0.32以上であることがさらに好ましい。損失正接(tanδ)のピーク高さが0.3以上である塗膜を用いることにより、ショートアイアンショットにおいて、打出角を低く、スピン量を高くすることができる。
本発明のゴルフボール本体を被覆する塗膜の10%モジュラスは、75kgf/cm2以下が好ましく、60kgf/cm2以下がより好ましく、30kgf/cm2以下が更に好ましい。塗膜の10%モジュラスが、75kgf/cm2以下であれば、塗膜が軟質であり、ショートアイアンショットのスピン量が高くなる。塗膜の10%モジュラスの下限は、特に限定されないが、2kgf/cm2が好ましく、8kgf/cm2がより好ましく、10kgfcm2がさらに好ましく、12kgfcm2が特に好ましい。10%モジュラスが小さすぎると、柔らかくなりすぎて、タック感が残り、フィーリングが悪くなるからである。
塗膜の動的粘弾性及び10%モジュラスは、塗膜を形成する塗料組成物から所定の条件にて測定用フィルムを作製し、この測定用フィルムの動的粘弾性及び10%モジュラスを測定する。測定用フィルムの作製方法および測定方法については、後述する。
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた塗膜とを有し、前記塗膜が、ゴルフボール本体表面に設けられた状態で、ナノインデンターを用いて測定した押し込み深さが、1250nm以上であることが好ましく、1800nm以上であることがより好ましく、2000nm以上であることがさらに好ましい。
ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さの上限は、特に限定されないが、4000nm以下が好ましく、3000nm以下がより好ましく、2800nm以下がさらに好ましい。ナノインデンターを用いて測定した押し込み深さは、ゴルフボール本体に設けられた塗膜の物性を直接指標する。ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さが、1250nmより小さいと、アプローチ(I#8含め)の打球感が悪くなる。また、4000nmより大きいと、変形が大きくなりすぎ、タック感がのこりすぎてしまうからである。
本発明のゴルフボールの塗膜の樹脂成分は、(A)ポリイソシアネート成分と、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール成分とを構成成分として有するポリウレタンを含有するものが好ましい。また本発明のゴルフボールの塗膜の樹脂成分は、(A)ポリイソシアネート成分と、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール成分とを反応させてなるポリウレタンを含有することがより好ましい。
(A)前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート;およびこれらのポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。本発明では、前記ポリイソシアネートとして、2種以上のポリイソシアネートを使用することが好ましい。
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ジイソシアネートのイソシアヌレート体;ジイソシアネートとトリメチロールプロパンあるいはグリセリンなどの低分子量トリオールとを反応させて得られるアダクト体;アロハネート変性体;ビュレット変性体などを挙げることができ、遊離ジイソシアネートが除去されているものがより好ましい。前記アロハネート変性体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて形成されるウレタン結合にさらにジイソシアネートが反応して得られる3官能ポリイソシアネートである。前記ビュレット変性体とは、例えば、下記式(1)で表わされるビュレット結合を有する3官能ポリイソシアネートである。ジイソシアネートのイソシアヌレート体とは、例えば、下記式(2)で表わされる3官能ポリイソシアネートである。
なお、式(1)、(2)中、Rは、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表わす。
本発明では、ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体と、イソホロンジイソシアネートの誘導体とを使用することが好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を使用することが好ましい。イソホロンジイソシアネートの誘導体としては、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を使用することが好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体と、イソホロンジイソシアネートの誘導体との混合比率(HDI誘導体/IPDI誘導体)は、質量比で、90/10以下が好ましく、80/20以下がより好ましく、75/25以下がさらに好ましく、10/90以上が好ましく、30/70以上がより好ましく、45/55以上がさらに好ましい。
(A)前記ポリイソシアネートのイソシアネート基量(NCO%)は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。なお、ポリイソシアネートのイソシアネート基量(NCO%)は、100×[ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数×42(NCOの分子量)]/ポリイソシアネートの総質量(g)で表わすことができる。
前記ポリイソシアネートの具体例としては、DIC社製バーノックD-800、バーノックDN-950、バーノックDN-955、住化バイエルウレタン社製デスモジュールN75MPA/X、デスモジュールN3300、デスモジュールL75(C)、スミジュールE21-1、日本ポリウレタン工業社製コロネートHX、コロネートHK、旭化成ケミカルズ社製デュラネート24A-100、デュラネート21S-75E、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デグサ社製VESTANAT T1890などを挙げることができる。
次に、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール成分について説明する。前記ポリロタキサンは、シクロデキストリンと、このシクロデキストリンの環状構造を串刺し状にする直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有する。ポリロタキサンは、直鎖状分子に串刺し状に貫通されているシクロデキストリン分子が直鎖状分子に沿って移動可能(滑車効果)なために粘弾性を有し、張力が加わっても、この滑車効果によって当該張力を均一に分散させることができる。なお、本発明において、ポリオール成分とは、ヒドロキシル基を複数有するものであれば特に限定されず、シクロデキストリンの環状構造には、イソシアネート基に対して反応し得るヒドロキシル基が複数存在することから、ポリロタキサンはポリオール成分である。
前記シクロデキストリンは、環状構造を有するオリゴ糖の総称である。シクロデキストリンは、例えば、6~8個のD-グルコピラノース残基がα―1,4-グルコシド結合により環状に結合したものである。シクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン(グルコース数:6個)、β-シクロデキストリン(グルコース数:7個)、γ―シクロデキストリン(グルコース数:8個)などが挙げられ、α-シクロデキストリンが好ましい。前記シクロデキストリンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記直鎖状分子としては、シクロデキストリンの環状構造を串刺し状に、回動可能に貫通する直鎖状の分子が好ましい。前記直鎖状分子としては、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリルなどが挙げられ、これらのなかでもポリエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。ポリエチレングリコールは、立体障害が小さく、シクロデキストリンの環状構造を串刺し状に貫通することができる。
前記直鎖状分子の重量平均分子量は、5,000以上が好ましく、6,000以上がより好ましく、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。
前記直鎖状分子は、その両末端に官能基を有するものが好ましい。官能基を有することで、前記封鎖基と容易に反応させることができる。前記官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基などが挙げられる。
前記封鎖基は、直鎖状分子の両末端に配置され、シクロデキストリンが直鎖状分子から脱離することを防止できるものであれば特に限定されない。脱離を防止する方法としては、嵩高い封鎖基を用いて物理的に脱離を防止する方法、イオン性の封鎖基を用いて静電気的に脱離を防止する方法が挙げられる。前記嵩高い封鎖基としては、シクロデキストリン、アダマンチル基などが挙げられる。直鎖状分子に貫通されるシクロデキストリンの個数は、その最大数を1とすると、0.06~0.61が好ましく、0.11~0.48がより好ましく、0.24~0.41がさらに好ましい。0.06未満では滑車効果が発現しないことがあり、0.61を超えると、シクロデキストリンが密に配置されすぎてシクロデキストリンの可動性が低下することがある。
本発明で使用するポリロタキサンとしては、シクロデキストリンが有する水酸基の少なくとも一部が、カプロラクトン鎖によって変性されているものが好ましい。カプロラクトン変性することにより、ポリウレタンとの相溶性が向上する。また、カプロラクトン変性によりポリロタキサンの柔軟性が向上し、アプローチショットのスピン性能が向上する。
前記変性としては、例えば、シクロデキストリンの水酸基をプロピレンオキシドで処理して、ヒドロキシプロピル化する。続いて、ε-カプロラクトンを加えて開環重合を行う。この変性により、シクロデキストリンの環状構造の外側に、カプロラクトン鎖-(CO(CH2)5O)nH(nは、1~100の自然数)が、-O-C3H6-O-基を介して、結合する。nは、重合度を表し、1~100の自然数であることが好ましく、2~70の自然数であることがより好ましく、3~40の自然数であることがさらに好ましい。カプロラクトン鎖の他方の末端には、開環重合により水酸基が形成される。
変性前のシクロデキストリンが有する全水酸基(100モル%)に対して、カプロラクトン鎖で変性される水酸基の割合は、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。カプロラクトン鎖で変性される水酸基の割合が、前記範囲であれば、ポリロタキサンの柔軟性が高くなり、ウェット条件でのスピン性能がより向上する。
図1は、本発明で使用するポリロタキサンの分子構造の一例を示す説明図である。ポリロタキサン200は、シクロデキストリン212と、このシクロデキストリン212の環状構造を串刺し状にする直鎖状分子214と、この直鎖状分子214の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封鎖基216とを有する。シクロデキストリンの環状構造の外側には、カプロラクトン鎖218が、-O-C3H6-O-基(図示せず)を介して結合している。
前記ポリロタキサンの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、400mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは300mgKOH/g以下、さらに好ましくは220mgKOH/g以下、特に好ましくは180mgKOH/g以下である。ポリロタキサンの水酸基価が上記範囲内であれば、ポリイソシアネートとの反応性が高くなり、塗膜の耐久性が良好となるからである。水酸基価は、JIS K 1557-1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
前記ポリロタキサンの全体分子量は、重量平均分子量で、30,000以上が好ましく、より好ましくは40,000以上、さらに好ましくは50,000以上であり、3,000,000以下が好ましく、より好ましくは2,500,000以下、さらに好ましくは2,000,000以下である。重量平均分子量が30,000以上であれば、塗膜が十分な強度をもつものとなり、3,000,000以下であれば、塗膜が十分な柔らかさを有し、ゴルフボールのアプローチ性能が向上するからである。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
ポリカプロラクトンで変性されたポリロタキサンの具体例としては、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製のセルム(登録商標)スーパーポリマーSH3400P、SH2400P、SH1310Pなどを挙げることができる。
(B)前記ポリオール成分は、さらに、他のポリオール成分を含有してもよい。他のポリオール成分としては、水酸基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、低分子量ポリオールや高分子量ポリオールなどが挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(例:1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールなど)、ジプロピレングリコール、ブタンジオール(例:1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオールなど)、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、1,4-シクロへキサンジメチロール、アニリン系ジオール、ビスフェノールA系ジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオール;ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのテトラオールまたはヘキサオールなどが挙げられる。
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;およびアクリルポリオールなどが挙げられる。
前記高分子量ポリオールの数平均分子量は、特に限定されないが、例えば、400以上が好ましく、より好ましくは1,000以上である。高分子量ポリオールの数平均分子量の上限は、特に限定されないが、10,000が好ましく、より好ましくは8,000である。高分子量ポリオールの数平均分子量が前記範囲内であれば、得られる塗膜のゴルフボール本体への密着性が向上するからである。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSK-GEL SUPERH2500(東ソー社製)2本を用いて測定すればよい。
本発明の好ましい態様では、(B)前記ポリオール成分は、ポリロタキサンに加えて、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、アクリルポリオールよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
本発明のより好ましい態様では、(B)ポリオール成分は、ポリロタキサンに加えて、ポリカプロラクトンポリオール(ポリ-ε-カプロラクトン(PCL))を含有する。ポリカプロラクトンポリオールの具体例としては、例えば、ダイセル化学工業社製のPlacel308、Placel312、パーストープ社製のCapa4101,4801などを挙げることができる。
(B)ポリオール成分としては、ポリロタキサンのみを含有する態様;ポリロタキサンと高分子量ポリオールとを含有する態様;ポリロタキサンと低分子量ポリオールとを含有する態様;ポリロタキサンと、低分子量ポリオールと、高分子量ポリオールとを含有する態様などが挙げられる。また、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールは、それぞれ、2種以上を併用してもよい。
(B)ポリオール成分が、ポリロタキサンと他のポリオールとを含有する場合、(B)ポリオール成分中のポリロタキサンの含有率は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。また、ポリロタキサンの含有率は、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。ポリロタキサンの含有率が前記範囲内であれば、ポリロタキサンの特性である柔軟性を十分に発揮するものとなるからである。
本発明で使用するポリウレタンは、(A)ポリイソシアネート成分と(B)ポリオール成分とに加えて、ポリアミンを構成成分として有しても良い。前記ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、脂肪族系ポリアミン、脂環式系ポリアミン、芳香族ポリアミンが挙げられる。前記脂肪族系ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。脂環式系ポリアミンとしては、イソホロンジアミン、ピペラジンなどが挙げられる。
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接または間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどのアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプなどが挙げられる。また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介在して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びその誘導体が特に好ましい。
本発明で使用するポリウレタンの構成態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート成分と、ポリロタキサンとによって構成されている態様、ポリイソシアネート成分と、ポリロタキサンと高分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と、ポリロタキサンと高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分によって構成されている態様などが挙げられる。
前記ポリウレタンの含有率は、塗膜の樹脂成分のうち40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の塗膜の樹脂成分は、さらに、フッ素樹脂、アクリル樹脂、または、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物を含有してもよい。これらのなかでも、本発明の塗膜の樹脂成分は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物を含有することが好ましい。塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物を含有することにより、耐擦過傷性を維持しつつ、粘着性を調整でき、程好い粘着感となるからである。前記変性としては、例えば、塩化ビニルおよび酢酸ビニルと共重合可能な単量体(例えば、ビニルアルコール、ヒドロキシアルキルアクリレートなど)を共重合する方法、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を部分ケン化あるいは完全ケン化することにより、水酸基を導入する方法などを挙げることができる。
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物において、塩化ビニル成分の含有率は、1質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。本発明では、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物として、ヒドロキシル基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を使用することが好ましい。塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物の具体例としては、日信化学工業社製のソルバイン(登録商標)A,ソルバインAL,ソルバインTA2,ソルバインTA3などを挙げることができる。
また、前記塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物の含有率は、塗膜を構成する樹脂成分のうち4質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
[塗料組成物]
本発明のゴルフボールの塗膜は、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール組成物からなる主剤と、(A)ポリイソシアネート成分を含有するポリイソシアネート組成物からなる硬化剤とを含有する硬化型塗料組成物から形成されることが好ましい。本発明では、ポリロタキサンを含有するポリオール組成物と、ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物とを区別するために、便宜上、それぞれ主剤および硬化剤と称している。しかし、主剤と硬化剤をそれぞれ、A剤、B剤と称してもよい。また、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール組成物を硬化剤と称し、(A)ポリイソシアネート成分を含有するポリイソシアネート組成物を主剤と称することも任意である。
本発明で使用する硬化型塗料組成物において、主剤は、硬化剤として使用するイソシアネート基に対する反応性を有する化合物を含有することが好ましい。具体的には、主剤は、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール成分を含有することが好ましい。また硬化型塗料組成物の主剤は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体および/またはその変性物を含有することが好ましい。
前記硬化型塗料組成物における硬化反応において、(B)ポリロタキサンを含有するポリオール成分が有する水酸基(OH基)に対する、(A)ポリイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)は、0.95以上が好ましく、1.05以上がより好ましく、1.10以上がさらに好ましい。前記モル比(NCO基/OH基)が、0.95未満では、硬化反応が不十分となる。また、前記モル比(NCO基/OH基)が大きくなりすぎると、イソシアネート基量が過剰となり、得られる塗膜が硬く脆くなる上に、外観も悪くなる。そのため、前記モル比(NCO基/OH基)は、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。なお、塗料中のイソシアネート基量が過剰になると得られる塗膜の外観が悪くなる理由は、イソシアネート基量が過剰になると、空気中の水分とイソシアネート基との反応が多くなり、炭酸ガスが多量に発生するためと考えられる。なお、硬化反応のNCO/OHモル比を考慮する際に、主剤が有する水酸基には、ポリロタキサン及びポリオールの水酸基が含まれるが、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の変性物および後述する変性シリコーンなどに含まれる水酸基は含まないものとする。
硬化反応には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアミン類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミンなどの環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒が好ましく、特に、ジブチルチンジラウリレートが好適に使用される。
[溶剤]
前記硬化型塗料組成物は、有機溶剤を分散媒とする溶剤系塗料であることが好ましい。ポリロタキサンが水に難溶であるために、有機溶剤を使用することが好ましいからである。好ましい溶剤としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール、酢酸エチルなどを挙げることができる。なお、溶剤は、主剤および硬化剤のいずれに配合してもよいが、均一に硬化反応をさせる観点から、主剤および硬化剤のそれぞれに配合することが好ましい。
前記硬化型塗料組成物は、さらに変性シリコーンを含有することが好ましい。レベリング剤として、変性シリコーンを含有することにより、塗布面の凹凸を軽減し、ゴルフボール表面に平滑な塗布面が形成される。前記変性シリコーンとしては、ポリシロキサン骨格の側鎖又は末端に有機基を導入したもの、ポリシロキサンブロックにポリエーテルブロックおよび/またはポリカプロラクトンブロックなどを共重合したポリシロキサンブロック共重合体、または、前記ポリシロキサンブロック共重合体の側鎖又は末端に有機基を導入したものなどを挙げることができる。前記ポリシロキサン骨格またはポリシロキサンブロックとしては、直鎖状であることが好ましく、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどを挙げることができる。前記有機基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルビノール基などを挙げることができる。本発明では、変性シリコーンオイルとして、ポリジメチルシロキサン-ポリカプロラクトンブロック共重合体を使用することが好ましく、末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン-ポリカプロラクトンブロック共重合体を使用することがより好ましい。カプロラクトン変性ポリロタキサン、ポリカプロラクトンポリオールとの相溶性に優れるからである。本発明で使用する変性シリコーンの具体例としては、Gelest社製のDBL-C31、DBE-224、DCE-7521などが挙げられる。
変性シリコーンは、塗料組成物から形成された塗膜に残存する。塗膜および硬化型塗料組成物における前記変性シリコーンの含有量は、塗膜を構成する樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
前記硬化型塗料組成物は、さらに必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、スリップ剤、粘度調整剤などの、一般にゴルフボール用塗料に含有され得る添加剤を含有してもよい。
次に、本発明の硬化型塗料組成物の塗布方法について説明する。硬化型塗料組成物の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗装、静電塗装などを挙げることができる。
エアーガンを用いたスプレー塗装の場合には、主剤と硬化剤とをそれぞれのポンプで供給して、エアーガン直前に配置されたラインミキサーで連続的に混合し、得られた混合物をスプレー塗装してもよいし、混合比制御機構を備えたエアースプレーシステムを用いて、主剤と硬化剤とを別々にスプレー塗装してもよい。塗装は、1回でスプレー塗布しても良いし、複数回重ね塗りをしても良い。
ゴルフボール本体に塗布された硬化型塗料組成物は、例えば、30℃~70℃の温度で1時間~24時間乾燥することにより塗膜を形成することができる。
乾燥後の塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、15μm以上が特に好ましい。膜厚が5μm未満では、継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなる傾向がある。また、膜厚を厚くすることによりアプローチショットのスピン量が増大するからである。また、塗膜の膜厚は、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。膜厚が50μmよりも大きいとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するおそれがある。塗膜の膜厚は、例えば、ゴルフボールの断面をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-1000)を用いて測定することができる。なお、塗料を複数回重ね塗りした場合は、形成された塗膜全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
本発明のゴルフボールの塗膜は、単層構造または多層構造を有することができ、単層構造を有することが好ましい。
[ゴルフボール本体]
本発明のゴルフボールは、カバーを有するゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。ゴルフボール本体の構造は、特に限定されず、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、あるいは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。
本発明のゴルフボール本体は、コアと前記コアを被覆するカバーとを有することが好ましい。前記コアとカバーとの間に中間層を有してもよい。
図2は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール100が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール100は、球状コア104と、球状コア104を被覆する中間層106と、前記中間層106を被覆するカバー112とを有する。このカバー112の表面には、多数のディンプル114が形成されている。このゴルフボールの表面のうち、ディンプル114以外の部分は、ランド116である。このゴルフボールは、カバーの外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
本発明において、ゴルフボール本体が有するカバーの材料硬度は、ショアD硬度で、30以上が好ましく、40以上がより好ましく、50以上がさらに好ましく、55以上が特に好ましい。また、カバーの材料硬度は、90以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下がさらに好ましい。カバー硬度を適切に調整することにより、打球感および耐久性が良好なゴルフボールが得られる。カバーの材料硬度は、カバーを形成するカバー用組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
本発明において、ゴルフボールのカバーの厚みは、特に限定されないが、4mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。4mm以下とすることによって、コアの外径を大きくできるため、反発性能を向上させることができるからである。カバーの厚みの下限は、特に限定されるものではないが、例えば、0.3mmが好ましく、0.4mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。0.3mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがある。
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂若しくは二液硬化型ウレタン樹脂などのウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーまたは商品名「プリマロイ」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。本発明では、カバー材料として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用することが好ましい。前記カバー材料は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
ゴルフボールの直径は、40mm~45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は、42.67mm以上が好ましい。空気抵抗の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、3.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.9mm以下であり、さらに好ましくは、2.7mm以下である。圧縮変形量が3.0mm以下であれば、低打出角化、高スピン化が図られ、ショートアイアンショットのコントロール性が一層高くなる。前記圧縮変形量の下限は、特に限定されないが、2.3mm状であることが好ましく、より好ましくは2.4mm以上であり、さらに好ましくは、2.5mm以上である。前記圧縮変形量が2.3mm以上のゴルフボールは、打球感が良い。
次に、糸巻きゴルフボール、ツーピースゴルフボールおよびマルチピースゴルフボールに用いられるコア、ならびに、ワンピースゴルフボール本体について説明する。
前記コアおよびワンピースゴルフボール本体には、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類、チオフェノール類、チオナフトール類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1~30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下である。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃~200℃で10分間~60分間加熱するか、あるいは130℃~150℃で20分間~40分間加熱した後、160℃~180℃で5分間~15分間と2段階加熱することが好ましい。
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールが、スリーピース、フォーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボールである場合には、コアと最外層カバーとの間に設ける中間層に使用する材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの重量調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。なお、中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内側カバー層や、外層コアと称される場合がある。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)材料(スラブ)硬度(ショアD硬度)
中間層用組成物またはカバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」または「Shore A」を用いた。
(2)動的粘弾性の測定
塗膜の貯蔵弾性率E’(Pa)、損失弾性率E” (Pa)および損失正接(tan δ)を以下の条件で測定した。
装置:ユービーエム社製動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000
測定サンプル:主剤および硬化剤を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて、厚み0.11-0.14mmの塗膜フィルムを作製した。この塗膜フィルムから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:引張
測定温度:-100℃~150℃
昇温速度:4℃/分
測定データ取り込み間隔:4℃
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
(3)塗膜の押し込み深さ
押し込み深さの測定では、ゴルフボールを切断して、半球が得られる。この半球には 、ゴルフボールの中心を通過する断面が露出する。この断面は、塗膜の断面を含んでいる。クライオミクロトームにより、この半球の断面が水平とされる。この塗膜断面に、ナノインデンターの圧子が当てられ、断面に対して垂直な方向に押圧される。押圧により、圧子は進行する。圧子の荷重と進行距離とが計測される。測定時の条件は、以下の通りである。
・ナノインデンター:株式会社エリオニクスの「ENT-2100」
・温度:30℃
・圧子:バーコビッチ圧子(65.03° As(h)=26.43h2)
・分割数:500ステップ ステップインターバル:20msec (100mgf)
圧子の荷重は、50mgfに到達するまで、徐々に高められる。荷重が30mgfである ときの圧子の進行距離(nm)が、押し込み深さとして計測される。
(4)塗膜の10%モジュラス(kgf/cm2)
塗膜の10%モジュラスは、JIS K7161(2014)に準じて測定した。具体的には、主剤(ポリオール組成物)および硬化剤(ポリイソシアネート組成物)を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて塗膜(厚さ0.05mm)を作製した。この塗膜を、JIS K7127(1999)で規定された試験片タイプ2(平行部の幅10mm、標線間距離50mm)に打ち抜いて試験片を作製した。この試験片について、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標))を用いて引張試験を行った。試験条件は、つかみ具間距離100mm、引張速度50mm/min、試験温度23℃とした。
(5)塗膜の膜厚(μm)
ゴルフボールを半球状に切断し、半球上の塗膜断面をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-1000)を用いて観察し、塗膜の膜厚を求めた。
(6)ショートアイアン(#8アイアン)のスピン量(rpm)
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、#8アイアン(ダンロップスポーツ社製、Z-TX)を取り付け、ヘッドスピード38m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン速度を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。打撃直後のゴルフボールのスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。
(7)ショートアイアン(#8アイアン)ショットの打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、#8アイアン(ダンロップスポーツ社製、Z-TX)を用いた実打テストを行った。フィーリング良好(フェースに乗っている感じがして良い、ひっかかる感じがして良い、スピンがきく感じがして良い、くっつく感じがして良い等)と答えた人数に基づいて、以下のように評価した。
◎:8人以上
○:5人~7人
△:3~4人
×:2人以下
(8)アプローチショットの打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、サンドウエッジ(クリーブランドゴルフ社製CG15フォージドウエッジ(58°))を用いた実打テストを行った。フィーリング良好(フェースに乗っている感じがして良い、ひっかかる感じがして良い、スピンがきく感じがして良い、くっつく感じがして良い等)と答えた人数に基づいて、以下のように評価した。
◎:8人以上
○:5人~7人
△:3~4人
×:2人以下
(9)耐汚染性
ゴルフボールを、ヨードチンキ(ヨウ素を6質量%、ヨウ化カリウムを4質量%含有するエタノール溶液)を40倍に希釈したヨードチンキ水に30秒間浸漬して、取り出した。ゴルフボール表面に付着している余分なヨードチンキ水を拭きとった後、色差計(コニカミノルタ社製CM3500D)を用いて、浸漬前後のゴルフボールの色調(L,a,b)を測定し、色差(ΔE)を次式にて算出した。なお、色差(ΔE)の値が大きいほど、変色の度合いが大きいことを意味する。
ΔE=[(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2]1/2
評価基準
◎:ΔEが15以下
○:ΔEが15超20以下
×:ΔEが20超
(10)圧縮変形量(mm)
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
[スリーピースゴルフボールの作製]
(1)球状コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径39.7mmの球状コアを得た。
ポリブタジエンゴム:JSR(株)製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸留工業社製ZN-DA90S(10%ステアリン酸亜鉛コーティング)
酸化亜鉛:東邦亜鉛製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジフェニルジスルフィド:住友精化製
ジクミルパーオキサイド:日本油脂製、「パークミル(登録商標)D」
(2)中間層用組成物およびカバー用組成物の調製
表2に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で200~260℃に加熱された。
ハイミラン7337:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
エラストランXNY84A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ショアD硬度:32
(3)中間層の作製
上記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得た球状コア上に直接射出成形することにより、中間層を形成した。成形用上下型は、半球状キャビティと、球状コアを支持する進退可能なホールドピンとを有している。中間層成形時には、上記ホールドピンを突き出し、球状コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱した中間層用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して中間層(厚み1mm)を成形した。
(4)ハーフシェルの成形
ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。
(5)カバーの成形
(3)で得られた中間層を被覆した球形体を(4)で得られた2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形によりカバー(厚み0.5mm)を成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。得られたゴルフボール本体の構成を表3にまとめた。
(6)塗料の調製
表4に示した材料を配合して、塗料組成物No.1~No.8を調製した。前記で得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、スプレーガンで塗料を塗布し、40℃のオーブンで24時間塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.3gのゴルフボールを得た。塗膜の厚さは、18μmとした。塗装は、図3に示した回転体にゴルフボール本体を載置し、回転体を300rpmで回転させ、ゴルフボール本体からエアーガンを吹き付け距離(7cm)だけ離間させて上下方向に移動させながら行った。重ね塗りの各回のインターバルを1.0秒とした。エアーガンの吹付条件は、吹付エアー圧;0.15MPa、圧送タンクエアー圧;0.10MPa、1回の塗布時間;1秒、雰囲気温度;20℃~27℃、雰囲気湿度;65%以下の条件で塗装とした。得られたゴルフボールのスピン性能について評価した結果を併せて表4に示した。なお、各塗料から塗膜を作製し、動的粘弾性を測定した結果を図4~図11に示した。
表4で用いた原料は、以下の通りである。
主剤
ポリロタキサン:アドバンスト・ソフトマテリアル社製、「セルム(登録商標)スーパーポリマー SH3400P(シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が、-O-C3H6-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサン、直鎖状分子:ポリエチレングリコール、封鎖基:アダマンタン基、直鎖状分子の分子量:35,000、水酸基価:72mgKOH/g、全体分子量:重量平均分子量700,000)」
ポリカプロラクトンポリオール:ダイセル社製Placel 308
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の変性物:日信化学工業社製、ソルバインAL(ヒドロキシル変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体)
変性シリコーン:Gelest社製、DBL-C31
溶剤:キシレン/メチルエチルケトン=70/30(質量比)の混合溶剤
ポリン#950:神東塗料社製、水酸基価128mgKOH/g、ポリオール成分(トリメチロールプロパン、ポリオキシテトラメチレングリコール)と、ポリイソシアネート成分(イソホロンジイソシアネート)とからなるウレタンポリオール
硬化剤
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体:旭化成ケミカルズ社製デュ
ラネートTKA-100(NCO含有率:21.7%)
ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体:旭化成ケミカルズ社製デュラネート21S-75E(NCO含有率:15.5%)
イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体:デグサ社製VESTANAT T1890(NCO含有率:12.0%)
溶剤:メチルエチルケトン
表4の結果より、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜の10%モジュラスは、75kgf/cm2以下であり、前記塗膜の動的粘弾性を測定して得られる150℃の貯蔵弾性率(E’150)が1.0×107Pa以上であり、ゴルフボール本体表面に設けられた状態で、ナノインデンターを用いて測定した塗膜の押し込み深さが、1250nm以上であり、前記ゴルフボールの直径は、40mm~45mmであり、ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から、終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量が3.0mm以下である本発明のゴルフボールは、ショートアイアンショットのスピン量が高くなり、コントロール性能に優れることが分かる。また、本発明のゴルフボールは、耐汚染性および打球感に優れる。