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JP7220902B2 - 3座配位子を有する鉄錯体化合物の製造方法、及び有機ボロン酸エステルの製造方法 - Google Patents
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JP7220902B2 - 3座配位子を有する鉄錯体化合物の製造方法、及び有機ボロン酸エステルの製造方法 - Google Patents

3座配位子を有する鉄錯体化合物の製造方法、及び有機ボロン酸エステルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、3座配位子を有する鉄錯体化合物製造方法、及び有機ボロン酸エステルの製造方法に関する。
有機ボロン酸エステルは、薬学的に有用な生物学的活性を示すことが知られている。
有機ボロン酸エステルの合成には、主に遷移金属錯体触媒を用いた宮浦―Hartwigホウ素化反応が利用される。前記遷移金属錯体触媒には、イリジウム等の貴金属が汎用されている(非特許文献1、2参照)。
上記のように、前記ホウ素化反応においては、高価で毒性の高い遷移金属錯体触媒が用いられており、コスト等の観点で改善の余地を残すものであった。これに対し、代替触媒として、安価な鉄触媒が提案されている(非特許文献3、4参照)。
Ishiyama,T.;Miyaura,N.Chem.Rec.2004,3,271. Hartwig,J.F.Chem.Soc.Rev.2011,40,1992. Dombray,T.;Werncke,C.G.;Jiang,S.;Grellier,M.;Vendier,L.;Bontemps,S.;Sortais,J.-B.;Sabo-Etienne,S.;Darcel,C.J.Am.Chem.Soc.2015,137,4062. Hatanaka,T.;Ohki,Y.;Tatsumi,K.Chem.Asian J.2010,5,1657.
しかしながら、非特許文献3に記載の鉄触媒では、反応変換効率が低く、加えて反応に長時間を要するため、反応速度の指標である触媒回転効率が悪い。
また、非特許文献4に記載の鉄触媒は、反応変換効率は高いものの、比較的反応性が高いとされるチオフェンやフランにのみ有効であり、ベンゼン等の不活性な芳香族化合物には適応できない。
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも反応変換効率及び反応速度が高く、適応可能な基質の範囲が広い鉄触媒として、3座配位子を有する鉄錯体化合物を提供することを目的とする。加えて、前記の3座配位子を有する鉄錯体化合物の製造方法、及びこれを利用した有機ボロン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の鉄錯体を触媒として採用することにより、効率良く有機ボロン酸エステル化合物を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の3座配位子を有する鉄錯体化合物及びその製造方法、並びに有機ボロン酸エステルの製造方法を提供する。
[1]下記一般式(1)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物。
Figure 0007220902000001
[式(1)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。Lは、下記一般式(L-1)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000002
[式(L-1)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。n2は、0~4の整数である。n3は、0~5の整数である。但し、Rは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。n2が2~4の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。Rは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。n3が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。]
[2]下記一般式(2)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物。
Figure 0007220902000003
[式(2)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。Lは、下記一般式(L-2)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000004
[式(L-2)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。n4は、0~5の整数である。但し、Rは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。n4が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。]
[3]下記一般式(3)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物。
Figure 0007220902000005
[式(3)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。Lは、下記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000006
[式(L-3)中、n5は、0~3の整数である。Rはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。但し、Rは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。n5が2又は3である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。R8a、R8b、R9a及びR9bはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。]
[4]前記一般式(L-1)で示される3座配位子、前記一般式(L-2)で示される3座配位子、又は前記一般式(L-3)で示される3座配位子と、FeX”n1で示されるカルボキシレート系化合物[n1は、2又は3である。X”はそれぞれ独立して、SC(=O)CH又はOC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。]とを反応させて、下記一般式(0)で示される3座配位子を有する鉄錯体化合物を得る、鉄錯体化合物の製造方法。
Figure 0007220902000007
[式(0)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Lは、前記一般式(L-1)で示される3座配位子、前記一般式(L-2)で示される3座配位子、又は前記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
[5]下記一般式(1’)で示される鉄錯体化合物、下記一般式(2’)で示される鉄錯体化合物、又は下記一般式(3’)で示される鉄錯体化合物と、MX”で示されるカルボキシレート系化合物[Mは、アルカリ金属である。X”は、SC(=O)CH又は[(OC(=O))1011/qを表す。R101は、置換基を有してもよい炭素数1~12のq価の炭化水素基(当該炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子に置換されていてもよい。)を表す。qは、1~3の整数である。]とを反応させて、下記一般式(0’)で示される3座配位子を有する鉄錯体化合物を得る、鉄錯体化合物の製造方法。
Figure 0007220902000008
[式(1’)中、n1は、2又は3である。X’はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)を表す。Lは、前記一般式(L-1)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000009
[式(2’)中、n1は、2又は3である。X’はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)を表す。Lは、前記一般式(L-2)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000010
[式(3’)中、n1は、2又は3である。X’はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)を表す。Lは、前記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000011
[式(0’)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH、-OC(=O)R10又は[-(OC(=O))q’1011/n1を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。R101は、置換基を有してもよい炭素数1~12のq’価の炭化水素基(当該炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子に置換されていてもよい。)を表す。q’は、2又は3である。Lは、前記一般式(L-1)で示される3座配位子、前記一般式(L-2)で示される3座配位子、又は前記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
[6]前記の[1]~[3]のいずれか一項に記載の3座配位子を有する鉄錯体化合物の存在下で、芳香族炭化水素化合物又はアルケン化合物と、ホウ素化合物とを反応させて、有機ボロン酸エステルを得る、有機ボロン酸エステルの製造方法。
本発明により、従来よりも反応変換効率及び反応速度が高く、適応可能な基質の範囲が広い鉄触媒として、3座配位子を有する鉄錯体化合物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、効率良く多様な有機ボロン酸エステルを製造することができる。
鉄錯体化合物(1b)の構造を示す図である。 鉄錯体化合物(1c)の構造を示す図である。 鉄錯体化合物(1e)の構造を示す図である。 鉄錯体化合物(1f)の構造を示す図である。 鉄錯体化合物(3a)の構造を示す図である。 鉄錯体化合物(5e)の構造を示す図である。 製造例15(基質:ベンゼン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例30(基質:重ベンゼン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例31(基質:トルエン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例32(基質:アニソール)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例33(基質:m-キシレン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例34(基質:o-キシレン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例35(基質:ナフタレン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例36(基質:2,6-ルチジン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例37(基質:フェロセン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例38(基質:2,5-ジメチルフラン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。 製造例39(基質:2,5-ジメチルチオフェン)で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムを示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。かかる実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
(3座配位子を有する鉄錯体化合物)
本発明の一態様に係る、3座配位子を有する鉄錯体化合物は、後述の一般式(1)で示される化合物(第1実施形態)、一般式(2)で示される化合物(第2実施形態)、一般式(3)で示される化合物(第3実施形態)である。
<第1実施形態>
本実施形態の化合物は、下記一般式(1)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物である。
Figure 0007220902000012
[式(1)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。Lは、下記一般式(L-1)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000013
[式(L-1)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。n2は、0~4の整数である。n3は、0~5の整数である。但し、Rは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。n2が2~4の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。Rは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。n3が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。]
前記の式(1)及び式(L-1)についての説明の中で、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素-炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよいものとする。すなわち、「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造、及び炭素-炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。
また、「芳香族炭化水素基」には、フェニル基のような芳香族性を有する単環の芳香族炭化水素基が含まれるほか、ナフチル基のような芳香族性を有する多環の芳香族炭化水素基も含まれるものとする。
前記式(1)中、n1は、2又は3である。
前記式(1)中、Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。
10における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよく、脂肪族炭化水素基が好ましい。R10における炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。
10における炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シリル基、アミノ基、メトキシ基等が挙げられる。
10としては、メチル基(-CH)、t-ブチル基(-C(CH)、トリフルオロメチル基(-CF)等が挙げられる。
10同士が連結して形成する環状構造は、脂肪族炭化水素環でもよいし、芳香族炭化水素環でもよいし、複素環でもよい。
前記式(1)中、Lは、一般式(L-1)で示される3座配位子を表す。
前記式(L-1)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。
及びRにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
としては、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、t-ブチル基(-C(CH)、ペンチル基(-CH(CHCH)、ヘキシル基(-CH(CHCH)、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
としては、例えばRで例示した基と同様のものが挙げられる。
及びRにおける炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
及びRにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、シリル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられ、具体的には炭素数1~6のアルキル基が例示される。
前記式(L-1)中、2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。
における「アルキル基」は、直鎖状のアルキル基に限られず、分岐構造、環状構造を有するアルキル基も含まれるものとする。
としては、メチル基(-CH)、エチル基(-CHCH)、n-プロピル基(-CHCHCH)、i-プロピル基(-CH(CH)、n-ブチル基(-CHCHCHCH)、t-ブチル基(-C(CH)、ペンチル基(-CH(CHCH)、ヘキシル基(-CH(CHCH)、ヘプチル基(-CH(CHCH)、オクチル基(-CH(CHCH)、ノニル基(-CH(CHCH)、デシル基(-CH(CHCH)、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基等が挙げられる。
におけるアルキル基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
における芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、シリル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられ、具体的には炭素数1~6のアルキル基が例示される。
前記式(L-1)中、n2は、0~4の整数であり、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、特に好ましくは0である。
n3は、0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、特に好ましくは0又は1である。
前記式(L-1)中のRは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。ここで、Rがピリジン骨格の炭素原子に結合する状態とは、ピリジン環を構成する炭素原子にRが結合していることをいう。
前記式(L-1)中、n2が2~4の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。例えばn2が2である場合、2個のRが連結してシクロヘプタン構造、シクロヘプテン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘキセン構造等を形成していることが挙げられる。
前記式(L-1)中のRは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。ここで、Rがキノリン骨格の炭素原子に結合する状態とは、キノリン環を構成する炭素原子にRが結合していることをいう。
前記式(L-1)中、n3が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。例えばn3が2である場合、2個のRが連結してシクロヘプタン構造、シクロヘプテン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘキセン構造等を形成していることが挙げられる。
一般式(1)で示される金属錯体化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
尚、本明細書において、化学式中の「iPr」はイソプロピル基を示す。「Ph」はフェニル基を示す。「Pv」はピバロイル基を示す。「Ac」はアセチル基を示す。
Figure 0007220902000014
Figure 0007220902000015
尚、上述の第1実施形態の化合物以外のものとして、上記一般式(1)中のXがそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)である、3座配位子を有する鉄錯体化合物もある。ここでのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる(後述の鉄錯体化合物(1a)、鉄錯体化合物(1b)、鉄錯体化合物(2a)、鉄錯体化合物(3a)が該当する)。その具体例を以下に例示する。
Figure 0007220902000016
<第2実施形態>
本実施形態の化合物は、下記一般式(2)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物である。
Figure 0007220902000017
[式(2)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。Lは、下記一般式(L-2)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000018
[式(L-2)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。n4は、0~5の整数である。但し、Rは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。n4が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。]
前記の式(2)及び式(L-2)についての説明の中で、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素-炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよいものとする。すなわち、「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造、及び炭素-炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。
また、「芳香族炭化水素基」には、フェニル基のような芳香族性を有する単環の芳香族炭化水素基が含まれるほか、ナフチル基のような芳香族性を有する多環の芳香族炭化水素基も含まれるものとする。
前記式(2)中、n1は、2又は3である。
前記式(2)中、Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。
10における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよく、脂肪族炭化水素基が好ましい。R10における炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。
10における炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シリル基、アミノ基、メトキシ基等が挙げられる。
10としては、メチル基(-CH)、t-ブチル基(-C(CH)、トリフルオロメチル基(-CF)等が挙げられる。
10同士が連結して形成する環状構造は、脂肪族炭化水素環でもよいし、芳香族炭化水素環でもよいし、複素環でもよい。
前記式(2)中、Lは、一般式(L-2)で示される3座配位子を表す。
前記式(L-2)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。
及びRにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
としては、例えば前記式(L-1)中のRで例示した基と同様のものが挙げられる。Rとしては、例えば前記式(L-1)中のRで例示した基と同様のものが挙げられる。
及びRにおける炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
及びRにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、シリル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられ、具体的には炭素数1~6のアルキル基が例示される。
前記式(L-2)中、2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。Rとしては、例えば前記式(L-1)中のRで例示した基と同様のものが挙げられる。
におけるアルキル基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
における芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、シリル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられ、具体的には炭素数1~6のアルキル基が例示される。
前記式(L-2)中、n4は、0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、特に好ましくは0又は1である。
前記式(L-2)中のRは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。ここで、Rがキノリン骨格の炭素原子に結合する状態とは、キノリン環を構成する炭素原子にRが結合していることをいう。
前記式(L-2)中、n4が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。例えばn4が2である場合、2個のRが連結してシクロヘプタン構造、シクロヘプテン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘキセン構造等を形成していることが挙げられる。
一般式(2)で示される金属錯体化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
Figure 0007220902000019
尚、上述の第2実施形態の化合物以外のものとして、上記一般式(2)中のXがそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)である、3座配位子を有する鉄錯体化合物もある。ここでのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる(後述の鉄錯体化合物(4a)が該当する)。その具体例を以下に例示する。
Figure 0007220902000020
<第3実施形態>
本実施形態の化合物は、下記一般式(3)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物である。
Figure 0007220902000021
[式(3)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。Lは、下記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000022
[式(L-3)中、n5は、0~3の整数である。Rはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。但し、Rは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。n5が2又は3である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。R8a、R8b、R9a及びR9bはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。]
前記の式(3)及び式(L-3)についての説明の中で、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素-炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよいものとする。すなわち、「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造、及び炭素-炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。
また、「芳香族炭化水素基」には、フェニル基のような芳香族性を有する単環の芳香族炭化水素基が含まれるほか、ナフチル基のような芳香族性を有する多環の芳香族炭化水素基も含まれるものとする。
前記式(3)中、n1は、2又は3である。
前記式(3)中、Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。
10における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよく、脂肪族炭化水素基が好ましい。R10における炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。
10における炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シリル基、アミノ基、メトキシ基等が挙げられる。
10としては、メチル基(-CH)、t-ブチル基(-C(CH)、トリフルオロメチル基(-CF)等が挙げられる。
10同士が連結して形成する環状構造は、脂肪族炭化水素環でもよいし、芳香族炭化水素環でもよいし、複素環でもよい。
前記式(3)中、Lは、一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。
前記式(L-3)中、n5は、0~3の整数であり、0又は1が好ましく、特に好ましくは0である。
前記式(L-3)中、Rはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。
におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
としては、例えば前記式(L-1)中のRで例示した基と同様のものが挙げられる。
における炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
における芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、シリル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられ、具体的には炭素数1~6のアルキル基が例示される。
前記式(L-3)中のRは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。ここで、Rがピリジン骨格の炭素原子に結合する状態とは、ピリジン環を構成する炭素原子にRが結合していることをいう。
前記式(L-3)中、n5が2又は3である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。例えばn5が2である場合、2個のRが連結してシクロヘプタン構造、シクロヘプテン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘキセン構造等を形成していることが挙げられる。
前記式(L-3)中、R8a、R8b、R9a及びR9bはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。
8a、R8b、R9a及びR9bとしてはそれぞれ、例えば前記式(L-1)中のRで例示した基と同様のものが挙げられる。
8a、R8b、R9a及びR9bにおけるアルキル基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
8a、R8b、R9a及びR9bにおける芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、シリル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられ、具体的には炭素数1~6のアルキル基が例示される。
一般式(3)で示される金属錯体化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
Figure 0007220902000023
尚、上述の第3実施形態の化合物以外のものとして、上記一般式(3)中のXがそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)である、3座配位子を有する鉄錯体化合物もある。ここでのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。その具体例を以下に例示する。
Figure 0007220902000024
以上説明した第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の化合物は、ピリジン骨格、キノリン骨格又はチアゾール骨格を少なくとも有する3座配位子に、カルボキシレート系化合物が配位した鉄錯体化合物である。この鉄錯体化合物は、触媒として有用であり、特に有機ボロン酸エステルの合成において、従来よりも反応変換効率及び反応速度が高く、適応可能な基質の範囲が広い鉄触媒として優れる。かかる鉄錯体化合物を採用することにより、従来に比べて効率良く広範な種類の有機ボロン酸エステル化合物を得ることができる。
(3座配位子を有する鉄錯体化合物の製造方法)
本発明の一態様に係る、3座配位子を有する鉄錯体化合物の製造方法は、上記の一般式(L-1)で示される3座配位子、一般式(L-2)で示される3座配位子、又は一般式(L-3)で示される3座配位子と、FeX”n1で示されるカルボキシレート系化合物(f)とを反応させる方法(第4実施形態);後述の一般式(1’)で示される鉄錯体化合物、一般式(2’)で示される鉄錯体化合物、又は一般式(3’)で示される鉄錯体化合物と、MX”で示されるカルボキシレート系化合物(m)とを反応させる方法(第5実施形態)である。
<第4実施形態>
本実施形態の製造方法は、上記一般式(L-1)で示される3座配位子、上記一般式(L-2)で示される3座配位子、又は上記一般式(L-3)で示される3座配位子と、FeX”n1で示されるカルボキシレート系化合物(f)[n1は、2又は3である。X”はそれぞれ独立して、SC(=O)CH又はOC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。]とを反応させて、下記一般式(0)で示される3座配位子を有する鉄錯体化合物を得る、鉄錯体化合物の製造方法である。
式(0)中のX、R10は、前記式(1)中のX、R10と同様である。
Figure 0007220902000025
[式(0)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Lは、上記一般式(L-1)で示される3座配位子、上記一般式(L-2)で示される3座配位子、又は上記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
≪配位子≫
本実施形態の製造方法では、配位子として、上述した一般式(L-1)で示される3座配位子、一般式(L-2)で示される3座配位子、又は一般式(L-3)で示される3座配位子を用いる。
これらの3座配位子は、例えば、論文に記載の方法を参照することにより製造できる(参照:非特許文献5、非特許文献6等)。
非特許文献5:Kamitani,M.;Kusaka,H.;Toriyabe,T.;Yuge,H.Bull.Chem.Soc.Jpn.2018,91,1429.
非特許文献6:Britovsek,G.J.P.;Bruce,M.;Gibson,V.C.;Kimberley,B.S.;Maddox,P.J.;Mastroianni,S.;McTavish,S.J.;Redshaw,C.;Solan,G.A.;Stromberg,S.;White,A.J.P.;Williams,D.J.J.Am.Chem.Soc.1999,121,8728.
≪カルボキシレート系化合物(f)≫
本実施形態の製造方法では、出発原料としてFeX”n1で示されるカルボキシレート系化合物(f)[n1は、2又は3である。X”はそれぞれ独立して、SC(=O)CH又はOC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。]を用いる。すなわち、鉄カチオンと、チオカルボキシレートアニオン又はカルボキシレートアニオンとの塩を用いる。
かかるカルボキシレート系化合物(f)(FeX”n1)としては、例えば、Fe[OC(=O)CH、Fe[OC(=O)CH、Fe[OC(=O)C(CH;Fe[SC(=O)CH、Fe[SC(=O)CH、Fe[SC(=O)C(CH等が挙げられる。
本実施形態の製造方法においては、上記の配位子とカルボキシレート系化合物(f)とを混合することにより、目的の3座配位子を有する鉄錯体化合物が容易に製造される。
配位子とカルボキシレート系化合物(f)との混合は、例えば溶媒中で行うことができる。ここでの溶媒には、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を用いることができる。
配位子とカルボキシレート系化合物(f)とを反応させる際の温度は、例えば0~80℃が好適である。両者の反応時間は、例えば12~48時間が好適である。
上記の配位子とカルボキシレート系化合物(f)との反応により、上記一般式(0)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物が得られる。
配位子として、一般式(L-1)で示される3座配位子を用いた場合には、上述した第1実施形態の化合物が得られる。配位子として、一般式(L-2)で示される3座配位子を用いた場合には、上述した第2実施形態の化合物が得られる。配位子として、一般式(L-3)で示される3座配位子を用いた場合には、上述した第3実施形態の化合物が得られる。
調製される3座配位子を有する鉄錯体化合物は、配位子の配位様式やコンホメーションによって立体異性体を生じることがあるが、これら立体異性体の混合物であってもよいし、純粋な一種の異性体であってもよい。
<第5実施形態>
本実施形態の製造方法は、後述の一般式(1’)で示される鉄錯体化合物、一般式(2’)で示される鉄錯体化合物、又は一般式(3’)で示される鉄錯体化合物と、MX”で示されるカルボキシレート系化合物[Mは、アルカリ金属である。X”は、SC(=O)CH又は[(OC(=O))1011/qを表す。R101は、置換基を有してもよい炭素数1~12のq価の炭化水素基(当該炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子に置換されていてもよい。)を表す。qは、1~3の整数である。]とを反応させて、下記一般式(0’)で示される3座配位子を有する鉄錯体化合物を得る、鉄錯体化合物の製造方法である。
Figure 0007220902000026
[式(0’)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH、-OC(=O)R10又は[-(OC(=O))q’1011/n1を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。R101は、置換基を有してもよい炭素数1~12のq’価の炭化水素基(当該炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子に置換されていてもよい。)を表す。q’は、2又は3である。Lは、上記一般式(L-1)で示される3座配位子、上記一般式(L-2)で示される3座配位子、又は上記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
≪鉄錯体化合物≫
本実施形態の製造方法では、出発原料として、下記一般式(1’)で示される鉄錯体化合物、下記一般式(2’)で示される鉄錯体化合物、又は下記一般式(3’)で示される鉄錯体化合物を用いる。
Figure 0007220902000027
[式(1’)中、n1は、2又は3である。X’はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)を表す。Lは、前記一般式(L-1)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000028
[式(2’)中、n1は、2又は3である。X’はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)を表す。Lは、前記一般式(L-2)で示される3座配位子を表す。]
Figure 0007220902000029
[式(3’)中、n1は、2又は3である。X’はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)を表す。Lは、前記一般式(L-3)で示される3座配位子を表す。]
前記の式(1’)、式(2’)及び式(3’)中、X’はそれぞれ独立して、ハロゲン原子又はトリフラート基(-SOCF)を表す。
X’におけるハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
前記式(1’)中のLは、前記式(1)中のLと同様である。
前記式(2’)中のLは、前記式(2)中のLと同様である。
前記式(3’)中のLは、前記式(3)中のLと同様である。
これらの鉄錯体化合物は、例えば、論文に記載の方法を参照することにより製造できる(参照:非特許文献5、非特許文献6等)。
≪カルボキシレート系化合物(m)≫
本実施形態の製造方法では、出発原料としてMX”で示されるカルボキシレート系化合物(m)[Mは、アルカリ金属である。X”は、SC(=O)CH又は[(OC(=O))1011/qを表す。R101は、置換基を有してもよい炭素数1~12のq価の炭化水素基(当該炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子に置換されていてもよい。)を表す。qは、1~3の整数である。]を用いる。すなわち、アルカリ金属カチオンと、チオカルボキシレートアニオン又はカルボキシレートアニオンとの塩を用いる。
Mにおけるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられる。
101におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
101における炭化水素基は、q価の炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよい。R101における炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、炭素数1~5がより好ましく、炭素数1~4がさらに好ましい。
101における炭化水素基は、置換基を有してもよい。R101における炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シリル基、アミノ基、メトキシ基等が挙げられる。
101としては、メチル基(-CH)、t-ブチル基(-C(CH)、トリフルオロメチル基(-CF)等が挙げられる。また、R101の、炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子に置換されている場合、この構造としては、ピリジン環などの複素環構造が挙げられる。
qは、1~3の整数であり、1又は2が好ましい。
かかるカルボキシレート系化合物(m)(MX”)としては、例えば、Na[OC(=O)CH]、Na[OC(=O)C(CH]、Na[SC(=O)CH]、Na[SC(=O)C(CH];K[OC(=O)CH]、K[OC(=O)C(CH]、K[SC(=O)CH]、K[SC(=O)C(CH];2,6-ピリジンジカルボン酸カリウム等が挙げられる。
本実施形態の製造方法においては、上記の鉄錯体化合物とカルボキシレート系化合物(m)とを混合することにより、目的の3座配位子を有する鉄錯体化合物が容易に製造される。
鉄錯体化合物とカルボキシレート系化合物(m)との混合は、例えば溶媒中で行うことができる。ここでの溶媒には、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を用いることができる。
鉄錯体化合物とカルボキシレート系化合物(m)とを反応させる際の温度は、例えば0~80℃が好適である。両者の反応時間は、例えば1~24時間が好適である。
上記の鉄錯体化合物とカルボキシレート系化合物(m)との反応により、上記一般式(0’)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物が得られる。
前記式(0’)中のXにおけるR10、R101は、上述したR10、R101と同様である。
鉄錯体化合物として、一般式(1’)で示される鉄錯体化合物を用いた場合には、上述した第1実施形態の化合物が得られる。鉄錯体化合物として、一般式(2’)で示される鉄錯体化合物を用いた場合には、上述した第2実施形態の化合物が得られる。鉄錯体化合物として、一般式(3’)で示される鉄錯体化合物を用いた場合には、上述した第3実施形態の化合物が得られる。
調製される3座配位子を有する鉄錯体化合物は、配位子の配位様式やコンホメーションによって立体異性体を生じることがあるが、これら立体異性体の混合物であってもよいし、純粋な一種の異性体であってもよい。
尚、上述した第1実施形態の化合物、第2実施形態の化合物及び第3実施形態の化合物は、例えば非特許文献5又は非特許文献6に記載の方法でも得ることができる。
以上説明した第4実施形態及び第5実施形態の製造方法によれば、反応変換効率及び反応速度が高く、従来に比べて効率良く広範な種類の有機ボロン酸エステル化合物を製造することができる。
特に、第4実施形態の製造方法においては、特定の3座配位子から有機ボロン酸エステル化合物を1段階の操作で簡便に製造することができる。
(有機ボロン酸エステルの製造方法)
本発明の一態様に係る、有機ボロン酸エステルの製造方法は、上述した実施形態の3座配位子を有する鉄錯体化合物の存在下で、芳香族炭化水素化合物又はアルケン化合物と、ホウ素化合物とを反応させて、有機ボロン酸エステルを得る方法である。
<3座配位子を有する鉄錯体化合物>
本実施形態の有機ボロン酸エステルの製造方法では、触媒として、上述した第1実施形態の3座配位子を有する鉄錯体化合物、第2実施形態の3座配位子を有する鉄錯体化合物、又は第3実施形態の3座配位子を有する鉄錯体化合物を用いる。
<芳香族炭化水素化合物又はアルケン化合物>
本実施形態の有機ボロン酸エステルの製造方法で用いる芳香族炭化水素化合物(基質)としては、特に限定されないが、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アルコキシベンゼン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ビフェニル、ビピリジン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、フラン、チオフェン、フェロセン等が挙げられる。
本実施形態の有機ボロン酸エステルの製造方法で用いるアルケン化合物(基質)としては、特に限定されないが、例えばスチレン、オクテン、ビニルフェロセン等が挙げられる。
<ホウ素化合物>
本実施形態の有機ボロン酸エステルの製造方法では、ホウ素化合物として、例えばビス(ピナコラート)ジボロン、ビス(カテコラート)ジボロン、ピナコールボラン、カテコールボラン等を用いることができる。これらの中でも、ビス(ピナコラート)ジボロン、ビス(カテコラート)ジボロンが好ましい。
本実施形態の反応に用いる鉄錯体化合物の使用量は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば芳香族炭化水素化合物類(芳香族炭化水素化合物又はアルケン化合物)1.0当量に対し、鉄錯体化合物の使用量は、通常0.001当量以上であり、好ましくは0.01当量以上であり、より好ましくは0.05当量以上であり、上限値は通常1当量以下であり、好ましくは0.1当量以下である。
鉄錯体化合物の使用量が上記の範囲内であると、充分な反応速度が得られ、精製が容易となり、有機ボロン酸エステル化合物をより収率良く製造することができる。
上記の鉄錯体化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。鉄錯体化合物2種以上を組み合わせる場合は、合計使用量が上記範囲内であることが好ましい。
本実施形態の反応に用いるホウ素化合物の使用量は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば芳香族炭化水素化合物類1.0当量に対し、ホウ素化合物の使用量は、通常1当量以上であり、好ましくは1.5当量以上であり、より好ましくは3当量以上であり、上限値は通常50当量以下であり、好ましくは10当量以下であり、より好ましくは3当量以下である。
ホウ素化合物の使用量が上記の範囲内であると、有機ボロン酸エステル化合物をより収率良く製造することができる。
本実施形態においては、鉄錯体化合物の存在下で、芳香族炭化水素化合物又はアルケン化合物と、ホウ素化合物とを反応(ホウ素化)させる際、反応温度、反応時間等の反応条件は特に限定されない。
本実施形態における反応の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは25℃(室温)以上であり、より好ましくは80℃以上であり、上限値は通常300℃以下であり、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは120℃以下である。反応温度が上記の範囲内であれば、有機ボロン酸エステル化合物をより収率良く製造することができる。
本実施形態における反応の反応時間は、通常0.5時間以上であり、好ましくは3時間以上であり、上限値は通常100時間以下であり、好ましくは50時間以下であり、より好ましくは20時間以下である。
本実施形態における反応は、通常、空気雰囲気下、又は窒素もしくはアルゴン等の不活性雰囲気下で行うことができる。その中でも、本実施形態における反応は、窒素もしくはアルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
本実施形態の有機ボロン酸エステルの製造方法においては、より収率良く製造することができる点から、添加物として塩基を併用することが好ましい。
本明細書等において「塩基」とは、いわゆるブレンステッド塩基として作用する化合物を意味する。かかる塩基としては、例えば、金属アルコキシド類、カルボン酸金属塩等が挙げられ、これらの中でも金属アルコキシド類が好ましい。
金属アルコキシド類としては、炭素数1~12の金属アルコキシド類が好適に挙げられる。カルボン酸金属塩としては、炭素数2~13のカルボン酸金属塩が好適に挙げられる。
炭素数1~12の金属アルコキシド類は、炭素数1~12のアルコキシ基と金属とのアルコキシドであり、構成する金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好適に挙げられる。このような金属アルコキシド類としては、例えば、ナトリウムメトキシド(NaOMe)、ナトリウムエトキシド(NaOEt)、ナトリウムt-ブトキシド(NaOBu)、リチウムメトキシド(LiOMe)、リチウムエトキシド(LiOEt)、リチウムt-ブトキシド(LiOBu)、カリウムメトキシド(KOMe)、カリウムエトキシド(KOEt)、カリウムt-ブトキシド(KOBu)等が挙げられる。これらの中でも、カリウムt-ブトキシドが好ましい。
炭素数2~13のカルボン酸金属塩は、カルボン酸基(C(=O)O)を除いた炭化水素基の炭素数が1以上12以下である。この炭化水素基は上述した鉄錯体化合物の場合と同義であり、金属はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、スズ、亜鉛等が挙げられる。
炭素数2~13のカルボン酸金属塩としては、モノカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましい。より好ましくは、酢酸、プロピオン酸、n-ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸などの脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩が挙げられる。これらの中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸スズ、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム、2,2-ジメチルプロピオン酸カリウム(KOPv)がさらに好ましく、酢酸カリウム、2,2-ジメチルプロピオン酸カリウムが特に好ましい。
本実施形態の反応に用いる塩基の使用量は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば芳香族炭化水素化合物類1.0当量に対し、塩基の使用量は、通常0.1当量以上であり、好ましくは0.5当量以上であり、より好ましくは1当量以上であり、上限値は通常10当量以下であり、好ましくは5当量以下であり、より好ましくは1.5当量以下である。
塩基の使用量が上記の範囲内であると、充分な反応速度が得られ、精製が容易となり、有機ボロン酸エステル化合物をより収率良く製造することができる。
上記の塩基は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。塩基2種以上を組み合わせる場合は、合計使用量が上記範囲内であることが好ましい。また、塩基は、市販品を入手して用いればよい。
本実施形態の反応には、溶媒を使用してもよいし、使用しなくてもよい。本実施形態の反応に溶媒を使用する場合、その溶媒の種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。その溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。この中でもエーテル系溶媒が好ましく、シクロペンチルメチルエーテルがより好ましい。
溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
以上説明した本実施形態の有機ボロン酸エステルの製造方法においては、触媒として特定の鉄錯体化合物を採用することから、従来よりも反応変換効率及び反応速度が高く、多様な有機ボロン酸エステルを製造することができる。
また、本実施形態の有機ボロン酸エステルの製造方法は、イリジウム等の貴金属に代わる触媒として、特定の鉄錯体化合物を採用することから、コスト、毒性等の点でも産業的利用価値が高い。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
<鉄錯体化合物の製造>
3座配位子を有する鉄錯体化合物を、以下に示す反応経路により製造した。
尚、配位子(1)、配位子(2)及び配位子(4)並びに鉄錯体化合物(1a)、鉄錯体化合物(2a)、鉄錯体化合物(1d)、鉄錯体化合物(2d)及び鉄錯体化合物(5a)は、論文(非特許文献5、非特許文献6)に記載の方法を参照することによって製造した。
Figure 0007220902000030
下記の製造例1~9のうち、製造例2、3、4、7、8、9は本発明を適用した実施例に該当する。
[製造例1]
窒素雰囲気下、無水臭化鉄(II)(253mg、1.18mmol)と、配位子(1)(400mg、1.18mmol)とを含むテトラヒドロフランTHF(10mL)溶液を室温(25℃)で16時間撹拌した。生成した固体を濾別し、THF(5mL、2回)で洗浄した後、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(1b)を得た(405mg、0.729mmol、収率62%)。
Figure 0007220902000031
得られた化合物について、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)、単結晶X線構造解析により生成物を解析した。単結晶X線構造解析により得られた構造図(ORTEP図)を図1に示す。
HRMS(ESI)測定:C2022FPBrFe[M-Br]の計算値475.0029;実測値475.0032.
[製造例2]
窒素雰囲気下、無水酢酸鉄(II)(102mg、0.588mmol)と、配位子(1)(200mg、0.588mmol)とを含むTHF(15mL)溶液を50℃で16時間撹拌した後、室温(25℃)まで冷却した。濾過により不溶物を取り除いた後、減圧下でTHFを留去した。その後、残渣をヘキサン(5mL、2回)で洗浄し、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(1c)を得た(96.7mg、0.188mol、収率:32%)。
Figure 0007220902000032
得られた化合物について、単結晶X線構造解析、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)により生成物を解析した。単結晶X線構造解析により得られた構造図(ORTEP図)を図2に示す。
HRMS(ESI)測定:C2225FPFe[M-OAc]の計算値455.0982;実測値455.0979.
[製造例3]
窒素雰囲気下、鉄錯体化合物(1a)(200mg、0.428mmol)と、KSAc(244mg、2.14mmol)とを含むTHF(15mL)溶液を16時間室温(25℃)で撹拌した後、減圧下で揮発性物質を留去した。残渣にトルエン(20mL)を加え、濾過により不溶物を取り除いた。減圧下でトルエンを留去した後、残渣をヘキサン(5mL、2回)で洗浄し、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(1e)を得た(115mg、0.210mol、収率:49%)。
Figure 0007220902000033
得られた化合物について、単結晶X線構造解析、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)により生成物を解析した。単結晶X線構造解析により得られた構造図(ORTEP図)を図3に示す。
HRMS(ESI)測定:C2225OSFPFe[M-SAc]の計算値471.0753;実測値471.0751.
[製造例4]
窒素雰囲気下、鉄錯体化合物(1a)(100mg、0.214mmol)と、2,6-ピリジンジカルボン酸カリウム(52.1mg、0.214mmol)とを含むTHF(15mL)溶液を16時間室温(25℃)で撹拌した後、減圧下で揮発性物質を留去した。残渣にジクロロメタン(10mL)を加え、濾過により不溶物を取り除いた。減圧下でジクロロを留去した後、残渣をヘキサン(5mL、2回)で洗浄し、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(1f)を得た(99.7mg、0.178mol、収率:83%)。
Figure 0007220902000034
得られた化合物について、単結晶X線構造解析、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)により生成物を解析した。単結晶X線構造解析により得られた構造図(ORTEP図)を図4に示す。
HRMS(ESI)測定:C2726FPFe[M+H]の計算値562.0989;実測値562.0990.
[製造例5]
窒素雰囲気下、無水塩化鉄(III)(191mg、1.18mmol)と、配位子(1)(400mg、1.18mmol)とを含むヘキサン(10mL)溶液を室温(25℃)で16時間撹拌した。生成した固体を濾別し、ヘキサン(5mL、2回)で洗浄した後、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(3a)を得た(543mg、1.08mmol、収率92%)。
Figure 0007220902000035
得られた化合物について、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)、単結晶X線構造解析により生成物を解析した。単結晶X線構造解析により得られた構造図(ORTEP図)を図5に示す。
HRMS(ESI)測定:C2022FPClFe[M-Cl]の計算値466.0226;実測値466.229.
[製造例6]
窒素雰囲気下、無水塩化鉄(II)(183mg、1.45mmol)と、配位子(4)(600mg、1.45mmol)とを含むTHF(10mL)溶液を室温(25℃)で16時間撹拌した。生成した固体を濾別し、THF(5mL、2回)で洗浄した後、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(4a)を得た(494mg、0.912mmol、収率63%)。
Figure 0007220902000036
得られた化合物について、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)により、生成物を解析した。
HRMS(ESI)測定:C2416FPSClFe[M-Cl]の計算値504.9788;実測値504.9783.
[製造例7]
窒素雰囲気下、無水酢酸鉄(II)(76.5mg、0.603mmol)と、配位子(4)(250mg、0.603mmol)とを含むTHF(20mL)溶液を室温(25℃)で16時間撹拌した。濾過により不溶物を取り除いた後、真空乾燥によりTHFを留去した。残渣をヘキサン(5mL、2回)で洗浄することにより、目的物である鉄錯体化合物(4c)を得た(42.6mg、72.4μmol、収率12%)。
Figure 0007220902000037
得られた化合物について、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)により生成物を解析した。
HRMS(ESI)測定:C2225FSPFe[M-OAc]の計算値529.0233;実測値529.0232.
[製造例8]
窒素雰囲気下、鉄錯体化合物(4a)(370mg、0.684mmol)と、KSAc(390mg、3.42mmol)とを含むTHF(20mL)溶液を16時間室温(25℃)で撹拌した後、析出した固体を濾別した。残渣をTHF(5mL、2回)で洗浄し、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(4e)を得た(208mg、0.335mmol、収率:49%)。
Figure 0007220902000038
得られた化合物について、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)により生成物を解析した。
HRMS(ESI)測定:C2619OSFPFe[M-SAc]の計算値545.0004;実測値545.0005.
[製造例9]
窒素雰囲気下、鉄錯体化合物(5a)(300mg、0.605mmol)と、KSAc(345mg、3.02mmol)とを含むTHF(15mL)溶液を16時間室温(25℃)で撹拌した後、減圧下で揮発性物質を留去した。残渣にトルエン(20mL)を加え、濾過により不溶物を取り除いた。減圧下でトルエンを留去した後、残渣をヘキサン(5mL、2回)で洗浄し、真空乾燥することにより、目的物である鉄錯体化合物(5e)を得た(97.4mg、0.169mol、収率:28%)。
Figure 0007220902000039
得られた化合物について、単結晶X線構造解析、高分解能質量分析(HRMS/ESI法)により生成物を解析した。単結晶X線構造解析により得られた構造図(ORTEP図)を図6に示す。
HRMS(ESI)測定:C2730OSFe[M-SAc]の計算値500.1454;実測値500.1450.
<フェニルボロン酸エステルの製造>
以下に示すように、フェニルボロン酸エステルを製造するに際し、種々の検討を行った。
[添加物(塩基)の検討:製造例10~19]
不活性ガス(N)雰囲気下、添加物(塩基)として、KOBuをベンゼンに対して0.15当量(6.8mg、61μmol)、0.5当量(23mg、0.20mmol)、1.0当量(46mg、0.41mmol)、1.2当量(55mg、0.49mmol)、1.5当量(68mg、0.61mmol)もしくはKOPvをベンゼンに対して1.5当量(85mg、0.61mmol)もしくはKOAcをベンゼンに対して1.5当量(60mg、0.61mmol)又はNaHBEtをベンゼンに対して0.15当量(7.4mg、61μmol)と、鉄錯体化合物(1a)(9.5mg、20μmol)と、ベンゼン(36μL、0.40mmol)と、ビスピナコラートジボロン(Bpin、308mg、1.20mmol)と、シクロペンチルメチルエーテル(CPME、1mL)との混合溶液を3~20時間100℃で撹拌して、生成物を得た。
得られた生成物をH NMRスペクトル及びGC-MSにより確認し、反応の変換率を求めた。この結果を表1に示した。
Figure 0007220902000040
Figure 0007220902000041
製造例11~15においては、いずれの当量比でも反応が進行し、特に、ベンゼンに対して1.5当量のKOBuを用いた場合に、最も短時間かつ高変換率(87%)で目的のフェニルボロン酸エステルを与えた。
製造例16~17、すなわち、KOBuの代わりにKOPv及びKOAcを添加物(塩基)として1.5当量加えた場合、それぞれフェニルボロン酸エステルを12%及び10%で与えた。
ベンゼンに対して0.15当量のKOBuを用いた製造例10の場合には、わずかに反応の進行が見られた(変換率1%未満)。
一方で、同様にベンゼンに対して0.15当量のNaHBEtを用いた製造例18の場合には、目的のフェニルボロン酸エステルが76%の変換率で得られた。
添加物(塩基)を用いない以外は同様の条件下で反応を行った製造例19の場合には、全く反応の進行が見られなかった(変換率ゼロ%)。
[温度条件の検討:製造例20~23]
不活性ガス(N)雰囲気下、KOBu(68mg、0.61mmol、鉄錯体化合物に対して3当量)と、鉄錯体化合物(1a)(9.5mg,20μmol)と、ベンゼン(36μL,0.40mmol)と、ビスピナコラートジボロン(Bpin、308mg、1.20mmol)と、シクロペンチルメチルエーテル(CPME、1mL)との混合溶液を3~168時間、室温(25℃)~120℃で撹拌して、生成物を得た。
得られた生成物をH NMRスペクトル及びGC-MSにより確認し、反応の変換率を求めた。この結果を表2に示した。
Figure 0007220902000042
Figure 0007220902000043
製造例20~23において、室温(25℃)~120℃の温度範囲では、いずれも反応の進行が見られたが、特に80℃以上の条件で目的物を効率良く与えた。
[溶媒の検討:製造例24]
溶媒として、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)の代わりにオクタンを用いた以外は、製造例15と同様の条件下で反応を行った。かかる反応の変換率をH NMRスペクトル及びGC-MSにより算出した。この結果を表3に示した。
Figure 0007220902000044
Figure 0007220902000045
製造例24においては、かかる反応の結果、変換率30%で反応が進行した。
[反応雰囲気の検討:製造例25]
窒素雰囲気下の代わりに大気下で行う以外は、製造例15と同様の条件下で反応を行った。かかる反応の変換率をH NMRスペクトル及びGC-MSにより算出した。この結果を表4に示した。
Figure 0007220902000046
Figure 0007220902000047
製造例25においては、かかる反応の結果、変換率52%で反応が進行した。
[鉄触媒の検討:製造例26~29]
不活性ガス(N)雰囲気下、鉄触媒として鉄錯体化合物(1a)を用いる代わりに、鉄錯体化合物(1)~(1f)(20μmol、いずれもベンゼン対して5mol%)を用いた以外は、製造例15と同様の条件下で反応を行った。かかる反応の変換率を
NMRスペクトル及びGC-MSにより算出した。この結果を表5に示した。
製造例26、27、28、29はいずれも、本発明を適用した実施例に該当する。
鉄錯体化合物の添加量:
鉄錯体化合物(1c)10.4mg、鉄錯体化合物(1d)12.2mg、鉄錯体化合物(1e)11.1mg、鉄錯体化合物(f)11.4mg
Figure 0007220902000048
Figure 0007220902000049
製造例26~29においては、かかる反応の結果、表5に示すそれぞれの変換率で目的のフェニルボロン酸エステルを与えた。
[基質適用範囲の検討:製造例15、30~39]
不活性ガス(N)雰囲気下、ベンゼンを用いる代わりに、各種芳香族炭化水素化合物40μmol(重ベンゼン:36μL、トルエン:43μL、アニソール:44μL、m-キシレン:49μL、o-キシレン:49μL、ナフタレン:52mg、2,6-ルチジン:47μL、フェロセン:76mg、2,5-ジメチルフラン:43μL、2,5-ジメチルチオフェン:46μL)を用いた以外は、製造例15と同様の条件下で反応を行い、目的の有機ボロン酸エステルを得た。かかる各反応の変換率をH NMRスペクトル及びGC-MSにより算出した。この結果を表6に示した。
図7~17は、各製造例で得られた有機ボロン酸エステルについて測定したGC-MSクロマトグラムである。かかるGC-MSクロマトグラムにおいて、横軸は保持時間、縦軸は検出強度を示している。Product又はProductsが指し示すピークが、目的の有機ボロン酸エステルのピークである。
Figure 0007220902000050
Figure 0007220902000051
かかる反応の結果、各種芳香族炭化水素化合物(40μmol)をそれぞれ用いた製造例15、30~39の場合、表6に示すそれぞれの変換率で目的の有機ボロン酸エステルを与えた。
本発明の製造方法により得られる有機ボロン酸エステルは、ファインケミカル創出、製薬開発、天然物合成など、多岐に渡る学術上、産業上の用途がある。本発明によれば、従来よりも反応変換効率及び反応速度が高く、さらに、適応可能な基質の範囲が広く有機ボロン酸エステルを製造することができる。加えて、かかる有機ボロン酸エステルを、安価で効率的に製造することができる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物の存在下で、芳香族炭化水素化合物と、ビス(ピナコラート)ジボロン及びビス(カテコラート)ジボロンからなる群より選択される少なくとも1種のホウ素化合物とを反応させて、前記芳香族炭化水素化合物の芳香環の水素原子が前記ホウ素化合物のホウ素原子と置換された有機ボロン酸エステルを得る、有機ボロン酸エステルの製造方法
    Figure 0007220902000052
    [式(1)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Xの2つ以上が-OC(=O)R10である場合、R10同士が連結して環状構造を形成しているものでもよい。Lは、下記一般式(L-1)で示される3座配位子を表す。]
    Figure 0007220902000053
    [式(L-1)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。n2は、0~4の整数である。n3は、0~5の整数である。但し、Rは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。n2が2~4の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。Rは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。n3が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。]
  2. 下記一般式(1’)で示される、3座配位子を有する鉄錯体化合物の存在下で、芳香族炭化水素化合物と、ビス(ピナコラート)ジボロン及びビス(カテコラート)ジボロンからなる群より選択される少なくとも1種のホウ素化合物とを反応させて、前記芳香族炭化水素化合物の芳香環の水素原子が前記ホウ素化合物のホウ素原子と置換された有機ボロン酸エステルを得る、有機ボロン酸エステルの製造方法。
    Figure 0007220902000054
    [式(1’)中、n1は、2又は3である。X’は、ハロゲン原子を表す。L は、下記一般式(L-1)で示される3座配位子を表す。]
    Figure 0007220902000055
    [式(L-1)中、R 及びR はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。2つのR はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。n2は、0~4の整数である。n3は、0~5の整数である。但し、R は、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。n2が2~4の整数である場合、R の炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。R は、キノリン骨格の炭素原子に結合する。n3が2~5の整数である場合、R の炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。]
  3. 下記一般式(L-1)で示される3座配位子
    FeX”n1で示されるカルボキシレート系化合物[n1は、2又は3である。X”はそれぞれ独立して、SC(=O)CH又はOC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。]と
    を反応させて、下記一般式(0)で示される3座配位子を有する鉄錯体化合物を得る、鉄錯体化合物の製造方法。
    Figure 0007220902000056
    [式(L-1)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表す。2つのRはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基を表す。n2は、0~4の整数である。n3は、0~5の整数である。但し、Rは、ピリジン骨格の炭素原子に結合する。n2が2~4の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。Rは、キノリン骨格の炭素原子に結合する。n3が2~5の整数である場合、Rの炭化水素基同士が連結して環状構造を形成していてもよい。
    Figure 0007220902000057
    [式(0)中、n1は、2又は3である。Xはそれぞれ独立して、-SC(=O)CH又は-OC(=O)R10を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。Lは、前記一般式(L-1)で示される3座配位子表す。]
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