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JP7202820B2 - マイクロ流路チップ - Google Patents
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Description

本発明は、コンタミネーションを起こすことなく、検体と複数の試薬との迅速な反応と、精度の高い分析とを可能にするマイクロ流路チップに関する。
マイクロ流路チップとは、チップ上に加工されたマイクロ流路を利用して,混合、反応、抽出、分離などの処理を行うデバイスであり、試薬量が微量で済み、反応時間が短く、経済的であり、これまでハンドリングの難しかった細胞や微生物を培養、観察できる点に特徴を有する。
特許文献1には、測定対象液体(検体)を、引圧により目的の場所に移動させる機能を有するマイクロ流路チップが開示されている。それによれば、検体を引圧により強制吸引して分析部に移動させるため、少量の検体であっても、その粘性等に関係なく短時間で分析部に導入して分析を行うことができ、その結果、例えば、試薬を使用して分析を行う場合、検体と試薬との反応時間や量を一定化することができる、とされている。同文献にはまた、バイパス流路や吸引流路の液抵抗に差を設けることにより、選択的に液体を輸送する工夫も記載されている。
特開平10-132712号公報
一般に検体の分析において、細菌や細胞の培養を行い、その状態を観察することは珍しくない。培養を行う場合、典型的には、一定の条件(例えば、室温又はそれ以上の温度、ほぼ100%の湿度)に保たれたインキュベーター中に、検体を保持したチップを一定時間(例えば2時間以上)保管する方法が用いられる。
しかし、特許文献1に開示の検体分析用具では、検体を分析部に滞留させるべく引圧発生室の引圧を維持し続けながら、チップをインキュベーター中に保管することは困難である。
逆に、チップをインキュベーター中に保管するために引圧発生室の引圧を解除すると、検体が引圧発生室中にまで引き込まれる結果、反応液がコンタミネーションを起こす危険がある。特に、検体と複数種の試薬との反応を単一のマイクロ流路チップ上で、複数の反応を同時に行ういわゆるマルチ分析の場合にはその不利益が顕著に現れる。すなわち、特許文献1においてマルチ分析用の検体分析用具の場合、流路は、一箇所の吸引部から、吸引流路で分岐し、引圧発生室で再合流する構造となる。マルチ分析では分析部にそれぞれ別々の試薬を配置することになるが、この構造では、試薬の成分が引圧発生室を経由して吸引流路を行き来(合流)してしまい、コンタミネーションを引き起こす可能性が高い。これはバイパス流路が配置されていても同様であり、反応後の吸引流路内の液体とバイパス流路内の液体とが引圧発生室で混合してしまい、分析結果の信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。
以上に鑑み、本発明は、マルチ分析を1つのマイクロ流路チップで実施する際に、各反応液がコンタミネーションを起こさない新たな構造を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 試験液導入口と、
少なくとも1つの前記試験液導入口に対し、試験液と反応する薬剤が配置される複数の反応部と、
前記試験液導入口と前記複数の反応部の各々とを連結する第一流路と、
前記複数の反応部の各々から前記薬剤と前記試験液とが反応した反応液を吸引する1つの吸引部と、
前記複数の反応部の各々と前記吸引部とを連結し、前記第一流路よりも流路幅が狭く、前記反応液を観察する観察領域を有する第二流路と
を有するマイクロ流路チップ。
[2] 前記第二流路は、前記吸引部との連結部又はその近傍に、前記反応液の合流防止機構を有する[1]に記載のマイクロ流路チップ。
[3] 前記合流防止機構は、
前記反応液の流動方向に略直交する壁面を有する絞り部入口と
前記吸引部に向かって前記第二流路の幅が漸増する絞り部出口と、
を有する[2]に記載のマイクロ流路チップ。
[4] 前記第二流路の観察領域は、複数の該第二流路の一部を同時に観察できる大きさを有する[1]に記載のマイクロ流路チップ。
[5] 前記第一流路は、前記反応部近傍に、前記試験液の逆流防止機構を有し、
前記液逆流防止機構は、前記試験液導入口から前記反応部に向かって前記第一流路幅が漸減する構造を有する[1]に記載のマイクロ流路チップ。
[6] 前記第二流路は、前記観察領域と前記吸引部との間に、屈曲部と直線部とから構成される非観察領域を有する[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
[7] 前記非観察領域は渦巻き状に形成され、その略中央部又は末端に前記吸引部を有する[6]に記載のマイクロ流路チップ。
本発明によれば、コンタミネーションを起こすことなく、複数の試薬を用いて、安定性、再現性、効率性の高い測定が可能になる。
本発明に係るマイクロ流路チップの構成を示す斜視図である。 本発明に係るマイクロ流路チップの第一基板背面11bの平面図である。 本発明に係るマイクロ流路チップの使用の一形態を示す断面図である。 図2のA部拡大図である。 (a)図2のB部拡大図である。(b)図5(a)のC部拡大図である。 本発明に係るマイクロ流路チップの試験液の逆流防止機構22の作用を示す図である。 本発明に係るマイクロ流路チップの反応液の合流防止機構23の作用を示す図である。 本発明に係るマイクロ流路チップの第二実施例である。 本発明に係るマイクロ流路チップの第三実施例である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではない。
[マイクロ流路チップの構成]
以下、図1~図3を用いて詳細に説明する。
例示のマルチ分析用マイクロ流路チップは、試験液導入口13、薬剤導入口14及び吸引部18が表面に開口して形成された基板を有し、薬剤導入口14の底面に設けられた薬剤保持部(反応部)15と試験液導入口との間を連通させるためのマイクロメートル(μm)レベルの微細な連通流路(第一流路16)、及び反応部15と吸引部18との間を連通させるためのマイクロメートル(μm)レベルの微細な連通流路(第二流路19)が基板の内部に形成されている。薬剤保持部15に配置された薬剤に、試験液導入口13から導入された試験液を、第一流路16を介して送液することにより、薬剤と試験液とを接触させる。これにより、薬剤と試験液とを反応させて反応液を得る。この反応液を吸引部18に導く第二流路19の途中には観察領域21が設けられ、試験液の感受性評価等を行うことができる。
図1に示されるマイクロ流路チップ10は、表面側の第一基板11と、背面側の第二基板12とを貼り合わせることにより形成される。マイクロ流路は、基板11の背面11bに形成される凹溝と、基板11に接合される基板12とにより形成される。
図1および図3に示されるように、第一基板11には、表面11aと背面11bとを貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔は、試験液導入口13としての機能を有する。また、試験液導入口13から少し離れた位置にも貫通孔が形成されており、この貫通孔は、薬剤導入口14としての機能を有する。第一基板11については、試験液導入口13と薬剤導入口14、及び後述する吸引部18が外部に開口した面を表面11aとし、第二基板12が貼り付けられる接合面を背面11bとする。表面11aはマイクロ流路チップ10の表面である。
図3に示されるように、第二基板12のうち薬剤導入口14に対向する部分、つまり薬剤導入口14の底面は、薬剤保持部15を構成しており、薬剤保持部15は試験液との反応部を構成する。
図2、図3に示すように、第一基板11の背面11bつまり接合面には試験液導入口13と、複数の反応部15と、試験液導入口13と反応部15の各々とを連通させる第一流路16(第一流路)を形成するための凹溝が形成されている。第一流路16には試験液導入口13に連通する分岐部17が設けられ、第一流路16は分岐部17の下流で複数の流路に分岐して、反応部15の各々に連通している。第一基板11の接合面に第二基板12を接合すると、第一基板11の凹溝と第二基板12とにより、両基板の界面(マイクロ流路チップ10の内部)にこのような第一流路16が形成される。
複数の第一流路16の反応部15の近傍で、試験液導入口13側には、試験液の逆流防止機構22が設けられていることが好ましい。図4は、図2に示された反応部15の近傍A部を拡大して示す平面図である。導入口13は、第一流路16の分岐部17に連通し、上流端から下流側に向けて幅が狭くなったテーパ状の絞り部入口31aと、この絞り部入口31aに連通するほぼ一定幅の絞り部31bとを有しており、絞り部31bは反応液の流動方向に略直交する壁面を有する絞り部出口31cに連なっている。通常、絞り部入口31aの更に上流側の部分の幅は、絞り部出口31cの下流端の幅とほぼ同一である。
ここで、試験液導入口13から流入して分岐部17を通過した試験液は、絞り部入口31a、絞り部31b、絞り部出口31cを経ることにより、反応部15に向けて案内される。その結果、図4のD部拡大図である図6に示されるように、試験液と薬剤が反応した反応液(図6のグレーで表される部分)が、反応部15から逆流防止機構22を通過して試験液導入口13に向けて逆流、つまり液戻りの発生が防止される。なお、逆流防止機構22の構造はこれに限定されるものではなく、慣用の逆流防止機構とすることができ、試験液導入口13から反応部15に向かって第一流路幅が漸減する構造を有するものであってもよい。
また、図1および図3に示されるように、さらに、第一基板11には、表面11aと背面11bとを貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔は、複数の反応部15の各々から薬剤と試験液とが反応した反応液を吸引する吸引部18としての機能を有する。
図2、図3に示されるように、第一基板11の背面11bつまり接合面には吸引部18と、4つの反応部15の各々とを連通させる4つの連通流路19(第二流路)を形成するための凹溝が形成されている。第二流路19は、反応液を観察する観察領域21を有する。複数の第二流路19は、単一の視野内において複数の第二流路の一部を観察できるように流路幅が設計されているので効率的な観察が可能となる。また、第一流路16よりも第二流路19の流路幅を狭く、又は流路を浅くすることで、試験液3導入時には、試験液3の反応部15への導入が速やかに行われ、反応中には、第二流路19への反応液5の予期しない浸入を防ぐことができる。
さらに、複数の第二流路19の各々には、吸引部18との連結部又はその近傍に、反応液の合流防止機構23が設けられていることが好ましい。例えば合流防止機構23は、図5(a)及び(b)に示すように、反応液の流動方向に略直交する壁面を有する絞り入口31aと、吸引部18に向かい第二流路16の幅が漸増する絞り部出口31cから構成される。図7は実際に吸引部18から反応液(図7でグレーで見える部分)を吸引した場合に、反応液の状態を実験した図(写真)である。吸引により複数の第二流路19の反応液が合流することなく各々の第二流路19に独立に存在することがわかる。このように流路の一部に狭窄部を設けることで、吸引部18で吸引される反応液の混合(合流)を防止することができ、精度の良い観察(判定)を行うことができる。なお、合流防止機構23の構造はこれに限定されるものではなく、図5(b)のように前後の流路よりも流路幅を細くした狭窄部を設けると言ったような物理的な遮断や、流動する試験液(水系)に対し、その流動を妨げる撥水部を流路内部表面に設けると言ったような、液体と固体の表面エネルギー差を用いた化学的な遮断方法を採ることもできる。
また、複数の第二流路19の各々には、図8に示すように、観察領域21と吸引部18との間に、屈曲部と直線部とから構成される非観察領域24を設ける事もできる。非観察領域24もまた、反応液の合流を防止する機能を有する。非観察領域24は、図9に示すように、渦巻き状に形成され、その略中央部又は末端に吸引部18を有するように設計することもできる。
ところで、第一基板11が透明であることは、試験液の変化の観察、薬剤保持部の薬剤量、薬剤と菌に反応状態(後述する薬剤感受性評価)の確認等のために有利であり、好ましい。また、第一基板11はゴム弾性を有することが好ましい。更に、第一基板11が気体透過性を有することも好ましい。少なくとも天然ゴム以上の気体透過性を有することが好ましい。これは、第一基板と第二基板の貼り合せの際、両者に挟まれて不可避的に残存する空気を大気中に放出し、加熱による気体の膨張によるマイクロ流路チップの破損を防止することが期待されるからである。ここで、ゴム弾性を有する好ましい素材は、JIS K6251:2010に従って測定された引張強さが40-100kg/cmであり、伸びが50-500%のものである。上記のような物性を備えたゴムとしてはシリコーンゴムが挙げられ、特にポリジメチルシロキサンが推奨される。なお、ポリジメチルシロキサンのJIS K6251:2010に従って測定された引張強さは70-100kg/cmであり、伸びが100-500%であり、特にこの範囲であることが好ましい。
また、第二基板12はマイクロ流路チップに慣用されている基板を用いればよい。素材としては、例えば、ガラス、シリコン、有機ポリマー、ガラス・有機ポリマー複合体等が挙げられる。特にガラスは好適である。
このように、試験液導入口と、
少なくとも1つの前記試験液導入口に対し、試験液と反応する薬剤が配置される複数の反応部と、
前記試験液導入口と前記複数の反応部の各々とを連結する第一流路と、
前記複数の反応部の各々から前記薬剤と前記試験液とが反応した反応液を吸引する1つの吸引部と、
前記複数の反応部の各々と前記吸引部とを連結し、前記第一流路よりも流路幅が狭く、前記反応液を観察する観察領域を有する第二流路と、
を有するマイクロ流路チップが構成される。
[マイクロ流路チップの製造方法]
次に、マイクロ流路チップを作製する手順を、図を参照して説明する。
図1に示されるように、第一基板11の背面11bに試験液導入口13、薬剤導入口14、及び吸引部18を形成する貫通孔、第一流路16、第二流路19等が形成され、その背面11bに第二基板12が貼りあわされ、マイクロ流路チップ10が作製される。
[第一基板の準備]
上記したとおり、第一基板11の素材は特に限定されないが、透明素材であることが好ましく、ゴム弾性を有することが好ましく、気体透過性を有するシリコーンゴムが好ましく、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。第一基板11としてゴム弾性を有する素材を使用すると、第一基板11を第二基板12上に載置するだけで密着し、接着剤等を使用することなく、第一基板11と第二基板12の積層を行うことができる。
第一基板11を作製するには、まず、第一流路16、第二流路19等を構成する凹溝が設けられた鋳型を用意し、基板11の原材料となる液状の未架橋シリコーンゴムをこの鋳型に流し込んで硬化させる。これにより、第一基板11の背面11bに、図2のような第一流路16、第二流路19等を構成する凹溝が形成された矩形状のシリコーンゴム製の基板11が得られる。
続いて、このシリコーンゴム製の基板11を鋳型から脱型した後、第一流路16の一端側に対応する部分の基板11を加工することにより試験液導入口13が形成される。同様に、第一流路16の他端側に対応する部分の基板を加工することにより薬剤導入口14が、第一流路19の末端に対応する部分の基板を加工することにより吸引部18が、それぞれ形成される。なお、これらは、鋳型による基板11成型時に同時に形成しても良い。
なお、第一基板11は、例えば、長辺が50mm、短辺が40mmであり、厚さは2mmである。第一流路16を構成する凹溝の幅は約300μmであり、第二流路19を構成する凹溝の幅は約50μmである。試験液導入口13の内径は約1mmであり、薬剤導入口14の内径は約1mmであり、吸引部18の内径は約1mmである。図2のような構造はフォトマスクを用いた微細加工により一括形成することができる。
このように、本例示形態のマルチ分析用マイクロ流路チップは、マイクロ流路チップ10に合計12個の反応部15が設けられた形態であるが、任意の数の反応部をマイクロ流路チップ10に設けることができる。また、例示では、1つの試験液導入口13に対して、4つの反応部15と、これに対応した本数の第一流路16及び第二流路19とを1セットとして設けているが、この試験液導入口、反応部、第一流路及び第二流路のセットの数は、任意の数とすることができる。吸引部18は、このような試験液導入口、反応部、第一流路及び第二流路の1又は2以上のセットに対して1つ設ければ足りるが、基板上には複数の吸引部18と、それらに対応する数の試験液導入口、反応部、第一流路及び第二流路のセットを設けることもできる。
[第二基板の準備]
第二基板12はマイクロ流路チップに慣用されている基板を用いればよいが、以下ガラス基板を例として説明する。
[第一基板と第二基板の積層]
上述したように作製された第一基板11の背面11bに第二基板12を接合することにより、図1に示されるように、マイクロ流路チップ10が作製される。
なお、第一基板11と第二基板12が透明な材料により形成され、マイクロ流路チップ10の内部に形成された第一流路16、第二流路19等が外部から目視観察できることが好ましいが、図1においては、第一流路16、第二流路19等は図示を省略している。
[薬液の導入]
次いで、試験液の感受性評価試験にマイクロ流路チップが使用される場合には、図3に示す薬剤保持部(反応部)15、すなわち薬剤導入口14の底部に露出した第二基板12の内面に、感受性評価試験により比較評価が行われる反応物である薬剤が供給される。
所定の薬剤保持部(反応部)15に薬剤を配置するには、予め薬剤を水などの溶媒に溶かして調製した後、マイクロシリンジなどを使用して液状の薬剤を薬剤導入口14から内部に滴下する。その後、薬剤導入口14の内部に貯留された薬剤の溶媒を蒸発させることにより、薬剤導入口14の底部15に固形の薬剤が固定される。
[封止フィルムの貼り付け]
空気中の水分や酸素に触れると劣化する薬剤もあるので、薬剤保持部15に薬剤が供給されたマイクロ流路チップ10の表面11aに、薬剤導入口14を閉じるための封止フィルム(図示せず)を貼り付けてもよい。これにより、薬剤保持部15に薬剤が配置された薬剤導入口14は封止フィルムにより閉じられ、マイクロ流路チップ10と封止フィルムとからなる市場流通用のマイクロ流路チップを作製することができる。薬剤導入口14が封止フィルムにより閉じられるので、薬剤保持部15に固定された薬剤が薬剤保持部15から剥離しても、薬剤が薬剤導入口14から外部に飛散することが防止される。封止フィルムは、薬剤導入口のみを覆ってもよく、薬剤導入口を含む一定の面積の領域の全体を覆ってもよく、試験液導入口13までも含めて基板の全体を覆ってもよい。封止フィルムとして気体透過性を有する材料を使用すると、薬剤導入口14の内部の水分や酸素が、封止フィルムを透過して、マイクロ流路チップ本体を包装する包装体中に配置された乾燥剤(図示せず)により吸着されるので、薬剤の劣化を防止することができる。また、封止フィルムは、第一基板11と同種の材料により形成され、透明であることが好ましい。
[マイクロ流路チップの使用方法]
次に、マイクロ流路チップの使用方法を、感受性評価試験を例に説明する。
[感受性評価試験手順]
本発明に係るマルチ分析用のマイクロ流路チップにおいては、試験液が複数の薬剤と個別に反応し、それらを比較評価することができる。図2は、導入口13から4本に分岐したブロックを3つ配置した12種の薬剤を配置可能な流路形状例である。この時、試験液の導入口13を1つにし、その液体の流路を分岐させることで、異なる薬剤に対する試験液の感受性評価を同時に行うことができる。
図3は感受性評価試験を行う際の手順を示す、マイクロ流路チップ10の断面図である。
マイクロ流路チップを試験液の感受性評価試験に使用する場合には、予め薬剤を薬剤導入口14から薬剤導入口14の底面、すなわち薬剤保持部(反応部)15に供給、配置しておく。
反応部15に薬剤が配置された状態で、図3(A)に示されるように、試験液導入口13から試験液3を供給する。試験液3は、例えば、所定の細菌を含んだ培養液からなり、試験液導入口13に挿入されるマイクロシリンジ等により第一流路16内に供給される。導入された試験液3は、分岐部17にて複数の第一流路16に分岐し、反応部15の各々へと導入される。試験液3が第一流路16を流れると、第一流路16内の空気は、薬剤導入口14から外部に排出され、薬剤導入口14は排気口としての機能を有している。目的量の導入を行った後に、試験液3と混合を起こさないバッファ液又は空気を導入口13から後追いで導入する。これにより、既に試験液導入口13から第一流路16内に導入された試験液3は、分岐部17を経て4本の微細な第一流路16に分岐し、それぞれの第一流路16内を流れて、反応部15の各々に収容される。試験液導入口13のサイズに比して第一流路16は、相当に微細な部分を有しており、マイクロ流路チップのマイクロ流路チップ10を傾斜させて試験液3を自重で第一流路16内に流動させることは難しいが、バッファ液又は空気によって、試験液3を第一流路16内に押し込むことにより、確実に試験液を薬剤に接触させることができる。また、複数の第一流路16を有するマルチ分析用のマイクロ流路チップでは、それぞれの第一流路16に試験液3が均等に分岐されるので、この点においても、バッファ液又は空気供給による送液は有用である。
図3(b)に示されるように、薬剤導入口14の底部に固定された薬剤に試験液3が接触すると、薬剤が試験液に溶解し、薬剤に含まれる薬効成分と試験液3に含まれる細菌との反応が開始される。この状態を所定条件(例えば、室温又はそれ以上の温度、ほぼ100%の湿度、2時間以上)下に維持することによって、薬剤に対する細菌の感受性が評価される。ここで複数の異なる薬剤を用いれば、複数の異なる反応液5を得ることができる。
各反応液5は、試験の信頼性の観点から必要な時間、所定の場所に留まることが望ましいが、液体と流路の表面エネルギーによる濡れ広がりや、液体の自重により導入口方向へと逆流を起こす可能性がある。導入口13まで逆流が進行すると、各反応液5のコンタミネーションが発生する。これを逆流現象と言い、逆流現象が発生すると、細菌の感受性を正しく評価することができなくなる。
この逆流現象を防止するために、図4に示すように、液体逆流防止機構22を設けることが好ましい。その場合、液体逆流防止機構22は、試験液導入口13と反応部15との間の第一流路16内であって、分岐部17より反応部15側に設置する。この液体逆流防止機構22の具体的な方法としては、図4のように前後の流路よりも断面積を細くした狭窄部を設けると言ったような物理的な遮断や、流動する試験液(水系)に対し、その流動を妨げる撥水部を流路内部表面に設けると言ったような、液体と固体の表面エネルギー差を用いた化学的な遮断を採ることもできる。
例えば、図4に示すように、第一流路16の各々に絞り部31bを設けると、絞り部31bの最小の開口面積は、反応部15に比べて小さいため、反応部15内の反応液5が試験液導入口13側に濡れ広がろうとする力よりも、絞り部31bにおける高撥水性(低濡れ性)の素材(シリコーンゴム)と試験液との間に働く表面張力が上回るようになる。これにより、図6に示されるように、第一流路16の内部の試験液3が試験液導入口13側に逆流することを抑制できるので、上述したような試験液3の混合を防ぐことが可能となる。
使用の実際としては、例えば、スポイトで所定量の試験液3を吸い取り、試験液導入口13にスポイトを当てて試験液3を導入する。試験液3の全部を導入した後、更にスポイトを押し続け、空気を後追いで導入し、確実に試験液3を薬剤に接触させる。空気の導入量が多少変動しても、上述の逆流防止機構22の働きにより、試験液3の逆流が防止され(図6)、常に一定量以上の試験液3を薬剤に接触させることができるので、熟練を要することなく、再現性の高い測定が実施できる。
さらに、反応部15において十分に反応が進んだ後に、吸引部18より引圧を発生させる。これにより、反応部15から吸引部18までの空間、すなわち、観察領域21を含む第二流路19内の空気が吸引、排気され、反応部内反応液5の吸引部方向への移動が始まる。図3(C)に示されるように、反応液5を観察領域21まで移動させた後、反応液5の観察、分析を行う。例えば、試験液3として細胞や細菌を分散させた培養液を用い、これを反応部内で添加剤や薬剤と反応させ、培養のために数時間保持した後、細胞や細菌の形態変化や増殖を観察領域21を顕微鏡等で観察することで、添加剤や薬剤の効果を迅速、かつ高精度に得ることができる。また、図2に示すように、複数の第二流路19を収束させ、観察領域21を集合させることで、観察、分析を効率化することが望ましい。
さらに、操作性の面では、吸引部18を1つにすることで、吸引の動作を簡便に行うことができる。また、第一流路16よりも第二流路19を細くすることで、試験液3導入時には、試験液3の反応部15への導入が速やかに行われ、反応中には、第二流路19への反応液5の予期しない浸入を防ぐことができる。その後の吸引時には、反応部以降から吸引部18までの空間を占める空気は抵抗なく排気されるのに対し、第二流路19を細くすることで反応液5は液圧により徐々に移動を行い、均一な反応液5の移動が可能になる。
なお、第二流路19内の観察領域21と吸引部18との間に、図5のように、液体合流防止機構23を設けることが好ましい。これは、過度の吸引による第二流路19内の反応液同士のコンタミネーションの抑制を可能にするものである。
具体的な吸引方法としては、例えば、スポイト内の空気を少量押出し、そのまま吸引部18に当ててスポイトの押圧を緩めると、反応部15内の反応液が吸引部18に向かって移動する。吸引量が多少変動しても、上述の液体合流防止機構23の働きにより、反応液5が行き過ぎて吸引部でコンタミネーションを起こすようなことがない(図7)ので、熟練を要することなく、再現性の高い測定が実施できる。
さらに、図5以外にも、図8のように、観察領域21と吸引部18との間に、十分に長い流路構造を構成することで、吸引時、反応部以降から吸引部までの空間を占める空気が速やかに排気された後に、各反応液が混合する前に流路内圧力が平衡状態に達し、反応液の浸入が停止し、各反応液の混合を抑制できる。
また、図9のように、省スペースを狙い、第二流路19を渦巻き状に配置し、吸引部18を渦巻きの略中央部又は末端に配置した構造とすることもできる。
上述したように、図2の如く、4つの薬剤保持部15のうちの3つに、抗菌成分の濃度が異なる同一種類の薬剤、あるいは抗菌成分が異なる異種の薬剤等のように、薬剤効果が異なる薬剤を配置し、残りの1つの薬剤保持部15には薬剤を配置しないようにすると、薬剤無を基準として、薬剤の効果を比較評価することができる。かくして、1の試験液に対して3種の薬剤についての感受性評価試験を行うことができる。
そして、図2に示すマイクロ流路チップ10には、合計12箇所の薬剤保持部15が設けられているので、各流路における3つの薬剤保持部15に薬剤効果が相違する薬剤をそれぞれ配置すれば、同時に9種類の薬剤に対する試験液の感受性評価試験を行うことができる。
或いは、各流路に存在する3つの薬剤保持部15に、それぞれ同じ薬効の3種類の薬剤を配置して感受性評価試験を行うと、試験液に対する3種類の薬剤効果のバラツキを評価することができる。
或いは、合計12箇所の薬剤保持部15の全てに、薬剤効果が相違する薬剤を供給すれば、12種類の薬剤に対する試験液の感受性評価試験を行うことができる。
以上、このマイクロ流路チップを、薬剤に対する細菌の感受性評価に適用する場合について説明したが、このマイクロ流路チップは、薬剤感受性評価以外にも、試薬の分析、反応度評価等、種々の対象物の分析、評価に適用することができる。
本発明のマイクロ流路チップによれば、コンタミネーションを起こすことなく、複数の試薬と試験液との迅速な反応が可能であり、熟練を要することなく高効率、高精度の分析が実現できる。
3 試験液
5 反応液
10 マイクロ流路チップ
11 第一基板
11a 表面
11b 背面
12 第二基板
13 試験液導入口
14 薬剤導入口
15 薬剤保持部(反応部)
16 第一流路
17 分岐部
18 吸引部
19 第二流路
20 チップ本体
21 観察領域
22 試験液の逆流防止機構
23 反応液の合流防止機構
24 非観察領域
31a 絞り部入口
31b 絞り部
31c 絞り部出口

Claims (6)

  1. 試験液導入口と、
    少なくとも1つの前記試験液導入口に対し、試験液と反応する薬剤が配置される複数の反応部と、
    前記試験液導入口と前記複数の反応部の各々とを連結する第一流路と、
    前記複数の反応部の各々から前記薬剤と前記試験液とが反応した反応液を吸引する1つの吸引部と、
    前記複数の反応部の各々と前記吸引部とを連結し、前記第一流路よりも流路幅が狭く、前記反応液を観察する観察領域を有する第二流路と
    を有し、
    前記第二流路は、前記吸引部との連結部又はその近傍に、前記反応液の合流防止機構を有するマイクロ流路チップ。
  2. 前記合流防止機構は、
    前記反応液の流動方向に略直交する壁面を有する絞り部入口と
    前記吸引部に向かって前記第二流路の幅が漸増する絞り部出口と、
    を有する
    請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  3. 前記第二流路の観察領域は、複数の該第二流路の一部を同時に観察できる大きさを有する
    請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  4. 前記第一流路は、前記反応部近傍に、前記試験液の逆流防止機構を有し、
    前記液逆流防止機構は、前記試験液導入口から前記反応部に向かって前記第一流路幅が漸減する構造を有する
    請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  5. 前記第二流路は、前記観察領域と前記吸引部との間に、屈曲部と直線部とから構成される非観察領域を有する
    請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
  6. 前記非観察領域は渦巻き状に形成され、その略中央部又は末端に前記吸引部を有する
    請求項5に記載のマイクロ流路チップ。
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