本発明は、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチドI型受容体(PAC1)、特にヒトPAC1に特異的に結合する単離された抗体及びその抗原結合断片に関する。本発明の抗体は、前述の抗PAC1アンタゴニスト抗体と比較して、ヒトPAC1に対する増強された阻害力を有する。本発明の抗体は、ラットPAC1受容体及びカニクイザルPAC1受容体とも交差反応し、それによりこれらの種の抗体の前臨床in vivo評価を可能にする。
ヒトPAC1は、7番染色体上のADCYAP1R1遺伝子によりコードされる468アミノ酸タンパク質(NCBI参照配列NP_001109.2)である。ヒトPAC1受容体は、アデニル酸シクラーゼと積極的に結合するGタンパク質共役受容体である。内因性リガンド(例えば、PACAP38又はPACAP27)によるヒトPAC1受容体の活性化により、細胞内環状AMP(cAMP)が増加する。ヒトPAC1についてのアミノ酸配列を配列番号1として下記に示す。
ヒトPAC1タンパク質(配列番号1)のアミノ酸1~23は、一般に成熟タンパク質から除去されるシグナルペプチドを構成する。成熟ヒトPAC1タンパク質は、7回膜貫通ドメイン、N末端領域及び3つの細胞外ループで構成される細胞外ドメイン、3つの細胞内ループ並びにC末端細胞質ドメインからなるGタンパク質共役受容体の基本構造を有する。N末端細胞外ドメインは、およそ配列番号1のアミノ酸24~153にあり、7回膜貫通ドメインの最初は、配列番号1のアミノ酸154で始まる。C末端細胞質ドメインは、配列番号1のおよそアミノ酸397~468に位置している。アミノ酸配列内のドメインの位置については、Blechman and Levkowitz,Front.Endocrinol.,Vol.4(55):1-19,2013を参照されたい。用語「ヒトPAC1」、「ヒトPAC1受容体」、「hPAC1」及び「hPAC1受容体」は、同じ意味で用いられ、配列番号1のポリペプチド、配列番号1のポリペプチドからシグナルペプチド(アミノ酸1~23)を差し引いたもの、ヒトPAC1の対立遺伝子バリアント又はヒトPAC1のスプライスバリアントを指し得る。
本発明は、ヒトPAC1に特異的に結合する抗体を提供する。「抗体」は、抗原に特異的に結合する抗原結合断片を含み、抗原結合断片が、抗体の抗原への結合を促進するコンフォメーションをとることを可能にする骨格又はフレームワーク部分を含むタンパク質である。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、一般的に、2つの軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kDa)及び2つの重鎖ポリペプチド(それぞれ約50~70kDa)を含む四量体免疫グロブリンタンパク質を指す。用語「軽鎖」又は「免疫グロブリン軽鎖」は、アミノ末端からカルボキシル末端に、単一の免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)及び単一の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)を含むポリペプチドを指す。免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)は、ヒトカッパ(κ)又はヒトラムダ(λ)定常ドメインであり得る。用語「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」は、アミノ末端からカルボキシル末端に、単一の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)、免疫グロブリンヒンジ領域、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)及び任意選択的に免疫グロブリン重鎖定常ドメイン4(CH4)を含むポリペプチドを指す。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)として分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。IgGクラス及びIgAクラス抗体は、サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4並びにIgA1及びIgA2にそれぞれ更に分けられる。IgG、IgA及びIgD抗体の重鎖は、3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有し、IgM及びIgE抗体の重鎖は、4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3及びCH4)を有する。免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、サブタイプを含む任意の免疫グロブリンアイソタイプ由来であり得る。抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインとの間(すなわち軽鎖と重鎖との間)及び2つの抗体重鎖のヒンジ領域間のポリペプチド間ジスルフィド結合を介して連結されている。
本発明は、本明細書に記載の抗PAC1抗体の抗原結合断片も含む。本明細書において「結合断片」又は「断片」と同じ意味で用いられる「抗原結合断片」は、完全長の重鎖及び/又は軽鎖に存在するアミノ酸の少なくともいくつかを欠くが、それでもなお抗原に特異的に結合することができる抗体の一部である。抗原結合断片としては、一本鎖可変断片(scFv)、ナノボディ(例えば、ラクダ重鎖抗体のVHドメイン;VHH断片、Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research、Vol.64:2853-57,2004を参照されたい)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片及び相補性決定領域(CDR)断片が挙げられるが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウサギ又はラクダなどの任意の哺乳動物供給源に由来し得る。抗原結合断片は、標的抗原との結合で完全な抗体と競合し得、及び断片は、完全な抗体の改変(例えば、酵素的若しくは化学的切断)によって生成されるか、又は組換えDNA技術若しくはペプチド合成を使用して新たに合成され得る。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体由来の少なくとも1つのCDR、例えば抗原に結合する抗体由来の重鎖CDR3を含む。他の実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体の重鎖由来の3つのCDRの全て又は抗原に結合する抗体の軽鎖由来の3つのCDRの全てを含む。更に他の実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体由来の6つのCDRの全て(重鎖由来の3つ及び軽鎖由来の3つ)を含む。
用語「単離された分子」(分子が例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体又は抗原結合断片である場合)は、その起源又は誘導源のために、(1)その天然状態ではそれに付随する天然に会合したコンポーネントと会合していないか、(2)同じ種由来の他の分子を実質的に含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現するか、又は(4)天然に存在しない分子である。したがって、化学的に合成されるか、又はそれが天然に由来する細胞と異なる細胞系において発現する分子は、その天然に会合するコンポーネントから「単離されて」いる。分子は、当該技術分野でよく知られた精製技術を使用して、単離により、天然に会合したコンポーネントを実質的に含まないようにもされ得る。分子の純度又は均質性は、当該技術分野でよく知られた多くの手段によってアッセイすることができる。例えば、ポリペプチド試料の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び当該技術分野でよく知られた技術を使用してポリペプチドを可視化するゲルの染色を使用してアッセイすることができる。特定の目的のために、HPLC又は当該技術分野でよく知られた他の精製手段を使用することにより、より高い分解能が提供され得る。
本発明の特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPAC1に特異的に結合する。抗体又はその抗原結合断片は、標的抗原に対し、類似の結合アッセイ条件下において、他の無関係なタンパク質に対するその親和性と比較して有意に高い結合親和性を有し、その結果、その抗原を区別することができる場合、標的抗原に「特異的に結合する」。抗原に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片は、平衡解離定数(KD)≦1×10-6Mを有し得る。抗体又は結合断片は、KDが≦1×10-8Mである場合、「高親和性」で抗原に特異的に結合する。一実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦5×10-9MのKDでヒトPAC1に結合する。別の実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦1×10-9MのKDでヒトPAC1に結合する。更に別の実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦5×10-10MのKDでヒトPAC1に結合する。別の実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦1×10-10MのKDでヒトPAC1に結合する。特定の実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦5×10-11MのKDでヒトPAC1に結合する。他の実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦1×10-11MのKDでヒトPAC1に結合する。特定の一実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦5×10-12MのKDでヒトPAC1に結合する。別の特定の実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、≦1×10-12MのKDでヒトPAC1に結合する。
親和性は、種々の手法を用いて決定され、その一例は、親和性ELISAアッセイである。様々な実施形態において、親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore(登録商標)ベースのアッセイ)によって決定される。この方法論を用いて、会合速度定数(ka単位:M-1s-1)及び解離速度定数(kd単位:s-1)を測定することができる。次いで、平衡解離定数(KD単位:M)を速度定数の比(kd/ka)から計算することができる。いくつかの実施形態では、親和性は、Rathanaswami et al.,Analytical Biochemistry,Vol.373:52-60,2008に記載されているような結合平衡除外法(KinExA)などの速度論的方法によって決定される。KinExAアッセイを用いて、平衡解離定数(KD単位:M)及び会合速度定数(ka単位:M-1s-1)を測定することができる。解離速度定数(kd単位:s-1)は、これらの値(KD×ka)から計算することができる。他の実施形態では、親和性は、Kumaraswamy et al.,Methods Mol.Biol.,Vol.1278:165-82,2015に記載され、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio)で使用されているようなバイオレイヤー干渉法によって決定される。速度定数(ka及びkd)及び親和性定数(KD)は、バイオレイヤー干渉法を用いて実時間で計算することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体又は結合断片は、約10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10s-1若しくはそれ未満のヒトPAC1に対するkd(解離速度定数)によって測定される結合親和力(値が小さいほどより大きい結合親和力を示す)及び/又は約10-8、10-9、10-10、10-11、10-12M若しくはそれ未満のヒトPAC1に対するKD(平衡解離定数)によって測定される結合親和性(値が小さいほどより高い結合親和性を示す)などの望ましい特性を示す。
好ましくは、本発明の抗体又は結合断片は、セクレチン/グルカゴン受容体ファミリーの他のメンバー、例えばヒトVPAC1受容体(NCBI参照配列NP_004615.2)及びヒトVPAC2受容体(NCBI参照配列NP_003373.2)と有意に結合又は交差反応しない。本明細書で使用する場合、抗体又は結合断片は、同様の結合アッセイ条件下において、その抗原に対する結合親和性が他の無関係なタンパク質に対する親和性に匹敵する場合、標的抗原に「有意に結合しない」。標的抗原に有意に結合しない抗体又は結合断片は、標的抗原について、本明細書に記載されているものなどの親和性アッセイにおける陰性対照と統計的に異なるシグナルを生成しないタンパク質も含み得る。例として、ELISA系又はBIAcore(登録商標)系アッセイにおいて陰性対照(例えば、抗体を含まないバッファー)で生成されたシグナル値と統計的に異ならない、ヒトVPAC1への結合を決定するためのシグナル値を生成する抗体は、ヒトVPAC1に有意に結合しないと考えられる。抗原に有意に結合しない抗体又は結合断片は、1×10-6Mより大きい、1×10-5Mより大きい、1×10-4Mより大きい又は1×10-3Mより大きい、その抗原についての平衡解離定数(KD)を有し得る。そのため、特定の実施形態では、本発明の抗体及び結合断片は、ヒトVPAC1及びヒトVPAC2と比較してヒトPAC1に選択的に結合する。換言すれば、本発明の抗体及び結合断片は、ヒトVPAC1又はヒトVPAC2に有意に結合しない。
本発明の抗体及び抗原結合断片は、ヒトPAC1受容体の1つ以上の生物学的活性を阻害、干渉又は調節し得る。ヒトPAC1受容体の生物学的活性としては、PACAP媒介受容体シグナル伝達経路の誘発、血管拡張の誘発及び血管収縮の阻害が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、PACAP(例えば、PACAP38又はPACAP27)のヒトPAC1受容体への結合を阻害する。「結合の阻害」は、過剰な抗体又は結合断片が、PACAPに結合したヒトPAC1受容体の量を減少させる場合又はその逆の場合に発生し、例えばin vitroでの競合結合アッセイで結合を測定することにより、例えば少なくとも約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%又はそれを超える。本発明の抗体又は抗原結合断片がPACAPのヒトPAC1受容体への結合を防ぐうえでどの程度強力であるかを示す阻害定数(Ki)は、そのような競合結合アッセイから計算することができる。例として、放射性同位体(例えば、125I)は、受容体リガンド(例えば、PACAP38)に結合し、アッセイは、抗PAC1抗体又はその結合断片の濃度を増加させて、放射性標識リガンドのヒトPAC1受容体への結合を測定する。Ki値は、式Ki=IC50/(1+([L]/Kd))(式中、[L]は、使用される放射性リガンド(例えば、125I標識されたPACAP38)の濃度であり、Kdは、放射性リガンドの解離定数である)を用いて計算することができる。例えば、Keen M,MacDermot J(1993)Analysis of receptors by radioligand binding.In:Wharton J,Polak JM(eds)Receptor autoradiography,principles and practice.Oxford University Press,Oxford.を参照されたい。アンタゴニストについてのKiの値が低いほど、アンタゴニストが強力になる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPAC1受容体への結合について、≦1nMのKiで放射標識されたPACAPリガンドと競合する。他の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPAC1受容体への結合について、≦500pMのKiで放射標識されたPACAPリガンドと競合する。更に他の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPAC1受容体への結合について、≦200pMのKiで放射標識されたPACAPリガンドと競合する。特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPAC1受容体への結合について、≦100pMのKiで放射標識されたPACAPリガンドと競合する。
特定の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合断片は、ヒトPAC1受容体のリガンド誘導活性化を阻害する。リガンドは、PACAP38若しくはPACAP27などの受容体の内因性リガンドであり得るか、又はリガンドは、マキサジランなどの受容体の別の既知のアゴニストであり得る。マキサジランは、もともと、VPAC1又はVPAC2と比較してPAC1に対して非常に選択的である、サシチョウバエから単離された65アミノ酸のペプチドであり、PAC1選択的アゴニストとして使用できる(Lerner et al.,J Biol Chem.,Vol.266(17):11234-11236,1991;Lerner et al.,Peptides,Vol.28(9):1651-1654,2007)。PAC1受容体の活性化を評価するための様々なアッセイは、当該技術分野において既知であり、リガンド誘導カルシウム可動化及びcAMP生成を測定する細胞系アッセイが挙げられる。例示的な細胞系cAMPアッセイを実施例3に記載する。他の好適なPAC1受容体活性化アッセイは、Dickson et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,Vol.1070:239-42,2006;Bourgault et al.,J.Med.Chem.,Vol.52:3308-3316,2009;及び米国特許出願公開第2011/0229423号明細書(これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
PAC1受容体活性化に対する抗体又は抗原結合断片の阻害活性は、上記のものなどの受容体についての任意の機能アッセイでIC50を計算することによって定量化することかできる。「IC50」は、生物学的又は生化学的機能の50%阻害を達成するのに必要な用量/濃度である。放射性リガンドの場合、IC50は、放射性リガンドの特異的結合の50%を置換する競合リガンドの濃度である。任意の特定の物質又はアンタゴニストのIC50は、用量反応曲線を構築し、特定の機能アッセイにおけるアゴニスト活性の逆転に対する異なる濃度の薬物又はアンタゴニストの効果を試験することによって決定され得る。アゴニストの最大の生物学的応答の半分を阻害するのに必要な濃度を決定することにより、IC50値を所与のアンタゴニスト又は物質について算出することができる。したがって、本発明の抗PAC1抗体又はその結合断片のIC50値は、機能アッセイ、例えば実施例で記載されたcAMPアッセイなどにおいて、ヒトPAC1受容体の活性化におけるリガンド(例えば、PACAP27、PACAP38又はマキサジラン)の最大生物学的応答の半分を阻害するのに必要な抗体又は結合断片の濃度を決定することによって算出することができる。PAC1受容体のリガンド誘導(例えば、PACAP誘導)活性化を阻害する抗PAC1抗体又はその結合断片は、中和若しくはアンタゴニスト抗体又はPAC1受容体の結合断片であると理解されている。
特定の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、ヒトPAC1受容体のPACAP誘導(PACAP38誘導又はPACAP27誘導)活性化を阻害する。例えば、抗体又は抗原結合断片は、細胞系カルシウム可動化アッセイ又はcAMPアッセイによって測定された際に約10nM未満、約8nM未満、約5nM未満、約3nM未満、約1nM未満、約800pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満又は約100pM未満のIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害し得る。特定の一実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約5nM未満のIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。別の特定の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約1nM未満のIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。更に別の特定の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約500pM未満のIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約300pM未満のIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約0.1nM~約1nMのIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。他の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約50pM~約500pMのIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、他の種由来のPAC1受容体に結合し、且つそれを阻害する。例えば、抗体又は抗原結合断片は、カニクイザルPAC1受容体(NCBI参照配列XP_015303041.1)に結合し、且つそれを阻害する。このような実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、細胞系カルシウム可動化アッセイ又はcAMPアッセイによって測定された際に約10nM未満、約8nM未満、約5nM未満、約3nM未満、約1nM未満、約800pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満又は約100pM未満のIC50でカニクイザルPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。一実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約1nM未満のIC50でカニクイザルPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約500pM未満のIC50でカニクイザルPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。更に別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約0.1nM~約1nMのIC50でカニクイザルPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。更に別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約50pM~約500pMのIC50でカニクイザルPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。
特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ラットPAC1受容体(NCBI参照配列NP_598195.1)に結合し、且つそれを阻害する。これらの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、細胞系カルシウム可動化アッセイ又はcAMPアッセイによって測定された際に約10nM未満、約8nM未満、約5nM未満、約3nM未満、約1nM未満、約800pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満又は約100pM未満のIC50でラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害し得る。一実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約10nM未満のIC50でラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約5nM未満のIC50でラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。更に別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約500pM未満のIC50でラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。更に別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約300pM未満のIC50でラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約0.1nM~約10nMのIC50でラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。更に別の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に約100pM~約2nMのIC50でラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害する。本発明の抗体又は結合断片が、他の種由来のPAC1受容体と交差反応するいくつかの実施形態では、抗体又は結合断片は、同程度の効力でPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害し得る。例えば、本発明の抗体又は結合断片は、カニクイザル又はラットPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害するために、抗体又は結合断片についてのIC50と同様のIC50でヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害し得る。他の種のPAC1受容体の、本発明の抗体又は結合断片との交差反応性は、抗体又は結合断片が治療効果について追加の前臨床動物モデルで評価することができるため、有利であり得る。
一般に、本発明の抗体又は抗原結合断片は、ヒトVPAC1受容体又はVPAC2受容体のリガンド誘導(例えば、PACAP38誘導、PACAP27誘導又はVIP誘導)活性化を有意に阻害しない。本明細書で使用する場合、抗体又は抗原結合断片の存在下又は非存在下で受容体のリガンド誘導体活性化又は受容体へのリガンド結合間に統計的差異がない場合、抗体又は抗原結合断片は、受容体の活性化又はその受容体へのリガンドの結合を「有意に阻害しない」。例えば、抗体又は結合断片の存在下でヒトVPAC1受容体を発現する細胞においてPACAP又はVIPにより誘導されるcAMP生成量が、抗体又は結合断片の非存在下で生成される量と統計的に異ならない場合、抗体又は結合断片は、ヒトVPAC1受容体のPACAP/VIP誘導活性化を有意に阻害しないと考えられる。同様に、過剰な抗体又は結合断片の存在下でヒトVPAC1受容体に結合したPACAP又はVIPの量が、抗体又は結合断片の非存在下で受容体に結合したPACAP又はVIPの量と統計的に異ならない場合、抗体又は結合断片は、PACAP又はVIPのヒトVPAC1受容体との結合を有意に阻害しないと考えられる。特定の実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、ヒトPAC1受容体のPACAP誘導活性化を阻害するが、ヒトVPAC1受容体又はヒトVPAC2受容体のPACAP誘導活性化を有意に阻害しない。したがって、本発明の抗体及び結合断片は、ヒトVPAC1受容体及びヒトVPAC2受容体に対してヒトPAC1受容体を選択的に阻害する。
本発明の抗体及び結合断片は、いくつかの実施形態では、ヒトPAC1の特定の領域又はエピトープに結合し得る。本明細書で使用する場合、「エピトープ」は、抗体又はその断片によって特異的に結合され得る任意の決定基を指す。エピトープは、その抗原を標的とする抗体若しくは結合断片によって結合されるか、又はそれと相互作用する抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合、抗体若しくは結合断片と直接接触するか、又はそれと相互作用する特定のアミノ酸を含む。エピトープは、タンパク質の三次フォールディングによって並置された連続アミノ酸又は非連続アミノ酸の両方によって形成され得る。「線状エピトープ」は、アミノ酸一次配列が認識されるエピトープを含むエピトープである。線状エピトープは、一般的には、少なくとも3又は4個のアミノ酸を含み、より一般的には少なくとも5個、少なくとも6個又は少なくとも7個のアミノ酸、例えば特有の配列の約8~約10個のアミノ酸を含む。「立体構造エピトープ」は、線状エピトープとは対照的に、不連続なアミノ酸の群(例えば、ポリペプチドにおいて、ポリペプチドの一次配列は連続していないが、ポリペプチドの三次及び四次構造の観点では抗体又はその結合断片によって結合されるのに十分に互いに近いアミノ酸残基)である。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面グループを含み得、且つ特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。一般に、特定の標的分子に特異的な抗体又は結合断片は、タンパク質及び/又は巨大分子の複合混合物中の標的分子上のエピトープを優先的に認識する。
特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ヒトPAC1のN末端側細胞外ドメイン(配列番号4)内のエピトープでヒトPAC1に結合する。関連する実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸24~153内のエピトープでヒトPAC1に結合する。他の関連する実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸50~140内のエピトープでヒトPAC1に結合する。実施例1に記載されているように、ヒトPAC1N末端ECDと抗PAC1中和抗体のFab領域との複合体の結晶構造は、抗PAC1 Fabとの結合界面を構成するヒトPAC1 ECD内の重要なアミノ酸を明らかにした。これらのコア界面アミノ酸は、全てFab内の非水素原子から5Å以下の距離に少なくとも1つの非水素原子を含み、Asp59、Asn60、Ile61、Arg116、Asn117、Thr119、Asp121、Gly122、Trp123、Ser124、Glu125、Pro126、Phe127、Pro128、His129、Tyr130、Phe131、Asp132及びGly135(配列番号1に対するアミノ酸位置番号)が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗体又は結合断片は、配列番号1のAsp59、Asn60、Ile61、Arg116、Asn117、Thr119、Glu120、Asp121、Gly122、Trp123、Ser124、Glu125、Pro126、Phe127、Pro128、His129、Tyr130、Phe131、Asp132及びGly135から選択される1つ以上のアミノ酸を含むエピトープでヒトPAC1に結合する。他の実施形態では、抗体又は結合断片は、配列番号1の少なくともアミノ酸Asn60、Ile61、Glu120及びAsp121を含むエピトープでヒトPAC1に結合する。更に他の実施形態では、抗体又は結合断片は、配列番号1の少なくともアミノ酸Asn60、Ile61、Glu120、Asp121、Phe127及びPhe131を含むエピトープでヒトPAC1に結合する。特定の他の実施形態では、抗体又は結合断片は、配列番号1のAsp59、Asn60、Ile61、Arg116、Asn117、Thr119、Glu120、Asp121、Gly122、Trp123、Ser124、Glu125、Pro126、Phe127、Pro128、His129、Tyr130、Phe131、Asp132及びGly135から選択されるアミノ酸の全てを含むエピトープでヒトPAC1に結合する。
実施例1で記載されるヒトPAC1 ECD-Fab複合体の結晶構造は、ヒトPAC1 ECD中のアミノ酸と相互作用するFabの重鎖及び軽鎖のCDRにおいて重要な残基も明らかにし、それにより抗体のパラトープにおける重要なアミノ酸を同定した。「パラトープ」は、標的抗原を認識して結合する抗体の領域である。パラトープ残基としては、軽鎖可変領域(配列番号3)中のGln27、Gly30、Arg31及びSer32並びに重鎖可変領域(配列番号2)中のArg31、Phe32、Tyr53、Asp54、Gly56が挙げられる。パラトープ内のこれらの残基のいくつかの特定の変異は、ヒトPAC1 ECDのコア界面残基(すなわちエピトープ内の残基)との相互作用を改善するように設計されており、親抗体と比較して結合親和性と阻害力が強化された(実施例1~3を参照されたい)。配列番号3又は列番号52の軽鎖可変領域におけるGln27、Gly30、Arg31及びSer32は、それぞれAHo番号付けで29、32、39及び40位のアミノ酸に対応し、配列番号2又は配列番号191の重鎖可変領域におけるArg31、Phe32、Tyr53、Asp54、Gly56は、それぞれAHo番号付けで33、39、60、61及び66位のアミノ酸に対応する。AHo番号付けスキームは、構造ベースの番号付けスキームであり、これは、CDR領域にギャップを導入して、整列したドメインの平均構造からの偏差を最小化する(Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657-670;2001)。AHo番号付けスキームでは、異なる抗体における構造的に均等な位置は、同じ残基番号を有する。
いくつかの実施形態では、本発明は、ヒトPAC1(配列番号1)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、(i)AHo番号付けによる29位のアミノ酸が、ヒトPAC1のアミノ酸Glu120又はAsp121と相互作用する塩基性アミノ酸である軽鎖可変領域と、(ii)AHo番号付けによる61位のアミノ酸が、ヒトPAC1のアミノ酸Asn60又はIle61と相互作用する疎水性、塩基性又は中性親水性アミノ酸である重鎖可変領域とを含む抗体又はその抗原結合断片を提供する。本明細書で使用する場合、1つのアミノ酸の1つ以上の原子が他のアミノ酸の1つ以上の原子と例えばファンデルワールス力、疎水力又は静電気力を介して非共有結合を形成する場合、1つのアミノ酸は、別のアミノ酸と「相互作用」すると言われる。塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン及びヒスチジンが挙げられるが、中性親水性アミノ酸としては、グルタミン、セリン及びトレオニンが挙げられる。疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アラニン、イソロイシン、ロイシン及びバリンが挙げられる。特定の実施形態では、軽鎖可変領域におけるAHo番号付けによる29位のアミノ酸は、リジン又はアルギニンである。特定の一実施形態では、軽鎖可変領域におけるAHo番号付けによる29位のアミノ酸は、リジンである。関連実施形態では、重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる61位のアミノ酸は、イソロイシン、ロイシン、バリン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンである。一実施形態では、重鎖可変領域におけるのAHo番号付けによる61位のアミノ酸は、イソロイシンである。別の実施形態では、重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる61位のアミノ酸は、グルタミン又はアスパラギンである。更に別の実施形態では、重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる61位のアミノ酸は、アルギニンである。
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる66位のアミノ酸は、ヒトPAC1(配列番号1)のアミノ酸Asn60又はIle61と相互作用する塩基性若しくは中性親水性アミノ酸である。重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる66位のアミノ酸は、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンであり得る。一実施形態では、重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる66位のアミノ酸は、アルギニンである。別の実施形態では、重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる66位のアミノ酸は、アスパラギンである。
上記のパラトープ-エピトープ相互作用は、ピコモル範囲のIC50値で阻害力の改善と相関することが判明した。実施例3を参照されたい。そのため、AHo番号付けによる、軽鎖可変領域における29位の上記特定のアミノ酸並びに重鎖可変領域における61及び/又は66位のアミノ酸を有し、且つヒトPAC1受容体における特定の残基(配列番号1のGlu120、Asp121、Asn60及び/又はIle61)と相互作用する抗体又はその抗原結合断片は、強化された阻害力、例えば細胞系cAMPアッセイによって測定された際に500pM未満のIC50でヒトPAC1のPACAP誘導活性化を阻害することが期待される。いくつかの実施形態では、このような抗体又は抗原結合断片は、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に300pM未満のIC50でヒトPAC1のPACAP誘導活性化を阻害し得る。これらの実施形態及び他の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号52の配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号191の配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域とを有し得る。
本発明の抗体又は抗原結合断片は、本明細書に記載されるように、ヒトPAC1に特異的に結合する抗体の軽鎖及び重鎖可変領域由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含み得る。用語「CDR」は、抗体可変配列内の相補性決定領域(「最小認識単位」又は「超可変領域」とも呼ばれる)を指す。3つの重鎖可変領域CDR(CDRH1、CDRH2及びCDRH3)及び3つの軽鎖可変領域CDR(CDRL1、CDRL2及びCDRL3)が存在する。本明細書で使用される用語「CDR領域」は、単一の可変領域に存在する3つのCDR(すなわち3つの軽鎖CDR又は3つの重鎖CDR)の群を指す。2つの鎖の各々におけるCDRは、典型的には、フレームワーク領域(FR)によって整列され、標的タンパク質(例えば、ヒトPAC1)上の特定のエピトープ又はドメインと特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端まで、天然に存在する軽鎖及び重鎖可変領域の両方は、典型的には、これらの要素が以下の順序に従う:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。これらのドメインの各々に位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための番号付けシステムが考案されている。この番号付けシステムは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987及び1991,NIH,Bethesda,MD)又はChothia&Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:878-883に定義されている。所与の抗体の相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)は、このシステムを使用して同定され得る。免疫グロブリン鎖におけるアミノ酸のための他の番号付けシステムには、IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system;Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.29:185-203;2005)及びAHo(Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657-670;2001)が含まれる。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の抗PAC1抗体のいずれかに由来する、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む少なくとも1つの重鎖可変領域を含む。例示的なヒト抗PAC1抗体の軽鎖及び重鎖可変領域並びに関連するCDRを以下の表1A及び1Bにそれぞれ記載する。
本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、それぞれ表1A及び1Bで示される軽鎖CDR(すなわちCDRL)及び/又は重鎖CDR(すなわちCDRH)の1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体又はその結合断片は、抗体29G4v9、29G4v10又は29G4v22から誘導される(すなわち29G4v9、29G4v10又は29G4v22抗体のCDRL及び/又はCDRHの1つ以上で1つ以上の置換を有する)。例えば、特定の実施形態では、抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、(i)配列番号5~16から選択されるCDRL1、(ii)配列番号26のCDRL2、及び(iii)配列番号36~38から選択されるCDRL3、並びに(iv)1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、4つ若しくはそれを超えるアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失又は5つ、4つ、3つ、2つ若しくは1つ以下のアミノ酸の挿入を含有する(i)、(ii)及び(iii)のCDRLから選択される1つ以上の軽鎖CDRを含む。これら及び他の実施形態では、抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、(i)配列番号88~96から選択されるCDRH1、(ii)配列番号106~166から選択されるCDRH2、及び(iii)配列番号171~177から選択されるCDRH3、並びに(iv)1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、4つ若しくはそれを超えるアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失又は5つ、4つ、3つ、2つ若しくは1つ以下のアミノ酸の挿入を含有する(i)、(ii)及び(iii)のCDRHから選択される1つ以上の重鎖CDRを含む。
他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその結合断片は、抗体19H8から誘導される(すなわち19H8抗体のCDRL及び/又はCDRHの1つ以上で1つ以上の置換を有する)。このような実施形態では、抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、(i)配列番号17~25から選択されるCDRL1、(ii)配列番号27~35から選択されるCDRL2、及び(iii)配列番号39~51から選択されるCDRL3、並びに(iv)1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、4つ若しくはそれを超えるアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失又は5つ、4つ、3つ、2つ若しくは1つ以下のアミノ酸の挿入を含有する(i)、(ii)及び(iii)のCDRLから選択される1つ以上の軽鎖CDRを含む。これら及び他の実施形態では、抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、(i)配列番号97~105から選択されるCDRH1、(ii)配列番号167~170から選択されるCDRH2、及び(iii)配列番号178~190から選択されるCDRH3、並びに(iv)1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、4つ若しくはそれを超えるアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、欠失又は5つ、4つ、3つ、2つ若しくは1つ以下のアミノ酸の挿入を含有する(i)、(ii)及び(iii)のCDRHから選択される1つ以上の重鎖CDRを含む。
特定の実施形態では、抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、表1A及び1Bに列挙したCDRの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのバリアント形態(それぞれ表1A及び1Bに列挙したCDR配列と少なくとも80%、85%、90%又は95%の配列同一性を有する)を含み得る。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、表1A及び1Bに列挙したCDRの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ(それぞれこれらの表に列挙したCDRと1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸が異なる)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、配列番号5~16から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRL1;配列番号26の配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRL2;配列番号36~38から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRL3;配列番号88~96から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRH1;配列番号106~166から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRH2;及び配列番号171~177から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRH3を含む。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、配列番号5~16から選択される配列を含むCDRL1;配列番号26の配列を含むCDRL2;配列番号36~38から選択される配列を含むCDRL3;配列番号88~96から選択される配列を含むCDRH1;配列番号106~166から選択される配列を含むCDRH2;及び配列番号171~177から選択される配列を含むCDRH3を含む。
他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、配列番号17~25から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRL1;配列番号27~35から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRL2;配列番号39~51から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRL3;配列番号97~105から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRH1;配列番号167~170から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRH2;及び配列番号178~190から選択される配列又は1つ、2つ、3つ若しくは4つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含むCDRH3を含む。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、配列番号17~25から選択される配列を含むCDRL1;配列番号27~35から選択される配列を含むCDRL2;配列番号39~51から選択される配列を含むCDRL3;配列番号97~105から選択される配列を含むCDRH1;配列番号167~170から選択される配列を含むCDRH2;及び配列番号178~190から選択される配列を含むCDRH3を含む。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、(a)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有するか;(b)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有するか;(c)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号12、26及び36の配列を有するか;又は(d)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号13、26及び36の配列を有する。
他の特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、(a)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び171の配列を有するか;(b)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、116及び171の配列を有するか;(c)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、134及び171の配列を有するか;(d)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号92、145及び174の配列を有するか;(e)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び172の配列を有するか;(f)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、128及び172の配列を有するか;(g)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、153及び171の配列を有するか;(i)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、154及び171の配列を有するか;又は(j)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、155及び171の配列を有する。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
(a)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び171の配列を有するか;
(b)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、116及び171の配列を有するか;
(c)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、134及び171の配列を有するか;
(d)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号92、145及び174の配列を有するか;
(e)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び172の配列を有するか;
(f)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、128及び172の配列を有するか;
(g)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、134及び171の配列を有するか;
(h)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号12、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、153及び171の配列を有するか;
(i)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号12、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、154及び171の配列を有するか;又は
(j)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号13、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、155及び171の配列を有する。
一実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び171の配列を有する。別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、116及び171の配列を有する。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、134及び171の配列を有する。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号92、145及び174の配列を有する。1つの特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び172の配列を有する。別の特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号12、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、153及び171の配列を有する。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域を含み、(a)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号25、31及び42の配列を有するか;(b)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号20、30及び44の配列を有するか;(c)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、33及び42の配列を有するか;(d)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号23、31及び50の配列を有するか;(e)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、31及び44の配列を有するか;(f)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、27及び39の配列を有するか;(g)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号18、31及び46の配列を有するか;(h)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、28及び40の配列を有するか;(i)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号18、30及び43の配列を有するか;又は(j)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号22、28及び49の配列を有する。
特定の他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、(a)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び190の配列を有するか;(b)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有するか;(c)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号99、168及び187の配列を有するか;(d)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号97、167及び178の配列を有するか;(e)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び189の配列を有するか;(f)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び179の配列を有するか;又は(g)CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号102、169及び182の配列を有する。
いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、
(a)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号25、31及び42の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び190の配列を有するか;
(b)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号20、30及び44の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有するか;
(c)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、33及び42の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号99、168及び187の配列を有するか;
(d)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号23、31及び50の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号97、167及び178の配列を有するか;
(e)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、31及び44の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び189の配列を有するか;
(f)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、27及び39の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有するか;
(g)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号18、31及び46の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び179の配列を有するか;
(h)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、28及び40の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び179の配列を有するか;
(i)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号18、30及び43の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有するか;又は
(j)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号22、28及び49の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号102、169及び182の配列を有する。
一実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号25、31及び42の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び190の配列を有する。別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号20、30及び44の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有する。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、33及び42の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号99、168及び187の配列を有する。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号23、31及び50の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号97、167及び178の配列を有する。1つの特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、31及び44の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び189の配列を有する。別の特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びにCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、27及び39の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有する。
特定の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合断片は、ヒトPAC1に特異的に結合する抗体、例えば本明細書中に記載される抗体由来の、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む。本明細書において「可変ドメイン」(軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH))と同じ意味で用いられる「可変領域」は、抗体の抗原への結合に直接関与する、軽免疫グロブリン鎖及び重免疫グロブリン鎖のそれぞれにおける領域を指す。上記のように、可変軽鎖及び可変重鎖の領域は、同じ一般構造を有し、各領域は4つのフレームワーク(FR)領域を含み、それらの配列は、広く保存され、3つのCDRによって連結されている。フレームワーク領域は、β-シート構造を採用し、CDRは、β-シート構造を接続するループを形成し得る。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によってそれらの三次元構造に保持され、他方の鎖のCDRと共に抗原結合部位を形成する。
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片は、表1Aに示されるようなLV-01~LV-15から選択される軽鎖可変領域及び/又は表1Bに示されるようなHV-01~HV-105から選択される重鎖可変領域並びにこれらの軽鎖及び重鎖可変領域の結合断片、誘導体及びバリアントを含み得る。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片は、表1Aに示されるようなLV-16~LV-36から選択される軽鎖可変領域及び/又は表1Bに示されるようなHV-106~HV-122から選択される重鎖可変領域並びにこれらの軽鎖及び重鎖可変領域の結合断片、誘導体及びバリアントを含み得る。
表1Aに列挙した軽鎖可変領域の各々は、表1Bに列挙した重鎖可変領域のいずれかと組み合わされて、本発明の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を形成し得る。このような組み合わせの例としては、(i)LV-03とHV-03~HV-26、HV-32~HV-47及びHV-57~HV-62のいずれか1つ;(ii)LV-04とHV-11~HV-91のいずれか1つ;(iii)LV-05とHV-01、HV-03、HV-07、HV-09及びHV-10のいずれか1つ;(iv)LV-06とHV-01、HV-03、HV-07、HV-09及びHV-10のいずれか1つ;(v)LV-07とHV-01、HV-03、HV-07、HV-09及びHV-10のいずれか1つ;(vi)LV-08とHV-01;(vii)LV-09とHV-01;(viii)LV-10とHV-01;(ix)LV-11とHV-92、HV-93、HV-95~HV-97及びHV-99~HV-101のいずれか1つ;(x)LV-12とHV-94;(xi)LV-13とHV-98;(xii)LV-14とHV-102~HV-104のいずれか1つ;(xiii)LV-15とHV-105;(xiv)LV-17とHV-107;(xv)LV-18とHV-108;(xvi)LV-19とHV-109;(xvii)LV-20とHV-110;(xviii)LV-21とHV-110;(xix)LV-22とHV-111;(xx)LV-23とHV-107;(xxi)LV-24とHV-112;(xxii)LV-25とHV-113;(xxiii)LV-26とHV-114;(xxiv)LV-27とHV-106又はHV-110;(xxv)LV-28とHV-115又はHV-118;(xxvi)LV-29とHV-116;(xxvii)LV-30とHV-117;(xxviii)LV-31とHV-119;(xxix)LV-32とHV-120;(xxx)LV-33とHV-121;(xxxi)LV-34とHV-122;(xxxii)LV-35とHV-110;並びに(xxxiii)LV-36とHV-110が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-03(配列番号54)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-04(配列番号194)の配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-03(配列番号54)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-13(配列番号203)の配列を含む重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-04(配列番号55)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-38(配列番号228)の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-04(配列番号55)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-84(配列番号274)の配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-03(配列番号54)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-24(配列番号214)の配列を含む重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-04(配列番号55)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-50(配列番号240)の配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-03(配列番号54)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-38(配列番号228)の配列を含む重鎖可変領域を含む。別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-11(配列番号62)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-92(配列番号282)の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-11(配列番号62)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-93(配列番号283)の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-12(配列番号63)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-94(配列番号284)の配列を含む重鎖可変領域を含む。
特定の他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-34(配列番号85)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-122(配列番号312)の配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-21(配列番号72)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-110(配列番号300)の配列を含む重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-30(配列番号81)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-117(配列番号307)の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-27(配列番号78)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-106(配列番号296)の配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-32(配列番号83)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-120(配列番号310)の配列を含む重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-36(配列番号87)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-110(配列番号300)の配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-23(配列番号74)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-107(配列番号297)の配列を含む重鎖可変領域を含む。別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-17(配列番号68)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-107(配列番号297)の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-20(配列番号71)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-110(配列番号300)の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、LV-26(配列番号77)の配列を含む軽鎖可変領域及びHV-114(配列番号304)の配列を含む重鎖可変領域を含む。
いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、表1Aの軽鎖可変領域の配列、すなわちLV-01~LV-36から選択されるVLと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基のみで異なる連続するアミノ酸の配列を含む軽鎖可変領域を含み、そのような配列の相違は、それぞれ独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入又は置換であり、欠失、挿入及び/又は置換は、前述の可変ドメイン配列に対して15以下のアミノ酸の変化をもたらす。いくつかの抗PAC1抗体及び結合断片の軽鎖可変領域は、配列番号52~87(すなわち表1A中の軽鎖可変領域)のアミノ酸配列(すなわち表1A中の軽鎖可変領域)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
一実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号54~66から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号54~66から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号54~66から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号54の配列を含む軽鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号55の配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号62の配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号63の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68~87から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68~87から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68~87から選択される配列を含む軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68の配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号71の配列を含む軽鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号72の配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号74の配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号77の配列を含む軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号78の配列を含む軽鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号81の配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号83の配列を含む軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号85の配列を含む軽鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号87の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
これらの実施形態及び他の実施形態では、抗PAC1抗体及びその抗原結合断片は、表1Bの重鎖可変領域の配列、すなわちHV-01~HV-122から選択されるVHと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基のみで異なる連続するアミノ酸の配列を含む重鎖可変領域を含み、そのような配列の相違は、それぞれ独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入又は置換であり、欠失、挿入及び/又は置換は、前述の可変ドメイン配列に対して15以下のアミノ酸の変化をもたらす。いくつかの抗PAC1抗体及び抗原結合断片の重鎖可変領域は、配列番号191~312(すなわち表1B中の重鎖可変領域)のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
一実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号191~295から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号191~295から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号191~295から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号194の配列を含む重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号203の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号214の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号228の配列を含む重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号240の配列を含む重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号274の配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号282の配列を含む重鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号283の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号284の配列を含む重鎖可変領域を含む。
別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号296~312から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号296~312から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号296~312から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号296の配列を含む重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号297の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号300の配列を含む重鎖可変領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号304の配列を含む重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号307の配列を含む重鎖可変領域を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号310の配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号312の配列を含む重鎖可変領域を含む。
用語「同一性」は、本明細書で使用される場合、配列を整列させ、比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子又は2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「同一性パーセント」は、本明細書中で使用される場合、比較する分子中のアミノ酸又はヌクレオチド間の同一残基のパーセントを意味し、比較する分子の最小の大きさに基づいて計算される。これらの計算のために、アラインメントにおけるギャップ(存在する場合)に特定の数学的モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって対処しなければならない。整列させた核酸又はポリペプチドの同一性を計算するために使用され得る方法には、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.),1988,New York:Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press;von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press;Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press;及びCarillo et al.,1988,SIAM J.Applied Math.48:1073に記載されるものが含まれる。例えば、配列同一性は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位置の類似性を比較するために一般に使用されている標準的な方法によって決定することができる。BLAST又はFASTAなどのコンピュータプログラムを用いて、2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチド配列を、それらのそれぞれの残基が最適に一致するように整列させる(一方若しくは両方の配列の全長に沿って又は一方若しくは両方の配列の所定の部分に沿って)。プログラムは、デフォルトの開始ペナルティ及びデフォルトのギャップペナルティを提供し、PAM 250(Dayhoff et al.,in Atlas of Protein Sequence and Structure,vol.5,supp.3,1978)又はBLOSUM62(Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915-10919)などのスコアリングマトリックスをコンピュータプログラムと共に使用することができる。次いで、例えば、同一性パーセントを次のように計算することができる:完全一致の総数に100を掛け、次いで2つの配列を整列させるために、一致したスパン内のより長い配列の長さと、より長い配列に導入されたギャップの数との合計で割る。同一性パーセントを計算する際、比較する配列を、配列間の最大の一致を与えるような方法で整列させる。
GCGプログラムパッケージは、同一性パーセントを決定するために使用することができるコンピュータプログラムであり、このパッケージは、GAPを含む(Devereux et al.,1984,Nucl.Acid Res.12:387;Genetics Computer Group、University of Wisconsin、Madison、WI)。コンピュータアルゴリズムGAPは、配列同一性パーセントを決定しようとする2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチドを整列させるために使用される。配列は、それらのそれぞれのアミノ酸又はヌクレオチドが最適に一致するように並べられる(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)。ギャップ開始ペナルティ(3×平均対角として計算される。ここで、「平均対角」は、使用される比較マトリックスの対角の平均であり、「対角」は、特定の比較マトリックスによってそれぞれの完全アミノ酸一致に割り当てられるスコア又は数である)及びギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップ開始ペナルティの1/10倍である)並びにPAM 250又はBLOSUM 62などの比較マトリックスがアルゴリズムと共に使用される。特定の実施形態では、標準比較マトリックス(PAM 250比較マトリックスについては、Dayhoff et al.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352を参照されたい;BLOSUM 62比較マトリックスについては、Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915-10919を参照されたい)もアルゴリズムによって使用される。
GAPプログラムを用いてポリペプチド又はヌクレオチド配列の同一性パーセントを決定するために推奨されるパラメータには、以下が含まれる。
アルゴリズム:Needleman et al.1970,J.Mol.Biol.48:443-453;
比較マトリックス:Henikoff et al.,1992(上記)のBLOSUM 62;
ギャップペナルティ:12(ただし、エンドギャップに対するペナルティなし)
ギャップ長ペナルティ:4
類似性の閾値:0
2つのアミノ酸配列を整列させるための特定のアラインメントスキームは、2つの配列の短い領域のみの一致をもたらし得、この小さい整列領域は、2つの全長配列間に有意な関係がないにも関わらず、非常に高い配列同一性を有し得る。したがって、選択したアラインメント方法(GAPプログラム)は、必要に応じて、標的ポリペプチドの少なくとも50個の連続するアミノ酸にわたるアラインメントを生じるように調節し得る。
本発明の抗PAC1抗体は、任意の免疫グロブリン定常領域を含むことができる。本明細書で「定常ドメイン」と同じ意味で用いられる「定常領域」は、可変領域以外の抗体の全てのドメインを指す。定常領域は、抗原の結合に直接関与しないが、種々のエフェクタ機能を示す。上記のように、抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、特定のアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM)及びサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)に分けられる。軽鎖定常領域は、例えば、κ型又はλ型軽鎖定常領域、例えば5つの抗体アイソタイプ全てに見出されるヒトκ型又はλ型軽鎖定常領域であり得る。ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域配列の例を以下の表に示す。
本発明の抗PAC1抗体の重鎖定常領域は、例えば、α型、δ型、ε型、γ型又はμ型重鎖定常領域、例えば、ヒトα型、δ型、ε型、γ型又はμ型重鎖定常領域であり得る。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリン、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリンなど由来の重鎖定常領域を含む。一実施形態において、抗PAC1抗体は、ヒトIgG1免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。このような実施形態では、ヒトIgG1免疫グロブリン定常領域は、本明細書により詳細に記載されるように、抗体のグリコシル化を防止する1つ以上の変異を含み得る。別の実施形態では、抗PAC1抗体は、ヒトIgG2免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体は、ヒトIgG4免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。ヒトIgG1、IgG2及びIgG4重鎖定常領域配列の例を下記の表3に示す。
表1Aに開示される軽鎖可変領域の各々及び表1Bに開示される重鎖可変領域の各々は、上記の軽鎖定常領域(表2)及び重鎖定常領域(表3)に結合されて、完全な抗体の軽鎖及び重鎖をそれぞれ形成し得る。更に、このようにして生成された重鎖及び軽鎖配列の各々は、完全な抗体構造を形成するために組み合わされ得る。本明細書中に提供される重鎖及び軽鎖可変領域は、上に列挙された例示的な配列と異なる配列を有する他の定常ドメインにも結合され得ることが理解されなければならない。
本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、本明細書に開示の抗PAC1抗体又は抗原結合断片のいずれかであり得る。例えば、特定の実施形態では、抗PAC1抗体は、表9、10、12、13、14、19及び20で列挙した抗体のいずれかから選択される抗PAC1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体は、表9、10、12、13、19又は20に記載されるアミノ酸置換の1つ以上を有する軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む。例えば、一実施形態では、抗PAC1抗体は、27、28、30、31、32及び/又は93の1つ以上のアミノ酸位置に変異を有する配列番号52の配列を含む軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、変異は、Q27K、Q27R、Q27H、S28A、G30M、G30W、R31Q、R31L、R31H、R31W、R31Y、S32A、S32N、S32L、R93F、R93M、R93Y又はこれらの組み合わせから選択される。これらの実施形態及び他の実施形態では、抗PAC1抗体は、31、32、49、52、53、54、56、57、62、70、102、103及び/又は104の1つ以上のアミノ酸位置に変異を有する配列番号191の配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、変異は、R31F、R31H、R31Y、R31M、R31K、F32Y、A49G、S52N、S52T、Y53F、Y53H、Y53S、D54I、D54L、D54N、D54R、D54Q、D54Y、D54F、D54M、D54S、D54T、G56Q、G56N、G56R、G56H、G56A、G56S、G56T、G56D、N57A、N57F、N57G、N57S、N57Q、N57L、N57T、E62R、I70V、I70L、I70M、V102P、V102L、V102I、V102F、V102M、L103M、T104S又はこれらの組み合わせから選択される。
別の実施形態では、抗PAC1抗体は、28、30、31、34、49、50、51、52、53、91、92、93、94及び/又は96の1つ以上のアミノ酸位置に変異を有する配列番号67の配列を含む軽鎖可変領域を含む。変異は、S28Y、S28T、S28K、S28P、S28Q、S28R、S28M、S30A、S30V、R31Q、N34V、N34S、Y49F、A50V、A50G、A51G、A51S、S52Q、S52H、S52N、S52Y、S52R、S52L、S53I、S53Y、S53N、S53M、S53H、S53R、S91A、Y92I、S93G、S93Q、S93I、S93N、S93M、P94E、P94M、P94N、P94Q、P94A、P94T、P94I、F96Y又はこれらの組み合わせから選択され得る。これらの実施形態及び他の実施形態では、抗PAC1抗体は、31、32、33、57、58、60、103、105、106、107及び/又は110の1つ以上のアミノ酸位置に変異を有する配列番号296の配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、変異は、S31N、N32R、N32K、N32H、S33L、S33Q、S33Y、S33V、S33D、S57G、K58Q、S60K、T103M、T103Q、T103R、T103V、K105N、K105E、K105D、K105I、K105A、K105S、K105Q、Q106G、Q106E、L107D、L107N、L110M、L110F又はこれらの組み合わせから選択される。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、抗体420653、420845、420943、421873、420889、421091、421051、480711、480706、480713、448730、448195、448788、448901、448689、448202、452128、448924、3574及び3575又はその抗原結合断片から選択され、その可変領域及びCDR配列は、表1A及び1Bに記載されている。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体は、420653、420845、420943、421873、420889、421091、421051、480711、480706及び480713抗体から選択される抗体である。他の実施形態では、抗PAC1抗体は、448730、448195、448788、448901、448689、448202、452128、448924、3574及び3575抗体から選択される抗体である。これらの例示的なヒト抗PAC1抗体の全長軽鎖及び全長重鎖配列は、それぞれ下記表4A及び4Bに記載されている。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、表4Aに示されるようなLC-01~LC-05から選択される軽鎖及び/又は表4Bに示されるようなHC-01~HC-11から選択される重鎖並びにこれらの軽鎖及び重鎖の結合断片、誘導体及びバリアントを含み得る。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、表4Aに示されるようなLC-06~LC-15から選択される軽鎖及び/又は表4Bに示されるようなHC-12~HC-18から選択される重鎖並びにこれらの軽鎖及び重鎖の結合断片、誘導体及びバリアントを含み得る。
表4Aに列挙した軽鎖の各々は、表4Bに列挙した重鎖のいずれかと組み合わされて、本発明の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を形成し得る。例えば、特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-03(配列番号506)の配列を含む軽鎖及びHC-03(配列番号521)の配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-03(配列番号506)の配列を含む軽鎖及びHC-04(配列番号522)の配列を含む重鎖を含む。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-01(配列番号504)の配列を含む軽鎖及びHC-05(配列番号523)の配列を含む重鎖を含む。更に他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-01(配列番号504)の配列を含む軽鎖及びHC-06(配列番号524)の配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-03(配列番号506)の配列を含む軽鎖及びHC-07(配列番号525)の配列を含む重鎖を含む。特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-01(配列番号504)の配列を含む軽鎖及びHC-08(配列番号526)の配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-03(配列番号506)の配列を含む軽鎖及びHC-05(配列番号523)の配列を含む重鎖を含む。別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-04(配列番号507)の配列を含む軽鎖及びHC-09(配列番号527)の配列を含む重鎖を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-04(配列番号507)の配列を含む軽鎖及びHC-10(配列番号528)の配列を含む重鎖を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-05(配列番号508)の配列を含む軽鎖及びHC-11(配列番号529)の配列を含む重鎖を含む。
特定の他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-07(配列番号510)の配列を含む軽鎖及びHC-13(配列番号531)の配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-08(配列番号511)の配列を含む軽鎖及びHC-14(配列番号532)の配列を含む重鎖を含む。他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-09(配列番号512)の配列を含む軽鎖及びHC-15(配列番号533)の配列を含む重鎖を含む。更に他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-10(配列番号513)の配列を含む軽鎖及びHC-16(配列番号534)の配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-11(配列番号514)の配列を含む軽鎖及びHC-17(配列番号535)の配列を含む重鎖を含む。特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-12(配列番号515)の配列を含む軽鎖及びHC-17(配列番号535)の配列を含む重鎖を含む。一実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-13(配列番号516)の配列を含む軽鎖及びHC-14(配列番号532)の配列を含む重鎖を含む。別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-14(配列番号517)の配列を含む軽鎖及びHC-18(配列番号536)の配列を含む重鎖を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-06(配列番号509)の配列を含む軽鎖及びHC-14(配列番号532)の配列を含む重鎖を含む。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、LC-15(配列番号518)の配列を含む軽鎖及びHC-12(配列番号530)の配列を含む重鎖を含む。
いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体は、表4Aの軽鎖の配列、すなわちLC-01~LC-15から選択される軽鎖と、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基のみで異なる連続するアミノ酸の配列を含む軽鎖を含み、そのような配列の相違は、それぞれ独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入又は置換であり、欠失、挿入及び/又は置換は、前述の軽鎖配列に対して15以下のアミノ酸の変化をもたらす。いくつかの抗PAC1抗体中の軽鎖は、配列番号504~518(すなわち表4A中の軽鎖)のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
これらの実施形態及び他の実施形態では、抗PAC1抗体は、表4Bの重鎖の配列、すなわちHC-01~HC-18から選択される重鎖と1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基のみで異なる連続するアミノ酸の配列を含む重鎖を含み、そのような配列の相違は、それぞれ独立して、1つのアミノ酸の欠失、挿入又は置換であり、欠失、挿入及び/又は置換は、前述の重鎖配列に対して15以下のアミノ酸の変化をもたらす。いくつかの抗PAC1抗体中の重鎖は、配列番号519~536(すなわち表4B中の重鎖)のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体若しくは多重特異性抗体又はそれらの抗原結合断片であり得る。特定の実施形態では、抗PAC1抗体は、モノクローナル抗体である。そのような実施形態では、抗PAC1抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト免疫グロブリン定常ドメインを有する完全ヒト抗体であり得る。これらの実施形態及び他の実施形態では、抗PAC1抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体である。したがって、抗PAC1抗体は、いくつかの実施形態では、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4定常ドメインを有し得る。一実施形態では、抗PAC1抗体は、モノクローナルヒトIgG1抗体である。別の実施形態では、抗PAC1抗体は、モノクローナルヒトIgG2抗体である。更に別の実施形態では、抗PAC1抗体は、モノクローナルヒトIgG4抗体である。
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」(又は「mAb」)は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかに存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、典型的には、異なるエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、特異性が高く、個々の抗原部位又はエピトープに対するものである。モノクローナル抗体は、当該技術分野で知られた任意の手法を用いて、例えば免疫スケジュールの完了後に動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって生成され得る。脾臓細胞は、当該技術分野で知られた任意の手法を用いて、例えばそれらを骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成することによって不死化し得る。例えば、Antibodies;Harlow and Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1st Edition(例えば、1988からの)又は2nd Edition(例えば、2014からの)を参照されたい。ハイブリドーマ生成融合手順に使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、且つ所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地においてそれらの増殖を不可能にする酵素欠損を有する。マウス細胞との融合に使用するのに好適な細胞株の例としては、Sp-20、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7及びS194/5XXO Bulが挙げられるが、これらに限定されない。ラット細胞との融合に使用するのに好適な細胞株の例としては、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983F及び4B210が挙げられるが、これらに限定されない。細胞融合に有用な他の細胞株は、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2及びUC729-6である。
いくつかの例では、ハイブリドーマ細胞株は、動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス又はヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)をPAC1免疫原(例えば、国際公開第2014/144632号パンフレットを参照されたい)で免疫し、この免疫された動物から脾臓細胞を採取し;採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させ、それによってハイブリドーマ細胞を生成し、このハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を確立し、且つPAC1に結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによって生成される。モノクローナル抗体を生成するための別の有用な方法は、Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.93:7843-7848,1996で記載されているSLAM法である。
ハイブリドーマ細胞株によって分泌されたモノクローナル抗体は、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなど、当該技術分野で知られた任意の技術を使用して精製され得る。ハイブリドーマ上清又はmAbを更にスクリーニングして、PAC1(例えば、ヒトPAC1、カニクイザルPAC1又はラットPAC1)に結合する能力;他のPAC1ファミリーメンバー(例えば、ヒトVPAC1又はヒトVPAC2)との交差反応性;PACAPリガンドのPAC1への結合をブロック若しくは妨害する能力又はPAC1受容体のPACAP誘導活性化を機能的にブロックする能力などの特定の特性を有するmAbを、例えば本明細書に記載のcAMPアッセイを使用して同定することができる。
いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、本明細書に記載の抗体のCDR及び可変領域配列に基づくキメラ若しくはヒト化抗体又はそれらの抗原結合断片である。キメラ抗体は、共有結合して機能的免疫グロブリン軽鎖若しくは重鎖又はそれらの結合断片を生成する、異なる抗体由来のタンパク質セグメントから構成される抗体である。一般に、重鎖及び/又は軽鎖の一部は、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である一方、鎖の残りは、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である。キメラ抗体に関する方法は、例えば、米国特許第4,816,567号明細書及びMorrison et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855を参照されたい。これらの両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
一般に、キメラ抗体を作製する目的は、意図する種由来のアミノ酸の数が最大となるキメラを作製することである。一例は、抗体が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する1つ以上のCDRを含む一方、抗体鎖の残りは、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である「CDRグラフト」抗体である。CDRグラフト化は、例えば、米国特許第6,180,370号明細書、同第5,693,762号明細書、同第5,693,761号明細書、同第5,585,089号明細書及び同第5,530,101号明細書に記載されている。ヒトで使用するために、齧歯動物又はウサギ抗体由来の可変領域又は選択されたCDRは、多くの場合、ヒト抗体にグラフトされ、ヒト抗体の天然に存在する可変領域又はCDRを置換する。
キメラ抗体の1つの有用な型は、「ヒト化」抗体である。一般に、ヒト化抗体は、齧歯動物又はウサギなどの非ヒト動物において最初に産生されたモノクローナル抗体から生成される。典型的には、抗体の非抗原認識部分に由来する、このモノクローナル抗体の特定のアミノ酸残基は、対応するアイソタイプのヒト抗体における対応する残基に相同であるように改変される。ヒト化は、例えば、種々の方法を用いて、齧歯動物又はウサギの可変領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置換することにより行うことができる(例えば、米国特許第5,585,089号明細書及び同第5,693,762号明細書、Jones et al.,1986,Nature 321:522-525、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323-27並びにVerhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-1536を参照されたい)。
一態様では、本明細書中に提示される抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のCDR(表1A及び1Bを参照されたい)は、同一の又は異なる系統発生的種由来の抗体のフレームワーク領域(FR)にグラフトされる。例えば、表1A及び1Bに列挙した重鎖及び軽鎖可変領域のCDRがコンセンサスヒトFRにグラフトされ得る。コンセンサスヒトFRを作製するために、いくつかのヒト重鎖又は軽鎖アミノ酸配列由来のFRをアラインさせて、コンセンサスアミノ酸配列を同定し得る。代わりに、1つの重鎖又は軽鎖由来のグラフト化可変領域は、本明細書に開示する特定の重鎖又は軽鎖の定常領域と異なる定常領域と共に使用され得る。他の実施形態では、グラフト化可変領域は、一本鎖Fv抗体の一部である。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、完全ヒト抗体又はその抗原結合断片である。ヒトPAC1に特異的に結合する完全ヒト抗体は、国際公開第2014/144632号パンフレットに記載の免疫原又はその断片、例えば配列番号1又は配列番号4の配列からなるポリペプチドを使用して生成することができる。「完全ヒト抗体」は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来するか、又はそれを示す可変領域及び定常領域を含む抗体である。完全ヒト抗体の生成を実施するために提供される1つの具体的な手段は、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子が不活性化されたマウスへのヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座の導入は、任意の所望の抗原で免疫化され得る動物であるマウスにおいて完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)を生成する1つの手段である。完全ヒト抗体を使用することにより、マウス又はマウス由来のmAbを治療剤としてヒトに投与することによって引き起こされることがある免疫原性及びアレルギー反応を最小限に抑えることができる。
完全ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(通常、マウス)を免疫化することによって生成することができる。この目的のための抗原は、典型的には、6個以上の連続するアミノ酸を有し、任意選択的にハプテンなどのキャリアにコンジュゲートされる。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551-2555、Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255-258及びBruggermann et al.,1993,Year in Immunol.7:33を参照されたい。このような方法の一例では、トランスジェニック動物は、マウスの免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無能力化し、マウスのゲノム中に、ヒトの重鎖及び軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含むヒトゲノムDNAの大きい断片を挿入することによって生産される。次いで、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の完全相補体より少ない相補体を有する部分的に改変された動物を交雑して、所望の免疫系を全て改変した動物を得る。免疫原を投与すると、これらのトランスジェニック動物は、免疫原に対して免疫特異的であるが、マウスでなくヒトの、可変領域を含むアミノ酸配列を有する抗体を産生する。このような方法の更なる詳細については、例えば、国際公開第96/33735号パンフレット及び国際公開第94/02602号パンフレットを参照されたい。ヒト抗体を作るためのトランスジェニックマウスに関連する更なる方法は、米国特許第5,545,807号明細書、同第6,713,610号明細書、同第6,673,986号明細書、同第6,162,963号明細書、同第5,939,598号明細書、同第5,545,807号明細書、同第6,300,129号明細書、同第6,255,458号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,874,299及び同第5,545,806号明細書、PCT公報の国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第90/04036号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/30498号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット並びに欧州特許第546073B1号明細書及び欧州特許出願公開第546073A1号明細書に記載されている。
「HuMab」マウスと呼ばれる上記のトランスジェニックマウスは、内因性のμ及びκ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異と共に、再配列されていないヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む(Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859)。したがって、マウスは、マウスIgM及びκタンパク質の発現の減少を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチ及び体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモノクローナル抗体を生成する(Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546)。HuMabマウスの作製は、Taylor et al.,1992,Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen et al.,1993,International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al.,1994,J.Immunol.152:2912-2920;Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859;Lonberg,1994,Handbook of Exp.Pharmacology 113:49-101;Taylor et al.,1994,International Immunology 6:579-591;Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546;Fishwild et al.,1996,Nature Biotechnology 14:845-851に詳細に記載されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。更に、米国特許第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,789,650号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,814,318号明細書、同第5,874,299号明細書及び同第5,770,429号明細書並びに米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22646号パンフレット及び国際公開第92/03918号パンフレットを参照されたい。これら全ての開示内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。これらのトランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するために利用される技術は、国際公開第98/24893号パンフレット及びMendez et al.,1997,Nature Genetics 15:146-156(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)にも開示されている。例えば、HCo7及びHCo12トランスジェニックマウス株を用いて、完全ヒト抗PAC1抗体を生成することができる。完全ヒト抗PAC1抗体の生成に好適な1つの特定のトランスジェニックマウス株は、米国特許第6,114,598号明細書、同第6,162,963号明細書、同第6,833,268号明細書、同第7,049,426号明細書、同第7,064,244号明細書;Green et al.,1994,Nature Genetics 7:13-21;Mendezet al.,1997,Nature Genetics 15:146-156;Green and Jakobovitis,1998,J.Ex.Med,188:483-495;Green,1999,Journal of Immunological Methods 231:11-23;Kellerman and Green,2002,Current Opinion in Biotechnology 13,593-597(これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているXenoMouse(登録商標)トランスジェニックマウス株である。
ヒト由来抗体は、ファージディスプレイ技術を用いて生成することもできる。ファージディスプレイは、例えば、Dower et al.による国際公開第91/17271号パンフレット、McCafferty et al.による国際公開第92/01047号パンフレット及びCaton and Koprowski,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6450-6454に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ファージ技術によって生成される抗体は、通常、細菌において、抗原結合断片、例えばFv又はFab断片として生成され、したがってエフェクタ機能を欠く。エフェクタ機能は、2つの戦略の1つによって導入することができる:断片は、必要に応じて、哺乳動物細胞で発現する完全な抗体に、又はエフェクタ機能を誘発し得る第2の結合部位を有する二重特異性抗体断片に操作され得る。典型的には、抗体のFd断片(VH-CH1)及び軽鎖(VL-CL)は、PCRによって別々にクローン化され、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリでランダムに組み換えられ、これは、その後、特定の抗原に結合するために選択され得る。抗体断片は、ファージ表面で発現し、抗原結合によるFv又はFab(したがって抗体断片をコードするDNAを含むファージ)の選択は、パンニングと呼ばれる手順である抗原結合及び再増幅を数ラウンド行うことによって達成される。抗原に特異的な抗体断片は、リッチ化され、最終的に単離される。ファージディスプレイ技術は、「ガイデッドセレクション」と呼ばれる、齧歯類モノクローナル抗体のヒト化のためのアプローチにおいて使用することもできる(Jespers,L.S.,et al.,1994,Bio/Technology 12,899-903を参照されたい)。このために、マウスモノクローナル抗体のFd断片は、ヒト軽鎖ライブラリと組み合わせて提示され得、次いで、得られたハイブリッドFabライブラリは、抗原を用いて選択され得る。これにより、マウスFd断片は、選択を誘導するテンプレートを提供する。続いて、選択されたヒト軽鎖は、ヒトFd断片ライブラリと組み合わされる。得られたライブラリの選択により、完全にヒトFabが得られる。
本発明による抗PAC1抗体を産生する細胞が上記の免疫化及び他の技術のいずれかを使用して得られたら、本明細書中に記載されるような標準的な手順に従い、それからDNA又はmRNAを単離し、増幅することにより、特異的抗体遺伝子がクローン化され得る。それから産生された抗体の配列を決定し、CDRを同定し、CDRをコードするDNAを本明細書に記載のように操作して、本発明による他の抗PAC1抗体又は抗原結合断片を生成することができる。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片は、定常領域に対する1つ以上の変異又は改変を含み得る。例えば、抗PAC1抗体の重鎖定常領域又はFc領域は、抗体のグリコシル化、エフェクタ機能及び/又はFcγ受容体結合に影響を及ぼす1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。用語「Fc領域」は、無傷の抗体のパパイン消化によって生成され得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択的にCH4ドメインを含む。特定の実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリン由来のFc領域である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG2免疫グロブリン由来のCH2及びCH3ドメインを含む。Fc領域は、C1q結合、補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)及び食作用などのエフェクタ機能を保持し得る。他の実施形態では、Fc領域は、以下に更に詳細に記載されるように、エフェクタ機能を低下又は排除するように改変され得る。
特定の配列を参照して別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖におけるアミノ酸残基の番号付けは、Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657-670;2001に記載されるようなAHo番号付け又はEdelman et al.,Proc.Natl.Acad.USA,Vol.63:78-85(1969)に記載されるようなEU番号付けに従う。本明細書で使用する場合、AHo番号付けスキームは、典型的には、可変領域内のアミノ酸の位置に言及する場合に使用される一方、EU番号付けスキームは、免疫グロブリン定常領域を有するアミノ酸の位置に言及する場合に一般に使用される。
アミノ酸配列におけるアミノ酸置換は、本明細書では、通常、特定の位置におけるアミノ酸残基が一文字略語で示され、次いで目的の元の配列に対するアミノ酸位置の数字が続き、次いで置換されたアミノ酸残基の1文字の略語が続く。例えば、「T30D」は、目的の元の配列に対して、アミノ酸位置30でのアスパラギン酸塩残基によるトレオニン残基の置換を表す。別の例「S218G」は、目的の元のアミノ酸配列に対して、アミノ酸位置218でのグリシン残基によるセリン残基の置換を表す。
免疫グロブリンのFc領域の機能の1つは、免疫グロブリンがその標的に結合するときに免疫系に伝達することである。これは、一般に「エフェクタ機能」と呼ばれる。伝達は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)につながる。ADCC及びADCPは、免疫系の細胞の表面上のFc受容体へのFc領域の結合を介して媒介される。CDCは、Fc領域と補体系のタンパク質、例えばC1qとの結合を介して媒介される。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、Fc領域にエフェクタ機能、例えば、ADCC活性、CDC活性、ADCP活性及び/又は抗体のクリアランス若しくは半減期を増強する1つ以上のアミノ酸置換を含む。エフェクタ機能を増強し得る例示的なアミノ酸置換(EU番号付けスキームによる)としては、E233L、L234I、L234Y、L235S、G236A、S239D、F243L、F243V、P247I、D280H、K290S、K290E、K290N、K290Y、R292P、E294L、Y296W、S298A、S298D、S298V、S298G、S298T、T299A、Y300L、V305I、Q311M、K326A、K326E、K326W、A330S、A330L、A330M、A330F、I332E、D333A、E333S、E333A、K334A、K334V、A339D、A339Q、P396L又は上記のいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
他の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、Fc領域に、エフェクタ機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。エフェクタ機能を低下させることができる例示的なアミノ酸置換(EU番号付けスキームによる)としては、C220S、C226S、C229S、E233P、L234A、L234V、V234A、L234F、L235A、L235E、G237A、P238S、S267E、H268Q、N297A、N297G、V309L、E318A、L328F、A330S、A331S、P331S又は上記のいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
グリコシル化は、抗体、特にIgG1抗体のエフェクタ機能に寄与し得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、抗体のグリコシル化のレベル又は型に影響を及ぼす1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合である。N結合は、糖鎖のアスパラギン残基側鎖への結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖鎖の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生成する。O結合グリコシル化は、糖のN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗PAC1抗体のグリコシル化を、1つ以上のグリコシル化部位を例えば抗体のFc領域に付加することによって増加させる。抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N結合型グリコシル化部位のための)上記のトリペプチド配列の1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することにより好都合に行うことができる。改変は、1つ以上のセリン若しくはトレオニン残基の開始配列への付加又はそれによる置換によってもなされ得る(O結合グリコシル化部位について)。容易にするために、抗体アミノ酸配列を、DNAレベルでの変化により、特に所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように、予め選択された塩基で標的ポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって改変し得る。
本発明は、エフェクタ活性の変化をもたらす改変炭水化物構造を有する抗体分子、例えばADCC活性の向上を示すフコシル化が存在しないか又は減少した抗体の生成も包含する。フコシル化を減少又は排除する様々な方法が当該技術分野で知られている。例えば、ADCCエフェクタ活性は、抗体分子のFcγRIII受容体への結合によって媒介され、これは、CH2ドメインのN297残基でのN結合型グリコシル化の糖鎖構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、高い親和性でこの受容体に結合し、FcγRIII媒介エフェクタ機能を天然のフコシル化抗体よりも効率的に誘発する。例えば、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素がノックアウトされているCHO細胞における非フコシル化抗体の組換え産生は、ADCC活性が100倍増加した抗体を生じる(Yamane-Ohnuki et al.,Biotechnol Bioeng.87(5):614-22,2004を参照されたい)。同様の効果は、フコシル化経路におけるα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素又は他の酵素の活性を減少させることにより、例えばsiRNA若しくはアンチセンスRNA処理、酵素をノックアウトするための細胞株の操作又は選択的グリコシル化阻害剤との培養によって達成され得る(Rothman et al.,Mol Immunol.26(12):1113-23,1989を参照されたい)。いくつかの宿主細胞株、例えばLec13又はラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、より低いフコシル化レベルを有する抗体を天然に産生する(Shields et al.,J Biol Chem.277(30):26733-40,2002及びShinkawa et al.,J Biol Chem.278(5):3466-73,2003を参照されたい)。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞において抗体を組換え産生することによる、二分された糖鎖レベルの増加もADCC活性を増加させることが判明している(Umana et al.,Nat Biotechnol.17(2):176-80,1999を参照されたい)。
他の実施形態では、本明細書に記載の抗PAC1抗体のグリコシル化を、1つ以上のグリコシル化部位を例えば抗体のFc領域から除くことによって減少又は排除する。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体は、アグリコシル化ヒトモノクローナル抗体、例えばアグリコシル化ヒトIgG1モノクローナル抗体である。N結合グリコシル化部位を排除又は改変するアミノ酸置換により、抗体のN結合グリコシル化を減少又は排除することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗PAC1抗体は、N297Q、N297A又はN297GなどのN297の位置(EU番号付けスキームによる)での重鎖変異を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、N297の位置に変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。特定の一実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、N297G変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、配列番号324の配列を含む重鎖定常領域を含む。
N297変異を含む分子の安定性を改善するために、抗PAC1抗体のFc領域を更に操作することができる。例えば、いくつかの実施形態では、Fc領域における1つ以上のアミノ酸は、二量体状態のジスルフィド結合形成を促進するためにシステインで置換される。したがって、IgG1 Fc領域のV259、A287、R292、V302、L306、V323又はI332(EU番号付けスキームによる)に対応する残基がシステインで置換され得る。好ましくは、残基の特定の対が互いにジスルフィド結合を優先的に形成するようにシステインで置換し、それによってジスルフィド結合のスクランブルを制限又は防止する。好ましい対としては、A287C及びL306C、V259C及びL306C、R292C及びV302C並びにV323C及びI332Cが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗PAC1抗体は、R292C及びV302Cの変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。このような実施形態では、Fc領域は、N297G変異などのN297変異も含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗PAC1抗体は、配列番号325の配列を含む重鎖定常領域を含む。
血清半減期を増加させるための本発明の抗PAC1抗体の改変は、例えば、サルベージ受容体結合エピトープの組み込み若しくは追加(例えば、適切な領域の変異によるか、又はエピトープをペプチドタグに組み込み、次いで例えばDNA若しくはペプチド合成により、いずれかの末端又は中央で抗体に融合されることによる;例えば、国際公開第96/32478号パンフレットを参照されたい)又はPEG若しくは他の水溶性ポリマー、例えば多糖ポリマーなどの追加によっても所望され得る。サルベージ受容体結合エピトープは、好ましくは、Fc領域の1つ又は2つのループ由来の任意の1つ以上のアミノ酸残基が抗体中の類似の位置に転移される領域を構成する。より一層好ましくは、Fc領域の1つ又は2つのループ由来の3つ以上の残基が転移される。更により好ましくは、エピトープがFc領域(例えば、IgG Fc領域)のCH2ドメインから取られ、抗体のCH1、CH3若しくはVH領域又は2つ以上のそのような領域に移される。代わりに、エピトープがFc領域のCH2ドメインから取られ、抗体のCL領域若しくはVL領域又はその両方に移される。Fcバリアント及びサルベージ受容体とのそれらの相互作用の説明については、国際公開第97/34631号パンフレット及び国際公開第96/32478号パンフレットを参照されたい。
本発明は、本明細書に記載の抗PAC1抗体又は抗原結合断片をコードする1つ以上の単離されたポリヌクレオチド又は単離された核酸を含む。加えて、本発明は、核酸を含むベクター、核酸を含む宿主細胞又は細胞株及び本発明の抗PAC1抗体並びに抗原結合断片を作製する方法を包含する。核酸は、例えば、抗体又は抗原結合断片の全部又は一部、例えば本発明の抗体の一方若しくは両方の鎖又はその断片、誘導体若しくはバリアントをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定、分析、変異又は増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマー又はシークエンシングプライマーとして使用するのに十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド及び上記の相補的配列を含む。核酸は、所望の使用又は機能に適した長さであり得、1つ以上の更なる配列、例えば調節配列を含み得、且つ/又はより大きい核酸、例えばベクターの一部であり得る。本発明の核酸分子には、一本鎖及び二本鎖の両方の形態のDNA及びRNA並びに対応する相補的配列が含まれる。DNAには、例えば、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成されたDNA、PCRによって増幅されたDNA及びそれらの組み合わせが含まれる。本発明の核酸分子には、全長遺伝子又はcDNA分子並びにそれらの断片の組み合わせが含まれる。本発明の核酸は、ヒト供給源及び非ヒト種に由来し得る。
免疫グロブリン又はその領域(例えば、可変領域、Fc領域など)又は目的のポリペプチド由来の関連するアミノ酸配列は、直接タンパク質配列決定法によって決定され得、及び好適なコードヌクレオチド配列は、普遍コドン表に従って設計され得る。代わりに、本発明のモノクローナル抗体又はその結合断片をコードするゲノム若しくはcDNAは、従来の手順を使用して、(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)このような抗体を産生する細胞から単離して、配列決定することができる。
本明細書において「単離されたポリヌクレオチド」と互換的に使用される「単離された核酸」は、天然に存在する供給源から単離された核酸の場合、核酸が単離された生物のゲノムに存在する隣接遺伝子配列から分離された核酸である。例えば、PCR産物、cDNA分子又はオリゴヌクレオチドなど、鋳型から酵素的に又は化学的に合成された核酸の場合、このようなプロセスから得られる核酸は、単離された核酸であると理解される。単離された核酸分子は、別個の断片の形態の核酸分子又はより大きい核酸構築物のコンポーネントとしての核酸分子を指す。好ましい一実施形態では、核酸は、混入する内因性物質を実質的に含まない。核酸分子は、好ましくは、実質的に純粋な形態において且つ標準的な生化学的方法(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)に概説されるもの)によるそのコンポーネントヌクレオチド配列の同定、操作及び回収を可能にする量又は濃度において、少なくとも1回単離されたDNA又はRNAから誘導されている。このような配列は、好ましくは、典型的には真核生物遺伝子に典型的に存在する内部非翻訳配列又はイントロンによって中断されないオープンリーディングフレームの形態で提供及び/又は構築される。翻訳されないDNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’又は3’に存在することができ、この場合、これは、コード領域の操作又は発現を妨害しない。特に明記しない限り、本明細書で考察する任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と呼ばれる。新生RNA転写産物の5’から3’への産生の方向は、転写方向と呼ばれ、RNA転写産物の5’末端の5’側にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれ、RNA転写産物の3’末端の3’側にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
本発明は、中程度にストリンジェントな条件下、より好ましくは高度にストリンジェントな条件下において、本明細書中に記載されるようなポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズする核酸も含む。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響する基本パラメータ及び好適な条件を考案するためのガイダンスは、Sambrook,Fritsch,and Maniatis(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,chapters 9 and 11;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,sections 2.10 and 6.3-6.4)によって示されており、例えば、DNAの長さ及び/又は塩基組成に基づいて当業者が容易に決定することができる。中程度にストリンジェントな条件を達成する1つの方法は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)、約50%ホルムアミドのハイブリダイゼーションバッファー、6×SSC及び約55℃のハイブリダイゼーション温度を含む前洗浄溶液(又は約42℃のハイブリダイゼーション温度を有する約50%ホルムアミドを含有するものなどの他の類似のハイブリダイゼーション溶液)並びに0.5×SSC、0.1%SDSにおける約60℃の洗浄条件の使用を含む。一般に、高度にストリンジェントな条件は、約68℃、0.2×SSC、0.1%SDSで洗浄する以外、上記のようなハイブリダイゼーション条件として定義される。SSPE(1×SSPEは0.15M NaCl、10mM NaH2PO4及び1.25mM EDTA(pH7.4)である)をハイブリダイゼーションバッファー及び洗浄バッファー中のSSC(1×SSCは0.15M NaCl及び15mMクエン酸ナトリウム)に置き換えることができ、ハイブリダイゼーションが完了した後、15分間洗浄を行う。当業者に知られており、以下に更に記載するように、ハイブリダイゼーション反応及び二重鎖安定性を支配する基本原理を適用することにより、所望の程度のストリンジェンシーを達成するために、洗浄温度及び洗浄塩濃度を必要に応じて調節し得ることが理解されるべきである(例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい)。
核酸を未知の配列の標的核酸にハイブリダイズさせる場合、ハイブリッド長は、ハイブリダイズする核酸の長さであると仮定する。既知の配列の核酸をハイブリダイズする場合、ハイブリッド長は、核酸の配列を整列させ、最適な配列相補性の領域又は領域群を同定することによって決定することができる。長さが50塩基対未満であると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)より5~10℃低くなければならず、ここで、Tmは、以下の式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドの場合、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。長さが18塩基対を超えるハイブリッドの場合、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)(式中、Nは、ハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+]は、ハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCの[Na+]=0.165M))。好ましくは、このようなハイブリダイズする核酸の各々は、少なくとも15ヌクレオチド(又はより好ましくは、少なくとも18ヌクレオチド、若しくは少なくとも20ヌクレオチド、若しくは少なくとも25ヌクレオチド、若しくは少なくとも30ヌクレオチド、若しくは少なくとも40ヌクレオチド又は最も好ましくは少なくとも50ヌクレオチド)或いはそれがハイブリダイズする本発明の核酸の長さの少なくとも25%(より好ましくは、少なくとも50%、若しくは少なくとも60%、若しくは少なくとも70%及び最も好ましくは少なくとも80%)である長さを有し、且つそれがハイブリダイズする本発明の核酸と少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%及び最も好ましくは少なくとも99.5%)を有する。ここで、配列同一性は、上でより詳細に記載されたように、配列ギャップを最小化しながら、重複及び同一性が最大となるように整列させたときのハイブリダイズする核酸の配列を比較することによって決定される。
本明細書に記載の抗PAC1抗体及び抗原結合断片のバリアントは、ポリペプチドをコードするDNAにおけるヌクレオチドの部位特異的変異導入によって調製することができ、カセット若しくはPCR変異導入又は当該技術分野でよく知られた他の技術、例えば実施例3で記載されているものなどを使用して、バリアントをコードするDNAを産生し、その後、本明細書に概説するように、細胞培養において組換えDNAを発現する。しかし、約100~150個までの残基を有するバリアントCDRを含む抗体又は抗原結合断片は、確立された技術を使用してin vitroでの合成によって調製することができる。バリアントは、典型的には、天然に存在するアナログと同じ定性的な生物学的活性、例えば抗原への結合を示す。このようなバリアントは、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入、及び/又は置換を含む。欠失、挿入及び置換のいずれかの組み合わせは、最終構築物が所望の特徴を有するのであれば、その最終構築物に到達するようになされる。アミノ酸の変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化などの抗体の翻訳後プロセスも変え得る。特定の実施形態では、抗体バリアントは、エピトープ結合に直接関与するアミノ酸残基を改変する目的で調製される。他の実施形態では、エピトープ結合に直接関与しない残基又はエピトープ結合に何ら関与しない残基の改変は、本明細書で論じる目的のために望ましい。CDR領域及び/又はフレームワーク領域のいずれかにおける変異誘発が意図される。抗体のアミノ酸配列における有用な改変を設計するために、当業者は、共変異分析技術を使用することができる。例えば、Choulier,et al.,Proteins 41:475-484,2000;Demarest et al.,J.Mol.Biol.335:41-48,2004;Hugo et al.,Protein Engineering 16(5):381-86,2003;Aurora et al.、米国特許出願公開第2008/0318207A1号明細書;Glaser et al.、米国特許出願公開第2009/0048122A1号明細書;Urech et al.、国際公開第2008/110348A1号パンフレット;Borras et al.、国際公開第2009/000099A2号パンフレットを参照されたい。共変異分析によって決定されるそのような改変は、抗体の効力、薬物動態、薬力学及び/又は製造性の特性を向上させることができる。
表4A及び4Bは、本明細書に記載の抗PAC1抗体の完全長及び重鎖をそれぞれコードする例示的な核酸配列を示す。表5A及び5Bは、本明細書に記載の抗PAC1抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をそれぞれコードする例示的な核酸配列を示す。抗PAC1可変領域をコードするポリヌクレオチドは、それぞれ任意選択的に表2及び3に列挙した軽鎖及び重鎖定常領域をコードする核酸と共に使用して、本発明の抗体及び抗原結合断片を構築することができる。
本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片をコードする単離された核酸は、表4A、4B、5A及び5Bに列挙したヌクレオチド配列のいずれかと少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一であるヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号328~342から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号343~363から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。特定の実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号328~342から選択される配列を含む。特定の他の実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号343~363から選択される配列を含む。関連する実施形態では、抗PAC1抗体重鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号364~468から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。他の関連する実施形態では、抗PAC1抗体重鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号469~485から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体重鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号364~468から選択される配列を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体重鎖可変領域をコードする単離された核酸は、配列番号469~485から選択される配列を含む。
いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖をコードする単離された核酸は、配列番号537~541から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖をコードする単離された核酸は、配列番号542~551から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。特定の実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖をコードする単離された核酸は、配列番号537~541から選択される配列を含む。特定の他の実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖をコードする単離された核酸は、配列番号542~551から選択される配列を含む。関連する実施形態では、抗PAC1抗体重鎖をコードする単離された核酸は、配列番号552~562から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。他の関連する実施形態では、抗PAC1抗体重鎖をコードする単離された核酸は、配列番号563~569から選択される配列と少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一又は少なくとも98%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体重鎖をコードする単離された核酸は、配列番号552~562から選択される配列を含む。他の実施形態では、抗PAC1抗体重鎖をコードする単離された核酸は、配列番号563~569から選択される配列を含む。
表4A、4B、5A及び5Bに示す核酸配列は例示に過ぎない。当業者に理解されるように、遺伝コードの縮重のために、極めて多数の核酸が作製され得、それらの全ては、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片のCDR、可変領域並びに重鎖及び軽鎖又は他のコンポーネントをコードする。したがって、特定のアミノ酸配列を同定したら、当業者は、コードされたタンパク質のアミノ酸配列を変化させない方法で1つ以上のコドンの配列を単に改変することにより、任意の数の異なる核酸を作製し得るであろう。
本発明は、本発明の抗体又は抗原結合断片の1つ以上の構成要素(例えば、可変領域、軽鎖及び重鎖)をコードする1つ以上の核酸を含むベクターも含む。用語「ベクター」は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移入するために使用される任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を指す。ベクターの例としては、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター及び発現ベクター、例えば組換え発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語「発現ベクター」又は「発現構築物」は、特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要である、所望のコード配列及び適切な核酸制御配列を含む組換えDNA分子を指す。発現ベクターは、転写、翻訳に影響を及ぼすか又はそれを制御し、且つイントロンが存在する場合、それに作動可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含み得るが、これらに限定されない。原核生物での発現に必要な核酸配列には、プロモーター、任意選択的にオペレーター配列、リボソーム結合部位及び場合により他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー並びに終結及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
目的のコード配列に作動可能に連結された分泌シグナルペプチド配列も、任意選択的に発現ベクターによってコードされ得、その結果、必要に応じて細胞から目的ポリペプチドがより容易に単離されるように、組換え宿主細胞に発現ポリペプチドを分泌させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、シグナルペプチド配列は、表1A及び1Bに列挙された可変領域ポリペプチド配列のいずれか又は表4A及び4Bに列挙された完全長鎖ポリペプチドのいずれかのアミノ末端に付加/融合され得る。特定の実施形態では、MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC(配列番号486)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、表1A及び1Bの可変領域ポリペプチド配列又は表4A及び4Bの完全長鎖ポリペプチドのいずれかのアミノ末端に融合される。他の実施形態では、MAWALLLLTLLTQGTGSWA(配列番号487)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、表1A及び1Bの可変領域ポリペプチド配列又は表4A及び4Bの完全長鎖ポリペプチドのいずれかのアミノ末端に融合される。更に他の実施形態では、MTCSPLLLTLLIHCTGSWA(配列番号488)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、表1A及び1Bの可変領域ポリペプチド配列又は表4A及び4Bの完全長鎖ポリペプチドのいずれかのアミノ末端に融合される。本明細書に記載の可変領域ポリペプチド配列又は完全長鎖ポリペプチド配列のアミノ末端に融合され得る他の好適なシグナルペプチド配列としては、MEAPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号489)、MEWTWRVLFLVAAATGAHS(配列番号490)、METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号491)、METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号492)、MKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号493)、MEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号494)、MDIRAPTQLLGLLLLWLPGAKC(配列番号495)、MDIRAPTQLLGLLLLWLPGARC(配列番号496)、MDTRAPTQLLGLLLLWLPGATF(配列番号497)、MDTRAPTQLLGLLLLWLPGARC(配列番号498)、METGLRWLLLVAVLKGVQC(配列番号499)、METGLRWLLLVAVLKGVQCQE(配列番号500)及びMDMRAPTQLLGLLLLWLPGARC(配列番号501)が挙げられる。他のシグナル又は分泌ペプチドは、当業者に知られており、例えば特定の宿主細胞における発現を促進又は最適化するために、表1A及び1Bに列挙された可変領域ポリペプチド鎖又は表4A及び4Bの完全長鎖ポリペプチドのいずれかに融合され得る。
典型的には、本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片を産生するために宿主細胞中で使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための配列並びに抗体及び抗原結合断片のコンポーネントをコードする外因性ヌクレオチド配列のクローニング及び発現のための配列を含む。特定の実施形態において集合的に「フランキング配列」と呼ばれるこのような配列は、典型的には、以下のヌクレオチド配列:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナー及びアクセプタースプライス部位を含む完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域並びに選択マーカーエレメントの1つ以上を含む。これらの配列の各々を以下に論じる。
任意選択的に、ベクターは、「タグ」コード配列、すなわちポリペプチドコード配列の5’又は3’末端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含み得、このオリゴヌクレオチドタグ配列は、ポリHis(hexaHisなど)、FLAG、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)、myc又は商業的に入手可能な抗体が存在する別の「タグ」分子をコードする。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現時にポリペプチドに融合され、宿主細胞由来のポリペプチドの親和性精製又は検出のための手段として機能し得る。親和性精製は、例えば、親和性マトリックスとしてタグに対する抗体を使用するカラムクロマトグラフィーによって達成され得る。任意選択的に、その後、特定の切断用ペプチダーゼを使用するなどの様々な手段により、精製されたポリペプチドからタグを除去することができる。
フランキング配列は、同種(すなわち宿主細胞と同じ種及び/又は株由来)、異種(すなわち宿主細胞種又は株以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち2つ以上の供給源由来のフランキング配列の組み合わせ)、合成又は天然であり得る。したがって、フランキング配列の供給源は、そのフランキング配列が宿主細胞機構において機能的であり、且つ宿主細胞機構によって活性化され得ることを条件として、任意の原核生物若しくは真核生物、任意の脊椎生物若しくは無脊椎生物又は任意の植物であり得る。
本発明のベクターに有用なフランキング配列は、当該技術分野でよく知られたいくつかの方法のいずれかによって得ることができる。典型的には、本明細書において有用なフランキング配列は、マッピング及び/又は制限エンドヌクレアーゼ消化によって以前に同定されており、したがって適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して適切な組織供給源から単離することができる。いくつかの場合、フランキング配列の完全なヌクレオチド配列が既知であり得る。本明細書では、フランキング配列は、核酸合成又はクローニングに日常的に行われている方法を使用して合成することができる。
フランキング配列は、その全てが知られているか又は一部のみが知られているかに関わらず、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、且つ/又はゲノムライブラリを同じ種又は別の種由来のオリゴヌクレオチド及び/又はフランキング配列断片などの好適なプローブでスクリーニングすることによって得ることができる。フランキング配列が知られていない場合、フランキング配列を含むDNAの断片を、例えばコード配列又は別の遺伝子を含み得るDNAのより大きい断片から単離することができる。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化によって適当なDNA断片を生成し、続いてアガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth、CA)又は当業者に知られた他の方法を使用して単離することにより達成され得る。この目的の達成に好適な酵素の選択は、当業者に容易に分かるであろう。
典型的には、複製起点は、商業的に購入された原核生物の発現ベクターの一部であり、起点は、宿主細胞におけるベクターの増幅を補助する。選択したベクターが複製部位の起点を含まない場合、既知の配列に基づいて化学的に合成し、ベクターに結合することができる。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs、Beverly、MA)の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に好適であり、種々のウイルス起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口炎ウイルス(VSV)又はHPV若しくはBPVなどのパピローマウイルス)は、哺乳動物細胞におけるベクターのクローニングに有用である。一般に、複製コンポーネントの起点は、哺乳動物発現ベクターに必要ではない(例えば、SV40起点は、それがウイルス初期プロモーターも含むという理由からのみ、多くの場合に使用される)。
転写終止配列は、典型的には、ポリペプチドコード領域の3’側末端に位置し、転写を終結させる役割を果たす。通常、原核細胞における転写終止配列は、G-Cに富む断片とそれに続くポリT配列である。この配列は、ライブラリから容易にクローニングされるか、又はベクターの一部として商業的に購入されるが、知られた核酸合成の方法を使用して容易に合成することもできる。
選択マーカー遺伝子は、選択培養培地中で増殖させた宿主細胞の生存及び増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核宿主細胞に、抗生物質又は他の毒素、例えばアンピシリン、テトラサイクリン又はカナマイシンに対する耐性を付与するか;(b)細胞の栄養要求性欠損を補完するか;又は(c)複合培地又は限定培地から利用できない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。特異的選択マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子及びテトラサイクリン耐性遺伝子である。有利には、ネオマイシン耐性遺伝子は、原核宿主細胞及び真核宿主細胞の両方でも選択に使用され得る。
他の選択遺伝子を用いて、発現する遺伝子を増幅し得る。増幅は、増殖又は細胞生存に重要なタンパク質の産生に必要とされる遺伝子が組換え細胞の累代の染色体内でタンデムに繰り返されるプロセスである。哺乳動物細胞に好適な選択マーカーの例には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)及びプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子が含まれる。哺乳動物細胞形質転換体を、この形質転換体のみがベクター中に存在する選択可能な遺伝子によって生存するように特異的に適合されている選択圧下に置く。選択圧は、培地中の選択剤の濃度が連続的に増加する条件下で形質転換された細胞を培養することによって課され、それにより、選択可能な遺伝子と、本明細書中に記載の抗体又は抗原結合断片の1つ以上のコンポーネントなどの別の遺伝子をコードするDNAとの両方の増幅を導く。その結果、増幅されたDNAから多量のポリペプチドが合成される。
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、シャイン・ダルガノ配列(原核生物)又はコザック配列(真核生物)によって特徴付けられる。このエレメントは、典型的には、プロモーターの3’及び発現されるポリペプチドのコード配列の5’に位置する。特定の実施形態では、1つ以上のコード領域は、内部リボソーム結合部位(IRES)に作動可能に連結され得、単一のRNA転写物から2つのオープンリーディングフレームの翻訳を可能にする。
真核宿主細胞発現系においてグリコシル化が所望される場合などのいくつかの場合、グリコシル化又は収率を向上させるために種々のプレ配列又はプロ配列を操作し得る。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を改変するか、又はプロ配列を付加することができ、これもグリコシル化に影響し得る。最終タンパク質産物は、-1位(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)に、発現に付随する1つ以上の更なるアミノ酸を有し得、これは、完全には除去されていなかった可能性がある。例えば、最終タンパク質産物は、アミノ末端に結合した、ペプチダーゼ切断部位に見出される1個又は2個のアミノ酸残基を有し得る。代わりに、酵素が成熟ポリペプチド内のこのような領域で切断する場合、いくつかの酵素切断部位の使用は、所望のポリペプチドのわずかに切断された形態を生じ得る。
本発明の発現ベクター及びクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、ポリペプチドをコードする分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。本明細書で使用される用語「作動可能に連結された」は、所与の遺伝子の転写及び/又は所望のタンパク質分子の合成を指令することができる核酸分子が生成されるような方法で2つ以上の核酸配列が連結されていることを指す。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結された」ベクター中の制御配列は、タンパク質コード配列の発現が制御配列の転写活性と適合する条件下で行われるようにタンパク質コード配列に連結されている。より具体的には、プロモーター及び/又はエンハンサー配列(シス作用性転写制御エレメントの任意の組み合わせを含む)は、それが適切な宿主細胞又は他の発現系においてコード配列の転写を刺激又は調節する場合、そのコード配列に作動可能に連結されている。
プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(すなわち5’)に位置する非転写配列(一般に約100~1000bp以内)であり、構造遺伝子の転写を制御する。通常、プロモーターは、2つのクラス:誘導性プロモーター及び構成的プロモーターの一方に分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の有無又は温度の変化などの培養条件の何らかの変化に応じて、その制御下でDNAからの転写レベルの増加を開始する。一方、構成的プロモーターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子を均一に、すなわち遺伝子発現に対する制御をほとんど又は全く行わずに転写する。種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。好適なプロモーターは、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを除去し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することにより、例えば本発明の抗体及び抗原結合断片の重鎖、軽鎖又は他のコンポーネントをコードするDNAに作動可能に連結される。
酵母宿主と共に使用するのに好適なプロモーターも当該技術分野において周知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターと共に有利に使用される。哺乳動物宿主細胞と共に使用するのに好適なプロモーターは、よく知られており、以下に限定されるものではないが、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス血清型2、8又は9など)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが含まれる。他の好適な哺乳動物プロモーターとしては、異種哺乳動物プロモーター、例えば熱ショックプロモーター及びアクチンプロモーターが挙げられる。
興味深い更なる特定プロモーターとしては、SV40初期プロモーター(Benoist and Chambon,1981,Nature 290:304-310);CMVプロモーター(Thornsen et al.,1984、Proc.Natl.Acad.U.S.A.81:659-663);ラウス羅臼肉腫ウイルスの3’側の長い末端反復に含まれるプロモーター(Yamamoto et al.,1980、Cell22:787-797);ヘルパスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444-1445);メタロチオニン遺伝子由来のプロモーター及び調節配列(Prinster et al.,1982,Nature 296:39-42);及びβ-ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物プロモーター(Villa-Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727-3731);又はtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21-25)が挙げられるが、これらに限定されない。組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されている以下の動物転写制御領域も対象とする:膵腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al.,1984,Cell 38:639-646;Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399-409;MacDonald,1987,Hepatology 7:425-515);膵β細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115-122);リンパ細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38:647-658;Adames et al.,1985,Nature 318:533-538;Alexander et al.,1987,Mol.Cell.Biol.7:1436-1444);精巣、乳房、リンパ球及び肥満細胞において活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485-495);肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1:268-276);肝臓において活性であるα-フェト-タンパク質遺伝子制御領域(Krumlauf et al.,1985,Mol.Cell.Biol.5:1639-1648;Hammer et al.,1987,Science 253:53-58);肝臓において活性であるα1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161-171);骨髄細胞において活性であるβグロビン遺伝子制御領域(Mogram et al.,1985,Nature 315:338-340;Kollias et al.,1986,Cell 46:89-94);脳におけるオリゴデンドロサイト細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadet al.,1987,Cell 48:703-712);骨格筋において活性であるミオシン軽鎖2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283-286);及び視床下部において活性である性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al.,1986,Science 234:1372-1378)。
エンハンサー配列をベクターに挿入して、高等真核生物による抗体又は抗原結合断片のコンポーネント(例えば、軽鎖、重鎖又は可変領域)をコードするDNAの転写を増加させることができる。エンハンサーは、プロモーターに作用して転写を増加させる、通常、約10~300bp長のDNAのシス作用性エレメントである。エンハンサーは、方向及び位置に比較的依存せず、転写単位に対して5’及び3’の両方の位置に見出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェト-タンパク質及びインスリン)。しかし、典型的には、ウイルス由来のエンハンサーが使用される。当該技術分野で知られているSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例示的な増強エレメントである。エンハンサーは、コード配列に対して5’又は3’でベクター中に位置し得るが、一般的にはプロモーターの5’の部位に位置する。適切な天然又は異種のシグナル配列(リーダー配列又はシグナルペプチド)をコードする配列を発現ベクターに組み込んで、上記のような抗体又は抗原結合断片の細胞外分泌を促進することができる。シグナルペプチド又はリーダーの選択は、抗体又は抗原結合断片を産生する宿主細胞の型に依存し、天然のシグナル配列を異種性のシグナル配列と交換することができる。シグナルペプチドの例は、上に記載されている。哺乳動物宿主細胞において機能する他のシグナルペプチドとしては、米国特許第4,965,195号明細書に記載されるインターロイキン-7(IL-7)のシグナル配列;Cosman et al.,1984,Nature 312:768に記載されるインターロイキン-2受容体のシグナル配列;欧州特許第0367 566号明細書に記載されるインターロイキン-4受容体シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号明細書に記載されるI型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド;欧州特許第0 460 846号明細書に記載されるII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチドが挙げられる。
提供される発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築され得る。このようなベクターは、所望のフランキング配列の全てを含むことも含まないこともあり得る。本明細書に記載のフランキング配列の1つ以上がベクター中に依然として存在しない場合、それらを個別に得て、ベクターに結合させることができる。フランキング配列の各々を得るために使用される方法は、当業者に周知である。発現ベクターを宿主細胞に導入し、それにより、本明細書に記載の核酸によってコードされる抗体及び抗原結合断片を含むタンパク質を産生することができる。
特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片の異なるコンポーネントをコードする核酸を同じ発現ベクターに挿入し得る。例えば、抗PAC1抗体軽鎖又は可変領域をコードする核酸を、抗PAC1抗体重鎖又は可変領域をコードする核酸と同じベクターにクローニングすることができる。そのような実施形態では、軽鎖及び重鎖が同じmRNA転写物から発現されるように、内部リボソーム侵入部位(IRES)により、且つ単一のプロモーターの制御下で2つの核酸が分離され得る。代わりに、2つの核酸は、軽鎖及び重鎖が2つの別個のmRNA転写物から発現されるように2つの別個のプロモーターの制御下にあり得る。いくつかの実施形態では、抗PAC1抗体軽鎖又は可変領域をコードする核酸が1つの発現ベクターにクローニングされ、抗PAC1抗体重鎖又は可変領域をコードする核酸が第2の発現ベクターにクローニングされる。このような実施形態では、宿主細胞は、本発明の完全な抗体又は抗原結合断片を産生するために、両方の発現ベクターで同時トランスフェクトされ得る。
ベクターが構築され、本明細書に記載の抗体及び抗原結合断片のコンポーネントをコードする1つ以上の核酸分子がベクターの適当な部位に挿入された後、完成したベクターは、増幅及び/又はポリペプチド発現に好適な宿主細胞に挿入され得る。したがって、本発明は、本明細書に記載の抗PAC1抗体又は抗原結合断片のコンポーネントをコードする1つ以上の発現ベクターを含む単離された宿主細胞又は細胞株を包含する。本明細書で使用される用語「宿主細胞」は、核酸で形質転換されているか、又は形質転換され得、それによって目的遺伝子を発現する細胞を指す。この用語には、目的遺伝子が存在する限り、子孫の形態又は遺伝的構成が元の親細胞と同一であるか否かに関わらず、親細胞の子孫が含まれる。好ましくは少なくとも1つの発現制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサー)に作動可能に連結された本発明の単離された核酸を含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」である
抗PAC1抗体又は抗原結合断片のための発現ベクターの選択宿主細胞への形質転換は、遺伝子導入、感染、リン酸カルシウムによる共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介型遺伝子導入又は他の既知の手法を含む、よく知られる方法によって達成することができる。選択される方法は、部分的に、使用される宿主細胞の型の機能であろう。これらの方法及び他の好適な方法は、当業者によく知られており、例えばSambrook et al.,2001に記載されている。
宿主細胞は、適切な条件下で培養されると、抗体又は抗原結合断片を合成し、これは、続いて、培養培地(宿主細胞がそれを培地中に分泌する場合)から、又はそれを産生する宿主細胞(それが分泌されない場合)から直接回収され得る。適切な宿主細胞の選択は、所望する発現レベル、活性(グリコシル化又はリン酸化など)のために所望されるか又は必要であるポリペプチドの改変及び生物学的に活性な分子へのフォールディングの容易さなどの種々の因子によるであろう。
例示的な宿主細胞としては、原核生物、酵母又は高等真核生物細胞が挙げられる。原核生物の宿主細胞としては、グラム陰性又はグラム陽性微生物などの真正細菌、例えば腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばエシェリキア属(Escherichia)、例えば大腸菌(E.coli)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、例えばサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア属(Serratia)、例えばセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)及びシゲラ属(Shigella)並びにバチルス属(Bacillus)、例えばB.ズブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、シュードモナス属(Pseudomonas)及びストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。真核生物の微生物、例えば糸状菌又は酵母は、組換えポリペプチドに好適な適切なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又は一般的なパン酵母は、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかしながら、ピチア属(Pichia)、例えばP.パストリス(P.pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クロイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ・レシア(Trichoderma reesia)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、シュヴァンニオミセス属(Schwanniomyces)、例えばシュヴァンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)並びに糸状菌、例えばニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えばA.ニドゥランス(A.nidulans)、A.ニガー(A.niger)などの多くの他の属、種及び株が一般に利用可能であり、ここで有用である、
グリコシル化抗体及び抗原結合断片の発現のための宿主細胞は、多細胞生物由来であり得る。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株及びバリアント並びにツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(イモ虫)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)及びカイコ(Bombyx mori)などの宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。このような細胞のトランスフェクションのための種々のウイルス株、例えばオートグラファカリフォルニアNPV(Autographa californica NPV)のL-1変異体及びカイコNPV(Bombyx mori NPV)のBm-5株が公に入手可能である。
脊椎動物宿主細胞も好適な宿主であり、このような細胞由来の抗体及び抗原結合断片の組換え産生は、常法となっている。発現の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該技術分野でよく知られており、限定されないが、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能な不死化細胞株、例えば、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216,1980);SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(懸濁培養液中の増殖用としてサブクローニングされた293又は293細胞(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44-68,1982);MRC 5細胞又はFS4細胞;哺乳動物骨髄腫細胞及び多くの他の細胞株が挙げられる。特定の実施形態では、PAC1結合特性を有する抗体及び抗原結合断片をいずれの細胞株が高レベルで発現し、恒常的に産生するかを決定することによって細胞株を選択し得る。別の実施形態では、それ自体の抗体を作製しないが、異種抗体を作製し、分泌する能力を有する、B細胞系列由来の細胞株を選択することができる。いくつかの実施形態では、CHO細胞は、本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片の発現に好ましい宿主細胞である。
宿主細胞は、抗PAC1抗体又は抗原結合断片の産生のために、上記の核酸又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされ、プロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された従来の栄養培地中で培養される。更に、選択マーカーによって分離された転写単位の複数のコピーを有する新規ベクター及びトランスフェクトされた細胞株は、抗体及び抗原結合断片の発現に特に有用である。したがって、本発明は、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を生成するための方法であって、本明細書に記載の1つ以上の発現ベクターを含む宿主細胞を、1つ以上の発現ベクターによってコードされる抗体又は抗原結合断片の発現を可能にする条件下において培養培地中で培養することと;培養培地又は宿主細胞から抗体又は抗原結合断片を回収することとを含む方法も提供する。
本発明の抗体又は抗原結合断片を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに適している。更に、Ham et al.,Meth.Enz.58:44,1979;Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255,1980;米国特許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,927,762号明細書;同第4,560,655号明細書;若しくは同第5,122,469号明細書;国際公開第90103430号パンフレット;国際公開第87/00195号パンフレット;又は米国再発行特許第30,985号明細書に記載される培地のいずれかを宿主細胞の培養培地として使用することができる。これらの培地のいずれかは、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン又は上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)薬剤)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)並びにグルコース又は同等のエネルギー源を補充され得る。任意の他の必要な栄養補助物質も、当業者に知られる適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者に明らかであろう。
宿主細胞を培養すると、抗体又は抗原結合断片は、細胞内、細胞膜周辺腔内で産生されるか、又は培地中に直接分泌され得る。抗体又は抗原結合断片が細胞内で産生される場合、第1の工程として、微粒子の破片、すなわち宿主細胞又は溶解した断片のいずれかを例えば遠心分離又は限外濾過によって除去する。抗体又は抗原結合断片は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、カチオン若しくはアニオン交換クロマトグラフィー好ましくは、親和性リガンドとして目的の抗原又は又はプロテインA若しくはプロテインGを使用するアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づくポリペプチドを含むタンパク質を精製するために使用され得る(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13,1983)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:1567-1575,1986)。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合にアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。コントロールドポアガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。タンパク質がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が精製に有用である。回収される特定の抗体又は抗原結合断片に応じて、エタノール沈殿、逆相HPLC、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE及び硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製のための他の技術も可能である。
特定の実施形態では、本発明は、本発明の1つ又は複数の抗PAC1抗体又は抗原結合断片(例えば、抗PAC1モノクローナル抗体又はその結合断片)を薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/又はアジュバントと共に含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。医薬組成物は、本明細書に記載の方法のいずれかで使用され得る。本発明の医薬組成物としては、液体、凍結及び凍結乾燥組成物が挙げられるが、これらに限定されない。「薬学的に許容される」は、使用する用量及び濃度でヒトレシピエントに対して毒性がなく、且つ/又はヒトに投与したときにアレルギー又は有害な反応を生じない分子、化合物及び組成物を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌状態、安定性、溶解又は放出速度、吸着又は浸透性を修正、維持又は保存するための製剤材料を含有し得る。そのような実施形態では、好適な製剤材料として、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩又は他の有機酸など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);着色及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤又は湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパールなど);安定性促進剤(スクロース又はソルビトールなど);等張化促進剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又はカリウム、マンニトールソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤及び/又は医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。治療的使用のための分子を製剤化するための方法及び好適な材料は、薬学分野において知られており、例えばREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyに記載されている。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水、静菌水などの標準的な医薬担体を含む。種々の水性担体、例えば水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどを使用することができ、穏やかな化学的改変などに供されるアルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど、安定性を高めるための他のタンパク質を含み得る。
製剤中の抗体又は抗原結合断片の例示的な濃度は、約0.1mg/ml~約200mg/ml、又は約0.1mg/mL~約50mg/mL、又は約0.5mg/mL~約25mg/mL、又は約2mg/mL~約10mg/mLの範囲であり得る。抗体又は抗原結合断片の水性製剤は、例えば、約4.5~約6.5、又は約4.8~約5.5、又は約5.0のpHのpH緩衝溶液で調製され得る。この範囲のpHに好適なバッファーの例としては、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩及び他の有機酸バッファーが挙げられる。バッファー濃度は、例えば、バッファー及び製剤の所望の等張性に応じて、約1mM~約200mM又は約10mM~約60mMであり得る。
抗体又は抗原結合断片を安定化させることも可能な等張化剤を製剤に含めることができる。例示的な等張化剤としては、マンニトール、スクロース又はトレハロースなどのポリオールが挙げられる。水性製剤は、高張又は低張溶液も好適であり得るが、等張であることが好ましい。製剤中のポリオールの例示的な濃度は、約1w/v%~約15w/v%の範囲であり得る。
界面活性剤を製剤に添加して、製剤化抗体又は抗原結合断片の凝集を減少させ、且つ/又は製剤中の粒子の形成を最小限にし、且つ/又は吸着を減少させることもできる。例示的な界面活性剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の例示的な濃度は、約0.001w/v%~約0.5w/v%、又は約0.005w/v%~約0.2w/v%、又は代わりに約0.004w/v%~約0.01w/v%の範囲であり得る。
一実施形態では、製剤は、上記の薬剤(すなわち抗体又は抗原結合断片、バッファー、ポリオール及び界面活性剤)を含有し、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール及び塩化ベンゼトニウムなどの1種以上の防腐剤を実質的に含まない。別の実施形態では、防腐剤は、製剤中に例えば約0.1%~約2%又は代わりに約0.5%~約1%の範囲の濃度で含まれ得る。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyに記載されているような、1種又は複数の他の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤を、製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさない限り、製剤に含めることができる。
抗体又は抗原結合断片の治療製剤は、所望の純度を有する抗体又は抗原結合断片を任意選択的な生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、18th Edition,(A.R.Genrmo、ed.),1990,Mack Publishing Company)と凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で混合することにより、貯蔵のために調製される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、上記記載のもの、例えばバッファー(例えば、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸及びメチオニン);防腐剤(塩化オクタデシルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、メチルパラベン若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾール);低分子量(例えば、約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン);グルコース、マンノース、マルトース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);並びに/又はポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)、若しくはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
一実施形態では、本発明の好適な製剤は、リン酸塩、酢酸塩又はトリスバッファーなどの等張性バッファーをポリオール、ソルビトール、スクロース又は塩化ナトリウムなどの等張化剤(これは、等張化し、安定化する)と組み合わせて含有する。このような等張化剤の一例は、5%ソルビトール又はスクロースである。更に、製剤は、任意選択的に、例えば凝集の防止又は安定性の改善のために界面活性剤を0.01wt/vol%~0.02wt/vol%含むことができる。製剤のpHは、4.5~6.5又は4.5~5.5の範囲であり得る。抗体及び抗原結合断片のための医薬製剤の他の例示的な説明は、米国特許出願公開第2003/0113316号明細書及び米国特許第6,171,586号明細書に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
in vivoでの投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。本発明の組成物は、従来のよく知られた滅菌技術によって滅菌され得る。例えば、滅菌は、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。得られた溶液は使用のために包装されるか、又は無菌条件下で濾過されて凍結乾燥され得、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌溶液と組み合わされる。
凍結乾燥プロセスは、特にポリペプチドが液体組成物中で比較的不安定である場合、ポリペプチドを長期保存に対し安定化するために多くの場合に使用される。凍結乾燥サイクルは、通常、3つの工程:凍結、一次乾燥及び二次乾燥からなる(Williams and Polli,Journal of Parenteral Science and Technology,Volume 38、Number 2,pages 48-59,1984を参照されたい)。凍結工程では、溶液を十分に凍結されるまで冷却する。溶液中のバルク水がこの段階で氷を形成する。氷は、真空を用いて氷の蒸気圧未満にチャンバー圧力を低下させることによって行われる一次乾燥段階で昇華する。最後に、吸着又は結合した水は、第2の乾燥段階において、減圧したチャンバー圧力及び高い棚温度下で除去される。このプロセスにより、凍結乾燥ケーキとして知られる物質が生成される。その後、ケーキを使用前に再構成することができる。凍結乾燥物質の標準的な再構成の方法は、ある量の純水(通常、凍結乾燥中に除去された量に等しい)を添加することであるが、非経口投与のための医薬の製造では抗菌剤の希釈溶液がときに使用される(Chen,Drug Development and Industrial Pharmacy,Volume 18:1311-1354,1992を参照されたい)。
場合により、賦形剤が凍結乾燥製品の安定剤として作用することが知られている(Carpenter et al.,Volume 74:225-239,1991を参照されたい)。例えば、知られている賦形剤としては、ポリオール(マンニトール、ソルビトール及びグリセロールを含む);糖(グルコース及びスクロースを含む);及びアミノ酸(アラニン、グリシン及びグルタミン酸を含む)が挙げられる。更に、ポリオール及び糖類は、凍結及び乾燥により誘発される損傷からポリペプチドを保護し、乾燥状態での貯蔵中の安定性を高めるためにもよく使用される。一般に、糖類、特に二糖類は、凍結乾燥プロセス及び貯蔵中の両方において有効である。単糖類及び二糖類並びにPVPなどのポリマーを含む他のクラスの分子も凍結乾燥製品の安定剤として報告されている。
注射のために、医薬製剤及び/又は薬剤は、上記のような適切な溶液で再溶解するのに好適な粉末であり得る。これらの例としては、凍結乾燥、回転乾燥又は噴霧乾燥した粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物又は粒子が挙げられるが、これらに限定されない。注射のために、製剤は、任意選択的に、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤及びこれらの組み合わせを含有し得る。
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の好適な例としては、抗体又は抗原結合断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態を有する。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L-グルタミン酸とyエチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニルコポリマー、Lupron Depot(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及びロイプロリド酢酸塩から構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日間を超えて分子を放出できるが、特定のヒドロゲルは、より短い時間にわたってタンパク質を放出する。カプセル化されたポリペプチドが長時間体内に残存する場合、37℃の水分に曝露される結果として、それらは、変性又は凝集し、生物学的活性の消失及び免疫原性の可能な変化が生じ得る。関与している機構に応じた安定化のための合理的な戦略を立てることができる。例えば、凝集メカニズムがチオ-ジスルフィド交換による分子間のS-S結合の形成であると分かったら、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液の凍結乾燥、水分含量の制御、適切な添加剤の使用及び特定のポリマーマトリックス組成物の開発によって安定化を達成することができる。
本発明の製剤は、本明細書に記載のように、短時間作用性、速放性、長時間作用性又は持続放出性であるように設計することができる。したがって、医薬製剤は、制御放出又は徐放のためにも製剤化され得る。
具体的な用量は、処置される疾患、障害又は状態(例えば、反復性片頭痛、慢性片頭痛又は群発性頭痛)、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事、用量間隔、投与経路、排泄速度並びに薬物の組み合わせに応じて調節され得る。
本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、非経口、皮下、静脈内、腹腔内、肺内及び鼻腔内を含む任意の好適な手段によって投与され得、また局所治療で所望される場合には病変内投与によって投与され得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内又は皮下投与が挙げられる。更に、抗体又は抗原結合断片は、好適には、パルス注入により、特に抗体又は抗原結合断片の用量を減少させて投与される。投与が短期的なものであるか又は長期的なものであるかにある程度基づき、投与は、注射により行われることが好ましく、静脈内又は皮下注射により行われることが最も好ましい。局所、特に経皮、経粘膜、直腸、経口又は例えば所望の部位の近くに配置されるカテーテルによる局所の投与を含む他の投与方法が意図される。本発明の抗体又は抗原結合断片は、生理的溶液中、毎日から毎週から毎月までの範囲の頻度において0.01mg/kg~100mg/kgの範囲の用量で投与され得る。
本明細書に記載の抗PAC1抗体及び抗原結合断片は、それを必要とする患者における、PAC1受容体の生物学的活性に関係する病態の治療又は改善に有用である。したがって、治療方法で使用するための本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片が本明細書に開示されている。用語「患者」には、ヒト患者が含まれ、用語「対象」と互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、障害の発生を予防するか、又は障害の病状を改変することを意図して行われる介入である。したがって、「治療」は、治療的治療及び予防的又は抑止的手段の両方を指す。治療を必要とする者には、障害若しくは病態と既に診断されているか又はそれを患っている者及び障害又は病態が予防されるべき者が含まれる。「治療」は、損傷、病状又は病態の改善における成功の任意の兆候を含み、こうした兆候には、症状の軽減、寛解、縮小又は損傷、病状若しくは病態の患者耐容性の向上、悪化速度又は衰退速度の鈍化、悪化終点の衰弱軽減又は患者の身体的又は精神的な健全性の改善など、任意の客観的又は主観的なパラメータが含まれる。症状の治療又は改善は、身体検査、患者による自己申告、神経精神医学的検査及び/又は精神医学的評価の結果を含む客観的又は主観的なパラメータに基づき得る。
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、PAC1受容体(例えば、PAC1受容体のPACAP誘導活性化を伴う病態)の生物学的活性に関係する病態の治療又は予防を、それを必要とする患者において行うための方法であって、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片の有効量をその患者に投与することを含む方法を提供する。PACAP/PAC1シグナル伝達経路は、心臓血管機能、代謝及び内分泌機能、炎症、ストレス応答、血管運動神経緊張度の調節及び自律神経系の調節、特に交感神経系と副交感神経系との間のバランスを含む種々の生理学的プロセスに関係している。例えば、Tanida et al.,Regulatory Peptides,Vol.161:73-80,2010;Moody et al.,Curr.Opin.Endocrinol.Diabetes Obes.,Vol.18:61-67,2011;及びHashimoto et al.,Current Pharmaceutical Design,Vol.17:985-989,2011を参照されたい。PACAP/PAC1シグナル伝達経路の異常又は過剰活性化に関連する病態としては、頭痛病態、例えば片頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛、片麻痺性片頭痛及び網膜片頭痛など;炎症性皮膚病態;慢性疼痛、例えば神経障害性疼痛など;不安障害;過敏性腸症候群;並びに血管運動症、例えばほてり、顔面紅潮、発汗及び寝汗などが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明の抗PAC1抗体及びその抗原結合断片は、これらの病態若しくは障害又は異常若しくは過度のPAC1受容体の生物学的活性に関連する他の病態のいずれかを予防、改善又は治療するために患者に投与され得る。特定の実施形態では、本発明は、頭痛病態(例えば、反復性片頭痛、慢性片頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛、片麻痺性片頭痛及び網膜片頭痛)の治療又は予防を、それを必要とする患者において行うための方法であって、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片の有効量をその患者に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、頭痛病態を有する患者においてヒトPAC1受容体の活性化を阻害するための方法であって、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、患者は、反復性片頭痛又は慢性片頭痛などの片頭痛病態を有する。別の実施形態では、患者は、群発性頭痛病態を有する。
「有効量」は、一般に、症状の重症度及び/若しくは頻度を減少させ、症状及び/若しくは根底にある原因を排除し、症状及び/若しくはその根底にある原因の発生を予防し、且つ/又は特定の病態から生じるか若しくは特定の病態に関連する損傷を改善若しくは修復するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、治療有効量又は予防有効量である。「治療有効量」は、疾患状態若しくは症状、特に疾患状態に関連する状態若しくは症状を治療するのに十分な量又は疾患状態若しくは疾患に関連する他の望ましくない症状の進行をいかなる方法であれ防止、妨害、遅延若しくは逆転させる(すなわち「治療効果」を提供する)のに十分な量である。「予防有効量」は、対象に投与されると、意図した予防効果、例えば病態の発症(又は再発)を防止若しくは遅延させるか、又は病態の発症開始(又は再発)の可能性を減少させる抗体又は抗原結合断片の量である。完全な治療効果又は予防効果は、必ずしも1回用量の投与によって生じる必要はなく、一連の用量の投与後にのみ生じ得る。したがって、治療有効量又は予防有効量は、1回以上の投与で投与され得る。
特定の実施形態では、本発明は、血管拡張の阻害を、それを必要とする患者において行うための方法であって、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。PAC1受容体のリガンド、例えばPACAP38及びVIPは、強力な血管拡張剤であり、これらのリガンドのPAC1受容体への結合をブロックすると、血管拡張を阻害し、異常又は過度な血管拡張、例えば頭痛病態、ほてり及び紅潮などを伴う病態を改善することができる。一実施形態では、患者は、片頭痛又は群発性頭痛などの頭痛病態を有する。別の実施形態では、患者は、血管運動症状(例えば、ほてり、顔面紅潮、発汗及び寝汗)を有する。関連する実施形態では、患者は、閉経に関連する血管運動症を有する。
本発明の方法のいくつかの実施形態では、治療、予防又は改善される頭痛病態は、片頭痛である。したがって、本発明は、片頭痛の治療、予防又は改善を、それを必要とする患者において行うための方法であって、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片の有効量を患者に投与することを含む方法を含む。片頭痛は、片側性、拍動性及び/若しくは中度~重度の痛み並びに/又は身体活動によって悪化する痛みを特徴とする、約4時間~約72時間持続する再発性の頭痛である。片頭痛は、多くの場合、吐き気、嘔吐及び/又は光に対する過敏(光恐怖症)、音に対する過敏(音声恐怖症)若しくは匂いに対する過敏を伴う。一部の患者では、片頭痛の発症に先立って前兆がある。前兆は、典型的には、頭痛がまもなく起こることを知らせる視覚障害、感覚障害、言語障害又は運動障害である。本明細書に記載の方法は、ヒト患者における前兆のある片頭痛及び前兆のない片頭痛の1つ以上の症状を予防、治療又は改善する。
PACAP38は、その受容体を活性化することにより、血管拡張、特に硬膜血管系の血管拡張を誘導する(Schytz et al.,Neurotherapeutics,Vol.7(2):191-196,2010)。PACAP38/PAC1受容体シグナル伝達カスケードは、特に片頭痛の病態生理学に関係している(Amin et al.,Brain,Vol.137:779-794,2014)。VPAC1及びVPAC2受容体よりもPAC1受容体に対して高い親和性を有するPACAP38の注入は、片頭痛患者において片頭痛様頭痛を引き起こす(Schytz et al.,Brain 132:16-25、2009;Amin et al.,Brain,Vol.137:779-794,2014;Guo et al.,Cephalalgia,Vol.37:125-135,2017)。更に、片頭痛発作を経験している患者の頭蓋循環では、PACAP38レベルが上昇し、トリプタンによる片頭痛症状の治療後にPACAP38レベルが低下する(Tuka et al.,Cephalalgia,Vol.33,1085-1095,2013;Zagami et al.,Ann.Clin.Transl.Neurol.,Vol.1:1036-1040,2014)。これらの報告は、PACAP38の内因性放出が片頭痛の重要な誘因であり、その影響が主にPAC1受容体の活性化により媒介されることを示唆する。
いくつかの実施形態では、本発明の方法により治療される患者は、反復性片頭痛を有するか、患っているか又は診断されている。片頭痛歴(例えば、これまでに少なくとも5回の片頭痛の発作)を有する患者が1ヶ月に14日以下の片頭痛日を有する場合、反復性片頭痛と診断される。「片頭痛日」は、前兆の有無に関わらず、患者が30分を超えて続く「片頭痛」の発症、継続又は再発を経験する任意の暦日を含む。「片頭痛」は、吐き気若しくは嘔吐又は光若しくは音に対する過敏と関連する頭痛及び/又は以下の痛みの特徴:片側性の痛み、ズキズキする痛み、中度~重度の痛みの強さ又は身体活動によって悪化する痛みの少なくとも2つを特徴とする頭痛である。特定の実施形態では、反復性片頭痛を有するか、患っているか又は診断された患者は、平均して1ヶ月あたり少なくとも4日で15日未満の片頭痛日を有する。関連する実施形態では、反復性片頭痛を有するか、患っているか又は診断された患者は、平均して1ヶ月あたり15日未満の頭痛日を有する。本明細書で使用される場合、「頭痛日」は、患者が本明細書で定義される片頭痛又は30分を超えて持続するか、若しくは急性頭痛治療を必要とする任意の頭痛を経験するいずれかの暦日である。
特定の実施形態では、本発明の方法により治療される患者は、慢性片頭痛を有するか、患っているか又は診断されている。慢性片頭痛は、片頭痛患者(すなわちこれまでに少なくとも5回の片頭痛の発作を有する患者)のある患者が1ヶ月に15日以上の頭痛を有し、且つ少なくとも8日の頭痛日が片頭痛日である場合に診断される。いくつかの実施形態では、慢性片頭痛を有するか、患っているか又は診断された患者は、平均して1ヶ月あたり15日以上の頭痛日を有する。本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片を投与することにより、患者の反復性片頭痛の慢性片頭痛への進行を予防、低減又は遅延させる。
いくつかの実施形態では、本発明は、群発性頭痛の治療、予防又は改善を、それを必要とする患者において行うための方法であって、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。群発性頭痛は、その最も顕著な特徴として、頭部の片側、一般的には眼の周りに再発性の重篤な頭痛を伴う状態である(Nesbitt et al.,BMJ,Vol.344:e2407,2012を参照されたい)。群発性頭痛は、多くの場合、定期的に発生する:自然軽快により、痛みの活発な期間は、中断される。群発性頭痛は、多くの場合、涙、鼻閉、眼瞼下垂、縮瞳、顔面紅斑、発汗及び眼の周りの腫脹などの頭部自律神経症状を伴い、痛みが頭部の側部に限定されることが多い。群発性頭痛発症の平均年齢は、ほぼ30歳~50歳である。それは、男性においてより一般的であり、男性対女性の比は、約2.5:1~約3.5:1である。群発性頭痛の治療に翼口蓋神経節(SPG)への刺激が使用されている。低レベル(しかし、高頻度、生理学的遮断)の電気刺激をSPGに送達する神経刺激システムは、最近の臨床試験において、群発性頭痛の急性消耗性の痛みの軽減に有効であることが示された(Schoenen J et al.,Cephalalgia,Vol.33(10):816-30,2013を参照されたい)。この証拠を考慮すると、PACAPは、SPGにおける主要な神経伝達物質の1つであるため、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片によるPACAP/PAC1シグナル伝達の阻害は、ヒトにおける群発性頭痛の治療に有効であると予想される。
本発明の方法に従って治療され得るPACAP/PAC1シグナル伝達経路に関連する他の病態としては、炎症性皮膚病態、例えば酒さなど(米国特許出願公開第20110229423号明細書を参照されたい)、慢性疼痛症候群、例えば神経障害性疼痛(Jongsma et al.,Neuroreport,Vol.12:2215-2219,2001;Hashimoto et al.,Annals of the New York Academy of Sciences,Vol.1070:75-89,2006を参照されたい)、緊張型頭痛、片麻痺性片頭痛、網膜片頭痛、不安障害、例えば心的外傷後ストレス障害など(Hammack and May,Biol.Psychiatry,Vol.78(3):167-177,2015を参照されたい)、過敏性腸症候群及び閉経に関連するものなどの血管運動症状(例えば、ほてり、顔面紅潮、発汗及び寝汗)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を投与することによって治療される病態は、慢性疼痛である。別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を投与することによって治療される病態は、神経因性疼痛である。
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、治療は、予防的治療を含み得る。予防的治療とは、患者の症状(例えば、片頭痛又は群発性頭痛)の頻度、重症度及び/又は長さを低減するために、病態又は発作の発症前(例えば、片頭痛発作前又は群発性頭痛症状の発現前)に行われるように設計された治療を指す。
いくつかの実施形態では、患者の頭痛病態を治療又は予防するための本発明の方法は、本明細書に記載の片頭痛又は他の頭痛障害の急性的又は予防的治療に好適な1つ以上の薬剤と組み合わせた本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を患者に投与することを含む。用語「併用療法」は、本明細書で使用する場合、実質的に2つの化合物を同時に投与することに加え、順次的な手法(すなわち各化合物を任意の順序で異なる時間に投与する)で2つの化合物(例えば、抗PAC1抗体及び更なる薬剤)を投与することを包含する。実質的同時投与は、同時投与が含まれ、両方の化合物を含む単一の製剤(例えば、両方の化合物の固定比率を含む単一の製剤又は各化合物の固定比率を有するプレフィルドシリンジ)を投与するか、又は化合物の各々を含有する個別の製剤を同時に投与することにより達成され得る。したがって、特定の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を第2の頭痛治療薬と共に投与することを含む。
特定の実施形態では、第2の頭痛治療薬は、頭痛又は片頭痛の急性期治療に使用される急性頭痛治療薬であり得る。いくつかの実施形態では、急性頭痛治療薬は、セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン;5-HT)受容体アゴニスト、例えば5HT1受容体アゴニストである。急性頭痛治療薬は、5HT1B、5HT1D及び/又は5HT1Fセロトニン受容体のアゴニストであり得る。このようなセロトニン受容体アゴニストとしては、トリプタン(例えば、アルモトリプタン、フロバトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン及びゾルミトリプタン)、エルゴタミン(例えば、ジヒドロエルゴタミン及びエルゴタミン酒石酸塩)及び5HT1F選択的セロトニン受容体アゴニスト、例えばラスミジタンが挙げられるがこれらに限定されない。他の好適な頭痛治療薬としては、非ステロイド抗炎症薬(例えば、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン及びジクロフェナク)及びオピオイド(例えば、コデイン、モルヒネ、ヒドロコドン、フェンタニール、メペリジン及びオキシコドン)が挙げられる。一実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片と組み合わせて投与される急性頭痛治療薬は、トリプタンである。別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片と組み合わせて投与される急性頭痛治療薬は、エルゴタミンである。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片と組み合わせて投与される急性頭痛治療薬は、非ステロイド性抗炎症薬である。更に別の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片と組み合わせて投与される急性頭痛治療薬は、オピオイドである。
いくつかの実施形態では、第2の頭痛治療薬は、頭痛又は片頭痛の予防的治療に使用される予防的頭痛治療薬である。一実施形態では、予防的頭痛治療薬は、抗てんかん薬、例えばジバルプロエクス、バルプロ酸ナトリウム、バルプロ酸、トピラメート又はガバペンチンである。別の実施形態では、予防的頭痛治療薬は、β遮断薬、例えばプロプラノロール、チモロール,アテノロール、メトプロロール又はナドロールである。更に別の実施形態では、予防的頭痛治療薬は、抗うつ薬、例えば三環式抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ドキセピン及びフルオキセチン)である。更に別の実施形態では、予防的頭痛治療薬は、オナボツリヌストキシンAである。
特定の実施形態では、本発明の方法は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)シグナル伝達経路のアンタゴニストと共に本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む(すなわちCGRPリガンドによりCGRP受容体の活性化又はシグナル伝達を阻害する)。例えば、本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片を、CGRP経路アンタゴニストと組み合わせて投与して、それを必要とする患者の頭痛病態(例えば、片頭痛又は群発性頭痛)を治療又は予防することができる。いくつかの実施形態では、CGRP経路アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体のアンタゴニストである。CGRP受容体アンタゴニストとしては、米国特許出願公開第20060142273号明細書並びに米国特許第7,842,808号明細書;同第7,772,244号明細書;同第7,754,732号明細書;同第7,569,578号明細書;同第8,685,965号明細書;同第8,569,291号明細書;同第8,377,955号明細書;同第8,372,859号明細書;同第8,143,266号明細書;同第7,947,677号明細書;及び同第7,625,901号明細書(それらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で記載されているものなどのCGRP受容体の低分子阻害薬が挙げられる。CGRP受容体アンタゴニストとしては、米国特許第8,168,592号明細書(その全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているものなど、受容体のペプチドアンタゴニストも挙げることができる。特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片と共に投与されるCGRP受容体アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、例えば米国特許第9,102,731号明細書及び米国特許出願公開第20160311913号明細書(その両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている抗体などである。本発明の方法の特定の一実施形態では、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号502(下記で示される配列)の配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号503(下記で示される配列)の配列を含む重鎖可変領域を含む抗CGRP受容体モノクローナル抗体と組み合わせて投与され、患者の頭痛病態(例えば、片頭痛又は群発性頭痛)を治療又は予防する。本発明の方法の別の特定の実施形態では、患者の頭痛病態(例えば、片頭痛又は群発性頭痛)を治療又は予防するために本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片と組み合わせて投与される抗CGRP受容体モノクローナル抗体は、エレヌマブである。
例示的な抗CGRP受容体モノクローナル抗体についての軽鎖可変領域配列:
例示的な抗CGRP受容体モノクローナル抗体についての重鎖可変領域配列:
いくつかの実施形態では、患者の頭痛病態(例えば、片頭痛又は群発性頭痛)を治療又は予防するために本発明の抗PAC1抗体又は抗原結合断片と組み合わせて投与されるCGRP経路アンタゴニストは、CGRPリガンドのアンタゴニストである。CGRPリガンドアンタゴニストは、デコイ若しくは可溶性CGRP受容体又はCGRPリガンド、例えば抗CGRPリガンド抗体などに結合する他のタンパク質であり得る。抗CGRPリガンド抗体は、当該技術分野において既知であり、例えば国際公開第2007/054809号パンフレット;同第2007/076336号パンフレット;同第2011/156324号パンフレット;及び同第2012/162243(それらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。特定の実施形態では、本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片と共に投与されるCGRPリガンドアンタゴニストは、ヒトα-CGRP及び/又はヒトβ-CGRPに特異的に結合するモノクローナル抗体である。一実施形態では、抗CGRPリガンド抗体は、フレマネズマブである。別の実施形態では、抗CGRPリガンド抗体は、ガルカネズマブである。更に別の実施形態では、抗CGRPリガンド抗体は、エプチネズマブである。
本発明は、本明細書に記載の方法のいずれかにおける抗PAC1抗体及び抗原結合断片の使用も含む。例えば、特定の実施形態では、本発明は頭痛病態の治療又は予防を、それを必要とする患者において行うための方法で使用するための、本明細書に記載の抗PAC1抗体又はその抗原結合断片を提供する。いくつかのこのような実施形態では、頭痛病態は、片頭痛である。片頭痛は、反復性片頭痛又は慢性片頭痛であり得る。他の実施形態では、頭痛病態は、群発性頭痛である。いくつかの実施形態では、頭痛病態を治療又は予防するための方法は、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片と組み合わせて第2の頭痛治療薬を投与することを含む。一実施形態では、第2の頭痛治療薬は、急性頭痛治療薬、例えば5HT1B、5HT1D及び/又は5HT1Fセロトニン受容体アゴニスト(例えば、トリプタン又はエルゴタミン)並びに非ステロイド抗炎症薬又はオピオイドである。別の実施形態では、第2の頭痛治療薬は、予防的頭痛治療薬、例えば抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬、オナボツリヌストキシンA又はCGRP経路アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、CGRP経路アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体アンタゴニストである。特定の一実施形態では、ヒトCGRP受容体アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体、例えばエレヌマブである。他の実施形態では、CGRP経路アンタゴニストは、ヒトα-CGRP及び/又はヒトβ-CGRPに特異的に結合するモノクローナル抗体など、ヒトCGRPリガンドのアンタゴニストである。特定の実施形態では、抗CGRPリガンド抗体は、フレマネズマブ、ガルカネズマブ又はエプチネズマブである。
いくつかの実施形態では、本発明は、血管拡張の阻害を、それを必要とする患者において行うための方法で使用するための、本明細書に記載の抗PAC1抗体又は抗原結合断片を提供する。このような実施形態では、患者は、片頭痛(例えば、反復性又は慢性片頭痛)又は群発性頭痛などの頭痛病態を診断されているか又は有し得る。他の実施形態では、本発明は、頭痛病態を有する患者においてヒトPAC1受容体の活性化を阻害するための方法で使用するための、本明細書に記載の抗PAC1抗体又は抗原結合断片を提供する。頭痛病態は、片頭痛(例えば、反復性又は慢性片頭痛)又は群発性頭痛であり得る。
本明細書に開示の方法のいずれかによる投与のための医薬の調製のための、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片の使用が具体的に検討される。例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、頭痛病態の治療又は予防を、それを必要とする患者において行うための医薬の調製における、本明細書に記載の抗PAC1抗体又は抗原結合断片の使用を包含する。いくつかのこのような実施形態では、頭痛病態は、片頭痛である。片頭痛は、反復性片頭痛又は慢性片頭痛であり得る。他の実施形態では、頭痛病態は、群発性頭痛である。特定の実施形態では、抗PAC1抗体又はその抗原結合断片は、第2の頭痛治療薬と共に投与するために配合される。一実施形態では、第2の頭痛治療薬は、急性頭痛治療薬、例えば5HT1B、5HT1D及び/又は5HT1Fセロトニン受容体アゴニスト(例えば、トリプタン又はエルゴタミン)並びに非ステロイド抗炎症薬又はオピオイドである。別の実施形態では、第2の頭痛治療薬は、予防的頭痛治療薬、例えば抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬、オナボツリヌストキシンA又はCGRP経路アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、CGRP経路アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体アンタゴニストである。特定の一実施形態では、ヒトCGRP受容体アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体、例えばエレヌマブである。他の実施形態では、CGRP経路アンタゴニストは、ヒトα-CGRP及び/又はヒトβ-CGRPに特異的に結合するモノクローナル抗体など、ヒトCGRPリガンドのアンタゴニストである。特定の実施形態では、抗CGRPリガンド抗体は、フレマネズマブ、ガルカネズマブ又はエプチネズマブである。
いくつかの実施形態では、本発明は、血管拡張の阻害を、それを必要とする患者において行うための医薬の調製における、本明細書に記載の抗PAC1抗体又は抗原結合断片の使用を含む。このような実施形態では、患者は、片頭痛(例えば、反復性又は慢性片頭痛)又は群発性頭痛などの頭痛病態を診断されているか又は有し得る。他の実施形態では、本発明は、頭痛病態を有する患者のヒトPAC1受容体の活性化を阻害するための医薬の調製における、本明細書に記載の抗PAC1抗体又は抗原結合断片の使用を含む。頭痛病態は、片頭痛(例えば、反復性又は慢性片頭痛)又は群発性頭痛であり得る。
本発明の抗PAC1抗体及び抗原結合断片は、生体試料中のヒトPAC1の検出及びヒトPAC1を発現する細胞又は組織の同定にも有用である。例えば、抗PAC1抗体及び抗原結合断片は、診断アッセイ、例えば組織又は細胞で発現されたPAC1を検出及び/又は定量するためのイムノアッセイで使用することができる。加えて、本明細書に記載の抗PAC1抗体及び抗原結合断片を使用して、PAC1がPACAPとの複合体を形成することを阻害し得、それにより細胞又は組織におけるPAC1の生物学的活性を調節する。このような生物学的活性としては、細胞内cAMPの上昇及び血管拡張が挙げられる。
本明細書に記載の抗PAC1抗体及び抗原結合断片は、片頭痛、群発性頭痛及び心的外傷後ストレス障害などの不安障害を含む、PAC1に関連する疾患及び/又は病態を検出、診断又は監視する診断目的で使用することができる。また、当業者に知られた古典的な免疫組織学的方法(例えば、Tijssen,1993,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,Vol 15(Eds R.H.Burdon and P.H.van Knippenberg,Elsevier,Amsterdam);Zola,1987,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.);Jalkanen et al.,1985,J.Cell.Biol.101:976-985;Jalkanen et al.,1987,J.Cell Biol.105:3087-3096)を使用して、試料中のPAC1の存在を検出する方法が提供される。PAC1の存在の検出に有用な方法の例には、本明細書に記載の抗PAC1抗体及び抗原結合断片を使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが含まれる。PAC1の検出は、インビボ又はインビトロで実施することができる。
診断の適用では、抗PAC1抗体又は抗原結合断片は、検出可能な標識基で標識され得る。好適な標識基としては、以下:放射性同位体若しくは放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基又は二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介して抗体又は抗原結合断片にカップリングされる。タンパク質を標識するための様々な方法が当該技術分野で知られており、使用することができる。
別の実施形態では、本明細書に記載の抗PAC1抗体及び抗原結合断片を使用して、PAC1を発現する1つ又は複数の細胞を同定することができる。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、標識基で標識され、標識された抗体又は抗原結合断片のPAC1への結合が検出される。抗体又は抗原結合断片は、生体試料の免疫沈降アッセイでも使用することができる。更なる特定の実施形態では、PAC1への抗体又は抗原結合断片の結合は、in vivoで検出される。更なる特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、当該技術分野で知られた技術を使用して単離され、測定される。例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor(ed.1991 and periodic supplements);John E.Coligan,ed.,1993,Current Protocols In Immunology New York:John Wiley&Sonsを参照されたい。
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のみのために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1.ヒトPAC1抗体の結晶構造誘導設計
ヒトPAC1の細胞外ドメイン(ECD)とヒト抗PAC1中和抗体(29G4v9)のFab断片との間の複合体の結晶構造を決定した。ヒトPAC1 ECD及び抗PAC1Fabを別々に精製し、1:1のモル比で複合体化した。その後、20mMのTRIS pH7.5、50mMのNaCl、5mMのEDTA中で平衡化したゲル濾過カラムに試料をかけ、35mg/mLまで濃縮して、濾過した。
Fab断片の重鎖(可変領域(VH)、CH1定常領域、アッパーヒンジ及びカスパーゼIII切断部位を含む)及び軽鎖(可変領域(VL)及びCL定常領域を含む)の配列を以下に列挙する。ヒトPAC1 ECD構築物の配列は、以下に示され、ヒトPAC1(配列番号1)のアミノ酸26~143からアミノ酸89~109の領域を除いたものを含有した。
29G4v9 Fabの重鎖(VH領域(アミノ酸:1~120);CH1領域(アミノ酸:121~218);アッパーヒンジ領域(アミノ酸219~221)及びカスパーゼIII切断部位(222~226)で構成されている)についてのアミノ酸配列:
29G4v9 Fabの軽鎖(VL領域(アミノ酸:1~108)及びCL領域(アミノ酸:109~214)で構成されている)についてのアミノ酸配列:
精製したヒトPAC1 ECD及び抗PAC1Fabを、最初に市販のスクリーニングでシッティングドロップ蒸気拡散法を使用して共結晶化した。結晶化状態(Qiagen MPD Suite Screen#61(134561))を、ハンギングドロップ蒸気拡散法を使用して更に展開した。タンパク質及び結晶化バッファー(0.1Mクエン酸pH4.0、40%MPD)を4℃の結晶化バッファーのリザーバ溶液上において1μLのハンギングドロップに1:1で混合した。数週間で棒状の結晶が形成された。
結晶を凍結保護剤としての結晶化バッファー中で平衡化し、データ収集のためにLawrence Berkeleyナショナル研究所に発送するために液体窒素で凍結した。ADSC-Q315r CCD検出器(λ=1.000Å)上の先端光源シンクロトロンビームライン5.0.2でデータセットを収集した。HKL2000を使用してデータを統合して基準化し(Otwinowski and Minor,Methods Enzymology,Vol.276,307-326,1997)、0.081のRmergeで2.00Åまで99.8%完了(I/σ=2.35でラストシェル2.07~2.00Åを98.0%完了)した。結晶は、a=65.2Å,b=177.9Å、c=53.8Å、α=90°、β=90°、γ=90°のユニットセル寸法を有する斜方空間群P21212に属する。結晶構造は、PhaserMRを使用して分子置換により解明された(Winn et al.,Acta Crystallogr.,Sect.D:Biol.Crystallogr.,Vol.67:235-242,2011)。独自のFab構造は、抗PAC1Fabコンポーネントを解明する最初の検索モデルとして使用した。後続の分子置換は、PDBID:2JOD(Sun et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.104:7875,2007)、ヒトPAC1 ECD NMR構造を開始モデルとして使用し、ヒトPAC1 ECDコンポーネントを解明した。非対称ユニットには1つのECD分子及び1つのFab分子がある。構造は、両Refmac5を使用して精密化され(Winn et al.,Acta Crystallogr.,Sect.D:Biol.Crystallogr.,Vol.67:235-242,2011;Murshudov et al.,Acta Crystallogr.,Sect.D:Biol.Crystallogr.,Vol.67:355-367,2011)及びPhenix.refine(Adams et al.,Acta Crystallogr.,Sect.D:Biol.Crystallogr.,Vol.66:213-221,2010)、モデルの構築は、グラフィックプログラムCootを使用して実行された(Emsley and Cowtan、Acta Crystallogr.、Sect.D:Biol.Crystallogr.,Vol.2004,60:2126-2132,2004)。
ヒトPAC1 ECDの構造:抗PAC1 Fab複合体は、20%R因子及び23%のRfreeで2.00Åに精密化された。複合体の構造の正面図及び側面図をそれぞれ図1A及び図1Bに示す。29G4v9 FabとPAC1 ECDとの間の相互作用は、疎水性、静電的及び水素結合相互作用で構成される。29G4v9 FabとPAC1 ECDとの間の相互作用は、抗体-抗原相互作用に典型的である埋没表面積(1613Å2)及び形状相補性(0.695)値を有する。29G4v9 Fabにおける非水素原子から5Å以下の距離で少なくとも1つの非水素原子を含有したPAC1 ECD中の全てのアミノ酸は、PAC1 ECD中のコア界面アミノ酸であると判断された。原子の距離は、PyMOLプログラムで計算した(DeLano,W.L.The PyMOL Molecular Graphics System.(Palo Alto,2002))。PAC1 ECD中のコア界面アミノ酸としては、配列番号1に対するアミノ酸位置番号でAsp59、Asn60、Ile61、Arg116、Asn117、Thr119、Asp121、Gly122、Trp123、Ser124、Glu125、Pro126、Phe127、Pro128、His129、Tyr130、Phe131、Asp132及びGly135が挙げられる。
結晶構造における29G4v9 FabとPAC1 ECDとの間の界面を分析して、2つの分子間の相互作用が最適以下である領域を特定した。構造分析に基づいて、軽鎖及び重鎖可変領域におけるアミノ酸の変異は、FabとPAC1 ECDとの間のこれらの領域の相互作用を強化して、抗体の結合親和性及び/又は阻害力を改善するように設計された。特に、Fab軽鎖とPAC1 ECDとの間の相互作用の分析により、Fab軽鎖における変異がPAC1との相互作用を改善する可能性のある4つの領域が明らかになった。ゾーン1では、PAC1 ECDアミノ酸Glu120及びAsp121、軽鎖CDR1(配列番号3)のGln27のリジン、チロシン又はアルギニンへの変異を含む領域は、Glu120及びAsp121 PAC1アミノ酸でより優れた電荷相補性又は水素結合ポテンシャルを提供するために提案された(図2A)。ゾーン2は、正の静電ポテンシャルを有する領域であり、軽鎖CDR1(配列番号3)中のSer28のグルタメートへの変異は、電荷の相補性を高めるために提案された(図2A)。ゾーン3は、PAC1 ECD Phe127残基を含有する疎水性領域であり、水素結合ポテンシャルを有する。軽鎖CDR1中のGly30、Arg31及びSer32は、ゾーン3からわずかに離れている(図2A)。したがって、複数変異は、以下の表6でまとめたようにこれらの3つの部位で提案され、これらの3つの残基とPAC1 ECDのこのゾーンとの間の疎水性又は水素結合相互作用を向上させる。軽鎖CDR3中のArg93は、負の静電ポテンシャルを有するPAC1残基のポケットに位置する(ゾーン4;図2B)。しかし、形状により、Arg93は、PAC1残基と直接水素結合を形成しない。軽鎖CDR3中のArg93のグルタミン、リジン、ヒスチジン又はアスパラギンへの変異は、PAC1 ECDの残基との交互電荷相補性又は水素結合ポテンシャルを提供するために提案された(図2B)。
29G4v9 Fab重鎖とPAC1 ECDとの間の相互作用の分析により、Fab重鎖における変異がPAC1 ECDとの相互作用を改善し得る3つの主要な領域が明らかになった。図3Aに示すように、ゾーン5は、PAC1アミノ酸Phe131を包含し、Phe131の両側にある2つのサブゾーンに分けることができる。重鎖CDR1中のArg31及びPhe32は、これらのサブゾーンにあり、これらの部位での変異が提案されて、PAC1 Phe131残基との疎水性相互作用を改善するか、又は交互電荷相補性相互作用をもたらす。変異のリストについての表6を参照されたい。ゾーン6では、PAC1 ECD残基Asn60及びIle61(配列番号1に関して)を含み、重鎖CDR2残基Tyr53、Asp54及びGly56の変異が提案されて、疎水性相互作用を改善するか、又はAsn60及びIle61 PAC1残基との交互水素結合をもたらす(図3B)。ゾーン7では、表6に示すように、疎水性残基及びいくつかの負の静電ポテンシャル、重鎖CDR3残基Val102、Leu103及びThr104の変異がある領域が提案されて、疎水性相互作用を改善するか、又は交互水素結合相互作用をもたらす(図3C)。
Fab/PAC1 ECD複合体の結晶構造の分析に基づいて、抗PAC1抗体とヒトPAC1受容体との間の相互作用を改善するために提案された特定の変異の概要を以下の表6に示す。
上記のような抗PAC1 FabとヒトPAC1 ECDとの間の相互作用アミノ酸の分析によって設計される変異に加えて、結晶構造を使用したin silico親和性成熟分析も実施され、抗PAC1抗体の結合親和性及び/又は阻害力を改善するための更なる変異が同定された。ヒトPAC1 ECDへの結合に関与する29G4v9 Fabにおけるアミノ酸残基は、上記の複合体の結晶構造の目視検査により同定された。システインを除く他の全てのアミノ酸に対する仮想変異のために、抗体のこれらの界面残基を選択した。変異の抗体/PAC1 ECD結合相互作用への影響は、BioviaからのDiscovery Studio分子モデリングソフトウェアを使用して、特定の残基の変異時の結合自由エネルギーの変化(ΔΔG結合)を計算することにより評価した。負のΔΔG結合値は、変異が親分子と比較してPAC1 ECDへのより強い結合をもたらすことを示す。これらの計算により、負のΔΔG結合値につながるおよそ65の変異が同定された。これらの65の変異は、PAC1 ECDを用いたこれらのバリアントの「モデル化された」構造の目視検査及び分析に基づいて、50(軽鎖では18、重鎖では32)に更に絞り込まれた。結合自由エネルギーの計算に基づいて、PAC1に対する抗体の結合親和性を高めると予測されたこれらの50の変異を以下の表7にまとめる。
in silicoのアプローチにより、構造ベースの分析と比較して、異なるアミノ酸並びに軽鎖及び/又は重鎖内の異なる位置の両方に関して更なる変異の同定がもたらされた。
本実施例に記載の変異は、組換え産生により抗PAC1抗体に組み込まれ、本明細書実施例3で記載されるようなin vitroの細胞系アッセイでヒトPAC1のPACAP誘導活性化の阻害能力について試験した。
実施例2.29G4v10ヒトPAC1抗体の酵母ディスプレイ親和性成熟
親和性成熟についての1つの強力なアプローチには、酵母ディスプレイされた抗体Fab変異体のライブラリの構築及び蛍光支援細胞選別(FACS)による改善されたバインダの選択が含まれる(図4)。阻害力が向上した抗PAC1抗体を生成するために、29G4v10抗体(配列番号191のVH領域;配列番号52のVL領域)を、酵母ディスプレイされたFabライブラリのFACSにより親和性成熟させた。ライブラリの設計は、ヒトPAC1 ECDと29G4v9 Fabとの間の複合体の実施例1に記載される解明された共結晶構造によって導かれ、そのCDRは、29G4v10のCDRとほぼ同じである。構造分析は、最初に、それぞれ変異誘発のための軽鎖(LC)及び重鎖(HC)内の6つ及び7つのCDR位置を特定し、親和性増強の戦略を提案した。疎水性相互作用及び電荷相互性を改善し、界面全体に交互水素結合相互作用をもたらすようにポイント変異を設計した。実施例1を参照されたい。これらのポイント変異体は、生成、特性評価及び有益な変異の合理的な組み合わせの反復巡回を含む工学的アプローチを開始した。酵母ライブラリの設計は、13の位置間の変異組み合わせをより包括的に調査し、各選択位置での多様化戦略を強化することにより、実施例1で記載した線形アプローチを補完することを目的とした。
LCライブラリ及びHCライブラリを別々に作製することにより、理論上の多様性は、107未満の扱いやすいサイズに保たれた。LCライブラリは、MIX19飽和突然変異誘発を、6つの選択位置の5つ(配列番号52のGln27、Gly30、Arg31、Ser32及びArg93)で使用するように設計されている。MIX19は、システイン以外の全てのアミノ酸をコードする3量体ホスホラミダイト(コドン)混合物を表す。残っている軽鎖位置(配列番号52のSer28)でセリン、グルタメート、アラニン又は終止コドンへの突然変異が採用された。本発明者らは、1つのライブラリ中の7つ全てのHC位置(配列番号191のArg31、Phe32、Tyr53、Gly56、Val102、Leu103及びThr104)を調査するために、7つの重鎖CDR位置(配列番号191のArg31、Phe32、Tyr53、Val102及びLeu103)の5つにおいて、多様化のために9つのコドンのカスタム混合(MIX9)を設計した。カスタムMIX9は、疎水性アミノ酸、塩基性アミノ酸及び水素結合ドナー及びアクセプター(例えば、F、L、Y、M、Q、H、K、R及びS)を含む。重要なことに、下流の製造性リスクを引き起こす可能性のある配列ライアビリティの導入を最小化するために、カスタムMIX9は、システイン、アスパラギン及びトリプトファンを除外した。残っている2つの重鎖位置(配列番号191のGly56及びThr104)について、グリシン、アラニン、セリン及びトレオニンへの変異を実施した。要約すると、この最初のキャンペーンについて、8.5×106の理論的多様性を備えたmutHCライブラリ及び9.9×106の理論的多様性を備えたmutLCライブラリが設計され、構築されたライブラリは、理論的多様性を9倍より多くオーバーサンプリングした。
構築された2つのmutHC及びmutLC Fabライブラリは、FACSを使用してヒトPAC1 ECDに結合するためにリッチ化され、結合に使用されるECDの濃度を下げることにより、連続する各ラウンドでストリンジェンシーを高める(ラウンド1:30nM PAC1 ECD;ラウンド2:0.67nM PAC1 ECD;及びラウンド3:0.2nM PAC1 ECD)。親Fabと比較して改善された結合を示す酵母クローンを特異的にゲートするために、通常、同様に処理された29G4v10 Fab-酵母試料を使用した。各クローンについての正規化された結合/ディスプレイ比は、各クローンの蛍光結合シグナルの中央値を各クローンの蛍光ディスプレイシグナルの中央値で除算することによって算出した。ラウンド3までに、mutHCライブラリではなく、mutHCライブラリから改善されたバインダがリッチ化された。mutHCラウンド3プールからの約200の酵母クローンの簡略スクリーニングにより、11の適度に改善されたバインダが得られた(表8)。改善された親和性バリアントを組換えにより作製し、実施例3に記載されるようにin vitroでの機能的活性について評価した。偶然にも、29G4v10親Fab内のアスパラギン酸異性化部位、製造についてのポテンシャルライアビリティは、これら11のユニークな変異体全てで修復された。
更なる親和性の改善をもたらすために、mutHC及びmutLCのソートされたプールからのリッチ化変異を組み合わせたチェーンシャッフルされたライブラリも構築された。上位結合クローン間の相違点を改善するために、結合オフレート駆動選択及びスクリーニング戦略を導入した(図5)。変異体Fabをディスプレイする酵母細胞に最初にビオチン化ヒトPAC1 ECDを十分にしみ込ませ、広範囲に洗浄した後、大過剰の非標識ヒトPAC1 ECDを含むバッファーで長時間インキュベートした(最大24時間)。25℃~37℃の範囲の温度で発生した非標識ヒトPAC1 ECDとのインキュベーションにより、細胞からの解離現象が不可逆的となった。ビオチン化PAC1への結合が最も多く、それによりオフレートが最も遅い細胞を蛍光ストレプトアビジンコンジュゲートで染色した後、FACSで単離した(図5)。オフレートが最も遅い酵母クローンディスプレイFabは、蛍光性が最も高かった。
チェーンシャッフルされたライブラリのオフレート駆動ソートでは、同様に処理された29G4v10 Fab酵母試料を使用して、非標識PAC1と一晩競合させた後、ビオチン化PAC1結合がより大きい細胞を特異的に単離した。異なるゲートストリンジェンシーで収集された2つのプールから、結合オフレートアッセイを使用して約600個の個別の酵母クローンをスクリーニングし、親29G4v10 Fabよりも高いPAC1結合が残っている190個を超えるクローンを特定した。これらの有望なクローンの結合の特異性は、無関係な受容体(プログラム細胞死タンパク質1(PD1)及び胃抑制ポリペプチド受容体(GIPR))のECDへのクローンの結合がないことを確認することによって評価された。更なるシステイン異常、N-結合グリコシル化、アスパラギン酸異性化、アスパラギン脱アミド化及び開始29G4v10配列に対するトリプトファン酸化部位を含有する変異体もスクリーニングで除去された。上位30の結合変異体を、親29G4v10抗体からのCDRにおける配列変化及びオフレートアッセイ後のヒトPAC1 ECD結合のパーセンテージと共に表9に示す。PAC1 ECD結合のパーセンテージが高いほど、変異体Fabのオフレートが遅いことを示す。
第2世代ライブラリのセットは、更なる親和性の向上をもたらすように設計された。上記の第1世代ライブラリは、結晶構造においてPAC1 ECDの4.5Å以内にある29G4v10親抗体CDR位置のサブセットで多様化を集中させた(実施例1)。第2世代ライブラリについて、軽鎖のCDR2及びCDR3などの第1世代ライブラリではほとんど変更されていない領域での変異誘発が検討された。第1世代ライブラリで検討されたいくつかの位置について、配列動向を使用して、3ラウンドの選別後に出現した中立/有益な突然変異の制限されたセットに多様化した。最後に、CDRコンフォメーションに影響を与える可能性があるいくつかの埋め込みフレームワーク残基は、他のヒトVH3及びVK3生殖細胞系列の同じ位置で頻繁に見られるアミノ酸を優先する変異戦略により、制限された多様化を対象とした。
全体で、4つの第2世代Fabライブラリは、多様化のために24個の重鎖CDR残基(配列番号191のアミノ酸27、29、31~34、49、52~57、70、72、77、79、98、100~104及び106)及び17個の軽鎖CDR残基(配列番号52のアミノ酸27、28、30~32、34、46、49~54、92~94及び96)を標的とするように設計された。多くの標的位置での制限された多様性により、1つのライブラリ内のより多くのCDR位置の調査並びにHCDR1のHCDR3との共同最適化及びLCDR1のLCDR3との共同最適化が可能になった。構築された4つのライブラリは、7×106~1×107の範囲の8~24倍の理論的多様性をカバーした。
4つの構築されたFabライブラリは、上記のように、FACSを使用して、ヒトPAC1 ECDへの結合のためにリッチ化された。ラウンド3までに、mutHCDR2及びmutLCDR1-LCDR3ライブラリのみが、親29G4v10抗体と同等以上の結合を有するプールを生成した。したがって、これらの2つのプールは、持ち越されて、更なる親和性の向上のために、mutH2/mutL1L3チェーンシャッフルされたライブラリが作製された。最も親和性の高い変異体をリッチ化するために、第1世代ライブラリ(表9)の最高性能の酵母クローンである2B10を使用して、よりストリンジェントなソートゲートを設定した。30℃~37℃で非標識PAC1との一晩のオフレート競合後、2B10クローンと比較してオフレートが有意に低下した酵母クローンを選別することができた。約200クローンの制限されたスクリーニングは、約100のオフレートが2B10より遅いことが明らかになったが、有望なバインダのほとんどにHCDR2内の潜在的なアスパラギン脱アミド化ライアビリティが含まれていた。ECDのPD1又はGIPRとの非特異的結合は、スクリーニングされた全てのクローンに関して最小であった。ストリンジェントな結合及び配列フィルタを適用すると、PAC1の結合が2B10クローンよりも有意に改善され(37℃の一晩競合後、関連割合が2倍超に高い)、ポテンシャル配列ライアビリティがない上位10個の変異体が得られた(表10)。これらの上位10個の変異体の親29G4v10抗体からの配列変化並びに30℃及び37℃でのオフレートアッセイ後のヒトPAC1 ECD結合のパーセンテージを表10に示す。関連パーセンテージは、オフレートアッセイ後の正規化された結合を、オフレートアッセイなしの正規化された結合で除算した値として計算された。PAC1 ECD結合のパーセンテージが高いほど、変異体Fabのオフレートが遅いことを示す。
表10に示すように、上位10個の結合変異体の全てがCDRL1においてQ27K変異を含有し、1つを除く全てがCDRL1においてR31W変異を含有した。変異体の全てがCDRH2中のアミノ酸位置D54及びN57で変異を有し、またほとんどがCDRH2中のアミノ酸位置G56に変異を有した。重鎖フレームワーク2(FR2)及びフレームワーク3(FR3)領域中のアミノ酸位置49及び70での保存的変異は、これらの10個の変異体の多くでも観察された。
要約すると、29G4v9 Fabとの複合体のPAC1 ECDの構造によって導かれ、PAC1 ECDへの結合を改善するために、29G4v22及び29G4v10抗PAC1中和抗体の密接に関連するバリアント、29G4v10変異体のコンビナトリアルライブラリが設計され、ソートされた。最も改良されたバインダを単離するため、リッチ化変異は、よりストリンジェントな条件下での選択のために、CDRシャッフル及び/又はチェーンシャッフルされたライブラリの構築を通じて結合された。ソート後の個別の酵母Fabクローンのスクリーニングにより、29G4v10親抗体と比較して結合オフレートが有意に遅く、非特異的結合が最小限であり、ヒトPAC1 ECDへのバインダの改善が得られた。改善された親和性バリアントのサブセットを組換えにより生成し、実施例3に記載されるようにin vitroでの機能的活性について評価した。
実施例3.ヒトPAC1抗体バリアントのin vivoでの機能的活性
抗PAC1抗体の阻害力に対する共結晶構造(実施例1)又は酵母ディスプレイライブラリ(実施例2)の分析によって同定された重鎖及び軽鎖可変領域における変異の影響を評価するために、バリアントは、完全な二価のモノクローナル抗体として、且つ/又は一価のFab-Fc融合物(例えば、二量体IgG Fc領域に融合したFab領域)として組換え発現法によって生成され、以下でより詳細に説明するように、細胞系AMPアッセイで評価された。モノクローナル抗体の軽鎖及びFab断片は、配列番号318又は配列番号319の配列を有するヒトκ軽鎖定常領域に融合された示された抗体バリアント由来の軽鎖可変領域を含んでいた。モノクローナル抗体の重鎖及びFab-Fc融合物は、配列番号325の配列を有するアグリコシル化した、ジスルフィド安定化ヒトIgG1z定常領域に融合された示された抗体バリアント由来の重鎖可変領域を含んでいた。
PAC1抗体バリアント配列は、SDMが成功しなかった場合、部位特異的変異誘発(SDM)又はゴールデンゲートアセンブリ(GGA)によって生成された。部位特異的変異誘発は、変異部位に隣接する対になった変異誘発プライマーを利用した。二本鎖プラスミドDNA鋳型を使用して、ベクター全体のPCR反応を実施した。特定のクローンの望ましい変異の全てについてのプライマーをマスタープライマーミックスに組み合わせ、1つからいくつかの変異を個別の反応に組み込んだ。増幅後、メチル化DNAを優先的に切断するエンドヌクレアーゼであるDpnIで消化することにより、鋳型プラスミドDNAを除去した。次いで、SDM産物を増殖のためのコンピテントセルに形質転換し、シーケンシングによるスクリーニングを行った。SDM反応は、製造元の指示に従い、QuikChange Lightning Multi部位特異的変異誘発キット(Agilent)を使用して実施した。
SDMが成功しなかった場合、代替のクローニング戦略が使用された。要約すると、GGAは、II型制限酵素及びT4 DNAリガーゼを利用して、複数のDNA断片を切断し、シームレスにライゲーションした(Engler et al.,PLOS One,Vol.3(11):e3647,2008)。本実施例では、複数のDNA断片は、(i)コザックコンセンサス配列、シグナルペプチド配列及び抗体可変領域配列をコードする合成核酸配列(gBlock、Integrated DNA Technologies,Coralville,IA);(ii)Partsベクターから放出された抗体定常ドメイン断片;及び(iii)発現ベクターの骨格からなった。GGA反応は、10ngのgBlock、10ngのPartベクター、10ngの発現ベクター、1μLの10倍Fast Digest反応バッファー+0.5mMのATP(Thermo Fisher,Waltham,MA)、0.5μLのFastDigest Esp3I(Thermo Fisher,Waltham,MA)、1μLのT4 DNAリガーゼ(5U/μL、Thermo Fisher,Waltham,MA)及び水10μLまでで構成された。反応は、37℃で2分の消化工程及び16℃で3分のライゲーション工程からなる15サイクルにわたって行われた。15サイクル後、最後の5分間の37℃消化工程及び80℃での5分間の酵素不活化工程が続いた。
クローニング後、最初の22アミノ酸がVK1シグナルペプチド(MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC;配列番号486)であるPAC1抗体ポリペプチドは、293HEK細胞を対応するcDNAで一過性にトランスフェクトすることにより生成された。1.5×106細胞/mLの細胞に、F17培地(Thermo Fisher)中の4mLのPEI/mgのDNAと共に、0.5mg/LのDNA(pTT5ベクター中0.5mg/LのPAC1)又は(0.4mg/Lの空のpTT5ベクターを有するpTT5ベクター中の0.1mg/LのPAC1)(Durocher et al.,NRCC,Nucleic Acids. Res.,Vol.30:e9,2002)をトランスフェクトした。イーストレート(Yeastolate)及びグルコースをトランスフェクションの1時間後に培養物に添加し、次いで0.1%のKolliphor、6mMのL-グルタミン及び50μg/mLのジェネティシンを補充したF17発現培地を使用して、細胞を懸濁液中で6日間増殖させ、その後、条件培地を精製のために回収した。
タンパク質A親和性クロマトグラフィー(MabSelect SuRe,GE Healthcare Life Sciences,Little Chalfont,Buckinghamshire,UK)、続いてカチオン交換クロマトグラフィー(SPセファロース高性能カラム(SP HP)(GE Healthcare Life Sciences)を使用して、条件培地からPAC1抗体バリアントを精製した。NanoDrop2000(Thermo Fisher Scientific(Rockford,Illinois,USA))を使用して、各精製プールのタンパク質濃度を280nm(A280)でのUV吸光度によって測定した。精製したプールを、20kDa MWCO Slide-A-Lyzer透析フラスコ(Thermo Fisher Scientific)を使用して、2Lの10mM酢酸ナトリウム、9%のスクロース、pH5.2(A52Su)に対して、撹拌プレート上で穏やかに撹拌しながら、4℃で2時間透析した。使用した透析液をデカンテーションで取り除き、新しい2LのA52Suを添加し、透析を一晩行った。透析後、30kDa MWCO限外濾過濃縮装置(Thermo Fisher Scientific)を使用して試料を濃縮し、各試料がA280に基づいて約40mg/mLになるまで、スイングバケットローターで2,000×gで遠心分離した。Caliper LabChip GXIIマイクロキャピラリー電気泳動(PerkinElmer,Waltham、Massachusetts,USA)及びACQUITY UPLCタンパク質BEH SECカラム、200Å、4.6×300mm(Waters Corporation,Milford,Massachusetts,USA)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、最終生成物をメインピーク純度について分析した。Endosafe-MCS(Charles River,Wilmington,Massachusetts,USA)及び0.05EU/mL PTSカートリッジ(Charles River)を使用して、エンドトキシン含有量を測定した。
精製されたモノクローナル抗体又はFab-Fc融合タンパク質の機能的活性を、細胞系PAC1受容体cAMP活性アッセイを使用して評価した。PACAP38とPACAP27との両方は、PAC1受容体のアゴニストであり、その活性化により細胞内cAMPの増加がもたらされる。アッセイは、ATCC(ATCC番号CRL-2266;「CRL-2266細胞」)由来のヒト神経芽細胞腫誘導細胞株(SH-SY5Y;Biedler JL et al.,Cancer Res.,Vol.38:3751-3757,1978)を用いた。CRL-2266細胞は、内因的にヒトPAC1受容体を発現する(Monaghan et al.,J Neurochem.,Vol.104(1):74-88,2008)。加えて、ラットPAC1受容体(GenBank受入番号NM_133511.2)又はカニクイザルPAC1受容体(NCBI参照配列XP_015303041.1)を安定して発現するCHO細胞株をCRL2266細胞の代わりにアッセイのために使用して、ラット及びカニクイザルPAC1受容体における抗PAC1抗体又はFab-Fc融合の種交差反応性を評価した。LANCE Ultra cAMPアッセイキット(PerkinElmer,Boston,MA)を使用して、cAMP濃度を測定した。
アッセイ当日、凍結したCRL-2266細胞を37℃で解凍し、アッセイバッファーで1回洗浄した。2,000個の細胞を含有する10μLの細胞懸濁液を96ハーフエリアホワイトプレートに添加した。5μLの抗PAC1バリアントモノクローナル抗体又はFab-Fc融合タンパク質(10点容量反応曲線:1μM~0.5fMの範囲の濃度)を添加した後、混合物を室温で30分間インキュベーションした。次いで、5μLのヒトPACAP38(10pMの最終濃度)をアゴニストとして添加し、混合物を室温で更に15分間インキュベーションした。ヒトPACAP38刺激後、20μLの検出ミックスを添加し、室温で45分間インキュベーションした。プレートをEnVision機器(PerkinElmer,Boston,MA)で発光波長665nmにおいて読み取った。データをPrizm(GraphPad Software Inc.)によって処理及び分析し、試験されたアンタゴニスト濃度(例えば、抗PAC1バリアント抗体又はFab-Fc融合タンパク質)の関数としてPOC(対照のパーセント、対照はアッセイで使用されるアゴニストの活性として定義される)を示し、標準の非線形回帰曲線をフィッティングして、IC50値を得た。POCを以下のとおり計算した。
一価のFab-Fc融合タンパク質は、表6及び7にまとめられた変異で生成され、上記の細胞系cAMPアッセイにおける機能的活性について試験した。変異体Fab-Fc融合タンパク質は、2つの別々のグループ:親分子と比較してヒトPAC1受容体に対する阻害力を改善する変異及び中立として特徴付けられる変異に分けられた(表11)。変異の平均効力が親分子よりも1.5倍弱であり、同じ実行で少なくとも1つの効力測定が親分子よりも強力である場合、変異は、中立と特性付けられた。
ヒトPAC1受容体に対する阻害力の増加をもたらした変異は、抗体表面の3次元空間の3つの異なる領域にある。バリアント抗体及びFab-Fc融合タンパク質の第2ラウンドは、これらの3つの領域の変異を組み合わせることにより生成され、効力を更に高める可能性がある。加えて、中立変異のいくつかは、結合に有意な影響を与えない可能性が高いために組み込まれたが、抗体の生物物理学的特性を改変するメカニズムを提供し得る。所望の変異を含有する可変領域を、ヒトアグリコシル化IgG1 Fc領域及び/又は一価Fab-Fc融合タンパク質を有する二価モノクローナル抗体中に組み込んだ。アグリコシル化ヒトIgG1抗体Fc領域は、EU番号付けによるN297G、R292C及びV302C変異を有するヒトIgG1z Fc領域の配列(配列番号325)を含んでいた。バリアント抗体及び変異の組み合わせを有するFab-Fc融合タンパク質を細胞系cAMPアッセイの機能的活性について評価した。結果を以下の表12に示す。
抗体が、軽鎖可変領域中のQ27位置(Q27K)に変異を有し、重鎖可変領域中のD54位置(D54I、D54Q又はD54N)及び/又はG56位置(G56R又はG56N)に変異を有する場合、力の最大の改善が見られた。配列番号52の軽鎖可変領域中のQ27は、AHo番号付けで29位のアミノ酸に対応する。配列番号191の重鎖可変領域中のD54及びG56は、それぞれAHo番号付けで61位及び66位のアミノ酸に対応する。軽鎖可変領域中のQ27位置のリジン又はアルギニンなどの塩基性アミノ酸は、おそらくPAC1 ECD中の酸性アミノ酸Glu120とAsp121との電荷相補性の改善をもたらす(図2Aのゾーン1を参照されたい)。重鎖可変領域中の位置D54の疎水性残基(例えば、イソロイシン)又は中性親水性残基(例えば、グルタミン又はアスパラギン)及び重鎖可変領域中の位置G56の塩基性残基(例えば、アルギニン)又は中性親水性残基(例えば、アスパラギン)は、PAC1 ECD中のアミノ酸残基Asn60及びIle61との疎水性相互作用又は水素結合を改善するように見えた(図3Bのゾーン6を参照されたい)。
MutHCライブラリスクリーニングからの上位11個の変異体(表8)は、cAMPアッセイにおける生成及び機能試験(表13)のために上記のようにアグリコシル化IgG1モノクローナル抗体及び一価Fab-Fc分子としてフォーマットされた。このバリアントのセットに対する酵母への適度に改善された結合により、11個のmAbの4個及び11個のFab-Fcsの7個のための改善されたPAC1受容体ブロッキング機能に変換された。それにも関わらず、抗体として、iPS:421873変異体は、親29G4v10抗体と比較してPAC1ブロッキング機能で約4倍の改善を示した。変異体の活性ランキングは、2つの形式間でほぼ一貫しており、おそらくアビディティの損失のために、Fab-Fcsは、一貫してmAbsよりも弱い機能(より高いIC50値)を示す。
チェーンシャッフルされたライブラリ由来の29G4v10変異体のサブセット(表9及び表10)をアグリコシル化IgG1モノクローナル抗体に変換し、細胞系cAMPアッセイで機能的活性を試験した。結果を以下の表14に示す。
モノクローナル抗体(mAbs)としてフォーマットした場合、第2世代のチェーンシャッフルされたライブラリ(表10)由来の29G4v10変異体は、第1世代のチェーンシャッフルされたライブラリ(表9)からの変異体よりもPAC1の強力なアンタゴニストであり、PAC1ブロッキング機能の強化は、特に結合の改善及び結合オフレートの低下と相関することが示唆される。しかしながら、驚くべきことに、mAbsとしての変異体の大部分は、抗体iPS:421873よりも活性が低く、ヒトPAC1 ECDへの結合がおそらく強化されているにも関わらず、mutHCライブラリスクリーニングからの最も強力な変異体である(表13)。それにも関わらず、30_D05変異体は、29G4v10親抗体及び29G4v22対照抗体と比較してそれぞれ機能が約10倍及び67倍向上した。1つの共通のフィーチャは、非常に強力なS8_30_D05により共有され、iPS:421873mAbsは、HCDR2内のD54R変異であり、他のそれほど強力でないmAb変異体に存在しない。興味深いことに、29G4v10親抗体及び29G4v22対照抗体とは対照的に、親和性成熟バリアントは、全てラットPAC1受容体との交差反応性を示す(表14)。
実施例4.ヒトPAC1抗体バリアントのin vivoでの機能的活性
マキサジランは、血管拡張性ペプチドであり、PAC1受容体のアゴニストである。マキサジランを皮内投与した場合、レーザードップラーイメージングで測定できる局所的な皮膚血流が増加する。PAC1アンタゴニスト(例えば、抗PAC1抗体)によるこの効果の阻害は、PAC1生物活性の拮抗作用の並進薬力学的モデルとして役立ち得る。実施例3からのモノクローナル抗体としてフォーマットした場合、改善されたin vitro阻害力を示したPAC1バリアントのサブセットを、ラット皮膚血流モデルを使用することにより、in vitroでPAC1受容体活性化を阻害する効力について試験した。
in vivoでの薬力学モデル
試験の時点で8週齢~12週齢のナイーブ雄Sprague DawleyラットをCharles River Laboratoriesから購入した。本実施例における全ての手順は、動物福祉法(Animal Welfare Act)、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)及び実験動物福祉部門(Office of Laboratory Animal Welfare)に準拠して実施した。動物は、Amgen’s Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Committee(AAALAC)認定施設の無菌換気micro-isolatorハウジングにおいて集団で飼育した。動物は、自動給水システムによりペレット飼料(Harlan Teklad 2020X,Indianapolis,IN)及び水(現場生成逆浸透)に自由にアクセスした。
抗PAC1抗体のサブセットを、ラットマキサジラン誘導皮膚血流増加(MIIBF)薬力学(PD)モデルにおいて、レーザードップラーイメージングを用いて試験した。マキサジラン(Bachem、H6734.0500)の投薬溶液を、1×リン酸塩-緩衝生理食塩水(PBS)中に希釈したマキサジラン原液(0.5mg/mL)により、最終濃度0.5μg/mLに毎日新たに調製した。実験に必要な用量に応じて、全ての抗PAC1抗体(Abs)を10mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、pH5.2(A52Su)中において異なる濃度で調製し、レーザードップラーイメージングによる皮膚血流(DBF)測定の1日前に単回ボーラス静脈内注射を投与した。
レーザードップラーイメージャー(LDI-2、Moor Instruments,Ltd,Wilmington,DE)を使用して、633nmヘリウムネオンバルブによって生成された低出力レーザービームを用いてラット腹部の皮膚を測定した。測定分解能は、0.2~2mmであり、器具の開口部と組織表面との間のスキャン距離は、30cmであった。DBFを測定し、ベースラインからの変化%[100×(個々のマキサジラン後のフラックス-個々のベースラインフラックス)/個々のベースラインフラックス]又はDBF阻害%[BLからのビヒクルの平均%-個々の抗体処理ラットのBLからの変化%]のいずれかとして表し、抗体効果の大きさを定量化した。
試験日にプロポフォールで麻酔した後、ラットの腹部領域を剃毛し、各動物を温度制御循環温水パッド上に仰臥位に置いて、試験中、安定した体温を維持した。10~15分の安定期間後、ゴム製Oリング(0.925cm内径、O-Rings West,Seattle,WA)を(目に見える血管の上に直接配置することなく)ラットの腹部に配置した。選択された領域上にOリングを配置した後、ベースライン(BL)DBF測定を行った。BLスキャン後、PAC1アゴニストマキサジランをOリングの中心に皮内注射(0.5μg/mLを20μL)で投与した。DBFは、マキサジラン注射後30分又は抗体処理後24±1.5時間で測定された。Oリングは、DBFが分析された対象領域を定義する。
全てのDBF結果を平均±SEMとして表した。一元配置分散分析、続いてダネットの多重比較検定(MCT)を用いて、ビヒクル治療に対するPAC1Ab効果の統計的有意性を評価した。p値<0.05を用いて、2群間の有意性を決定した。
単一静脈内(i.v.)投与スクリーニング評価
ラットを、0.1mg/kg又は0.3mg/kgの用量において、マキサジランチャレンジ(0.5μg/mLを20μL)の24時間前に7つの異なる抗PAC1抗体(420653、420845、420943、421873、420889(PL-50347)、421091(PL-50350)及び421051(PL-50351))の1つで前処理し、これは、ビヒクル(A52Su)処理群と比較してMIIBFの減少をもたらした。マキサジラン処理後30分で、試験した7つの抗体の5つについて、ビヒクル群と比較して0.3mg/kgでMIIBFの統計的に有意な抑制があった(図6)。7つの抗体の6つについて、24±1.5時間での最終血清濃度を以下の表15に示す。
用量反応評価
ラットを、0.01mg/kg~30mg/kgの範囲の用量において、マキサジランチャレンジ(0.5μg/mLを20μL)の24時間前に4つの異なる抗PAC1抗体(420653、420845、420943及び421873)で前処理した。ビヒクル処理群と比較したMIIBFの用量依存的減少が4つの抗体の各々で観察された(図7A~図7D)。Ab420653は、0.06mg/kgの低用量で有意な効果をもたらし、0.06、0.1、0.3、1及び3mg/kgでそれぞれ44%、68%、86%、95%及び101%の阻害効果を示した(図7A)。Ab420845は、0.3、1及び3mg/kgでそれぞれ79%、102%及び107%の阻害を有する有意な効果をもたらした(図7B)。Ab420943及び421873は、Ab420845及びAb420653よりもわずかに効力が低かったが、1mg/kgで依然として有意な阻害効果をもたらした。Ab420943についてのDBFの阻害%は、1、3、10、30mg/kgでそれぞれ56%、46%、52%及び81%であった(図7C)。Ab421873についてのDBFの阻害%は、1、3、10及び30mg/kgでそれぞれ34%、55%、72%及び100%であった(図7D)。
本実施例で記載された実験の結果は、リガンド誘導PAC1受容体活性化をin vitroで強力に阻害する抗体が、PAC1媒介血管拡張のモデルである皮膚血流アッセイによって評価されるように、in vivoでのPAC1受容体活性化も阻害することを示す。
実施例5.ヒトPAC1抗体バリアントの薬物動態特性
4つの抗PAC1抗体(420653、420845、420943及び421873)の予備的薬物動態(PK)を、ナイーブ雄Sprague-Dawleyラット及びナイーブ雄カニクイザルを用いて実施した。29G4v10親抗体又は構造的に関連する29G4v22抗体(配列番号53を含むVL及び配列番号192を含むVH)を対照として評価した。試験抗体を静脈内ボーラス投与によって試験用動物に投与した。血液試料は、投与後の特定の時点で収集され、血清に処理された。全ての血清検体は、その後の分析のために移すまで約-70℃(±10℃)で保存した。
投与後のラット及びカニクイザルの血清試料中の試験抗体の量を測定するために、比色分析の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、ヒトIgG Fc(Amgen,Inc.,CA,USA)に対するマウスモノクローナル抗体(mAb)を使用して現像した。マイクロタイタープレートを2μg/mLのマウス抗ヒトFc mAbでコーティングした。コーティングしたマイクロタイタープレートは、I-block(Applied Biosystems,CA,USA)でブロックされた。アッセイ標準(STD)及び品質管理(QC)は、試験対象種からの100%血清に試験抗体をスパイクすることで調製した。STD、QC、ブランク及び試験用試料をアッセイバッファー(1MのNaCl、1%のBSA及び0.5%のTween20を含む1×PBS)中に1:30で希釈した。希釈したSTD、QC、ブランク及び試験用試料を、撹拌することなく、コーティングされたマイクロタイタープレート上で25℃において1時間インキュベーションした。洗浄工程後、アッセイバッファー中30ng/mLの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートマウス抗ヒトFc mAbをマイクロタイタープレートに添加し、撹拌することなく、25℃で1時間インキュベーションした。最終洗浄工程後、テトラメチルベンジジン(TMB)過酸化物基質溶液(KPL Inc.,MD,USA)をマイクロタイタープレートに添加した。HRPの存在下において、TMBは、STD、QC及び試験用飼料に存在する結合ヒトFcの量に比例する比色シグナルを生成した。発色現像時間は、分析対象物に依存し、2N硫酸の添加により停止した。光学密度(OD)は、SpectraMax 340PCマイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices,CA,USA)及びSoftMax Proソフトウェアを使用して、650nmを基準に450nmで測定された。アッセイデータを、1/yの重み付け係数を使用したロジスティック(自動推定)回帰モデルを使用して回帰した。アッセイのダイナミックレンジは、20ng/mL~2000ng/mLであった。
ラット及びカニクイザルPK試験の両方について、非コンパートメント分析は、個々の血清濃度-公称時間データでPhoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)(バージョン6.4;Certara,NJ,USA)を使用して実施された。定量下限(LLOQ、20ng/mL)未満の個々の濃度値は、定量限界未満(BQL)を下回ると報告され、要約統計量の計算ではゼロに設定された。LLOQ未満の平均濃度値は、報告又はプロットされなかった。LLOQ未満の全ての濃度値は、非コンパートメント分析から除外された。公称用量及び公称サンプリング時間をPK分析に使用した。以下のPKパラメータを推定した:
・静脈内投与後の初期濃度(C0)値は、観測された最初の2つの低下する濃度値を使用して、時間0に逆外挿することによって推定した。
・時間0から無限大(AUCinf)までの濃度時間曲線の下の面積は、線形台形法で計算した。
・終末相半減期(t1/2,z)は、ln2/λzとして計算した。λzは、曲線の末端部分に関連する薬物の一次速度定数である。
・全身クリアランス(CL)は、CL=用量/静脈内投与後のAUCinfとして計算した。
・定常状態での分布量(Vss)は、Vss=CL×MRTinf(時間ゼロから無限大までの平均滞留時間)のように推定された。
ヒトPAC1、ラットPAC1及びカニクイザルPAC1に対する4つの抗体並びに29G4v10親抗体及び29G4v22対照抗体のin vitro阻害力のまとめを以下の表16に提供する。抗体は、実施例3に記載されているcAMPアッセイを使用して、異なる種由来のPAC1受容体のリガンド誘導(PACAP38又はマキサジラン)活性化を阻害する能力について評価された。
4つの抗体の1つを1mg/kg、5mg/kg及び25mg/kgの用量でラットに静脈内投与した。投与後、様々な時点で血液試料を収集し、上記のELISAアッセイを使用して、各時点で血清試料において抗体濃度を測定した。ラットについてのPKパラメータ試験を以下の表17にまとめ、各用量の血清濃度-時間プロファイルを図8A~8Cに示す。
4つの抗体の1つを10mg/kgの用量でカニクイザルに静脈内投与した。投与後、様々な時点で血液試料を収集し、上記のELISAアッセイを使用して、各時点で血清試料において抗体濃度を測定した。カニクイザルについてのPKパラメータ試験を以下の表18にまとめ、血清濃度-時間プロファイルを図9に示す。29G4v22抗体のPKプロファイルを比較のために示す。
この用量では、PAC1バリアント抗体の4つ全てが29G4v22対照抗体よりも長い血清半減期を示した。興味深いことに、4つのPAC1バリアント抗体は、全て29G4v22対照抗体と比較してPAC1受容体に対してより高いin vitro阻害力を示したが(表16)、バリアントのいくつかのPKプロファイルは、カニクイザルではあまり好ましくなかった。例えば、Ab420845は、29G4v22対照抗体と比較してクリアランス率が速く、全体的な曝露が低かった。しかし、Ab420653は、29G4v22対照抗体と同等のPKプロファイルを有し(図9)、Ab420653を同じ投与頻度で低用量の投与で同様の薬理効果を達成できることを示唆した。
実施例6.19H8ヒトPAC1抗体の酵母ディスプレイ親和性成熟
阻害力が向上した更なる抗PAC1抗体を生成するために、19H8抗体(配列番号296のVH領域;配列番号67のVL領域)を、実施例2で記載された方法を用いて、酵母ディスプレイされたFabライブラリのFACSにより親和性成熟させた。19H8抗体は、29G4v9、29G4v10及び29G4v22抗体と構造的に異なるが、ヒトPAC1受容体に対して非常に強力な中和活性も示す。
PAC1 ECD-19H8 Fab複合体の結晶構造情報は、最初に利用できなかったため、各CDRループ内の表面露出残基を識別するために相同性モデルが生成された。PAC1 ECDが表面に露出したCDR残基と直接接触すると予想されるため、これらの接触の性質を変更するか、又は包括的な変異誘発によって新しい接触を作りだすかにより、抗体のPAC1 ECDへの結合が改善されるとの仮説が立てられた。各ライブラリの理論的多様性を扱いやすい106~107に制限するために、MIX19飽和変異誘発についてCDRごとに最大5つの位置が同定され、CDRごとに1つの別個のライブラリが構築された。モデル化されたCDRH3ループコンフォメーションの精度に関する懸念により、このループ内で最も溶媒にさらされた残基は、確実に同定できなかった。したがって、ループの最初及び最後の残基を除いて、CDRH3内の11のCDR残基の8つでの多様化が考慮された。飽和変異誘発の位置の数を5つに絞り込むために、芳香族残基は、タンパク質間相互作用の重要なメディエーターであることが多いため、CDRH3内の2つのトリプトファン及び1つのフェニルアラニンを回避した。全体で、6つの個別CDR Fabライブラリは、多様化のために16の重鎖及び15の軽鎖CDR残基を標的にするように設計され、構築されたライブラリは、理論的多様性を4.5~46倍でオーバーサンプリングした。各CDRライブラリについての標的位置のまとめを以下に示す。
重鎖CDRライブラリ(配列番号296に関するアミノ酸位置):
・CDRH1ライブラリ:Asp27(FR1のCDRH1に隣接して配置されている)、Ser31、Asn32、Ser33及びThr35
・CDRH2ライブラリ:Tyr54、Tyr55、Ser57、Lys58、Ser60及びHis62
・CDRH3ライブラリ:Thr103、Lys105、Gln106、Leu107及びLeu110
軽鎖CDRライブラリ(配列番号67に関するアミノ酸位置):
・CDRL1ライブラリ:Ser28、Ser30、Arg31、Tyr32及びAsn34
・CDRL2ライブラリ:Tyr49(FR2のCDRL2に隣接して配置されている)、Ala50、Ala51、Ser52及びSer53
・CDRL3ライブラリ:Ser91、Tyr92、Ser93、Pro94及びPhe96
6つの個別のCDR Fabライブラリは、FACSを使用してヒトPAC1 ECDに結合するためにリッチ化され、結合に使用されるPAC1 ECDの濃度を下げることにより、連続する各ラウンドでストリンジェンシーを高める(ラウンド1:30nM PAC1 ECD;ラウンド2:0.67nM PAC1 ECD;及びラウンド3:0.2nM PAC1 ECD)。更なる親和性の向上のために、個別のCDRライブラリ(1つは、重鎖用であり、もう一方は、軽鎖用である)からのリッチ化変異を組み合わせた2つのCDRシャッフルされたFabライブラリ並びに各CDRシャッフルされたライブラリからのリッチ化変異を組み合わせた最終的なチェーンシャッフルされたライブラリも構築された。CDRシャッフル及びチェーンシャッフルされたライブラリは、実施例2に記載され、図5に示されているオフレート結合選択プロセスを使用して、より厳しい条件下でPAC1 ECD結合の選択に供された。チェーンシャッフルされたライブラリの最終的なオフレートソートは、このプール内のほとんどの酵母クローンが、親19H8抗体と比較してPAC1 ECD結合が有意に改善されていることを示唆した。
およそ800の個々の酵母クローンをヒトPAC1 ECDへの結合の改善についてスクリーニングした。配列ライアビリティを有する変異体配列(例えば、システイン異常、N結合型グリコシル化部位、アスパルテート異性化、アスパラギン脱アミド化及びトリプトファン酸化部位)は、除去された。上位約200個の特有結合は、二次スクリーニングに進み、オフレート結合によってランク付けされ、非特異的結合について評価された。二次スクリーニングでは、非標識PAC1 ECDと30℃で一晩競合させた後のビオチン化ヒトPAC1 ECDのより高い会合パーセンテージで測定した際、80%超のクローンが親19H8抗体よりも結合オフレートが遅かった。30℃で1時間のみ競合した後、親19H8からビオチン化PAC1 ECDが完全に解離したため、測定値は、オフレートの改善の下限を表している。スクリーニングされたクローンは、いずれも関連のないPD1及びGIPR受容体のECDへの結合を示さなかったため、クローンのプールを更に絞り込むために、更なる配列フィルタを適用して、CDRにフーリン切断部位、更なるトリプトファン残基及び親19H8抗体よりも多くの共分散違反が含まれる変異体を除去した。クローンのランク付けには、構造的に関連する受容体であるヒトVPAC2のヒトPAC1受容体への非特異的結合の程度を決定するために、ビオチン化ヒトVPAC2 ECDを用いた更なる結合アッセイを使用した。ヒトPAC1 ECDへの結合オフレートが最も遅い上位20個の変異体及び二次スクリーニングに入った酵母クローン間でのヒトVPAC2結合の最小量を以下の表19に示す。PAC1 ECD結合のパーセンテージが高いほど、変異体Fabのオフレートが遅いことを示す。
改良された親和性バリアントは、完全な二価モノクローナル抗体及び/又は一価Fab-Fc融合物(例えば、二量体IgG Fc領域に融合したFab領域)として組換え発現法によって生成され、実施例3で記載されている細胞系cAMPアッセイでin vitroの機能的活性を評価した。機能アッセイの結果を以下の表20に示す。
Fab-Fc融合タンパク質としてフォーマットした場合、19H8バリアントは、親19H8 Fab-Fc融合タンパク質と比較して2倍~58倍の阻害力の増加を示した。19H8バリアントの多くは、Fab-Fc融合タンパク質としてフォーマットした場合、29G4v10バリアントよりも強力であった(Fab-Fc融合タンパク質について、表20の結果を表12の結果と比較して)。二価モノクローナル抗体としてフォーマットした場合、19H8バリアントは、IC50値が1桁のナノモル又はピコモルの範囲で強力なヒトPAC1中和活性も示した。
実施例7.カニクイザルにおけるヒトPAC1抗体バリアントのin vivoでの機能的活性
抗PAC1抗体420653を使用してin vivoで標的結合を評価するために、カニクイザルにおけるマキサジラン誘導皮膚血流増加を阻害する抗体の能力を評価した。マキサジランは、PAC1受容体の選択的アゴニストであり、げっ歯類、カニクイザル及びヒトの受容体を活性化することができる。実施例4で記載されるように、マキサジランの皮内投与により、レーザードップラーイメージングで測定できる局所的な皮膚血流の増加が引き起こされる。抗PAC1抗体によるこの効果の阻害は、PAC1生物活性の拮抗作用の並進薬力学的モデルとして役立ち得る。
5歳~8歳のオスのカニクイザルを試験のために用いた。マキサジラン(Bachem,H6734.0500)の投薬溶液を、1×リン酸塩-緩衝生理食塩水(PBS)中にマキサジラン原液(0.5mg/mL)を希釈することにより、毎日新たに調製した。対照として試験される抗PAC1抗体420653又は29G4v22を、実験に必要な用量に応じて、10mM酢酸ナトリウム、9%スクロース、0.01%Tween-80、pH5.2(A52SuT)で異なる濃度で調製し、静脈内(i.v.)注入により投与した。
レーザードップラーイメージャー(LDI2-IR、Moor Instruments,Ltd,Wilmington,DE)を使用して、633nmヘリウムネオンバルブによって生成された低出力レーザービームを用いて、腹側前腕又は大腿内側の剃毛した皮膚の皮膚血流量(DBF)を測定した。赤外線の波長と可視光赤色照準ビームとを組み合わせて、より深い真皮(0.6~1mm)の血流に高い重み付けをした。入射光線は、静止した組織及び動いている血液によって散乱された。微小血管系で血液を移動すると、ドップラー光シフトが発生した。動いている血液からのシフト光及び組織からの非シフト光は、2つの二乗則検出器に向けられた。次いで、検出された強度変動を処理して、フラックス(組織の血流に比例)及び濃度(移動する血球の濃度に比例)のパラメータを得た。測定分解能は、0.2mm~2mmであり、機器開口部と組織表面との間のスキャン距離は、20~100cmであった。
DBFをフラックス(相対単位)として測定し、マキサジラン投与後30分のベースラインからの変化率として表した[100×(個別のマキサジラン後フラックス-個別のベースラインフラックス)/個別のベースラインフラックス]。2つの個別のOリングからのフラックス単位を共に各試験セッションについて平均化した。個別の動物からのマキサジラン誘導血流増加(MIIBF)に対する抗PAC1抗体の阻害効果を阻害%として表した[100×(0日目のベースラインからの変化%の平均-個別の抗体処理された動物のベースラインからの変化%)/0日目のベースラインからの変化%の平均]。
15~20分間の麻酔及びバイタルサインの安定化後、ゴム製Oリング(0.925cm内径、O-Rings West,Seattle,WA)を、目に見える血管上に直接配置することなく、腹側前腕又は大腿内側の事前剃毛した皮膚上において互いに約0.6~1cm離して配置した。各試験セッションで使用される四肢は、事前に決定されており、試験の異なる試験日に異なる四肢が使用された。皮膚上にOリングを配置した後、ベースライン測定を行った。ベースラインスキャン後、20μLビヒクル(PBS)中の1ngのマキサジリン溶液をOリングの中央で皮内注射した。Oリングは、データ分析中に対象領域として機能した。
抗PAC1抗体投与前にMIIBFの時間経過を0日目に取得した。1ngのマキサジラン用量は、カニクイザルにおける以前のマキサジラン用量反応の結果に基づいて選択した。マキサジラン前のベースラインDBF測定後、マキサジラン皮内注射に対するDBF応答の時間経過を、マキサジラン適用後5、10、15、20、25及び30分の時点でレーザードップラースキャンを取得して評価した。マキサジラン応答者を特定し、非応答者を試験に含めないようにするために、抗体投与前の事前スクリーニング手順を実施した。動物は、マキサジラン応答者と見なされ、DBFフローが60フラックス単位以上で変化した場合(マキサジラン後30分でのDBFの平均-ベースラインの平均)に試験に含まれた。
マキサジラン応答者として特定された24匹のカニクイザルは、0日目に0.1mg/kg若しくは3mg/kgの用量の420653抗体又は10mg/kgの用量の抗体29G4v22のいずれかを受けた。抗体は、シリンジ注入ポンプによって1mL/分の速度で伏在静脈への静脈内注入により投与された。マキサジラン後DBF測定は、異なる四肢を使用して、2、4、7、10、14、21、28及び36日目に行った。各場合において、DBFは、1ngのマキサジラン皮内注射の30分後にレーザードップラーイメージングによって測定された。薬物動態(PK)分析のための全血液試料は、抗体投与前、抗体処理後30分、1、2、4、7、10、14、21、28、35又は36及び42日を含む複数の時点で収集された。
図10Aに示すように、0.1mg/kgではなく3mg/kgの抗体420653は、2日目、7日目、14日目及び21日目(抗体処理後)のMIIBFを、0日目(抗体処理前)と比較して有意に抑制した(n=8匹の動物/群;ボンフェローニ調整p値=0.0087)。10mg/kgの抗体29G4v22は、2日目及び7日目でMIIBFも有意に抑制した(n=8匹の動物/群)(図10A)。3mg/kgの抗体420653の最大阻害効果は、2日目に96%の阻害であったが、0.1mg/kgでは、抗体420653は、4日目に39%の最大阻害を示し、統計的に有意ではなかった(図10B)。10mg/kgの抗体29G4v22は、7日目に63%の最大阻害を示した(図10B)。同じ時点での抗体420653(3mg/kg)及び抗体29G4v22(10mg/kg)の比較では、2日目、7日目、14日目及び21日目に有意差が見られた(図10B)。
DBF測定が行われた日の抗体420653及び抗体29G4v22についての抗体血清濃度を以下の表21に示す。定量下限(LLOQ)又は定量レベル未満(BQL)は、抗体420653について0ng/mL、抗体29G4v22について50ng/mLであった。
全体として、これらの結果は、抗体420653が3mg/kgの用量で投与された場合、カニクイザルのMIIBFを有意に減衰させたことを示す。MIIBFに対する3mg/kgの抗体420653の阻害効果は、10mg/kgの高用量の抗体29G4v22よりも強力であった。
本明細書において議論及び引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。開示した本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び材料に限定されず、これらは、変化し得ることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図されていないことも理解される。
当業者であれば、単なる日常的な実験により、本明細に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒト下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチドI型受容体(PAC1)(配列番号1)に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、(i)AHo番号付けによる29位のアミノ酸が、ヒトPAC1のアミノ酸Glu120又はAsp121と相互作用する塩基性アミノ酸である軽鎖可変領域と、(ii)AHo番号付けによる61位のアミノ酸が、ヒトPAC1のアミノ酸Asn60又はIle61と相互作用する疎水性、塩基性又は中性親水性アミノ酸である重鎖可変領域とを含み、細胞系cAMPアッセイによって測定された際に500pM未満のIC50でヒトPAC1のPACAP誘導活性化を阻害する、単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目2)
前記軽鎖可変領域の29位の前記アミノ酸は、リジン又はアルギニンである、項目1に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目3)
前記重鎖可変領域の61位の前記アミノ酸は、イソロイシン、バリン、ロイシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンである、項目1又は2に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目4)
前記抗体又はその抗原結合断片の前記重鎖可変領域におけるAHo番号付けによる66位のアミノ酸は、ヒトPAC1のアミノ酸Asn60又はIle61と相互作用する塩基性若しくは中性親水性アミノ酸である、項目1~3のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目5)
前記重鎖可変領域の66位の前記アミノ酸は、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンである、項目4に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目6)
配列番号1のAsp59、Arg116、Asn117、Thr119、Gly122、Trp123、Ser124、Glu125、Pro126、Phe127、Pro128、His129、Tyr130、Phe131、Asp132及びGly135から選択される1つ以上のアミノ酸を更に含むエピトープでヒトPAC1に結合する、項目1~5のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目7)
前記軽鎖可変領域は、配列番号52の配列と少なくとも90%同一である配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号191の配列と少なくとも90%同一である配列を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目8)
ヒトPAC1に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びに相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1は、配列番号5~16から選択される配列を含み;CDRL2は、配列番号26の配列を含み;CDRL3は、配列番号36~38から選択される配列を含み;CDRH1は、配列番号88~96から選択される配列を含み;CDRH2は、配列番号106~166から選択される配列を含み;且つCDRH3は、配列番号171~177から選択される配列を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目9)
(a)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び171の配列を有するか;
(b)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、116及び171の配列を有するか;
(c)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、134及び171の配列を有するか;
(d)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号92、145及び174の配列を有するか;
(e)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、108及び172の配列を有するか;
(f)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号5、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、128及び172の配列を有するか;
(g)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号7、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、134及び171の配列を有するか;
(h)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号12、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、153及び171の配列を有するか;
(i)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号12、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、154及び171の配列を有するか;又は
(j)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号13、26及び36の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号88、155及び171の配列を有する、項目8に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目10)
前記軽鎖可変領域は、(i)配列番号54~66から選択される配列と少なくとも90%同一である配列、(ii)配列番号54~66から選択される配列と少なくとも95%同一である配列、又は(iii)配列番号54~66から選択される配列を含む、項目8又は9に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目11)
前記重鎖可変領域は、(i)配列番号191~295から選択される配列と少なくとも90%同一である配列、(ii)配列番号191~295から選択される配列と少なくとも95%同一である配列、又は(iii)配列番号191~295から選択される配列を含む、項目8~10のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目12)
(a)前記軽鎖可変領域は、配列番号54の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号194の配列を含むか;
(b)前記軽鎖可変領域は、配列番号54の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号203の配列を含むか;
(c)前記軽鎖可変領域は、配列番号55の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号228の配列を含むか;
(d)前記軽鎖可変領域は、配列番号55の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号274の配列を含むか;
(e)前記軽鎖可変領域は、配列番号54の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号214の配列を含むか;
(f)前記軽鎖可変領域は、配列番号55の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号240の配列を含むか;
(g)前記軽鎖可変領域は、配列番号54の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号228の配列を含むか;
(h)前記軽鎖可変領域は、配列番号62の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号282の配列を含むか;
(i)前記軽鎖可変領域は、配列番号62の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号283の配列を含むか;又は
(j)前記軽鎖可変領域は、配列番号63の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号284の配列を含む、項目8~11のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目13)
ヒトPAC1に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖可変領域並びに相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖可変領域を含み、CDRL1は、配列番号17~25から選択される配列を含み;CDRL2は、配列番号27~35から選択される配列を含み;CDRL3は、配列番号39~51から選択される配列を含み;CDRH1は、配列番号97~105から選択される配列を含み;CDRH2は、配列番号167~170から選択される配列を含み;且つCDRH3は、配列番号178~190から選択される配列を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目14)
(a)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号25、31及び42の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び190の配列を有するか;
(b)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号20、30及び44の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有するか;
(c)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、33及び42の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号99、168及び187の配列を有するか;
(d)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号23、31及び50の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号97、167及び178の配列を有するか;
(e)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、31及び44の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び189の配列を有するか;
(f)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、27及び39の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有するか;
(g)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号18、31及び46の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び179の配列を有するか;
(h)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号17、28及び40の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号98、168及び179の配列を有するか;
(i)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号18、30及び43の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号100、168及び182の配列を有するか;又は
(j)CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それぞれ配列番号22、28及び49の配列を有し、且つCDRH1、CDRH2及びCDRH3は、それぞれ配列番号102、169及び182の配列を有する、項目13に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目15)
前記軽鎖可変領域は、(i)配列番号68~87から選択される配列と少なくとも90%同一である配列、(ii)配列番号68~87から選択される配列と少なくとも95%同一である配列、又は(iii)配列番号68~87から選択される配列を含む、項目13又は14に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目16)
前記重鎖可変領域は、(i)配列番号296~312から選択される配列と少なくとも90%同一である配列、(ii)配列番号296~312から選択される配列と少なくとも95%同一である配列、又は(iii)配列番号296~312から選択される配列を含む、項目13~15のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目17)
(a)前記軽鎖可変領域は、配列番号85の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号312の配列を含むか;
(b)前記軽鎖可変領域は、配列番号72の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号300の配列を含むか;
(c)前記軽鎖可変領域は、配列番号81の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号307の配列を含むか;
(d)前記軽鎖可変領域は、配列番号78の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号296の配列を含むか;
(e)前記軽鎖可変領域は、配列番号83の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号310の配列を含むか;
(f)前記軽鎖可変領域は、配列番号87の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号300の配列を含むか;
(g)前記軽鎖可変領域は、配列番号74の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号297の配列を含むか;
(h)前記軽鎖可変領域は、配列番号68の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号297の配列を含むか;
(i)前記軽鎖可変領域は、配列番号71の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号300の配列を含むか;又は
(j)前記軽鎖可変領域は、配列番号77の配列を含み、且つ前記重鎖可変領域は、配列番号304の配列を含む、項目13~16のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目18)
モノクローナル抗体又はその抗原結合断片である、項目1~17のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目19)
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化抗体若しくはその抗原結合断片又は完全ヒト抗体若しくはその抗原結合断片である、項目18に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目20)
前記モノクローナル抗体は、ヒトκ定常領域を含む軽鎖を含む、項目18又は19に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目21)
前記ヒトκ定常領域は、配列番号318又は配列番号319の配列を含む、項目20に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目22)
前記モノクローナル抗体は、ヒトλ定常領域を含む軽鎖を含む、項目18又は19に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目23)
前記ヒトλ定常領域は、配列番号315の配列を含む、項目22に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目24)
前記モノクローナル抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体である、項目18~23のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目25)
前記モノクローナル抗体は、ヒトIgG1抗体である、項目24に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目26)
前記モノクローナル抗体は、アグリコシル化ヒトIgG1抗体である、項目25に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目27)
前記モノクローナル抗体は、その重鎖において、EU番号付けによるアミノ酸位置N297に変異を含む、項目26に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目28)
前記変異は、N297Gである、項目27に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目29)
前記モノクローナル抗体は、その重鎖において、EU番号付けによるR292C及びV302Cの変異を更に含む、項目27又は28に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目30)
前記モノクローナル抗体は、配列番号324又は配列番号325の配列を含む重鎖定常領域を含む、項目26に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目31)
細胞系cAMPアッセイによって測定された際に10nM未満のIC50でラットPAC1のPACAP誘導活性化を阻害する、項目1~30のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
(項目32)
ヒトPAC1に特異的に結合する単離された抗体であって、軽鎖及び重鎖を含み、
(a)前記軽鎖は、配列番号506の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号521の配列を含むか;
(b)前記軽鎖は、配列番号506の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号522の配列を含むか;
(c)前記軽鎖は、配列番号504の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号523の配列を含むか;
(d)前記軽鎖は、配列番号504の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号524の配列を含むか;
(e)前記軽鎖は、配列番号506の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号525の配列を含むか;
(f)前記軽鎖は、配列番号504の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号526の配列を含むか;
(g)前記軽鎖は、配列番号506の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号523の配列を含むか;
(h)前記軽鎖は、配列番号507の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号527の配列を含むか;
(i)前記軽鎖は、配列番号507の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号528の配列を含むか;
(j)前記軽鎖は、配列番号508の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号529の配列を含むか;
(k)前記軽鎖は、配列番号510の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号531の配列を含むか;
(l)前記軽鎖は、配列番号511の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号532の配列を含むか;
(m)前記軽鎖は、配列番号512の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号533の配列を含むか;
(n)前記軽鎖は、配列番号513の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号534の配列を含むか;
(o)前記軽鎖は、配列番号514の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号535の配列を含むか;
(p)前記軽鎖は、配列番号515の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号535の配列を含むか;
(q)前記軽鎖は、配列番号516の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号532の配列を含むか;
(r)前記軽鎖は、配列番号517の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号536の配列を含むか;
(s)前記軽鎖は、配列番号509の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号532の配列を含むか;又は
(T)前記軽鎖は、配列番号518の配列を含み、且つ前記重鎖は、配列番号530の配列を含む、単離された抗体。
(項目33)
項目1~32のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
(項目34)
項目1~32のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
(項目35)
項目34に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(項目36)
項目35に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(項目37)
ヒトPAC1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、前記抗体又はその抗原結合断片の発現を可能にする条件下において、項目36に記載の宿主細胞を培養することと;培養培地又は前記宿主細胞から前記抗体又はその抗原結合断片を回収することとを含む方法。
(項目38)
血管拡張の阻害を、それを必要とする患者において行うための方法であって、項目1~32のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の有効量を前記患者に投与することを含む方法。
(項目39)
前記患者は、頭痛病態を有する、項目38に記載の方法。
(項目40)
頭痛病態を有する患者においてヒトPAC1受容体の活性化を阻害するための方法であって、項目1~32のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の有効量を前記患者に投与することを含む方法。
(項目41)
頭痛病態の治療又は予防を、それを必要とする患者において行うための方法であって、項目1~32のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の有効量を前記患者に投与することを含む方法。
(項目42)
前記頭痛病態は、片頭痛である、項目39~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記片頭痛は、反復性片頭痛である、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記片頭痛は、慢性片頭痛である、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記頭痛病態は、群発性頭痛である、項目39~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記抗体又はその抗原結合断片は、予防的治療として前記患者に投与される、項目41~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記患者に第2の頭痛治療薬を投与することを更に含む、項目41~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記第2の頭痛治療薬は、急性頭痛治療薬である、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記急性頭痛治療薬は、5HT
1B
、5HT
1D
及び/又は5HT
1F
セロトニン受容体アゴニストである、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記セロトニン受容体アゴニストは、トリプタン又はエルゴタミンである、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記急性頭痛治療薬は、非ステロイド性抗炎症薬又はオピオイドである、項目48に記載の方法。
(項目52)
前記第2の頭痛治療薬は、予防的頭痛治療薬である、項目47に記載の方法。
(項目53)
前記予防的頭痛治療薬は、抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬、オナボツリヌストキシンA又はCGRP経路アンタゴニストである、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記CGRP経路アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体アンタゴニストである、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記ヒトCGRP受容体アンタゴニストは、ヒトCGRP受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記抗CGRP受容体モノクローナル抗体は、エレヌマブである、項目55に記載の方法。