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JP7187600B2 - 制動力を段階的に調整可能な制動装置 - Google Patents
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JP7187600B2 - 制動力を段階的に調整可能な制動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操作手段を操作することで回転体に付与される制動力を段階的に調整することができる制動装置に関する。
例えば高齢者のような歩行困難者が歩行する際には下記特許文献1に示されるような歩行補助具を使用する。かような歩行補助具の脚にはキャスターが設けられており、使用者は歩行補助具を支えとしてこれにつかまり、キャスターに設けられた転動体を転動させて歩行補助具を押しながら歩行する。歩行補助具に何らの制動力が設けられていないと、使用者が歩行補助具を押しながら歩行しようとした際に歩行補助具は使用者を支持することができないことから、キャスターに設けられた転動体には所要程度の制動力が必要である。
上述したキャスターに制動力を与える制動装置としては、例えば下記特許文献2に示されるトルクリミッタを利用することができる。このトルクリミッタは、外輪と、外輪の内側に配設されて断面円形の外周面を有する内輪と、内輪の外周面に装着されて外輪に対して回転不能なコイルばねとを備えており、外輪を固定した状態で内輪を回転させると、内輪はコイルばねの締付トルクに抗して回転することから、内輪にはコイルばねの締付トルクに起因した制動力が付加される。
特開2020-80945号公報 特許第3344905号公報
而して、上記特許文献1に示された歩行補助具にかかる負荷つまりキャスターにかかる負荷は使用者の体重や使用様式によって異なり、また上記特許文献2に示されたトルクリミッタでは単一の制動力のみが設定されていることから、上記特許文献1に示された歩行補助具に制動装置として上記特許文献2に示されたトルクリミッタを利用した場合には、使用者又はその使用様式によっては、キャスターにかかる制動力が不足して歩行補助具が使用者から離隔して使用者が転倒、又はキャスターにかかる制動力が過剰に大きく歩行補助具が動かない虞がある。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、制動力を段階的に調整することができる、新規の制動装置を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、共に回転可能な片側部材と他側部材とを断接可能に接続するトルクリミッタを固定のハウジングの内側において周方向に間隔をおいて複数軸支させ、各々の片側部材の外周面には回転体の回転歯車と噛み合う伝達歯車を、各々の他側部材の外周面には係止手段と周方向に係止可能な被係止手段を夫々設け、被係止手段と係止手段との係止により他側部材の回転を阻止すると共に、係止手段が設けられた調整部材を操作手段の操作によって軸方向に変位させて回転が阻止される他側部材の数を増減させることで、上記主たる技術的課題を達成できることを見出した。
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する制動装置として、操作手段を操作することで回転体に付与される制動力を段階的に調整することができる制動装置であって、
前記回転体は中心軸の周りを回転可能な回転歯車を備え、前記回転歯車は固定のハウジングの内側に収容されており、
前記ハウジングの内側には更に、共に回転可能な片側部材と他側部材とを断接可能に接続するトルクリミッタ、及び前記操作手段の前記操作によって軸方向に移動可能な調整部材が収容されており、
前記トルクリミッタは周方向に間隔をおいて複数軸支され、各々の前記片側部材の外周面には前記回転歯車と噛み合う伝達歯車が、各々の前記他側部材の外周面には前記調整部材の外周面に設けられた係止手段と周方向に係止可能な被係止手段が夫々設けられており、
前記係止手段及び前記被係止手段の一方の軸方向長さは他方の軸方向長さ以下であって且つ前記他側部材の周方向位置に応じて異なり、前記係止手段と係止する前記被係止手段が設けられた前記他側部材の回転は阻止される、ことを特徴とする制動装置が提供される。
好ましくは、前記係止手段は前記他側部材の周方向位置に応じて軸方向長さが異なるように設定された複数の歯型、前記被係止手段は周方向全体に亘って歯が存在する歯車である。軸方向において相互に対向しうる前記係止手段及び前記被係止手段の軸方向端面の外周縁部は共に面取りされているのが好ましい。前記調整部材の外周面には、周方向に延びる係合溝が前記他側部材の数に応じて複数軸方向に間隔をおいて形成されており、前記調整部材の軸方向位置に応じて複数の前記係合溝のいずれかに前記ハウジングに接続された係合爪が弾性的に係合するのが好適である。前記ハウジングには軸方向に直線状に延びる案内溝が形成されていると共に、前記調整部材には前記案内溝に沿って軸方向に移動可能な案内突条が形成されているのがよい。好ましくは、前記トルクリミッタは、筒状の前記他側部材の内側に配置されて前記片側部材と一体となって回転し且つ断面円形の外周面を有する内輪と、前記他側部材に対して回転不能な状態で前記内輪の前記外周面に装着されるコイルばねとを有する。前記操作手段は、前記中心軸の周りを回動可能な操作板と、前記操作板の中心から軸方向に延びる操作軸とを備え、前記操作軸の外周面には先端から基端側に向かって螺旋状に延びる2条の操作溝が形成されており、前記調整部材は円筒形状であって内周面には径方向内側に向かって突出して前記2条の操作溝に進入する2つの案内ピンが形成されているのがよい。この場合には、前記ハウジングには前記中心軸に沿って軸方向に延びて外周面には前記調整部材が嵌め合わされる中空の案内部が立設されており、前記案内部の内側には前記操作軸が挿通されて前記操作軸の先端部には抜け止めリングが装着されるのがよい。
本発明に従って構成された制動装置によれば、共に回転可能な片側部材と他側部材とを断接可能に接続するトルクリミッタが固定のハウジングの内側において周方向に間隔をおいて複数軸支され、各々の片側部材の外周面には回転体の回転歯車と噛み合う伝達歯車が、各々の他側部材の外周面には操作手段の操作によって軸方向に移動可能な調整部材の外周面に設けられた係止手段と周方向に係止可能な被係止手段が夫々設けられ、係止手段及び被係止手段の一方の軸方向長さは他方の軸方向長さ以下であって且つ他側部材の周方向位置に応じて異なり、被係止手段が係止手段と係止することで他側部材の回転は阻止される。これにより、操作手段を操作して調整部材を軸方向に変位させることで、回転不能となる他側部材の数が増減する。他側部材の回転が阻止されると、回転体が回転する際、回転が阻止された他側部材に接続された片側部材は他側部材に対して回転することからトルクリミッタの作用によって片側部材には抵抗トルクが生じる。従って、操作手段を操作して回転不能な他側部材の数が増減すれば上記抵抗トルクも増減するため、これにより使用状態に応じて制動力を段階的に調整することができる。
本発明に従って構成された制動装置の全体的な構成を示す図。 図1に示す制動装置の分解斜視図。 図1に示す制動装置の回転体を示す図。 図1に示す制動装置のハウジングを示す図。 図1に示す制動装置のトルクリミッタの構成を示す図。 図1に示す制動装置の調整部材を示す図。 図1に示す制動装置の操作手段を示す図。 図1に示す制動装置の作動を説明するための図。 図1に示す制動装置の作動を説明するための図。 図1に示す制動装置の作動を説明するための図。 図1に示す制動装置の作動を説明するための図。
以下、本発明に従って構成された制動装置の好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
図1及び図2を参照して説明すると、本発明に従って構成された全体を番号2で示す制動装置は、回転体4を備えている。なお、以下の説明における「軸方向片側」及び「軸方向他側」とは、特に指定しない限り、図1のA-A断面に示される状態を基準として、「軸方向片側」は同図において左側を、「軸方向他側」は同図において右側のことを言う。
図1及び図2と共に図3を参照して説明すると、回転体4は合成樹脂製であって、中心軸oの周りを回転可能な回転歯車6を備えている。図示の実施形態においては、回転歯車6は内歯歯車であって円筒形状の回転外周壁8の内周面に形成されている。回転外周壁8の軸方向片側端は回転端板10によって閉塞されている。回転端板10の軸方向片側面の中央には非円形の接続凹部12が形成されていると共に、この接続凹部12の外周縁を囲繞して軸方向片側に延びる円筒形状の補助壁14が形成されている。回転歯車6は、回転体4が接続凹部12を介して外部機器に接続されることで中心軸oの周りを回転可能となる。補助壁14の外側には、後述するシールド板26との接触面積を低減させるために僅かに軸方向片側に突出した円環突条16も形成されている。回転端板10の軸方向他側面の中央部分には円環形状の凹部18が形成されており、凹部18の内側には円形の凸部20が形成されている。
図1に示すとおり、回転体4の回転歯車6は固定のハウジング22の内側に収容されている。図1及び図2と共に図4を参照して説明すると、ハウジング22は合成樹脂製であって、軸方向片側端が開放されたカップ状のハウジング本体24と、ハウジング本体24の開放された軸方向片側端を閉塞するシールド板26とを備えている。
主に図4を参照して説明すると、ハウジング本体24は中心軸oに対して垂直で且つ上記回転体4に対して軸方向他側に配置される円形のハウジング端板28と、ハウジング端板28の外周縁から軸方向片側に向かって延びる円筒形状のハウジング外周壁30とを備えている。ハウジング端板28の中央には円形の貫通穴32が形成されており、ハウジング端板28の軸方向片側面には貫通穴32の外周縁を囲繞して軸方向片側に延びる中空の案内部34が立設されている。案内部34は貫通穴32の外周縁の片側半部を囲繞する片側案内部34aと、貫通穴32の外周縁の他側半部を囲繞する他側案内部34bとから構成されており、片側案内部34aと他側案内部34bとの間には軸方向に直線状に延びる一対の案内路36が規定されている。図4のX部拡大図に示すとおり、一対の案内路36の各々は直径方向の両側に規定されている。片側案内部34a及び他側案内部34bは共に断面が略円弧形状であって、夫々の外周面には軸方向に直線状に延びる2つの案内浅溝38が形成されている。片側案内部34a及び他側案内部34bの先端部の内周面には共に径方向内側に起立する略半円形状の中間壁40が形成されている。片側案内部34a及び他側案内部34bの中間壁40は夫々軸方向において整合して位置し、夫々の中間壁40の径方向端面は間隔をおいて対向している。夫々の中間壁40の径方向端面の中央には軸方向に延びる断面円弧形状の小凹溝42が形成されている。
ハウジング端板28の軸方向片側面における径方向中間部には、周方向に等角度間隔をおいて3つの支持軸44a乃至44cが形成されている。支持軸44a乃至44cは夫々後に言及するトルクリミッタ66を軸支する。ハウジング端板28の軸方向片側面における径方向中間乃至外周縁部には、軸方向に見て略扇形状の隆起部46が周方向に間隔をおいて2つ形成されている。隆起部46は、周方向において支持軸44aと支持軸44bとの間、支持軸44aと支持軸44cとの間に夫々配置されており、夫々の隆起部46の外周縁部には回転体4の回転歯車6が通過するために軸方向高さが低減された外周逃げ部48が形成されている。2つの隆起部46の径方向内側面には夫々軸方向に直線状に延びる案内溝50が形成されている。案内溝50は隆起部46の内径を局所的に増大させることで形成されている。ハウジング端板28の径方向中間部には、貫通小穴52が周方向に等角度間隔をおいて3つ形成されており、貫通小穴52にボルトの如き締結具を挿通してハウジング本体24は図示しない固定壁等に固定される。図4左図に示されるとおり、3つの貫通小穴52のうち2つは、2つの隆起部46の径方向内側部分(外周逃げ部48が形成されていない部分)に夫々設けられている。ハウジング端板28の軸方向片側面における径方向中間部であって、上述した3つの貫通小穴52のうち隆起部46に形成されていない貫通小穴52と案内部34との間には、軸方向に起立する矩形板状の起立壁54が設けられており、起立壁54の先端部の径方向内側面には径方向内側に突出する係合爪56が形成されている。起立壁54の基端縁の径方向内側には矩形の貫通穴58が形成されているが、この貫通穴58は係合爪56を形成するための成形上の理由によるものである。ハウジング外周壁30の延出端部(軸方向片側端部)の内周面には環状溝60が形成されている。
図1及び図2に示すとおり、シールド板26は円形であって、中央には回転体4の補助壁14の外周面を回転可能に軸支する円形の中央穴62が形成されている。シールド板26の外周面には周方向に連続して延在する環状突条64が形成されており、環状突条64がハウジング本体24の環状溝60に圧入されることで、シールド板26はハウジング本体24に装着される。
図1に示すとおり、上述したハウジング22の内側には、回転歯車6と共に、トルクリミッタ66及び調整部材68が収容されている。トルクリミッタ66は共に回転可能な片側部材70と他側部材72とを断接可能に接続するものであり、周方向に間隔をおいて複数配設されている。図示の実施形態においては、3つのトルクリミッタ66がハウジング22に設けられた3つの支持軸44a乃至44cによって夫々軸支されている。3つのトルクリミッタ66の構成はいずれも同一である。図1と共に図2及び図5を参照して説明を続けると、トルクリミッタ66は、内輪74と、コイルばね76と、シールド78とをも有している。
片側部材70は合成樹脂製の筒形状であって外周面には回転体4の回転歯車6と噛み合う伝達歯車80が形成されている。片側部材70の内周面の断面は全体的に円形であるが、片側部材70の内周面には径方向内側に向かって突出する2つの接続ピン82が直径方向の両側に形成されている。2つの接続ピン82は共に軸方向中央よりも幾分軸方向他側に変位して位置し、断面は矩形である。片側部材70の軸方向両側端面には、軸方向に隣接する他の部材(即ち回転体4及びシールド78)との接触面積を低減させるための円環突条84も形成されている。
内輪74は金属製で断面円形の筒状部材であって、コイルばね76が装着される内輪主部86と、内輪主部86の軸方向両側に位置して外径が内輪主部86の外径よりも幾分低減せしめられた軸受け部88a及び88bとを備えている。内輪主部86の軸方向片側に位置する軸受け部88aは軸方向他側に位置する軸受け部88bよりも軸方向長さが長く、軸受け部88aの軸方向片側端部には軸方向片側に向かって開放された2つの切り欠き90が直径方向の両側に形成されている。2つの切り欠き90に片側部材70の2つの接続ピン82が進入して周方向に係止することで内輪74は片側部材70と一体となって回転可能となる。
コイルばね76は断面円形の金属製の線材を巻回することで形成され、上記線材が螺旋状に巻回されたばね主部92と、ばね主部92の軸方向両端において上記線材が径方向外側に向かって延びる一対のフック部94とから構成されている。ばね主部92は軸方向に見て円形であって、自由状態つまりコイルばね76に何らの外力も付加されていない状態での内径は内輪主部86の外径よりも小さい。従って、コイルばね76は、ばね主部92の内周面が内輪主部86の外周面を締め付けた状態で内輪74に装着される。
他側部材72は合成樹脂製の筒形状であって内側にはコイルばね76の装着された内輪74が挿入される。他側部材72の内周面の断面形状は全体的に円形であるが、コイルばね76のフック部94が進入可能なフック溝96が周方向に間隔をおいて3つ形成されている。3つのフック溝96はいずれも軸方向に直線状に延びており、3つのフック溝96のいずれか2つに2つのフック部94が夫々進入することで、コイルばね76は他側部材72に対して回転不能となる。ここで、図示の実施形態においては、内輪74(つまりこれが接続された片側部材70)と他側部材72とが正逆いずれの方向に相対回転しようとする場合であっても、2つのフック溝96の各々に進入した2つのフック部94のいずれかがフック溝96内において他側部材72によってばねの緩み方向に押され、トルクリミッタ66は双方向トルクリミッタとして作用する。他側部材72の内周面の軸方向片側端部には、周方向に連続して延在する円環形状の嵌合凹溝98が形成されている。他側部材72の内周面の軸方向他側端部には、内輪74の軸受け部88bを相対回転可能に軸受けするための円環形状の軸保持部100も形成されている。他側部材72外周面には後述する係止手段(歯型116a乃至116c)と周方向に係止可能な被係止手段が設けられている。図示の実施形態においては、被係止手段は周方向全体に亘って歯が存在する歯車102であり、歯車102は他側部材72の外周面において軸方向片側端部を除く部分に設けられている。歯車102の軸方向片側端面の外周縁部は面取りされており、面取りされた部分を番号104で示す。
シールド78は合成樹脂製であって、他側部材72の内側にコイルばね76の装着された内輪74が挿入された状態で、他側部材72の軸方向片側端を閉鎖する。シールド78は軸方向に見て円形であってその中央には内輪74の軸受け部88aを相対回転可能に軸受けする軸穴106が形成されている。軸穴106を規定するシールド78の内周面の軸方向他側部には内輪74の軸受け部88aとの接触面積を低減させるために内径を局所的に増大せしめた円環形状の逃げ部108も形成されている。シールド78の軸方向他側面には軸穴106の外周縁の外側を囲繞して軸方向他側に突出する円錐台形状の規制突条110が形成されており、図1のA-A断面に示すとおり、規制突条110は他側部材72の内周面と内輪主部86の外周面との間に進入してコイルばね76が軸方向片側へ移動することを規制する。コイルばね76が軸方向他側へ移動することは他側部材72の軸保持部100によって規制される。シールド78の外周面には周方向に連続して延在する円環形状の嵌合突条112が形成されており、嵌合突条112が他側部材72の嵌合凹溝98に圧入されることで、シールド78は他側部材72に装着される。
図1及び図2と共に図6を参照して説明を続けると、調整部材68は合成樹脂製であってハウジング22の中央に配置され、他側部材72の外周面に設けられた歯車102(被係止手段)と周方向に係止可能な係止手段が設けられている。図1のA-A断面図(図8-1乃至図8-4にあっても同様)においては、容易に理解できるよう、調整部材68には薄墨を付している。図示の実施形態においては、調整部材68は円筒形状の調整筒壁114を備えており、上記係止手段は調整筒壁114の外周面に形成されて周方向に間隔をおいて配置された3つの歯型116a乃至116cから構成される。3つの歯型116a乃至116cの歯はいずれも同一モジュール及び同一ピッチの複数の外歯(歯型116aにあっては4歯、歯型116b及び116cにあっては3歯)から構成されるが、各歯型の軸方向長さは夫々異なる。図6の外周面展開図を参照することによって理解されるとおり、3つの歯型116a乃至116cはいずれも調整筒壁114の軸方向片側端から軸方向他側に向かって延びており(同図にあっては下方が軸方向片側、上方が軸方向他側)、軸方向長さは歯型116aが最も長く、次いで歯型116b、そして歯型116cが最も短い。歯型116a乃至116cの延出端面即ち軸方向他側端面の外周縁部は面取りされており、面取りされた部分を番号118で示す。調整筒壁114の外周面において、周方向に隣接する歯型116aと歯型116bとの間、及び周方向に隣接する歯型116aと歯型116cとの間には夫々軸方向に直線状に延びる案内突条120が形成されている。調整筒壁114の外周面において、周方向に隣接する歯型116bと歯型116cとの間には、周方向に延びる係合溝122が他側部材72の数に応じて複数(図示の実施形態においては4つ)軸方向に間隔をおいて形成されている。調整筒壁114の内周面には、軸方向に直線状に延びる案内小突条124が周方向に等角度間隔をおいて4つ形成されている。調整筒壁114の内周面には更に、径方向内側に突出する2つの案内ピン126が直径方向の両側に設けられている。2つの案内ピン126の断面形状は共に円形である。かような調整部材68は、図1のB-B断面図に示されるとおり、ハウジング22の案内部34の外周面に調整筒壁114が嵌め合わされると共に、案内突条120が隆起部46に形成された案内溝50に、4つの案内小突条124が案内部34の外周面に形成された4つの案内浅溝38の夫々に、2つの案内ピン126が片側案内部34a及び他側案内部34bによって規定される一対の案内路36に夫々嵌め合わされて、ハウジング22内を回転することなく軸方向に移動可能である。
上述した調整部材68は全体を番号128で示す操作手段と組み合されてこれを操作することでハウジング22内を軸方向に移動可能となる。図1及び図2と共に図7を参照して説明すると、操作手段128は合成樹脂製であって、中心軸oの周りを回動可能な操作板130と、操作板130の中心から軸方向片側に延びる操作軸132とを備えている。操作板130はハウジング22の外側に配置されており、全体的に円形であるが外周面には凹部134が周方向に間隔をおいて繰り返し複数形成されている。操作軸132は操作板130に接続された基端からハウジング22の貫通穴32を通過してハウジング22に設けられた中空の案内部34の内側に進入する。操作軸132は操作板130に接続される大径基端部136と、大径基端部136の軸方向片側端から軸方向片側に延びる中径中間部138と、中径中間部138の軸方向片側端から軸方向片側に延びる小径延出端部140とを備えている。大径基端部136と操作板130との境界部分の外径は大径基端部136から操作板130に向かって漸次拡径せしめられている。大径基端部136は操作板130と同様にハウジング22の外側に配置されており、大径基端部136と中径中間部138の境界に規定された肩面141がハウジング端板28の軸方向他側面と対向する。中径中間部138は中空の案内部34の内側に位置する。中径中間部138の断面形状は全体的に円形であるが、外周面には軸方向片側端から軸方向他側に向かって螺旋状に延びる2条の操作溝142が形成されている。図7(a)左図及び図2の部分拡大図を参照することによって理解されるとおり、2条の操作溝142の軸方向片側端は開放されており、開放された操作溝142の入口を番号144で示す。また、図7(a)のA-A断面図乃至C-C断面図を参照することによって理解されるとおり、2条の操作溝142は180度の角度間隔をおいて配置されている。小径延出端部140は片側案内部34a及び他側案内部34b夫々の中間壁40が備える小凹溝42を通過し、その延出端は回転体4の凸部20と対向する。小径延出端部140の外周面には円環形状の装着溝146が形成されている。
上述した小径延出端部140の外周面には案内部34の内側において抜け止めリング148が嵌め合わされ、これにより操作手段128はハウジング22からの抜けが防止された状態つまりハウジング22に対する軸方向への移動が規制された状態でハウジング22に組み合わされる。抜け止めリング148も合成樹脂製であって、内周面には装着溝146に嵌め合わされる円環形状の装着突条150が形成されている。抜け止めリング148の軸方向他側端面の内周縁部には円環形状の突部152が形成されており、この突部152によって片側案内部34a及び他側案内部34b夫々の中間壁40との接触面積が低減される。かような抜け止めリング148は、片側案内部34a及び他側案内部34bの中間壁40と、回転体4の凸部20とによって軸方向への移動が規制される。
操作手段128についてさらに説明すると、操作手段128は、予め調整部材68が(ハウジング22の)案内部34の外周面に嵌め合わされた状態でハウジング22に組み合わされる。つまり、調整部材68に設けられた2つの案内ピン126は案内部34に設けられた一対の案内路36に夫々進入しており、操作手段128がハウジング22に組み合わされる際、操作手段128に形成された2条の操作溝142の入口144は調整部材68に形成された2つの案内ピン126に整合せしめられ、2つの案内ピン126は2条の操作溝142の入口144に位置し、図1(図8-1)のA-A断面に示す状態となる。ここで、案内ピン126と案内路36との嵌合等によりハウジング22に対する調整部材68の回転は規制されていることから、図1(図8-1)に示す状態から操作手段128を操作つまり操作板130の外周面を把持してこれを同断面図の右方向から見て反時計方向に回転させると、2つの案内ピン126の各々は操作軸132に形成された2条の操作溝142内をこれに沿って移動し、調整部材68はハウジング22内を軸方向他側に移動する。かような調整部材68の作動は所謂スクリューコンベア(アルキメディアン・スクリュー、アルキメデスポンプ、スクリューポンプ、或いはアルキメデスの螺旋等と称されることもある)の作動原理を利用したものである。
続いて、図8-1乃至図8-4を参照して制動装置2の作動について説明する。
図8-1に示す状態にあっては、同A-A断面図に示すとおり、調整部材68はハウジング22内の軸方向片側に位置する。このとき、同C-C断面図に示すとおり、調整部材68の歯型116a乃至116cはいずれも3つの他側部材72のいずれの歯車102とも係止しておらず、全ての他側部材72はハウジング22内で回転可能である。従って、図8-1に示す状態で回転体4が回転すると、同B-B断面図に示すとおり、回転体4の回転歯車6と噛み合う伝達歯車80は全て歯車102と共に回転することから、回転歯車6は空転つまり回転体4は実質上無負荷で回転する。
図8-1に示す状態から操作手段128を操作つまり操作板130を(A-A断面の右方向から見て)反時計方向に回転することで調整部材68を軸方向他側に移動させ、調整部材68に形成された3つの歯型116a乃至116cのうち最も軸方向長さの長い歯型116aのみが他側部材72の歯車102と係止するが歯型116aよりも軸方向長さの短い歯型116b及び116cは歯車102と係止しない状態が図8-2に示されている。従って、図8-2に示す状態にあっては、歯型116aと係止する歯車102を有する他側部材72のみの回転が阻止され、この他側部材72にトルクリミッタ66を介して接続された片側部材70は、これと一体回転する内輪74の外周面に装着されたコイルばね76の締付力に抗して回転する。かような作動、つまり片側部材70がコイルばね76の締付力の如き所要抵抗トルクに抗して回転する作動を本願では「トルクリミッタの作用」と称する。従って、図8-2に示す状態において回転体4が回転すると、回転体4にはコイルばね76一つ分の制動力が付加されることとなる。
図8-2に示す状態から操作手段128を更に操作して、調整部材68の歯型116aと共に歯型116aに次いで軸方向長さが長い歯型116bも他側部材72の歯車102と係止するが歯型116bよりも軸方向長さの短い歯型116cは歯車102と係止しない状態が図8-3に示されている。歯型116aが係止する歯車102と歯型116bが係止する歯車102とは異なり、従って、図8-3に示される状態にあっては2つの異なる他側部材72の回転が阻止される。それ故に、図8-3に示す状態において回転体4が回転すると、上述した理由により、回転体4にはコイルばね76二つ分の制動力が付加されることとなる。
図8-3に示す状態から操作手段128を更に操作して、調整部材68の歯型116a及び116bと共に最も軸方向長さの短い歯型116cも他側部材72の歯車102と係止した状態が図8-4に示されている。歯型116cが係止する歯車102は歯型116aが係止する歯車102とも歯型116bが係止する歯車102とも異なり、従って、図8-4に示す状態にあっては3つ全ての他側部材72の回転が阻止される。それ故に、図8-4に示す状態において回転体4が回転すると、上述した理由により、回転体4にはコイルばね76三つ分の制動力が付加されることとなる。図8-4に示す状態から操作手段128を反対側に操作つまり操作手段128の操作板130を(A-A断面の右方向から見て)時計方向に回転すれば、図8-4に示す状態から図8-1に示す状態まで段階的に変更可能である。また、図示の実施形態においては、トルクリミッタ66は双方向トルクリミッタであることから、図8-2乃至図8-4に示す状態においては、回転体4は正逆いずれの方向に回転した場合であっても、回転体4にはコイルばね76による制動力が付加される。
従って、本発明に従って構成された制動装置によれば、共に回転可能な片側部材70と他側部材72とを断接可能に接続するトルクリミッタ66が固定のハウジング22の内側において周方向に間隔をおいて複数軸支され、各々の片側部材70の外周面には回転体4の回転歯車6と噛み合う伝達歯車80が、各々の他側部材72の外周面には操作手段128の操作によって軸方向に移動可能な調整部材68の外周面に設けられた歯型116a乃至116c(係止手段)と周方向に係止可能な歯車102(被係止手段)が夫々設けられ、係止手段及び被係止手段の一方の軸方向長さは他方の軸方向長さ以下であって且つ他側部材72の周方向位置に応じて異なり、被係止手段が係止手段と係止することで他側部材72の回転は阻止される。これにより、操作手段128を操作して調整部材68を軸方向に変位させることで、回転不能となる他側部材72の数が増減する。他側部材72の回転が阻止されると、回転体4が回転する際、回転が阻止された他側部材72に接続された片側部材70は他側部材72に対して回転することからトルクリミッタの作用によって片側部材70には抵抗トルクが生じる。従って、操作手段128を操作して回転不能な他側部材72の数が増減すれば上記抵抗トルクも増減するため、これにより使用状態に応じて制動力を段階的に調整することができる。
図示の実施形態においては、軸方向において相互に対向しうる歯型116a乃至116c(係止手段)及び歯車102(被係止手段)の軸方向端面の外周縁部には夫々面取り118及び104が設けられている故に、調整部材68が軸方向に変位した際、歯型116a乃至116cと歯車102とは円滑に係止可能となる。また、調整部材68の外周面には、周方向に延びる係合溝122が他側部材72の数に応じて複数軸方向に間隔をおいて形成されており、調整部材68の軸方向位置に応じて複数の係合溝122のいずれかにハウジング22に接続された係合爪56が弾性的に係合するため、調整部材68の軸方向位置つまり調整部材68により回転が阻止される他側部材72の数を容易に把握することができる。
以上、本発明に従って構成された制動装置について添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、トルクリミッタはコイルばねを用いた形式のものであったが、トルクリミッタは輪ばねや板ばね或いはトレランスリング等を用いた任意の形式のものであって良い。更に図示の実施形態のトルクリミッタは所謂双方向トルクリミッタであってこれが接続する片側部材及び他側部材は正逆両方向に相対回転可能であったが、コイルばねの形状を変更するなどして片側部材及び他側部材が正逆いずれか一方にのみ相対回転可能となる様にする、つまりトルクリミッタを一方向トルクリミッタとすることもできる。また、図示の実施形態においては、操作手段128は所謂スクリューコンベアの原理を利用するもので操作板130を回転することで操作手段128全体が軸方向に変位することなく調整部材68のみがハウジング22内を軸方向に移動したが、操作手段を調整部材と一体として操作部材全体を軸方向に変位させることで調整部材を軸方向に移動させるようにすることもできる。更に、図示の実施形態においては、係止手段は他側部材の位置に応じて軸方向長さが異なるように設定された歯型、被係止手段は周方向全体に亘って歯が存在する歯車であったが、係止手段の歯型の軸方向長さを他側部材の位置によらず一定とし、被係止手段の歯車の軸方向長さを他側部材の位置によって異なるように設定してもよい。また、図示の実施形態においては、回転歯車は内歯歯車であったが、回転歯車を太陽歯車の如き外歯歯車とすることもできる。さらに、図示の実施形態においては、複数個のトルクリミッタは全て同一の特性を有していたが、夫々の特性、例えばコイルばねの締付力、を変えてもよい。
2:制動装置
4:回転体
6:回転歯車
22:ハウジング
66:トルクリミッタ
68:調整部材
70:片側部材
72:他側部材
80:伝達歯車
102:歯車(被係止手段)
116a乃至116c:歯型(係止手段)
128:操作手段

Claims (8)

  1. 操作手段を操作することで回転体に付与される制動力を段階的に調整することができる制動装置であって、
    前記回転体は中心軸の周りを回転可能な回転歯車を備え、前記回転歯車は固定のハウジングの内側に収容されており、
    前記ハウジングの内側には更に、共に回転可能な片側部材と他側部材とを断接可能に接続するトルクリミッタ、及び前記操作手段の前記操作によって軸方向に移動可能な調整部材が収容されており、
    前記トルクリミッタは周方向に間隔をおいて複数軸支され、各々の前記片側部材の外周面には前記回転歯車と噛み合う伝達歯車が、各々の前記他側部材の外周面には前記調整部材の外周面に設けられた係止手段と周方向に係止可能な被係止手段が夫々設けられており、
    前記係止手段及び前記被係止手段の一方の軸方向長さは他方の軸方向長さ以下であって且つ前記他側部材の周方向位置に応じて異なり、前記係止手段と係止する前記被係止手段が設けられた前記他側部材の回転は阻止される、ことを特徴とする制動装置。
  2. 前記係止手段は前記他側部材の周方向位置に応じて軸方向長さが異なるように設定された複数の歯型、前記被係止手段は周方向全体に亘って歯が存在する歯車である、請求項1に記載の制動装置。
  3. 軸方向において相互に対向しうる前記係止手段及び前記被係止手段の軸方向端面の外周縁部は共に面取りされている、請求項1又は2に記載の制動装置。
  4. 前記調整部材の外周面には、周方向に延びる係合溝が前記他側部材の数に応じて複数軸方向に間隔をおいて形成されており、前記調整部材の軸方向位置に応じて複数の前記係合溝のいずれかに前記ハウジングに接続された係合爪が弾性的に係合する、請求項1乃至3のいずれかに記載の制動装置。
  5. 前記ハウジングには軸方向に直線状に延びる案内溝が形成されていると共に、前記調整部材には前記案内溝に沿って軸方向に移動可能な案内突条が形成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の制動装置。
  6. 前記トルクリミッタは、筒状の前記他側部材の内側に配置されて前記片側部材と一体となって回転し且つ断面円形の外周面を有する内輪と、前記他側部材に対して回転不能な状態で前記内輪の前記外周面に装着されるコイルばねとを有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の制動装置。
  7. 前記操作手段は、前記中心軸の周りを回動可能な操作板と、前記操作板の中心から軸方向に延びる操作軸とを備え、前記操作軸の外周面には先端から基端側に向かって螺旋状に延びる2条の操作溝が形成されており、前記調整部材は円筒形状であって内周面には径方向内側に向かって突出して前記2条の操作溝に進入する2つの案内ピンが形成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の制動装置。
  8. 前記ハウジングには前記中心軸に沿って軸方向に延びて外周面には前記調整部材が嵌め合わされる中空の案内部が立設されており、前記案内部の内側には前記操作軸が挿通されて前記操作軸の先端部には抜け止めリングが装着される、請求項7に記載の制動装置。
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