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JP7133166B2 - 光学材料の製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、オレフィン重合体を含む光学材料の製造方法に関する。
オレフィン重合体は、その産業上利用価値の高さから、種々の方法で工業的に製造され、年間1億トンを超える生産量があるとされている。オレフィン重合体は、炭素および水素を主成分とするので、安定、安価な材料であることが特徴でもある。一方で、オレフィン重合体における官能基を有さない構造は、極性を有する材料との親和性に乏しく、着色性、接着性などの改質を行い難い性質を併せ持っている。
オレフィン重合体の改質方法(官能基の導入方法)としては、無水マレイン酸をラジカル発生剤用いてグラフト反応させる方法が知られているが、これらは、分子量の低下や、架橋反応を伴う場合があり、官能基の導入量にも限界がある。この解決方法として、固相反応での改質方法の例がある。(たとえば特許文献1)
他方、環状オレフィン系重合体は、その高い透明性、耐熱性(高いガラス転移温度)などの特性を利用して、レンズなどの光学物品の用途に利用されている。レンズとしては、例えばDVDのピックアップレンズなどを挙げることができる。レンズ用途の場合、その表面に各種の膜を形成させる必要が生じる場合がある。この場合、当該膜との接着性の観点で、レンズ基材を構成するオレフィン重合体への官能基の導入が求められる場合があることも公知である。
国際公開第2015/166939号パンフレット
しかしながら、オレフィン重合体の分子量の低下などの問題の解決は充分とは言えないのが現状のようである。分子量の低下は、材料としての強度の低下などの様々なマイナス要因につながる恐れがあり、例えば光学材料の形状がフィルムの場合、強度だけでなく耐久性の低下につながる場合もある。また、分子量分布が小さくなることで成形性が低下し、複雑な形状に適用が困難になる可能性も考えられる。
一方、オレフィン重合体の用途によっては、例えばオレフィン重合体の成形体の一部だけ改質されていればよい場合がある。前記のレンズはその典型例であり、成形後の表面だけ官能基の導入ができれば、反射防止層や傷付き防止膜などの表面層を安定的に形成するのに有利であり、また、基材が有する光学特性への影響を抑制することも期待できる。
本発明者らは、オレフィン重合体を含む光学材料の表面だけ、また特定の場所だけ改質できれば、その強度や光学特性の低下を抑制しつつ、改質効果を高めることが可能となることが期待できると考えた。
本発明は、オレフィン重合体を含み、好ましくは主として特定の部位が変性された光学材料を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために、本発明者らが研究を進めた結果、以下に示すような手段によって、効率よく、好ましくは光学材料の主として特定の部分を、変性させることが可能となり、新たな光学材料を提供することが可能となった。すなわち本発明は、以下の通りである。
[1]
1分子中に15族元素および16族元素から選ばれる元素の原子(α)と17族元素の原子(β)とを、原子数比で原子(α):原子(β)=1:1~4:1の割合で含むラジカルに光を照射する工程1を含む、
融点および/またはガラス転移温度が70℃以上300℃以下のオレフィン重合体を含む光学材料基材を変性してなる光学材料の製造方法。
[2]
前記工程1が、
前記光学材料基材と前記ラジカルとが共存する環境において、
前記ラジカルに光を照射して前記光学材料基材を変性する工程である
前記[1]の光学材料の製造方法。
[3]
前記工程1が、前記光学材料基材および前記ラジカルに光を照射する工程である前記[2]の光学材料の製造方法。
[4]
前記光学材料の一部が未変性状態である前記[1]~[3]のいずれかの光学材料の製造方法。
[5]
前記光学材料の厚さが200μm~20cmである前記[1]~[4]のいずれかの光学材料の製造方法。
[6]
前記ラジカルが二酸化塩素ラジカルである前記[1]~[5]のいずれかの光学材料の製造方法。
[7]
前記オレフィン重合体が環状オレフィン系重合体である前記[1]~[6]のいずれかの光学材料の製造方法。
[8]
前記光学材料がレンズ用基材である前記[1]~[7]のいずれかの光学材料の製造方法。
[9]
前記レンズが車載センサー用レンズである前記[8]の光学材料の製造方法。
本発明の製造方法によれば、オレフィン重合体を含む光学材料の主として表面または特定の部位だけを効率よく変性可能であることが期待される。それゆえ、前記光学材料を主として形成するオレフィン重合体の分子量の低下を抑制でき、光学材料が本来持つ強度や光学特性を維持しつつ、表面改質性に優れた光学材料を提供することができると考えられる。
図1は、実施例の操作を説明するための模式概略図である。
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
本発明に係る光学材料の製造方法は、
1分子中に15族元素および16族元素から選ばれる元素の原子(α)と17族元素の原子(β)とを、原子数比で原子(α):原子(β)=1:1~4:1の割合で含むラジカルに光を照射する工程1を含む、
融点および/またはガラス転移温度が70℃以上300℃以下のオレフィン重合体を含む光学材料基材を変性してなる光学材料の製造方法である。
なお、本発明においては、便宜的に変性前の光学材料を「光学材料基材」と称し、変性後の光学材料を「光学材料」と称することとする。
前記工程1は、好ましくは、前記光学材料基材と前記ラジカルとが共存する環境において、前記ラジカルに光を照射して前記光学材料基材を変性する工程である。
工程1において、好ましくは、前記光学材料基材および前記ラジカルに光が照射される。「前記光学材料基材および前記ラジカルに光が照射される」とは、前記光学材料基材、前記ラジカルに対してそれぞれ独立に光を照射することを意図したものではなく、たとえば1つの光源からの光によって前記光学材料基材および前記ラジカルが照射されることを意味する。また、前記光学材料基材と、前記ラジカルへの光照射は同時に行われることが好ましい。
後述するように、光学材料基材の、光が照射された部位のみが変性される訳ではなく、その周辺部や深層部も変性される場合がある。
本発明の製造方法としては、前記ラジカルを含む系に光を照射した後、この系と前記光学材料基材とを接触させて前記光学材料基材を変性するという態様も挙げられる。
前記ラジカルは15族元素および16族元素から選ばれる元素の原子(α)と17族元素の原子(β)とを特定の組成比で含んでいる。
前記ラジカルは、15族元素の原子を2種以上含んでいてもよく、16族元素の原子を2種以上含んでいてもよく、15族元素および16族元素の原子をそれぞれ1種以上含んでいてもよく、17族元素の原子を2種以上含んでいてもよい。ただし、これらの場合、前記原子数比は、15族元素および16族元素の原子の合計数と17族元素の原子の合計数との比である。
15族元素および16族元素から選ばれる元素としては、好ましくは、窒素、酸素、硫黄が挙げられ、特に好ましくは酸素が挙げられる。
17族元素としては、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、塩素、臭素がさらに好ましい。塩素を含むラジカルが、入手ないし発生が容易なこともあって、より好ましい。塩素を含むラジカルを用いる場合、工程1で照射する光としては紫外線を含む光が好ましく、臭素やヨウ素を含むラジカルを用いる場合、紫外線より長波長の光でも反応を進行させることができると考えられる。従って、光の選択自由度や、光学材料基材を構成するオレフィン重合体に光劣化が生じる可能性がある場合等、状況によっては臭素、ヨウ素が好ましい。
前記ラジカルにおける前記原子数比(原子(α):原子(β))は、好ましくは1:1~2:1、より好ましくは1:2である。
上記の観点から、前記ラジカルとしては二酸化塩素ラジカルが好ましい。二酸化塩素ラジカル(ClO2・)に光が照射されることで、塩素ラジカル(Cl・)および酸素分子(O2)が発生すると考えられる。
本発明の製造方法において、前記光学材料基材を構成する前記オレフィン重合体は、融点および/またはガラス転移温度が70℃以上300℃以下であれば、公知のものを制限なく用いることができる。融点および/またはガラス転移温度の好ましい下限値は、80℃である。一方、融点および/またはガラス転移温度の好ましい上限値は、250℃、更には200℃である。
前記の融点やガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC装置)を使用して以下の方法またはこれと同等の方法で測定した場合のものである。
SIIナノテクノロジー社(現-日立ハイテクサイエンス社)製EXSTAR DSC6220型示差走査熱量計を用いて、約5.0mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で10分間保持する。(ただし、250℃以上320℃以下の温度領域で分解する重合体の場合は、常法の通り、適宜保持する温度を低く調整してもよい。)さらに降温速度10℃/分で30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で320℃まで昇温する。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求める。融解ピークが多峰性の場合は、最も高温側の融解ピークが現れる温度を融点とする。
また、ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
上記の装置と同等の結果を与えることが確認されていれば、他の示差走査熱量計を用いてもよい。
前記オレフィン重合体としては、具体的にはノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの環状オレフィンとエチレン、プロピレン、ブテンなどから選ばれるα-オレフィンとの共重合体等を例示することができる。その他には、前記の環状オレフィンをメタセシス重合させて得られる開環オレフィンメタセシス重合体およびその水素添加物も、勿論挙げられる。これらの重合体の市販の製品としては、ゼオネックス(登録商標)、アートン(登録商標)、トパス(登録商標)、アペル(登録商標)等を挙げることができる。
これらの重合体の135℃、デカリン中の極限粘度[η]は0.5~20dl/g、より好ましくは0.8~18dl/g、さらに好ましくは1~15dl/gの範囲にあることが好ましい。また、前記のオレフィン重合体のASTM1238規格に準じて測定されるメルトフローレートは、用いる樹脂の融点によって、測定条件が後述するように異なるが、そのメルトフローレートの好ましい範囲は、0.1~200g/10分である。好ましい下限値は、1g/10分、より好ましくは3g/10分、さらに好ましくは5g/10分である。一方、好ましい上限値は150g/10分、より好ましくは100g/10分である。
上記メルトフローレート(ASTM1238規格)の好ましい測定条件は、以下の通りである。エチレン系重合体の場合は、190℃、2.16kg荷重、プロピレン系重合体の場合は230℃、2.16kg荷重、4-メチル-1-ペンテン系重合体の場合は、260℃、5kg荷重、環状オレフィン系重合体の場合は、260℃、2.16kg荷重が好ましい。
また本発明に用いられる光学材料基材、および前記光学材料基材を光照射により変性して得られる光学材料がフィルム状の場合には、その厚さは1~500μm、より好ましくは5~200μm、さらに好ましくは10~150μmである。一方、レンズや導光板などの厚みを必要とする場合は、好ましくは500μm~20cm、より好ましくは800μm~15cm、さらに好ましくは1mm~12cmの範囲である。光学材料の厚さは、その用途によって決まるが、上記の範囲であれば光学特性、機械特性のバランスを維持しつつ、表面特性などの機能を改質させるうえで有利である。使用する光線の波長とオレフィン重合体の吸光特性にもよるが、成形体が厚すぎると光学特性の観点から不利であることが自明であろう。
このようなオレフィン重合体を得る手段は多くの報告があり、それらを制限なく採用することができる。例えば、特開2010-235719号公報などに開示がある。
本発明の製造方法において、例えば、前記オレフィン重合体の原料におけるオレフィンとして、スチレンなどの芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸(エステル)類等が前記の環状オレフィンまたはα-オレフィンと共に用いられてもよい。
前記光学材料基材は、公知の方法で製造することができる。前記光学材料基材の製造方法としては、例えば押し出し成形(T-ダイ成形など)、射出成形、キャスト成形などを代表例として挙げることができる。また、前記光学材料基材がフィルムである場合には、これらの方法でフィルムを成形したのち、そのフィルムを延伸することも可能である。厚さのある形状の場合は、射出成形やキャスト成形などの公知の方法が好ましい。
光学材料をこのような環状オレフィン系重合体から製造する場合、成形時に大きなせん断を加えたりすると、その優れた光学特性が損なわれたりする場合がある。それ故、本発明の様に環状オレフィン重合体等を成形体(すなわち、光学材料基材)とした後にその表面を選択的に、しかも効率的に変性して光学材料を製造する本発明は、好ましい技術であると言ってよい。
本発明の製造方法で得られる光学材料を構成するオレフィン重合体には、代表的にはヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、-C(=O)OOH、および-O-O-からなる群から選択される少なくとも一の官能基が導入される。
前記光照射は、水相、有機相または気相中に存在する前記ラジカルに対して行われる。環境への負荷や人体への影響を低減させる等の点を重視する場合は、水相や気相に存在する前記ラジカルに対して行うことが好ましい。工程1は、一実施態様では、水相、有機相および気相のうちの二相以上の層が存在する環境下であってもよい。また、例えば、前記ラジカルが液相に存在している場合、前記光学材料基材も液相に存在していてもよいが、それ以外の相、例えば気相に存在していてもよい。
前記水相および/または有機相中における、原子(α)および原子(β)を含むラジカルの濃度は特に限定されないが、例えば0.0001mol/L以上であり、例えば1mol/L以下である。
前記光学材料基材を水相または有機相に浸漬する場合、水相または有機相中における、前記光学材料基材の使用量は、特に限定されないが、水相または有機相に対し、例えば、1g/L以上であってもよく、10g/L以下であってもよい。
前記水相は、水を含めば特に制限されない。
前記有機相は、有機溶媒を含めば特に制限されない。
また、前記有機溶媒は、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記有機溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒、ハロゲン化溶媒が挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等が挙げられる。
前記ハロゲン化溶媒としては、特に限定されないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、およびフルオラス溶媒が挙げられる。
前記フルオラス溶媒は、炭化水素の水素原子の全てまたは大部分がフッ素原子に置換された溶媒をいう。前記フルオラス溶媒は、例えば、炭化水素の水素原子数の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上がフッ素原子に置換された溶媒であってもよい。
前記フルオラス溶媒の例としては、例えば、CF3-(CF2n-CF3(nは4~7)、N-((CF2nCF33(nは1または4)、ヘキサフルオロベンゼン、1-(トリフルオロメチル)ウンデカフルオロシクロヘキサン、1-(トリフルオロメチル)ペンタフルオロベンゼン、オクタデカフルオロデカヒドロナフタレンが挙げられ、その中でも、例えば、CF3(CF24CF3が好ましい。
フルオラス溶媒は、例えば、溶媒自体の反応性が低いために、副反応を抑制または防止できるという利点がある。前記副反応としては、例えば、溶媒の酸化反応、ラジカルによる溶媒の水素引き抜き反応や塩素化反応、および、前記光学材料基材を構成するオレフィン重合体に由来するラジカルと溶媒との反応が挙げられる。
また、前記水相および/または有機相は、前記ラジカル以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記他の成分としては、特に限定されないが、例えば、前記ラジカルの発生源、ブレンステッド酸、ルイス酸、および酸素(O2)が挙げられる。
これらはそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記他の成分は、水相および/または有機相に溶解してもよいが、溶解していなくてもよい。
なお、1つの物質がルイス酸およびブレンステッド酸を兼ねていてもよい。「ルイス酸」は、前記ラジカルの発生源に対してルイス酸として働く物質をいう。
前記ラジカルの発生源は、特に限定されないが、前記ラジカルが二酸化塩素ラジカルである場合、例えば、亜塩素酸(HClO2)またはその塩が挙げられる。亜塩素酸の塩としては、特に限定されないが、例えば、金属塩が挙げられる。前記金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、希土類塩等が挙げられる。
前記二酸化塩素ラジカルの発生源としては、より具体的には、例えば、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、亜塩素酸リチウム(LiClO2)、亜塩素酸カリウム(KClO2)、亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO22)、亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO22)が挙げられる。これら亜塩素酸およびその塩は、1種類のみ用いても、複数種類併用してもよい。これらの中でも、コスト、取扱い易さ等の観点から、亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
前記水相および/または有機相中における、前記ラジカル発生源の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.0001mol/L以上であり、例えば1mol/L以下である。
前記ルイス酸は、例えば、有機物質でもよく、無機物質でもよい。
前記有機物質としては、例えば、アンモニウムイオン、有機酸(例えばカルボン酸)が挙げられる。
前記無機物質は、金属イオンおよび非金属イオンの一方または両方を含んでいてもよい。前記金属イオンは、典型金属イオンおよび遷移金属イオンの一方または両方を含んでいてもよい。
前記無機物質は、例えば、アルカリ土類金属イオン(例えばCa2+等)、希土類イオン、Mg2+、Sc3+、Li+、Fe2+、Fe3+、Al3+、ケイ酸イオン、およびホウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
前記アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、またはラジウムのイオンが挙げられ、より具体的には、例えば、Ca2+、Sr2+、Ba2+、およびRa2+が挙げられる。
前記希土類は、スカンジウム21Sc、イットリウム39Yの2元素と、ランタン57Laからルテチウム71Luまでの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である。希土類イオンとしては、例えば、前記17元素のそれぞれに対する3価の陽イオンが挙げられる。
また、前記ルイス酸がイオンである場合、前記ルイス酸は、該イオンのカウンターイオンを有する物質であってもよく、該カウンターイオンとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 -、またはOTf-とも表記する)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3COO-)、酢酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオンが挙げられる。前記ルイス酸は、例えばスカンジウムトリフレート(Sc(OTf)3)であってもよい。
また、前記ルイス酸(カウンターイオンも含む)は、例えば、AlCl3、AlMeCl2、AlMe2Cl、BF3、BPh3、BMe3、TiCl4、SiF4、およびSiCl4からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。ただし、「Ph」はフェニル基を表し、「Me」はメチル基を表す。
前記ルイス酸のルイス酸性度は、例えば、0.4eV以上であるが、これには限定されない。前記ルイス酸性度の上限値は、特に限定されないが、例えば、20eV以下である。なお、前記ルイス酸性度は、例えば、Ohkubo, K.; Fukuzumi, S. Chem. Eur. J., 2000, 6, 4532、J. AM. CHEM. SOC. 2002, 124, 10270-10271、またはJ. Org. Chem. 2003, 68, 4720-4726に記載の方法により測定することができる。
前記ブレンステッド酸としては、特に限定されないが、例えば、無機酸でも有機酸でもよく、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸等が挙げられる。
前記ブレンステッド酸の酸解離定数pKaは、例えば10以下である。前記pKaの下限値は、特に限定されないが、例えば、-10以上である。
前記水相および/または有機相中における、前記ルイス酸およびブレンステッド酸の少なくとも一方の濃度は、特に限定されず、適宜設定することができるが、例えば1mg/L以上であってもよく、1g/L以下であってもよい。
前記酸素(O2)については、例えば、前記ラジカル発生源、前記ルイス酸、前記ブレンステッド酸、光学材料基材等を加える前または加えた後の水中および有機相の少なくとも一方に、空気または酸素ガスを吹き込むことにより、酸素を溶解させてもよい。このとき、例えば、前記水中を、酸素(O2)で飽和させてもよい。前記水相および有機相の少なくとも一方が前記酸素(O2)を含むことで、例えば、光学材料基材を構成するオレフィン重合体の酸化反応をさらに促進させることができる。
<ラジカル生成工程>
本発明の製造方法は、前記ラジカルを生成させる工程(ラジカル生成工程)、具体的には、前記ラジカル発生源から前記ラジカルを生成させる工程を含んでいてもよい。
前記ラジカル生成工程は、特に限定されないが、例えば、前記ラジカル発生源(例えば、亜塩素酸またはその塩)を水に溶解させて静置し、ラジカル発生源から前記ラジカルを自然発生させることで行なうことができる。このとき、例えば、前記水中に前記ルイス酸およびブレンステッド酸の少なくとも一方が存在することで、前記ラジカルの発生がさらに促進される。また、例えば、前記ラジカル発生源を水に溶解させた水相に光照射することで前記ラジカルを生成させてもよい。この光照射は前記工程1における光照射であってもよく、つまり、前記ラジカルを生成させながら、前記ラジカルに工程1における光照射を行ってもよい。
例えば、亜塩素酸イオンから二酸化塩素ラジカルが発生するメカニズム(機構)については、例えば、下記スキーム1のように推測される。ただし、下記スキーム1は、推測されるメカニズムの一例であり、本発明をなんら限定しない。
下記スキーム1の第1の(上段の)反応式は、亜塩素酸イオン(ClO2 -)の不均化反応を示し、この反応系中にルイス酸およびブレンステッド酸の少なくとも一方が存在することで、平衡が右側に移動しやすくなると考えられる。
下記スキーム1中の第2の(中段の)反応式は、二量化反応を示し、不均化反応で生成した次亜塩素酸イオン(ClO-)と亜塩素酸イオンとが反応して二酸化二塩素(Cl22)が生成する。この反応は、水中にプロトンH+が多いほど、すなわち酸性であるほど進行しやすいと考えられる。
下記スキーム1中の第3の(下段の)反応式は、ラジカル生成を表す。この反応では、第2の反応式で生成した二酸化二塩素が、亜塩素酸イオンと反応して二酸化塩素ラジカルを生成する。
Figure 0007133166000001
前記工程1において、照射光の波長は、用いるラジカルに応じて前記光学材料基材を変性できるように適宜選択すればよい。具体的には、赤外線領域から紫外線領域まで幅広い領域を選択可能であり、例えば、200nm以上であってもよく、800nm以下であってもよい。光照射時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上であってもよく、1000時間以下であってもよい。
工程1を行う際の温度は、特に限定されないが、例えば、0℃以上であってもよく、100℃以下であってもよい。
工程1を行う際の雰囲気圧は、特に限定されないが、例えば、0.1MPa以上であってもよく、100MPa以下であってもよい。
前記工程1は、例えば、後述の実施例に示すように、加熱、加圧、減圧等を一切行わずに、常温(例:5~35℃)および常圧(大気圧)下で行なうことも可能である。また、本発明の製造方法は、例えば、後述の実施例に示すように、不活性ガス置換等を行なわずに、大気中で、前記工程1またはそれを含めた全ての工程を行なうことも可能である。
前記光照射において、光源は特に限定されないが、例えば、太陽光等の自然光に含まれる可視光が挙げられる。また、例えば、前記自然光に代えて、またはこれに加え、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀ランプ等の光源を適宜用いてもよいし、用いなくてもよい。さらに、必要波長以外の波長をカットするフィルターを適宜用いてもよいし、用いなくてもよい。
また、本発明において、前記光学材料基材は、オレフィン重合体を含み、オレフィン重合体はエタンなどと同様、炭素-水素単結合を有する構造を持つので、例えば特開2017-155017号公報に記載されたエタンの酸化反応によりエタノールが生成される機構と同様の機構で反応が進行するものと推測出来る。しかも本発明に用いられる反応は、光を介して進行するので、前記ラジカルの存在下で光の当たった場所、すなわち主として光学材料基材の表面のうち、主として前記ラジカルを含む相と接触する領域を反応させることが期待される。この性質を利用すれば、仮に変性反応によって光学材料基材を構成するオレフィン重合体分子の切断や架橋が起こったとしても、これらは光学材料の表面付近にとどまり、光学材料の強度等の性能に関わる光学材料内部の性能への影響は最小限とできる可能性があるので、光学材料の強度などを保持するうえで有利である。
前記表面とは、前記光学材料が、その表面から、深さがその基材形状での厚さの1/10以下、より好ましくは1/20以下までの領域をいう。この変性される部分の深さは、例えば、XPS法で確認することができる。
また、フォトマスクを使用すれば、光学材料基材の特定の領域だけ変性することも可能となり、光学材料における変性された領域と未変性の領域との比率を自由に制御することもできると期待される。
例えば、本発明の光学材料において光が透過する面全体を100%として、変性される部分の面積は、得られる光学材料の所望の用途に応じて適宜選択すればよい。その面積の割合の好ましい下限値は、1%、5%、10%、20%、30%、50%の順に好ましく、好ましい上限値は100%であり、より好ましくは90%である。変性された領域は、XPS法などの公知の方法で特定することが出来る。
前記変性は、前記ラジカルに光が当たって発生する17族元素のラジカルを起点に反応が進行すると考えられる。従って、当該ラジカルが変性対象である光学材料基材と接触した部分で変性が起こると考えられる。従って、前記の方法の場合、変性対象である光学材料基材に光照射された面積と変性された面積とは、ほぼ等価と考えてもよい。
光を照射した周辺部や、光が届かない細孔の深層部が変性される場合もあるが、その割合は小さいと考えられる。
本発明において、光を光学材料基材に照射することは、直接的に光学材料基材への変性反応に関わらない可能性がある。しかしながら、一般的なラジカルの寿命や光学材料基材の特定部位への変性を行う場合などを考慮すると、実質的に光を光学材料基材にも照射することが好ましい方法となる。
また、本発明の製造方法を用いれば、前記ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、-C(=O)OOH、-O-O-等に限定されず、17族元素、代表例として塩素も同時に前記光学材料基材を構成するオレフィン重合体に導入させることができることがある。もちろん使用するラジカルの種類を変えることで、塩素だけでなく臭素やヨウ素の導入も可能である。アルカンなどの低分子炭化水素化合物を基質とする場合、本発明と同様に二酸化塩素ラジカルを用いる方法では塩素の導入が抑制されることが報告されているが、オレフィン重合体を含む光学材料基材を用いる場合、塩素などの17族元素の原子(β)も酸素などの15、16族元素から選ばれる元素の原子(α)と併せて導入できる場合がある。これは、メタンやエタンなどの低分子を基質とする場合に比して、オレフィン重合体の炭素-水素結合の存在密度が高くなる傾向にあると考えられることや、重合体と相互作用と持つことでラジカルが安定化する可能性がその一因ではないかと本発明者らは考えている。ただ、この推測によって、本発明は制限されない。
前記光学材料基材に導入される、原子(α)の合計量[Cα]と、原子(β)の合計量[Cβ]との比率(すなわち、[Cα]/[Cβ])は、好ましい下限値は、ゼロを超え、より好ましくは0.01、さらに好ましくは0.1、特に好ましくは0.5であり、好ましい上限値は5000、より好ましくは100、さらに好ましくは20である。
前記の[Cα]、[Cβ]値は、XPS法によって特定される値である。測定は、本発明においては製品名AXIS-Nova(KRATOS社製)またはこれと同等の装置を用い常法で実施される。
さらに、光照射を行う前記工程1の後、必要に応じて、光学材料を数回洗浄したのち、乾燥させてもよい。
本発明によれば、例えば、二酸化塩素ラジカル水溶液に光照射するのみの極めて簡便な方法で、塩素原子ラジカルCl・および酸素分子O2を発生させ、光学材料基材を構成するオレフィン重合体の酸化反応を行なうことができる。そして、そのような簡便な方法で、例えば、常温および常圧等のきわめて温和な条件下でも、オレフィン重合体を含む光学材料基材を効率よく変性して光学材料を製造することが可能である。
さらに、本発明によれば、例えば、取扱い温度において不安定な場合がある過酸化物やアゾ化合物などのラジカル発生剤を用いずに、前記光学材料基材を構成するオレフィン重合体を酸化させることも出来る。これによれば、前述のとおり常温および常圧等のきわめて温和な条件下で反応が行えることと併せ、安全性の高い環境下で変性された光学材料基材、すなわち光学材料を効率よく得ることも可能である。
前記の導入した酸素を含む置換基などの官能基は、さらに他の成分と反応させることで、光学材料の機能を強化したり、性質を変化させたりすることもできる。たとえば、前記の官能基を足場として、光学材料に様々な表面層を形成させることにも有利である。具体的には、アクリル系材料を用いることが多いハードコート層の形成や、防曇層(三井化学(株)製のノストラ(登録商標)等が用いられる)、反射防止層、ブルーライトカット層等の形成の面で有利になることが期待される。また、ガス透過性などの改良を目的として無機物層(蒸着法やゾル・ゲル法での形成)を形成する上でも有利になることが期待される。
本発明の方法により製造される光学材料は、各種の用途に好ましく適用できることが期待される。例えば、前記のレンズが代表例となる。自動車の自動運転へ向けての各種のセンサーが開発されているが、このセンサー用のレンズも今後、ガラスから重合体に素材がシフトする可能性がある。このため、センサー用レンズも重要な用途となる。
本発明の方法により製造される光学材料は、その改質反応時(すなわち、光学材料基材を変性する際)のオレフィン重合体の分子量低下が少ないので、前記の用途などにおいて、強度の低下が少なく、光学特性への影響も少なく、優れた耐久性などの面での改善も期待できる。また、比較的多くの官能基を導入できるので、その改質性能の経年低下の割合も少ないことが期待できる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例には限定されない。
[実施例1]
(光学材料の製造)
ポリ容器に亜塩素酸ナトリウム(Sigma-Aldrich社製)10g、超純水500mLを入れ、亜塩素酸ナトリウムが超純水に溶解してから35~37%塩酸水溶液(富士フイルム和光純薬(株)製)1mLを加え、この液を約32cm×23cm×2cmの大きさの浅型バットに入れた。この条件で、二酸化塩素ラジカルが発生することは、事前にESR法で確認した。一方、約33cm×24cm×3cmの大きさのガラス製バット内部の底面に、下式:
Figure 0007133166000002
で表される2種の構造単位を有するシクロオレフィンコポリマー片(三井化学(株)製APEL(登録商標)(光学材料用途に好適な樹脂)、サイズ:約65mm×35mm×3mm)を3枚、等間隔で貼り付け、シクロオレフィンコポリマー片が貼り付けてある面を下にして、前記浅型バット上に重ねるように置いた。今回用いたAPEL(登録商標)のガラス転移温度は135℃、ASTM1238規格、260℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローレートは36g/10分であった。このバットを重ねた系に対して、ガラス製バット上部からパイフォトニクス(株)製ホロライト・カク DC12Vで10分間50~70mW/cm2の波長365nm光を照射した。その後、ガラス製バットからシクロオレフィンコポリマー片を剥がし、表面を超純水で洗浄した。次いで、シクロオレフィンコポリマー片を減圧乾燥し、コポリマー片(以下「酸化シクロオレフィンコポリマー片」とも記載する。)からなる光学材料を得た。
(光学材料の接着性評価)
紫外線硬化型コーティング剤「オレスター(登録商標)RA6800」(三井化学(株)製)5.00gに、光開始剤としてIrgacure1173(BASF社製)0.11g、溶剤として1-メトキシ-2-プロパノール(純正化学(株)製)を4.05g混合し、コーティング液を得た。このコーティング液をシクロオレフィンコポリマー片、酸化シクロオレフィンコポリマー片(前工程で、亜塩素酸液側に向けた面を)それぞれにバーコーター#20で塗布し、80℃の温風乾燥機で2分加熱し、脱溶剤して塗膜を形成した。塗膜が形成された各ポリマー片を、UVコンベアー(ランプシステム:F600V/光源:無電極ランプHバルブ/ヘレウス株式会社製)の中をコンベアー速度8m/分(UVA積算光量400mJ/cm2)で通過させて、塗膜を硬化させた。塗膜硬化後の各コポリマー片に対して、JIS K5400-8.5に準拠する形で塗膜の接着性を評価した。
具体的には、塗膜の表面にカッターナイフでコポリマー片まで到達する切れ込みを1mm間隔11本入れ、次いでコポリマー片を90°回転させて同様の切れ込みを11本入れることで100個の碁盤目状のマスを作成した。その後、碁盤目状のマスにニチバン社製セロハン粘着テープCT405AP-24を貼り付け、テープの端を持って、テープを、塗膜面に直角に保ち瞬間的に引き剥がした。引き剥がした後に100個のマスのうち剥がれずに片表面に残っている数を数えた。接着性評価は各光学材料(コポリマー片)に対して2回行った。結果を表1に示す。
Figure 0007133166000003

Claims (8)

  1. 1分子中に15族元素および16族元素から選ばれる元素の原子(α)と17族元素の原子(β)とを、原子数比で原子(α):原子(β)=1:1~4:1の割合で含むラジカルに光を照射する工程1を含
    前記15族元素および16族元素から選ばれる元素が酸素であり、
    前記17族元素が塩素、臭素またはヨウ素であり、
    前記工程1が、
    融点および/またはガラス転移温度が70℃以上300℃以下のオレフィン重合体を含む光学材料基材と前記ラジカルとが共存する環境において、
    前記ラジカルに光を照射して前記光学材料基材を変性する工程を含む光学材料の製造方法。
  2. 前記工程1が、前記光学材料基材および前記ラジカルに光を照射する工程である請求項に記載の光学材料の製造方法。
  3. 前記光学材料の一部が未変性状態である請求項1または2に記載の光学材料の製造方法。
  4. 前記光学材料の厚さが200μm~20cmである請求項1~のいずれか一項に記載の光学材料の製造方法。
  5. 前記ラジカルが二酸化塩素ラジカルである請求項1~のいずれか一項に記載の光学材料の製造方法。
  6. 前記オレフィン重合体が環状オレフィン系重合体である請求項1~のいずれか一項に記載の光学材料の製造方法。
  7. 前記光学材料がレンズ用基材である請求項1~のいずれか一項に記載の光学材料の製造方法。
  8. 前記レンズが車載センサー用レンズである請求項に記載の光学材料の製造方法。
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