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JP7302840B2 - 二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法 - Google Patents
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JP7302840B2 - 二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法 - Google Patents

二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二酸化炭素を貯蔵(吸蔵)または放出できる二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法に関する。
温室効果ガスである二酸化炭素を削減するにあたり、二酸化炭素を貯蔵する材料の開発が進められている。
二酸化炭素を貯蔵する材料としては、窒素ドープ炭素材料であり、25℃、1気圧で、二酸化炭素の吸着量が3.13mmol/gのものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
Rapid Synthesis of Nitrogen-Doped Porous Carbon Monolith for CO2 Capture,Guang-Ping Hao,Wen-Cui Li,Dan Qian,and An-Hui Lu,Advanced Materials,2010,22,853-857.
しかしながら、非特許文献1に記載の材料は、吸蔵時の二酸化炭素圧力を解放した後には、二酸化炭素を保持することができなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、常温(15℃~25℃)、常圧(1気圧)以下で二酸化炭素を貯蔵することができる二酸化炭素貯蔵放出材料およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、吸蔵時の二酸化炭素圧力を解放しても二酸化炭素を保持することができ、50℃以上の加熱により二酸化炭素を放出した後、再び、二酸化炭素を吸蔵することができる二酸化炭素貯蔵放出材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
[1]二次元ネットワークを有する二次元ホウ化水素含有シートから構成され、X線光電子分光分析において、ホウ素のB1sに由来する187.5eVおよび191.2eVにピークを示し、マグネシウムに由来するピークを示さないスペクトルを有する二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法であって、MgB 型構造の二ホウ化マグネシウムと、前記二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンとイオン交換可能な水素イオンを配位したイオン交換樹脂とを極性有機溶媒中で混合し、二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を得る工程と、前記二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を200℃~350℃で加熱処理する工程と、を有することを特徴とする二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法
[2]前記二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、昇温脱離ガス分析と昇温前後の質量測定により算出されるホウ素と水素のモル比が1:1である(HB) (n≧4)からなる二次元ネットワークを有し、X線光電子分光分析において、負に帯電したホウ素のB1sに由来する188eV近傍にピークを示し、マグネシウムに由来するピークを示さないスペクトルを有し、電子線エネルギー損失分光において、ホウ素のsp2構造に由来する191eVにピークを示すスペクトルを有する[1]に記載の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法
[3]前記イオン交換樹脂は、スルホ基を有する[1]または[2]に記載の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法。
[4]前記極性有機溶媒は、アセトニトリルまたはメタノールであ[1]~[3]のいずれかに記載の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法。
本発明によれば、常温(15℃~25℃)、常圧(1気圧)以下で二酸化炭素を貯蔵することができる二酸化炭素貯蔵放出材料およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、吸蔵時の二酸化炭素圧力を解放しても二酸化炭素を保持することができ、50℃以上の加熱により二酸化炭素を放出した後、再び、二酸化炭素を吸蔵することができる二酸化炭素貯蔵放出材料およびその製造方法を提供することができる。
本発明の二酸化炭素貯蔵放出材料を構成する二次元ホウ素含有シートの分子構造を示す模式図であり、(a)がXY平面を示す図、(b)がYZ平面を示す図、(c)がZX平面を示す図である。 二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法に用いられる二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体の分子構造を示す模式図であり、(a)がXY平面を示す図、(b)がYZ平面を示す図、(c)がZX平面を示す図である。 実験例1におけるX線光電子分光分析の結果を示す図である。 実験例2におけるX線光電子分光分析の結果を示す図である。 実験例3における電子線エネルギー損失分光の結果を示す図である。 実験例3における電子線エネルギー損失分光の結果を示す図である。 実験例4における昇温脱離ガス分析の結果を示す図である。 実験例5における可視・紫外分光分析の結果を示す図である。 実験例6におけるX線光電子分光分析の結果を示す図である。 実験例7における試料投入部内の圧力と二酸化炭素導入後の経過時間との関係を示す図である。 実験例8における加熱処理後の生成物の二酸化炭素の吸着量と二酸化炭素の吸着回数との関係を示す図である。 実験例9における加熱処理後の生成物の二酸化炭素の吸着量と試料投入部内へ導入する二酸化炭素の圧力との関係を示す図である。
本発明の二酸化炭素貯蔵放出材料およびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[二酸化炭素貯蔵放出材料]
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、ホウ素と水素のモル比が6:5~3:1であるn(H)(n≧4、5/6≦x/y≦1/3)からなる二次元ネットワークを有する二次元ホウ化水素含有シートから構成される。すなわち、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、ホウ素原子(B)と水素原子(H)がモル比で6:5~3:1の割合で存在し、これら2つの原子のみから形成される二次元ネットワークを有する二次元ホウ化水素含有シートから構成されるシート状の材料である。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料において、ホウ素原子(B)と水素原子(H)の割合(モル比)は、後述する昇温脱離ガス分析と昇温前後の質量測定により算出される。
また、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を構成する二次元ホウ化水素含有シートは、X線光電子分光分析において、ホウ素のB1sに由来する187.5eVおよび191.2eVにピークを示し、マグネシウムに由来するピークを示さないスペクトルを有する。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料において、X線光電子分光分析について、後述する。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を構成する二次元ホウ化水素含有シートは、図1に示すように、ホウ素原子(B)が、ベンゼン環のような六角形の環状に配列するとともに、その六角形の頂点に存在しており、ホウ素原子(B)によって形成される六角形が隙間なく連接して、網目状の面構造(二次元ネットワーク)をなしている。さらに、本実施形態における二次元ホウ化水素含有シートは、図1に示すように、六角形を形成するホウ素原子(B)に水素原子(H)が特定の周期的な規則性を持たずかつ凝集することなく無作為に結合している。
本実施形態における二次元ホウ化水素含有シートにおいて、ホウ素原子(B)によって形成される六角形の網目状とは、例えば、ハニカム状のことを言う。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、ホウ素原子(B)と水素原子(H)からなる二次元ネットワークを有する薄膜状の物質である。また、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、後述する本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法に用いられる二ホウ化マグネシウムに由来するマグネシウム原子、または、その他の金属原子をほとんど含まない。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料において、上記の二次元ホウ化水素含有シートの網目状の面構造を形成するホウ素原子(B)と水素原子(H)の総数は、1000個以上である。
図1(a)に示す、隣り合う2つのホウ素原子(B)間の結合距離dは、0.170nm~0.185nmである。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の厚さは、0.5nm~10nmである。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を構成する二次元ホウ化水素含有シートにおいて、少なくとも一方向の長さ(例えば、図1(a)においてX方向またはY方向の長さ)が100nm以上であることが好ましい。本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料において、二次元ホウ化水素含有シートの少なくとも一方向の長さが100nm以上であれば、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、二酸化炭素貯蔵放出材料として有効に利用することができる。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の大きさ(面積)は、特に限定されず、後述する本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法によって、任意の大きさに形成することができる。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を構成する二次元ホウ化水素含有シートは、酸化物で終端されていてもよい。すなわち、本実施形態における二次元水素化ホウ素含有シートは、その分子構造の末端が酸化物を形成していてもよい。本実施形態における二次元水素化ホウ素含有シートの分子構造の末端をなす酸化物としては、例えば、ホウ酸(B(OH))や酸化ホウ素(B)が挙げられる。本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を構成する二次元ホウ化水素含有シートは、酸化物で終端されることにより、より安定な分子構造を形成する。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を構成する二次元ホウ化水素含有シートは、結晶構造を有する物質である。また、本実施形態における二次元水素化ホウ素含有シートでは、六角形の環を形成するホウ素原子(B)間、および、ホウ素原子(B)と水素原子(H)の間の結合力が強い。そのため、本実施形態における二次元水素化ホウ素含有シートは、製造時に複数積層されてなる結晶(凝集体)を形成したとしても、グラファイトと同様に結晶面に沿って容易に劈開し、単層の二次元シートとして分離(回収)することができる。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料によれば、昇温脱離ガス分析と昇温前後の質量測定により算出されるホウ素と水素のモル比が6:5~3:1であるn(H)(n≧4、5/6≦x/y≦1/3)からなる二次元ネットワークを有する二次元ホウ化水素含有シートから構成され、X線光電子分光分析において、ホウ素のB1sに由来する187.5eVおよび191.2eVにピークを示し、マグネシウムに由来するピークを示さないスペクトルを有するため、常温、常圧以下で二酸化炭素を貯蔵することができる。また、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料によれば、吸蔵時の二酸化炭素圧力を解放しても二酸化炭素を保持することができ、50℃以上の加熱により二酸化炭素を放出した後、再び、二酸化炭素を吸蔵することができるすなわち、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料によれば、二酸化炭素を繰り返し、貯蔵または放出することができる。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、常温、常圧以下で、分子状態の二酸化炭素(二酸化炭素分子がそのままの形で存在しているもの)を貯蔵(吸蔵)することができる。本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料では、二酸化炭素貯蔵放出材料に含まれるホウ素原子に、二酸化炭素の酸素原子が結合して、二酸化炭素を貯蔵していると考えられる。そして、二酸化炭素を貯蔵(吸蔵)した、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を50℃以上に加熱することにより、貯蔵(吸蔵)した二酸化炭素を放出することができる。すなわち、二酸化炭素を貯蔵(吸蔵)した、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を50℃以上に加熱しなければ、半永久的に、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は二酸化炭素を貯蔵することができる。従って、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、二酸化炭素を貯蔵(吸蔵)して、大気中の二酸化炭素の削減に寄与することができる。
なお、貯蔵(吸蔵)した二酸化炭素を放出するために、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を加熱する温度は、300℃以下であることが好ましい。二酸化炭素貯蔵放出材料を加熱する温度が300℃を超えると、二酸化炭素貯蔵能を減少させる構造(X線光電子分光分析において、ホウ素のB1sに由来する187.5eVと191.2eV以外にも188.6eVにピークを持つ構造)に変化するため、貯蔵(吸蔵)した二酸化炭素を放出するために、二酸化炭素貯蔵放出材料を加熱する温度は、300℃以下であることが好ましい。
また、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料が、二酸化炭素を貯蔵(吸蔵)している場合、その二酸化炭素貯蔵放出材料を水や、アミン等のアルカリ性水溶液で洗浄して、その水やアルカリ性水溶液に二酸化炭素を溶解(吸収)させることにより、二酸化炭素を放出することができる。このように、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料は、貯蔵(吸蔵)した二酸化炭素を、水やアルカリ性水溶液に溶解(吸収)させることにより、二酸化炭素を繰り返し、貯蔵または放出することもできる。
[二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法]
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法は、MgB型構造の二ホウ化マグネシウムと、二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンとイオン交換可能なイオンを配位したイオン交換樹脂とを極性有機溶媒中で混合し、二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を得る工程(以下、「第1の工程」と言う。)と、二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を200℃~350℃で加熱処理する工程(以下、「第2の工程」と言う。)と、を有する方法である。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法では、MgB型構造の二ホウ化マグネシウムと、二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンとイオン交換可能なイオンを配位したイオン交換樹脂とを極性有機溶媒中で混合し、二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を得る(第1の工程)。
二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンとイオン交換可能なイオンを配位したイオン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えば、二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンとイオン交換可能なイオンを配位した官能基(以下、「官能基α」と言う。)を有するスチレンの重合体、官能基αを有するジビニルベンゼンの重合体、官能基αを有するスチレンと官能基αを有するジビニルベンゼンの共重合体等が挙げられる。
官能基αとしては、例えば、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも、極性有機溶媒中にて、容易に二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンとのイオン交換を行うことができることから、スルホ基が好ましい。
極性有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール等が挙げられる。これらの中でも、酸素を含んでいない点からアセトニトリルが好ましい。
なお、二ホウ化マグネシウムは、極性有機溶媒中にて、容易にイオン交換樹脂とのイオン交換を行うことができる。
第1の工程では、極性有機溶媒に二ホウ化マグネシウムとイオン交換樹脂を投入し、極性有機溶媒、二ホウ化マグネシウムおよびイオン交換樹脂を含む混合溶液を撹拌し、二ホウ化マグネシウムとイオン交換樹脂を充分に接触させる。これにより、二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンと、イオン交換樹脂の官能基αのイオンとがイオン交換して、ホウ素原子と、イオン交換樹脂の官能基αに由来する原子によって形成される二次元ネットワークを有するシート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体が生成する。
イオン交換樹脂としてスルホ基を有するイオン交換樹脂を用いれば、二ホウ化マグネシウムのマグネシウムイオン(Mg)と、イオン交換樹脂のスルホ基の水素イオン(H)とが置換して、上述のようなホウ素原子(B)と水素原子(H)からなる二次元ネットワークを有するシート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体が生成する。
第1の工程では、混合液に超音波等を加えることなく、二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンと、イオン交換樹脂の官能基αのイオンとがイオン交換する反応を、穏やかに進めることが好ましい。
混合溶液を撹拌する際、混合溶液の温度は、15℃~35℃であることが好ましい。
混合溶液を撹拌する時間は、特に限定されないが、例えば、700分~7000分とする。
また、第1の工程は、窒素(N)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスからなる不活性雰囲気下で行う。
次いで、撹拌が終了した混合溶液を濾過する。
混合溶液の濾過方法は、特に限定されず、例えば、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等の方法が用いられる。また、濾材としては、例えば、セルロースを基材とする濾紙、メンブレンフィルター、セルロースやグラスファイバー等を圧縮成型した濾過板等が用いられる。
濾過により沈殿物と分離されて回収された生成物を含む溶液を、自然乾燥するか、または、加熱により乾燥することにより、最終的に生成物のみを得る。
この生成物は、ホウ素原子と、イオン交換樹脂の官能基αに由来する原子(水素:H)によって形成される二次元ネットワークを有するシート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体である。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法によって得られた、生成物の分析方法としては、例えば、X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)および透過型電子顕微鏡内で行うエネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)と電子エネルギー損失分光(Electron energy loss Spectroscopy、EELS)による観察等が挙げられる。
X線光電子分光分析法(XPS)では、例えば、日本電子(JEOL)社製のX線光電子分光分析装置(商品名:JPS9010TR)を用いて、生成物の表面にX線を照射し、そのときに生じる光電子のエネルギーを測定することによって、生成物の構成元素とその電子状態を分析する。この分析において、原料の二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムに起因する光電子のエネルギーがほとんど検出されず、ホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素に起因する光電子のエネルギーのみが検出されれば、生成物はホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素(水素:H)のみから構成されていると言える。X線光電子分光分析法による分析により、原料の二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムに起因する光電子のエネルギーがほとんど検出されず、ホウ素と水素に起因する光電子のエネルギーのみが検出されれば、生成物はホウ素と水素のみから構成されていると言える。
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察では、例えば、日本電子(JEOL)社製の透過型電子顕微鏡(商品名:JEM-2100F TEM/STEM)を用いて、生成物を観察することにより、生成物の形状(外観)等を分析する。この分析において、膜状(シート状)の物質が観察されれば、生成物は二次元的なシート状の物質であると言える。透過型電子顕微鏡内において、エネルギー分散型X線分析(EDS)を行うことにより、生成物のTEM観察した部位における金属元素の存在の有無を観察できる。この分析において、原料の二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムに起因するX線のエネルギーがほとんど検出されず、マグネシウム(Mg)のピークが現われなければ、マグネシウムが存在しないと言える。また、透過型電子顕微鏡内において、電子エネルギー損失分光(EELS)を行うことにより、生成物のTEM観察した部位における構成元素を観察できる。この分析において、ホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素(水素:H)に起因するX線エネルギーのみが検出されれば、生成物はホウ素と上記のイオン交換樹脂の官能基αに由来する元素(水素:H)のみから構成されていると言える。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法の第1の工程で得られた、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、ホウ素と水素のモル比が1:1である(HB)(n≧4)からなる二次元ネットワークを有するシート状の材料である。すなわち、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、ホウ素原子(B)と水素原子(H)がモル比で1:1の割合で存在し、これら2つの原子のみから形成される二次元ネットワークを有するシート状の材料である。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体において、ホウ素原子(B)と水素原子(H)の割合(モル比)は、後述する昇温脱離ガス分析と昇温前後の質量測定により算出される。
また、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、X線光電子分光分析において、負に帯電したホウ素のB1sに由来する188eV近傍にピークを示し、マグネシウムに由来するピークを示さないスペクトルを有する。
また、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、電子線エネルギー損失分光において、ホウ素のsp2構造に由来する191eVにピークを示すスペクトルを有する。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体において、電子線エネルギー損失分光について、後述する。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、図2に示すように、ホウ素原子(B)が、ベンゼン環のような六角形の環状に配列するとともに、その六角形の頂点に存在しており、ホウ素原子(B)によって形成される六角形が隙間なく連接して、網目状の面構造(二次元ネットワーク)をなしている。さらに、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、図2に示すように、ホウ素原子(B)のうち隣接する2つが同一の水素原子(H)と結合する部位を有する。シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体において、ホウ素原子(B)によって形成される六角形の網目状とは、例えば、ハニカム状のことを言う。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、ホウ素原子(B)と水素原子(H)からなる二次元ネットワークを有する薄膜状の物質である。また、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法に用いられる二ホウ化マグネシウムに由来するマグネシウム原子、または、その他の金属原子をほとんど含まない。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体において、上記の網目状の面構造を形成するホウ素原子(B)と水素原子(H)の総数は、1000個以上である。
図2(a)に示す、隣り合う2つのホウ素原子(B)間の結合距離Dは、0.17nm~0.18nmである。また、図2(b)に示す、1つの水素原子(H)を介して、隣り合う2つのホウ素原子(B)間の結合距離Dは、0.17nm~0.18nmである。また、図2(b)に示す、隣り合うホウ素原子(B)と水素原子(H)間の結合距離Dは、0.125nm~0.135nmである。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体の厚さは、0.23nm~0.50nmである。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体において、少なくとも一方向の長さ(例えば、図2(a)においてX方向またはY方向の長さ)が100nm以上であることが好ましい。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体の大きさ(面積)は、特に限定されず、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法の第1の工程によって、任意の大きさに形成することができる。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、酸化物で終端されていてもよい。すなわち、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、その分子構造の末端が酸化物を形成していてもよい。シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体の分子構造の末端をなす酸化物としては、例えば、ホウ酸(B(OH))や酸化ホウ素(B)が挙げられる。シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、酸化物で終端されることにより、より安定な分子構造を形成する。
シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、結晶構造を有する物質である。また、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体では、六角形の環を形成するホウ素原子(B)間、および、ホウ素原子(B)と水素原子(H)の間の結合力が強い。そのため、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、製造時に複数積層されてなる結晶(凝集体)を形成したとしても、グラファイトと同様に結晶面に沿って容易に劈開し、単層の二次元シートとして分離(回収)することができる。
次いで、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を200℃~350℃で加熱処理し、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料を得る(第2の工程)。
第2の工程では、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を加熱処理する時間は、特に限定されないが、例えば、5分~1200分とする。
また、第2の工程は、真空下、または、窒素(N)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスからなる不活性雰囲気下で行う。
本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法によれば、ホウ素原子と、イオン交換樹脂の官能基αに由来する原子(水素:H)によって形成される二次元ネットワークを有する二次元ホウ素化合物含有シートから構成される二酸化炭素貯蔵放出材料を容易に生成することができる。
なお、原料のMgB型構造の二ホウ化マグネシウムの大きな結晶を用いることにより、より大面積のシート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を得ることができる。その結果として、より大面積のシート状の二酸化炭素貯蔵放出材料を得ることができる。
また、本実施形態の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法によれば、シート状の二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を形成する第1の工程において、二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンと、イオン交換樹脂の官能基αのイオンとをイオン交換させるために酸性溶液を用いずに、極性有機溶媒を用いるため、極性有機溶媒、二ホウ化マグネシウムおよびイオン交換樹脂を含む混合溶液のpHの調整が不要である。
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
二ホウ化マグネシウム(レアメタリック社製)のX線光電子分光(XPS)分析を行った。
X線光電子分光分析の分析装置として、日本電子(JEOL)社製のX線光電子分光分析装置(商品名:JPS9010TR)を用いた。X線光電子分光分析の結果を図3に示す。
[実験例2]
アセトニトリルに、二ホウ化マグネシウム(純度:99%、レアメタリック社製)60mgを加えるとともに、スルホ基を有するイオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR120B、オルガノ社製)を体積で30mL加えて、ガラス棒で撹拌し、二ホウ化マグネシウムとイオン交換樹脂の混合溶液を調製した。
この混合溶液を25℃にて72時間撹拌した後、この混合溶液を、孔径1.0μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液を回収した。その後、窒素雰囲気下、ホットプレートを用いて、80℃にて濾液を乾燥させて、生成物を得た。
得られた生成物について、実験例1と同様にして、X線光電子分光分析を行った。結果を図4に示す。
図3の結果において、51.3eVにマグネシウムのMg2pのピーク、188.2eVにホウ素のB1sのピーク、193.2eVに二ホウ化マグネシウム(MgB)の表面を覆っている酸化ホウ素(B)のピークが現われている。これは、典型的な市販のMgBのX線光電子分光分析の結果と一致する。
図4の結果から、図3にて現われていたMg2pのピークが観測されなかったことから、実験例2の生成物には、マグネシウム(Mg)が存在しておらず、ホウ素(B)を含んでいることが分かった。なお、図4において、193.2eVに現われている小さなピークは、副生生物のホウ酸のピークである。この結果は、二ホウ化マグネシウム(MgB)のMgイオンとイオン交換樹脂のスルホ基の水素イオンがイオン交換したことを示唆している。
[実験例3]
実験例2で得た生成物について、日本電子(JEOL)社製の走査型透過電子顕微鏡(STEM)(商品名:JEM-2100F TEM/STEM)による観察および電子線エネルギー損失分光を行った。この生成物に関する電子線エネルギー損失分光の結果を図5と図6に示す。図5に示すように、ホウ素(B)のsp2構造を示す191eVの電子線エネルギー損失分光のピークが観測され、炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)に起因するピークが観測されなかったことから、シート状の物質は、sp2構造を有するホウ素のみで構成されていることが分かった。また、図6の結果から、マグネシウム(Mg)に起因するピークが観測されなかったことから、シート状の物質は、ホウ素のみで構成されていることが分かった。なお、図6において、酸素(O)、硫黄(S)、銅(Cu)等に起因するピークが観測されているが、これは高感度測定によるノイズである。
[実験例4]
実験例2で得た生成物について、ESCO社製のTDS1400TVによる昇温脱離ガス分析(Thermal Desorption Spectrometry、TDS)を行った。分析結果を、図7に示す。図7において、(a)は水に起因するスペクトルを示し、(b)は水素に起因するスペクトルを示す。実験例2で得た生成物を加熱すると、副生生物のホウ素の存在により、180℃付近で水が脱離することが分かった。また、実験例2で得た生成物をさらに加熱すると、200℃以上で水素が脱離することが分かった。水の脱離量と水素の脱離量を測定し、それらを比較したところ、実験例2で得た沈殿物に含まれるホウ素と水素のモル比が0.97:1と算出された。この結果は、実験例2で得た沈殿物は、ホウ素原子(B)と水素原子(H)がモル比で1:1の割合で存在していることを示唆している。
[実験例5]
実験例2で得た生成物について、日本分光社製のV-660による可視・紫外分光分析(UV-VIS)を行った。分析結果を、図8に示す。図8の結果から、実験例2で得た生成物は、二ホウ化マグネシウムやホウ酸にはない2.59eVの光吸収があることが分かった。
[実験例6]
実験例2で得た生成物を、真空下、20℃(293K)、60℃(333K)または350℃(623K)にて1時間、加熱処理した。
加熱処理後の生成物のX線光電子分光(XPS)分析を行った。
X線光電子分光分析の分析装置として、日本電子(JEOL)社製のX線光電子分光分析装置(商 品名:JPS9010TR)を用いた。X線光電子分光分析の結果を図9に示す。
図9の結果において、350℃(623K)で加熱した場合、187.5eVおよび191.2eVにホウ素のB1sに由来するピークが現われている。
[実験例7]
ガス導入部と試料投入部からなる試験装置を用意した。ガス導入部の容積は32.00cm、試料投入部の容積は28.4cmであった。
実験例2で得た生成物を、試験装置の試料投入部内に収容した。
加熱処理後の生成物を収容した試料投入部内を真空にした後、250℃(523K)にて1時間、実験例2で得た生成物を加熱処理した。
加熱処理後の生成物を収容した試料投入部内に、25℃にて28.1Torr(約3.75kPa)の二酸化炭素を導入した。
その後、所定時間毎に、試料投入部内に設置した圧力センサにより、試料投入部内の圧力を測定した。結果を図10に示す。
図10の結果から、時間の経過に伴って、試料投入部内の圧力が低下することが観察された。これは、試料投入部内に収容した加熱処理後の生成物が、試料投入部内の二酸化炭素を吸着したことによるものと考えられる。
また、試料投入部内の圧力が低下量から算出される、実験開始から2時間後の加熱処理後の生成物の二酸化炭素の吸着量は、1.32×10-6molであることが分かった。ホウ化水素1g当たりに換算すると、加熱処理後の生成物の二酸化炭素の吸着量は、4.34×10-5molCO/g-HBであることが分かった。
[実験例8]
実験例7と同様にして、加熱処理後の生成物に二酸化炭素を吸着させた。
その後、加熱処理後の生成物を150℃にて1時間加熱して、二酸化炭素を放出させた。
二酸化炭素を放出させた加熱処理後の生成物に、実験例8と同様にして二酸化炭素を吸着させた。
このように、加熱処理後の生成物への二酸化炭素の吸着と放出を5回繰り返した。
加熱処理後の生成物に二酸化炭素を吸着させる毎に、加熱処理後の生成物への二酸化炭素の吸着量を算出した。結果を図11に示す。
図11の結果から、加熱処理後の生成物への二酸化炭素の吸着と放出を5回繰り返しても、加熱処理後の生成物は、毎回、ほぼ同量の二酸化炭素を吸着することが確認された。
[実験例9]
ガス導入部と試料投入部からなる試験装置(商品名:BELmax00067、マイクロトラックベル社製)を用意した。ガス導入部の容積は20.995cm、試料投入部の容積は23.729cmであった。
実験例2で得た生成物を、試験装置の試料投入部内に収容した。
加熱処理後の生成物を収容した試料投入部内を真空(3.795×10-6Pa)にした後、200℃(473K)にて18時間、実験例2で得た生成物を加熱処理した。
加熱処理後の生成物を収容した試料投入部内に、-78℃または25℃にて、1.598×10-2Pa/minで二酸化炭素を導入した。また、100kPaに達した後は、1.598×10-2Pa/minで減圧した。この過程の際に、試料投入部内に設置した圧力センサにより、試料投入部内の圧力を測定した。試料投入部内の圧力低下量から、各圧力条件における加熱処理後の生成物の二酸化炭素の吸着量を算出した。結果を図12に示す。
図12の結果から、加熱処理後の生成物を収容した試料投入部内に導入する二酸化炭素の圧力が増加するに伴って、加熱処理後の生成物の二酸化炭素の吸着量が増加することが確認された。また、試料投入部内への二酸化炭素の導入を停止して減圧を行っても、加熱処理後の生成物に二酸化炭素が吸着していることが確認された。
本発明の二酸化炭素貯蔵放出材料は、常温(15℃~25℃)、常圧(1気圧)以下で二酸化炭素を貯蔵する材料として利用可能である。また、本発明の二酸化炭素貯蔵放出材料は、天然ガスプラントや発電プラントで求められるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)技術のうち、PSA(Pressure Swing Adsorption)法に好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 二次元ネットワークを有する二次元ホウ化水素含有シートから構成され、
    X線光電子分光分析において、ホウ素のB1sに由来する187.5eVおよび191.2eVにピークを示し、マグネシウムに由来するピークを示さないスペクトルを有する二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法であって、
    MgB型構造の二ホウ化マグネシウムと、前記二ホウ化マグネシウムを構成するマグネシウムイオンとイオン交換可能な水素イオンを配位したイオン交換樹脂とを極性有機溶媒中で混合し、二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を得る工程と、
    前記二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体を200℃~350℃で加熱処理する工程と、を有することを特徴とする二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法。
  2. 前記二酸化炭素貯蔵放出材料前駆体は、昇温脱離ガス分析と昇温前後の質量測定により算出されるホウ素と水素のモル比が1:1である(HB)(n≧4)からなる二次元ネットワークを有し、X線光電子分光分析において、負に帯電したホウ素のB1sに由来する188eV近傍にピークを示し、マグネシウムに由来するピークを示さないスペクトルを有し、電子線エネルギー損失分光において、ホウ素のsp2構造に由来する191eVにピークを示すスペクトルを有することを特徴とする請求項に記載の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法。
  3. 前記イオン交換樹脂は、スルホ基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法。
  4. 前記極性有機溶媒は、アセトニトリルまたはメタノールであることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の二酸化炭素貯蔵放出材料の製造方法。
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