表の簡単な列挙
(表1)sgRNA配列
(表2)欠失クローンスクリーニングのためのオリゴヌクレオチドプライマー。
(表3)反転クローンスクリーニングのためのオリゴヌクレオチドプライマー。
(表4)マウス+62欠失分析のためのオリゴヌクレオチドプライマー。
(表5)RT qPCRオリゴヌクレオチド。
(表6)BCL11Aノックダウンを達成するための、標的とするBCL11Aエンハンサー領域の位置。
(表7)0259を超えるHFb濃縮をもたらしたsgRNA配列。
(表8)BCL11Aエンハンサー+62、+58、および+55機能性領域の配列。
(表9)0.259を超えるHbF濃縮をもたらしたNGA制限sgRNA配列。
詳細な説明
本明細書に記載される方法および組成物は、BCL11Aタンパク質の発現を調節するBCL11Aの約12kbのエンハンサー領域内のより明確な機能性領域の発見に一部関する。機能性領域は、UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる、ヒト2番染色体上の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および位置60718042~60718186(+62機能性領域)である。BCL11Aタンパク質は、γ-グロビン誘導を抑制することによって胎児型ヘモグロビン発現の段階特異的調節因子として作用する。
これらの領域におけるゲノム編集の妨害を、BCL11A mRNAの発現、BCL11Aタンパク質の発現について、最終的には産生された胎児型ヘモグロビン(HbF)の濃縮について、機能的に検証した。CRISPR/Cas9技術を使用して、これらの機能性領域を標的とする小分子シングルガイドRNA(sgRNA)配列を設計して、BCL11A発現を低下させ、HbF発現を増加させた。正規化されたHbF濃縮が少なくとも0.259以上である、妨害を示すsgRNA配列は、表7に示され、SEQ ID NO:1~94として同定される。
特に、+58機能性領域を標的としかつ妨害することは、超高度なHbF濃縮をもたらしたが、一方で、+55または+62機能性領域を標的としかつ妨害することは、中程度のHbF濃縮をもたらした。それゆえ、これらの3つの+62、+58、および+55機能性領域を、単独でまたは組み合わせで、特異的に設計されたsgRNAおよびCRISPR技術を使用して標的とすることは、成人型ヘモグロビンに干渉しかつ胎児型ヘモグロビン合成を誘導する治療戦略を提供することができる。
本明細書に提供されるのは、3つのBCL11Aエンハンサー機能性領域(これらの3つの+62、+58、および+55)を標的とする核酸分子、該核酸分子を含む組成物、およびBCL11A発現をゲノムレベルで妨害することによる細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法である。また、本明細書に提供されるのは、胎児型ヘモグロビンレベルの再誘導による異常ヘモグロビン症の処置に関する方法および組成物である。特に、該核酸分子は、+62、+58、および/または+55エンハンサー機能性領域を標的とする。
したがって、本明細書に提供される方法および組成物は、赤血球細胞におけるγ-グロビン発現の調節のための新規方法である。より具体的には、BCL11A遺伝子産物の阻害を介したγ-グロビンの誘導によるβ-異常ヘモグロビン症の処置のための方法において、これらの活性を利用することができる。
本明細書に記載される開示は、一態様において、ヒトをクローニングするためのプロセス、ヒトの生殖系列の遺伝子同一性を改変するためのプロセス、ヒトまたは動物にいかなる実質的な医学的恩恵もなしに動物に苦しみをもたらす可能性が高い動物の遺伝子同一性を改変するための工業的または商業的な目的またはプロセスのためのヒト胚の使用、およびまたこのようなプロセスから生じる動物には関係しない。
したがって、一態様において、本明細書に提供されるのは、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外する、核酸分子である。
追加的に、CRISPR/Cas9技術を使用して、BCL11Aコードエクソン2を標的とするために設計された小分子シングルガイドRNA(sgRNA)配列はまた、BCL11A発現の有効な妨害も示した。正規化されたHbF濃縮が少なくとも0.259以上である、妨害を示すsgRNA配列は、表7に示され、SEQ ID NO: 95~135として同定される。
一態様において、本明細書に提供されるのは、ヒトBCL11Aエクソン2のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子であり、核酸配列がヒトBCL11Aエクソン2配列全体を除外する。一態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:94~135を含む。
一態様において、本明細書に提供されるのは、ヒトBCL11Aエクソン2のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列から本質的になる核酸分子であり、核酸配列がヒトBCL11Aエクソン2配列全体を除外する。一態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:94~135から本質的になる。
一態様において、本明細書に提供されるのは、ヒトBCL11Aエクソン2のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列からなる核酸分子であり、核酸配列がヒトBCL11Aエクソン2配列全体を除外する。一態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:94~135からなる。
一態様において、本明細書に提供されるのは、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列から本質的になる核酸分子であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外する、核酸分子である。
一態様において、本開示は、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含むベクターであって、ヒト2番染色体が、UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列も除外する、ベクターを提供する。
一態様において、本開示は、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列から本質的になるベクターであって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列も除外する、ベクターを提供する。
一態様において、本開示は、ヒトBCL11Aエクソン2のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含むベクターを提供し、核酸配列が、ヒトBCL11Aエクソン2配列全体を除外する。
本明細書に記載される一局面は、少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を産生するための方法であって、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載される核酸分子を含むベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させる工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、単離された細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法であって、該細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を減少させる工程を含む、方法に関する。一局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質発現の減少は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こすことによって達成される。別の局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質発現の減少は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)に遺伝子機能のエピジェネティック修飾を生じる、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こすことによって達成される。この局面において、この2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)内に位置するBCL11Aエンハンサー活性は、低下する。
この局面における減少とは、細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を増強させる際のエンハンサー活性が、本明細書に開示されるいかなる方法でも処置されていない対照細胞と比較して、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低い、またはそれ以上低いことである。細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質発現の減少とは、タンパク質発現が、本明細書に開示されるいかなる方法でも処置されていない対照細胞と比較して、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低い、またはそれ以上低いことを意味する。
本明細書に提供される別の局面は、単離された細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法であって、単離されたヒト細胞または前駆細胞を提供する工程、および該細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を減少させる工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、単離された細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるエクスビボまたはインビトロの方法であって、単離されたヒト細胞または前駆細胞を提供する工程、および該細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を減少させる工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を有する前駆細胞を産生するためのエクスビボまたはインビトロの方法であって、単離された前駆細胞と、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含むまたはそれから本質的になる核酸分子とを接触させる工程であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外するものであり、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる、工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を産生するためのエクスビボまたはインビトロの方法であって、単離された細胞と、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含むまたはそれから本質的になる有効量の核酸分子とを接触させる工程であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外するものであり、その中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を有する前駆細胞を産生するためのエクスビボまたはインビトロの方法であって、単離された前駆細胞と、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含むまたはそれから本質的になる核酸分子を含むベクターとを接触させる工程であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外するものであり、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる、工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を産生するためのエクスビボまたはインビトロの方法であって、単離された細胞と、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含むまたはそれから本質的になる核酸分子を含む有効量のベクターとを接触させる工程であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外するものであり、その中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を産生するためのエクスビボまたはインビトロの方法であって、単離された細胞と、本明細書に記載される核酸を含む有効量の組成物とを接触させる工程を含む、方法に関する。
本明細書に提供される別の局面は、少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を産生するためのエクスビボまたはインビトロの方法であって、単離された細胞と、本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とを接触させる工程を含む、方法に関する。
本明細書に記載されるエクスビボまたはインビトロの方法のいずれかのいくつかの態様において、単離された前駆細胞または単離された細胞は、造血前駆細胞である。
本明細書に記載されるエクスビボまたはインビトロの方法のいずれかのいくつかの態様において、造血前駆体は、赤血球系の細胞である。
本明細書に記載されるエクスビボまたはインビトロの方法のいずれかのいくつかの態様において、単離された前駆細胞または単離された細胞は、人工多能性幹細胞である。
本明細書に記載される別の局面は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、哺乳動物における造血前駆細胞中のBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を減少させる工程を含む、方法に関する。一局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質発現の減少は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こすことによって達成される。別の局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質発現の減少は、2番染色体上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾を引き起こすことによって達成される。別の局面において、BCL11A mRNAまたはタンパク質発現の減少は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾を引き起こすことによって達成される。
本明細書に提供される別の局面は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、本明細書に記載されるとおりの遺伝子改変ヒト細胞を哺乳動物に移植する工程を含む、方法に関する。
一態様において、本明細書に提供されるのは、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外する、核酸分子である。
一態様において、本明細書に提供されるのは、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列から本質的になる核酸分子であって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外する、核酸分子である。
一態様において、本開示は、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含むベクターであって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列も除外する、ベクターを提供する。
一態様において、本開示は、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列から本質的になるベクターであって、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列も除外する、ベクターを提供する。
一態様において、本開示は、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法であって、単離された細胞と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とを接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、前記接触の前の前記細胞と比べて、前記細胞またはその子孫において増加する工程を含み、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものである、方法を提供する。
一態様において、本開示は、本明細書に記載される方法に従って2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を提供する。一態様において、単離された遺伝子改変ヒト細胞は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上に遺伝子修飾を1つも有さない対照細胞と比較して、低下または減少したBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を有する。
一態様において、本開示は、少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を産生するための方法であって、単離された細胞と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とを接触させる工程を含み、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものである、方法を提供する。
一態様において、本開示は、減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、単離された前駆細胞と、本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターとを接触させる工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、減少したBCL11A mRNAまたはBCL11Aタンパク質発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、単離された前駆細胞と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に位置するヒトBCL11Aエンハンサー機能性領域に結合する作用物質とを接触させる工程であって、作用物質が、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖;(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に結合し;ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる、工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、前記哺乳動物における単離された造血前駆細胞と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とを接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、前記接触前の発現と比べて、前記哺乳動物において増加する工程を含み、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものである、方法を提供する。
一態様において、本開示は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、本明細書に記載される単離された遺伝子改変ヒト細胞または本明細書に記載される組成物を哺乳動物に移植する工程を含む、方法を提供する。
本明細書に記載される別の局面は、本明細書に記載される方法に従って2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物である。一態様において、該組成物は、薬学的に許容しうる担体をさらに含む。
本明細書に記載される別の局面は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上のヒト細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む組成物である。一態様において、該組成物は、薬学的に許容しうる担体をさらに含む。
本明細書に記載される別の局面は、細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法であって、単離された細胞と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とを接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の細胞と比べて、前記細胞またはその子孫において増加する、工程を含む、方法である。
本明細書に記載される別の局面は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、前記哺乳動物における単離された造血前駆細胞と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とを接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、前記接触前の発現と比べて、前記哺乳動物において増加する、工程を含む、方法である。
本明細書に記載される別の局面は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を哺乳動物に移植する工程を含む、方法である。
一態様において、本開示は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、エクスビボで哺乳動物由来の造血前駆細胞または造血幹細胞の単離集団を提供する工程、ならびに、造血前駆または幹細胞の集団と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とを接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、哺乳動物から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する工程、ならびに、造血前駆または幹細胞の集団と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物とをエクスビボで接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、(a)哺乳動物から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離することを提供する工程、ならびに(b)2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAを欠失/付加/置換して、その中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、哺乳動物から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する工程、ならびに、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させて、その中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置の方法であって、(a)造血前駆細胞または造血幹細胞またはiPSCを提供する工程;(b)エクスビボまたはインビトロで、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程;ならびに(c)工程(b)の細胞を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置の方法であって、(a)哺乳動物から造血前駆細胞または造血幹細胞を単離する工程; (b)エクスビボまたはインビトロで、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させる工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程;ならびに(c)工程(b)の細胞を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置の方法であって、(a)造血前駆細胞または造血幹細胞またはiPSCを提供する工程;(b)2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させて、その中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程;ならびに(c)工程(b)の細胞を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置の方法であって、(a)哺乳動物から造血前駆細胞または造血幹細胞を単離する工程;(b)2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させて、その中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する、工程;ならびに(c)工程(b)の細胞を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法であって、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変細胞を含む本明細書に記載される組成物を導入する工程であって、それによって、胎児型ヘモグロビン発現が哺乳動物において増加する、工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法であって、本明細書に記載される方法によって哺乳動物における胎児型ヘモグロビン発現を増加させる工程を含む、方法を提供する。
一態様において、本開示は、本明細書に記載される単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物を提供する。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、方法は、その中に胎児型ヘモグロビンレベルを増加させることを必要とする哺乳動物を選択する工程をさらに含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、BCL11Aエンハンサー機能性領域全体を除外する。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、 表8に同定されるSEQ ID NO:136、137、および/または138全体を除外する。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、短く、かつ、13塩基対(bp)以上である。他の態様において、核酸配列は、短く、かつ、15bp以上、16bp以上、17bp以上、18bp以上、19bp以上、20bp以上、21bp以上、22bp以上、23bp以上、24bp以上、25bp以上、26bp以上、27bp以上、または28bp以上である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、約13~30bpである。他の態様において、核酸配列は、約13~20bp、13~21bp、13~22bp、13~23bp、13~24bp、13~25bp、13~26bp、13~27bp、13~28bp、13~29bp、14~20bp、14~21bp、14~22bp、14~23bp、14~24bp、14~25bp、14~26bp、14~27bp、14~28bp、14~29bp、15~20bp、15~21bp、15~22bp、15~23bp、15~24bp、15~25bp、15~26bp、15~27bp、15~28bp、15~29bp、16~20bp、16~21bp、16~22bp、16~23bp、16~24bp、16~25bp、16~26bp、16~27bp、16~28bp、16~29bp、17~20bp、17~21bp、17~22bp、17~23bp、17~24bp、17~25bp、17~26bp、17~27bp、17~28bp、17~29bp、18~20bp、18~21bp、18~22bp、18~23bp、18~24bp、18~25bp、18~26bp、18~27bp、18~28bp、18~29bp、19~21bp、19~22bp、19~23bp、19~24bp、19~25bp、19~26bp、19~27bp、19~28bp、19~29bp、20~22bp、20~23bp、20~24bp、20~25bp、20~26bp、20~27bp、20~28bp、20~29bp、21~23bp、21~24bp、21~25bp、21~26bp、21~27bp、21~28bp、21~29bp、22~24bp、22~25bp、22~26bp、22~27bp、22~28bp、22~29bp、23~25bp、23~26bp、23~27bp、23~28bp、23~29bp、24~26bp、24~27bp、24~28bp、24~29bp、25~27bp、25~28bp、25~29bp、26~28bp、26~29bp、27~29bp、14~30bp、15~30bp、16~30bp、17~30bp、18~30bp、19~30bp、20~30bp、21~30bp、22~30bp、23~30bp、24~30bp、25~30bp、26~30bp、27~30bp、または28~30bpである。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、約20bpである。他の態様において、核酸配列は、約13bp、約14bp、約15bp、約16bp、約17bp、約18bp、約19bp、約20bp、約21bp、約22bp、約23bp、約24bp、約25bp、約26bp、約27bp、約28bp、約29bp、または約30bpである。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列を含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列から本質的になる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列からなる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸配列は、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)配列をさらに含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸分子は、シングルガイドRNA(sgRNA)である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、核酸分子は、ベクターを含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、ベクターは、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターである。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、ベクターは、sgRNA発現ベクターである。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、方法は、同単離された前駆細胞と、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターとを接触させる工程をさらに含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼは、Cas(CRISPR関連)タンパク質である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、Casタンパク質は、Cas9である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、方法は、単離された細胞、または単離された前駆細胞、または前駆細胞もしくは造血前駆細胞であることができる細胞の単離集団を提供する工程をさらに含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、単離された細胞は、単離された前駆細胞である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、単離された前駆細胞は、単離されたヒト細胞である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、単離されたヒト細胞は、造血前駆細胞または造血幹細胞である。他の態様において、単離されたヒト細胞は、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、または骨髄細胞である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、本明細書に記載される方法は、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞または造血前駆細胞と、有効量の本明細書に記載される組成物または有効量の本明細書に記載される少なくとも単離された核酸分子とを接触させる工程を含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、造血細胞は、赤血球系の細胞である。造血前駆細胞を単離する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、CD34+またはCD133+細胞のフローサイトメトリー精製、CD34またはCD133に対する抗体をコンジュゲートさせたマイクロビーズ、造血前駆細胞のマーカーによるものである。また、市販のキット、例えば、MACS(登録商標)Technology CD34 MicroBead Kit, human、およびCD34 MultiSort Kit, human、およびSTEMCELL(商標)Technology EasySep(商標)Mouse Hematopoietic Progenitor Cell Enrichment Kitも利用可能である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、造血幹細胞、造血前駆細胞、胚性幹細胞、体性幹細胞、または前駆細胞は、末梢血、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、胎盤血、または骨髄から選択される。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、ヒト細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書に記載されるいずれかの細胞の接触は、エクスビボまたはインビトロまたはインビボであることができる。
本明細書に記載される方法または組成物のいずれかのいくつかの態様において、単離された前駆細胞または単離された細胞は、造血前駆細胞である。
本明細書に記載される方法または組成物のいずれかのいくつかの態様において、造血前駆体は、赤血球系の細胞である。
本明細書に記載される方法または組成物のいずれかのいくつかの態様において、単離された前駆細胞または単離された細胞は、人工多能性幹細胞である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書に記載されるいずれかの細胞の接触は、2番染色体上の細胞ゲノムDNAに結合しかつ2番染色体上の細胞のゲノムにエピジェネティック修飾をもたらす作用物質と接触させる工程であって、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる工程を含む。一態様において、エピジェネティック修飾は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612 (UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、2番染色体上の細胞ゲノムDNAにおける少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)に間接的または直接的に影響を与える。
本明細書において使用される場合、「2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)に間接的に影響を与える」とは、2番染色体のうち2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAにおけるエピジェネティック修飾の長距離効果を指す。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書に記載されるいずれかの細胞の接触は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合しかつ2番染色体上にエピジェネティック修飾をもたらす作用物質と接触させる工程であって、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる工程を含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書に記載されるいずれかの細胞の接触は、2番染色体上にDNA標的指向性酵素がエピジェネティック修飾をもたらす少なくとも1つのDNA標的指向性酵素またはDNA標的指向性酵素のコード配列を担持するベクターを含む有効量の組成物と接触させる工程であって、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる工程を含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、本明細書に記載されるいずれかの細胞の接触は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上にDNA標的指向性酵素がエピジェネティック修飾をもたらす少なくとも1つのDNA標的指向性酵素またはDNA標的指向性酵素のコード配列を担持するベクターを含む有効量の組成物と接触させる工程であって、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる工程を含む。一局面において、胎児型ヘモグロビン発現は、接触の前の発現と比べて、哺乳動物において増加する。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、造血前駆細胞、単離されたヒト細胞、または単離された細胞は、エクスビボまたはインビトロで接触させられる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、少なくとも1つの遺伝子修飾は、欠失である。本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の部において本明細書に記載されるとおりのDNAse 1-高感受性部位(DHS)+62、+58、および+55の1または複数を含む。本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の部において本明細書に記載されるとおりのDNAse 1-高感受性部位(DHS)+62、+58、および+55の1または複数から本質的になる。別の態様において、欠失は、実施例の部において本明細書に記載されるとおりのDNAse 1-高感受性部位(DHS)+62、+58、および+55の1または複数からなる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、エピジェネティック修飾は、実施例の部において本明細書に記載されるとおりのDNAse 1-高感受性部位(DHS)+62、+58、および+55の1または複数を含むかまたはそれらに影響を与える。本明細書において使用される場合、語句「DNAse 1-高感受性部位の1または複数に影響を与える」は、これらのDNAse 1-高感受性部位(DHS)+62、+58、および+55の天然機能、例えば、転写因子またはDNA分解酵素、例えばDNase Iへの接近が低下することを意味する。一般に、DNase I高感受性部位(DHS)は、DNase I酵素による切断に感受性であるクロマチンの領域である。ゲノムのこれらの特定領域において、クロマチンはその凝縮構造を喪失して、DNAを露出させ、それを接近可能にする。これは、DNase Iのような酵素による分解に対してDNAの利用可能性を高める。これらの接近可能なクロマチンゾーンは、この再構築された状態が転写因子のようなタンパク質の結合に必要であるため、転写活性に機能的に関連している。したがって、本明細書において企図されるエピジェネティック修飾は、本明細書に開示されるいかなる方法でも処置されていない対照細胞と比較して、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低い、またはそれ以上低いDNA分解酵素への接近を低下させる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、エピジェネティック修飾は、60,716,189~60,728,612、60,716,189~60,723,870、60,722,992~60,728,612、60,717,236~60,719,036、60,722,006~60,723,058、60,724,917~60,726,282、60,616,396~60,618,032、60,623,536~60,624,989、60,626,565~60,628,177、60,717,236~60,719,036、60,721,212~60,722,958、60,724,780~60,726,471、60,739,075~60,740,154、60,748,003~60,749,009、60,826,438~60,827,601、または60,831,589~60,833,556である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)の領域全体を除去するか、または該領域の一部を除去し、1または複数のDNAse 1-高感受性部位(DHS)の妨害を生じる。本明細書において使用される場合、用語「妨害」は、このような妨害を有さない細胞と比較して少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%またはさらに100%(すなわち、検出可能な赤血球転写なし))の1または複数のDNAse-1高感受性部位の妨害を含む、細胞におけるBCL11Aの赤血球転写の減少を指す。一態様において、妨害は、修飾されたDNAse-1高感受性部位がその天然転写因子(例えば、GATA1およびTAL1)へ結合できないことを含む。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の別の態様において、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上のエンハンサー領域でのエピジェネティックシグネチャの確立および/または維持に干渉するエピジェネティック修飾は、それによって、低下したBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を導き、かつ、哺乳動物における胎児型ヘモグロビン発現を減少させる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上のエンハンサー領域でのエピジェネティックシグネチャの確立および/または維持に干渉するエピジェネティック修飾は、限定されないが、DNase I感受性に影響を与えるエピジェネティック修飾、ヒストン修飾に影響を与えるエピジェネティック修飾、GATA1/TAL1結合に影響を与えるエピジェネティック修飾、およびBCL11Aのプロモーターの長距離プロモーター相互作用に影響を与えるエピジェネティック修飾を含む。
例えば、記載される2番染色体の機能性領域の位置上のエンハンサー領域でのエピジェネティックシグネチャの確立および/または維持に干渉するエピジェネティック修飾は、限定されないが、この領域の全体的な機能が影響を受けることによってBCL11AのmRNAおよび発現が低下または減少するような、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612内の少なくとも1つの欠失を含む。例えば、欠失は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612のDNase I感受性領域、例えば、+62、+58、および+55にある。欠失は、+62または+58または+55またはそれらの組み合わせにあることもできる。例えば、+62および+58、+58および+55、+62および+55、または全ての3つの+62、+58、および+55。
別の例として、2番染色体の位置+55、+58および+62機能性領域上のエンハンサー領域でのエピジェネティックシグネチャの確立および/または維持に干渉するエピジェネティック修飾は、限定されないが、この領域の全体的な機能が影響を受けることによってBCL11AのmRNAおよび発現が低下または減少するような、機能性領域の位置にない2番染色体上のヒストン修飾の変化、または機能性領域の位置にある2番染色体上のヒストン修飾の変化、または位置60,716,189~60,728,612にない2番染色体上および位置60,716,189~60,728,612にある2番染色体上の両方のヒストン修飾の変化を含む。
別の態様において、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のエンハンサー領域でのエピジェネティックシグネチャの確立および/または維持に干渉するエピジェネティック修飾は、限定されないが、2番染色体、+55、+58および+62機能性領域における非コードエレメントのエピジェネティック特徴を変化させ、ひいては標的遺伝子発現の抑制を生じる、少なくとも1つの改変された特異的抑制因子配列の挿入を含む。第一は、個々のエンハンサーをエピジェネティックに抑制することに特に焦点を当てている。言い換えれば、2番染色体への改変された特異的抑制因子配列の挿入は、BCL11A赤血球エンハンサーにおけるエピジェネティック修飾に予め干渉し、これが最終的に低下したBCL11A遺伝子発現へと導くだろう。
当技術分野において公知の任意の方法を使用して、企図されるエピジェネティック修飾をもたらすことができる。例えば、Mendenhall E. M. et al., Nat. Biotechnol. 08 September 2013、および Maeder ML et al., Nat Biotechnol. 09 October 2013 2013 に記載のとおり。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、2番染色体のいずれかの位置上への少なくとも1つの改変された特異的抑制因子配列の挿入は、限定されないが、2番染色体の位置+55、+58および+62機能性領域における低下したDNase I感受性領域;2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上または+55、+58および+62機能性領域における増加したヒストン修飾;2番染色体+55、+58および+62機能性領域上のエンハンサー領域のGATA1/TAL1への低下した転写因子結合;ならびに2番染色体の位置+55、+58および+62機能性領域とBCL11Aプロモーターと間の低下または減弱された相互作用を生じる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、2番染色体のいずれかの位置上への少なくとも1つの改変された特異的抑制因子配列の挿入の全体的な効果は、低下または減少したBCL11AのmRNAおよび発現である。
いくつかの態様において、BCL11AのmRNAおよび発現、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612、+55、+58および+62機能性領域、またはBCL11AエンハンサーとBCL11Aプロモーターとの間の相互作用、ならびにエンハンサー領域のGATA1/TAL1への転写因子結合の文脈で使用される場合、用語「低下した」または「減少した」は、本明細書に開示されるエピジェネティック修飾または改変された配列の挿入が存在しない対照状況と比較して、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低い、またはそれ以上低いことを指す。細胞におけるBCL11A mRNAまたはタンパク質発現の減少とは、タンパク質発現が、本明細書に開示されるエピジェネティック修飾または改変された配列の挿入を有さない対照細胞と比較して、少なくとも5%低い、少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低い、またはそれ以上低いことを意味する。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、少なくとも1つの改変された特異的抑制因子配列の挿入は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612のDNase I感受性領域内、または+55、+58および+62機能性領域で起こる。挿入は、+62もしくは+58もしくは+55の5'末端、または+62もしくは+58もしくは+55の3'末端、または+62と+58との間、または+58と+55との間、または+55と+62との間であることもできる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、少なくとも1つの改変された特異的抑制因子配列の挿入は、2番染色体の位置+55、+58および+62機能性領域のDNase I感受性領域を変化させる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、エピジェネティック修飾は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612のDNase I感受性領域または+55、+58および+62機能性領域を変化させる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、エピジェネティック修飾は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上、または+55、+58および+62機能性領域におけるヒストン修飾を変化させる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、少なくとも1つの改変された特異的抑制因子配列の挿入は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上、または+55、+58および+62機能性領域におけるヒストン修飾を変化させる。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、エピジェネティック修飾は、この領域の全体的な機能が影響を受けることによってBCL11AのmRNAおよび発現が低下または減少するように、染色体+55、+58および+62機能性領域上のエンハンサー領域のGATA1/TAL1結合を変化させる。例えば、GATA1/TAL1への転写因子の結合。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、少なくとも1つの改変された特異的抑制因子配列の挿入は、本明細書に記載されるとおりGATA1/TAL1内で起こる。挿入は、GATA1またはTAL1の5'末端または3'末端であることができる。挿入は、GATA1とTAL1との間であることができる。挿入は、この領域の全体的な機能が影響を受けることによってBCL11AのmRNAおよび発現が低下または減少するように、2番染色体+55、+58および+62機能性領域上のエンハンサー領域のGATA1/TAL1結合を変化させる。例えば、GATA1/TAL1への転写因子の結合。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、エピジェネティック修飾は、BCL11AエンハンサーとBCL11Aプロモーターとの間の相互作用を変化させる。一態様において、相互作用は、この領域の全体的な機能が影響を受けることによってBCL11AのmRNAおよび発現が低下または減少するように、低下または減弱される。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、エピジェネティック修飾は、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612および/または+55、+58および+62機能性領域とBCL11Aプロモーターとの間の相互作用を変化させる。一態様において、相互作用は、この領域の全体的な機能が影響を受けることによってBCL11AのmRNAおよび発現が低下または減少するように、低下または減弱される。
また、別の局面において本明細書に提供されるのは、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞であって、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上のまたはBCL11Aエクソン2にある細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターを含む有効量の組成物と接触させるプロセスによって作製される、遺伝子改変ヒト細胞である。
別の局面において、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる際の使用のための、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞であって、少なくとも1つの遺伝子修飾が、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上のまたはBCL11Aエクソン2にある細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させるプロセスによって作製される、遺伝子改変ヒト細胞である。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、単離された遺伝子改変ヒト細胞は、2番染色体上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する。本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面のもう一つにおいて、単離された遺伝子改変ヒト細胞は、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上のまたはBCL11Aエクソン2にある細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する。
少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有するこれらの単離された遺伝子改変ヒト細胞のいずれかのいくつかの局面において、該細胞は、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させる際の使用のため、哺乳動物に移植される。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上のまたはBCL11Aエクソン2にある細胞ゲノムDNAに少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞は、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させる際の使用のため、哺乳動物に移植される。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上のまたはBCL11Aエクソン2にある細胞ゲノムDNAに少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞は、後で使用するため、凍結保存によって貯蔵される。
少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞のいずれかのいくつかの局面において、該細胞は、後で使用するため、凍結保存によって貯蔵される。
本明細書に記載される、この局面および全ての他の局面の一態様において、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上のまたはBCL11Aエクソン2にある細胞ゲノムDNAに少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞は、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させる際の使用のため、凍結保存され、融解され、哺乳動物に移植される。
少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞のいずれかのいくつかの局面において、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させる際の使用のため、凍結保存され、融解され、哺乳動物に移植される。
本明細書に提供される別の局面は、単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物に関し、該細胞が、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に核酸分子または核酸分子を担持するベクターを含む有効量の組成物と接触させるプロセスによって作製された2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する。
本明細書に提供される別の局面は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる際の使用のための、単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物に関し、該細胞が、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に核酸分子または核酸分子を担持するベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させるプロセスによって作製された2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する。
本明細書に提供される別の局面は、単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物に関し、該細胞が2番染色体上に少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する。一態様において、2番染色体上の少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)にある。別の態様において、2番染色体上の少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)に影響を与える2番染色体上の細胞ゲノムDNAにDNA標的指向性酵素が少なくとも1つのエピジェネティック修飾をもたらしその中に該修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性酵素またはDNA標的指向性酵素のコード配列を担持するベクターと一緒に核酸分子または核酸分子を担持するベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させるプロセスによって作製される。
本明細書に提供される別の局面は、それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる際の使用のための、単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物に関し、該細胞が2番染色体上に少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する。一態様において、2番染色体上の少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)にある。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、組成物は、接触された細胞において胎児型ヘモグロビンmRNAまたはタンパク質の発現の増加を引き起こす。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類にとって、自家性であり、すなわち、組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前に哺乳類から得られまたは集められる。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類にとって、非自家性であり、すなわち、組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前に哺乳類から得られることも集められることもない。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、最低でも、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳類に適合したHLA型である。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された前駆細胞である。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された造血前駆細胞である。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、記述されるいずれかの組成物の細胞は、記述されるいずれかの改変・修飾の前の単離された人工多能性幹細胞である。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の項の中で本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数を含む。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、実施例の項の中で本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数から本質的になる。別の態様において、欠失は、実施例の項の中で本明細書において記述されるDNAse 1高感受性部位(DHS) +62、+58、および+55の1つまたは複数からなる。1つの態様において、本明細書において用いられる場合、ゲノム欠失との関連で「一部分」という用語は、特定領域の少なくとも10%~約100%である。別の態様において、欠失される一部分は、特定領域の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%またはさらに100%である。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、欠失は、第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域) (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)間の全領域を除去するか、または該領域の一部分を除去し、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS)の妨害を引き起こす。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビンを増加させることを必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されている。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、胎児型ヘモグロビンを増加させることを必要としている哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されている。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、異常ヘモグロビン症はβ異常ヘモグロビン症である。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球疾患である。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、異常ヘモグロビン症はβサラセミアである。
本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の1つの態様において、接触させた細胞、ヒト細胞、造血前駆細胞またはその後代が哺乳類に投与される。
1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:エクスビボで哺乳類から単離された造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を提供する段階、および第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に、本明細書に記載の核酸分子または本明細書に記載のベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、造血前駆細胞または幹細胞の集団とを接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加する、段階。この方法のさらなる態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有する接触させた造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有する凍結保存された造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、本明細書において記述されるiPSCと置き換えることができる。
1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する段階、および第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に、本明細書に記載の核酸分子または本明細書に記載のベクターを少なくとも含む組成物の有効量と、造血前駆細胞または幹細胞の集団とをエクスビボで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加する、段階。この方法のさらなる態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有するエクスビボで接触させた造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有する凍結保存された造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、哺乳類に由来するiPSCと置き換えることができる。この方法のいずれかの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を提供・単離する段階、および第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAを欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加する、段階。この方法のさらなる態様において、欠失されたゲノムDNAを有し、かつ胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、欠失されたゲノムDNAを有し、かつ胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、本明細書において記述されるiPSCと置き換えることができる。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述される方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。この方法のいずれかの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、以下の段階を含む、それを必要とする哺乳類において胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法を提供する:哺乳類から造血前駆細胞または造血幹細胞の集団を単離する段階、および第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加する、段階。この方法のさらなる態様において、欠失されたゲノムDNAを有し、かつ胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している造血前駆細胞または幹細胞の集団は、凍結保存され、貯蔵されるかまたは哺乳類へ再導入される。別の態様において、胎児型ヘモグロビン発現の増加を有している凍結保存された造血前駆細胞または幹細胞の集団は、融解され、その後に哺乳類へ再導入される。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞または幹細胞は、哺乳類に由来するiPSCと置き換えることができる。この方法のいずれかの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
記述されるいずれかの方法の1つの態様において、本方法は、胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。胎児型ヘモグロビン発現の増加を必要としている例示的な哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されたものである。
1つの態様において、本開示は、(a) 造血前駆細胞もしくは造血幹細胞またはiPSCを提供する段階; (b) 第2染色体の位置60,716,189~60,728,612上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に、本明細書に記載の核酸分子または本明細書に記載のベクターを少なくとも含む組成物の有効量と該細胞とをエクスビボまたはインビトロで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加する、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。
いずれかの方法の1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述される方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。
記述されるいずれかの方法の1つの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、(a) 哺乳類から造血前駆細胞もしくは造血幹細胞を単離する段階; (b) 第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断し、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に、本明細書に記載の核酸分子または本明細書に記載のベクターを少なくとも含む組成物の有効量と該細胞とをエクスビボまたはインビトロで接触させる段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加する、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。
1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、(a) 造血前駆細胞もしくは造血幹細胞またはiPSCを提供する段階; (b) 第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、該哺乳類において増加する、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。
1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。記述される方法のいずれかの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述される方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非類似性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、(a) 哺乳類から造血前駆細胞もしくは造血幹細胞を単離する段階; (b) 第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをエクスビボで欠失させ、その中に少なくとも1つの遺伝的改変を引き起こす段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が、該接触させる前の発現と比べて、哺乳類において増加する、段階; および(c) 段階(b)の細胞を哺乳類へ投与する段階を含む、哺乳類における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。
1つの態様において、段階(b)後の細胞は、哺乳類への投与に必要とされるまで凍結保存することができる。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に少なくとも1つの遺伝的改変を有する単離された遺伝子操作細胞を含む本明細書において記述される組成物を導入する段階であって、それによって胎児型ヘモグロビンの発現が哺乳類において増加する、段階を含む、哺乳類(例えばヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。この方法のさらなる態様において、本方法は、哺乳類における内在性の造血前駆細胞または幹細胞を除去または低減するために化学療法および/または放射線療法を含む。この方法のいずれかの態様において、本方法は、異常ヘモグロビン症の処置を必要としている哺乳類を選択する段階をさらに含む。
1つの態様において、本開示は、本明細書において記述される方法により哺乳類における胎児型ヘモグロビンの発現を増加させる段階を含む、哺乳類(例えばヒト)における異常ヘモグロビン症の処置の方法を提供する。
いずれかの方法の一局面において、該方法は、異常ヘモグロビン症と診断された対象または異常ヘモグロビン症を発症するリスクがある対象を選択する工程をさらに含む。
いずれかの方法の一局面において、異常ヘモグロビン症は、鎌状赤血球症(SCD)またはサラセミア(THAL)である。例えば、β-サラセミア。
該方法の一局面において、該方法は、酸素、ヒドロキシ尿素、葉酸、または輸血を含む治療を対象に投与する工程をさらに含む。
一局面において、本明細書は、対象における異常ヘモグロビン症を治療するか、またはそれを発症するリスクを低下させる方法を提供する。
記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症はβ異常ヘモグロビン症である。
記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症はβサラセミアである。
記述されるいずれかの処置方法のいずれかの態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球貧血である。
記述されるいずれかの方法の1つの態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来することを意味する。記述されるいずれかの方法の別の態様において、造血前駆細胞もしくは幹細胞またはiPSCは、哺乳類にとって非自家性であり、これは細胞が同じ哺乳類に由来するのではなく、同じ種の別の哺乳類に由来することを意味する。例えば、哺乳類はヒトである。
記述されるいずれかの方法の1つの態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、エクスビボまたはインビトロまたはインビボでありうる。
記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体上の細胞ゲノムDNAに結合し、かつ第2染色体上での細胞ゲノムにおけるエピジェネティック修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる薬剤との接触を含む。1つの態様において、エピジェネティック修飾は、第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域) (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上である。
記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域) (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合し、かつ第2染色体上でのエピジェネティック修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる薬剤との接触を含む。
記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体上でのエピジェネティック修飾をもたらす、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を担持するベクターを少なくとも含む組成物の有効量との接触を含み、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる。
記述されるいずれかの方法の別の態様において、本明細書において記述されるいずれかの細胞の接触は、第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域) (UCSCゲノムブラウザhg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上でのエピジェネティック修飾をもたらす、DNAを標的とする酵素またはDNAを標的とする酵素のコード配列を担持するベクターを少なくとも含む組成物の有効量との接触を含み、それによってBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を低減させる。1つの局面において、胎児型ヘモグロビンの発現は、接触させる前の発現と比べて、哺乳類において増加する。
記述されるいずれかの方法の別の態様において、造血前駆細胞、単離されたヒト細胞、または単離された細胞は、エクスビボまたはインビトロで接触させる。
記述されるいずれかの方法の別の態様において、少なくとも1つの遺伝的改変は欠失である。本明細書において記述されるこの局面および全ての他の局面の別の態様において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する作用物質の使用であり、BCL11AのmRNAまたはタンパク質発現が低下する。一態様において、作用物質は、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子である。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための方法における使用のための、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAに結合する作用物質であり、BCL11AのmRNAまたはタンパク質発現が低下する。一態様において、作用物質は、(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子である。
一態様において、本明細書に提供されるのは、細胞もしくは哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、または細胞もしくは哺乳動物におけるBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための方法における、本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物の使用である。一局面において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾を伴う細胞を哺乳動物に移植する工程を含む方法、該細胞は、記載される核酸を含む記載される組成物と接触されていた。
一態様において、本明細書に提供されるのは、細胞もしくは哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、または細胞もしくは哺乳動物におけるBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための方法における使用のための、本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む組成物である。一局面において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾を伴う細胞を哺乳動物に移植する工程を含む方法、該細胞は、記載される核酸を含む記載される組成物と接触されていた。
(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子。一態様において、組成物は、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、またはBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターをさらに含む。一局面において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾を伴う細胞を哺乳動物に移植する工程を含む方法、該細胞は、記載される核酸を含む記載される組成物と接触されていた。
一態様において、本明細書に提供されるのは、少なくとも1つのDNA標的指向性酵素またはDNA標的指向性酵素のコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物の使用であり、該使用は、細胞もしくは哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるためのまたは哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のためのまたは細胞もしくは哺乳動物におけるBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための方法における使用であり、DNA標的指向性酵素が、2番染色体上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたは発現に影響を与える。一態様において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)にある。別の態様において、1つのエピジェネティック修飾の効果は、BCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させることである。一局面において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾を伴う細胞を哺乳動物に移植する工程を含む方法。
一態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物の使用であり、該使用は、細胞もしくは哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、または細胞もしくは哺乳動物におけるBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための方法における使用であり、DNA標的指向性酵素が、2番染色体上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたは発現に影響を与える。
一態様において、本明細書に提供されるのは、細胞もしくは哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるためのまたは哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のためのまたは細胞もしくは哺乳動物におけるBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための方法における使用のための、本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む組成物であり、DNA標的指向性酵素が、2番染色体上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたは発現に影響を与える。
一態様において、本明細書に提供されるのは、細胞もしくは哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、または細胞もしくは哺乳動物におけるBCL11AのmRNAもしくは発現を低下させるための方法における使用のための、少なくとも1つのDNA標的指向性酵素またはDNA標的指向性酵素のコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む組成物であり、DNA標的指向性酵素が、2番染色体上の細胞ゲノムDNAに少なくとも1つのエピジェネティック修飾をもたらし、それによってBCL11AのmRNAまたは発現に影響を与える。一態様において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)にある。別の態様において、1つのエピジェネティック修飾の効果は、BCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させることである。一局面において、少なくとも1つのエピジェネティック修飾を伴う細胞を哺乳動物に移植する工程を含む方法。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための方法における、本明細書に記載されるいずれかの単離された細胞の使用である。一局面において、記載される単離された改変細胞を哺乳動物に移植する工程を含む方法。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させる方法におけるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための、単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物の使用であり、該細胞が、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612 (UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させるプロセスによって作製された2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する。一局面において、記載される単離された改変細胞を含む記載される組成物を哺乳動物に移植する工程を含む方法。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるまたは哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための方法における使用のための、単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物であり、該細胞が、2番染色体の位置60,716,189~60,728,612(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させるプロセスによって作製された2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する。一局面において、記載される単離された改変細胞を含む記載される組成物を哺乳動物に移植する工程を含む方法。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるための、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための方法における単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物の使用であり、該細胞が2番染色体上に少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する。一態様において、2番染色体上の少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)にある。別の態様において、2番染色体上の少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)に影響を与える2番染色体上の細胞ゲノムDNAにDNA標的指向性酵素が少なくとも1つのエピジェネティック修飾をもたらしその中に該修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性酵素またはDNA標的指向性酵素のコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させるプロセスによって作製される。一局面において、単離された改変細胞の記載される組成物を哺乳動物に移植する工程を含む方法。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させるためのまたは哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための方法における使用のための、単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む組成物であり、該細胞が2番染色体上に少なくとも1つのエピジェネティック修飾を有する。一態様において、2番染色体上の少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)にある。別の態様において、2番染色体上の少なくとも1つのエピジェネティック修飾は、位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)(UCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによる)に影響を与える2番染色体上の細胞ゲノムDNAにDNA標的指向性酵素が少なくとも1つのエピジェネティック修飾をもたらしその中に該修飾を引き起こす、少なくとも1つのDNA標的指向性酵素またはDNA標的指向性酵素のコード配列を担持するベクターと一緒に本明細書に記載される核酸分子または本明細書に記載されるベクターを含む有効量の組成物と該細胞とを接触させるプロセスによって作製される。一局面において、単離された改変細胞の記載される組成物を哺乳動物に移植する工程を含む方法。
一態様において、本明細書に提供されるのは、哺乳動物における胎児型ヘモグロビンを増加させる際の、または哺乳動物における異常ヘモグロビン症の処置のための使用のための医薬の製造のための本明細書に記載されるいずれかの単離された細胞または本明細書に記載される組成物のいずれか1つの使用である。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、該組成物は、接触された細胞において胎児型ヘモグロビンmRNAまたはタンパク質発現の増加を引き起こす。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、記載されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳動物にとって自家性であり、すなわち、該組成物の細胞は、いずれかの記載される修飾の前の哺乳動物に由来するかまたはそこから採取される。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、記載されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳動物にとって非自家性であり、すなわち、該組成物の細胞は、いずれかの記載される修飾の前の哺乳動物に由来することもそこから採取されることもない。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、記載されるいずれかの組成物の細胞は、移植手順における細胞のレシピエントである哺乳動物に適合した最小HLA型にある。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、記載されるいずれかの組成物の細胞は、いずれかの記載される修飾の前の単離された前駆細胞である。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、記載されるいずれかの組成物の細胞は、いずれかの記載される修飾の前の単離された造血前駆細胞である。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、記載されるいずれかの組成物の細胞は、いずれかの記載される修飾の前の単離された人工多能性幹細胞である。
本明細書に記載される組成物の使用の一態様において、記載されるいずれかの組成物の細胞は、使用前に凍結保存される。
記載されるいずれか1つの方法の一態様において、該方法は、異常ヘモグロビン症を治療、予防、または改善するために使用され、該異常ヘモグロビン症は、ヘモグロビンC疾患、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β-サラセミア、重症型サラセミア、中間型サラセミア、α-サラセミア、およびヘモグロビンH疾患からなる群より選択される。
記載されるいずれか1つの方法の種々の態様において、ベクターは、遺伝子治療を必要とする対象の細胞、組織、または臓器への直接注射によってインビボ投与される。記載されるいずれか1つの方法の種々の他の態様において、細胞に本発明のベクターがインビトロまたはエクスビボで形質導入され、場合によりエクスビボで増大させる。次いで、形質導入細胞は、遺伝子治療を必要とする対象に投与される。
記載されるいずれか1つの方法の一態様において、該方法は、記載される遺伝子治療を必要とする対象を選択する工程をさらに含む。例えば、異常ヘモグロビン症の症状または細胞診を示す対象は、ヘモグロビンC疾患、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β-サラセミア、重症型サラセミア、中間型サラセミア、α-サラセミア、およびヘモグロビンH疾患からなる群より選択される。あるいは、該対象は、本明細書に記載される遺伝子突然変異である異常ヘモグロビン症と関連する遺伝子突然変異を保有する。例えば、遺伝子型HbSS、HbS/β0サラセミア、HbSD、もしくはHbSOを伴う、および/または電気泳動により<10%であるHbFを伴うSCDと診断された対象。
一態様において、本開示は、本明細書において企図されるベクターが形質導入された1または複数の細胞を対象に投与する、例えば、非経口的に投与する工程を含む、形質導入された、または改変された/遺伝子修飾された細胞を対象に提供する方法を提供する。一態様において、該ベクターは、1または複数の本明細書に記載される核酸配列を担持するベクターであるか;または(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子であり、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外する核酸分子である。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列を含む。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列からなる。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列から本質的になる。
特定の態様において、対象における異常ヘモグロビン症を予防、改善、または治療する方法が提供される。該方法は、本明細書において企図されるベクターがその中に形質導入された改変された/遺伝子修飾された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含む。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列を含む。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列からなる。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列から本質的になる。
記載されるいずれかの方法の特定の態様において、対象に投与される改変された/遺伝子修飾された細胞の集団は、造血幹細胞または前駆細胞、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、多染性赤血球、および赤血球(RBC)、またはそれらの任意の組み合わせ、ならびに本明細書において企図されるベクターによって遺伝子修飾されうる任意の割合を含む。
記載されるいずれかの方法のいくつかの態様において、改変された/遺伝子修飾された細胞の集団を、対象へのインプランテーション/生着の前に、または貯蔵のための凍結保存の前に、インビトロまたはエクスビボで培養増殖させることができる。
記載されるいずれかの方法のいくつかの態様において、改変された/遺伝子修飾された細胞の集団を、凍結保存後、対象へのインプランテーション/生着前に、インビトロまたはエクスビボで培養増殖させることができる。
記載されるいずれかの方法のいくつかの態様において、改変された/遺伝子修飾された細胞の集団を、対象へのインプランテーション前に、インビトロまたはエクスビボで分化させることができる。
遺伝子修飾細胞を、骨髄切除治療を受けたまたは受けていない個体における骨髄または臍帯血移植の一部として投与してもよい。一態様において、本明細書において企図される遺伝子修飾細胞は、化学的切除または放射線切除骨髄治療を受けた個体に、骨髄移植において投与される。
記載されるいずれかの方法の一態様において、ある用量の遺伝子修飾細胞が対象に静脈内送達される。一態様において、遺伝子修飾された造血細胞が対象に静脈内投与される。
特定の態様において、患者は、約1×105細胞/kg、約5×105細胞/kg、約1×106細胞/kg、約2×106細胞/kg、約3×106細胞/kg、約4×106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約6×106細胞/kg、約7×106細胞/kg、約8×106細胞/kg、約9×106細胞/kg、約1×107細胞/kg、約5×107細胞/kg、約1×108細胞/kg、またはそれより多くの用量の遺伝子修飾細胞、例えば、造血幹細胞を1回の単回静脈内用量で受ける。ある実施形態において、患者は、少なくとも1×105細胞/kg、少なくとも5×105細胞/kg、少なくとも1×106細胞/kg、少なくとも2×106細胞/kg、少なくとも3×106細胞/kg、少なくとも4×106細胞/kg、少なくとも5×106細胞/kg、少なくとも6×106細胞/kg、少なくとも7×106細胞/kg、少なくとも8×106細胞/kg、少なくとも9×106細胞/kg、少なくとも1×107細胞/kg、少なくとも5×107細胞/kg、少なくとも1×108細胞/kg、またはそれより多くの用量の遺伝子修飾細胞、例えば、本明細書に記載される造血幹細胞または本明細書に記載される遺伝子改変細胞またはその子孫を1回の単回静脈内用量で受ける。
追加の態様において、患者は、約1×105細胞/kg~約1×108細胞/kg、約1×106細胞/kg~約1×108細胞/kg、約1×106細胞/kg~約9×106細胞/kg、約2×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、約2×106細胞/kg~約8×106細胞/kg、約2×106細胞/kg~約5×106細胞/kg、約3×106細胞/kg~約5×106細胞/kg、約3×106細胞/kg~約4×108細胞/kgの用量、または任意の間の細胞/kgの用量の遺伝子修飾細胞、例えば、造血幹細胞を受ける。
種々の態様において、本発明の方法は、既存の方法より頑強かつ安全な遺伝子治療を提供し、かつ、約5%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約10%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約15%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約20%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約25%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約30%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約35%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約40%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、約45%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞、または約50%の形質導入された/遺伝子修飾された細胞を含む、細胞の集団または用量を対象に投与する工程を含む。
一態様において、本発明は、赤血球細胞の集団を増大または増加させる潜在性を有する遺伝子修飾細胞、例えば幹細胞、例えば、造血幹細胞を提供する。特定の態様において、造血幹細胞に本発明のベクターが形質導入され、これが異常ヘモグロビン症のための治療を必要とする個体に投与される。造血幹細胞は、赤血球細胞起源であり、よってこれが好ましい。一態様において、該ベクターは、1または複数の本明細書に記載される核酸配列を担持するベクターであるか;または(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である核酸配列を含む核酸分子であり、ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、核酸配列が、ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列全体も除外する。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列を含む。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列からなる。一態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1~94からなる群より選択される配列から本質的になる。
一態様において、遺伝子修飾細胞に、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAをDNA標的指向性エンドヌクレアーゼが切断するところの少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターがさらに形質導入される。
一態様において、接触させられた本明細書に記載される造血幹細胞または本明細書に記載される遺伝子改変細胞またはその子孫細胞に、それぞれの細胞の生着を促進するため、プロスタグランジンE2および/または抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)がインプラントされる。
本明細書に記載されるいずれかの方法のさらなる態様において、接触させられる造血幹細胞または造血前駆細胞は、赤血球系の細胞である。
本明細書に記載されるいずれかの方法の一態様において、造血幹細胞または造血前駆細胞は、末梢血、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、胎盤血、または骨髄から収集される。
本明細書に記載されるいずれかの方法のさらなる態様において、レシピエント対象は、接触させられたまたはトランスフェクトされた細胞(すなわち、接触させられた本明細書に記載される造血幹細胞または本明細書に記載される遺伝子改変細胞またはその子孫細胞)のインプランテーションの前に、化学療法および/または放射線で処置される。
一態様において、化学療法および/または放射線は、インプラントされた細胞の生着を容易にするために内因性幹細胞を低減させることである。
いずれかの方法の一局面において、接触させられた本明細書に記載される造血幹細胞または本明細書に記載される遺伝子改変細胞またはその子孫細胞は、レシピエント対象における後続の生着を促進するため、プロスタグランジンE2および/または抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)でエクスビボ処置される。
生着分析は、末梢血および骨髄中の移植の4、8および12週間後に実施した。例えば、これらの位置から血液の試料を採取し、当技術分野において公知の任意の方法によってBCL11A発現を決定する。
本明細書に記載されるいずれか1つの方法の一局面において、該方法は、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞の試料または集団を対象から得る工程を含む。
本明細書に記載されるいずれか1つの方法の一態様において、本明細書に記載される核酸分子、または本明細書に記載されるベクター、または核酸分子もしくはベクターを含む本明細書に記載される組成物と接触させられる細胞は、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞に由来する。
一態様において、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、造血前駆細胞は、宿主対象から単離され、トランスフェクトされ、培養され(場合による)、そして、同じ宿主に再移植される(すなわち、自家性細胞移植)。別の態様において、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞は、異常ヘモグロビン症と診断されたまたはそれを発症するリスクがある宿主(レシピエント)とHLA型が適合したドナーから単離される。ドナー-レシピエントの抗原型適合は、当技術分野において周知である。HLA型は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、およびHLA-Dを含む。これらは、移植に必要な最小限の細胞表面抗原適合である。すなわち、トランスフェクトされた細胞は、異なる宿主(すなわち、レシピエント宿主対象にとって同種異系)に移植される。ドナーまたは対象の胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞に本明細書に記載される核酸分子を含むベクターまたは核酸をトランスフェクトすることができ、トランスフェクトされた細胞は培養増殖され、次いで、宿主対象に移植される。一態様において、移植された細胞は、宿主対象中に生着する。また、トランスフェクトされた細胞を、トランスフェクトされた後に凍結保存して貯蔵しても、細胞増大後に凍結保存して貯蔵してもよい。
いずれかの方法の一局面において、胚性幹細胞、体性幹細胞、前駆細胞、骨髄細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞は、対象にとって自家性または同種異系である。
定義
便宜上、本出願全体(明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲を含む)で利用される特定の用語を、ここにまとめる。特に記載がなければ、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書において用いられる場合、「第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAに結合する薬剤」という語句は、ゲノムDNA内の位置(例えば、第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域))に結合でき、かつそのような薬剤で処理されていない細胞におけるBCL11AのmRNAまたはタンパク質レベルと比べて少なくとも20%だけ細胞におけるBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を抑止する小分子、核酸、タンパク質、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドをいう。1つの態様において、薬剤は、その語句が本明細書において用いられる場合「BCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用を妨げる」。
本明細書において用いられる場合、「小分子」という用語は、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、約10,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、約5,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約1,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約500グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステルおよびその他の薬学的に許容される形態を含むがこれらに限定されない、化学物質をいう。
本明細書において用いられる「核酸」は、RNAまたはDNAであってよく、一本鎖または二本鎖であってよく、例えば、関心対象のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、核酸類似体、例えばペプチド核酸(PNA)、偽相補性PNA (pc-PNA)、ロックド核酸(LNA)などを含む群から選択することができる。そのような核酸配列には、例えば、以下に限定されるものではないが、例えば転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコードする核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、低分子阻害性核酸配列、例えば以下に限定されるものではないがRNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi (mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれる。
「BCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用を妨げる」とは、BCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用の量が、BCL11A阻害剤が存在しない比較可能な対照集団よりも、BCL11A阻害剤で処理された集団では少なくとも5%低いことを意味する。BCL11A阻害剤で処理された集団におけるBCL11A結合パートナーとのBCL11Aの相互作用の量は、BCL11A阻害剤が加えられていない比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことが好ましい。最低でも、BCL11A相互作用は、質量分析、免疫沈降、またはゲルろ過アッセイ法を含むが、これらに限定されない、当技術分野において標準的な技法を用いてBCL11A結合パートナーへのBCL11Aの結合の量を判定することによりアッセイすることができる。あるいは、またはさらに、BCL11A活性は、候補BCL11A阻害剤による処理後にmRNAまたはタンパク質のレベルで胎児型ヘモグロビン発現を測定することによりアッセイすることができる。
1つの態様において、BCL11A活性はBCL11Aとその結合パートナー: GATA-1、FOG-1、NuRD複合体の構成要素、マトリン-3、MTA2およびRBBP7との相互作用である。したがって、この相互作用を遮断しうる任意の抗体もしくはその断片、小分子、化学物質または化合物は、BCL11A活性の阻害剤と考えられる。
本明細書において用いられる「遺伝子操作細胞」という用語は、その用語が本明細書において用いられる場合、少なくとも1つの遺伝的改変を含む細胞をいう。
本明細書において用いられる場合、「遺伝的改変」という用語は、細胞におけるBCL11Aの発現または活性の減少を引き起こすゲノムレベルでの妨害をいう。例示的な遺伝的改変としては、欠失、フレームシフト変異、点突然変異、エクソン除去、1つもしくは複数のDNAse 1高感受性部位(DHS) (例えば、2つ、3つ、4つもしくはそれ以上のDHS領域)の除去などを挙げることができる。
「BCL11A発現を阻害する」とは、BCL11Aの発現の量が、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが存在しない比較可能な対照の細胞または細胞集団よりも、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼで処理された細胞または細胞集団では少なくとも5%低いことを意味する。処理された集団におけるBCL11A発現の割合は、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが加えられていない比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことが好ましい。
「BCL11A活性を阻害する」とは、BCL11Aの機能的活性の量が、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが存在しない比較可能な対照の細胞または集団よりも、本明細書において記述される方法で処理された細胞または細胞集団では少なくとも5%低いことを意味する。BCL11A阻害剤で処理された集団におけるBCL11A活性の割合は、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが加えられていない比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%低い、少なくとも20%低い、少なくとも30%低い、少なくとも40%低い、少なくとも50%低い、少なくとも60%低い、少なくとも70%低い、少なくとも80%低い、少なくとも90%低い、少なくとも1倍低い、少なくとも2倍低い、少なくとも5倍低い、少なくとも10倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも1000倍低いか、またはそれ以上低いことが好ましい。最低でも、BCL11A活性は、当技術分野において標準的な技法を用いて、タンパク質またはmRNAレベルでBCL11A発現の量を判定することによりアッセイすることができる。あるいは、またはさらに、BCL11A活性は、BCL11A活性に感受性であるレポーター構築物を用いて判定することができる。γ-グロビン遺伝子座の配列は、BCL11A構築物の核酸結合モチーフによって認識可能である。
1つの態様において、本明細書において用いられる場合、「DNA標的指向性エンドヌクレアーゼ」という用語は、望ましくない非特異的な二本鎖切断を生ずることなくゲノム中の所望の位置(例えば、第2染色体の位置60,716,189~60,728,612)で二本鎖切断を生じるエンドヌクレアーゼをいう。DNA標的指向性エンドヌクレアーゼは、天然に存在するエンドヌクレアーゼ(例えば、細菌メガヌクレアーゼ)であってよく、または人工的に作製されてもよい(例えば、とりわけ、遺伝子操作されたメガヌクレアーゼ、TALEN、またはZFN)。
別の態様において、本明細書において用いられる場合、「DNA標的指向性エンドヌクレアーゼ」という用語は、望ましくない非特異的なDNA鎖切断を生ずることなくゲノム中の所望の位置(例えば、第2染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域))で一本鎖切断またはDNAリン酸糖骨格の一本の鎖上に「ニック」もしくは切断を生じるエンドヌクレアーゼをいう。
本明細書において用いられる場合、「ベクター」という用語は、これに連結された別の核酸を輸送できる核酸分子をいう。1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは、その中にさらなる核酸セグメントがライゲーションされうる環状二本鎖DNAループをいう。別のタイプのベクターは、さらなる核酸セグメントをウイルスゲノムの中にライゲーションできるウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律的に複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに組み入れられ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それらと機能的に連結される遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書において「組み換え発現ベクター」、またはより簡単に「発現ベクター」といわれる。一般に、組み換えDNA技法において有益な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最もよく用いられる形態のベクターであるため、本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は互換的に用いることができる。しかしながら、本明細書において記述される方法および組成物は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、発現ベクターのそのような他の形態を含むことができる。
発現ベクターの範囲内で、「機能的に連結された」とは、関心対象のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが標的細胞へ導入される場合には標的細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする形で調節配列に連結されていることを意味するよう意図される。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むよう意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記述されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指令するもの、およびある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば、組織特異的な調節配列)が含まれる。さらに、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼは、特定の間隔で、または特定の期間にわたってDNA標的指向性エンドヌクレアーゼの合成を指令する調節配列を含むベクターによって送達することができる。発現ベクターのデザインは、標的細胞の選択、所望とされる発現のレベルなどのような要因に依存しうることが当業者には理解されるであろう。
本明細書において用いられる場合、「切断する」という用語は一般に、所望の位置でのDNAゲノムにおける二本鎖切断の生成をいう。
本明細書において用いられる場合、「DNA標的指向性エンドヌクレアーゼを少なくとも含む組成物の有効量」という用語は、ゲノムの所望の位置において二本鎖切断を生成するのに十分なエンドヌクレアーゼ活性をもたらす、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼの量をいう。1つの態様において、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼの有効量は、組成物と接触させた集団中の細胞の少なくとも20%において所望の遺伝子座で二本鎖切断を生ずる(例えば、集団中の細胞の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはさらに100%が、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼ組成物によってもたらされた遺伝的改変を含む)。
本明細書において用いられる場合、細胞における「胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる」という用語は、胎児型ヘモグロビンが、薬剤が存在しない比較可能な対照の集団よりも、第2染色体の位置60,716,189~60,728,612においてゲノムDNAに結合することによりBCL11AのmRNAまたはタンパク質の発現を妨害する薬剤(例えば、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼ)で処理された集団では少なくとも5%高いことを示す。第2染色体の位置60,716,189~60,728,612においてゲノムDNAに結合するそのような薬剤で処理された集団における胎児型ヘモグロビン発現の割合は、比較可能なサイズおよび培養条件の対照処理集団よりも少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも1倍高い、少なくとも2倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも100倍高い、少なくとも1000倍高いか、またはそれ以上高いことが好ましい。「対照処理集団」という用語は、第2染色体の位置60,716,189~60,728,612においてゲノムDNAに結合する薬剤の添加を除いて、同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、集密度、フラスコサイズ、pHなどで処理された細胞の集団を記述するために本明細書において用いられる。1つの態様において、当技術分野において公知の任意の方法、例えば胎児型γ-グロビンタンパク質のウエスタンブロット分析および胎児型γ-グロビンのmRNAの定量化を用いて、胎児型ヘモグロビン発現の増加を測定することができる。
本明細書において用いられる「単離された細胞」という用語は、それが本来見出される生物から取り出された細胞またはそのような細胞の子孫をいう。任意で、細胞は、インビトロで、例えば他の細胞の存在下で培養されたものである。任意で、細胞は、後に、第2の生物へ導入されるまたは該細胞(もしくはその子孫である細胞)を単離した生物へ再導入される。
本明細書において用いられる単離された細胞集団に関する「単離された集団」という用語は、細胞の混在集団または不均質集団から取り出され分離された細胞の集団をいう。いくつかの態様において、単離された集団は、細胞を単離または濃縮する元となった不均質集団と比べて実質的に純粋な細胞集団である。いくつかの態様において、単離された集団は、単離されたヒト造血前駆細胞集団、例えば、ヒト造血前駆細胞およびヒト造血前駆細胞を得る元となった細胞を含む細胞の不均質集団と比べて実質的に純粋なヒト造血前駆細胞集団である。
特定の細胞集団に関する「実質的に純粋」という用語は、細胞集団全体を構成する細胞に対して少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%純粋である細胞の集団をいう。換言すると、造血前駆細胞の集団に関する「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、本明細書においてこの用語により定義される造血前駆細胞でない細胞を約20%未満、より好ましくは約15%、10%、8%、7%未満、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%未満または1%未満含む細胞の集団をいう。
「対象」は、本明細書において使用される場合、遺伝子治療ベクター、細胞ベースの治療法、および本明細書の他の箇所に開示される方法で処置できる単一遺伝子疾患、障害、または病態の症状を示す任意の動物を含む。好ましい態様において、対象は、遺伝子治療ベクター、細胞ベースの治療法、および本明細書において企図される方法で処置できる造血系の疾患、障害、または病態、例えば、異常ヘモグロビン症の症状を示す任意の動物を含む。好適な対象(例えば、患者)は、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモット)、家畜、および飼育動物またはペット(例えば、ネコまたはイヌ)を含む。ヒト以外の霊長類、好ましくは、ヒト患者が含まれる。典型的な対象は、遺伝子治療によってモジュレートできる1または複数の生理学的活性の異常な量(「正常」または「健常」対象よりも低いまたは高い)を示す動物を含む。
一態様において、本明細書において使用される場合、「~を予防する(prevent)」および類似の語、例えば「予防される(prevented)」、「~を予防する(preventing)」などは、疾患または病態の出現または再発の可能性を予防、阻害、または低下させるためのアプローチを示す。別の態様において、該用語は、疾患もしくは病態の発症もしくは再発を遅延させること、または疾患もしくは病態の症状の出現もしくは再発を遅延させることを指す。別の態様において、本明細書において使用される場合、「予防(prevention)」および類似の語は、疾患または病態の発症または再発前に、疾患または病態の強さ、影響、症状および/または負担を低下させることを含む。
本明細書において用いられる場合、「処置する」という用語は、状態、疾患または障害の少なくとも1つの有害作用または症状を低減することまたは軽減することを含む。例えば、「処置する」および「処置」という用語は、対象が疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善、例えば、有益なまたは所望の臨床結果を有するように、対象に組成物の有効量、例えば、造血前駆細胞の集団を含む組成物の有効量を投与することをいう。本開示の目的上、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能か検出不能かを問わず、1つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の減退、疾患の安定化(例えば、悪化していない)、疾患の進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的か全体的かを問わず)を含むが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、処置することは、処置を受けない場合に予想される生存と比べて生存を引き延ばすことをいうことができる。したがって、当業者は、処置が疾患状態を改善しうるが、しかし疾患の完全な治癒ではないかもしれないことを理解している。いくつかの態様において、処置は予防を含むことができる。しかしながら、代替的な態様において、処置は予防を含まない。
「薬学的に許容される」という語句は、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴わずに、合理的な利益/危険比が保たれる、ヒトおよび動物の組織と接触させて用いるのに適した、化合物、材料、組成物および/または剤形をいうように本明細書において利用される。
組成物、担体、希釈剤および試薬をいう場合の、本明細書において用いられる「薬学的に許容される」、「生理学的に認容される」という用語、およびその文法上の変化形は、互換的に用いられ、その材料が、悪心、めまい感、胃のむかつきなどのような望ましくない生理学的作用を生じることなく、哺乳類にまたは哺乳類に対して投与できることを表す。薬学的に許容される担体は、免疫原性であることが望ましい場合を除き、混合される物質に対して免疫応答の発生を促進しないと考えられる。その中に溶解または分散される活性成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されており、剤形に基づいて限定される必要はない。典型的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注射剤として調製されるが、使用直前に液体中で、溶液または懸濁液とするのに適した固体形態も同様に調製することができる。調製物はまた、乳化することができ、またはリポソーム組成物として提示することができる。活性成分を、薬学的に許容され、活性成分と適合性である賦形剤と、本明細書において記述される治療法で用いるのに適した量で混合することができる。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、望ましいなら、組成物は、活性成分の有効性を増強する湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などのような補助物質を微量含有することができる。本発明の治療用組成物は、その中に成分の薬学的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸によって形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基によって形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基によって形成される塩も同様に、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来することができる。生理的に認容される担体は、当技術分野において周知である。例示的な液体担体は、活性成分および水の他に材料を含有しない、または生理的pH値のリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水のような、その両方を含有する滅菌水溶液である。なおさらに、水溶性担体は、2つ以上の緩衝塩も、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質も含有することができる。液体組成物はまた、水に加えておよび水を除く液相を含有することができる。そのようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油のような植物油、および水-油乳剤である。特定の障害または状態の処置において有効である本発明において記述される方法で用いられる活性薬剤の量は、障害または状態の性質によるものと考えられ、標準的な臨床技法によって判定することができる。
本明細書において用いられる、疾患、障害、またはその症状に関連して用いる場合の「予防」または「予防する」とは、個体が疾患または障害、例えば、異常ヘモグロビン症を発症する可能性の低減をいう。疾患または障害を発症する可能性は、例えば、疾患または障害に関する1つまたは複数の危険因子を有する個体が、同じ危険因子を有するが、本明細書において記述される処置を受けていない集団と比べて、統計学的にいって、障害を発症しない、またはそのような疾患もしくは障害を後になってもしくはより低い重症度で発症する場合に、低減される。疾患の症状を発症しない、または症状の発症が減少(例えば、その疾患または障害に関する臨床的に許容される尺度で少なくとも10%)もしくは遅延(例えば、数日、数週間、数ヶ月または数年)することは、有効な予防と見なされる。
BCL11A発現を減少させるためにDNA標的指向性エンドヌクレアーゼと細胞とを接触させることに関連して、「細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる」という語句は、細胞または細胞の集団中の胎児型ヘモグロビンが、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが存在しない比較可能な対照集団よりも、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼで処理された細胞または細胞の集団では少なくとも5%高いことを示す。DNA標的指向性エンドヌクレアーゼで処理された細胞における胎児型ヘモグロビン発現が、比較可能な対照処理集団よりも少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも1倍高い、少なくとも2倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも100倍高い、少なくとも1000倍高いか、またはそれ以上高いことが好ましい。「対照処理集団」という用語は、BCL11A阻害剤の添加を除いて、同一の培地、ウイルス誘導、核酸配列、温度、集密度、フラスコサイズ、pHなどで処理された細胞の集団を記述するために本明細書において用いられる。
「哺乳類」という用語は、単数の「哺乳類」および複数の「哺乳類」を包含するように意図され、ヒト; 霊長類、例えば類人猿、サル、オランウータンおよびチンパンジー; イヌ科、例えばイヌおよびオオカミ; ネコ科、例えばネコ、ライオンおよびトラ; ウマ科、例えばウマ、ロバおよびシマウマ; 食用動物、例えばウシ、ブタおよびヒツジ; 有蹄動物、例えばシカおよびキリン; げっ歯類、例えばマウス、ラット、ハムスターおよびモルモット; ならびにクマを含むが、これらに限定されることはない。いくつかの好ましい態様において、哺乳類はヒトである。
したがって、1つの態様において、哺乳類は、異常ヘモグロビン症と診断されている。さらなる態様において、異常ヘモグロビン症はβ異常ヘモグロビン症である。1つの好ましい態様において、異常ヘモグロビン症は鎌状赤血球疾患である。本明細書において用いられる場合、「鎌状赤血球疾患」は、鎌状赤血球貧血、鎌状ヘモグロビンC症(HbSC)、鎌状β-プラス-サラセミア(HbS/β+)、または鎌状β-ゼロ-サラセミア(HbS/β0)でありうる。別の好ましい態様において、異常ヘモグロビン症はβサラセミアである。
本明細書において用いられる場合、「異常ヘモグロビン症」という用語は、個体の任意のヘモグロビンの構造または機能の任意の欠陥を意味し、β-グロビン遺伝子のコード領域の欠失変異もしくは置換変異、または正常もしくは標準的な状態と比べて、産生されるヘモグロビンの量の低減を引き起こすそのような遺伝子のプロモーターもしくはエンハンサーの変異もしくは欠失のような、任意の変異によって引き起こされるヘモグロビンの一次、二次、三次または四次構造の欠陥を含む。この用語は、疾患、化学療法、毒素、毒などのような外部要因によって引き起こされる、正常か異常かを問わない、ヘモグロビンの量または有効性の任意の減少をさらに含む。
1つの態様において、本明細書において用いられる「有効量」という用語は、異常ヘモグロビン症の発症を処置するのに、異常ヘモグロビン症の発症の可能性を低下させるのに、または異常ヘモグロビン症の発症を遅延させるのに安全かつ十分な細胞組成物の量をいう。その量はかくして、異常ヘモグロビン症の症状を治癒し、もしくは異常ヘモグロビン症の症状の改善をもたらし、異常ヘモグロビン症の疾患進行の経過を緩徐化し、異常ヘモグロビン症の症状を緩徐化もしくは抑止し、異常ヘモグロビン症の二次的症状の確立を緩徐化もしくは抑止し、または異常ヘモグロビン症の二次的症状の発症を抑止しうる。異常ヘモグロビン症の処置のための有効量は、処置される異常ヘモグロビン症のタイプ、症状の重症度、処置されている対象、対象の年齢および全身状態、投与の方法などによる。したがって、正確な「有効量」を特定することは可能ではない、または賢明ではない。しかしながら、所与のどの場合にも、当業者は日常的な実験だけを用いて適切な「有効量」を判定することができる。
本明細書において用いられる「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、必須であるか否かによらず、明記されていない要素を含むことを受け入れる、本発明にとって必須である組成物、方法、およびその各成分に関連して用いられる。
本明細書において用いられる「から本質的になる」という用語は、所与の態様にとって必要な要素をいう。この用語は、本発明のその態様の基本的および新規または機能的特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
「からなる」という用語は、態様のその記述において引用されていないいかなる要素も排除する、本明細書において記述される組成物、方法、およびその各成分をいう。
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、本文がそれ以外であることを明らかに示している場合を除き、複数の参照を含む。したがって例えば、「方法(the method)」という言及は、本開示を読むことによって当業者に明らかとなるであろう、1つもしくは複数の方法、および/または本明細書において記述されるタイプの段階などを含む。前述の詳細な説明および以下の実施例は、単なる例示であって、本発明の範囲に対する限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者には明らかであると考えられる、開示されている態様に対するさまざまな変更および修正は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされうる。さらに、特定される全ての特許、特許出願、および刊行物は、例えば、本発明に関連して用いられうるこのような刊行物において記述されている方法を説明かつ開示することを目的として明確に参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、単にこれらの開示が本出願の出願日以前であるために提供されるものである。これに関していかなる内容も、先行発明であるとの理由でまたは何らかの他の理由で本発明者らがそのような開示に先行する権利を有しないことの承認と解釈されるべきではない。これらの文献の内容に関する日付または表現についての全ての言明は、本出願人らに入手可能な情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確さに関する承認をなすものではない。
異常ヘモグロビン症
胎児型ヘモグロビン(HbF)は、2本の成人型α-グロビンポリペプチドおよび2本の胎児型β-様γ-グロビンポリペプチドの四量体である。妊娠中、複製されたγ-グロビン遺伝子は、β-グロビン遺伝子座から転写される主要な遺伝子を構成する。出生後、γ-グロビンは成人型β-グロビンに次第に取って代わられるようになる。「胎児スイッチ」といわれるプロセスである(3)。このスイッチの根底にある分子機構は、主として不明確なままであり、集中的な研究の主題であった。主に胎児型ヘモグロビンすなわちHbF(α2γ2)の産生から成人型ヘモグロビンすなわちHbA(α2β2)の産生への発達期の切り替わりは、妊娠28から34週目頃に始まり、生後間もない時期まで続き、この時HbAが優勢となる。この切り替わりは、主に、γグロビン遺伝子の転写が低下し、βグロビン遺伝子の転写が活性化することによる。正常な成人の血液は、平均で約2%のHbFしか含まないが、健康な成人に残存するHbFレベルには、20倍を超える変動幅が認められている(Atweh, Semin. Hematol. 38(4):367-73 (2001))。
異常ヘモグロビン症には、赤血球(RBC)の産生が低下している、および/または、赤血球(RBC)の崩壊(溶血)が増加している、いくつかの遺伝性の貧血が含まれる。これらの疾患にはまた、異常ヘモグロビンの産生をもたらし、同時に酸素濃度を維持する能力の障害を伴う、遺伝的欠陥も含まれる。このような疾患には、十分な量の正常βグロビンを産生できないものや、正常なβグロビンが全く産生できないものがある。このような特にβグロビンタンパク質が関与する疾患は、一般に、β異常ヘモグロビン症と呼ばれる。例えば、βサラセミアは、βグロビン遺伝子の発現が部分的にまたは完全に障害されることにより起こり、HbAの異常または欠損が生じる。鎌状赤血球貧血症は、βグロビン構造遺伝子の点突然変異に起因し、異常(鎌状)ヘモグロビン(HbS)の産生が起こる。HbS型RBCは、正常なRBCよりも脆弱であり、溶血が起こりやすいために、最終的に貧血につながる(Atweh, Semin. Hematol. 38(4):367-73 (2001))。さらに、BCL11Aの遺伝的変種であるHBS1L-MYB変異の存在によって、βサラセミアの臨床的重症度が改善される。この変種は、HbFレベルに関連することが示されている。高HbF変種に伴って重症度の低い臨床型のβサラセミアを有する場合のオッズ比が5であることが示されている(Galanello S. et al., 2009, Blood, 近刊)。
β異常ヘモグロビン症患者におけるグロビン鎖不均衡を低減することを目指した治療に関する研究において、胎児型ヘモグロビン(α2γ2、HbF)の薬理的処置が注目されている。このようなアプローチに重要な治療的将来性があることは、ホモ接合型βサラセミアおよび遺伝性高胎児ヘモグロビン症(HPFH)の両方を同時に受け継いだ患者における表現型を観察することにより示される。また、ホモ接合型βサラセミアを有し、成人型ヘモグロビンの合成が起こらない患者において、胎児型ヘモグロビン濃度が高い場合には、輸血の必要性が低いことからも示唆される。さらに、β鎖異常を有する成人患者の一部では、胎児型ヘモグロビン(HbF)濃度が正常値よりも高いことが知られており、HbFが成人正常値である患者よりも症状経過が軽いことが観察されている。例えば、サウジアラビア人の鎌状赤血球疾患患者であって、HbFを20~30%発現する患者からなる群においては、臨床症状が軽い(Pembrey, et al., Br. J. Haematol. 40: 415-429 (1978))。現在では、鎌状赤血球貧血症やβサラセミアなどのβ異常ヘモグロビン症は、HbFの生成を高めることにより、改善することが知られている(Jane and Cunningham Br. J. Haematol. 102: 415-422 (1998)およびBunn, N. Engl. J. Med. 328: 129-131 (1993)において概説されている)。
γグロビンからβグロビンへの遺伝子発現の発達性のインビボスイッチを制御する分子機構は、現在不明であるが、外部要因がγグロビンの遺伝子発現に影響を与える可能性があるという証左が蓄積している。HbF再活性化活性を有することが発見された第一群の化合物は、細胞毒性薬であった。薬理的処置によってHbFのデノボ合成を引き起こせることが、実験動物で5-アザシチジンを用いて最初に示された(DeSimone, Proc Natl Acad Sci U S A. 79(14):4428-31 (1982))。その後の研究から、βサラセミアおよび鎌状赤血球疾患を有する患者において5-アザシチジンがHbFを増加させられることが確認された(Ley, et al., N. Engl. J. Medicine, 307: 1469-1475 (1982)、およびLey, et al., Blood 62: 370-380 (1983))。追加実験によって、細胞毒性用量のアラビノシルシトシン(アラC)で処置されたヒヒが、F-網状赤血球の著しい上昇を伴って応答すること(Papayannopoulou et al., Science. 224(4649):617-9 (1984))、およびヒドロキシウレアによる処置がサルまたはヒトにおいてγグロビンの誘導につながること(Letvin et. al., N Engl J Med. 310(14):869-73 (1984))が実証された。
HbF再活性化活性を引き起こす能力について調べた第二群の化合物は、短鎖脂肪酸であった。胎児臍帯血前駆細胞における初期の知見は、γアミノ酪酸が胎児型ヘモグロビン誘導因子となりうるという発見につながった(Perrine et al., Biochem Biophys Res Commun. 148(2):694-700 (1987))。その後の研究から、酪酸塩が成体ヒヒにおいてグロビン生成を刺激すること(Constantoulakis et al., Blood. Dec; 72(6): 1961-7 (1988))や、それが、鎌状赤血球貧血症を有する成体動物または患者の赤血球系細胞系列においてγグロビンを誘導すること(Perrine et al., Blood. 74(1):454-9 (1989))が示された。酪酸フェニル(Dover et al., Br J Haematol. 88(3):555-61 (1994))およびバルプロ酸(Liakopoulou et al., 1 : Blood. 186(8):3227-35 (1995))のような短鎖脂肪酸の誘導体も、インビボでHbFを誘導することが示されている。このファミリーの多数の短鎖脂肪酸類似体または誘導体のことを考慮すれば、酪酸塩よりも強力な、このファミリーのいくつかの潜在的化合物が存在している。その後の研究中に発見されたフェニル酢酸およびフェニルアルキル酸(Torkelson et al., Blood Cells Mol Dis. 22(2): 150-8. (1996))は、このファミリーの化合物に属していたので、潜在的なHbF誘導因子と考えられた。しかしながら、現在、鎌状赤血球貧血症およびβサラセミアにおける酪酸塩またはその類似体の使用は、まだ実験段階にあり、臨床試験外の処置のために推奨することができない。
鎌状赤血球貧血症およびβサラセミアにおいて胎児型ヘモグロビンの合成を再活性化することを目指した臨床試験には、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、組み換えヒトエリスロポエチン、および酪酸類似体のような化合物、ならびにこれらの薬剤の組み合わせの短期および長期投与が含まれていた。これらの研究後、ヒドロキシウレアがヒトでのHbFの誘導に用いられ、後に異常ヘモグロビン症の処置で食品医薬品局(FDA)によって承認された最初で最後の薬物になった。しかしながら、望ましくない副作用および患者応答のばらつきを含めて、さまざまな欠点から、そのような薬剤または治療法の長期使用が禁忌であることが示された。例えば、ヒドロキシウレアはHbF生成を刺激し、鎌状化発作を臨床的に軽減させることが示されたが、骨髄毒性および発がんのリスクによって潜在的に制限がある。潜在的な長期にわたる発がん性は、5-アザシチジンに基づく治療法でも存在するであろう。エリスロポエチンに基づく治療法は、患者集団の範囲の中で一貫性があると証明されなかった。インビボでの酪酸の短い半減期は、治療的介入で用いるためにこれらの化合物を適合する際の潜在的障害と見なされた。さらに、γグロビン遺伝子の発現を誘導するには非常に高い投与量の酪酸が必要であり、化合物の持続注入のためにカテーテル処置を要する。さらに、これらの高い投与量の酪酸は、神経毒性および多臓器障害に関連しうる(Blau, et al., Blood 81: 529-537 (1993))。HbFレベルの最低限の増加でさえも鎌状赤血球疾患では有益であるが、βサラセミアでは、現在用いられている薬剤のいずれによっても確実に、または安全に、達成されないはるかに高い増加を要する(Olivieri, Seminars in Hematology 33: 24-42 (1996))。
HbF誘導および生成の天然の調節因子を特定することで、上記の化合物のさまざまな欠点を克服する治療的介入を考案する手段を提供することができるだろう。近年のゲノムワイド関連研究によって、多数の複雑な疾患および形質の遺伝的基盤への洞察が得られた(McCarthy et al., Nat Rev Genet 9, 356 (2008)およびManolio et. al. J Clin Invest 118, 1590 (2008))。しかしながら、圧倒的多数の場合には、遺伝的関連と根本的な病態生理との間の機能的結び付きは、まだ明らかにされていない。胎児型ヘモグロビン(HbF)のレベルは、量的形質として遺伝し、主要なβ異常ヘモグロビン症、鎌状赤血球疾患およびβサラセミアの重症度を改善する際の上述のおよび十分特徴付けされたその役割を考慮すれば、臨床的に重要である(Nathan et. al., Nathan and Oski's hematology of infancy and childhood ed. 6th, pp. 2 v. (xiv, 1864, xli p.) 2003))。二つのゲノムワイド関連研究によって、HbFレベルの変動のおよそ20%を説明する5つの一般的な一塩基多型(SNP)のセットを含む3つの主要な遺伝子座が特定された(Lettre et al., Proc Natl Acad Sci U S A (2008); Uda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 105, 1620 (2008); Menzel et al., Nat Genet 39, 1197 (2007))。さらに、これらの変種のいくつかは、鎌状赤血球疾患の臨床的重症度を予測するものと思われ(Lettre et al., Proc Natl Acad Sci U S A (2008))、これらのSNPの少なくとも1つはまた、βサラセミアの臨床転帰に影響を及ぼしうる(Uda et al., Proc Natl Acad Sci U S A 105, 1620 (2008))。HbFの変動の10%超を説明する、最大のエフェクトサイズ有するSNPは、第2染色体上の遺伝子BCL11Aの第二イントロンに位置している。C2H2型の亜鉛フィンガー転写因子BCL11Aは、リンパ球発生でのその役割について調べられている(Liu et al., Nat Immunol 4, 525 (2003)およびLiu et al., Mol Cancer 5, 18 (2006))が、赤血球生成またはグロビン遺伝子調節でのその役割は、これまでに評価されていない。
組み換えDNAの時代の開始時に、グロビン遺伝子構造の研究から、胎児型グロビンスイッチについて調べるための強力な分子的根拠が得られた。β様グロビンクラスター内の遺伝子の適切な調節に必要なβグロビン遺伝子座の中のシスエレメントを描写することに、かなりの努力が注がれた。これらの研究は、成人のHbFレベルに劇的に影響を与える天然の変異および欠失に依存し、そのクラスターの部分を担持するトランスジェニックマウスの作製によって補完された(Nathan et. al., Nathan and Oski's hematology of infancy and childhood ed. 6th, pp. 2 v. (xiv, 1864, xli p.) 2003)およびG. Stamatoyannopoulos, Exp Hematol 33, 259 (2005))。グロビンのスイッチングに必要とされる正確なシスエレメントは、まだ明確に定義されていないが、トランスジェニックマウスにおける所見から、γグロビン遺伝子が成体期には自律的にサイレンシングされること、つまり胎児期特異的なアクチベーターが存在しないことまたは発生段階特異的なリプレッサーが存在することに最も適合する所見が強く示唆された。近年の遺伝的関連の研究結果から、BCL11Aのような、γグロビン遺伝子の制御でのその関与について調べるための候補遺伝子が得られている。
本明細書において使用される場合、対象における異常ヘモグロビン症を処置またはそれを発症するリスクを低下させることは、異常ヘモグロビン症の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。一局面において、本発明は、対象における異常ヘモグロビン症を処置する、例えば、その重症度又は進行を低下させる方法を特徴とする。別の局面において、また該方法を使用して、対象における異常ヘモグロビン症を発症するリスクを低下させる、対象における異常ヘモグロビン症の症状の発症を遅延させる、または異常ヘモグロビン症を有する対象の寿命を延長させることができる。一局面において、該方法は、対象が異常ヘモグロビン症を有するか、または異常ヘモグロビン症を発症するリスクがあるがまだそれを有していないか、または対象が潜在する異常ヘモグロビン症を有するかに基づいて対象を選択する工程を含むことができる。対象の選択は、異常ヘモグロビン症の症状を検出すること、血液検査、遺伝子検査、または臨床記録を含むことができる。対象が異常ヘモグロビン症を有することを検査の結果が示す場合には、該方法はまた、本明細書に記載される組成物を投与して、それによって、対象における異常ヘモグロビン症を処置するか、またはそれを発症するリスクを低下させる工程も含む。例えば、遺伝子型HbSS、HbS/β0サラセミア、HbSD、もしくはHbSOを伴う、および/または電気泳動により<10%であるHbFを伴うSCDと診断された対象。
本明細書において使用される場合、用語「異常ヘモグロビン症」は、血中の異常ヘモグロビン分子の存在を伴う病態を指す。異常ヘモグロビン症の例は、限定されないが、SCDおよびTHALを含む。また、異常ヘモグロビンの組み合わせが血中に存在する異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状細胞/Hb-C疾患)も含む。このような疾患の典型的な例は、限定されないが、SCDおよびTHALを含む。SCDおよびTHALならびにそれらの症状は、当技術分野において周知であり、かつ、以下にさらに詳述される。対象は、該対象が異常ヘモグロビン症を有すると認識する、理解する、認める、決定する、結論付ける、考える、または決断する医療提供者、医療介護者、医師、看護師、家族、または知人によって、異常ヘモグロビン症を有すると診断されることができる。
用語「SCD」は、赤血球の鎌状化から生じる、あらゆる症候性貧血病態を含むと本明細書において定義される。SCDの徴候は、以下を含む:貧血;疼痛;および/または臓器機能不全、例えば腎不全、網膜症、急性胸部症候群、虚血、持続勃起、および卒中。本明細書において使用される場合、用語「SCD」は、SCDに、特にHbSにおける鎌状細胞置換についてホモ接合性である対象におけるSCDに付随するさまざまな臨床的問題を指す。中でも、SCDという用語の使用によって本明細書において言及される体質上の徴候は、成長および発達の遅れ、重篤感染症、特に肺炎球菌に起因するものを発症する傾向の増加、脾臓機能の顕著な障害、循環血中細菌の有効なクリアランスの妨害だけでなく、脾臓組織の再発性梗塞および最終的な妨害もある。また、用語「SCD」には、主に腰椎、腹部、および大腿骨骨幹部が罹患し、かつ、機序および重症度の点で類似している、筋骨格痛の急性発症も含まれる。成人では、このような発作は、通常、数週間毎または数ヶ月毎の短期間の軽度または中等度の発作として現れ、平均して1年に1回ほど起こる5~7日間続く苦痛を伴う発作が点在する。中でも、このような危機をトリガーすることが知られている事象は、アシドーシス、低酸素症、および脱水であり、その全てがHbSの細胞内重合を増強する(J. H. Jandl, Blood: Textbook of Hematology, 2nd Ed., Little, Brown and Company, Boston, 1996, pages 544-545)。
本明細書において使用される場合、「THAL」は、ヘモグロビンの産生不全によって特徴付けられる遺伝性障害を指す。一態様において、該用語は、ヘモグロビンの合成に影響を与える突然変異が原因で起こる遺伝性貧血を包含する。他の態様において、該用語は、重症またはβ-サラセミア、重症型サラセミア、中間型サラセミア、α-サラセミア、例えばヘモグロビンH疾患のようなサラセミア性病態から生じる、あらゆる症候性貧血を含む。β-サラセミアは、β-グロビン鎖の突然変異によって引き起こされ、かつ、重症型または軽症型として起こることができる。重症型のβ-サラセミアでは、小児は、出生時には正常であるが、生後1年の間に貧血を発症する。軽症型のβ-サラセミアは、小さな赤血球細胞を産生する。アルファ-サラセミアは、グロビン鎖からの1つまたは複数の遺伝子の欠失によって引き起こされる。
語句「疾患を発症するリスク」とは、対照の対象または集団(例えば、健常対象または集団)と比較した場合の対象が将来異常ヘモグロビン症を発症するだろう相対的確率を意味する。例えば、SCDと関連する遺伝子突然変異(β-グロビン遺伝子のAからTへの突然変異)を保有する個体は、個体がその突然変異についてヘテロ接合性またはホモ接合性であろうとなかろうと、その個体のリスクを増加させる。
造血前駆細胞
1つの態様において、造血前駆細胞はエクスビボまたはインビトロで接触させる。具体的な態様において、接触させる細胞は、赤血球系列の細胞である。1つの態様において、細胞組成物は、減少したBCL11A発現を有する細胞を含む。
「造血前駆細胞」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、骨髄系細胞系統(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、ならびにリンパ系細胞系統(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む血球型の全てを生ずる幹細胞系列の細胞をいう。「赤血球系列の細胞」は、接触させる細胞が、最終分化によって赤血球(erythrocyte)または赤血球(red blood cell; RBC)を形成するような、赤血球生成を起こす細胞であることを示す。そのような細胞は、骨髄造血幹細胞由来の3つの細胞系列、つまり赤血球系、リンパ系、および骨髄系のうちの1つに属する。特異的な増殖因子および造血微小環境の他の成分への曝露によって、造血前駆細胞は、一連の中間分化細胞型、赤血球系列の全ての中間体を通じて、RBCへ成熟しうる。したがって、「赤血球系列」の細胞は、この用語が本明細書において用いられる場合、造血前駆細胞、前赤芽球、塩基好性赤芽球、赤芽球、後赤血球、網状赤血球、および赤血球を含む。
いくつかの態様において、造血前駆細胞は、造血前駆細胞に特有の細胞表面マーカー: CD34+、CD59+、Thy1/CD90+、CD38lo/-、およびC-kit/CD117+の少なくとも1つを有する。好ましくは、造血前駆細胞は、これらのマーカーのいくつかを有する。
いくつかの態様において、赤血球系列の造血前駆細胞は、赤血球系列に特有の細胞表面マーカー: CD71およびTer119を有する。
造血前駆細胞のような、幹細胞は、増殖することができ、かつ、分化したまたは分化可能な娘細胞を次に生じさせうる多数の母細胞を作製する能力を有するより多くの前駆細胞を生じさせることができる。娘細胞自体は、増殖し、かつ、親の発生能を有する1つまたは複数の細胞を保持しつつ、1つまたは複数の成熟細胞型へ続いて分化する後代を産生するように誘導されうる。「幹細胞」という用語はそして、特定の状況下で、より特殊化したまたは分化した表現型へ分化する能力または可能性を有し、かつ、ある状況下で、実質的に分化することなく増殖する能力を保持する、細胞をいう。1つの態様において、前駆細胞または幹細胞という用語は、胚細胞および組織の漸進的多様化において生じるように、その子孫(後代)が、分化によって、例えば完全に個々の特徴を獲得することによって、しばしば異なる方向に、特殊化する、一般化された母細胞をいう。細胞分化は、多くの細胞分裂によって典型的に生じる複雑なプロセスである。分化細胞は、それ自体が多能性細胞などから誘導される多能性細胞に由来しうる。これらの多能性細胞の各々は幹細胞と考えられうる一方、各々が生じさせうる細胞型の範囲は、かなり異なりうる。ある分化細胞はまた、より大きな発生能の細胞を生じさせる能力を有する。そのような能力は、天然のものでありえ、またはさまざまな因子での処理時に人工的に誘導されうる。多くの生物学的な事例において、幹細胞はまた「多能性」であり、何故ならば、それらは2つ以上の別個の細胞型の後代を産生しうるためであり、しかしこれは「幹性(stem-ness)」について必要とされない。自己再生は、幹細胞定義の他の古典的な部分であり、それは、本書において用いられる場合、必須である。理論的には、自己再生は、2つの主要な機構のいずれかによって生じうる。幹細胞は、非対称的に分裂しえ、一方の娘細胞は幹細胞状態を保持し、他方の娘細胞は、ある別個の他の特定の機能および表現型を発現する。あるいは、集団中の幹細胞のいくつかは、2つの幹細胞へ対称的に分裂しえ、したがって、全体として集団中にいくつかの幹細胞が維持され、一方、集団中の他の細胞は分化された後代のみを生じさせる。一般的に、「前駆細胞」は、より原始的である(すなわち、完全に分化した細胞であるよりも発生経路または進行に沿って初期の段階である)細胞表現型を有する。多くの場合、前駆細胞はまた、顕著なまたは非常に高い増殖能を有する。前駆細胞は、発生経路により、および細胞が発生かつ分化する環境により、複数の異なる分化細胞型を生じ、または単一の分化細胞型を生じうる。
細胞個体発生の文脈において、形容詞「分化した」または「分化している」は、相対的な用語である。「分化細胞」は、それが比較されている細胞よりも発生経路のさらに先へ進んだ細胞である。したがって、幹細胞は、細胞系列が拘束された前駆細胞(造血幹細胞のような)へ分化することができ、これは次に、該経路のさらに先の他の前駆細胞型(赤血球前駆細胞のような)へ、その後、最終段階の分化細胞へ分化することができ、これはある種の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持しえるかまたは保持しえない。
人工多能性幹細胞
いくつかの態様において、本明細書において記述される遺伝子操作ヒト細胞は、単離された多能性幹細胞から誘導される。iPSCを用いる利点は、前駆細胞が投与される対象と同じ対象から細胞を誘導できる点である。すなわち、体細胞を対象から得て、人工多能性幹細胞へとリプログラムした後、造血前駆細胞(例えば、自家細胞)へと再分化させて対象に投与することができる。前駆細胞が、本質的に自家起源から誘導されることから、生着の拒絶またはアレルギー反応のリスクは、別の対象または対象群からの細胞を用いる場合と比較して減少する。いくつかの態様において、造血前駆細胞は、非自家起源から誘導される。加えて、iPSCを用いることにより、胚起源から細胞を得る必要がなくなる。このように1つの態様において、開示される方法において用いられる幹細胞は、胚幹細胞ではない。
分化は一般的に、生理的状況下で非可逆的であるが、近年、体細胞を人工多能性幹細胞へとリプログラムするためのいくつかの方法が開発されている。例示的な方法は、当技術分野において公知であり、本明細書において以下に簡単に説明する。
本明細書において用いられる「リプログラミング」という用語は、分化した細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変化または逆転させるプロセスを意味する。別の言い方をすれば、リプログラミングは、細胞の分化をより未分化なまたはより原始的なタイプの細胞へと逆向きに駆動するプロセスを意味する。多くの初代培養細胞を培養すると、完全に分化した特徴の一部が失われうることに注意すべきである。このように、分化した細胞という用語に含まれるそのような細胞の単純な培養によって、これらの細胞が、非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞となるわけではない。分化細胞の多能性への移行は、培養において分化特徴の部分的喪失に至る刺激を超えるリプログラミング刺激を必要とする。リプログラムされた細胞はまた、一般的に培養において有限回数の分裂能を有する初代培養の親細胞と比較して、増殖能を失うことなく長期間継代できるという特徴を有する。
リプログラムされる細胞を、リプログラミングの前に部分的に分化させるかまたは最終分化させることができる。いくつかの態様において、リプログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、多能性状態または複能性状態への完全な逆転を包含する。いくつかの態様において、リプログラミングは、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の、未分化細胞(例えば、胚様細胞)への完全または部分的逆転を包含する。リプログラミングによって、細胞による特定の遺伝子の発現が起こりえて、その発現がさらなるリプログラミングに寄与する。本明細書において記述されるある態様において、分化細胞(例えば、体細胞)のリプログラミングによって、分化細胞に、未分化状態のふりをさせることができる(例えば、未分化細胞である)。得られた細胞は、「リプログラム細胞」または「人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)」といわれる。
リプログラミングは、細胞分化の際に起こる、核酸修飾(例えば、メチル化)の遺伝的パターン、染色質凝縮、エピジェネティックな変化、ゲノムインプリンティングなどの少なくともいくつかの変化、例えば逆転を伴いうる。リプログラミングは、既に多能性である細胞の既存の未分化状態を単に維持することとは異なり、または既に複能性細胞である細胞(例えば、造血幹細胞)の既存の完全ではない分化状態を維持することとも異なる。リプログラミングはまた、既に多能性または複能性である細胞の自己再生または増殖を促進することとも異なるが、本明細書において記述される組成物および方法はまた、いくつかの態様において、そのような目的にとっても有用でありうる。
体細胞から多能性幹細胞を作製するために用いられる特異的アプローチまたは方法(広く「リプログラミング」といわれる)は、主張される本発明にとって重要ではない。このように、体細胞を多能性表現型へとリプログラムするいかなる方法も、本明細書において記述される方法において用いるために適切であろう。
転写因子の既定の組み合わせを用いて多能性細胞を作製するためのリプログラミング方法論は、人工多能性幹細胞において記述されている。Yamanaka and Takahashiは、Oct4、Sox2、Klf4、およびc-Mycの直接形質導入によって、マウス体細胞を発達能が増大したES細胞様細胞へと変換させた(Takahashi and Yamanaka, 2006)。iPSCは、それらが多能性関連転写回路およびエピジェネティックな背景の多くを回復することからES細胞と類似する。加えて、マウスiPSCは、多能性に関する全ての標準アッセイ、具体的に、3胚葉の細胞タイプへのインビトロ分化、テラトーマ形成、キメラへの関与、生殖系列伝播(Maherali and Hochedlinger, 2008)、および四倍体胚盤胞補完(Woltjen et al., 2009)を満たす。
その後の実験から、類似の形質導入法(Lowry et al., 2008; Park et al., 2008; Takahashi et al., 2007; Yu et al., 2007b)を用いてヒトiPS細胞を得ることができることが示され、および転写因子トリオ、OCT4、SOX2、およびNANOGが、多能性を支配する転写因子のコアセットとして確立されている(Jaenisch and Young, 2008)。iPS細胞の産生は、歴史的にはウイルスベクターを用いて、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸配列を成体の体細胞に導入することによって得ることができる。
iPS細胞は、最終分化体細胞から作製または誘導することができるとともに、成体体細胞または体幹細胞からも作製または誘導することができる。すなわち、非多能性の前駆細胞を、リプログラミングによって多能性または複能性にすることができる。そのような例では、最終分化細胞をリプログラムするために必要な場合ほど多くのリプログラム因子を含める必要はない。さらに、リプログラミングは、非ウイルス性のリプログラミング因子の導入によって、例えばタンパク質そのものを導入することによって、またはリプログラミング因子をコードする核酸を導入することによって、または翻訳時にリプログラミング因子を産生するメッセンジャーRNAを導入することによって誘導することができる(例えば、Warren et al., Cell Stem Cell, 2010 Nov 5;7(5):618-30を参照されたい)。リプログラミングは、例えば、Oct-4(Oct-3/4またはPouf51としても知られる)、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、Sox 18、NANOG、Klf1、Klf2、Klf4、Klf5、NR5A2、c-Myc、l-Myc、n-Myc、Rem2、Tert、およびLIN28を含む、幹細胞関連遺伝子をコードする核酸の組み合わせを導入することによって行うことができる。1つの態様において、本明細書において記述される方法および組成物を用いるリプログラミングは、Oct-3/4、Soxファミリーメンバー、Klfファミリーメンバー、およびMycファミリーメンバーの1つまたは複数を体細胞に導入する段階をさらに含みうる。1つの態様において、本明細書において記述される方法および組成物は、さらに、リプログラミングのためにOct4、Sox2、Nanog、c-MYC、およびKlf4の各々の1つまたは複数を導入する段階を含む。先に注目したように、リプログラミングのために用いられる方法そのものは、必ずしも本明細書において記述される方法および組成物にとって重要ではない。しかし、リプログラムした細胞から分化した細胞を、例えばヒトの治療に用いる場合、1つの態様において、リプログラミングは、ゲノムを変化させる方法によって行われない。このように、そのような態様において、リプログラミングは、例えばウイルスまたはプラスミドベクターを用いないで行われる。
開始細胞集団から誘導されるリプログラミングの効率(すなわち、リプログラムされた細胞の数)を、Shi, Y., et al (2008) Cell-Stem Cell 2:525-528、Huangfu, D., et al (2008) Nature Biotechnology 26(7):795-797、およびMarson, A., et al (2008) Cell-Stem Cell 3: 132-135によって示されるように、さまざまな低分子の添加によって増強させることができる。このように、人工多能性幹細胞産生の効率または割合を増強する物質または物質の組み合わせを、患者特異的または疾患特異的iPSCの産生に用いることができる。リプログラミング効率を増強する物質のいくつかの非限定的な例としては、とりわけ可溶性Wnt、Wnt条件培地、BIX-01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ)、PD0325901(MEK阻害剤)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、バルプロ酸、5'-アザシチジン、デキサメタゾン、スベロイルアニリド、ヒドロキサム酸(SAHA)、ビタミンC、およびトリコスタチン(TSA)が挙げられる。
リプログラミング増強物質の他の非限定的な例としては、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA(例えば、MK0683、ボリノスタット)および他のヒドロキサム酸)、BML-210、デプデシン(例えば、(-)-デプデシン)、HC毒素、ヌルスクリプト(Nullscript、4-(1,3-ジオキソ-1H,3H-ベンゾ[デ]イソキノリン-2-イル)-N-ヒドロキシブタナミド)、フェニルブチレート(例えば、フェニル酪酸ナトリウム)およびバルプロ酸((VPA)および他の短鎖脂肪酸)、スクリプタイド、スラミンナトリウム、トリコスタチンA(TSA)、APHAコンパウンド8、アピシジン、酪酸ナトリウム、ピバロイルオキシメチルブチレート(ピバネクス(Pivanex)、AN-9)、トラポキシンB、クラミドシン、デプシペプチド(FR901228またはFK228としても知られる)、ベンズアミド(例えば、CI-994(例えば、N-アセチルジナリン)およびMS-27-275)、MGCD0103、NVP- LAQ-824、CBHA(m-カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサム酸)、JNJ16241199、ツバシン(Tubacin)、A-161906、プロキサミド、オキサムフラチン、3-Cl-UCHA(例えば、6-(3-クロロフェニルウレイド)カプロイックヒドロキサム酸)、AOE(2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカン酸)、CHAP31およびCHAP 50が挙げられる。他のリプログラミング増強物質としては、例えば、HDACのドミナントネガティブ型(例えば、触媒的に不活性な型)、HDACのsiRNA阻害剤、およびHDACに特異的に結合する抗体が挙げられる。そのような阻害剤は、例えば、BIOMOL International、Fukasawa、Merck Biosciences、Novartis、Gloucester Pharmaceuticals、Aton Pharma、Titan Pharmaceuticals、Schering AG、Pharmion、MethylGene、およびSigma Aldrichから入手することができる。
本明細書において記述される方法とともに用いるための多能性幹細胞の誘導を確認するために、単離クローンを、幹細胞マーカーの発現に関して試験することができる。体細胞から誘導された細胞に幹細胞マーカーが発現されれば、細胞は、人工多能性幹細胞であると同定される。幹細胞マーカーは、SSEA3、SSEA4、CD9、Nanog、Fbx15、Ecat1、Esg1、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Dax1、Zpf296、Slc2a3、Rex1、Utf1、およびNat1を含む非限定的な群から選択されうる。1つの態様において、Oct4またはNanogを発現する細胞は、多能性であると同定される。そのようなマーカーの発現を検出する方法は、例えばRT-PCR、およびウエスタンブロットまたはフローサイトメトリー分析などのコードされるポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法を含みうる。いくつかの態様において、検出は、RT-PCRを伴うのみならず、タンパク質マーカーの検出を含む。細胞内マーカーは、RT-PCRによって最もよく同定されうるが、細胞表面マーカーは、例えば免疫細胞化学によって容易に同定される。
単離細胞の多能性幹細胞特徴は、3胚葉の各々の細胞へのiPSCの分化能を評価する試験によって確認することができる。一例として、ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を用いて、単離クローンの多能性特徴を評価することができる。細胞をヌードマウスに導入して、細胞から生じた腫瘍に関して組織学および/または免疫組織化学を行う。3胚葉全てからの細胞を含む腫瘍が成長すれば、例えば細胞が多能性幹細胞であることをさらに示している。
リプログラミングのための体細胞
体細胞は、この用語が本明細書において用いられる場合、生殖系列細胞を除く、生物の体を形成する任意の細胞をいう。精子および卵子、精子および卵子が作製される元となる細胞(生殖母細胞)、ならびに未分化幹細胞を除く、哺乳類の体におけるあらゆる細胞タイプが、分化体細胞である。例えば、内部臓器、皮膚、骨、血液、および結合組織は全て、分化体細胞で構成される。
本明細書において記述される組成物および方法とともに用いられるさらなる体細胞タイプは、線維芽細胞(例えば、初代培養線維芽細胞)、筋肉細胞(例えば、筋細胞)、丘細胞、神経細胞、乳腺細胞、肝細胞および膵島細胞を含む。いくつかの態様において、体細胞は、初代培養細胞株または初代培養もしくは二次培養細胞株の後代である。いくつかの態様において、体細胞は、ヒトサンプルから、例えば、毛包、血液サンプル、生検材料(例えば、皮膚生検材料、または脂肪組織生検材料)、スワブサンプル(例えば、口腔スワブサンプル)から得られ、このため、ヒト体細胞である。
分化体細胞のいくつかの非限定的な例としては、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、心細胞、骨格筋細胞、免疫細胞、肝細胞、脾細胞、肺細胞、循環中の血球、消化管細胞、腎細胞、骨髄細胞、および膵細胞が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、体細胞は、脳、肝臓、消化管、胃、腸管、脂肪、筋肉、子宮、皮膚、脾臓、内分泌器官、骨などを含むが、これらに限定されない、任意の体組織から単離された初代培養細胞でありうる。さらに、体細胞は、任意の哺乳類種から得ることができ、その非限定的な例としては、マウス、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヒト細胞が挙げられる。いくつかの態様において、体細胞はヒト体細胞である。
リプログラム細胞を、疾患の治療的処置のために用いられる造血前駆細胞の作製に用いる場合、処置される患者から単離された体細胞を用いることが望ましいが、必ずしもその必要はない。例えば、疾患に関係する体細胞、疾患の治療的処置に関与する体細胞などを用いることができる。いくつかの態様において、リプログラム細胞とそれらが誘導されるまたは作製される元となる体細胞を含む不均質な集団からリプログラム細胞を選択する方法は、任意の公知の手段によって行うことができる。例えば、選択マーカー遺伝子のような薬物耐性遺伝子などを用いて、指標として選択マーカーを用いてリプログラム細胞を単離することができる。
本明細書において開示されるリプログラム体細胞は、アルカリホスファターゼ(AP); ABCG2; ステージ特異的胚抗原-1(SSEA-1); SSEA-3; SSEA-4; TRA-1-60; TRA-1-81; Tra-2-49/6E; ERas/ECAT5、E-カドヘリン; β-III-チューブリン; α-平滑筋アクチン(α-SMA); 線維芽細胞増殖因子4(Fgf4)、Cripto、Dax1; 亜鉛フィンガータンパク質296(Zfp296); N-アセチルトランスフェラーゼ-1(Nat1); ES細胞関連転写物1(ECAT1); ESG1/DPPA5/ECAT2; ECAT3; ECAT6; ECAT7; ECAT 8; ECAT9; ECAT10; ECAT15-1; ECAT15-2; Fthl17; Sal14; 未分化胚細胞転写因子(Utf1); Rex1; p53; G3PDH; TERTを含むテロメラーゼ; サイレントX染色体遺伝子; Dnmt3a; Dnmt3b; TRIM28; F-ボックス含有タンパク質15(Fbx15); Nanog/ECAT4; Oct3/4; Sox2; Klf4; c-Myc; Esrrb; TDGF1; GABRB3; Zfp42、FoxD3; GDF3; CYP25A1; 発生多能性関連2 (DPPA2); T細胞リンパ腫切断点1 (Tcl1); DPPA3/Stella; DPPA4; 多能性に関する他の一般的マーカーなどを含む、任意の数の多能性細胞マーカーを発現することができる。他のマーカーは、Dnmt3L; Sox15; Stat3; Grb2; β-カテニン、およびBmi1を含みうる。そのような細胞はまた、人工多能性幹細胞が誘導される体細胞の特徴であるマーカーの下方制御を特徴としうる。
ゲノム編集およびDNA標的指向性エンドヌクレアーゼ
本明細書において用いられる場合、「ゲノム編集」という用語は、人為的に操作されたヌクレアーゼを用いて、ゲノム中の所望の位置で切断しかつ特定の二本鎖切断を生成し、これをその後、相同組み換え(HR)、相同組み換え修復(HDR)および非相同末端再結合(NHEJ)のような、細胞の内因性プロセスによって修復する、逆遺伝学的方法をいう。NHEJは二本鎖切断におけるDNA末端を直接連結するが、HDRは、切断点の、失われたDNA配列を再生するための鋳型として相同配列を利用する。
ゲノム編集は、従来の制限エンドヌクレアーゼを用いて行うことができない。というのは、大部分の制限酵素はその標的としてDNA上の数個の塩基対を認識するため、認識される塩基対の組み合わせは、ゲノム全体の多くの位置において見出され、結果的に複数の切断をもたらす(すなわち、所望の位置に限定されない)可能性が非常に高いからである。この難題を克服し、部位特異的な二本鎖切断を生成するために、いくつかの異なるクラスのヌクレアーゼが今日までに発見され、生物工学で加工されている。これらがメガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、Cas9/CRISPRシステム、および転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。
メガヌクレアーゼは、4つのファミリー: LAGLIDADGファミリー(SEQ ID NO: 144に開示される「LAGLIDADG」)、GIY-YIGファミリー、His-CysボックスファミリーおよびHNHファミリーに一般に分類される。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を及ぼす構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバー(SEQ ID NO: 144に開示される「LAGLIDADG」)は、保存されたLAGLIDADGモチーフの1つまたは2つのコピーのいずれかを有することによって特徴付けられる(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。単一コピーのLAGLIDADGモチーフ(SEQ ID NO: 144)を有するLAGLIDADGメガヌクレアーゼ(SEQ ID NO: 144に開示される「LAGLIDADG」)は、ホモ二量体を形成するが、2コピーのLAGLIDADG(SEQ ID NO: 144)を有するメンバーは単量体として見出される。同様に、GIY-YIGファミリーメンバーはGIY-YIGモジュールを有し、これは70~100残基長であり、4つの不変残基を有する4つまたは5つの保存配列モチーフを含み、このうちの2つが活性に必要とされる(Van Roey et al. (2002), Nature Struct. Biol. 9: 806-811を参照のこと)。His-Cysボックスメガヌクレアーゼは、数百個のアミノ酸残基を包含する領域にわたって高度に保存された一連のヒスチジンおよびシステインにより特徴付けられる(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。NHNファミリーの場合、そのメンバーは、アスパラギン残基によって取り囲まれた二組の保存ヒスチジンを含んだモチーフにより定義される(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造エレメントそして、結果的に、DNA認識配列特異性および触媒活性に関してお互いに広く異なっている。
メガヌクレアーゼは、微生物種においてよく見られ、非常に長い認識配列(>14 bp)を有し、かくしてそれらは、所望の位置での切断に対して生来非常に特異的であるという独特な性質を有する。これを利用して、ゲノム編集において部位特異的な二本鎖切断を作製することができる。当業者は、これらの天然のメガヌクレアーゼを利用することができるが、しかしそのような天然のメガヌクレアーゼの数は限られている。この難題を克服するため、突然変異生成および高速大量処理スクリーニング法を用いて、独特な配列を認識するメガヌクレアーゼ変種を生成した。例えば、さまざまなメガヌクレアーゼを融合させて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素を生成した。あるいは、メガヌクレアーゼのDNA相互作用性のアミノ酸を変化させて、配列特異的なメガヌクレアーゼをデザインすることができる(例えば、米国特許第8,021,867号を参照のこと)。例えば、Certo, MT et al. Nature Methods (2012) 9:073-975; 米国特許第8,304,222号; 同第8,021,867号; 同第8,119,381号; 同第8,124,369号; 同第8,129,134号; 同第8,133,697号; 同第8,143,015号; 同第8,143,016号; 同第8,148,098号; または同第8,163,514号において記述されている方法を用いてメガヌクレアーゼをデザインすることができ、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。あるいは、部位特異的な切断特性を有するメガヌクレアーゼを市販の技術、例えば、Precision BioScienceのDirected Nuclease Editor (商標)ゲノム編集技術を用いて得ることができる。
ZFNおよびTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術では、亜鉛フィンガーおよび転写アクチベーター様エフェクター(TALE)のような特異的DNA配列認識ペプチドに連結されている非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位および切断性部位が互いに分離しているエンドヌクレアーゼを選択し、その切断性の部分を分離し、その後、配列認識性のペプチドに連結し、それによって所望の配列に対して非常に高い特異性を有するエンドヌクレアーゼを得る。そのような特性を有する例示的な制限酵素は、FokIである。さらに、FokIは、ヌクレアーゼ活性を有するには二量体化を要するという利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーが独特なDNA配列を認識するにつれて特異性が劇的に増すことを意味している。この効果を増強するため、ヘテロ二量体として機能し、増大した触媒活性を有しうるだけであるようにFokIヌクレアーゼが操作された。ヘテロ二量体機能性のヌクレアーゼは、望ましくないホモ二量体活性の可能性を回避し、かくして、二本鎖切断の特異性を増加させる。
ZFNおよびTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似の特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼ間の差異は、そのDNA認識ペプチド内にある。ZFNはCys2-His2亜鉛フィンガーにより、TALENはTALEによる。これらのDNA認識性のペプチドドメインの両方とも、そのタンパク質中に組み合わせて天然に見出されるという特徴を有する。Cys2-His2亜鉛フィンガーは、典型的には、3 bp離れた繰り返し単位で生じ、転写因子のような種々の核酸相互作用性のタンパク質において多様な組み合わせで見出される。TALEは、他方、アミノ酸と、認識されるヌクレオチド対との間の認識比1対1で繰り返し単位で見出される。亜鉛フィンガーおよびTALEの両方が、繰り返されたパターンで生じるので、多種多様の配列特異性をもたらすように異なる組み合わせを試みることができる。部位特異的な亜鉛フィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチには、例えば、とりわけ、モジュールアセンブリ(この場合には必要とされる配列を網羅するように、トリプレット配列と関連付けられる亜鉛フィンガーが一列に付着される)、OPEN (ペプチドドメイン vs. トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、その後に細菌系でのペプチドの組み合わせ vs. 最終標的の高ストリンジェンシー選択)、および亜鉛フィンガーライブラリーの細菌ワン・ハイブリッドスクリーニングが含まれる。本明細書において記述される方法および組成物で用いるためのZFNは、例えば、Sangamo Biosciences (商標) (Richmond, CA)から商業的に入手することができる。
ゲノム編集のCas9/CRISPRシステムが、本明細書において記述される方法および組成物で利用されることが本明細書において企図される。クラスター化規則的スペース間短鎖パリンドローム反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムは、RNAプログラム可能なゲノム編集のために有用である(例えば、Jinek, M. et al. Science (2012) 337(6096):816-821を参照のこと)。
トランス活性化crRNA(tracrRNA)は、トランスにコード化された低分子RNAである。それは、ヒト病原体化膿レンサ球菌中で最初に発見された(Deltcheva E, et al. (2011). Nature 471 (7340):602-7 を参照のこと)。細菌および古細菌では、CRISPR/Cas(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列/CRISPR関連タンパク質)が、ウイルスおよびプラスミドから保護するRNA媒介性防御システムを構成する。この防御経路は、3つの工程を有する。最初に、侵入核酸のコピーがCRISPR遺伝子座に組み込まれる。次に、このCRISPR遺伝子座からCRISPR RNA(crRNA)が転写される。次いで、crRNAがエフェクター複合体に取り込まれ、そこで、crRNAがその複合体を侵入核酸に誘導し、Casタンパク質がこの核酸を分解する(Terns MP and Terns RM (2011). Curr Opin Microbiol 14 (3): 321-7 を参照のこと)。CRISPR活性化にはいくつかの経路があり、そのうちの1つは、crRNAの成熟において役割を果たすtracrRNAを必要とする。tracrRNAは、RNA二本鎖を形成するpre-crRNAに相補的であり、それと塩基対合する。これは、RNA特異的リボヌクレアーゼであるRNase IIIによって切断され、crRNA/tracrRNAハイブリッドを形成する。このハイブリッドは、エンドヌクレアーゼCas9のガイドとして作用し、このCas9が侵入核酸を切断する(Deltcheva E, et al. supra; Jinek M, et al. (2012), Science 337 (6096): 816-21; および Brouns SJ (2012), Science 337 (6096): 808-9 を参照のこと)。
あるいは、ゲノム編集は組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)に基づくゲノム工学を用いて行うことができるが、それは、生きている哺乳類細胞のゲノムへのDNA配列の挿入、欠失または置換を可能にするrAAVベクターの使用を中心としたゲノム編集プラットフォームである。rAAVゲノムは、プラスまたはマイナス・センスのいずれかの、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)分子であり、これは約4.7キロベース長である。これらの一本鎖DNAウイルスベクターは、高い形質導入率を有し、ゲノム中での二本鎖DNA切断を引き起こさずに内因性の相同組み換えを刺激するという独特な性質を有する。当業者は、所望のゲノム遺伝子座を標的とし、欠失のような、細胞中での全体のおよび/または微細の両方の内因性遺伝子変化を行うようにrAAVベクターをデザインすることができる。rAAVゲノム編集は、それが単一の対立遺伝子を標的とし、いかなる非特異的なゲノム変化も引き起こさないという点で利点を有する。rAAVゲノム編集技術は、商業的に利用可能である、例えば、Horizon (商標) (Cambridge, UK)のrAAV GENESIS (商標)システム。
薬学的に許容される担体
本明細書において記述される、ヒト造血前駆細胞もしくは遺伝子組み換え細胞またはそれらの後代を対象に投与する方法は、造血前駆細胞を含む治療用組成物を用いることを伴う。治療用組成物は、細胞組成物とともに生理的に許容される担体を含み、および任意で、活性成分としてその中に溶解または分散される、本明細書において記述される少なくとも1つのさらなる生物活性剤を含む。好ましい態様において、治療用組成物は、治療目的で哺乳類またはヒト患者に投与した場合に、それが望ましい場合を除き、実質的に免疫原性ではない。
一般的に、本明細書において記述される造血前駆細胞もしくは遺伝子組み換え細胞またはそれらの後代は、薬学的に許容される担体とともに懸濁液として投与される。当業者は、細胞組成物において用いられる薬学的に許容される担体が、対象に送達される細胞の生存率を実質的に妨害する量の緩衝液、化合物、凍結保護剤、保存剤、または他の作用物質を含まないことを認識するであろう。細胞を含む製剤は、例えば細胞膜の完全性を維持することができる浸透圧緩衝剤、および任意で投与時の細胞の生存率を維持するまたは生着を増強するための栄養を含みうる。そのような製剤および懸濁剤は、当業者に公知であるか、および/または日常的な実験を用いて本明細書において記述される造血前駆細胞とともに用いるために適合させることができる。
細胞組成物はまた、乳化技法が細胞の生存率に有害に影響を及ぼさない限り、乳化されうる、またはリポソーム組成物として提示されうる。細胞および他の任意の活性成分を、薬学的に許容されて活性成分と適合性である賦形剤と、本明細書において記述される治療法において用いるために適した量で混合することができる。
本明細書において記述される細胞組成物に含まれるさらなる作用物質は、その中に成分の薬学的に許容される塩を含みうる。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸によって形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基によって形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基によって形成される塩も同様に、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来することができる。生理的に認容される担体は、当技術分野において周知である。例示的な液体担体は、活性成分および水の他に材料を含有しない、または生理的pH値のリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水のような、その両方を含有する滅菌水溶液である。なおさらに、水溶性担体は、2つ以上の緩衝塩も、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質も含有することができる。液体組成物はまた、水に加えておよび水を除く液相を含有することができる。そのようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油のような植物油、および水-油乳剤である。特定の障害または状態の処置において有効である本発明において記述される細胞組成物において用いられる活性化合物の量は、障害または状態の性質によるものと考えられ、標準的な臨床技法によって判定することができる。
いくつかの態様において、記載される単離された遺伝子改変細胞の組成物は、薬学的に許容しうる担体をさらに含む。一態様において、薬学的に許容しうる担体は、組織または細胞培養培地を含まない。
いくつかの態様において、記載される核酸分子の組成物は、薬学的に許容しうる担体をさらに含む。一態様において、薬学的に許容しうる担体は、組織または細胞培養培地を含まない。
いくつかの態様において、記載される核酸分子を含むベクターの組成物は、薬学的に許容しうる担体をさらに含む。一態様において、薬学的に許容しうる担体は、組織または細胞培養培地を含まない。
投与および効能
本明細書において用いられる場合、「投与する」、「導入する」および「移植する」という用語は、細胞、例えば本明細書において記述される造血前駆細胞を、所望の効果が得られるように、損傷部位または修復部位などの所望の部位で、導入した細胞の少なくとも部分的局在が得られる方法または経路によって対象に留置するという文脈において互換的に用いられる。細胞、例えば造血前駆細胞、またはその分化後代は、植え込まれた細胞もしくは細胞成分の少なくとも一部が生存したままである対象における所望の位置への送達が得られる任意の適切な経路によって投与されうる。対象に投与後の細胞の生存期間は、数時間、例えば24時間もの短時間から数日、数年もの長期間、すなわち長期間の生着でありうる。例えば、本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、造血前駆細胞またはBCL11A発現を減少させた遺伝子組み換え細胞の有効量は、腹腔内または静脈内経路のような、全身投与経路によって投与される。
予防的に提供される場合、本明細書において記述される造血前駆細胞またはBCL11A発現を減少させた遺伝子組み換え細胞を、異常ヘモグロビン症の任意の症状に先立って、例えば、胎児型γ-グロビンから主にβ-グロビンへの切り替えの前に、対象に投与することができる。したがって、造血前駆細胞集団の予防的投与は、本明細書において開示される異常ヘモグロビン症を予防するために役立つ。
治療的に提供される場合、造血前駆細胞は、異常ヘモグロビン症の症状または徴候の発生時(または発生後)に、例えば、鎌状赤血球疾患の発症時に提供される。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、本明細書において記述される方法にしたがって投与される造血前駆細胞集団またはBCL11A発現を減少させた遺伝子組み換え細胞は、1例または複数例のドナーから得た同種異系造血前駆細胞を含む。本明細書において用いられる場合、「同種異系」とは、1つまたは複数の座の遺伝子が同一ではない、同じ種の1例または複数例の異なるドナーから得られた造血前駆細胞または造血前駆細胞を含む生物サンプルをいう。例えば、対象に投与される造血前駆細胞集団またはBCL11A発現を減少させた遺伝子組み換え細胞は、1例もしくは複数例の無関係なドナー対象から得られた、または1例もしくは複数例の非同一兄弟から得られた臍帯血から誘導することができる。いくつかの態様において、遺伝的に同一の動物から得られた細胞または遺伝的に同一の双子から得られた細胞などの、同系の造血前駆細胞集団を用いることができる。この局面の他の態様において、造血前駆細胞は自家細胞である。すなわち、造血前駆細胞は対象から得られまたは単離され、同じ対象に投与され、すなわち、ドナーとレシピエントは同一である。
本明細書において記述されるさまざまな局面において用いるために、造血前駆細胞またはBCL11A発現を減少させた遺伝子組み換え細胞の有効量は、造血前駆細胞少なくとも102細胞、少なくとも5×102細胞、少なくとも103細胞、少なくとも5×103細胞、少なくとも104細胞、少なくとも5×104細胞、少なくとも105細胞、少なくとも2×105細胞、少なくとも3×105細胞、少なくとも4×105細胞、少なくとも5×105細胞、少なくとも6×105造血前駆細胞、少なくとも7×105細胞、少なくとも8×105細胞、少なくとも9×105細胞、少なくとも1×106細胞、少なくとも2×106細胞、少なくとも3×106細胞、少なくとも4×106細胞、少なくとも5×106細胞、少なくとも6×106細胞、少なくとも7×106細胞、少なくとも8×106細胞、少なくとも9×106細胞、またはその倍数を含む。造血前駆細胞またはBCL11A発現を減少させた遺伝子組み換え細胞は、1例もしくは複数例のドナーから誘導されうるか、または自家起源から得られうる。本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、造血前駆細胞を、それを必要としている対象に投与する前に、培養において増殖させる。
1つの態様において、本明細書において用いられる「有効量」という用語は、異常ヘモグロビン症の少なくとも1つまたは複数の症状を軽減するために必要なヒト造血前駆細胞集団またはその後代の量をいい、所望の効果を提供するための、例えば、異常ヘモグロビン症を有する対象を処置するための組成物の十分量に関連する。それゆえ「治療的有効量」という用語は、異常ヘモグロビン症を有する、または異常ヘモグロビン症のリスクがある対象のような、典型的な対象に投与した場合に、特定の効果を促進するために十分である造血前駆細胞もしくは遺伝子組み換え細胞またはそれらの後代、あるいは造血前駆細胞もしくは遺伝子組み換え細胞またはそれらの後代を含む組成物の量をいう。本明細書において用いられる有効量はまた、疾患の症状の発生を防止するもしくは遅延させる、疾患の症状の経過を変化させる(例えば以下に限定されるものではないが、疾患の症状の進行を緩徐化する)、または疾患の症状を反転させるために十分な量を含むであろう。いかなる所与の場合も、当業者は日常的な実験を用いて適切な「有効量」を判定できるものと理解される。
本明細書において用いられる場合、「投与される」とは、所望の部位での細胞組成物の少なくとも部分的な局在化を引き起こす方法または経路による対象中への本明細書において記述される造血幹細胞組成物の送達をいう。細胞組成物は、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができ、すなわち、投与は、対象における所望の位置への送達をもたらし、その場所には組成物の少なくとも一部が送達され、すなわち、少なくとも細胞1×104個が一定時間の間に所望の部位へ送達される。投与の方法は、注射、注入、点滴注入、または摂取を含む。「注射」は、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、骨髄内、脳脊髄内、および胸骨内への注射および注入を含む。細胞の送達の場合、注射または注入による投与が一般に好ましい。
1つの態様において、本明細書において記述される細胞は、全身に投与される。本明細書において用いられる「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」および「末梢に投与される」という語句は、細胞が代わりに、対象の循環系に入り、かくして、代謝および他の類似のプロセスを受けるように、造血前駆細胞の集団を標的部位、組織、または器官への直接投与以外で投与することをいう。
熟練した臨床医は、異常ヘモグロビン症の処置のための本明細書において記述される組成物を含む処置の効能を判定することができる。しかしながら、疾患の徴候または症状、一例として、胎児型β-グロビンのレベルのいずれか1つまたは全てが有益な形で変えられ、疾患の他の臨床的に認められる症状またはマーカーが、例えば、阻害剤による処置後に少なくとも10%だけ、向上または改善されるなら、処置は、この用語が本明細書において用いられる「有効な処置」であると見なされる。効能は、入院によって評価する場合には個体が悪化しなかったこと、または医学的介入の必要性(すなわち、疾患の進行が停止または少なくとも緩徐化される)によって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、および/または本明細書において記述される。処置は、個体または動物(いくつかの非限定的な例としては、ヒト、または哺乳類が挙げられる)における疾患のいかなる処置も含み、(1) 疾患を阻害すること、例えば、敗血症の進行を食い止めること、もしくは緩徐化すること; または(2) 疾患を軽減すること、例えば、症状の退縮を引き起こすこと; および(3) 感染症または敗血症の発症の可能性を抑えることまたは減らすことを含む。
本発明による処置は、個体における胎児型ヘモグロビンの量を増加させることによってβ-グロビン障害に関連した1つまたは複数の症状を改善する。異常ヘモグロビン症に伴う典型的な症状には、例えば、貧血、組織低酸素、臓器機能不全、異常なヘマトクリット値、無効造血、異常な網状赤血球(赤血球)数、異常な鉄負荷、環状鉄芽球の存在、脾腫、肝腫大、末梢血流の障害、呼吸困難、溶血の増大、黄疸、貧血痛発作(anemic pain crises)、急性胸部症候群、脾臓血球貯留、持続勃起症、脳卒中、手足症候群、および疼痛、例えば狭心症が含まれる。
1つの態様において、造血前駆細胞とDNA標的指向性エンドヌクレアーゼとをエクスビボまたはインビトロで接触させ、この細胞またはその後代が哺乳類(例えば、ヒト)に投与される。さらなる態様において、造血前駆細胞は赤血球系列の細胞である。1つの態様において、DNA標的指向性エンドヌクレアーゼと予め接触させた造血前駆細胞および薬学的に許容される担体を含む組成物が哺乳類に投与される。
1つの態様において、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、胎児型ヘモグロビンタンパク質のウエスタンブロット分析および胎児型γ-グロビンのmRNAの定量化を用いて、胎児型ヘモグロビン発現の増加を測定することができる。
1つの態様において、造血前駆細胞とDNA標的指向性エンドヌクレアーゼとをインビトロまたはエクスビボで接触させる。1つの態様において、細胞はヒト由来のもの(例えば、自家細胞または異種細胞)である。1つの態様において、組成物は胎児型ヘモグロビン発現の増加を引き起こす。
本発明は、番号付けした以下の項目のいずれかにおいて定義されうる。
[1](a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または
(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または
(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である、核酸配列
を含む、核酸分子であって、
該ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、
該核酸配列が、該ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、該ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列も除外する、
核酸分子。
[2]核酸配列がBCL11Aエンハンサー機能性領域全体を除外する、項目1の核酸分子。
[3]核酸配列がSEQ ID NO:136、137および138全体を除外する、項目1の核酸分子。
[4]核酸配列が短く、かつ、13塩基対(bp)以上である、項目1の核酸分子。
[5]核酸配列が約13~30bpである、項目1の核酸分子。
[6]核酸配列が約20bpである、項目1の核酸分子。
[7]核酸配列がSEQ ID NO:1~94からなる群より選択される、項目1の核酸分子。
[8]核酸配列がトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)配列をさらに含む、項目1の核酸分子。
[9]シングルガイドRNA(sgRNA)である、項目1の核酸分子。
[10]ベクターを含む、項目1の核酸分子。
[11]ベクターがsgRNA発現ベクターである、項目10の核酸分子。
[12](a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または
(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466(+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である;または
(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186(+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖に相補的である、核酸配列
を含む、ベクターであって、
該ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、
該核酸配列が、該ヒト2番染色体全体を除外し、かつ、該ヒト2番染色体の位置60,716,189~60,728,612上のゲノムDNA配列も除外する、
ベクター。
[13]核酸配列がBCL11Aエンハンサー機能性領域全体を除外する、項目12のベクター。
[14]核酸配列がSEQ ID NO:136、137および138全体を除外する、項目12のベクター。
[15]核酸配列が短く、かつ、13塩基対(bp)以上である、項目12のベクター。
[16]核酸配列が約13~30塩基対(bp)である、項目12のベクター。
[17]核酸配列が約20bpである、項目12のベクター。
[18]核酸配列がSEQ ID NO:1~94からなる群より選択される、項目12のベクター。
[19]核酸配列がトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)配列をさらに含む、項目12のベクター。
[20]sgRNA発現ベクターである、項目12のベクター。
[21]減少したBCL11A mRNAまたはタンパク質発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、単離された前駆細胞と項目1~11のいずれかの核酸分子または項目12~20のいずれかのベクターとを接触させる工程を含む、方法。
[22]減少したBCL11A mRNAまたはBCL11Aタンパク質発現を有する前駆細胞を産生するための方法であって、
単離された前駆細胞と、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に位置するヒトBCL11Aエンハンサー機能性領域に結合する作用物質とを接触させる工程であって、
該作用物質が、
(a)ヒト2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖;または
(b)ヒト2番染色体の位置60722238~60722466 (+58機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖;または
(c)ヒト2番染色体の位置60718042~60718186 (+62機能性領域)のプラス鎖もしくはマイナス鎖
に結合し、
該ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものであり、
該工程によってBCL11AのmRNAまたはタンパク質発現を低下させる、工程
を含む、方法。
[23]同単離された前駆細胞と、少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターとを接触させる工程をさらに含む、項目21または22の方法。
[24]少なくとも1つの遺伝子修飾を有する単離された遺伝子改変ヒト細胞を産生するための方法であって、
少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に項目1~11のいずれかの核酸分子または項目12~20のいずれかのベクターを含む有効量の組成物と、単離された細胞とを接触させる工程であって、
該DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAを切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こす、工程
を含み、
ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものである、方法。
[25]少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼがCas(CRISPR関連)タンパク質である、項目22~24のいずれかの方法。
[26]Casタンパク質がCas9である、項目25の方法。
[27]単離された前駆細胞または単離された細胞が造血前駆細胞または造血幹細胞である、項目21~26のいずれかの方法。
[28]造血前駆体が赤血球系の細胞である、項目27の方法。
[29]単離された前駆細胞または単離された細胞が人工多能性幹細胞である、項目21~26のいずれかの方法。
[30]単離された前駆細胞または単離された細胞がエクスビボまたはインビトロで接触させられる、項目21~29のいずれかの方法。
[31]接触させられた前駆細胞または接触させられた細胞が少なくとも1つの遺伝子修飾を獲得する、項目21~30のいずれかの方法。
[32]少なくとも1つの遺伝子修飾が核酸配列の欠失、挿入または置換である、項目29の方法。
[33]少なくとも1つの遺伝子修飾が、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)に位置する、項目21~32のいずれかの方法。
[34]接触させられた前駆細胞または接触させられた細胞が、BCL11Aエンハンサー機能性領域において少なくとも1つのエピジェネティック修飾を獲得する、項目21~32のいずれかの方法。
[35]少なくとも1つのエピジェネティック修飾が、DNAメチル化、ヒストン尾部の修飾、ヒストンサブユニット構成およびヌクレオソームポジショニングといった変更からなる群より選択される、項目34の方法。
[36]少なくとも1つのエピジェネティック修飾が、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)に位置する、項目34または35の方法。
[37]項目21~36に係る2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、および/または位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上に少なくとも1つの遺伝子修飾を有する、単離された遺伝子改変ヒト細胞。
[38]項目37の単離された遺伝子改変ヒト細胞を含む、組成物。
[39]細胞における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させる方法であって、
少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に項目1~11のいずれかの核酸分子または項目12~20のいずれかのベクターを含む有効量の組成物と、単離された細胞とを接触させる工程であって、
該DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAを切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こし、
該工程によって、胎児型ヘモグロビン発現が、該接触の前の該細胞と比べて、該細胞またはその子孫において増加する、工程
を含み、
ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものである、
方法。
[40]単離された細胞が造血前駆細胞または造血幹細胞である、項目39の方法。
[41]造血前駆細胞が赤血球系の細胞である、項目39または40の方法。
[42]単離された細胞が人工多能性幹細胞である、項目39の方法。
[43]単離された細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞または人工多能性幹細胞が、エクスビボまたはインビトロで接触させられる、項目39~42のいずれかの方法。
[44]少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼがCas(CRISPR関連)タンパク質である、項目39~43のいずれかの方法。
[45]Casタンパク質がCas9である、項目44の方法。
[46]それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、
少なくとも1つのDNA標的指向性エンドヌクレアーゼまたはDNA標的指向性エンドヌクレアーゼのコード配列を担持するベクターと一緒に項目1~11のいずれかの核酸分子または項目12~20のいずれかのベクターを含む有効量の組成物と、該哺乳動物における単離された造血前駆細胞とを接触させる工程であって、
該DNA標的指向性エンドヌクレアーゼが、2番染色体の位置60725424~60725688(+55機能性領域)、位置60722238~60722466(+58機能性領域)、および/または位置60718042~60718186(+62機能性領域)上の細胞ゲノムDNAを切断してその中に少なくとも1つの遺伝子修飾を引き起こし、
該工程によって、胎児型ヘモグロビン発現が、該接触前の発現と比べて、該哺乳動物において増加する、工程
を含み、
ヒト2番染色体がUCSC Genome Browser hg 19ヒトゲノムアセンブリによるものである、方法。
[47]それを必要とする哺乳動物における胎児型ヘモグロビンレベルを増加させるための方法であって、項目37の単離された遺伝子改変ヒト細胞または項目38の組成物を該哺乳動物に移植する工程を含む、方法。
本発明は、限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。本出願の全体を通じて引用される全ての参考文献の内容、ならびに図面および表は、参照により本明細書に組み入れられる。
実施例1
本発明者らは、赤血球系列の細胞におけるBCL11A遺伝子の発現に不可欠であるBCL11A遺伝子の調節エレメントを発見し特徴付けた。これらの配列内でよく見られる遺伝的変種は、胎児型ヘモグロビンレベルおよびβ-グロビン障害の重症度と関連している。これらの配列は、エンハンサークロマチンシグネチャを有する遠位調節エレメントを含み、アクセス可能なクロマチン、活性なヒストンマーク、および赤血球系転写因子による占有を有する。これらのエレメントは、BCL11Aプロモーターと相互作用し、赤血球系細胞において遺伝子発現を促進するが、Bリンパ球のような、BCL11Aを発現する他の細胞系列ではそうでない。治療目的でBCL11Aの阻害および胎児型ヘモグロビンの再誘導を達成するために、これらの調節エレメントを標的とすることができる。これは、ゲノム編集、核酸またはタンパク質結合、およびエピジェネティック修飾に限定されない機構によって達成することができる。この方法の利点には、γ-グロビン産生の増大およびβ-グロビン産生の低減を引き起こす、胎児型ヘモグロビンレベルの生理的な調節因子の妨害; 全体的なグロビン生産に及ぼすまたは赤血球の生成もしくは機能に及ぼす最小の効果; 赤血球系列以外の細胞に及ぼす影響の限定、したがって潜在的毒性の低減が含まれる。
エンハンサーは、異所性異種の機能獲得型発現実験で遺伝子発現を配向非依存的に正に調節することができる遠位の遺伝エレメントとして、古典的に記載されている1。これらのエレメントは、遺伝子が発現される時、場所、および方法を調整する。エンハンサー配列は、転写因子およびクロマチン調節因子に結合し、かつ、低下したDNAメチル化、特徴的なヒストン修飾、増大したクロマチン接近性、長距離のプロモーター相互作用、および二方向性転写を含む、特定のクロマチン特徴と相関する。最近のクロマチンマッピングは、エンハンサークロマチンシグネチャを持つ遠位調節エレメントが豊富であることを実証している2-8。
エンハンサーの生物学的重要性は、系列特異的プログラムにおけるエンハンサープロファイルの予測力を示した遺伝子発現研究によって明確に示される9-12。高度に顕著でかつクラスター化されたエンハンサー(例えば、いわゆるストロングエンハンサー、ストレッチエンハンサー、またはスーパーエンハンサー)は、とりわけ細胞同一性を示し、かつ、系列特異的な調節因子を推測する助けとなりうる13-15。ゲノムワイド関連研究は、系列制限エンハンサーシグネチャを持つ配列における形質関連バリアントの濃縮を明らかにする7,13,16-19。エンハンサーは、進化抑制の徴候および増大した代謝回転を表示し、正の選択の証拠となる20-25。
それらの重要性にかかわらず、エンハンサーは、典型的には、インサイチューの機能要件とは無関係な基準によって定義される。推定エンハンサーマッピング、ならびに大スケールオリゴヌクレオチド合成の進歩は、大規模並列スケールでのエンハンサーレポーターアッセイを容易にし、エンハンサー配列の機能的意義のシステマティック解析を可能にする26-30。それにもかかわらず、異所性異種エンハンサーアッセイは、その天然クロマチン環境におけるエレメントの必要性に対処できない。線状ゲノムに関する(例えば、スーパーエンハンサークラスターへの)および三次元核環境内の両方の遠位エレメントの非ランダム分布の評価の高まりは、それらの内因性条件を混乱させることによるエンハンサーを研究する重要性を強調している15,31。
伝統的な分子遺伝学的アプローチを使用してエンハンサーを突然変異誘発することによって、洞察力のある観測が行われた32,33。しかしながら、これらの古典的な方法の低スループットは、それらの広範な用途を制約している。さらに、多くのエンハンサー配列の種間の上昇した代謝回転は、ヒト遺伝子調節に関して非ヒト生物から結論を導き出す能力を制限しうる。ゲノム編集技術の進歩は、ヒトゲノムの容易な修飾を実用的にする34,35。高スループットな規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)-Cas9研究は、種々の生物学的プロセスに必要な新規遺伝子を明らかにした36-41。ゲノム編集も同様に、エンハンサーなどの非コード遺伝エレメントの研究に好適であるが、これらの実験はこれまで低スループットで実行されてきた42-44。
材料および方法
ヒトおよびマウスのレンチウイルスsgRNAライブラリーの設計および合成。センスまたはアンチセンス鎖上のNGGまたはNAG PAM配列の上流の20mer配列毎に、ヒトおよびマウス双方のオーソログな+55、+58、および+62 DNase高感受性部位(DHS)ならびにBCL11A/Bcl11aエクソン2を同定した(図6~11)。ヒトhg19参照ゲノムに対して、共通の低HbF関連ハプロタイプに近い以下の置換を有する参照を使用した:rs1427407-G、rs1896293-T、rs6706648-T、rs6738440-G、rs7606173-C。sgRNAオリゴの各々を、以前に記載されたとおり合成し37,41,64、Gibson Assembly master mix(New England Biolabs)を使用して、BsmBIで消化したlentiGuide-Puro(Addgene plasmid ID 52963)にクローニングし、PCR精製し、脱リン酸化した。Gibson Assembly産物をエレクトロポレーション用コンピテントE. cloni(登録商標)細胞(Lucigen)へ形質転換した。ヒトおよびマウスの両ライブラリーについて約90×ライブラリー範囲(library coverage)を確実にするのに十分なコロニーを単離した。プラスミドライブラリーをディープシークエンシングして(以下に記載)、提示を確認した。
レンチウイルスを作製するために、HEK293T細胞を、15cmの組織培養処理済みペトリディッシュ中、10%ウシ胎児血清(FBS)(Omega Scientific)および2%ペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Life Technologies)で培養した。HEK293Tに、80%コンフルエンスで、培地12mL中、psPAX2 13.3μg、VSV-G 6.7μg、および関心対象のレンチウイルス構築プラスミド20μgを分岐ポリエチレンイミン(Sigma)180μgを使用してトランスフェクトした。トランスフェクションの16~24時間後、培地を交換した。レンチウイルス上清をトランスフェクション後48時間および72時間で収集し、その後、超遠心分離(Beckman Coulter SW 32 Ti ローターを用いて、24,000rpm、4℃で2時間)によって濃縮した。
ヒトBCL11A赤血球エンハンサーをインサイチュー機能マッピングするための、タイリングしたプールCRISPR-Cas9スクリーン。HUDEPクローン2(HUDEP-2)を、Nakamuraおよび共同研究者によって以前に記載されたとおり利用した49。HUDEP-2細胞を、10-6Mデキサメタゾン(Sigma)、100ng/mLヒト幹細胞増殖因子(SCF)(R&D)、3IU/mLエリスロポエチン(Amgen)、1%L-グルタミン(Life Technologies)、および2%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したStemSpan SFEM(Stem Cell Technologies)中で増大させた。1μg/mLドキシサイクリン(Sigma)を培養物に含め、ヒトパピローマウイルス16 E6/E7型遺伝子の発現を誘導した49。HUDEP-2細胞を、330μg/mLホロトランスフェリン(Sigma)、10μg/mL組み換えヒトインスリン(Sigma)、2IU/mLヘパリン(Sigma)、5%ヒト溶媒界面活性剤プール血漿AB(Rhode Island Blood Center)、3IU/mLエリスロポエチン(Amgen)、100ng/mLヒト幹細胞増殖因子(SCF)(R&D)、1μg/mLドキシサイクリン(Sigma)、1%L-グルタミン(Life Technologies)、および2%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したイスコフ変法ダルベッコ培地(IMDM)中で分化させた。
安定なCas9発現を有するHUDEP-2細胞に、増大培地中、ヒトsgRNAライブラリーレンチウイルスプールを低多重度で形質導入した。形質導入率が50%を超えないようにした対照形質導入を実施した。細胞数を、実験を通して1000×のライブラリー提示を超える適切なレベルに維持した。形質導入の24時間後に10μg/mLブラストサイジン(Sigma)および1μg/mLピューロマイシン(Sigma)を加え、細胞中のレンチウイルスライブラリー成分をCas9で選択した。細胞を増大培地中で1週間、続いて分化培地中でさらに1週間培養した。
0.05%グルタルアルデヒド(II等級)(Sigma)で細胞を室温で10分間固定することによって細胞内染色を実施した。細胞を350gで5分間遠心分離し、次いで、透過処理のために0.1%Triton-X 100(Life Technologies)に室温で5分間再懸濁した。Triton X-100をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、次いで、350gで15分間遠心分離した。細胞を、HbFに対する抗ヒト抗体(FITCまたはAPCコンジュゲーションを有するクローンHbF-1;Life Technologies)およびβ-ヘモグロビン抗体(PerCP-Cy5またはPEコンジュゲーションを有するクローン37-8;Santa Cruz)で暗所にて20分間染色した。FACS分析の前に、細胞を洗浄して未結合の抗体を除去した。細胞500万個当たりHbF抗体0.2μgおよびHbA(β-ヘモグロビン)抗体2μgを使用した。非標的指向性sgRNA試料およびBCL11Aエクソン2に曝露させた対照細胞を、それぞれ陰性対照および陽性対照として使用して、フローサイトメトリー条件を確立した。HbFの発現の上下10%の細胞の集団をFACSによってソーティングした。
高HbFプールおよび低HbFプールをソーティングした後、ライブラリー調製およびディープシークエンシングを以前に記載されたとおり実施した37。簡潔に述べると、ゲノムDNAを、Qiagen Blood and Tissue kitを使用して抽出した。ハンドル配列を含むlentiGuide-Puro特異的プライマーを使用したHerculase PCR reaction(Agilent)を以下のとおり実施した:Herculase II反応緩衝液(1×)、フォワードプライマーおよびリバースプライマー(各0.5μM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(8%)、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)(各0.25mM)、Herculase II Fusion DNA Polymerase (0.5反応)、以下のサイクル条件を使用:95℃で2分間;95℃で15秒間、60℃で20秒間、72℃で30秒間を20サイクル;72℃で5分間。各200ng以下の多重反応を使用して、1プール当たりgDNA 6.6ug(約10e6個の細胞ゲノム)から増幅させた。試料を、ハンドル特異的プライマーを使用した第二のPCRに供して、各試料にアダプターおよびインデックスを付加した。以下の条件を使用した:Herculase II反応緩衝液(1×)、フォワードプライマーおよびリバースプライマー(各0.5μM)、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)(各0.25mM)、Herculase II Fusion DNA Polymerase(0.5反応)と共に以下のサイクル条件:95℃で2分間;95℃で15秒間、60℃で20秒間、72℃で30秒間を25サイクル;72℃で5分間。PCR産物をアガロースゲル上に流し、予想されるサイズのバンドをゲル精製した。Illumina MiSeq 150bpペアエンドシークエンシングを実施した。
プラスミドプールならびに高HbFプールおよび低HbFプールに存在するsgRNA配列を列挙した。読み取り値を、1ライブラリー当たりのシークエンシング深度に対して正規化した。消失スコアを、(1)低HbFプールと比較した高HbFプール中の正規化した読み取り値の比;(2)log2変換;および(3)生物学的レプリケートの中央値を計算することによって決定した。HbF濃縮スコアを、(1)低HbFプールと比較した高HbFプール中の正規化した読み取り値の比;(2)log2変換;および(3)生物学的レプリケートの中央値を計算することによって決定した。消失スコア<2-3のsgRNAおよびNAG PAM sgRNAの除外後、Rソフトウェアを使用して、第一および第三分位点を通して適合された線を用いてQ-Qプロットを作成した。sgRNA配列を、ヒトゲノム(hg19)にマッピングさせ、切断位置をPAMの位置を考慮して17位と18位の間に設定した21-23。標的指向性sgRNAとの目視比較のため、非標的指向性sgRNAを各5bp間隔で偽マッピングした。
初代ヒトCD34+造血幹・前駆細胞(HSPC)における検証。健常成人G-CSF動員ドナー由来の初代ヒトCD34+HSPCを、Seattle, WashingtonにあるFred Hutchinson Cancer Research CenterのCenter of Excellence in Molecular Hematologyから得た。CD34+HSPCを以前に記載されたとおり赤血球分化液体培養に供した65。簡潔に述べると、0日目に、HSPCを、330μg/mLホロヒトトランスフェリン(Sigma)、10μg/mL組み換えヒトインスリン(Sigma)、2IU/mLヘパリン(Sigma)、5%ヒト溶媒界面活性剤プール血漿AB(Rhode Island Blood Center)、3IU/mLエリスロポエチン(Amgen)、1%L-グルタミン(Life Technologies)、および2%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したIMDMからなる赤血球分化培地(EDM)中で融解した。培養の0~7日の間、EDMに、10-6Mヒドロコルチゾン(Sigma)、100ng/mLヒトSCF(R&D)、およびヒトIL-3(R&D)をさらに補充した。培養の7~11日の間、EDMに、100ng/mL SCFのみを補充した。培養の11~18日の間、EDMにサプリメントを追加しなかった。
HSPCに、融解の24時間後、10μMプロスタグランジンE2(PGE2)(Cayman Chemical)の存在下でLentiCas9-Blast(Addgene plasmid ID 52962)を形質導入した。融解の48時間後、培地を交換し、関連のあるsgRNA配列をクローニングしたLentiGuide-PuroまたはLentiGuide-Crimsonを10μM PGE2の存在下で細胞に形質導入した。融解の72時間後、培地を交換し、10μg/mLブラストサイジン(Sigma)および1μg/mLピューロマイシン(Sigma)または10μg/mLブラストサイジンを用いてHSPCを選択し、続いて、培養の16日目にLentiGuide-Crimson+細胞をソーティングした。ブラストサイジンおよび/またはピューロマイシン選択は、培養の3~8日目に行った。
培養の18日目に、トランスフェリン受容体に対する抗ヒト抗体(CD71)[FITCコンジュゲーションを有するクローンOKT9;eBioscience]およびグリコホリンAに対する抗ヒト抗体(CD235a)[PEコンジュゲーションを有するクローンHIR2;eBioscience]を使用して分化を評価した。2μg/mLの細胞透過性DNA色素Hoescht 33342(Life Technologies)を使用して脱核を評価した。CD235a+Hoescht 33342-細胞を脱核した赤血球細胞であると決定した。培養の18日目に上記のとおりHbFおよびHbAについて細胞を細胞内染色した。50,000~100,000個の細胞を、顕微鏡スライド上に350rpmで4分間遠心分離した。スライドを、Harleco May-Grunwald染色液(Millipore)で2分間、Giemsa染色液(Sigma)で12分間染色し、2回の水洗浄を各30秒間行った。スライドを風乾し、次いで、Fisher Chemical Permount Mounting Medium(Fisher)を使用してカバースリッピングした。
所与のsgRNAについてゲノム切断部位を増幅させるようにPCRプライマーを設計した。得られたPCR産物をサンガーシークエンシングに供した。シークエンシングトレースを、以前に記載された公的に入手可能なツールを使用した編集定量化に使用した66。
HUDEP-2細胞におけるゲノム欠失の生成。タンデムsgRNAレンチウイルスを安定なCas9発現を有するHUDEP-2に形質導入した(表1)。編集を可能にするため、バルク培養物を、10μg/mLブラストサイジン(Sigma)および1μg/mLピューロマイシン(Sigma)選択と共に7~10日間インキュベートした。次いで、バルク培養物を限界希釈法でクローンプレーティングした。混合クローンを避けるため、1プレート当たり30個を超えるクローンを有する96ウェルプレートを除外した。クローン展開のおよそ14日後、1ウェル当たり50μLのQuickExtract DNA Extraction Solution(Epicentre)を使用してゲノムDNAを抽出した。欠失されるセグメント内部の1回のPCR反応(「非欠失バンド」)および欠失接合部にわたる1回のギャップPCR反応(「欠失バンド」)(欠失の存在下でのみ増幅する)を用いた従来のPCRによって、欠失についてクローンをスクリーニングした50,67。両アレルの欠失クローンを、非欠失PCRバンドの非存在および欠失PCRバンドの存在として同定した。反転クローンを、以前に記載されたとおりPCRによって同定した50,67(表3)。簡潔に述べると、反転クローンは、1つの反転アレルおよび1つの欠失アレルを有し、非欠失アレルは存在しなかった。本発明者らの実験では、両アレルの反転クローンは、極めて稀な事象である68。Qiagen HotStarTaq 2×master mixおよび以下のサイクル条件を使用してPCRを実施した:95℃で15分間;95℃で15秒間、60℃で1分間、72℃で1分間を35サイクル;72℃で10分間。あるいは、2×Accuprime Supermix II(Life Technologies)を使用して以下のサイクル条件でもPCRを実施した:94℃で2分間;94℃で20秒間、60℃で20秒間、68℃で1分間/PCR産物1kbを35サイクル;68℃で5分間。RNAを、キット(Qiagen)を使用して各陽性クローンから抽出し、iQ SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を使用して定量リアルタイムPCRを実施した。使用したプライマーは表5に見られる。
マウスBCL11Aエンハンサーの高分解能機能マッピングのためのプールCRISPR/Cas9スクリーン。ネズミ赤白血病(MEL)細胞を、10%FBS(Omega Scientific)、1%L-グルタミン(Life Technologies)、および2%ペニシリン-ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したDMEM中で培養した。安定なCas9発現を有するεy:mCherryレポーターMEL細胞に、マウスsgRNAライブラリーレンチウイルスプールを低多重度で形質導入した。形質導入率が50%を超えないようにした対照形質導入を実施した。細胞数を、実験を通して1000×のライブラリー提示を超える適切なレベルに維持した。形質導入の24時間後に10μg/mLブラストサイジン(Sigma)および1μg/mLピューロマイシン(Sigma)を加えて、細胞中のレンチウイルスライブラリー成分をCas9で選択した。その後、細胞を2週間培養した。ライブラリーに曝露したεy-mCherry発現細胞の上下5%をFACSによってソーティングした。非標的指向性sgRNA試料を陰性対照として、Bcl11Aエクソン2を陽性対照として使用して、フローサイトメトリー条件を確立した。ソーティング後、ライブラリー調製およびディープシークエンシングをヒトライブラリーについて記載したとおり実施した37。
高Hbb-εy:mCherryプールおよび低Hbb-εy:mCherryプールに存在するsgRNA配列を列挙した。消失スコアおよび濃縮スコアをヒトスクリーンについて記載したとおり計算した。次いで、sgRNA配列をマウスゲノムにマッピングした(mm9)。
MEL細胞におけるゲノム欠失の生成。MEL細胞における欠失を以前に記載されたとおり2つのsgRNAを使用して生成した50,67。簡潔に述べると、Golden Gate assembly cloning strategyを使用してsgRNA配列をpX330(Addgene plasmid ID 42230)にクローニングした(表1および4)。MEL細胞に、BTXエレクトロポレーター(Harvard Apparatus)を使用して、BTXエレクトロポレーション緩衝液中の各pX330-sgRNAプラスミド5μgおよびpmax-GFP(Lonza)0.5μgをエレクトロポレートした。エレクトロポレーションのおよそ48時間後、GFP+細胞の上1~3%をソーティングし、限界希釈法でクローンプレーティングした。クローンを7~10日間増殖させた。HUDEP-2細胞と同じ戦略を使用する従来のPCRによって欠失についてクローンをスクリーニングした50,67(表2)。反転クローンを、以前に記載されたとおりPCRによって同定した50,67(表3)。
β-YACマウス胚性幹細胞(mESC)におけるゲノム欠失の生成。mESCを、照射されたマウス胚性線維芽細胞(GlobalStem)上に維持し、20%ウシ胎児血清(Omega Scientific)、L-グルタミン(Life Technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)、非必須アミノ酸(Life Technologies)、ヌクレオシド、β-メルカプトエタノール(Sigma)、および白血病阻止因子(Millipore)を補充した高グルコースDMEM(Life Technologies)で培養した。0.25%トリプシン(Life Technologies)を使用して細胞を継代した。
約150kbのヒトβ-グロビン遺伝子座を包含する導入遺伝子を含有するとして以前に記載されたβ-YACマウス系統(A20)55を使用して、ヒトグロビン発現を分析した。マウス系統を半接合体状態で維持し、β-YAC mESC系統の作製に使用するかまたはBcl11a+62欠失マウスと繁殖させた。Bcl11a+62欠失マウスは、CRISPR/Cas9修飾CJ9 ES細胞に由来した。Amaxa ES Cellトランスフェクション試薬(Lonza)を使用して、200万個のCJ9細胞に、+62部位の両脇に個々の標的配列を含有する各pX330プラスミドベクター2μgをGFPプラスミド0.5μgと一緒にエレクトロポレートした。48時間後、GFP発現細胞の上部5%をソーティングし、照射された線維芽細胞上にプレーティングし、維持した。次いで、個々のES細胞コロニーを選び取り、HUDEP-2およびMEL細胞と同じ戦略を使用して両アレル欠失についてスクリーニングした50,67。線維芽細胞からのゲノム汚染を回避するために、ゼラチン適合ES細胞クローンからCRISPR/Cas9修飾クローンをスクリーニングするためのDNAを得た。
80%超の正常核型を有する正確に標的とされたクローンを使用してマウスを生成した。クローンを2.5日のC57Bl6胚盤胞に注射し、偽妊娠の雌にインプラントした。発生の特定の日に、胚を取り、qPCRによってキメラ現象およびヒトグロビン発現について分析した。発生中のキメラ胚における胎児肝臓ヒトグロビン遺伝子発現の分析は、ロバストなγ-グロビン抑制の最も早い時点が胚期16.5日(E16.5)である非キメラβ-YAC胚と比較して、グロビンスイッチングパターンの2日の遅延を実証した55。追加的に、フローサイトメトリーを使用して、E18.5胚由来の胎児の肝臓と脾臓の両方を分析した。単一細胞懸濁液を機械的分離によって作製し、細胞を、IgM-FITC(Clone Il-41; eBioscience)、CD19-PerCP-Cy5.5(Clone 1D3; eBioscience)、CD43-PE(Clone S7; eBioscience)、AA4.1-PE-Cy7(Clone AA4.1; BD Biosciences)、B220-APC(RA3-6B2; Biolegend)、およびDAPI(Invitrogen)で染色した。
成体マウス造血系アッセイ。末梢血を4週齢マウスの尾静脈から得た。血液をヘパリンコートチューブに収集し、赤血球を2%デキストラン(Sigma)で溶解し、以下の抗マウス抗体で染色した:CD3e-FITC(Clone 145-2C11; Biolegend)、CD19-PerCP-Cy5.5(Clone 1D3; eBioscience)、CD71-PE(Clone C2; BD Biosciences)、NK1.1-PE-Cy5(Clone PK136; Biolegend)、Ter119-APC(Clone TER-119; Biolegend)、Gr-1-eF450(Clone RB6-8C5; eBioscience)、B220-BV605(RA3-6B2; Biolegend)、Mac-1-BV510(Clone M1/70; Biolegend)、および7-AAD(BD Biosciences)。
コンピューター分析。ヒトH3K27ac ChIP-seqをXuらから得て12、マウスH3K27ac ChIP-seqをKowalczykらから得た69。公的に入手可能なROSEアルゴリズムを使用してスーパーエンハンサー分析を実施した15。
隠れマルコフモデル(HMM)セグメンテーションを実施して、濃縮スコアシグナルを、活性、抑制および中性の効果を有するエンハンサー領域に自動的に分割した。本発明者らは、sourceforgeのウェブサイトから得られるGHMMパッケージを使用して3つの状態のHMMを設計した。各状態についての放出確率をガウス分布としてモデル化し、状態間の全ての可能な転移を可能にした。シグナルが一定のゲノム分解能で得られなかったので、本発明者らは、12bpにわたってガウスカーネルを使用してシグナルを内挿および平滑化した。初期値パラメーターを設定するために、本発明者らは、平滑化したシグナルの1パーセンタイル、50パーセンタイルおよび99パーセンタイルを、それぞれ抑制、中性および活性状態の平均値の事前分布に使用し、一方で、標準偏差についての事前分布を3つの状態の全てで0.001に設定した。
モチーフ分析を実施して、公知の転写因子についての潜在的な結合部位に対するヒトおよびマウスのエンハンサー領域を評価した。本発明者らは、FIMOソフトウェアをP値閾値<10-4で使用した70。各領域について、本発明者らは、ヒトおよびマウスについてそれぞれhg19およびmm9アセンブリを使用して配列を抽出した。モチーフデータベースは、JASPARデータベースの最新バージョンであった39。
ゲノム編集標的部位からのゲノムアンプリコンのディープシークエンシングペアエンド読み取り値を、最初にPHREDクオリティスコアが<30の読み取り値についてフィルタをかけ、FLASH(Fast Length Adjustment of SHort reads)ソフトウェアで融合し、その後、sourceforgeのウェブサイトから得られるEMBOSSパッケージからのneedleアライナーを使用して参照アンプリコンに対して整列させて、挿入および欠失を定量化した。ヌクレオチド単位当たりの位置の欠失の頻度、その位置に直接隣接する挿入、またはその位置に突然変異がないことを、lucapinelloおよびCRISPRessoの下、githubのウェブサイトから得られるCRISPRessoを使用して定量化した。
lentiCas9-Venusのクローニング。以下の条件を使用して、Venusテンプレート
71をPCRで増幅させて、クローニングのためのBamHI-HF(5')およびEcoRI-HF(3')制限部位を付加した:KOD緩衝液(1×)、MgSO4(1.5mM)、dNTP(各0.2mM)、フォワードプライマー
、リバースプライマー
、およびKOD Hot Start DNA Polymerase(0.02U/μL)(Millipore)。KOD PCR反応は、以下のサイクル条件を使用した:95℃で2分間;95℃で20秒間、60℃で20秒間、および70℃で30秒間を50サイクル;60℃で5分間。PCR産物を精製し(QIAquickPCR Purification Kit, Qiagen)、Zero Blunt PCR cloning kit(Invitrogen)でブラントエンドクローニングした。PCRブラントクローニング産物およびlentiCas9-Blast(Addgene plasmid ID 52962)を、1×Buffer CutSmart中37℃にてBamHI-HFおよびEcoRI-HF(New England Biolabs)で別々に消化した。lentiCas9-Blastの消化を実施して、ブラストサイジンカセットを除去した。次いで、消化したPCR産物をlentiCas9骨格にライゲーションした。
lentiGuide-Crimsonのクローニング。以下の条件を使用して、E2-Crimsonテンプレート(Clontech)をPCRで増幅させて、クローニングのためのBsiWI(5')およびMluI(3')制限部位を付加した:KOD緩衝液(1×)、MgSO
4(1.5mM)、dNTP(各0.2mM)、フォワードプライマー
、リバースプライマー
、およびKOD Hot Start DNA Polymerase(0.02U/μL)(Millipore)。KOD PCR反応は、以下のサイクル条件を使用した:95℃で2分間;95℃で20秒間、60℃で20秒間、および70℃で30秒間を50サイクル;60℃で5分間。PCR産物を精製し(QIAquickPCR Purification Kit, Qiagen)、Zero Blunt PCR cloning kit(Invitrogen)でクローニングした。クローニング産物およびlentiGuide-puroを、1×緩衝液3.1中37℃にてBsiWIおよびMluI(New England Biolabs)で別々に消化した。lentiGuide-Puro(Addgene plasmid ID 52963)の消化を実施して、ピューロマイシンカセットを除去した。次いで、消化したPCR産物をlentiGuide骨格にライゲーションした。
sgRNAのクローニング。lentiGuide-Puro(Addgene plasmid ID 52963)を、線形化のため、1×緩衝液3.1中37℃にてBsmBI(New England Biolabs)で消化した。TSAP thermosensitive Alkaline Phosphatase(Promega)1ユニットを37℃で1時間加えて、線形化したlentiGuideを脱リン酸化し、次いで、TSAPを74℃で15分間熱不活化させた。線形化および脱リン酸化したlentiGuideをアガロースゲル上に流して、ゲル精製した。sgRNA特異的オリゴをリン酸化し、以下の条件を使用してアニールした:sgRNA配列オリゴ(10μM);sgRNA配列逆相補オリゴ(10μM);T4ライゲーション緩衝液(1×)(New England Biolabs);およびT4ポリヌクレオチドキナーゼ(5ユニット)(New England Biolabs)と共に以下の温度条件:37℃で30分間;95℃で5分間;次いで、5℃/分で25℃まで下降。アニールしたオリゴを、T4ライゲーション緩衝液(1×)およびT4 DNA Ligase(750ユニット)(New England Biolabs)を使用して、lentiGuideに1:3比(ベクター:インサート)でライゲーションした。U6Fプロモーターフォワードプライマー
を使用したシークエンシングによってプラスミドを検証した。
スクリーンライブラリー(Extended Data)からのsgRNA配列を使用してsgRNA特異的オリゴを得て、lentiGuide-PuroまたはlentiGuide-Crimsonのいずれかに記載のとおりクローニングした。sgRNA構築物を使用して、レンチウイルスを産生し、安定なCas9発現を有するHUDEP-2に形質導入した。編集を可能にするため、バルク培養物を、10μg/mLブラストサイジン(Sigma)および1μg/mLピューロマイシン(Sigma)選択と共に7~10日間インキュベートした。次いで、抗生物質選択なしで、バルク培養物を限界希釈法でクローンプレーティングした。クローンをおよそ14日間増殖させ、次いで、1ウェル当たり50μLのQuickExtract DNA Extraction Solution(Epicentre)を使用してゲノムDNAを抽出した。
lentiTandemGuideクローニング。lentiGuide-sgRNA1を37℃にて4時間PspXIおよびXmaI(New England Biolabs)で消化した。消化物をアガロースゲル上に流して、ゲル精製した。NotI(New England Biolabs)を使用してlentiGuide-sgRNA2を線形化した。lentiGuide-sgRNA2用のhU6プロモーターおよびsgRNAキメラ骨格を、以下の条件を使用してPCRで増幅させた:KOD緩衝液(1×)、MgSO4(1.5mM)、dNTP(各0.2mM)、フォワードプライマー
、リバースプライマー
、およびKOD Hot Start DNA Polymerase(0.02U/μL)(Millipore)。KOD PCR反応は、以下のサイクル条件を使用した:95℃で2分間;95℃で20秒間、60℃で20秒間、および70℃で30秒間を50サイクル;60℃で5分間。PCR産物を精製し(QIAquickPCR Purification Kit, Qiagen)、Zero Blunt PCR cloning kit(Invitrogen)でブラントエンドクローニングし、形質転換およびプレーティングした。ミニプレップをEcoRIで消化することによってコロニーをスクリーニングした。次いで、ミニプレップをPspXIおよびXmaIで上記のとおり消化し、続いてPCR精製した。PCR精製後、消化したlentiGuide-sgRNA1にsgRNA2をライゲーションした。配列を以下のプライマー:
で検証した。
安定なCas9を有するHUDEP-2の生成。LentiCas9-Blast(Addgene plasmid ID 52962)またはLentiCas9-Venusを上記のとおり産生し、これを使用してHUDEP-2細胞に形質導入した。形質導入細胞を10μg/mLブラストサイジン(Sigma)で選択するかまたはVenus+細胞をソーティングした。以前に記載されたとおりpXPR-011(Addgene plasmid ID 59702)GFPレポーターアッセイを使用して機能性Cas9を確認した72。
Hbb-εy:mCherryレポーターMEL細胞の生成。mCherryがHbb-y遺伝子座にノックインされているレポーターMEL系列を作製した(図9Dを参照のこと)。簡潔に述べると、Hbb-y転写開始部位に隣接するTALEN誘導性DSBを作製した。mCherryを有する標的指向性ベクターおよびネオマイシンカセットを相同組み換え修復を通して導入した。Cre媒介性組み換えを利用して、ネオマイシンカセットを除去した。各ホモロジーアームを網羅する長距離PCRを利用して、適切な標的指向性組み込みを確実にした。RT-qPCRおよびフローサイトメトリーによるBcl11a妨害によって細胞を試験して、εy:mCherry抑制解除に対する予想される効果を確認した。その後、CRISPR-Cas9を上記のとおり使用して、単一アレル複合エンハンサー欠失を有する細胞を産生し、スクリーニング感度を最大にした。
安定なCas9発現を有するMEL細胞の生成。LentiCas9-Blast(Addgene plasmid ID 52962)レンチウイルスを上記のとおり産生し、これを使用してMEL細胞に形質導入した。形質導入細胞を10μg/mLブラストサイジン(Sigma)で選択した。以前に記載されたとおりpXPR-011(Addgene plasmid ID 59702)GFPレポーターアッセイを使用して機能性Cas9を確認した72。
結果
ヒト複合エンハンサー
最近、本発明者らは、HbF(α2γ2)レベルおよびβ-ヘモグロビン障害の臨床的重症度と関連する共通の遺伝子バリアントが、成体発生段階特異的および赤血球系特異的なBCL11Aのイントロンエンハンサー42、HbFの検証された抑制因子、ならびにβ-ヘモグロビン障害に対する治療標的を示すことを観察した42,45-47。この複合エンハンサーは、転写開始部位(TSS)からの距離(キロベース単位)に基づいて+55、+58、および+62と称される3つのDNase I高感受性部位(DHS)から構成される42。最も高度な形質関連ハプロタイプは、2つのSNPである+62内のrs1427407および+55内のrs7606173によって定義される(図1A)。実際に、初代ヒト成体赤血球前駆体におけるH3K27ac ChIP-seqに基づいて、複合BCL11Aエンハンサーは、503の総ヒト赤血球スーパーエンハンサーのうち最も強く修飾された#100としてランク付けされる(図1Aおよび1B)。以前に、本発明者らは、このエンハンサーが異所性の赤血球制限性の成体段階特異的エンハンサー活性を保有したことを示した42。さらに、一次配列相同性、共有する赤血球エンハンサークロマチンシグネチャ、およびコード配列と比べたシンテニー位置によって定義された、複合エンハンサーのマウスオーソログは、マウス赤血球細胞系列におけるBCL11A発現および胚性グロビン遺伝子抑制に必要であるが、マウスBリンパ系細胞系列において不必要であることが示された42。これらの結果は、β-ヘモグロビン障害に対するHbF再誘導のための有望な治療戦略としてBCL11A赤血球エンハンサーの妨害を推奨する48。
ヒトBCL11Aエンハンサー配列の要件を評価するために、本発明者らは、HUDEP-2細胞、すなわち、BCL11Aおよびγ-グロビンよりむしろβ-グロビンを優勢に発現する不死化ヒトCD34+造血幹・前駆細胞(HSPC)に由来する赤血球前駆体細胞系列を利用した49。本発明者らは、CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ系を使用して、コード配列を標的とすることによってBCL11AがヌルであるHUDEP-2細胞のクローンを生成した(図1C)。これらの細胞は、HbF抑制についてのBCL11Aの機能要件と一致して、γ-グロビンmRNAおよびHbFタンパク質の上昇したレベルを実証した(図1D、1E、および6)。一対のsgRNAを用いた12kbのBCL11A複合エンハンサーの欠失は、BCL11Aノックアウトを有する細胞と同じレベルのほぼ完全なBCL11A発現の喪失ならびにγ-グロビンおよびHbFタンパク質の誘導を生じ(図1C~1E、および6)、これは赤血球BCL11A発現についてのオーソログなマウス複合エンハンサーの要件と類似する42。ヒトBCL11A赤血球複合エンハンサーの欠失から生じる有意なHbF誘導は、β-異常ヘモグロビン症の治療的ゲノム編集のためにこれらの配列を標的とすることを後押しする48。対になった二重鎖切断(DSB)による標的とされた欠失はゲノム編集によって達成されうるが、競合するゲノム学的結果(genomic outcome)は、各切断部位における局所的な挿入/欠失(インデル)産生ならびに介在セグメントの反転を含む34,35,50-52。
タイリングしたプールエンハンサーのインサイチュー編集
本発明者らは、複合エンハンサーが、必須の構成成分と不必要な構成成分とを有する機能的階層から構成されうると仮説を立てた。機能的階層は、重要な領域での単一DSBによるエンハンサー妨害、続く、インデルによる非相同末端結合(NHEJ)修復を可能にするだろう。実際に、形質に関連するよく見られる機序がエンハンサー変動であるという仮説は、単一ヌクレオチド変化それ自体がエンハンサー機能を実質的にモジュレートしうるという前提に基づく。それゆえ、本発明者らは、少なくとも10bpの各sgRNAの典型的なインデルスペクトルを考慮して、一連のタイリングsgRNAが、エンハンサー内の本質的に全ての配列の妨害によって重要なエンハンサー領域を見出すこともできると推論した34,35,50,52,53。
本発明者らは、各ゲノム位置にて平均1/8頻度で切断を制限する(プラス鎖およびマイナス鎖上に存在すると考慮して)SpCas9 NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer adjacent motif)(PAM)の存在によってのみ制限されるような、ヒトBCL11A複合エンハンサーDHS内の全ての可能なsgRNA(図2A~2D)を設計した34,53。NGG PAM制限sgRNAは、4bpの中央値隣接ゲノム切断距離および18bpの90パーセンタイルを有しており(図2D)、このことは、この戦略がインサイチューの飽和突然変異誘発に取り組むこともできることを示した。NAGは、より低い効率にもかかわらずSpCas9の代替PAMとして作用しうる53。本発明者らはまた、NAG PAMによって制限されるsgRNAも設計した(図2B、および7)。本発明者らは、120の非標的指向性sgRNAを陰性対照として、ならびにBCL11Aのエクソン2をタイリングする88のsgRNAを陽性対照として含めた。総ライブラリーは、1,338のsgRNAを含んだ。
本発明者らは、マイクロアレイ上にsgRNA用のオリゴヌクレオチドを合成し、プールとしてのsgRNAをレンチウイルスベクターにクローニングした37。レンチウイルスプラスミドライブラリーのディープシークエンシングは、1,338のsgRNAのうち1,337(99.9%)がクローニングに成功したことを実証した。ライブラリー内のsgRNAの提示は、中央値が718であり、10パーセンタイルおよび90パーセンタイルが正規化した読み取り値337~1,205の範囲にある、比較的狭い分布を示した。基本的な実験スキームは、細胞にレンチウイルスライブラリーを低多重度で形質導入することであり、それによって、ほぼ全ての選択された細胞が単一成分を含有した(図2A)。Cas9、およびBCL11Aエクソン2を標的とする個々のsgRNAの導入は、HbF発現が上昇した細胞を産生し、このことは、BCL11A機能の喪失とその結果のBCL11Aの標的であるγ-グロビンの抑制の解除を示した。それゆえ、本発明者らは、SpCas9を安定的に発現するHUDEP-2細胞にBCL11Aエンハンサー標的指向性sgRNAのプールライブラリーを形質導入した。本発明者らは、最初に、細胞を1週間増大させ、その後、合計2週間の培養のためそれらを赤血球分化条件に移した。次いで、本発明者らは、HbFについて細胞内染色を実施した。蛍光活性化セルソーティング(FACS)を採用して、高HbFプールおよび低HbFプールを単離した(それぞれ、高BCL11A活性および低BCL11A活性に一致する;図2Aおよび2E)。本発明者らは、ディープシークエンシングによって各プールにおけるライブラリーの提示を列挙した。低HbFプールと比較した高HbFプールにおける各sgRNAの濃縮を、正規化した読み取り値のlog2比として計算した。本発明者らは、120の非標的指向性陰性対照sgRNAと88のコード配列標的指向性陽性対照のHbF濃縮を、NGGおよびNAG PAM制限sgRNAの両方について比較した。本発明者らは、高HbFおよび低HbFプールでは非標的指向性sgRNAの等価な提示を観察したが、高HbFプールではBCL11A活性の低下と一致してBCL11Aのエクソン2を標的とするNGG sgRNAの高度に有意な濃縮を観察した(図2Fおよび2G)。1つの非標的指向性sgRNA(#0548)は、0.803の濃縮スコアを有していたが、一方で、残る119/120個の非標的指向性sgRNA(99.2%)は、0.259以下の濃縮スコアを示した。対照的に、BCL11Aエクソン2を標的とする40/48個のsgRNA(83.3%)は、0.259を超える濃縮スコアを示した。これらの結果は、ライブラリーにおけるsgRNAの大部分がインデルを産生する能力を持っていたことを示す。しかしながら、NAG PAM制限を有するエクソン2標的指向性sgRNAは、有意な濃縮を示さなかったので、そのNAG制限sgRNAの全てをさらなる分析から除外した(図2F)。
本発明者らは、初期プラスミドプールにおけるsgRNAの提示をインビトロ培養の最後の細胞におけるsgRNAの提示と比較した。ライブラリーの大部分が実験を通して中性の提示を維持したが、本発明者らは、主に+62 sgRNAの中で、枯渇したsgRNAの画分を観察した(図2G、および10A)。本発明者らは、これらの消失したsgRNAが、ゲノム内の反復エレメントに、特にゲノム中にほぼ100,000回出現するSINE AluSqエレメントにマッピングされることを観察した54。sgRNAの初期設計は、標的突然変異誘発の分解能を最大化するオフターゲット切断の予測を含まなかった。本発明者らは、後続の分析から、最終提示<2-3である582個中35個(6.0%)のNGG PAM sgRNAを除去した。理由は、これらがゲノム妨害のBCL11A非依存性効果の可能性を示したからである(図2G)。
エンハンサー標的指向性sgRNAの大部分は、高HbFプールから有意な濃縮または枯渇を示さなかった(図2Gおよび2H)。本発明者らは、多数のsgRNAがDHSの各々でHbF濃縮を有すること、および一部が+55でHbF枯渇を有することを観察した(図2H)。本発明者らは、各sgRNAの濃縮スコアをそのゲノム切断の予測位置にマッピングした(図3A)。sgRNAを濃縮することは、個別のゲノム位置を共局在化する。例えば、本発明者らは、+62でわずかな濃縮を有するsgRNAのクラスター、+55で中程度の濃縮を有するクラスター(および枯渇を有する隣接クラスター)、および+58で顕著な濃縮を有するクラスターを観察した。注目すべきことに、本発明者らは、+58で42bp内に切断位置を有する10個のsgRNAを観察し、各々が0.99を超える濃縮スコア(BCL11Aエクソン2標的指向性sgRNAの中央の濃縮スコアである)を有した。
エクソン2を標的とするsgRNAは、スクリーンからの濃縮と消失との間で線形相関を示し、このことは、BCL11Aの完全なノックアウトを生じるsgRNAが、HbF抑制解除の大きさと不可分の低下した細胞蓄積率を導くことを示している(図3B)。例えば、本発明者らは、実質的な消失を欠いた強力なHbF濃縮を有するいかなるエクソン2標的指向性sgRNAも観察しなかった。対照的に、+58での顕著なHbF濃縮と関連するsgRNAは、消失に対して鈍化した影響を示した(図3B)。この知見は、細胞蓄積の促進に適するがHbFの抑制に適さないBCL11Aの低い残留レベルとも一致することもできる。
これらの知見を検証するために、本発明者らは、各個々のDHS+55、+58、および+62の欠失を有する細胞を生成した。+58の欠失は、複合エンハンサーの欠失を表現型コピーしたが、一方で、+55および+62の欠失は、スクリーンからのトップスコアおよび共局在化sgRNAの大きさと一致して、それぞれ中程度およびわずかな効果を有した(図3A、3C~3E)。+58または+55部位の反転は、遺伝子発現に対して有意な効果を示さなかったが、このことは、BCL11Aエンハンサーが、古典的なエンハンサーの定義と一致して、インサイチューで配向非依存的に機能することを実証している1(図3C~3E)。アレイフォーマットで、本発明者らは、スクリーンにおいて最高から最低の範囲の濃縮スコアを有する24のsgRNA、および全ての5つのマッピングカテゴリー由来の代表sgRNAを試験した。本発明者らは、アレイフォーマットでスクリーンからのHbF濃縮スコアとHbF+細胞の画分との間で強い相関を観察した(r=0.816、p<0.0001;図3F)。これらの結果は、単一のエンハンサー標的指向性sgRNAがロバストなHbF誘導を媒介しうることを実証する(図8)。
HUDEP-2細胞からの知見を検証するために、スクリーンからのトップスコアのエンハンサー標的指向性sgRNA(+58での#1621)を、初代ヒト赤芽球において、エクスビボの赤血球培養条件に曝露されたCD34+HSPCのレンチウイルス形質導入によって試験した。スクリーン結果と一致して、sgRNA-1621は、BCL11A発現のダウンレギュレーションと、対応するγ-グロビン発現のアップレギュレーションと、HbF+細胞の増加とを生じた(図3G~3I、および8B)。とりわけ、sgRNA-1621は、表面マーカープロファイル、脱核頻度、または細胞形態学を変化させなかった。まとめると、これらの結果は、β-ヘモグロビン障害の治療的ゲノム編集のための非コードエレメントを標的とする個々のsgRNAの原理証明を示す。
霊長類特異的エンハンサー配列
本発明者らは、sgRNA濃縮スコアデータに隠れマルコフモデル(HMM)を適用して、各DHS内の機能的に重要な配列を推定した。このモデルは、標的遺伝子発現を正に、負に、および中性に調節する配列を含む尤度に基づいて、それぞれ、活性、抑制、および中性の3つの機能的状態を定義した。該モデルは、各DHS内の機能的状態を同定した(図4A~4C)。3つのDHSの各々で、活性状態は、DNase I感受性度が最も高い領域に正確に位置していた。
+62活性領域は、唯一共通のSNP(MAF>1%)である、精細マッピングによって最も高い形質関連SNPとして以前に同定されたバリアントrs1427407を含有する42。P<10-4で有意とされる本発明者らの事前定義した閾値を満たすことも初代ヒト赤血球クロマチンにおける低下したGATA1およびTAL1占有率と関連することもないが、高HbF T-アレルは、見かけのhalf E-box/GATA複合モチーフを妨害する(T-アレルについてP=9.74×10-4、G-アレルについてP=1.69×10-4)42。モチーフに直接マッピングする切断を有する多重sgRNAは、陽性濃縮スコアを実証した(図4C)。注目すべきことに、NGG PAMモチーフの欠如に起因して、活性領域の中心でsgRNA切断間に88のヌクレオチドのギャップがあった。SpCas9およびNGG PAM制限sgRNAによるこの非共通の機能的分解能の制限にかかわらず(図2D)、HMMモデルは、依然として該領域を同定することができた。PhyloPおよびPhastConsの両方によって評価されるとおりの実質的な種間保存(それぞれ、個々のヌクレオチドおよび他塩基エレメント保存をモデル化する)は、フランキング領域と比較した場合にこの+62活性状態領域で観察された(図4C)。
DHS+55は、rs1427407と一緒に最も高度に形質関連したハプロタイプを規定するSNP rs7606173を包含する。先の精細マッピングは、条件付けまたは稀なバリアント分析に基づいたrs1427407-rs7606173ハプロタイプを超える形質関連について予測力のある、BCL11Aにおける追加のSNPを見出すことができなかった。+55の活性または抑制状態領域内に共通のSNPは直接見出されず、抑制領域から3bpおよび活性領域から34bpにrs7606173があるだけである。+55内の活性または抑制状態に次に最も近い共通のSNPは、活性状態から739bpであるrs62142646である。rs7606163での主要な祖先Gアレルは、高HbFと関連する。このスクリーンに使用されるHUDEP-2細胞は、このGバリアントに対してホモ接合性である。高HbF形質がBCL11AエンハンサーでのTF結合配列の妨害に起因するモデルを考慮すれば、高HbF rs7606173-GアレルのsgRNA媒介性妨害は、さらなる機能的影響を導くと予想されないだろう。本発明者らは、rs7606173遺伝子型によって差次的に影響を受けると推測される6つのモチーフ(P<10-4)を観察した。+55におけるトップスコアのsgRNAは、予測TAL1::GATA1モチーフ(P<10-4)のある部位でrs7606173から56~58bpをクラスター化する。この配列エレメントは、高い脊椎動物保存を保有した。活性/抑制+55状態を包含する領域全体は、フランキング配列と比較した場合に高い配列保存を有すると思われる(図4A)。
+58活性領域での全体的な配列保存は、+62および+55のものと比較した場合により弱くかつフランキング配列とは区別があいまいで現れる(図4A~C)。スクリーンにおけるトップスコアのsgRNAは、+58内の42bpに共局在化する(図4B)。この3番目に高いスコアのエンハンサーを標的とするsgRNA(sgRNA-1617)は、見かけのGATAモチーフ上に直接マッピングした(データ示さず)。このモチーフは、ゲノムスケール有意性閾値以下であった(P=3.74×10-4)。注目すべきことに、オーソログ位置に直接隣接するヒト参照と比べて、マウスゲノムには144bpの挿入がある。マウスのオーソログ配列は、ヒトよりあまり高くないGATA1モチーフP値を有する(p=4.33×10-4)。このGATA1モチーフは、比較的高い脊椎動物保存を有すると思われ、ウサギ、ブタ、イヌ、およびゾウにおいて正確なヒト同一性がある。
トップスコアのsgRNA(sgRNA-1621)は、このGATA1モチーフから15bpの位置にマッピングした(データ示さず)。sgRNA-1621と1617との間でマッピングする追加の4つのsgRNA(スクリーンにおける2番目に高いスコアのsgRNAを含む)は各々、実質的に上昇したHbF濃縮スコアを有していた。潜在するこれらのsgRNAは、追加の予測モチーフ(すなわち、Rxra、EHF、ELF1、およびSTAT1)であった。これらの配列は、霊長類の中で高いレベルの保存を示したが、これらは、非霊長類脊椎動物の中では高い変質を示した(データ示さず)。
本発明者らは、sgRNA-1621またはsgRNA-1617のいずれかで細胞を処置した時に観察される突然変異のパターンをディープシークエンシングによって試験した。これらのsgRNAの各々は、ヒト赤血球細胞においてHbFを実質的に誘導するのに十分である(図3F~3I)。本発明者らは、Cas9およびこれらのsgRNAに曝露された細胞を高HbFプールおよび低HbFプールへソーティングした。本発明者らは、ディープシークエンシングによって各集団におけるインデルスペクトルを決定した。予想どおり、本発明者らは、予測された切断位置の周囲にインデルクラスタリングを観察した。高HbFプールおよび低HbFプール由来の細胞間でヌクレオチド単位当たりのインデル比を比較することによって、本発明者らは、ディープシークエンシングに使用されるアンプリコンにわたって相対濃縮を計算することができた。とりわけ、両sgRNAは、予想される切断位置で正確ではないが約10bpだけ相殺された最大のHbF濃縮インデルを生成した。1621の場合、最大のHbFインデル濃縮の位置は、1617切断部位へ向いていた。1617の場合、最大のHbFインデル濃縮の位置は、1621切断部位へ向いていた。これらの結果は、これらの2つの切断に介在する配列がBCL11A発現に特に必要であることことを示す。これらの最大のHbF突然変異濃縮の部位は、sgRNA切断に介在する予測されたモチーフと直接重複する7bpにマッピングした(データ示さず)。まとめると、これらのデータは、霊長類特異的配列によって囲まれた予測閾値以下の保存されたGATA1モチーフスコアリングが、ヒト赤血球BCL11A発現およびHbF抑制に必須のエンハンサーの核心となることを示す。
マウスエンハンサーの詳細な分析
BCL11Aエンハンサーの機能的保存を試験するために、本発明者らは、オーソログなマウスBcl11aエンハンサーをより詳細に調べた。H3K27acによって中程度にマークされるが、マウスBcl11aは、スーパーエンハンサーエレメントの基準を満たさない(図9Aおよび9B)。赤血球のDNase I感受性は、+58活性領域内の低下した配列相同性と一致して(図4A~4C)、+55および+62に相同な配列でのみ観察され、+58では観察されない(図9A)。本発明者らは、以前に、マウス赤白血病(MEL)細胞における複合エンハンサー全体(DHS+55、+58、および+62に相同な配列を包含する)の欠失がBCL11A発現の劇的な低下を生じたことを観察した42。本発明者らは、胚性グロビンHbb-y遺伝子座にmCherry蛍光レポーターがノックインされたMEL細胞レポーター系統を生成した(図9C)。Cas9およびBcl11aエクソン2を標的とするsgRNAの導入は、上昇したεy:mCherry発現を有する細胞の出現を生じたが、このことは、BCL11A標的εy-グロビンの抑制解除を示している(図9D)。本発明者らは、上記のヒトスクリーンと同様に、これらのεy:mCherryレポーター細胞においてプールCRISPRエンハンサー飽和突然変異誘発スクリーンを設計した(図9E~9K)。
本発明者らは、低εy:mCherryプールと比較した高εy:mCherryプールにおける提示間のlog2比として濃縮スコアを決定した(図10A)。本発明者らは、ほとんど全てのエクソン2標的指向性sgRNAが、高い相関関係を持つ正の濃縮スコアと負の消失スコアの両方を実証したことに注目した(図10A、10C、および10D)。エンハンサー標的指向性sgRNAの大部分は、有意な濃縮を示さなかった(図10B)。本発明者らは、ヒト+55で見られたのと同様に、+55オーソログで高εy:mCherry由来のわずかな濃縮および枯渇の両方を有するsgRNAを検出した。本発明者らは、ヒト+62での濃縮の効力を超える、+62オーソログで顕著な濃縮を有する一連のsgRNAを検出した。+58オーソログでは、本発明者らは、濃縮または枯渇性sgRNAのいかなる証拠も観察しなかった(図10B)。
ゲノムにsgRNA切断位置をマッピングすることによって、本発明者らは再び、sgRNAのセットの共局在化を観察した(図5A)。+55オーソログにヒト+55の場合と類似の複雑なパターンがあり、隣接領域に、DHS中心に高εy:mCherryプール由来の濃縮および枯渇性sgRNAがあった。+62オーソログでは、顕著なピークがあり、1.30を超える濃縮スコア(Bcl11aエクソン2標的指向性sgRNAの中央の濃縮スコア)を有する5つのsgRNAがあった(図5A)。+62オーソログのこの強力な影響は、ヒト+62での個々のsgRNAまたはDHS欠失の軽度な影響とは対照的であった。
本発明者らは、Cas9の存在下でsgRNAの対を使用して、BCL11Aエンハンサーに種々の置換基エレメントの欠失を有するMELクローンを産生した。本発明者らは、+55、+58、および+62オーソログの欠失を有するクローンの発現を比較した(図5B)。DNase感受性+58オーソログの欠失は、プールスクリーンの結果と一致して、BCL11A発現に対して明らかな効果を有していなかった。+55オーソログの欠失は、およそ2倍のBCL11A発現の低下を導いたが(平均残留レベル49%、p<0.0001)、一方で、+62オーソログの欠失は、BCL11A発現の低下に関して複合エンハンサー全体の欠失を模倣した(それぞれ、平均残留レベル8%(p<0.0001)および6%(p<0.0001)、図5B)。加えて、+62オーソログが反転したクローンが単離されたが、BCL11A発現の変化がなかった。このことは、マウスエンハンサーが、ヒトエンハンサーと同じくインサイチューで配向非依存的に機能することを示している(図3C~3E;5B)。
本発明者らは、同じHMMモデルを適用して、マウスBCL11Aエンハンサーオーソログにおける活性、抑制、および中性状態を推定した(図5C)。本発明者らは、+62オーソログで活性状態を、そして、+55オーソログで活性および抑制状態を同定した。+58オーソログでは中性状態だけが同定された。ピークのDNase I感受性を有する+55および+62 DHSの領域が活性状態を保有するとして推定された(図5C)。
本発明者らは、複合エンハンサー全体が最初に単一アレル欠失され、その後、残りのアレル上の+62オーソログを標的とする個々のまたは対のsgRNAによって突然変異が産生された、108のクローンを分析した。本発明者らは、+62標的指向性sgRNAに曝露されていない25の対照クローンに対して正規化されたこれらの108クローンの各々でBCL11A発現をRT-qPCRによって測定した。このクローン分析は、BCL11A発現および胚性εy-グロビン抑制に必要な機能性配列を含有する+62オーソログの核となる領域を同定した(図5C)。該領域は、特に赤血球生成およびグロビン遺伝子調節に関与する重要な因子の、Gata1、Klf1、およびMybを含むTF結合モチーフが豊富である。注目すべきことに、マウスおよびヒトの+62活性状態領域全体にわたって比較的高い脊椎動物保存が存在するにもかかわらず(図4C、5C)、BCL11Aおよびグロビン遺伝子調節に対するマウス+62オーソログの強力な影響は、ヒト+62のそれを大きく超えた(図3A、C~E、5A~C)。
インビボでのエンハンサー機能
BCL11A発現におけるマウス+62オーソログの重要性を立証するために、ならびに治療戦略としてのBCL11Aエンハンサー妨害を検証するために、本発明者らは、マウスBcl11a+62オーソログ欠損動物を生成した。本発明者らは、ヒトβ-グロビンクラスターにトランスジェニック(β-YAC mESC)なマウス胚性幹細胞(mESC)を生成して、ヘモグロビンスイッチングにおけるBCL11Aの役割をモデル化した55。+62オーソログは、同じCas9および対になったsgRNA戦略で、これらのmESCから欠失された。インビボでのグロビン遺伝子発現の発生的調節における+62オーソログの役割を決定するために、2つのユニークな+62オーソログ両アレル欠失β-YAC mESCクローンをE3.5非β-YAC胚盤胞に注射し、偽妊娠の雌にインプラントした(図11)。E16.5では、分析は、クローン1および2からの寄与で、それぞれ、9.4倍(p<0.0001)および11.4倍(p<0.0001)の+62欠失キメラのγ-グロビン遺伝子発現の増加を明らかにした(図5D)。これらの結果は、ネズミ赤血球細胞が、インビボでの適切なグロビン遺伝子調節のためのBcl11a+62オーソログの細胞固有の機能要件を有することを示した。
生殖系列+62欠失マウスは、CJ9 mESC由来であり、これをβ-YACマウスと繁殖させた。先の研究は、中枢神経系の構造発達ならびにBリンパ球個体発生におけるBcl11aの必須の役割を実証している56,57。BCL11A発現は、E16.5胚由来の脳またはソーティングされたB細胞前駆体で秩序化されていた(図5Eおよび11D)。対照的に、ソーティングされたE16.5赤血球前駆体ではBCL11Aレベルの実質的な低下があった(図5E)。驚くことに、出生後数時間で死亡する従来のBcl11aノックアウトとは異なり、+62オーソログ欠失マウスは、予想メンデル比で健常に出生した(図10C)。Bcl11aは、胚発生および成人期の両期間中のBリンパ球前駆細胞の産生に必要である56,58。+62オーソログの両アレル欠失を有するマウスは、胎児肝臓において正常な数のB細胞前駆体を有すると思われる(図11)。さらに、4週齢のこれらの突然変異動物は、野生型同腹仔に匹敵する循環血中末梢血Bリンパ球頻度を実証した(図5F)。他の造血系統もまた、野生型同腹仔と類似の頻度で存在することが明らかになった。トランスジェニックなヒトグロビン遺伝子の発生的調節は、妊娠中期のマウス胎児肝臓で起こる。胎児肝臓をE12.5とE18.5との間で2日毎に評価して、ヘモグロビンスイッチングをモニタリングした。ヒトγ-グロビンの抑制およびヒトβ-グロビンの活性化は、+62オーソログ欠失マウスでは顕著に遅延した。これらの結果は、BCL11Aの従来のノックアウト状況で見られる明白な神経学的または免疫学的毒性を伴うことなく、BCL11Aの赤血球エンハンサーをインビボで妨害することがBCL11A発現の赤血球特異的な妨害およびγ-グロビンの緩和された抑制を生じることを示す。
本発明者らは、インサイチューでの非コードエレメントの飽和突然変異誘発であるCRISPR-Cas9ゲノム編集の新規適用を採用して、BCL11A赤血球エンハンサーの組織化および機能への重要な洞察を提供してきた。エンハンサー機能の伝統的な試験は、異所性異種レポーターアッセイおよび/またはクロマチン修飾のパターンのような相関的な生化学的特徴に依拠する。ゲノム編集は、適切な遺伝子調節のための内因性クロマチン状況内のエンハンサー配列の要件の簡便な評価を可能にする。ここに示されるとおり、高分解能で高スループットなプールされたタイリングsgRNAは、ヌクレオチド分解能にアプローチする潜在するエンハンサー配列要件を明らかにする。エンハンサーは転写因子結合モチーフから構成されるが、エンハンサーを予測するのにモチーフの存在だけでは不適切である。モチーフ予測は、予測されたモチーフのごく一部だけがChIP-seq占有率研究によって確証される傾向があるという点で、過度に感受性であることができる。その一方で、モチーフ予測は、非感受性であることもできる;例えば、最近の報告は、エンハンサー機能の特異性を獲得するための低親和性モチーフの重要性を強調する59。以前に、本発明者らは、GATA1が初代赤血球前駆体において+58を占有することを示した42。しかしながら、この領域は、マウス赤血球細胞においてDNase感受性も機能要件も保有しない。この多様性にかかわらず、ヒトのコアGATA1モチーフは、非機能性マウスオーソログにおいて類似のP値を有する。これらの結果は、モチーフ状況がエンハンサー活性において極めて重要であるモデルと一致する。HbF関連sgRNAおよび突然変異の両方が濃縮するGATA1モチーフのすぐ近隣にある配列は、この状況的要件を満たす候補である。
エンハンサーは、進化的保存および増大した代謝回転の両方を逆説的に実証する。共通の形質関連エンハンサーの変動は、エンハンサー機能をモジュレートしてそれによって新規表現型を産生するのに十分な種間多型配列の頻発を示す。BCL11Aでは、本発明者らは、2つのSNPによって定義された形質関連エンハンサーハプロタイプを以前に記載した42。本発明者らのプールCRISPRスクリーニングは、これらのSNPの各々が、原因バリアントとしての役割と一致して、近い機能性エンハンサー状態にあることを明らかにした。+58内の最も強力なエンハンサー領域は、その機能性コア近傍に共通のバリアントを有さない。この例は、個々のSNPに対する精細マッピングGWAS関連が、関連形質に対する潜在するエレメントの生物学的重要性をいかに実質的に過小評価しうるかを実証する。加えて、これらのデータは、BCL11Aエンハンサーにおける明白な配列保存が、潜在する機能的多様性をマスクすることを実証する。マウスおよびヒトのBCL11A赤血球複合エンハンサーは、一次配列相同性、赤血球エンハンサークロマチンシグネチャ、およびコード配列と比べたシンテニーのイントロン位置を共有する。さらに、BCL11Aの赤血球発現および胚/胎児グロビン遺伝子の抑制には両方が必要である。しかしながら、本発明者らの高分解能CRISPR突然変異誘発分析は、これらのエンハンサーのアーキテクチャの多様性を明らかにする。マウスエンハンサーは2つのDHSから構成され、その中で+62はインビボで検証されたとおり機能的優位性を有する。対照的に、ヒトエンハンサーは3つのDHSを有し、その中で+62は少なくとも機能的に重要であり、そして、+58は最も機能的に重要である。注目すべきことに、ヒトBCL11Aは、出生時前後のγ-グロビンからβ-グロビンへの発生スイッチを実行する。これらのスイッチのタイミングおよび性質ならびにグロビン遺伝子それ自体は、妊娠中期胚から成体へのスイッチのみを示す非霊長類脊椎動物と比較して、霊長類ではっきり異なる60-62。それゆえ、BCL11Aでの重要な調節機序が種間で異なることに納得がいくであろう。
エンハンサーエレメントと関連する生物学的特徴の強度の広範な変動に関する最近の見解は、クラスター化されたエンハンサーエレメントおよびいわゆるスーパーエンハンサーへの新たな関心を導いた。ここで、本発明者らは、ある1つのこのようなスーパーエンハンサーが、遺伝子発現にいくつかは重要であって他のものは最小限に必要である構成DHSの一階層として組織化されることを示す。さらに、BCL11A+58のような重要なDHS内にも、多くの不必要な配列およびごくわずかな重要な配列がある。これらの実験は、スーパーエンハンサーが単一DSBに対していかに脆弱でありうるかを示す。
ヘモグロビン障害は、最も一般的なメンデル遺伝性のヒト病態である。HbFのレベルは、これらの疾患の臨床的重症度の重要な修飾因子であり、そして、BCL11Aは、HbFレベルの主要な調節因子である63。BCL11Aエンハンサーでの天然に存在する遺伝子変動は、十分に認められており、かつ、HbFレベルおよびβ-ヘモグロビン障害の臨床的重症度と関連する。ここに提示される研究は、β-ヘモグロビン障害のためのBCL11Aエンハンサーの治療的ゲノム編集用のフレームワークを提供する。初代赤血球前駆体における個々のsgRNAによるエンハンサー妨害は、実質的なHbF誘導を生じる。このアプローチは、完全なBCL11A喪失の赤血球特異的増殖の欠点を軽減しうる。さらに、それは、非赤血球状況におけるBCL11A発現を温存しうる。例えば、本発明者らは、+62オーソログ欠損マウスにおいて正常なBリンパ球産生を観察した。この分野にとっての課題は、HbF抑制を実験的に正確にモデル化することがまだ不可能であることである。しかしながら、微小欠失が原因でBCL11Aがハプロ不全である個体は、顕著な神経学的欠陥、および上昇したHbFを示すが、これは、高HbFな共通のエンハンサーハプロタイプのホモ接合体で見られるものよりはるかに優れている(Basak et al, JCI, in press)。まとめると、これらのデータは、ここで定義されたBCL11Aエンハンサー内の重要な配列の無秩序が、β-ヘモグロビン障害を改善するのに必要な臨床的閾値を超えるHbFレベルを生じうることを示す。
ヒトDHS+58における共通のSNP。活性領域内の唯一共通のSNPは、トップスコアのsgRNAのクラスターから118~160bp(chr2:60722359~60722401)の状態領域の端部(chr2:60722241)にあるrs6738440であり;次の最も近い共通のSNPは、119bp離れたrs62142615(chr2:60722120)であった。有意な隣接濃縮を有するsgRNAも、メジャーAアレルまたはマイナーGアレルのいずれかを有するゲノムスケールで有意なモチーフを覆うsgRNAも、rs6738440で観察されなかった。先のrs1427407-rs7606173ハプロタイプの条件付け分析は、このバリアントについての残りの有意な形質関連を実証できなかった42。
ヒトおよびマウスのDHS配列相同性。配列相同性は、3つのヒトDHSに相同なマウス配列の各々について、TSSに関しておおまかに類似したイントロン位置で検出可能である:ヒト+55(1283bp長)は、マウス+55オーソログ(1046bp長)に402の位置のヌクレオチド同一性(31.3%)を有し、ヒト+58(1264bp)は、マウス+58オーソログ(1341bp長)に367の位置のヌクレオチド同一性(28.6%)を有し、ヒト+62(1369bp長)は、マウス+62オーソログ(1216bp長)に281の位置のヌクレオチド同一性(20.5%)を有する。比較によって、ヒトBCL11Aコード配列中の2508bpのうち、2424のヌクレオチドがマウスBcl11aコード配列に同一性(96.7%)を示す。
これらのMEL εy:mCherryレポーター細胞におけるプールCRISPRエンハンサー飽和突然変異誘発スクリーン。マウスsgRNAライブラリーは、NGG制限sgRNAおよびNAG PAM制限sgRNAの両方から構成されていた。ヒトエンハンサースクリーンと同様に、sgRNAは、標的部位全体にわたって分布しており、NGG PAM制限sgRNAについて隣接切断部位までの中央距離は4bpであり、隣接切断部位の90%は18bp内にある(図9F)。本発明者らは、比較的狭い提示分布を有するライブラリーの1271メンバーの全てでレンチウイルスプラスミドへのクローニングに成功した(中央値735、10パーセンタイル393、90パーセンタイル1240の正規化した読み取り値)(図9G)。
統計学的に有意であるわずかな濃縮があったが、NAG PAM制限sgRNAは、強力なNGG制限sgRNAと比べて実質的に低下した過剰提示を示し、そのためNGG PAM制限sgRNAに対してさらなる分析が制限された(図9I)。
ライブラリーは、マウスDHS+55、+58、および+62オーソログをタイリングするsgRNAセット、ならびに120の非標的指向性陰性対照および91のBcl11aエクソン2標的指向性陽性対照を含んだ(図9E)。
レンチウイルスライブラリーによる低多重度での形質導入、および2週間のインビトロ培養に続いて、細胞を高および低εy:mCherryプールにソーティングした(図9H)。ゲノムDNAのディープシークエンシングを実施して、該プールにおけるsgRNAライブラリーの提示を評価した。非標的指向性陰性対照sgRNAは、低εy:mCherryプールと比較して高εy:mCherryプールで最終的に提示されたが、一方で、NGG PAMを有する陽性対照Bcl11aエクソン2標的指向性sgRNAは、高εy:mCherryプールで有意に過剰提示された(図9I)。本発明者らは、該スクリーンの4つの生物学的レプリケート間で個々のsgRNAについての濃縮スコアの強い相関を観察した(図9J)。
本発明者らは、初期レンチウイルスプラスミドプールと比較した場合の、2週間のインビトロ培養を完了した細胞におけるライブラリーの提示を分析した(高εy:mCherryプールと低εy:mCherryプールの合計)。sgRNAの大部分は、初期プラスミドプールにおいて等価な提示を示し、かつ、実験完了時の細胞における成分と同じ提示を示した(図10A)。少数のsgRNA(n=8)は、実質的な消失>2-3を示し、後続の濃縮分析から除去された。ヒトスクリーンと同様に、これらを反復エレメントにマッピングした(図10C)。
実施例2
NGA制限sgRNAを用いたゲノム編集
本発明者らの初期研究において、本発明者らは、BCL11A赤血球エンハンサーのゲノム編集にSpCas9を使用した。このヌクレアーゼは、典型的には、プロトスペーサーモチーフ(PAM)配列NGGによって制限されたsgRNAと一緒に利用される。その後、本発明者らは、BCL11A発現の妨害および後続の胎児型ヘモグロビン(HbF)の誘導を生じる、BCL11A赤血球エンハンサー+58配列を標的とする追加のsgRNAと併せた代替Cas9ヌクレアーゼの能力を試験した。本発明者らは、HUDEP-2細胞にSpCas9-VQR(これはSpCas9とは異なり、NGGではなくプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列NGAによって制限される)を安定的に形質導入した74。本発明者らは、BCL11A+58エンハンサーを標的とするNGA PAMによって制限されたsgRNAのレンチウイルスライブラリーを試験した。各形質導入細胞が単一sgRNA成分を担持するように、細胞にレンチウイルスライブラリーを低多重度で形質導入した。各sgRNAを1細胞当たり1000倍提示した。細胞を増大させ、分化させ、HbFについて染色した。高HbFおよび低HbFを有する集団をFACSによってソーティングした。ゲノムDNAを単離し、sgRNAをディープシークエンシングして、高HbFプールにおける濃縮を決定した。本発明者らは、有意なHbF濃縮と関連するBCL11A+58を標的とする5つのNGA制限sgRNAを同定した(表9を参照のこと)。トップスコアのNGA制限sgRNA(BCL_NGA_00069)は、hg19 chr2:60,722,388にある切断位置を特定するが、これはNGG制限sgRNAスクリーンからのトップスコアのsgRNAであるBCL_01621の切断位置からわずか4bpである。これらの結果は、重要なBCL11A+58エンハンサー配列における、SpCas9-VQRバリアントおよびNGA制限sgRNAを用いたゲノム編集が、BCL11A発現を妨害し、かつ、上昇したHbFレベルを生じるのに十分であることを示す。
dCas9-KRABを用いたCRISPR干渉
標的指向性の二本鎖切断を生じることによるCRISPRゲノム編集の使用に加えて、Cas9を別の目的に利用してエピゲノム編集によって遺伝子発現を調節してもよい。1つの方法は、Kruppel関連ボックス(KRAB)ドメインのような転写抑制ドメインに結合された触媒不活性型のCas9(dCas9)を使用することである73。この様式では、sgRNAが、転写抑制因子dCas9-KRABが特異的なゲノム遺伝子座を標的とするようにし、遺伝子抑制を生じさせてもよい。本発明者らは、BCL11A遺伝子抑制および後続のHbF誘導を媒介する、BCL11Aエンハンサー標的指向性sgRNAとのdCas9-KRABの能力を試験した。本発明者らは、非標的指向性対照と比較した場合の、2つのBCL11A+58標的指向性sgRNA(BCL_01617およびBCL_01621、表7を参照のこと)を用いたBCL11A発現の低下およびガンマ-グロビン発現の誘導を観察した(図12を参照のこと)。これらの結果は、BCL11Aエンハンサーでの重要な配列を標的とするエピゲノム編集が、BCL11A発現を妨害し、かつ、上昇したHbFレベルを生じるのに十分であることを示す。
(表2)欠失クローンスクリーニングのためのオリゴヌクレオチドプライマー
(表3)反転クローンスクリーニングのためのオリゴヌクレオチドプライマー
(表4)マウス+62欠失分析のためのオリゴヌクレオチドプライマー
(表6)BCL11Aノックダウンを達成するための、標的とするBCL11Aエンハンサー領域の位置
(表7)0.259を超えるHbF濃縮をもたらしたsgRNA標的配列
(表8)BCL11Aエンハンサー+62、+58、および+55機能性領域の配列
(表9)0.259を超えるHbF濃縮をもたらしたNGA制限sgRNA配列