以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態における免震用ダンパD1は、図1に示すように、油圧ダンパODと、油圧ダンパODを水平方向回転可能に構造物Sへ取り付ける構造物側取付装置SBと、油圧ダンパODを水平方向回転可能に地盤Gへ取り付ける地盤側取付装置GBとを備えており、積層ゴムで構成された免震支承装置Mとともに構造物Sと地盤Gとの間に介装されて使用され免震装置の一部として機能する。なお、免震支承装置Mは、図示したところでは、積層ゴムで構成されているが、構造物Sを滑り支承や転がり支承するものであってもよい。
以下、免震用ダンパD1の各部について詳細に説明する。まず、油圧ダンパODは、構造物Sと地盤Gとが相対変位する際に伸縮して構造物Sの振動を抑制する減衰力を発揮する。そして、伸縮速度を第一速度Vaと第一速度Vaより高い第二速度Vbとで区分して、第一速度Vaより低い低速、第一速度Vaより高く第二速度Vbより低い中速、および第二速度Vbより高い高速とする。すると、油圧ダンパODの伸縮速度に対して発揮する減衰力の特性である減衰力特性は、本実施の形態では、図2に示すように、伸縮速度の区分の切換わりで減衰係数が切換わり、伸縮速度が中速域にある場合に減衰係数が最大となるように設定されている。より詳細には、本実施の形態の油圧ダンパODの減衰力特性は、伸縮速度が低速域にある場合に減衰係数が低く、伸縮速度が中速域にある場合に減衰係数が高くなり、伸縮速度が高速域にある場合に減衰係数が再度低くなる特性に設定されている。よって、本実施の形態の油圧ダンパODの減衰力特性は、第一速度Vaと第二速度Vbでそれぞれ減衰力が切換わる切換わり点Paと切換わり点Pbを持ち、伸縮速度が低速から高速へ遷移すると減衰係数が低、高、低の順に変化する特性となっている。
このように減衰力特性が設定された油圧ダンパODにあっては、伸縮速度が低い場合には、低い減衰力を発揮するので免震支承装置Mによる構造物Sへの振動絶縁性を阻害せず、伸縮速度が高速に達する大きな振動が構造物Sに作用する場面では高い減衰力を発揮するので、構造物Sの振動を高減衰力で抑制できる。よって、この油圧ダンパODを用いれば、比較的揺れの小さい中小規模の地震動に対しては免震効果を損なわず、かつ、大振幅の地震動に対しては高い減衰力を発して、効果的に振動を抑制できる。また、油圧ダンパODは、大振幅の地震動に対して高減衰力を発揮するので、構造物の過大な変位を防止できる。
また、油圧ダンパODは、伸縮速度が中速域に到達すると、減衰係数を大きくして低減衰力から高減衰力へ変化する減衰力特性を示すので、低減衰力から高減衰力への切換わりにおいて構造物Sへ急激な加速度変動を作用させずに済み、構造物Sの保護と構造物S内の人や機器への過剰な負荷をかけずに済む。
このような油圧ダンパODの減衰力特性を実現するための一例として、たとえば、油圧ダンパODの構造を以下のように構成すればよい。油圧ダンパODは、図3に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるロッド3と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路4と圧側通路5と、リザーバRと、圧側室R2とリザーバRとを連通する排出通路6と、伸側通路4と圧側通路5と排出通路6のそれぞれに設けた減衰部V1,V2,V3とを備えて構成される。
シリンダ1内は、ピストン2によって伸側室R1と圧側室R2とに仕切られている。また、シリンダ1の外周側には、シリンダ1を覆う外筒7が設けられており、シリンダ1と外筒7との間の環状隙間でリザーバRを形成している。外筒7の図3中左端は、内周にロッド3が挿通されてロッド3の軸方向の移動を案内する環状のロッドガイド8によって閉塞されている。ロッド3は、シリンダ1内に挿入されていて、一端がピストン2に連結されるとともに他端がシリンダ1外に突出している。ロッド3は、図1に示すように、構造物側取付装置SB或いは地盤側取付装置GBへの連結を可能とするアイ型ブラケット3aを備えている。
また、シリンダ1の図3中右端は、ボトム部材9にて閉塞され、外筒7の図3中右端は蓋10によって閉塞されている。シリンダ1は、ボトム部材9とともに、外筒7の両端に固定される前述のロッドガイド8と蓋10で挟持されて外筒7内に収容固定されている。ボトム部材9は、図1に示すように、構造物側取付装置SB或いは地盤側取付装置GBへの連結を可能とするアイ型ブラケット9aを備えている。
伸側室R1内と圧側室R2内には、この場合、作動油が充填されており、リザーバR内にも作動油が貯留されている。本例では、油圧ダンパODの作動媒体として作動油を使用しているが、作動油以外の液体を使用してもよく、水、水溶液等の使用も可能である。
ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路4と圧側通路5が設けられている。伸側通路4には、減衰部V1が設けられ、圧側通路5には、減衰部V2が設けられている。減衰部V1は、調圧弁PVと調圧弁PVに並列されるリリーフ弁RVとを備えており、伸側通路4を伸側室R1から圧側室R2へ通過する作動油の流れのみを許容しつつこの流れに対して抵抗を与え、伸側通路4を一方通行の通路に設定する。減衰部V2は、減衰部V1と同様に調圧弁PVと調圧弁PVに並列されるリリーフ弁RVとを備えており、圧側通路5を圧側室R2から伸側室R1へ通過する作動油の流れのみを許容しつつこの流れに抵抗を与え、圧側通路5を一方通行の通路に設定している。なお、伸側通路4および圧側通路5は、本例では、ともに、ピストン2に設けられているが、設置箇所はピストン2に限られず、たとえば、シリンダ1外で伸側室R1と圧側室R2を連通するように構成されてもよい。
ボトム部材9には、圧側室R2とリザーバRとを連通する排出通路6と吸込通路11が設けられている。排出通路6には、減衰部V3が設けられている。減衰部V3は、減衰部V1,V2と同様に、調圧弁PVと調圧弁PVに並列されるリリーフ弁RVとを備えており、排出通路6を圧側室R2からリザーバRへ通過する作動油の流れのみを許容しつつこの流れに対して抵抗を与え、排出通路6を一方通行の通路に設定している。吸込通路11には、リザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するチェック弁12が設けられており、吸込通路11は、このチェック弁12によってリザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、排出通路6と吸込通路11は、本例では、ともに、ボトム部材9に設けられているが、設置箇所はボトム部材9に限られない。
上記のように構成された油圧ダンパODは、伸長する場合、ピストン2の図3中左方への移動によって伸側室R1が圧縮されて圧側室R2が拡大されるので、作動油は伸側通路4を介して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。また、油圧ダンパODの伸長時には、ロッド3がシリンダ1から退出するため、ロッド3のシリンダ1から退出した体積分の作動油が吸込通路11を介してリザーバRからシリンダ1内に供給される。そして、伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れに対して減衰部V1が抵抗を与えるので、伸側室R1内の圧力が上昇して伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じ、これにより、油圧ダンパODは、伸長を抑制する伸側減衰力を発揮する。
また、油圧ダンパODは、収縮する場合、ピストン2の図3中右方への移動によって圧側室R2が圧縮されて伸側室R1が拡大されるので、作動油は圧側通路5を介して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。また、油圧ダンパODの収縮時には、ロッド3がシリンダ1内に侵入するため、ロッド3のシリンダ1内へ侵入した体積分の作動油が排出通路6を介してシリンダ1内からリザーバRに排出される。そして、圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れに対して減衰部V2が、圧側室R2からリザーバRへ向かう作動油の流れに対して減衰部V3が、それぞれ抵抗を与える。これにより、圧側室R2内の圧力が上昇して圧側室R2と伸側室R1の圧力に差が生じて、油圧ダンパODは、収縮を抑制する圧側減衰力を発揮する。
つづいて、減衰部V1,V2,V3について説明する。減衰部V1,V2,V3は、ともに同一の構成の調圧弁PVと、調圧弁PVに並列配置されるリリーフ弁RVとを備えている。調圧弁PVは、ばねで附勢されて常閉型に設定されており、上流の圧力に応じて開弁度合を変化させて、作動油の流れに抵抗を与えるようになっている。ここで、減衰部V1,V2,V3を通過する流量は、油圧ダンパODが伸縮する際の伸縮速度に比例する。よって、油圧ダンパODの伸縮速度が低速域にある場合には、減衰部V1,V2,V3を通過する流量は少なく、伸縮速度が高速域にある場合には前記流量は多く、伸縮速度が低速域と高速域の中間である中速域にある場合には、前記流量は中程度となる。そして、調圧弁PVの単体の圧力流量特性は、図4に示すように、油圧ダンパODの伸縮速度が低速域にある場合には、伸縮速度の上昇に対して圧力の増加割合が小さい特性を示す。また、調圧弁PVの単体の圧力流量特性は、他方、伸縮速度が低速域と高速域の中間である中速域に達すると、伸縮速度の上昇に対して圧力が大きく増加する特性を示す。
なお、調圧弁PVは、たとえば、特許第5508883号に開示されている構造を採用すれば実現できる。具体的には、調圧弁PVは、図5に示すように、通路の途中に設けた弁座100と、通路中に移動自在に収容されて弁座100に離着座する弁体101と、弁体101を弁座100へ向けて附勢するばね102と、弁体101が弁座100からの後退量が所定量となると弁体101に衝合して弁体101の弁座100からのそれ以上の後退を規制するストッパ103とを備えればよい。このように構成された調圧弁PVは、伸縮速度が低速域では、上流の圧力によってばね102が押し縮められ弁体101が弁座100から離座して開弁し、伸縮速度の上昇に伴って弁体101の弁座100から後退量が増加する。このように、伸縮速度が低速域にある場合、伸縮速度の上昇によって開弁度合が大きくなるので、調圧弁PVの圧力流量特性は、図4に示すように、傾きが小さい特性を示す。他方、伸縮速度が上昇して中速域に達すると、弁体101の後退量が増加し、伸縮速度が中速域に達すると弁体101がストッパ103に衝合して弁体101のそれ以上の弁座100からの後退が規制される。このように、伸縮速度が中速域にある場合、伸縮速度が上昇しても開弁度合が一定のままとなるので、調圧弁PVの圧力流量特性は、図4に示すように、傾きが大きな特性を示す。よって、伸縮速度が低速域から中速域へ上昇すると、調圧弁PVは、傾きが大きくなって圧力上昇が大きくなる特性を示す。なお、伸縮速度が中速域にある場合における調圧弁PVの圧力流量特性は、流量の二乗に比例するオリフィス特性であっても流量に比例するポート特性であってもよい。
また、ストッパ103によって弁体101の後退量を規制する以外にも、弁体101よりも下流にオリフィスを設ける構造も採用できる。このような調圧弁PVでは、弁座100と弁体101との間の流路面積が所定値以上となると、弁座100と弁体101とで作動油の流れに与える抵抗よりもオリフィスが作動油の流れに与える抵抗の方が大きくなるように設定すればよい。前記所定値は、オリフィスの流路面積により設定でき、このように構成される調圧弁PVは、伸縮速度が低速域では、上流の圧力によってばね102が押し縮められ弁体101が弁座100から離座して開弁し、伸縮速度の上昇に伴って弁体101の弁座100から後退量が増加する。このように、伸縮速度が低速域にある場合、伸縮速度の上昇によって開弁度合が大きくなるので、調圧弁PVの圧力流量特性は、図4に示すように、伸縮速度の増加に対して圧力増加の小さい特性を示す。他方、伸縮速度が上昇して中速域に達すると、弁体101の後退量が増加し、流路面積が所定値以上となり、オリフィスの特性が表れるようになり、絞り部の流路面積は一定であるので、調圧弁PVは、伸縮速度の増加に対する圧力増加が大きくなる特性を示す。
他方、リリーフ弁RVは、前後の差圧が所定の開弁圧に達すると開弁するが、伸縮速度が高速域に達するまでは開弁しないようにその開弁圧が設定されている。リリーフ弁RVの開弁後の圧力流量特性は、伸縮速度の上昇に対して圧力の増加割合が小さい特性となっている。よって、調圧弁PVとリリーフ弁RVを組み合わせた減衰部V1,V2,V3は、図6に示す圧力流量特性を備える。具体的には、減衰部V1,V2,V3は、伸縮速度が低速域及び中速域にある場合には、調圧弁PVの特性が示し、伸縮速度が高速域に達するとリリーフ弁RVが開弁するのでリリーフ弁RVの特性を示す。
油圧ダンパODは、以上のように構成されるが、前述のように、油圧ダンパODが伸長すると、作動油は伸側通路4を介して伸側室R1から圧側室R2へ移動し、ロッド3のシリンダ1から退出した体積分の作動油が吸込通路11を介してリザーバRからシリンダ1内に供給される。そして、伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れに対して減衰部V1が抵抗を与えるので、これにより、油圧ダンパODは、伸長を抑制する伸側減衰力を発揮する。ここで、減衰部V1の圧力流量特性は、図6に示す通りである。油圧ダンパODが伸長する際に、減衰部V1を通過する流量は、伸長速度である伸縮速度に比例する。よって、油圧ダンパODが発揮する減衰力特性は、図2に示すように、減衰部V1の圧力流量特性と同様の特性となる。それゆえ、油圧ダンパODは、伸縮速度が低速域では減衰係数が小さく伸縮速度の上昇に対して減衰力の増加割合が小さい低減衰力を発揮する。また、油圧ダンパODは、伸縮速度が低速域から中速域へ増加すると減衰係数が切換わって大きくなり、伸縮速度の上昇に対して減衰力の増加割合が大きな減衰力特性を発揮する。さらに、油圧ダンパODは、伸縮速度が中速域から高速域へ増加するとリリーフ弁RVが開弁するので減衰係数が切換わって小さくなり、伸縮速度の上昇に対して減衰力の増加割合が小さくなるが高減衰力を発揮する。なお、伸縮速度が中速域にある場合、油圧ダンパODは、伸縮速度の増加に応じて、前記低減衰力から前記高減衰力へと変化する減衰力を発揮する。図2に示したところでは、低速域と中速域の境の第一速度Vaを60cm/sとし、中速域と高速域の境の第二速度Vbを90cm/sとしているが、これは一例であって、後述するように構造物の仕様等によって最適な値に設定すればよい。
他方、油圧ダンパODが収縮すると、作動油は圧側通路5を介して圧側室R2から伸側室R1へ移動し、ロッド3のシリンダ1内へ侵入した体積分の作動油が排出通路6を介してシリンダ1内からリザーバRに排出される。そして、圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れに対して減衰部V2が、圧側室R2からリザーバRへ向かう作動油の流れに対して減衰部V3が、それぞれ抵抗を与える。ここで、減衰部V2,V3の圧力流量特性も減衰部V1と同様に図6に示す通りである。よって、油圧ダンパODは、図2に示すように、伸縮速度が低速域では減衰係数が小さく伸縮速度の上昇に対して減衰力の増加割合が小さい低減衰力を発揮する。また、油圧ダンパODは、伸縮速度が低速域から中速域へ増加すると減衰係数が切換わって大きくなり、伸縮速度の上昇に対して減衰力の増加割合が大きな減衰力特性を発揮する。さらに、油圧ダンパODは、伸縮速度が中速域から高速域へ増加するとリリーフ弁RVが開弁するので減衰係数が切換わって小さくなり、伸縮速度の上昇に対して減衰力の増加割合が小さくなるが高減衰力を発揮する。なお、伸縮速度が中速域にある場合、油圧ダンパODは、伸縮速度の増加に応じて、前記低減衰力から前記高減衰力へと変化する減衰力を発揮する。
なお、前述の油圧ダンパODの具体的な構成は、図2に示す減衰力特性を実現するための構成の一例であって、減衰部V1,V2,V3の構成や回路構成を変更して油圧ダンパODを構成してもよい。
つづいて、構造物側取付装置SBは、構造物Sに取り付けられて免震用ダンパD1の荷重を受け止める反力壁15と、反力壁15に取り付けられて反力壁15を介して油圧ダンパODを構造物Sに連結するブラケット16とを備えている。ブラケット16は、油圧ダンパODのアイ型ブラケット9a内に挿入される軸16aを備えており、油圧ダンパODは軸16aを中心として水平方向への回転が許容されている。よって、油圧ダンパODは、構造物側取付装置SBによって、構造物Sに対して水平方向への回転が許容された状態で構造物Sに連結される。
地盤側取付装置GBは、地盤Gに取り付けられて免震用ダンパD1の荷重を受け止める固定側ブラケット17と、油圧ダンパODに連結されるダンパ側ブラケット18と、油圧バッファFDとを備えている。固定側ブラケット17は、地盤Gに固定されるベース17aと、ベース17aに取り付けられる反力壁17bとを備えている。また、ダンパ側ブラケット18は、油圧ダンパODのアイ型ブラケット3a内に挿入される軸18aを備えており、油圧ダンパODは軸18aを中心として水平方向への回転が許容されている。
そして、ダンパ側ブラケット18は、固定側ブラケット17のベース17aにガイド部材としてのリニアガイド19によって取り付けられている。リニアガイド19は、ベース17aに図1中左右方向に沿って取り付けられてガイドレール19aと、ガイドレール19aを走行するスライダ19bとを備えている。ダンパ側ブラケット18は、スライダ19bに取り付けられていて、ガイドレール19aに沿って往復可能となっている。よって、ダンパ側ブラケット18は、ガイド部材としてのリニアガイド19によって移動が案内されており、地盤Gに対して図1中左右方向に移動できる。なお、ガイド部材は、ダンパ側ブラケット18の地盤Gに対する移動を案内できればよいので、リニアガイド19以外の装置、たとえば、ロッドとロッドの外周に摺接するスライダとでなるガイド装置等を利用してもよい。
また、油圧バッファFDは、図7に示すように、シリンダ41と、シリンダ41内に摺動自在に挿入されてシリンダ41内を伸側室Raと圧側室Rbとに区画するピストン42と、シリンダ41内に移動自在に挿入されてピストン42に連結されるロッド43と、伸側室Raと圧側室Rbとを連通する伸側通路44と圧側通路45と、リザーバRcと、圧側室RbとリザーバRcとを連通する排出通路46と、伸側通路44と圧側通路45と排出通路46のそれぞれに設けたリリーフ弁47,48,49とを備えて構成される。
シリンダ41内は、ピストン42によって伸側室Raと圧側室Rbとに仕切られている。また、シリンダ41の外周側には、シリンダ40を覆う外筒50が設けられており、シリンダ41と外筒50との間の環状隙間でリザーバRcを形成している。外筒50の図7中左端は、内周にロッド43が挿通されてロッド43の軸方向の移動を案内する環状のロッドガイド51によって閉塞されている。ロッド43は、シリンダ40内に挿入されていて、一端がピストン42に連結されるとともに他端がシリンダ40外に突出している。ロッド43は、図7に示すように、ダンパ側ブラケット18に連結されている。
また、シリンダ41の図7中右端は、ボトム部材52にて閉塞され、外筒50の図7中右端は蓋53によって閉塞されている。シリンダ40は、ボトム部材52とともに、外筒50の両端に固定されるロッドガイド51と蓋53で挟持されて外筒50内に収容固定されている。蓋53は、図7に示すように、固定側ブラケット17における反力壁17bに連結されている。
伸側室Ra内と圧側室Rb内には、この場合、作動油が充填されており、リザーバRc内にも作動油が貯留されている。本例では、油圧バッファFDの作動媒体として作動油を使用しているが、作動油以外の液体を使用してもよく、水、水溶液等の使用も可能である。
ピストン42には、伸側室Raと圧側室Rbとを連通する伸側通路44と圧側通路45が設けられている。伸側通路44には、リリーフ弁47が設けられ、圧側通路45には、リリーフ弁48が設けられている。リリーフ弁47は、開弁すると伸側室Raから圧側室Rbへ通過する作動油の流れのみを許容しつつこの流れに対して抵抗を与え、伸側通路44を一方通行の通路に設定する。リリーフ弁48は、開弁すると圧側通路45を圧側室Rbから伸側室Raへ通過する作動油の流れのみを許容しつつこの流れに抵抗を与え、圧側通路45を一方通行の通路に設定している。なお、伸側通路44および圧側通路45は、本例では、ともに、ピストン42に設けられているが、設置箇所はピストン42に限られず、たとえば、シリンダ41外で伸側室Raと圧側室Rbを連通するように構成されてもよい。
ボトム部材52には、圧側室RbとリザーバRcとを連通する排出通路46と吸込通路54が設けられている。排出通路46には、リリーフ弁49が設けられている。リリーフ弁49は、開弁すると排出通路46を圧側室RbからリザーバRcへ通過する作動油の流れのみを許容しつつこの流れに対して抵抗を与え、排出通路46を一方通行の通路に設定している。吸込通路54には、リザーバRcから圧側室Rbへ向かう作動油の流れのみを許容するチェック弁55が設けられており、吸込通路54は、このチェック弁55によってリザーバRcから圧側室Rbへ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、排出通路46と吸込通路54は、本例では、ともに、ボトム部材52に設けられているが、設置箇所はボトム部材52に限られない。
上記のように構成された油圧バッファFDは、所定荷重以上の引張荷重或いは圧縮荷重を受けると伸縮して、減衰力を発揮する。具体的には、油圧バッファFDは、伸長する場合、ピストン42の図7中左方への移動によって伸側室Raが圧縮されて圧側室Rbが拡大されるので、作動油は伸側通路24を介して伸側室Raから圧側室Rbへ移動する。また、油圧バッファFDの伸長時には、ロッド43がシリンダ41から退出するため、ロッド43のシリンダ41から退出した体積分の作動油が吸込通路54を介してリザーバRcからシリンダ41内に供給される。そして、伸側室Raから圧側室Rbへ向かう作動油の流れに対してリリーフ弁47が抵抗を与えるので、伸側室Ra内の圧力が上昇して伸側室Raと圧側室Rbの圧力に差が生じ、これにより、油圧バッファFDは、伸長を抑制する伸側減衰力を発揮する。
また、油圧バッファFDは、収縮する場合、ピストン42の図7中右方への移動によって圧側室Rbが圧縮されて伸側室Raが拡大されるので、作動油は圧側通路45を介して圧側室Rbから伸側室Raへ移動する。また、油圧バッファFDの収縮時には、ロッド43がシリンダ41内に侵入するため、ロッド43のシリンダ21内へ侵入した体積分の作動油が排出通路46を介してシリンダ41内からリザーバRcに排出される。そして、圧側室Rbから伸側室Raへ向かう作動油の流れに対してリリーフ弁48が、圧側室RbからリザーバRcへ向かう作動油の流れに対してリリーフ弁49が、それぞれ抵抗を与える。これにより、圧側室Rb内の圧力が上昇して圧側室Rbと伸側室Raの圧力に差が生じて、油圧バッファFDは、収縮を抑制する圧側減衰力を発揮する。なお、油圧バッファFDが伸縮作動して発生する減衰力は、伸縮速度が同じ場合、油圧ダンパODが発生する減衰力よりも低くなるように設定されている。
他方、油圧バッファFDを伸縮させる方向の荷重が所定荷重未満の場合、リリーフ弁47,48,49が開弁しないので、伸縮不能となって剛体棒としてふるまう。
前述したように、油圧バッファFDの一端は、ダンパ側ブラケット18に固定的に取り付けられており、油圧バッファFDの他端は、固定側ブラケット17の反力壁17bに取り付けられている。そして、ダンパ側ブラケット18は、ガイド部材としてのリニアガイド19によって移動方向が図1中左右方向となる一方向に拘束されているので、油圧ダンパODと油圧バッファFDは、ダンパ側ブラケット18によって下支えされる。なお、油圧バッファFDは、ダンパ側ブラケット18と反力壁17bの双方に水平方向に回転可能に連結されてもよい。なお、本実施の形態では、油圧バッファFDの伸縮方向は、免震用ダンパD1を構造物Sと地盤Gとの間に取り付けた初期状態において、油圧ダンパODの伸縮方向と同一方向となるように設定されている。このようにすると、油圧ダンパODと油圧バッファFDの伸縮方向とが一致するので、免震用ダンパD1のストローク長を効率的に長くできるので好ましい。
このように構成された免震用ダンパD1は、以下のように動作する。まず、油圧ダンパODが発生する減衰力が所定荷重未満である場合の動作について説明する。この場合、油圧バッファFDに作用する引張或いは圧縮方向の荷重は、油圧ダンパODが発生する減衰力に等しいので、油圧バッファFDは伸縮せずに剛体棒として振る舞う。このような状況では、免震用ダンパD1が発揮する力は、油圧ダンパODが発生する減衰力に等しくなる。対して、油圧ダンパODが発生する減衰力が所定荷重以上になると、油圧バッファFDに作用する引張或いは圧縮方向の荷重も所定荷重以上となるので、油圧バッファFDが伸縮するようになり免震用ダンパD1が発生する力は油圧バッファFDが発揮する減衰力に等しくなる。
よって、油圧ダンパODのみが伸縮する場合には免震用ダンパD1は、油圧ダンパODによって減衰力を発生し、油圧バッファFDが伸縮するようになると免震用ダンパD1は、油圧バッファFDによって減衰力を発生する。
油圧ダンパODと油圧バッファFDが直列に接続された免震用ダンパD1は、油圧ダンパODのストローク長に油圧バッファFDのストローク長を加算したストローク長を確保でき、その分だけ構造物Sの振動を抑制する減衰力を長く与えられるので仕事量が増え、より多くの振動エネルギを吸収できる。
よって、この免震用ダンパD1は、油圧ダンパODの大型化や重量化を招かずにストローク長を確保でき、長周期の地震動にも対応して構造物Sの振動を抑制できる。また、免震用ダンパD1の最大減衰力は、油圧バッファFDの減衰力に制限されるから、油圧ダンパODの破損、構造物側取付装置SBや地盤側取付装置GBの破損を防止でき、免震用ダンパD1自身の破損を防止できる。さらに、免震用ダンパD1の最大減衰力は、油圧バッファFDの減衰力に制限されるから、構造物側取付装置SBの構造物S側の取付部位や地盤側取付装置GBの地盤G側の取付部位といった免震用ダンパD1の周辺部材の破損も防止できる。
このように本発明の免震用ダンパD1は、油圧ダンパODと、油圧ダンパODを水平方向回転可能に構造物Sへ取り付ける構造物側取付装置SBと、油圧ダンパODを水平方向回転可能に地盤Gへ取り付ける地盤側取付装置GBとを備え、地盤側取付装置GBは、一方向に伸縮可能であって伸縮時に伸縮を妨げる減衰力を発揮する油圧バッファFDと、油圧バッファFDの一端を油圧ダンパODに連結するダンパ側ブラケット18と、油圧バッファFDの伸縮に伴うダンパ側ブラケット18の移動を案内するリニアガイド(ガイド部材)19とを備えている。
このように構成された免震用ダンパD1によれば、油圧ダンパODと油圧バッファFDとが直列配置されるのでストローク長を確保でき、ダンパ側ブラケット18の移動が案内されるとともに油圧ダンパODと油圧バッファFDの重量が支持されるので、油圧ダンパODと油圧バッファFDに曲げモーメントが入力されづらくなり、座屈を効果的に防止できる。また、油圧バッファFDを用いているので、構造物Sと地盤Gとの鉛直方向の距離が変化しても一定の減衰力を発揮できるので、免震用ダンパD1は、常に安定した減衰力を発揮できる。
さらに、ダンパ側ブラケット18がリニアガイド(ガイド部材)19によって移動方向が一方向に拘束されているので、地震動が終息すると、移動方向以外の方向への残留変位がないので、油圧ダンパODの取付姿勢が元通りとなる。
以上より、本発明の免震用ダンパD1によれば、長周期地震動にも対応できるストローク長を確保しつつ、座屈を防止でき、免震用ダンパD1および免震用ダンパD1の周辺部材の破損を防止しつつ安定した減衰力を発生できるとともに地震終息後の免震層における残留変位を抑制できる。
本実施の形態の油圧バッファFDは、所定荷重以上の荷重が作用すると伸縮するように設定されている。このように構成された免震用ダンパD1では、油圧バッファFDが伸縮し始めると油圧バッファFDによって減衰力を発揮するので、長周期地震動に対して油圧バッファFDが伸縮するようにすれば長周期地震動に対して減衰力を最適化できる。
なお、所定荷重は、油圧バッファFDが伸縮する荷重範囲と伸縮しない荷重範囲を確定する値であるが、この所定荷重を図2中の切換り点Pbにおける油圧ダンパODの減衰力よりも高くする場合、油圧ダンパODが発生する減衰力も大きくなるので、免震用ダンパD1が減衰力を発生することで構造物Sに作用する加速度が大きくはなるが、油圧ダンパODの破損を防止しつつも免震用ダンパD1が吸収する振動エネルギ量が多くなり、効果的に構造物Sの振動を抑制できる。つまり、油圧ダンパODの伸縮速度が第二速度Vbとなる場合に油圧ダンパODが発揮する減衰力よりも高い荷重に所定荷重を設定すると、油圧ダンパODの破損を防止しつつ、免震用ダンパD1が吸収する振動エネルギ量が多くなって構造物Sの振動を効果的に抑制できる。
これに対して、この所定荷重を図2中の切換り点Paにおける油圧ダンパODの減衰力よりも高くするとともに切換り点Pbにおける油圧ダンパODの減衰力よりも低くすることもできる。このようにする場合、免震用ダンパD1が発生する減衰力は低くなるので、免震用ダンパD1が減衰力を発揮することによって構造物Sに作用する加速度が低くなるので、地震動発生時における構造物S内の居住性を良好にできる。つまり、油圧ダンパODの伸縮速度が第一速度Va以上で第二速度Vb以下となる場合に油圧ダンパODが発揮する減衰力の範囲に所定荷重を設定すると、地震動の発生時の構造物S内の居住性が良好に維持できる。
前述したところから理解できるように、免震用ダンパD1が発生する減衰力は、油圧バッファFDが伸縮するようになると、油圧バッファFDが発生する減衰力に等しくなる。つまり、免震用ダンパD1が発生する減衰力は、油圧バッファFDが伸縮するようになると油圧バッファFDが発生する減衰力に等しくなって頭打ちとなる。したがって、免震用ダンパD1の減衰力特性を油圧ダンパODの減衰力特性と同様に伸縮速度に対して二つの切換り点を持ち、切換り点で減衰係数が変化するような特性としたい場合、油圧ダンパODの減衰部V1,V2,V3におけるリリーフ弁RVを省略してもよい。
また、油圧バッファFDは、所定荷重以上の荷重を受けると伸縮するようになるが、このような設定に代えて、荷重を受ければ伸縮して減衰力を発生するように設定されてもよい。このような油圧バッファFDの構成としては、たとえば、図7の油圧バッファFDのリリーフ弁47,48,49に加えて減衰弁を設ける構成とすればよい。そして、油圧バッファFDの減衰力特性は、高速域では油圧ダンパODの破損を生じないように頭打ちとなるような特性とするとよい。このように油圧バッファFDを設定しても、免震用ダンパD1は、油圧ダンパODと油圧バッファFDを直列に接続しているのでストローク長を確保でき、座屈を防止でき、油圧ダンパODの破損を防止しつつも安定した減衰力を発生できるとともに地震終息後の免震層における残留変位を抑制できる。なお、油圧ダンパODに減衰力を頭打ちにするリリーフ弁を設ける場合、油圧バッファFDにおけるリリーフ弁47,48,49を廃止してもよいし、油圧ダンパODおよび油圧バッファFDがともにリリーフ弁を持っていてもよい。
さらに、本実施の形態では、地盤側取付装置GBのみに油圧バッファFDを設けていたが、構造物側取付装置SBに油圧バッファFDを設けてもよい。この場合、図8に示す一実施の形態の第一変形例の免震用ダンパD2のように、構造物側取付装置SBは、構造物Sに取り付けられて免震用ダンパD2の荷重を受け止める固定側ブラケット25と、油圧ダンパODに連結されるダンパ側ブラケット26と、油圧バッファFDとを備えていればよい。
固定側ブラケット25は、構造物Sに固定されるベース25aと、ベース25aに取り付けられる反力壁25bとを備えている。また、ダンパ側ブラケット26は、油圧ダンパODのアイ型ブラケット9a内に挿入される軸26aを備えており、油圧ダンパODは軸26aを中心として水平方向への回転が許容されている。
そして、ダンパ側ブラケット26は、固定側ブラケット25のベース25aにガイド部材としてのリニアガイド27によって取り付けられている。ダンパ側ブラケット26は、ガイド部材としてのリニアガイド27によって移動が案内されており、構造物Sに対して図8中左右方向に移動できる。
このようにすれば、油圧バッファFDが地盤側取付装置GBと構造物側取付装置SBの両方に設けられるので、免震用ダンパD2のストローク長を確保しやすくなり、油圧バッファFDの長さを短くできるので免震用ダンパD2の座屈防止効果が高くなる。
このように、油圧バッファFDが地盤側取付装置GBと構造物側取付装置SBの両方に設ける場合、図9に示す一実施の形態の第二変形例における免震用ダンパD3ように、地盤側取付装置GBの油圧バッファFDの伸縮の可不可を切換える地盤側ロック装置30と、構造物側取付装置SBの油圧バッファFDの伸縮の可不可を切換える構造物側ロック装置31とを設け、地盤側取付装置GBの油圧バッファFDが伸縮し始める所定荷重の値と構造物側取付装置SBの油圧バッファFDが伸縮し始める所定荷重の値を異なるようにしてもよい。
地盤側ロック装置30は、ベース17aに設けられて、ダンパ側ブラケット18に設けた孔18bに出入り可能なピン30aと、ピン30aを孔18bに抜き差しする駆動源30bとを備えている。そして、地盤側ロック装置30は、ピン30aを孔18bに挿入してダンパ側ブラケット18の移動が不能とし、油圧バッファFDを伸縮不能なロック状態とする。反対に、地盤側ロック装置30は、ピン30aを孔18bから抜くとダンパ側ブラケット18の移動を可能とし、油圧バッファFDを伸縮可能なフリー状態とする。構造物側ロック装置31は、地盤側ロック装置30と同様に、ダンパ側ブラケット26に設けた孔26b内に出入り可能なピン31aと、ピン31aを孔26bに抜き差しする駆動源31bとを備えていればよい。なお、前述した地盤側ロック装置30と構造物側ロック装置31の具体構造は一例であって、地盤側ロック装置30と構造物側ロック装置31は、油圧バッファFDを伸縮可能な状態と伸縮不能な状態とに切換えできる装置であればよい。
このように構成された第二変形例における免震用ダンパD3では、構造物側取付装置SBにおける油圧バッファFDと、地盤側取付装置GBにおける油圧バッファFDを、それぞれ独立してロック状態とフリー状態に切換可能であって、構造物側取付装置SBにおける油圧バッファFDと地盤側取付装置GBにおける油圧バッファFDの減衰力が異なっている。構造物側取付装置SBにおける油圧バッファFDをロックして地盤側取付装置GBにおける油圧バッファFDをフリーとする場合と、構造物側取付装置SBにおける油圧バッファFDをフリーとして地盤側取付装置GBにおける油圧バッファFDをロックする場合とで、免震用ダンパD2の最大減衰力と変位に対する減衰力の特性を変更できる。よって、このように構成された免震用ダンパD3によれば、地震動に応じて減衰力の特性を変更でき、構造物Sの振動を効果的に抑制できる。なお、地盤側ロック装置30と構造物側ロック装置31の駆動源30bの制御にあたっては、地震動が大きければ減衰力を大きくする必要があるので、たとえば、地震計または変位計で地震動を検知し、検知した地震動の大きさに応じて地盤側ロック装置30と構造物側ロック装置31を制御すればよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形及び変更が可能である。