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JP7228882B2 - 人工血管および人工血管の製造方法 - Google Patents
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JP7228882B2 - 人工血管および人工血管の製造方法 - Google Patents

人工血管および人工血管の製造方法 Download PDF

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本発明は人工血管および人工血管の製造方法に関する。
人工血管等人工留置物を用いる手術では、術後感染症が発生すると、難治化しやすくその人工物を除去しなければ感染症が治癒しないことも多い。とりわけ心臓血管外科領域の弁置換手術や人工血管による大動脈の手術では術後感染が問題となっていた(非特許文献1)。
このような状況を解消するために、アミノグリコシド系抗生物質等少なくとも1つの抗生物質と、パントテン酸誘導体からなる活性薬剤コーティングを特徴とする内部人工器官であって、該内部人工器官が、整形外科用のインプラントである、内部人工器官に関する発明が知られている(特許文献1)。しかしながら、無機物である人工器官のコーティングを念頭に置く手法であるため、乾燥炉で4時間乾燥させる工程がある等、化学高分子樹脂を用いる人工血管に用いることは難しい。
また、生体留置用の薬剤徐放部材であって、金属材料、セラミックス材料および高分子材料の少なくとも一つから構成される基材と、前記基材の表面を覆い、薬剤を放出する多層膜と、を有し、前記多層膜は、抗血栓剤、抗生物質等の薬剤を含み、前記薬剤を徐放するポリマー膜と、前記ポリマー膜を覆い、前記薬剤の徐放を制限する保護膜とを含む薬剤徐放部材も知られている(特許文献2)。しかし、当該部材はステントのために造られたもので、血液の流入を伴う人工血管の表面にこのような部材が適合できるかどうかは何ら検証されていない。
人工血管の技術の進歩により、血栓を防ぐヘパリンを含む人工血管の開発等も行われているが、抗生物質を含むヘパリン含有人工血管は記載されていない(非特許文献2)。
人工血管においては、術後の比較的早い時期に体内で出血や血漿の漏れが起こることが問題であり、出血が起きない人工血管としてゼラチンをコーティングした人工血管が知られている(特許文献3)。
人工血管を用いる大動脈手術において使用するためにリファンピシンをゼラチン被覆層に含む人工血管が知られている(非特許文献3)。しかしながらリファンピシンは肝機能障害の副作用があり耐性菌も発現しやすい。またリファンピシンの浸出方法は煩雑で他の薬剤を同時に含有させることが難しい。また、MRSAに効果のあるバンコマイシン浸漬人工血管も知られている(非特許文献4)が、バンコマイシンは緑膿菌には効果がない。
特許第5964867号 WO2010/029753 特許第2815752号
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副作用が少なく幅広い抗菌スペクトルを持つ抗菌剤を含む人工血管および各種薬剤を配合できる抗菌剤含有人工血管の簡便な製造方法が求められている。
本発明は、
〔1〕コリスチンを含有するゼラチンに被覆された人工血管。
〔2〕バンコマイシンを含む〔1〕記載の人工血管。
〔3〕コリスチン含有生理食塩水にゼラチンに被覆された人工血管を5~10分間浸漬漬させることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の人工血管の製造方法。
〔4〕コリスチン含有生理食塩水にバンコマイシンを加えることを特徴とする〔3〕記載の製造方法。
〔5〕生理食塩中のコリスチンまたはバンコマイシンの濃度が400~800μg/mlであることを特徴とする〔3〕または〔4〕記載の製造方法。
〔6〕コリスチン含有生理食塩水にゼラチンに被覆された人工血管を5分間浸漬させることを特徴とする〔3〕から〔5〕いずれかに記載の製造方法。
〔7〕生理食塩中のコリスチンまたはバンコマイシンの濃度が600μg/mlであることを特徴とする〔3〕から〔6〕いずれかに記載の製造方法に関する。
本発明により、手術後に感染症の発生する恐れのない人工血管およびその簡便な製造方法が提供される。
図1は、緑膿菌Pseudomonas aeruginosa PA01(シュードモナス アエルギノーサ PA01:以下、緑膿菌という。)に関する、コントロールとして抗菌剤を含有していないゼラチン被覆人工血管(CTL-ABV)の内側および外側における菌量の経時変化の結果である。 図2は、緑膿菌に関する、コリスチンを含有しているゼラチン被覆人工血管(COL-ABV)の内側および外側における菌量の経時変化の結果である。 図3は、緑膿菌に関する、リファンピシンおよびコリスチンを含有しているゼラチン被覆人工血管(COL+REP-ABV)の内側および外側における菌量の経時変化の結果である。 図4は、緑膿菌に関する、リファンピシンを含有しているゼラチン被覆人工血管(REP-ABV)の内側および外側における菌量の経時変化の結果である。 図5は、黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus N315(スタフィロコッカス アウレウス N315:以下、MRSAという)に関する、コントロールとして抗菌剤を含有していないゼラチン被覆人工血管(CTL-ABV)の内側および外側における菌量の経時変化の結果である。 図6は、MRSAに関する、バンコマイシンを含有しているゼラチン被覆人工血管(VCM-ABV)の内側および外側における菌量の経時変化の結果である。 図7は、MRSAに関する、リファンピシンを含有しているゼラチン被覆人工血管(REP-ABV)の内側および外側における菌量の経時変化の結果である。 図8は、コリスチン(a)またはバンコマイシン(b)の浸漬時間と人工血管への結合量の相関である。
本発明におけるゼラチンに被覆された人工血管とは、プレクロティング不要のゼラチンンにより被覆された人工血管を示し、人工血管としては、ポリエステル(Dacron)製人工血管、テフロン(ePTFE)製人工血管、ウレタン等合成高分子素材製人工血管、動物の血管を処理した生体材料由来人人工血管、人工素材と動物素材が混成したハイブリッド人工血管等が挙げられるが、好ましくはポリエステル製人工血管、テフロン製人工血管が挙げられる。
本発明のコリスチンを含有するゼラチンに被覆された人工血管において、コリスチンを含有するとは、人工血管を用いた手術において、手術後の緑膿菌等細菌の感染を防ぐために、手術後においてもコリスチンがゼラチンに被覆された人工血管においてもゼラチン層に保持され抗菌作用を示せるように、コリスチンがゼラチン層に含まれている状態を示す。
ゼラチンで被覆された人工血管に含まれるコリスチンの必要な量としては、人工血管が移植後に抗菌効果を示す条件と考察されるコリスチンを含有するゼラチンに被覆された人工血管を生理食塩水に24時間浸漬させた後であっても、緑膿菌に対して抗菌作用を示すように保持されている状態が好ましい。
本発明のコリスチン含有ゼラチン被覆人工血管に含まれるコリスチンの具体的な量としては、人工血管3cm当たりコリスチンが50μg以上、好ましくは100μg含まれていることが好ましい。
本発明においてバンコマイシンを含むとは、前記コリスチンを含有するゼラチンに被覆された人工血管に更にバンコマイシンが含まれる状態を示す。バンコマイシンがコリスチンや他の抗生剤では抑制効果のないMRSAにも効果を示すため、コリスチンとバンコマイシンとの組み合わせは人工血管に広範囲な感染症防止効果を持たせる点で有効である。
本発明の人工血管に含まれるバンコマイシンの量としては、人工血管が移植後に抗菌効果を示す条件と考察されるコリスチンを含有するゼラチンに被覆された人工血管を生理食塩水に24時間浸漬させた後であっても、MRSAに対して抗菌作用を示すように保持されている状態が好ましい。バンコマイシンの具体的な量としては、人工血管3cm当たり50μg以上、好ましくは100μg含まれていることが好ましい。
なお、本発明はコリスチンとともにMRSAに対して抗菌作用を示すリファンピシンを含ませても良く、更にバンコマイシンを含ませても良い。
本発明の人工血管に含まれるリファンピシンの量としては、人工血管が移植後に抗菌効果を示す条件と考察されるリファンピシンを含有するゼラチンに被覆された人工血管を生理食塩水に24時間浸漬させた後であっても、MRSAに対して抗菌作用を示すように保持されている状態が好ましい。
本発明において、コリスチンを含有するゼラチンに被覆された人工血管の製造方法は、
コリスチンおよびゼラチンを含有し、前記抗菌機能を有する人工血管を製造する方法であれば、どのようなものでも良いが、例えば人工血管表面に生理食塩水で溶かしたゼラチンを噴霧し乾燥させた後、コリスチンを添加する方法、人工血管の表面の高分子に加工を行い、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基又はアミノ基等を形成し、この表面にゼラチンを結合させたものにコリスチンを添加する方法でも良い。ポリエステル、テフロン等多孔質合成高分子よりなるチューブの全表面に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基又はアミノ基を形成する手段は、合成高分子がテフロンにあってはグラフト重合を、ポリエステルにあってはグラフト重合または部分的加水分解を採用する。本発明の人工血管は、このようにして形成された官能基にゼラチンを共有結合させ、更にコリスチンを添加したものも含まれる。なお、本発明は市販のゼラチン被覆人工血管にコリスチンを添加することにより製造することもできる。
本発明において、コリスチンを、前記ゼラチンに被覆された人工血管に添加させる方法としては、溶液に溶かしたコリスチンを人工血管のゼラチン層へスプレーにて塗布する方法、溶液にコリスチンを溶かしたコリスチン溶液にゼラチンで被覆された人工血管を浸漬する方法、人工血管のゼラチン層にコリスチンをインクジェットプリントする方法等が挙げられるが、浸漬法によりゼラチン層にコリスチンを含ませる方法を用いることが好ましい。
本発明において、溶液にコリスチンを溶かしたコリスチン溶液にゼラチンで被覆された人工血管を浸漬する方法とは、生理食塩水、注射用滅菌水、リン酸緩衝液等の溶液にコリスチンを溶解させた400μg/ml~800μg/ml、好ましくは500μg/ml~700μg/ml、最も好ましくは600μg/mlのコリスチン水溶液を作製し、これにゼラチンで被覆された人工血管を、ゼラチン層に影響を与えない40度以下の温度、好ましくは30度~1度の室温、好ましくは25度~15度の常温で、4分~15分、好ましくは5~10分、とりわけ好ましくは5分間浸漬する方法である。
コリスチンに更にバンコマイシンを含むゼラチンに被覆された人工血管の製造方法は、コリスチンとバンコマイシンの物理化学的性質が類似しているため、コリスチンとバンコマイシンの混合溶液を作製して前記製造方法により製造することができる。
コリスチンとバンコマイシンを含むゼラチンを被覆された人工血管の製造方法としては、コリスチンとバンコマイシンを前記ゼラチンに被覆された人工血管に添加させる方法が挙げられ、溶液に溶かしたコリスチンとバンコマイシンの混合溶液を人工血管のゼラチン層へスプレーにて塗布する方法、溶液に溶かしたコリスチンとバンコマイシンの混合溶液にゼラチンで被覆された人工血管を浸漬する方法、人工血管のゼラチン層にコリスチンとバンコマイシンをインクジェットプリントする方法等が挙げられるが、浸漬法によりゼラチン層にコリスチンとバンコマイシンを含ませる方法を用いることが好ましい。
当該浸漬法により製造する場合は、バンコマイシンをコリスチンと共に生理食塩水、注射用滅菌水、リン酸緩衝液等の溶液に溶解し、400μg/ml~800μg/ml、好ましくは500μg/ml~700μg/ml、最も好ましくは600μg/mlのバンコマイシン水溶液を作製する。当該溶液にゼラチンで被覆された人工血管をゼラチン層に影響を与えない40度以下の温度、好ましくは30度~1度の室温、好ましくは25度~15度の常温で、4分~15分、好ましくは5~10分、とりわけ好ましくは5分間浸漬する。
なお、更にリファンピシンを用いる場合は、リファンピシンの溶解性がコリスチンやバンコマイシンよりもかなり悪いため、リファンピシン水溶液を予め作製し、これにコリスチンやバンコマイシンを加えることが好ましい、リファンピシン水溶液は、リン酸緩衝液中リファンピシンを溶解し、塩化ナトリウム等を加えて400μg/ml~800μg/ml、好ましくは500μg/ml~700μg/ml、最も好ましくは600μg/mlのリファンピシン水溶液を作製する。当該リファンピシン溶液に前記のように調製したコリスチン、必要によりバンコマイシンを加えた溶液にゼラチンで被覆された人工血管をゼラチン層に影響を与えない40度以下の温度、好ましくは30度~1度の室温、好ましくは25度~15度の常温で、4分~15分、好ましくは5~10分、とりわけ好ましくは5分間浸漬する。
[実施例1]
コリスチン(コリスチン硫酸塩、シグマ社製)を生理食塩水に溶解しその濃度が600μg/mlになるように調整した水溶液30mlに対して、内径8mm、長さ6cmのゼラチンコーティング人工血管(商品名バスクテックゼルウィーブ、テルモ社製)を室温で5分間浸漬してコリスチン含有人工血管(以下、COL-ABVと言う。)を作製した。
[実施例2]
生理食塩注射液25mLを注射筒にとるとともに、リファンピシン150mg(リファンピシンカプセル、サンド社製)を別の注射筒に入れた。この2つの注射筒を三方活栓で連結し混合し、左右に20回混合して一方に移動させ、0.8μm及び0.22μmの2種類のフィルターを連結してろ過し、別の注射筒に入れシリンジロックして払い出すことにより、リファンピシン濃度が600μg/mlになるように調整した水溶液を作製した。このリファンピシン水溶液30mLに対して、コリスチン(コリスチン硫酸塩、シグマ社製)18mgを加え,コリスチンおよびリファンピシンが各々600μg/mlになるようコリスチンおよびリファンピシン混合溶液を作製した。当該混合溶液30mlに対して内径8mm、長さ6cmのゼラチンコーティング人工血管(商品名バスクテックゼルウィーブ、テルモ社製)を室温で5分間浸漬してコリスチンおよびリファンピシン含有人工血管(以下、COL+RFP-ABVと言う。)を作製した。
[実施例3]
バンコマイシン(バンコマイシン塩酸塩、和光純薬工業製)を生理食塩水に溶解しその濃度が600μg/mlになるように調整した水溶液30mlに対して、内径8mm、長さ6cmのゼラチンコーティング人工血管(商品名バスクテックゼルウィーブ、テルモ社製)を室温で5分間浸漬してバンコマイシン含有人工血管(以下、VCM-ABVと言う。)を作製した。
[実施例4]
前記実施例1で作製したコリスチン含有ゼラチン被覆人工血管(COL-ABV)、前記実施例2で作製したコリスチンおよびリファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(COL+RFP-ABV)、実施例3で作製したバンコマイシン含有ゼラチン被覆人工血管(VCM-ABV)、後述する、参考例1で作製したコントロール用の抗菌剤を含まないゼラチン被覆人工血管(CTL-ABV)および参考例2で作製したリンファンピシン含有人工血管(RFP-ABV)を、手術後の人工血管使用時の条件に合致している条件にするため、生理食塩水に室温で24時間浸漬させた。
緑膿菌試験群においては、前記24時間の浸漬操作が終了後、コントロール用ゼラチン被覆人工血管(CTL-ABV)、コリスチン含有ゼラチン被覆人工血管(COL-ABV)、リファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(RFP-ABV)、コリスチンおよびリファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(COL+RFP-ABV)を、6ウェルプレート内に折り曲げて設置し、人工血管の外側に、緑膿菌Pseudomonas aeruginosa PA01(シュードモナス アエルギノーサ PA01:以下、緑膿菌という。)の菌液(菌量、10 CFU/ml)を、内側に生理食塩水を注入し、37度の反応温度、5%COの条件で培養を行なった。培養中の各人工血管に関して培養開始0時間、6時間、12時間、18時間、24時間目に人工血管の内側の水溶液および外側の水溶液を回収し、緑膿菌の菌量を測定した(n=3,結果は平均値で算出)。コントロールのゼラチン被覆人工血管(CTL-ABV)の外側および内側の緑膿菌量の経時変化を図1に、コリスチン含有ゼラチン被覆人工血管(COL-ABV)の外側および内側の緑膿菌量の経時変化を図2に、コリスチンおよびリファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(COL+RFP-ABV)の外側および内側の緑膿菌量の経時変化を図3に、リファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(RFP-ABV)の外側および内側の緑膿菌量の経時変化を図4に示した。
コントロールの人工血管(CTL-ABV)および公知技術のリファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(RFP-ABV)においては、人工血管の内側および外側の菌量が時間と共に増加したが(図1、図3)、本件発明のコリスチン含有ゼラチン被覆人工血管(COL-ABV)では、人工血管の外側の菌量が実験開始後12時間に至るまで大きく減少し、その後やや増加したが、内側では生育しなかった(図2)。また、コリスチンおよびリファンピシン含有人工血管(COL+RFP-ABV)では、実験開始後6時間で,外側の緑膿菌が消滅し、内側では生育しなかった(図4)。
MRSA試験群においては、前記24時間の浸漬操作が終了後、コントロール用ゼラチン被覆人工血管(CTL-ABV)、バンコマイシン含有ゼラチン被覆人工血管(VCM-ABV)、リファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(RFP-ABV)を、6ウェルプレート内に折り曲げて配置し、人工血管の外側に黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus N315(スタフィロコッカス アウレウス N315:以下、MRSAという)の菌液(菌量、10 CFU/ml)を、内側に生理食塩水を注入し、37度の反応温度、5%COの条件で培養を行なった。培養中の各人工血管に関して培養開始0時間、6時間、12時間、18時間、24時間目に人工血管の内側の水溶液および外側の水溶液を回収し、MRSAの菌量を測定した(n=3、平均値で算出)。コントロールの人工血管(CTL-ABV)の外側および内側のMRSA菌量の経時変化を図5に、バンコマイシン含有ゼラチン被覆人工血管(VCM-ABV)の外側および内側のMRSA菌量の経時変化を図6に、リファンピシン含有ゼラチン被覆人工血管(RFP-ABV)の外側および内側のMRSA菌量の経時変化を図7に示した。
コントロールのゼラチン被覆人工血管(CTL-ABV)においては外側において菌量が増加するとともに内側でも6時間以降急激に増加した(図5)。バンコマイシン含有ゼラチン被覆人工血管(VCM-ABV)およびリファンピシン含有ゼラチン被覆含有人工血管(RFP-ABV)では、外側で菌量が減少し、内側では生育しなかった(図6、図7)。
以上の結果は、公知のリファンピシン含有人工血管を用いるのに比べ、コリスチン含有人工血管は緑膿菌に対して、手術後の血管内部での緑膿菌増殖を完全に阻止する強い効果を持ち、バンコマイシンおよび/またはコリスチンと併用することによって、緑膿菌やMRSAに対する幅広い抗菌効果を持つ人工血管が提供されることが示唆された。
[実施例5]
本発明の人工血管に対する薬剤の結合性能を検討した。具体的にはコリスチンまたはバンコマイシンの浸漬法による人工血管への結合性を経時的に測定することで、その結合性を検討した。
コリスチン(コリスチン硫酸塩、シグマ社製)またはバンコマイシン(バンコマイシンを塩酸塩、和光純薬工業製)を生理食塩水に溶解して調製した水溶液30mL(薬剤濃度600μg/ml)を培養チューブに入れた。この培養チューブ中のコリスチンまたはバンコマイシン水溶液に長さ3cmのゼラチン被覆人工血管を挿入し、室温で浸漬を行なった。浸漬時間5分、10分、30分の時点で人工血管を摘出し、培養チューブ中に残存している溶液のコリスチン濃度またはバンコマイシン濃度を以下のように測定した。
コリスチンは、9-フルオレニルメチルクロロフォルメートという経口誘導体化試薬を用い固相抽出カートリッジ内でコリスチンを蛍光誘導体化した後に、アセトン抽出した溶液を高速液体クロマトグラフィーにより分析することでその濃度を測定した。
また、バンコマイシンは、化学発光免疫測定法により、抗体結合磁性粒子に対してバンコマイシンを反応させた後、化学発光物質で標識した抗体をバンコマイシンに二次反応させ、化学発光物質の発光強度を測定することでバンコマイシンの濃度を測定した。
浸漬開始前の培養チューブ中の水溶液のコリスチンまたはバンコマイシン濃度と、ゼラチン被覆人工血管浸漬終了後の残存溶液のコリスチンまたはバンコマイシン濃度を対比することにより、ゼラチン被覆人工血管に結合したコリスチンまたはバンコマイシン結合量を測定した。
上記結合試験の経時変化の結果を図8に示したが、コリスチン、バンコマイシンとも人工血管への薬剤の結合性が認められ、10分間程度で結合量がプラトーに達していた。
以上の試験により、機能的解析のみならず化学的解析によってもコリスチンまたはバンコマイシンが、ゼラチン被覆人工血管に結合している状況が確認された。
以上、コリスチン含有人工血管が従来型のリファンピシン含有人工血管よりも強い緑膿菌感染抑制効果を持つことが示され、更にMRSAに強い効果を持つバンコマイシン含有人工血管が、コリスチン含有人工血管と同じ製造方法で得られることが確認されたため、コリスチンとバンコマイシンの2種類を含有させた人工血管は緑膿菌にもMRSAにも強い抑制効果を持つことが期待される。
参考例1
本発明の比較対象とするため、生理食塩水30mlに対して内径8mm、長さ6cmのゼラチンコーティング人工血管(商品名バスクテックゼルウィーブ、テルモ社製)を5分間浸漬してコントロールの人工血管(以下、CTL-ABVと言う。)を作製した。
参考例2
生理食塩注射液25mLを注射筒にとるとともに、リファンピシン150mg(リファンピシンカプセル、サンド社製)を別の注射筒に入れ、この2つの注射筒を三方活栓で連結し混合し、左右に20回混合して一方に移動させ、0.8μm及び0.22μmの2種類のフィルターを連結してろ過し、別の注射筒に入れシリンジロックして払い出すことにより、リファンピシン濃度が600μg/mlになるように調整した水溶液を作製した。このリファンピシン水溶液30mlに対して、内径8mm、長さ6cmのゼラチンコーティング人工血管(商品名バスクテックゼルウィーブ、テルモ社製)を5分間浸漬してリファンピシン含有人工血管(以下、RFP-ABVと言う。)を作製した。
本発明により、術後感染症を起こさない人工血管およびその製造方法が提供される。
Control:コントロール群
COL:コリスチン含有人工血管群
RFP:リファンピシン含有人工血管群
RFP+COL:リファンピシンおよびコリスチン含有人工血管群
VCM:バンコマイシン含有人工血管群

Claims (5)

  1. 血管内部の緑膿菌増殖を阻止するため、人工血管3cm当たりコリスチンを50μg~200μg含有することを特徴とするゼラチンに被覆された人工血管。
  2. さらに,血管内部のMRSA増殖を阻止するためにバンコマイシンを含む請求項1記載の人工血管。
  3. 生理食塩水、注射用滅菌水またはリン酸緩衝液等の溶液にコリスチンを溶解させた400μg/ml~800μg/mlのコリスチン水溶液を作製し、これにゼラチンで被覆された人工血管を、ゼラチン層に影響を与えない40度以下の温度で4分~15分浸漬させることを特徴とする、請求項1記載のコリスチン含有人工血管の製造方法。
  4. コリスチン水溶液にバンコマイシンを加えることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 水溶液中のバンコマイシンの濃度が400~800μg/mlであることを特徴とする請求項3または請求項4記載の製造方法。
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