以下、実施形態による車両運動制御装置を、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照して説明する。
図1ないし図3は、第1の実施形態を示している。図1において、車体1は、車両のボディを構成している。車体1の下側には、例えば左,右の前輪2(車輪2ともいう)と左,右の後輪3(車輪3ともいう)とが設けられている。車両の車体1と複数の車輪2,3との間には、複数の減衰力調整式ショックアブソーバ6,9がそれぞれ介装して設けられている。
より具体的に説明すると、左,右の前輪2側と車体1との間には、前輪側のサスペンション装置4,4が介装して設けられている。各サスペンション装置4は、左,右の懸架ばね5(以下、ばね5という)と、各ばね5と並列になって左,右の前輪2側と車体1との間に設けられた左,右の減衰力調整式ショックアブソーバ6(以下、減衰力可変ダンパ6という)とにより構成されている。減衰力可変ダンパ6は、車体1と各車輪2との間の力を調整可能な力発生装置を構成している。減衰力可変ダンパ6は、後述のコントローラ21と共に、車両に用いられるサスペンション制御装置を構成している。
一方、左,右の後輪3側と車体1との間には、後輪側のサスペンション装置7,7が介装して設けられている。各サスペンション装置7は、左,右の懸架ばね8(以下、ばね8という)と、各ばね8と並列になって左,右の後輪3側と車体1との間に設けられた左,右の減衰力調整式ショックアブソーバ9(以下、減衰力可変ダンパ9という)とにより構成されている。減衰力可変ダンパ9は、車体1と各車輪3との間の力を調整可能な力発生装置を構成している。減衰力可変ダンパ9は、後述のコントローラ21と共に、車両に用いられるサスペンション制御装置を構成している。
ここで、各サスペンション装置4,7の減衰力可変ダンパ6,9は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成されている。減衰力可変ダンパ6,9には、その減衰力特性をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ、比例ソレノイド等からなるアクチュエータ(図示せず)が付設されている。なお、減衰力調整用のアクチュエータは、減衰力特性を必ずしも連続的に変化させる構成である必要はなく、2段階または3段階以上で断続的に調整する構成であってもよい。また、減衰力可変ダンパ6,9は、減衰力を切換えることができればよく、例えば、空圧ダンパまたは電磁ダンパ(電動ダンパ)であってもよい。
即ち、第1の実施形態では、力発生装置としての減衰力調整式ショックアブソーバ(減衰力可変ダンパ6,9)を備えたセミアクティブサスペンションを例に挙げて説明するが、例えば、ERダンパ(電気粘性流体ダンパ)を備えたセミアクティブサスペンション、空気ばね(空圧アクチュエータ)を備えたエアサスペンション、油圧アクチュエータを備えた油圧アクティブサスペンション、油圧スタビライザ装置等の各種のシリンダ装置(アクチュエータ)を用いることも可能である。また、直動式のリニアモータや回転式のモータ等の電動アクチュエータを備えた電磁サスペンション装置や電磁式スタビライザ装置を用いることも可能である。要するに、力発生装置は、車体1と車輪2,3との間で力を調整可能な装置であれば、各種の力発生装置を用いることができる。
ヨーレイトセンサ11は、車体1に設けられている。ヨーレイトセンサ11は、例えば車両の重心回りに発生する自転方向の変化(ヨーレイト)を検出し、その検出信号をコントローラ21に出力する。操舵角センサ12は、車体1に設けられている。操舵角センサ12は、車両のドライバ(運転者)が旋回走行時等にステアリングホイール(ハンドル)を操作するときの操舵角を検出し、その検出信号をコントローラ21に出力する。車速センサ13は、例えば車両の走行速度(車速)を検出し、その検出信号をコントローラ21に出力する。
ブレーキ液圧制御装置15は、車体1に搭載されている。ブレーキ液圧制御装置15は、後述するコントローラ21のGVC制御部24、M+制御部25、目標液圧算出部26(いずれも図2参照)等と共に、車両の操舵の際に制動力を発生させる制動力制御手段を構成している。ブレーキ液圧制御装置15は、例えば、車両のドライバによるブレーキペダルの操作とコントローラ21からの制御信号(制動信号)とに従ってブレーキ液圧を発生させると共に、このブレーキ液圧を増加、保持または減少させる制御を行う。
各前輪2側と各後輪3側には、ディスクブレーキ等からなるホイールシリンダ(いずれも図示せず)が設けられている。ホイールシリンダは、ブレーキ液圧制御装置15により可変に制御されたブレーキ液圧が供給されると、該当する車輪(各前輪2と各後輪3のいずれか)に制動力を付与することにより、車輪2,3毎の減速制御を実行する。ブレーキ液圧制御装置15は、例えば、車輪2,3毎のホイールシリンダにブレーキ液圧を個別に供給するESC(液圧供給装置)により構成されている。
なお、実施形態では、車両に制動力を付与するブレーキ装置として油圧で制動力を発生する液圧ブレーキ装置を例としているが、例えば、電動モータにより制動力を発生する電動ブレーキ装置を用いてもよい。この場合、ブレーキ液圧制御装置15は、ブレーキ力制御装置となり、目標液圧算出部26は、電動モータの制御電流に対応する目標制動力を求める目標制動力算出部となる。
駆動装置16(図2にのみ図示)は、車体1に搭載されている。駆動装置16は、後述するコントローラ21のGVC制御部24、目標駆動力算出部27(いずれも図2参照)等と共に、車両の操舵の際に駆動力を発生させる駆動力制御手段を構成している。駆動装置16は、例えば、車両のドライバによるアクセルペダルの操作とコントローラ21からの制御信号(駆動信号)とに従って各前輪2側に駆動力を発生させることにより、加速制御を実行する。駆動装置16は、例えば、車両のエンジン、走行用電動モータ等の車輪を駆動する原動機により構成されている。実施形態では、車両は、例えば、前輪2,2が駆動輪となる前輪駆動車両としている。そして、ブレーキ液圧制御装置15と駆動装置16は、コントローラ21と共に、車両の操舵の際に制駆動力(制動力と駆動力とのうちの少なくとも一方の力)を発生させる制駆動力制御手段(制動力制御手段および/または駆動力制御手段)を構成している。即ち、車両は、制駆動力制御手段(制動力制御手段と駆動力制御手段とのうちの少なくとも一方)を有している。また、コントローラ21は、車両の操舵の際に制駆動力(制動力と駆動力とのうちの少なくとも一方の力)を調整する制駆動力コントローラ(制動力コントローラおよび/または駆動力コントローラ)を構成している。即ち、車両は、制駆動力コントローラ(制動力コントローラと駆動力コントローラとのうちの少なくとも一方)を有している。
ここで、ブレーキ液圧制御装置15および駆動装置16は、後述のGVC制御部24からの前後G指令(即ち、車両の横加加速度に基づいて算出される加減速指令値)に基づき、4輪(前輪2、後輪3)のうちの左右輪2,3に略同一の駆動力または制動力を発生させることにより、車両の加減速を制御するGV制御(G-Vectoring制御)が行われる。また、ブレーキ液圧制御装置15は、後述のM+制御部25からのモーメント指令(即ち、横加加速度に基づいて算出される車両ヨーモーメント抑制指令値)に基づき、4輪(前輪2、後輪3)のうちの左右輪2,3に異なる駆動力または制動力を発生させることにより、車両のヨーモーメントを制御するモーメント制御(Moment+制御、M+制御、ヨーモーメント制御)が行われる。即ち、実施形態では、図3に示すように、車両が旋回するときの横加速度の変化に応じてGV制御およびモーメント制御が行われる。
コントローラ21は、例えば、演算処理装置(CPU)、記憶装置(メモリ)等を備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。コントローラ21は、ブレーキ液圧制御装置15および駆動装置16と共に、車両の操舵の際に制駆動力を発生させる制駆動力制御手段を構成している。コントローラ21は、車両の操舵の際に制駆動力を調整する制駆動力コントローラに相当する。また、コントローラ21は、各減衰力可変ダンパ6,9の力を調整するコントロール部(減衰力調整コントロール部)を有する車両運動制御装置を構成している。コントローラ21は、車両の横加加速度に基づいて算出される前後G指令(加減速指令値)によりブレーキ液圧制御装置15および/または駆動装置16を制御することにより、GV制御を行う。即ち、コントローラ21は、車両の横加速度の変化率(横加加速度)に基づいて加減速指令値(前後G指令)を算出し、この加減速指令値によりブレーキ液圧制御装置15および/または駆動装置16で制駆動力を発生させることにより、車両に加減速を発生させる。
また、コントローラ21は、横加加速度に基づいて算出されるヨーモーメント指令値によりブレーキ液圧制御装置15を制御することにより、モーメント制御を行う。即ち、コントローラ21は、車両の横加速度の変化率(横加加速度)に基づいてヨーモーメント指令値(モーメント指令)を算出し、このヨーモーメント指令値によりブレーキ液圧制御装置15で制動力を発生させることにより、車両にヨーモーメントを発生させる。なお、車両に搭載された駆動装置16が左右輪に異なる駆動力を発生させることが可能な電磁クラッチ等の駆動力配分装置を備えた構成の場合には、ヨーモーメント指令値により左右輪に異なる駆動力を発生させることにより、車両にヨーモーメントを発生させてもよい。
ところで、前述の特許文献2の車両運動制御装置は、操舵時に4輪のうちの左右輪に略同一の駆動力または制動力を発生させるGV制御を考慮して減衰力可変ダンパを制御する。しかし、特許文献2の車両運動制御装置は、操舵時に左右輪に異なる駆動力または制動力を発生させるモーメント制御を考慮していない。このため、例えば、モーメント制御を行う車両、または、モーメント制御およびGV制御を行う車両に、特許文献2の技術を用いた場合、モーメント制御に起因して車両に発生するロールモーメントによって、ロール姿勢の変化が過大、または、過小になる可能性がある。これにより、車両の姿勢変化が大きくなり、ドライバ、乗員に違和感を与える可能性がある。
即ち、モーメント制御は、左右輪に異なる駆動力または制動力を発生させる(例えば、片輪に駆動力または制動力を発生させる)ことにより、車両のヨーモーメントを制御する。しかし、このモーメント制御に起因するロールモーメントによって、ロールが不必要に助長または抑制される場合がある。そこで、実施形態では、モーメント制御に応じて力発生装置(減衰力可変ダンパ6,9)の力を独立して調整する。より具体的には、実施形態では、モーメント制御とGV制御の制御指令に応じたFF制御により値に応じてサスペンション制御指令を4輪独立で増減する。これにより、モーメント制御によるロールの助長または抑制を打ち消し、一貫した車両運動とすることで、操縦安定性を向上できるようにしている。
このために、図2に示すように、コントローラ21は、入力側がヨーレイトセンサ11、操舵角センサ12および車速センサ13に接続され、出力側が減衰力可変ダンパ6,9(のアクチュエータ)、ブレーキ液圧制御装置15および駆動装置16に接続されている。コントローラ21は、横加速度・ヨーレイト推定部22、微分部23、GVC制御部24、M+制御部25、目標液圧算出部26、目標駆動力算出部27、姿勢推定部28、ピッチ制御部29、ロール抑制部30、限界領域判定部31、相対速度推定部32、加算部33、減衰力マップ部34を備えている。
コントローラ21の横加速度・ヨーレイト推定部22には、操舵角センサ12から操舵角が入力され、車速センサ13から車速が入力される。横加速度・ヨーレイト推定部22は、操舵角センサ12で検出した操舵角の信号と車速センサ13で検出した車速の信号とに基づいて、横加速度およびヨーレイトを推定(算出)する。横加速度・ヨーレイト推定部22は、例えば、操舵角と車速とから車両モデルを用いて横加速度およびヨーレイトを推定する。横加速度・ヨーレイト推定部22は、推定した横加速度を微分部23およびピッチ制御部29に出力し、推定したヨーレイトを限界領域判定部31に出力する。横加速度・ヨーレイト推定部22は、フィルタ部を備えている。フィルタ部は、横加速度とヨーレイトに対して、動特性を再現するためのフィルタ処理をそれぞれ行う。即ち、操舵角と車速とから車両モデルを用いて推定された推定横加速度とヨーレイトは、ステアリングホイールが操舵されてから実際に車体1に横加速度とヨーレイトがそれぞれ発生するまでの動特性を無視した信号となる。このため、横加速度・ヨーレイト推定部22のフィルタ部は、動特性を近似したLPF(ローパスフィルタ)によってダイナミクスを再現する。
微分部23は、横加速度・ヨーレイト推定部22から横加速度が入力される。微分部23は、横加速度・ヨーレイト推定部22で推定された横加速度を微分することにより、横加加速度(ジャーク)を算出する。即ち、微分部23は、「車両モデル」と「車両ダイナミクスを考慮するためのLPF」とにより横加速度・ヨーレイト推定部22で算出された推定横加速度を微分し、横加加速度を算出する。微分部23で算出された横加加速度は、相対速度推定部32、ロール抑制部30、GVC制御部24およびM+制御部25に出力される。
GV制御(G-Vectoring制御)を行うためのGVC制御部24は、車両の横加加速度に応じて車両の減速度を制御する。即ち、GVC制御部24は、微分部23で算出された横加加速度に基づいて、車両の左右輪2,3で発生させるべき駆動力または制動力の指令である前後G指令Gx_GVC(加減速指令Gx_GVCともいう)を算出する。この場合、図3に示すように、GV制御では、横加速度(Gy)が増加するステアリングホイールを切り込んだときに、左右輪2,3に同一の制動力を発生させる。図3では、制動力または駆動力を車輪2,3に黒矢印を付して示している。図3に示すように、ステアリングホイールを切り込んだときは、左右の前後輪2,3に加減速指令Gx_GVC(負の加速度指令)に応じた制動力が付与される。また、GV制御では、横加速度(Gy)が減少するステアリングホイールを切り戻すときに、左右輪2,3に同一の駆動力を発生させる。即ち、ステアリングホイールを切り戻すときは、左右の前輪2,2に加減速指令Gx_GVC(正の加速度指令)に応じた駆動力が付与される。
GVC制御部24は、例えば、フィルタ部およびゲイン乗算部を含んで構成されている。GVC制御部24は、フィルタ部で横加加速度をLPF処理し、ゲイン乗算部でゲインを乗算することで目標前後加速度(加減速指令Gx_GVC)とする。即ち、GVC制御部24のフィルタ部では、微分部23で算出された横加加速度にローパスフィルタ「LPF」を用いたフィルタ処理を行う。GVC制御部24のゲイン乗算部では、フィルタ処理された横加加速度に対してゲイン(-Cxy)を乗算することにより、前後G指令(加減速指令)となる目標前後加速度(Gx_GVC)を求める。目標前後加速度(Gx_GVC)は、例えば下記の数1式で表される。
目標前後加速度である前後G指令は、GVC制御部24から姿勢推定部28に出力される。また、前後G指令は、GVC制御部24から目標液圧算出部26または目標駆動力算出部27に出力される。この場合、例えば、前後G指令が負の値(負の目標前後加速度)である減速指令であれば、この減速指令は、GVC制御部24から目標液圧算出部26に出力される。前後G指令が正の値(正の目標前後加速度)である加速指令であれば、この加速指令は、GVC制御部24から目標駆動力算出部27に出力される。
目標液圧算出部26は、GVC制御部24から出力される前後G指令(減速指令)に基づいて目標とすべき液圧値(目標液圧値)を算出し、ブレーキ液圧制御装置15に出力する。即ち、目標液圧算出部26は、前後G指令(目標前後加速度)から目標の液圧を算出し、ブレーキ液圧制御装置15によって液圧を発生させる。ブレーキ液圧制御装置15は、目標液圧算出部26で算出された目標液圧値に対応した液圧を発生させる。一方、目標駆動力算出部27は、GVC制御部24から出力される前後G指令(加速指令)に基づいて目標とすべき駆動力(目標駆動力)を算出し、駆動装置16に出力する。即ち、目標駆動力算出部27は、前後G指令(目標前後加速度)から目標の駆動力を算出し、駆動装置16によって駆動力を発生させる。駆動装置16は、目標駆動力算出部27で算出された目標駆動力に対応した駆動力を発生させる。GVC制御部24、目標液圧算出部26および目標駆動力算出部27は、ブレーキ液圧制御装置15に出力すべき目標液圧および駆動装置16に出力すべき駆動力の算出を行うことにより、横加速度と前後加速度とが連成したGV制御を実現する。
モーメント制御(Moment+制御)を行うためのM+制御部25は、車両の横加加速度に応じて車両のヨーモーメントを制御する。即ち、M+制御部25は、微分部23で算出された横加加速度に基づいて、車両で発生させるべきヨーモーメントの指令となるモーメント指令M+を算出する。この場合、図3に示すように、モーメント制御では、横加速度(Gy)が増加するステアリングホイールを切り込んだときに、左右輪2,3に異なる制動力(例えば、片輪2,3のみに制動力)を発生させることにより、車両旋回方向のヨーモーメントM+(正のヨーモーメント)を発生させる。即ち、ステアリングホイールを切り込んだときは、横加加速度に応じて旋回外側の車輪に比べて旋回内側の車輪に対する制動力を増加させる(左側の車輪2,3のみに制動力を発生させる)。また、モーメント制御では、横加速度(Gy)が減少するステアリングホイールを切り戻すときに、左右輪2,3に異なる制動力(例えば、片輪2,3のみに制動力)を発生させることにより、車両旋回方向とは逆方向のヨーモーメントM+(負のヨーモーメント)を発生させる。即ち、ステアリングホイールを切り戻すときは、横加加速度に応じて旋回内側の車輪に比べて旋回外側の車輪に対する制動力を増加させる(右側の車輪2,3のみに制動力を発生させる)。
M+制御部25は、例えば、フィルタ部およびゲイン乗算部を含んで構成されている。M+制御部25は、フィルタ部で横加加速度をLPF処理し、ゲイン乗算部でゲインを乗算することでモーメント指令M+とする。即ち、M+制御部25のフィルタ部では、微分部23で算出された横加加速度にローパスフィルタ「LPF」を用いたフィルタ処理を行う。M+制御部25のゲイン乗算部では、フィルタ処理された横加加速度に対してゲイン(Cm)を乗算することにより、モーメント指令(M+)を求める。モーメント指令(M+)は、下記の数2式で表される。
モーメント指令は、M+制御部25から姿勢推定部28に出力される。また、モーメント指令は、M+制御部25から目標液圧算出部26に出力される。目標液圧算出部26は、M+制御部25から出力されるモーメント指令に基づいて目標とすべき液圧値(目標液圧値)を算出し、ブレーキ液圧制御装置15に出力する。即ち、目標液圧算出部26は、算出したモーメント指令から目標の液圧を算出し、ブレーキ液圧制御装置15によって液圧を発生させる。ブレーキ液圧制御装置15は、目標液圧算出部26で算出された目標液圧値に対応した液圧を発生させる。M+制御部25および目標液圧算出部26は、ブレーキ液圧制御装置15に出力すべき目標液圧の算出を行うことにより、横加速度とヨーモーメントとが連成したモーメント制御を実現する。実施形態では、目標液圧算出部26は、GVC制御部24からの前後G指令とM+制御部25からのモーメント指令とに基づいて、目標とすべき液圧値(目標液圧値)を算出し、ブレーキ液圧制御装置15に出力する。
姿勢推定部28には、GVC制御部24から出力された前後G指令とM+制御部25から出力されたモーメント指令とが入力される。姿勢推定部28は、モーメント指令(ヨーモーメント指令値)を用いて、車両に発生するピッチ・ロール量を推定する。実施形態では、姿勢推定部28は、「前後G指令」と「モーメント指令」との両方を用いて車両に発生するピッチ・ロール量を推定する。即ち、姿勢推定部28は、「GVC制御部24から出力される前後G指令」と「M+制御部25から出力されるモーメント指令」とに基づいて車両の姿勢を推定する。この場合、姿勢推定部28は、車両の姿勢(車両に発生するピッチ・ロール量)として、ピッチレイトとロールレイトとを推定する。
具体的には、姿勢推定部28は、前後加速度、即ち、「GVC制御部24の前後G指令である前後加速度」と「M+制御部25のモーメント指令から推定される前後加速度」とから、車体1に発生するピッチレイトを推定する。これにより、前後G指令だけでなくヨーモーメント指令値も用いて、車両に発生するピッチ量(ピッチ状態)に相当するピッチレイトを推定する。この場合、ピッチレイトは、例えば、次のように推定する。即ち、前後加速度に対して、ピッチ角/前後加速度ゲインを乗算し、さらに、動特性を近似したLPF処理を行うことによってダイナミクスを再現することにより、前後加速度からピッチ角を算出する。そして、この算出されたピッチ角を微分することにより、ピッチレイトを算出(推定)する。
また、姿勢推定部28は、ヨーモーメント指令値、即ち、M+制御部25のモーメント指令から、車体1に発生するロールレイトについても推定する。これにより、ヨーモーメント指令値を用いて、車両に発生するロール量(ロール状態)に相当するロールレイトを推定する。この場合、ロールレイトは、例えば、モーメント指令から推定されるロールモーメントからロール角を算出し、このロール角を微分することにより算出する。また、必要に応じてLPF処理を行う。姿勢推定部28で算出されたピッチレイト(推定ピッチレイト)は、ピッチ制御部29に出力される。姿勢推定部28で算出されたロールレイト(推定ロールレイト)は、ロール抑制部30に出力される。
ピッチ制御部29には、横加速度・ヨーレイト推定部22から出力された横加速度(推定横加速度)と、姿勢推定部28から出力されたピッチレイト(推定ピッチレイト)と、限界領域判定部31から出力されたピッチ制御用重み係数とが入力される。ピッチ制御部29は、車体の旋回状態から目標となる目標ピッチ量(具体的には、ピッチレイト)を算出(取得)する目標ピッチ量算出手段(目標ピッチ状態算出手段)を構成している。ピッチ制御部29は、姿勢推定部28で算出されたピッチレイト(推定ピッチレイト)が入力されることにより、GV制御およびモーメント制御を行う車両においても、ピッチ制御部29によるピッチ量(目標ピッチレイト)が目標値に近づくように減衰力可変ダンパ6,9の力を調整する。このために、ピッチ制御部29は、横加速度からロール角を推定し、この推定されたロール角の絶対値にゲインを乗算し、微分することにより、目標ピッチレイトを算出する。そして、ピッチ制御部29は、横加速度から算出した目標ピッチレイトと姿勢推定部28で推定したピッチレイト(予測ピッチレイト)との差分を算出し、算出した差ピッチレイトからFF制御により、ピッチ方向のダイナミクスを考慮した上で、目標ピッチレイトとなるように各輪の目標減衰力を算出する。これにより、コントローラ21は、車両に発生するピッチ量を推定し、当該推定したピッチ量が目標ピッチ量に近付くような指令値を減衰力可変ダンパ6,9に出力できるようにしている。さらに、ピッチ制御部29は、算出された目標減衰力に限界領域判定部31から出力されたピッチ制御用重み係数を乗算することにより目標減衰力に対する重み付けを行い、重み係数が乗算された目標減衰力を加算部33に出力する。
ここで、ピッチ制御部29は、目標ピッチレイトよりGVC制御部24の前後加速度(前後G指令)によって発生する予測ピッチレイトが大きい場合には、ピッチを小さくすることが目標となる。そこで、目標ピッチレイトと予測ピッチレイトの絶対値の差を算出し、その値がプラスの場合には目標ピッチレイトが大きいため、ピッチダイナミクスを考慮したピッチを発生させる制御項を活かしてピッチを発生させる。反対に目標ピッチレイトと予測ピッチレイトの絶対値の差を算出し、その値がマイナスの場合には予測ピッチレイトが大きいため、ピッチを抑制させる制御項を活かしピッチを抑制する。
ロール抑制部30には、微分部23から出力された横加加速度と、姿勢推定部28から出力されたロールレイト(推定ロールレイト)と、限界領域判定部31から出力されたロール抑制用重み係数とが入力される。ロール抑制部30は、車体の旋回状態から目標となる目標ロール量(具体的には、ロールレイト)を算出(取得)する目標ロール量算出手段(目標ロール状態算出手段)を構成している。ロール抑制部30は、姿勢推定部28で算出されたロールレイト(推定ロールレイト)が入力されることにより、GV制御およびモーメント制御を行う車両においても、ロール抑制部30によるロール量(目標ロールレイト)が目標値に近づくように減衰力可変ダンパ6,9の力を調整する。このために、ロール抑制部30は、微分部23で算出された横加加速度に基づいてロールレイトを算出し、算出されたロールレイトに対してゲインを乗算することにより、ロールを抑制するように目標減衰力を算出する。
即ち、ロール抑制部30では、ロール抑制制御を行うために各輪側の減衰力可変ダンパ6,9で発生させるべき力(減衰力)となる目標減衰力を算出する。この場合、ロール抑制部30は、横加加速度に応じてロールを抑制するように目標減衰力を算出する。このとき、ロール抑制部30は、例えば、横加加速度から算出した目標ロールレイトと姿勢推定部28で推定したロールレイト(予測ロールレイト)との差分を算出し、算出した差ロールレイトから目標ロールレイトとなるように各輪の目標減衰力を算出する。これにより、コントローラ21は、横加加速度とヨーモーメント指令値とに基づいて車両に発生するロール量を推定し、当該推定したロール量が目標ロール量に近付くような指令値を減衰力可変ダンパ6,9に出力できるようにしている。さらに、ロール抑制部30は、算出された目標減衰力に限界領域判定部31から出力されたロール抑制用重み係数を乗算することにより目標減衰力に対する重み付けを行い、重み係数が乗算された目標減衰力を加算部33に出力する。
ここで、ロールについてはモーメント制御の車両への影響が切り込み時と切り戻し時で異なる。このため、モーメント制御の指令値であるモーメント指令に応じて、切り込み時にはロール制御指令(目標減衰力)を増加し、切り戻し時にはロール制御指令(目標減衰力)を減少させることにより、操舵に応じた一貫したロール挙動を確保できるようにする。即ち、ロール抑制部30は、M+制御部25のモーメント指令から姿勢推定部28で推定したロールレイト(予測ロールレイト)を用いてモーメント指令に応じたロール抑制制御を行う。この場合、ロール抑制部30は、操舵の切り込み時にロール制御指令(目標減衰力)を増加し、操舵の切り戻し時にロール制御指令(目標減衰力)を減少させる。
限界領域判定部31には、ヨーレイトセンサ11で検出されたヨーレイト(実ヨーレイト)と横加速度・ヨーレイト推定部22で算出された推定ヨーレイトとが入力される。限界領域判定部31は、車両走行時のタイヤの接地力(グリップ力)が常用領域(線形領域)からの限界領域(非線形領域)に達したか否かを判定し、その判定結果に応じた重み係数、即ち、車両の姿勢の制御量(目標減衰力)を調整するための重み係数を出力する。この場合、限界領域判定部31は、差ヨーレイトに応じてロール抑制とピッチ制御の制御量を調整する。即ち、限界領域判定部31は、横加速度・ヨーレイト推定部22で推定されると共にこの横加速度・ヨーレイト推定部22から出力されたヨーレイト(推定ヨーレイト)とヨーレイトセンサ11で検出した実ヨーレイトとの差となる差ヨーレイトを演算する。
限界領域判定部31は、差ヨーレイトに基づいてロール抑制の制御量を調整するためのロール抑制用重み係数とピッチ制御の制御量を調整するためのピッチ制御用重み係数を算出する。限界領域判定部31は、ロール抑制用重み係数をロール抑制部に出力し、ピッチ制御用重み係数をピッチ制御部に出力する。これにより、コントローラ21は、車両のヨーレイトの推定値と検出値との差である差ヨーレイトに基づいて減衰力可変ダンパ6,9の力を調整する。即ち、コントローラ21は、車両のヨーレイトの推定値と検出値との差である差ヨーレイトに基づいて、力発生装置となる減衰力可変ダンパ6,9へ指令値を出力する。この場合、限界領域判定部31は、例えば、差ヨーレイトが大きくなったときには、車両走行時のタイヤが限界領域に近い状態にあると判断し、この場合にはロール抑制部30側での制御に重みを与えるようにロール抑制用重み係数を大きくし、ピッチ制御部29側での制御を相対的に小さくするため、ピッチ制御用重み係数を「0」または「0」に近づけるように小さくする。
相対速度推定部32には、微分部23から横加加速度が入力される。相対速度推定部32は、微分部23で算出された横加加速度に基づき各輪の減衰力可変ダンパ6,9における上,下方向の伸縮速度(ストローク速度)を相対速度として推定(算出)する。即ち、相対速度推定部32では、横加加速度から算出したロールレイトと車両諸元より、幾何学的関係を利用して各輪の相対速度を推定する。相対速度推定部32で推定された相対速度は、減衰力マップ部34に入力される。
加算部33には、ロール抑制部30から出力された目標減衰力とピッチ制御部29から出力された目標減衰力とが入力される。加算部33は、ロール抑制部30で算出されたロール抑制制御量に相当する減衰力とピッチ制御部29で算出されたピッチ制御量に相当する減衰力とを足し合わせ、これを各輪の目標減衰力として減衰力マップ部34に出力する。
減衰力マップ部34には、相対速度推定部32から出力された相対速度と加算部33から出力された目標減衰力とが入力される。減衰力マップ部34は、目標減衰力と推定された相対速度から、予め記憶しておいた減衰力特性のマップ(減衰力と指令電流値と相対速度との関係)から指令電流値を算出する。減衰力マップ部34は、算出した指令電流値を図示しない電流ドライバに出力し、電流ドライバを介して指令電流値に対応する電流を減衰力可変ダンパ6,9に供給する。これにより、減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を可変に調整する。
このように、第1の実施形態では、コントローラ21の姿勢推定部28は、「車両の横加速度の変化率(横加加速度)に基づいて車両にヨーモーメントを発生させるヨーモーメント指令値(モーメント指令)」および/または「車両の横加速度の変化率(横加加速度)に基づいて車両に加減速を発生させる加減速指令値(前後G指令)」を用いて、車両に発生するピッチ・ロール量(予測ピッチレイト、予測ロールレイト)を推定(算出)する。そして、コントローラ21のピッチ制御部29およびロール抑制部30では、姿勢推定部28で推定されたピッチ・ロール量(予測ピッチレイト、予測ロールレイト)を用いて、ピッチ制御部29によるピッチ量とロール抑制部30によるロール量とが目標値に近づくように、減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を調整する。この場合、コントローラ21は、ヨーモーメント指令に応じて、操舵の切り込み時にロール制御指令(目標減衰力)を増加し、操舵の切り戻し時にロール制御指令(目標減衰力)を減少させる。なお、モーメント制御の車両への影響が大きいロール量のみが目標値に近づくように、減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を調整してもよい。言い換えると、車両に発生するロール量を推定し、目標ロール量算出手段としてのロール抑制部30のロール量が目標値に近づくようにするだけでもよい。つまり、ピッチ制御部29の指令値を減衰力マップ部34に入力しなくてもよい。
このように、第1の実施形態では、コントローラ21は、車体の旋回状態から目標となる目標ロール量を算出する。そして、コントローラ21は、車両の横加速度の変化率と、ヨーモーメントを発生させるヨーモーメント指令値とに基づいて、車両に発生するロール量を推定し、当該推定したロール量が目標ロール量に近づくような指令値を、力発生装置となる減衰力可変ダンパ6,9へ出力する。さらに、コントローラ21は、車体の旋回状態から目標となる目標ピッチ量を算出する。そして、コントローラ21は、車両に発生するピッチ量を推定し、当該推定したピッチ量が目標ピッチ量に近づくような指令値を、力発生装置となる減衰力可変ダンパ6,9へ出力する。この場合、コントローラ21は、車両の横加速度の変化率に基づいて、加減速を発生させる加減速指令値とヨーモーメント指令値とを用いて、車両に発生するピッチ・ロール量を推定し、当該推定したピッチ・ロール量が目標ピッチ量と目標ロール量とに近づくような指令値を、力発生装置となる減衰力可変ダンパ6,9へ出力する。
第1の実施形態による車両運動制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、コントローラ21による車体1の姿勢制御処理について説明する。
まず、微分部23は、横加速度・ヨーレイト推定部22で車両モデルと車両ダイナミクスを考慮するためのLPF(ローパスフィルタ)とにより算出した推定横加速度を微分して横加加速度を算出する。GVC制御部24は、横加加速度をLPF処理し、ゲインを乗算することで前後G指令である目標前後加速度を算出する。目標液圧算出部26は、GVC制御部24で算出した前後G指令(目標前後加速度)から目標の液圧を算出し、ブレーキ液圧制御装置15によって各車輪側のホイールシリンダ(ディスクブレーキ)に液圧を発生させる。また、目標駆動力算出部27は、GVC制御部24で算出した前後G指令(目標前後加速度)から目標の駆動力を算出し、駆動装置16によって各車輪(左,右の前輪2,2)に駆動力を付与する。このように制御することで横加速度と前後加速度が連成したGV制御が実現できる。一方、M+制御部25は、横加加速度をLPF処理し、ゲインを乗算することでモーメント指令(ヨーモーメント指令)を算出する。目標液圧算出部26は、M+制御部25で算出したモーメント指令から目標の液圧を算出し、ブレーキ液圧制御装置15によって各車輪側のホイールシリンダ(ディスクブレーキ)に液圧を発生させる。このように制御することで横加速度とヨーモーメントが連成したモーメント制御(M+制御、ヨーモーメント制御)が実現できる。
次に、ロール抑制制御およびピッチ制御について説明する。ロール抑制部30では、横加加速度に応じてロールを抑制するように目標減衰力を算出する。ピッチ制御部29では、横加速度に応じてロール感を向上させるように目標減衰力を算出する。ここで、ピッチ制御部29では、横加速度から推定されるロール角の絶対値にゲインを乗算して目標ピッチレイトを算出する。この場合、GV制御およびモーメント制御に対応したピッチ制御を行うため、姿勢推定部28では、「GV制御の前後G指令」と「モーメント制御のモーメント指令から発生する前後加速度」とにより発生するピッチレイトを推定する。また、姿勢推定部28では、モーメント制御のモーメント指令から発生するロールレイトについても推定する。
ピッチ制御部29では、姿勢推定部28で推定したピッチレイト(予測ピッチレイト)と目標ピッチレイトとの差分を算出し、算出した差ピッチレイトからFF制御により、ピッチ方向のダイナミクスを考慮した上で、目標ピッチレイトとなるように各輪の目標減衰力を算出する。ここで、目標ピッチレイトよりGV制御およびモーメント制御の前後加速度によって発生するピッチレイトが大きい場合には、ピッチを小さくすることが目標となる。そこで、目標ピッチレイトと予測ピッチレイトの絶対値の差を算出し、その値がプラスの場合には目標ピッチレイトが大きいため、ピッチダイナミクスを考慮したピッチを発生させる制御項を活かしてピッチを発生させる。反対に目標ピッチレイトと予測ピッチレイトの絶対値の差を算出し、その値がマイナスの場合には予測ピッチレイトが大きいため、ピッチを抑制させる制御項を活かしピッチを抑制する。
一方、ロール抑制部30では、横加加速度から算出された目標ロールレイトと姿勢推定部28で推定したロールレイト(予測ロールレイト)との差分を算出し、算出した差ロールレイトから目標ロールレイトとなるように各輪の目標減衰力を算出する。ここで、ロールについてはモーメント制御の車両への影響が切り込み時と切り戻し時とで異なるため、切り込み時にはモーメント制御指令値(モーメント指令)に応じてロール制御指令(目標減衰力)を増加し、切り戻し時にはロール制御指令(目標減衰力)を減少させる。これにより、操舵時に一貫したロール挙動とすることができる。
また、限界領域判定部31では、横加速度・ヨーレイト推定部22で算出されたヨーレイト(推定ヨーレイト)とヨーレイトセンサ11で検出した実ヨーレイトとの差となる差ヨーレイトを演算する。限界領域判定部31は、差ヨーレイトに応じてロール抑制とピッチ制御の制御量を調整する。具体的には、差ヨーレイトに基づいてロール抑制の制御量を調整するためのロール抑制用重み係数とピッチ制御の制御量を調整するためのピッチ制御用重み係数を算出する。限界領域判定部31は、ロール抑制用重み係数をロール抑制部30に出力し、ピッチ制御用重み係数をピッチ制御部29に出力する。ロール抑制部30では、目標減衰力にロール抑制用重み係数が乗算され、ピッチ制御部29では、目標減衰力にピッチ抑制用重み係数が乗算される。これにより、車両走行時のタイヤの接地力(グリップ力)に応じた目標減衰力の調整を行うことができる。
さらに、相対速度推定部32では、微分部23で算出された横加加速度からロールレイトを算出すると共に、算出したロールレイトと車両諸元とにより幾何学的関係を利用して、各輪の相対速度を推定する。一方、加算部33では、上述のようにロール抑制部30で算出された目標減衰力(ロール抑制制御量)とピッチ制御部29で算出された目標減衰力(ピッチ制御量)とを足し合わせ、これを各輪の目標減衰力とする。減衰力マップ部34では、この各輪の目標減衰力と相対速度推定部32で推定された相対速度とから、予めコントローラ21に記憶しておいた減衰力特性(減衰力―指令電流値―相対速度)を用いて指令電流値を算出する。コントローラ21は、算出した電流値を電流ドライバで発生させ、減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を可変する。
図3は、横加速度(Gy)と加減速指令(Gx_GVC)とモーメント指令(M+)とロール角とピッチ角とサス制御指令(減衰力可変ダンパ6,9に対する減衰力指令)の時間変化の一例を示している。図3中、実線41は横加速度Gyの変化を示しており、実線42は加減速指令(前後G指令)Gx_GVCの変化を示しており、実線43はモーメント指令M+の変化を示している。また、図3中、破線44,45,46は、特許文献2に記載された技術のような、GV制御を行う車両においてGV制御による姿勢変化を考慮して減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を調整する場合のロール角の変化、ピッチ角の変化、サス制御指令(減衰力)の変化を示している。図3中、二点鎖線47,48,49は、GV制御およびモーメント制御を行う車両においてGV制御による姿勢変化を考慮して減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を調整する場合のロール角の変化、ピッチ角の変化、サス制御指令(減衰力)の変化を示している。図3中、実線50,51,52は、GV制御およびモーメント制御を行う車両においてGV制御およびモーメント制御による姿勢変化を考慮して減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を調整する場合、即ち、本実施形態のロール角の変化、ピッチ角の変化、サス制御指令(減衰力)の変化を示している。
ここで、モーメント制御による姿勢変化を考慮しない場合は、ロール角の変化を示す二点鎖線48から明らかなように、モーメント制御により片輪にブレーキが付与されることによるロールモーメントに起因してロールが助長・抑制されている。即ち、操舵の切り込み時にはロールが助長され、操舵の切り戻し時にはロールが抑制される。これに対して、図3中のサス制御指令(減衰力)の実線52と二点鎖線49とを比較すると明らかなように、モーメント制御による姿勢変化を考慮した本実施形態では、操舵の切り込み時にサス制御指令(減衰力)が増加しており、操舵の切り戻し時にサス制御指令(減衰力)が減少している。これにより、図3中のピッチ角の実線51と二点鎖線48とを比較すると明らかなように、本実施形態では、操舵の切り込み時および操舵の切り戻し時に、ピッチ角の変化を抑制することができる。
また、図3中のロール角の実線50と二点鎖線48とを比較すると明らかなように、本実施形態では、操舵の切り込み時にロールが助長することを低減でき、操舵の切り戻し時にロールが抑制されることを低減できる。即ち、実施形態では、GV制御およびモーメント制御によって発生するピッチ、および、モーメント制御によって発生するロールを考慮して、減衰力可変ダンパ6,9を制御することにより、車両の操縦安定性を向上させることができる。この場合、ステアリング戻し時(レーンチェンジ、旋回脱出時)に発生するピッチ・ロール、特にロールを抑制することができる。即ち、旋回脱出時にアクセル操作により、ピッチを発生させてピッチを調整することはできるが、ロールを発生させて調整することはできない。これに対して、実施形態では、モーメント制御による姿勢変化を考慮して減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を調整することにより、ロールを調整することができる。
以上のように、第1の実施形態によれば、コントローラ21は、ヨーモーメント指令値(モーメント指令)と加減速指令値(前後G指令)とから車両に発生するピッチ・ロール量(ピッチレイト、ロールレイト)を推定し、ピッチ制御部29によるピッチ量とロール抑制部30によるロール量とが、目標値に近づくように、減衰力可変ダンパ6,9の力(減衰力)を調整する。このため、減衰力可変ダンパ6,9の力(減衰力)は、「モーメント指令に基づいて発生するヨーモーメントによるピッチ・ロール量の変化」と「モーメント指令および前後G指令に基づいて発生するピッチモーメントによるピッチ・ロール量の変化」とを加味した力に調整される。
これにより、モーメント指令に基づいて発生するヨーモーメントによってロールが助長または抑制されることを低減できる。また、モーメント指令と前後G指令とに基づいて発生するピッチモーメントによってピッチが助長または抑制されることを低減できる。即ち、モーメント指令に基づいて発生するヨーモーメントによるロール変化の助長または抑制を打ち消すことができ、ロール・ピッチ連成を維持することができる。また、モーメント指令と前後G指令とに基づいて発生するピッチモーメントによるピッチの助長または抑制を打ち消すことができ、この面からも、ロール・ピッチ連成を維持することができる。これらにより、不必要な車両の姿勢変化を抑制することができ、ヨー運動の応答性、収束性を改善することができる。この結果、車両の操舵の際にモーメント指令および前後G指令に基づきブレーキ液圧制御装置15および駆動装置16で制駆動力を発生させる車両において、一貫した車両運動とすることができ、操縦安定性を向上できる。
第1の実施形態によれば、車両のヨーレイトの推定値と検出値との差である差ヨーレイトに基づいて、減衰力可変ダンパ6,9の力(減衰力)を調整する。このため、差ヨーレイトから車両走行時のタイヤの接地力(グリップ力)が常用領域であるか限界領域であるかを推定し、その領域に応じて減衰力可変ダンパ6,9の力(減衰力)を調整できる。即ち、タイヤの接地力の状況を考慮して減衰力可変ダンパ6,9の減衰力を調整でき、この面からも操縦安定性を向上できる。
第1の実施形態によれば、コントローラ21は、モーメント指令に応じて、操舵の切り込み時にロール制御指令(図3のサス制御指令)を増加し、操舵の切り戻し時にロール制御指令(図3のサス制御指令)を減少させる。このため、操舵の切り込み時にロールが助長されることを低減でき、操舵の切り戻し時にロールが抑制されることを低減できる。
次に、図4は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、車体の姿勢制御を行うアクチュエータ(力発生機構)がセミアクティブサスペンション(例えば、減衰力調整式の油圧緩衝器)ではなく、自ら推力を発生可能なアクティブサスペンション(例えば、電磁サスペンション)を用いる構成としたことにある。より具体的には、第2の実施形態は、GV制御とモーメント制御の制御指令から車体に発生する力をFF制御(フィードフォワード制御)により相殺し、目標姿勢を実現するようにFF制御およびFB制御(フィードバック制御)により電磁サスペンション(電動アクチュエータ)を制御する構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態では、車両の車体1と複数の車輪2,3との間には、複数の電磁サスペンション61がそれぞれ介装して設けられている。電磁サスペンション61は、例えば電動リニアアクチュエータ等の電動アクチュエータ(電磁ダンパ)を含んで構成されている。電磁サスペンション61は、車体1と各車輪2との間の力を調整可能な力発生装置を構成している。電磁サスペンション61は、後述のコントローラ63と共に、車両に用いられるサスペンション制御装置を構成している。
また、第2の実施形態では、車高センサ62を備えている。車高センサ62は、車体1に設けられている。車高センサ62は、例えば、左,右の前輪2側と左,右の後輪3側とでそれぞれ個別に車高を検出し、その検出信号をコントローラ63に出力する。コントローラ63は、入力側が車高センサ62、操舵角センサ12および車速センサ13に接続され、出力側が電磁サスペンション61のアクチュエータ(電動リニアアクチュエータ)、ブレーキ液圧制御装置15に接続されている。コントローラ63は、横加速度推定部22A、GVC制御部64、M+制御部65、目標液圧算出部26、FF制御部66、目標姿勢算出部67、姿勢算出部68、差演算部69、FF制御部70、FB制御部71、加算部72を備えている。なお、第1の実施形態では、横加速度およびヨーレイトを推定する横加速度・ヨーレイト推定部22を備えていたのに対して、第2の実施形態では、横加速度を推定する横加速度推定部22Aを備えている。
コントローラ63の横加速度推定部22Aは、推定した横加速度を目標姿勢算出部67、GVC制御部64、M+制御部65に出力する。GVC制御部64は、横加速度推定部22Aで推定された横加速度を微分することにより横加加速度(ジャーク)を算出し、算出された横加加速度に基づいて車両の左右輪2,3で発生させるべき駆動力または制動力の指令である前後G指令を算出する。即ち、第2の実施形態のGVC制御部64は、第1の実施形態の微分部23とGVC制御部24(いずれも図2参照)とにより構成されている。M+制御部65は、横加速度推定部22Aで推定された横加速度を微分することにより横加加速度(ジャーク)を算出し、算出された横加加速度に基づいて車両で発生させるべきヨーモーメントの指令となるモーメント指令を算出する。即ち、第2の実施形態のM+制御部65は、第1の実施形態の微分部23とM+制御部25(いずれも図2参照)とにより構成されている。
GVC制御部64で算出された前後G指令およびM+制御部65で算出されたモーメント指令は、目標液圧算出部26に出力される。目標液圧算出部26は、第1の実施形態の目標液圧算出部26と同様に、GVC制御部64からの前後G指令とM+制御部65からのモーメント指令とに基づいて、目標とすべき液圧値(目標液圧値)である各輪のブレーキ指令値を算出し、ブレーキ液圧制御装置15およびFF制御部66に出力する。
FF制御部66には、目標液圧算出部26から各輪のブレーキ指令値が入力される。FF制御部66は、モーメント指令および/または前後G指令に基づく各輪のブレーキ指令値によって発生するロールモーメントおよびピッチモーメント(予測ロールモーメントおよび予測ピッチモーメント)を算出(推定)する。そして、FF制御部66は、そのロールモーメントおよびピッチモーメントを打ち消す指令値(指令ロールモーメントおよび指令ピッチモーメント)を加算部72に出力する。このように、FF制御部66は、目標液圧算出部26からの各輪のブレーキ指令値を用いて、車両に発生するピッチ・ロール量(予測ピッチモーメント、予測ロールモーメント)を推定(算出)する。
目標姿勢算出部67、姿勢算出部68、差演算部69、FF制御部70、FB制御部71および加算部72は、目標ピッチ量算出手段および目標ロール量算出手段に相当する。目標姿勢算出部67には、横加速度推定部22Aで推定された車体1の横加速度(推定横加速度)が入力される。目標姿勢算出部67は、推定横加速度から目標ロールレイトおよび目標ピッチレイトを算出する。目標姿勢算出部67は、目標ロールレイトおよび目標ピッチレイトを差演算部69およびFF制御部70に出力する。姿勢算出部68には、車高センサ62で検出された車高が入力される。姿勢算出部68は、車高センサ62で検出された車高(実車高)から実ロールレイトおよび実ピッチレイトを算出する。姿勢算出部68は、実ロールレイトおよび実ピッチレイトを差演算部69に出力する。
差演算部69では、目標姿勢算出部67で算出された目標ロールレイトおよび目標ピッチレイトと姿勢算出部68で算出された実ロールレイトおよび実ピッチレイトとの差を算出し、その差(目標値に対する差)をFB制御部71に出力する。FF制御部70は、目標姿勢算出部67から目標ロールレイトおよび目標ピッチレイトが入力されると、フィードフォワード制御による目標ロールモーメントおよび目標ピッチモーメントを算出し、加算部72に出力する。FB制御部71は、差演算部69で算出された目標値に対する差に従ってフィードバック制御による目標ロールモーメントおよび目標ピッチモーメントを算出し、加算部72に出力する。
加算部72は、FF制御部70からの目標ロールモーメントおよび目標ピッチモーメントと、FB制御部71からの目標ロールモーメントおよび目標ピッチモーメントと、FF制御部66からのGV制御およびモーメント制御によって発生するロールモーメントおよびピッチモーメントを打ち消すための指令値(指令ロールモーメント、指令ピッチモーメント)とを加算する。これにより、加算部72は、最終的な目標ロールモーメントおよび目標ピッチモーメントを算出し、電磁サスペンション61(のアクチュエータ)に出力する。この場合、加算部72では、各車輪側に振り分けられた目標ピッチモーメントと目標ロールモーメントとに対応する目標推力FR,FL,RR,RLを、各車輪側の電磁サスペンション61で発生できるよう制御量を算出し、算出した制御量(目標推力FR,FL,RR,RL)に対応する制御信号を各電磁サスペンション61に個別に出力する。
このように、第2の実施形態では、コントローラ63の加算部72は、FF制御部66で推定されたピッチ・ロール量(予測ピッチモーメント、予測ロールモーメント)から得られる指令値(指令ロールモーメント、指令ピッチモーメント)を用いて、目標姿勢算出部67、姿勢算出部68、差演算部69、FF制御部70およびFB制御部71によるピッチ量(ピッチモーメント)とロール量(ロールモーメント)とが目標値に近づくように、電磁サスペンション61の制御力を調整する。即ち、コントローラ63は、車両の横加速度の変化率に基づいて、加減速を発生させる加減速指令値とヨーモーメント指令値とを用いて、車両に発生するピッチ・ロール量を推定し、当該推定したピッチ・ロール量が目標ピッチ量と目標ロール量とに近づくような指令値を、力発生装置となる減衰力可変ダンパ6,9へ出力する。
第2の実施形態は、上述の如きコントローラ63により電磁サスペンション61の力(制御力)を調整するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施形態によるものと格別差異はない。第2の実施形態によれば、コントローラ63は、GV制御およびモーメント制御による各輪のブレーキ指令値によって発生するロールモーメント、ピッチモーメントをFF制御部66で算出し、そのロールモーメント、ピッチモーメントを打ち消す指令値を加算部72に出力する。これにより、GV制御とモーメント制御によって発生するロール・ピッチ挙動を抑制し、目標姿勢を精度よく実現することができる。
なお、第1の実施形態では、ブレーキ液圧制御装置15および駆動装置16の制御と減衰力可変ダンパ6,9の制御とを1つのコントローラ21で行う構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、第1の実施形態では、コントローラ21は、車両の操舵の際に制駆動力を発生させる制駆動力制御手段(制駆動力コントローラ)の一部を構成し、かつ、力発生装置(減衰力可変ダンパ6,9)の力を調整する力調整手段(コントロール部)を構成している。しかし、これに限らず、例えば、ブレーキ液圧制御装置15および駆動装置16を制御するコントローラ(制駆動力コントローラ)と減衰力可変ダンパ6,9を制御するコントローラ(コントロール部)とを別々に設け、これらのコントローラを通信線(信号線)で接続する構成としてもよい。このことは、第2の実施形態についても同様である。
第1の実施形態では、車両に制駆動力を発生させる制御としてGV制御とモーメント制御(車両ヨーモーメント制御、M+制御)との両方を行うことが可能な車両の場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、GV制御は行わずモーメント制御を行う車両としてもよい。また、第1の実施形態では、GV制御として制動力と駆動力との両方を発生させることが可能な車両の場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、駆動力は発生させず制動力を発生させるGV制御を行う車両、または、制動力は発生させず駆動力を発生させるGV制御を行う車両としてもよい。さらに、第1の実施形態では、モーメント制御として制動力を発生させる車両の場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、制動力は発生させず駆動力を発生させるモーメント制御を行う車両、または、モーメント制御として制動力と駆動力との両方を発生させることが可能な車両としてもよい。これらのことは、第2の実施形態についても同様である。
各実施形態では、横加速度は操舵角と車速から車両モデルを用いて推定する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、センサを用いて横加速度を検出してもよく、横加速度の算出方法に限定はない。即ち、横加速度の変化率は、操舵角の変化率、ヨーレイトの微分値、曲率の微分値、ナビデータ等から求めてもよい。また,相対速度の推定に関して横加速度(推定横加速度)から推定する場合を例に挙げて説明したが,車高センサ値を微分して求める方法やばね上加速度センサ値とばね下加速度センサの差を積分等から求めてもよい。さらに、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく車両運動制御装置として、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、車両の操舵の際に制駆動力を調整する制駆動力コントローラと、前記車両の車体と複数の車輪との間にそれぞれ介装して設けられ、前記車体と前記各車輪との間の力を調整可能な複数の力発生装置と、を有する車両に用いられ、前記各力発生装置の力を調整するコントロール部を有する車両運動制御装置であって、前記コントロール部は、前記車体の旋回状態から目標となる目標ロール量を算出し、前記車両の横加速度の変化率と、ヨーモーメントを発生させるヨーモーメント指令値とに基づいて、前記車両に発生するロール量を推定し、当該推定したロール量が前記目標ロール量に近づくような指令値を、前記力発生装置へ出力する。この第1の態様によれば、コントロール部は、ヨーモーメント指令値を加味して力発生装置へ指令値を出力するため、ヨーモーメントを制御(発生)する車両でロール姿勢の変化が助長または抑制されることを低減できる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記コントロール部は、前記車体の旋回状態から目標となる目標ピッチ量を算出し、前記車両に発生するピッチ量を推定し、当該推定したピッチ量が前記目標ピッチ量に近づくような指令値を、前記力発生装置へ出力する。この第2の態様によれば、ピッチ量も用いて力発生装置の力を調整することができる。
別の態様としては、第2の態様において、前記コントロール部は、前記車両の横加速度の変化率に基づいて、ヨーモーメントを発生させるヨーモーメント指令値を用いて、前記車両に発生するピッチ・ロール量を推定し、当該推定したピッチ・ロール量が前記目標ピッチ量と前記目標ロール量に近づくように、前記力発生装置の力を調整する。
この別の態様によれば、コントロール部は、ヨーモーメント指令値から車両に発生するピッチ・ロール量を推定し、当該推定したピッチ・ロール量が目標ピッチ量と目標ロール量に近づくように、力発生装置の力を調整する。このため、力発生装置の力は、ヨーモーメント指令値に基づいて発生するヨーモーメントによるピッチ・ロール量の変化を加味した力に調整される。これにより、ヨーモーメント指令値に基づいて発生するヨーモーメントによってロールが助長または抑制されることを低減できる。即ち、ヨーモーメント指令値に基づいて発生するヨーモーメントによるロールの助長または抑制を打ち消すことができ、ロール・ピッチ連成を維持することができる。そして、不必要な姿勢変化を抑制することができ、ヨー運動の応答性、収束性を改善することもできる。この結果、車両の操舵の際にヨーモーメント指令値に基づき制駆動力コントローラにより制駆動力を発生させる車両において、一貫した車両運動とすることができ、操縦安定性を向上できる。
第3の態様としては、第2の態様において、前記コントロール部は、前記車両の横加速度の変化率に基づいて、加減速を発生させる加減速指令値と前記ヨーモーメント指令値とを用いて、前記車両に発生するピッチ・ロール量を推定し、当該推定したピッチ・ロール量が前記目標ピッチ量と前記目標ロール量とに近づくような指令値を、前記力発生装置に出力する。
この第3の態様によれば、コントロール部は、ヨーモーメント指令値と加減速指令値とから車両に発生するピッチ・ロール量を推定し、当該推定したピッチ・ロール量が目標ピッチ量と目標ロール量とに近づくように、力発生装置の力を調整できる。このため、力発生装置の力は、ヨーモーメント指令値に基づいて発生するヨーモーメントによるピッチ・ロール量の変化だけでなく、ヨーモーメント指令値および加減速指令値に基づいて発生するピッチモーメントによるピッチ・ロール量の変化も加味した力に調整される。これにより、ヨーモーメント指令値に基づいて発生するヨーモーメントによってロールが助長または抑制されることを低減できることに加えて、ヨーモーメント指令値と加減速指令値とに基づいて発生するピッチモーメントによってピッチが助長または抑制されることを低減できる。この結果、車両の操舵の際にヨーモーメント指令値および加減速指令値に基づき制駆動力コントローラにより制駆動力を発生させる車両において、ロール・ピッチ連成を維持することができ、操縦安定性を向上できる。
第4の態様としては、第2の態様において、前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサをさらに備え、前記コントロール部は、前記車両のヨーレイトの推定値と検出値との差である差ヨーレイトに基づいて、前記力発生装置へ出力する。この第4の態様によれば、差ヨーレイトから車両走行時のタイヤの接地力(グリップ力)が常用領域であるか限界領域であるかを推定し、その領域に応じて力発生装置の力を調整できる。即ち、タイヤの接地力の状況を考慮して力発生装置の力を調整でき、この面からも操縦安定性を向上できる。
第5の態様としては、第2の態様において、前記コントロール部は、前記ヨーモーメント指令値に応じて、操舵の切り込み時にロール制御指令を増加し、操舵の切り戻し時にロール制御指令を減少させる。この第5の態様によれば、操舵の切り込み時にロールが助長されることを低減でき、操舵の切り戻し時にロールが抑制されることを低減できる。
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
本願は、2019年9月27日付出願の日本国特許出願第2019-177675号に基づく優先権を主張する。2019年9月27日付出願の日本国特許出願第2019-177675号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。