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JP7355083B2 - 鋼板のせん断方法および打ち抜き方法ならびにプレス成形品の製造方法 - Google Patents
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鋼板のせん断方法および打ち抜き方法ならびにプレス成形品の製造方法 Download PDF

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本発明は、せん断端面で発生するひずみおよび微小なき裂を抑制可能な鋼板のせん断方法および打ち抜き方法ならびにプレス成形品の製造方法に関する。特に、引張強度が1180MPa以上の高強度鋼板を用いた自動車用部材に適用して好適なものであって、適切に遅れ破壊を抑止しようとするものである。
近年、自動車の構造部材を軽量化する観点から、使用する鋼板を高強度化することによって板厚を低減する努力が進められている。このような鋼板の高強度化にともない、遅れ破壊が生じやすくなることが知られており、従来の自動車用部材では問題になることのなかった遅れ破壊に対する懸念が新たに浮上してきた。
遅れ破壊とは、高強度鋼部品が静的な負荷応力を受けた状態で、ある時間が経過したとき、外見的にはほとんど塑性変形を伴うことなしに、突然脆性的に破壊する現象である。広義には液体金属接触割れや応力腐食割れなども含まれるが、自動車用部品で問題になるのは腐食に伴い鋼中に侵入する水素によって引き起こされる水素脆化型の遅れ破壊である。遅れ破壊を引き起こす因子としては、材料(強度)、加工(歪・応力)、水素の3因子であることが知られている。ここで、金属材料への水素の侵入原因としては、金属材料と接触する溶液・溶媒からの侵入や、使用される環境下で金属材料が腐食することに伴って発生する水素の侵入が考えられる。
この遅れ破壊は、鋼板の場合についていえば、プレス成形により所定の形状に成形したときの残留引張り応力と、応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることが知られている。
近年、1180MPa以上の高強度鋼板における遅れ破壊の評価方法についても、種々の提案がなされている。例えば、せん断加工後にU曲げ加工した試験片(鋼板)を用いて遅れ破壊特性を評価する方法が挙げられる。せん断加工後の鋼板のせん断端面には、ひずみ(刃と鋼板の接触による加工硬化や残留応力)およびひずみによる微小なき裂が生じる。このひずみおよび微小なき裂によって、U曲げ加工を施した鋼板のせん断端面の割れ発生頻度が異なることがあり、遅れ破壊特性におよぼすせん断端面の影響が問題となっている。また、実際の自動車用部材においてもせん断端面は存在するため、せん断端面のひずみおよび微小なき裂による遅れ破壊は大きな問題となりうる。
こうしたせん断端面の遅れ破壊特性を良くするため、特許文献1や特許文献2で開示された技術では、せん断条件または打ち抜き条件を制御することでせん断端面の残留応力を低下させている。また、特許文献3のように金型および刃に潤滑剤を付与してせん断することで金型の摩耗を抑制したり、特許文献4のようにせん断端面の耐食性を向上させるために刃側に防錆剤を塗布した技術が開示されている。
しかしながら、これだけではせん断端面に発生する微小なき裂を抑制することが難しく、せん断端面の遅れ破壊を抑制することは難しい。さらに、せん断端面のみならず、せん断時に刃と鋼板が接触した部分については、刃と鋼板の接触による加工硬化や残留応力の影響を受ける。このため、刃と鋼板が接触する部分においても発生する微小なき裂を抑制する必要がある。
特開2014-223663号公報 特開2006-224151号公報 特開2003-105565号公報 特許第5239484号
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、せん断時に刃と鋼板が接触する部分およびせん断端面で発生するひずみおよび微小なき裂を抑制可能な鋼板のせん断方法および打ち抜き方法ならびにプレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は次のとおりである。
[1]皮膜を有する上刃および/または下刃を用いて、前記皮膜と引張強さが1180MPa以上の鋼板を接触させて前記鋼板を切り出す鋼板のせん断方法。
[2]前記皮膜の膜厚が10nm以上である[1]に記載の鋼板のせん断方法。
[3]前記皮膜を有する上刃および/または下刃の摩擦係数が0.5以下である[1]または[2]に記載の鋼板のせん断方法。
[4]前記皮膜の伸びが130%以上である[1]~[3]のいずれかに記載の鋼板のせん断方法。
[5]せん断時の刃のクリアランスを0~30%で切り出す[1]~[4]のいずれかに記載の鋼板のせん断方法。
[6]せん断時、可動刃の速度を1m/sec以下として前記鋼板を切り出す[1]~[5]のいずれかに記載の鋼板のせん断方法。
[7]皮膜を有するポンチおよび/またはダイスを用いて、前記皮膜と引張強さが1180MPa以上の鋼板を接触させて前記鋼板を切り出す鋼板の打ち抜き方法。
[8]前記皮膜の膜厚が10nm以上である[7]に記載の鋼板の打ち抜き方法。
[9]前記皮膜を有するポンチおよび/またはダイスの摩擦係数が0.5以下である[7]または[8]に記載の鋼板の打ち抜き方法。
[10]前記皮膜の伸びが130%以上である[7]~[9]のいずれかに記載の鋼板の打ち抜き方法。
[11]せん断時の刃のクリアランスを0~30%で切り出す[7]~[10]のいずれかに記載の鋼板の打ち抜き方法。
[12]せん断時、可動刃の速度を1m/sec以下として前記鋼板を切り出す[7]~[11]のいずれかに記載の鋼板の打ち抜き方法。
[13][1]~[12]のいずれかに記載の方法で切り出した鋼板をプレス成形するプレス成形品の製造方法。
本発明によれば、せん断時に刃と鋼板が接触する部分の微小なき裂や、せん断端面に入るひずみおよび微小なき裂の発生を抑制することができる。その結果、せん断端面の遅れ破壊特性を向上することが可能である。したがって、本発明により得られるプレス成形品は自動車用部材に好適である。
図1は、本発明のせん断方法を表す模式図であり、皮膜の位置を説明する図である。 図2は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。 図3は、図2中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。 図4は、曲げ加工およびボルト締結後の試験片の模式図である。 図5は、実施例における金属光沢部の観察箇所を示す模式図である。
本発明は、鋼板のせん断方法において、皮膜を有する上刃および/または下刃を用いて、皮膜と引張強さが1180MPa以上の鋼板を接触させて鋼板を切り出すことを特徴とする。また、本発明では、鋼板の打ち抜き方法において、皮膜を有するポンチおよび/またはダイスを用いて、皮膜と引張強さが1180MPa以上の鋼板を接触させて鋼板を切り出すことを特徴とする。なお、本発明において、せん断機の上刃および下刃、ならびに、打ち抜き機のポンチおよびダイスのことを、単に刃(可動刃)と称することもある。
以下、本発明のせん断方法および打ち抜き方法について説明する。
図1は、一例として、本発明のせん断方法を説明する模式図である。せん断機を用いて鋼板をせん断する際、図1に示すように、上刃と下刃との間に板押さえで固定された鋼板を挟み込んで塑性変形させ、最終的には破断させる。
本発明のせん断方法では、皮膜を有する上刃および/または下刃を用いて、引張強さが1180MPa以上の鋼板を切り出す。上記は、上刃と下刃を用いて鋼板を切り出すこと、かつ前記上刃と下刃の少なくとも一方が皮膜を有することを意味している。この時、図1に示すように、皮膜と鋼板を接触させるようにして鋼板を切り出す。刃面に皮膜を有する上刃および/または下刃を用いることにより、刃が鋼板に直接触れることがなく、また、皮膜によるクッション効果により、刃と鋼板の接触部分およびせん断端面にかかるせん断時の応力が分散し、刃と鋼板の接触に起因するひずみを抑制可能とする。通常、せん断時のひずみによって、曲げ加工を施したときに鋼板の曲げ部外側に微小なき裂が発生しやすい。この微小なき裂に水素は集積しやすく、水素脆化による遅れ破壊の原因となり、鋼板の曲げ部外側に進展するき裂、すなわち割れとなる。このように、鋼板と接する刃面に皮膜を有する上刃および/または下刃を用いることでひずみが抑制可能となり、遅れ破壊の抑制につながる。
また、本発明の打ち抜き方法では、皮膜を有するポンチおよび/またはダイスを用いて、引張強さが1180MPa以上の鋼板を切り出す。上記は、ポンチとダイスを用いて鋼板を打ち抜くこと、かつ前記ポンチとダイスの少なくとも一方が皮膜を有することを意味している。この時、皮膜と鋼板を接触させるようにして鋼板を切り出す。本発明のせん断方法と同様に、ポンチやダイスが鋼板と接触する面に皮膜を有するポンチおよび/またはダイスを用いることにより、ポンチやダイスが鋼板に直接触れることがなく、また、皮膜によるクッション効果により、刃と鋼板が接触する部分およびせん断端面にかかるせん断時の応力が分散し、ポンチやダイスと鋼板の接触に起因するひずみを抑制可能とする。通常、せん断時のひずみによって、曲げ加工を施したときに刃と鋼板が接触する部分およびせん断端面に微小なき裂が発生しやすい。この微小なき裂に水素は集積しやすく、水素脆化による遅れ破壊の原因となり、せん断端面に進展するき裂、すなわち割れとなる。このように、鋼板との接触面に皮膜を有するポンチやダイスを用いることでひずみが抑制可能となり、遅れ破壊の抑制につながる。
本発明のせん断方法および打ち抜き方法では、遅れ破壊が発生しやすい1180MPa以上の引張強さを有する鋼板を対象とする。なお、鋼板表面にはめっき層を有してもよい。鋼板の耐食性を向上させるため、鋼板表面にZn、Fe、Al、Mg、Ni、およびSiを少なくとも1種類以上含むめっき層を有することが好ましい。また、めっき層を有する鋼板の場合、後述する非金属からなる皮膜は、めっき層上に形成されるものとする。
次に、本発明のせん断方法および打ち抜き方法における、皮膜の好ましい形態について説明する。
皮膜の膜厚が10nm以上
皮膜の膜厚は10nm以上とすることが好ましい。皮膜の膜厚が10nm未満であると、皮膜によるクッション効果が小さい。このため、せん断時の応力を分散できず、ひずみおよび微小なき裂の抑制効果を発現できない。さらに、皮膜によるクッション効果によるひずみ抑制を発現するためには皮膜の厚さは、好ましくは100nm以上、より好ましくは1000nm以上であることが望ましい。一方、皮膜の膜厚が大きくなるとせん断もしくは打ち抜きによってせん断端面のダレが生じやすく、ダレの部分から微小なき裂が発生しやすくなる。また、ブランキングプレスなどでは、皮膜の厚さによって所定のプレス成形が難しくなることと、コスト高を招くことから、皮膜の膜厚は1mm以下とすることが好ましい。
皮膜を有する上刃および/または下刃の摩擦係数が0.5以下
皮膜を有するポンチおよび/またはダイスの摩擦係数が0.5以下
せん断端面のひずみ抑制効果を発現するためには、摩擦係数は、0.5以下とすることが好ましい。好ましくは0.3以下が望ましい。摩擦係数が小さくなると、鋼板とせん断もしくは打ち抜きの刃の間の面圧が小さくなり、ひずみが抑制しやすい。摩擦係数が0.5より大きいとひずみの抑制効果は発現できない。
皮膜の伸びが130%以上
皮膜の伸びは、130%以上であることが好ましい。せん断あるいは打ち抜き時に刃と鋼板の間に存在する皮膜が伸びることで、クッション効果による刃と鋼板が接触する部分にかかる応力が分散して低下する。このため、刃と鋼板が接触する部分に入るひずみが抑制され、微小なき裂が低減する。130%以上あれば、膜厚が薄い場合でも十分クッション性の効果が発揮可能である。130%未満だと、膜厚が薄い場合に皮膜によるクッション性の効果が得られない。なお、皮膜の伸びは、JIS-C-2151に準じて膜厚が1mmのときの引張伸びとすればよい。膜厚が1mm厚で130%以上の引張伸びを有していれば、実際の膜厚が1mmより薄い場合であっても、皮膜のクッション効果を得ることができる。
本発明における皮膜の種類は、特段限定する必要はないが、例えば、無機系皮膜、有機系皮膜があげられる。無機系皮膜として、Mn-P系酸化物皮膜、Ni系無機皮膜、亜鉛系酸化皮膜、銅系酸化皮膜、鉄系酸化皮膜があげられる。また、有機系皮膜として、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂があげられる。なお、有機系皮膜、無機系皮膜については、シート状の皮膜を用いてもよく、シート状の皮膜を用いる場合は、鋼板と刃面との間にシート状の皮膜を挟んで鋼板を切り出せばよい。また、皮膜は、有機無機複合皮膜であっても効果を発現することができる。
本発明において、皮膜の位置については、せん断もしくは打ち抜き時に鋼板と接する箇所(図1中の鋼板上下面)に皮膜が存在していれば本発明のクッション効果を得ることができる。したがって、上刃(下刃)全体やポンチ(ダイス)全体に皮膜を有する必要はない。
本発明のせん断方法または打ち抜き方法により切り出した鋼板は、せん断端面のひずみおよび微小なき裂の発生を抑制することができる。したがって、本発明のせん断方法または打ち抜き方法により切り出した鋼板をプレス成形することにより、得られたプレス成形品は、せん断端面からの遅れ破壊を抑制することができる。本発明において、プレス成形の条件については、特段制限されない。
本発明において、せん断または打ち抜き時の刃のクリアランスを0~30%として鋼板を切り出した後、プレス成形することが好ましい。なお、刃のクリアランスとは、せん断時の上刃と下刃のクリアランスのことであり、打ち抜き時のポンチとダイスのクリアランスのことである。クリアランスが0%の場合、すなわち、刃のクリアランスが0.01mm以下のようなファインブランキングの場合でも、皮膜により刃が直接鋼板に触れず、また、クッション効果を発揮してひずみを抑制することが可能である。一方、クリアランスが30%より大きくなるとせん断端面のバリから遅れ破壊による割れが発生しやすくなる。
また、せん断または打ち抜き時の、可動刃の速度は1m/sec以下であることが好ましい。なお、可動刃とは、せん断時の上刃あるいは下刃をさしており、打ち抜き時のポンチをさしている。可動刃の速度が1m/secより速くなると、せん断時に刃と鋼板が接触する部分(図5参照)に必要以上のせん断荷重がかかってしまい、皮膜によるクッション効果が期待できず、ひずみおよび微小き裂が発生しやすくなる。
本発明について実施例を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
図1のせん断機を用いて、表2に示す鋼板を切り出し、得られた試験片について、歪抑制効果、微小き裂および遅れ破壊特性を評価した。
皮膜の種類は、表1に示す通り、皮膜なし、有機系皮膜のポリ塩化ビニル系シートおよびエポキシ系樹脂、有機無機複合皮膜のエポキシ系樹脂/結晶性層状物、無機系皮膜の塩基性硫酸亜鉛3~5水和物とした。皮膜はせん断機の上刃および/または下刃の刃面(図1中の鋼板上下面と接する位置)に設けた。
有機系皮膜のポリ塩化ビニル系シート(80000nm、200000nm)は、粘着性を持つシート状になっており、ローラを用いて刃面に押し当てて皮膜を付与した。また、有機系皮膜のエポキシ系樹脂は、アミン変性エポキシ樹脂/ブロックイソシアネート硬化剤をロールコータにより刃面に塗布し、140℃で焼付した。なお、有機系皮膜のエポキシ系樹脂の膜厚については、ロールコータの速度を変えて適宜制御した。
有機無機複合皮膜のエポキシ系樹脂/結晶性層状物は、あらかじめ硝酸マグネシウム・6水和物水溶液113g/Lと硝酸アルミニウム・9水和物水溶液83g/Lに炭酸水素ナトリウム・10水和物水溶液31g/Lを滴下することで精製し得られた沈殿物をろ過し、乾燥して得た結晶性層状物の[Mg0.667Al0.333(OH)][CO 0.167・0.5HOをアミン変性エポキシ樹脂/ブロックイソシアネート硬化剤と10:2(アミン変性エポキシ樹脂/ブロックイソシアネート硬化剤:結晶性層状物)の質量比で混ぜ、ローラーにより刃面に塗布し、140℃で焼付した。結晶性層状物が[Mg0.667Al0.333(OH)][CO 0.167・0.5HOであることはXRD解析で確認した。なお、膜厚については、ロールコータの速度を変えて適宜制御した。
無機系皮膜の塩基性硫酸亜鉛3~5水和物は、濃度:20g/L、温度:50℃の硫酸亜鉛・7水和物水溶液に上刃および/または下刃を浸漬し、その後十分に水洗を行った後に乾燥して得た。塩基性硫酸亜鉛3~5水和物であることはXRD解析で確認した。なお、膜厚については、浸漬時間を変えて適宜制御した。
また、皮膜の膜厚を測定した。有機系皮膜(エポキシ系樹脂)、有機無機複合皮膜(エポキシ系樹脂/結晶性層状物)は、FIBを用いて皮膜の断面を45°にスパッタリングし、極低加速SEMで断面を観察し、任意の10点を測定した平均値とした。無機系皮膜(塩基性硫酸亜鉛3~5水和物)は、蛍光X線分析装置で得られた値を膜厚とした。蛍光X線分析装置の測定条件として、管球の電圧および電流は30kVおよび100mAとし、分光結晶TAPに設定してO-Kα線の測定に際しては、そのピーク位置に加えてバックグラウンド位置での強度も測定し、O-Kα線の正味の強度が算出できるようにした。なお、ピーク位置およびバックグラウンド位置での積分時間は、それぞれ20秒とした。また、試料ステージには、96nm、54nm、24nmの酸化シリコン皮膜を形成したシリコンウエハーをセットし、これら酸化シリコン皮膜のO-Kα線の強度を算出できるようにし、酸化膜厚とO-Kα線強度との検量線を作成し、酸化シリコン皮膜換算での値を膜厚とした。
また、各皮膜を有する上刃および/または下刃の摩擦係数を以下のようにして測定した。図2は摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、上刃もしくは下刃と同じ材質の試料に皮膜を形成した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押し上げることによりビード6による摩擦係数測定用試料1への押し付け荷重Nを測定するための第1ロードセル7がスライドテーブル支持台5に取り付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させた際の摺動抵抗力Fを測定するために第2ロードセル8がレール9の上を動くように、スライドテーブル3の一方の端部に取り付けられている。なお、潤滑油としてスギムラ化学工業(株)製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを摩擦係数測定用試料1の表面に塗布して試験を行った。図3は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図3に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ4mm、摺動方向両端の下部は曲率0.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。摩擦係数測定試験は図3に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):100cm/minとした。試料とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
皮膜の伸びについては、JIS-C-2151に準じて膜厚が1mmのときの引張伸びを予め算出した。
つぎに、各鋼板を表2に示す刃のクリアランス条件および可動刃の速度で100mm×30mmにせん断し、試験片を得た。得られた試験片のせん断端面の破断面がダイス側、せん断面がポンチ側になるようR=10mmで180°曲げ加工を施した。曲げ加工後の試験片について、以下の評価を行った。
(ひずみ抑制効果)
ひずみ抑制効果は、せん断時に刃と鋼板が接触する部分(図5参照。)における、金属光沢部(刃で鋼板表面が押しつぶされることによってできる平滑な面)の有無を観察した。金属光沢部が刃と鋼板の接触部分全体に存在する場合は抑制効果なし、金属光沢部がない場合は抑制効果ありと判断した。また、金属光沢部が点在する場合は、金属光沢部が一部ありと判断した。金属光沢部は、刃によって押しつぶされた箇所となり、鋼板に圧延加工を施して歪を与えた状態に類似する。このことから、金属光沢部がある場合はひずみ抑制効果なし、金属光沢部がない場合はひずみ抑制効果ありとした。なお、金属光沢部が一部ある場合のものについても、金属光沢部がない場合に比べると歪抑効果は小さいが、ひずみ抑制効果があったと判断した。
(微小き裂)
キーエンス製のマイクロスコープを用いて、図4に示す曲げR止まり部(曲げR加工を受けた部分)の曲げ部外側に発生したき裂の個数を確認した。き裂の個数が10個以下であれば、抑制効果ありと判断し、き裂の個数が5個以下であれば顕著に抑制効果ありと判断した。
(遅れ破壊特性)
曲げ加工後、ボルト締結により曲げに伴うスプリングバック分を締め込み、曲げ頂点部の表層に応力を負荷した。曲げ加工およびボルト締結後の試験片の模式図を図4に示す。図4に示したボルト締め込み後の試験片をpH3の塩酸に浸漬し、割れ発生までの時間で評価した。最大浸漬時間は100時間とした。浸漬100時間たっても割れなかったものは評価a、浸漬50時間以上100時間未満で割れたものは評価b、浸漬10時間以上50時間未満に割れたものは評価c、浸漬時間10時間未満で割れたものは評価dとした。a、b、cを合格と判断した。
以上より得られた結果を表2に示す。
Figure 0007355083000001
Figure 0007355083000002
表2より、本発明はいずれもひずみおよび微小なき裂が抑制されており、遅れ破壊特性に優れていることがわかった。なお、ポンチとダイスで鋼板を打ち抜いた場合においても、上記と同様の結果が得られたことも確認した。
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
N 押付荷重
F 摺動抵抗力

Claims (9)

  1. 上刃と下刃の少なくとも一方が皮膜を有する上刃および下刃を用いて、膜厚が10nm以上であり、JIS-C-2151に準じて膜厚が1mmの時の引張伸びが130%以上200%以下である前記皮膜と引張強さが1180MPa以上の鋼板を接触させて前記鋼板を切り出す鋼板のせん断方法。
  2. 前記皮膜を有する上刃および/または下刃の摩擦係数が0.5以下である請求項1に記載の鋼板のせん断方法。
  3. せん断時の刃のクリアランスを0~30%で切り出す請求項1または2に記載の鋼板のせん断方法。
  4. せん断時、可動刃の速度を1m/sec以下として前記鋼板を切り出す請求項1~3のいずれかに記載の鋼板のせん断方法。
  5. ポンチとダイスの少なくとも一方が皮膜を有するポンチおよびダイスを用いて、膜厚が10nm以上であり、JIS-C-2151に準じて膜厚が1mmの時の引張伸びが130%以上200%以下である前記皮膜と引張強さが1180MPa以上の鋼板を接触させて前記鋼板を切り出す鋼板の打ち抜き方法。
  6. 前記皮膜を有するポンチおよび/またはダイスの摩擦係数が0.5以下である請求項に記載の鋼板の打ち抜き方法。
  7. せん断時の刃のクリアランスを0~30%で切り出す請求項5または6に記載の鋼板の打ち抜き方法。
  8. せん断時、可動刃の速度を1m/sec以下として前記鋼板を切り出す請求項5~7のいずれかに記載の鋼板の打ち抜き方法。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載の方法で切り出した鋼板をプレス成形するプレス成形品の製造方法。
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