本明細書において、蓄電デバイスとは、一次電池、二次電池(リチウムイオン二次電池及びニッケル水素二次電池等)、電気化学キャパシタを包含するものである。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、これに類する表現についても同様である。
<1.電極>
本発明の電極は、集電体と電極材料層とを備える。
集電体としては、公知のものが使用でき、具体的には、正極としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等の金属が使用される。また、負極としては、銅、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等の金属が使用される。
集電体の厚みとしては、特に制限されないが、例えば5~50μm程度、好ましくは10~20μm程度が挙げられる。
電極材料層は、集電体の表面に形成されている。電極材料層は、活物質粒子とバインダー粒子とを含んでいる。電極材料層は、集電体の表面に、電極材料層を構成する活物質粒子、バインダーなどを含むバインダー組成物を塗布することにより形成することができる。
電極材料層の厚みとしては、特に制限されないが、例えば5~300μm程度、好ましくは15~200μm程度が挙げられる。
本発明においては、電極材料層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られる画像のうち、活物質粒子が存在していない少なくとも3箇所の1μm×1μmの正方形の視野内において、バインダー粒子が3~20個観察され、かつ、バインダー粒子が連続して3個以上接触して存在していないことを特徴としている。すなわち、電極材料層の断面のSEM画像を取得し、当該SEM画像の中から、活物質粒子が観察されない少なくとも3箇所の1μm×1μmの正方形の視野内において、バインダー粒子が3~20個観察される。さらに、当該視野内においては、連続して3個以上のバインダー粒子が接触した状態で存在しているものが観察されない。このように、本発明の電極は、電極材料層のバインダー粒子が適切に分散した構造を有しているため、バインダー粒子が優れた結着性を発揮し、蓄電デバイスにおける低抵抗化を維持することができる。従来の電極では、電極材料層の断面のSEM画像を取得すると、バインダー粒子が3個以上凝集した構造を備えており、本発明の電極と比較すると、分散性に劣っている。
電極材料層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する具体的な条件は、以下の通りである。
<電極材料層の断面の観察方法>
電極断面サンプルの処理として、イオンミリング装置を用いてArイオンビーム処理を実施する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、10,000~20,000倍の倍率で観察を行う。
バインダー粒子が優れた結着性を発揮し、蓄電デバイスにおける低抵抗化を維持する観点から、本発明において、バインダー粒子が3~20個観察され、かつ、バインダー粒子が連続して3個以上接触して存在していない1μm×1μmの正方形の前記視野は、前記SEM画像中に少なくとも3箇所存在していればよく、3箇所から6箇所存在していることがより好ましい。なお、3箇所以上の視野は、互いに一部が重なっていてもよいが、少なくとも3箇所については、互いに重なっていないことが好ましい。
また、1μm×1μmの正方形の前記視野において、バインダー粒子は3~20個観察されればよいが、より好ましくは3~15個、さらに好ましくは4~8個観察される。
バインダー粒子が優れた結着性を発揮し、蓄電デバイスにおける低抵抗化を維持する観点から、1μm×1μmの正方形の前記視野内において、バインダー粒子の粒子径は、好ましくは30~200nm程度、より好ましくは50~180nm程度が挙げられる。バインダー粒子の粒子径がこのような範囲にあることにより、電極材料層のバインダー粒子がより適切に分散した構造を有する電極とすることができる。
同様の観点から、電極材料層中のバインダー粒子の含有量としては、好ましくは0.1~15質量%程度、より好ましくは0.2~10質量%程度、さらに好ましくは0.3~7質量%程度が挙げられる。バインダー粒子の含有量がこのような範囲にあることにより、電極材料層のバインダー粒子がより適切に分散した構造を有する電極とすることができる。
さらに、同様の観点から、電極材料層の密度としては、好ましくは1.5~3.7g/cc程度、より好ましくは1.8~3.5g/cc程度が挙げられる。電極材料層の密度がこのような範囲にあることにより、電極材料層のバインダー粒子がより適切に分散した構造を有する電極とすることができる。
バインダー粒子は、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.1質量%以上5質量%以下有する重合体(A)と、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を5質量%超えて30質量%以下有する重合体(B)とを含むことが好ましい。バインダー粒子がこのような組成を有することにより、前述のような電極材料層のバインダー粒子がより適切に分散した構造を有する電極とすることができる。
まず、重合体(A)について説明する。重合体(A)は、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、0.1質量%以上、5質量%以下の範囲で有する共重合体であることが好ましい。
重合体(A)において、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位としては、下記一般式(1)に由来する構成単位であることが好ましい。
一般式(1)において、R11は、それぞれ同一または異なって、水素原子又はメチル基であり、R12は、5価以下の炭素数2~100の有機基であり、mは5以下の整数である。
一般式(1)において、mは2~5(すなわち、2官能から5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることが好ましく、3~5(すなわち、3官能から5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることがより好ましく、3~4(すなわち、3官能から4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることが特に好ましい。
2官能から5官能の(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、バインダー粒子としての物性(屈曲性、結着性)が優れている。多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、3官能または4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位であることが特に好ましい。
重合体(A)において、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(A)において、2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等の2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
重合体(A)において、3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2,2,2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルコハク酸、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート及びトリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等の3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選択される3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が好ましい。
重合体(A)において、4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールEO付加テトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
重合体(A)において、5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
重合体(A)における多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位の比率の下限は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体(A)における多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の比率の上限は、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(A)は、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外に、水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位のうち少なくとも1種の構成単位をさらに有していてもよい。
重合体(A)において、水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位としては、分子量が100~1000のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましく、下記一般式(2)のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート由来の構成単位であることがより好ましく、下記一般式(3)のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート由来の構成単位であることが特に好ましい。
一般式(2)において、R1は水素原子又は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、xは2~8の整数であり、nは2~30の整数である。
一般式(2)において、R1としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、およびイソブチル基などが挙げられる。好ましくは水素原子またはメチル基である。すなわち、構成単位において、水酸基を有するモノマーは、(R1が水素原子又はメチル基である)(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
一般式(2)において、(CxH2xO)としては、直鎖もしくは分岐のアルキルエーテル基であり、xは2~8の整数であり、好ましくは2~7の整数であり、より好ましくは2~6の整数である。
一般式(2)において、nは2~30の整数であり、好ましくは3~25の整数であり、より好ましくは4~20の整数である。
一般式(3)において、R1は水素原子又は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、oは0~30の整数であり、pは0~30の整数であり、o+pは2~30である。ここで、o、およびpは、当該構成単位の構成比を表しているのみであって、(C2H4O)の繰り返し単位のブロックと(C3H6O)の繰り返し単位のブロックからなる化合物のみを意味するものではなく、(C2H4O)の繰り返し単位と、(C3H6O)の繰り返し単位が交互・ランダムに配置された、又はランダム部とブロック部が混在する化合物であってもよい。
一般式(3)において、R1としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、およびイソブチル基などが挙げられる。好ましくは水素原子またはメチル基である。すなわち、構成単位において、水酸基を有するモノマーは、(R1が水素原子又はメチル基である)(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
一般式(3)において、oは0~30の整数であり、pは0~30の整数であり、o+pは2~30であり、oは0~25の整数であり、pは0~25の整数であり、o+pは3~25であることが好ましく、oは0~20の整数であり、pは0~20の整数であり、o+pは4~20であることが特に好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位の具体例としては、具体例としてはジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上併用できる。これらの中でも、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選択される水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましい。重合体(A)が有する、水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(A)における水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位の比率の下限は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体(A)における水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位の比率の上限は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(A)において、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位が挙げられる。(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位であることが好ましい。重合体(A)が有する、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(A)における(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の比率の下限は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体(A)におけるメタクリル酸エステルに由来する構成単位の比率の上限は、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、93質量%以下であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸に由来する構成単位としては、アクリル酸、メタクリル酸から選択される化合物に由来する構成単位を例示することができる。重合体(A)が有する、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(A)における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の比率の下限は、0質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。重合体(A)における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の比率の上限は、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位と多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体としては、上記以外にも、その他のモノマー由来の構成単位として、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、クロトンニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-シアノアクリレート、シアン化ビニリデン、フマロニトリルから選択されるモノマー由来の構成単位を有することできる。
次に、重合体(B)について説明する。重合体(B)は、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、5質量%超えて30質量%以下の範囲で有する共重合体であることが好ましい。
重合体(B)において、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位としては、下記一般式(1)に由来する構成単位であることが好ましい。
一般式(1)において、R11は、それぞれ同一または異なって、水素原子又はメチル基であり、R12は、5価以下の炭素数2~100の有機基であり、mは5以下の整数である。
一般式(1)において、mは2~5(すなわち、2官能から5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることが好ましく、3~5(すなわち、3官能から5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることがより好ましく、3~4(すなわち、3官能から4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることが特に好ましい。2官能から5官能の(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、バインダー粒子としての物性(屈曲性、結着性)が優れている。多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、3官能または4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位であることが特に好ましい。
重合体(B)において、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(B)において、2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等の2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
重合体(B)において、3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2,2,2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルコハク酸、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート及びトリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等の3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選択される3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が好ましい。
重合体(B)において、4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールEO付加テトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
重合体(B)において、5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
重合体(B)における多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位の比率の下限は、5質量%超えることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることが特に好ましい。重合体(B)における多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の比率の上限は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(B)は、多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外に、水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位のうち少なくとも1種の構成単位をさらに有していてもよい。
重合体(B)において、水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位としては、分子量が100~1000のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましく、一般式(2)のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート由来の構成単位であることがより好ましく、一般式(3)のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート由来の構成単位であることが特に好ましい。
一般式(2)において、R1は水素原子又は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、xは2~8の整数であり、nは2~30の整数である。
一般式(2)において、R1としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、およびイソブチル基などが挙げられる。好ましくは水素原子またはメチル基である。すなわち、構成単位において、水酸基を有するモノマーは、(R1が水素原子又はメチル基である)(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
一般式(2)において、(CxH2xO)としては、直鎖もしくは分岐のアルキルエーテル基であり、xは2~8の整数であり、好ましくは2~7の整数であり、より好ましくは2~6の整数である。
一般式(2)において、nは2~30の整数であり、好ましくは3~25の整数であり、より好ましくは4~20の整数である。
一般式(3)において、R1は水素原子又は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、oは0~30の整数であり、pは0~30の整数であり、o+pは2~30である。ここで、o、およびpは、当該構成単位の構成比を表しているのみであって、(C2H4O)の繰り返し単位のブロックと(C3H6O)の繰り返し単位のブロックからなる化合物のみを意味するものではなく、(C2H4O)の繰り返し単位と、(C3H6O)の繰り返し単位が交互・ランダムに配置された、又はランダム部とブロック部が混在する化合物であってもよい。
一般式(3)において、R1としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、およびイソブチル基などが挙げられる。好ましくは水素原子またはメチル基である。すなわち、構成単位において、水酸基を有するモノマーは、(R1が水素原子又はメチル基である)(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
一般式(3)において、oは0~30の整数であり、pは0~30の整数であり、o+pは2~30であり、oは0~25の整数であり、pは0~25の整数であり、o+pは3~25であることが好ましく、oは0~20の整数であり、pは0~20の整数であり、o+pは4~20であることが特に好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位の具体例としてはジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上併用できる。これらの中でも、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選択される水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましい。重合体(B)が有する、水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(B)における水酸基を有する(メタ)アクリレート由来の構成単位の比率の下限は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体(B)における水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位の比率の上限は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(B)において、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位が挙げられる。重合体(B)が有する、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(B)においては、メタクリル酸メチルに由来する構成単位を有することが好ましく、重合体(B)におけるメタクリル酸メチルに由来する構成単位の比率の下限は、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体(B)におけるメタクリル酸メチルに由来する構成単位の比率の上限は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(B)におけるメタクリル酸メチル以外の前記の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の比率の下限は、0質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体(B)におけるメタクリル酸メチルに由来する構成単位の比率の上限は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(B)において、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位としては、アクリル酸、メタクリル酸から選択される化合物に由来する構成単位を例示することができる。重合体(B)が有する、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体(B)における(メタ)アクリル酸由来の構成単位の比率の下限は0質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体(B)における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の比率の上限は、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
重合体(B)において、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位と多官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体としては、上記以外にも、その他のモノマー由来の構成単位として、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、クロトンニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-シアノアクリレート、シアン化ビニリデン、フマロニトリルから選択されるモノマー由来の構成単位を有することできる。
本発明のバインダー粒子においては、重合体(A)と重合体(B)との質量比は特に限定されないが、3:97~97:3であることが好ましく、5:95~95:5であることがより好ましい。
重合体(A)及び重合体(B)を得る方法としては、それぞれ、一般的な乳化重合法、ソープフリー乳化重合法等を使用することができる。具体的には、攪拌機、及び加熱装置付きの密閉容器に室温でモノマー、乳化剤、重合開始剤、水、必要に応じて分散剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を含んだ組成物を不活性ガス雰囲気下で攪拌することでモノマー等を水に乳化させる。乳化の方法は撹拌、剪断、超音波等による方法等が適用でき、撹拌翼、ホモジナイザー等を使用することができる。次いで、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始させることで、重合体が水に分散した球形の重合体のラテックスを得ることができる。重合時のモノマーの添加方法は、一括仕込みの他に、モノマー滴下やプレエマルジョン滴下等でもよく、これらの方法を2種以上併用してもよい。尚、プレエマルジョン滴下とは先にモノマー、乳化剤、水等を予め乳化させておき、その乳液を滴下していく添加方法を指す。
本発明で用いられる乳化剤は特に限定されない。乳化剤は界面活性剤であり、この界面活性剤には反応性基を有する反応性界面活性剤が含まれる。乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤等を使用することができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、反応性のノニオン性界面活性剤としては、ラテムルPD-420、430、450(花王社製)、アデカリアソープER(アデカ社製)、アクアロンRN(第一工業製薬社製)、アントックスLMA(日本乳化剤社製)、アントックスEMH(日本乳化剤社製)等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル型、カルボン酸型、又はスルホン酸型の金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、リン酸エステル型の界面活性剤等を挙げることができる。硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型が好ましく、硫酸エステル型が特に好ましい。硫酸エステル型のアニオン性界面活性剤の代表例としてはドデシル硫酸等のアルキル硫酸金属塩、アンモニウム、又はアルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸金属塩、アンモニウム塩、又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられ、硫酸エステル型の反応性アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラテムルPD-104、105(花王社製)、アデカリアソープSR(アデカ社製)、アクアロンHS(第一工業製薬社製)、アクアロンKH(第一工業製薬社製)が挙げられる。好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラテムルPD-104等が挙げられる。
これらノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤は1種または2種以上用いてもよい。
反応性界面活性剤の反応性とは、反応性二重結合を含有し、重合時にモノマーと重合反応することを意味する。すなわち、反応性界面活性剤は、重合体を作製する重合の際にモノマーの乳化剤として働くと共に、重合後は重合体の一部に共有結合して取り込まれた状態となる。そのため、乳化重合及び作製した重合体の分散が良好であり、バインダー粒子としての物性(屈曲性、結着性)が優れている。
乳化剤の構成単位の量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量(100質量%)に対して、0.01~25質量%の範囲であり、好ましくは0.05~20質量%、更に好ましくは0.1~20質量%である。
本発明で用いられる重合開始剤は特に限定されず、乳化重合法、懸濁重合法おいて一般的に用いられる重合開始剤を使用することができる。好ましくは乳化重合法である。乳化重合法では水溶性の重合開始剤、懸濁重合法では油溶性の重合開始剤が使われる。
その水溶性の重合開始剤の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩に代表される水溶性の重合開始剤、2-2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、またはその塩酸塩または硫酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンアミジン)、又はその塩酸塩又は硫酸塩、3,3’-[アゾビス[(2,2-ジメチル-1-イミノエタン-2,1-ジイル)イミノ]]ビス(プロパン酸)、2,2’‐[アゾビス(ジメチルメチレン)]ビス(2‐イミダゾリン)などの水溶性のアゾ化合物の重合開始剤が好ましい。
油溶性の重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、アセチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)などの油溶性のアゾ化合物の重合開始剤、レドックス系開始剤が好ましい。これら重合開始剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の使用量は乳化重合法または懸濁重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量(100質量%)に対して、0.01~10質量%の範囲であり、好ましくは0.01~5質量%、更に好ましくは0.02~3質量%である。
連鎖移動剤は、必要に応じて用いることができる。連鎖移動剤の具体例としては、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-メチル-2-ペンテン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、通常、仕込モノマー量100質量部に対して0~5質量部にて使用される。
重合体の重合時間及び重合温度は特に限定されない。使用する重合開始剤の種類等から適宜選択できるが、一般的に、重合温度は20~100℃であり、重合時間は0.5~100時間である。
さらに上記の方法によって得られた重合体は、必要に応じてpH調整剤として塩基を用いることでpHを調整することができる。塩基の具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)水酸化物、アンモニア、無機アンモニウム化合物、有機アミン化合物等が挙げられる。pHの範囲はpH2~11、好ましくはpH3~10、更に好ましくはpH4~9の範囲である。
バインダー粒子は、好ましくは重合体(A)と重合体(B)を含み、水分、又は乳化剤等の他の物質が重合体の内部に含有され、又は外部に付着されていてもよい。内部に含有される、又は外部に付着される物質の量は、重合体(A)と重合体(B)を合計した100質量部に対して、7質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
バインダー組成物は、バインダー粒子を溶媒とともに含有するものであり、バインダー粒子が溶媒に分散されるものであってよい。溶媒は、水、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類を例示することができる。
バインダー組成物は、バインダー粒子が水に分散した水系バインダー組成物であることが好ましい。
バインダー組成物は、重合体(A)を得る際に製造されるエマルジョンと、重合体(B)を得る際に製造されるエマルジョンを混合したエマルジョンであってもよい。
バインダー組成物における、バインダー粒子の含有量は特に限定されないが、バインダー粒子の固形分濃度が0.2~80質量%となるように含有することが好ましく、0.5~70質量%となるように含有することがより好ましく、0.5~60質量%となるように含有することが特に好ましい。尚、バインダー組成物における固形分については、通常、重合体及び乳化剤(重合体が乳化重合で用いられた際のみ)と考えられる。
電極材料層を構成している電極材料は、少なくとも活物質粒子及びバインダー粒子を含有し、更に導電助剤を含有していてもよい。電極材料の製造には、バインダー粒子を溶媒とともに含有するバインダー組成物を用いることもできる。正極に用いる正極材料としては正極活物質、及びバインダー粒子を含有し、更に導電助剤を含有していてもよく、負極に用いる負極材料としては負極活物質、バインダー粒子を含有し、更に導電助剤を含有していてもよい。
正極活物質は、AMO2、AM2O4、A2MO3、AMBO4のいずれかの組成からなるアルカリ金属含有複合酸化物である。Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい。BはP、Siまたはその混合物からなる。なお正極活物質は粉末が好ましく、その粒子径には、好ましくは50ミクロン以下、より好ましくは20ミクロン以下のものを用いる。これらの活物質は、3V(vs. Li/Li+)以上の起電力を有するものである。
正極活物質の好ましい具体例としては、LixCoO2, LixNiO2, LixMnO2, LixCrO2, LixFeO2, LixCoaMn1-aO2, LixCoaNi1-aO2, LixCoaCr1-aO2, LixCoaFe1-aO2, LixCoaTi1-aO2, LixMnaNi1-aO2, LixMnaCr1-aO2, LixMnaFe1-aO2, LixMnaTi1-aO2, LixNiaCr1-aO2, LixNiaFe1-aO2, LixNiaTi1-aO2, LixCraFe1-aO2, LixCraTi1-aO2, LixFeaTi1-aO2, LixCobMncNi1-b-cO2, LixNiaCobAlcO2, LixCrbMncNi1-b-cO2, LixFebMncNi1-b-cO2, LixTibMncNi1-b-cO2, LixMn2O4, LixMndCo2-dO4, LixMndNi2-dO4, LixMndCr2-dO4, LixMndFe2-dO4, LixMndTi2-dO4, LiyMnO3, LiyMneCo1-eO3, LiyMneNi1-eO3, LiyMneFe1-eO3, LiyMneTi1-eO3, LixCoPO4, LixMnPO4, LixNiPO4, LixFePO4, LixCofMn1-fPO4, LixCofNi1-fPO4, LixCofFe1-fPO4, LixMnfNi1-fPO4, LixMnfFe1-fPO4, LixNifFe1-fPO4,LiyCoSiO4, LiyMnSiO4, LiyNiSiO4, LiyFeSiO4, LiyCogMn1-gSiO4, LiyCogNi1-gSiO4, LiyCogFe1-gSiO4, LiyMngNi1-gSiO4, LiyMngFe1-gSiO4, LiyNigFe1-gSiO4, LiyCoPhSi1-hO4, LiyMnPhSi1-hO4, LiyNiPhSi1-hO4, LiyFePhSi1-hO4, LiyCogMn1-gPhSi1-hO4, LiyCogNi1-gPhSi1-hO4, LiyCogFe1-gPhSi1-hO4, LiyMngNi1-gPhSi1-hO4, LiyMngFe1-gPhSi1-hO4, LiyNigFe1-gPhSi1-hO4などのリチウム含有複合酸化物をあげることができる。(ここで、x=0.01~1.2, y=0.01~2.2, a=0.01~0.99, b=0.01~0.98, c=0.01~0.98 但し、b+c=0.02~0.99, d=1.49~1.99, e=0.01~0.99, f=0.01~0.99, g=0.01~0.99, h=0.01~0.99である。)
また、前記の好ましい正極活物質のうち、より好ましい正極活物質としては、具体的には、LixCoO2, LixNiO2, LixMnO2, LixCrO2, LixCoaNi1-aO2, LixMnaNi1-aO2, LixCobMncNi1-b-cO2, LixNiaCobAlcO2, LixMn2O4, LiyMnO3, LiyMneFe1-eO3, LiyMneTi1-eO3, LixCoPO4, LixMnPO4, LixNiPO4, LixFePO4, LixMnfFe1-fPO4を挙げることができる。(ここで、x=0.01~1.2, y=0.01~2.2, a=0.01~0.99, b=0.01~0.98, c=0.01~0.98 但し、b+c=0.02~0.99, d=1.49~1.99, e=0.01~0.99, f=0.01~0.99である。なお、上記のx,yの値は充放電によって増減する。)
負極活物質としてはリチウムイオンを吸蔵・放出可能な構造(多孔質構造)を有する炭素材料(天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等)か、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム、アルミニウム系化合物、スズ系化合物、シリコン系化合物、チタン系化合物等の金属からなる粉末である。粒子径は10nm以上100μm以下が好ましく、更に好ましくは20nm以上20μm以下である。また、金属と炭素材料との混合活物質として用いてもよい。なお負極活物質にはその気孔率が、70%程度のものを用いるのが望ましい。
電極材料中の活物質粒子の含有量としては、特に制限されず、例えば99.9~50質量%程度、より好ましくは99.5~70質量%程度、さらに好ましくは99~85質量%程度が挙げられる。活物質粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
導電助剤は、公知の導電助剤を用いることができ、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素繊維、または金属粉末等が挙げられ、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素繊維等の煤系導電助剤であることが好ましい。これら導電助剤は1種または2種以上用いてもよい。
導電助剤を用いる場合には、導電助剤の含有量は特に制限されないが、活物質粒子100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下が挙げられる。なお、正極材料中に導電助剤が含まれる場合、導電助剤の含有量の下限値としては、通常、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.5質量部以上、2質量部以上を例示することができる。
電極材料は、必要に応じて増粘剤を含有させても良い。増粘剤の種類は、特に限定されないが、好ましくは、セルロース系化合物のナトリウム塩、アンモニウム塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸およびその塩等である。
セルロース系化合物のナトリウム塩もしくはアンモニウム塩としては、セルロース系高分子を各種誘導基により置換されたアルキルセルロースのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩などが挙げられる。具体例としては、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等が挙げられる。カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩が特に好ましい。これらの増粘剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
増粘剤を用いる場合には、増粘剤の含有量は特に制限されないが、活物質100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下が挙げられる。なお、増粘剤が含まれる場合、増粘剤の含有量の下限値としては、通常、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上を例示することができる。
電極材料は、スラリー状とするために水を含有してもよい。水は特に限定されず、一般的に用いられる水を使用することができる。その具体例としては水道水、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などが挙げられる。その中でも、好ましくは蒸留水、イオン交換水、及び超純水である。
電極材料をスラリー状として用いる場合には、スラリーの固形分濃度は、10~90質量%であることが好ましく、20~85質量%であることがより好ましく、30~80質量%であることが特に好ましい。
電極材料をスラリー状として用いる場合には、スラリーの固形分中の重合体量の割合は、0.1~15質量%であることが好ましく、0.2~10質量%であることがより好ましく、0.3~7質量%であることが特に好ましい。
電極材料の調製方法としては特に限定されず、正極活物質あるいは負極活物質、バインダー粒子、導電助剤、水等を通常の攪拌機、分散機、混練機、遊星型ボールミル、ホモジナイザーなど用いて分散させればよい。分散の効率を上げるために材料に影響を与えない範囲で加温してもよい。
電極の作製方法は、特に限定されず一般的な方法が用いられる。電池材料をドクターブレード法やアプリケーター法、シルクスクリーン法などにより集電体(金属電極基板)表面上に適切な厚さに均一に塗布することより行われる。
例えばドクターブレード法では、電極用スラリーを金属電極基板に塗布した後、所定のスリット幅を有するブレードにより適切な厚さに均一化する。電極は活物質塗布後、余分な有機溶剤及び水を除去するため、例えば、100℃の熱風や80℃真空状態で乾燥する。乾燥後の電極はプレス装置によってプレス成型することで電極材が製造される。プレス後に再度熱処理を施して水、溶剤、乳化剤等を除去してもよい。
電極のプレスは、本発明の電極の電極材料層の密度が好ましくは3.7g/cc以下、より好ましくは3.5g/cc以下となるように行うことが好ましい。前述の通り、本発明の電極は、小型電池と比較して低密度である大型電池(例えば、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車載用途の電池や、家庭用電力貯蔵用の蓄電池)に使用された場合に、優れた結着力を発揮することができる。したがって、電極材料層の密度が、このような値を有している場合に、蓄電デバイスにおける低抵抗化を維持しつつ、特に優れた結着力を発揮することができる。なお、本発明の電極の電極材料層の密度の好ましい範囲は、前述の通りである。
<2.蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、正極と、負極と、電解液とを備えることを特徴としている。本発明の電極の詳細については、前述の通りである。本発明の蓄電デバイスにおいて、正極及び負極の少なくとも一方に、本発明の電極を使用していればよい。
電解液としては、特に制限されず、公知の電解液を用いることができる。電解液の具体例としては、電解質と溶媒とを含む溶液が挙げられる。電解質及び溶媒は、それぞれ、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
電解質としては、リチウム塩化合物を例示することができ、具体的には、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2,LiN(C2F5SO2)2,LiN[CF3SC(C2F5SO2)3]2などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
リチウム塩化合物以外の電解質としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルモノメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート等が挙げられる。
電解液に用いる溶媒としては、有機溶剤、又は常温溶融塩を例示することができる。
有機溶剤としては、非プロトン性有機溶剤を挙げることができ、具体的にはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、ジプロピルカーボネート、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、アニソール、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ジエチルエーテルなどの直鎖エーテルを使用することができ、2種類以上混合して使用してもよい。
常温溶融塩はイオン液体とも呼ばれており、イオンのみ(アニオン、カチオン)から構成される「塩」であり、特に液体化合物をイオン液体という。
本発明での常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電池が一般的に作動すると想定される温度範囲をいう。電池が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては80℃程度であり、下限は-40℃程度、場合によっては-20℃程度である。
常温溶融塩のカチオン種としては、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムイオンが好ましい。
なお、テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、アルキルピリジニウムイオンとしては、N-メチルピリジウムイオン、N-エチルピリジニウムイオン、N-プロピルピリジニウムイオン、N-ブチルピリジニウムイオン、1-エチル-2メチルピリジニウムイオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムイオン、1-ブチル-2,4ジメチルピリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イミダゾリウムイオンとしては、1,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
常温溶融塩のアニオン種としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6
-、PF6
-などの無機酸イオン、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8-テトラシアノ-p-キノジメタンイオンなどの有機酸イオンなどが例示される。
なお、常温溶融塩は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
電解液には必要に応じて種々の添加剤を使用することができる。添加剤としては、難燃剤、不燃剤、正極表面処理剤、負極表面処理剤、過充電防止剤などが挙げられる。難燃剤、不燃剤としては、臭素化エポキシ化合物、ホスファゼン化合物、テトラブロムビスフェノールA、塩素化パラフィン等のハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル、ポリリン酸塩、及びホウ酸亜鉛等が例示できる。正極表面処理剤としては、炭素や金属酸化物(MgОやZrO2等)の無機化合物やオルト-ターフェニル等の有機化合物等が例示できる。負極表面処理剤としては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示できる。過充電防止剤としては、ビフェニルや1-(p-トリル)アダマンタン等が例示できる。
本発明の蓄電デバイスの製造方法は、特に限定されず、正極、負極、電解液、必要に応じて、セパレータなどを用いて、公知の方法にて製造される。例えば、コイン型の場合、正極、必要に応じてセパレータ、負極を外装缶に挿入する。これに電解液を入れ含浸する。その後、封口体とタブ溶接などで接合して、封口体を封入し、カシメることで蓄電デバイスが得られる。蓄電デバイスの形状は限定されないが、例としてはコイン型、円筒型、シート型などが挙げられる。
セパレータは、正極と負極が直接接触して蓄電池内でショートすることを防止するものであり、公知の材料を用いることができる。セパレータとしては、具体的には、ポリオレフィンなどの多孔質高分子フィルム、紙等が挙げられる。多孔質高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムが、電解液による影響が少ないため、好ましい。
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、電極及びコイン電池を作製し、電極の評価として電極の結着性試験、コイン電池の評価として内部抵抗測定を以下の実験にて行った。
[作製した電極の物性評価]
作製した電極の物性評価としては、結着性試験を行った。評価結果を表1にまとめて示した。
<結着性試験>
(測定装置)
剥離強度試験機:ストログラフE3-L(東洋精機株式会社)
(結着性試験方法)
結着性試験は180°剥離試験にて行った。具体的には電極を幅2cm×長さ5cmに切り、テープ(粘着テープ:ニチバン製、幅1.8cm、長さ5cm)を貼り付け、電極の長さ方向の片端をストログラフE3-Lに固定した状態でテープを180°方向に試験速度50mm/min、荷重レンジ5Nで引き剥がした。試験は3回実施し、その加重平均値を求めた。
[作製した電池の特性評価]
作製したコイン電池の特性評価としては、充放電による内部抵抗の測定を行った。評価結果を表2にまとめて示した。
<内部抵抗の測定>
(測定装置)
充放電評価装置:TOSCAT-3100(東洋システム株式会社)
(測定方法)
作製したリチウムイオン電池を、定電流-定電圧充電により、4.2Vまで充電した。終止電流は1C相当であった。充電後、電池を10分間休止させた。次いで2Cでの定電流放電を実施し、電流値I(mA)及び10秒後の電圧降下ΔE(mV)より、充電状態が100%(SOC100%)でのリチウムイオン電池の内部抵抗R(Ω)=ΔE/Iを測定した。
<重合体の平均粒子径の測定>
重合体の平均粒子径は以下の条件で測定した。
(測定装置)
動的光散乱を用いた粒度分布測定装置:ゼータサイザーナノ(スペクトリス株式会社)(測定条件)
1.合成したエマルジョン溶液50μLをサンプリングする。
2.サンプリングしたエマルジョン溶液にイオン交換水700μLを3回添加して希釈する。
3.希釈液から液を2100μL抜き取る。
4.残った50μLのサンプルに700μLイオン交換水を添加・希釈して測定する。
<電極材料層の断面の観察方法>
電極断面サンプルの処理として、日立ハイテクノロジーズ製のイオンミリング装置IM-4000を用いてArイオンビーム処理を実施した。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)として日本電子のJSM-7100Fを使用し、10,000~20,000倍の倍率で観察を行った。
図1~図3に、電極の実施作製例1の電極材料層の断面を上記の方法で、SEMにて観察して得られた画像を示す。図2及び図3は、それぞれ、図1のSEM画像から、1μm×1μmの正方形の視野を3つ選択した場合のバインダー粒子の位置を示したものである。
図2に示した3つの視野(正方形)のうち、左の視野1内にはa~eの5つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、これらはいずれも互いに接触していない。また、図2の右上の視野2内にはa~eの5つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、b、cは互いに接触しているが、その他のバインダー粒子は互いに接触していない。また、図2の右下の視野3内にはa~eの5つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、d、eは互いに接触しているが、その他のバインダー粒子は互いに接触していない。
また、図3に示した3つの視野(正方形)のうち、上の視野4内にはa~fの6つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、これらはいずれも互いに接触していない。また、図3の左下の視野5内にはa~fの6つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、e、fは互いに接触しているが、その他のバインダー粒子は互いに接触していない。また、図3の右下の視野6内にはa~dの4つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、a、bは互いに接触しているが、その他のバインダー粒子は互いに接触していない。
図4に、電極の比較作製例1の電極材料層の断面を上記の方法で、SEMにて観察して得られた画像を示す。図4は、1μm×1μmの正方形の視野を2つ選択した場合のバインダー粒子の位置を数値で示したものである。図4に示した2つの視野(正方形)のうち、上の視野1内にはa~dの4つのバインダー粒子(粒子径50~100nm程度)が観察され、b、c、dは連続して接触している。また、図4の下の視野2内にはa、bの2つのバインダー粒子(粒子径50~100nm程度)が観察され、これらは互いに接触していない。
図5に、電極の比較作製例2の電極材料層の断面を上記の方法で、SEMにて観察して得られた画像を示す。図5は、1μm×1μmの正方形の視野を2つ選択した場合のバインダー粒子の位置を数値で示したものである。図5に示した2つの視野(正方形)のうち、上の視野1内にはa~fの6つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、c~fが連続して接触している。また、図5の下の視野2内にはa~fの6つのバインダー粒子(粒子径100~150nm程度)が観察され、a~fが連続して接触している。
[合成例1]
ビーカーに、アクリル酸n-ブチル89.2質量部、アクリル酸1.55質量部、メタアクリル酸4.40質量部、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(日油製:ブレンマーPE-90)4.15質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A-TMPT)0.70質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム1質量部、イオン交換水180.00質量部及び重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.12質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、55℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを2.6から8.0に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物A(重合転化率97%以上、固形分濃度39質量%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.273μmであった。
[合成例2]
ビーカーに、メタアクリル酸メチル69.57質量部、アクリル酸1.68質量部、メタアクリル酸4.79質量部、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(日油製:ブレンマーPE-90)4.52質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A-TMPT)19.44質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム1質量部、イオン交換水50.00質量部及び重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.12質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、55℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを2.9から8.0に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物B(重合転化率98%以上、固形分濃度39質量%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.242μmであった。
[合成例3]
ビーカーに、メタアクリル酸メチル69.55質量部、アクリル酸1.68質量部、メタアクリル酸4.77質量部、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(日油製:ブレンマーPE-90)4.52質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A-TMPT)19.48質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム2質量部、イオン交換水40.00質量部及び重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.12質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、55℃に加温し1時間30分かけて乳液を添加した。次いで、アクリル酸2-エチルヘキシル91.10質量部、アクリル酸1.11質量部、メタアクリル酸3.13質量部、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(日油製:ブレンマーPE-90)2.97質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学製:A-TMPT)1.69質量部を30分かけて添加した後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを2.6から8.0に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物C(重合転化率97%以上、固形分濃度29質量%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.170μmであった。
<電極の作製例>
[電極の実施作製例1]
正極活物質としてニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム95質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック3質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部、バインダー組成物の合成例1で得られたバインダー組成物Aの固形分として0.1質量部、バインダー組成物の合成例2で得られたバインダー組成物Bの固形分として0.9質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が72質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して正極用スラリーを得た。
得られた正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム集電体上に100μmギャップのベーカー式アプリケーターを用いて塗布し、110℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレス機にてプレスを行い、厚さ35μm、電極材料層の密度3.4g/ccの正極を作製した。結着性試験の評価とSEM観察の評価結果を表1の実施例1に示す。
[電極の比較作製例1]
正極活物質としてニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム95質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック3質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部、バインダー組成物の合成例3で得られたバインダー組成物Cの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が72質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して正極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の厚みは34μm、電極材料層の密度2.9g/ccであった。結着性試験の評価とSEM観察の評価結果を表1の比較例1に示す。
[電極の比較作製例2]
正極活物質としてニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム95質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック3質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部、バインダー組成物の合成例2で得られたバインダー組成物Bの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が72質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して正極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして正極を作製した。得られた正極の厚みは34μm、電極材料層の密度3.1g/ccであった。結着性試験の評価とSEM観察の評価結果を表1の比較例2に示す。
表1に実施例及び比較例の電極の物性評価結果を示す。
<電池の製造例>
[コイン電池の実施製造例1]
アルゴンガスで置換されたグローブボックス内において、電極の実施作製例1で得た正極、セパレータとして厚み18μmのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン多孔質膜を2枚、更に対極として厚さ300μmの金属リチウム箔を貼り合わせた積層物に、電解液として1mol/Lの6フッ化リン酸リチウムのエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート(体積比3:5:2)を十分に含浸させてかしめ、試験用2032型コイン電池を製造した。内部抵抗測定の評価結果を表2の実施例1に示す。
[コイン電池の比較製造例1]
電極の比較作製例1で得た正極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。内部抵抗測定の評価結果を表2の比較例1に示す。
[コイン電池の比較製造例2]
電極の比較作製例2で得た正極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。内部抵抗測定の評価結果を表2の比較例2に示す。
表2に実施例及び比較例の電池の特性評価結果を示す。
本発明の正極を用いたリチウムイオン電池である実施例1は、比較例1~2と比較して高い結着性を有しており、またコイン電池としても比較例1~2に比べて充電状態100%(SOC100%)では同等の性能であった。