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JP7174677B2 - 電力系統安定化システム、および電力系統安定化方法 - Google Patents
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電力系統安定化システム、および電力系統安定化方法 Download PDF

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Description

本発明は、電力系統安定化システム、および電力系統安定化方法に関する。
電力系統は、設備の老朽化が進むと共に、近年の再生可能エネルギーの導入などによる複雑化が進んでいる。そのため、電力系統の安定化が困難になってきている。
例えば特許文献1には、かかる課題として、「電力系統の運用制約を満足した上で、短周期及び長周期の双方の負荷変動に伴う送変電設備の過負荷を効率よく処理して、制御性及び経済性の向上を図る。」ことが記載されている。そしてその解決手段として、「MMI5にて送変電設備411~41nの運用限度値53の98%である過負荷未然防止用運用限度値52を設定する。過負荷未然防止対策部37は送変電設備411~41nのオンラインの潮流値が過負荷未然防止用運用限度値52を上回った場合に過負荷未然防止対策の計算値を求める。この過負荷未然防止対策部37にて短周期負荷変動時における送変電設備411~41nの過負荷解消を実現すると同時に、長周期負荷変動時の経済負荷配分制御による送変電設備411~41nの過負荷解消処理の周期期間の補完を行う。」ことが開示されている(特許文献1の要約書参照)。
また特許文献2には、同様の課題として「電力系統の安定化を図るため、電力系統の運用者に対し運用支援ができる電力系統における系統運用支援装置および方法、並びにその応用システムを提供する。」ことが記載されている。そしてその解決手段として、「電力系統の安定化を図るための系統運用支援装置であって、計測データと系統トポロジーと対象事故タイプを入力とし系統状態と予測事故時系統状態を算出する予測事故時系統状態算出部と、予測事故時系統状態算出部の結果を入力とし制御メニューを算出する制御メニュー算出部と、制御メニュー算出部の結果を入力とし復旧制御手順を算出する復旧制御手段算出部と、復旧制御手段算出部の結果と目標復旧時間パラメータを入力とし発電機出力調整時間シミュレーションと必要予防制御量算出と予防制御手順算出をする復旧予防制御手順算出部と、復旧制御手順と予防制御手順を表示する表示部を備えることを特徴とする電力系統における系統運用支援装置。」が開示されている(特許文献2の要約書参照)。
また非特許文献1には、「時刻同期された電圧と電流のフェーザデータを用いて、最小二乗法により潮流計算のヤコビアンを算出する」ことが開示されている。
特開2010-063320号公報 特開2019-017194号公報
Yu Christine Chen, Jianhui Wang,Alejandro D. Dominguez-Garcia, Peter W. Sauer, "Measurement-BasedEstimation of the Power Flow Jacobian Matrix," IEEE Transactionson Smart Grid, vol. 7, no. 5, pp. 2507-2515, Sept. 2016.
しかしながら、上述の従来技術では、電力系統の安定化を適切に行うことができないおそれがある。
例えば特許文献1では、感度係数が潮流変化に対する発電機出力であることを踏まえ、送変電設備潮流が運用限界値を超過すると、電力系統における過負荷を解消するため、発電機のなかで最も感度の大きい発電機の発電機目標出力値を算出する。一方、特許文献1では、感度係数を算出する際、電圧変動による影響や計測情報の伝搬遅延時間が考慮されておらず、また発電機出力を変動させた際に不安定振動が発生するケースを想定していない等、電力系統の安定化を適切に行うことができないおそれがある。
また例えば特許文献2では、復旧制御手段を算出する際、発電機の出力と系統内の位相の感度を用い、発電機の出力変化制約を考慮することで、より早く復旧制御をすることを可能としている。一方、特許文献2では、特許文献1と同様、感度係数を算出する際、電圧変動による影響が考慮されておらず、また気象変動による系統インピーダンスの変化に対応していない等、電力系統の安定化を適切に行うことができないおそれがある。
また例えば非特許文献1では、時刻同期された電圧と電流のフェーザデータを用いて、最小二乗法により潮流計算のヤコビアンを算出する。ここで、潮流計算のヤコビアンとは、特許文献1および特許文献2に記載された潮流感度と同じ役割を持ち、系統事象発生中の動きから、潮流感度を算出することができるものの、電圧変動による影響が考慮し切れておらず、電力系統の安定化を適切に行うことができないおそれがある。
本発明の目的は、上述の点を考慮してなされたものであり、電力系統の安定化を図る運用をより適切に支援することを1つの目的とする。
かかる課題を解決するため本発明においては、1つの目的を達成する一手段として、電力系統の安定化を支援する電力系統安定化システムは、前記電力系統に設置された計測器による計測データと、感度算出パラメータとを入力とし、前記電力系統の動的系統感度を作成する動的系統感度作成部と、前記動的系統感度と、前記電力系統における制御可能機器を示した制御可能機器リストと、系統異常解消手順作成方針とを入力とし、前記制御可能機器の制御によって前記電力系統を操作することで前記電力系統の系統異常を解消する系統異常解消手順を作成する系統異常解消手順作成部と、前記系統異常解消手順を出力する出力部とを備えるようにした。
本発明によれば、例えば、電力系統の安定化を図る運用をより適切に支援することができる。
実施形態1~4に係る系統安定化システムの適用対象である電力系統の構成の一例を示す図。 電力系統における潮流の一例を示す図。 電力系統における過負荷の一例を示す図。 送電線のインピーダンス変化の一例を示す図。 実施形態1の電力系統および系統安定化システムを含む構成の一例を示す図。 実施形態1の系統安定化システムの構成の一例を示す図。 実施形態1の系統安定化システムの全体処理の一例を示すフローチャート。 実施形態1の動的系統感度算出処理の一例を示すフローチャート。 入力変数と出力変数の一例を示す図。 ニューラルネットワークの一例を示す図。 系統異常解消手順作成処理の一例を示すフローチャート。 系統異常解消手順の表示の一例を示す図。 実施形態1の効果の一例を説明するための図。 実施形態2の系統安定化システムの構成の一例を示す図。 実施形態2の系統安定化処理の一例を示すフローチャート。 実施形態3の系統安定化システムの構成の一例を示す図。 実施形態4の系統安定化システムの構成の一例を示す図。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一または類似の要素および処理には、原則として同一の符号を付している。また、同一の機能および処理について、重複説明を省略する。なお、以下に説明する構成および処理はあくまで一例に過ぎず、本発明にかかる実施の態様が、以下の実施形態に限定されることを意図する趣旨ではない。また、各実施形態および変形例は、本発明の技術思想の範囲内および整合する範囲内でその一部または全部を組合せることができる。
本発明の実施形態の説明に先立ち、実施形態の適用対象である電力系統の構成および潮流と、制御対象とする現象の一例を説明する。
図1は、実施形態1~4に係る系統安定化システム1の適用対象である電力系統12の構成の一例を示す図である。実施形態1~4に係る電力系統12には、発電機G1~G3、送電線L1~L12、送電線同士あるいは配電線同士を繋ぐ母線B1~B17、遮断器CB1~CB26、交流電圧を変圧する変圧器T1~T7、電力系統内の各種パラメータを計測する計測器M1~M14、電力系統内の設備を制御するリレーR1~R14、風力から発電する風力発電機WT1、太陽光から発電する太陽光発電機PV1、水を用いて電気を貯蔵する揚水発電機WP1、電気を貯蔵する蓄電システムBS1、電圧を調整するために用いられる調相設備ST1、電力を消費する需要家DM1、電力を消費する電気自動車EV1、電気自動車EV1を電力系統に接続する電気自動車充電スタンドEVC1、および直流送電線DC1が接続されている。図1に示す電力系統12に含まれる要素の種別および数は、一例であり、図示に限られない。電力系統12は、位相調整器を備えてもよい。
図2は、電力系統12における潮流(電力の流れ)の一例を示す図である。発電機G1~G3で発電された電力は、変圧器T1~T7、送電線L1~L12、母線B1~B17、電気自動車充電スタンドEVC1、および直流送電線DC1を介して、需要家DM1、電気自動車EV1、揚水発電機WP1、蓄電システムBS1へ届けられる。この時、電力系統の潮流は、その負荷が適正範囲に収まっているため、電力系統が安定している。
図3は、電力系統12おける過負荷の一例を示す図である。例えば、送電線L1に系統事故があり、遮断器CB13~CB14が作動し送電線L7が遮断されると、送電ルートが制限され、結果として別の送電線L6で過負荷が生じている。送電線L6の過負荷が継続すると、送電線L6につながっている遮断器CB11~CB12が、送電線保護のために送電線L6を遮断してしまう。このように、その他の送電線も同様に過負荷が発生し、連鎖的に事故が波及するカスケード事故に発展し得る。
図4は、送電線のインピーダンス変化の一例を示す図である。また、図4に示すように、一般的には、送電線のインピーダンスは、過負荷や気象変動などにより温度に伴って上昇し、系統モデルのインピーダンスよりも高くなる。カスケード事故防止のためには、過負荷などに伴う温度上昇に応じたインピーダンス変化に追随するように、制御可能な機器を制御して送電線の過負荷などを解消する必要がある。
[実施形態1]
以下、図5~図13を参照して本発明の実施形態1を説明する。実施形態1では、図3に示すように、送電線L7が遮断されて送電線L6が過負荷(系統異常の一例)となった場合に、送電線L6の過負荷を解消する例を示す。
図5は、実施形態1の電力系統12および系統安定化システム1を含む構成の一例を示す図である。系統安定化システム1は、電力系統12の運用支援を行うコンピュータである。図1に示す電力系統12に存在する様々な機器は、通信網CN11を介して系統安定化システム1と接続されている。図5では、計測器M1と、計測器M2と、計測器M9と、発電機G1と、発電機G2とが通信網CN11を介して系統安定化システム1と接続されている例を示す。図5において、その他の機器は図示を省略しているが、同様に通信網CN11を介して系統安定化システム1と接続されている。
系統安定化システム1は、通信網CN11との通信インターフェースである通信部H2と、ユーザや別システムから情報を入力する入力部H3と、計算処理をするためのCPU(Central Processing Unit)91と、計算中にデータを保持するメモリH1と、算出結果などを出力する出力部6と、種々のデータベースを備える。この種々のデータベースとして、計測データベースDB1と、動的系統感度データベースDB2と、制御可能機器リストデータベースDB3と、動的系統感度作成プログラムデータベースDB4と、系統異常解消手順作成プログラムデータベースDB5と、系統異常解消手順データベースDB6と、感度算出パラメータデータベースDB7、系統異常解消手順作成方針データベースDB8と、がデータバスH4に接続されている。
通信部H2は、通信網11に接続するための回路および通信プロトコルを備える。メモリH1は、RAM(Random Access Memory)として構成され、各プログラムデータベースから読み出されたコンピュータプログラムを記憶したり、各処理に必要な計算結果データおよび画像データ等を記憶したりする。メモリH1は、計測データベースDB1に格納される計測データD1、出力部6への表示用の画像データ、CPU91による計算一時データおよび計算結果データなどを一時格納するメモリである。
CPU91は、各プログラムデータベースから所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行する。CPU91は、一つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、または、計算サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。CPU91は、各プログラムデータベースからメモリH1に読み出された各プログラムを実行し、各種データベースから取得したデータを演算処理する。CPU91は、演算処理において、メモリH1の物理メモリを使用するが、仮想メモリを使用してもよい。
またCPU91は、必要な画像データを生成して出力部6(例えば表示ディスプレイ画面)に出力する。メモリH1に格納された画面データは、出力部6に送られて表示される。出力部6は、例えばディスプレイやプリンタ装置や音声出力装置、または携帯端末やウェアラブルの一つ以上として構成される。また、系統安定化システム1は、通信部H2を用いて、外部システムや外部機能と連携してもよい。
計測データベースDB1は、電力系統12における計測データD1を含む。ここで、計測データD1とは、電力系統12の計測器M1~M14から得られる各時刻における「電圧」、「電流」、「位相」、「周波数」、「周波数変化率」、「有効電力」、「無効電力」、「発電機角速度」等の情報を含む計測データである。計測器10は、例えば、PMU(Phasor Measurement Units)やVT(Voltage Transformer)やPT(Potential Transformer)やCT(Current Transformer)やテレメータ(TM:Telemeter)などの電力系統に設置される計測機器や計測装置である。計測器M1~M14から得られた計測データD1は、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)などの電力系統12に設置された計測値の集約装置に集約されて収集される。
動的系統感度データベースDB2は、動的系統感度作成プログラムデータベースDB4に格納されている動的系統感度作成プログラムD4の実行によって生成された動的系統感度D2を格納する。なお、詳細は後述するが、動的系統感度D2は、計測データD1に含まれる或る変数の変化量に対する他の変数の変化量の関数を表し、例えば、行列、多項式、ニューラルネットワークで表される。
制御可能機器リストデータベースDB3は、制御可能機器リストD3を格納する。制御可能機器リストD3は、系統安定化システム1により制御可能な機器、あるいは系統安定化システム1の出力を用いて制御可能な機器のリストを含む。ここで、制御可能な機器の例としては、図1に示した遮断器、変圧器、発電機、充電器、蓄電システム、揚水発電機、調相設備、リレーのほか、位相調整器などが挙げられる。
動的系統感度作成プログラムデータベースDB4は、動的系統感度D2を作成するための動的系統感度作成プログラムD4を格納する。系統異常解消手順作成プログラムデータベースDB5は、系統異常解消手順D6を作成するための系統異常解消手順作成プログラムD5を格納する。
系統異常解消手順データベースDB6は、系統異常解消手順作成プログラムD5の実行によって生成された系統異常解消手順D6を格納する。後述するが、系統異常解消手順D6は、過負荷を始めとする電力系統12の異常を解消するための手順を含み、その手順に従って電力系統12が操作されることで、電力系統12を異常解消へ向かわせる。
感度算出パラメータデータベースDB7は、動的系統感度D2を作成するための感度算出パラメータD7を格納する。感度算出パラメータD7は、動的系統感度D2を作成する際の、「入力および出力とする各計測データの種別および時系列上の範囲」、「入力と出力との間で考慮すべき伝搬遅延時間」、「計測データのノイズ除去方法」、「再計算条件」、「感度関数の形式」、および「感度関数の算出方法」などを定める。
系統異常解消手順作成方針データベースDB8は、系統異常解消手順作成方針D8を格納する。系統異常解消手順作成方針D8は、対象とする「系統異常の種別」、「系統異常解消手順の再計算周期」、「許容される操作量」、「望ましい系統異常の解消時間」、および「系統異常解消を始めるまでの待機時間」など、系統異常解消手順D6に関係する方針を含む。
電力系統12に含まれる計測器M1~M14は、電力系統12における各設置個所で取得した計測値を、通信網CN11を介して、系統安定化システム1の通信部H2へ送信する。系統安定化システム1は、受信した計測データを一時的にメモリH1に保持し、その後、計測データD1として計測データベースDB1に格納する。
また、図5に示す構成において、入力部H3は、例えば、キーボードスイッチ、マウス等のポインティング装置、タッチパネル、タブレット、カメラなどを用いた目線推定装置、脳波変換装置、音声指示装置等の少なくともいずれか一つを備えて構成できる。入力部H3は、上記以外のユーザーインターフェースであってもよい。
図6は、実施形態1の系統安定化システム1の構成の一例を示す図である。系統安定化システム1を、図5ではハードウェア構成の観点で表しているが、図6では処理機能構成の観点で表し、一部の構成の図示を省略している。
系統安定化システム1は、計測データD1と、制御可能機器リストD3と、感度算出パラメータD7と、系統異常解消手順作成方針D8と、動的系統感度作成部2と、系統異常解消手順作成部3と、出力部6とを有する。
これらのデータに関連するデータベースとして、系統安定化システム1は、計測データベースDB1、動的系統感度データベースDB2、制御可能機器リストデータベースDB3、系統異常解消手順データベースDB6、感度算出パラメータデータベースDB7、系統異常解消手順作成方針データベースDB8を有する。これらのデータベースのデータは、予め準備されるか、中間的な処理により生成されるか、あるいは最終的な出力として生成される。
動的系統感度作成部2は、計測データD1と感度算出パラメータD7を入力として動的系統感度D2を作成する。また、系統異常解消手順作成部3は、制御可能機器リストD3と系統異常解消手順作成方針D8を入力とし、系統異常解消手順D6を生成する。動的系統感度作成部2および系統異常解消手順作成部3の処理の詳細は後述する。
次に図7を参照して、本実施形態における系統安定化システム1の全体処理フローの一例を説明する。図7は、実施形態1の系統安定化システム1の全体処理の一例を示すフローチャートである。系統安定化システム1の全体処理は、周期的に実行される。
先ずステップS1では、動的系統感度作成部2は、計測データD1と感度算出パラメータD7を入力とし、動的系統感度D2を作成し出力する。続いてステップS2では、系統異常解消手順作成部3は、動的系統感度作成部2によって作成された動的系統感度D2と制御可能機器リストD3と系統異常解消手順作成方針D8を入力とし、系統異常解消手順D6を作成し出力する。続いてステップS3では、出力部6は、系統異常解消手順作成部3によって作成された系統異常解消手順D6などを出力する。
次に図8を参照して、図7のステップS1の詳細フローを説明する。図8は、実施形態1の動的系統感度算出処理の一例を示すフローチャートである。先ずステップS101では、動的系統感度作成部2は、計測データD1と感度算出パラメータD7を読み込む。
次にステップS102では、動的系統感度作成部2は、感度算出パラメータD7で指定された「再計算条件」が充足されているか否かを判定する。動的系統感度作成部2は、再計算条件が充足されている場合(ステップS102Yes)はステップS103へ処理を移し、再計算条件が充足されていない場合(ステップS102No)はステップS107へ処理を移す。
ここで、ステップS102では、例えば前回の動的系統感度D2の算出から一定時間が経過したかといった「再計算条件」に基づいて、動的系統感度D2の再計算の要否が判定される。前回算出から一定時間が経過すると、送電線や機器の温度が変化し、図4に示すようなインピーダンス変化が生じている可能性があるためである。あるいは、計測データD1が大きく変化したかといった「再計算条件」に基づいて、動的系統感度D2の再計算の要否が判定されてもよい。前回算出から一定時間が経過した、あるいは計測データD1が大きく変化した場合は、電力系統12の状態が大きく変化した可能性があり、前回算出した動的系統感度D2がすでに無効になっている、あるいは誤差が生じ始めていることを示唆する。また、感度関数をチェックし、ある一定誤差を超えていた場合においても、同様のことが言える。
そこで、感度算出パラメータD7に予め「再計算条件」を指定しておくことで、このような要因を考慮し、系統安定化システム1あるいは動的系統感度D2を利用する外部システムが不適切な動的系統感度D2に基づいて処理を行うという不都合を回避することができる。また、感度算出パラメータD7を周期的に更新入力することで、例えば、再生可能エネルギー源の増加に伴って、より短い周期で感度算出パラメータD7が必要となった場合でも対応が可能となる。
ステップS103では、動的系統感度作成部2は、感度算出パラメータD7に基づき、対象とする時刻と計測データD1の種別に基づいて、計測データD1から、電圧、電流、位相、周波数、周波数変化率、有効電力、無効電力、および発電機角速度のうちの一つ以上を入力変数xおよび出力変数yとして選択する。
なお、入力変数xは、少なくとも電圧を含むことがより好適である。これにより、系統モデル感度がなくとも、動的系統感度を用いて、電圧変動の影響を考慮して電力系統12の安定化をより適切に行うことができる。
ここで、ステップS103について詳細に説明する。動的系統感度作成部2の最終目標は、下記式(1)で表される感度関数fを算出することである。
Figure 0007174677000001
ここで、Δyは出力変数の変化量、Δxは入力変数の変化量である。感度関数fを計測データD1に基づいて算出する際には、感度関数fの算出に用いる計測データD1を指定しなければならない。図9を参照して、入力変数と出力変数の指定について説明する。
例えば、図9に示すように、図3の電力系統12における計測器M1、M2の電圧および有効電力と、計測器M9の有効電力の計測データがあるとする。この時、感度算出パラメータD7では、入力とする計測データの時系列上と計測種別の範囲と、出力とする計測データの時系列上と計測種別の範囲を指定する。この際、入力と出力の時系列は一致する必要はない。図9の例では、計測器M1の有効電力と、計測器M2の電圧および有効電力とを入力変数xとし、計測器M9の有効電力を出力変数yとする。すなわち、入力変数xの計測種別の範囲は計測器M1の有効電力と計測器M2の電圧および有効電力であり、その時系列上の範囲は図9に示す囲み破線BL1の時間範囲である。また、出力変数yの計測種別の範囲は計測器M9の有効電力であり、その時系列上の範囲は図9に示す囲み破線BL2の時間範囲である。
図8の説明に戻る。次にステップS104では、動的系統感度作成部2は、感度算出パラメータD7に基づき、伝搬遅延とノイズを除去した各入力変数xと、各出力変数yの変化量を算出する。
ここで、ステップS104について詳細に説明する。ステップS104では、動的系統感度作成部2は、ステップS103で算出された入力変数xに計測誤差やノイズが乗っている可能性があるため、下記式(2)および式(3)の関数を用いて、まずノイズを除去する。
Figure 0007174677000002
Figure 0007174677000003
上記式(2)および式(3)において、ノイズ除去に使われる関数n(・)は、例えばバンドパスフィルタなど特定周波数のノイズを除去、または軽減するものを用いている。次に動的系統感度作成部2は、感度算出パラメータD7で指定されている伝搬遅延時間diと変化値算出インターバルTを用いて、入力変数xの変化量Δxおよび出力変数yの変化量Δyをそれぞれ算出する。
Figure 0007174677000004
Figure 0007174677000005
ここで、xi~はフィルタされたl個の入力変数のうちのi番目の入力変数であり、yj~はフィルタされたm個の出力変数のうちのj番目の出力変数である。また、伝搬遅延時間diは入力変数xi~ごとに異なる値を用意しているが、一定値にしてもよい。広範囲にわたる計測データを用いる場合には、出力変数yの計測器の所定近傍に存在する計測器に対応する入力変数xに対してより小さい伝搬遅延時間を設け、所定近傍外に存在する計測器に対応する入力変数xに対してより大きい伝搬遅延時間を設けてもよい。
次にステップS105では、動的系統感度作成部2は、感度算出パラメータD7に基づき、動的系統感度を疑似逆行列の算出、ニューラルネットワークの学習、または誤差最小化による多項式近似などによって算出する。
ここで、ステップS105について詳細に説明する。ステップS105では、上記式(1)の感度関数の形式を指定し、その指定された形式に応じて動的系統感度を算出する。
例えば、指定された感度関数の形式が、下記式(6)であるとする。下記式(6)の場合、例えば、動的系統感度は疑似逆行列を用いて算出できる。
Figure 0007174677000006
また、別例として、下記式(7)のように、Δxのノルムの多項式で感度関数を表してもよい。
Figure 0007174677000007
この場合は線形回帰分析が利用できないため、下記式(8)の誤差最小化問題を解くことで、動的系統感度を算出する。
Figure 0007174677000008
また、感度算出パラメータD7でニューラルネットワークの形式が指定されている場合には、図10に示すようなLSTM(Long Short Term Memory)ベースのニューラルネットワークを学習し、この学習済みのニューラルネットワークそのものを動的系統感度D2としてもよい。
図8の説明に戻る。次にステップS106では、動的系統感度作成部2は、ステップS105で算出された動的系統感度を出力する。動的系統感度作成部2は、ステップS106が終了すると、図7のステップS2へ処理を移すと共にステップS107へ処理を移す。ステップS107では、動的系統感度作成部2は、一定時間待機後、次の再計算タイミングにおけるステップS101へ処理を移す。
次に図11を参照して、図7のステップS2の詳細フローを説明する。図11は、系統異常解消手順作成処理の一例を示すフローチャートである。先ずステップS201では、系統異常解消手順作成部3は、動的系統感度D2と制御可能機器リストD3と系統異常解消手順作成方針D8を入力する。
次にステップS202では、系統異常解消手順作成部3は、「系統異常」の有無をチェックする。系統異常解消手順作成部3は、系統異常が有る場合(ステップS202YES)はステップS203へ処理を移し、系統異常がない場合(ステップS202NO)はステップS207へ処理を移す。
ここで、ステップS202について詳細に説明する。ステップS202での「系統異常」とは、例えば計測器が設置された電力系統12の一つ以上の箇所で、過負荷、電圧の上下限逸脱、電圧安定性、周波数安定性、周波数上下限、同期安定性低下などが発生していることをいう。系統異常のチェック方法については、計測器による計測データに閾値を設ける、信号処理から特徴を抽出する、統計値から判別する等を用いれば良い。
図11の説明に戻る。次にステップS203では、系統異常解消手順作成部3は、系統異常解消手順作成方針D8に基づき、動的系統感度を目的関数とする充足解問題、または、動的系統感度を制約式とする最適化問題を作成する。
ここで、ステップS203について詳細に説明する。系統異常解消手順作成方針D8には、系統異常解消をするにあたり、許容される操作量、望ましい系統異常の解消時間などが格納されている。系統異常解消手順作成部3は、許容される操作量や望ましい系統異常の解消時間などを用い、下記式(10)を制約式とする式(9)の最適化問題を構築する。
Figure 0007174677000009
Figure 0007174677000010
ここで、上記式(9)におけるcost(f(Δx))は、操作手順に必要とされるコストを表し、例えば、過負荷を解消するまでの時間を意味する。上記式(10)は、現在の状態ynowから、感度関数fに基づいて入力変数Δxを変化させた場合、出力変数yが正常範囲に収まることを意味する。
また、系統異常解消手順作成方針D8で最適性が求められていなければ上記式(9)の目的関数自体を制約化し、上記式(10)を下記式(11)で置き換えて、下記式(11)を制約式とする式(9)の充足解問題として取扱ってもよい。
Figure 0007174677000011
一例として、図9で示すような入力変数xの電圧Vおよび有効電力Pと、出力変数yの有効電力Pから算出された動的系統感度を用いて送電線の過負荷を解消する最適化問題を構築する場合を説明する。図9の場合、下記式(13)を制約式とする式(12)の最適化問題を構築する。
Figure 0007174677000012
Figure 0007174677000013
なお、最適化問題や充足解問題を構築する際には、主目的である系統異常を解消する制約に加え、別の系統異常が発生しないよう、他の制約を加えてもよい。
図11に説明を戻す。次にステップS204では、系統異常解消手順作成部3は、ステップS203で構築された問題を解くことで系統異常解消手順を作成する。次にステップS205では、系統異常解消手順作成部3は、ステップS204で作成された系統異常解消手順のコスト(系統異常解消に要する時間)を試算する。次にステップS206では、系統異常解消手順作成部3は、ステップS204で作成された系統異常解消手順などを出力部6へ出力する。系統異常解消手順作成部3は、ステップS206が終了すると、図7のステップS3へ処理を移すと共にステップS207へ処理を移す。ステップS207では一定時間待機後、次の再計算タイミングにおけるステップS201へ処理を移す。
次に、図12を参照して、図7のステップS3で出力部6に表示される表示例を説明する。図12は、系統異常解消手順の表示6aの一例を示す図である。系統安定化システム1は、電力系統12の運用に関わる指令所に設置されることが想定されており、電力系統運用者(ユーザ)に対して、図12に例示するような表示6aを表示する。
図12の表示6aは、電力系統運用者に、電力系統図6a1、入力変数6a2、感度算出パラメータ6a3、制御可能機器リスト6a4、動的系統感度6a5、系統異常解消手順6a6、系統異常解消コスト6a7、および自動制御6a8などを表示する。
電力系統図6a1は、図3に例示するような送電線L6に過負荷が発生している現在の電力系統12の状態を表す。また、入力変数6a2は、動的系統感度D2の算出の際に制御可能機器リストD3から選択された制御可能機器の所定近傍に設置された計測器の計測データのうち、入力変数とするデータの種別を表す。入力変数6a2は、例えば図9に例示するような、発電機G1近くに設置された計測器M1の有効電力と、発電機G2近くに設置された計測器M2の電圧および有効電力である。
また、感度算出パラメータ6a3は、例えば感度算出パラメータD7のうちの「再計算条件」の値“3秒”を示している。また、制御可能機器リスト6a4は、動的系統感度D2の算出の際に制御可能機器リストD3から制御可能機器として選択された発電機G1およびG2を示している。
また、動的系統感度6a5は、入力変数6a2で示される入力変数および出力変数をもとに動的系統感度作成部2によって作成された動的系統感度D2を示す。図12では、動的系統感度6a5は、発電機G1の出力操作量に対する送電線L6の有効電力の変化量と、発電機G2の出力操作量に対する送電線L6の電力の変化量を示している。例えば、L6/G1:0.8MW/MWは、発電機G1の発電量を1MWだけ変化させると、送電線L6の有効電力が0.8MWだけ変化することをすることを示す。発電機G2についてのL6/G1:0.8MW/MWも同様である。
系統異常解消手順6a6は、系統異常解消手順作成部3によって作成された系統異常解消手順である。図12では、系統異常解消手順6a6は、発電機G1を+10MWだけ出力増加および発電機G2を-10MWだけ出力減少させる系統異常解消手順を示している。
系統異常解消コスト6a7は、系統異常解消手順6a6に示された手順を実行開始してから系統異常が解消するまでの時間を表し、図12の例では“5分”である。自動制御6a8は、実施形態3で後述する、系統異常解消手順6a6の自動実施機能が有効であるか無効であるかを示す。
電力系統運用者は、表示6aを参照して、系統異常の対策立案の参考とすることができる。
次に、図13を用いて、本実施形態の効果について説明する。図13は、実施形態1の効果の一例を説明するための図である。図13のグラフでは、横軸を時刻とし、縦軸を過負荷中の送電線の潮流とし、系統インピーダンスベース(系統モデルベース)の系統モデル感度を用いた場合の潮流変化を破線で示し、動的系統感度を用いた場合の潮流変化を実線で示し、過負荷解消の比較イメージを示している。
系統モデル感度を用いた場合、対策を終了させるまでの時間がかかる一方、動的系統感度を用いた場合は、感度算出パラメータD7の設定によって、計測データD1の傾向から対策の見直し(図12中の“再計算1”および“再計算2”(図8の動的系統感度算出処理の実行周期に該当))が可能となる。このため、より早い対策ができるようになり、電力系統をより安定化することができる。
本実施形態によれば、電力系統の安定化を図るよう、電力系統の運用に関わるシステム、機器、人等に適切な運用支援ができる、系統安定化システム1を提供することができる。また、本実施形態によれば、電力系統のインピーダンス情報を必要とせず、計測器による計測値ベースで系統の異常を解消できるため、インピーダンス情報が不完全な系統などでも、電力系統の安定化に活用できる。なお、インピーダンスマップを含む系統モデルとの連携方法については、実施形態2として後述する。
なお、本実施形態では、過負荷を対象としたが、前述したとおり、電力系統における他の事象にも対応できる。
[実施形態2]
図14~図15を参照して本発明の実施形態2を説明する。実施形態2では、実施形態1の動的系統感度に、既存の動的系統モデル感度を組み合せた場合について説明する。
図14は、実施形態2の系統安定化システム1Bの構成の一例を示す図である。系統安定化システム1Bは、実施形態1の系統安定化システム1と比較して、系統モデルデータベースDB9をさらに有し、動的系統感度作成部2に代えて動的系統感度作成部2Bを有し、感度算出パラメータデータベースDB7に代えて感度算出パラメータデータベースDB7Bを有する。
系統モデルデータベースDB9は、対象とする電力系統におけるブランチ間の一つ以上のインピーダンス情報およびノード間の接続情報を含んだ系統モデルD9を格納する。系統モデルD9は、動的系統感度作成部2Bへ入力される。感度算出パラメータデータベースDB7Bに格納されている感度算出パラメータD7Bには、系統モデルの部分活用の方針が含まれる。
次に図15を参照して、実施形態2の動的系統感度算出処理を説明する。図15は、実施形態2の動的系統感度算出処理の一例を示すフローチャートである。実施形態2では、図8に示す実施形態1の動的系統感度算出処理に代えて、図15に示す動的系統感度算出処理が実行される。
先ずステップS101Bでは、動的系統感度作成部2Bは、計測データD1と感度算出パラメータD7Bと系統モデルD9を読み込む。次にステップS102Bでは、動的系統感度作成部2Bは、感度算出パラメータD7Bで指定された「再計算条件」が充足されているか否かを判定する。動的系統感度作成部2Bは、再計算条件が充足されている場合(ステップS102BYes)はステップS103Bへ処理を移し、再計算条件が充足されていない場合(ステップS102BNo)はステップS115Bへ処理を移す。
ステップS103Bでは、動的系統感度作成部2Bは、感度算出パラメータD7BにおいてステップS101Bで読み込んだ系統モデルD9を部分活用すると指定されているか否かを判定する。動的系統感度作成部2Bは、系統モデルD9を部分活用する場合(ステップS103BYES)にステップS104Bへ処理を移し、系統モデルD9を部分活用しない場合(ステップS103BNO)にステップS109Bへ処理を移す。
動的系統感度作成部2Bは、ステップS104B~S106Bにおいて、動的系統感度の算出対象の部分系統に対して、図8のステップS103~S105と同様の処理を行う。
ステップS106Bに続きステップS107Bでは、動的系統感度作成部2Bは、系統モデル感度と、ステップS107Bで算出した動的系統感度とを結合して作成した系統感度を、対象の電力系統の動的系統感度D2とする。
ここで、ステップS107Bについて詳細説明する。電力系統におけるインピーダンスが判明している場合の系統モデルD9ベースの感度(系統モデル感度)は、直流法に基づき、インピーダンスマトリックスの逆行列から求めることができる。その際、下記式(14)のような系統モデル感度Aが求まる。
Figure 0007174677000014
j番目の部分系統において実施形態1で算出したような動的系統感度を用いる場合は、上記式(14)のj番目の部分系統の系統モデル感度の項を動的系統感度の感度関数fで置き換え、下記式(15)を作成する。
Figure 0007174677000015
図15に説明を戻す。次にステップS108Bでは、動的系統感度作成部2Bは、ステップS107Bで作成した動的系統感度D2を出力する。
他方ステップS109B~S111Bでは、動的系統感度作成部2Bは、それぞれ図8のステップS103~S105と同様の処理を行う。
次にステップS112Bでは、動的系統感度作成部2Bは、ステップS111Bで算出した動的系統感度と系統モデルD9の系統モデル感度との誤差に基づいて、ステップS111Bで算出した動的系統感度が有効範囲内であるか否かを判定する。
具体的には、ステップS112Bでは、動的系統感度作成部2Bは、上記式(14)で求めた系統モデル感度と、ステップS111Bで算出した動的系統感度の差の絶対値を、感度算出パラメータD7Bに含まれる誤差範囲εと比較する。そして、動的系統感度作成部2Bは、下記式(16)が成立する場合にステップS111Bで算出した動的系統感度は有効範囲内であると判定し(ステップS112BYES)、ステップS113Bへ処理を移す。一方、動的系統感度作成部2Bは、下記式(16)が成立しない場合にステップS111Bで算出した動的系統感度は有効範囲外であると判定し(ステップS112BNO)、ステップS114Bへ処理を移す。
Figure 0007174677000016
ステップS113Bでは、動的系統感度作成部2Bは、ステップS111Bで算出された動的系統感度D2を出力する。また、ステップS114Bでは、動的系統感度作成部2Bは、ステップS101B読み込んだ系統モデルD9に基づいて算出された系統モデル感度を、動的系統感度D2に代えて出力する。ステップS108B、S113B、またはS114Bが終了すると、動的系統感度作成部2Bは、図7のステップS2へ処理を移すと共にステップS115Bへ処理を移す。ステップS115Bは、図8のステップS107と同様の処理である。
本実施形態によれば、動的系統感度と系統モデル感度とを組み合わせることで、計測データの異常などによる動的系統感度の異常の発生を防止でき、系統安定化システム1Bの信頼性をより高めることができる。
[実施形態3]
実施形態3では、実施形態1の系統安定化システム1または実施形態2の系統安定化システム1Bに、電力系統12の自動制御機能を追加した系統安定化システム1Cについて説明する。図16は、実施形態3の系統安定化システム1Cの構成の一例を示す図である。
図16では、実施形態1の系統安定化システム1に、制御部4を追加した機能ブロック図を示す。制御部4は、系統異常解消手順作成部3によって算出された系統異常解消手順D6に基づいて、通信網CN11を介して、電力系統12の各所にある制御対象機器に対して制御信号を送信する。制御部4は、ユーザにより自動制御の有効化の指令が入力されてもよい。
本実施形態によれば、系統安定化システム1Cは、系統異常に際して電力系統12を直接制御することで、電力系統12をより迅速かつ正確に安定化することができる。また、ユーザの判断では直接制御が困難な、図1に示す直流送電線DC1、蓄電システムBS1、揚水発電機WP1、太陽光発電設備PV1、風力発電機WT1、電気自動車充電スタンドEVC1なども制御できるようにもなる。
[実施形態4]
実施形態4では、系統安定化システムにおいて、系統状態データを効率的に取得する計測器の設置個所を決定する手法について説明する。図17は、実施形態4の系統安定化システム1Dの構成の一例を示す図である。系統安定化システム1Dは、実施形態1~3の系統安定化システム1~1Cに計測器設置個所決定部5が追加された構成であるが、図17では計測器設置個所決定部5以外の構成の図示を省略している。
計測器設置個所決定部5は、以下に説明するように、系統の接続構成と重複計測数と既存計測器の位置とを入力とし、計測器の設置個所を出力する、例えば非ノイマン型計算機である。
電力系統12の状態を監視するため、一般的には母線に計測器を設置することで、送電線の潮流と母線の電圧を計測することができる。実施形態1で説明したPMUは、一つの母線に設置することで、設置母線に接続されたすべての送電線や配電線などの潮流も計測できる。
電力系統運用において、すべての母線に計測器を設置することが理想である一方、様々や制約に基づいて、設置できる計測器が制限されることがある。
そこで、本実施形態では、系統安定化システム1Dのユーザにより、電力系統12の接続構成と重複計測数と既存計測器の位置を入力し、必要とされる計測器の数が最小となることと、計測器がすべての母線を観測できることと、必要とされる計測器の数を確保できることと、を変数の値が0と1しかとり得ない一つの目的関数で表した上で、変数の値が-1か1で表せるイジングモデルに変換し、非ノイマン型計算機で計算することで、計測器の最適な設置個所を決定する。
そのため、基本的には、下記式(17)で表せる目的関数に基づいて、計測器の設置個所を決定しなければならない。
Figure 0007174677000017
ここで、diはi番目の母線に計測器を設置する際にかかるコスト、qiはi番目の母線に計測器を設置するか否かを表す。系統にある母線数はNである。なおqi={0,1}であり、i番目の母線に計測器を設置する設置する場合にはqi=1、設置しない場合はqi=0である。
また、必要とされる計測器を決定するためには、送電線によって接続された母線同士のうち一つ以上に計測器が設置される必要がある。母線間の接続状態を表す、下記式(18)のような行列Cを導入する。
Figure 0007174677000018
例えば、母線1と母線2が接続されている場合にはC1,2=1のように表され、母線1と母線2が接続されていない場合にはC1,2=0のように表される。各母線を観測するためには、接続されている母線iに接続されている母線の一つ以上が選択されている必要があるため、下記式(19)のような制約を必要とする。
Figure 0007174677000019
上記式(19)の制約は、母線iを観測できる計測器が設置された合計値が1以上であることを示している。同じ原理を用いて、例えば緊急的な機器故障に備えて、Vi個以上を担保したい場合には、下記式(20)を用いる。
Figure 0007174677000020
ただし、1≦Vi≦N|Vi∈自然数全体の集合、であるとする。同じグループ内ですでに計測器が一つ以上ある場合には、Viを適宜減らしてもよい。
このような制約を、QUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)の式で表すと、下記式(21)のようになる。
Figure 0007174677000021
yi={0,1}で目的関数の式と組合せ、下記式(22)の目的関数を構築する。
Figure 0007174677000022
上記式(22)の目的関数は、NP困難問題であるため、直接計算することは困難である。そこで、イジングモデルのエネルギーを最小化する非ノイマン型の計算機に投入し、解を得る。
イジングモデルは、下記式(23)で表されるエネルギーを最小化する。σi={-1,1}であるとする。qi=(σi+1)/2を用いて、目的関数をイジングモデルに変換することで、qiを決定し、必要とされる計測器の位置を算出する。
Figure 0007174677000023
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、矛盾しない限りにおいて、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成で置き換え、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、構成の追加、削除、置換、統合、または分散をすることが可能である。また実施形態で示した構成および処理は、処理効率または実装効率に基づいて適宜分散または統合することも可能である。
1,1B,1C,1D:系統安定化システム、2,2B:動的系統感度作成部、3:系統異常解消手順作成部、4:制御部、5:計測器設置個所決定部、12:電力系統

Claims (14)

  1. 電力系統の安定化を支援する電力系統安定化システムであって、
    前記電力系統に設置された計測器による計測データと、感度算出パラメータとを入力とし、前記電力系統の動的系統感度を作成する動的系統感度作成部と、
    前記動的系統感度と、前記電力系統における制御可能機器を示した制御可能機器リストと、系統異常解消手順作成方針とを入力とし、前記制御可能機器の制御によって前記電力系統を操作することで前記電力系統の系統異常を解消する系統異常解消手順を作成する系統異常解消手順作成部と、
    前記系統異常解消手順を出力する出力部と
    を備え
    前記動的系統感度は、前記電力系統における或る計測器による計測データを入力変数とし、他の計測器による計測データを出力変数とした場合の、前記入力変数の変化量に対する前記出力変数の変化量を表す感度関数である
    ことを特徴とする電力系統安定化システム。
  2. 前記感度関数は、行列、多項式、およびニューラルネットワークの何れかの形式である
    ことを特徴とする請求項に記載の電力系統安定化システム。
  3. 前記制御可能機器には、遮断器、変圧器、発電機、充電器、蓄電システム、揚水発電機、調相設備、位相調整器、およびリレーの一つ以上が含まれる
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力系統安定化システム。
  4. 前記感度算出パラメータは、前記動的系統感度を作成する際に入力および出力とする各計測データの種別および時系列上の範囲と、入力と出力との間で考慮すべき伝搬遅延時間と、前記計測データのノイズ除去方法と、前記動的系統感度の再計算条件と、前記感度関数の形式と、前記感度関数の算出方法とを含む
    ことを特徴とする請求項に記載の電力系統安定化システム。
  5. 前記動的系統感度作成部は、
    前記感度算出パラメータで指定された再計算条件が充足されている場合に、前記感度算出パラメータにおいて指定された入力および出力とする各計測データの種別および時系列上の範囲に基づいて、前記計測データから電圧、電流、位相、周波数、周波数変化率、有効電力、無効電力、および発電機角速度の一つ以上を入力変数および出力変数として選択し、該入力変数に対する該出力変数の変化量から前記動的系統感度を算出する
    ことを特徴とする請求項に記載の電力系統安定化システム。
  6. 前記入力変数は、少なくとも前記電圧を含む
    ことを特徴とする請求項に記載の電力系統安定化システム。
  7. 前記動的系統感度作成部は、
    前記変化量を算出する際に、前記感度算出パラメータに基づいて、入力および出力とする各計測データの種別および時系列上の範囲を指定して前記入力変数および前記出力変数を選択し、前記入力変数および前記出力変数の各計測データの伝搬遅延とノイズを除去する
    ことを特徴とする請求項に記載の電力系統安定化システム。
  8. 前記系統異常解消手順作成方針は、前記系統異常の種別、前記系統異常解消手順の再計算周期、前記系統異常の解消時間、前記系統異常の解消を始めるまでの待機時間の少なくとも一つ以上を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力系統安定化システム。
  9. 前記系統異常解消手順作成部は、
    前記系統異常解消手順作成方針に基づいて、前記系統異常の有無をチェックし、前記系統異常が有る場合に、前記動的系統感度を目的関数とする充足解問題、あるいは、前記動的系統感度を制約式とする最適化問題を作成し、前記充足解問題あるいは前記最適化問題の解から前記系統異常解消手順を作成すると共に、前記系統異常解消手順のコストを算出する
    ことを特徴とする請求項に記載の電力系統安定化システム。
  10. 前記動的系統感度作成部は、
    前記電力系統の部分系統の動的系統感度を作成し、
    前記電力系統の系統モデルから作成した系統モデル感度の前記部分系統に該当する部分を前記部分系統の動的系統感度で置き換えた系統感度を出力する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力系統安定化システム。
  11. 前記動的系統感度作成部は、
    前記電力系統の系統モデルから作成した系統モデル感度に対する前記動的系統感度の誤差に基づいて、前記動的系統感度が有効範囲内か否かを判定し、
    前記動的系統感度が有効範囲内である場合には前記動的系統感度を出力し、前記動的系統感度が有効範囲外である場合には前記系統モデル感度を出力する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力系統安定化システム。
  12. 前記系統異常解消手順に基づいて、前記制御可能機器を制御する制御部
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力系統安定化システム。
  13. 前記電力系統の接続構成と計測器の重複計測数と既存の計測器の位置とを入力とし、必要とされる計測器の数が最小であり、計測器がすべての母線を観測でき、かつ必要とされる計測器の数を充足できることを、変数が0および1の何れかのみを取りうる目的関数で表した上で、該目的関数を変数の値が-1および1の何れかで表されるイジングモデルに変換し、該イジングモデルを非ノイマン型計算機で計算することで、前記電力系統における計測器の設置個所を決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力系統安定化システム。
  14. 電力系統の安定化を支援する電力系統安定化システムが実行する電力系統安定化方法であって、
    前記電力系統に設置された計測器による計測データと、感度算出パラメータとを入力とし、前記電力系統の動的系統感度を作成し、
    前記動的系統感度と、前記電力系統における制御可能機器を示した制御可能機器リストと、系統異常解消手順作成方針とを入力とし、前記制御可能機器の制御によって前記電力系統を操作することで前記電力系統の系統異常を解消する系統異常解消手順を作成し、
    前記系統異常解消手順を出力する
    各処理を含み、
    前記動的系統感度は、前記電力系統における或る計測器による計測データを入力変数とし、他の計測器による計測データを出力変数とした場合の、前記入力変数の変化量に対する前記出力変数の変化量を表す感度関数である
    ことを特徴とする電力系統安定化方法。
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