図1は、本発明の一の実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムXの断面模式図である。ダイシングダイボンドフィルムXは、本発明の一の実施形態に係るダイシングテープ10とダイボンドフィルム20とを含む積層構造を有し、半導体装置の製造においてダイボンドフィルム付き半導体チップを得る過程でのエキスパンド工程に使用することのできるものである。また、ダイシングダイボンドフィルムXは、半導体装置の製造過程における加工対象の半導体ウエハに対応するサイズの例えば円盤形状を有する。
ダイシングテープ10は、基材11と粘着剤層12とを含む積層構造を有し、幅20mmのダイシングテープ試験片について初期チャック間距離100mmで行われる引張試験において、5~30%の範囲の少なくとも一部の歪み値で15~32MPaの範囲内の引張応力を示し得る。5~30%の範囲の少なくとも一部の歪み値には、5~30%の範囲内にある一つの歪み値を含む。
ダイシングテープ10の基材11は、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおいて支持体として機能する要素である。基材11は、例えばプラスチック基材(特にプラスチックフィルム)を好適に用いることができる。当該プラスチック基材の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフィド、アラミド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、およびシリコーン樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、およびエチレン-ヘキセン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。基材11は、一種類の材料からなってもよし、二種類以上の材料からなってもよい。基材11は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。基材11上の粘着剤層12が後述のように紫外線硬化型である場合、基材11は紫外線透過性を有するのが好ましい。また、基材11がプラスチックフィルムよりなる場合、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
ダイシングダイボンドフィルムXの使用に際してダイシングテープ10ないし基材11を例えば部分的な加熱によって収縮させる場合には、基材11は熱収縮性を有するのが好ましい。また、基材11がプラスチックフィルムよりなる場合、ダイシングテープ10ないし基材11について等方的な熱収縮性を実現するうえでは、基材11は二軸延伸フィルムであるのが好ましい。ダイシングテープ10ないし基材11は、加熱温度100℃および加熱処理時間60秒の条件で行われる加熱処理試験による熱収縮率が好ましくは2~30%、より好ましくは2~25%、より好ましくは3~20%、より好ましくは5~20%である。当該熱収縮率は、いわゆるMD方向の熱収縮率およびいわゆるTD方向の熱収縮率の少なくとも一方の熱収縮率をいうものとする。
基材11における粘着剤層12側の表面は、粘着剤層12との密着性を高めるための処理が施されていてもよい。そのような処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、およびイオン化放射線処理などの物理的処理、クロム酸処理などの化学的処理、並びに、下塗り処理が挙げられる。
基材11の厚さは、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおける支持体として基材11が機能するための強度を確保するという観点からは、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上、より好ましくは55μm以上、より好ましくは60μm以上である。また、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材11の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。
ダイシングテープ10の粘着剤層12は、粘着剤を含有する。粘着剤は、放射線照射や加熱など外部からの作用によって意図的に粘着力を低減させることが可能な粘着剤(粘着力低減型粘着剤)であってもよいし、外部からの作用によっては粘着力がほとんど又は全く低減しない粘着剤(粘着力非低減型粘着剤)であってもよく、ダイシングダイボンドフィルムXを使用して個片化される半導体チップの個片化の手法や条件などに応じて適宜に選択することができる。
粘着剤層12中の粘着剤として粘着力低減型粘着剤を用いる場合、ダイシングダイボンドフィルムXの製造過程や使用過程において、粘着剤層12が相対的に高い粘着力を示す状態と相対的に低い粘着力を示す状態とを、使い分けることが可能となる。例えば、ダイシングダイボンドフィルムXの製造過程でダイシングテープ10の粘着剤層12にダイボンドフィルム20を貼り合わせる時や、ダイシングダイボンドフィルムXが所定のウエハダイシング工程に使用される時には、粘着剤層12が相対的に高い粘着力を示す状態を利用して粘着剤層12からのダイボンドフィルム20など被着体の浮きや剥離を抑制・防止することが可能となる一方で、それより後、ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10からダイボンドフィルム付き半導体チップをピックアップするためのピックアップ工程では、粘着剤層12の粘着力を低減させたうえで、粘着剤層12からダイボンドフィルム付き半導体チップを適切にピックアップすることが可能となる。
このような粘着力低減型粘着剤としては、例えば、放射線硬化型粘着剤(放射線硬化性を有する粘着剤)や加熱発泡型粘着剤などが挙げられる。本実施形態の粘着剤層12においては、一種類の粘着力低減型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力低減型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層12の全体が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層12の一部が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層12が単層構造を有する場合、粘着剤層12の全体が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層12における所定の部位(例えば、ウエハの貼着対象領域である中央領域)が粘着力低減型粘着剤から形成され、他の部位(例えば、ウエハリングの貼着対象領域であって、中央領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層12が積層構造を有する場合、積層構造をなす全ての層が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよいし、積層構造中の一部の層が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよい。
粘着剤層12における放射線硬化型粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化型粘着剤)を特に好適に用いることができる。
粘着剤層12における放射線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する、添加型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。
上記のアクリル系ポリマーは、好ましくは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多い主たるモノマーユニットとして含む。以下では、「(メタ)アクリル」をもって、「アクリル」および/または「メタクリル」を表す。
アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどの炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、およびエイコシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。アクリル系ポリマーのための主モノマーとしての(メタ)アクリル酸エステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層12にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における主モノマーとしての(メタ)アクリル酸エステルの割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
アクリル系ポリマーは、その凝集力や耐熱性などを改質するために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのようなモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルなどの官能基含有モノマー等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。アクリル系ポリマーのための当該他のモノマーとしては、一種類のモノマーを用いてもよいし、二種類以上のモノマーを用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層12にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における当該他のモノマー成分の割合は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、主モノマーとしての(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(即ちポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーのための多官能性モノマーとしては、一種類の多官能性モノマーを用いてもよいし、二種類以上の多官能性モノマーを用いてもよい。アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における多官能性モノマーの割合は、(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層12にて適切に発現させるうえでは、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
アクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXの使用される半導体装置製造方法における高度の清浄性の観点からは、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおける粘着剤層12中の低分子量物質は少ない方が好ましいところ、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万~300万である。
粘着剤層12ないしそれをなすための粘着剤は、アクリル系ポリマーなどベースポリマーの数平均分子量を高めるために例えば、外部架橋剤を含有してもよい。アクリル系ポリマーなどベースポリマーと反応して架橋構造を形成するための外部架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物など)、アジリジン化合物、およびメラミン系架橋剤が挙げられる。粘着剤層12ないしそれをなすための粘着剤における外部架橋剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.1~5質量部である。
放射線硬化型粘着剤をなすための上記の放射線重合性モノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。放射線硬化型粘着剤をなすための上記の放射線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーが挙げられ、分子量100~30000程度のものが適当である。放射線硬化型粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、形成される粘着剤層12の粘着力を適切に低下させ得る範囲で決定され、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して、例えば5~500質量部であり、好ましくは40~150質量部である。また、添加型の放射線硬化型粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものを用いてもよい。
粘着剤層12における放射線硬化型粘着剤としては、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化型粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化型粘着剤は、形成される粘着剤層12内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制するうえで好適である。
内在型の放射線硬化型粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。そのような基本骨格をなすアクリル系ポリマーとしては、上述のアクリル系ポリマーを採用することができる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が、挙げられる。
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好適である。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いところ、アクリル系ポリマーの作製または入手のしやすさの観点からは、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好適である。この場合、放射線重合性炭素-炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、およびm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。また、第1の官能基を伴うアクリル系ポリマーとしては、上記のヒドロキシ基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含むものが好適であり、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルや、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルなどのエーテル系化合物に由来するモノマーユニットを含むものも好適である。
粘着剤層12における放射線硬化型粘着剤は、好ましくは光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、およびアシルホスフォナートが挙げられる。α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびアニソインメチルエーテルが挙げられる。ケタール系化合物としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェノン-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、および3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。粘着剤層12における放射線硬化型粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して例えば0.05~20質量部である。
粘着剤層12における上記の加熱発泡型粘着剤は、加熱によって発泡や膨張をする成分(発泡剤,熱膨張性微小球など)を含有する粘着剤であるところ、発泡剤としては種々の無機系発泡剤および有機系発泡剤が挙げられ、熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、およびアジド類が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタンやジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルやアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物、p-トルイレンスルホニルセミカルバジドや4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物、並びに、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンやN,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物が、挙げられる。上記のような熱膨張性微小球をなすための、加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、およびペンタンが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルべーション法や界面重合法などによって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリスルホンが挙げられる。
上述の粘着力非低減型粘着剤としては、例えば、粘着力低減型粘着剤に関して上述した放射線硬化型粘着剤を予め放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤や、感圧型粘着剤などが、挙げられる。本実施形態の粘着剤層12においては、一種類の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層12の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層12の一部が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層12が単層構造を有する場合、粘着剤層12の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層12における所定の部位(例えば、ウエハリングの貼着対象領域であって、ウエハの貼着対象領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤から形成され、他の部位(例えば、ウエハの貼着対象領域である中央領域)が粘着力低減型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層12が積層構造を有する場合、積層構造をなす全ての層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、積層構造中の一部の層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。
放射線硬化型粘着剤を予め放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤(放射線照射済放射線硬化型粘着剤)は、放射線照射によって粘着力が低減されているとしても、含有するポリマー成分に起因する粘着性を示し、ダイシング工程などにおいてダイシングテープ粘着剤層に最低限必要な粘着力を発揮することが可能である。本実施形態においては、放射線照射済放射線硬化型粘着剤を用いる場合、粘着剤層12の面広がり方向において、粘着剤層12の全体が放射線照射済放射線硬化型粘着剤から形成されてもよく、粘着剤層12の一部が放射線照射済放射線硬化型粘着剤から形成され且つ他の部分が放射線未照射の放射線硬化型粘着剤から形成されてもよい。
放射線照射済放射線硬化型粘着剤を粘着剤層12の少なくとも一部に含むダイシングダイボンドフィルムXは、例えば次のような過程を経て製造することができる。まず、ダイシングテープ10の基材11上に、放射線硬化型粘着剤による粘着剤層(放射線硬化型粘着剤層)を形成する。次に、この放射線硬化型粘着剤層の所定の一部または全体に放射線を照射して、放射線照射済放射線硬化型粘着剤を少なくとも一部に含む粘着剤層12を形成する。その後、当該粘着剤層12上に、後述のダイボンドフィルム20となる接着剤層を形成する。放射線照射済放射線硬化型粘着剤を粘着剤層12の少なくとも一部に含むダイシングダイボンドフィルムXは、或いは次のような過程を経て製造することもできる。まず、ダイシングテープ10の基材11上に、放射線硬化型粘着剤による粘着剤層(放射線硬化型粘着剤層)を形成する。次に、この放射線硬化型粘着剤層上に後述のダイボンドフィルム20となる接着剤層を形成する。その後、放射線硬化型粘着剤層の所定の一部または全体に放射線を照射して、放射線照射済放射線硬化型粘着剤を少なくとも一部に含む粘着剤層12を形成する。
一方、粘着剤層12における感圧型粘着剤としては、公知乃至慣用の粘着剤を用いることができ、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を好適に用いることができる。粘着剤層12が感圧型粘着剤としてアクリル系粘着剤を含有する場合、当該アクリル系粘着剤のベースポリマーたるアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多い主たるモノマーユニットとして含む。そのようなアクリル系ポリマーとしては、例えば、放射線硬化型粘着剤に関して上述したアクリル系ポリマーが挙げられる。
粘着剤層12ないしそれをなすための粘着剤には、上述の各成分に加えて、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、顔料や染料などの着色剤などを、含有してもよい。着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
粘着剤層12の厚さは、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~30μm、より好ましくは5~25μmである。このような構成は、例えば、粘着剤層12が放射線硬化型粘着剤を含む場合に当該粘着剤層12の放射線硬化の前後におけるダイボンドフィルム20に対する接着力のバランスをとるうえで、好適である。
以上のような基材11と粘着剤層12とを含む積層構造を有するダイシングテープ10は、上述のように、幅20mmのダイシングテープ試験片について初期チャック間距離100mmで行われる引張試験において5~30%の範囲の少なくとも一部の歪み値で15~32MPaの範囲内の引張応力を示し得るものである。ダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルムXがエキスパンド工程に使用される場合に充分な引張り長さを確保するうえでは、ダイシングテープ10について、前記引張試験において15~32MPaの範囲内の引張応力を示し得る歪み値は、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上、より好ましくは8%以上である。また、ダイシングテープ10を備えるダイシングダイボンドフィルムXがエキスパンド工程に使用される場合に必要な引張り長さが過大となるのを回避するうえでは、ダイシングテープ10について、前記引張試験において15~32MPaの範囲内の引張応力を示し得る歪み値は好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下、より好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下である。また、ダイシングテープ10に関する上記引張試験での引張応力は、上述のように15~32MPaの範囲内にあるところ、好ましくは20~32MPaの範囲内にある。
上記引張試験においては、温度条件が低温であるほど、ダイシングテープ10ないしその試験片の示す引張応力は大きい傾向にあるところ、当該引張試験での温度条件は、好ましくは-15℃である。また、上記引張試験での引張速度条件は、好ましくは10~1000mm/分、より好ましくは100~1000mm/分の範囲内にある。すなわち、ダイシングテープ10は、これら測定条件で実施される引張試験において、5~30%の範囲の少なくとも一部の歪み値、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上、より好ましくは8%以上であり且つ好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下、より好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下の歪み値で、15~32MPa、より好ましくは20~32MPaの範囲内の引張応力を示し得るものである。
ダイシングテープ10の-15℃での弾性率は、好ましくは500MPa以上、より好ましくは700MPa以上、より好ましくは900MPa以上、より好ましくは1000MPa以上である。このような構成は、ダイシングテープ10に関する上記引張試験において5~30%の範囲の少なくとも一部の歪み値で15~32MPaの範囲内の引張応力を生じさせるのに適する。
ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20は、ダイボンディング用の熱硬化性を示す接着剤として機能しうる構成を有する。本実施形態において、ダイボンドフィルム20をなすための接着剤は、熱硬化性樹脂と例えばバインダー成分としての熱可塑性樹脂とを含む組成を有してもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有してもよい。ダイボンドフィルム20をなすための接着剤が、熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有する場合、当該粘着剤は熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)を含む必要はない。このようなダイボンドフィルム20は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。
ダイボンドフィルム20が、熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂とともに含む場合、当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。ダイボンドフィルム20をなすうえでは、一種類の熱硬化性樹脂を用いてもよいし、二種類以上の熱硬化性樹脂を用いてもよい。ダイボンディング対象の半導体チップの腐食原因となりうるイオン性不純物等の含有量の少ない傾向にあるという理由から、ダイボンドフィルム20に含まれる熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、およびグリシジルアミン型のエポキシ樹脂が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、ダイボンドフィルム20に含まれるエポキシ樹脂として好ましい。
エポキシ樹脂の硬化剤として作用しうるフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、および、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、およびノニルフェノールノボラック樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂の硬化剤として作用しうるフェノール樹脂としては、一種類のフェノール樹脂を用いてもよいし、二種類以上のフェノール樹脂を用いてもよい。フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂は、ダイボンディング用接着剤としてのエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる場合に当該接着剤の接続信頼性を向上させうる傾向にあるので、ダイボンドフィルム20に含まれるエポキシ樹脂の硬化剤として好ましい。
ダイボンドフィルム20において、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応を充分に進行させるという観点からは、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たり、当該フェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.8~1.2当量となる量で、含まれる。
ダイボンドフィルム20に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびフッ素樹脂が挙げられる。ダイボンドフィルム20をなすうえでは、一種類の熱可塑性樹脂を用いてもよいし、二種類以上の熱可塑性樹脂を用いてもよい。ダイボンドフィルム20に含まれる熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いためにダイボンドフィルム20による接合信頼性を確保しやすいという理由から、アクリル樹脂が好ましい。
ダイボンドフィルム20に熱可塑性樹脂として含まれるアクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多い主たるモノマーユニットとして含む。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、粘着剤層12形成用の放射線硬化型粘着剤の一成分たるアクリル系ポリマーに関して上記したのと同様の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。ダイボンドフィルム20に熱可塑性樹脂として含まれるアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリロニトリルなどの官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマーが挙げられ、具体的には、粘着剤層12形成用の放射線硬化型粘着剤の一成分たるアクリル系ポリマーに関して(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとして上記したのと同様のものを用いることができる。ダイボンドフィルム20において高い凝集力を実現するという観点からは、ダイボンドフィルム20に含まれる当該アクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル(特に、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)と、カルボキシ基含有モノマーと、窒素原子含有モノマーと、多官能性モノマー(特にポリグリシジル系多官能モノマー)との共重合体であり、より好ましくは、アクリル酸エチルと、アクリル酸ブチルと、アクリル酸と、アクリロニトリルと、ポリグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体である。
ダイボンドフィルム20における熱硬化性樹脂の含有割合は、ダイボンドフィルム20において熱硬化型接着剤としての機能を適切に発現させるという観点から、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
ダイボンドフィルム20が、熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多い主たるモノマーユニットとして含む。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、粘着剤層12形成用の放射線硬化型粘着剤の一成分たるアクリル系ポリマーに関して上記したのと同様の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすための熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、およびイソシアネート基が挙げられる。これらのうち、グリシジル基およびカルボキシ基を好適に用いることができる。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂としては、グリシジル基含有アクリル樹脂やカルボキシ基含有アクリル樹脂を好適に用いることができる。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂の硬化剤としては、例えば、粘着剤層12形成用の放射線硬化型粘着剤の一成分とされる場合のある外部架橋剤として上記したものを用いることができる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基がグリシジル基である場合には、硬化剤としてポリフェノール系化合物を好適に用いることができ、例えば上記の各種フェノール樹脂を用いることができる。
ダイボンディングのために硬化される前のダイボンドフィルム20について、ある程度の架橋度を実現するためには、例えば、ダイボンドフィルム20に含まれる上述の樹脂の分子鎖末端の官能基等と反応して結合しうる多官能性化合物を架橋剤としてダイボンドフィルム形成用樹脂組成物に配合しておくのが好ましい。このような構成は、ダイボンドフィルム20について、高温下での接着特性を向上させるうえで、また、耐熱性の改善を図るうえで好適である。そのような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、および、多価アルコールとジイソシアネートの付加物が挙げられる。ダイボンドフィルム形成用樹脂組成物における架橋剤の含有量は、当該架橋剤と反応して結合しうる上記官能基を有する樹脂100質量部に対し、形成されるダイボンドフィルム20の凝集力向上の観点からは好ましくは0.05質量部以上であり、形成されるダイボンドフィルム20の接着力向上の観点からは好ましくは7質量部以下である。また、ダイボンドフィルム20における架橋剤としては、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物をポリイソシアネート化合物と併用してもよい。
ダイボンドフィルム20は、フィラーを含有していてもよい。ダイボンドフィルム20へのフィラーの配合により、ダイボンドフィルム20の導電性や、熱伝導性、弾性率などの物性を調整することができる。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられるところ、特に無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカの他、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属単体や、合金、アモルファスカーボンブラック、グラファイトが挙げられる。フィラーは、球状、針状、フレーク状等の各種形状を有していてもよい。ダイボンドフィルム20におけるフィラーとしては、一種類のフィラーを用いてもよいし、二種類以上のフィラーを用いてもよい。
ダイボンドフィルム20がフィラーを含有する場合における当該フィラーの平均粒径は、好ましくは0.005~10μm、より好ましくは0.005~1μmである。当該フィラーの平均粒径が0.005μm以上であるという構成は、ダイボンドフィルム20において、半導体ウエハ等の被着体に対する高い濡れ性や接着性を実現するうえで好適である。当該フィラーの平均粒径が10μm以下であるという構成は、ダイボンドフィルム20において充分なフィラー添加効果を享受するとともに耐熱性を確保するうえで好適である。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA-910」,株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。
接着剤層20は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。当該他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-300」)、特定構造のリン酸ジルコニウム(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-100」)、ケイ酸マグネシウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード600」)、およびケイ酸アルミニウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード700」)を挙げることができる。金属イオンとの間で錯体を形成し得る化合物もイオントラップ剤として使用することができる。そのような化合物としては、例えば、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、およびビピリジル系化合物が挙げられる。これらのうち、金属イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点からはトリアゾール系化合物が好ましい。そのようなトリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-{N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-t-オクチル-6'-t-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、1-(2',3'-ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2-エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-t-ペンチル-6-{(H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル}フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、C7-C9-アルキル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンエーテル、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-ブチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、および、メチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートが挙げられる。また、キノール化合物や、ヒドロキシアントラキノン化合物、ポリフェノール化合物などの所定の水酸基含有化合物も、イオントラップ剤として使用することができる。そのような水酸基含有化合物としては、具体的には、1,2-ベンゼンジオール、アリザリン、アントラルフィン、タンニン、没食子酸、没食子酸メチル、ピロガロールなどが挙げられる。以上のような他の成分としては、一種類の成分を用いてもよいし、二種類以上の成分を用いてもよい。
ダイボンドフィルム20の厚さは、例えば1~200μmの範囲にある。当該厚さの上限は、好ましくは100μm、より好ましくは80μmである。当該厚さの下限は、好ましくは3μm、より好ましくは5μmである。
以上のような構成を有するダイシングダイボンドフィルムXは、例えば以下のようにして作製することができる。
ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10については、用意した基材11上に粘着剤層12を設けることによって作製することができる。例えば樹脂製の基材11は、カレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法などの製膜手法により作製することができる。粘着剤層12は、粘着剤層12形成用の粘着剤組成物を調製した後、基材11上または所定のセパレータ(即ち剥離ライナー)上に当該粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成し、必要に応じて当該粘着剤組成物層について脱溶媒等する(この時、必要に応じて加熱架橋させる)ことによって、形成することができる。粘着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。粘着剤組成物層の脱溶媒等のための温度は例えば80~150℃であって時間は例えば0.5~5分間である。粘着剤層12がセパレータ上に形成される場合には、当該セパレータを伴う粘着剤層12を基材11に貼り合わせる。以上のようにして、ダイシングテープ10を作製することができる。
ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20については、ダイボンドフィルム20形成用の接着剤組成物を調製した後、所定のセパレータ上に当該接着剤組成物を塗布して接着剤組成物層を形成し、必要に応じて当該接着剤組成物層について脱溶媒等することによって、作製することができる。接着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。接着剤組成物層の脱溶媒等のための温度は例えば70~160℃であって時間は例えば1~5分間である。
ダイシングダイボンドフィルムXの作製においては、次に、ダイシングテープ10の粘着剤層12側にダイボンドフィルム20を例えば圧着して貼り合わせる。貼り合わせ温度は、例えば30~50℃であり、好ましくは35~45℃である。貼り合わせ圧力(線圧)は、例えば0.1~20kgf/cmであり、好ましくは1~10kgf/cmである。粘着剤層12が上述のような放射線硬化型粘着剤層である場合にダイボンドフィルム20の貼り合わせより後に粘着剤層12に紫外線等の放射線を照射する時には、例えば基材11の側から粘着剤層12に放射線照射を行い、その照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングダイボンドフィルムXにおいて粘着剤層12の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(照射領域R)は、通常、粘着剤層12におけるダイボンドフィルム20貼り合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
以上のようにして、例えば図1に示すダイシングダイボンドフィルムXを作製することができる。ダイシングダイボンドフィルムXには、ダイボンドフィルム20側に、少なくともダイボンドフィルム20を被覆する形態でセパレータ(図示略)が設けられていてもよい。ダイシングテープ10の粘着剤層12よりもダイボンドフィルム20が小サイズで粘着剤層12においてダイボンドフィルム20の貼り合わされていない領域がある場合には例えば、セパレータは、ダイボンドフィルム20および粘着剤層12を少なくとも被覆する形態で設けられていてもよい。セパレータは、少なくともダイボンドフィルム20(例えば、ダイボンドフィルム20および粘着剤層12)が露出しないように保護するための要素であり、ダイシングダイボンドフィルムXを使用する際には当該フィルムから剥がされる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが、挙げられる。
図2から図7は、本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法を表す。
本半導体装置製造方法においては、まず、図2(a)および図2(b)に示すように、半導体ウエハWに分割溝30aが形成される(分割溝形成工程)。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。本工程では、粘着面T1aを有するウエハ加工用テープT1が半導体ウエハWの第2面Wb側に貼り合わされた後、ウエハ加工用テープT1に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWの第1面Wa側に所定深さの分割溝30aがダイシング装置等の回転ブレードを使用して形成される。分割溝30aは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための空隙である(図2~4では分割溝30aを模式的に太線で表す)。
次に、図2(c)に示すように、粘着面T2aを有するウエハ加工用テープT2の、半導体ウエハWの第1面Wa側への貼り合わせと、半導体ウエハWからのウエハ加工用テープT1の剥離とが、行われる。
次に、図2(d)に示すように、ウエハ加工用テープT2に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化される(ウエハ薄化工程)。研削加工は、研削砥石を備える研削加工装置を使用して行うことができる。このウエハ薄化工程によって、本実施形態では、複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Aが形成される。半導体ウエハ30Aは、具体的には、当該ウエハにおいて複数の半導体チップ31へと個片化されることとなる部位を第2面Wb側で連結する部位(連結部)を有する。半導体ウエハ30Aにおける連結部の厚さ、即ち、半導体ウエハ30Aの第2面Wbと分割溝30aの第2面Wb側先端との間の距離は、例えば1~30μmであり、好ましくは3~20μmである。
次に、図3(a)に示すように、ウエハ加工用テープT2に保持された半導体ウエハ30AがダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20に対して貼り合わせられる。この後、図3(b)に示すように、半導体ウエハ30Aからウエハ加工用テープT2が剥がされる。ダイシングダイボンドフィルムXにおける粘着剤層12が放射線硬化型粘着剤層である場合には、ダイシングダイボンドフィルムXの製造過程での上述の放射線照射に代えて、半導体ウエハ30Aのダイボンドフィルム20への貼り合わせの後に、基材11の側から粘着剤層12に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングダイボンドフィルムXにおいて粘着剤層12の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(図1に示す照射領域R)は、例えば、粘着剤層12におけるダイボンドフィルム20貼り合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
次に、ダイシングダイボンドフィルムXにおけるダイシングテープ10の粘着剤層12上にリングフレーム41が貼り付けられた後、図4(a)に示すように、半導体ウエハ30Aを伴う当該ダイシングダイボンドフィルムXがエキスパンド装置の保持具42に固定される。
次に、相対的に低温の条件下での第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)が、図4(b)に示すように行われ、半導体ウエハ30Aが複数の半導体チップ31へと個片化されるとともに、ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20が小片のダイボンドフィルム21に割断されて、ダイボンドフィルム付き半導体チップ31が得られる。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングダイボンドフィルムXの図中下側においてダイシングテープ10に当接して上昇され、半導体ウエハ30Aの貼り合わされたダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10が、半導体ウエハ30Aの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このエキスパンドは、ダイシングテープ10において15~32MPa、好ましくは20~32MPaの範囲内の引張応力が生ずる条件で行われる。クールエキスパンド工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。クールエキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、好ましくは0.1~100mm/秒である。また、クールエキスパンド工程におけるエキスパンド量は、好ましくは3~16mmである。
本工程では、半導体ウエハ30Aにおいて薄肉で割れやすい部位に割断が生じて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着しているダイボンドフィルム20において各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝に対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生ずる引張応力が作用する。その結果、ダイボンドフィルム20において半導体チップ31間の分割溝に対向する箇所が割断されることとなる。本工程の後、図4(c)に示すように、突き上げ部材43が下降されて、ダイシングテープ10におけるエキスパンド状態が解除される。
次に、相対的に高温の条件下での第2エキスパンド工程が、図5(a)に示すように行われ、ダイボンドフィルム付き半導体チップ31間の距離(離間距離)が広げられる。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が再び上昇され、ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10がエキスパンドされる。第2エキスパンド工程における温度条件は、例えば10℃以上であり、好ましくは15~30℃である。第2エキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、例えば0.1~10mm/秒であり、好ましくは0.3~1mm/秒である。また、第2エキスパンド工程におけるエキスパンド量は、例えば3~16mmである。後記のピックアップ工程にてダイシングテープ10からダイボンドフィルム付き半導体チップ31を適切にピックアップ可能な程度に、本工程ではダイボンドフィルム付き半導体チップ31の離間距離が広げられる。本工程の後、図5(b)に示すように、突き上げ部材43が下降されて、ダイシングテープ10におけるエキスパンド状態が解除される。エキスパンド状態解除後にダイシングテープ10上のダイボンドフィルム付き半導体チップ31の離間距離が狭まることを抑制するうえでは、エキスパンド状態を解除するより前に、ダイシングテープ10における半導体チップ31保持領域より外側の部分を加熱して収縮させるのが好ましい。
次に、ダイボンドフィルム付き半導体チップ31を伴うダイシングテープ10における半導体チップ31側を水などの洗浄液を使用して洗浄するクリーニング工程を必要に応じて経た後、図6に示すように、ダイボンドフィルム付き半導体チップ31をダイシングテープ10からピックアップする(ピックアップ工程)。例えば、ピックアップ対象のダイボンドフィルム付き半導体チップ31について、ダイシングテープ10の図中下側においてピックアップ機構のピン部材44を上昇させてダイシングテープ10を介して突き上げた後、吸着治具45によって吸着保持する。ピックアップ工程において、ピン部材44の突き上げ速度は例えば1~100mm/秒であり、ピン部材44の突き上げ量は例えば50~3000μmである。
次に、図7(a)に示すように、ピックアップされたダイボンドフィルム付き半導体チップ31が、所定の被着体51に対してダイボンドフィルム21を介して仮固着される。被着体51としては、例えば、リードフレーム、TAB(Tape Automated Bonding)フィルム、配線基板、および、別途作製した半導体チップが挙げられる。ダイボンドフィルム21の仮固着時における25℃での剪断接着力は、被着体51に対して好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.2~10MPaである。ダイボンドフィルム21の当該剪断接着力が0.2MPa以上であるという構成は、後記のワイヤーボンディング工程において、超音波振動や加熱によってダイボンドフィルム21と半導体チップ31または被着体51との接着面でずり変形が生じるのを抑制して適切にワイヤーボンディングを行うのに好適である。また、ダイボンドフィルム21の仮固着時における175℃での剪断接着力は、被着体51に対して好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.01~5MPaである。
次に、図7(b)に示すように、半導体チップ31の電極パッド(図示略)と被着体51の有する端子部(図示略)とをボンディングワイヤー52を介して電気的に接続する(ワイヤーボンディング工程)。半導体チップ31の電極パッドや被着体51の端子部とボンディングワイヤー52との結線は、加熱を伴う超音波溶接によって実現され、ダイボンドフィルム21を熱硬化させないように行われる。ボンディングワイヤー52としては、例えば金線、アルミニウム線、または銅線を用いることができる。ワイヤーボンディングにおけるワイヤー加熱温度は、例えば80~250℃であり、好ましくは80~220℃である。また、その加熱時間は数秒~数分間である。
次に、図7(c)に示すように、被着体51上の半導体チップ31やボンディングワイヤー52を保護するための封止樹脂53によって半導体チップ31を封止する(封止工程)。本工程では、ダイボンドフィルム21の熱硬化が進む。本工程では、例えば、金型を使用して行うトランスファーモールド技術によって封止樹脂53が形成される。封止樹脂53の構成材料としては、例えばエポキシ系樹脂を用いることができる。本工程において、封止樹脂53を形成するための加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば60秒~数分間である。本工程(封止工程)で封止樹脂53の硬化が充分には進行しない場合には、本工程の後に封止樹脂53を完全に硬化させるための後硬化工程が行われる。封止工程においてダイボンドフィルム21が完全に熱硬化しない場合であっても、後硬化工程において封止樹脂53と共にダイボンドフィルム21の完全な熱硬化が可能となる。後硬化工程において、加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば0.5~8時間である。
以上のようにして、半導体装置を製造することができる。
本実施形態では、上述のように、ダイボンドフィルム付き半導体チップ31が被着体51に仮固着された後、ダイボンドフィルム21が完全な熱硬化に至ることなくワイヤーボンディング工程が行われる。このような構成に代えて、本発明では、ダイボンドフィルム付き半導体チップ31が被着体51に仮固着された後、ダイボンドフィルム21が熱硬化されてからワイヤーボンディング工程が行われてもよい。
本発明に係る半導体装置製造方法おいては、図2(d)を参照して上述したウエハ薄化工程に代えて、図8に示すウエハ薄化工程を行ってもよい。図2(c)を参照して上述した過程を経た後、図8に示すウエハ薄化工程では、ウエハ加工用テープT2に半導体ウエハWが保持された状態で、当該ウエハが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化されて、複数の半導体チップ31を含んでウエハ加工用テープT2に保持された半導体ウエハ分割体30Bが形成される。本工程では、分割溝30aそれ自体が第2面Wb側に露出するまでウエハを研削する手法(第1の手法)を採用してもよいし、第2面Wb側から分割溝30aに至るより前までウエハを研削し、その後、回転砥石からウエハへの押圧力の作用により分割溝30aと第2面Wbとの間にクラックを生じさせて半導体ウエハ分割体30Bを形成する手法(第2の手法)を採用してもよい。採用される手法に応じて、図2(a)および図2(b)を参照して上述したように形成される分割溝30aの、第1面Waからの深さは、適宜に決定される。図8では、第1の手法を経た分割溝30a、または、第2の手法を経た分割溝30aおよびこれに連なるクラックについて、模式的に太線で表す。本発明では、このようにして作製される半導体ウエハ分割体30Bが半導体ウエハ30Aの代わりにダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされたうえで、図3から図7を参照して上述した各工程が行われてもよい。
図9(a)および図9(b)は、半導体ウエハ分割体30BがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされた後に行われる第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を表す。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングダイボンドフィルムXの図中下側においてダイシングテープ10に当接して上昇され、半導体ウエハ分割体30Bの貼り合わされたダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10が、半導体ウエハ分割体30Bの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このエキスパンドは、ダイシングテープ10において15~32MPa、好ましくは20~32MPaの範囲内の引張応力が生ずる条件で行われる。本工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。本工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、好ましくは1~500mm/秒である。また、本工程におけるエキスパンド量は、好ましくは1~10mmである。このようなクールエキスパンド工程により、ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20が小片のダイボンドフィルム21に割断されてダイボンドフィルム付き半導体チップ31が得られる。具体的に、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着しているダイボンドフィルム20において、半導体ウエハ分割体30Bの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝30aに対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生ずる引張応力が作用する。その結果、ダイボンドフィルム20において半導体チップ31間の分割溝30aに対向する箇所が割断されることとなる。
本発明に係る半導体装置製造方法おいては、半導体ウエハ30Aまたは半導体ウエハ分割体30BがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされるという上述の構成に代えて、以下のようにして作製される半導体ウエハ30CがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされてもよい。
図10(a)および図10(b)に示すように、まず、半導体ウエハWに改質領域30bが形成される。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。本工程では、粘着面T3aを有するウエハ加工用テープT3が半導体ウエハWの第1面Wa側に貼り合わされた後、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、ウエハ内部に集光点の合わせられたレーザー光がウエハ加工用テープT3とは反対の側から半導体ウエハWに対してその分割予定ラインに沿って照射され、多光子吸収によるアブレーションに因って半導体ウエハW内に改質領域30bが形成される。改質領域30bは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための脆弱化領域である。半導体ウエハにおいてレーザー光照射によって分割予定ライン上に改質領域30bを形成する方法については、例えば特開2002-192370号公報に詳述されているところ、本実施形態におけるレーザー光照射条件は、例えば以下の条件の範囲内で適宜に調整される。
<レーザー光照射条件>
(A)レーザー光
レーザー光源 半導体レーザー励起Nd:YAGレーザー
波長 1064nm
レーザー光スポット断面積 3.14×10-8cm2
発振形態 Qスイッチパルス
繰り返し周波数 100kHz以下
パルス幅 1μs以下
出力 1mJ以下
レーザー光品質 TEM00
偏光特性 直線偏光
(B)集光用レンズ
倍率 100倍以下
NA 0.55
レーザー光波長に対する透過率 100%以下
(C)半導体基板が載置される載置台の移動速度 280mm/秒以下
次に、図10(c)に示すように、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化され、これによって複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Cが形成される(ウエハ薄化工程)。本発明では、以上のようにして作製される半導体ウエハ30Cが半導体ウエハ30Aの代わりにダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされたうえで、図3から図7を参照して上述した各工程が行われてもよい。
図11(a)および図11(b)は、半導体ウエハ30CがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされた後に行われる第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を表す。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングダイボンドフィルムXの図中下側においてダイシングテープ10に当接して上昇され、半導体ウエハ30Cの貼り合わされたダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10が、半導体ウエハ30Cの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このエキスパンドは、ダイシングテープ10において15~32MPa、好ましくは20~32MPaの範囲内の引張応力が生ずる条件で行われる。本工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。本工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、好ましくは0.1~100mm/秒である。また、本工程におけるエキスパンド量は、好ましくは1~10mmである。このようなクールエキスパンド工程により、ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20が小片のダイボンドフィルム21に割断されてダイボンドフィルム付き半導体チップ31が得られる。具体的に、本工程では、半導体ウエハ30Cにおいて脆弱な改質領域30bにクラックが形成されて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着しているダイボンドフィルム20において、半導体ウエハ30Cの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、ウエハのクラック形成箇所に対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生ずる引張応力が作用する。その結果、ダイボンドフィルム20において半導体チップ31間のクラック形成箇所に対向する箇所が割断されることとなる。
また、本発明において、ダイシングダイボンドフィルムXは、上述のようにダイボンドフィルム付き半導体チップを得るうえで使用することができるところ、複数の半導体チップを積層して3次元実装をする場合におけるダイボンドフィルム付き半導体チップを得るうえでも使用することができる。そのような3次元実装における半導体チップ31間には、ダイボンドフィルム21と共にスペーサが介在していてもよいし、スペーサが介在していなくてもよい。
ダイボンドフィルム付き半導体チップを得るうえでダイシングダイボンドフィルムを使用して行うエキスパンド工程において、ダイシングダイボンドフィルムにてエキスパンドされるダイシングテープに生ずる引張応力が15MPa以上であって32MPa以下であることは、エキスパンド中のダイシングテープからダイボンドフィルムに対して充分な割断力としての引張応力を作用させて当該ダイボンドフィルムを割断するのに好適であるとともに、エキスパンド後のダイシングテープから割断後のダイボンドフィルムに作用する残留応力が過大となるのを回避して、当該フィルムないし当該フィルム付き半導体チップのダイシングテープからの浮きや剥離を抑制するのに好適であることを、本発明者は見出した。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。そして、本発明に係る半導体装置製造方法の上述の第1エキスパンド工程すなわちクールエキスパンド工程では、半導体ウエハ分割体30Bまたは半導体ウエハ30Aをダイボンドフィルム20側に伴うダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10において15~32MPaの範囲内の引張応力が生ずる条件で、当該ダイシングテープ10はエキスパンドされる。このようなエキスパンド工程を含む本半導体装置製造方法は、ダイシングテープ10上のダイボンドフィルム20について良好に割断させるとともに、割断後の各ダイボンドフィルム付き半導体チップ31についてダイシングテープ10からの浮きや剥離を抑制するのに適する。
上述のクールエキスパンド工程(第1エキスパンド工程)においては、温度条件が低温であるほど、ダイシングテープ10に生ずる引張応力は大きい傾向にあるところ、クールエキスパンド工程における温度条件は、上述のように、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。このような構成によると、クールエキスパンド工程でエキスパンドされるダイシングテープ10について相対的に低温の条件下で生ずる相対的に大きな引張応力を割断用のクールエキスパンド工程(第1エキスパンド工程)でのダイボンドフィルム20に対する割断力として利用したうえで、割断後のダイボンドフィルム付き半導体チップ31の離間距離を延ばすための第2エキスパンド工程を相対的に高温(例えば常温)の条件下でダイシングテープ発生引張応力を抑制しつつ行うことが可能である。
上述の半導体装置製造方法に使用されるダイシングダイボンドフィルムXにおけるダイシングテープ10は、ダイボンドフィルム20に割断を生じさせるための充分な引張り長さを確保するのに適した歪み値5%以上であって、エキスパンド工程での引張り長さが過大となるのを回避してエキスパンド工程を効率よく実施するのに適した歪み値30%以下の範囲の、少なくとも一部の歪み値で、上述のように、15~32MPaの範囲内の引張応力を示し得る。このようなダイシングテープ10は、その粘着剤層12側にダイボンドフィルム20が密着された形態において、15~32MPaの範囲内の引張応力が生ずる条件でエキスパンドするためのエキスパンド工程(上述のクールエキスパンド工程)に使用するのに適し、従って、当該エキスパンド工程にてダイシングテープ10上のダイボンドフィルム20について良好に割断させるとともに、割断後の各ダイボンドフィルム付き半導体チップ31についてダイシングテープ10からの浮きや剥離を抑制するのに適する。
ダイシングテープ10は、上述のように、上記引張試験において、歪み値が5%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上、より好ましくは8%以上であり、且つ、30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下、より好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下の範囲で、15~32MPaの範囲内の引張応力を示し得る。このようなダイシングテープ10は、その粘着剤層12側にダイボンドフィルム20が密着された形態でエキスパンド工程に使用される場合に、充分な引張り長さを確保しつつも引張り長さが過大となるのを回避したうえで、15~32MPaの範囲内の引張応力を生じるのに適する。
ダイシングテープ10が上記の引張試験で示しうる引張応力は、上述のように、好ましくは20~32MPaMPaの範囲内にある。このようなダイシングテープ10は、その粘着剤層12側にダイボンドフィルム20が密着された形態において、20~32MPaの範囲内の引張応力が生ずる条件でエキスパンドするためのエキスパンド工程(上述のクールエキスパンド工程)に使用するのに適する。当該エキスパンド工程においては、ダイシングダイボンドフィルムXにてエキスパンドされるダイシングテープ10に生ずる引張応力が15MPaを超えて大きいほど、エキスパンド中のダイシングテープ10からダイボンドフィルム20に対して割断力として作用する引張応力は大きい傾向にある。
ダイシングテープ10に関する上記引張試験においては、温度条件が低温であるほど、ダイシングテープ10ないしその試験片の示す引張応力は大きい傾向にあるところ、当該引張試験での温度条件は、好ましくは0℃以下、より好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。このような構成によると、エキスパンドされるダイシングテープ10について相対的に低温の条件下で生ずる相対的に大きな引張応力を割断用のクールエキスパンド(第1エキスパンド工程)でのダイボンドフィルム20に対する割断力として利用したうえで、割断後のダイボンドフィルム付き半導体チップ31の離間距離を延ばすための再度のエキスパンド工程(第2エキスパンド工程)を相対的に高温(例えば常温)の条件下でダイシングテープ発生引張応力を抑制しつつ行うことが可能である。
ダイシングテープ10に関する上記の引張試験での引張速度条件は、上述のように、好ましくは10~1000mm/分、より好ましくは100~1000mm/分の範囲内にある。ダイシングテープ10がその粘着剤層12側にダイボンドフィルム20の密着された形態でエキスパンド工程に使用される場合の工程速度ひいては半導体装置の生産性の観点からは、ダイシングテープ10において所定の歪み値で15~32MPaの範囲内の引張応力を生じさせる上記引張試験の引張速度条件は、好ましくは10mm/分以上、より好ましくは100mm/分以上である。ダイシングテープ10がその粘着剤層12側にダイボンドフィルム20の密着された形態でエキスパンド工程に使用される場合に破断するのを回避する観点からは、ダイシングテープ10において所定の歪み値で15~32MPaの範囲内の引張応力を生じさせる上記引張試験の引張速度条件は、好ましくは1000mm/分以下、より好ましくは300mm/分以下である。
〔実施例1〕
〈ダイシングテープの作製〉
冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル100質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル19質量部と、重合開始剤たる過酸化ベンゾイル0.4質量部と、重合溶媒たるトルエン80質量部とを含む混合物を、60℃で10時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液を得た。次に、このポリマー溶液に1.2質量部の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えた後、50℃で60時間、当該溶液を空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。これにより、アクリル系ポリマーP2を含有するポリマー溶液を得た。次に、このポリマー溶液に、100質量部のアクリル系ポリマーP2に対して1.3質量部のポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン株式会社製)と、3質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)とを加えて、粘着剤溶液(粘着剤溶液S1)を調製した。次に、シリコーン処理の施された面を有するPET剥離ライナーのシリコーン処理面上に粘着剤溶液S1を塗布して塗膜を形成し、この塗膜について120℃で2分間加熱して脱溶媒し、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次に、この粘着剤層の露出面に、ポリ塩化ビニル基材(商品名「V9K」,厚さ100μm,アキレス株式会社製)を貼り合わせ、その後に23℃で72時間の保存を行い、ダイシングテープを得た。以上のようにして、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有する実施例1のダイシングテープを作製した。
〔実施例2〕
ポリプロピレンフィルム/ポリエチレンフィルム/ポリプロピレンフィルムの3層構造を有するポリオレフィン系基材(商品名「DDZ」,厚さ90μm,グンゼ株式会社製)をポリ塩化ビニル基材(商品名「V9K」,アキレス株式会社製)の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のダイシングテープを作製した。
〔比較例1〕
ポリ塩化ビニル基材(商品名「V9K」,アキレス株式会社製)に代えてエチレン-酢酸ビニル共重合体基材(商品名「NED」,厚さ125μm,グンゼ株式会社製)用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のダイシングテープを作製した。
〔比較例2〕
ポリ塩化ビニル基材(商品名「V9K」,アキレス株式会社製)に代えてエチレン-酢酸ビニル共重合体基材(商品名「RB0104」,厚さ130μm,倉敷紡績株式会社製)用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のダイシングテープを作製した。
〔実施例3〕
<ダイボンドフィルムの作製>
アクリル樹脂(商品名「SG-708-6」,ガラス転移温度(Tg)4℃,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂(商品名「JER828」,23℃で液状,三菱化学株式会社製)11質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH-7851ss」,23℃で固形,明和化成株式会社製)5質量部と、球状シリカ(商品名「SO-25R」,株式会社アドマテックス製)110質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度20質量%の接着剤組成物溶液S2を得た。次に、シリコーン処理の施された面を有するPET剥離ライナーのシリコーン処理面上に接着剤組成物溶液S2を塗布して塗膜を形成し、この塗膜について130℃で2分間加熱して脱溶媒し、接着剤層たるダイボンドフィルム(厚さ10μm)を作製した。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
実施例1のダイシングテープから、PET剥離ライナーを剥離した後、露出した粘着剤層に上述のダイボンドフィルムを貼り合わせた。貼り合わせにおいては、ダイシングテープの中心とダイボンドフィルムの中心とを位置合わせした。また、貼り合わせには、ハンドローラー使用した。次に、ダイシングテープにおける粘着剤層に対して基材の側から300mJ/cm2の紫外線を照射した。以上のようにして、ダイシングテープとダイボンドフィルムとを含む積層構造を有する実施例3のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
〔実施例4〕
実施例1のダイシングテープに代えて実施例2のダイシングテープを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例4のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
〔比較例3,4〕
実施例1のダイシングテープに代えて比較例1または比較例2のダイシングテープを用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較例3,4の各ダイシングダイボンドフィルムを作製した。
〔引張応力測定〕
実施例1,2および比較例1,2の各ダイシングテープについて、以下のようにして引張応力を測定した。まず、ダイシングテープの粘着剤層に対して基材の側から300mJ/cm2の紫外線を照射して当該粘着剤層を硬化させた後、当該ダイシングテープからダイシングテープ試験片(幅20mm×長さ140mm)を切り出した。実施例1,2および比較例1,2のダイシングテープごとに、必要数のダイシングテープ試験片を用意した。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAGS-50NX」,株式会社島津製作所製)を使用して、ダイシングテープ試験片について引張試験を行い、所定の引張速度で伸張されるダイシングテープ試験片に生ずる引張応力を測定した。本測定によって応力-歪み曲線を得た。引張試験において、初期チャック間距離は100mmであり、温度条件は-15℃であり、引張速度は10mm/分、100mm/分、または1000mm/分である。各ダイシングテープ試験片について得られた応力-歪み曲線を図12に表す。図12のグラフにおいて、横軸はダイシングテープ試験片の歪み(%)を表し、縦軸は当該ダイシングテープ試験片に生ずる引張応力(MPa)を表す。図12のグラフにおいて、実線E1は、実施例1のダイシングテープにおける引張速度10mm/分での応力-歪み曲線を表し、一点鎖線E1'は、実施例1のダイシングテープにおける引張速度100mm/分での応力-歪み曲線を表し、破線E1”は、実施例1のダイシングテープにおける引張速度1000mm/分での応力-歪み曲線を表し、実線E2は、実施例2のダイシングテープにおける引張速度10mm/分での応力-歪み曲線を表し、一点鎖線E2'は、実施例2のダイシングテープにおける引張速度100mm/分での応力-歪み曲線を表し、破線E2”は、実施例2のダイシングテープにおける引張速度1000mm/分での応力-歪み曲線を表し、実線C1は、比較例1のダイシングテープにおける引張速度10mm/分での応力-歪み曲線を表し、一点鎖線C1'は、比較例1のダイシングテープにおける引張速度100mm/分での応力-歪み曲線を表し、破線C1”は、比較例1のダイシングテープにおける引張速度1000mm/分での応力-歪み曲線を表し、実線C2は、比較例2のダイシングテープにおける引張速度10mm/分での応力-歪み曲線を表し、一点鎖線C2'は、比較例2のダイシングテープにおける引張速度100mm/分での応力-歪み曲線を表し、破線C2”は、比較例2のダイシングテープにおける引張速度1000mm/分での応力-歪み曲線を表す。
〔弾性率測定〕
実施例1,2および比較例1,2の各ダイシングテープについて、以下のようにして引張弾性率を測定した。まず、ダイシングテープの粘着剤層に対して基材の側から300mJ/cm2の紫外線を照射して当該粘着剤層を硬化させた後、当該ダイシングテープからダイシングテープ試験片(幅20mm×長さ140mm)を切り出した。実施例1,2および比較例1,2のダイシングテープごとに、必要数のダイシングテープ試験片を用意した。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAGS-50NX」,株式会社島津製作所製)を使用して、ダイシングテープ試験片について引張試験を行い、得られる応力-歪み曲線における初期の傾き(具体的には、引張試験開始後の歪み値1%までの測定データに基づき決定される傾き)から引張弾性率を算出した。引張試験において、初期チャック間距離は100mmであり、温度条件は-15℃であり、引張速度は10mm/分、100mm/分、または1000mm/分である。このような測定によって得られた引張弾性率を表1に掲げる。
〔エキスパンド工程の評価〕
実施例3,4および比較例3,4の各ダイシングダイボンドフィルムを使用して、以下のような貼り合わせ工程とその後のクールエキスパンド工程を行った。
貼り合わせ工程では、ウエハ加工用テープ(商品名「ELP UB-3083D」,日東電工株式会社製)に保持された半導体ウエハ分割体をダイシングダイボンドフィルムのダイボンドフィルムに対して貼り合わせ、その後、半導体ウエハ分割体からウエハ加工用テープを剥離した。半導体ウエハ分割体は、次のようにして形成して作製したものである。まず、ウエハ加工用テープ(商品名「V12S-R2」,日東電工株式会社製)にリングフレームと共に保持された状態にあるSiミラーウエハ(直径300mm,厚さ780μm,東京化工株式会社製)について、その一方の面の側から、ダイシング装置(商品名「DFD6361」,株式会社ディスコ製)を使用してその回転ブレードによって個片化用の分割溝(幅20~25μm,深さ50μm)を形成した。次に、分割溝形成面にウエハ加工用テープ(商品名「ELP UB-3083D」,日東電工株式会社製)を貼り合わせた後、上記のウエハ加工用テープ(商品名「V12S-R2」)をSiミラーウエハから剥離した。この後、Siミラーウエハの他方の面(分割溝の形成されていない面)の側からの研削によって当該ウエハを厚さ20μmに至るまで薄化した。以上のようにして、半導体ウエハ分割体(ウエハ加工用テープに保持された状態にある)を形成した。この半導体ウエハ分割体には、複数の半導体チップ(6mm×12mm)が含まれている。
クールエキスパンド工程は、ダイセパレート装置(商品名「ダイセパレータDDS2300」,ディスコ社製)を使用して、そのクールエキスパンドユニットにて行った。具体的には、半導体ウエハ分割体を伴う上述のダイシングダイボンドフィルムにおけるダイシングテープの粘着剤層上にリングフレームを貼り付けた後、当該ダイシングダイボンドフィルムを装置内にセットし、同装置のクールエキスパンドユニットにて、半導体ウエハ分割体を伴うダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープを-15℃の温度条件下で所定のエキスパンド速度および所定のエキスパンド量の条件にてエキスパンドした。実施例3,4および比較例3,4の各ダイシングダイボンドフィルムを使用して行ったクールエキスパンド工程は、以下のとおりである。
上記の半導体ウエハ分割体をダイボンドフィルム上に伴う実施例3のダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンド速度0.5mm/秒およびエキスパンド量3mmの条件でエキスパンドしたところ、半導体ウエハ分割体の分割溝に沿うダイボンドフィルム割断予定箇所は全域にわたって割断し、且つ、割断後のダイボンドフィルム付き半導体チップにおいてダイシングテープの粘着剤層からの浮きは生じなかった。本クールエキスパンド工程においてエキスパンド速度0.5mm/秒、エキスパンド量3mm、および-15℃の条件でエキスパンドされるダイシングテープ(実施例1のダイシングテープ)に生ずる引張応力は、実施例1のダイシングテープについて-15℃の温度条件での上記引張試験を引張速度50mm/分の条件で行った場合の歪み値12%に至った状態のダイシングテープに生ずる引張応力に相当する。
上記の半導体ウエハ分割体をダイボンドフィルム上に伴う実施例3のダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンド速度1mm/秒およびエキスパンド量3mmの条件でエキスパンドしたところ、半導体ウエハ分割体の分割溝に沿うダイボンドフィルム割断予定箇所は全域にわたって割断し、且つ、割断後のダイボンドフィルムにおいてダイシングテープの粘着剤層からの浮きが生じた面積は20%程度であった。本クールエキスパンド工程においてエキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量3mm、および-15℃の条件でエキスパンドされるダイシングテープ(実施例1のダイシングテープ)に生ずる引張応力は、実施例1のダイシングテープについて-15℃の温度条件で行われる上記引張試験において引張速度100mm/分で歪み値12%に至った状態のダイシングテープに生ずる引張応力に相当する。
上記の半導体ウエハ分割体をダイボンドフィルム上に伴う実施例4のダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンド速度1mm/秒およびエキスパンド量4mmの条件でエキスパンドしたところ、半導体ウエハ分割体の分割溝に沿うダイボンドフィルム割断予定箇所は全域にわたって割断し、且つ、割断後のダイボンドフィルムにおいてダイシングテープの粘着剤層からの浮きは生じなかった。本クールエキスパンド工程においてエキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量4mm、および-15℃の条件でエキスパンドされるダイシングテープ(実施例2のダイシングテープ)に生ずる引張応力は、実施例2のダイシングテープについて-15℃の温度条件で行われる上記引張試験において引張速度100mm/分で歪み値14%に至った状態のダイシングテープに生ずる引張応力に相当する。
上記の半導体ウエハ分割体をダイボンドフィルム上に伴う実施例4のダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンド速度1mm/秒およびエキスパンド量8mmの条件でエキスパンドしたところ、半導体ウエハ分割体の分割溝に沿うダイボンドフィルム割断予定箇所は全域にわたって割断し、且つ、割断後のダイボンドフィルムにおいてダイシングテープの粘着剤層からの浮きは生じなかった。本クールエキスパンド工程においてエキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量8mm、および-15℃の条件でエキスパンドされるダイシングテープ(実施例2のダイシングテープ)に生ずる引張応力は、実施例2のダイシングテープについて-15℃の温度条件で行われる上記引張試験において引張速度100mm/分で歪み値28%に至った状態のダイシングテープに生ずる引張応力に相当する。
上記の半導体ウエハ分割体をダイボンドフィルム上に伴う比較例3のダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンド速度1mm/秒およびエキスパンド量3mmの条件でエキスパンドしたところ、半導体ウエハ分割体の分割溝に沿うダイボンドフィルム割断予定箇所の80%程度は割断しなかった。本クールエキスパンド工程においてエキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量3mm、および-15℃の条件でエキスパンドされるダイシングテープ(比較例1のダイシングテープ)に生ずる引張応力は、比較例1のダイシングテープについて-15℃の温度条件で行われる上記引張試験において引張速度100mm/分で歪み値12%に至った状態のダイシングテープに生ずる引張応力に相当する。
上記の半導体ウエハ分割体をダイボンドフィルム上に伴う比較例4のダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンド速度1mm/秒およびエキスパンド量4mmの条件でエキスパンドしたところ、半導体ウエハ分割体の分割溝に沿うダイボンドフィルム割断予定箇所の20%程度は割断しなかった。本クールエキスパンド工程においてエキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量4mm、および-15℃の条件でエキスパンドされるダイシングテープ(比較例2のダイシングテープ)に生ずる引張応力は、比較例2のダイシングテープについて-15℃の温度条件で行われる上記引張試験において引張速度100mm/分で歪み値14%に至った状態のダイシングテープに生ずる引張応力に相当する。