JP7126097B2 - 鋼板の突合わせ溶接方法 - Google Patents
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Description
レーザー溶接は、エネルギー密度が高く入熱量が少ないため、フラッシュバット溶接に比べて優れた品質特性が得られる。しかし、高炭素鋼などの溶接では、溶接後の急冷により、溶接部に硬化した低温変態組織(マルテンサイト、ベイナイトが含まれた組織)が発生し、溶接部に亀裂が発生し、溶接部の破断トラブルの原因となってしまう。この溶接部の硬化に対しては、溶接後に再加熱する後加熱処理を行うことで、硬化した溶接部を焼き戻し、軟化させ溶接部の破断トラブル発生を防止している。
後加熱処理をする後加熱処理装置として、高効率で後加熱するためにレーザー溶接装置と一体となった装置が開発されており、後加熱処理は、一般的には高周波誘導コイルを使用した誘導加熱を行う方法が知られている。
このように、板厚を考慮して後加熱処理時にその電流値を溶接部ごとに変更して、最適な後加熱処理条件を適用して鋼板を溶接する発明する技術はまだ確立されていなかった。
[1] 先行鋼板と後行鋼板とを突合せ溶接する方法であって、前記先行鋼板と前記後行鋼板のそれぞれの溶接部となる部分の板厚を測定する板厚測定工程と、前記先行鋼板と前記後行鋼板とを突合せ溶接する溶接工程と、前記板厚測定工程で測定された前記板厚に基づいて前記突合せ溶接後に前記溶接部を加熱するための後加熱電流値を決定する後加熱決定工程と、前記後加熱決定工程で決定した前記後加熱電流値に基づいて前記それぞれの溶接部を加熱する工程と、を含む、鋼板の突合せ溶接方法。
[2] 前記後加熱決定工程において、前記板厚測定工程で測定された前記先行鋼板の溶接部となる部分の板厚と、前記後行鋼板の溶接部となる部分の板厚との平均測定板厚に基づいて前記後加熱電流値を決定する、[1]に記載の鋼板の突合せ溶接方法。
[3] 前記後加熱決定工程において、予め設定された後加熱電流値と、前記先行鋼板と前記後行鋼板の平均設定板厚と、平均測定板厚とに基づいて下記式(1)を満足するように後加熱電流値を決定する、[1]または[2]に記載の鋼板の突合せ溶接方法。
[5] 前記先行鋼板と前記後行鋼板との突合せ溶接により形成された溶接部の硬度は、ビッカース硬さが100HV以上1000HV以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の鋼板の突合せ溶接方法。
[6] 先行鋼板および後行鋼板は、質量%で、C:0.5%以上、
Si:0.1%以上0.5%以下、
Mn:0.3%以上0.6%以下、
P:0.05%以下、
S:0.05%以下、
Cu:0.5%以下、
Ni:3%以下、
Cr:0.05%以上0.5%以下、
Al:0.05%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の鋼板の突合せ溶接方法。
[7] 先行鋼板および後行鋼板は、質量%で、C:0.5%以上2.2%以下、
Si:0.1%以上0.5%以下、
Mn:0.3%以上0.6%以下、
P:0.05%以下、
S:0.05%以下、
Cu:0.5%以下、
Ni:3%以下、
Cr:0.05%以上0.5%以下、
Al:0.05%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、[6]に記載の鋼板の突合せ溶接方法。
[8] 前記突合せ溶接は、レーザー溶接方法である、[1]~[7]のいずれかに記載の鋼板の突合せ溶接方法。
本発明の鋼板の突合せ溶接方法は、鋼帯の端部である先行鋼板と別の鋼帯の端部である後行鋼板とを突合せ溶接する方法であって、先行鋼板と後行鋼板のそれぞれの溶接部となる部分の板厚を測定する板厚測定工程と、先行鋼板と後行鋼板とを突合せ溶接する溶接工程と、板厚測定工程で測定された上記板厚に基づいて突合せ溶接後に上記溶接部を加熱するための後加熱電流値を決定する後加熱決定工程と、後加熱決定工程で決定した後加熱電流値に基づいて上記溶接部を加熱する工程(後加熱工程ともいう)とを含む。
図2は、本発明の突合せ溶接方法のフローを表す図である。本発明の鋼板の突合せ溶接方法は、図2に示すような順番にて実施されることが好ましいが、溶接工程と後加熱決定工程の順番が入れ替わっていてもよい。または、溶接工程、板厚測定工程、後加熱決定工程、後加熱工程の順に行うことも可能である。
本発明において、先行鋼板とは、溶接工程において製造ラインを先行する鋼帯を指し、後行鋼板とは先行鋼板の直後に配置される別の鋼帯を指す。
本発明において、図3(a)及び(b)に示すように、後加熱処理装置がレーザー溶接装置と一体となった装置を用いてもよい。後加熱処理装置30が一体となったレーザー溶接装置20では、アジャスティングロール、加工ヘッド、バックロール、スエージングロール(図示なし)と、後加熱処理装置30が一体で動作する。例えば図3(a)および(b)に示すように、レーザー溶接装置20と後加熱処理装置30は冷間圧延工程における鋼帯の先行鋼板10と別の鋼帯の後行鋼板11の溶接部50になる端部に対して、上下に配置される。レーザー溶接装置20が図3(a)中の矢印の方向に進むことにより、先行鋼板10と後行鋼板11が突合せ溶接されるとともに、後加熱処理装置30によって溶接部50が後加熱処理される。
なお、ここで用いる先行鋼板と後行鋼板の溶接部にあたる鋼板の端部は、図1からわかるように、板厚が端部で大きく変動していることがわかる。この箇所で溶接を行った場合、予め設定された板厚よりも端部の板厚が大きい場合は後加熱不足になり、予め設定された板厚よりも端部の板厚が小さい場合は後加熱過多となり、最適な後加熱の熱量の範囲(合格範囲)を外れてしまうことがある。そこで本発明者は、平均設定板厚(一組の先行鋼板と後行鋼板の予め設定されている板厚を平均化した値。後述の平均設定板厚の算出方法を参照。)2.0mm~2.5mmにおいて、電流値(A)50A~130Aの範囲で10Aずつ電流値を変えて、エリクセン試験後の試験片の溶接部の割れ方が合格範囲内となる最適な平均設定板厚と電流値の相関関係を調べた。結果を図4に示す。
図4は、X軸を平均設定板厚(mm)、Y軸を後加熱の電流値(A)として、高炭素当量材のエリクセン試験後の試験片の溶接部の割れ方が合格範囲内となる、最適な平均設定板厚と電流値の相関関係を示す図である。図4に示すように、平均設定板厚2.0mmでは、電流値90Aが最適(図中〇で示される)であり、平均設定板厚が2.25mmでは、電流値90~100Aが最適(図中〇で示される)であり、平均設定板厚が2.5mmでは、電流値90~100Aが最適(図中〇で示される)な電流値であった。図4より、それぞれの平均板厚に対する後加熱電流値が合格範囲内(図中の〇で示される箇所)であれば割れ方に問題がなく、鋼帯を圧延した場合に生じ得る溶接部の破断トラブルの発生を防ぐことが出来る。一方、合格範囲外(図中の×で示される箇所)であると、割れ方に問題があり、鋼帯を圧延した場合、溶接部の破断トラブルの発生の原因となる。
板厚測定工程で測定された先行鋼板の溶接部となる部分の板厚と、後行鋼板の溶接部となる部分の板厚との平均測定板厚に基づいて後加熱電流値を決定することにより、最適な熱量で溶接部の後加熱処理を行うことができ、鋼帯を圧延した場合に生じうる溶接部の破断トラブルの発生を防ぐことが出来る。なお、先行鋼板および後行鋼板の溶接部となる部分の板厚とは、図5に示すように、先行鋼板および後行鋼板の端部の板厚(図5の50-1、50-2)のことをいう。
本発明におけるレーザー溶接は、鋼板を突合せ、鋼板間を0.2mm未満とし、鋼板間にワイヤーを送りながら、レーザーで鋼板及びワイヤーを溶かし込みながら溶接する。
レーザー溶接は、エネルギー密度が高く入熱量が少ないため、フラッシュバット溶接に比べて優れた品質特性が得られる。しかしながら、高炭素当量材などを用いる溶接では、溶接後の急冷により、溶接部に硬化した低温変態組織(マルテンサイト、ベイナイトが含まれた組織)が発生するため溶接部に亀裂が発生し、溶接部の破断トラブルの原因となってしまう。この溶接部の硬化に対しては、溶接後に加熱する後加熱を行うことで、硬化した溶接部を焼戻し、軟化させて溶接部の破断トラブル発生を防止することが知られている。
また、先行鋼板と後行鋼板との突合せ溶接により形成された溶接部の硬度は、ビッカース硬さが100HV以上1000HV以下であると好ましく、100HV以上400HV以下であるとより好ましく、100HV以上200HV以下であると更に好ましい。上記範囲内であると、先行鋼板および後行鋼板と溶接部の硬度差が小さいため、溶接部の破断トラブルが発生しにくい。
なお、上述のビッカース硬さは、JIS Z2244:2009に基づいて測定すればよい。
本発明の後加熱決定工程において、板厚測定工程で測定された先行鋼板の溶接部となる部分の板厚と、後行鋼板の溶接部となる部分の板厚との平均測定板厚に基づいて後加熱電流値を決定する工程である。
次に、上記の先行鋼板と上記の後行鋼板の測定板厚を平均化して平均測定板厚を算出する。
ここでの平均化とは、先行鋼板と後行鋼板の板厚を足して2で割ることを云う。
最後に、下記式(3)に表される後加熱温度算出式の中の板厚(l)、後加熱電流値(I)を基に下記式(2)を導きだす。次に、下記式(2)を基にして下記式(1)に平均設定板厚、平均設定電流、平均測定板厚を代入して、後加熱電流値を算出する。後加熱電流値とは、前述の通り導かれた電流値であり、後加熱処理に用いられる電流値である。
上記手順により算出された後加熱電流値を後加熱処理条件とし、各溶接部の後加熱処理を行う。
本発明の後加熱処理は、誘導加熱による後加熱処理装置にて行われることが好ましい。
本発明に用いられたレーザー溶接装置の仕様は、発振器出力12kW、発振器モード:低次マルチモード(TEM01)、シールドガス:CO2ガスであるが、この仕様に限定されない。
また、本発明に用いられた後加熱処理装置の仕様は、高周波誘電コイルを使用した装置で、加熱面積が72mm×380mm、定格出力40kW、周波数30kHz、加熱方法は移動式であるが、この仕様に限定されない。
先行鋼板10と後行鋼板11の予め設定した板厚を平均化した平均設定板厚と、先行鋼板と後行鋼板の端部の幅中央を板厚計40を用いて測定し、これらを平均化した平均測定板厚の結果を、下記表1に示す。
板厚計40では、鋼板と垂直になるように上下からレーザーを照射して、レーザー照射口から鋼板の表面までの距離から板厚を測定する。
また、予め設定された後加熱電流は、100Aと設定した。
エリクセン試験では、先行鋼板と後行鋼板の溶接部を含む試験片を、エリクセン試験機のダイス上に置き、その中央に半球状のポンチを押し込んでダイスで絞りだし、試験片に少なくとも1か所の亀裂が生じるまでポンチを進入させて、溶接部の割れ方を目視にて判定した。
試験結果は、以下に示す判定にて評価した。表2にエリクセン試験の判定基準を示す。
○: 溶接に対して垂直割れ
△: 一部溶接割れ
×: 溶接割れ
また、平均設定板厚の異なる試験片を用意し、後加熱電流値を後加熱処理装置30の条件とし、先行鋼板10と後行鋼板11を溶接後、後加熱処理装置30の誘導加熱により溶接部を後加熱処理した。後加熱電流値を後加熱処理装置30の後加熱処理条件と設定して溶接した試験片は、溶接部に対して垂直割れをおこし(判定「○」)、溶接部が強固に溶接されていることが判明した。
一方、後加熱電流値を後加熱処理装置30の後加熱処理条件と設定しなかったものは、溶接部に対して垂直割れしたサンプルに混じって、溶接部に沿って割れた試験片や(判定「×」)、一部溶接割れした試験片(判定「△」)が混在してしまい、溶接部の成形性が安定しなかった。
10 先行鋼板
11 後行鋼板
20 レーザー溶接装置
30 後加熱処理装置
40 板厚計
50 溶接部
50-1 先行鋼板の溶接部となる部分の板厚(先行鋼板の端部の板厚)
50-2 後行鋼板の溶接部となる部分の板厚(後行鋼板の端部の板厚)
Claims (8)
- 先行鋼板と後行鋼板とを突合せ溶接する方法であって、
前記先行鋼板と前記後行鋼板のそれぞれの溶接部となる部分の板厚を測定する板厚測定工程と、
前記先行鋼板と前記後行鋼板とを突合せ溶接する溶接工程と、
前記板厚測定工程で測定された前記板厚に基づいて前記突合せ溶接後に前記溶接部を加熱するための後加熱電流値を決定する後加熱決定工程と、
前記後加熱決定工程で決定した前記後加熱電流値に基づいて前記それぞれの溶接部を加熱する工程と、を含む、鋼板の突合せ溶接方法。 - 前記後加熱決定工程において、前記板厚測定工程で測定された前記先行鋼板の溶接部となる部分の板厚と、前記後行鋼板の溶接部となる部分の板厚との平均測定板厚に基づいて前記後加熱電流値を決定する、請求項1に記載の鋼板の突合せ溶接方法。
- 前記先行鋼板と前記後行鋼板の硬度は、ビッカース硬さが100HV以上1000HV以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の鋼板の突合せ溶接方法。
- 前記先行鋼板と前記後行鋼板との突合せ溶接により形成された溶接部の硬度は、ビッカース硬さが100HV以上1000HV以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の鋼板の突合せ溶接方法。
- 先行鋼板および後行鋼板は、質量%で、C:0.5%以上、
Si:0.1%以上0.5%以下、
Mn:0.3%以上0.6%以下、
P:0.05%以下、
S:0.05%以下、
Cu:0.5%以下、
Ni:3%以下、
Cr:0.05%以上0.5%以下、
Al:0.05%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の鋼板の突合せ溶接方法。 - 先行鋼板および後行鋼板は、質量%で、C:0.5%以上2.2%以下、
Si:0.1%以上0.5%以下、
Mn:0.3%以上0.6%以下、
P:0.05%以下、
S:0.05%以下、
Cu:0.5%以下、
Ni:3%以下、
Cr:0.05%以上0.5%以下、
Al:0.05%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する、請求項6に記載の鋼板の突合せ溶接方法。 - 前記突合せ溶接は、レーザー溶接方法である、請求項1~7のいずれか一項に記載の鋼板の突合せ溶接方法。
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