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JP7199708B2 - コア-シェル型熱伝導性ビーズ、その製造方法、樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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JP7199708B2 - コア-シェル型熱伝導性ビーズ、その製造方法、樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

コア-シェル型熱伝導性ビーズ、その製造方法、樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Description

本発明は、コア-シェル型熱伝導性ビーズ、その製造方法、樹脂組成物及び成形体に関する。
樹脂等の有機ポリマー系材料は、金属やセラミックスなどの無機物に比べて比重が小さいという特性を有している。このような特性を活かし、電子機器や輸送機器等の種々の分野において、軽量化を目的として無機物からなる部材を有機ポリマー系材料に置き換える技術が提案されている。
例えばパーソナルコンピュータ、携帯端末、自動車、LED照明等に搭載される電子部品や、電気自動車、ハイブリッド自動車等に搭載されるモータ等の発熱体においては、発熱体から発生する熱を効率よく放熱することが望まれている。しかし、有機ポリマー系材料は、無機材料に比べて熱伝導性が低いという問題がある。そこで、有機ポリマー系材料中に熱伝導性の高い充填材を添加することにより、軽量かつ熱伝導性の高い組成物を得ようとする試みが広く行われている。
熱伝導性の高い充填材としては、黒鉛や金属などの電気伝導性の充填材と、セラミックスなどの電気絶縁性の充填材とがある。これらのうち、電気伝導性の充填材は、電気絶縁性の充填材に比べて熱伝導性がより高い傾向がある。これは、電気伝導性の充填材は、格子振動及び伝導電子を介して熱を伝導することができるのに対し、電気絶縁性の充填材では、電気伝導性の充填材に比べて伝導電子の熱伝導への寄与が小さいためと考えられる。
また、充填材としては、薄片状や棒状等の、いわゆる形状異方性を有する微粒子が充填材として使用されることがある。形状異方性を有する微粒子は、組成物内において長径方向、つまり、最も大きい外寸法を有する方向の端部同士が接触することにより、組成物中に熱の経路を形成し、組成物の熱伝導性を向上させることができる。
この種の充填材として、例えば特許文献1には、ピッチを熱処理して炭化発泡させて得た炭素質発泡体を黒鉛化後に粉砕して得られる黒鉛化炭素粉末が記載されている。
特開2013-112915号公報
特許文献1の黒鉛化炭素粉末を含む樹脂組成物を射出成形や移送成形等の方法によって成形する場合、成形中の組成物の流動により、黒鉛化炭素粉末その長径方向、つまり、外寸法が最大となる方向が組成物の流れに沿うように配向しやすい。そのため、射出成形等によって得られる成形体の内部には、組成物の流動方向に沿った熱の経路がより形成されやすくなる。以上の結果、成形体の熱伝導性が等方的ではなくなり、所望の熱伝導特性を得られなくなるおそれがある。
また、電気伝導性の充填材を使用する場合、電気絶縁性の充填材に比べて成形体の熱伝導性を高くすることが期待できる一方で、体積抵抗率が低くなりやすく、場合によっては成形体に電気伝導性が付与されるおそれもある。しかし、電子部品やモータ等に用いられる有機ポリマー系材料には、高い熱伝導性だけではなく、電気絶縁性を求められることがある。成形体の電気絶縁性を確保する観点から、かかる用途においては、電気絶縁性の充填材が使用されているのが現状である。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、電気絶縁性を有し、熱伝導性に優れるとともに、等方的な熱伝導性を有する成形体を作製可能なコア-シェル型熱伝導性ビーズ、その製造方法、このコア-シェル型熱伝導性ビーズを備えた樹脂組成物及び成形体を提供しようとするものである。
本発明の一参考態様は、電気伝導性を有する物質を含むコア部と、
前記コア部を覆い、表面に露出したシェル層と、を有し、
球状を呈するコア-シェル型熱伝導性ビーズであって、
前記シェル層は、
硬化性ポリマーの硬化物からなり電気絶縁性を有する樹脂部と、
前記樹脂部よりも熱伝導率が高く、形状異方性及び電気絶縁性を有し、前記樹脂部に保持された充填材と、を含み、
前記充填材の長径方向が前記コア部の表面に沿うように前記充填材が配向している、コア-シェル型熱伝導性ビーズにある。
本発明の態様は、前記の態様のコア-シェル型熱伝導性ビーズの製造方法であって、
前記コア部と、前記コア部の表面を覆い、長径方向が前記コア部の表面に沿うように配向した前記充填材と未硬化の前記硬化性ポリマーとを含む未硬化シェル層とを備え、球状を呈する未硬化ビーズを作製するビーズ作製工程と、
前記未硬化シェル層中の前記硬化性ポリマーを硬化させる硬化工程と、を有し、
前記ビーズ作製工程は、
前記充填材と前記硬化性ポリマーとの混合物を作製する混合工程と、
自転公転型ミキサー内で前記コア部と前記混合物とを攪拌することにより、前記コア部の表面に前記未硬化シェル層を形成する被覆工程と、を有している、コア-シェル型熱伝導性ビーズの製造方法にある。
前記コア-シェル型熱伝導性ビーズ(以下、適宜「熱伝導性ビーズ」と省略することがある。)は、電気伝導性を有する物質を含むコア部と、コア部を覆う電気絶縁性のシェル層と、を有している。そのため、シェル層によって熱伝導性ビーズの電気絶縁性を確保しつつ、コア部に高い熱伝導性を有する電気伝導性の物質を採用することができる。
また、シェル層における充填材は、長径方向がコア部の表面に沿うように配向している。シェル層内の充填材をこのように配向させることにより、シェル層内に、充填材同士が連なってなる熱の経路を容易に形成し、シェル層の熱伝導性を向上させることができる。更に、熱伝導性ビーズ同士を接触させることにより、隣接する熱伝導性ビーズにシェル層を介して熱を効率よく伝達することができる。これらの結果、前記シェル層は、電気絶縁性を確保しつつ、前記熱伝導性ビーズの熱伝導性を高めることができる。
また、シェル層の充填材は、硬化性ポリマーの硬化物からなる樹脂部に保持されている。そのため、せん断力などの外力が加わった場合に、充填材の配向状態を維持することができる。
更に、前記熱伝導性ビーズは球状であるため、射出成形等の樹脂組成物の流動を伴う成形方法によって前記熱伝導性ビーズを含む樹脂組成物を成形した場合に、樹脂組成物中に熱伝導性ビーズを等方的に分散させることができる。それ故、前記熱伝導性ビーズを含む成形体内には、コア部及びシェル層を含む熱の経路が等方的に形成されやすい。
以上の結果、前記熱伝導性ビーズは、電気絶縁性を有し、熱伝導性に優れるとともに、等方的な熱伝導性を有する成形体を作製することができる。
また、前記の態様の製造方法によれば、前記シェル層を備えた熱伝導性ビーズを容易に作製することができる。
図1は、実施例1における、熱伝導性ビーズの要部を示す断面図である。 図2は、充填材の配向角θの算出方法を示す説明図である。 図3は、製造例1の熱伝導性ビーズの光学顕微鏡像の一例である。 図4は、実施例1における、熱伝導性ビーズの作製に用いる自転公転型ミキサーの要部を示す説明図である。 図5は、実施例1の熱伝導性ビーズにおける断面の電子顕微鏡像である。 図6は、実施例2における、熱伝導性ビーズを含む成形体の要部を示す一部断面図である。
A.コア-シェル型熱伝導性ビーズ
前記熱伝導性ビーズは、コア部と、コア部を覆うシェル層とを有している。
<コア部>
コア部には、金、銀、銅等の金属や、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性炭素材料等の、電気伝導性を有する物質が含まれている。即ち、コア部は、電気伝導性を有する物質のみから構成されていてもよいし、電気伝導性を有する物質と、電気伝導性を有しない物質とを含んでいてもよい。
コア部における電気伝導性を有する物質の形態は、特に限定されることはない。例えば、コア部は、前述した電気伝導性を有する物質からなる単一の粒子であってもよい。また、コア部は、電気伝導性を有する複数の一次粒子が凝集してなる二次粒子であってもよい。また、コア部は、電気伝導性を有する複数の粒子と、これらの粒子を保持するバインダとを含む複合粒子であってもよい。コア部が前述した複合粒子である場合、バインダには、更に、難燃剤、安定化剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
コア部中には、黒鉛、または、リサイクルされた炭素繊維の破砕物が含まれていることが好ましい。これらの物質は、電気伝導性を有する物質の中でも熱伝導率が高く、安価である。そのため、この場合には、熱伝導性ビーズの熱伝導性をより向上させると共に、コストをより容易に低減することができる。
コア部の形状は特に限定されることはないが、シェル層の厚みを均一にする観点からは、球状を呈していることが好ましい。また、コア部は、シェル層内の充填材よりも高い熱伝導率を有していることが好ましい。この場合には、熱伝導性ビーズの熱伝導性をより向上させることができる。
コア部は、電気伝導性を有していることが好ましい。なお、コア部が「電気伝導性を有する」とは、コア部の体積抵抗率が10-4Ω・m以下であることをいう。
コア部の体積抵抗率は、コア部に占める電気伝導性を有する物質の体積比率が大きいほど低くなりやすい。そして、コア部に占める電気伝導性を有する物質の体積比率を大きくすることにより、コア部の熱伝導性をより向上させることができる。れ故、コア部が電気伝導性を有する程度に電気伝導性を有する物質の体積比率を大きくすることにより、コア部の熱伝導性をより向上させることができ、ひいては熱伝導性ビーズの熱伝導性をより向上させることができる。
<シェル層>
コア部の表面は、電気絶縁性のシェル層により覆われている。シェル層の厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。この場合には、コア部の表面にシェル層をむらなく形成し、電気絶縁性をより確実に付与することができる。更に、シェル層の厚みを前記特定の範囲とすることにより、電気絶縁性を確保しつつ充填材の使用量を低減することができる。これにより、熱伝導性ビーズの材料コストをより容易に低減することができる。
シェル層には、硬化性ポリマーの硬化物からなる樹脂部と、樹脂部内に保持された充填材とが含まれている。
・樹脂部
樹脂部に用いられる硬化性ポリマーは、未硬化の状態において流動性を有し、硬化後に電気絶縁性を有する固体となる特性を有している。ここで、樹脂部が「電気絶縁性を有する」とは、樹脂部の体積抵抗率が1010Ω・m以上であることをいう。硬化性ポリマーは、加熱によって硬化する熱硬化性ポリマー、光照射によって硬化する光硬化性ポリマー、湿気によって硬化する湿気硬化性ポリマーのいずれであってもよい。硬化性ポリマーとしては、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂等を使用することができる。また、硬化性ポリマーとしては、これらのポリマーのうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
・充填材
シェル層内の充填材は、電気絶縁性及び形状異方性を有するとともに、樹脂部よりも高い熱伝導率を有している。ここで、充填材が「電気絶縁性を有する」とは、充填材の体積抵抗率が1010Ω・m以上であることをいう。
また、前述した「形状異方性を有する」とは、充填材の短径Sf[μm]、つまり、種々の方向において測定した充填材の外寸法のうち最も小さな外寸法の値に対する長径Lf[μm]、つまり、最も大きな外寸法の値の比Lf/Sfの値が3以上であることをいう。形状異方性を有する充填材には、例えば、厚みに比べて長さあるいは幅が十分に広い薄片状や鱗片状と呼ばれる形状、及び、太さに比べて長さが十分に長い棒状や繊維状と呼ばれる形状等が含まれる。
f/Sfの値は、1000以下であることが好ましい。Lf/Sfの値が過度に大きい場合、つまり、充填材の長径が短径に対して過度に長い場合には、熱伝導性ビーズの作製過程において充填材同士が絡まりやすくなり、前記未硬化ビーズを球状に成形することが難しくなるおそれがある。Lf/Sfの値を1000以下とすることにより、かかる問題を回避し、球状の熱伝導性ビーズを容易に作製することができる。
球状の熱伝導性ビーズをより容易に作製する観点からは、充填材の長径Lfは1mm未満であることが好ましい。
充填材の長径Lf[μm]と、前記熱伝導性ビーズの直径Db[μm]との比 b /L f の値は、10以上1000以下であることが好ましく、20以上500以下であることがより好ましい。この場合には、熱伝導性ビーズの作製過程において、シェル層内の充填材をより容易に所望の方向に配向させることができる。また、この場合には、シェル層内の充填材同士をより容易に接触させ、シェル層内により多くの熱の経路を形成することができる。その結果、熱伝導性ビーズの熱伝導性をより向上させることができる。
充填材は、電気絶縁性を有し、樹脂部よりも高い熱伝導率を備えた物質から構成されていることが好ましい。充填材としては、例えば、六方晶型窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム及び炭化ケイ素などのセラミックス材料や、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維及びセルロースナノファイバなどの高結晶性有機繊維などから選択される1種または2種以上の物質を採用することができる。
また、充填材は、熱的に等方な物質、つまり、どの方向にも同程度に熱を伝えることができる物質から構成されていてもよいし、熱的異方性を有する物質、つまり、特定の方向に熱が伝わりやすい性質を有する物質から構成されていてもよい。充填材が熱的異方性を有する物質から構成されている場合、充填材の長径方向と、熱が伝わりやすい方向とが一致していることが好ましい。この場合には、シェル層内において熱伝達をより効率よく行うことができる。その結果、前記熱伝導性ビーズを含む成形体の熱伝導性をより向上させることができる。
充填材としては、六方晶型窒化ホウ素を特に好適に用いることができる。六方晶型窒化ホウ素は、通常、鱗片状や薄片状と呼ばれる形状を有すると共に、その長径方向、つまり、厚み方向に対して直角な方向に熱が伝わりやすい特性を有している。それ故、シェル層内において六方晶型窒化ホウ素を前記特定の方向に配向させることにより、六方晶型窒化ホウ素の熱的異方性を有効に活用してシェル層の熱伝導性をより向上させることができる。その結果、熱伝導性ビーズの熱伝導性をより向上させることができる。
前記シェル層中の前記充填材の含有量は30体積%以上95体積%以下であることが好ましい。シェル層中の充填材の含有量が過度に少ない場合には、シェル層を形成することが難しくなるおそれがある。また、この場合には、シェル層内に充填材を介した熱の経路が形成されにくくなるため、熱伝導性の低下を招くおそれもある。一方、シェル層中の充填材の含有量が過度に多い場合には、樹脂部が不足するため、充填材同士の間に空隙が形成されやすくなり、強度や熱伝導性の低下を招くおそれがある。充填材の含有量を前記特定の範囲とすることにより、これらの問題を容易に回避し、熱伝導性ビーズの熱伝導性を十分に高めることができる。
・充填材の配向状態
シェル層内の充填材は、長径方向がコア部の表面に沿うように配向している。例えば充填材が薄片状である場合、前記シェル層内に存在する充填材は、その厚み方向が熱伝導性ビーズの径方向に沿うとともに、その板面が前記シェル層の表面を向くように配向している。また、例えば充填材が棒状である場合、前記シェル層内に存在する充填材は、前記熱伝導性ビーズの周方向に延在している。
シェル層における充填材の配向の程度は、以下の方法により算出される配向角の平均値及び標準偏差に基づいて評価することができる。まず、熱伝導性ビーズをその重心を通る面で切断し、重心を含む断面を露出させる。この断面を顕微鏡で観察し、熱伝導性ビーズの表面に最も近い位置に配置された充填材を含む顕微鏡像を取得する。次に、顕微鏡像上において、熱伝導性ビーズの重心と、熱伝導性ビーズの表面に最も近い位置に配置された充填材の重心とを通る直線を引き、この直線と熱伝導性ビーズの表面との交点を決定する。そして、この交点を通る熱伝導性ビーズの輪郭の接線を決定する。以上により決定された熱伝導性ビーズの輪郭の接線と、充填材の長径に平行な方向に延在する直線とのなす角度を配向角とする。なお、配向角の決定に当たっては、充填材の長径に平行な方向に延在する直線が、熱伝導性ビーズの輪郭の接線を基準として反時計回り方向に傾いている場合と、時計回り方向に傾いている場合とがある。配向角の値は、便宜上、前者の場合に正の値をとり、後者の場合に負の値をとるものとする。
以上の方法により複数の充填材について配向角を算出し、これらの配向角の算術平均を配向角の平均値とすることができる。また、複数の充填材について算出した配向角に統計処理を施すことにより、配向角の標準偏差を算出することができる。なお、配向角の平均値及び標準偏差を算出するに当たっては、配向角の測定に用いる充填材の数が多いほど正確な値を算出することができる。配向角の平均値及び標準偏差を算出する際に用いる充填材の数は、例えば100個以上であればよい。
前記熱伝導性ビーズにおける配向角の平均値は、具体的には、-10°以上+10°以下とする。
シェル層における充填材の配向角の平均値は、-8°以上+8°以下であることが好ましく、-5°以上+5°以下であることがより好ましい。また、配向角の標準偏差は、25°以下であることが好ましく、15°以下であることがより好ましい。この場合には、シェル層内に、熱伝導性ビーズの表面に沿った熱の経路をより容易に形成することができる。その結果、熱伝導性ビーズ及びこれを備えた成形体の熱伝導性をより向上させることができる。
・その他の成分
前記シェル層内には、前述した作用効果を損なわない範囲で、難燃剤、安定化剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
<熱伝導性ビーズの形状>
前記熱伝導性ビーズは、球状を呈している。ここで、前述した「球状」とは、真球、楕円球及びこれらの形状の表面に凹凸を付与した形状等を含む概念である。熱伝導性ビーズが球状であるか否かは、以下の方法によって算出される扁平率の平均値によって判断することができる。
扁平率を算出するに当たっては、まず、熱伝導性ビーズを平板上に載置し、光学顕微鏡像を取得する。この光学顕微鏡像における熱伝導性ビーズの輪郭上に互いの距離が最も離れるような2つの点を設定し、2点間の長さを測定する。この2点間の長さ、つまり、光学顕微鏡像に基づいて測定された最も長い外寸法の値を熱伝導性ビーズの長径Lbとする。次いで、光学顕微鏡像に基づいて、長径Lbと直交する方向における外寸法を測定し、この値を熱伝導性ビーズの短径Sbとする。
個々の熱伝導性ビーズの扁平率は、前述の方法により得られた長径Lbの値と短径Sbとに基づき、以下の式(1)により算出される値である。
扁平率=(Lb-Sb)/Lb ・・・(1)
以上の方法により複数の熱伝導性ビーズについて扁平率を算出し、これらの扁平率の算術平均を扁平率の平均値とすることができる。なお、扁平率の平均値を算出するに当たっては、扁平率の測定に用いるビーズの数が多いほど正確な値を算出することができる。扁平率の平均値を算出する際に用いる熱伝導性ビーズの数は、例えば100個以上であればよい。
扁平率は0以上1未満の値をとり、値が0に近いほど熱伝導性ビーズの形状が真球に近いことを意味する。前記熱伝導性ビーズにおける扁平率の平均値は、0.4以下とする。
扁平率の平均値は、0.2未満であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。この場合には、熱伝導性ビーズがより真球に近い形状となるため、成形体内における熱伝導性ビーズの配置の偏りを抑制することができる。その結果、等方的な熱伝導性を有する成形体をより容易に得ることができる。
また、熱伝導性ビーズの表面の凹凸の大きさは、以下の方法により算出される表面凹凸度の平均値に基づいて評価することができる。まず、熱伝導性ビーズを平板上に載置し、光学顕微鏡像を取得する。そして、光学顕微鏡像における熱伝導性ビーズの輪郭の長さを測定し、この値を周囲長P[μm]とする。また、光学顕微鏡像における熱伝導性ビーズの面積を測定し、この値を投影面積S[μm2]とする。
表面凹凸度は、熱伝導性ビーズの周囲長Pと熱伝導性ビーズの投影面積Sとに基づき、以下の式(2)により算出される値である。
表面凹凸度=P2/4πS ・・・(2)
以上の方法により複数の熱伝導性ビーズについて表面凹凸度を算出し、これらの表面凹凸度の算術平均を表面凹凸度の平均値とすることができる。なお、表面凹凸度の平均値を算出するに当たっては、表面凹凸度の測定に用いるビーズの数が多いほど正確な値を算出することができる。表面凹凸度の平均値を算出する際に用いる熱伝導性ビーズの数は、例えば100個以上であればよい。
表面凹凸度は1以上の値をとり、値が1に近いほど熱伝導性ビーズの表面の凹凸が小さいことを意味する。表面凹凸度の平均値は、1.5未満であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。この場合には、熱伝導性ビーズの表面がより平滑になるため、成形体内において熱伝導性ビーズ同士が接触しやすくなる。その結果、成形体の熱伝導性をより向上させることができる。
前記熱伝導性ビーズの大きさは特に限定されることはないが、例えば、直径10μm以上3mm以下の範囲から適宜設定することができる。熱伝導性ビーズの直径Dbの値としては、具体的には、熱伝導性ビーズの投影面積Sに基づき、以下の式(3)によって算出される球相当径、つまり、体積の等しい真球の直径が用いられる。
b=(4S/π)1/2 ・・・(3)
B.熱伝導性ビーズの製造方法
前記熱伝導性ビーズの製造方法は、
前記コア部と、前記コア部の表面を覆い、長径方向が前記コア部の表面に沿うように配向した前記充填材と未硬化の前記硬化性ポリマーとを含む未硬化シェル層とを備え、球状を呈する未硬化ビーズを作製するビーズ作製工程と、
前記未硬化シェル層中の前記硬化性ポリマーを硬化させる硬化工程と、を有している。
前記ビーズ作製工程は、前記充填材と前記硬化性ポリマーとの混合物を作製する混合工程と、
自転公転型ミキサー内で前記コア部と前記混合物とを攪拌することにより、前記コア部の表面に前記未硬化シェル層を形成する被覆工程と、を備えている
前記混合工程においては、まず、混練機や撹拌機などを用いて充填材と未硬化の硬化性ポリマーとを混合する。未硬化の硬化性ポリマーは液状を呈している。また、未硬化の硬化性ポリマーには、例えば、硬化後のポリマーの骨格となる主剤、主剤同士を結合して硬化させる硬化剤、硬化反応を促進する硬化促進剤などが含まれている。
充填材と未硬化の硬化性ポリマーとを混合するに当たっては、どのような順序でこれらの成分を混合してもよい。例えば、主剤等を所定の割合で混合して硬化性ポリマーを作製した後に硬化性ポリマーと充填材とを混合してもよいし、主剤と充填材とを予め混合した後に、硬化剤等を加えてさらに混合してもよい。
また、充填材との混合前または混合中に、未硬化の硬化性ポリマーを有機溶剤で希釈し、硬化性ポリマーの粘度を調整することもできる。この場合には、充填材との混合が完了した後、未硬化ビーズを硬化させるまでの間に有機溶剤を揮発等の手段により除去すればよい。
被覆工程においては、自転公転型ミキサー内でコア部と混合物とを攪拌する。ここで、自転公転型ミキサーとは、公転軸を中心としてコア部及び混合物を入れた容器を旋回させるとともに、前記容器自体が公転軸に対して傾斜した自転軸を中心として回転するように構成されたミキサーをいう。
自転公転型ミキサー内でコア部と混合物とを攪拌すると、公転によって容器内のコア部に遠心力を作用させつつ、自転によって容器内のコア部を転動させることができる。これにより、コア部の表面に混合物をむらなく付着させることができる。更に、前述したコア部の転動によって、混合物内の充填材をコア部の表面と長径方向とが平行になるように配向させつつ、粒子全体を球状に成形することができる。これらの結果、未硬化ビーズを作製することができる。
硬化工程においては、ビーズ作製工程において得られた前記未硬化ビーズ中の前記硬化性ポリマーを硬化させる。未硬化ビーズの硬化方法としては、硬化性ポリマーの種類に応じた適切な方法を採用することができる。例えば、硬化性ポリマーが熱硬化性ポリマーである場合には、未硬化ビーズを所定の時間及び温度で加熱すればよい。
C.樹脂組成物
前記硬化性ビーズと、樹脂からなる樹脂マトリクスと、を混合することにより、樹脂組成物を得ることができる。樹脂マトリクスは、どのような樹脂から構成されていてもよい。例えば、樹脂マトリクスは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよいし、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂であってもよい。また、樹脂マトリクスとしては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のうち1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
更に、樹脂マトリクス中には、充填材、難燃剤、安定化剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤などの添加剤が含まれていてもよい。樹脂マトリクス中の充填材は形状異方性を有していてもよいし、等方的な形状を有していてもよい。樹脂マトリクス中の充填材が形状異方性を有する場合であっても、前記熱伝導性ビーズと混合することにより、成形後における樹脂マトリクス中の充填材が特定の方向に配向することを抑制できる。その結果、等方的な熱伝導特性を有する成形体を容易に得ることができる。なお、成形体の電気絶縁性を確保する観点からは、樹脂マトリクス中の充填材が電気絶縁性を有していることが好ましい。
樹脂組成物中には、1種の熱伝導性ビーズが含まれていてもよいし、充填材及び/または硬化性ポリマーの異なる複数種の熱伝導性ビーズが含まれていてもよい。また、樹脂組成物中の熱伝導性ビーズは、単一の直径を有していてもよいし、種々の直径を有していてもよい。成形体における熱伝導性ビーズの充填性をより向上させる観点からは、熱伝導性ビーズとして、粒径分布の異なる複数種の熱伝導性ビーズを併用することが好ましい。
樹脂組成物中の熱伝導性ビーズの含有量は、例えば、10体積%以上95体積%以上の範囲から適宜設定することができる。熱伝導性ビーズの含有量が過度に少ない場合には、樹脂組成物中に熱の経路が形成されにくくなる。その結果、成形体の熱伝導性の低下を招くおそれがある。また、熱伝導性ビーズの含有量が過度に多い場合には、樹脂マトリクスが不足し、樹脂組成物を所望の形状に成形することが難しくなるおそれがある。熱伝導性ビーズの含有量を前記特定の範囲とすることにより、これらの問題を容易に回避することができる。
樹脂組成物中の熱伝導性ビーズの含有量は、30体積%以上95体積%以下であることが好ましい。この場合には、熱伝導性ビーズ同士がより接触しやすくなるため、成形体内に熱の経路がより形成されやすくなる。それ故、この場合には、成形体の熱伝導性をより高くすることができる。
D.成形体
前記樹脂組成物を成形することにより、等方的な熱伝導性を有する成形体を得ることができる。前記樹脂組成物の成形方法は特に限定されることはなく、圧縮成形、真空圧縮成形、移送成形、射出成形、押出成形、キャスト成形などの公知の成形方法から、樹脂マトリクスの種類や所望する成形体の形状等に応じて適宜選択することができる。
前記樹脂組成物を成形してなる成形体の内部には、前述したように、熱伝導性ビーズのシェル層及びコア部を含む熱の経路が形成されている。そのため、前記成形体は、等方的な熱伝導性、つまり、いずれの方向においても同程度に熱が伝わる特性を有している。より具体的には、前記成形体は、熱伝導率が最大となる方向における熱伝導率λA[W/m・K]と、熱伝導率が最小となる方向における熱伝導率λB[W/m・K]との比である熱伝導率異方性λA/λBの値が1.5以下となる特性を有している。
前記熱伝導率λBは、7W/m・K以上であることが好ましい。この場合には、成形体全体の熱伝導性をより向上させることができる。かかる熱伝導性を備えた成形体は、例えば、放熱部材等の用途に好適である。
また、成形体の体積抵抗率は、1×1014Ω・m以上である。かかる特性を有する成形体は、高い熱伝導性及び電気絶縁性が求められる用途に好適である。
(実施例1)
前記熱伝導性ビーズ及びその製造方法の実施例を、図1~図5を参照しつつ説明する。本例のコア-シェル型熱伝導性ビーズ1は、図1に示すように、電気伝導性を有する物質を含むコア部2と、コア部2を覆い、表面に露出したシェル層3と、を有しており、図3に示すように球状を呈している。図1に示すように、シェル層3には、硬化性ポリマーの硬化物からなり電気絶縁性を有する樹脂部31と、樹脂部31よりも熱伝導率が高く、形状異方性及び電気絶縁性を有し、樹脂部31に保持された充填材32と、が含まれている。また、シェル層3内の充填材32は、その長径方向がコア部2の表面21に沿うように配向している。
図には示さないが、本例のコア部2は、薄片状の黒鉛からなる複数の一次粒子がビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化物からなるバインダにより保持された複合粒子である。また、本例のコア部2は、電気伝導性を有している。
本例のシェル層3における樹脂部31は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化物である。また、シェル層3中の充填材32は、平均長径が3.44μmであり、平均短径0.33μmである六方晶型窒化ホウ素(デンカ株式会社製GPグレード)である。
本例の熱伝導性ビーズ1は、前述したコア部2と、コア部2の表面21を覆い、長径方向がコア部2の表面21に沿うように配向した充填材32と未硬化の前記硬化性ポリマーとを含む未硬化シェル層を備えた未硬化ビーズ100を作製するビーズ作製工程と、未硬化ビーズ100中の硬化性ポリマーを硬化させる硬化工程と、を有する製造方法により作製される。本例の熱伝導性ビーズ1の作製方法を以下に詳説する。
・コア部2の作製方法
一次粒子として、日本黒鉛商事株式会社製「UP-20」(平均長径3.37μm、平均短径0.28μm)を使用した。また、バインダとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した。バインダには、具体的には、ビスフェノールA骨格を有する主剤(三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)827」と、硬化剤としての4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(東京化成工業株式会社製)と、硬化促進剤としての2-エチルー4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)とが含まれている。
前述した主剤100質量部に対し、108質量部の硬化剤と1質量部の硬化促進剤とを混合して未硬化の硬化性ポリマーを調製した。次いで、この硬化性ポリマー5質量部に対して15質量部の一次粒子を加えて混合し、粘土状のコア混合物を得た。ペレタイザーを用いて得られたコア混合物を粒状に成形し、コア部前駆体を作製した。
次に、後述する自転公転型ミキサー4(株式会社シンキー製「ARE-310」)の容器41内にコア部前駆体を入れた後、容器41の公転速度を2000rpm、自転速度を800rpmに設定して2分間攪拌を行った。これにより、コア部前駆体を球状に成形して未硬化コア部を得た。
その後、未硬化コア部を80℃の温度で1時間保持し、次いで120℃の温度で1時間し、その後150℃の温度で3時間保持する温度履歴で加熱し、未硬化コア部中の硬化性ポリマーを硬化させた。以上により、薄片状の黒鉛からなる一次粒子と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化物からなり、一次粒子を保持するバインダとを備えたコア部2を得た。
・ビーズ作製工程
次に、前述の方法により得られたコア部2の表面21に未硬化シェル層を形成するビーズ作製工程を実施した。本例のビーズ作製工程は、充填材32と硬化性ポリマーとの混合物であるシェル混合物を作製する混合工程と、図4に示す自転公転型ミキサー4内でコア部2とシェル混合物とを攪拌することにより、コア部2の表面21に未硬化シェル層を形成する被覆工程と、を有している。
混合工程においては、コア部2と同様にして未硬化の硬化性ポリマーを調製した。次いで、この硬化性ポリマー5質量部に対して15質量部の充填材32を加えて混合し、粘土状のシェル混合物を得た。
被覆工程においては、図4に示す自転公転型ミキサー4(株式会社シンキー製「ARE-310」)の容器41内に前述した10質量部のコア部2と1質量部のシェル混合物とを入れた後、容器41の公転速度を2000rpm、自転速度を800rpmに設定して2分間攪拌を行った。攪拌完了後、10質量部のコア部2に対して1質量部のシェル混合物を容器41内に追加し、容器41の公転速度を2000rpm、自転速度を800rpmに設定して2分間攪拌を行う操作を4回繰り返した。
本例において使用した自転公転型ミキサー4の容器41は、図4に示すように円筒状を呈しており、中心軸と自転軸42とが一致するように配置されている。また、容器41の自転軸42は公転軸43に対して45°傾斜するように配置されている。そして、容器41は、公転軸43の周囲を旋回しつつ、自転軸42(つまり、容器41の中心軸)を回転中心として自転するように構成されている。
容器41内のコア部2は、容器41の公転によって遠心力を受けつつ、自転によって転動する。これにより、コア部2の表面21にむらなくシェル混合物を付着させるとともに、未硬化ビーズ100を球状に成形することができる。さらに、コア部2の転動によって、コア部2に付着した充填材32をコア部2の表面と長径方向とが平行になるように配向させつつ、粒子全体を球状に成形することができる。これらの結果、コア部2の表面21に未硬化シェル層を形成し、未硬化ビーズ100を得ることができる。
硬化工程においては、未硬化ビーズ100を加熱して硬化性ポリマーを硬化させた。本例の硬化工程では、具体的には、80℃の温度で1時間保持し、次いで120℃の温度で1時間し、その後150℃の温度で3時間保持する温度履歴で未硬化ビーズ100を加熱した。以上により、10質量部のコア部2に対して5質量部のシェル層3が表面21に付着したコア-シェル型熱伝導性ビーズ1を得た。本例の熱伝導性ビーズ1のシェル層3における、充填材32と樹脂部31との質量比及び体積比は表1に示す通りである。
次に、熱伝導性ビーズ1の形状、シェル層3の厚み及びシェル層3内の充填材32の配向状態を以下の方法により評価した。
・熱伝導性ビーズ1の形状
光学顕微鏡により熱伝導性ビーズ1を観察して光学顕微鏡像を取得した。画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF2015」)を用い、図3に示す、光学顕微鏡像中の熱伝導性ビーズ1の長径Lb[μm]、短径Sb[μm]、周囲長P[μm]及び投影面積S[μm2]を算出した。そして、個々の熱伝導性ビーズ1について、下記式(1)~式(3)に基づいて扁平率、表面凹凸度及び直径Dbの値を算出した。
扁平率=(Lb-Sb)/Lb ・・・(1)
表面凹凸度=P2/4πS ・・・(2)
b=(4S/π)1/2 ・・・(3)
100個以上の熱伝導性ビーズ1について扁平率、表面凹凸度及び直径Dbの値を測定した後、統計処理を行い平均値及び標準偏差を算出した。表1に、本例の熱伝導性ビーズ1の扁平率、表面凹凸度及び直径Dbの平均値と標準偏差とを示す。
・シェル層3の厚み
熱伝導性ビーズ1を切断した後、断面を研磨して重心を通る断面を露出させた。この断面における熱伝導性ビーズ1の表面を含む領域を光学顕微鏡で観察し、無作為に選択した10箇所においてシェル層3の厚みを測定した。そして、これらの平均値をシェル層3の厚みとした。本例のシェル層3の厚みは表1に示す通りであった。
・充填材32の配向状態
熱伝導性ビーズ1を切断した後、断面を研磨して重心を通る断面を露出させた。この断面を走査型電子顕微鏡で観察し、図5に示す電子顕微鏡像を取得した。図には示さないが、シェル層3をより高倍率で観察したところ、シェル層3内の充填材32は、充填材32の厚み方向が熱伝導性ビーズ1の径方向に沿い、かつ、充填材32の長径方向が熱伝導性ビーズ1の表面11に沿うように配向していた。
次に、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF2015」)を用い、以下の方法により熱伝導性ビーズ1の表面11の最も近くに配置された充填材32の配向角θ(図2参照)を算出した。まず、電子顕微鏡像上において、熱伝導性ビーズ1の重心Wbと、熱伝導性ビーズ1の表面11に最も近い位置に配置された充填材32の重心Wfとを通る直線L1を引き、この直線L1と熱伝導性ビーズ1の表面11との交点12を決定した。そして、この交点12を通る熱伝導性ビーズ1の輪郭の接線L2を決定した。以上により決定された接線L2と、充填材32の長径に平行な方向に延びる直線L3とのなす角度を配向角θとした。なお、便宜上、図2においては充填材32の記載を一部割愛した。
100個以上の充填材32について配向角θの値を測定した後、統計処理を行い配向角θの平均値及び標準偏差を算出した。表1に、本例の熱伝導性ビーズ1における、配向角θの平均値及び標準偏差を示す。
Figure 0007199708000001
表1に示したように、本例の熱伝導性ビーズ1は、コア部2の表面21がシェル層3によって覆われている。コア部2を構成する充填材32及び樹脂部31は電気絶縁性を有しているため、かかるシェル層3でコア部2を被覆することにより、熱伝導性ビーズ1の電気絶縁性を確保することができる。
また、シェル層3内の充填材32は前記特定の方向に配向している。これにより、シェル層3内に、充填材32同士が連なってなる熱の経路を容易に形成し、シェル層3に沿って熱を効率よく伝達させることができる。更に、熱伝導性ビーズ1同士を接触させることにより、隣接する熱伝導性ビーズ1にシェル層3を介して熱を効率よく伝達することができる。
また、熱伝導性ビーズ1の充填材32は、硬化性ポリマーの硬化物からなる樹脂部31に保持されている。そのため、せん断力などの外力が加わった場合に、熱伝導性ビーズ1の崩壊を抑制し、シェル層3における充填材32の配向状態を維持することができる。
更に、熱伝導性ビーズ1は球状であるため、射出成形等の樹脂組成物の流動を伴う成形方法によって前記熱伝導性ビーズ1を含む樹脂組成物を成形した場合に、樹脂組成物中に熱伝導性ビーズ1を等方的に分散させることができる。それ故、熱伝導性ビーズ1を含む成形体内には、シェル層3及びコア部2を含む熱の経路が等方的に形成されやすい。
以上の結果、本例の熱伝導性ビーズ1によれば、電気絶縁性を有し、熱伝導性に優れるとともに、等方的な熱伝導性を有する成形体を作製することができる。
(実施例2)
本例では、図6を参照しつつ熱伝導性ビーズ1を含む成形体5の例を説明する。なお、本例以降の例において用いる符号のうち、既出の例において用いた符号と同一のものは、特に説明のない限り既出の例における構成要素等と同様の構成要素等を示す。
本例の成形体5には、図6に示すように、樹脂マトリクス51と、樹脂マトリクス51中に分散した熱伝導性ビーズ1とが含まれている。本例においては、具体的には、以下のようにして2種類の成形体5(試験体T1、T2)を作製した。
・試験体T1
試験体T1の樹脂マトリクス51には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化物511と、この硬化物511中に分散した充填材512とが含まれている。試験体T1の樹脂マトリクス51における硬化物511は、具体的には、ビスフェノールA骨格を有する主剤(三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)827」、硬化剤としての4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(東京化成工業株式会社製)及び硬化促進剤としての2-エチルー4-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)との混合物を硬化させてなるビスフェノールA型エポキシ樹脂である。また、試験体T1における充填材512は、具体的には、六方晶型窒化ホウ素(デンカ株式会社製GPグレード)である。
試験体T1を作製するに当たっては、まず、主剤100質量部に対し、108質量の硬化剤と1質量部の硬化促進剤とを混合して未硬化の硬化性ポリマーを調製した。次いで、この硬化性ポリマー5質量部に対して15質量部の充填材512を加えて混合し、未硬化の樹脂マトリクスを得た。
次に、未硬化の樹脂マトリクス1質量部に対して3質量部の実施例1の熱伝導性ビーズ1を混合し、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を内径φ40mmの円筒状を呈する金型内に入れ、圧縮成形を行った。圧縮成形においては、圧力37MPa、温度80℃の条件で1時間加圧しつつ加熱を行った後、圧力を保ったまま温度を120℃に上昇させ、120℃の温度を1時間保持した。その後、金型から取り出した成形体5を、150℃の温度で3時間加熱して樹脂マトリクス51を十分に硬化させた。以上により、厚み1.2mm、直径40mmの円板状を呈する成形体5を得た。この成形体5を試験体T1とした。
試験体T1における、コア部とシェル層と樹脂マトリクスとの質量比率は、表2に示す通りであった。また、試験体T1中に含まれる六方晶型窒化ホウ素と黒鉛との質量比率は、六方晶型窒化ホウ素:黒鉛=50:50であった。
・試験体T2
未硬化の樹脂マトリクス3質量部に対して3質量部の実施例1の熱伝導性ビーズ1を混合した以外は、試験体T1と同様の条件で成形体5を作製した。この成形体5を試験体T2とした。試験体T2における、コア部とシェル層と樹脂マトリクスとの質量比率は、表2に示す通りであった。また、試験体T2中に含まれる六方晶型窒化ホウ素と黒鉛との質量比率は、六方晶型窒化ホウ素:黒鉛=33:67であった。
本例では、試験体T1及び試験体T2との比較のため、熱伝導性ビーズ1を用いずに作製した成形体(試験体T3、T4)を準備した。試験体T3、T4の具体的な作製方法は以下の通りである。
・試験体T3
実施例1の熱伝導性ビーズ1に替えて、実施例1と同様の方法により作製したコア部2を用い、未硬化の樹脂マトリクス1質量部に対して1質量部のコア部2を混合した以外は、試験体T1と同様の条件で成形体を作製した。この成形体を試験体T3とした。即ち、試験体T3における樹脂マトリクス51中には、電気伝導性を有するコア部2が分散している。また、コア部2の表面21には電気絶縁性のシェル層3が設けられていない。
試験体T3における、コア部とシェル層と樹脂マトリクスとの質量比率は、表2に示す通りであった。また、試験体T3中に含まれる六方晶型窒化ホウ素と黒鉛との質量比率は、六方晶型窒化ホウ素:黒鉛=50:50であった。
・試験体T4
実施例1の熱伝導性ビーズ1に替えて、実施例1と同様の方法により作製したコア部2を用い、未硬化の樹脂マトリクス2質量部に対して1質量部のコア部2を混合した以外は、試験体T2と同様の条件で成形体を作製した。この成形体を試験体T4とした。
試験体T4における、コア部とシェル層と樹脂マトリクスとの質量比率は、表2に示す通りであった。また、試験体T4中に含まれる六方晶型窒化ホウ素と黒鉛との質量比率は、六方晶型窒化ホウ素:黒鉛=33:67であった。
以上により得られた試験体T1~T4の熱伝導性を、以下の方法により評価した。
・熱伝導率及び熱伝導率異方性の測定方法
熱物性測定装置(株式会社ベテル製「サーモウェーブアナライザTA35」)を用いて、試験体の厚さ方向及び厚さ方向に直角な方向(つまり、試験体の円形の表面に沿う方向)の熱拡散率λ[m2・s-1]を測定した。また、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「DSC7000」)を用いて試験体の定圧比熱Cp[J・K-1・kg-1]を測定した。更に、アルキメデス法により試験体の密度ρ[kg・m-3]を測定した。なお、これらの測定は、いずれも25±2℃の環境中で行った。
以上により得られた熱拡散率λ、定圧比熱Cp及び密度ρの値を下記式(4)に代入することにより、熱拡散率を測定した方向における熱伝導率の値α[W・m-1・K-1]の値を算出することができる。表2に、試験体T1~T4における、厚さ方向の熱伝導率及び厚さ方向に直角な方向の熱伝導率を示す。なお、本例の作製方法においては、試験体の厚さ方向または厚さ方向に直角な方向のうち一方が熱伝導率が最大となる方向になり、他方が熱伝導率が最小となる方向になると推定される。
α=λ×Cp×ρ ・・・(4)
Figure 0007199708000002
表2に示したように、試験体T1及び試験体T2の体積抵抗率は1×1014Ω・m以上であり、これらの試験体が電気絶縁性を有していることが理解できる。また、これらの試験体における熱伝導率が最大となる方向における熱伝導率λA[W/m・K]と、熱伝導率が最小となる方向における熱伝導率λB[W/m・K]との比である熱伝導率異方性λA/λBの値は1.5以下である。かかる結果によれば、これらの試験体は、等方的な熱伝導性を有していることが理解できる。
試験体T1及び試験体T2の内部では、図6に一例を示すように、成形後においても熱伝導性ビーズ1の充填材32の配置が維持されていると推定される。そして、熱伝導性ビーズ1のシェル層3同士が接触することにより、シェル層3を含む熱の経路が等方的に形成されていると考えられる。
一方、試験体T3及び試験体T4は、試験体T1、T2と同等以上の熱伝導率を有するものの、電気絶縁性を確保することができなかった。
本発明に係る熱伝導性ビーズ1、樹脂組成物及び成形体5の具体的な態様は、実施例1及び実施例2に記載された態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
例えば、実施例1においては、コア部2として黒鉛とエポキシ樹脂との複合粒子を使用した例を示したが、コア部2は、例えば球状金属粒子や球状黒鉛粒子等の、電気伝導性を有する物質を球状に成形してなる粒子であってもよい。
また、実施例2においては、熱伝導性ビーズ1と同一の組成を有する樹脂マトリクス51を使用した樹脂組成物及び成形体5の例を示したが、樹脂マトリクス51の組成は、熱伝導性ビーズ1とは異なっていてもよい。
1 熱伝導性ビーズ
2 コア部
21 表面
3 シェル層
31 樹脂部
32 充填材

Claims (9)

  1. 電気伝導性を有する物質を含むコア部と、
    前記コア部を覆い、表面に露出したシェル層と、を有し、
    球状を呈しており、
    前記シェル層は、
    硬化性ポリマーの硬化物からなり電気絶縁性を有する樹脂部と、
    前記樹脂部よりも熱伝導率が高く、形状異方性及び電気絶縁性を有し、前記樹脂部に保持された充填材と、を含み、
    前記充填材の長径方向が前記コア部の表面に沿うように前記充填材が配向している、コア-シェル型熱伝導性ビーズの製造方法であって、
    前記コア部と、前記コア部の表面を覆い、長径方向が前記コア部の表面に沿うように配向した前記充填材と未硬化の前記硬化性ポリマーとを含む未硬化シェル層とを備え、球状を呈する未硬化ビーズを作製するビーズ作製工程と、
    前記未硬化シェル層中の前記硬化性ポリマーを硬化させる硬化工程と、を有し、
    前記ビーズ作製工程は、
    前記充填材と前記硬化性ポリマーとの混合物を作製する混合工程と、
    自転公転型ミキサー内で前記コア部と前記混合物とを攪拌することにより、前記コア部の表面に前記未硬化シェル層を形成する被覆工程と、を有している、コア-シェル型熱伝導性ビーズの製造方法。
  2. 電気伝導性を有する物質を含むコア部と、
    前記コア部を覆い、表面に露出したシェル層と、を有し、
    球状を呈するコア-シェル型熱伝導性ビーズであって、
    前記コア部は、電気伝導性を有する複数の粒子と、これらの粒子を保持するバインダとを含む複合粒子であり、
    前記シェル層は、
    硬化性ポリマーの硬化物からなり電気絶縁性を有する樹脂部と、
    前記樹脂部よりも熱伝導率が高く、形状異方性及び電気絶縁性を有し、前記樹脂部に保持された充填材と、を含み、
    前記充填材の長径方向が前記コア部の表面に沿うように前記充填材が配向しており、
    前記充填材の長径Lf[μm]と、前記コア-シェル型熱伝導性ビーズの直径Db[μm]との比 b /L f の値が10以上1000以下である、コア-シェル型熱伝導性ビーズ。
  3. 前記シェル層の厚みの平均値は1μm以上20μm以下である、請求項2に記載のコア-シェル型熱伝導性ビーズ。
  4. 前記シェル層中の前記充填材の含有量は30体積%以上95体積%以下である、請求項2または3に記載のコア-シェル型熱伝導性ビーズ。
  5. 前記充填材は六方晶型窒化ホウ素から構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載のコア-シェル型熱伝導性ビーズ。
  6. 樹脂からなる樹脂マトリクスと、
    前記樹脂マトリクス中に分散した請求項2~5のいずれか1項に記載のコア-シェル型熱伝導性ビーズと、を含む、樹脂組成物。
  7. 前記コア-シェル型熱伝導性ビーズの含有量が30体積%以上95体積%以下である、請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. 樹脂からなる樹脂マトリクスと、
    前記樹脂マトリクス中に分散したコア-シェル型熱伝導性ビーズと、を含む樹脂組成物の成形体であって、
    熱伝導率が最大となる方向における熱伝導率の値λA[W/m・K]と、熱伝導率が最小となる方向における熱伝導率の値λB[W/m・K]との比である熱伝導率異方性λA/λBの値が1.5以下であり、
    体積抵抗率が1×10 14 Ω・m以上であり、
    前記コア-シェル型熱伝導性ビーズは、電気伝導性を有する物質を含むコア部と、
    前記コア部を覆い、表面に露出したシェル層と、を有し、
    球状を呈しており、
    前記シェル層は、
    硬化性ポリマーの硬化物からなり電気絶縁性を有する樹脂部と、
    前記樹脂部よりも熱伝導率が高く、形状異方性及び電気絶縁性を有し、前記樹脂部に保持された充填材と、を含み、
    前記充填材の長径方向が前記コア部の表面に沿うように前記充填材が配向している、成形体。
  9. 熱伝導率が最小となる方向における熱伝導率の値λB[W/m・K]の値が7W/m・K以上である、請求項8に記載の成形体。
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