JP7282103B2 - ステンレス鋼板カーボン複合材及びその用途等 - Google Patents
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Description
ここで、図5は、燃料電池17を構成する単位セルの構成を示す分解図であり、図6は、図5に示す燃料電池用セパレータ5の構成を示す図である。図6(a)は、平面図であり、図6(b)は、図6(a)の線X-Yにとった断面図である。
特許文献1及び2に記載されたステンレス鋼板カーボン複合材では、主に耐食性の確保ためにクロム(Cr)の含有率が高い(16.00質量%以上)ステンレス鋼を採用している。Crの含有率が高いと、厚く緻密な酸化皮膜が表層に形成され易く、導電性が低下する傾向がある。しかも、そのような厚く緻密な酸化皮膜は安定性が高いため、ステンレス鋼の表面において他の材料との結合が弱くなる可能性がある。結合が弱いと、基材の加工性(すなわち、基材とカーボン層との密着性。特に断らない限り、本願においては基材とカーボン層との密着性のことを基材についての「加工性」とする。)が不十分になる虞がある。このように、特許文献1及び2に記載のステンレス鋼板カーボン複合材には、導電性及び加工性について更なる改善の余地があると考えた。
このような導電性及び加工性(カーボン層の密着性)に関する考えの下に、低クロム含有のステンレス鋼を基材とし、これに炭素質材とマトリックス樹脂とを含むカーボン層を積層させた複合材を作成し、導電性及び加工性を検討した。この複合材では、導電性及び加工性(カーボン層との密着性)が改善された。しかしながら、意外なことには、この複合材では、カーボン層におけるマトリックス樹脂が劣化してしまい耐食性が低下するといった別の問題が発生することが判明した。
なお、ステンレス鋼の表層でのCu濃化自体は、既に特許文献3において示されている。しかしながら、特許文献3には、マトリックス樹脂を有するカーボン層を積層させることについて開示が無く、濃化したCuによるマトリックス樹脂の劣化についての配慮はなされていない。すなわち、燃料電池用セパレータの分野においては、このような基材とカーボン層との併用による銅害は課題と認識されておらず、ステンレス鋼基材の表層に着目した、導電性、加工性及び耐食性の良好なステンレス鋼板カーボン複合材の開発はこれまでなされていなかった。
また、本発明の他の目的は、このようなステンレス鋼板カーボン複合材を用いた燃料電池用のセパレータ、セル及びスタックを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このようなステンレス鋼板カーボン複合材を用いた電気化学式水素圧縮機用セパレータ及び電気化学式水素圧縮機を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記のようなステンレス鋼板カーボン複合材やそれを用いた燃料電池用のセパレータ、セル及びスタック等に適用可能であるステンレス鋼板を提供することにある。
(1)ステンレス鋼製の板状基材の少なくとも片面に、炭素質材と熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂とを含むカーボン層が積層されたステンレス鋼板カーボン複合材であり、
前記基材は、少なくとも、炭素(C)を0.001~0.2質量%、クロム(Cr)を9.0質量%以上16.0質量%未満及び銅(Cu)を0.005~1.0質量%含有すると共に、グロー放電発光分光分析法による基材表層の厚み方向の定量元素分析において、以下の(i)で定義される測定範囲のCu含有量が0.010~0.30質量%、及び以下の(ii)で定義される測定範囲のC含有量が2~15質量%である、ステンレス鋼板カーボン複合材。
(i)基材表層において計測されるCuのピーク強度が最大となる位置Pを挟んで、この位置Pにおけるピーク強度(最大ピーク強度)の1/50のピーク強度が計測される基材中心側の位置D1と、この位置D1と同じピーク強度が基材表面側において計測される位置D2とを結ぶ範囲。
(ii)前記位置Pを挟んで、この位置PにおけるCのピーク強度の1/50の強度が計測される基材中心側の位置D3と、基材表面側における前記位置D2とを結ぶ範囲。
(2)前記基材は、以下の化学組成を有する(1)に記載のステンレス鋼板カーボン複合材。
C:0.001~0.2質量%、
Si:0.01~2.0質量%、
Mn:0.01~2.5質量%、
Al:0.001~0.5質量%、
Cr:9.0質量%以上16.0質量%未満、
Cu:0.005~1.0質量%、
P:0.1質量%以下、
S:0.01質量%以下、
Ni:0~0.3質量%、
Ti:0~2.0質量%、
Mo:0~3.0質量%、
V:0~1.0質量%、
Nb:0~1.0質量%、
W:0~1.0質量%、
Ta:0~1.0質量%、
Sb:0~1.0質量%、
Pb:0~1.0質量%、並びに
残部:Feおよび不純物。
(3)前記(1)又は(2)に記載のステンレス鋼板カーボン複合材を用いた燃料電池用セパレータ。
(4)前記(3)に記載の燃料電池用セパレータを備えた燃料電池用セル。
(5)前記(4)に記載の燃料電池用セルを備えた燃料電池スタック。
(6)前記(1)又は(2)に記載のステンレス鋼板カーボン複合材を用いた電気化学式水素圧縮機用セパレータ。
(7)前記(6)に記載の電気化学式水素圧縮機用セパレータを備えた電気化学式水素圧縮機。
(8)ステンレス鋼板であって、
少なくとも、炭素(C)を0.001~0.2質量%、クロム(Cr)を9.0質量%以上16.0質量%未満及び銅(Cu)を0.005~1.0質量%含有すると共に、グロー放電発光分光分析法による表層の厚み方向の定量元素分析において、以下の(i’)で定義される測定範囲のCu含有量が0.008~0.28質量%、及び以下の(ii')で定義される測定範囲のC含有量が1.8~13.5質量%である、ステンレス鋼板。
(i’)前記鋼板の表層において計測されるCuのピーク強度が最大となる位置P’を挟んで、この位置P’におけるピーク強度(最大ピーク強度)の1/50のピーク強度が計測される鋼板中心側の位置D1’と、前記鋼板の表面とを結ぶ範囲。
(ii’)前記位置P’を挟んで、この位置P’におけるCのピーク強度の1/50の強度が計測される鋼板中心側の位置D3’と、前記鋼板の表面とを結ぶ範囲。
本実施形態のステンレス鋼板カーボン複合材は、ステンレス鋼製の板状基材の少なくとも片面に、炭素質材と熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂とを含むカーボン層が積層されたものである。前記板状基材は、少なくとも、炭素(C)、クロム(Cr)及び銅(Cu)を所定量含有すると共に、グロー放電発光分光分析法による基材表層の厚み方向の定量元素分析において、Cu及びCが所定の含有量となっている(濃化されている)。
本実施形態で使用されるステンレス鋼製の板状基材(ステンレス鋼板、以下、単に「板状基材」又は「基材」と言う場合がある。)については、少なくとも、炭素(C)、クロム(Cr)及び銅(Cu)を所定量含有するものであれば特に制限されるものではないが、好ましくは後述する化学組成を有するものを用いる。例えば、このような化学組成を有する鋼を真空炉に溶解し、インゴットに造塊し、その後、熱間鍛造・熱間圧延・焼鈍・冷間圧延による工程を経て、ステンレス鋼板を得ることができる。これらの処理条件などは公知の方法を用いることができる。なお、市販品としては、例えば、フェライト系ステンレス鋼としてSUS409、SUS405、SUS410L、SUS429等や、マルテンサイト系ステンレス鋼としてSUS403、SUS410、SUS420等を例示することができる。このようなステンレス鋼製の板状基材(ステンレス鋼板)は、ステンレス鋼板カーボン複合材を製造するための中間素材として用いることができ、また、単独で使用してもよい。
炭素(C)は、固溶強化元素であり、ステンレス鋼の強度(例えば、引張強度)向上に寄与する。また、後述するとおり、基材表層に濃化されて、カーボン層との密着性向上に寄与する元素であると考えられる。C含有量が0.001%未満であって低すぎる場合には、上記の強度発現や基材表層への濃化の効果が得られにくい。一方で、C含有量が0.2%を超えて高すぎると、基材の製造過程で炭化物が多数生成され、これら炭化物が破壊の起点となってステンレス鋼の成形性が低下する虞がある。C含有量の好ましい下限は0.002質量%であり、さらに好ましい下限は0.004%である。また、C含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましい上限は0.1%である。
ケイ素(Si)は、脱酸に有効な元素である。Si含有量が0.01%未満であって低過ぎると、脱酸が不十分になる虞がある。一方で、Si含有量が2.0%を超えて高すぎると、ステンレス鋼の成形性が低下する虞がある。Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.04%である。また、Si含有量の好ましい上限は1.5%であり、さらに好ましい上限は1.0%である。
マンガン(Mn)は、硫黄(S)による熱間加工性の低下を抑制する効果を有する。Mnはさらに、ステンレス鋼を脱酸する効果も有する。Mn含有量が0.01%未満であって低過ぎると、これらの効果が得られにくい。一方で、Mn含有量が2.5%を超えて高すぎると、σ相等の金属間化合物相の析出が促進されて組織安定性が低下するとともに、ステンレス鋼の靱性及び延性が低下する虞がある。Mn含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましい下限は0.03%である。また、Mn含有量の好ましい上限は2.0%であり、さらに好ましい上限は1.5%である。
アルミニウム(Al)は、脱酸に有効な元素である。Al含有量が0.001%未満であって低過ぎると、脱酸の効果が得られにくい。一方で、Al含有量が0.5%を超えて高すぎると、鋼の清浄度が低下し、ステンレス鋼の成形性及び延性が低下する。Al含有量の好ましい下限は0.002%であり、さらに好ましい下限は0.005%である。また、Al含有量の好ましい上限は0.4%であり、さらに好ましい上限は0.3%である。
クロム(Cr)は、ステンレス鋼の耐食性を確保するのに有効な元素である。Cr含有量が9.0%未満であって低すぎると、不動態皮膜を形成することが困難となるため耐食性を確保できない虞がある。一方で、Cr含有量が16.0%以上で高すぎると、形成される不動態皮膜が厚いためステンレス鋼の導電性が低下する虞がある。さらに、そのような厚い不動態皮膜は安定性が高いため、鋼材の最表面において他の材料と強固な結合を形成することが困難となり、加工性(カーボン層との密着性)が低下する虞がある。本実施形態においては、このように従来よりも低Cr含有量のステンレス鋼を基材として用いるが、耐食性については、後述するカーボン層を有することにより補うことができる。Cr含有量の好ましい下限は9.2%であり、さらに好ましい下限は9.5%である。また、Cr含有量の好ましい上限は15.5%であり、さらに好ましい上限は15.0%である。
銅(Cu)は、一般的には、強度・耐食性を改善するのに有効な元素である。本実施形態においては、基材中のCu含有量が0.005%未満であって低すぎると、上記の一般的な効果が得られにくいと共に、後述する表層に濃化されるCu含有量を確保することができず、導電性を改善する効果が得られない虞がある。一方で、Cu含有量が1.0質量%を超えて高すぎると、ステンレス鋼の熱間加工性が低下する虞があると共に、後述する表層に濃化されるCu含有量が過剰となって、基材に積層するカーボン層中のマトリックス樹脂を劣化させ(銅害)、それにより耐食性が低下してしまう虞がある。Cu含有量の好ましい下限は0.006%であり、さらに好ましい下限は0.008%である。また、Cu含有量の好ましい上限は0.95%である、さらに好ましい上限は0.90%である。
リン(P)は不純物である。Pは、凝固時に粒界に偏析して粒界を脆化することから、その含有量は0.1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.04%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下であり、低ければ低いほど望ましい。
硫黄(S)は不純物である。Sについても、凝固時に粒界に偏析して粒界を脆化することから、その含有量は0.01%以下であることが好ましく、より好ましくは0.004%以下であり、さらに好ましくは0.001%以下であり、低ければ低いほど望ましい。
ニッケル(Ni)は、添加が必須ではないが、ステンレス鋼の耐食性・靱性を改善する効果があるため、必要に応じて含有させてもよい。一方で、Ni含有量が0.3%を超えて高すぎると、フェライト及びオーステナイトの二相組織となりやすく、二相組織では薄板成形性に方向性があり、燃料電池セパレータ用素材としての成形性が不十分となる虞がある。Ni含有量の好ましい上限は、0.25%であり、さらに好ましい上限は0.2%である。なお、上記耐食性・靱性の効果を得るためのNi含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましい下限は0.01%である。
チタン(Ti)は、添加が必須ではないが、鋼中で、CおよびNと反応し炭化物および窒化物を形成することができるCおよびNの安定化元素であることから、必要に応じて含有させてもよい。一方で、Ti含有量が2.0%を超えて高すぎると、成形性を劣化させる虞がある。Ti含有量の好ましい上限は、1.0%であり、さらに好ましい上限は0.5%である。なお、上記安定化の効果を得るための、Ti含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましい下限は0.005%である。
モリブデン(Mo)は、添加が必須ではないが、ステンレス鋼の耐食性を高めることができる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。一方で、Mo含有量が3.0%を超えて高すぎると、σ相等の金属間化合物の析出回避が困難であり、鋼の脆化の問題を引き起こし、生産が困難となる恐れがある。Mo含有量の好ましい上限は、1.5%であり、さらに好ましい上限は1.0%である。上記耐食性の効果を得るための、Mo含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましい下限は0.005%である。
バナジウム(V)は、添加が必須ではないが、ステンレス鋼の耐食性を改善するのに有効な元素であり、必要に応じて含有させてもよい。一方で、V含有量が1.0%を超えて高すぎると、加工性が低下する恐れがある。V含有量の好ましい上限は、0.8%であり、さらに好ましい上限は0.5%である。上記耐食性の効果を得るための、V含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましい下限は0.002%である。
ニオブ(Nb)は、添加が必須ではないが、Ti同様に、鋼中でCおよびNと反応し炭化物および窒化物を形成することができるCおよびNの安定化元素であることから、必要に応じて含有させてもよい。一方で、Nb含有量が1.0%を超えて高すぎると、成形性が低下する虞がある。Nb含有量の好ましい上限は、0.8%であり、さらに好ましい上限は0.5%である。上記安定化の効果を得るための、Nb含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましい下限は0.0005%である。
タングステン(W)は、添加が必須ではないが、耐食性を高めることができる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。一方で、W含有量が1.0%を超えて高すぎると、成形性が低下する虞がある。W含有量の好ましい上限は、0.8%であり、さらに好ましい上限は0.5%である。上記耐食性の効果を得るための、W含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましい下限は0.002%である。
タンタル(Ta)は、添加が必須ではないが、耐食性を改善することができる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。一方で、Ta含有量が1.0%を超えて高すぎると、成形性が低下する虞がある。Ta含有量の好ましい上限は、0.8%であり、さらに好ましい上限は0.5%である。上記耐食性の効果を得るための、Ta含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましい下限は0.0002%である。
アンチモン(Sb)は、添加が必須ではないが、耐食性を改善することができる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。一方で、Sb含有量が1.0%を超えて高すぎると、成形性が低下する恐れがある。Sb含有量の好ましい上限は、0.5%であり、さらに好ましい上限は0.2%である。上記耐食性の効果を得るための、Sb含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましい下限は0.0002%である。
鉛(Pb)は、添加が必須ではないが、耐食性を改善することができる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。一方で、Pb含有量が1.0%を超えて高すぎると、成形性が低下する恐れがある。Pb含有量の好ましい上限は、0.5%であり、さらに好ましい上限は0.2%である。上記耐食性の効果を得るための、Pb含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましい下限は0.0002%である。
本実施形態における基材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、基材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから不可避的に混入されるものであって、本実施形態に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(ii)C元素の含有量の測定については、前記Cuのピーク強度が最大となる位置Pを基材由来のCの分布が最大となる位置と仮定して、この位置Pを始点とし、基材の切削面側(基材中心側)においてC濃度が位置PにおけるC濃度の1/50となる位置(これを、D3とする。)を終点とした範囲(A)と、位置Pを始点として前記基材表層側における位置D2を終点とする範囲(B)との合計の厚さ範囲を、C含有量についての「測定範囲」とすることができる。(i)のCu元素の測定と同様にして、この測定範囲における積算のC含有量の全元素含有量に対する割合を求める。こうして求めた割合を、本実施形態のステンレス鋼板カーボン複合材における基材表層のC含有量(質量%)とすることができる。
(i')Cuについては、上記〔1〕の方法と同じように、基材表層において測定されるCuのピーク強度が最大となる基材厚み方向の位置(P')をまずは把握し、この位置P'よりも基材厚み方向の中心側の領域において、Cuの分布が殆ど計測されなくなる位置D1'〔すなわち、位置P'におけるピーク強度(最大ピーク強度)の1/50のピーク強度が計測される位置〕を特定する。そして、基材の表面(最表面)から前記D1'までの厚さ範囲(測定範囲)における積算のCu含有量の全元素含有量に対する割合を、本実施形態の〔2〕の場合における基材表層に濃化されたCu含有量(質量%)とすることができる。
このようなステンレス鋼板を基材として用い、その表面にカーボン層を形成することにより、本発明実施形態のステンレス鋼板カーボン複合材を製造することができる。
上記の板状基材の表面に積層されるカーボン層は、炭素質材と熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂とを含むものである。カーボン層中の炭素質材(CA)とマトリックス樹脂(R)との体積比(CA/R)は、好ましくは6/4~9/1であり、より好ましくは7/3~8/2である。カーボン層の厚さは、好ましくは0.05mm以上2.0mm以下、より好ましくは0.1mm以上1.0mm以下である。この炭素質材(CA)とマトリックス樹脂(R)との体積比(CA/R)については、6/4より小さく炭素質材の比率が低過ぎると導電性が低下する虞があり、反対に、9/1より大きいとマトリックス樹脂の比率が低過ぎるために柔軟性、可撓性および耐食性に劣る虞がある。また、カーボン層の厚さについては、0.05mmより薄いと、カーボン層の僅かなクラックから腐食が始まる虞があり、反対に、2.0mmより厚いと、可撓性が劣る虞がある。
そして、この炭素質粉末の粒子径については、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern製「Mastersizer2000」等)の粒度測定計において算出されたD50(累積50体積%径)の値で表される平均粒子径が、好ましくは4μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。平均粒子径が4μmより小さいと比表面積が大きいため樹脂が粒子同士またはSUS板との接着に使用されにくく、可撓性に劣る虞がある。平均粒子径が200μmより大きいと、カーボン層を形成する際に平滑な面が得られにくく、不良率が大きくなる虞がある。
本実施形態においては、ステンレス鋼製の板状基材の表面とこの表面に積層されるカーボン層との間が、通常0.1μm以上10μm以下の接着剤層を介して接合されていてもよい。このような接着剤層を形成するための接着剤組成物については、特に制限されるものではないが、好ましくは不飽和カルボン酸若しくはその誘導体の一部又は全部がポリオレフィン樹脂にグラフトした変性ポリオレフィン樹脂を含むもの(例えば、特開2005-146178号公報参照)であるのがよく、具体的には、接着性ポリオレフィン樹脂を含む接着剤組成物(三井化学株式会社製商品名:アドマー)、不飽和カルボン酸によりグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂を含む接着剤組成物(三井化学株式会社製商品名:ユニストール)等が挙げられる。なお、ハロゲンによりグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂を含む接着剤組成物(東洋紡株式会社製商品名:トーヨータック)等も使用することができ、また、5wt%-フェノール樹脂接着剤組成物(溶媒:イソプロピルアルコール、フェノール樹脂:リグナイト株式会社製商品名:AH-1148)やエポキシ樹脂接着剤組成物(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製商品名:YSLV-80XY)等も使用することができる。この接着剤層の層厚が0.1μm未満だと接着強度が低下する虞があり、反対に、10μmを超えると作製されたステンレス鋼板カーボン複合材の導電性が低下する虞がある。
本実施形態のステンレス鋼板カーボン複合材の製造方法については、前記したような化学組成及び表層におけるCu及びC含有量を有するステンレス鋼製の板状基材を準備し(基材準備工程)、その少なくとも片面に、炭素質材と熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂とを含むカーボン層を形成する(カーボン層形成工程)。
まず、所定の化学組成を有する鋼を真空炉に溶解し、インゴットに造塊し、その後、熱間鍛造・熱間圧延・焼鈍・冷間圧延による工程を経て、板状素材を得る。各工程の処理条件などは公知の方法を用いることができる。
次いで、前記板状素材の少なくとも片面に、表面処理液により酸洗する表面処理を行う。その後、純水等で洗浄する。この表面処理により、表層に所定のCu及びC含有量を有する板状基材を得る。表面処理液として、1~10質量%濃度のフッ化水素酸水溶液、又は、フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との濃度比(HF/HNO3)が2以上であってHF濃度が2質量%以上のフッ化水素酸・硝酸混合水溶液などを用いることができる。なお、前記表面処理工程を行なうことに先駆けて、前記板状素材の少なくとも片面に、前処理液として、酸濃度25質量%以上及び塩化鉄濃度20質量%以上の塩化鉄含有酸水溶液を接触させる前処理工程を行なってもよい。
本実施形態のステンレス鋼板カーボン複合材は、柔軟性や可撓性、圧縮強度、成形性、気密性等において優れているだけでなく、導電性(低接触抵抗)と耐食性とが共に優れており、更には基材加工性(基材とカーボン層との密着性)にも優れる。本実施形態のステンレス鋼板カーボン複合材は、固体高分子形燃料電池等の燃料電池用セパレータ、レドックスフロー型2次電池用の集電板、石油精製・石油化学プラント用のガスケットやパッキン等の用途において好適に用いられる。固体高分子形燃料電池用のセパレータとして用いる場合、例えば図5に示されるように、固体高分子電解質膜6とアノード(燃料電極)7とカソード(酸化剤電極)8とからなるMEAを2枚の燃料電池用セパレータ5によって、ガスケット9を介して挟持した構成10を単位セルとして、これを数十個~数百個積層してスタックとすることができる。
本実施形態のステンレス鋼板カーボン複合材は、導電性(低接触抵抗)が優れることから水素発生反応の効率化等に寄与し、また、耐食性に優れることから耐腐食環境(湿潤、低pH)を有し、さらに、基材加工性(基材とカーボン層との密着性)に優れることから耐食性の劣化の虞等も少ないものであることから、電気化学式水素圧縮機のセパレータとして好適に使用できる。
〔ステンレス鋼製の板状素材の準備工程〕
まず、ステンレス鋼製の板状素材を以下のように準備した。すなわち、以下の表1に示すような化学組成(単位:質量%、残部はFe及び不純物)を有するステンレス鋼150kgを高周波誘導加熱方式の真空溶解炉で溶解してインゴットに造塊した。得られた150kgの鋳塊に対して、熱間鍛造を1220℃で行い、切削した後、熱間圧延を1220℃、焼鈍を1180℃で行った後、冷間圧延を1080℃、焼鈍を1080℃で繰り返し、厚さ50μmのステンレス鋼箔を得た。これを板状素材a~nとした。
得られた板状素材a~nについて、表面処理を行い、各ステンレス鋼板(ステンレス鋼製の板状基材)を得た。表面処理では、表面処理液として4質量%のフッ化水素酸水溶液を用い、この表面処理液中に50℃で、それぞれの板状素材を浸漬し、酸洗した。酸洗時間は表2のとおりとした。酸洗後は、超純水を用いて表面を洗浄した。得られたステンレス鋼板(ステンレス鋼製の板状基材)をそれぞれ実施例1~14、比較例1~10に係る板状基材と称して、後述のとおりの基材表層のCu量及びC量の測定(試験例7)に供した。
2.カーボン層の積層工程
上記で得られた実施例1に係る板状基材を用いて、その表面に接着剤層を形成させた後に、さらにカーボン層を積層させた。
〔接着剤層形成工程〕
接着剤層を形成するための接着剤組成物として、変性ポリオレフィン樹脂接着剤(三井化学株式会社製、ユニストール)を用いた。そして、上記で得られた板状基材の表面に、卓上コーターを用いて塗布厚10μmとなるようにこの変性ポリオレフィン樹脂接着剤を塗布し室温中で10分乾燥させて接着剤層を形成し、実施例1における接着剤層付きの板状基材として得た。
炭素質材としては、球状黒鉛粉末(伊藤黒鉛株式会社製商品名:SG-BH、平均粒子径:20μm)及び膨張黒鉛粉末(伊藤黒鉛株式会社製商品名:EC100、平均粒子径:160μm)を使用した。マトリックス樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(PP)粉末(住友精化株式会社製商品名:フローブレンHP-8522)を使用した。そして、球状黒鉛粉末を60体積%、膨張黒鉛粉末を10体積%、及びポリプロピレン樹脂粉末を30体積%となるように混合して粉末混合物とした。この粉末混合物0.4gを、図2に示すように(この場合は、接着剤層付きのステンレス鋼製板状基材4は用いない。)プレス装置(東洋精機製作所社製卓上ホットプレスMP-SCL)の50×50×20mmの容積を持つ雌型金型に均等になるように投入し、前プレスとしてのホットプレス(圧力:2MPa、温度:180℃)によりカーボン層3(厚さ:0.1mm)とした。次いで、図2及び図3のように、この得られたカーボン層3と、前記で準備した接着剤層付きのステンレス鋼製板状基材4とを重ね、加熱温度180℃(記号T)及び圧力5MPa(記号P)で押圧し(本プレス、成型時間10分)、ステンレス鋼製板状基材4の片面にカーボン層3を形成させた。この基材片面にカーボン層が形成された複合材(「片面複合材」と称することとする。)を、後述の導電性(接触抵抗)の評価(2)(試験例6)に供した。なお、もう一方の基材面についても、同様に接着剤層及びカーボン層を形成させ、それにより、ステンレス鋼製板状基材4の両面にカーボン層3が形成された、実施例1に係るステンレス鋼板カーボン複合材1(「両面複合材」と称することとする。)として得た。
実施例1に係るステンレス鋼板カーボン複合材(両面複合材)から、2cm×2cmの試験片を切り出した。次に、図1に示すように、試験片の一方の面のカーボン層を回転式研磨機による研磨により全て除去し、基材表面を露出させた。その後、ダイプラウィンテス社製SAICAS(Surface And Interfacial Cutting Analysis System)を用いて、この露出された基材表面を切削し、基材の厚さが5μmになるまで切削を行った。
次いで、グロー放電発光分光分析法(GDS)により、前記の切削面側からの厚さ方向(すなわち、切削面側から反対の基材表層側へ向けた方向)の元素分析を行った。GDSには、堀場製作所製GD-Profiler(マーカス型高周波グロー放電発光分析装置)を用いた。アノード径(分析領域)は、直径4mmとした。RF出力は35W、スパッタリングガス種はAr、圧力は600Paとした。測定モードは、パルススパッタリングモードとし、スパッタリング間隔は300sec、測定間隔は0.04secとした。
このようにして得られた元素分析結果から、基材表層のCu及びCの含有量(質量%)を、それぞれ次の測定範囲の積分値として求めた。なお、観察範囲は十分に約200nmとしたが、Cuに関する測定範囲(D1~D2)は約10nmであり、また、Cに関する測定範囲(D2~D3)は約50nmであった。
Cu:Cuの測定ピーク強度が最大となる基材厚み方向の位置Pを特定し、この位置Pにおけるピーク強度(最大ピーク強度)の1/50のピーク強度が計測される切削面側(基材厚み方向の中心側)の位置をD1とし、この位置D1と同じピーク強度が基材表面側(測定対象表面側)において計測される位置をD2とし、これら位置D1からD2の厚さ範囲。
C:前記Cuが最大ピーク値をとる位置Pを始点として、この位置Pよりも切削面側(基材厚み方向の中心側)においてCのピーク強度が位置PにおけるCのピーク強度の1/50となる位置をD3とし、位置D3から前記D2の厚さ範囲。
得られた結果を下記の表2に示す。
燃料電池模擬環境に試験片を浸漬し、溶液中の沈殿物の有無によって耐食性を評価した。具体的には、得られた実施例1に係るステンレス鋼板カーボン複合材(両面複合材)から20mm×20mmの試験片を切り出した。この試験片を、30ppmの塩化物イオン(Cl-)を含んだ80℃の硫酸溶液中(pH3)に240時間浸漬した後、溶液の沈殿物の有無を確認し、以下の基準で評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。
◎:沈殿物無し
△:沈殿物は無いが溶液に変色が見られる
×:沈殿物あり
カーボンペーパとの接触抵抗を測定した。図4は、試験片の接触抵抗を測定する装置の構成を示す図であり、この装置を用いて接触抵抗を測定した。
まず、前記実施例1に係るステンレス鋼板カーボン複合材(両面複合材)から15mm×15mmの試験片14を切り出した。この試験片を、燃料電池用のガス拡散層として使用される1対のカーボンペーパ15〔東レ(株)製 TGP-H-90〕で挟み込み、これを金めっきした1対の白金電極16で挟んだ。各カーボンペーパ15の面積は、1cm2であった。次に、この1対の白金電極16の間に、10kgf/cm2(9.81×105Pa)の荷重を加えた。図4に、荷重の方向を白抜き矢印で示す。この状態で、1対の白金電極16間に一定の電流を流し、このとき生じるカーボンペーパ15と試験片14との間の電圧降下を測定した。この結果に基づいて抵抗値を求めた。得られた抵抗値は、試験片14の両面の接触抵抗を合算した値となるため、これを2で除して、試験片14の片面あたりの接触抵抗値とし、以下の基準で評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。
◎:5 mΩ・cm2未満
○:5 mΩ・cm2以上10mΩ・cm2未満
×:10 mΩ・cm2以上
前記実施例1に係るステンレス鋼板カーボン複合材(両面複合材)から、その製造から24時間以内に、50mm×50mmの試験片を切り出した。この試験片について、クロスカット法を用いて密着強度を評価した。試験片に対して、カッターナイフを用いてカーボン層の被覆面側から芯材であるステンレス鋼板に達する切れ込みを2mm間隔で平行に11本付けた。そして、それに垂直になるように更に11本の切れ込みを入れ、100個の碁盤目を形成させた。この碁盤目の箇所に対して、テープ剥離試験を行った。テープとして、ニチバン社製のセロテープ(登録商標)を用いた。評価面に貼り付けたテープを剥がしたときに、カーボン層が剥離した程度により、密着性を評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。
◎:いずれの格子目も剥離が見られない
○:カーボン層が0以上5%未満で剥離している
×:カーボン層が5%以上剥離している
前記実施例1に係るステンレス鋼板カーボン複合材(両面複合材)を、30日間常温常圧下で保管した。その後、両面複合材から50mm×50mmの試験片を切り出した。この試験片について、クロスカット法を用いて密着強度を評価した。試験片に対して、カッターナイフを用いてカーボン層の被覆面側から芯材であるステンレス鋼板に達する切れ込みを2mm間隔で平行に11本付けた。それに垂直になるように更に11本の切れ込みを入れ、100個の碁盤目を形成させた。この碁盤目の箇所に対して、テープ剥離試験を行った。テープとして、ニチバン社製のセロテープ(登録商標)を用いた。評価面に貼り付けたテープを剥がしたときに、カーボン層が剥離した程度により、密着性を評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。
◎:いずれの格子目も剥離が見られない
○:カーボン層が0以上5%未満で剥離している
×:カーボン層が5%以上剥離している
ステンレス鋼との接触抵抗を測定した。本接触抵抗の測定には、図7に示す装置を用いた。
前記実施例1に係る片面複合材から、15mm×15mmの試験片20を切り出した。電気化学式水素圧縮機において給電板の一つとして使用されるステンレス材(SUS316L)21を、試験片20のカーボン層が積層されていない面側に重ね、これら試験片20とステンレス材21との積層体を、金めっきした1対の白金電極23で挟んだ。ステンレス材21の面積は1cm2であり、厚みは5mmであった。次に、この1対の白金電極23の間に、10kgf/cm2(9.81×105Pa)の荷重を加えた。図7に、荷重の方向を白抜き矢印で示す。この状態で、1対の白金電極23間に一定の電流を流し、このとき生じる電気抵抗を測定した。その際に得られる電気抵抗値は、下部の白金電極23と試験片20との接触抵抗、試験片20とステンレス材21との接触抵抗、及びステンレス材21と上部の白金電極23との接触抵抗を全て合算した値(R1)となる。したがって、同じ装置を用いて、ステンレス材21のみを白金電極23で挟み込んだ場合の電気抵抗を2で除した値(R2)を求め、他方、試験片20についても、試験片20のみを白金電極23で挟み込んだ場合の電気抵抗を2で除した値(R3)を求め、これらの値の和(R2+R3)を合算の電気抵抗値(R1)から差し引いて、ステンレス材21と試験片20との接触抵抗とした。この接触抵抗の値を、以下の基準で評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。
◎:10 mΩ・cm2未満
○:10 mΩ・cm2以上20mΩ・cm2未満
×:20 mΩ・cm2以上
実施例1に係る板状基材から、2cm×2cmの試験片を切り出した。
次いで、グロー放電発光分光分析法(GDS)により、基材表面(最表面)からの厚さ方向(すなわち、基材表面から基材厚み方向の中心部に向けた方向)の元素分析を行った。GDSには、堀場製作所製GD-Profiler(マーカス型高周波グロー放電発光分析装置)を用いた。アノード径(分析領域)は、直径4mmとした。RF出力は35W、スパッタリングガス種はAr、圧力は600Paとした。測定モードは、パルススパッタリングモードとし、スパッタリング間隔は300sec、測定間隔は0.04secとした。
このようにして得られた元素分析結果から、板状基材の表層のCu及びCの含有量(質量%)を、それぞれ次の測定範囲の積分値として求めた。なお、観察範囲は十分に約200nmとしたが、Cuに関する測定範囲(D1'~D2')は約10nmであり、また、Cに関する測定範囲(D2'~D3')は約50nmであった。
Cu:Cuの測定ピーク強度が最大となる基材厚み方向の位置P'を特定し、この位置P'におけるピーク強度(最大ピーク強度)の1/50のピーク強度が計測される基材厚み方向の中心側の位置をD1'とし、板状基材最表面(これを位置D2'とする)から位置D1'までの厚さ範囲。
C:前記Cuが最大ピーク値をとる基材厚み方向の位置P'を始点として、この位置P'よりも基材厚み方向の中心側においてCのピーク強度が位置P'におけるCのピーク強度の1/50となる位置をD3'とし、板状基材最表面(位置D2')から位置D3'までの厚さ範囲。
得られた結果を下記の表2に示す。
なお、ステンレス鋼板カーボン複合材の測定における基材厚み方向の位置P、D1、D3は、それぞれ板状基材の測定における基材厚み方向の位置P'、D1'、D3'と同じであった。
前記実施例1と同じ板状素材aを用いて、表面処理(酸洗浄)の時間を30秒(実施例2)又は60秒(実施例3)に変更して得た実施例2又は3に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例2又は実施例3に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をb(実施例4)又はc(実施例5)に変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た実施例4又は5に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例4又は実施例5に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をcに変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を120秒に変更して得た実施例6に係る板状基材を使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例6に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をdに変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た実施例7に係る板状基材を使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例7に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をe(比較例1)又はf(比較例2)に変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た比較例1又は2に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、比較例1又は比較例2に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から表面処理(酸洗浄)の時間を3秒(比較例3)又は600秒(比較例4)に変更して得た比較例3又は4に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、比較例3又は比較例4に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た比較例5に係る板状基材を使用したが、接着剤層及びカーボン層を積層させず、板状基材のみとして、接触抵抗(試験例3)と耐食性(試験例2)の評価のみを行った。基材表層のCu量及びC量の測定は、上記試験例7による方法で実施した。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をg(実施例8)又はh(実施例9)に変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た実施例8又は9に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例8又は実施例9に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をiに変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た比較例6に係る板状基材を使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、比較例6に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をjに変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た実施例10に係る板状基材を使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例10に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をk(比較例7)又はl(比較例8)に変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た比較例7又は8に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、比較例7又は比較例8に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をm(実施例11)又はn(実施例12)に変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た実施例11又は12に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例11又は実施例12に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から板状素材をcに変更し、また、表面処理(酸洗浄)の時間を20秒に変更して得た実施例13に係る板状基材を使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例13に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から表面処理(酸洗浄)の時間を1200秒(比較例9)又は1000秒(比較例10)に変更して得た比較例9又は10に係る板状基材をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、比較例9又は10に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
前記実施例1から表面処理(酸洗浄)の時間を60秒に変更して得た実施例14に係る板状基材を使用し、また、接着剤層としてイソプロピルアルコールに5wt%になる様にフェノール樹脂(PF)を溶解させたフェノール樹脂接着剤(リグナイト株式会社製フェノール樹脂、商品名:AH-1148)を使用すると共に、カーボン層を得るためのマトリックス樹脂としてフェノール樹脂(リグナイト株式会社製商品名:AH-1148)を使用し、さらに、カーボン層を積層させる際の前プレス温度を80℃として本プレス温度を150℃とした以外は、実施例1と同じように接着剤層及びカーボン層を積層させて、実施例14に係るステンレス鋼板カーボン複合材(片面複合材及び両面複合材)を得ると共に、同じように各種評価を行った。
得られた結果を下記の表2に示す。
反対に、板状素材aを使用し、表面処理(酸洗処理)時間が長い板状基材を使用した比較例4及び比較例10に係るステンレス鋼板カーボン複合材は、基材表層のCu含有量が高かった。そのため、銅害によるカーボン層の劣化が見られた。また、板状素材aを使用し、表面処理(酸洗処理)時間がさらに長かった板状基材を使用した比較例9に係るステンレス鋼板カーボン複合材では、基材表層においてCu含有量が高く、かつC含有量が低かった。そのため、銅害によるカーボン層の劣化がみられ、かつ基材とカーボン層との密着性が不十分であった。
Claims (8)
- ステンレス鋼製の板状基材の少なくとも片面に、炭素質材と熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂とを含むカーボン層が積層されたステンレス鋼板カーボン複合材であり、
前記基材は、少なくとも、炭素(C)を0.001~0.2質量%、クロム(Cr)を9.0質量%以上16.0質量%未満及び銅(Cu)を0.005~1.0質量%含有すると共に、グロー放電発光分光分析法による基材表層の厚み方向の定量元素分析において、以下の(i)で定義される測定範囲のCu含有量が0.010~0.30質量%、及び以下の(ii)で定義される測定範囲のC含有量が2~15質量%である、ステンレス鋼板カーボン複合材。
(i)基材表層において計測されるCuのピーク強度が最大となる位置Pを挟んで、この位置Pにおけるピーク強度(最大ピーク強度)の1/50のピーク強度が計測される基材中心側の位置D1と、この位置D1と同じピーク強度が基材表面側において計測される位置D2とを結ぶ範囲。
(ii)前記位置Pを挟んで、この位置PにおけるCのピーク強度の1/50の強度が計測される基材中心側の位置D3と、基材表面側における前記位置D2とを結ぶ範囲。 - 前記基材は、以下の化学組成を有する、請求項1に記載のステンレス鋼板カーボン複合材。
C:0.001~0.2質量%、
Si:0.01~2.0質量%、
Mn:0.01~2.5質量%、
Al:0.001~0.5質量%、
Cr:9.0質量%以上16.0質量%未満、
Cu:0.005~1.0質量%、
P:0.1質量%以下、
S:0.01質量%以下、
Ni:0~0.3質量%、
Ti:0~2.0質量%、
Mo:0~3.0質量%、
V:0~1.0質量%、
Nb:0~1.0質量%、
W:0~1.0質量%、
Ta:0~1.0質量%、
Sb:0~1.0質量%、
Pb:0~1.0質量%、並びに
残部:Feおよび不純物。 - 請求項1又は2に記載のステンレス鋼板カーボン複合材を用いた燃料電池用セパレータ。
- 請求項3に記載の燃料電池用セパレータを備えた燃料電池用セル。
- 請求項4に記載の燃料電池用セルを備えた燃料電池スタック。
- 請求項1又は2に記載のステンレス鋼板カーボン複合材を用いた電気化学式水素圧縮機用セパレータ。
- 請求項6に記載の電気化学式水素圧縮機用セパレータを備えた電気化学式水素圧縮機。
- ステンレス鋼板であって、
少なくとも、炭素(C)を0.001~0.2質量%、クロム(Cr)を9.0質量%以上16.0質量%未満及び銅(Cu)を0.005~1.0質量%含有すると共に、グロー放電発光分光分析法による表層の厚み方向の定量元素分析において、以下の(i’)で定義される測定範囲のCu含有量が0.008~0.28質量%、及び以下の(ii')で定義される測定範囲のC含有量が1.8~13.5質量%である、ステンレス鋼板。
(i’)前記鋼板の表層において計測されるCuのピーク強度が最大となる位置P’を挟んで、この位置P’におけるピーク強度(最大ピーク強度)の1/50のピーク強度が計測される鋼板中心側の位置D1’と、前記鋼板の表面とを結ぶ範囲。
(ii’)前記位置P’を挟んで、この位置P’におけるCのピーク強度の1/50の強度が計測される鋼板中心側の位置D3’と、前記鋼板の表面とを結ぶ範囲。
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