以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1~図32は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。以下の実施の形態およびその変形例では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクの製造方法を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本発明を適用することができる。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
(蒸着装置)
まず、対象物に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置90について、図1を参照して説明する。図1に示すように、蒸着装置90は、その内部に、蒸着源(例えばるつぼ94)、ヒータ96、及び蒸着マスク装置10を備える。また、蒸着装置90は、蒸着装置90の内部を真空雰囲気にするための排気手段を更に備える。るつぼ94は、有機発光材料などの蒸着材料98を収容する。ヒータ96は、るつぼ94を加熱して、真空雰囲気の下で蒸着材料98を蒸発させる。蒸着マスク装置10は、るつぼ94と対向するよう配置されている。
(蒸着マスク装置)
以下、蒸着マスク装置10について説明する。図1に示すように、蒸着マスク装置10は、蒸着マスク20と、蒸着マスク20を支持するフレーム15と、を備える。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように、蒸着マスク20をその面方向に引っ張った状態で支持する。蒸着マスク装置10は、図1に示すように、蒸着マスク20が、蒸着材料98を付着させる対象物である基板、例えば有機EL基板92に対面するよう、蒸着装置90内に配置される。以下の説明において、蒸着マスク20の面のうち、有機EL基板92側の面を第1面20aと称し、第1面20aの反対側に位置する面を第2面20bと称する。
蒸着マスク装置10は、図1に示すように、有機EL基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面に配置された磁石93を備えていてもよい。磁石93を設けることにより、磁力によって蒸着マスク20を磁石93側に引き寄せて、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができる。
図3は、蒸着マスク装置10を蒸着マスク20の第1面20a側から見た場合を示す平面図である。図3に示すように、蒸着マスク装置10は、平面視において略矩形状の形状を有する複数の蒸着マスク20を備え、各蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向D1における一対の端部26a,26bにおいて、フレーム15に固定されている。
蒸着マスク20は、蒸着マスク20を貫通する複数の貫通孔25が形成された金属板を含む。るつぼ94から蒸発して蒸着マスク装置10に到達した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する。これによって、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98を有機EL基板92の表面に成膜することができる。
図2は、図1の蒸着装置90を用いて製造した有機EL表示装置100を示す断面図である。有機EL表示装置100は、有機EL基板92と、パターン状に設けられた蒸着材料98を含む画素と、を備える。
なお、複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク20が搭載された蒸着装置90をそれぞれ準備し、有機EL基板92を各蒸着装置90に順に投入する。これによって、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に有機EL基板92に蒸着させることができる。
ところで、蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される場合がある。この場合、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と有機EL基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、有機EL基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
このような課題を解決するため、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数が、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、有機EL基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20およびフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、蒸着マスク20を構成する金属板の材料として、30質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む鉄合金を用いることができる。ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上且つ38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上且つ34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、38質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。
なお蒸着処理の際に、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92の温度が高温には達しない場合は、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数を、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値にする必要は特にない。この場合、蒸着マスク20を構成する材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル-コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
(蒸着マスク)
次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。図3に示すように、蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向D1における一対の端部(第1端部26a及び第2端部26b)を構成する一対の耳部(第1耳部17a及び第2耳部17b)と、一対の耳部17a,17bの間に位置する中間部18と、を備えている。
(耳部)
まず、耳部17a,17bについて詳細に説明する。耳部17a,17bは、蒸着マスク20のうちフレーム15に固定される部分である。本実施の形態において、中間部18と一体的に構成されている。なお、耳部17a,17bは、中間部18とは別の部材によって構成されていてもよい。この場合、耳部17a,17bは、例えば溶接によって中間部18に接合される。
(中間部)
次に、中間部18について説明する。中間部18は、第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22の周囲に位置し、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。有効領域22は、蒸着マスク20のうち、有機EL基板92の表示領域に対面する領域である。
図3に示すように、中間部18は、蒸着マスク20の長手方向D1に沿って所定の間隔を空けて配列された複数の有効領域22を含む。一つの有効領域22は、一つの有機EL表示装置100の表示領域に対応する。このため、図1に示す蒸着マスク装置10によれば、有機EL表示装置100の多面付蒸着が可能である。
図3に示すように、有効領域22は、例えば、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有する。なお図示はしないが、各有効領域22は、有機EL基板92の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。例えば各有効領域22は、円形状の輪郭を有していてもよい。
以下、有効領域22について詳細に説明する。図4は、蒸着マスク20の第2面20b側から有効領域22を拡大して示す平面図である。図4に示すように、図示された例において、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。貫通孔25の一例について、図5~図7を主に参照して更に詳述する。図5~図7はそれぞれ、図4の有効領域22のV-V方向~VII-VII方向に沿った断面図である。
図5~図7に示すように、複数の貫通孔25は、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側となる第1面20aから、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側となる第2面20bへ貫通している。図示された例では、後に詳述するように、蒸着マスク20の法線方向Nにおける一方の側となる金属板21の第1面21aに第1凹部30がエッチングによって形成され、蒸着マスク20の法線方向Nにおける他方の側となる金属板21の第2面21bに第2凹部35が形成される。第1凹部30は、第2凹部35に接続され、これによって第2凹部35と第1凹部30とが互いに通じ合うように形成される。貫通孔25は、第2凹部35と、第2凹部35に接続された第1凹部30とによって構成されている。
図5~図7に示すように、蒸着マスク20の第2面20bの側から第1面20aの側へ向けて、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第2凹部35の開口面積は、しだいに小さくなっていく。同様に、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第1凹部30の開口面積は、蒸着マスク20の第1面20aの側から第2面20bの側へ向けて、しだいに小さくなっていく。
図5~図7に示すように、第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されている。接続部41は、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第1凹部30の壁面31と、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第2凹部35の壁面36とが合流する張り出し部の稜線によって、画成されている。そして、接続部41は、蒸着マスク20の平面視において貫通孔25の開口面積が最小になる貫通部42を画成する。
図5~図7に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側の面、すなわち、蒸着マスク20の第1面20a上において、隣り合う二つの貫通孔25は、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間している。すなわち、後述する製造方法のように、蒸着マスク20の第1面20aに対応するようになる金属板21の第1面21a側から当該金属板21をエッチングして第1凹部30を作製する場合、隣り合う二つの第1凹部30の間に金属板21の第1面21aが残存するようになる。
同様に、図5及び図7に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側、すなわち、蒸着マスク20の第2面20bの側においても、隣り合う二つの第2凹部35が、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間していてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に金属板21の第2面21bが残存していてもよい。以下の説明において、金属板21の第2面21bの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分のことを、トップ部43とも称する。このようなトップ部43が残るように蒸着マスク20を作製することにより、蒸着マスク20に十分な強度を持たせることができる。このことにより、例えば取り扱い中などに蒸着マスク20が破損してしまうことを抑制することができる。なおトップ部43の幅βが大きすぎると、蒸着工程においてシャドーが発生し、これによって蒸着材料98の利用効率が低下することがある。従って、トップ部43の幅βが過剰に大きくならないように蒸着マスク20が作製されることが好ましい。例えば、トップ部43の幅βが2μm以下であることが好ましい。なおトップ部43の幅βは一般的に、蒸着マスク20を切断する方向に応じて変化する。例えば、図5及び図7に示すトップ部43の幅βは互いに異なることがある。この場合、いずれの方向で蒸着マスク20を切断した場合にもトップ部43の幅βが2μm以下になるよう、蒸着マスク20が構成されていてもよい。
なお図6に示すように、場所によっては隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に、金属板21の第2面21bが残存していない場所が存在していてもよい。また、図示はしないが、第2面21bの全域にわたって隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。
図1に示すようにして蒸着マスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、図5に二点鎖線で示すように、蒸着マスク20の第1面20aが、有機EL基板92に対面し、蒸着マスク20の第2面20bが、蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置する。したがって、蒸着材料98は、次第に開口面積が小さくなっていく第2凹部35を通過して有機EL基板92に付着する。図5において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から有機EL基板92に向けて有機EL基板92の法線方向Nに沿って移動するだけでなく、有機EL基板92の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98の多くは、貫通孔25を通って有機EL基板92に到達するよりも前に、第2凹部35の壁面36に到達して付着する。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくし、これによって、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31の高さを小さくすることが好ましいと考えられる。すなわち、蒸着マスク20を構成するための金属板21として、蒸着マスク20の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みtの小さな金属板21を用いることが好ましいと言える。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の厚みtは、85μm以下に、例えば5μm以上且つ85μm以下に設定される。なお厚みtは、周囲領域23の厚み、すなわち蒸着マスク20のうち第1凹部30および第2凹部35が形成されていない部分の厚みである。従って厚みtは、金属板21の厚みであると言うこともできる。
図5において、貫通孔25の最小開口面積を持つ部分となる接続部41と、第2凹部35の壁面36の他の任意の位置と、を通過する直線L1が、蒸着マスク20の法線方向Nに対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、壁面36に到達させることなく可能な限り有機EL基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。角度θ1を大きくする上では、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることの他にも、上述のトップ部43の幅βを小さくすることも有効である。
図7において、符号αは、金属板21の第1面21aの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分(以下、リブ部とも称する)の幅を表している。リブ部の幅αおよび貫通部42の寸法r
2は、有機EL表示装置の寸法および表示画素数に応じて適宜定められる。表1に、5インチの有機EL表示装置において、表示画素数、および表示画素数に応じて求められるリブ部の幅αおよび貫通部42の寸法r
2の値の一例を示す。
限定はされないが、本実施の形態による蒸着マスク20は、450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合に特に有効なものである。以下、図8を参照して、そのような高い画素密度の有機EL表示装置を作製するために求められる蒸着マスク20の寸法の一例について説明する。図8は、図5に示す蒸着マスク20の貫通孔25およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。
図8においては、貫通孔25の形状に関連するパラメータとして、蒸着マスク20の第1面20aから接続部41までの、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った方向における距離、すなわち第1凹部30の壁面31の高さが符号r1で表されている。さらに、第1凹部30が第2凹部35に接続する部分における第1凹部30の寸法、すなわち貫通部42の寸法が符号r2で表されている。また図8において、接続部41と、金属板21の第1面21a上における第1凹部30の先端縁と、を結ぶ直線L2が、金属板21の法線方向Nに対して成す角度が、符号θ2で表されている。
450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、貫通部42の寸法r2は、好ましくは10以上且つ60μm以下に設定される。これによって、高い画素密度の有機EL表示装置を作製することができる蒸着マスク20を提供することができる。好ましくは、第1凹部30の壁面31の高さr1は、6μm以下に設定される。
次に、図8に示す上述の角度θ2について説明する。角度θ2は、金属板21の法線方向Nに対して傾斜するとともに接続部41近傍で貫通部42を通過するように飛来した蒸着材料98のうち、有機EL基板92に到達することができる蒸着材料98の傾斜角度の最大値に相当する。なぜなら、接続部41を通って角度θ2よりも大きな傾斜角度で飛来した蒸着材料98は、有機EL基板92に到達するよりも前に第1凹部30の壁面31に付着するからである。従って、角度θ2を小さくすることにより、大きな傾斜角度で飛来して貫通部42を通過した蒸着材料98が有機EL基板92に付着することを抑制することができ、これによって、有機EL基板92のうち貫通部42に重なる部分よりも外側の部分に蒸着材料98が付着してしまうことを抑制することができる。すなわち、角度θ2を小さくすることは、有機EL基板92に付着する蒸着材料98の面積や厚みのばらつきの抑制を導く。このような観点から、例えば貫通孔25は、角度θ2が45度以下になるように形成される。なお図8においては、第1面21aにおける第1凹部30の寸法、すなわち、第1面21aにおける貫通孔25の開口寸法が、接続部41における第1凹部30の寸法r2よりも大きくなっている例を示した。すなわち、角度θ2の値が正の値である例を示した。しかしながら、図示はしないが、接続部41における第1凹部30の寸法r2が、第1面21aにおける第1凹部30の寸法よりも大きくなっていてもよい。すなわち、角度θ2の値は負の値であってもよい。
ところで、図3に示すように、蒸着マスク20は、上述したように、第1端部26aを構成する第1耳部17aから第2端部26bを構成する第2耳部17bにわたって、長手方向D1(第1方向)に延びるように形成されている。ここで、長手方向D1は、母材55(図10参照)を圧延する際の搬送方向に平行な方向であり、複数の有効領域22が配列された蒸着マスク20の長手方向である。なお、搬送という用語は、後述するようにロール・ツー・ロールによる母材55の搬送を意味するものとして用いている。また、後述する幅方向D2(第2方向)は、金属板21や長尺金属板64の面方向において、長手方向D1に直交する方向である。そして、蒸着マスク20は、長手方向D1に延び、幅方向D2の中心位置に配置された中心軸線ALを有している。中心軸線ALは、幅方向D2における貫通孔25の個数が奇数の場合には、幅方向D2の中央の貫通孔25の中心点を通るようになる。一方、中心軸線ALは、幅方向D2における貫通孔25の個数が偶数の場合には、幅方向D2の中央近傍で互いに隣り合う2つの貫通孔25の間の中間点を通るようになる。
本実施の形態による蒸着マスク20は、図9に示すように、後述するP1点からQ1点までの寸法をX1とし、P2点からQ2点までの寸法をX2とし、所定値をα
Xとしたとき、
であり、かつ、
を満たしている。
このうち式(1)の左辺は、所定値と寸法X1との差と、所定値と寸法X2との差との平均値の絶対値を意味している。式(2)の左辺は、寸法X1と寸法X2の差の絶対値を意味している。
ここで、P1点およびQ1点は、蒸着マスク20の中心軸線ALの一側(図9における左側)に設けられており、長手方向D1に沿って互いに離間している。P2点およびQ2点は、蒸着マスク20の中心軸線ALの他側(図9における右側)に設けられており、長手方向D1に沿って互いに離間している。P1点とP2点は、蒸着時に中心軸線ALに対して互いに対称に配置されている。より具体的には、P1点とP2点とは、蒸着時に中心軸線ALに対して互いに対称に配置されることが意図された点であって、設計時では中心軸線ALに対して互いに対称に配置される点である。同様に、Q1点とQ2点は、蒸着時に中心軸線ALに対して互いに対称に配置されている。
本実施の形態では、P1点、Q1点、P2点およびQ2点は、第1耳部17aと第2耳部17bとの間に設けられた、対応する上述の貫通孔25の中心点に位置付けられている。すなわち、本実施の形態では、複数の有効領域22は、最も第1耳部17aの側に配置された第1有効領域22Aと、最も第2耳部17bの側に配置された第2有効領域22Bと、を有している。P1点およびP2点は、第1有効領域22Aに形成された貫通孔25の中心点に位置付けられている。そして、P1点およびP2点に対応する貫通孔25は、第1有効領域22Aの複数の貫通孔25のうち最も第1耳部17aの側に形成されている。一方、Q1点およびQ2点は、第2有効領域22Bに形成された貫通孔25の中心点に位置付けられている。そして、Q1点およびQ2点に対応する貫通孔25は、第2有効領域22Bの複数の貫通孔25のうち最も第2耳部17bの側に形成されている。寸法X1は、後述するステージ81等に静置された蒸着マスク20のP1点とQ1点との間の直線距離を意味しており、寸法X2は、蒸着マスク20のP2点とQ2点との間の直線距離を意味している。ステージ81等に静置された蒸着マスク20は、後述するようにC字状に湾曲する(図28参照)が、詳細は後述する。なお、P1点およびQ1点に対応する貫通孔25は、最も第1側縁27aの側に位置付けられており、P2点およびQ2点に対応する貫通孔25は、最も第2側縁27bの側に位置付けられている。
式(1)に示された所定値αXは、設計値(または仕様値)であってもよい。この場合、αXは、寸法X1の設計値であり、寸法X2の設計値でもある。設計時には、P1点、Q1点、P2点およびQ2点が、蒸着マスク20の中心軸線ALに対して対称に位置付けられるため、寸法X1と寸法X2とは同一になるからである。ここで、設計値とは、フレーム15に張設された場合に貫通孔25が所望の位置(蒸着目標位置)に配置されることを意図して設定された数値であって、非張設時の数値である。
次に、蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
金属板の製造方法
はじめに、蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法について説明する。
(圧延工程)
はじめに図10に示すように、ニッケルを含む鉄合金から構成された母材55を準備し、この母材55を、一対の圧延ロール56a,56bを含む圧延装置56に向けて、矢印D1で示す方向に沿って搬送する。一対の圧延ロール56a,56bの間に到達した母材55は、一対の圧延ロール56a,56bによって圧延され、この結果、母材55は、その厚みが低減されるとともに、搬送方向に沿って伸ばされる。これによって、厚みt0の板材64Xを得ることができる。図10に示すように、板材64Xをコア61に巻き取ることによって巻き体62を形成してもよい。厚みt0の具体的な値は、好ましくは上述のように5μm以上且つ85μm以下となっている。
なお図10は、圧延工程の概略を示すものに過ぎず、圧延工程を実施するための具体的な構成や手順が特に限られることはない。例えば圧延工程は、母材55を構成するインバー材の結晶配列を変化させる温度以上の温度で母材を加工する熱間圧延工程や、インバー材の結晶配列を変化させる温度以下の温度で母材を加工する冷間圧延工程を含んでいてもよい。また、一対の圧延ロール56a,56bの間に母材55や板材64Xを通過させる際の向きが一方向に限られることはない。例えば、図10及び図11において、紙面左側から右側への向き、および紙面右側から左側への向きで繰り返し母材55や板材64Xを一対の圧延ロール56a,56bの間に通過させることにより、母材55や板材64Xを徐々に圧延してもよい。
(スリット工程)
その後、板材64Xの幅が所定の範囲内になるよう、圧延工程によって得られた板材64Xの幅方向における両端をそれぞれ所定の範囲にわたって切り落とすスリット工程を実施してもよい。このスリット工程は、圧延に起因して板材64Xの両端に生じ得るクラックを除去するために実施される。このようなスリット工程を実施することにより、板材64Xが破断してしまう現象、いわゆる板切れが、クラックを起点として生じてしまうことを防ぐことができる。
(アニール工程)
その後、圧延によって板材64X内に蓄積された残留応力(内部応力)を取り除くため、図11に示すように、アニール装置57を用いて板材64Xをアニールし、これによって長尺金属板64を得る。アニール工程は、図11に示すように、板材64Xや長尺金属板64を搬送方向(長手方向)に引っ張りながら実施されてもよい。すなわち、アニール工程は、いわゆるバッチ式の焼鈍ではなく、搬送しながらの連続焼鈍として実施されてもよい。
好ましくは上述のアニール工程は、非還元雰囲気や不活性ガス雰囲気で実施される。ここで非還元雰囲気とは、水素などの還元性ガスを含まない雰囲気のことである。「還元性ガスを含まない」とは、水素などの還元性ガスの濃度が4%以下であることを意味している。また不活性ガス雰囲気とは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスが90%以上存在する雰囲気のことである。非還元雰囲気や不活性ガス雰囲気でアニール工程を実施することにより、上述のニッケル水酸化物が長尺金属板64の第1面64aや第2面64bに生成されることを抑制することができる。
アニール工程を実施することにより、残留歪がある程度除去された、厚みt0の長尺金属板64を得ることができる。なお厚みt0は通常、蒸着マスク20の厚みtに等しくなる。
なお、上述の圧延工程、スリット工程およびアニール工程を複数回繰り返すことによって、厚みt0の長尺の金属板64を作製してもよい。また図11においては、アニール工程が、長尺金属板64を長手方向に引っ張りながら実施される例を示したが、これに限られることはなく、アニール工程を、長尺金属板64がコア61に巻き取られた状態で実施してもよい。すなわちバッチ式の焼鈍が実施されてもよい。なお、長尺金属板64がコア61に巻き取られた状態でアニール工程を実施する場合、長尺金属板64に、巻き体62の巻き取り径に応じた反りの癖がついてしまうことがある。従って、巻き体62の巻き径や母材55を構成する材料によっては、長尺金属板64を長手方向に引っ張りながらアニール工程を実施することが有利である。
(切断工程)
その後、長尺金属板64の幅方向における両端をそれぞれ所定範囲にわたって切り落とし、これによって、長尺金属板64の幅を所望の幅に調整する切断工程を実施する。このようにして、所望の厚みおよび幅を有する長尺金属板64を得ることができる。
〔検査工程〕
その後、得られた長尺金属板64の急峻度の傾きを検査する検査工程を実施する。図12は、図10および図11に示す工程によって得られた長尺金属板64を示す斜視図である。図12に示すように、長尺金属板64は、その長手方向D1における長さがその幅方向D2の位置に応じて異なることに起因する波打ち形状を少なくとも部分的に有している。図12において、長尺金属板64の幅方向D2の側縁が符号64eで表されている。
長尺金属板64に表れている波打ち形状について説明する。図13(a)(b)(c)(d)はそれぞれ、図12のa-a線、b-b線、c-c線およびd-d線に沿った断面図である。図12のa-a線は、長尺金属板64の幅方向の中央部64cに沿って長手方向に延びる線であり、従って図13(a)は、長尺金属板64の幅方向の中央部64cにおける長尺金属板64の断面を示している。また図12のd-d線は、長尺金属板64の幅方向の側縁64eに沿って長手方向に延びる線であり、従って図13(d)は、長尺金属板64の幅方向の側縁64eにおける長尺金属板64の断面を示している。本実施の形態による長尺金属板64には中伸びが現れており、このため、幅方向の中央部64cにおいて長尺金属板64に現れる波打ち形状の程度は、中央部64cから少し離れた位置、例えば図12のb-b線の位置において長尺金属板64に現れる波打ち形状の程度よりも大きくなっている。また本実施の形態による長尺金属板64には耳伸びも現れており、このため、幅方向の側縁64eにおいて長尺金属板64に現れる波打ち形状の程度は、側縁64eから少し離れた位置、例えば図12のc-c線の位置において長尺金属板64に現れる波打ち形状の程度よりも大きくなっている。
検査工程においては、はじめに、長尺金属板64の幅方向の各位置における急峻度を算出する。ここで「急峻度」とは、長尺金属板64の波打ち形状の長手方向における周期Lに対する、波打ち形状の高さHの百分率(%)、すなわちH/L×100(%)のことである。「周期」とは、長尺金属板64の波打ち形状における、谷と谷との間の距離のことであり、「高さ」とは、波打ち形状の山の頂点から、谷と谷とを結ぶ直線までの距離のことである。
例えば図13(a)においては、図12のa-a線に沿って存在する波打ち形状の2つの山について、周期がそれぞれ符号La1およびLa2で示されており、高さがそれぞれ符号Ha1およびHa2で示されている。また図示はされていないが、急峻度を算出する際の、長尺金属板64の長手方向における対象範囲内には、図12のa-a線に沿ってさらに多数の波打ち形状の山が存在している。例えば、na個の山が存在していると仮定し、各山の周期をLanaで表し、各山の高さをHanaで表す(naは正の整数)。この場合、na個の山の急峻度はそれぞれ、Hana/Lana×100(%)となる。また、図12のa-a線に沿った位置における急峻度は、na個の山の急峻度の平均値、すなわちHana/Lana×100(%)(naは正の整数)の平均値として算出される。
図12のa-a線に沿った位置の場合と同様に、図12のb-b線、c-c線およびd-d線に沿った位置における急峻度はそれぞれ、Hbnb/Lbnb×100(%)(nbは正の整数)の平均値、Hcnc/Lcnc×100(%)(ncは正の整数)の平均値、およびHdnd/Ldnd×100(%)(ndは正の整数)の平均値として算出される。
長尺金属板64の波打ち形状の周期および高さを算出するための方法は特には限られない。例えば、図12のa-a線に沿った位置、すなわち中央部64cにおける長尺金属板64の波打ち形状の各山の周期Lanaおよび高さHanaを算出する場合、はじめに、対象物との間の距離を測定することができる測距装置を、幅方向D2の中央部64cで長尺金属板64の長手方向D1に沿って長尺金属板64上で走査し、これによって、長尺金属板64の表面の高さ位置を長手方向D1に沿って所定の間隔で測定する。この間隔は、例えば1mm~5mmの範囲内である。これによって、中央部64cにおける長尺金属板64の三次元プロファイルを取得することができる。また、三次元プロファイルを解析することにより、各山の周期Lanaおよび高さHanaを算出することができる。なお、各測定点の間を滑らかに結ぶ曲線を、三次元プロファイルとして採用してもよい。また、このような測定を、幅方向D2における位置を変えながら繰り返すことにより、幅方向D2の各位置における、長尺金属板64の波打ち形状の周期および高さを算出することができる。
図14は、長尺金属板64の幅方向D2の各位置において算出された急峻度を示すグラフである。図14においては、横軸が、長尺金属板64の幅方向D2における位置を示しており、縦軸が、急峻度を示している。なお図14においては、長尺金属板64の幅方向D2の各位置において算出された急峻度の値を滑らかに結んだ曲線CLが示されている。
図14の横軸の上段には、幅方向D2の中央部64cを原点とした場合の、幅方向D2における位置が、mmのオーダーで記されている。また図14の横軸の下段には、幅方向D2における位置の、長尺金属板64の全幅に対する比率が%で示されている。なお図14においては、蒸着マスク20を製造するための長尺金属板64として、500mmの全幅を有するものが用いられる場合について説明する。従って、例えば幅方向D2の中央部64cから+100mm離れた位置における比率は+20%となっている。また図14においては、図12のa-a線、b-b線、c-c線およびd-d線の位置における長尺金属板64の急峻度がそれぞれ符号A、B、CおよびDで示されている。
中伸びおよび耳伸びが生じている長尺金属板64においては、一般的に、図14に示すように、長尺金属板64の幅方向の中央部64c近傍において、急峻度の極大値が現れる(点A)。また、長尺金属板64の幅方向の中央部から一端側または他端側へ少し離れた位置に、急峻度の極小値が現れる(点B)。また、点Bから幅方向の一端部または他端部へ向かうにつれて、急峻度が増加していき(点C)、そして、幅方向の一端または他端において急峻度の値が最大になる(点D)。
長尺金属板64の幅方向D2の各位置において急峻度を算出した後、急峻度の傾きを算出する。急峻度の傾きとは、幅方向D2の第1位置における急峻度と、第2位置における急峻度との差を、第1位置と第2位置との距離で除算して得られる値である。例えば、急峻度の測定を行った幅方向D2に隣り合う2点間の急峻度の差を、この2点間の距離で除算することで急峻度の傾きが得られる。このため、この2点間の距離を短くすると、急峻度の傾きは、図14に示す急峻度の曲線CLの接線の傾きに相当する。
この算出された急峻度の傾きに基づいて、長尺金属板64の選別を実施する。ここでは、長尺金属板64の中央部分において急峻度の傾きの絶対値が6%/m以下である条件を満たす長尺金属板64のみを、後述する蒸着マスク20の製造工程において使用するという、長尺金属板64の選別を実施する。ここで、急峻度の傾きの絶対値は、図14の横軸の変化量に対する急峻度の変化量の割合を示すため、急峻度の傾きの絶対値が比較的小さい場合には、幅方向D2における急峻度の変化率が小さく、波打ち形状の程度の変化が比較的小さいことを意味する。一方、急峻度の傾きの絶対値が比較的大きい場合には、幅方向D2における急峻度の変化率が大きく、波打ち形状の程度の変化が比較的大きいことを意味する。このため、急峻度の傾きの絶対値が6%/m以下である条件を満たす長尺金属板64は、幅方向D2における波打ち形状の程度の変化が比較的小さくなり、そのような長尺金属板64が、ここでは選定されることが好ましい。
なお図14において、長尺金属板64の幅方向において、長尺金属板64は、中央部分と、一端側部分と、他端側部分と、に区分けされている。長尺金属板64の中央部分が符号R1で示されており、中央部分R1よりも長尺金属板64の幅方向における一端側に位置する一端側部分が符号R2で表されており、中央部分R1よりも長尺金属板64の幅方向における他端側に位置する他端側部分が符号R3で表されている。中央部分R1は、切断工程後の長尺金属板64の幅の60%を占める部分として定義されている。一端側部分R2および他端側部分R3は、切断工程後の長尺金属板64の幅に対する占める割合が等しくなっている。
中央部分R1は、蒸着マスク20を製造するために好適な長尺金属板64の有効エリアになっている。一般的に、長尺金属板64のうち側縁64eの側の部分は、蒸着マスク20を製造するには不適切な程度に急峻度の傾きの絶対値が高い。例えば、一端側部分R2および他端側部分R3を、それぞれ、長尺金属板64の幅の20%を占める部分とし、中央部分R1を、蒸着マスク20を製造するために適したエリアとして、長尺金属板64の幅の60%を占める部分とすることが好ましい。この場合、中央部分R1に、幅方向に複数の蒸着マスク20を割り付けることが可能になり、生産性を高めることができる。なお、長尺金属板64のうち側縁64eの側の部分の急峻度が良好であれば、中央部分R1が長尺金属板64の幅に対する占める割合は、60%を超えていてもよい。また、一端側部分R2および他端側部分R3は、切断工程後の長尺金属板64の幅に対する占める割合が等しくなくてもよい。すなわち、中央部分R1が、蒸着マスク20の幅方向において中心から一方の側に偏心していてもよい。さらに、長尺金属板64に、少なくとも1つの蒸着マスク20を割り付けることができれば、長尺金属板64の幅のうち中央部分R1が占める割合は、60%よりも小さくてもよい。
長尺金属板64の選別の具体例について説明する。選別にあたっては、長尺金属板64の幅の60%を占める中央部分R1における急峻度の傾きの絶対値の最大値が、6%/m以下であるか否かを確認する。例えば、図15に示すような長尺金属板64において、曲線CLの接線である直線LAの傾きと、直線LBの傾きとに着目する。直線LAと直線LBは、中央部分R1において急峻度の傾きの絶対値が高いと思われる部分における接線である。直線LAの傾きの絶対値よりも、直線LBの傾きの絶対値の方が大きい場合、直線LBの傾きの絶対値が、6%/m以下であれば、中央部分R1は、蒸着マスク20の製造に適したエリアとなる。すなわち、図15に示す長尺金属板64は、生産性を高めることができる良品と判定される。なお、図15に示す例において、他端側部分R3は、蒸着マスク20の製造に適さないエリアとなるため、他端側部分R3における急峻度の曲線CLの接線である直線LCの傾きは6%/mを超えていてもよい。
また、例えば、図16に示すような長尺金属板64において、急峻度の曲線CLの接線である直線LDの傾きと、直線LEの傾きと、直線LFの傾きとに着目する。直線LDと直線LEは、図15に示す中央部分R1に相当するエリアにおいて、急峻度の傾きの絶対値が高いと思われる部分における接線である。直線LDの傾きの絶対値と、直線LEの傾きの絶対値とが、いずれも6%/mを超える場合には、これらのエリアは、蒸着マスク20の製造に適さないエリアとなる。これに対して、直線LFの傾きの絶対値が、6%/m以下であれば、このエリアは、蒸着マスク20の製造に適したエリアとなり、このエリアが中央部分R1となる。
このような選別を実施することにより、長尺金属板64の圧延率が大きいことに起因して長尺金属板64に波打ち形状が現れている場合であっても、その波打ち形状の程度が、後の蒸着マスク20の製造工程において問題になるものであるかどうかを前もって判断することができる。これによって、長尺金属板64から作製される蒸着マスク20の生産効率や歩留りを向上させることができる。
なお、図14に示すような急峻度の曲線CLを有する、全幅500mmの長尺金属板64を得る方法が特に限られることはない。
例えば、母材55を圧延することにより、500mmを超える全幅、例えば700mmの全幅を有する長尺金属板を作製し、その後、当該長尺金属板の幅方向における両端を所定範囲にわたって切断する上述の切断工程を実施することにより、幅500mmの長尺金属板64を作製する。この際、切断工程前の、700mmの全幅を有する長尺金属板においては、図14において二点鎖線で示すように、その急峻度の傾きの絶対値が非常に大きくなる部分、例えば6%/mを超える部分が存在することが考えられる。また、比較的に小さな急峻度の傾きの絶対値を有している部分が、700mm幅の長尺金属板の中央からずれた部分に存在することも考えられる。この場合、700mm幅の長尺金属板の両端を所定範囲にわたって均等に切り落とすのではなく、700mm幅の長尺金属板の両端を不均等に切り落としてもよい。
例えば、切断工程の前に、700mmの全幅を有する長尺金属板の波打ち形状を観察する観察工程を実施する。この観察工程は、作業者の目視によって実施されてもよく、若しくは、上述の測距装置を用いて実施されてもよい。
この際、例えば、長尺金属板の一端側に、急峻度の傾きの絶対値が比較的に大きな領域が広域にわたって広がっていることが確認された場合、700mmの全幅を有する長尺金属板の一端側を他端側に比べて広域に切り落とすよう、切断工程を実施してもよい。例えば、一端側において150mmにわたって切り落とし、他端側において50mmにわたって切り落とす、ということが考えられる。
また、比較的に小さな急峻度の傾きの絶対値を有している部分が、700mm幅の長尺金属板の中央から一端側にずれた部分に広がっている場合、そのような小さな急峻度の傾きの絶対値を有する部分が、切断工程後の700mm幅の長尺金属板64の中央部分R1になるよう、切断工程を実施してもよい。例えば、一端側において50mmにわたって切り落とし、他端側において150mmにわたって切り落とす、ということが考えられる。
このように、切断工程において切り落とす長尺金属板の部分を、観察工程の結果に基づいて決定することにより、より理想的な急峻度プロファイルを有する長尺金属板64を得ることができる。
蒸着マスクの作製方法
次に、上述のようにして選別された長尺金属板64を用いて蒸着マスク20を作製する方法について、主に図17~図25を参照して説明する。以下に説明する蒸着マスク20の製造方法では、図17に示すように、長尺金属板64が供給され、この長尺金属板64に貫通孔25が形成され、さらに長尺金属板64を断裁することによって枚葉状の金属板21からなる蒸着マスク20が得られる。
より具体的には、蒸着マスク20の製造方法、帯状に延びる長尺の金属板64を供給する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺の金属板64に施して、長尺金属板64に第1面64aの側から第1凹部30を形成する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺金属板64に施して、長尺金属板64に第2面64bの側から第2凹部35を形成する工程と、を含んでいる。そして、長尺金属板64に形成された第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合うことによって、長尺金属板64に貫通孔25が作製される。図18~図25に示された例では、第1凹部30の形成工程が、第2凹部35の形成工程の前に実施され、且つ、第1凹部30の形成工程と第2凹部35の形成工程の間に、作製された第1凹部30を封止する工程が、さらに設けられている。以下において、各工程の詳細を説明する。
図17には、蒸着マスク20を作製するための製造装置60が示されている。図17に示すように、まず、長尺金属板64をコア61に巻き取った巻き体(金属板ロール)62が準備される。そして、このコア61が回転して巻き体62が巻き出されることにより、図17に示すように帯状に延びる長尺金属板64が供給される。なお、長尺金属板64は、貫通孔25を形成されて枚葉状の金属板21、さらには蒸着マスク20をなすようになる。
供給された長尺金属板64は、搬送ローラー72によって、エッチング装置(エッチング手段)70に搬送される。エッチング装置70によって、図18~図25に示された各処理が施される。なお本実施の形態においては、長尺金属板64の幅方向に複数の蒸着マスク20が割り付けられるものとする。すなわち、複数の蒸着マスク20が、長手方向において長尺金属板64の所定の位置を占める領域から作製される。この場合、好ましくは、蒸着マスク20の長手方向が長尺金属板64の圧延方向に一致するよう、複数の蒸着マスク20が長尺金属板64に割り付けられる。
まず、図18に示すように、長尺金属板64の第1面64a上および第2面64b上にネガ型の感光性レジスト材料を含むレジスト膜65c、65dを形成する。レジスト膜65c、65dを形成する方法としては、アクリル系光硬化性樹脂などの感光性レジスト材料を含む層が形成されたフィルム、いわゆるドライフィルムを長尺金属板64の第1面64a上および第2面64b上に貼り付ける方法が採用される。
次に、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにした露光マスク68a、68bを準備し、露光マスク68a、68bをそれぞれ図19に示すようにレジスト膜65c、65d上に配置する。露光マスク68a、68bとしては、例えば、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板が用いられる。その後、真空密着によって露光マスク68a、68bをレジスト膜65c、65dに十分に密着させる。なお感光性レジスト材料として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
その後、レジスト膜65c、65dを露光マスク68a、68b越しに露光する(露光工程)。さらに、露光されたレジスト膜65c、65dに像を形成するためにレジスト膜65c、65dを現像する(現像工程)。以上のようにして、図20に示すように、長尺金属板64の第1面64a上に第1レジストパターン65aを形成し、長尺金属板64の第2面64b上に第2レジストパターン65bを形成することができる。なお現像工程は、レジスト膜65c、65dの硬度を高めるための、または長尺金属板64に対してレジスト膜65c、65dをより強固に密着させるためのレジスト熱処理工程を含んでいてもよい。レジスト熱処理工程は、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気において、例えば100℃以上且つ400℃以下で実施される。
次に、図21に示すように、長尺金属板64の第1面64aのうち第1レジストパターン65aによって覆われていない領域を、第1エッチング液を用いてエッチングする第1面エッチング工程を実施する。例えば、第1エッチング液が、搬送される長尺金属板64の第1面64aに対面する側に配置されたノズルから、第1レジストパターン65a越しに長尺金属板64第1面64aに向けて噴射される。この結果、図21に示すように、長尺金属板64のうちの第1レジストパターン65aによって覆われていない領域で、第1エッチング液による浸食が進む。これによって、長尺金属板64の第1面64aに多数の第1凹部30が形成される。第1エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものが用いられる。
その後、図22に示すように、後の第2面エッチング工程において用いられる第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30が被覆される。すなわち、第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30が封止される。図22に示す例において、樹脂69の膜が、形成された第1凹部30だけでなく、第1面64a(第1レジストパターン65a)も覆うように形成されている。
次に、図23に示すように、長尺金属板64の第2面64bのうち第2レジストパターン65bによって覆われていない領域をエッチングし、第2面64bに第2凹部35を形成する第2面エッチング工程を実施する。第2面エッチング工程は、第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合い、これによって貫通孔25が形成されるようになるまで実施される。第2エッチング液としては、上述の第1エッチング液と同様に、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものが用いられる。
なお第2エッチング液による浸食は、長尺金属板64のうちの第2エッチング液に触れている部分において行われていく。従って、浸食は、長尺金属板64の法線方向N(厚み方向)のみに進むのではなく、長尺金属板64の板面に沿った方向にも進んでいく。ここで好ましくは、第2面エッチング工程は、第2レジストパターン65bの隣り合う二つの孔66aに対面する位置にそれぞれ形成された二つの第2凹部35が、二つの孔66aの間に位置するブリッジ部67aの裏側において合流するよりも前に終了される。これによって、図24に示すように、長尺金属板64の第2面64bに上述のトップ部43を残すことができる。
その後、図25に示すように、長尺金属板64から樹脂69が除去される。樹脂69は、例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、除去することができる。アルカリ系剥離液が用いられる場合、図25に示すように、樹脂69と同時にレジストパターン65a,65bも除去される。なお、樹脂69を除去した後、樹脂69を剥離させるための剥離液とは異なる剥離液を用いて、樹脂69とは別途にレジストパターン65a,65bを除去してもよい。
このようにして多数の貫通孔25が形成された長尺金属板64は、当該長尺金属板64を狭持した状態で回転する搬送ローラー72,72により、切断装置(切断手段)73へ搬送される。なお、この搬送ローラー72,72の回転によって長尺金属板64に作用するテンション(引っ張り応力)を介し、上述した供給コア61が回転させられ、巻き体62から長尺金属板64が供給されるようになっている。
その後、多数の貫通孔25が形成された長尺金属板64を切断装置73によって所定の長さおよび幅に切断することにより、多数の貫通孔25が形成された枚葉状の金属板21、すなわち蒸着マスク20が得られる。
蒸着マスクの良否判定方法
次に、蒸着マスク20の上述した寸法X1および寸法X2を測定して蒸着マスク20の良否を判定する方法について、図12および図26~図28を参照して説明する。ここでは、寸法X1および寸法X2を測定し、測定結果に基づいて、蒸着マスク20の良否を判定する方法について説明する。すなわち、寸法X1および寸法X2を測定することにより、蒸着マスク20の貫通孔25が設計通りに配置されているか否かを検知することができ、これによって、蒸着マスク20の貫通孔25の位置精度が所定の基準を満たすか否かを判定することができる。
ところで、厚みの小さな金属板21を得るためには、母材を圧延して金属板21を製造する際の圧延率を大きくする必要がある。しかしながら、圧延率が大きいほど、圧延に基づく変形の不均一さの程度が大きくなる。例えば、図12に示すように、長尺金属板64は、長手方向D1における長さが幅方向D2の位置に応じて異なることに起因する波打ち形状を少なくとも部分的に有している。例えば、長尺金属板64のうち長手方向D1に沿って延びる側縁64eには、波打ち形状が現れている。
一方、レジスト膜65c、65dを露光する上述の露光工程においては、真空吸着などによって露光マスクを長尺金属板64上のレジスト膜65c、65dに密着させる。このため、露光マスクとの密着により、図26に示すように、長尺金属板64の側縁64eの波打ち形状が圧縮され、長尺金属板64がほぼ平坦な状態になる。この状態で、図26において点線で示すように、長尺金属板64に設けられたレジスト膜65c、65dが所定のパターンで露光される。
露光マスクが長尺金属板64から取り外されると、長尺金属板64の側縁64eには、再び波打ち形状が現れる。図27は、エッチングされることによって複数の蒸着マスク20が幅方向D2に沿って割り付けられた状態の長尺金属板64を示す図である。図27では、長尺金属板64の中央部分R1に3つの蒸着マスク20が割り付けられている例が示されている。図27に示すように、割り付けられた3つの蒸着マスク20のうち少なくとも長尺金属板64の側縁64eに向かい合う蒸着マスク20は、波打ち形状が比較的大きい部分から形成される。図27において、符号27aは、長尺金属板64の側縁64eに対向するよう割り付けられた蒸着マスク20の側縁のうち、長尺金属板64の中央側に位置する側縁(以下、第1側縁と称する)を表す。また、図27において、符号27bは、第1側縁27aの反対側に位置し、長尺金属板64の側縁64eに対向する側縁(以下、第2側縁と称する)を表す。図27に示すように、長尺金属板64の側縁64eに対向する蒸着マスク20において、第2側縁27bの側の部分は、第1側縁27aの側の部分よりも波打ち形状が大きい部分から形成される。
図28は、長尺金属板64の側縁64eに対向していた蒸着マスク20を長尺金属板64から切り出すことによって得られた蒸着マスク20を示す平面図である。上述したように、蒸着マスク20の第2側縁27bの側の部分が、第1側縁27aの側の部分よりも波打ち形状が大きい部分から形成される場合には、第2側縁27bの側の部分の長手方向D1の長さが、第1側縁27aの側の部分の長手方向D1の長さよりも長くなる。すなわち、長手方向D1における第2側縁27bの寸法(第2側縁27bに沿った寸法)は、第1側縁27aの寸法(第1側縁27aに沿った寸法)よりも大きくなる。この場合、図28に示すように、蒸着マスク20には、第1側縁27a側から第2側縁27b側へ向かう方向において凸となるよう湾曲した形状が現れる。以下、このような湾曲形状を、C字形状とも称する。
本実施の形態では、蒸着マスク20の寸法X1および寸法X2の測定は、蒸着マスク20に張力を付与することなく行われる。以下、本実施の形態による良否判定方法について説明する。
(良否判定システム)
図29は、蒸着マスク20の寸法を測定して良否を判定する良否判定システムを示す図である。図29に示すように、良否判定システム80は、蒸着マスク20が載置されるステージ81と、寸法測定装置82と、判定装置83と、を備える。
寸法測定装置82は、例えば、ステージ81の上方に設けられ、蒸着マスク20を撮像して画像を作成する測定カメラ(撮像部)を含む。ステージ81及び寸法測定装置82のうちの少なくとも一方は、互いに対して移動可能になっている。本実施の形態においては、ステージ81が静止し、寸法測定装置82が、ステージ81に平行で互いに直交する2方向と、ステージ81に垂直な方向に移動可能になっている。このことにより、寸法測定装置82を、所望の位置に移動させることが可能に構成されている。なお、寸法測定装置82が静止し、ステージ81が移動可能であるよう、良否判定システム80を構成してもよい。
蒸着マスク20の寸法の測定は、蒸着マスク20のうち測定対象となる部分の寸法の大小に応じて、異なる方法で行うことができる。
測定対象の寸法が比較的小さい場合(例えば、数百μm以下の場合)には、寸法測定装置82の測定カメラの視野内に測定対象を収めることができるため、測定カメラを移動させることなく、測定対象の寸法を測定する。
一方、測定対象の寸法が比較的大きい場合(例えば、mmオーダ以上の場合)には、寸法測定装置82の測定カメラの視野内に測定対象を収めることが困難になるため、測定カメラを移動させて測定対象の寸法を測定する。この場合、寸法測定装置82は、測定カメラにより撮像された画像と、測定カメラの移動量(ステージ81が移動する場合にはその移動量)とに基づいて、蒸着マスク20の寸法を算出する。
判定装置83は、寸法測定装置82による測定結果に基づいて、上述した式(1)と式(2)とが満たされているか否かを判定する。判定装置83は、演算装置及び記憶媒体を含む。演算装置は、例えばCPUである。記憶媒体は、例えばROMやRAMなどのメモリーである。判定装置83は、記憶媒体に記憶されたプログラムを演算装置が実行することによって、蒸着マスク20の寸法の判定処理を実施する。
(寸法測定方法)
はじめに、蒸着マスク20の寸法X1および寸法X2を測定する測定工程を実施する。
この場合、まず、ステージ81上に、蒸着マスク20が静かに載置される。この際、蒸着マスク20は、ステージ81に固定されることなく、載置される。すなわち、蒸着マスク20には張力が付与されない。ステージ81上に載置された蒸着マスク20は、例えば図28に示すようにC字状に湾曲し得る。
続いて、ステージ81上の蒸着マスク20の寸法X1および寸法X2(図28参照)が測定される。この場合、図29に示す上述した寸法測定装置82の測定カメラにより、蒸着マスク20のP1点、Q1点、P2点およびQ2点が撮像されて、撮像された画像と、測定カメラが移動した場合にはその移動量とに基づいて、P1点、Q1点、P2点およびQ2点の座標を算出する。そして、算出された各点の座標に基づいて、P1点からQ1点までの直線距離である寸法X1と、P2点からQ2点までの直線距離である寸法X2とが算出される。
(判定方法)
次に、寸法測定装置82による測定結果に基づいて、算出された寸法X1と寸法X2とが、上述した式(1)と式(2)が満たされているか否かを判定する判定工程を実施する。すなわち、上述のように算出された寸法X1と寸法X2とが上述した式(1)に代入されるとともに、αXに設計値が代入され、式(1)の左辺が絶対値として算出される。この左辺の値が、40μm以下であるか否かが判定される。同様にして、算出された寸法X1と寸法X2とが上述した式(2)に代入され、式(2)の左辺が絶対値として算出され、この左辺の値が、60μm以下であるか否かが判定される。式(1)および式(2)を満たした蒸着マスク20が良品(合格)と判定され、後述する蒸着マスク装置10で用いられる。
ここで、良品と判定された蒸着マスク20は、P1点からQ1点までの寸法X1と、P2点からQ2点までの寸法X2とが、上述した式(1)および式(2)を満たしている。
このことにより、詳細は後述するが、式(1)によって、寸法X1と寸法X2とが所定条件を満たして良品と判定された蒸着マスク20において、寸法X1および寸法X2の設計値からのずれが低減できている。このため、蒸着マスク20の張設時に、幅方向D2の縮み量を所望の範囲内に収めることができる。また、式(2)によって、寸法X1と寸法X2との差が低減できている。このため、張設時に、長手方向D1の伸びが幅方向D2において異なることを抑制でき、貫通孔25の幅方向D2での位置ずれを抑制できる。この結果、良品と判定された蒸着マスク20を用いて蒸着マスク装置10を作製することにより、蒸着マスク装置10における蒸着マスク20の各貫通孔25の位置精度を向上させることができ、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる。
また、良品と判定された蒸着マスク20のP1点およびP2点は、最も第1耳部17aの側に配置された第1有効領域22Aの対応する貫通孔25の中心点に位置付けられており、Q1点およびQ2点は、最も第2耳部17bの側に配置された第2有効領域22Bの対応する貫通孔25の中心点に位置付けられている。このことにより、長手方向D1において比較的離れた2点間の距離に基づいて蒸着マスク20の良品判定を行うことができ、蒸着マスク20の良品判定精度を向上させることができる。
さらに、良品と判定された蒸着マスク20のP1点およびP2点は、最も第1耳部17aの側に形成された、対応する貫通孔25の中心点に位置付けられており、Q1点およびQ2点は、最も第2耳部17bの側に形成された、対応する貫通孔25の中心点に位置付けられている。このことにより、長手方向D1においてより一層離れた2点間の距離に基づいて蒸着マスク20の良品判定を行うことができ、蒸着マスク20の良品判定精度を向上させることができる。
蒸着マスク装置の製造方法
次に、良品と判定された蒸着マスク20を用いて蒸着マスク装置10を製造する方法について説明する。この場合、図3に示すように、複数の蒸着マスク20がフレーム15に張設される。より具体的には、蒸着マスク20に、当該蒸着マスク20の長手方向D1の張力を付与し、張力が付与された状態の蒸着マスク20の耳部17a,17bを、フレーム15に固定する。耳部17a,17bはフレーム15に、例えばスポット溶接で固定される。
ここで、上述した検査工程において、金属板64の幅の60%を示す中央部分R1において急峻度の傾きの絶対値が6%/m以下である条件を満たす長尺金属板64のみが、蒸着マスク20の製造工程において使用されている。このことにより、金属板64のうち蒸着マスク20が形成される部分(すなわち中央部分R1)において、蒸着マスク20の幅方向D2における急峻度の変化率が比較的小さく、波打ち形状の程度の変化が比較的小さくなっている。このため、このような選別が実施されない場合に比べて、各蒸着マスク20における急峻度のばらつきが、ひいては有効領域22の各貫通孔25の位置のばらつきが一様に低減されている。
蒸着マスク20をフレーム15に張設する際、蒸着マスク20には長手方向D1の張力が付与される。この場合、図30に示すように、蒸着マスク20の第1端部26aが、中心軸線ALの両側に配置された第1クランプ86aおよび第2クランプ86bによって把持されるとともに、第2端部26bが、中心軸線ALの両側に配置された第3クランプ86cおよび第4クランプ86dによって把持される。第1クランプ86aには第1引張部87aが連結され、第2クランプ86bには第2引張部87bが連結されている。第3クランプ86cには第3引張部87cが連結され、第4クランプ86dには第4引張部87dが連結されている。蒸着マスク20に張力を付与する場合には、第1引張部87aおよび第2引張部87bを駆動して、第3クランプ86cおよび第4クランプ86dに対して第1クランプ86aおよび第2クランプ86bを移動させることにより、長手方向D1において蒸着マスク20に張力T1、T2を付与することができる。この場合に蒸着マスク20に付与される張力は、第1引張部87aの張力T1と、第2引張部87bの張力T2との和になる。なお、各引張部87a~87dは、例えばエアシリンダを含んでいてもよい。また、第3引張部87cおよび第4引張部87dを用いることなく、第3クランプ86cおよび第4クランプ86dを移動不能にしてもよい。
蒸着マスク20に長手方向D1の張力T1、T2が付与されると、蒸着マスク20は長手方向D1で伸びるが、幅方向D2では縮む。張設時には、このようにして弾性変形する蒸着マスク20の全ての貫通孔25が、所望の位置(蒸着目標位置)に対して許容範囲内に位置付けられるように、第1引張部87aの張力T1と第2引張部87bの張力T2とが調整される。このことにより、蒸着マスク20の長手方向D1における伸びと幅方向D2における縮みを、局所的に調整することができ、各貫通孔25を許容範囲内に位置付けることができる。例えば、張力が付与されていない状態の蒸着マスク20が、図28に示すように第1側縁27aの側から第2側縁27bの側へ向かう方向において凸となるようにC字状に湾曲している場合、第1側縁27aの側の第1引張部87aの張力T1を第2引張部87bの張力T2よりも大きくしてもよい。このことにより、第1側縁27aの側の部分に、第2側縁27bの側の部分よりも大きな張力を付与することができる。このため、第1側縁27aの側の部分を、第2側縁27bの側の部分よりも多く伸ばすことができ、各貫通孔25を、許容範囲内に容易に位置付けることができる。これとは反対に、張力が付与されていない状態の蒸着マスク20が、第2側縁27bの側から第1側縁27aの側へ向かう方向において凸となるようにC字状に湾曲している場合、第2側縁27bの側の第2引張部87bの張力T2を第1引張部87aの張力T1よりも大きくしてもよい。このことにより、第2側縁27bの側の部分に、第1側縁27aの側の部分よりも大きな張力を付与することができる。このため、第2側縁27bの側の部分を、第1側縁27aの側の部分よりも多く伸ばすことができ、各貫通孔25を、許容範囲内に容易に位置付けることができる。
しかしながら、蒸着マスク20に付与する張力を局所的に調整する場合であっても、蒸着マスク20の形成された貫通孔25の位置精度によっては、各貫通孔25を許容範囲内に位置付けることが困難になる場合が考えられる。例えば、寸法X1と寸法X2が、設計値に対して大きくずれている場合には、蒸着マスク20の長手方向D1の伸びが大きくなって幅方向D2の縮みが大きくなったり、逆に、長手方向D1の伸びが少なくて幅方向D2の縮みが少なくなったりする。これによって、張設時に、各貫通孔25を、所望の位置(蒸着目標位置)に対して許容範囲内に位置付けることが困難になり得る。式(1)は、このような原因で張設時の各貫通孔25の位置不良が発生することを抑制するためのものである。
すなわち、本実施の形態のように、ステージ81等に静置された蒸着マスク20の寸法X1および寸法X2が式(1)を満たしていることにより、張設時における蒸着マスク20の長手方向D1の伸び量を所望の範囲内に収めることができる。このため、張設時における蒸着マスク20の幅方向D2の縮み量を所望の範囲内に収めることができる。この結果、寸法X1および寸法X2が式(1)を満たすことにより、張設時に各貫通孔25の位置調整を容易化させることができる。
また、一般的に、波打ち形状が形成された長尺金属板64から蒸着マスク20が形成されている場合にも、波打ち形状の程度によっては、張設時に各貫通孔25を所望の位置に位置付けることが困難になる場合も考えられる。長尺金属板64の幅方向D2における波打ち形状の程度の違いによって、幅方向D2において長手方向寸法が異なるからである。
この場合、寸法X1と寸法X2とが相違し、張設されていない状態では、蒸着マスク20は、図28に示すようなC字状に湾曲し得る。
例えば、図28に示すように湾曲している蒸着マスク20では、張設されていない状態では、寸法X1は寸法X2よりも短くなっている。このため、蒸着マスク20の張設時には、図31に示すように、寸法X1が、寸法X2と等しくなるように蒸着マスク20に引張力が付与される。この場合、第1側縁27aの側の部分が、第2側縁27bの側の部分よりも大きく伸び、蒸着マスク20の長手方向D1における中央位置が、第1側縁27aの側にずれ、これにより、貫通孔25が幅方向D2で変位し得る。また、寸法X1と寸法X2が等しくなるように張設した場合であっても、図32に示すように、蒸着マスク20の湾曲形状が反転する場合がある。この場合、第1側縁27aが凸状になるとともに第2側縁27bが凹状に湾曲する。この場合においても、貫通孔25が幅方向D2で変位し得る。
このようにして幅方向D2での貫通孔25の位置ずれが大きくなると、全ての貫通孔25を、所望の位置(蒸着目標位置)に対して許容範囲内に位置付けることが困難になり得る。式(2)は、このような原因で張設時の各貫通孔25の位置不良が発生することを抑制するためのものである。
すなわち、本実施の形態のように、ステージ81等に静置された蒸着マスク20の寸法X1および寸法X2が式(2)を満たしていることにより、蒸着マスク20の長手方向D1の長さが幅方向D2において異なることを抑制でき、張設時に、長手方向D1の伸びが幅方向D2において異なることを抑制できる。このため、張設時に、貫通孔25の幅方向D2での位置ずれを抑制できる。この結果、寸法X1および寸法X2が式(2)を満たすことにより、張設時に各貫通孔25を、許容範囲内に容易に位置付けることができる。
ところで、蒸着マスク20は、上述したように、波打ち形状が形成された長尺金属板64から形成される。このため、長尺金属板64の幅方向D2において波打ち形状の程度が大きく異なる場合には、その長尺金属板64から作製される蒸着マスク20の長手方向D1の伸びが、幅方向D2において異なり得る。この場合には、張設時に、蒸着マスク20の全ての貫通孔25を、所定の範囲内に位置付けることが困難になり得る。
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、急峻度の傾きの絶対値に基づいて予め選別された長尺金属板64の中央部分R1が用いられている。このため、このような選別が実施されない場合に比べて、長尺金属板64のうち各蒸着マスク20に割り付けられる部分の急峻度のばらつきが低減され、幅方向D2における波打ち形状の程度が大きく異なることを回避できる。このことにより、蒸着マスク20の幅方向D2において、長手方向D1の長さが幅方向D2において異なることを抑制できる。この場合、張設時に、蒸着マスク20の長手方向D1の伸びが幅方向D2において異なることを抑制できる。このため、張設時において有効領域22の各貫通孔25の位置のばらつきが一様に低減され、各貫通孔25を、蒸着目標位置に対して許容範囲内に容易に位置付けることができる。この結果、張設時の各貫通孔25の位置の調整を容易化させることができる。
蒸着方法
次に、得られた蒸着マスク装置10を用いて有機EL基板92上に蒸着材料98を蒸着させる方法について説明する。
この場合、まず、図1に示すように、蒸着マスク20が有機EL基板92に対向するようフレーム15を配置する。続いて、磁石93を用いて蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させる。その後、この状態で、蒸着材料98を蒸発させて、蒸着マスク20の貫通孔25を通して有機EL基板92に蒸着材料98を飛来させる。このことにより、所定のパターンで蒸着材料98を有機EL基板92に付着させることができる。
このように本実施の形態によれば、蒸着マスク20が形成され得る中央部分R1における急峻度の傾きの絶対値が、6%/m以下である長尺金属板64が用いられている。このことにより、中央部分R1において、波打ち形状の程度の変化を小さくすることができ、蒸着マスク20の長手方向D1の長さが、幅方向D2において異なることを抑制できる。このため、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる。この結果、高い位置精度で蒸着材料98を基板92に蒸着させることができ、高精細な有機EL表示装置100を作製することが可能になる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(蒸着マスクの製法の変形例)
なお、上述の本実施の形態においては、圧延された金属板をエッチングすることによって作製された蒸着マスク20の寸法を測定する例を示した。しかしながら、上述の寸法測定方法及び良否判定システム80を用いて、めっき処理などのその他の方法によって作製された蒸着マスク20の寸法を測定することもできる。
(寸法X1、X2の変形例)
なお、上述の本実施の形態においては、P1点およびP2点が、最も第1耳部17aの側に配置された第1有効領域22Aにおいて、最も第1耳部17aの側に形成された貫通孔25の中心点に位置付けられている例を示した。しかしながら、このことに限られることはなく、P1点およびP2点が位置付けられる貫通孔25は、最も第1耳部17aの側に配置された第1有効領域22Aにおける任意の貫通孔25であってもよい。また、P1点およびP2点が位置付けられる貫通孔25は、第1有効領域22A以外の有効領域22の貫通孔25であってもよい。Q1点およびQ2点についても同様である。また、P1点およびQ1点は、蒸着マスク20の長手方向D1に沿って配置された任意の2点であれば、貫通孔25に位置付けられていなくてもよい。例えば、蒸着マスク20の第1面20aまたは第2面20bに形成された任意の凹部であってもよく、あるいは、蒸着材料98の通過を意図していない他の貫通孔、さらには蒸着マスク20の外形寸法であってもよい。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(第1巻き体および第1サンプル)
はじめに、インバー材から構成された母材に対して上述の圧延工程、スリット工程、アニール工程および切断工程を実施することにより、長尺の金属板が巻き取られた複数の巻き体を製造した。
具体的には、はじめに、第1熱間圧延工程および第1冷間圧延工程をこの順で行う第1圧延工程を実施し、次に、長尺金属板の幅方向における両端をそれぞれ3~5mmの範囲にわたって切り落とす第1スリット工程を実施し、その後、500℃で60秒にわたって長尺金属板を連続焼鈍する第1アニール工程を実施した。さらに、第1アニール工程を経た長尺金属板に対して、第2冷間圧延工程を含む第2圧延工程を実施し、次に、長尺金属板の幅方向における両端をそれぞれ3~5mmの範囲にわたって切り落とす第2スリット工程を実施し、その後、500℃で60秒にわたって長尺金属板を連続焼鈍する第2アニール工程を実施した。これによって、所望の厚みを有する、約600mm幅の長尺金属板64を得た。その後、長尺金属板64の幅方向における両端をそれぞれ所定範囲にわたって切り落とし、これによって、長尺金属板64の幅を所望の幅、具体的には500mm幅に最終的に調整する切断工程を実施した。
なお、上述の冷間圧延工程においては、バックアップローラーを用いた圧力調整を行った。具体的には、長尺金属板64の形状が左右対称になるよう、圧延機のバックアップローラー形状、および、圧力を調整した。また、冷間圧延工程は、圧延油、例えば灯油を用いて長尺金属板64をクーリングしながら行った。冷間圧延工程の後には、炭化水素系の洗浄剤で長尺金属板を洗浄する洗浄工程を行った。洗浄工程の後には、上述のスリット工程、アニール工程および切断工程を実施した。
その後、シャーを用いて巻き体の先端部を切り取ることによって、幅500mm、投影長さ700mmの金属板からなる第1サンプル200を得た。なお「投影長さ」とは、金属板を真上から見た場合、すなわち金属板の波打ち形状を無視した場合の金属板の長さ(圧延方向における寸法)のことである。また第1サンプル200の幅とは、幅方向における第1サンプル200の一対の端部201,202の間の距離のことである。第1サンプル200の一対の端部201,202は、圧延工程およびアニール工程によって得られる金属板の幅方向における両端を所定範囲にわたって切り落とす切断工程を経ることによって形成される部分であり、ほぼ真っ直ぐに延びている。
次に図33に示すように、第1サンプル200を定盤210上に水平に載置した。その際、第1サンプル200に部分的な凹みが生じないよう、第1サンプル200を静かに定盤210上に置いた。次に、第1サンプル200の一端201において、投影長さ500mmの領域における第1サンプル200の急峻度を測定した。なお投影長さ500mmの領域とは、投影長さ700mmの第1サンプル200から、サンプル200の長手方向における両端203,204から100mm以内にある領域を除いた領域のことである。両端203,204から100mm以内にある領域を測定対象から除いたのは、シャーによる切断に起因する第1サンプル200のゆがみの影響が急峻度の測定結果に及ぶことを防ぐためである。図33において、投影長さ500mmの領域が一点鎖線で示されている。
測定においては、はじめに、図33において矢印sで示すように、レーザー光を利用した測距装置を第1サンプル200の長手方向に沿って第1サンプル200に対して相対的に移動させて、長手方向における第1サンプル200の一端201での表面の高さ位置を連続的に測定し、長尺金属板64のプロファイルを滑らかな曲線で描いた。その後、得られた曲線に基づいて、曲線に含まれる複数の山の各々について、周期および高さを算出した。次に、各山の急峻度を算出し、そして、各山の急峻度の平均値を算出した。このようにして、一端201における第1サンプル200の急峻度を算出した。
第1サンプル200の表面の高さ位置を測定するための測距装置としては、レーザー顕微鏡であるレーザーテック株式会社製のOPTELICS H1200を使用した。なお測定の際に移動される要素は測距装置または第1サンプル200のいずれでもよいが、ここでは、定盤210をステージとして、OPTELICS H1200から構成されたヘッドをXY方向に移動させるための櫓を組むことで自動測定を行った。ステージとしては、500mm×500mmのオートステージを用いた。XY方向におけるオートステージの制御には、レーザー干渉計を利用した。
次に、一端201から他端202側へ2mm変位した位置において、第1サンプル200の急峻度を同様に測定した。第1サンプル200の幅方向における位置を所定のピッチpで変えながら上述の測定を繰り返し実施することにより、幅方向の各位置における第1サンプル200の急峻度を測定した。ここでは、ピッチpを2mmとした。得られた測定結果は、一端201を含む上述の一端側部分R2における急峻度の測定結果、他端202を含む上述の他端側部分R3における急峻度の測定結果、および、中央部を含む上述の中央部分R1における急峻度の測定結果を含んでいる。なお中央部分R1は、一端201を基準とする場合、一端201からの距離が100~400mmの範囲内となっている部分のことである。また一端側部分R2は、一端201を基準とする場合、一端201からの距離が0~100mmの範囲内となっている部分のことである。また他端側部分R3は、一端201を基準とする場合、一端201からの距離が400~500mmの範囲内となっている部分のことである。
次に、第1サンプル200の急峻度の傾きを算出した。急峻度の測定を行った幅方向D2に隣り合う2点間の急峻度の差を、この2点間の距離で除算することで急峻度の傾きを算出した。
(第2~第17巻き体および第2~第17サンプル)
第1巻き体の場合と同様にして、インバー材から構成された母材から、第2巻き体~第17巻き体を製造した。さらに、第1巻き体の場合と同様にして、第2巻き体~第17巻き体に関して、各巻き体から取り出されたサンプルの急峻度の傾きを測定した。
このような第1~第17巻き体の長尺金属板64から、上述の蒸着マスクの製造方法を用いて蒸着マスク20をそれぞれ作製した。すなわち、貫通孔25を形成し、切断装置73によって切断して蒸着マスク20を得た。ここでは、幅寸法が67mmの蒸着マスク20を作製した。
図34には、製造された各蒸着マスク20の急峻度差と、急峻度の傾きの絶対値を示している。ここで示す急峻度は、各サンプルにおいて、長尺金属板64の形態で上述のようにして測定された急峻度を用いている。図34に示す急峻度差は、P1点とQ1点とを通る位置における急峻度と、P2点とQ2点とを通る位置における急峻度との差を示している。各位置における急峻度は、長尺金属板64の形態で得られた幅方向D2における各位置での急峻度から、最も近接した位置における急峻度を用いている。急峻度の傾きの絶対値は、急峻度差を、P1点とP2点との間の距離(もしくはQ1点とQ2点との間の距離、ここでは、65mm)で除算して得た。
次に、上述の各蒸着マスク20について、寸法X1および寸法X2を測定した。
まず、図29に示すように、蒸着マスク20をステージ81上に水平に載置した。その際、蒸着マスク20に部分的な凹みが生じないよう、蒸着マスク20を静かにステージ81上に置いた。次に、蒸着マスク20のP1点からQ1点までの寸法X1を測定するとともに、P2点からQ2点までの寸法X2を測定した。その測定結果を、αX-X1と、αX-X2として図34に示した。ここでは、αXが600mmとなるような貫通孔25の中心に、P1点とQ1点、およびP2点とQ2点を設定した。
測定された寸法X1と寸法X2を、上述した式(1)に代入して、式(1)の左辺を算出した。その算出結果を、|αX-(X1+X2)/2|として図34に示した。図34においては、上述した17個のサンプルからそれぞれ得られた17個の蒸着マスク20について寸法測定を行った。第1~第17サンプルのうち、第1~第7サンプルでは、式(1)を満たしていた。
また、蒸着マスク20の寸法X1と寸法X2を、上述した式(2)に代入して、式(2)の左辺を算出した。その算出結果を、|X1-X2|として図34に示した。図34に示すように、第1~第17サンプルのうち、第1~第3サンプルおよび第8~第13サンプルでは、式(2)を満たしていた。
従って、図34において総合判定結果で示すように、第1~第17サンプルのうち、第1~第3サンプルでは、式(1)および式(2)を満たしており、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる蒸着マスク20であると判定された。
ここで、上述した式(1)および式(2)を満たすことが、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる理由について説明する。
まず、式(1)について説明する。上述したように、式(1)は、寸法X1および寸法X2が設計値に対してずれることを原因として、張設時に各貫通孔25の位置不良が発生することを抑制するためのものである。すなわち、寸法X1および寸法X2が式(1)を満たすことにより、張設時における蒸着マスク20の長手方向D1の伸び量を所望の範囲内に収めることができ、これにより、張設時における蒸着マスク20の幅方向D2の縮み量を所望の範囲内に収めることができる。そこで、式(1)を満たすことが張設時の貫通孔25の位置精度向上に寄与することを確かめるために、張設時における蒸着マスク20の幅寸法Y1(図28参照)に着目する。この寸法Y1は、長手方向D1における中央位置での幅寸法に相当する。この中央位置での幅方向D2の縮み量が、最も大きくなり得る。なお、図28では、張力が付与されていない蒸着マスク20が示されているが、便宜上、張設時における寸法Y1を図28に示している。後述する寸法Y2についても同様である。
次に、式(2)について説明する。上述したように、式(2)は、寸法X1と寸法X2とが互いにずれることを原因として張設時に各貫通孔25の位置不良が発生することを抑制するためのものである。すなわち、寸法X1および寸法X2が式(2)を満たすことにより、張設時に、長手方向D1の伸びが幅方向D2において異なることを抑制でき、貫通孔25の幅方向D2での位置ずれを抑制できる。そこで、式(2)を満たすことが張設時の貫通孔25の位置精度向上に寄与することを確かめるために、蒸着マスク20のC字状に湾曲した第1側縁27aの凹み深さ寸法Y2に着目する。この寸法Y2は、長手方向D1における中央位置での凹み深さ寸法に相当する。より具体的には、蒸着マスク20の第1端部26aと第1側縁27aとの交点PY1と、第2端部26bと第1側縁27aとの交点PY2と、を結ぶ線分から、第1側縁27aのうち長手方向D1における中央位置までの距離を寸法Y2とする。このような寸法Y2は、第1側縁27aの最大の凹み深さを示すことになる。なお、図32に示すように張設時の蒸着マスク20の湾曲形状が反転した場合には、寸法Y2は、第2側縁27bの凹み深さ寸法とすればよい。
以下に、寸法Y1および寸法Y2の測定方法について説明する。
まず、寸法X1および寸法X2の測定が終了した後、蒸着マスク20に張力を付与した。より具体的には、まず、蒸着マスク20の第1端部26aおよび第2端部26bを、例えば図30に示すようなクランプ86a~86dで保持して、第1引張部87a~第4引張部87dから蒸着マスク20に張力を付与した。付与した張力は、各貫通孔25が、長手方向D1において、所望の位置(蒸着目標位置)に対して許容範囲内に位置付けられるような力とした。続いて、張力が付与された蒸着マスク20を図29に示すステージ81上に固定した。次に、ステージ81上に固定された蒸着マスク20の寸法Y1および寸法Y2を測定した。寸法Y1の測定結果を、αY-Y1として図34に示した。ここでαYは、長手方向D1における中央位置での蒸着マスク20の幅寸法の設計値とした。なお、αYは、張設時の設計値である。また、寸法Y2の測定結果を、Y2として図34に示した。
測定された寸法Y1および寸法Y2を評価した。
寸法Y1については、αY-Y1が閾値(±4.0μm)以下であるか否かで評価した。ここで、閾値は、蒸着によって形成された画素の発光効率や、隣り合う他の色の画素との混色を防止可能な範囲内で位置ずれを許容できる値として設定した。なお、蒸着マスク20に長手方向D1の張力を付与した場合、長手方向D1における中央位置で蒸着マスク20の幅寸法が低減し得る。この場合、長手方向D1における中央位置で、第1側縁27aと第2側縁27bとが互いに近づくように変形する。そこで、第1側縁27aおよび第2側縁27bにおける変形の許容値をそれぞれ2μmと考え、その合計として、閾値を±4.0μmとした。図34に示すサンプルのうち第1~第7サンプルでは、αY-Y1が閾値以下であった。第1~第7サンプルでは、蒸着マスク20の幅寸法Y1のずれが抑制されているため、張設時における貫通孔25の幅方向D2の位置ずれを抑制できる。一方、これらの第1~第7サンプルは、上述したように式(1)を満たしている。このため、式(1)を満たすことが、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができると言える。
とりわけ、寸法Y1は、長手方向D1における中央位置での蒸着マスク20の幅寸法を示している。この中央位置は、貫通孔25が最も幅方向D2に位置ずれし得る位置である。このため、この中央位置におけるαY-Y1が閾値以下である場合には、長手方向D1において中央位置以外の位置における貫通孔25の幅方向D2の位置ずれをより一層抑制することができると言える。
寸法Y2については、寸法Y2が、閾値(3.0μm)以下であるか否かで評価した。ここで、閾値は、蒸着によって形成された画素の発光効率や、隣り合う他の色の画素との混色を防止可能な範囲内で位置ずれを許容できる値として設定した。図34に示すサンプルのうち第1~第3サンプルおよび第8~第13サンプルでは、寸法Y2が閾値以下であった。このことにより、第1~第3サンプルおよび第8~第13サンプルでは、蒸着マスク20の第1側縁27aの凹みの程度が小さくなるため、張設時における貫通孔25の幅方向D2の位置ずれを抑制できる。一方、これらの第1~第3サンプルおよび第8~第13サンプルは、上述したように式(2)を満たしている。このため、式(2)を満たすことが、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができると言える。
とりわけ、寸法Y2は、長手方向D1における中央位置での蒸着マスク20の第1側縁27aの凹みの深さ寸法を示している。この中央位置は、貫通孔25が最も幅方向D2に位置ずれし得る位置である。このため、この中央位置における寸法Y2が閾値以下である場合には、長手方向D1において中央位置以外の位置における貫通孔25の幅方向D2の位置ずれをより一層抑制することができると言える。
また、図34に示されているように、第1~第3サンプルおよび第8~第13サンプルでは、急峻度の傾きの絶対値が、6.0%/m以下となっている。このことにより、急峻度の傾きの絶対値が6.0%/m以下の金属板64を用いて蒸着マスク20を作製することにより、寸法X1と寸法X2とのばらつきを低減できることがわかる。すなわち、急峻度の傾きの絶対値と、寸法X1および寸法X2に、相関関係が存在すると考えられ、急峻度の傾きの絶対値に着目して金属板64を選別することにより、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができると言える。