以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
1.画像形成装置
本実施例における電子写真画像形成装置の全体構成について説明する。図1は、実施例1の画像形成装置100の概略断面図である。実施例1の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザプリンタである。画像形成装置100は、画像情報にしたがって、記録材S(たとえば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することが出来る。画像情報は、画像形成装置100に接続された画像読み取り装置(不図示)、或いは、画像形成装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器300から、画像形成装置100に入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。
実施例1では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に併設された4個のドラム型の電子写真感光体(以下、感光体1)を有し、感光体1と画像形成部が一体化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。
静電潜像を担持する像担持体としての感光体1は、駆動手段(不図示)により回転駆動される。帯電部材たる帯電ローラ2は、導電性芯金と導電性ゴム層からなる単層ローラであって、外径φ7.5mm、体積抵抗率103~106Ω・cmである。そして、後述する高圧電源としての帯電電圧印加部である帯電高圧71によって、帯電ローラ2に-1000Vの帯電電圧を印加することで、感光体1の表面は-500Vに一様に帯電される。帯電ローラ2にはVd+VthからなるDC(直流)電圧が印加されており、放電によって感光体1の表面上を帯電電位Vdで一様に帯電する。この時のVdを暗部電位といい、-500Vである。Vthは放電開始電圧であり、印加する帯電電圧が小さいときは、感光体1の表面上の表面電位は放電によっては増加しないが、放電開始電圧Vthから放電により表面電位が増加し始める。つまり、本実施例における放電開始電圧Vthは-500Vである。
帯電ローラ2によって感光体1の表面を帯電した後、感光体1の表面には第1の露光部としての露光ユニット30からレーザ光が照射される。露光ユニット30は、画像情報に基づきレーザを照射して、感光体1の表面上に静電潜像を形成する露光手段である。レーザ光が照射された感光体1の表面は明部電位であるVlとして-100Vへと表面電位が変化し、静電潜像が形成される。
図2は、感光体1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た実施例1のプロセスカートリッジ7の断面図である。プロセスカートリッジ7は、現像ユニット3と感光体ユニット13によって構成されている。現像ユニット3には、現像部材たる現像ローラ4、トナー供給部材たるトナー供給ローラ(以下、「供給ローラ」という)5がそれぞれ配置されている。現像ローラ4は図2中矢印D方向に、供給ローラ5は図2中矢印R方向に、それぞれ回転を始める。そして、現像電圧印加部としての現像高圧72から現像ローラ4に現像電圧として-300Vの電圧が印加されることで、感光体1の表面上に形成された静電潜像、すなわち、上記のVl部に対して現像ローラ4によって現像剤(トナー)が供給されて現像される。
感光体1の表面に現像された現像剤像(トナー像)は、図1に示した中間転写ベルト31に転写される。各画像形成部の感光体1に対向して、感光体1上のトナー像を記録材Sに転写するための中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト31は、各画像形成部の感光体1に当接し、図1中矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。
中間転写ベルト31の内周面側には、各感光体1に対向するように、一次転写手段としての転写部材たる一次転写ローラ32がそれぞれ配置されている。そして、一次転写ローラ32に、一次転写電圧印加部としての一次転写電圧電源(一次転写高圧)73から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、感光体1上のトナー像が中間転写ベルト31上に転写(一次転写)される。本実施の形態におけるトナーの極性は、正規極性を負極性としている。したがって、一次転写電圧として正極性の電圧が印加されることで一次転写を行うことが出来る。
また、中間転写ベルト31の外周面側において二次転写手段としての二次転写ローラ33が配置されている。そして、二次転写ローラ33に、二次転写電圧印加部としての二次転写電圧電源(二次転写高圧)74から、トナーの極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト31上のトナー像が記録材Sに転写(二次転写)される。例えば、フルカラー画像形成時には、上述のプロセスが、画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次行われ、中間転写ベルト31上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて一次転写される。その後、中間転写ベルト31の移動と同期して記録材Sが二次転写部へと搬送される。そして、記録材Sを介して中間転写ベルト31に当接している二次転写ローラ33の作用によって、中間転写ベルト31上の4色トナー像は、一括して記録材S上に二次転写される。
トナー像が転写された記録材Sは、定着装置34に搬送される。定着装置34において記録材Sに熱および圧力を加えることで、記録材Sにトナー像が定着され、記録材Sは画像形成装置100の外に排出される。
一方、中間転写ベルト31にトナーを転写した後の感光体1の表面電位は、一次転写電圧を受けたことにより不均一となっている。そこで、第2の露光部としての前露光手段である前露光ユニット27で感光体1の表面を全面露光(全面光照射)することにより、前回の画像形成によって不均一となった感光体1の表面電位を一様に均す。即ち、感光体1の表面の残留電荷を除去するように感光体1の表面に光を照射する。前露光ユニット27は、中間転写ベルト31と感光体1の当接位置である転写部よりも感光体1の回転方向下流側で、帯電ローラ2と感光体1の当接位置である帯電部よりも感光体1の回転方向上流側の間に配設され、その対向部である感光体1の表面を露光する。前露光ユニット27の光源としてはLED、ハロゲンランプ等を用いることが出来る。使用する光源は特に限定されないが、駆動電圧が低く、また装置の小型化が容易という観点から、LEDを用いるのが好ましいため、本実施例では、前露光光源としてLEDを用いた。
又、一次転写ローラ32によって転写されずに感光体1の表面に残存したトナーは、感光体1と接触するクリーニングブレード8によって感光体1の表面から掻き取られ、クリーニングブレード8の下方に設けられた廃トナー収容室9へ収容される。二次転写ローラ33で記録材Sに転写されず、中間転写ベルト31上に残留したトナーはクリーニング装置としての中間転写体用クリーニング装置35に搬送され、除去される。
2.画像形成装置の制御様態
図3は、本実施例における画像形成装置100の要部の概略制御態様を示すブロック図である。図4は本実施例の特徴である、帯電電流検知手段としての電流検知部36の制御に関わる態様を示した図である。制御部202は画像形成装置100の動作を制御する手段であり、各種の電気的情報信号の授受をする。また、各種のプロセス機器やセンサから入力する電気的情報信号の処理、各種のプロセス機器への指令信号の処理を行う。コントローラ200は、ホスト装置との間で各種の電気的な情報の授受をすると共に、画像形成装置100の画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って、インターフェース201を介して制御部202で統括的に制御する。制御部202は、様々な演算処理を行う中心的素子であるCPU155を有し、記憶素子であるRAM、ROM33や記憶手段としてのメモリ15などと接続されて構成される。その他、後述する金属石鹸塗布動作の実行可否を帯電電圧印加時に流れる帯電電流値に応じて判定するための判定部156が設けられている。RAMには、センサの検知結果、カウンタのカウント結果、演算結果などが格納され、ROM33には制御プログラム、予め実験などにより得られたデータテーブルなどが格納されている。制御部202には、画像形成装置100における各制御対象、センサ、カウンタなどが接続されている。制御部202は、各種の電気的情報信号の授受や、各部の駆動のタイミングなどを制御して、所定の画像形成シーケンスの制御などを行う。例えば、感光体1の表面にトナー像を形成するために以下の高圧電源ならびに装置を制御する。帯電電源としての帯電高圧71、現像電源としての現像高圧72、トナー供給電圧を供給する供給ローラ5の電源としての供給高圧75、トナー規制部材たる現像ブレード6の電源としての現像ブレード高圧76、露光ユニット30などの制御を行う。さらに、記録材Sにトナー像を形成するための、一次転写電源としての一次転写高圧73、二次転写電源としての二次転写高圧74、転写部を通過した感光体1の表面を露光する前露光ユニット27などの制御を行う。その他、現像ローラ4と感光体1の当接離間を司る接離機構50の制御を行う。本実施例において、制御部202は、詳しくは後述する金属石鹸塗布動作を行うために、上記高圧などを制御する。
本実施例では、プロセスカートリッジ7に記憶部としてのメモリ15を設ける。メモリ15としては、例えば、接触不揮発性メモリ、非接触不揮発性メモリ、電源を有する揮発性メモリなど、任意の形態を用いることが出来る。実施例1では、非接触不揮発性メモリ15がプロセスカートリッジ7に搭載されている。非接触不揮発性メモリ15は、メモリ側の情報伝達手段であるアンテナ(図示せず)を有し、無線で画像形成装置100本体が備えたCPU155と通信することで、情報の読み出し及び書き込みが可能である。実施形態1では、CPU155は画像形成装置100本体側の情報伝達手段、メモリ15の情報の読み書き手段の機能を備えている。このメモリ15には、後述する初期の帯電電流値と帯電電流値の閾値が記憶される。
3.プロセスカートリッジの概略構成
実施例1の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について、図2を用いて詳細に説明する。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置100に設けられた不図示の装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。実施例1では、各色用のプロセスカートリッジ7はすべて同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー10が収容されている。実施例1では、プロセスカートリッジ7について説明するが、現像ユニット3が単独で画像形成装置100に着脱可能とする現像カートリッジを有する構成としても良い。
尚、実施例1では、収容しているトナー10の種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。
プロセスカートリッジ7は、現像ローラ4等を備えた現像ユニット3と、感光体1を備えた感光体ユニット13とを有する。
本実施形態では、現像ユニット3と感光体ユニット13を一体化してプロセスカートリッジ7としているが、これに限らず、それぞれを現像カートリッジ、感光体カートリッジとして画像形成装置100に着脱自在な構成としてもよい。
現像ユニット3は、現像室3aとトナー収容部3bに大別される。トナー収容部3bには、トナー10を現像室3aに搬送するためのトナー搬送部材22が設けられており、図中矢印Gの方向へ回転することによってトナー10を現像室3aへと搬送している。
現像室3aには、感光体1と接触して図示矢印D方向に回転するトナー担持体としての現像ローラ4が設けられている。実施例1では、現像ローラ4と感光体1とは、対向する現像部において互いの表面が同一方向に移動するようにそれぞれ回転する。
また、現像室3aの内部には、トナー収容部3bから搬送されたトナー10を現像ローラ4に供給する供給ローラ5と、供給ローラ5によって供給された現像ローラ4上のトナー10のコート量規制及び電荷付与を行うトナー規制部材6が配置されている。
現像ローラ4、供給ローラ5、トナー規制部材6には高圧電源からそれぞれ独立した電圧が印加される。供給ローラ5によって現像ローラ4に供給されたトナー10は、現像ローラ4とトナー規制部材6との間での摺擦により摩擦帯電され、電荷を付与されると同時に層厚が規制される。規制された現像ローラ4上のトナー10は、現像ローラ4の回転により、感光体1との対向部に搬送され、感光体1上の静電潜像をトナー像として現像、可視化する。
本発明では、現像ローラ4に印加される所定のDC電圧(現像電圧:Vdc)を-300Vとした。また、供給ローラ5に電圧(供給電圧:Vr=-250V)を印加することで、供給ローラ5と現像ローラ4との電位差(ΔVr)を調整し、現像ローラ4へのトナー10の供給量を調整することが出来る。本実施例ではΔVr=Vdc-Vrを-50Vとした。
実施例1では、感光体1上の静電潜像をトナー像として現像、可視化する際、現像ローラ4は感光体1の周面上に接触するようにして回転駆動される。これは、後述するトナーに外添された金属石鹸を感光体1上に供給しやすくするためである。ただし、金属石鹸を供給することが出来る構成であれば、現像ローラ4と感光体1とが接触する構成に限られない。
ここで、以降の説明においては、電位や印加電圧に関し、負極性側に絶対値が大きい(例えば-500Vに対して-1000V)ことを電位が高いと称し、負極性側に絶対値が小さい(例えば-500Vに対して-300V)ことを電位が低いと称する。これは、本実施例における負帯電性を持つトナー10の正規極性を基準として考えるためである。
また、本実施例での電圧は、アース電位(0V)との電位差として表現される。したがって、現像電圧=-300Vは、アース電位に対して、現像ローラ4の芯金に印加された現像電圧によって、-300Vの電位差を有したと解釈される。これは、帯電電圧などその他の電圧に関しても同様である。
感光体ユニット13には、軸受(不図示)を介して感光体1が回転可能に取り付けられている。感光体1は、不図示の駆動モータの駆動力を受けることによって、図2中の矢印A方向に回転駆動される。また、感光体ユニット13には、感光体1の周面上に接触するように、帯電ローラ2、板状弾性体としてのクリーニングブレード8が配置されている。クリーニングブレード8は一端が板状金属板金に固定されており、他方の自由端が感光体1に当接し、感光体1との当接部であるクリーニングニップを形成する。クリーニングブレード8により感光体1の表面を摺擦し、転写工程で残留したトナー10や微粒子を掻き取り、廃トナー収容室9に収容することによって、帯電ローラ2の汚染や感光体1へのトナー10の連れ周りによる画像弊害を防止する。
4.感光体の構成
本実施形態において、電子写真感光体1は支持体を有する。支持体は、導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合または被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
本実施形態において、直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。本実施形態において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することが出来る。
本実施例において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することが出来る。導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などをさらに含有してもよい。
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
導電層は、上述の各材料および溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することが出来る。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
本実施例においては、以下の材料を用意した。
・金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子(平均一次粒径230nm)214部
・結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)132部
・溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部
これらを用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、
分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。続いて、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を分散液に添加した。シリコーン樹脂粒子の添加量は、ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%になるようにした。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加した。次に、メタノールと1-メトキシ-2-プロパノールの混合溶剤(質量比1:1)を分散液に添加し、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。混合溶剤の添加量は、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%になるようにした。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間150℃で加熱することによって、膜厚が30.0μmの導電層を形成した。
本実施例では、支持体または導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することが出来る。下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などをさらに含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
また、下引き層は、添加剤をさらに含有してもよい。
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
下引き層は、上述の各材料および溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することが出来る。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
本実施例においては、以下の材料を用意した。
・下記式(E)で示される電子輸送物質4部
・ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBN-70D、旭化成ケミカルズ(株)製)5.5部
・ポリビニルブチラール樹脂(エスレックKS-5Z、積水化学工業(株)製)0.3部
・触媒としてのヘキサン酸亜鉛(II)(三津和化学薬品(株)製)0.05部
これらを、テトラヒドロフラン50部と1-メトキシ-2-プロパノール50部の混合溶媒に溶解して下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを30分間170℃で加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
続いて、電荷発生層に関して説明する。電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することが出来る。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
本実施例においては、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°および28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業社製)5部を用意した。これらをシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散し、これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部をさらに加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。なお、X線回折の測定は、次の条件で行ったものである。
[粉末X線回折測定]
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
続いて、電荷輸送層について説明する。電荷輸送層は本実施例における表面層である。電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送層が表面層でないとき、電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。また、電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
電荷輸送層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することが出来る。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
本実施例においては、以下の材料を用意した。
・下記式(C-1)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))6部
・下記式(C-2)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))3部
・下記式(C-3)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))1部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部
・(C-4)と(C-5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=9/1:Mw=20000)
これらをo-キシレン25部/安息香酸メチル25部/ジメトキシメタン25部の混合溶剤に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして、支持体、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層をこの順に有する円筒状(ドラム状)の感光体1として、感光体aを製造した。
以上のように、本実施例の感光体1は円筒状で導電性を有する金属支持体と、支持体の下引き層としての導電層と、下引き層上に形成される感光層(電荷発生層、電荷輸送層)からなっている。感光体1は、OPC(有機光半導体)、アモルファスセレン、アモルファスシリコン等の感光材料を、アルミニウムやニッケルなどで形成された外径φ24mmの支持体としてのシリンダ上のドラム基体上に設けて構成したものである。
5.トナーの構成
実施例1に用いたトナー10の模式図を図5に示す。実施例1では、母粒子45aに流動性の担保と帯電性の改善のため無機ケイ素45bを外添した無機粒子外添トナー45を用いている。実施例1で使用するトナーは、負に帯電極性をもつ非磁性1成分の粒重合トナーであり、平均粒径は7μmである。
さらに、画像流れの抑制を目的として、無機ケイ素45bに加えて金属石鹸45cが外添される。金属石鹸45cを感光体1に供給して保護膜を形成することにより、放電生成物などの付着を軽減することが出来る。放電生成物は水分を含むと抵抗が下がる。そのため、放電生成物が付着する感光体1の表面は低抵抗になる。金属石鹸45cを感光体1の表面に供給することによって、感光体1の表面抵抗が低くなることにより生じる画像流れの発生を抑制することが出来る。
金属石鹸45cは、長鎖脂肪酸と、ナトリウム・カリウム以外の金属塩の総称である。具体的には、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などの脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などの金属種との金属塩が挙げられ、このうちの一種を使用するとよい。実施例1では、金属石鹸45cとして、ステアリン酸亜鉛を外添する。尚、金属石鹸45cの種類としてはこれに限定されるものではなく、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛なども適宜可能である。金属石鹸45cの外添量は0.6wt%以下が望ましい。外添量が多いほど画像流れの抑制には効果があるが、過剰に外添するとトナーの流動性が悪化し、画像後半の画像濃度が低くなる。これは、ベタ黒画像を出力する際に、後端に近づくにつれて追従性が悪くなるベタ追従性不良と呼ばれる現象である。金属石鹸45cの平均粒径は、0.15μm以上2.0μm以下であることが好ましい。金属石鹸45cの平均粒径が0.15μmより小さくなると、感光体1の表面に塗布されにくくなる。特に、後述する感光体1の表面に溝がある状態においては顕著となる。一方、粒径が2.0μmより大きくなると、現像ユニット3内のトナー規制部材6などを通過することが出来ずに現像室3a内に取り残され、感光体1の表面に供給されにくくなる。
金属石鹸45cの平均粒径の測定方法を説明する。金属石鹸45cを0.5gに10mLのエタノールを加え、日本精機株式会社製の超音波分散器を用いて5分間超音波分散を行った。次に、測定溶媒としてエタノールを循環させる。そして、日機装株式会社製マイクロトラック レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(SPA型)に、得られた金属石鹸45cの分散液を粒子の散乱光量積算値に関連する値であるDV(回折光量)値が0.6~0.8になるまで添加した。そして、この状態における粒度分布を測定し、50%径である累積中位径として得られるメジアン径を平均粒径とした。
上記平均粒径の金属石鹸45cは、例えば、脂肪酸塩水溶液と無機金属塩の水溶液又は分散液を反応させる複分解法を用いて製造するとよい。
本実施例においては、平均粒径が0.60μmのステアリン酸亜鉛を用いた。金属石鹸45cとしてのステアリン酸亜鉛はトナーと逆極性に帯電させることでトナー粒子に付着されており、非画像形成時に感光体1上に供給される。
次に、トナー粒子の製造方法について説明する。トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることが出来る。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法が好ましい。さらに、湿式製造法としては懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを用いてもよい。
本実施例においては、懸濁重合法について説明する。懸濁重合法においては、まず、結着樹脂を生成するための重合性単量体、及び必要に応じて着色剤などその他の添加剤をボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。この工程を重合性単量体組成物の調製工程という。このとき、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤などを適宜加えることが出来る。懸濁重合法における重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示出来る。
スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
次に、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高せん断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに形成する。この工程を造粒工程という。造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることがトナー粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することが出来るため、好適に用いられる。
難水溶性無機化合物の分散安定剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、リンのいずれかが含まれているものが好ましく用いられる。より好ましくは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、リンのいずれかが含まれていることが望まれる。具体的には、以下のものが挙げられる。
リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド。
上記分散安定剤に有機系化合物、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを併用しても構わない。これら分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上2.00質量部以下使用することが好ましい。
さらに、これら分散安定剤の微細化のため、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用出来る。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
造粒工程の後、あるいは造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る。この工程を重合工程という。重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことが出来る。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことが出来る。
懸濁重合法において使用する重合開始剤としては、一般的に油溶性開始剤が用いられる。例えば、以下のものが挙げられる。
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、クメンヒドロパーオキサイドのようなパーオキサイド系開始剤。
重合開始剤は必要に応じて水溶性開始剤を併用してもよく、以下のものが挙げられる。
過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
これらの重合開始剤は単独又は複数を併用して使用でき、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤等をさらに添加し用いることも可能である。
無機シリカの水洗移行量は、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を使用し、外添条件である外添添加量とはねの先端の回転速度(周速)とはねの回転している時間(時間)を変更することで対応した。以下、表1にトナーaの外添条件を示す。尚、外添条件である周速、時間についての詳細は特開2016-38591号公報の記載の通りである。また、本実施例に用いたトナーaにはステアリン酸亜鉛を0.20wt%外添した。
6.放電生成物による感光体への影響
画像形成装置100を用いて画像形成動作を実行する際に、帯電ローラ2での放電を行うとオゾンやNOx等の放電生成物が発生し、感光体1の表面に付着することがある。放電生成物は、感光体1に当接するクリーニングブレード8などによって掻き取られるが、付着する量が掻き取る量より多い場合、繰り返しの画像形成動作によって、徐々に感光体1の表面に蓄積していく。接触帯電方式では、コロナ帯電器を用いたコロナ帯電方式と比べて放電量は少なく、放電生成物の発生量は少ない。しかし、放電生成物の発生位置が感光体1と帯電ローラ2との間の微小な空隙であるため、放電生成物の発生が少量であっても、放電生成物が感光体1の表面に付着しやすい。そして、感光体1の表面に放電生成物が付着すると吸湿し、感光体1の表面の電気抵抗が低下する。抵抗の低下により、帯電ローラ2による放電での感光体1上の電位形成に影響し、所望のVd、Vlを形成することが出来ない。すると、画像形成を適切に行うことが出来ず、画像弊害が発生する。主な画像弊害としては、画像の一部もしくは全域で潜像なまりにより発生する白抜けや画像境界部の輪郭ボケ、電位のずれによるかぶりなどが挙げられる。
画像流れは、感光体1の摩耗を抑制すると、感光体1の表面がリフレッシュされにくくなり、特に高湿環境下において、静電潜像のボケが生じやすくなる。摩耗率として0.05μm/1000枚以下において画像流れが発生しやすい。
そこで、放電生成物の影響を低減させるために、本実施例においては感光体1の表面に金属石鹸45cを供給して感光体1の表面に放電生成物が付着することを抑制する。
7.金属石鹸塗布動作
実施例1では、前述したとおり、現像ローラ4が感光体1に接触することで現像部において現像ニップを形成している。また、現像ローラ4の表面と感光体1の表面との間に表面移動速度差を設けることで、現像ニップ部でトナー10が回転し、感光体1へ金属石鹸45cが供給される。以下、感光体1の表面移動速度に対する現像ローラ4の表面移動速度の比をDD周速比と呼ぶ。感光体1に金属石鹸45cを塗布する上で、DD周速比を上げていくと画像流れが良化する傾向にある。これは、DD周速比が大きくなることでトナー10の転がりが多くなり、金属石鹸45cと感光体1との接触機会が増加するためであると考察することが出来る。また、DD周速比が100%以下では感光体1の単位面積当たりの現像ローラ4の接触面積が減少する方向なので、感光体1の表面への金属石鹸45cの供給量が減少するため、100%より大きいDD周速比であることが望ましい。すなわち、現像ローラ4の表面移動速度の方が、感光体1の表面移動速度より大きい状態であることが望ましい。尚、DD周速比は、感光体1の表面と現像ローラ4の表面との表面移動速度の違いを表現する1つの指標であり、例えばDD周速比に代わり表面移動速度差(DD周速差)を指標としてもよい。
しかしながら、DD周速比が大きい状態で常に画像形成動作を実行していると、初期に金属石鹸45cを過剰供給してしまい、現像室3aやトナー収容部3bから金属石鹸45cが枯渇してしまう。それだけでなく、トナー10を摺擦する回数も増加してしまい、トナー10が劣化し、帯電性を阻害することになる。
そこで、実施例1においては、通常の画像形成動作とは別に、金属石鹸塗布動作を用意し、金属石鹸塗布動作では、現像ローラ4を感光体1の表面に当接させた状態で回転させ、かつDD周速比を画像形成動作よりも大きくする。金属石鹸塗布動作中は、帯電電圧を印加して感光体1を暗部電位Vdになるように制御し、現像電圧を画像形成動作時と同じとすることで、いわゆる、ベタ白印字を実施する。
金属石鹸塗布動作を実行するタイミングは、画像形成動作前の感光体1の回転中か、画像形成動作後の感光体1の回転中が好ましい。すなわち、画像形成動作を行わない非画像形成動作時に実行する。ただし、電流を精度良く検知することが出来るのであれば画像形成動作時に電流検知を実行してもよい。本実施例においては、金属石鹸塗布動作は帯電電圧印加時に流れる帯電電流値に応じて実行可否を判定部156において判断する。本実施例においては、所定の帯電電流値の閾値を超えた場合に金属石鹸塗布動作を実行するように制御する。
金属石鹸塗布動作中は、暗部電位Vdと現像電圧の電位差であるバックコントラストVbackを、通常の画像形成時より大きくすることが望ましい。トナー10の極性とは逆極性に帯電した金属石鹸45cが、Vbackの大きさが大きいほど電気的に感光体1の表面上へより多く付着するので、現像ローラ4上の金属石鹸45cを効率的に付着することが出来るためである。本実施例において、Vbackの設定は、通常の画像形成時は200Vに設定しているのに対して、金属石鹸塗布動作時には300Vとする。具体的には、現像電圧を-300Vから-200Vに設定する。もしくは、暗部電位Vdを-500Vから-600Vに設定するために、帯電電圧を-100V上乗せした-1100Vを帯電ローラ2に印加してもよい。
また、金属石鹸塗布動作中は、前露光ユニット27の光量を画像形成動作時よりも小さくすることが好ましく、特にOFFにするとよい。金属石鹸塗布動作中の前露光量が小さい方が、画像流れが良好であるためである。このような傾向を示す原因としては、以下のような現象が考えられる。前露光量を小さくすることで感光体1の表面には除電されず残存した電荷による残電が残る。よって、正規極性とは逆極性の正極性の金属石鹸45cの感光体1に対する電気的付着力が強くなることで、感光体1の表面からはがれにくくなる。その状態で、クリーニングブレード8や現像ローラ4を感光体1上の金属石鹸45cが通過すると、金属石鹸45cが感光体1に物理的に押し込まれることにより強固に付着する。つまり、前露光量を画像形成動作時より小さくしたことで、金属石鹸塗布動作による金属石鹸45cの感光体1への保持能力を上げて、金属石鹸45cを感光体1へ強固に付着させることが出来ると考えられる。一方、感光体1の表面に露光する露光量を大きくすると、正極性の金属石鹸45cの感光体1に対する電気的付着力が弱まり、感光体1の表面からはがれやすくなることがある。
また、供給ローラ5の現像ローラ4に対する電位差ΔVr(=Vdc-Vr)を金属石鹸45cの極性と逆極性にすることが望ましい。すなわち、金属石鹸45cに供給ローラ5から現像ローラ4に向かう方向の静電気力が作用する向きの電位差が、供給ローラ5と現像ローラ4とが接触する接触部に形成されるように電位差ΔVrを制御するということである。ΔVrを金属石鹸45cが帯電された極性と逆極性にすることで現像ローラ4側に金属石鹸45cを移動させ、供給ローラ5側に金属石鹸45cが移動することを抑制することが出来るため、感光体1の表面上に多くの金属石鹸45cを供給することが出来る。本実施例では、ΔVr=-50V、金属石鹸45cは正極性に帯電しているので、金属石鹸45cは積極的に現像ローラ4側に移動することとなる。
8.金属石鹸塗布動作の制御手順
次に、金属石鹸塗布動作タイミングについて説明する。
本実施例では、帯電ローラ2に流れる帯電電流を帯電電流検知部36により検出し、帯電電流値に基づいて、金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。
帯電ローラ2に流れる帯電電流を検知するため、本実施例では図4に示すように帯電電流検知部36を有する。帯電電流検知部36は、CPU155から信号を送られることで帯電ローラ2にDC電圧を印加しながら帯電電流値を検知する。
図6に、前露光OFF時に検知される帯電電流値の耐久推移を示す。印刷初期から印刷枚数中盤までは通紙をしても帯電電流値が安定しているが、やがて放電生成物が感光体1の表面に蓄積し、金属石鹸45cの塗布量が減少すると、帯電電流値が増加する。さらに、そのまま耐久を継続すると帯電電流値が上昇し、画像流れが発生する(図中、太点線)。本実施例では、初期の正常な帯電電流値に対して画像流れが発生しない範囲で閾値を設定し(図中:「帯電電流値の閾値」)、前露光OFF時に検知される、帯電電圧印加時に流れる現状の帯電電流値と所定の閾値とを比較することで金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。上述の方法で金属石鹸塗布動作タイミングを決定し、金属石鹸塗布動作を実行する。本実施例においては、帯電電流値の閾値を25μAとした。25μAを超えると出力画像において画像流れが軽微に発生することを確認した。感光体1の電荷輸送層が16μm、印加帯電電圧を1000Vとした時に、初期の帯電電流値を20μAとする。閾値は25~32μAの範囲が好ましい。初期の電流値と閾値のΔは2~5μAとなり、このΔが感光体1の表面の放電生成物の付着量を示している。閾値の範囲やΔの範囲に関して、詳細は後述する。本実施例では、金属石鹸塗布動作において、Δが略0になるまで放電生成物の付着を抑制するための金属石鹸を塗布することを特徴とする。
本実施例においては、検知された帯電電流値が所定の閾値を超えた場合に金属石鹸塗布動作を実行することを特徴としているが、金属石鹸塗布動作の実行条件はこれに限られない。例えば、Δの値で所定値を超えたら実行してもよい。つまり、帯電電流検知部36によって検知された帯電電流の帯電電流値が、第1の電流値である場合には塗布動作を実行せず第1の電流値よりも絶対値が大きい第2の電流値の場合には塗布動作を実行するようにしてもよい。ここで、Δは適宜設定することが出来、少しでもΔが大きくなったら金属石鹸塗布動作を実行することによって、感光体1の表面上に発生した放電生成物を除去することが出来る効果を有する。
次に、図7のフローチャートを参照して、画像流れの発生を回避する金属石鹸塗布動作の制御手順について説明する。実施例1では、制御部202によって金属石鹸塗布動作が実行される。
プロセスカートリッジ7はメモリ15を具備しており、メモリ15には、初期の帯電電流値と上記記載の帯電電流値の閾値が記憶されている。プリント信号が入力されると(S1)、画像形成動作を実行する(S2)。画像形成動作が終了する(S3)と、画像形成装置100が備えたCPU155は、メモリ15と通信を行い、初期の帯電電流値と帯電電流値の閾値を読み込む(S4)。
次に、CPU155は、電流検知部36によって帯電電流の検知を実施して所望の帯電電圧における現状の帯電電流値を測定する(S5)。そして、現状の帯電電流値と設定された帯電電流値の閾値とを比較することで金属石鹸塗布動作を実行するタイミングかどうかを判断する(S6)。
現状の帯電電流値が設定された閾値を超えた場合、金属石鹸塗布動作を実行するタイミングとなり、金属石鹸塗布動作が開始する(S7)。
まず、帯電電圧、現像電圧、ブレード電圧、トナー供給電圧を印加するとともに、現像ローラ4と感光体1の駆動を開始させ、現像ローラ4を感光体1に当接させる(S8)。
次に、帯電電流を検知しながら、初期の帯電電流値になるまで金属石鹸塗布動作を実行し続ける(S9)。
初期の帯電電流値に達すると、現像ローラ4を感光体1から離間させ、現像ローラ4と感光体1の駆動を停止し、印加していた電圧をOFF(S10)にして、金属石鹸塗布動作を終了する(S11)。
金属石鹸塗布動作が終了すると、連続プリントの要求があるかを判断し(S12)、要求がない場合はプリント終了動作に移行し(S13)、要求がある場合は、連続プリントの要求がなくなるまで、S2~S12の動作を繰り返す。
尚、S8における金属石鹸塗布動作は、現像ローラ4の離間動作を行わずにS3の画像形成動作終了から各種電圧の印加や駆動をそのまま行った状態で実行してもよい。
また、図8に示したフローチャートのように、画像形成動作を実行する前に電流検知を行い、金属石鹸塗布動作を行ってもよい。図8のフローチャートについて説明する。
プリント信号が入力されると(S21)、画像形成装置100が備えたCPU155は、メモリ15と通信を行い、初期の帯電電流値と帯電電流値の閾値を読み込む(S22)。
次に、CPU155は、帯電電流検知部36によって帯電電流の検知を実施して所望の帯電電圧における現状の帯電電流値を測定する(S23)。そして、現状の帯電電流値と設定された帯電電流値の閾値とを比較することで金属石鹸塗布動作を実行するタイミングかどうかを判断する(S24)。
現状の帯電電流値が設定された閾値を超えた場合、金属石鹸塗布動作を実行するタイミングとなり、金属石鹸塗布動作が開始する(S25)。
まず、帯電電圧、現像電圧、ブレード電圧、トナー供給電圧を印加するとともに、現像ローラ4と感光体1の駆動を開始させ、現像ローラ4を感光体1に当接させる(S26)。
次に、帯電電流を検知しながら、初期の帯電電流値になるまで金属石鹸塗布動作を実行し続ける(S27)。
初期の帯電電流値に達すると、現像ローラ4を感光体1から離間させ、現像ローラ4と感光体1の駆動を停止し、印加していた電圧をOFF(S28)にして、金属石鹸塗布動作を終了(S29)し、画像形成動作を開始する(S30)。
画像形成動作が終了すると、連続プリントの要求があるかを判断し(S31)、要求がない場合はプリント終了動作に移行し(S32)、要求がある場合は、連続プリントの要求がなくなるまで、S23~S31の動作を繰り返す。
尚、金属石鹸塗布動作はΔが0になるまで実行するが、金属石鹸塗布動作時間は2秒~30秒の間が好ましい。最低でも感光体1の1回転よりも長い時間を行う必要がある。金属石鹸塗布動作時間が長すぎてもダウンタイムが発生するため、適宜設定することが好ましい。金属石鹸塗布動作を実行している間に帯電電流検知部36によって電流検知を行いながら、検知される帯電電流値を確認して、Δが0になったら金属石鹸塗布動作を終了させてもよい。
9.金属石鹸塗布動作の効果
本実施例に記載の金属石鹸塗布動作を実行した時の効果を確認した。比較例1、比較例2、実施例1の金属石鹸塗布動作のDD周速比および電圧設定は表2に記載の通りである。また、金属石鹸塗布動作と、金属石鹸塗布動作を実行する際に行う帯電電流検知の実行可否を表3に示した。
表2、表3に記載の通り、比較例1は実施例1に記載の金属石鹸塗布動作を実行しない。比較例2は、帯電電流検知を実行せずに金属石鹸塗布動作を所定枚数(本実施例においては100枚)ごとに5秒間実行した。一方、実施例1は、帯電電流検知を実施した結果、電流値が閾値を超えた場合に金属石鹸塗布動作を実施し、初期の帯電電流値になるまで金属石鹸塗布動作を実行し続けた。
以下に、実際の効果確認の結果を示す。実施例1、比較例1、比較例2の画像流れの発生を確認するため、1%印字率で一日10000枚連続通紙後に一日機内で放置し、放置後の画像流れの発生の有無を比較した。一日放置後で評価する理由としては、感光体1の表面上に生成した放電生成物が、一日放置することで十分に吸湿し、感光体1の表面抵抗を下げる影響が顕著に出るからである。画像流れの発生有無を判断するためのサンプルは、ハーフトーン画像を1枚印字し評価した。評価指標は以下の通りである。
〇:発生なし 画像全域で潜像なまりによる白ぬけや画像境界部の輪郭ボケなし
×:発生 画像の一部もしくは全域で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
通紙及びサンプルの出力環境は30℃/80%RHで行った。全通紙量は120000枚まで行なった。結果を表4に示す。
表4に示すように、比較例1では、20000枚までは良好なものの、40000枚で画像流れが発生している。初期は、金属石鹸45cがトナー10と共に供給されるため画像流れは良好だが、画像形成を繰り返していくと、供給可能な金属石鹸45cの量に比べて、感光体1の表面に留まる金属石鹸45cの方が少なくなる。そのため、画像形成動作のみでは金属石鹸45cの供給が間に合わなくなったため画像流れが発生したと考えられる。
比較例2においては、比較例1と比較すると60000枚延命したが、100000枚で画像流れが発生する結果となった。金属石鹸塗布動作を実行した分、比較例1に比べて延命した。これは、金属石鹸塗布動作において積極的に感光体1へ金属石鹸45cが供給され、画像流れを抑制する効果が発現したためと考えられる。しかし、初期から一律同じタイミングで金属石鹸塗布動作を実行してしまったため、金属石鹸45cが枯渇してくる終盤において、金属石鹸45cの必要量を感光体1の表面上に供給することが出来なかったためと考えられる。初期に余分に供給した金属石鹸45cは、クリーニングブレード8に掻き取られてしまい、比較例2のように効果を維持することが出来なかった。さらに、定期的に金属石鹸塗布動作を実行したために、スループットがダウンしてしまったという弊害も発生した。
一方、実施例1においては120000枚に到達しても画像流れが良好であった。これは、金属石鹸塗布動作の効果に加えて、帯電電流検知を実行したことによって適切なタイミングで金属石鹸45cが適量、感光体1上へ付着したためと考えられる。
金属石鹸45cを外添したトナー10は画像流れに有効だが、画像形成を繰り返していくと供給可能な金属石鹸45cが不足し、電流検知を行わない場合には、十分に画像流れを抑制することが出来なかった。しかし、本実施例の構成において、トナー10に金属石鹸45cを含有させて、以下のような制御を行うことで、画像流れを抑制することが出来る。本実施例の画像形成装置100は、第1の電圧印加部である帯電電圧印加部71に帯電電圧を印加した状態で、帯電ローラ2から感光体1に流れる電流を検知する電流検知部36と、帯電電圧印加部71を制御する制御部202を有する。トナー10は金属石鹸45cを含有し、記録材Sにトナー像を形成するための画像形成動作と、感光体1の表面に金属石鹸45cを塗布するための塗布動作と、を実行する。制御部202は、電流検知部36によって検知される帯電ローラ2から感光体1に流れる電流の電流値に基づいて、金属石鹸塗布動作を実行するように制御する。電流検知部36によって検知される帯電ローラ2から感光体1に流れる電流の電流値が、所定の閾値を超えた場合に、金属石鹸塗布動作を実行する。また、金属石鹸塗布動作において、感光体1の表面移動速度と現像ローラ4の表面移動速度との速度比が画像形成動作における速度比より大きくなるように制御する。さらに、現像部における帯電ローラ2によって帯電された感光体1の表面の表面電位と、現像ローラ4に印加される現像電圧と、の差であるバックコントラストVbackは、金属石鹸塗布動作の方が画像形成動作より大きくする。すると、金属石鹸45cが不足してきた状態でも、感光体1への金属石鹸45c供給を補うことが出来、画像流れを長期にわたって抑制することが可能となった。
一般的に、感光体の摩耗を抑制すると、感光体の表面がリフレッシュされ難くなり、高湿環境下で画像流れによる画像欠陥が生じる。金属石鹸45cを外添したトナーは画像流れに有効だが、画像形成を繰り返していくと供給可能な金属石鹸45cが不足していき画像流れを抑制することが出来なかった。しかし、本実施例の構成においては、電流検知を行うことによって感光体1への金属石鹸45cを適切なタイミングで補うことが出来、画像流れを抑制することが可能となった。
尚、本実施例では、前露光OFFで帯電電流を検知して金属石鹸塗布動作を行ったが、金属石鹸塗布動作タイミングを決定することが出来れば良く、前露光ONの画像形成中に帯電電流を検知して、検知結果に応じて前露光ONで金属石鹸塗布動作を行っても良い。
また、本実施例においては、帯電電流検知部36を帯電ローラ2に接続して帯電電圧印加時に流れる電流を検知したが、感光体1と感光体1のアースとの間に電流検知部を接続して検知してもよい。
本実施例で適用する画像形成装置100の構成において、実施例1と同一部材には同一符号とし、説明を省略する。
実施例2においては、画像形成を繰り返すことで感光体1の膜厚が減少し、暗部電位(Vd)が上昇した場合でも適切なタイミングで金属石鹸塗布動作を実行することを特徴とする。画像形成を繰り返すことによりVdが上昇するため、本実施例においては、Vdの上昇に応じて現像電圧、現像ブレード電圧、トナー供給電圧を適宜変更する。尚、実施例2で使用した感光体1の摩耗率は0.048~0.050(μm/1000枚)であった。したがって、感光体1の表面の削れを考慮して、適宜閾値を変化させる。具体的には、初期の感光体1の膜厚は16μmで、120000枚印字後の感光体1の膜厚はおよそ10μmとなる。10μm未満の薄い膜厚になると、感光体1の表面の抵抗が低くなることによる画像弊害が発生することがあるため、本実施例における感光体1の使用寿命は10μmとする。本実施例においては、感光体1の電荷輸送層が10μmの時点での帯電電流値の閾値を32μAとした。感光体1の電荷輸送層が10μmである場合、印加帯電電圧を1000Vとした時に、帯電電流値を30μAとし、電流値と閾値のΔは2μAとした。感光体1の膜厚が薄くなり帯電電流値が大きくなるにつれて、放電生成物の発生量が多くなるため、Δは小さく設定されることとなる。画像形成枚数に応じて帯電電流値が変化するため、Δが徐々に小さくなるように閾値を設定する。
1.金属石鹸塗布動作の実行タイミング
まず、本実施例における金属石鹸塗布動作タイミングについて説明する。
実施例2では、図9に示したように、感光体1と帯電ローラ2の使用情報を検知する情報検知部16をさらに有し、情報検知部16の情報である感光体1の膜厚に関する情報を用いて帯電電流値の閾値を設定する。そして、帯電ローラ2に流れる帯電電流値と比較することにより、金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。
図10は、30℃/80%RH(H/H)の環境における、感光体1の膜厚と帯電電流との関係をグラフにしたものである。尚、帯電電圧は初期の暗部電位がVd=-500Vとなる電圧である。このグラフから、感光体1の膜厚が薄くなると、帯電電流が線形で増加することが分かる。図10における点Aは、初期の帯電電流値の閾値である。感光体1の膜厚が薄くなった場合、点Aを通り上記直線に平行な直線にすることで帯電電流値の閾値を設定することが出来る。
そこで、測定データに基づいて膜厚変化に対応した想定される現状の帯電電流値及び帯電電流値の閾値を算出する計算式を求めて、そのデータを予め画像形成装置100本体のROM33に格納する。想定される現状の帯電電流値及び帯電電流値の閾値は、メモリ15に記憶された感光体1の膜厚に関する情報とROM33に格納された近似式上のデータを採用することにより算出することが出来る。
以下に、感光体1の膜厚に関する情報について詳しく述べる。
感光体1の膜厚に関する情報は以下の方法で算出する。前述したように、感光体1の膜厚は、放電によって感光体1の表面が劣化し、記録材Sの通過(通紙)或いはクリーニングブレード8の当接による摺擦によって、感光体1の表面が削り取られることにより減少する。
本実施例の画像形成装置100では、感光体1における膜厚の減少は、帯電電圧印加時間と相関がある。また、この帯電電圧印加時間は、画像形成枚数に比例している。したがって、感光体1における感光体1の膜厚の減少率は、画像形成枚数の一次関数として表すことが出来る。また、画像形成枚数(P)と感光体1の回転数(表面移動距離)とにも相関がある。さらに、画像形成枚数(P)と印字に使用された記録材Sの枚数にも相関がある。したがって、感光体1の膜厚に関する情報は、後述する画像形成枚数(P)と、画像形成装置100内の記録材Sの通過枚数と、感光体1の回転数と、電圧印加部71による電圧印加時間のうち、少なくとも1つを用いて算出されればよい。
本実施例においては、プロセスカートリッジ7に搭載したメモリ15に、感光体1の膜厚に関する情報として画像形成枚数(P)を記憶する。そして、この情報を用いて、上述の方法で帯電電流値の閾値を算出し、帯電ローラ2に流れる帯電電流値と比較することにより、金属石鹸塗布動作の実行タイミングを決定する。
2.金属石鹸塗布動作の制御手順
次に、図11のフローチャートを参照して、本実施例における画像流れの発生を抑制する金属石鹸塗布動作の制御手順について説明する。実施例2においては、制御部202によって金属石鹸塗布動作が実行される。
プロセスカートリッジ7はメモリ15を具備しており、メモリ15には、画像形成枚数(P)が記憶されている。プリント信号が入力されると(S41)、画像形成装置本体100が備えたCPU155は、メモリ15と通信を行い、画像形成枚数(P)を読み込み(S42)、画像形成動作を実行する(S43)。画像形成動作が終了する(S44)と、画像形成枚数のカウントを1増加し(S45)、プロセスカートリッジ7のメモリ15の画像形成枚数のカウントを書き変える(S46)。
次に、画像形成枚数に応じた想定される帯電電流値及び帯電電流値の閾値と、CPU155に読み込んだ画像形成枚数の値(P)、とを比較し、想定される現状の帯電電流値及び帯電電流値の閾値を決定する(S47)。
帯電電流の検知を実施して所望の帯電電圧における現状の帯電電流値を測定し(S48)、測定された帯電電流値と決定された帯電電流値の閾値とを比較することで金属石鹸塗布を動作するタイミングかどうかを判断する(S49)。
測定された帯電電流値が決定された閾値を超えた場合、金属石鹸塗布動作を実行するタイミングとなり、金属石鹸塗布動作が開始する(S50)。
まず、帯電電圧、現像電圧、現像ブレード電圧、供給電圧を印加するとともに、現像ローラ4と感光体1の駆動を開始させ、現像ローラ4を感光体1に当接させる(S51)。
次に、帯電電流を検知しながら、想定される現状の帯電電流値になるまで金属石鹸塗布動作を実行し続ける(S52)。
想定される現状の帯電電流値に達すると、現像ローラ4を感光体1から離間させ、現像ローラ4と感光体1の駆動を停止し、印加していた電圧をOFF(S53)にして、金属石鹸塗布動作を終了する(S54)。
金属石鹸塗布動作が終了すると、続いて、連続プリントの要求があるかを判断し(S55)、要求がある場合は、連続プリントの要求がなくなるまで、S43~S55の動作を繰り返す。要求がない場合はプリント終了動作に移行(S56)する。
実施例2の構成においては、感光体1の膜厚減少により暗部電位(Vd)が上昇した場合でも適切なタイミングで金属石鹸塗布動作を実行することが出来る。その結果、膜厚によらず安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る構成となり、より高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制することが可能となる。
実施例1、2においては、画像形成初期から終盤にかけて帯電電圧が一定であった。実施例3では、暗部電位(Vd)が常時ほぼ一定となるように、画像形成装置100の使用や使用環境に応じて帯電電圧を変更させることを特徴とする。実施例3の画像形成装置100においては、図12に示したように、さらに環境検知部17を有している。環境検知部17は温度、相対湿度のどちらか一方もしくは両方を検知する。両方検知する場合には、検知結果から絶対湿度を算出してもよい。
尚、本実施例においては環境検知部17をカートリッジ7に設ける構成を採用したが、画像形成装置100に設ける構成でもよい。
1.金属石鹸塗布動作のタイミング
本実施例における金属石鹸塗布動作タイミングについて説明する。
実施例3においては、感光体1の膜厚に関する情報、使用環境に関する情報、帯電電圧に関する情報、すなわち帯電能と環境を用いて帯電電流値の閾値を設定し、帯電ローラ2に流れる帯電電流値と比較することにより、金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。帯電ローラ2の帯電能に関する情報は、帯電電圧と感光体1の膜厚に関する情報を用いて算出される。
図13は、新品時の30℃/80%RHの環境(H/H)、23℃/50%RHの環境(N/N)、15℃/10%RHの環境(L/L)での帯電電圧と帯電電流との関係をグラフにしたものである。このグラフから、帯電電圧が増加すると、帯電電流が線形で増加することが分かる。また、高温高湿環境になるほど、同じ帯電電圧でも帯電電流が増加することが分かる。点Bは初期の30℃/80%RHの環境での帯電電流値の閾値である。帯電電圧が変化した場合、点Bを通り上記直線に平行な直線にすることで帯電電流値の閾値を設定することが出来る。すなわち、帯電電圧が上昇するにつれて閾値を高く設定することとなる。尚、感光体1の膜厚と帯電電流との関係は実施例2で説明した通りである。
そこで、これらの測定データ(感光体1の膜厚と帯電電流との関係、使用環境と帯電電流との関係、帯電電圧と帯電電流との関係)に基づいて、想定される現状の帯電電流値及び帯電電流値の閾値を算出する計算式を求める。そして、そのデータを予め画像形成装置100のROM33に格納する。想定される現状の帯電電流値及び帯電電流値の閾値は、メモリ15に記憶された感光体1の膜厚に関する情報と使用環境に関する情報と帯電電圧に関する情報に対応するROM33に格納された近似式上のデータを採用することにより算出することが出来る。尚、近似式の求め方としては、線形近似、指数近似、多項式近似、累計近似、移動平均近似などの統計手法があるが、特に制約はなく、適宜、最適な近似方法を用いることが出来る。
使用環境に関する情報は以下の方法で算出する。画像形成装置100に環境検知部17としての環境センサがあり、所定時間毎に温度Tと相対湿度Hを検知し、メモリ15の使用環境に関する情報を書き換える。
実施例3においては、プロセスカートリッジ7に搭載したメモリ15に、感光体1の膜厚に関する情報として画像形成枚数(P)、使用環境に関する情報として温度T及び相対湿度H、帯電電圧に関する情報として帯電電圧設定値を記憶する。そして、これら3つの情報を用いて、上述の方法で帯電電流値の閾値を算出し、帯電ローラ2に流れる帯電電流値と比較することにより、金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。
2.金属石鹸塗布動作の制御手順
次に、図14のフローチャートを参照して、画像流れの発生を抑制する金属石鹸塗布動作の制御手順について説明する。実施例3においては、制御部202によって金属石鹸塗布動作が実行される。
プロセスカートリッジ7はメモリ15を具備しており、メモリ15には、画像形成枚数(P)、温度T及び湿度H、帯電電圧設定値が記憶されている。プリント信号が入力されると(S61)、画像形成装置本体100が備えたCPU155は、メモリ15と通信を行い、画像形成枚数(P)、温度T及び相対湿度H、帯電電圧設定値を読み込み(S62)、画像形成動作を実行する(S63)。画像形成動作が終了する(S64)と、画像形成枚数のカウントを1増加し(S65)、プロセスカートリッジ7のメモリ15の画像形成枚数のカウントを書き変える(S66)。
次に、想定される帯電電流値及び帯電電流値の閾値が予め格納された画像形成装置100側のROM33の内容と、画像形成枚数P、温度T及び相対湿度H、帯電電圧設定値とを比較し、帯電電流値と帯電電流値の閾値を決定する(S67)。
帯電電流検知を行い、所望の帯電電圧における現状の帯電電流値を測定し(S68)、測定された帯電電流値と決定された帯電電流値の閾値とを比較することで金属石鹸塗布動作を実行するタイミングかどうかを判断する(S69)。
測定された帯電電流値が決定された閾値を超えた場合、金属石鹸塗布動作を実行するタイミングとなり、金属石鹸塗布動作を開始する(S70)。
まず、帯電電圧、現像電圧、現像ブレード電圧、供給電圧を印加するとともに、現像ローラ4と感光体1の駆動を開始させ、現像ローラ4を感光体1に当接させる(S71)。
次に、帯電電流を検知しながら、想定される現状の帯電電流値になるまで金属石鹸塗布動作を実行し続ける(S72)。
想定される現状の帯電電流値に達すると、現像ローラ4を感光体1から離間させ、現像ローラ4と感光体1の駆動を停止し、印加していた電圧をOFF(S73)にして、金属石鹸塗布動作を終了する(S74)。
続いて、連続プリントの要求があるかを判断し(S75)、連続プリントの要求がなくなるまで、S63~S75の動作を繰り返す。要求がない場合はプリント終了動作に移行(S76)する。
実施例3の構成においては、暗部電位(Vd)が常時ほぼ一定となるように、画像形成装置の使用履歴や使用環境に応じて帯電電圧を変更させた場合でも、適切なタイミングで金属石鹸塗布動作を実行することが出来る。その結果、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る構成となり、より高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制することが可能となる。
尚、実施例3においては、30℃/80%RHのH/H環境で画像形成動作を行ったが、環境が変化した場合においても、上記制御を行えば帯電電流値の閾値を適宜設定することが可能なため、適切なタイミングで金属石鹸塗布動作を実行することが出来る。
画像形成動作における露光工程によって、感光体1の感光層中に残留電荷が発生し、画像形成中に明部電位Vlが変動することがある。そこで、本実施例においては、残留電荷の影響によって生じるVlの上昇(Vlアップという)を抑制しつつ、帯電電流検知を行うことを特徴とする。
1.感光体の下引き層
本実施例の感光体b、比較例3の感光体cは、実施例1~3で用いた感光体aに対して、それぞれ下引き層が異なる。感光体bと感光体cの下引き層は以下の方法で作製した。
まず、本実施例の感光体bの下引き層の作製方法を説明する。ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)100部をトルエン500部と攪拌混合し、ビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM-1003、信越化学製)5.0部を添加し、8時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、3時間120℃で乾燥させることによって、ビニルトリメトキシシランで表面処理済みのルチル型酸化チタン粒子を得た。ビニルトリメトキシシランで表面処理済みのルチル型酸化チタン粒子18部、N-メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF-30T、ナガセケムテックス製)4.5部、共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ製)1.5部を、メタノール90部と1-ブタノール60部の混合溶剤に加えて分散液を調整した。この分散液を、直径1.0mmのガラスビーズを用いて縦型サンドミルにて5時間分散処理することにより、下引き層用塗布液を調整した。この下引き層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が2.0μmの下引き層を形成した。
続いて、比較例3の感光体cの下引き層の作製方法を説明する。共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM4000、東レ製)40部を、メタノール450部/n-ブタノール150部の混合溶剤に溶解させることによって、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって、膜厚が0.8μmの下引き層を形成した。
2.Vlアップ
次に、Vlアップによって起こる現象についての説明を行う。図15(a)は、15℃/10%RHの環境(L/L)で連続して画像形成を行った時のVlアップ量、図15(b)は、30℃/80%RHの環境(H/H)で連続して画像形成を行った時のVlアップ量を示している。図15(a)、(b)に示すように、画像形成に伴うVlアップが起こる。Vlアップは、図15(a)に示すように、絶対湿度が小さい環境であるほど単位時間あたりのVlの上昇率が大きいことが確認され、V1までVlアップする。一方、図15(b)に示すように、絶対湿度が大きい環境では、Vlの上昇率は小さく、それほどVlアップせずV1よりも絶対値が小さいV2までしかVlアップしない。Vlアップは、画像形成の際の感光体1に対する露光により感光層内の残留電荷数が増加したことが主要因であると考えている。つまり、絶対湿度が小さい環境においては、感光層中のいずれかの層の抵抗が高くなることで、電荷の移動や注入がスムーズに行われにくくなったことがVlアップの原因と考えた。このように、絶対湿度が小さい環境においては、画像形成を行うとともに抵抗が高い層に残留電荷の蓄積が生じるために、Vlアップが起こる。
ここで、Vlアップが生じると、画像形成に伴う感光体1の露光工程により、現像電圧VdcとVlの差である現像コントラストVcontが変動してしまうことになる。これは、感光体1上のトナー乗り量の変化につながり、記録材S上の画像濃度変動を招く。
以上から、下引き層の抵抗や処方によってもVlアップの大きさが変わると考えられる。さらに、画像形成によって露光を受けると下引き層の抵抗が徐々に上昇し、電荷の移動がスムーズに行われなくなることによってVlアップが顕著となると推測される。そこで、下引き層の抵抗や処方を変更することによって、Vlアップの程度を変化させてVlアップの影響を確認した。実施例1~3に用いた感光体aと、実施例4に用いる感光体bと、比較例3に用いる感光体cにおいて、100000枚画像形成を行った時のVlアップ量を比較した。その結果、感光体a、感光体bがほとんどVlアップしなかったのに対して、感光体cでは50V分Vlアップした。
3.効果確認
以下に、本実施例の帯電電流検知における金属石鹸塗布動作の効果確認の結果を示す。実施例1、実施例4、比較例3、の画像流れの発生を確認するため、1%印字率で一日10000枚連続通紙後に一日機内で放置し、放置後の画像流れの発生の有無を比較した。一日放置後で評価する理由としては、感光体1の表面上に生成した放電生成物が、一日放置することで十分に吸湿し、感光体1の表面抵抗を下げる影響が顕著に出るからである。画像流れの発生有無を判断するためのサンプルは、ハーフトーン画像を1枚印字し評価した。評価指標は以下の通りである。
〇:発生なし 画像全域で潜像なまりによる白ぬけや画像境界部の輪郭ボケなし
×:発生 画像の一部もしくは全域で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
通紙及びサンプルの出力環境は30℃/80%RHで行った。全通紙量は120000枚まで行なった。結果を表5に示す。
表5に示すように、Vlアップが起こらない実施例1、実施例4は120000枚印字後においても画像流れが発生しなかった。これに対して、比較例3では、80000枚までは良好であるものの、100000枚で画像流れが発生している。耐久中盤まではトナー残量も多く金属石鹸45cが十分に供給されるため画像流れは良好だった。しかし、画像形成を繰り返していくとトナー量が減少し、供給可能な金属石鹸45cが枯渇して画像流れが発生したと考えられる。比較例3では、実施例1、実施例4と比較して下引き層が異なり、画像形成を繰り返していく中で、劣化によりキャリア輸送能が低下した。そして、下引き層にマイナス電荷が溜まり、明部電位Vlが上昇してしまった。明部電位Vlの上昇に伴い、帯電電流値が減少するため、帯電電流の閾値を超えることがなく、金属石鹸塗布動作が実行されなかったため、画像流れが発生した。
実施例4の構成においては、画像形成を繰り返しても明部電位Vlが上昇しない感光体1を使用することで、適切なタイミングで金属石鹸塗布動作を実行することが出来る。その結果、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る構成となり、Vlの変化を抑制することにより高寿命な構成においても感光体の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制することが可能となった。
尚、実施例4において、感光体1の表面が削れた場合にもVlの値は変化する。その際には、実施例2に記載の内容を適用させて制御を行ってもよい。
実施例5では、実施例4と同様に、画像形成を繰り返すことで明部電位(Vl)が上昇する場合について説明する。実施例4との違いは、実施例4はVlアップしにくい下引き層を用いたが、実施例5では、比較例3のVlアップが生じる感光体cを用いる点で異なる。本実施例においては、残留電荷の影響によって生じるVlアップを加味しつつ、帯電電流検知を行うことを特徴とする。
1.金属石鹸塗布動作の制御手順
まず、実施例5における金属石鹸塗布動作タイミングについて説明する。実施例5においては、像露光及び前露光に関する情報を用いて帯電電流値の閾値を設定し、帯電ローラ2に流れる帯電電流値と比較することにより、金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。
図16は、30℃/80%RHの環境での像露光及び前露光の照射時間と帯電電流との関係をグラフにしたものである。このグラフから、像露光及び前露光の照射時間が増加すると、帯電電流が線形で減少することがわかる。この理由について説明する。画像形成を繰り返す中で、下引き層にマイナス電荷が溜まる。そのため、画像形成を繰り返すと、明部電位Vlが上昇し、帯電電流が減少した。点Cは初期の30℃/80%RHの環境での帯電電流値の閾値である。点Cは初期の30℃/80%RHの環境での帯電電流値の閾値である。点Cを通り、上記直線に平行な直線にすることで、像露光及び前露光の照射時間に応じて帯電電流値の閾値を設定することが出来る。
そこで、この測定データ(像露光及び前露光の照射時間と帯電電流との関係)に基づいて、想定される現状の帯電電流値及び帯電電流値の閾値を算出する計算式を求めて、そのデータを予め画像形成装置100のROM33に格納する。想定される現状の帯電電流値及び帯電電流値の閾値は、メモリ15に記憶された像露光及び前露光に関する情報に対応するROM33に格納された近似式上のデータを採用することにより算出することが出来る。
実施例5においては、プロセスカートリッジ7に搭載したメモリ15に、像露光及び前露光に関する情報として照射時間を記憶する。そして、この情報を用いて、上述の方法で帯電電流値の閾値を算出し、帯電ローラ2に流れる帯電電流値と比較することにより、金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。
2.金属石鹸塗布動作の制御手順
次に、図17のフローチャートを参照して、画像流れの発生を抑制する金属石鹸塗布動作の制御手順について説明する。実施例5では、制御部202によって金属石鹸塗布動作が実行される。
プロセスカートリッジ7はメモリ15を具備しており、メモリ15には、像露光及び前露光の照射時間が記憶されている。プリント信号が入力されると(S81)、画像形成装置100が備えたCPU155は、メモリ15と通信を行い、像露光及び前露光の照射時間を読み込み(S82)、画像形成動作を実行する(S83)。画像形成動作が終了する(S84)と、像露光及び前露光の照射時間を積算し(S85)、プロセスカートリッジ7のメモリ15の像露光及び前露光の照射時間を書き変える(S86)。
次に、像露光及び前露光の照射時間に応じた帯電電流値及び帯電電流値の閾値と、上述のようにCPU155に読み込んだ像露光及び前露光の照射時間とを比較し、想定される現状の帯電電流値と帯電電流値の閾値を決定する(S87)。
帯電電流を検知して所望の帯電電圧における現状の帯電電流値を測定し(S88)、測定された帯電電流値と決定された帯電電流値の閾値とを比較することで金属石鹸塗布動作を実行するタイミングかどうかを判断する(S89)。
測定された帯電電流値が決定された閾値を超えた場合、金属石鹸塗布動作を実行するタイミングとなり、金属石鹸塗布動作を開始する(S90)。
まず、帯電電圧、現像電圧、現像ブレード電圧、供給電圧を印加するとともに、現像ローラ4と感光体1の駆動を開始させ、現像ローラ4を感光体1に当接させる(S91)。
次に、帯電電流を検知しながら、想定される現状の帯電電流値になるまで金属石鹸塗布動作を実行し続ける(S92)。
想定される現状の帯電電流値に達すると、現像ローラ4を感光体1から離間させ、現像ローラ4と感光体1の駆動を停止し、印加していた電圧をOFF(S93)にして、金属石鹸塗布動作を終了する(S94)。
金属石鹸塗布動作が終了すると、続いて、連続プリントの要求があるかを判断し(S95)、連続プリントの要求がなくなるまで、S83~S95の動作を繰り返す。要求がない場合はプリント終了動作に移行(S96)する。
3.効果確認
以下に、実際の効果確認の結果を示す。実施例5、比較例3の画像流れの発生を確認するため、1%印字率で一日10000枚連続通紙後に一日機内で放置し、放置後の画像流れの発生の有無を比較した。一日放置後で評価する理由としては、感光体1の表面上に生成した放電生成物が、一日放置することで十分に吸湿し、感光体1の表面抵抗を下げる影響が顕著に出るからである。画像流れの発生有無を判断するためのサンプルは、ハーフトーン画像を1枚印字し評価した。評価指標は以下の通りである。
〇:発生なし 画像全域で潜像なまりによる白ぬけや画像境界部の輪郭ボケなし
×:発生 画像の一部もしくは全域で潜像なまりによる白抜けや画像境界部の輪郭ボケ発生
通紙及びサンプルの出力環境は30℃/80%RHで行った。全通紙量は120000枚まで行なった。結果を表6に示す。
表6に示すように、実施例5は120000枚印字後においても画像流れが発生しなかった。これに対して、比較例3では、80000枚までは良好であるものの、100000枚で画像流れが発生している。共に、耐久中盤まではトナー残量も多く金属石鹸45cが十分に供給されるため画像流れは良好だった。実施例5、比較例3、共に同じ処方の下引き層を用いている。両方とも、画像形成を繰り返すことでVlアップが発生したことを確認した。
しかし、比較例3では、画像形成を繰り返していくとトナー量が減少し、供給可能な金属石鹸45cが枯渇して画像流れが発生したと考えられる。これは、画像形成を繰り返していく中で、劣化によりキャリア輸送能が低下し、下引き層にマイナス電荷が溜まり、明部電位Vlが上昇した影響を加味しなかったことが原因であると考えられる。比較例3においては、明部電位Vlの上昇に伴った帯電電流値減少の影響を加味することなく、金属石鹸塗布動作の実行条件を設定したため、Vlアップした後は帯電電流の閾値を超えずに金属石鹸塗布動作が実行されない。したがって、Vlアップが発生し、トナー量が減少する100000枚付近で画像流れが発生してしまった。
一方、実施例5の構成においては、画像形成を繰り返すことで明部電位Vlが上昇した場合でも適切なタイミングで金属石鹸塗布動作を実行することが出来る。実施例5では、プロセスカートリッジ7に搭載したメモリ15に、像露光及び前露光に関する情報として照射時間を記憶する。そして、この情報を用いて、上述の方法で帯電電流値の閾値を算出し、帯電ローラ2に流れる帯電電流値と比較することにより、金属石鹸塗布動作タイミングを決定する。その結果、たとえ、Vlアップが発生する感光体1を用いたとしても、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る。したがって、より低廉な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、画像流れの発生を抑制することが可能となった。
尚、本実施例においては、像露光及び前露光に関する情報として照射時間を記憶したが、像露光及び前露光に関する情報は、像露光する照射時間及び照射強度と、前露光する照射時間及び照射強度のうち、少なくとも1つを用いて算出されればよい。
実施例6では、感光体1の表面に保護層を形成することにより、より高寿命な構成においても感光体の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制する構成であることを特徴とする。
1.感光体の保護層
感光体1には、感光層の上に保護層を有してもよい。感光体1が保護層を有する場合は、保護層が表面層となる。本実施例における感光体1は、耐摩耗性改善のため、最表層に耐摩耗性の保護層を設けている。保護層を設けることで、耐久性を向上することが出来る。表面層としての保護層は、ユニバーサル硬さ値(HU)が210以上250以下(N/mm2)であり、かつ弾性変形率(We)が37%以上52%以下である。
保護層は、導電性粒子及び/又は電荷輸送物質と、樹脂とを含有することが好ましい。導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。保護層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
保護層は、上述の各材料及び溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することが出来る。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。実施例1では、保護層の平均膜厚を3μmとした。
実施例2においては、以下に示す材料を用意した。
・下記式(A-12)で示される化合物10部
・下記式(A-25)で示される化合物10部
・1-プロパノール50部
・1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)25部
これらを混合し、撹拌した。その後ポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋(株)製)でこの溶液を濾過することによって、保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、支持体(被照射体)を200rpmの速度で回転させながら、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で1.6秒間電子線を塗膜に照射した。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が25℃から117℃になるまで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は15ppm以下であった。次に、大気中において、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、塗膜の温度が105℃になる条件で30分間加熱処理を行い、膜厚3μmの保護層を形成した。このようにして、支持体、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層をこの順に有する円筒状(ドラム状)の感光体dを製造した。
実施例6の構成において、保護層を設けた感光体1である感光体dを使用することによって、感光体1の表面の摩耗による削れが少なくなる。すなわち、感光体1に形成される表面電位が安定するということである。実施例6の感光体1を用いると、より安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る。したがって、より高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、画像流れの発生を抑制することが可能となった。
実施例7においては、感光体1の表面に対して粗面化処理を行う。実施例1~6では粗面化処理を行わない感光体1を用いた場合について説明してきたが、粗面化処理を行わない感光体1を用いた場合、クリーニングブレード8等によって感光体1の表面に塗布された金属石鹸45cが除去されてしまうことがある。これは、感光体1の表面に凹凸が無い場合に、感光体1の表面に金属石鹸45cを塗布したとしても留まるだけの溝などの引っ掛かりが無いことによる。したがって、実施例1~6よりも高寿命な構成の場合、寿命後半で金属石鹸45cの供給能力が低下してくると、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来ない場合があった。
そこで、実施例7の構成において、適切な粗面化処理を行なった感光体1を用いた場合、感光体1の表面に形成された溝に金属石鹸45cが埋まり、金属石鹸45cが除去されず感光体1の表面に残り続けることが出来る。よって、金属石鹸塗布動作の効果が持続し、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来る。
上記のような効果を発現するためには、感光体1の表面に粗面化処理を施したときに、以下の条件を満たす感光体1を用いることによる。感光体1の周面の十点平均面粗さ(Rz)は0<Rz≦0.70(μm)であり(好ましくは、0.10≦Rz≦0.50(μm))、かつ周面の凹凸の平均間隔(Sm)は0<Sm≦70(μm)(好ましくは、5≦Sm≦70(μm))である。上記範囲とすることで、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが可能であり、その結果、画像流れを長期にわたって抑制することが出来る。そこで、本実施例では、感光体1の表面に適切な凹凸を形成する粗面化処理を行うことにより、より高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制する構成であることを特徴とする。
1.感光体の粗面化処理
本実施例の感光体1は、金属石鹸45cの効果を持続させるため、表面に微小な凹凸を形成する粗面化処理を行っている。特許第4027407号公報によれば、感光体1の周面に、周面の略周方向に延びる幅が0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝が長手方向(母線方向、感光体1の回転軸方向)に複数並ぶように形成されている。
図18に、感光体1の周面1aに形成される溝1bの状態の例を示す。図18に示すように、各溝1bは、それぞれ感光体1の周面1a上においてその周方向に延びる環状の溝であり、周面1aの母線方向において、互いに間隔を空けて並ぶように形成されている。すなわち、周面1aは、溝1bが形成されていない平坦部1cと、溝1bと、が母線方向に交互に形成された構成となっている。なお、周面1aにおいて溝1bが形成される領域は、少なくとも、クリーニングブレード8が当接する領域を含んでいればよく、必ずしも、周面1aの長手方向の全域に渡って形成する必要はない。
なお、上記公報でも述べているように、溝1bは、図18に示すように周方向と同じ方向に延びるように形成される構成に限定されない。例えば、溝1bが周方向に対して10°の角度をもたせて形成される構成でもよい。また、溝1bが周方向に対して±30°の角度をもたせて形成された構成とし、角度の異なる溝1bが互いに交差するように構成してもよい。本実施形態において、「略周方向」とは、完全に周方向である場合とほぼ周方向である場合とを含み、ほぼ周方向とは、具体的には、周方向に対して±60°未満の方向である。
続いて、感光体1の表面を研磨する研磨方法について説明する。図19は、感光体1の表面を研磨する研磨装置の概略図である。研磨シート40は巻き取り機構(不図示)で矢印方向に巻き取られる。感光体1は矢印方向に回転する。バックアップローラー41は矢印方向に回転する。研磨条件としては、研磨シート40として理研コランダム社製の研磨シート(商品名:GC♯3000、基層シート厚:75μm)を用いた。そして、バックアップローラー41としては硬度20°のウレタンローラー(外径:50mm)を用い、侵入量:2.5mm、シート送り量:200~400mm/sとして、研磨シート40の送り方向と感光体1の回転方向を同一として、5~30秒間研磨した。研磨した後の感光体1の表面粗さは、表面粗さ測定機(商品名:SE700、SMB-9、(株)小坂研究所製)を用いて、下記の条件で測定した。感光体1の長手方向に、塗布上端から30、110、185mmの位置において測定し、120°手前に回転させた後、同様にして塗布上端から30、110、185mmの位置において測定した。更に、120°手前に回転させた後、同様にして測定し、計9点の測定を行った。測定条件は、測定長さ:2.5mm、カットオフ値:0.8mm、送り速さ:0.1mm/s、フィルタ特性:2CR、レベリング:直線(全域)とした。
表7に、本実施例において用いる感光体1のRzとSmを示す。表7の感光体e~jは上記粗面化処理条件の研磨時間などを変えて作製した。感光体kは粗面化処理を実施していない実施例1で用いた感光体1である。
感光体1の周面の十点平均面粗さ(Rz)及び凹凸の平均間隔(Sm)は、JIS規格(JIS B 0601)を基準とし、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器サーフコーダSE3500型を用い、以下の条件で測定した。
検出器:R2μm
0.7mNのダイヤモンド針
フィルタ:2CR
カットオフ値:0.8mm
測定長さ:2.5mm
送り速さ:0.1mm
なお、本実施例では、感光体1の母線方向の3箇所において、それぞれの箇所での円周方向について各4箇所の計12箇所を測定箇所とした。感光体1の周面の凹凸の平均間隔(Sm)とは、図18に示すように、周面1aの母線方向において並ぶ、複数の溝1bの母線方向(長手方向)における間隔、あるいは平坦部1cの母線方向(長手方向)における間隔、として定義することが出来る。
2.粗面化処理を行った感光体における金属石鹸塗布動作への効果
次に、感光体1に形成される溝の役割について説明する。感光体1の表面に溝を形成することにより金属石鹸45cが溝に埋まり、金属石鹸45cが除去されず感光体1の表面に残り続けることが出来る。よって、金属石鹸塗布動作の効果が持続し、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来る。上記のような効果を発現するためには、感光体1の表面に粗面化処理を施したときに、以下の条件を満たす感光体1を用いることによる。感光体1の周面の十点平均面粗さ(Rz)は0<Rz≦0.70(μm)であり、かつ周面の凹凸の平均間隔(Sm)は0<Sm≦70(μm)である。上記範囲とすることで、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが可能であり、その結果、画像流れを長期にわたって抑制することが出来る。
表7の感光体iはRz=0.75(μm)であり、感光体1の表面に溝が深く形成されているため、溝を十分に埋めるまで多くの金属石鹸45cが必要となり、効果を発揮することが出来ない。一方、表7の感光体gのRz=0.68(μm)では結果が良好であったことから、Rzが0.70(μm)を超えると、粗面化処理の効果が弱まることが分かった。
また、感光体jはSm=78.5(μm)であるため溝同士の間隔が広く、溝が存在していない部分が多いことでクリーニングブレード8によって金属石鹸45cが除去されてしまう影響が大きく出てしまう。したがって、金属石鹸塗布動作を実行しても感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して維持することが出来ない。感光体hのSm=67.3(μm)では結果が良好であったことから、Smが70.0(μm)を超えると、粗面化処理の効果が弱まることが分かった。
一方、感光体e~hの条件で溝を形成することによって画像流れの抑制に顕著な効果があることが分かった。これは、感光体1の表面に適度な溝が適度な間隔で形成されていることによって、金属石鹸45cを感光体1の表面に保持することが出来た結果である。
以上の結果から、本実施例における粗面化処理を施した感光体1の表面の凹凸形状を、周面の十点平均面粗さ(Rz)の範囲が0<Rz≦0.70(μm)であり、かつ周面の凹凸の平均間隔0<Sm≦70.0(μm)とする。さらに、好適には、周面の十点平均面粗さ(Rz)は0.10≦Rz≦0.50(μm)、かつ周面の凹凸の平均間隔(Sm)は5≦Sm≦70(μm)である。0.10≦Rz≦0.50(μm)、5≦Sm≦70(μm)とすることによって、凹凸が効果的に作用し、金属石鹸45cがさらに感光体1の表面に留まりやすくなる。上記条件の感光体1を用いることで、金属石鹸塗布動作の効果が持続する。その結果、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る構成となり、より高寿命な構成においても感光体の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制することが可能となった。
尚、本実施例の構成と実施例6で用いた感光体1の表面に保護層を設ける構成を組み合わせてもよい。
実施例1~7では、図5に示したような無機ケイ素微粒子を外添したトナーを用いた場合について説明をしてきた。実施例7においては、トナーを変更し、有機ケイ素重合体を含有する表層を有する有機ケイ素重合体トナーを用いた場合について説明する。
実施例1~7のような無機ケイ素を外添したトナーを用いた場合、金属石鹸塗布動作のように感光体1と現像ローラ4の間の摺擦が多くなる動作が実行されると、無機ケイ素がトナーから外れてしまう。トナーから外れてしまった無機ケイ素はトナーと共に感光体1の表面に供給されてしまう。よって、高寿命な構成の場合、寿命後半で金属石鹸45cの塗布能力が低下してしまう。以上のような理由から、無機ケイ素を外添したトナーを用いると、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来ないことがある。
しかしながら、本実施例のように有機ケイ素重合体トナーを用いた場合、機械的な摺擦によっても有機ケイ素重合体がトナーから外れにくく、金属石鹸塗布動作によって金属石鹸45cだけを効率よく感光体1に供給することが出来る。よって、金属石鹸塗布動作の効果が持続し、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来る。そのうえ、本来の無機シリカ外添の効果であるトナーの電荷やトナー物性値のコントロールを、表層の有機ケイ素重合体にて行うことが出来るため、画像に影響を及ぼすことも少ない。
そこで、実施例8は、有機ケイ素重合体を含有する表層を有する有機ケイ素重合体トナーを使用することにより、高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制する構成であることを特徴とする。なお、実施例1~7と重複する部分については説明を割愛する。
1.有機ケイ素重合体を表層に含有するトナー
実施例8では、トナー粒子、及び、トナー粒子の表面を被覆する、以下に記載した式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体を有するトナーを用いる。
R-SiO3/2 (1)
(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
トナー粒子の表面は、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体で被覆され、トナー粒子の最表面に存在する層である表層を有する。表層は従来のトナー粒子に比べてとても硬い。そのため、定着性の観点からトナー粒子表面の一部に表層が形成されていない部分を設けてもよい。有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合(以下、表層の厚み2.5nm以下の割合ともいう)が、20.0%以下であることが好ましい。この条件は、トナー粒子の表面のうち少なくとも80.0%以上が、2.5nm以上の有機ケイ素重合体を含有する表層で構成されていることを近似している。すなわち、本条件を満たすと、有機ケイ素重合体を含有する表層が十分にトナー粒子の表面を被覆することとなる。より好ましくは表層の厚み2.5nm以下の割合が10.0%以下である。測定は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により規定することが出来る。詳細は後述する。
次に、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体に関して説明する。式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。さらに、トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si-NMRの測定で得られるチャートにおいて、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であることが好ましい。詳細な測定法は後述するが、これはトナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体の中でR-SiO3/2で表される部分構造を、20%以上有していることを近似している。
前述の通り、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のSi原子と結合することが、-SiO3/2の構造の意味である。もし、そのうち酸素1つがシラノール基であったとすると、その有機ケイ素重合体の構造はR-SiO2/2-OHで表現される。さらに、酸素2つがシラノール基であれば、その構造はR-SiO1/2(-OH)2となる。これら構造を比較すると、より多くの酸素原子がSi原子と架橋構造を形成するほうが、SiO2で表されるシリカ構造に近い。そのため-SiO3/2骨格が多いほど、トナー粒子表面の表面自由エネルギーを低くすることが出来るため、環境安定性及び耐部材汚染に優れた効果がある。また、式(1)で表される構造による耐久性と、式(1)中のRの疎水性及び帯電性により、表層よりも内部に存在する、染み出しやすい低分子量(=Mw:1000以下)の樹脂、及びガラス転移温度の低い(Tg:40℃以下)の樹脂のブリードが抑えられる。場合によっては離型剤のブリードも抑えられる。
式(1)で示される構造のピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することが出来る。式(1)で表される構造において、Rは炭素数が1以上6以下の炭化水素基である。これにより帯電量が安定しやすい。特に環境安定性に優れている、炭素数が1以上6以下の脂肪族炭化水素基、又はフェニル基が好ましい。本発明の実施形態において、上記Rは炭素数が1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが、帯電性及びカブリ防止のさらなる向上のためにより好ましい。帯電性が良好であると、転写性が良く転写残トナーが少ないため感光体1と帯電ローラ2の汚染が良化する。炭素数が1以上3以下の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はビニル基が好ましく例示出来る。環境安定性と保存安定性の観点から、より好ましくは、Rはメチル基である。有機ケイ素重合体の製造例としては、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法は、液体原料を出発原料に用いて加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経てゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機-無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することが出来る。トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。この有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子に設けることによって、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることが出来る。
さらに、ゾルゲル法は、液体から出発し、その液体をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることが出来る。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類及び量などによって調整することが出来る。有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で示される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
(式(Z)中、R1は、炭素数1以上6以下の炭化水素基を表し、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
R1の炭化水素基(好ましくはアルキル基)により疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることが出来る。また、炭化水素基として芳香族炭化水素基であるアリール基、例えばフェニル基を用いることも出来る。R1の疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みてR1は炭素数1以上3以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。すなわち、有機ケイ素重合体のケイ素原子に直接結合している炭素原子が1個以上3個以下であることが好ましい。R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合して架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることが出来る。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、炭素数1以上3以下のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R2、R3及びR4の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することが出来る。
本発明の実施形態に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3及びR4)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。上記式(Z)としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランのような三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。
また、本実施例の効果を損なわない程度に、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。例えば、以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のビニルシラン。
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は0.5質量%以上10.5質量%以下であることが好ましい。有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上であることで、表層の表面自由エネルギーを更に小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することが出来る。10.5質量%以下であることで、チャージアップを発生し難くすることが出来る。有機ケイ素重合体の含有量は有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することが出来る。有機ケイ素重合体を含有する表層とトナーコア粒子は、隙間なく接していることが好ましい。これにより、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることが出来る。表層には上記の有機ケイ素重合体の他に、スチレン-アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や各種添加剤などを含有させてもよい。
2.NMR測定による部分構造の確認方法
次に、NMR測定によるトナー粒子の部分構造確認方法について説明する。上記に記載のトナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように調製した。トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。なお、外添剤などでトナー粒子の表面が処理されている場合は、下記方法によって外添剤を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)で20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)で表される部分構造の確認には以下の方法を用いる。式(1)のRで表される炭化水素基は、13C-NMRにより確認した。
≪13C-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
上記方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH3)、エチル基(Si-C2H5)、プロピル基(Si-C3H7)、ブチル基(Si-C4H9)、ペンチル基(Si-C5H11)、ヘキシル基(Si-C6H13)またはフェニル基(Si-C6H5-)などに起因するシグナルの有無により、式(1)のRで表される炭化水素基を確認した。次に、トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合の算出方法を説明する。
トナー粒子のTHF不溶分の29Si-NMR(固体)測定を、以下の測定条件で行う。
≪29Si-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:97.38MHz(29Si)
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
試料回転数:10kHz
コンタクト時間:10ms
遅延時間:2s
積算回数:2000~8000回
上記測定後に、トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 式(2)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2)2 式(3)
X3構造:RmSi(O1/2)3 式(4)
X4構造:Si(O1/2)4 式(5)
(式(2)、(3)及び(4)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している、炭素数1~6の炭化水素基などの有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。)
本発明の実施形態においては、トナー粒子のTHF不溶分の29Si-NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であることが好ましい。
なお、上記式(1)で示される構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C-NMR及び29Si-NMRの測定結果と共に1H-NMRの測定結果によって同定してもよい。
3.トナー粒子の断面観察による表層厚み測定方法
次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下の割合の測定方法を説明する。本実施例において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(JEOL製JEM-2800)(TEM)で1万~10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。結着樹脂と表層材料の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行うことが出来る。材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いる。測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値がトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるものとする。
上述のように、JEOL製JEM-2800を用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の暗視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIFQuantamを用い、ThreeWindow法によりマッピング像を取得して表層を確認する。
次に、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、図20のようにトナー粒子断面を均等に16分割する。次に、中心からトナー粒子の表層へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1~32)、分割軸の長さをRAn、表層の厚みをFRAnとする。そして、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有する表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合を求める。平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算する。
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径Dtemを下記式に従って求める。
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み2.5nm以下の割合は以下の式にて表される。
[有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合]=〔{有機ケイ素重合体を含有する表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である分割軸の数}/32〕×100
この計算をトナー粒子10個に対して行い、得られた10個の表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合の平均値を求め、トナー粒子の表層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合とした。
4.トナー製造方法
以下に、実施例8に使用するトナーを具体的に説明するが、これらの実施例に制限されるものではない。実施例中及び比較例中の各材料の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
始めに、水系媒体1の調製工程について説明する。反応容器中のイオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
次に、表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程について説明する。撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを3.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を70℃にした。その後、表層用有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
本実施例のように、有機ケイ素重合体を有する表層を形成する場合は、水系媒体中でトナー粒子を形成する場合には水系媒体中で後述する重合工程などを行いながら前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加して表層を形成させることが出来る。重合後のトナー粒子の分散液をコア粒子分散液として用いて、有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、表層を形成させてもよい。また、混練粉砕法など水系媒体以外の場合には得られたトナー粒子を水系媒体に分散してコア粒子分散液として用いて、前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、表層を形成させることが出来る。
次に、重合性単量体組成物の調製工程について説明する。
・スチレン 60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.5部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 20.0部
・n-ブチルアクリレート 20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) 0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) 7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
次に、造粒工程について説明する。水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
次に、重合工程について説明する。造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行ってコア粒子を得た。スラリーの温度を55℃に冷却してpHを測定したところ、pH=5.0だった。55℃で撹拌を継続したまま、表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を20.0部添加してトナーの表層形成を開始した。そのまま30分保持した後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持し、表層を形成させた。
最後に、洗浄、乾燥工程について説明する。重合工程終了後、トナー粒子のスラリーを冷却し、トナー粒子のスラリーに塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行い、更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
トナー粒子1の断面TEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層にケイ素原子が存在すること、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以下であることを確認した。本実施例においては、得られたトナー粒子に対し、すくなくとも無機ケイ素を外添せずにそのまま実施例8のトナーとして用いた。
トナー粒子の表面におけるトナー粒子の表面を被覆する、式(1)で示される構造を有する有機ケイ素重合体の固着率は、30%以上100%以下であることが好ましい。これは、有機ケイ素重合体が存在していない表層部の面積が増えることで、トナー同士の付着力が増加し、帯電性が変わってしまうためである。
実施例8では、有機ケイ素重合体や無機ケイ素微粒子を母粒子に外添させるのではなく、有機ケイ素重合体をトナー粒子の表面に被覆させたトナーを用いている。外添させたトナーを使用した場合に比べて有機ケイ素重合体がトナーから外れにくい(固着率が高い)ため、金属石鹸45cだけを効率よく感光体1に供給することができ、金属石鹸45cによる画像流れ抑制効果をより維持することが可能となる。
5.有機ケイ素重合体を用いたトナー粒子の効果確認
実施例8では、上記トナーの製造方法を用いて、トナー粒子の表面を被覆する有機ケイ素重合体の固着率が異なるように作製したトナーb~eを用意した。固着率はトナーの作製条件により変わる。本実施例においては、重合工程における加水分解液を添加するときの条件、及び、添加後の保持時間を変えることにより固着率違いのトナーを作製した。尚、pH調整は塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液で行った。表8にそれぞれの固着率違いのトナーを作製するための条件を示す。また、上記方法で作製したトナーb~eは、実施例1と同様の方法で金属石鹸45cとしてステアリン酸亜鉛を0.20質量%外添している。ただし、トナーeに関しては、表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程は行わなかった。代わりに、表層用有機ケイ素化合物のメチルトリエトキシシラン30部をモノマーのまま、重合性単量体組成物の調製工程で添加した。重合工程では、70℃に冷却してpH測定を行った後、加水分解液の添加を行わなかった。70℃で撹拌を継続したまま、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持して表層を形成させた。
有機ケイ素重合体の固着率が高いと、有機ケイ素重合体が感光体1の表面の溝に供給されにくく、金属石鹸45cを感光体1の表面の溝に供給しやすい。これは、有機ケイ素重合体がトナーから外れにくく、金属石鹸塗布動作によって金属石鹸45cだけを効率よく感光体1に供給することが出来るためである。本実施例のトナーb~dのように、有機ケイ素重合体の固着率を90%以上とすることによって、感光体1の表面上に金属石鹸45cを積極的に供給することが可能となる。有機ケイ素重合体の固着率が85%であるトナーeに比べて、金属石鹸塗布動作の効果がさらに大きい。よって、金属石鹸塗布動作による金属石鹸45cの画像流れ抑制効果が持続し、感光体1の表面に金属石鹸45cを長期にわたって安定して塗布することが出来る。
実施例8の構成においては、有機ケイ素重合体を含有する表層を有する有機ケイ素重合体トナーを用いることで、金属石鹸塗布動作による金属石鹸45cの画像流れ抑制効果が持続する。
その結果、安定的に金属石鹸45cを感光体1の表面に維持することが出来る構成となり、より高寿命な構成においても感光体1の耐久性を維持しつつ、簡易な構成によって、画像流れの発生を抑制することが可能となる。
尚、実施例1~7では反転現像を用いたが、それに限るものでなく、正規現像を用いても良い。実施例1~7では負に帯電する感光体1を用いたが、それに限ったものではなく、正に帯電する感光体を用いても良い。
また、実施例1~7では画像形成装置100として、カラーレーザプリンタを用いたが、モノクロレーザプリンタのように、単一のカートリッジ構成を有する画像形成装置100でもよい。
また、中間転写ベルト31を用いるような中間転写方式ではなく、感光体1の表面に形成されたトナー像を記録材Sに直接転写する方式を用いてもよい。
その他、実施例1~7の中で説明として用いた設定条件は一例であり、その限りではない。