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JP7327341B2 - 反応セル用セパレーター、およびそれを用いた反応セル - Google Patents
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反応セル用セパレーター、およびそれを用いた反応セル Download PDF

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Description

本発明は、反応セル用セパレーター、およびそれを用いた反応セルに関する。
太陽光エネルギーを用いて水(HO)から水素(H)、水(HO)と二酸化炭素(CO)から一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CHOH)等を合成する人工光合成に用いられる反応セルの技術が開示されている。これを実用化するためには、高い効率で反応を生じさせる反応用電極を実現することが望まれる。
反応セルでは、還元反応用電極(カソード)と酸化反応用電極(アノード)とが組み合わせて用いられる。例えば、特許文献1には、還元反応用電極と酸化反応用電極を備えたCO還元電気化学セルの例が記載されている。このようなCO還元電気化学セルでは、酸化反応用電極からO、還元反応用電極からCOの気泡が発生する。また、酸化反応用電極にてHが生成し、これが電解液に溶解して還元反応用電極へ伝搬して、還元反応用電極でのCO発生反応に用いられる。ここで、OとCOの気泡の混合を防ぐために還元反応用電極と酸化反応用電極との間にセパレーターが設けられる。特許文献1には、セパレーターとして、イオン交換膜、例えばナフィオン(登録商標)やフレミオンのようなカチオン交換膜、ネオセプタやセレミオンのようなアニオン交換膜を用いることができると記載されている。
しかし、特許文献1に記載されているイオン交換膜をセパレーターとして用いると反応効率が低下する場合がある。
特開2015-218380号公報
本発明の目的は、CO還元電気化学セル等の反応セルに用いても反応効率の低下を抑制することができる反応セル用セパレーター、およびそれを用いた反応セルを提供することにある。
本発明は、容器中の液体内に2種類の異なる反応面を備え、反応によって少なくとも1方の反応面において気泡が発生し、少なくとも1方の反応面において生成した反応生成物が前記液体に溶解してもう1方の反応面へ前記液体中を伝搬する反応セルにおける、前記2種類の異なる反応面の間に配置される、反応セル用のセパレーターであって、前記液体との親和性を有する多孔性の高分子材料から構成されるか、前記液体との親和性を有するように表面処理が施された多孔性の高分子材料から構成され、前記セパレーターの平均孔径は、μm~200μmの範囲である、反応セル用セパレーターである。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記反応セルは、前記反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において前記気泡が発生し、前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において生成した前記反応生成物が前記液体に溶解してもう一方へ前記液体中を伝搬することが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記反応セルは、前記反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において前記気泡が発生し、前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において生成した前記反応生成物が前記液体に溶解してもう一方へ前記液体中を伝搬し、前記液体は、水が溶媒であり、前記セパレーターは、多孔性の親水性高分子材料から構成されるか、親水化処理が表面に施された多孔性の高分子材料から構成されることが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記反応セルは、前記反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、前記液体は、二酸化炭素を溶解させた水を溶媒とする電解液であり、前記アノードまたは光アノードにおいて酸素の気泡が発生し、前記カソードまたは光カソードにおいて二酸化炭素が還元され、前記アノードまたは光アノードにおいて前記水の酸化反応により生成した前記反応生成物であるHが前記カソードまたは光カソードへ前記電解液中を伝搬し、前記セパレーターは、多孔性の親水性高分子材料から構成されるか、表面に親水化処理が施された多孔性の高分子材料から構成されることが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記セパレーターは、平滑表面の水の接触角が75°以下である親水性高分子材料から構成されるか、または、平滑表面の水の接触角が75°以下となる親水化処理が表面に施された高分子材料から構成されることが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記親水性高分子材料は、セルロース、ナイロン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記高分子材料は、オレフィン系ポリマー、塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネートのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記親水化処理は、紫外線(UV)照射、プラズマ照射、オゾン酸化、コロナ放電、高圧放電、親水基のグラフト重合のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記セパレーターの厚さは、20μm~500μmの範囲であることが好ましい。
前記反応セル用セパレーターにおいて、前記セパレーターの気孔率は、10%~90%の範囲であることが好ましい。
本発明は、前記反応セル用セパレーターを備える、反応セルである。
本発明により、CO還元電気化学セル等の反応セルに用いても反応効率の低下を抑制することができる反応セル用セパレーター、およびそれを用いた反応セルを提供することができる。
本発明の実施形態に係る反応セル用セパレーターを用いた反応セルを備える反応デバイス(人工光合成装置)の構成の一例を示す概略構成図である。 (A)カチオン交換膜の測定結果であり、(a)はLSV測定結果、(b)は定電圧(1.95V)測定結果を示すグラフである。 (B)レーヨン不織布および(C-2)ビニロン不織布(BNF-2)の測定結果であり、(a)はLSV測定結果、(b)は定電圧(2V)測定結果を示すグラフである。 (C-1)ビニロン不織布(VN1060)の測定結果であり、(a)はLSV測定結果、(b)は定電圧(1.95V)測定結果を示すグラフである。 (C-3)ビニロン不織布(BNF-5)の測定結果であり、(a)はLSV測定結果、(b)は定電圧(1.95V)測定結果を示すグラフである。 (D)親水性ポリエチレン粉末焼結シート(親水性ポリエチレンシート)のLSV測定結果を示すグラフである。 超高分子量ポリエチレン多孔体フィルム((E)未処理および(F)親水化処理)の測定結果であり、(a)はLSV測定結果、(b)は定電圧(2.3V)測定結果を示すグラフである。 交点融着ポリプロピレンメッシュ((G)未処理および(H)親水化処理)の測定結果であり、(a)はLSV測定結果、(b)は定電圧(2V)測定結果を示すグラフである。 実験2におけるLSV測定結果を示すグラフである。 実験2における定電圧測定時の、(a)平均電流、(b)ギ酸生成速度、(c)ギ酸生成のファラデー効率を示すグラフである。 (I)セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(平均孔径1μm)、(J)セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(平均孔径0.1μm)の測定結果であり、(a)はLSV測定結果、(b)は定電圧(2.2V)測定結果を示すグラフである。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る反応セル用セパレーターは、容器中の液体内に2種類の異なる反応面を備え、反応によって少なくとも1方の反応面において気泡が発生し、少なくとも1方の反応面において生成した反応生成物が前記液体に溶解してもう1方の反応面へ前記液体中を伝搬する反応セルにおいて、前記2種類の異なる反応面の間に配置される。この反応セル用セパレーターは、前記液体との親和性を有する多孔性の高分子材料から構成されるか、前記液体との親和性を有するように表面処理が施された多孔性の高分子材料から構成される。
本発明者らの検討の結果、従来セパレーターとして用いられていたイオン交換膜は、イオン交換膜の中のイオン伝導に対する抵抗が大きいか、またはイオン交換膜の表面に気泡が付着して実効的な面積が小さくなるので、セパレーターとして反応セルに挿入することにより反応効率が低下すると考えられる。
本実施形態に係る反応セル用セパレーターは、気泡よりも孔径の小さい多孔性であるため、気泡の伝搬が抑制され、かつ、液体との親和性を有することから、溶解した反応生成物の液体中の伝搬はほとんど妨げられない。
気泡の伝搬を抑制することにより、1方の反応面にて発生した気体(例えばO)ともう1方の反応面にて発生した気体(例えばH,CO,CH)とを分離して取り出すことができ、1方の反応面にて発生した気体(例えばO)ともう1方の反応面にて発生した気体(例えばH,CO,CH)が混合して反応するのを抑制することができ、また、1方の反応面にて発生した気体(例えばO)がもう1方の反応面での反応を妨げるのを抑制することができる。溶解した反応生成物の液体の伝搬は妨げられないので、所望の反応は維持される。
セパレーターは、上記液体として水が用いられる場合、平滑表面の水の接触角が75°以下である親水性高分子材料から構成されるか、または、平滑表面の水の接触角が75°以下となる親水化処理が表面に施された高分子材料から構成されることが好ましい。セパレーターは、平滑表面の水の接触角が72°以下である親水性高分子材料から構成されるか、または、平滑表面の水の接触角が72°以下となる親水化処理が表面に施された高分子材料から構成されることがより好ましい。平滑表面の水の接触角が75°を超えると、親水性が不十分となり、溶解した反応生成物の液体中の伝搬が妨げられる場合がある。
セパレーターは、上記液体として水以外の液体、例えば、アセトニトリル、イオン液体が用いられる場合、平滑表面の液体の接触角が75°以下である親和性高分子材料から構成されるか、または、平滑表面の液体の接触角が75°以下となる親和化処理が表面に施された高分子材料から構成されることが好ましい。
セパレーターは、多孔性であるが、多孔体としては、球形または扁平粒子の結合体、不織布、メッシュの形態を含む。
親水性高分子材料としては、レーヨン繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、ポリノジック繊維等のセルロース;ナイロン繊維等のナイロン;アセテート繊維等の酢酸セルロース;ポリビニルアルコール;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩等のアクリル系ポリマー等が挙げられ、耐薬品性等の観点から、レーヨン繊維が好ましい。
親水化処理としては、紫外線(UV)照射、プラズマ照射、オゾン酸化、コロナ放電、高圧放電、親水基のグラフト重合等が挙げられ、大面積への処理が比較的容易である等の観点から、紫外線(UV)照射、プラズマ照射、オゾン酸化が好ましい。親水化処理としては、例えば、金澤,“超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン樹脂、フッ素樹脂などの接着性の改良”,日本接着学会誌,Vol. 46,No. 4,pp.151-157(2010)に記載の方法等が挙げられる。
親水化処理に用いられる疎水性の高分子材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート等が挙げられる。
セパレーターの厚さは、例えば、20μm~500μmの範囲であり、50μm~200μmの範囲であることが好ましい。セパレーターの厚さが20μm未満であると、強度が弱いので動作中に破損する場合があり、500μmを超えると、反応生成物の液体中の伝搬が妨げられる場合がある。
セパレーターの平均孔径は、例えば、0.1μm~200μmの範囲であり、0.5μm~50μmの範囲であることが好ましい。セパレーターの平均孔径が200μmを超えると、強度が弱いので動作中に破損する場合があり、0.1μm未満であると、反応生成物の液体中の伝搬が妨げられる場合がある。セパレーターの平均孔径は、パームポロメーターにより測定することができる。
セパレーターの気孔率は、10%~90%の範囲であり、20%~80%の範囲であることが好ましい。セパレーターの気孔率が90%を超えると、強度が弱いので動作中に破損する場合があり、10%未満であると、反応生成物の液体中の伝搬が妨げられる場合がある。セパレーターの気孔率は、水銀ポロシメーターにより測定することができる。
[反応セル]
本発明の実施形態に係る反応セルは、上記反応セル用セパレーターを備える反応セルである。
本実施形態に係る反応セルは、例えば、容器中の液体内に2種類の異なる反応面を備え、反応によって少なくとも1方の反応面において気泡が発生し、少なくとも1方の反応面において生成した反応生成物が前記液体に溶解してもう1方の反応面へ前記液体中を伝搬する反応セルであり、前記2種類の異なる反応面の間に上記反応セル用セパレーターが配置される。
本実施形態に係る反応セルは、例えば、反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、アノードまたは光アノード、カソードまたは光カソードの少なくとも一方において気泡が発生し、アノードまたは光アノード、カソードまたは光カソードの少なくとも一方において生成した反応生成物が液体に溶解してもう一方へ前記液体中を伝搬し、アノードまたは光アノードとカソードまたは光カソードとの間に上記反応セル用セパレーターが配置される。
本実施形態に係る反応セルは、例えば、反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、アノードまたは光アノード、カソードまたは光カソードの少なくとも一方において気泡が発生し、アノードまたは光アノード、カソードまたは光カソードの少なくとも一方において生成した反応生成物が前記液体に溶解してもう一方へ前記液体中を伝搬し、前記液体は、水が溶媒であり、アノードまたは光アノードとカソードまたは光カソードとの間に上記反応セル用セパレーターが配置される。
本実施形態に係る反応セルは、例えば、反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、前記液体は、二酸化炭素を溶解させた水を溶媒とする電解液であり、アノードまたは光アノードにおいて酸素の気泡が発生し、カソードまたは光カソードにおいて二酸化炭素が還元され、アノードまたは光アノードにおいて水の酸化反応により生成した反応生成物であるHがカソードまたは光カソードへ電解液中を伝搬し、アノードまたは光アノードとカソードまたは光カソードとの間に上記反応セル用セパレーターが配置される。
本実施形態に係る反応セルは、電気化学セルまたは光電気化学セルには限定されず、その他の例としては、例えば、2種類の異なる反応面の間の酸化還元反応等が挙げられる。
本実施形態に係る反応セルは、例えば、還元反応用電極(カソード)と、酸化反応用電極(アノード)と、上記セパレーターを組み合わせて構成される反応セルである。反応セルは、例えば、二酸化炭素還元装置とすることができ、その二酸化炭素還元装置と、太陽電池セルと、を組み合わせた反応デバイスである人工光合成装置とすることもできる。
二酸化炭素還元装置は、例えば、二酸化炭素の還元反応を進行させる還元反応用電極と、還元反応用電極と電気的に接続され、酸化反応を生起する酸化反応用電極と、が離間されて対向する位置に配置され、還元反応用電極と酸化反応用電極との間に上記セパレーターが配置され、還元反応用電極と酸化反応用電極との間を、反応基質(二酸化炭素)を含む電解液が流れる流路を有する電気化学反応装置である。二酸化炭素還元装置は、例えば、二酸化炭素の還元反応を進行させる還元反応用電極と、還元反応用電極と電気的に接続され、酸化反応を生起する酸化反応用電極と、を有し、還元反応用電極および酸化反応用電極が反応基質(二酸化炭素)を含む電解液に浸漬され、還元反応用電極と酸化反応用電極との間に上記セパレーターが配置されている装置であってもよい。
人工光合成装置は、上記二酸化炭素還元装置と、二酸化炭素還元装置の還元反応用電極および酸化反応用電極に供給される電力を生成する太陽電池セルと、を備える装置である。
図1は、上記セパレーターを用いた反応セルを備える反応デバイスの一例として人工光合成装置の構成の一例を示す概略構成図である。人工光合成装置1は、二酸化炭素の還元反応を進行させる還元反応用電極10と、酸化反応を生起する酸化反応用電極12と、が離間されて対向する位置に配置され、還元反応用電極10と酸化反応用電極12との間にセパレーター14が配置され、還元反応用電極10と酸化反応用電極12との間を、反応基質を含む電解液が流れる流路16を有する二酸化炭素還元装置3と、二酸化炭素還元装置3の還元反応用電極10および酸化反応用電極12に供給される電力を生成する太陽電池セル20と、を備える装置である。
人工光合成装置1は、流路入口から還元反応用電極10と酸化反応用電極12との間の流路16に二酸化炭素等の反応基質を含む電解液が導入されることによって機能する。電解液は流路出口から排出される。酸化反応用電極12においては、水(HO)が酸化されて酸素(1/2O)が得られるとともに、電子が生成する。還元反応用電極10においては、酸化反応により生成する電子を受け取ることによって、例えば二酸化炭素が還元されてギ酸(HCOOH)等が生成される。
(還元反応用電極)
還元反応用電極(カソード)10は、還元反応によって物質を還元するために利用される電極である。還元反応用電極10は、例えば、基板上に順に形成される導電層および導電体層を含んで構成される。
基板は、電極を構造的に支持する部材である。基板は、特に材料が限定されるものではないが、例えば、ガラス基板等が挙げられる。基板は、例えば、金属または半導体を含むものとしてもよい。基板として用いられる金属は、特に限定されるものではないが、例えば、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)等が挙げられる。基板として用いられる半導体は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、シリコン(Si)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タンタル(Ta)等が挙げられる。基板を金属または半導体を含むものとした場合、導電層および導電体層と基板との間には絶縁層を形成してもよい。絶縁層は、特に限定されるものではないが、半導体の酸化物、窒化物や樹脂等が挙げられる。金属基板と導電層および導電体層とが電気的に直接接続されている構成としてもよい。
基板は、実質的にチタン(Ti)からなるTi基板であってもよい。Ti基板の表面には、不動態層が形成されていてもよい。不動態層の厚みは、例えば、10nm以下である。
Ti基板は、水素(H)生成過電圧が高いので、CO還元等の使用条件ではHがほとんど生成されない。Ti基板は、表面に不動態層が形成されるので耐食性に優れる。かつガラスに比べて軽量、かつ形状加工が容易であり、貴金属に比べて低コストであるという特長がある。
基板は、高比表面積を有する等の点から、カーボン材料を含んで構成されてもよい。カーボン材料は、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンクロス、カーボンペーパー等が挙げられる。
導電層は、還元反応用電極10における集電を効果的にするために設けられる。導電層は、特に限定されるものではないが、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電層等が挙げられる。特に、熱的および化学的な安定性を考慮すると、フッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いることが好適である。
導電体層は、還元触媒機能を有する材料を含む導電体を含んで構成される。導電体は、カーボン材料(C)を含む材料を含んで構成することができる。カーボン材料の構造体の単体のサイズが1nm以上1μm以下であることが好適である。カーボン材料は、例えば、マルチウォール・カーボンナノチューブ(MWCNTs)等のカーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイトの少なくとも1つ等が挙げられる。グラフェンおよびグラファイトであればサイズが1nm以上1μm以下であることが好適である。カーボンナノチューブであれば直径が1nm以上40nm以下であることが好適である。導電体は、例えば、エタノール等の液体に混ぜ合わせたカーボン材料をスプレーで塗布し、加熱することによって形成することができる。スプレーの代わりに、スピンコートによって塗布してもよい。また、スピンコートを用いず、直接溶液を滴下して乾かして塗布してもよい。
還元触媒機能を有する材料として、錯体触媒等を用いることができる。錯体触媒は、例えば、ルテニウム錯体とすることが好適である。錯体触媒は、例えば、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(MeCN)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(CHCN)Cl]等が挙げられる。さらに、ルテニウム錯体は、Ru錯体モノマーと重合開始剤(例えばピロール)、触媒(例えば塩化鉄)を含むRu錯体が高分子化(ポリマー)された状態のRu錯体ポリマーであってもよい。
還元触媒の担持は、例えば、金属錯体(触媒)をアセトニトリル(MeCN)溶液に溶解した液(例えば、Ru錯体ポリマー溶液)をカーボンペーパー、カーボンクロス等のカーボン系材料の上に塗布、乾燥することで作製することができる。また、還元触媒の担持は、電解重合法により行うこともできる。例えば、作用極としてカーボン系材料の電極、対極にフッ素含有酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基板、参照電極にAg/Ag電極を用い、還元触媒を含む電解液中においてAg/Ag電極に対して負電圧となるようにカソード電流を流した後、Ag/Ag電極に対して正電位となるようにアノード電流を流すことによりカーボン系材料に還元触媒で担持することができる。電解質の溶液には、例えば、アセトニトリル(MeCN)、電解質には、例えば、Tetrabutylammoniumperchlorate(TBAP)を用いることができる。
このように形成された導電体層は、還元反応用電極10を構成する導電層上に担持、塗布または貼付される。これにより、基板上に、順に導電層および導電体層を有する還元反応用電極10が形成される。このとき、接着剤として、導電性のカーボン素材、例えばグラファイトまたはグラフェンを含むポリマー(例えば、アクリルポリマー結合剤)を含むカーボン系接着剤を用いることが好適である。接着層には、例えば、少なくとも直径が1μm以上100μm以下のサイズのグラファイトまたはグラフェンを含むことが好適である。
(酸化反応用電極)
酸化反応用電極(アノード)12は、酸化反応によって物質を酸化するために利用される電極である。酸化反応用電極12は、例えば、基板上に導電層が形成された基板とその上に形成された酸化触媒層とを含んで構成される。
基板は、酸化反応用電極12を構造的に支持する部材である。基板は、特に材料が限定されるものではないが、例えば、ガラス基板やプラスチック等としてもよい。
基板は、耐食性を有する金属を表面とする導電性基板であってもよく、例えば、耐食性を有する金属からなる基板、または下地基板の表面に耐食性を有する金属層を形成してなる基板等が挙げられる。ここで、「耐食性を有する金属」とは、pH4以上の電解液中で、かつ水の酸化還元電位以上の電位で腐食しない金属を指す。
耐食性を有する金属としては、高い導電性、高い耐食性等の点で、Ti、Au、Pt、Ru、Ir、Sn、Rhからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、特に、Tiを含むことが好ましい。基板としては、実質的にチタン(Ti)からなるTi基板であることが特に好ましい。これによって、軽量化、低コスト化が可能であり、高性能、耐腐食性、かつ加工性に優れるという利点がある。
下地基板の表面に耐食性を有する金属層を形成する方法としては、特に限定されないが、電気めっき、溶融めっき、真空蒸着、スパッタリング等が挙げられる。これらの中では、金属層の薄膜化が容易である等の点で、スパッタリングが好ましい。下地基板としては、特に限定されるものではなく、ガラス基板、プラスチック基板、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等を被覆したガラス基板やプラスチック基板等が挙げられる。また、下地基板は、pH4以上の電解液中で、かつ水の酸化還元電位以上の電位で腐食しないまたは腐食する金属基板でもよく、例えば、Ti、Au、Pt、Ru、Ir、Sn、Rh、Cu、Ag等の基板等でもよい。
導電層は、酸化反応用電極12における集電を効果的にするために設けられる。導電層は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電層等が挙げられる。特に、熱的および化学的な安定性を考慮すると、フッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いることが好適である。
酸化触媒層は、酸化触媒機能を有する材料を含んで構成される。酸化触媒機能を有する材料としては、例えば、酸化イリジウム(IrOx)、酸化ルテニウムを含む材料等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を混合してもよい。酸化イリジウムや酸化ルテニウムは、ナノコロイド溶液として導電層または基板の表面上に担持することができる(T.Arai et.al, Energy Environ. Sci 8, 1998 (2015)参照)。
例えば、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイドを合成する。2mMの塩化イリジウム酸(IV)カリウム(KIrCl)水溶液50mLに10wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を加えてpH13に調整した黄色溶液を、ホットスターラを用いて90℃で20分加熱する。これによって得られた青色溶液を氷水で1時間冷却する。そして、冷やした溶液(20mL)に3M硝酸(HNO)を滴下してpH1に調整し、80分撹拌し、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液を得る。さらに、この溶液に1.5wt%NaOH水溶液(1-2mL)を滴下してpH12に調整する。このようにして得られた酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液を、導電層上にpH12で塗布し、乾燥炉内において60℃で40分間保持して乾燥させる。乾燥後、析出した塩を超純水で洗浄し、酸化反応用電極12を形成することができる。なお、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液の塗布および乾燥を複数回繰り返してもよい。
電解液に含まれる反応基質は、例えば、炭素化合物が挙げられ、例えば、二酸化炭素(CO)とすることができる。また、電解液は、リン酸緩衝水溶液やホウ酸緩衝水溶液とすることが好適である。具体的な構成例では、例えば、二酸化炭素(CO)飽和リン酸緩衝液のタンクを設け、ポンプによってこの溶液を還元反応用電極10と酸化反応用電極12との間に設けられた流路16に供給し、還元反応によって生じたギ酸(HCOOH)や酸素(O)等を外部の燃料タンクに回収すればよい。
窓材22は、太陽電池セル20を保護する部材である。太陽電池セル20に対しては、受光面側に窓材22を設けることが好適である。窓材22は、太陽電池セル20において発電に寄与する波長の光を透過する部材とし、例えば、ガラス、プラスチック等とすることができる。
還元反応用電極10、酸化反応用電極12、太陽電池セル20および窓材22は、枠材24によって構造的に支持されている。枠材24は、還元反応用電極10および酸化反応用電極12を支持するとともに、電解液が流れる流路16を構成する部材である。枠材24は、電気化学反応装置をセルとして構成するために必要な機械的な強度を備える材料で構成される。例えば、枠材24は、金属、プラスチック等によって構成することができる。
還元反応用電極10と酸化反応用電極12との間を電気的に接続し、適切なバイアス電圧を印加した状態とする。バイアス電圧を印加する手段は、特に限定されるものではなく、化学電池(一次電池、二次電池等を含む)、定電圧源、太陽電池セル等が挙げられる。このとき、酸化反応用電極12に正極が接続され、還元反応用電極10に負極が接続される。
図1のように、バイアス電圧を印加する手段として太陽電池セル20を用いることにより、二酸化炭素還元装置等の電気化学反応装置と、還元反応用電極および酸化反応用電極に供給される電力を生成する太陽電池セルと、を備える人工光合成装置とすることができる。バイアス電圧を印加する手段として太陽電池セルを用いる場合、太陽電池セルは、例えば、酸化反応用電極および還元反応用電極に隣接して配置することができる。例えば、還元反応用電極の背面に太陽電池セルを配置し、太陽電池セルの正極を酸化反応用電極に接続し、負極を還元反応用電極に接続すればよい。
二酸化炭素(CO)からギ酸(HCOOH)等を合成する場合、水(HO)は酸化されて二酸化炭素(CO)に電子とプロトンを供給する。pH7付近では水(HO)の酸化電位は0.82V、還元電位は-0.41V(いずれも標準水素電極(NHE))である。また、二酸化炭素(CO)から一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メチルアルコール(CHOH)への還元電位はそれぞれ-0.53V,-0.61V,-0.38Vである。したがって、酸化電位と還元電位の電位差は1.20~1.43Vである。炭素化合物である二酸化炭素(CO)を還元する場合、太陽電池セルは、例えば4~6枚の結晶系シリコン太陽電池を直接に接続した構成やアモルファスシリコン系3接合太陽電池とすることが好適である。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実験1]
水の電気分解セルにセパレーターを挿入した。セルの動作の際には、アノードからはO、カソードからはHの気泡がそれぞれ発生し、アノードにて生成したHがカソードへ電解液中を伝搬して、カソードでのH発生反応に用いられる。
10cm角のアノード、カソードを間隔12mmで対向させ、その間にセパレーター試料を配置したセルを構成し、0.4Mリン酸緩衝水溶液(KHPO+KHPO)で満たした。アノードにはIrOx(日進化成、アノデック100)を、カソードにはPt(日進化成、アノデック400)を用い、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)測定(走査速度2mV/s)および定電圧測定を行った。試料(または試料群)毎に、セパレーターなしの場合の測定も併せて行い、比較を行った。用いたセパレーター試料は以下の通りである。
[比較例1]
(I)プロトン伝導フィルム
(A)カチオン交換膜、厚さ220μm(DuPont、ナフィオン117)
[実施例1~8、参考例9、比較例2,3]
(II)多孔体フィルム
(B)レーヨン不織布、厚さ110μm、平均孔径40μm(推定)(アドバンテック、T-220)・・・実施例1
(C-1)ビニロン不織布、厚さ20μm(廣瀬製紙、VN1060)・・・実施例2
(C-2)ビニロン不織布、厚さ90μm(クラレ、BNF-2)・・・実施例3
(C-3)ビニロン不織布、厚さ190μm(クラレ、BNF-5)・・・実施例4
(D)親水性ポリエチレン粉末焼結シート、厚さ1mm、気孔率49%、平均孔径約100μm(推定)(旭化成、サンファインAQ-200)・・・実施例5
(E)超高分子量ポリエチレン多孔体フィルム、厚さ100μm、気孔率30%、平均孔径13μm(日東電工、サンマップLC)・・・比較例2
(F)親水化超高分子量ポリエチレン多孔体フィルム、(E)のフィルムにUVオゾン照射によって親水化処理を施したもの・・・実施例6
(G)交点融着ポリプロピレンメッシュ、50メッシュ、線径136μm(厚さに相当)、目開き370μm(孔径に相当)、開口率53%(気孔率に相当)(くればぁ)・・・比較例3
(H)親水化ポリプロピレンメッシュ、(G)のメッシュにUVオゾン照射によって親水化処理を施したもの・・・実施例7
(I)セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター、厚さ150μm、気孔率80%、平均孔径1μm(アドバンテック東洋、A100A142C)・・・実施例8
(J)セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター、厚さ110μm、気孔率65%、平均孔径0.1μm(アドバンテック東洋、A010A142C)・・・参考例9
なお、親水化処理は、UVオゾンクリーナー(日本レーザ電子株式会社、NL-UV253)を用い、純酸素充填、処理時間20分の条件で、まず試料の片面より、その後、もう一方の片面より行った(合計処理時間:40分)。
図2に、(A)カチオン交換膜(比較例1)についての測定結果を示す。図2(a)は、LSV測定結果であり、図2(b)は、定電圧(1.95V)測定結果である。LSV、定電圧測定ともに、セパレーターとしてカチオン交換膜を挿入すると、セパレーターなしに比べて電流が小さくなったので、Hの伝搬が妨げられることがわかった。測定中には、カチオン交換膜の表面に気泡が付着するのが観測された。その結果、実効的な面積が低下するので電流が小さくなると考えられる。
図3に、(B)レーヨン不織布(実施例1)および(C-2)ビニロン不織布(BNF-2、実施例3)についての測定結果を示す。両者は、ほぼ同じ厚さである。図3(a)は、LSV測定結果であり、図3(b)は、定電圧(2V)測定結果である。
図4、図5に、厚さの異なるビニロン不織布についての測定結果を示す。図4は、(C-1)ビニロン不織布(VN1060、実施例2)、図5は、(C-3)ビニロン不織布(BNF-5、実施例4)についての測定結果である。図4(a)、図5(a)は、LSV測定結果であり、図4(b)、図5(b)は、定電圧(1.95V)測定結果である。
LSV測定結果では、レーヨン不織布、ビニロン不織布、およびセパレーターなしの測定結果はほぼ重なっていて区別がつかず、いずれもセパレーターなしの場合と同等であった。定電圧測定の結果には違いが見られた。レーヨンの場合はセパレーターなしと同等、すなわちレーヨンはHの伝搬を妨げなかった。一方、ビニロンの場合はセパレーターなしに比べて動作中の電流の低下量が大きかったが、その違いはわずかであった。すなわち、ビニロンのHの伝搬への影響はわずかであった。セパレーターはO,Hの気泡に晒されているにもかかわらず、レーヨン、ビニロンともに気泡の付着は目視では確認されなかった。
図6に、(D)親水性ポリエチレン粉末焼結シート(実施例5)についてのLSV測定結果を示す。セパレーターなしに比べて電流がやや低下した。親水性であるにもかかわらず、レーヨン、ビニロン(190μm以下)に比べて厚いため(厚さ1mm)、Hの伝搬がやや妨げられたと考えられる。
図7に、(E)未処理(比較例2)および(F)親水化処理を施した(実施例6)超高分子量ポリエチレン多孔体フィルムについての測定結果を示す。図7(a)は、LSV測定結果であり、親水化処理品とセパレーターなしの測定結果はほぼ重なっていて区別がつかなかった。図7(b)は、定電圧(2.3V)測定結果であり、親水化処理品のLSV測定結果はセパレーターなしと同等であった。これに対し、未処理品は電流が大きく低下、すなわち、Hの伝搬が著しく妨げられたので、セパレーターは親水性の材料であるか、または疎水性材料の場合には親水化処理が必須であることがわかった。一方、定電圧測定の際には、セパレーターなしに比べて親水化処理品の方が動作中の電流の低下がわずかにあるものの、その違いはわずかであった。すなわち、Hの伝搬への影響はわずかであった。
図8に、(G)未処理(比較例3)および(H)親水化処理を施した(実施例7)交点融着ポリプロピレンメッシュについての測定結果を示す。図8(a)は、LSV測定結果であり、図8(b)は、定電圧(2V)測定結果である。電流のスパイク状の増大とその後の急激な減少は、振動のために電極の気泡が一部除かれたために生じたと考えられる。未処理品は、表面が疎水性であるため気泡の付着が著しく、その結果、実効的な開口面積が小さくなるので、Hの伝搬が著しく妨げられ、その結果、電流が低下したと考えられる。親水化処理品は、Hの伝搬への影響はわずかになり、セパレーターなしに比べてわずかに低い程度にまで電流は増大したと考えられる。この結果を反映し、図8(b)より明らかなように、定電圧測定時の電流もセパレーターなしに比べて小さいものの、その違いはわずかであった。
図11に、セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(実施例8,参考例9)についての測定結果を示す。図11(a)は、LSV測定結果であり、図11(b)は、定電圧(2.2V)測定結果である。LSV測定結果、定電圧測定共に、セパレーターなし、実施例8、参考例9の3つの測定結果の大部分がほぼ重なっていて区別がつかず、セパレーターありの結果はセパレーターなしと同等であった。すなわち、Hの伝搬への影響はわずかであった。セパレーターはO、Hの気泡に晒されているにもかかわらず、泡の付着は目視では確認されなかった。電流のスパイク状の増大とその後の急激な減少は、振動のために電極の気泡が一部除かれたために生じたと考えられる。
これらの実験結果より、実施例のセパレーターは、アノードにて発生するOとカソードにて発生するHを分離しながらも、電解液中のHの伝搬をほとんど妨げないので、水の電気分解反応効率に悪影響をほとんど与えないことがわかった。
[実験2]
COを還元してギ酸を生成する電気化学セルにセパレーターを挿入した。セルの動作の際には、アノードからはOの気泡が発生する。カソードからの主な生成物はギ酸であるが、わずかながらもCO,Hの気泡が発生する。アノードにて発生したHがカソードへ電解液中を伝搬し、カソードでのギ酸生成反応に用いられる。10cm角(有効サイズは9cm角)のアノード、カソードを間隔12mmで対向させ、その間にセパレーター試料を配置したセルを構成した。
アノードには、IrOx(日進化成、アノデック100)を用いた。カソードには、カーボンペーパー/マルチウォールカーボンナノチューブ/Ru錯体ポリマー(CP/MWCNTs/RuCP)シートを、グラファイト系接着剤(導電性のグラファイトとアクリルポリマー結合剤を含む)を用いてTi基板に貼り付けたものを用いた。なお、CP/MWCNTs/RuCPシートは、溶媒にマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNTs)を分散させたインクを用い、カーボンペーパー(CP)にディップ塗布、乾燥することによって、CP/MWCNTsシートを作製し、その後、CP/MWCNTsシートにRu錯体ポリマー溶液を用いてRu錯体ポリマーを担持させて作製した。セパレーターには、超高分子量ポリエチレン多孔体フィルム(厚さ100μm、気孔率30%、平均孔径13μm、日東電工、サンマップLC)にUVオゾン照射親水化処理を施したもの(実験1の(F))を用いた。
電解液には、COをバブリングして飽和溶解させた0.4Mリン酸緩衝電解水溶液(KHPO+KHPO)を用いた。リニアスイープボルタンメトリー(LSV)測定(走査速度2mV/s)を行った。さらに、1.7Vまたは1.8Vの定電圧を30分間印加し、電流を測定するとともに、終了時のギ酸濃度をイオンクロマトグラフィにより測定した。セパレーターあり、セパレーターなしの評価を交互に行い、比較した。
図9に、LSV測定結果を示す。セパレーターあり、セパレーターなしの結果がほぼ重なっていて区別がつかず、セパレーターあり、セパレーターなしの差はほとんど見られなかった。
図10に、定電圧測定時の平均電流、ギ酸生成速度、ギ酸生成のファラデー効率を示す。定電圧測定時の、図10(a)は、平均電流、図10(b)は、ギ酸生成速度、図10(c)は、ギ酸生成のファラデー効率である。IT-1~IT-9は測定順序である。印加電圧1.7Vのときは、何れの値も、セパレーターの有無にかかわらず、測定を繰り返す毎に徐々に低下した。印加電圧1.8Vの場合は、平均電流はほぼ一定であったが、ギ酸生成速度とファラデー効率は徐々に低下した。ただし、セパレーターあり、セパレーターなしの影響はほとんど見られなかった。
これらの実験結果より、実施例のセパレーターは、アノードにて発生するOとカソードにて発生するCO,Hを分離しながらも、電解液中のHの伝搬をほとんど妨げないので、ギ酸生成効率に悪影響をほとんど与えないことがわかった。
[実験3]
表面が平滑なポリエチレン板、および表面が平滑なポリプロピレン板に、実験1,2と同じUVオゾン照射親水化処理を施した。処理の前後で、イオン交換水を滴下したときの接触角を測定したところ、表1の通りであり、実験1,2で施した親水化処理によって水の接触角が75°以下に低下したことがわかる。
Figure 0007327341000001
以上のように、実施例のセパレーターは、CO還元電気化学セル等の反応セルに用いても反応効率の低下を抑制することができた。
1 人工光合成装置、3 二酸化炭素還元装置、10 還元反応用電極、12 酸化反応用電極、14 セパレーター、16 流路、20 太陽電池セル、22 窓材、24 枠材。

Claims (11)

  1. 容器中の液体内に2種類の異なる反応面を備え、反応によって少なくとも1方の反応面において気泡が発生し、少なくとも1方の反応面において生成した反応生成物が前記液体に溶解してもう1方の反応面へ前記液体中を伝搬する反応セルにおける、前記2種類の異なる反応面の間に配置される、反応セル用のセパレーターであって、
    前記液体との親和性を有する多孔性の高分子材料から構成されるか、前記液体との親和性を有するように表面処理が施された多孔性の高分子材料から構成され、
    前記セパレーターの平均孔径は、μm~200μmの範囲であることを特徴とする反応セル用セパレーター。
  2. 請求項1に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記反応セルは、前記反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、
    前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において前記気泡が発生し、
    前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において生成した前記反応生成物が前記液体に溶解してもう一方へ前記液体中を伝搬することを特徴とする反応セル用セパレーター。
  3. 請求項1または2に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記反応セルは、前記反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、
    前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において前記気泡が発生し、
    前記アノードまたは光アノード、前記カソードまたは光カソードの少なくとも一方において生成した前記反応生成物が前記液体に溶解してもう一方へ前記液体中を伝搬し、
    前記液体は、水が溶媒であり、
    前記セパレーターは、多孔性の親水性高分子材料から構成されるか、親水化処理が表面に施された多孔性の高分子材料から構成されることを特徴とする反応セル用セパレーター。
  4. 請求項1または2に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記反応セルは、前記反応面として、アノードまたは光アノードと、カソードまたは光カソードとを備えた電気化学セルまたは光電気化学セルであり、
    前記液体は、二酸化炭素を溶解させた水を溶媒とする電解液であり、
    前記アノードまたは光アノードにおいて酸素の気泡が発生し、前記カソードまたは光カソードにおいて二酸化炭素が還元され、
    前記アノードまたは光アノードにおいて前記水の酸化反応により生成した前記反応生成物であるHが前記カソードまたは光カソードへ前記電解液中を伝搬し、
    前記セパレーターは、多孔性の親水性高分子材料から構成されるか、表面に親水化処理が施された多孔性の高分子材料から構成されることを特徴とする反応セル用セパレーター。
  5. 請求項3または4に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記セパレーターは、平滑表面の水の接触角が75°以下である親水性高分子材料から構成されるか、または、平滑表面の水の接触角が75°以下となる親水化処理が表面に施された高分子材料から構成されることを特徴とする反応セル用セパレーター。
  6. 請求項3~5のいずれか1項に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記親水性高分子材料は、セルロース、ナイロン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする反応セル用セパレーター。
  7. 請求項3~5のいずれか1項に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記高分子材料は、オレフィン系ポリマー、塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネートのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする反応セル用セパレーター。
  8. 請求項3~5,7のいずれか1項に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記親水化処理は、紫外線(UV)照射、プラズマ照射、オゾン酸化、コロナ放電、高圧放電、親水基のグラフト重合のうちの少なくとも1つであることを特徴とする反応セル用セパレーター。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記セパレーターの厚さは、20μm~500μmの範囲であることを特徴とする反応セル用セパレーター。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の反応セル用セパレーターであって、
    前記セパレーターの気孔率は、10%~90%の範囲であることを特徴とする反応セル用セパレーター。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の反応セル用セパレーターを備えることを特徴とする反応セル。
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