JP7148124B2 - ポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜の検査方法 - Google Patents
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Description
例えば、電気透析で海水の濃縮脱塩を行う場合、脱塩室の塩濃度をあるレベル以上に保つ必要があるが、期せずして塩濃度が低下すると、過脱塩となり、移動できるイオンが足りなくなり、代わりに水が分裂して水素イオンと水酸化物イオンになることがある。この水酸化物イオンは、濃縮室のカルシウムなどの多価イオンと反応して水酸化物のスケールを形成し流路を閉塞するなどの障害を起こし運転ができなくなるばかりか、直接的に特にアニオン交換膜のアニオン交換基を脱離させたり、膜の骨格およびネットワーク構造を破壊し、イオン交換膜そのものの性能、強度低下を起こすことがある。また、特に食品分野においてはアニオン交換膜に有機物などが吸着して性能を低下させるファウリング(膜汚染)と呼ばれる現象が起きることがあるが、このファウリング物質を除去して性能回復を図る際に、アルカリ溶液を用いることがあり、このアルカリが膜の骨格およびネットワーク構造をも破壊してしまい、性能、強度低下を起こすこともある。特にポリ塩化ビニルを基材織布、基材シートとして用いている場合や、ポリ塩化ビニルを増粘剤として用いている場合は、アルカリによって塩ビから脱塩酸し、ポリエンと呼ばれる構造が生じ、膜が着色することがある(例えば、非特許文献1参照)。
該アニオン交換膜をアルカリ水溶液と接触させて劣化促進試験を行い、劣化の度合いごとに該膜の可視光に対する光学特性又は蛍光X線強度分析による塩素強度と、該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性を測定することにより、光学特性変化又は蛍光X線強度変化に対する該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性の変化を示す検量線を作成しておき、
使用中のポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜の可視光に対する光学特性又は蛍光X線強度を測定し、前記検量線に基づいて該光学特性若しくは該蛍光X線強度測定値から使用中の該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性を判定することを特徴とするポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜の検査方法が提供される。
(1)前記劣化の度合いごとに測定する、前記アニオン交換膜の可視光に対する光学特性として、吸光度を測定すること
(2)前記アニオン交換膜の物理特性として機械的強度又は含水率を判定すること、
(3)前記アニオン交換膜の物理特性を判定する機械的強度として、ヤング率を測定すること
(4)前記アニオン交換膜の電気化学特性として電気抵抗又は輸率を判定すること、
という態様を好適に採用することができる。
このように、本発明の検査方法は、実機で使用されている含Clアニオン交換膜を必ずしも破壊せずに検査することができる。
本発明における検査対象のアニオン交換膜は、ポリ塩化ビニル成分を含有するものである。
即ち、ポリ塩化ビニル成分を含むアニオン交換膜(含Clアニオン交換膜)は、アルカリとの接触によって劣化し、例えば、ポリ塩化ビニルから脱塩酸を生じ、ポリエン構造が形成され、このため、膜が着色する。本発明では、脱塩酸の程度を可視光に対する光学特性或いは蛍光X線分析による塩素強度で判定する。このため、本発明における検査対象のアニオン交換樹脂は、ポリ塩化ビニルを含有するものでなければならない。
また、イオン交換樹脂成分には、イオン交換基が導入される単官能モノマーとしてスチレン、クロルメチルスチレン、ビニルピリジンなどが用いられ、また、多官能モノマーにはジビニルベンゼンやジビニルビフェニルなどが用いられる。何れにしろ、官能基として、1~3級アミノ基、4級アンモニウム塩、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基などのアニオン交換基を有しているか、或いはこのようなアニオン交換基が導入されるものであればよい。
さらに、増粘剤としては、ポリ塩化ビニルの粉末、ゴム、その他、各種のポリマー粉などが用いられる。
本発明においては、検査対象である含Clアニオン交換膜は、劣化促進試験により供される。
この劣化促進試験は、前述したポリ塩化ビニルからの脱塩酸を生じさせるために行われるものであり、具体的には、アルカリ水溶液に含Clアニオン交換膜(実機での使用に供されていない未使用の膜)を浸漬等により接触させることにより行う。
本発明においては、上記促進試験により、含Clアニオン交換膜の劣化レベルに対する物理特性や電気化学特性を測定し、検量線を作成する。
この劣化レベルは、可視光に対する光学特性或いは蛍光X線分析による塩素強度で同定される。
光学特性としては、透過率、吸光度、反射率が挙げられる。
尚、上記で述べたように、劣化が進行していくと紫色に変色していくが、このとき、可視光に対する光学特性としては、低波長の吸光度は高くなり(透過率、反射率は低くなり)飽和してゆく一方で、高波長側は、吸光度(透過率、反射率)変化を識別しにくくなる。従って、可視光に対する光学特性により劣化の程度を同定する場合には、700nm以下、特に500~700nmの波長により測定することが好適である。因みに、実施例では、600nmの波長により光学特性を測定している。
ところで、実機で使用されている膜について、その物理特性や電気化学特性は、通常は、膜破壊検査により測定されるものであるが、本発明では、上記の検量線を作成しておくことにより、必ずしも破壊検査によらず、可視光に対する光学特性測定或いは蛍光X線分析による塩素強度を測定することにより、物理特性や電気化学特性の変化を推定することができる。
尚、電気抵抗保持率は、下記式により算出される。
電気抵抗保持率(%)
=100×(劣化した膜の電気抵抗値)/(劣化促進前の膜の電気抵抗値)
ここでは交流電気抵抗を測定した。この図1から理解されるように、この吸光度と電気抵抗値とは明らかに相関関係があり、従って、吸光度を測定することにより、上記の検量線から膜の電気抵抗値を推定することができる。
尚、ヤング率保持率は、下記式により算出される。
ヤング率保持率(%)
=100×(劣化した膜のヤング率)/(劣化促進前の膜のヤング率)
図2から理解されるように、この吸光度とヤング率とは明らかに相関関係があり、従って、吸光度を測定することにより、上記の検量線から膜のヤング率を推定することができる。
同様に図3から輸率、図4から含水率を推定できることを示している。
また、図5、6では反射率から電気抵抗を、図7では反射率からヤング率を推定できることを示している。
尚、塩素強度保持率は、下記式により算出される。
塩素強度保持率(%)
=100×(劣化した膜の塩素強度)/(劣化促進前の膜の塩素強度)
この図8から明らかなように、塩素強度の低下にしたがい、電気抵抗値は低下しており、両者の間には明らかに相関関係がある。従って、蛍光X線分析により塩素強度を測定することによっても、上記の検量線から膜の電気抵抗値を推定することができる。
この図9から明らかなように、塩素強度の低下にしたがい、ヤング率は低下しており、両者の間には明らかに相関関係がある。従って、蛍光X線分析により塩素強度を測定することによっても、上記の検量線から膜のヤング率を推定することができる。
例えば、電気化学特性であれば、膜の電気抵抗値と輸率とが相関関係を有していることが知られているから、電気抵抗値の代わりに輸率を用いて検量線を作成しておくこともできる。ここで、輸率とは、いわゆる静的輸率に限らず、電気透析中の特定のイオン(例えばプロトン)の透過率、阻止率など、イオン透過性や選択性を表す指標を含む。また、物理特性であれば、含水率と電気抵抗率とが相関関係を有していることも知られている。従って、ヤング率以外にも含水率を用いて検量線を作成しておくことも可能である。同様に、物理特性としては、イオン交換容量、拡散係数、機械強度(破裂強度〔ミューレン法〕、突き刺し強度、引張試験によって得られる引張強度(最大点、破断点)、引張伸度(最大点、破断点)なども、これらの測定値を用いて検量線を作成しておくことが可能である。
ポリ塩化ビニル製織布を基材シートとして含有
含Clアニオン交換膜当りのポリ塩化ビニルの含有量:63質量%
(アニオン交換樹脂中のポリ塩化ビニル含量は約25質量%)
初期吸光度(波長600nm):0.0
初期塩素強度:15337cps
初期交流抵抗:2.36Ω・cm2
初期ヤング率:1085N/mm2
日本分光株式会社製可視光分光光度計V-730を使用し、透明の参照サンプルと試料膜について、波数600nmでの吸光度、または反射率を測定した。
試料膜と参照サンプルの吸光度、または反射率との差を、試料膜の吸光度、または反射率とした。
蛍光X線分析装置として、オリンパス株式会社ハンドヘルド蛍光X線装置VANTAを使用し塩素に帰属するKa線の強度を測定した。
抵抗測定アクリルセルに25℃に維持した0.5N食塩水溶液を循環した。
このセルに試料膜(含Clアニオン交換膜)を挟み、HIOKI製交流測定器LCR-4263Aを使用し、周波数1000cycleで全交流抵抗(R2)を測定した。また、膜を挟んでいない状態での交流抵抗(R1)を測定し、下記式より膜の交流抵抗(ER)を算出した。
ER=R2-R1
手製のアクリルセルに白金電極を装備し、テストピースを挟んだ。2M-H2SO4溶液をアノードセルに、0.25-H2SO4溶液をカソードセルに満たした。それぞれをマグネチックスターラーで攪拌し、25℃に維持した。電流密度10dA/dm2で3600秒通電し、アノードセルのH+イオン濃度(M2)、通電前の初期のH+イオン濃度(M1)を0.1M-NaOHで滴定し、下記式よりプロトン透過阻止率PR(%)を算出した。
PR=(M2/M1)×100
0.5M-NaCl溶液で平衡したテストピースを脱イオン水で洗浄後、2枚の濾紙の間に挟んで軽く圧力をかけ表面の水分を拭き取った。湿潤状態のテストピースの重量(Wa)を直ちに測定した。
続いて60℃に維持された真空乾燥器DP-32(ヤマトサイエンティフィック製)に入れ4時間真空乾燥した。乾燥テストピースの重量(Wb)を測定し、下記式より膜の含水率Wc(%)を算出した。
Wc=[(Wa-Wb)/Wb]×100
A&D株式会社製引張試験機「テンシロン」を用いて機械強度試験を行い、得られた応力-歪曲線からヤング率を算出した。
試料の含Clアニオン交換膜を、40℃に維持された0.01M、0.1M、1M濃度のNaOH水溶液にそれぞれ浸漬し、40℃下での劣化促進試験を行った。
これらの膜を、1時間後から一週間経過するまで所定時間ごとに取出し、可視光に対する吸光度(波長600nm)を測定し、及び電気抵抗(交流抵抗)保持率を算出し、相関関係を、図1に示した。
図1から理解されるように、電気抵抗保持率をy、600nm吸光度をxとして、最小二乗法により、40℃下での劣化促進試験では、y=-0.4501x+0.9873の回帰直線が得られた。相関係数R2は0.84だった。
一方、同じ含Clアニオン交換膜を、地下かん水の脱塩によって工業用水を製造する電気透析装置に装着し、槽内の液温が40℃を超えない条件で電気透析を1年間実行した膜(以下、「現場膜」とする)を調べた。肉眼観察では、水解発生によって、アニオン膜の一部が赤く劣化していた。この部分からサンプルを切り出して600nmでの吸光度及び交流抵抗保持率を測定したところ、吸光度は0.27、交流抵抗保持率は91%と測定された。しかるに、図1の回帰直線から、吸光度が0.27のときの交流抵抗保持率は87%と推定された。約4%の誤差であり概ね一致していた。
実施例1の劣化促進試験において、膜の交流抵抗を測定するのに変えてヤング率を測定し、吸光度とヤング率との関係を求める以外は同様に実施し、その結果を図2に示した。図2から理解されるように40℃下での劣化促進試験では、可視光(600nm)に対する吸光度とヤング率との関係はy=-0.5207x+0.9755の回帰直線が得られた。
次に、実施例1で得られた含Clアニオン交換膜の現場膜の吸光度は0.27であるから、回帰直線からヤング率は83%と推定された。実際の現場膜のヤング率は、79%であって概ね一致していた。
実施例1の劣化促進試験において、膜の交流抵抗を測定するのに変えて輸率を測定し、吸光度と輸率との関係を求める以外は同様に実施し、その結果を図3に示した。図3から理解されるように40℃下での劣化促進試験では、可視光(600nm)に対する吸光度と輸率との関係はy=-0.2407x+1.0023の回帰直線が得られた。
次に、実施例1で得られた含Clアニオン交換膜の現場膜の吸光度は0.27であるから、回帰直線から輸率保持率は94%と推定された。実際の現場膜の輸率保持率は、90%であって概ね一致していた。
実施例1の劣化促進試験において、膜の交流抵抗を測定するのに変えて含水率を測定し、吸光度と含水率との関係を求める以外は同様に実施し、その結果を図4に示した。図4から理解されるように40℃下での劣化促進試験では、可視光(600nm)に対する吸光度と含水率との関係はy=-0.2404x+1.0065の回帰直線が得られた。
次に、実施例1で得られた含Clアニオン交換膜の現場膜の吸光度は0.27であるから、回帰直線から含水率保持率は94%と推定された。実際の現場膜の含水率保持率は、92%であって概ね一致していた。
実施例1の劣化促進試験において、可視光に対する吸光度に変えて反射率を測定し、可視光(600nm)に対する反射率と電気抵抗保持率との関係との関係を求める以外は同様に実施し、その結果を図5に示した。
図5から理解されるように、電気抵抗保持率をy、600nm反射率をxとして、最小二乗法により、40℃下での劣化促進試験では、y=0.5897x+0.3871の回帰直線が得られた。相関係数R2は0.86だった。
実施例1で得られた含Clアニオン交換膜の現場膜の反射率は80%であり、電気抵抗保持率は86%と推定された。現場膜の電気抵抗保持率は91%であったので約5%の誤差があった。
実施例5の劣化促進試験において、NaOH水溶液の温度を60℃で行った以外は同様に実施し、その結果を図6に示した。図6から理解されるように60℃下での劣化促進試験結果を追加すると、可視光(600nm)に対する反射率と電気抵抗保持率との関係はy=0.5992x+0.2815の回帰直線が得られた。相関係数R2=0.74となり精度が低下した。
この結果、この回帰直線から、反射率80%に対する電気抵抗保持率は76%となり、劣化促進試験が40℃で実施された実施例5の結果(86%)と比較すると差は約10%となった。温度の高い実験の電気抵抗は低めになりやすく、40℃での推定に比べ低めの値になった。しかし、劣化が酷い場合はx軸の反射率が低い値になるので、時間をかけて検量線を作るのでなければ、劣化の傾向は十分に把握可能であり、簡易な判定方法として有意義であった。
実施例5の劣化促進試験において、膜の交流抵抗を測定するのに変えてヤング率を測定し、反射率とヤング率との関係を求める以外は同様に実施し、その結果を図7に示した。図7から理解されるように40℃下での劣化促進試験では、可視光(600nm)に対する反射率とヤング率との関係はy=0.8017x+0.1907の回帰直線が得られた。
次に、実施例5で示したように、実施例1で得られた含Clアニオン交換膜膜の現場膜の反射率は80%であるから、回帰直線からヤング率は83%と推定された。実際の現場膜のヤング率は、79%であって概ね一致していた。
実施例1の劣化促進試験において、可視光に対する吸光度に変えて塩素強度(蛍光X線分析)を測定し、塩素強度保持率と電気抵抗保持率との関係との関係を求める以外は同様に実施し、その結果を図8に示した。図8から理解されるように40℃下での劣化促進試験では、塩素強度保持率と電気抵抗保持率との関係はy=2.3286x-1.3733の回帰直線が得られた。
実施例1で得られた含Clアニオン交換膜の現場膜の塩素強度保持率は93%であり、電気抵抗保持率は79%と推定された。
実施例8の劣化促進試験において、膜の交流抵抗を測定するのに変えてヤング率を測定し、塩素強度保持率とヤング率との関係を求める以外は同様に実施し、その結果を図9に示した。図9から理解されるように40℃下での劣化促進試験では、塩素強度とヤング率との関係はy=2.9444x-2.0012の回帰直線が得られた。
実施例1で得られた含Clアニオン交換膜の現場膜の塩素強度保持率は93%であり、ヤング率保持率は74%と推定された。
Claims (6)
- 未使用のポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜を用意し、
該アニオン交換膜をアルカリ水溶液と接触させて劣化促進試験を行い、劣化の度合いごとに該膜の可視光に対する光学特性と、該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性を測定することにより、光学特性変化に対する該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性の変化を示す検量線を作成しておき、
使用中のポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜の可視光に対する光学特性を測定し、前記検量線に基づいて該光学特性から使用中の該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性を判定することを特徴とするポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜の検査方法。 - 未使用のポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜を用意し、
該アニオン交換膜をアルカリ水溶液と接触させて劣化促進試験を行い、劣化の度合いごとに該膜の蛍光X線強度分析による塩素強度と、該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性を測定することにより、蛍光X線強度変化に対する該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性の変化を示す検量線を作成しておき、
使用中のポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜の蛍光X線強度を測定し、前記検量線に基づいて該蛍光X線強度測定値から使用中の該アニオン交換膜の物理特性及び/又は電気化学特性を判定することを特徴とするポリ塩化ビニル成分含有アニオン交換膜の検査方法。 - 前記劣化の度合いごとに測定する、アニオン交換膜の可視光に対する光学特性が、吸光度である請求項1に記載の検査方法。
- 前記アニオン交換膜の物理特性として機械的強度又は含水率を判定する請求項1又は2に記載の検査方法。
- 前記アニオン交換膜の物理特性を判定する機械的強度が、ヤング率である請求項4に記載の検査方法。
- 前記アニオン交換膜の電気化学特性として電気抵抗又は輸率を判定する請求項1又は2に記載の検査方法。
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