以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。
(第1実施形態)
先ず、図1に基づき、本実施形態の燃料噴射制御装置の概略構成を説明する。本実施形態の燃料噴射制御装置は、エンジンECU(Electronic Control Unit)として構成されている。以下においては、エンジンECUとしての機能のうち、インジェクタの駆動を制御する機能について説明する。
図1に示す燃料噴射制御装置10は、車両エンジン(内燃機関)の各気筒に設けられたインジェクタ100の駆動(開閉)を制御する。本実施形態では、4気筒直噴型ガソリンエンジンの各気筒に設けられたインジェクタ100の駆動を制御する。インジェクタ100は、気筒#1のインジェクタ101と、気筒#2のインジェクタ102と、気筒#3のインジェクタ103と、気筒#4のインジェクタ104を有している。
インジェクタ100は、ソレノイド110(コイル)を有している。インジェクタ100が燃料噴射弁に相当し、ソレノイド110が電磁負荷に相当する。インジェクタ100は、ソレノイド110の通電時には該ソレノイド110が生じる電磁力によって開放され、燃料を噴射するようになっている。また、ソレノイド110への非通電時には、インジェクタ100に設けられた図示しないばねの付勢力により閉鎖されるようになっている。インジェクタ101はソレノイド111を有し、インジェクタ102はソレノイド112を有している。インジェクタ103はソレノイド113を有し、インジェクタ104はソレノイド114を有している。
ソレノイド110の上流側は燃料噴射制御装置10の端子P1に接続され、下流側は端子P2に接続されている。端子P1は上流端子とも称され、端子P2は下流端子とも称される。本実施形態では、端子P1が端子P11,P12を有している。端子P11は、ソレノイド111,114の上流側に接続され、端子P12は、ソレノイド112,113の上流側に接続されている。端子P1については、ソレノイド111~114で個別に設けることもできる。一方、端子P2は、端子P21,P22,P23,P24を有している。端子P21は、ソレノイド111の下流側に接続され、端子P22は、ソレノイド112の下流側に接続されている。端子P23は、ソレノイド113の下流側に接続され、端子P24は、ソレノイド114の下流側に接続されている。
燃料噴射制御装置10は、昇圧回路20と、駆動回路30と、マイコン40と、制御IC50を備えている。昇圧回路20が、昇圧回路部に相当する。
昇圧回路20は、バッテリ電圧Vbを昇圧して昇圧電圧Vbstを生成する。バッテリ電圧Vbが、電源電圧に相当する。昇圧回路20は、すべてのインジェクタ100(ソレノイド110)に対して共通使用される。昇圧回路20は、コンデンサC1と、充電回路21と、抵抗R1と、オンオフ検出回路22と、放電終了検出回路23を有している。
コンデンサC1は、開弁駆動時にソレノイド110に印加するエネルギを蓄える。コンデンサC1は、昇圧電圧Vbstをソレノイド110に供給する。コンデンサC1は、昇圧電源、チャージコンデンサとも称される。コンデンサC1としては、たとえば電解コンデンサを採用することができる。
充電回路21は、バッテリ電圧Vbを昇圧してコンデンサC1を充電する回路である。充電回路21は、コイルL1と、昇圧スイッチSW1と、ダイオードD1を有している。燃料噴射制御装置10の端子P3には、バッテリ電圧Vbが供給される。コイルL1の一端は端子P3に接続されており、他端には昇圧スイッチSW1が接続されている。本実施形態では、昇圧スイッチSW1としてnチャネル型のMOSFETを採用している。昇圧スイッチSW1のドレインがコイルL1に接続され、ソースが抵抗R1を介してグランドに接続されている。昇圧スイッチSW1のオンオフは、制御IC50から出力される駆動信号によって制御される。
コイルL1と昇圧スイッチSW1との接続点には、逆流防止用のダイオードD1のアノードが接続されている。ダイオードD1とグランドとの間に、コンデンサC1が配置されている。コンデンサC1の正極(陽極)が、ダイオードD1のカソードに接続されている。
抵抗R1は、昇圧スイッチSW1のオンオフにより流れる充電電流を検出するための抵抗である。抵抗R1に流れる充電電流I1は、制御IC50により検出される。抵抗R1と昇圧スイッチSW1のソースとの接続点に、コンデンサC1の負極(陰極)が接続されている。
オンオフ検出回路22は、昇圧スイッチSW1のオンオフを検出し、検出結果をマイコン40に出力する。オンオフ検出回路22は、昇圧スイッチSW1のゲートに入力される駆動信号を、マイコン40に入力可能な電圧に変換して出力する。オンオフ検出回路22は、コンパレータCMP1と、抵抗R21,R22を有している。
抵抗R21,R22は、バッテリ電圧Vbよりも低い電圧(たとえば5V)を供給する内部電源とグランドとの間で直列接続されている。コンパレータCMP1の反転入力端子には、昇圧スイッチSW1のゲートが接続され、非反転入力端子には、抵抗R21,R22の接続点が接続されている。コンパレータCMP1は、昇圧スイッチSW1のゲートに入力される駆動信号と抵抗R21,R22により分圧されてなる参照電圧とを比較し、比較結果をマイコン40に出力する。駆動信号がオン(Hレベル)の場合にコンパレータCMP1は同じくHレベルの信号を出力し、駆動信号がオフ(Lレベル)の場合にコンパレータCMP1は同じくLベルの信号を出力する。
放電終了検出回路23は、後述する駆動期間のうち、放電期間の終了タイミングを検出するための回路である。換言すれば、コンデンサC1の充電を開始するタイミングを検出するための回路である。放電終了検出回路23は、充電電流I1に相当する電圧を、マイコン40に入力可能な電圧に変換して出力する。放電終了検出回路23は、コンパレータCMP2と、抵抗R31,R32を有している。
抵抗R31,R32は、上記した内部電源とグランドとの間で直列接続されている。コンパレータCMP2の反転入力端子には、充電電流I1を検出する抵抗R1の上流側の端子、すなわち昇圧スイッチSW1のソース、コンデンサC1の負極、及び抵抗R1の接続点が接続されている。コンパレータCMP2の非反転入力端子には、抵抗R31,R32の接続点が接続されている。コンパレータCMP2は、充電電流I1に相当する電圧と抵抗R31,R32により分圧されてなる参照電圧とを比較し、比較結果をマイコン40に出力する。充電開始によって、充電電流I1が流れると、コンパレータCMP2はHレベルの信号を出力し、充電終了により、コンパレータCMP2はLレベルの信号を出力する。
駆動回路30は、インジェクタ100を駆動させるための回路である。駆動回路30は、放電スイッチSW2と、定電流スイッチSW3と、ローサイドスイッチSW4と、抵抗R4と、ダイオードD2,D3,D4を有している。
放電スイッチSW2は、コンデンサC1の正極と端子P1との間に配置され、オンすることで、コンデンサC1に蓄積されたエネルギを、端子P1を介してソレノイド110に放電させるスイッチである。すなわち、バッテリ電圧Vbよりも高い昇圧電圧Vbstをソレノイド110に供給するスイッチである。本実施形態では、放電スイッチSW2として、nチャネル型のMOSFETを採用している。放電スイッチSW2のドレインはダイオードD1とコンデンサC1との接続点、すなわちコンデンサC1の正極に接続され、ソースは端子P1を介して各ソレノイド110の上流側に接続されている。
放電スイッチSW2は、気筒#1,#4のインジェクタ101,104で共通使用される放電スイッチSW21と、気筒#2,#3のインジェクタ102,103で共通使用される放電スイッチSW22を有している。放電スイッチSW21,SW22のオンオフは、制御IC50から出力される駆動信号によってそれぞれ制御される。
定電流スイッチSW3は、端子P1に対して上流側に配置され、オンすることで、端子P1を介してソレノイド110にバッテリ電圧Vbを供給するスイッチである。本実施形態では、定電流スイッチSW3として、nチャネル型のMOSFETを採用している。定電流スイッチSW3のドレインは端子P3に接続されており、ソースは、逆流防止用のダイオードD2及び端子P1を介して、各ソレノイド110の上流側に接続されている。
定電流スイッチSW3は、気筒#1,#4のインジェクタ101,104で共通使用される定電流スイッチSW31と、気筒#2,#3のインジェクタ102,103で共通使用される定電流スイッチSW32を有している。定電流スイッチSW31,SW32のオンオフは、制御IC50から出力される駆動信号よってそれぞれ制御される。
ダイオードD2のアノードは定電流スイッチSW3のソースに接続され、カソードは放電スイッチSW2のソースに接続されている。ダイオードD2と放電スイッチSW2の接続点と、グランドとの間には、還流用のダイオードD3がアノードをグランド側にして配置されている。ダイオードD2,D3は、気筒#1,#4のインジェクタ101,104で共通使用されるダイオードD21,D31と、気筒#2,#3のインジェクタ102,103で共通使用されるダイオードD22,D32を有している。
このように、駆動回路30は、インジェクタ100に対するハイサイド側の回路部として、気筒#1,#4のインジェクタ101,104で共通使用される第1のハイサイド回路部と、気筒#2,#3のインジェクタ102,103で共通使用される第2のハイサイド回路部を有している。第1のハイサイド回路部は、放電スイッチSW21と、定電流スイッチSW31と、ダイオードD21,D31を有している。第2のハイサイド回路部は、放電スイッチSW22と、定電流スイッチSW32と、ダイオードD22,D32を有している。第1のハイサイド回路部及び第2のハイサイド回路部は、それぞれコモン回路とも称される。なお、ソレノイド110ごとに独立して設けられたハイサイド回路部を採用することもできる。
ローサイドスイッチSW4は、ソレノイド110ごとに設けられるとともに対応するソレノイド110の下流側に配置され、オンすることで、対応するソレノイド110の下流側をグランドに接続させる。ローサイドスイッチSW4は、気筒選択スイッチとも称される。本実施形態では、ローサイドスイッチSW4として、nチャネル型のMOSFETを採用している。ローサイドスイッチSW4のソースは電流検出用の抵抗R4を介してグランドに接続されており、ドレインは端子P2を介して対応するソレノイド110の下流側に接続されている。抵抗R2は、ローサイドスイッチSW4をオンしているときに、ソレノイド110に流れる駆動電流I2を検出するための抵抗である。
ローサイドスイッチSW4は、ローサイドスイッチSW41,SW42,SW43,SW44を有し、抵抗R4は、抵抗R41,R42を有している。ローサイドスイッチSW41は、気筒#1のインジェクタ101に対応しており、ドレインが端子P21を介してソレノイド111の下流側に接続され、ソースが抵抗R41を介してグランドに接続されている。ローサイドスイッチSW42は、気筒#2のインジェクタ102に対応しており、ドレインが端子P22を介してソレノイド112の下流側に接続され、ソースが抵抗R42を介してグランドに接続されている。ローサイドスイッチSW43は、気筒#3のインジェクタ103に対応しており、ドレインが端子P23を介してソレノイド113の下流側に接続され、ソースが抵抗R42を介してグランドに接続されている。ローサイドスイッチSW44は、#4気筒のインジェクタ104に対応しており、ドレインが端子P24を介してソレノイド114の下流側に接続され、ソースが抵抗R41を介してグランドに接続されている。
このように、抵抗R41は、インジェクタ101,104で共通となっている。また、抵抗R42は、インジェクタ102,103で共通となっている。ローサイドスイッチSW41,SW42,SW43,SW44のオンオフは、制御IC50から出力される駆動信号よってそれぞれ制御される。なお、インジェクタ100ごとに個別に抵抗R4を設けてもよい。
ダイオードD4は、対応するローサイドスイッチSW4がオフされたときに、対応するソレノイド110に蓄積されたエネルギをコンデンサC1に回収させる。ダイオードD4のアノードは、端子P2を介して対応するソレノイド110の下流側に接続され、カソードは、ダイオードD1とコンデンサC1との接続点、すなわちコンデンサC1の正極に接続されている。なお、エネルギ回収手段としては、ダイオードD4に代えて、MOSFETなどのスイッチング素子を採用することもできる。
ダイオードD4は、ダイオードD41,D42,D43,D44を有している。ダイオードD41のアノードは端子P21を介してソレノイド111の下流側に接続され、カソードはコンデンサC1の正極に接続されている。ダイオードD42のアノードは端子P22を介してソレノイド112の下流側に接続され、カソードはコンデンサC1の正極に接続されている。ダイオードD43のアノードは端子P23を介してソレノイド113の下流側に接続され、カソードはコンデンサC1の正極に接続されている。ダイオードD44のアノードは端子P24を介してソレノイド114の下流側に接続され、カソードはコンデンサC1の正極に接続されている。
マイコン40は、CPU、ROM、RAM、レジスタ、及びI/Oポートなどを備えて構成されたマイクロコンピュータである。たとえば、マイコン40は、エンジンが出力すべき目標トルクを算出する。また、エンジンが要求される目標トルクを生じるために、図示しないスロットルバルブを適切な開度に制御するとともに、エンジンの燃料噴射量及び点火タイミングを制御する。
マイコン40は、エンジン回転数Ne、アクセル開度など、図示しない各種センサにて検出されるエンジンの運転情報に基づいて、各インジェクタ100に対応する噴射信号TQを生成し、制御IC50に出力する。マイコン40は、開弁を指示する駆動期間において、噴射信号TQとして電圧レベルがHレベルの信号を出力し、閉弁を指示する期間において、Lレベルの信号を出力する。駆動期間は、噴射期間とも称される。マイコン40は、気筒#1のインジェクタ101に対する噴射信号TQ#1、気筒#2のインジェクタ102に対する噴射信号TQ#2、気筒#3のインジェクタ103に対する噴射信号TQ#3、気筒#4のインジェクタ104に対する噴射信号TQ#4をそれぞれ出力する。
マイコン40は、電荷量算出部41と、時間算出部42と、目標値算出部43を有している。電荷量算出部41は、コンデンサC1を充電する際に、昇圧スイッチSW1がオンしてから次にオンするまでの充電周期単位でコンデンサC1に蓄積される電荷量Qを算出する。本実施形態では、電荷量算出部41が、オンオフ検出回路22の出力に基づいて電荷量Qを算出する。その詳細については、後述する。
時間算出部42は、昇圧電圧Vbstをソレノイド110に供給する放電期間が終了してから、次の駆動期間における放電期間の開始までの時間である充電可能時間Tnextを算出する。放電終了検出回路23の出力に基づいて、その詳細については、後述する。
目標値算出部43は、算出された電荷量Q及び充電可能時間Tnextに基づいて、充電電流の目標値である上限目標値IHn及び下限目標値ILnを算出する。その詳細については、後述する。
制御IC50は、ハイサイド制御部51と、ローサイド制御部52と、昇圧制御部53を有している。ハイサイド制御部51及びローサイド制御部52は、インジェクタ100の駆動、すなわち燃料噴射を制御する噴射制御部を構成している。噴射制御部は、駆動電流I2に相関する抵抗R4の両端電圧を検出する図示しない電流検出部も有している。
噴射制御部は、マイコン40から各気筒の噴射信号TQを取得する。また、駆動電流I2を検出する。噴射制御部は、インジェクタ100の燃料噴射を制御するために、噴射信号TQ及び駆動電流I2の検出信号に基づき、駆動回路30を構成する放電スイッチSW2、定電流スイッチSW3、及びローサイドスイッチSW4のオンオフを制御する。ハイサイド制御部51は、放電スイッチSW2のオンオフを制御するための駆動信号を生成し、放電スイッチSW2に出力する。また、定電流スイッチSW3のオンオフを制御するための駆動信号を生成し、定電流スイッチSW3に出力する。一方、ローサイド制御部52は、ローサイドスイッチSW4のオンオフを制御するための駆動信号を生成し、ローサイドスイッチSW4に出力する。
ここで、気筒#1のインジェクタ101の駆動期間(噴射期間)を例に説明する。駆動期間とは、噴射信号TQがHレベルを示す期間である。本実施形態では、気筒#1→気筒#3→気筒#4→気筒#2の順に駆動期間となる。なお、駆動期間及び駆動電流については、図4を参照されたい。
噴射信号TQ#1がLレベルからHレベルに立ち上がると、噴射制御部は先ず放電制御を実行する。放電制御は、ピーク電流制御とも称される。インジェクタ101を開弁させるために、ハイサイド制御部51が放電スイッチSW21に対する駆動信号としてHレベルの信号を出力する。また、ローサイド制御部52も、ローサイドスイッチSW41に対する駆動信号としてHレベルの信号を出力する。ハイサイド制御部51及びローサイド制御部52は、上記以外の駆動信号としてLレベルの信号を出力する。
これにより、駆動期間の初期において、放電スイッチSW21及びローサイドスイッチSW41がオンする。このように、放電スイッチSW21がオンされる放電期間では、コンデンサC1からソレノイド111に昇圧電圧Vbstが印加され、ソレノイド111に流れる駆動電流I21が急激に立ち上がってインジェクタ101が開弁する。駆動電流I21は、ソレノイド110(すなわち抵抗R4)に流れる駆動電流I2のうち、抵抗R41に流れる電流である。なお、放電期間において、対応する定電流スイッチSW31をオンさせてもよい。これにより、放電スイッチSW21などの故障によってコンデンサC1の昇圧電圧Vbstがソレノイド111に供給できなくなっても、インジェクタ101を開弁させることが可能となる。
駆動電流I21が目標値であるピーク電流値Ipeakに達すると、ハイサイド制御部51は、放電スイッチSW21をオフさせる。これにより、放電期間が終了となる。放電期間において定電流スイッチSW31をオンさせる場合、あわせて定電流スイッチSW31もオフさせる。ローサイドスイッチSW41については、継続してオンさせる。
放電期間が終了してから噴射期間が終了するまでの定電流期間において、噴射制御部は、定電流制御を実行する。駆動電流I21が、所定の下限電流値まで低下すると、ハイサイド制御部51は、定電流スイッチSW31に対する駆動信号としてHレベルの信号を出力する。これにより、定電流スイッチSW31がオンし、駆動電流I21が上昇する。駆動電流I21が所定の上限電流値まで上昇すると、ハイサイド制御部51は、定電流スイッチSW31に対する駆動信号としてLレベルの信号を出力する。これにより、定電流スイッチSW31がオフし、駆動電流I21が低下する。上限電流値は、ピーク電流値Ipeakよりも小さい値が設定されている。
このように、ハイサイド制御部51は、駆動電流I21が下限電流値以上、上限電流値以下となるように、定電流スイッチSW31のオンオフを制御する。これにより定電流期間では、駆動電流I21として、ピーク電流値Ipeakよりも小さい所定の保持電流、すなわちほぼ一定の電流が、ソレノイド111に通電される。これにより、インジェクタ101の開弁状態が保持される。噴射信号TQ#1がLレベルになると、ハイサイド制御部51は、定電流スイッチSW3に対する駆動信号としてLレベルの信号を出力し、ローサイド制御部52は、ローサイドスイッチSW41に対する駆動信号としてLレベルの信号を出力する。これにより、定電流スイッチSW31及びローサイドスイッチSW41がオフとなり、開弁処理が終了する。噴射制御部は、他の気筒#2~#4についても同様の制御を実行する。
昇圧制御部53は、抵抗R1に流れる充電電流I1と、昇圧電圧Vbst(コンデンサC1の正極側の電圧)をモニタしている。昇圧制御部53は、昇圧電圧Vbstが目標電圧(たとえば満充電電圧)まで昇圧されるように、昇圧回路20による昇圧動作、すなわち昇圧スイッチSW1のオンオフを制御する。昇圧制御部53は、充電電流I1の目標値に応じて、昇圧スイッチSW1のオンオフを制御する。本実施形態では、目標値として、上限値と下限値が設定される。昇圧制御部53は、ソレノイド110に昇圧電圧Vbstが供給されない期間において、コンデンサC1を充電する。昇圧制御部53は、放電期間が終了すると、充電を開始する。
具体的には、昇圧制御部53は、昇圧電圧Vbstが目標電圧未満の場合、充電電流I1が下限値に達すると昇圧スイッチSW1をオンさせ、充電電流I1が上限値に達すると昇圧スイッチSW1をオフさせる。これにより、コイルL1に蓄積されたエネルギが、ダイオードD1を通じてコンデンサC1に移る。この昇圧動作により、コンデンサC1が充電される。昇圧制御部53は、昇圧電圧Vbstが目標電圧になるまで、昇圧スイッチSW1を繰り返しオンオフさせる。
昇圧制御部53は、充電電流I1の目標値がセットされるレジスタ53aを有している。イグニッションスイッチがオンされると、レジスタ53aには、目標値の初期値として、予め不揮発性メモリに記憶された上限初期値IH0及び下限初期値IL0が設定される。上限初期値IH0及び下限初期値IL0は、予め設定された充電可能時間Tminに対応する値である。充電可能時間Tminは車両で起こり得る最小の充電可能時間であり、上限初期値IH0及び下限初期値IL0として、最小の充電可能時間Tminでも昇圧電圧Vbstが減衰しない値が設定されている。
また、マイコン40の目標値算出部43により上限目標値IHn及び下限目標値ILnが算出されると、レジスタ53aには、目標値として、算出された上限目標値IHn及び下限目標値ILnが設定される。なお、上限初期値IH0及び下限初期値IL0については、単に初期値IH0,IL0とも示される。
次に、図2~図4に基づき、マイコン40が実行する目標値を設定するまでの処理について説明する。マイコン40は、車両のイグニッションスイッチがオンされると、以下に示す処理を実行する。
先ずマイコン40は、昇圧制御部53のレジスタ53aに、充電電流I1の目標値として、初期値IH0,IL0を設定する(ステップS10)。
次いで、マイコン40の電荷量算出部41は、充電期間における昇圧スイッチSW1のオフ時間t1を算出する(ステップS20)。そして、電荷量算出部41は、ステップS20で算出したオフ時間t1に基づいて、充電周期単位での電荷量Qを算出する(ステップS30)。
ここで、図3を用いて、オフ時間t1及び電荷量Qについて説明する。イグニッションスイッチがオンされた後、図3に示すように時刻T1で、初回の充電(昇圧動作)が開始される。昇圧スイッチSW1がオンされると、昇圧スイッチSW1を通じて電流(図中のSW1通電電流)が流れる。また、昇圧スイッチSW1がオフされると、オン時にコイルL1に蓄積されたエネルギにより、コンデンサC1を通じて電流(図中のC1通電電流)が流れる。SW1通電電流とC1通電電流の和が、充電電流I1となる。
充電(昇圧)動作では、昇圧電圧Vbstが目標電圧値Vthに達するまで、充電電流I1の目標値に応じて昇圧スイッチSW1がオンオフされる。先ず、昇圧スイッチSW1がオンされ、これにより充電電流I1が増加する。時刻T2で上限初期値IH0に達すると、昇圧スイッチSW1がオフされる。オフにより充電電流I1が減少し、時刻T3で下限初期値IL0に達すると、再び、昇圧スイッチSW1がオンされる。昇圧スイッチSW1が繰り返しオンオフされることで、昇圧電圧Vbstが時刻T4で目標電圧値Vthに達し、充電終了となる。
オンオフ検出回路22は、図3に示すように、昇圧スイッチSW1の駆動信号に応じた信号を出力する。マイコン40の電荷量算出部41は、オンオフ検出回路22の出力に基づいて、充電期間におけるオフ時間t1を算出する。具体的には、オンオフ検出回路22の出力の立ち下がり及び立ち上がりから、充電期間において昇圧スイッチSW1がオフしてから次にオンするまでの時間、すなわち昇圧スイッチSW1がオフされている時間であるオフ時間t1を算出する。
コンデンサC1は、昇圧スイッチSW1がオフされることで、充電される。すなわち、オフ時間t1でコンデンサC1が充電される。昇圧スイッチSW1がオンしてから次にオンするまでの充電周期単位、すなわちオフ時間t1中にコンデンサC1に蓄積される電荷量Qは、下記式で示される。
(式1)Q={(IH0+IL0)/2}×t1
式1に示すように、初期値IH0,IL0の平均値にオフ時間t1を乗算することで、電荷量Qが算出される。電荷量算出部41は、式1に示す演算処理を実行することで、電荷量Qを算出する。上記したように、初期値IH0,IL0は、最小の充電可能時間Tminを満たすための値である。したがって、電荷量Qは、設定可能な最大の充電電流時に昇圧スイッチSW1の1回のオンオフで充電される電荷量である。
次いで、マイコン40の時間算出部42は、充電可能時間Tnextを算出する(ステップS40)。
ここで、図4を用いて、充電可能時間Tnextについて説明する。図4に示すTQ#1の駆動期間が、イグニッションオン後の初回の噴射期間を示し、TQ#3の駆動期間が、次の噴射期間を示している。また、駆動電流I22は、抵抗R42に流れる駆動電流I2を示している。
時間算出部42は、放電終了検出回路23の出力に基づいて、放電期間が終了してから、次の放電期間が開始するまでの充電可能時間Tnextを算出する。具体的には、放電終了検出回路23の出力の立ち上がりから、充電開始、すなわち放電終了を検出する。また、噴射信号TQから、次の駆動期間の放電開始を検出する。時間算出部42は、放電終了検出回路23の出力と噴射信号TQから、充電可能時間Tnextを算出する。
なお、図4では、時刻T10~T12までがインジェクタ101の駆動期間であり、時刻T11で放電期間から定電流期間に切り替わる。また、時刻T13~T15までがインジェクタ103の駆動期間であり、時刻T14で放電期間から定電流期間に切り替わる。時間算出部42は、放電終了検出回路23の出力に基づいてインジェクタ101の放電期間の終了を検出し、噴射信号TQ#3に基づいて次の放電期間の開始を検出して、充電可能時間Tnextを算出する。時間算出部42は、駆動期間ごと、すなわちインジェクタ100による燃料噴射ごとに、充電可能時間Tnextを算出する。
次いで、マイコン40の目標値算出部43は、ステップS30で算出した電荷量Qと、ステップS40で算出した充電可能時間Tnextに基づいて、充電電流I1の目標値を算出する(ステップS50)。本実施形態では、目標値として、上限目標値IHn及び下限目標値ILnを算出する。
ここで、上限値と下限値との差分、すなわち電流の幅は、初期値と算出値とで一定に保持される。このため、上限初期値IH0及び下限初期値IL0と、上限目標値IHn及び下限目標値ILnとは、下記式の関係を満たす。
(式2)IH0-IL0=IHn-ILn
式2の変形により、下限目標値ILnは、下記式で示される。
(式3)ILn=IHn-(IH0-IL0)
また、電荷量の総和が変化しないように充電制御されるため、下記式の関係を満たす。
(式4)Q×Tmin=[{(IHn+ILn)/2}×t1]×Tnext
式3,4を整理すると、下記式の関係を満たすこととなる。
(式5)IHn={(Tmin/Tnext)×Q}/t1}+(IH0-IL0)/2
目標値算出部43は、式5に示す演算処理を実行することで、上限目標値IHnを算出する。また、算出した上限目標値IHnと式3から、下限目標値ILnを算出する。
次いで、マイコン40は、ステップS50で算出した目標値を、新たな目標値としてレジスタ53aに設定する(ステップS60)。これにより、次の充電制御(昇圧制御)では、ステップS50で算出された上限目標値IHn及び下限目標値ILnが用いられる。図4に示すように、初回の噴射では、上限初期値IH0及び下限初期値IL0を用いて充電制御がなされ、2回目の噴射では、算出された上限目標値IHn及び下限目標値ILnを用いて充電制御がなされる。
次いで、マイコン40は、イグニッションスイッチがオフされたか否かを判定し(ステップS70)、オフされたと判定した場合、一連の処理を終了する。オフされていないと判定した場合、ステップS40に戻り、再び、上限目標値IHn及び下限目標値ILnの算出処理を実行する。
次に、本実施形態に示した燃料噴射制御装置10の効果について説明する。
本実施形態では、充電周期単位でコンデンサC1に蓄積される電荷量Qと、充電可能時間Tnextをそれぞれ算出することができる。そして、算出された電荷量Q及び充電可能時間Tnextに基づいて、充電に必要な目標値を算出することができる。すなわち、噴射の間の噴射インターバルに応じて、適切な目標値を設定することができる。
たとえばアイドル時のように、エンジン回転数が低い(たとえば800rpm)ことでエンジンの静粛性が高く、噴射インターバルが長いことで充電スピードが遅くてもよい場合、本実施形態によれば、目標値が小さくなる。これにより、充電電流I1を小さくすることができる。したがって、コイルや昇圧スイッチなどの部品点数を複数設けなくとも、昇圧回路20(具体的にはコイルL1)が充電時に生じる音である充電音を低減することができる。
特に本実施形態では、昇圧スイッチSW1のオフ時間t1を検出し、検出したオフ時間t1と初期値IH0,IH0に基づいて、電荷量Qを算出する。このように、イグニッションスイッチがオンされるごとに、オフ時間t1を検出して電荷量Qを算出するため、昇圧回路20を構成する昇圧スイッチSW1、コイルL1、抵抗R1などの部品の経年劣化、発熱、使用環境の温度などの影響を考慮することができる。これにより、電荷量Qのばらつきを抑制することができる。
また、上限初期値IH0及び下限初期値IL0の平均値、すなわち充電電流I1の平均値に、オフ時間t1を乗算することで、電荷量Qを算出するため、構成を簡素化し、マイコン40の処理負荷を軽減することができる。
また、上限目標値IHnは、上記した式5の演算処理により算出される。式5において、(Tmin/Tnext)×Qは、充電可能時間Tnextにおいて昇圧スイッチSW1の1回のオンオフにより必要な電荷量、すなわち噴射ごとに必要な電荷量を示す。噴射ごとに必要な電荷量から上限目標値IHnを算出するため、リニアに充電電流I1を変更することができる。
また、下限目標値ILnは、上記した式3の演算処理により算出される。上限値と下限値との差分は、上限初期値IH0及び下限初期値IL0と、算出される上限目標値IHn及び下限目標値ILnとで同じとされる。これにより、オフ時間t1、ひいては充電電流I1が一度上限値に達した後の充電周期が一定となる。このように、昇圧スイッチSW1のオンオフの周期が算出後も初期値と同じであるため、ノイズ対策を施しやすい。
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
燃料噴射制御装置10が、エンジンECUとして構成され、制御IC50に加えてマイコン40も備える例を示した。しかしながら、ECUがマイコン40を備え、EDU(Electronic injector Driver Unit)が、制御IC50など、上記した燃料噴射制御装置10のマイコン40以外の要素を備える構成としてもよい。
燃料噴射制御装置10が、直噴ガソリンエンジンに適用される例を示したが、これに限定されない。燃料噴射のために昇圧が必要なエンジンに適用できる。たとえばディーゼルエンジンにも適用できる。内燃機関の気筒数は上記例に限定されない。
充電電流I1の目標値として、上限目標値IHn及び下限目標値ILnを算出する例を示したが、これに限定されない。充電(昇圧)動作を制御する目標値であればよい。たとえば、上限目標値IHn及び下限目標値ILnの平均値にほぼ一致する目標電流値を、目標値としてもよい。