以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、レーザ光の照射方向をX軸とし、粒子の流路の中心軸方向をY軸方向とする。X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸方向とする。
図1は、本発明の一実施形態における分析装置100の概略的な構成を示す図である。分析装置100は、気体中に含まれる粒子1がレーザ光12を散乱することによって生じた散乱光13に基づいて、粒子1を分析する。また、分析装置100は、レーザ光によって加熱された粒子1が放射する光である白熱光14に基づいて、粒子1を分析してよい。分析装置100は、粒子1の数、粒径、および質量濃度等を検出してよい。
粒子1は、気体中の微粒子であってよい。気体中の微粒子はエアロゾルと呼ばれる。粒子1の粒径は、1μm以上100μm以下であってよく、より具体的には5μm以上100μm以下であってよい。粒子の平均粒径が10μm程度であってよい。
粒子1は、ブラックカーボン(煤)であってよい。ディーゼルエンジンの排気ガス、石炭の燃焼、森林火災、薪等の燃料やバイオマス燃料の燃焼等、炭素を主成分とする燃料が不完全燃焼した際に発生するブラックカーボン(煤)の計測は、燃焼効率の指標として重要である。
ブラックカーボンは光をよく吸収し加熱される性質がある。したがって、レーザキャビティやパルスレーザ等の強力なレーザ光12がブラックカーボンに照射されると、ブラックカーボンは、瞬間的に加熱されて気化する。加熱されたブラックカーボンは、黒体放射により白熱光14を発生する。この白熱光14を検出することで、ブラックカーボンの粒子数と粒子1の大きさを知ることができる。このブラックカーボンの白熱光を検出する方法は、レーザ誘起白熱法(LII法)と呼ばれる。
LII法で使用するレーザ光12の波長は、近赤外領域の波長である。例えば、レーザ光12を発生させるレーザ照射部10として、波長1064nmのレーザ光12を発生するYAGレーザが使用される。但し、レーザ照射部10は、YAGレーザに限定されるものでなく、例えば、レーザ照射部10として、Nd:YVO4レーザが使用される。
分析装置100は、レーザ照射部10、導入部20、第1検出部30、第2検出部40、および白熱光検出部50を備える。レーザ照射部10は、分析装置100内に導入された粒子1を含む試料気体にレーザ光12を照射する。本例では、レーザ光12のビームは、X軸方向に沿って延びている。
レーザ照射部10は、分析装置100内に導入された粒子1を含むサンプルエアにレーザ光12を照射する。レーザ照射部10は、Nd:YVO4レーザを用いた光源を含んでよい。また、光源と反対側の端部には、レーザ共振器を構成するためのミラー11が設けられてよい。レーザ光12の波長は、例えば、1064nmである。
導入部20は、レーザ光12に、測定対象である粒子1を含む気体を導入する。導入部20は、粒子1を搬送するためのノズルを含んでよい。導入部20において、導入される粒子1の粒径を選択するための分級装置が設けられていてもよい。図1においては、紙面と平行なZ軸方向に気体通路を延長しているが、紙面と直交するY軸方向に延長することが好ましい。すなわち、流路の中心軸方向21は、Y軸方向であることが望ましい。これは、白熱光及び散乱光の光路と導入部20との干渉を避けるためである。この場合、粒子1は、Y軸方向に沿った気流に含まれてレーザ光12の照射領域を通過する。
LII法では、主に可視光の波長範囲の白熱光を測定することでブラックカーボン粒子を選択的に測定できる。一方、可視光波長帯の光をフィルタで除去することによって、粒子1が通過した際に生じる散乱光を受光することもできる。散乱光はすべての粒子1から発生するため、通過した粒子全量の測定が可能である。
また、ミー(Mie)散乱理論により散乱光応答を厳密に計算できることから、粒子1の大きさのほかに、形状等の様々な粒子1の情報を取得することができる。なお、ブラックカーボン粒子については、レーザ光12の照射領域を通過するときに、炭素が昇華して粒子1が縮小または消滅することに起因して、散乱光が時間によって変化する。したがって、散乱光の信号を補正することによって、ブラックカーボン粒子の散乱光に基づく分析も可能である。
LII法では、すべてのブラックカーボンを含む粒子1を検出するためには、原理的にレーザ光12の幅より狭い領域に粒子1を収束させ通過させる必要がある。レーザ光12のビーム径を、ピーク強度値から1/e2に落ちたときの強度での幅で定義すると、例えば、ビーム径の1/2以下の範囲に粒子1を収束させて通過させることが望ましい。
粒子1の数、粒径、および質量濃度等を精度良く測定するためには、粒子1の流路の中心軸とレーザ光12の光軸中心が一点で交わることが望ましい。白熱光および散乱光に基づいて、粒子1の数、粒径、および質量濃度等を測定するためには、理想的には、粒子1ごとにレーザ光12の照射領域を通過するまでに経験するレーザ光強度が一定であることが望ましい。しかしながら、レーザ光12の光強度は照射領域内で一様ではなく、中心が周辺より高い。したがって、粒子1がレーザ光の照射領域を通過する位置が粒子1ごとに異なることによって、粒子1ごとにレーザ光の照射領域を通過するまでに経験するレーザ光強度が異なる。
粒子1の流路の中心軸とレーザ光12の光軸中心が一点で交わる系では、流路の中心軸を通る粒子1は、最大強度の散乱光および白熱光を生じ、流路の中心軸からずれた位置を粒子1が通過する場合には、ずれる方向によらず、粒子1が流路の中心軸を通る場合に比べて散乱光および白熱光の光強度が減少する。一方、粒子1の流路の中心軸とレーザ光12の光軸中心が一点で交わらない場合には、流路の中心軸からずれた位置を粒子1が通過する場合には、ずれる方向によって、粒子1が流路の中心軸を通る場合に比べて散乱光および白熱光の光強度が増加する場合と減少する場合が存在する。したがって、粒子1の流路の中心軸とレーザ光12の光軸中心が一点で交わる系と比べて、粒子1の数、粒径、および質量濃度等を精度が低下する。
粒子1の粒径が1μm以上になって質量が増えると、周囲の気体から受ける粘性影響が低下するため、粒子1が気流に沿わない。したがって、粒子1の粒径が1μm以上、特に5μm以上の場合に、粒子1の流路の収束性が低下する。本実施形態の分析装置100によれば、粒径が1μm以上100μm以下、特に、粒径が5μm以上100μm以下の粒子1において、粒子1の流路の収束性が低下した場合にも、分析精度が低下すること抑制する。
第1検出部30は、散乱光13を検出する。複数の第1検出部30が設けられていてもよい。第2検出部40は、散乱光によるスポット像が受光面において予め定められた距離を移動することを検出する。第2検出部40の詳細については後述する。白熱光検出部50は、レーザ光12によって加熱された粒子1が放射する光を検出する。第1検出部30および第2検出部40は、それぞれ散乱光の波長に対して検出感度を持つアバランシェフォトダイオード(APD)を含んでよい。白熱光検出部50は、可視光、たとえば630nm以上800nm以下の波長の光に対して検出感度を持つフォトダイオードまたはフォトトランジスタ等の受光素子を含んでよい。
第1検出部30および第2検出部40のそれぞれの入射面とレーザ光12との間には、集光レンズ22および対物レンズ23およびフィルタ24が設けられてよい。フィルタ24は、集光レンズ22および対物レンズ23の間に設けられてよい。フィルタ24は、例えば、可視光の波長範囲の白熱光を遮断し、近赤外領域の波長範囲の散乱光を透過させる。
白熱光検出部50の入射面とレーザ光12との間には、集光レンズ25および対物レンズ26およびフィルタ27が設けられてよい。フィルタ27は、集光レンズ25および対物レンズ26の間に設けられてよい。フィルタ27は、可視光の波長範囲の白熱光を透過し、近赤外領域の波長範囲の散乱光を遮断してよい。
分析装置100は、算出部60および補正部70を備える。算出部60および補正部70は、処理部80の一部の機能として構成されていてもよい。処理部80は、コンピュータであってよい。算出部60は、第1検出部30、第2検出部40、および白熱光検出部50からの検出結果を取得する。算出部60は、第1検出部30による検出結果と第2検出部40による検出結果とから、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離を算出する。
算出部60は、第1算出部62および第2算出部64を備えてよい。第1算出部62は、第1検出部30による検出結果を取得する。第1算出部62は、第1検出部30による検出結果からレーザ光12の照射領域内を粒子1が通過するのに要した時間を算出する。第2算出部64は、第2検出部40による検出結果から粒子1の速度を算出する。算出部60は、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過するのに要した時間と、粒子1の速度とから、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離を算出する。
補正部70は、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離に基づいて、粒子1の分析結果を補正する。なお、補正部70は、第1補正部72および第2補正部74を含んでよい。第1補正部72は、散乱光に基づく分析結果を補正する。第2補正部74は、白熱光に基づく分析結果を補正する。
図2は、第1検出部30および第2検出部40の構成の一例を示す図である。第2検出部40は、2つの光電変換領域41および光電変換領域42と、不感帯43を有する。不感帯43は、2つの光電変換領域41および光電変換領域42に挟まれた不感帯である。光電変換領域41、42は、光を電気信号に変換する。光電変換領域41、42は、アバランシェフォトダイオード(APD)部分であってよい。換言すれば、第2検出部40は、2つ以上の領域に分割されたAPD素子であってよい。一方、不感帯43は、光を電気信号に変換しない。一例において、第2検出部40は、少なくとも2つ以上に分割された光電変換領域41、42を持つ受光素子である。受光素子としては、例えばExcelitas社製 C30927EH-01である。
本例では、不感帯43が、散乱光による粒子1のスポット像2が受光面において予め定められた距離を移動することを検出する検出領域である。光電変換領域41、不感帯43、および光電変換領域42は、この並び順でY軸方向に配置されてよい。不感帯43は、粒子1の進行方向と交差する。粒子1の進行方向であるY軸方向における不感帯43の幅Δdは、Y軸方向における第1検出部30の幅Lより狭い。また、幅Δdは、10μm以上300μmであってよく、100μm以上300μmであってよい。
分析装置100は、差分演算部51を含む。差分演算部51は、2つの光電変換領域における検出結果の差分を算出する。本例では、光電変換領域41における検出結果と光電変換領域42における検出結果との差分を算出する。差分演算部51は、IV変換部52、53、非反転増幅回路54、反転増幅回路55、および加算回路56を備えてよい。IV変換部52は、一方の光電変換領域41が受光した散乱光13の光強度に応じた電流を電圧に変換する。IV変換部53は、他方の光電変換領域42が受光した散乱光13の光強度に応じた電流を電圧に変換する。
非反転増幅回路54は、IV変換部52およびIV変換部53の出力の一方を反転しない。反転増幅回路55は、IV変換部52およびIV変換部53の出力の他方を反転する。加算回路56は、非反転増幅回路54と反転増幅回路55との出力を加算する。これによって、差分演算部51は、2つの光電変換領域41、42における検出結果の差分を算出する。算出された差分は、第1算出部62に出力される。IV変換部52およびIV変換部53の出力の一方を反転させた上で加えることによってコモンモードノイズをキャンセルすることができる。
一方、第1検出部30の検出結果は、IV変換部31および増幅回路33を介して、第1算出部62に出力されてよい。算出部60は、第1検出部30による検出結果と、差分演算部51による差分結果とから、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離を算出してよい。
図3は、第1検出部30によって得られる第1検出信号の一例を説明する図である。図4は、第2検出部40によって得られる第2検出信号の一例を説明する図である。図3および図4においては、対物レンズ23およびフィルタ24は省略している。レーザ光12の光強度は照射領域内で一様ではなく、中心から周辺に向かって、第1領域12a、第2領域12b、および第3領域12cとなるにしたがって光強度が弱くなる。第3領域12cの外縁が、レーザ光12の1/e2ビーム径を示している。そして、1/e2ビーム径の範囲を照射領域としてよい。
粒子1がレーザ光12の照射領域内に存在すると、粒子1によって散乱光13が生じる。散乱光13は、集光レンズ22によって集光されて第1検出部30の受光面34上にスポット像2を結ぶ。そして、スポット像2は、粒子1の進行方向とは逆方向に受光面34で移動する。第1検出部30による検出結果は、第1検出信号36として出力される。第1検出信号36は、時刻における第1検出部30の出力値に対応する。第1検出信号36、たとえば、アバランシェフォトダイオード(APD)によって光電変換されて得られたAPD信号である。なお、第1検出信号36は、IV変換部31および増幅回路33を介して得られた信号であってもよい。第1検出信号36は、ガウス関数に似た曲線を示す。
一方、散乱光13は、集光レンズ22によって集光されて第2検出部40の受光面44上に粒子1に対応するスポット像2を結ぶ。スポット像2は、粒子1の進行方向とは逆方向に受光面44で移動する。散乱光の受光面44におけるスポット像2は、粒子1のレーザ光12照射領域内通過に伴い、分割された光電変換領域41、42をまたいで移動する。第2検出部40による検出結果は、第2検出信号46として出力される。なお、第2検出信号46は、上述したとおり、2つの光電変換領域41、42における検出結果の差分であってよい。光電変換領域41からの出力を負とし、光電変換領域42からの出力を正として結合することで、差分を算出してよい。第2検出信号46は、分割されたアバランシェフォトダイオード(APD)によって光電変換されて得られた分割APD信号とも呼ばれる。
図5は、検出信号に基づいて粒子1の速度を計算する方法を示す。光電変換領域41からの出力を正とし、光電変換領域42からの出力を負として結合することで第2検出信号46が得られる。粒子1の進行方向であるY軸方向における不感帯43の幅Δdが存在することに起因して、第2検出信号46は、ゼロ点を有する。仮に受光面44に対し粒子1の散乱光が拡大縮小なく、同じ大きさで結像する光学系であれば、光電変換領域41と光電変換領域42の間が不感帯43(間隙)で分割されているとすると、その第2検出信号46は、スポット図2が間隙Δdを通過する時点で正負が反転する。
また、第2算出部64は、粒子1が不感帯43を通過するのに要する時間をΔtdevとすると、式1 Vaxis=Δd/Δtdevを計算することによって、粒子1の流路の軸方向の速度成分Vaxisを算出する。Δtdevは、第2検出信号46から取得される。具体的には、第2算出部64は、第2検出信号46における負のピークの時刻と正のピークの時刻との間の時間に基づいてΔtdevを取得する。一例において、第2算出部64は、第2検出信号46における負のピークの時刻と正のピークの時刻との間の時間に定数kを乗じてΔtdevを算出してよい。定数kは、実験または理論的に予め定められる。例えば、k=1として、第2算出部64は、第2検出信号46における負のピークの時刻と正のピークの時刻との間の時間をΔtdevとする。
図6は、粒子1の速度と、照射領域内の粒子1の通過時間とからレーザ通過距離を計算する方法を示す図である。第1算出部62は、第1検出部30による検出結果から、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過するのに要した時間ΔtNormを算出する。具体的には、第1検出信号36の時間幅ΔtNormが、レーザ光12の照射領域を通過するのに要する時間に対応する。したがって、第1算出部62は、第1検出部30による検出結果が予め定められた閾値以上の値を示す期間を時間幅ΔtNormとして算出してよい。閾値は、例えば、ピーク値の1/e2となる値であってよい。
算出部60は、照射領域内を粒子1が通過するのに要した時間ΔtNormと、粒子1の速度Vaxisとから、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserを算出する。算出部60は、例えば、時間ΔtNormにVaxisを乗じて距離dLaserを算出する。
図7は、レーザ光12の照射領域と粒子1の流路の例を示す図である。流路28は、粒子1の流路の中心の領域28aを通過する粒子1の割合が周辺部を通過する粒子1の割合より多い。しかしながら、粒子1の流路28を完全に限定することは困難である。したがって、粒子1ごとに通過位置が異なる場合がある。粒子1が通過する位置がレーザ光12の中心に近いほど、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserが長くなる。換言すれば、粒子1が通過する位置がレーザ光12の中心を通過した場合には、距離dLaserはレーザ光12のビーム径と等しくなる。一方で距離dLaserがレーザ光12のビーム径より小さい場合は、粒子1が通過する位置がレーザ光12の中心から外れた経路を通過したことを示している。
図7に示される場合では、dLaser1がdLaser2より長くなる。したがって、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserを用いて、レーザ光の照射領域の中心と粒子1の通過経路との間の距離を計算することができる。
図8は、レーザ光12の照射領域の中心からのシフト量Δsを計算する方法を示す図である。換言すれば、シフト量Δsは、レーザ光2のビーム中心からのシフト量である。シフト量Δsは、レーザ光12の照射領域の中心と粒子の通過経路との間の距離を意味する。レーザ光12のビーム径D
Laserは、レーザ光12の特性によって定まる。算出部60は、レーザ光12のビーム径D
Laserと
、上記の距離d
Laserとを用いて、シフト量Δsを以下の式によって算出する。
粒子1が経験したビーム強度の履歴は、ビーム中心からのシフト量Δsと、レーザ光の照射領域における光強度分布(レーザビームプロファイル)とから計算することができる。レーザ光の照射領域における光強度分布は、撮像素子が組み込まれたビームプロファイラ(不図示)を用いて測定される。たとえば、レーザ共振器を構成するミラー11の裏側にビームプロファイラを設置される。そして、ビームプロファイラは、レーザ共振器の外に漏れる漏れ光から、レーザ光の照射領域における光強度分布光強度分布を観測する。その場合は共振器中心付近の強度を推定する必要がある。共振器中心付近の強度はエルミート・ガウシアンモード(Hemite-Gaussianモード)等から計算可能である。
補正部70は、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離に基づいて、粒子1の分析結果を補正する。具体的には、補正部71は、上述のように、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserを用いて、シフト量Δsを算出してよい。シフト量Δsと、別途に取得した照射領域における光強度分布とから粒子1が経験したビーム強度の履歴を算出する。補正部70は、算出されたビーム強度の履歴をもとに、シフト量Δsの位置を粒子1が通った場合とレーザ光12の光軸の中心部分を通った場合との強度比から粒子1の分析結果を補正する。したがって、精度の高い粒径の検出や、ブラックカーボン量の算出が可能となる。
補正部70は、上記の強度比等から粒子1の分析結果を補正してよい。但し、補正部70は、このような処理を実行するものに限定されない。補正部70は、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserを用いて粒子1の分析結果を補正するものであればよい。
図9は、本実施形態の分析装置の処理内容の一例を示すフローチャートである。第1検出部30は、散乱光13を受光する。第1検出部30は、散乱光13を電気信号に光電変換する。これによって第1検出信号36が得られる(ステップS101)。第2検出部40は、散乱光13を電気信号に光電変換する(ステップS102)。第2検出部40に設けられた不感帯43は、散乱光によるスポット像が受光面44において予め定められた距離を移動することを検出する。白熱光検出部50は、レーザ光12によって加熱された粒子1が放射する白熱光14を受光する(ステップS103)。白熱光検出部50は、白熱光14を電気信号に光電変換する。なお、ステップS101からステップS103の処理は、並行して実行されてよい。
第2算出部64は、第2検出部40による検出結果から、粒子1の速度を算出する(ステップS104)。処理部80は、粒子1がブラックカーボン粒子1か否かを判断する(ステップS105)。白熱光検出部50が白熱光14を検出した場合には、処理部80は、粒子1がブラックカーボン粒子であると判断してよい。粒子1がブラックカーボン粒子である場合には(ステップS105:YES)、粒子1がレーザ光12の照射領域を通過するときに、炭素が昇華して粒子1が縮小または消滅する。したがって、処理部80は、ブラックカーボン粒子の散乱光を推定してよい(ステップS106)。
図10は、ブラックカーボン粒子の散乱光の推定の一例を示す図である。粒子1がブラックカーボンである場合の散乱光検出信号37は、不感帯43に起因するノッチ部39a、39bを含む。このノッチ部39a、39bの時刻は、粒子1の位置の情報を与える。例えば、ノッチ部39a、39bの時刻と、別途算出された粒子の速度とに基づいて、粒子1の位置が定まる。処理部80は、初期の立ち上がり部分38と、ノッチ部39a、39bから得られる粒子1の位置の情報を用いて、ガウス曲線にフィッティングすることによってブラックカーボン粒子の散乱光を推定してよい。
図9において、処理部80は、レーザ光の照射領域の中心からのシフト量Δsを算出する(ステップS107)。処理部80は、粒子1が経験したビーム強度の履歴を算出する(ステップS108)。補正部70は、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離に基づいて、粒子1の分析結果を補正する(ステップS109)。具体的には、補正部70は、シフト量Δsに基づいて算出された、粒子1が経験したビーム強度の履歴に基づいて、分析結果を補正してよい。
図11は、レーザ光12の照射領域の中心からのシフト量Δsを算出する方法の一例を示すフローチャートである。第1算出部62は、粒子1がレーザ光12の照射領域を通過するのに要した時間ΔtNormを第1検出信号36から算出する(ステップS201)。
算出部60は、照射領域内を粒子1が通過するのに要した時間ΔtNormと、粒子1の速度Vaxisとから、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserを算出する(ステップS202)。算出部60は、例えば、時間ΔtNormにVaxisを乗じて距離dLaserを算出する。算出部60は、レーザ光12のビーム径DLaserと、上記の距離dLaserとを用いて、シフト量Δsを算出してよい。
図12は、分析結果を補正する処理の一例を示すフローチャートである。図12に示される例では、処理部80は、第1検出部30が検出した散乱光の検出結果に基づいて粒子の粒径を算出する。第1補正部72は、散乱光13の検出結果に基づいて算出される粒子1の粒径を補正する。第1補正部72は、シフト量Δsを用いてよい。シフト量Δsと別途に取得した照射領域における光強度分布とから粒子1が経験したビーム強度の履歴を算出する。第1補正部72は、ビーム強度の履歴をもとに、シフト量Δsの位置を粒子1が通った場合とレーザ光12の光軸の中心部分を通った場合との強度比から、粒径を補正してよい。第1補正部72は、強度比と粒径の補正量との関係を示すテーブルを有してよい。第1補正部72は、テーブルを参照して、粒径を補正してよい。
図13は、分析結果を補正する処理の他の例を示すフローチャートである。第1補正部72は、散乱光13の検出結果を補正する(ステップS401)。特に、第1補正部72は、算出されたビーム強度の履歴をもとに、シフト量Δsの位置を粒子1が通った場合とレーザ光12の光軸の中心部分を通った場合との強度比から、実際の第1検出信号36を補正する。一例において、第1補正部72は、粒子1がレーザ光12の光軸中心を通った場合の第1検出信号36を取得する。処理部80は、補正された第1検出信号36に基づいて粒子1の粒径を算出する。
図14は、分析結果を補正する処理の他の例を示すフローチャートである。第1補正部72は、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserに基づいて、レーザ光12の照射領域内の予め定められた領域を通った粒子1を選別する(ステップS501)。例えば、第1補正部72は、レーザ光12の照射領域の中心付近の領域を通った粒子1を選別する。具体的には、第1補正部72は、距離dLaserが予め定められた長さ以上の場合における粒子1を選別する。あるいは、算出部60は、距離dLaserに基づいてシフト量Δsを算出する。第1補正部72は、Δsが予め定められた値以下の場合における粒子1を選別する。
第1補正部72は、予め定められた領域を通った粒子1として選別された粒子1について分析してよい(ステップS502)。第1補正部72は、除外された粒子1については分析の対象としないでよい。これにより分析結果に生じる誤差を軽減することができる。このように選別することによって、大きな誤差を含む検出結果について除去して、結果として、粒子1の分析結果を補正するといえる。
図15は、分析結果を補正する処理の他の例を示すフローチャートである。第2補正部74は、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserに基づいて、白熱光検出部による検出結果を補正する(ステップS601)。第2補正部74は、距離dLaserを用いて算出されたビーム強度の履歴をもとに、シフト量Δsの位置を粒子1が通った場合とレーザ光12の光軸の中心部分を通った場合との強度比から白熱光検出部による検出結果を補正する。
粒子1が、例えばブラックカーボン粒子である場合、レーザ光12によって加熱された粒子1は、黒体放射により白熱光14を発生する。しかしながら、レーザ光12の光軸中心が周辺部よりも光強度が高いので、レーザ光の照射領域の中心からのシフト量Δsが大きくなるにつれて、粒子1が加熱される温度が低くなり、白熱光14の受光強度が弱くなる。したがって、実際よりも粒子1の大きさを小さく算出してしまう場合がある。
したがって、第2補正部74は、白熱光検出部による検出結果の強度を距離dLaserまたはシフト量Δsに基づいて補正してよい。処理部80は、補正後の検出結果に基づいて、ブラックカーボン粒子の粒子数と粒子径を検出してよい。第2補正部74は、予めシフト量Δsと粒子径の補正量との関係をテーブルとして記憶してよい。第2補正部74は、テーブルを参照してシフト量Δsに対応する粒子径の補正量を算出してよい。さらに、第2補正部74は、距離dLaserに基づいて、レーザ光12の照射領域内の予め定められた領域を通った粒子1を選別してよい。そして、選別された粒子1について粒子径等を算出するようにしてもよい。
以上により、推定したビーム強度を元に、粒子1が経験したビーム強度の履歴の算出が可能となり、粒子流路の中心軸とレーザ光軸中心が一致していない場合、および粒子1の検出領域における収束性が悪化している場合においても、ビーム強度の履歴をもとに、中心部分を通った場合との強度比から補正が可能となるため、精度の高い粒径の検出や、ブラックカーボン量の算出が可能となる。
上述した例では、2つの光電変換領域41および光電変換領域42に挟まれた不感帯43を検出領域として用いる場合を説明した。しかしながら、本実施形態の分析装置100は、この場合に限られない。第2検出部40は、散乱光16によるスポット像が受光面において予め定められた距離を移動することを検出する検出領域を有するものであればよい。
図16は、第2検出部40の第1変形例を示す図である。本例においては、第2検出部40は、散乱光16によるスポット像が受光面において予め定められた距離を移動することを検出する検出領域として、光電変換領域47が設けられる。光電変換領域47は、散乱光を電気信号に変換する。粒子1の進行方向であるY軸方向における光電変換領域47の幅Δdは、Y軸方向における第1検出部30の幅Lより狭い。また、幅Δdは、10μm以上300μmであってよく、100μm以上300μmであってよい。
図17は、第2検出部40の第2変形例を示す図である。本例において、第2検出部40は、光を電気信号に変換する複数の光電変換領域48a、48b、48c、48dと複数の不感帯49a、49b、49cとを含んでいる。複数の光電変換領域48a、48b、48c、48dと複数の不感帯49a、49b、49cとが一つずつ交互に配置されている。なお、図17においても、図2に示される差分演算部51が複数設けられてよい。具体的には、複数の差分演算部51は、それぞれ隣接する2つの光電変換領域48a、48bの間、2つの光電変換領域48b、48cの間、光電変換領域48c、48dの間における検出結果の差分を算出する。
そして、それぞれ2つの光電変換領域48a、48bの間、2つの光電変換領域48b、48cの間、2つの光電変換領域48c、48dの間にそれぞれ挟まれる不感帯49a、49b、49cが、検出領域として機能する。第2算出部64は、複数の検出領域の夫々の検出結果を用いて、粒子1の速度を算出してよい。一例において、各検出領域による検出結果から、それぞれ粒子1の速度を算出し、算出された複数の速度を平均した速度を粒子1の速度としてもよい。これにより測定精度が向上する。
複数の不感帯49a、49b、49cは、粒子1の進行方向における幅が互いに異なる複数の不感帯であってよい。例えば、不感帯49a、49b、49cの幅は、それぞれΔd1、Δd2、およびΔd3であってよい。Δd1<Δd2<Δd3であってよい。このような構成によれば、Δd1、Δd2、およびΔd3の幅の違いに応じて、図5に示した負のピークと正のピークの組が三組得られ、各組における負ピークと正のピーク間の時間間隔が互いに異なる。したがって、それぞれの第2検出信号46から、レーザ光12の照射領域中の粒子1の位置の情報を取得することができる。
図18は、第2検出部40の第3変形例を示す図である。図18に示される例は、図2に示される例における不感帯43に代えて、他の光電変換領域45を設けたものである。他の光電変換領域45は、2つの光電変換領域41および光電変換領域42に挟まれている。他の光電変換領域45は、2つの光電変換領域41および光電変換領域42とは光電変換特性が異なってもよく、光電変換特性が同じであってもよい。
2つの光電変換領域41および光電変換領域42と差分演算部51との接続は、図2に示される場合と同様である。2つの光電変換領域41および光電変換領域42の出力の一方を反転させた上で加えることによってコモンモードノイズをキャンセルすることができる。一方、光電変換領域45による検出結果からも図16に示される場合と同様に、粒子1の速度を算出することができる。複数の方法で粒子1の速度を算出することができるので、精度を高めることができる。
図19は、第2検出部40の第4変形例を示す図である。本例では、第1方向に沿って延びる第1検出領域と、第2方向に沿って延びる第2検出領域とを含んでいる。本例では、四分割された光電変換領域41a、41b、42a、42bが設けられる。光電変換領域41a、41bの組と、42a、42bの組とをY軸方向に区画する不感帯43aが設けられる。一方、光電変換領域41a、42aと、41b、42bとをX軸方向に区画する不感帯43bが設けられる。
本例では、不感帯43aが第1検出領域であり、不感帯43bが第2検出領域である。第2算出部64は、第2検出部40における第1検出領域(本例では不感帯43a)および第2検出領域(本例では不感帯43b)における検出結果から、粒子1の速度の第1方向成分(Y軸方向成分)および第2方向成分(X方向成分)を算出する。
本例では、粒子1の流路の中心軸方向21がY軸方向である。第1検出領域である不感帯43aによって、光電変換領域41a、41bの組と、光電変換領域42a、42bの組とが粒子1の流路の中心軸方向21に区画される。光電変換領域41a、41bの組と、光電変換領域42a、42bの組とは、出力の極性が逆となるように一方の組が反転されてよい。一方、光電変換領域41aと41bは同じ極性になるように接続され、光電変換領域42aと42bは同じ極性になるように接続されてよい。このような構成によって、粒子1の流路の軸方向の速度成分Vaxisを算出する上で有利となる。
また、四分割された光電変換領域41a、42aと、41b、42bにおいて、光電変換領域41aが+の極性(非反転)に、光電変換領域42aが-の極性(反転)に、光電変換領域42bが+の極性(非反転)に、光電変換領域41aが-の極性(反転)になるようにしてもよい。この場合、光電変換領域41aと光電変換領域42aとの間の出力結果の差分、光電変換領域42aと光電変換領域42bとの間の出力結果の差分、光電変換領域42bと光電変換領域41bとの間の出力結果の差分、および光電変換領域41bと光電変換領域41aとの間の出力結果の差分が各差分演算部51によって算出される。
本例の場合、粒子1の速度の第1方向成分(Y軸方向成分)および第2方向成分(X方向成分)を取得することができるので、図19のように、粒子1が流路の中心軸方向21(Y軸方向)に対して傾きをもってレーザ光12の照射領域内を通過する場合であっても、レーザ光12の照射領域内を粒子1が通過した距離dLaserを正確に算出することができる。したがって、レーザ光の照射領域の中心からのシフト量Δsについても正確に算出することができる。その結果、補正部70は、粒子1の分析結果をより正確に補正することが可能となる。
以上より明らかなように、分析装置100によれば、粒子流路の中心軸とレーザ光軸中心の不一致の場合、または粒子1の検出領域における収束性が低下した場合においても、その影響を除去または減少させることが可能になる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。たとえば、ビーム中心からのシフト量を元に、処理部80は、レーザ光12の光軸調整を行ってもよい。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、白熱光を用いない散乱光によって粒子を分析する分析装置にも本発明を利用することができる。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。