[実施形態]
以下、本開示の車両用位置推定システムの実施形態の一例として、当該車両用位置推定システムが適用された車両用電子キーシステムについて図を用いて説明する。本開示に係る車両用電子キーシステムは、図1に示すように、車両Hvに搭載された車載システム1と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯端末2と、を備えている。車載システム1が搭載されている車両Hvのことを以降では自車両とも記載する。
<全体の概要>
車載システム1と携帯端末2は、UWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)方式の無線通信(以降、UWB通信)を実施可能に構成されている。すなわち、車載システム1と携帯端末2はUWB通信で使用されるインパルス状の電波(以降、インパルス信号)を送受信可能に構成されている。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ナノ秒)であって、かつ、500MHz以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号である。
なお、UWB通信に利用できる周波数帯(以降、UWB帯)としては、3.2GHz~10.6GHzや、3.4GHz~4.8GHz、7.25GHz~10.6GHz、22GHz~29GHz等がある。これら種々の周波数帯のうち、本実施形態におけるインパルス信号は3.2GHz~10.6GHz帯の電波を用いて実現される。インパルス信号に使用される周波数帯は、当該車両Hvが使用される国に応じて適宜選定されればよい。なお、インパルス信号の帯域幅は、500MHz以上であればよく、1.5GHz以上の帯域幅を備えていても良い。
UWB-IR通信の変調方式としては、パルスの発生位置で変調を行うPPM(pulse position modulation)方式など、多様なものを採用可能である。具体的には、オンオフ変調(OOK:On Off Keying)方式や、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)、パルス振幅変調(PAM:Pulse-Amplitude Modulation)方式、パルス符号変調(PCM:Pulse-Code Modulation)などを採用可能である。なお、オンオフ変調方式はインパルス信号の存在/欠如によって情報(例えば0と1)を表現する方式であり、パルス幅変調方式はパルス幅によって情報を表現する方式である。パルス振幅変調方式は、インパルス信号の振幅によって情報を表現する方式である。パルス符号変調方式はパルスの組み合わせによって情報を表現する方式である。
また、本実施形態の車載システム1と携帯端末2は、第2の通信方式として、Bluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)規格に準拠した無線通信(以降、BLE通信)も実施可能に構成されている。なお、第1の通信方式とは前述のUWB通信を指す。第2の通信方式としては、Bluetooth Low Energy以外にも、例えばWi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等、通信距離を10メートル程度に設定可能な多様な近距離無線通信方式を採用可能である。第2の通信方式は、例えば、数メートル~数10メートル程度の通信距離を提供可能なものであればよい。以降では、UWB通信におけるインパルス信号とBLE通信での無線信号とを区別するために、BLE規格に準拠した無線信号のことをBLE信号とも記載する。以下、車載システム1及び携帯端末2の具体的な構成について順に説明する。
<携帯端末2の構成について>
まずは、携帯端末2の構成及び作動について説明する。携帯端末2は、車載システム1と対応付けられてあって、車両Hvの電子キーとして機能する装置である。携帯端末2は種々の用途に供される通信端末を援用して実現することができる。例えば携帯端末2はスマートフォンである。携帯端末2は、タブレット端末などの情報処理端末であってもよい。また、携帯端末2は、従来スマートキーとして知られている長方形型、楕円型(フォブタイプ)、又はカード型の小型デバイスであってもよい。その他、携帯端末2は、ユーザの指や腕等に装着されるウェアラブルデバイスとして構成されていてもよい。
携帯端末2は、図2に示すように、UWB通信部21、BLE通信部22、及び携帯側制御部23を備える。携帯側制御部23は、UWB通信部21、及びBLE通信部22のそれぞれと相互通信可能に接続されている。
UWB通信部21は、UWBのインパルス信号を送受信するための通信モジュールである。UWB通信部21は、携帯側制御部23から入力されたベースバンド信号を変調する等、電気的に処理しつつ変調信号を生成し、この変調信号をUWB通信により送信する。変調信号は、送信データを所定の変調方式(例えばPCM変調方式)で変調した信号である。変調信号は、複数のインパルス信号を送信データに対応する時間間隔で配置した信号系列(以降、パルス系列信号)である。また、UWB通信部21は、車載システム1から送信された複数のインパルス信号からなる一連の変調信号(つまりパルス系列信号)を受信すると、当該受信信号を復調し、変調前のデータを復元する。そして、受信データを携帯側制御部23に出力する。
また、UWB通信部21は動作モードとして、反射応答モードとノーマルモードを備える。反射応答モード時のUWB通信部21は、インパルス信号を受信した場合には、反射的に(換言すれば即座に/可及的速やかに)インパルス信号を返送する。反射応答モードで動作するか否かは、例えば、車載システム1からの指示信号に基づき、携帯側制御部23によって切り替えられる。なお、携帯端末2が車載システム1からのインパルス信号を受信してから応答信号としてのインパルス信号を送信するまでには所定の時間(以降、応答処理時間Tb)がかかる。応答処理時間Tbは、携帯端末2のハードウェア構成に応じて定まる。応答処理時間Tbの想定値は、試験等によって予め特定しておくことができる。
ノーマルモードは、プリアンブルから末尾までの一連のパルス系列信号を受信してから、受信データの内容に応じた応答信号を返送するモードである。なお、携帯端末2は、反射応答モードにおいても、車載システム1から送信されたパルス系列信号と同様の一連のインパルス信号を反射的に返送した後に、受信データに応じた内容の応答信号を生成して返送するように構成されていても良い。
BLE通信部22は、BLE通信を実施するための通信モジュールである。BLE通信部22は携帯側制御部23と相互通信可能に接続されている。BLE通信部22は、車両Hvから送信されたBLE信号を受信して携帯側制御部23に提供するとともに、携帯側制御部23から入力されたデータを変調して車両Hvに送信する。
携帯側制御部23は、UWB通信部21やBLE通信部22の動作を制御する構成である。携帯側制御部23は、例えばCPU、RAM、及びROM等を備えた、コンピュータを用いて実現されている。
携帯側制御部23は、送信元情報を含む無線信号を所定の送信間隔でBLE通信部22に無線送信させる。これにより、車載システム1等に対して、自分自身の存在を通知する(すなわちアドバタイズする)。以降では便宜上、アドバタイズを目的として定期的に送信される無線信号のことをアドバタイズ信号と称する。なお、送信元情報は、例えば携帯端末2に割り当てられた固有の識別情報(以降、端末IDとする)である。端末IDは他の通信端末と携帯端末2とを識別するための情報として機能する。車載システム1は、このアドバタイズ信号を受信することで、車両HvのBLE通信範囲内に携帯端末2が存在することを認識する。なお、他の態様として、携帯端末2は車載システム1からの要求に基づいてアドバタイズ信号を送信する態様となっていてもよい。また、携帯側制御部23は、BLE通信部22から受信データが入力されると、この受信データに対応する応答信号に相当するベースバンド信号を生成し、このベースバンド信号をBLE通信部22に出力する。
さらに、携帯側制御部23は、UWB通信部21から受信データが入力されると、この受信データに対応する応答信号に相当するベースバンド信号を生成し、このベースバンド信号をUWB通信部21に出力する。携帯側制御部23がUWB通信部21に出力したベースバンド信号は、UWB通信部21にて変調され、無線信号として送信される。
<車載システム1について>
次に車載システム1の機能及び構成について説明する。車載システム1は、携帯端末2と所定の周波数帯の電波を用いた無線通信を実施することで、パッシブ・エントリ・パッシブ・スタートシステム(以降、PEPSシステム)を実現するように構成されている。例えば車載システム1は、携帯端末2が車両Hvに対して予め設定されている作動エリア内に存在することを確認できている場合には、後述するドアボタン14に対するユーザ操作に基づいて、ドアの施錠や開錠といった制御を実行する。
作動エリアとは、当該エリア内に携帯端末2が存在することに基づいて、車載システム1がドアの施錠や開錠といった所定の車両制御を実行するためのエリアである。例えば、運転席用のドア付近や、助手席用のドア付近、トランクドア付近が作動エリアに設定されている。ドア付近とは、外側ドアハンドルから、所定の作動距離以内となる範囲を指す。外側ドアハンドルとは、ドアの外側面に設けられた、ドアを開閉するための把持部材を指す。作動エリアの大きさを規定する作動距離は、例えば0.7mである。もちろん、作動距離は1mであってもよいし、1.5mであってもよい。作動距離は、防犯性の観点から2mよりも小さく設定されていることが好ましい。
当該車載システム1は、図3に示すように、スマートECU11、複数のUWB通信機12、BLE通信機13、ドアボタン14、スタートボタン15、ボディECU16、サイドカメラ17、及びリアカメラ18を備える。また、車載システム1は、ボディ系アクチュエータ161、車載センサ162なども備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。
スマートECU11は、UWB通信機12やBLE通信機13を介して携帯端末2と無線通信を実施することでドアの施開錠を実行するECUである。スマートECU11は、車両内に構築されている通信ネットワークを介してボディECU16、サイドカメラ17、及びリアカメラ18と相互通信可能に接続されている。また、スマートECU11は、UWB通信機12やBLE通信機13、ドアボタン14、スタートボタン15とも電気的に接続されている。当該スマートECU11は、例えばコンピュータを用いて実現されている。すなわち、スマートECU11は、CPU111、フラッシュメモリ112、RAM113、I/O114、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。
フラッシュメモリ112には、ユーザが所有する携帯端末2に割り当てられている端末IDが登録されている。また、フラッシュメモリ112には、コンピュータをスマートECU11として機能させるためのプログラム(以降、位置推定プログラム)等が格納されている。なお、上述の位置推定プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPU111が位置推定プログラムを実行することは、位置推定プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。スマートECU11の詳細については別途後述する。
UWB通信機12は、携帯端末2とUWB通信を実施するための通信モジュールである。複数のUWB通信機12のそれぞれは、車両Hvに搭載されている他のUWB通信機12ともUWB通信を実施可能に構成されている。つまり、各UWB通信機12は、携帯端末2及び他のUWB通信機12と無線通信可能に構成されている。便宜上、或るUWB通信機12にとっての他のUWB通信機12のことを他機とも記載する。UWB通信機12が車載通信機に相当する。
各UWB通信機12は専用の通信線又は車両内ネットワークを介してスマートECU11と相互通信可能に接続されている。各UWB通信機12の動作はスマートECU11によって制御される。各UWB通信機12には、固有の通信機番号が設定されている。通信機番号は、複数のUWB通信機12を識別するための情報として機能する。複数のUWB通信機12の取り付け位置や電気的構成については別途後述する。
BLE通信機13は、BLE通信を実施するための通信モジュールである。BLE通信機13はスマートECU11と相互通信可能に接続されている。BLE通信機13は、携帯端末2から送信されたBLE信号を受信してスマートECU11に提供する。また、BLE通信機13は、スマートECU11から入力されたデータを変調して携帯端末2に無線送信する。BLE通信機13は車両Hvの任意の位置に取り付けられている。例えばBLE通信機13は、インストゥルメントパネルや、フロントガラスの上端部、Cピラー(換言すればリアピラー)、ロッカー部等に取り付けられている。BLE通信機13は1つであってもよいし、複数あってもよい。BLE通信機13が異方式通信機に相当する。
ドアボタン14は、ユーザが車両Hvのドアを開錠及び施錠するためのボタンである。ドアボタン14は、例えば車両Hvの各ドアハンドルに設けられている。ドアボタン14は、ユーザによって押下されると、その旨を示す電気信号を、スマートECU11に出力する。ドアボタン14は、スマートECU11がユーザの開錠指示及び施錠指示を受け付けるための構成に相当する。なお、ユーザの開錠指示及び施錠指示の少なくとも何れか一方を受け付けるための構成としては、タッチセンサを採用することもできる。タッチセンサは、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する装置である。
スタートボタン15は、ユーザが車両Hvの駆動源(例えばエンジン)を始動させるためのプッシュスイッチである。スタートボタン15は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す電気信号をスマートECU11に出力する。なお、ここでは一例として車両Hvは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Hvは、電気自動車やハイブリッド車であってもよい。車両Hvがモータを駆動源として備える車両である場合には、スタートボタン15は駆動用のモータを始動させるためのスイッチである。
ボディECU16は、スマートECU11からの要求に基づいてボディ系アクチュエータ161を制御するECUである。ボディECU16は、種々のボディ系アクチュエータ161や、種々の車載センサ162と通信可能に接続されている。ここでのボディ系アクチュエータ161とは、例えば、各ドアのロック機構を構成するドアロックモータや、座席位置を調整するためのシートアクチュエータなどである。また、ここでの車載センサ162とは、ドア毎に配置されているカーテシスイッチなどである。カーテシスイッチは、ドアの開閉を検出するセンサである。ボディECU16は、例えばスマートECU11からの要求に基づいて、車両Hvの各ドアに設けられたドアロックモータに所定の制御信号を出力することで各ドアを施錠したり開錠したりする。
サイドカメラ17は、車両Hvの後側方を撮像するカメラである。サイドカメラ17は、左右側面部に1つずつ設けられている。サイドカメラ17は、例えば運転席に着座したドライバから見たドアミラーに映る範囲を撮影するように設けられる。つまり、車載システム1はサイドカメラ17として図4に示すように、車両Hvの右後方を撮像するように右側面部に取り付けられている右側カメラ17Aと、車両Hvの左後方を撮像するように左側面部に取り付けられている左側カメラ17Bと、を備える。サイドカメラ17は、例えば電子ミラーシステムを構成するカメラである。電子ミラーシステムは、各サイドカメラ17によって撮影される車両Hvの後側方の映像を、所定のディスプレイに表示させるシステムである。なお、図4に示すハッチングは各カメラの撮像方向/範囲を概念的に表している。
右側カメラ17Aは、例えば車両Hvの右後方に撮像面を向けた姿勢にて、右側Aピラーの下端部付近に取り付けられる。Aピラーは車両Hvにおいて前から1番目のピラーである。Aピラーはフロントピラーとも称される。例えば右側カメラ17Aは、右側ドアミラーの取り付け位置に、右側ドアミラーに替えて設けられる。右側カメラ17Aの動作は、スマートECU11等によって制御される。右側カメラ17Aは駆動時、車両Hvの右側方から後方にかけての範囲を所定のフレームレートで撮像するとともに、その映像信号をスマートECU11等に提供する。
左側カメラ17Bは、車両左側面部において右側カメラ17Aと対応する(換言すれば左右対称な)位置に取り付けられている。左側カメラ17Bの動作もまた、スマートECU11等によって制御される。左側カメラ17Bは駆動時、車両Hvの左側方から後方にかけての範囲を所定のフレームレートで撮像するとともに、その映像信号をスマートECU11等に提供する。
リアカメラ18は、車両後方を撮像するカメラである。リアカメラ18は、車両の後端部や、リアガラスの上端部/下端部付近に設置されている。リアカメラ18の動作は、スマートECU11等によって制御される。リアカメラ18は駆動時、車両Hvの後方を所定のフレームレートで撮像するとともに、その映像信号をスマートECU11等に提供する。サイドカメラ17やリアカメラ18は何れも車室外(換言すれば外界)を撮像するカメラである。故に、サイドカメラ17やリアカメラ18を区別せず、車室外を撮像するカメラのことを以降では外界カメラとも記載する。
<各UWB通信機12の取付位置及び電気的構成について>
本実施形態の車載システム1は、UWB通信機12として図4に示すように、右側通信機12A、左側通信機12B、前側通信機12C、及び後側通信機12Dを備える。右側通信機12Aは、例えば車両右側のBピラー(換言すればセンターピラー)の上側領域に配置されている。ピラーの上側領域とは、ピラーの上半分となる領域を指す。ピラーの上側領域には、ピラーの上端部も含まれる。左側通信機12Bは、例えば車両左側のBピラーの上側領域に配置されている。前側通信機12Cはルームミラー付近(換言すればフロントガラス上端部)に配置されている。後側通信機12Dは、例えば後部座席の上方に位置する天井部の車幅方向中央部に取り付けられている。なお、図4ではUWB通信機12の取付位置を明示するために屋根部を透過させている。
フラッシュメモリ112には、各UWB通信機12の設置位置を示す通信機位置データが格納されている。車両Hvにおける各UWB通信機12の設置位置は、車両の任意の点を基準点(換言すれば原点)とする3次元直交座標系の点として表現されていればよい。ここでは一例として、前輪車軸の中心を原点とし、互いに直交するX、Y、Z軸を備える3次元座標系(以降、車両3次元座標系)上の点として表されている。車両3次元座標系を形成するX軸は車幅方向に平行であって、車両右側を正方向とする軸である。Y軸は車両前後方向に平行であって、車両前方を正方向とする軸である。Z軸は、車両高さ方向に平行であって、車両上方を正方向とする軸である。3次元座標系の中心は、例えば後輪車軸の中心など、適宜変更可能である。もちろん、他の態様として各UWB通信機12の搭載位置は極座標で表されていてもよい。各UWB通信機12の設置位置は通信機番号と対応付けられて保存されていればよい。
複数のUWB通信機12のそれぞれは、図5に示すように、送信部31、受信部32、及び伝搬時間計測部33を備える。送信部31は、スマートECU11から入力されたベースバンド信号を変調する等、電気的に処理しつつインパルス信号を生成し、このインパルス信号を電波として放射する構成である。送信部31は例えば、変調回路311、及び送信アンテナ312を用いて実現されている。
変調回路311は、スマートECU11から入力されたベースバンド信号を変調する回路である。変調回路311は、スマートECU11から入力されたベースバンド信号が示すデータ(以降、送信データ)に対応する変調信号を生成し、送信アンテナ312に向けて送信する。変調信号は、送信データを所定の変調方式で変調した信号である。本実施形態における変調信号は、前述の通り、複数のインパルス信号を送信データに対応する時間間隔で配置した信号系列に相当する。変調回路311は、電気的なインパルス信号を生成する回路(以降、パルス生成回路)や、インパルス信号を増幅したり整形したりする回路を含む。
送信アンテナ312は、変調回路311が出力した電気的なインパルス信号を電波に変換して空間に放射する構成である。つまり、送信アンテナ312は、UWB帯において所定の帯域幅を有するパルス状の電波をインパルス信号として放射する。また、変調回路311は、送信アンテナ312へ電気的なインパルス信号を出力した場合には、それと同時に、インパルス信号を出力したことを示す信号(以降、送信通知信号)を伝搬時間計測部33に出力する。
なお、本実施形態の送信部31は、インパルス信号の立上り時間が1ナノ秒となるように構成されている。立上り時間とは、信号強度が初めて最大振幅の10%を越えてから最大振幅の90%を越えるまでに要する時間である。インパルス信号の立上がり時間は、送信部31の回路構成などのハードウェア構成に応じて定まる。インパルス信号の立上り時間は、シミュレーションや実試験によって特定できる。なお、一般的にUWB通信に供されるインパルス信号の立上り時間は、1ナノ秒程度である。
受信部32は、例えば受信アンテナ321、及び復調回路322を備える。受信アンテナ321は、インパルス信号を受信するためのアンテナである。受信アンテナ321は、携帯端末2が送信したインパルス信号に対応する電気的なインパルス信号を復調回路322に出力する。
復調回路322は、受信アンテナ321がUWB通信に供されるインパルス信号を受信すると、その信号を復調する等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、この受信信号をスマートECU11に出力する。復調回路322が取得するパルス系列信号は、受信アンテナ321から入力される複数のインパルス信号を、実際の受信間隔をおいて時系列に並べたものである。復調回路322は、携帯端末2や他機から送信された複数のインパルス信号からなる一連の変調信号(つまりパルス系列信号)を復調し、変調前のデータを復元する構成である。
なお、復調回路322は、受信アンテナ321で受信したインパルス信号の周波数を、ベースバンド帯の信号に変換して出力する周波数変換回路や、信号レベルを増幅する増幅回路などを備える。その他、受信部32は、受信アンテナ321からインパルス信号が入力された場合には、インパルス信号を受信したことを示す信号(以降、受信通知信号)を伝搬時間計測部33に出力する。
伝搬時間計測部33は、送信部31がインパルス信号を送信してから、受信部32がインパルス信号を受信するまでの時間(以降、ラウンドトリップ時間)を計測するタイマである。送信部31がインパルス信号を送信したタイミングは送信通知信号の入力によって特定される。また、受信部32がインパルス信号を受信したタイミングは受信通知信号の入力によって特定される。すなわち、伝搬時間計測部33は、変調回路311が送信通知信号を出力してから、復調回路322が受信通知信号を出力するまでの時間を計測する。ラウンドトリップ時間は往復分の信号飛行時間に、通信相手での応答処理時間を加えた時間に相当する。
伝搬時間計測部33は、図示しないクロック発振器から入力されるクロック信号を計数することによって、送信部31がインパルス信号を送信してからの経過時間を測定する。伝搬時間計測部33によるカウントは、受信通知信号が入力された場合や、所定の上限値まで達した場合に停止され、そのカウント値をスマートECU11に出力する。つまり、スマートECU11にラウンドトリップ時間を報告する。なお、スマートECU11へのラウンドトリップ時間の報告が完了すると伝搬時間計測部33のカウント値は0に戻る(つまりリセットされる)。
伝搬時間計測部33は、ラウンドトリップ時間の計測が完了すると、当該ラウンドトリップ時間に基づいて伝搬時間を算出し、スマートECU11に提供する。伝搬時間計測部33が伝搬時間特定部に相当する。当該伝搬時間の算出に係る伝搬時間計測部33の作動については別途後述する。伝搬時間計測部33は例えばICを用いて実現されている。その他、UWB通信機12は、携帯端末2のUWB通信部21と同様に、反射応答モードを備える。UWB通信機12の反射応答モードは、UWB通信部21の反射応答モードと同様である。
なお、ここではUWB通信機12は、送信用のアンテナ(つまり送信アンテナ312)と、受信用のアンテナ(つまり受信アンテナ321)とが別々に設けられている態様を示しているが、これに限らない。UWB通信機12は方向性結合器を用いて送信と受信とで1つのアンテナ素子を共用するように構成されていても良い。また、変調回路311や復調回路322は伝搬時間計測部33としての機能を提供するICに内蔵されていても良い。UWB通信機12は、1つのアンテナと、種々の回路機能を有する1つの専用ICとを用いて実現されていても良い。
<スマートECU11の機能について>
スマートECU11は、上述した位置推定プログラムを実行することで、図5に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、スマートECU11は機能ブロックとして、車両情報取得部F1、BLE通信処理部F2、UWB通信処理部F3、通信機診断部F4、外界情報取得部F5、位置推定部F6、及び、車両制御部F7を備えている。
車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載されたセンサやECU(例えばボディECU16)、スイッチなどから、車両Hvの状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。車両情報としては、例えば、ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態、ドアボタン14の押下の有無、スタートボタン15の押下の有無等が該当する。また、車両情報取得部F1は、上述した種々の情報に基づいて、車両Hvの現在の状態を特定する。例えば車両情報取得部F1は、エンジンがオフであり、全てのドアが施錠されている場合に、車両Hvは駐車されていると判定する。もちろん、車両Hvが駐車されていると判定する条件は適宜設計されればよく、多様な判定条件を適用することができる。ここでの車両Hvが駐車されている状態とは、車両Hvに誰も乗車しておらず(つまり空車状態であって)、且つ、車両Hvが施錠されている状態を指す。
なお、各ドアの施錠/開錠状態を示す情報を取得することは、各ドアの施錠/開錠状態を判定すること、及び、ユーザによるドアの施錠操作/開錠操作を検出することに相当する。また、ドアボタン14やスタートボタン15からの電気信号を取得することは、これらのボタンに対するユーザ操作を検出することに相当する。つまり、車両情報取得部F1はドアの開閉や、ドアボタン14の押下、スタートボタン15の押下などといった、車両Hvに対するユーザの操作を検出する構成に相当する。以降における車両情報には、車両Hvに対するユーザ操作も含まれる。加えて、車両情報に含まれる情報の種類は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。パーキングブレーキの作動状態もまた車両情報に含めることができる。
BLE通信処理部F2は、BLE通信機13と協働して携帯端末2とのデータの送受信を実施する構成である。例えばBLE通信処理部F2は、携帯端末2宛のデータを生成し、BLE通信機13に出力する。これにより、所望のデータに対応する信号を電波として送信させる。また、BLE通信処理部F2は、BLE通信機13が受信した携帯端末2からのデータを受信する。本実施形態ではより好ましい態様としてスマートECU11と携帯端末2との無線通信は、暗号化して実施されるように構成されている。暗号化の方式としては、Bluetoothで規定されている方式など、多様な方式を援用することができる。
なお、本実施形態ではセキュリティ向上のためにスマートECU11及び携帯端末2は、認証等のためのデータ通信を暗号化して実施するように構成されているものとするが、これに限らない。他の態様として、スマートECU11と携帯端末2とは、暗号化せずにデータ通信を実施するように構成されていても良い。
BLE通信処理部F2は、BLE通信機13と連携して、通信相手がユーザの携帯端末2であることを確認(換言すれば認証)する処理を実施する。認証処理自体は、チャレンジ-レスポンス方式など多様な方式を用いて実施されればよい。ここではその詳細な説明は省略する。認証処理に必要なデータ(例えば暗号鍵)などは携帯端末2とスマートECU11のそれぞれに保存されているものとする。BLE通信処理部F2が認証処理部に相当する。携帯端末2の認証が成功した状態が、携帯端末2との通信接続を確立した状態に相当する。
BLE通信処理部F2は、携帯端末2とのBLE通信が確立していることに基づいて、ユーザが車両Hv周辺に存在することを認識する。また、BLE通信処理部F2は、BLE通信機13から、通信接続している携帯端末2の端末IDを取得する。このような構成によれば、車両Hvが複数のユーザによって共有される車両であっても、スマートECU11は、BLE通信機13が通信接続している携帯端末2の端末IDに基づいて車両Hv周辺に存在するユーザを特定することができる。
なお、本実施形態では一例としてBLE通信によって携帯端末2を認証するが、これに限らない。スマートECU11による携帯端末2(ひいてはユーザ)の認証処理は、UWB通信によって実行されても良い。スマートECU11は、BLE通信機13と携帯端末2とが通信接続している間、所定の周期で認証処理を実施するように構成されていても良い。また、スマートECU11は、ユーザによってスタートボタン15が押下された場合など、車両Hvに対する所定のユーザ操作をトリガとしてBLE通信/UWB通信による認証処理を実施するように構成されていても良い。
UWB通信処理部F3は、UWB通信機12と協働して携帯端末2とのデータの送受信を実施する構成である。UWB通信処理部F3は、UWB通信機12が受信した携帯端末2からのデータを取得する。加えて、UWB通信処理部F3は、携帯端末2宛のデータを生成し、UWB通信機12に出力する。これにより、所望のデータに対応するパルス系列信号を無線送信させる。さらにUWB通信処理部F3は、通信機診断部F4や位置推定部F6からの指示に基づいて、任意のUWB通信機12からインパルス信号を送信させる。インパルス信号を送信させるUWB通信機12は、通信機診断部F4や位置推定部F6によって選択される。
通信機診断部F4は、各UWB通信機12が正常に動作しているか否か(換言すれば不具合が生じていないか)を判定する構成である。通信機診断部F4は、例えば各UWB通信機12に他機と無線通信を順に実施させることにより、UWB通信機12の不具合/故障を検出する。ここでの不具合には、故障して動作が停止している状態も含まれる。
例えば、通信機診断部F4は、診断対象とするUWB通信機12(以降、診断対象機)に複数の他機と無線通信を実施させた結果として、他機との通信の失敗率が所定の閾値以上となっている場合、当該診断対象機は故障していると判定する。診断対象機は所定の順番で変更されれば良い。なお、スマートECU11が例えばプロセッサを複数有する場合など、複数の演算処理を並列的に実行可能に構成されている場合には、同時に複数のUWB通信機12を診断対象機に設定し、複数のUWB通信機12を並列的に診断してもよい。
また、通信機診断部F4は、ウォッチドッグタイマ方式や宿題回答方式などといった、多様な方法を用いてUWB通信機12の故障を検出することができる。ウォッチドッグタイマ方式とは、スマートECU11が備えるウォッチドッグタイマがUWB通信機12から入力されるウォッチドッグパルスによってクリアされずに満了した場合に、UWB通信機12が故障していると判定する方式である。ウォッチドッグタイマはUWB通信機12毎に用意されていれば良い。また、宿題回答方式とは、通信機診断部F4としてのスマートECU11が、予め定められた監視用の信号を、診断対象機に送るとともに、診断対象機から返送されてきた回答が正解であるか否かによって診断対象機が正常であるか否かを判定する方式である。宿題回答方式において診断対象機としてのUWB通信機12は、スマートECU11から入力される監視用信号に対して回答データを生成してスマートECU11に返送する。スマートECU11は、UWB通信機12の回答データが、送信した監視用信号に対応する正解データと異なる場合、あるいは所定の制限時間内でスマートECU11から応答信号が返送されてこない場合に、UWB通信機12は正常に動作していないと判定する。
さらに、通信機診断部F4は、各UWB通信機12に、所定の複数の他機のそれぞれと所定の順番で双方向無線通信を実施させることにより、UWB通信機12の組み合わせ毎の通信機間距離を計測する。ここでの通信機間距離とは、或るUWB通信機12から他機までの距離を指す。双方向に無線通信を実施させるUWB通信機12の組み合わせは適宜設計されれば良い。例えば見通し内に位置するUWB通信機12同士を、診断のための双方向無線通信を実施させる組み合わせとして予め登録しておけば良い。
そして、通信機診断部F4は、診断対象機について、当該診断対象機を構成要素とする全ての組み合わせにおける通信機間距離が、何れも所定の正常範囲外の値である場合に、診断対象機に不具合が生じていると判定する。換言すれば、通信機診断部F4は、診断対象機を構成要素とする全ての組み合わせのうち、少なくとも1つの組み合わせにおける通信機間距離が正常範囲内の値である場合には、当該診断対象機は正常であると判定する。
UWB通信機12の組み合わせ毎の通信機間距離の正常範囲は、試験やシミュレーションによって予めフラッシュメモリ112に登録されている。UWB通信機12の組み合わせ毎の正常範囲は、UWB通信機12間の直線距離を基準として設定されていればよい。なお、他の態様として、通信機の組み合わせ毎の正常範囲は、距離ではなく、無線信号の伝搬時間(いわゆるTOF:Time Of Flight)で定義されていても良い。2つの通信機が無線通信を実施することによって、通信機間の距離や無線信号の伝搬時間を測定する方法は、多様な方法を援用することができる。例えばUWB通信機12同士にインパルス信号を送受信させ、ラウンドトリップ時間を計測させる。そして、その計測されたラウンドトリップ時間から応答側のUWB通信機12での応答処理時間を減算した値を、さらに2で除算することで、伝搬時間を算出すればよい。
なお、通信機間距離を用いて検出される不具合には、例えば、通信機内部における信号線と回路素子との接触不良や、アンプの故障などが含まれる。信号線の接触不良やアンプの不作動が生じている場合には、インパルス信号の受信レベル(換言すれば受信感度)が正常時に比べて低下し、インパルス信号の受信電力が所定の検出閾値を上回るタイミングが0.5ナノ秒~1ナノ秒程度遅れうる。上記の方法によれば、数ナノ秒程度の微小な遅延を生じさせる通信機内部の不具合を検出可能となる。また、上記の診断方法によれば、UWB通信機12の内部故障のほかに、UWB通信機12が所定の取付位置から取り外されている状態も異常状態として検出可能である。
なお、UWB通信機12の組み合わせ毎の通信機間距離を取得するための双方向無線通信(以降、診断用無線通信)は、例えば所定の診断周期で定期的に実施されればよい。診断周期は、例えば1時間である。もちろん、その他、診断用無線通信は、車両Hvが駐車されたタイミングや、駐車されてから所定時間が経過したタイミング、ユーザの車両Hvへの接近を検出したタイミングなど、所定のタイミングで実行するように構成されていてもよい。なお、診断用無線通信は、駐車中など、車室内に乗員が1人もいない場合に実行されることが好ましい。
通信機診断部F4としてのスマートECU11は、UWB通信機12の不具合を検出した場合には、UWB通信機12のICを再起動させるなどの所定の復帰処理を実行する。復帰処理を施してもUWB通信機12が正常な状態に戻らなかった場合には、当該UWB通信機12に不具合が生じているとの判定を確定し、不具合機としてフラッシュメモリ112等に登録する。各UWB通信機12が不具合機であるかは通信機番号を用いて管理されればよい。以降では便宜上、通信機診断部F4によって正常に動作していると判定されているUWB通信機12のことを健全機とも記載する。
外界情報取得部F5は、サイドカメラ17やリアカメラ18といった外界カメラから入力される画像(以降、外界画像)を解析することで、車両周辺に相当する所定範囲に人が存在するか否かを判定する。また、人が存在する場合には、画像内における人物位置と、カメラの取付位置、及び取付姿勢に基づいて、その人物の車両Hvに対する相対位置(つまり所在)を特定する。車両Hvに対する人物の相対位置は、通信機位置を示す座標系と同様の車両3次元座標系にて表現されればよい。自車両周辺に存在する人物の相対位置を示す情報は、人位置情報として、位置推定部F6に提供される。外界カメラの撮像データは、外界カメラの撮像範囲に存在する人物の位置を表す情報に相当する。外界情報取得部F5が人物検出部に相当する。車両周辺とは例えば車室外において車両から3m以内となる領域である。車両周辺とみなす領域、換言すれば、人物の検出範囲は適宜設計されれば良い。
なお、外界情報取得部F5としてのスマートECU11は、例えば、ユーザの車両Hvへの接近を検出した場合に、外界カメラを起動して外界画像を取得するように構成されていればよい。ユーザの車両Hvへの接近は、例えばBLE通信機13が携帯端末2からのアドバタイズ信号を受信したことに基づいて検出されれば良い。車両Hvの周辺に携帯端末2が存在するか否かは、BLE通信機13やUWB通信機12と携帯端末2との通信状況に基づいて判定されれば良い。当該制御態様によれば、駐車中に常時外界カメラを起動させておく必要はないため、駐車中の暗電流を抑制することができる。
位置推定部F6は、携帯端末2の位置を推定する処理を実行する構成である。位置推定部F6は、概略的には、各UWB通信機12に所定の順に携帯端末2とインパルス信号を送受信させることにより、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離を推定する。そして、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に基づいて携帯端末2の位置(以降、端末位置)を推定する。
位置推定部F6は、例えばBLE通信機13が携帯端末2と通信接続が確立している状態において、端末位置の推定を実施する。以降では便宜上、車両Hvが駐車されている状態における端末位置を推定するための処理のことを駐車中位置推定処理とも称する。当該駐車中位置推定処理の詳細については、別途後述する。
なお、駐車中位置推定処理は、車室外(主として車両周辺)における携帯端末2の位置を推定する処理に相当する。車室外においては、携帯端末2はユーザによって携帯されている可能性が高い。そのため、携帯端末2の位置を推定することは、ユーザの位置を推定することに相当する。
車両制御部F7は、携帯端末2の認証が成功している場合に、携帯端末2(換言すればユーザ)の位置及び車両Hvの状態に応じた車両制御を、ボディECU16等と協働して実行する構成である。車両Hvの状態は車両情報取得部F1によって判定される。携帯端末2の位置は位置推定部F6によって判定される。例えば車両制御部F7は、車両Hvが駐車されている状況下で、携帯端末2が車室外に存在し、ユーザによってドアボタン14が押下された場合には、ボディECU16と連携してドアのロック機構を開錠する。
<駐車中位置推定処理>
次に、図6に示すフローチャートを用いてスマートECU11が実施する駐車中位置推定処理について説明する。駐車中位置推定処理は、BLE通信機13と携帯端末2との通信接続が確立されている状態において、例えば所定の位置推定周期で実施される。なお、BLE通信機13と携帯端末2との通信接続が確立されている状態とは、携帯端末2の認証が成功している状態に相当する。位置推定周期は、例えば200ミリ秒である。もちろん、位置推定周期は100ミリ秒や300ミリ秒であってもよい。本実施形態では一例として位置推定処理はステップS101~S109を備える。各ステップは、主として位置推定部F6が、UWB通信機12やBLE通信機13、BLE通信処理部F2、UWB通信処理部F3などと協働して実行される。
まずステップS101ではBLE通信処理部F2と協働して、BLE通信機13に反射応答指示信号を送信させる。反射応答指示信号は、携帯端末2に反射応答モードで動作するように指示する信号である。これにより、携帯端末2は車載システム1から送信されたインパルス信号を受信する度に、反射的にインパルス信号を返送するように動作する。
次にステップS102では、通信機診断部F4によって不具合が検出されていない任意のUWB通信機12(つまり健全機)をホスト機に設定する。ホスト機は、複数のUWB通信機12のうち、ラウンドトリップ時間を計測する役割を担うUWB通信機12に相当する。ステップS102での処理が完了するとステップS103を実行する。ステップS103では、当該ホスト機からインパルス信号を送信させる。これによりステップS104にてホスト機が送信した無線信号が携帯端末2で受信されるまでの時間である伝搬時間Taを取得する。その際、ホスト機以外のUWB通信機12は、動作を停止させるか、インパルス信号を受信しても応答信号としてのインパルス信号を返送しないように制御される。
上記のステップS103~S104においてホスト機の伝搬時間計測部33は、位置推定部F6からの指示に基づき図7に示すように、ラウンドトリップ時間Tpを計測する。そして、当該ラウンドトリップ時間Tpに携帯端末2での応答処理時間Tbの想定値を減算する。応答処理時間Tbの想定値は、演算用のパラメータとしてフラッシュメモリ112に登録されていればよい。ラウンドトリップ時間Tpから応答処理時間Tbを減算した値は、往復分の飛行時間に相当する。故に、ラウンドトリップ時間Tpから応答処理時間Tbを減算した値を2で割った値は、無線信号の片道分の飛行時間に相当する。伝搬時間計測部33は、ラウンドトリップ時間Tpから応答処理時間Tbを減算した値を2で割った値を伝搬時間TaとしてスマートECU11に提供する。
なお、伝搬時間計測部33は、インパルス信号を送信してから所定の応答待機時間が経過しても応答信号としてのインパルス信号を受信しなかった場合には、伝搬時間Taが不明であることを示すデータをスマートECU11に提供すればよい。応答待機時間は例えば33ナノ秒など、ユーザが車両Hvから十分(例えば10m以上)離れている状態を想定した値に設定されていればよい。以降では、携帯端末2からの応答信号としてのインパルス信号を受信でき、その結果として、伝搬時間Taの計測に成功したUWB通信機12のことを測距成功機とも記載する。伝搬時間Taは携帯端末2までの距離を示す情報として機能するためである。
ステップS105では全ての健全機に伝搬時間Taを計測させたか否かを判定する。全ての健全機に伝搬時間Taの計測を実行させている場合にはステップS105を肯定判定してステップS107を実行する。一方、まだ伝搬時間Taの計測を実行していない健全機が残っている場合にはステップS105を否定判定してステップS106を実行する。
ステップS106では、伝搬時間Taをまだ計測していない任意の健全機をホスト機に設定してステップS103を実行する。ホスト機として動作させる順番(換言すればインパルス信号を送信させる順番)は適宜設計されれば良い。例えば位置推定部F6は、全てのUWB通信機12が健全機である場合には、右側通信機12A→左側通信機12B→前側通信機12C→後側通信機12Dの順にホスト機に設定する。各UWB通信機12で計測された伝搬時間Taは、携帯端末2までの距離を間接的に示す。つまり、伝搬時間Taは距離情報に相当する。故に、ステップS103からステップS106までの一連の処理は、各UWB通信機12からインパルス信号を送信させることにより、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報を収集する処理に相当する。
ステップS107では、ステップS103~ステップS106の処理の結果として、3機以上のUWB通信機12にて伝搬時間を取得できたか否かを判定する。つまり、測距成功機が3機以上となっているか否かを判定する。3機以上のUWB通信機12にて伝搬時間を取得できている場合とは、3機以上のUWB通信機12が携帯端末2と無線通信可能な位置関係にあることを意味する。なお、或るUWB通信機12において伝搬時間が取得できなかった場合とは、偶発的に携帯端末2との通信が失敗した場合や、当該UWB通信機12が故障している場合などである。また、伝搬時間を取得できたUWB通信機12とは、例えば携帯端末2からの応答としてのインパルス信号を受信できたUWB通信機12に相当する。
3機以上のUWB通信機12にて伝搬時間を取得できている場合には、ステップS107を肯定判定してステップS108を実行する。一方、伝搬時間を取得できたUWB通信機12の数が3機未満である場合には、ステップS107を否定判定してステップS109を実行する。
ステップS108では、伝搬時間を取得できている各UWB通信機12の設置位置と、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に基づいて携帯端末2の位置を算出する。各UWB通信機12の設置位置は、フラッシュメモリ112に格納されている通信機位置データを使用すれば良い。各UWB通信機12から携帯端末2までの距離は、各UWB通信機12での伝搬時間Taに光速を乗じた値とすればよい。各UWB通信機12の設置位置と各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に基づく位置の推定は、三角測量の原理を用いて実施することができる。各UWB通信機12の設置位置及び携帯端末2までの距離情報を用いた位置推定法としては、最小二乗法や、Newton-Raphson法、最小二乗平均推定法(MMSE:Minimum Mean Square Estimate)など、多様なアルゴリズムを採用することができる。以降では、各UWB通信機12の設置位置と、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報を用いて端末位置を推定する測位方式をノーマル方式と称する。
ステップS109では、伝搬時間を取得できている各UWB通信機12の設置位置、及び、そのUWB通信機12で観測された伝搬時間に加えて、外界情報取得部F5が取得している人位置情報を併用して端末位置を推定する。例えば前側通信機12Cと後側通信機12Dでのみ伝搬時間を計測できた場合、その伝搬時間の大きさによっては、図8に示すように、車両右側と左側に携帯端末2が存在しうる領域(以降、候補領域)Ar1、Ar2が生じうる。候補領域Ar1、Ar2は、前側通信機12Cからの距離が前側観測距離となり、かつ、後側通信機12Dからの距離が後側観測距離となる地点から所定の測距誤差以内となる領域を指す。前側観測距離は、前側通信機12Cで観測された伝搬時間に基づいて定まる、前側通信機12Cから携帯端末2までの距離を指す。後側観測距離は、後側通信機12Dで観測された伝搬時間に基づいて定まる、後側通信機12Dから携帯端末2までの距離を指す。図8における1点鎖線は、前側通信機12Cから前側観測距離となる地点を示しており、2点鎖線は、後側通信機12Dから後側観測距離となる地点を示している。測距誤差は、例えば15cmや30cm、50cmなどに設定されていればよい。
このような場合において、外界情報取得部F5によって車両右側の候補領域Ar1付近に人物Pdが存在し、かつ、車両左側の候補領域Ar2に誰もいないことが確認されている場合には、携帯端末2は車両右側の候補領域Ar1に存在すると判定する。車両右側に人物Pdが存在するか否かは右側カメラ17Aの撮像画像を解析することで特定される。車両左側に人物Pdが存在するか否かは左側カメラ17Bの撮像画像を解析することで特定される。図8における星印「☆」は、携帯端末2の推定位置を概念的に示している。
なお、前側通信機12C及び後側通信機12Dから所定距離以内となる点の集合は、3次元的には、YZ平面に略平行な円環状となりうる。ただし、高さ方向において携帯端末2が存在しうる範囲には地上から2m以内となることが期待できる。少なくとも通常の車両の使用において、屋根部の上や車体下に携帯端末2が存在する可能性は無視できる。故に、上記のような例においては、候補領域は車両の左側と右側に二分割して取り扱うことができる。
また、他の例として、後側通信機12Dでのみ伝搬時間の計測に成功している場合には、車室外において後側通信機12Dから後部観測距離となる領域において人が存在する地点を端末位置として採用する。例えば図9に示すように、サイドカメラ17の撮像画像に基づいて車両左右において後側通信機12Dから後部観測距離となる地点に誰もいないことが検出されており、且つ、リアカメラ18の撮像画像に基づいて後側通信機12Dから後部観測距離となる地点に人の存在が検出されている場合には、当該リアカメラ18によって撮像されている人物の位置を端末位置として採用する。なお、人の位置が3次元モデルとして表現されている場合には、その中心/重心に相当する座標を当該人物の位置座標として用いれば良い。以降では、UWB通信機12の設置位置と、UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報とに加えて、人位置情報を併用して端末位置を推定する測位方式を人位置併用方式と称する。人位置併用方式は、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報と、人位置情報を相補的に使用して端末位置を特定する方式に相当する。
以上によって算出された端末位置は、車両制御部F7等によって参照される。例えば、ステップS107で算出された端末位置が作動エリアや車室内に該当するか否かを判定する。端末位置が作動エリア内に該当する場合には、車両制御部F7は当該判定結果に基づいてドアの開錠や施錠を実行する。
<本実施形態の効果>
ここでは比較構成を導入して本実施形態の効果について説明する。比較構成は、外界カメラの撮像画像を用いずに、複数のUWB通信機12で観測された携帯端末2までの無線信号の伝搬時間と、各UWB通信機12の設置位置のみを用いて端末位置を推定する構成である。このような比較構成では、携帯端末2と通信可能なUWB通信機12の数が3機未満である場合には、携帯端末2の位置が不定(特定不能)となってしまう。端末位置が不定となると、携帯端末2が作動エリアに存在するのか否かを識別できず、車両Hvのドアの開錠を実施しない。つまり、ユーザとしてはPEPSシステムとしての機能を利用できなくなってしまい、利便性が低下する。
これに対し、上述した実施形態によれば、携帯端末2と通信可能なUWB通信機12が3機未満である場合には、車室外において携帯端末2はユーザに携帯されているという前提の元、外界カメラでの撮像画像に基づいて端末位置を特定する。このような構成によれば、UWB通信機12の故障又は偶発的な通信エラー等によって、携帯端末2からの応答信号を受信できたUWB通信機12の数が3機未満であっても端末位置を推定することができる。なお、携帯端末2と通信可能なUWB通信機12の数は、携帯端末2の位置を推定するために使用可能なUWB通信機12の数に相当する。上記の構成は、測距成功機の数に応じて、車室外における携帯端末2の位置の推定処理に、人位置情報を使用するかどうかを切り替える構成に相当する。
加えて、本実施形態では各UWB通信機12は、天井部やピラーの上側領域など、車室内と車室外の両方に対して見通しの良い場所に搭載されている。一般的に、UWB通信で使用されるインパルス信号など、1GHz以上の電波(以降、高周波電波)は、金属によって反射されやすい。また、高周波電波は、人体によって吸収されやすい。そのため、高周波電波の進行方向に、金属体や人体といった電波を反射/吸収する物体(以降、遮蔽物)が存在する場合、当該遮蔽物を回り込むように(つまり回折して)伝搬したり、遮蔽物で反射されたりする。
携帯端末2とUWB通信機12とが回折や反射によって(つまり非直接的に)通信している場合、当該UWB通信機12から携帯端末2までの推定距離に誤差が生じうる。特に、携帯端末2がUWB通信機12の見通し外にあることに起因して、UWB通信機12と携帯端末2とが、他車両等の構造物での反射によって通信を実施している場合には、より一層の誤差が含まれうる。
そのような課題に対し、本実施形態では各UWB通信機12は、車室内と車室外の両方に対して見通しの良い場所に搭載されている。そのような搭載態様によれば、携帯端末2との通信態様が非直接的な通信となる可能性を低減できる。換言すれば、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離に、無線信号の回折や反射に由来する誤差が含まれる恐れを低減できる。その結果、より一層精度良く端末位置を推定可能となる。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[変形例1]
上述した実施形態では、測距成功機が3機未満である場合に人位置情報を併用して端末位置を推定する態様を開示したが、端末位置の推定に人位置情報を併用する条件はこれに限定されない。例えば位置推定部F6は、測距成功機の数が3機以上である場合にも人位置情報を併用して端末位置を推定するように構成されていても良い。以下、当該技術思想に基づく位置推定部F6の作動例について変形例1として図10を用いて説明する。
図10に示すフローチャートはステップS108の代替処理である。本変形例の位置推定部F6は、測距成功機の数が3機以上である場合には、伝搬時間を取得できている各UWB通信機12の設置位置と、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に基づいて携帯端末2の位置を算出する(ステップS201)。
次に、外界情報取得部F5から人位置情報を取得し、ステップS201で推定した端末位置(以降、推定位置)に人が存在するか否かを判定する(ステップS202)。推定位置に人が存在する場合には(ステップS202 YES)、その推定位置を端末として採用する(ステップS203)。一方、推定位置に人が存在しない場合には(ステップS202 NO)、外界情報取得部F5から提供されている人位置情報に基づき、推定位置から所定の補正許容距離以内に人が存在するか否かを判定する(ステップS204)。補正許容距離は、後述するステップS205にて端末位置を推定位置近傍に存在する人の位置へと補正する処理を実施するための閾値としての機能するパラメータである。補正許容距離は、ノーマル測位方式の測位誤差の許容値に応じた値に設定されている。補正許容距離は、例えば30cmや50cmなどに設定されていれば良い。
推定位置から補正許容距離以内に人が存在する場合には(ステップS204 YES)、その人物(推定位置から補正許容距離以内に存在する人物)の位置を、端末位置として採用する(ステップS205)。すなわち、推定位置を人位置へと補正した上で、端末位置として採用する。一方、推定位置から補正許容距離以内に人が存在しない場合には(ステップS204 NO)、端末位置は不定として判断する(ステップS206)。
以上の制御態様によれば、反射等の影響によって一部のUWB通信機12にて観測された伝搬距離に誤差が含まれ、測位結果に数10cm程度の誤差が生じた場合であっても、端末位置を正しい位置へと補正することができる。つまり、端末位置の推定精度を高めることができる。
[変形例2]
スマートECU11は、外界/車室内カメラが取得する撮像画像から、ユーザの外観特徴を日々学習し、その外観特徴を用いて外界カメラによって撮像されている人物(以降、被検出者)がユーザであるか否かを識別するように構成されていても良い。被検出者は、車両Hv周辺に存在する人物に相当する。ユーザではない被検出者とは、例えば、通行人等である。
ユーザの外観特徴としては、ユーザが着用したことがある靴や、衣服、鞄、時計、アクセサリなどの画像、顔画像、立ち方(足の開き度合い)、身長、体格などを採用可能である。ユーザの外観特徴は、車両エントリー時やエンジン始動時に、車両に搭載されているカメラを用いて収集されれば良い。ユーザの外観特徴を示すデータを格納している記憶装置(以降、外観特徴記憶部M1)は、スマートECU11のフラッシュメモリ112を用いて実現されている。なお、外観特徴記憶部M1は外部サーバが備えていてもよい。
本変形例の外界情報取得部F5は、外界カメラの撮像画像に基づいて車両Hv周辺に人の存在を検出した場合に、その検出人物が、それまでに取得できたユーザの外観特徴を含む人物であるか否かを判定する。例えば検出人物が、以前ユーザが着用していた靴と類似度が高い靴を着用している場合には、当該検出人物は、ユーザの外観特徴を備える人物であると判定する。ユーザの外観特徴を含む人物とは、ユーザの可能性がある人物に相当する。外界情報取得部F5は、検出人物がユーザの外観特徴を備えているかを含めた人位置情報を位置推定部F6に提供する。便宜上、外界情報取得部F5において、検出人物がユーザの外観特徴を備えるか否かを判定する機能をユーザ尤度判定部F51と称する。ユーザ尤度判定部F51は、被検出者がユーザである可能性を評価する構成に相当する。図11は本変形例における外界情報取得部F5の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
本変形例の位置推定部F6は、例えばステップS109やステップS205など、人位置情報を併用して端末位置の推定を行う際には、外界情報取得部F5によってユーザの外観特徴を備えると判断されている人物の位置情報のみを用いる。なお、ユーザ尤度判定部F51は、検出人物がユーザである可能性(以降、ユーザ尤度)を、複数種類の外観特徴を用いてスコア化して出力されるように構成されていても良い。その場合、位置推定部F6は、人位置情報を併用して端末位置の推定を行う際には、ユーザ尤度が一定閾値上なっている人物の位置情報のみを用いるように構成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、通行人など、ユーザではない人物の位置情報を用いて端末位置を推定する恐れを低減することができる。つまり、端末位置を誤判定する恐れをより一層低減できる。また、車両Hvの周辺に複数の人物が存在する場合であっても、端末位置の推定に使用すべき人物を絞ることができ、端末位置が不定となる恐れを低減できる。
[変形例3]
マルチパス環境下ではUWB通信機12から携帯端末2までの推定距離に誤差が含まれやすくなる。例えば図12に示すように、携帯端末2がUWB通信機12からの信号を直接的には受信できず、隣接車両/壁等の反射物4での反射によって受信する位置に存在する場合には、伝搬時間として数ナノ秒程度の遅延が生じうる。その結果、UWB通信機12から携帯端末2までの推定距離に誤差が生じ、端末位置の推定精度が劣化する。
そのような事情を鑑みると、位置推定部F6は、車両Hvの周辺がマルチパス環境下である場合には、人位置情報を併用して端末位置を推定するように構成されていることが好ましい。以下、当該技術思想に基づくスマートECU11の構成の一例を変形例3として開示する。なお、ここでのマルチパス環境とは、車両Hvから所定距離(例えば1m)以内に、他車両や壁、柱などの反射物が存在する環境を指す。
本変形例における外界情報取得部F5は、図13に示すように、車両Hvがマルチパス環境下にあるか否かを判定する通信環境判定部F52を備える。通信環境判定部F52は、外界カメラの撮像画像を解析することで自車両の周りがマルチパス環境であるか否かを判定する。より具体的には、通信環境判定部F52は、サイドカメラ17やリアカメラ18の撮像画像を解析し、車両Hvから1m以内に他車両や壁、柱などの反射物4が存在するか否かを判定する。そして、車両Hvから1m以内に反射物4が存在する場合には、車両Hvの周辺はマルチパス環境下であると判定する。車両周辺がマルチパス環境であるか否かの判定は、車両Hvが駐車された時点や、ユーザの接近を検出したタイミング(換言すれば携帯端末2との通信接続が確立された時点)で実施されれば良い。
本変形例の位置推定部F6は、通信環境判定部F52によって自車両はマルチパス環境下にあると判定されている場合、実施形態や変形例1で開示したように、各UWB通信機12から携帯端末2までの距離情報に加えて、人位置情報を併用して、端末位置を決定する。このような構成によれば、車両Hvの駐車位置がマルチパス環境下である場合にも、端末位置を誤判定する恐れを低減できる。
なお、自車両周辺がマルチパス環境であるか否かの判断方法は適宜変更可能である。例えば通信環境判定部F52は、携帯端末2からの信号の受信状況に基づいて、マルチパス環境下であるか否かを判断しても良い。例えば、携帯端末2からのBLE信号のSN比が所定の閾値未満である場合に、自車両周辺はマルチパス環境であると判定してもよい。また、通信環境判定部F52は、駐車中位置推定処理の結果に基づいて自車両がマルチパス環境下にあるか否かを判定するように構成されていても良い。例えばステップS204にて否定判定が行われた場合に、自車両周辺はマルチパス環境であると判定してもよい。
[変形例4]
位置推定部F6は、不具合が生じているUWB通信機12が存在することを条件として、各UWB通信機12の設置位置及び携帯端末2までの距離情報に加えて、人位置情報を併用して端末位置を決定するように構成されていてもよい。そのような構成によれば、不具合機が存在していることに起因して、測位精度が劣化したり、端末位置を推定不能となったりする恐れを低減できる。不具合が生じているUWB通信機12が存在するか否かは通信機診断部F4によって判断されれば良い。上記の構成は、通信機診断部F4によって不具合が生じていると判定されているUWB通信機12の数に応じて、車室外における端末位置の推定処理に、人位置情報を使用するかどうかを切り替える構成に相当する。
また、他の態様として、位置推定部F6は、健全機の数が3機未満となっていることを条件として、各UWB通信機12の設置位置及び携帯端末2までの距離情報に、人位置情報を併用して端末位置を決定するように構成されていてもよい。なお、位置推定部F6が端末位置の推定に人位置情報を利用する条件は適宜組み合わせて実施することができる。例えば、健全機の数や、測距成功機の数、車両Hvの周辺環境など、複数の要素を考慮して、端末位置の推定に人位置情報を利用するか否かを切り替えるように構成されていても良い。また、位置推定部F6は、駐車中位置推定処理においては常に人位置情報を併用するように構成されていても良い。その他、雨天時や夜間など、人位置情報の精度が劣化する場合には、人位置情報を併用しないように構成されていても良い。つまり、位置推定部F6は、人位置情報の精度/信頼度に応じて、車室外における携帯端末2の位置の推定処理に人位置情報を使用するか否かを切り替えるように構成されていても良い。
[変形例5]
以上では、駐車中位置推定処理において所定の条件が充足されている場合に、人位置情報を併用して端末位置を決定する態様を開示した。つまり、車両が駐車されていることを条件として、各UWB通信機12が生成した距離情報と、各UWB通信機12の設置位置と、人位置情報とに基づいて、車室外における端末位置を推定する構成を開示した。しかしながら、スマートECU11は、車両が駐車されていない場合にも、人位置情報を併用して端末位置を推定するように構成されていても良い。スマートECU11は、車両が空車状態であることを条件として、人位置情報を併用して端末位置を推定するように構成されていればよい。
例えばスマートECU11は、車室外に存在するユーザのもとへ車両Hvが無人で自動走行している場合にも、人位置情報を併用して端末位置を推定するように構成されていても良い。車室外に存在するユーザのもとへの自動走行は、例えば車両Hvを自動走行させるECU(いわゆる自動運転ECU)は、GNSS等によって特定されたユーザの概略的な位置情報を用いて実施されれば良い。GNSS等によって定まるユーザの概略的な位置情報は、携帯端末2から広域無線通信網を介して車両Hvに提供されれば良い。スマートECU11は、GNSSによって定まるユーザの位置情報に基づいて車両Hvがユーザ付近に接近した後に、駐車中位置推定処理と同様の手法によってユーザの詳細位置を特定する。車両Hvを自動走行させるECU(いわゆる自動運転ECU)は、スマートECU11が特定したユーザの詳細な位置情報を用いて、ユーザの眼の前に助手席/運転席が位置するように停車する。このような構成によれば、ユーザが車両Hvにアプローチするシーンだけでなく、車両Hvがユーザにアプローチするシーンにも、本開示の技術思想を適用することができる。
[変形例6]
上述した実施形態では、外界カメラとして左右のサイドカメラ17とリアカメラ18とを用いる態様を開示したが、外界カメラとして採用可能な構成はこれに限らない。例えば外界カメラは、車室内及び車室外を撮像できるように、車室内天井部に取り付けられた広角カメラであってもよい。外界カメラは、少なくとも車室外の一部を撮像するように構成されていればよく、車室内も撮像範囲に含むものであってもよい。外界カメラとしての車室内に取り付けられているカメラは、360度撮像可能に構成されていることが好ましい。ここでの広角カメラとは撮像画角が120度以上に設定されているカメラを指す。外界カメラは複数の広角カメラを用いて実現されていても良い。
また、以上では車両Hvの周辺における物体の位置及び種別を示す情報を出力するセンサ(以降、外界センサ)として外界カメラを採用した構成を開示したが、外界センサとして採用可能なデバイスはこれに限らない。外界センサは、例えばレーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波センサ、赤外線センサ、光センサ、及び、それらの組み合わせによって実現されればよい。外界センサは人物の所在を示すデータを出力するものであれば良い。外界センサとしては多様な人感センサを採用することができる。外界センサとしてレーザレーダや、ミリ波レーダ、超音波センサなどを用いる場合には、検出物が人間に該当するか否かは、反射強度や輪郭形状など、所定の特徴量を用いて識別されれば良い。ミリ波レーダ等を用いた物体検出及び種別識別方法としては、多様なアルゴリズムを採用可能である。なお、個々の外界センサの検出範囲は適宜設計されれば良いが、少なくとも作動エリアを包含するように構成されていることが好ましい。
[変形例7]
UWB通信機12の設置態様(具体的には設置位置や設置数)は上述した態様に限らない。例えば右側通信機12Aや左側通信機12Bは、Aピラーや、Cピラー、前輪付近やフロントコーナー付近、サイドミラーに配置されていても良い。右側通信機12Aや左側通信機12Bは車両Hvの側面部に取り付けられていればよい。また、前側通信機12Cは、インストゥルメントパネルの車幅方向中央部や、運転席の正面部、センターコンソールなどに設置されていてもよい。後側通信機12Dは、後部座席の車幅方向中央部に埋没されていても良い。或る部材の付近とは、当該部材から例えば30cm以内となる領域を指す。
その他、UWB通信機12の取付位置としては、Bピラー(センターピラー)や、インストゥルメントパネル、センターコンソール、オーバーヘッドコンソール、ルームミラー付近、リアガラスの上端部などを採用可能である。UWB通信機12は、車両Hvの側面部と屋根部との境界付近(以降、側面上端部)に配置されていても良い。このような構成は、UWB通信機12をサイドウインドウの上側に位置するフレーム部分に設けた構成に相当する。
また、車両Hvのボディが電波を通す材料(例えば樹脂)を用いて実現されている場合には、UWB通信機12の取付位置としては、運転席及び助手席用の外側ドアハンドルや、運転席及び助手席用の内側ドアハンドル付近、サイドシルなども採用可能である。車載システム1は車両Hvの外面部に配置されたUWB通信機12を備えていても良い。ここでの外面部とは、車両Hvにおいて車室外空間に接するボディ部分であって、車両Hvの側面部、背面部、及び前面部が含まれる。加えて、車載システム1は、トランク内部に取り付けられたUWB通信機12や、トランクドアハンドル付近に取り付けられたUWB通信機12を備えていてもよい。
また、スマートECU11と接続されているUWB通信機12の数は3機や5機、6機以上であってもよい。例えばスマートECU11に接続されるUWB通信機12は、右側通信機12A、左側通信機12B、及び、後側通信機12Dの3つだけであってもよい。スマートECU11は少なくとも3つのUWB通信機12と接続されていればよい。
[変形例8]
上述した実施形態では距離情報として片道分の伝搬時間を用いる態様を開示したが、距離情報はラウンドトリップ時間Tpであってもよい。また、距離情報は、伝搬時間に光速を乗じることによって、携帯端末2までの距離を直接的に示すデータであってもよい。なお、上述した実施形態ではラウンドトリップ時間Tpから伝搬時間を算出する態様を開示したがこれに限らない。例えば、各UWB通信機12と携帯端末2が完全に同期している場合には、各UWB通信機12は、携帯端末2がインパルス信号を送信したはずの時刻と、携帯端末2からのインパルス信号を受信した時刻との差から伝搬時間を算出しても良い。携帯端末2がインパルス信号を送信したはずの時刻は、例えば携帯端末2がインパルス信号を送信するタイミングを予め規定しておくことによって算出可能である。
[変形例9]
伝搬時間(ひいては距離)の推定のために送受信する信号は、単発のインパルス信号ではなく、図14に示すように一定の長さを有するパルス系列信号であってもよい。パルス系列信号は、送信元情報と宛先情報とを含むことが好ましい。パルス系列信号が送信元情報と宛先情報とを含む場合には、ホスト機以外のUWB通信機12の動作を制限せずとも、ホスト機以外のUWB通信機12が応答信号を送信することを抑制できる。なお、本変形例においてはパルス系列信号の長さ(以降、信号長)Tcの想定値を用いてラウンドトリップ時間Tpから伝搬時間Taを算出すれば良い。すなわち、Ta=(Tp-Tb-Tc×2)/2として伝搬時間Taを算出すれば良い。
[変形例10]
スマートECU11及びUWB通信機12が備える機能の配置は、適宜変更可能である。例えばスマートECU11が備える機能の一部(例えば通信機診断部F4)は、UWB通信機12が備えていても良い。また、UWB通信機12が備える機能の一部(例えば伝搬時間計測部33)は、スマートECU11が備えていても良い。人位置情報を生成する機能は、スマートECU11以外のECUが備えていても良い。
[変形例11]
上述した実施形態では、UWB通信のインパルス信号を用いて、基準局としてのUWB通信機12から携帯端末2までの距離を計測する態様を開示したが、これに限らない。例えば携帯端末2までの距離を推定する車載通信機は、Bluetoothや、Wi-Fi、ZigBee等の近距離無線通信規格に準拠した無線通信を実施する通信装置であってもよい。つまり、車両Hvに搭載されている基準局としての車載通信機は、Bluetoothや、Wi-Fi、ZigBee等の近距離無線通信規格に準拠した無線信号を用いて携帯端末2までの距離情報を取得するように構成されていても良い。車載通信機と携帯端末2とは、1GHz以上の無線信号を用いて距離を計測するように構成されていることが好ましい。
また、以上では無線信号の伝搬時間を用いて車載通信機から携帯端末2までの距離を推定する態様を開示したが、これに限らない。車載通信機から携帯端末2までの距離は、無線信号の受信強度に基づいて特定されるように構成されていても良い。例えば各車載通信機は、携帯端末2から送信された信号の受信強度に基づいて距離を推定するように構成されていても良い。受信強度もまた距離情報に相当する。
<付言>
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
なお、ここでの制御部とは、例えばスマートECU11である。また、携帯側制御部23も、上記の制御部に含まれうる。スマートECU11が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。スマートECU11が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。上述した実施形態ではスマートECU11はCPUを用いて実現されているものとしたが、スマートECU11の構成はこれに限定されない。スマートECU11は、CPU111の代わりに、MPU(Micro Processor Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、データフロープロセッサ(DFP:Data Flow Processor)を用いて実現されていてもよい。また、スマートECU11は、CPU111や、MPU、GPU、DFPなど、複数種類のプロセッサを組み合せて実現されていてもよい。さらに、スマートECU11が提供すべき機能の一部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いて実現されていても良い。携帯側制御部23も同様である。