JP7325720B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
ただ、前記従来のTi-Al系の複合炭窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速断続切削加工等の厳しい切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
「(1)工具基体と該工具基体の表面に硬質被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
(a)前記硬質被覆層は、TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層を含み、
(b)前記TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層は、その組成を、
組成式:(Ti1-xAlx)(CyN1-y)で表した場合、
AlとTiの合量に占めるAlの含有割合xの平均値xavgと、CとNの合量に占めるCの含有割合yの平均値yavgが、それぞれ、0.65≦xavg≦0.95、0.000≦yavg≦0.050(但し、これらx、y、xavg、yavgは原子比)を満足し、かつ、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の占める面積割合が70面積%以上であり、
(c)前記結晶粒の粒内に前記Alの含有割合xが高い高Al領域と前記xが低い低Al領域とを有する2領域結晶粒が存在し、
(d)前記2領域結晶粒は、その周囲が前記高Al領域のみに囲まれた前記低Al含有領域、および、その周囲が前記高Al領域と一つの結晶粒を画定する結晶粒界に囲まれた低Al領域が、該粒内のすべての前記低Al領域に対して70面積%以上である特異2領域結晶を含み、
(e)前記特異2領域結晶粒は、それぞれ、前記高Al領域における前記xの平均値xh、前記低Al領域における前記xの平均値xlとするとき(但し、これらxh、xlは原子比)、0.05≦xh-xl≦0.60を満足し、
(f)前記TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層をその層厚方向に二等分した該層の表面側には、前記特異2領域結晶粒を10~40面積%含む、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記特異2領域結晶粒において、前記高Al領域の幅の最大値と最小値との差が50~300nmであることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記特異2領域結晶粒において、前記高Al領域の幅の平均値が30nm以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層において、前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒は、平均粒子幅Wが0.1~3.0μm、平均アスペクト比Aが2.0~10.0であることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
本発明のTiAlCN層は、硬質被覆層を構成する。このTiAlCN層の平均層厚は1.0~25.0μmが好ましい。平均層厚が1.0μm未満では、層厚が薄いため長期の使用にわたっての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が25.0μmを超えると、TiAlCN層の結晶粒が粗大化しやすくなり、チッピングを発生しやすくなる。平均層厚は、3.0~15.0μmがより好ましい。
本発明におけるTiAlCN層の組成は、組成式:(Ti1-xAlx)(CyN1-y)で表したとき、
TiとAlの合量に占めるAlの含有割合xの平均(以下、「Al含有割合の平均」という)xavgと、
C、Nとの合量に占めるCの含有割合yの平均(以下、「C含有割合の平均」という)yavgが、
それぞれ、0.65≦xavg≦0.95、0.00≦yavg≦0.050(ただし、xavg、yavgはいずれも原子比)を満足することが好ましい。
なお、(Ti1-xAlx)と(CyN1-y)との比は特に限定されるものではないが、(Ti1-xAlx)を1とする場合、(CyN1-y)の比は0.8~1.2とすることが好ましい。
Al含有割合の平均xavgが0.65未満であると、TiAlCN層は硬さが低下するため、鋳鉄等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でなく、一方、0.95を超えると六方晶のTiAlCN結晶粒が析出し、耐摩耗性が低下する。したがって、0.65≦xavg≦0.95としたが、より好ましくは0.70≦xavg≦0.90である。
また、C含有割合の平均yavgを0.000≦yavg≦0.050が好ましい理由は、前記範囲において耐チッピング性を保ちつつ硬さを向上させることができるためである。
TiAlCN層を構成する結晶粒がNaCl型面心立方構造である面積割合は、縦断面において70面積%以上であることが好ましい。その理由は、70面積%以上であれば、より確実に本発明の目的が達成できるためである。なお、前記結晶粒のすべてがNaCl型面心立方構造であってもよい(100面積%であってもよい)。ここで、NaCl型面心立方構造を有する結晶粒の面積割合の算出対象は、TiAlCN層を構成する結晶粒であって、TiAlCN層における高Al領域と低Al領域を有する前記結晶粒に限定されない。
TiAlCN層は、その粒内にAlの含有割合の高い高Al領域と、低い低Al領域を有する2領域結晶粒を含む。ここで高Al含有領域のAl含有割合は、xavg+0.025以上であり、低Al領域のAl含有割合は、xavg-0.025以下である。そして、これら高Al領域と低Al領域との間には、これら領域のAl含有割合へ遷移するxavg±0.025未満の領域(以下、遷移領域という)が存在するが、以下の説明では、この遷移領域の存在を無視する。
この2領域結晶粒の中に、その周囲が前記高Al領域のみに囲まれた前記低Al含有領域、および、その周囲が前記高Al領域と前記一つの結晶粒を画定する結晶粒界に囲まれた低Al領域が、該粒内のすべての前記低Al領域に対して70面積%以上である特異2領域結晶が存在していると、TiAlCN層の靭性および耐摩耗性が向上する。
前記特異2領域結晶粒において、高Al領域、低Al領域のAl含有割合xの面積加重平均値を、それぞれ、xh、xlとするとき(但し、xh、xlは原子比)、0.05≦xh-xl≦0.60を満足すると、TiAlCN層の靱性および耐摩耗が向上する。
2領域結晶粒は、縦断面において、20~100面積%含まれることが好ましい。この範囲であれば、TiAlCN層の靱性および耐摩耗性のバラつきが一定以下に抑えられる。
硬質被覆層を層厚方向(工具基体表面に垂直な方向)に二等分した表面被覆切削工具のTiAlCN層(硬質被覆層)表面側領域では、前記特異2領域結晶粒が10~40面積%含まれることが好ましい。面積割合がこの範囲にあると、前記結晶粒の量が適切となって、TiAlCN層の靱性および耐摩耗が向上する。
一方、工具基体側領域において、前記特異2領域結晶粒の面積割合を規定していない理由は、前記領域はTiAlCN層が成長し始めた領域を含むため、結晶粒径が工具表面側領域に比べて細かくなり、工具基体側領域での前記結晶粒の面積割合が、TiAlCN層の靱性および耐摩耗性に大きな影響を及ぼさないからである。
次のようにして、TiAlCN層を構成する結晶粒の結晶粒界を求め、高Al領域、低Al領域を、次のようにして鑑別する。すなわち、高分解能電子線後方散乱回折装置(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)を用いて、工具基体の表面に平行な方向に幅10μm、縦は層厚(平均層厚)分の観察視野に対して結晶粒界を判定する。この観察視野面内を0.02μm間隔で解析し、観察視野面内のNaCl型の面心立方構造を有する測定点を求める。このNaCl型の面心立方構造を有する測定点の中で隣接する測定点(以下、ピクセルともいい、点と表記しているものの領域である)の間で5度以上の方位差がある場合、あるいは隣接するNaCl型の面心立方構造を有する測定点がない場合は、5度以上の方位差を検出した測定点、あるいはNaCl型の面心立方構造ではない測定点とNaCl型の面心立方構造を有する測定点同士の境界(測定領域同士の境界)を粒界と定義する。そして、粒界により囲まれた領域でNaCl型の面心立方構造を有する測定点を含むものを1つの結晶粒と定義する。ただし、隣接するピクセル全てと5度以上の方位差がある、あるいは、隣接するNaCl型の面心立方構造を有する測定点がないような、単独に存在するピクセルは結晶粒とせず、2ピクセル以上が連結しているものを結晶粒として取り扱う。このようにして、粒界判定を行い、結晶粒を特定する。
特異2領域結晶粒において、高Al領域の最大幅と最小幅の差が、50~300nmであることが好ましい。この範囲にあると、TiAlCN層の靱性および耐摩耗がより向上する。ここで、高Al領域の幅とは、工具基体表面に垂直な方向(膜厚方向)における前記高Al領域の長さをいう。
次に、観察方向の位置とAlの含有割合xの増減の繰返しとの関係をグラフ化し、TiAlCN層のAl含有割合の平均xavg+0.025以上の領域の膜厚方向の長さを求める。この長さの最大値(最大幅)と最小値(最小幅)の差を算出する。さらに、前記長さの平均幅も算出する。
なお、グラフ化に当たり公知の測定ノイズ除去方法(例えば、移動平均法)を行うことはいうまでもない。
本発明において、TiAlCN層は柱状結晶組織を有し、その組織における結晶粒の縦断面における平均粒子幅Wが0.1~3.0μm、平均アスペクト比Aが2.0~10.0であることがより好ましい。その理由は、平均粒子幅Wが0.1μmよりも小さい微粒結晶になると粒界の増加による耐塑性変形性の低下、耐酸化性の低下により異常損傷に至りやすくなることがあり、一方、平均粒子幅Wが3.0μmよりも大きくなると粗大に成長した粒子の存在により、靱性が低下しやすくなることがあるためである。また、平均アスペクト比Aが2.0よりも小さい粒状結晶になると切削時に硬質被覆層の表面に生じるせん断応力に対してその界面が破壊起点となりやすくなってしまいチッピングの原因となることがあり、また、平均アスペクト比Aが10.0を超えると、切削時に刃先に微小なチッピングが生じ、隣り合う柱状結晶組織に欠けが生じた場合に、硬質被覆層表面に生じるせん断応力に対しての抗力が小さくなりやすく、柱状結晶組織が破断することで一気に損傷が進行し、大きなチッピングを生じることがある。したがって、結晶粒の平均粒子幅Wが0.1~3.0μm、平均アスペクト比Aが2.0~10.0であることがより好ましい。
硬質被覆層として、本発明の前記TiAlCN層を含む硬質被覆層は、鋳鉄等の高速断続切削加工であっても十分な耐チッピング性、耐熱亀裂性を有するが、前記硬質被覆層とは別に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、0.1~20.0μmの合計平均層厚を有するTi化合物(化学量論的な化合物に限定されない)層を含む下部層を工具基体に隣接して設けた場合、および/または、少なくとも酸化アルミニウム(化学量論的な化合物に限定されない)層を含む層が1.0~25.0μmの合計平均層厚で上部層として前記TiAlCN層の上に設けられた場合には、これらの層が奏する効果と相俟って、より一層優れた耐チッピング性、および、耐熱亀裂性を発揮することができる。
工具基体は、この種の工具基体として従来公知の基材であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例を挙げるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、またはcBN焼結体のいずれかであることが好ましい。
本発明のTiAlCN層は、例えば、工具基体もしくは当該工具基体上にある前記下部層であるTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層の少なくとも一層以上の上に、例えば、NH3と、N2、C2H4、CH4およびH2からなるガス群Aと、AlCl3、TiCl4、N2、CH4およびH2からなるガス群Bとからなる2種の反応ガスを2系統で供給し、この2種の反応ガスをCVD炉内で合流させることにより得ることができる。
ガス群A:NH3:1.0~3.0%、N2:0.0~5.0%、
CH4:0.0~6.0%、C2H4:0.0~12.0%、H2:20~40%
ガス群B:AlCl3:0.50~1.00%、TiCl4:0.10~0.30%、
N2:2.0~10.0%、CH4:0.1~1.0%、
H2:残
反応雰囲気圧力:4.5~5.0kPa
反応雰囲気温度:650~850℃
ガス供給周期:1.0~5.0秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bの供給の位相差:0.10~0.20秒
ここでは、本発明被覆工具の具体例として、工具基体としてWC基超硬合金を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体として、前記に記載した他のものを用いた場合であっても同様であるし、ドリル、エンドミルに適用した場合も同様である。
カッタ径:125mm
被削材:JIS・FCD700 幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度:764min-1
切削速度:300m/min
切り込み:2.0mm
送り:0.2mm/刃
切削時間:8分
(通常の切削速度は、200m/min)
被削材:JIS・FCD800の長さ方向等間隔8本縦溝入り丸棒
切削速度:300m/min
切り込み:2.0mm
一刃送り量:0.2mm/rev.
切削時間:5分
(通常の切削速度は、200m/min)
Claims (4)
- 工具基体と該工具基体の表面に硬質被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
(a)前記硬質被覆層は、TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層を含み、
(b)前記TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層は、その組成を、
組成式:(Ti1-xAlx)(CyN1-y)で表した場合、
AlとTiの合量に占めるAlの含有割合xの平均値xavgと、CとNの合量に占めるCの含有割合yの平均値yavgが、それぞれ、0.65≦xavg≦0.95、0.000≦yavg≦0.050(但し、これらx、y、xavg、yavgは原子比)を満足し、かつ、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の占める面積割合が70面積%以上であり、
(c)前記結晶粒の粒内に前記Alの含有割合xが高い高Al領域と前記xが低い低Al領域とを有する2領域結晶粒が存在し、
(d)前記2領域結晶粒は、その周囲が前記高Al領域のみに囲まれた前記低Al含有領域、および、その周囲が前記高Al領域と一つの結晶粒を画定する結晶粒界に囲まれた低Al領域が、該粒内のすべての前記低Al領域に対して70面積%以上である特異2領域結晶を含み、
(e)前記特異2領域結晶粒は、それぞれ、前記高Al領域における前記xの平均値xh、前記低Al領域における前記xの平均値xlとするとき(但し、これらxh、xlは原子比)、0.05≦xh-xl≦0.60を満足し、
(f)前記TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層をその層厚方向に二等分した該層の表面側には、前記特異2領域結晶粒を10~40面積%含む、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記特異2領域結晶粒において、前記高Al領域の幅の最大値と最小値との差が50~300nmであることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記特異2領域結晶粒において、前記高Al領域の幅の平均値が30nm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
- 前記TiとAlとの複合窒化物層または複合炭窒化物層において、前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒は、平均粒子幅Wが0.1~3.0μm、平均アスペクト比Aが2.0~10.0であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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| Takuya ISHIGAKI et al.,"Influence of the Al content on mechanical properties of CVD aluminum titanium nitride coatings",International Journal of Refractory Metals and Hard Materials,Vol. 71,ELSEVIER,2018年02月,p.227-231,DOI: 10.1016/j.ijrmhm.2017.11.028 |
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