JP7266888B2 - 中空スプラインシャフト及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また近年では、顧客の要望により、スプラインシャフトの軽量化やコストダウンなどが求められる。そのため、外周面側に凹凸が形成された円筒形状の中空スプラインシャフトも製造されている。そのシャフトの中心に中空孔を設けるにあたっては、ブローチ等の切削加工、または、パイプ材のプレス成形が用いられている。
(1)中空孔の略星形形状の尖端部(先端部)に応力が集中するため、スプラインシャフトにねじりモーメントが加わると、尖端部から亀裂が生じ易くなる。
(2)中空孔が略星形形状に変形することにより、加工圧が逃げてしまうので、外周面に形成されるスプライン形状の高い精度を得ることが困難となる。
また、シャフト端部より必要な長さのみスプライン加工した場合、合わせて以下のような問題が生じる。
(4)スプライン形状を設けない未加工部分に必要とされる寸法の制約があり、スプライン加工する部分の材料として加工に最適なパイプ材の内径外径を、自由に決めることができない。
本発明にかかる中空スプラインシャフトは、軸心方向に貫通状の孔部が形成された長尺のパイプ材を元に芯引き加工で製造される中空スプラインシャフトであって、前記中空ス
プラインシャフトの外周面には、ダイスを用いた引抜加工により、周方向に沿って凸条部と凹条部とが交互に形成されていて、前記中空スプラインシャフトの中心には、芯材を使用した引抜加工により、軸心方向に沿って貫通状に円形状の中空孔が形成されていて、前記中空スプラインシャフトは、所定の減面率を有することを特徴とする。
本発明にかかる中空スプラインシャフトの製造方法は、軸心方向に貫通状の孔部が形成された長尺のパイプ材を元に中空スプラインシャフトを製造するに際して、所定の減面率を有するように制御しながら芯引き加工を行い、前記パイプ材の外周面に、ダイスを用いた引抜加工により、周方向に沿って凸条部と凹条部とを交互に形成するとともに、前記パイプ材の中心に、芯材を使用した引抜加工により、軸心方向に沿って貫通状に円形状の中空孔を形成し、前記パイプ材の孔部に対する前記中空スプラインシャフトの中空孔の減面率Xを、60%以上70%以下とし、前記パイプ材に対する前記中空スプラインシャフトの減面率Yを、45%以上50%以下とすることを特徴とする。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。また、本実施形態においては、本発明の中空スプラインシャフト1の元材として、ドラムにコイル状に巻回された長尺のパイプコイル材5(パイプ材)を用いて例示している。
本発明の中空スプラインシャフト1は、例えば、電動シート11(詳細は後述)の電動リクライニング機構12などに採用可能である。中空スプラインシャフト1は、軸心に中
空孔4が形成された長尺の軸体であって、電動リクライニング機構12の駆動モータ16から出力された回転駆動力が伝達されることにより、回転するものである。
本発明の中空スプラインシャフト1は、その軸体の外周面で周方向に沿って凸条部2(スプライン突起)と凹条部3(スプライン歯底)とが交互に形成されていて、軸心方向に沿って軸体の中心に中空孔4が形成されている。
凸条部2とそれに隣接する凸条部2との間には、凹形状の突起(凹条部3)が形成されている。すなわち、中空スプラインシャフト1の外周面には、所定の幅及び深さの凹形状の溝(凹条部3)が、等間隔で中空スプラインシャフト1の外周全体に形成されている。本実施形態では、7つの凹条部3が形成されている。凹条部3は、断面視でU字形状であり上方が放射状に開いている。凹条部3の底部は外方膨出状の円弧となっている。
つまり、中空スプラインシャフト1の凸条部2の高さは、電動リクライニング機構12の従動ギア18に形成された雌スプラインの凹条部の深さによって決定される。また同様に、中空スプラインシャフト1の凸条部2の幅も、従動ギア18に形成された雌スプラインの凹条部の幅によって決定される。
また、凸条部2の頂部を結ぶ円(外接円)は、凹条部3の底部を結ぶ外接円と略同中心となっている。なお、凸条部2、凹条部3は外周に沿って等間隔(等ピッチ)に形成されていてもよいが、不等間隔(不等ピッチ)で形成されていても何ら問題はない。
さらに、図1、図2に示すように、中空スプラインシャフト1の中心には、芯材8(フローティングプラグ8)を使用した引抜加工(芯引き)により、中空孔4が軸心方向に沿って貫通状に形成されている。中空孔4は、円形状に形成され、所定の減面率(詳細は後述)を有している。なお、中空孔4は、完全な中心にあってもよいし、加工状況によって変わるのでやや偏心しているものでもよい。
さて、本実施形態においては、減面率を規定している。すなわち、芯引きにより、パイプコイル材5(元材)に力を加えて変形させて、中空スプラインシャフト1(製品)を製造する際に、変化する断面積の減少率である、減面率を規定している。
・中空孔4の減面率X(%)=((孔部6の断面積B-中空孔4の断面積A)/孔部6の断面積B)×100
ただし、中空スプラインシャフト1を軸心方向(長手方向)に対して直交する方向に切断したときの中空孔4の断面積をAとする。また、パイプコイル材5を軸心方向(長手方向)に対して直交する方向に切断したときの孔部6の断面積をBとする。
中空孔4の減面率Xについては、以下の通りである。ただし、シャフト自身の減面率については同一としている。
中空孔4の減面率Xが、上限を超える(70%超)場合、略星形形状の尖端部が完全に消えずに残ってしまう状況となる。つまり、中空スプラインシャフト100に似た形状となる虞がある。これは、元材であるパイプコイル材5の内径が大きいことを表している。
中空孔4の減面率Xが下限を下回る(60%未満)場合、中空スプラインシャフトに形成されるスプライン形状(凸条部、凹条部)の精度が悪化する。これは、元材であるパイプコイル材5の内径ひいては外径が小さいことを表している。
・中空スプラインシャフト1の減面率Y(%)=((パイプコイル材5の断面積D-中空スプラインシャフト1の断面積C)/パイプコイル材5の断面積D)×100
ただし、中空スプラインシャフト1を軸心方向(長手方向)に対して直交する方向に切断したときの中空スプラインシャフト1の断面積をCとする。また、パイプコイル材5を軸心方向(長手方向)に対して直交する方向に切断したときのパイプコイル材5の断面積をDとする。
中空スプラインシャフト1の減面率Yについては、以下の通りである。
中空スプラインシャフト1の減面率Yが、上限を超える(50%超)場合、引抜加工(
芯引き)時に、断線してしまうというリスクが生じる。つまり、中空スプラインシャフト1の減面率Yが高いと、シャフトが絞り込まれていることを表しているので、引き抜き時に大きな力を要することとなる。このように、中空スプラインシャフト1の減面率Yが50%を超える場合、中空スプラインシャフト1が断線してしまう虞があるという知見を得た。
ただし、中空スプラインシャフト1(パイプコイル材5)と中空孔4(孔部6)が同様の比率であり、具体的には軽量化率が20%以上40%未満であれば、中空スプラインシャフト1(パイプコイル材5)が太径でも細径でも成り立つと考える。
以上述べた、本発明で規定した減面率X,Yを満たすことで、芯引き加工において、空引き加工をする際に用いているパイプコイル材の肉厚よりも、厚みで15%~30%程度厚い、肉厚のパイプコイル材5を使用することができるので、高強度の中空スプラインシャフト1を製造することができる。好ましくは、本発明で規定した減面率X,Yの中心値であるとよい。
なお、本実施形態の中空孔4の断面については円形状で説明したが、中空孔4の断面については様々な形状(例えば、略楕円形状など)であってもよい。すなわち、中空孔4の断面形状は、フローティングプラグ8の形状によって変わってくる。
[実施例]
以下に、本発明の製造方法に従って製作した中空スプラインシャフト1のねじり試験の結果と、比較するために製作した中空スプラインシャフト100のねじり試験の結果について、説明する。
ねじり試験の装置については、精密ねじり試験機:TTM-3kN・mA(株式会社 島津製作所製)を使用した(地方独立行政法人 大阪産業技術研究所 和泉センターにて実施)。
ねじり試験の条件については、パイプコイル材5を用いて空引き加工で、中空スプラインシャフト100を3本製作した。また、パイプコイル材5を用いて芯引き加工により、中空孔4が円形状の中空スプラインシャフト1を製作した。それら中空スプラインシャフ
ト1,100を各3本ずつ計測した。中空スプラインシャフト1,100をねじり続けて、負荷状況をトレーサーで記録した。
中空スプラインシャフト100は、「識別No.1,2,3、断面形状:中空で且つ星形状、断面積:43.2mm2、工法:空引き」である。
中空スプラインシャフト1は、「識別No.4,5,6、断面形状:中空で且つ円形状、断面積:42.9mm2、工法:芯引き」である。
また、「材質:S20C相当材、軸間距離:約100mm(全長250mm、把持部:75mm)、ねじり速度:120°/min、記録レンジ:150N・m」とした。
図7~図10に、中空スプラインシャフト1,100のねじり試験の結果を示す。
空引きで製作した中空スプラインシャフト100については、以下のような、ねじり試験結果となった。
・No.1:55.90N・m
・No.2:54.45N・m
・No.3:57.75N・m
・平均:56.03N・m
一方、芯引きで且つ、本発明で規定した減面率X,Yを満たすように製作した、中空孔4が円形状の中空スプラインシャフト1については、以下のような、ねじり試験結果となった。
・No.5:72.20N・m
・No.6:72.40N・m
・平均:72.20N・m
図9に示すように、空引きで製作した中空スプラインシャフト100の断面については、不規則な曲面状になっており、亀裂(筋状の隙間)が生じ、それがシャフト100の表面まで到達していることがわかった。
一方、図10に示すように、芯引きで且つ、規定した減面率X,Yを満たすように製作した、中空孔4が円形状の中空スプラインシャフト1の断面については、平面状で且つ、垂直に切り落とされたような、綺麗なねじりせん断面となっていた。
ここで、空引きで製作した中空スプラインシャフト100の断面について考察する。
空引きで製作した中空スプラインシャフト100の中空孔は、外周面に形成されたスプライン突起(凸条部)に対応した略星形形状に変形しており、その略星形形状の尖端部(先端部)に応力が集中し易い状態となっている。
その結果、ねじり強さのピークは、中空スプラインシャフト100が耐える以前に、亀裂がシャフト100の表面に到達した時点となるため、亀裂が発生しない円形状の中空孔
4を有する中空スプラインシャフト1(芯引きで製作し且つ本発明の減面率X,Yを満たす)の試験結果と比べて、早期にピークアウトする。
以上をまとめると、本実施形態において、中空スプラインシャフト1,100の断面積の広さを同じ程度に合わせたサンプルを製作し、そのサンプルに対してねじり試験を実施した結果、芯引きで製作し且つ、本発明の減面率X,Yを満たし、円形状の中空孔4を備える中空スプラインシャフト1のねじり強さが、空引きで製作した中空スプラインシャフト100に比べて、高いことが分かった。
すなわち、本発明は、軸心方向に貫通状の孔部6が形成された長尺のパイプコイル材5を元に、芯引き加工において、中空スプラインシャフト1を製造するに際して、規定した減面率X,Yを満たすように制御しながら、パイプコイル材5の外周面に、異形ダイス7を用いた引抜加工により、周方向に沿って凸条部2と凹条部3とを交互に形成するとともに、パイプコイル材5の中心に、フローティングプラグ8(芯材8)を挿入する引抜加工により、軸心方向に沿って貫通状に円形状の中空孔4を形成することで、中空スプラインシャフト1を製造する。
また、パイプコイル材5に対する、中空スプラインシャフト1の減面率Y(=((パイプコイル材5の断面積D-中空スプラインシャフト1の断面積C)/パイプコイル材5の断面積D)×100)を、45%以上50%以下とする。
本発明で規定した減面率X,Yを満たすことで、芯引き加工において、空引き加工をする際に用いているパイプコイル材の肉厚よりも、厚みで15%~30%程度厚い、肉厚のパイプコイル材5を使用することができるので、高強度の中空スプラインシャフト1を製造することができる。
電動リクライニング機構12において、駆動モータ16から回転駆動力が出力されると
、駆動モータ16の出力軸の先端に配備された駆動ギア17が回転する。駆動ギア17は、噛み合っている従動ギア18を回転させる。中空スプラインシャフト1は、雌スプラインが形成された従動ギア18に嵌り込んでいて、従動ギア18と共に回転する。
本実施形態の中空スプラインシャフト1によれば、回転駆動力の伝達性能を落とすことなく、軸体の軽量化を図ることができ、ひいては、例えば、電動リクライニング機構12及び電動シート11の軽量化を図ることが可能となる。
本発明の中空スプラインシャフト1を構成する材料は、所望とされる強度を満たすものであれば、どのような材料であってもよい。また、必要とされる強度を確保すべく、中空スプラインシャフト1を、例えば、熱間加工、冷間加工のいずれか又は両方を用いて製造してもよく、表面処理加工を行うようにしてもよい。
2 凸条部
3 凹条部
4 中空孔
5 パイプコイル材
6 孔部
7 異形ダイス
8 フローティングプラグ(芯材)
11 電動シート
12 電動リクライニング機構
13 座部
14 背もたれ部
15 ギア機構
16 駆動モータ
17 駆動ギア
18 従動ギア
100 中空スプラインシャフト
A 中空孔の断面積
B 孔部の断面積
C 中空スプラインシャフトの断面積
D パイプコイル材の断面積
Claims (2)
- 軸心方向に貫通状の孔部が形成された長尺のパイプ材を元に製造される中空スプラインシャフトであって、
その製造に芯引き加工が採用されることにより、
前記中空スプラインシャフトの外周面にダイスによる周方向に沿った凸条部と凹条部とを交互に備え、
前記中空スプラインシャフトの中心には、芯材による軸心方向に沿って断面が円形の中空孔が貫通し、
前記孔部に対する前記中空孔の減面率Xが60%以上70%以下であり、
前記パイプ材に対する前記中空スプラインシャフトの減面率Yが45%以上50%以下である
ことを特徴とする中空スプラインシャフト。 - 軸心方向に貫通状の孔部が形成された長尺のパイプ材を元に中空スプラインシャフトを製造するに際して、
所定の減面率を有するように制御しながら芯引き加工を行い、
前記パイプ材の外周面に、ダイスを用いた引抜加工により、周方向に沿って凸条部と凹条部とを交互に形成するとともに、
前記パイプ材の中心に、芯材を使用した引抜加工により、軸心方向に沿って貫通する断面が円形の中空孔を形成し、
前記パイプ材の孔部に対する前記中空孔の減面率Xを、60%以上70%以下とし、
前記パイプ材に対する前記中空スプラインシャフトの減面率Yを、45%以上50%以下とする
ことを特徴とする中空スプラインシャフトの製造方法。
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| JP2020157297A JP7266888B2 (ja) | 2020-09-18 | 2020-09-18 | 中空スプラインシャフト及びその製造方法 |
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