JP7274906B2 - 自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板 - Google Patents
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Description
このような初期さびを、ステンレス鋼板の美麗な外観を損ねることなく防止する方法としては、一般にステンレス鋼板の表面にクリア塗装を施すことが知られている。
[1]ステンレス鋼板と、該ステンレス鋼板の少なくとも一方の面に形成され、平均膜厚が2.00μm以上10.00μm以下のクリア塗装皮膜と、を有し、前記クリア塗装皮膜の表面は凹凸面であり、該凹凸面において隣り合う2つの凸部の間隔が50μm以上500μm以下であり、前記凹凸面において隣り合う凸部と凹部の高低差が2.00μm以下であり、前記クリア塗装皮膜の表面における、液滴量が1.8μLである純水または海水との接触角が90°以上である自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板。
[2]前記クリア塗装皮膜が有機物粒子を含む[1]に記載の自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板。
図1は、本実施形態の自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、「自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板」を、「クリア塗装ステンレス鋼板」と略すこともある。
図1に示すように、本実施形態のクリア塗装ステンレス鋼板10は、ステンレス鋼板20と、ステンレス鋼板20の一方の面(上面)20aに形成されたクリア塗装皮膜30と、を有する。
ステンレス鋼板20の種類は、特に限定されず、例えば、SUS430、SUS430LX、SUS304、SUS316、SUS317J、SUS445J1、SUS445J2、SUS447J1などからなる鋼板が挙げられる。これらの中でも、屋外での使用においては、耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼SUS304、SUS316、SUS317Jや、耐食性に優れた二相ステンレス鋼、オーステナイト系と比較して熱膨張性が少ないため、近年、大型屋根に多く採用されている、高Cr、高Mo添加フェライト系ステンレス鋼SUS445J1、SUS445J2、SUS447J1などからなる鋼板が好ましい。
クリア塗装皮膜30の平均膜厚は、2.00μm以上10.00μm以下である。
クリア塗装皮膜30の平均膜厚が2.00μm未満の場合、自動車排気ガスの熱により、クリア塗装皮膜30が変質し、クリア塗装皮膜30による撥水効果が発揮されない。一方、クリア塗装皮膜30の平均膜厚が10.00μmを超える場合、自動車排気ガスの熱により、クリア塗装皮膜30の色調が不均一となり、外観が損なわれる。
クリア塗装皮膜30の平均膜厚は、クリア塗装ステンレス鋼板10の厚さ方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定される。クリア塗装皮膜30において、凹部32の最も深い点32aからステンレス鋼板20の一方の面20aまでの距離t1を3点測定し、その3点の平均値をクリア塗装皮膜30の平均膜厚とする。
隣り合う2つの凸部31の間隔d1が前記の範囲内であれば、後述する塩の析出によるクリア塗装皮膜30の劣化を防止することができる。また、隣り合う2つの凸部31の間隔d1が500μmを超えると、クリア塗装皮膜30の表面の色調が不均一となり、外観が損なわれる。
ここで、クリア塗装皮膜30の表面30aの走査型電子顕微鏡像を図2に示す。
隣り合う凸部31と凹部32の高低差h1が前記の範囲内であれば、後述する塩の析出によるクリア塗装皮膜30の劣化を防止することができる。また、隣り合う凸部31と凹部32の高低差h1が2.00μmを超えると、クリア塗装皮膜30の表面の色調が不均一となり、外観が損なわれる。
クリア塗装皮膜30の表面30aにおける、純水、ハロゲン化物水溶液または海水との接触角が90°以上であれば、クリア塗装皮膜30の表面30aに純水、ハロゲン化物水溶液または海水などの液滴が滞留することがなく、後述する塩の析出によるクリア塗装皮膜30の劣化を防止することができる。
一般にクリア塗装皮膜は、疎水性を有し、塗装表面は水や水溶液に対し撥水する。さらに、クリア塗装皮膜は、塗装表面の凹凸が大きい程、すなわち、塗装表面の粗さが大きくなる程、撥水性が向上する。本実施形態のクリア塗装ステンレス鋼板10では、隣り合う凸部31と凹部32の高低差h1が大きい程、撥水性が向上する。本実施形態において重要な耐初期さび性と撥水性については、撥水性が高い程、ステンレス鋼板20への水溶液の付着頻度が抑制され、クリア塗装皮膜30の劣化が抑制される。クリア塗装皮膜30の劣化は、ステンレス鋼板20への水溶液の到達を容易にし、ステンレス鋼板20の腐食を促進する。そのため、クリア塗装皮膜30の撥水性の向上は、耐初期さび性の向上に有効である。また、飛来鉄粉等に起因するもらいさびについても撥水性が高い程、洗い流し効果により鉄粉の付着を抑制できるため、もらいさびに起因する初期さびについても、撥水性の向上が有効である。また、本発明者らは、上記撥水性の臨界は、クリア塗装皮膜30の表面30aにおける、純水、ハロゲン化物水溶液または海水との接触角が90°以上であることを見出した。
そこで、本実施形態のクリア塗装ステンレス鋼板10では、塩の析出によるクリア塗装皮膜30の劣化を防止するために、隣り合う2つの凸部31の間隔d1、および、隣り合う凸部31と凹部32の高低差h1を上記の範囲に規定する。
有機物粒子の大きさ、含有量、種類は、クリア塗装皮膜30の透明性を著しく阻害するものでなければ、特に限定されない。
本実施形態において使用することが好ましい有機物粒子としては、潤滑剤として利用されているワックス類や金属石鹸が挙げられる。
金属石鹸としては、例えば、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などが挙げられる。
上記のワックス類や金属石鹸以外の有機物粒子も、使用できる。
また、有機物粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態の自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板の製造方法は、例えば、樹脂液 (クリア塗装皮膜30の樹脂成分を含む溶液もしくはエマルジョン)を含む塗料を調製する工程と、前記の塗料を、ダル仕上げされたステンレス鋼板20の一方の面20aに塗装して塗膜を形成する工程と、前記の塗膜を乾燥し、硬化して、ステンレス鋼板20の一方の面20aにクリア塗装皮膜30を形成する工程と、を有する。この自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板の製造方法により、自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板が製造される。
塗料に含まれる樹脂固形分に対する有機物粒子の含有量を調整することにより、クリア塗装皮膜30を構成する樹脂に対する有機物粒子の含有量を調整することができる。
塗料が上記の有機物粒子を含む場合、ステンレス鋼板20の一方の面20aに塗料を塗装する前に、適当な攪拌手段によって、塗料に有機物粒子を十分に分散させることが好ましい。
ステンレス鋼板としては、板厚1.0mmのSUS304の2B製品を用いた。
ステンレス鋼板の一方の面に、市販のアクリル系塗料(商品名:アクリルクラッカーECO透明クリヤー、サンデーペイント社製)を塗布した。
アクリル系塗料の塗布には、バーコーターとロールコーターを用いて、表1に示すクリア塗装皮膜の平均膜厚(μm)、隣り合う2つの凸部の間隔(μm)、凸部と凹部の高低差(μm)になるように塗膜を形成した。
その後、120℃で60秒の焼付けを行って、クリア塗装皮膜を有するステンレス鋼板(クリア塗装ステンレス鋼板)を作製した。
なお、表1において、実験例1~実験例5は、クリア塗装皮膜の平均膜厚が2.00μm以上10.00μm以下、クリア塗装皮膜の凹凸面において隣り合う2つの凸部の間隔が50μm以上500μm以下、クリア塗装皮膜の凹凸面において隣り合う凸部と凹部の高低差が2.00μm以下、および、クリア塗装皮膜の表面における純水との接触角が90°以上であることを全て満たす、本発明の実施例のクリア塗装ステンレス鋼板を示す。
また、表1において、実験例6~実験例21は、クリア塗装皮膜の平均膜厚が2.00μm以上10.00μm以下、クリア塗装皮膜の凹凸面において隣り合う2つの凸部の間隔が50μm以上500μm以下、クリア塗装皮膜の凹凸面において隣り合う凸部と凹部の高低差が2.00μm以下、および、クリア塗装皮膜の表面における純水との接触角が90°以上であることの少なくとも1つを満たさない、本発明の比較例のクリア塗装ステンレス鋼板を示す。
バーコーターとロールコーターを用いてアクリル系塗料を塗布する際に、塗布速度を変えることにより、隣り合う2つの凸部の間隔や、隣り合う凸部と凹部の高低差を調整する。塗布速度を上げると、隣り合う2つの凸部の間隔を広くし、隣り合う凸部と凹部の高低差を大きくすることができる。さらに、アクリル系塗料を重ね塗りすることによっても、隣り合う2つの凸部の間隔や、隣り合う凸部と凹部の高低差を調整することができる。
実験例1~実験例21で得られたクリア塗装ステンレス鋼板について、「クリア塗装皮膜の平均膜厚」、「隣り合う2つの凸部の間隔」、「隣り合う凸部と凹部の高低差」、「接触角(撥水性)」、および、「耐食性」を評価した。
クリア塗装皮膜の平均膜厚を、クリア塗装ステンレス鋼板の厚さ方向の断面を、走査型電子顕微鏡(商品名:JSM-6490A、日本電子社製)で観察することにより測定した。クリア塗装皮膜において、凹部の最も深い点からステンレス鋼板の一方の面までの距離を3点測定し、その平均値をクリア塗装皮膜の平均膜厚とした。
平均膜厚が2.00μm未満の場合、自動車排気ガスの熱の影響により、クリア塗装皮膜が変質し、クリア塗装皮膜の撥水性が劣化するため、不合格とした。また、平均膜厚が10.00μmを超える場合、後述する熱処理後のクリア塗装皮膜の色調が不均一となり、クリア塗装ステンレス鋼板の外観が損なわれるため、不合格とした。結果を表1に示す。
クリア塗装皮膜の表面において、隣り合う2つの凸部の間隔を、マイクロスコープ(商品名:VHX-5000、キーエンス社製)を用いて、クリア塗装皮膜の表面を観察することにより測定した。
隣り合う2つの凸部の間隔が50μm未満の場合、塩化物水溶液中のNaClが析出し、クリア塗装皮膜が破壊され、クリア塗装皮膜が劣化し、耐食性が劣化するため、不合格とした。また、隣り合う2つの凸部の間隔が500μmを超える場合、後述する熱処理後のクリア塗装皮膜の色調が不均一となり、クリア塗装ステンレス鋼板の外観が損なわれるため、不合格とした。結果を表1に示す。
クリア塗装皮膜の表面において、隣り合う凸部と凹部の高低差を、レーザー顕微鏡(商品名:VK-8500、キーエンス社製)を用いて、クリア塗装皮膜の表面を観察することにより測定した。
隣り合う凸部と凹部の高低差が2μmを超えると、後述する熱処理後のクリア塗装皮膜の色調が不均一となり、クリア塗装ステンレス鋼板の外観が損なわれるため、不合格とした。結果を表1に示す。
クリア塗装皮膜の表面に1.8μLの純水を滴下し、接触角計(商品名:DMs-401、協和界面化学社製)を用いて、25℃で、クリア塗装皮膜の表面における純水の接触角を測定した。クリア塗装皮膜の表面において、接触角を10点測定し、その平均値をクリア塗装皮膜の表面の接触角とした。
接触角が90°未満の場合、クリア塗装皮膜の表面に純水の液滴が滞留し、クリア塗装皮膜の劣化を早め、クリア塗装ステンレス鋼板の耐食性が劣化するため、不合格とした。結果を表1に示す。
実験例1~実験例21で得られたクリア塗装ステンレス鋼板を、自動車の排気ガスによる熱の影響を模擬するために、大気中において400℃で8時間、熱処理した。
実験例1~実験例21で得られたクリア塗装ステンレス鋼板の耐食性を評価した。
熱処理後の塗装ステンレス鋼板について、JASO-M609に準拠した乾湿繰り返し試験を50サイクル行い、試験後のクリア塗装ステンレス鋼板の外観を目視により観察した。ここで、さび部と健全部(腐食していない部分)を二値化し、画像処理によって、さび部の面積率を判定した。クリア塗装ステンレス鋼板の表面において、さび部の面積率が5%未満を合格「○」、5%以上を不合格「×」とした。結果を表1に示す。
また、表1において、耐食性と外観均一性の両方が合格の場合に、総合判定を「○」、耐食性および外観均一性の少なくとも一方が不合格の場合に、総合判定を「×」とした。
表1の結果から、実験例1~実験例5のクリア塗装ステンレス鋼板は、耐食性および外観均一性に優れることが分かった。
一方、実験例6~実験例21のクリア塗装ステンレス鋼板は、耐食性および外観均一性の少なくとも一方が劣ることが分かった。
20 ステンレス鋼板
30 クリア塗装皮膜
Claims (2)
- ステンレス鋼板と、該ステンレス鋼板の少なくとも一方の面に形成され、平均膜厚が2.00μm以上10.00μm以下のクリア塗装皮膜と、を有し、
前記クリア塗装皮膜の表面は凹凸面であり、該凹凸面において隣り合う2つの凸部の間隔が50μm以上500μm以下であり、
前記凹凸面において隣り合う凸部と凹部の高低差が2.00μm以下であり、
前記クリア塗装皮膜の表面における、液滴量が1.8μLである純水または海水との接触角が90°以上であることを特徴とする自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板。 - 前記クリア塗装皮膜が有機物粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車排気系部品用クリア塗装ステンレス鋼板。
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