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JP7378888B2 - 電極触媒製造装置、並びに、電極触媒及びその製造方法 - Google Patents
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電極触媒製造装置、並びに、電極触媒及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電極触媒製造装置、並びに、電極触媒及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、貴金属元素を含む合金触媒粒子を備えた電極触媒を効率良く製造するための電極触媒製造装置、並びに、これを用いて製造される電極触媒及びその製造方法に関する。
固体高分子形燃料電池は、電解質膜の両面に触媒を含む電極(触媒層及びガス拡散層)が接合された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)を備えている。MEAの両面には、さらに、ガス流路を備えた集電体(セパレータ)が配置される。固体高分子形燃料電池は、通常、このようなMEAと集電体からなる単セルが複数個積層された構造(燃料電池スタック)を備えている。
固体高分子形燃料電池の電極触媒には、Pt触媒、Pt合金触媒、カーボンアロイ触媒、酸化物触媒などが用いられている。これらの内、Pt合金触媒は、純Pt触媒よりも高い効率点性能(低電流密度・高電圧作動条件)が得られることが広く知られている。また、合金触媒から卑金属を溶出させることにより得られる特殊な構造(例えば、中空構造)により、高い性能が得られる場合もある。そのため、Pt合金触媒の製造方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、非特許文献1には、
(a)PtとNiとの前駆体を室温でNaBH4で還元して触媒粒子とし、
(b)触媒粉末を室温の1M硫酸水溶液中で12時間攪拌し、コア成分である卑金属を溶出させる
ことにより得られる中空PtNi/Cナノ触媒が開示されている。
特許文献1には、硫酸酸性水溶液中に、Pdコア/Ptシェルからなる白金コアシェル触媒をを分散させ、水溶液内に金属銅を共存させ、空気を吹き込みながら水溶液を撹拌する白金コアシェル触媒の製造方法が開示されている。
同文献には、
(a)硫酸酸性水溶液中において、白金コアシェル触媒を金属銅と酸素ガスに繰り返し接触させると、白金コアシェル触媒の酸化と還元が繰り返され、白金コアシェル触媒からPdが酸化溶出する点、及び、
(b)これによって白金コアシェル触媒の酸素還元反応(ORR)活性が向上する点
が記載されている。
Ptと卑金属元素からなるPt合金触媒は、純Pt触媒よりも高い性能を示すことが知られている。しかしながら、卑金属元素量が多いPt合金触媒を燃料電池環境下で使用すると、余分な卑金属元素が溶出しやすいという問題がある。卑金属元素が溶出すると、触媒性能が劣化するだけでなく、電解質内のプロトンが溶出した卑金属イオンとイオン交換するために燃料電池性能が低下するおそれがある。
また、一般に、触媒粒子は、その表面にある原子のみが電極反応の触媒として機能することが知られている。そのため、非特許文献1や特許文献1に記載されているように、触媒粒子を中空構造とすると、触媒粒子の比表面積が大きくなるためにPtの利用率が向上し、高価なPtの使用量を低減することができる。
しかしながら、非特許文献1に記載されているように、触媒を単に酸中で攪拌することでコアの卑金属を溶出させる方法は、処理時間が長くなる。また、単に酸中で攪拌する方法では、コアを完全に除去するのが難しいため、酸処理後の卑金属量も多い。
一方、特許文献1に記載されているように、触媒を金属銅と酸素ガスに繰り返し接触させる方法では、触媒表面にCuが混入する場合がある。Cuを触媒表面に含む触媒を燃料電池環境下で使用すると、触媒表面からCuイオンが容易に溶出し、電解質のプロトンとイオン交換したり、アノード触媒上に析出したりして、燃料電池性能が低下する。
特開2015-000398号公報
Raphael, Chattot et al., Nano Lett. 2017, 17, 2447-2453
本発明が解決しようとする課題は、貴金属元素M1と、貴金属元素M1より卑な金属元素M2を含み、金属元素M2の溶出量が少ない合金触媒粒子を備えた電極触媒を効率よく製造するための電極触媒製造装置を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような電極触媒製造装置を用いた電極触媒の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような方法を用いて製造される電極触媒を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る電極触媒製造装置は、
貴金属元素M1と、前記貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含む合金触媒粒子前駆体を備えた電極触媒前駆体を分散させた酸性水溶液を収容するための容器と、
前記酸性水溶液に電気的に接触させるための作用極及び対極と、
前記作用極を前記貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持するための電位保持装置と、
前記酸性水溶液を攪拌するための攪拌装置と、
前記酸性水溶液に酸素をバブリングさせるためのバブリング装置と
を備えている。
但し、
前記「貴金属元素M 1 」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
前記「金属元素M 2 」とは、前記合金触媒粒子前駆体から溶出させる対象となる元素であって、第2貴金属元素M 21 、並びに、前記貴金属元素M 1 及び前記第2貴金属元素M 21 以外の金属元素M 22 からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
前記「第2貴金属元素M 21 」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であって、前記貴金属元素M 1 より卑であるものをいう。
本発明に係る電極触媒の製造方法は、
本発明に係る電極触媒製造装置を用いて、酸性水溶液中に分散している電極触媒前駆体に電位サイクルを付与し、電極触媒を得る第1工程と、
前記酸性水溶液から前記電極触媒を分離し、洗浄する第2工程と
を備えている。
さらに、本発明に係る電極触媒は、以下の構成を備えている。
(1)前記電極触媒は、合金触媒粒子を備えている。
(2)前記合金触媒粒子は、貴金属元素M1と、前記貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含み、前記金属元素M2(Cuを除く)の総含有量が0.1at%超13at%未満であり、Cuの含有量が6at%未満である。
但し、
前記「貴金属元素M1」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
前記「金属元素M2」とは、第2貴金属元素M21、並びに、前記貴金属元素M1及び前記第2貴金属元素M21以外の金属元素M22からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
前記「第2貴金属元素M21」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であって、前記貴金属元素M1より卑であるものをいい、
前記合金触媒粒子は、前記貴金属元素M 1 がPdであり、前記金属元素M 2 がCoであるものを除く。
酸素で満たした酸性水溶液中に合金触媒粒子前駆体を含む電極触媒前駆体を分散させ、酸性水溶液中に作用極を浸漬し、作用極の電位を貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持しながら、酸性水溶液を撹拌すると、電極触媒前駆体は、作用極と接触した時に低電位状態となる。また、電極触媒前駆体が作用極から離脱して、酸性水溶液中の酸素と接触した時には、高電位状態となる。
すなわち、このような方法を用いると、相対的に多量の電極触媒前駆体に対して、効率よく電位サイクルを付与することができる。その結果、短時間で合金触媒粒子前駆体から金属元素M2を溶出させることができる。また、金属銅と接触させることなく合金触媒粒子前駆体に電位サイクルを付与することができるので、触媒表面にCuを含まない合金触媒粒子を備えた電極触媒を得ることができる。
本発明に係る電極触媒製造装置の模式図である。 実施例1で得られた電極触媒の高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡(HAAD-FTEM)像である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 電極触媒製造装置]
図1に、本発明に係る電極触媒製造装置の模式図を示す。
図1において、電極触媒製造装置10は、
電極触媒前駆体12を分散させた酸性水溶液14を収容するための容器16と、
酸性水溶液14に電気的に接触させるための作用極18及び対極20と、
作用極18を、電極触媒前駆体12に含まれる貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持するための電位保持装置(図示せず)と、
酸性水溶液14を攪拌するための攪拌装置(図示せず)と、
酸性水溶液14に酸素をバブリングさせるためのバブリング装置(図示せず)と
を備えている。
電極触媒製造装置10は、作用極18の電位制御を精密に行うための参照極22をさらに備えていても良い。
[1.1. 電極触媒前駆体]
電極触媒前駆体12は、電極触媒製造装置10により電位サイクルが加えられる被処理物である。電極触媒前駆体12は、貴金属元素M1と、貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含む合金触媒粒子前駆体を備えている。電極触媒前駆体12は、このような合金触媒粒子前駆体のみからなるものでも良く、あるいは、導電性材料からなる担体の表面に、合金触媒粒子前駆体が担持されているものでも良い。
「貴金属元素M1」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、又は、Osをいう。合金触媒粒子前駆体は、第1貴金属元素M1として、これらのいずれか1種を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
「金属元素M2」とは、電極触媒製造装置10を用いて合金触媒粒子前駆体から溶出させる対象となる元素であって、貴金属元素M1より卑な金属元素をいう。M2は、M1より卑である限りにおいて、M1以外の貴金属元素であっても良い。
金属元素M2としては、例えば、Ni、Fe、Co、Mn、Cuなどがある。合金触媒粒子前駆体は、金属元素M2として、これらのいずれか1種を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
合金触媒粒子前駆体は、貴金属元素M1と金属元素M2が均一に分散している中実粒子であっても良い。
あるいは、合金触媒粒子前駆体は、金属元素M2からなるコア粒子と、コア粒子の表面を被覆する貴金属元素M1からなるシェルとを備えたコアシェル粒子でも良い。
担体は、導電性材料からなる。担体の材料は、導電性を示し、かつ、燃料電池作動環境下において使用可能なものである限りにおいて、特に限定されない。担体の材料としては、例えば、カーボンブラックカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ガラス状炭素粉末などがある。
電極触媒製造装置10を用いて電極触媒前駆体12に電位サイクルが付与されると、合金触媒粒子前駆体から金属元素M2が溶出する。その結果、処理前の合金触媒粒子前駆体より金属元素M2の含有量が少ない合金触媒粒子を備えた電極触媒を得ることができる。
[1.2. 酸性水溶液]
酸性水溶液14は、金属元素M2を溶出させるためのものである。酸性水溶液14の種類は、金属元素M2を溶出させることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。酸性水溶液14としては、例えば、硫酸水溶液、硝酸水溶液、過塩素酸水溶液、塩酸水溶液などがある。
また、酸性水溶液14は、pHが3以下であるものが好ましい。これは、金属元素M2の酸化溶出を促進させるためである。
[1.3. 容器]
容器16は、電極触媒前駆体12を分散させた酸性水溶液14を収容するためのものである。容器16の構造は、
(a)酸性水溶液14と、作用極18及び対極20(並びに、必要に応じて、参照極22)とを電気的に接触させることが可能であり、
(b)酸性水溶液14中に酸素をバブリングすることが可能であり、かつ、
(c)電極触媒前駆体12と作用極18とを効率良く接触させることが可能である
限りにおいて、特に限定されない。
図1において、容器16は、主容器16aと、第1副容器16bと、第2副容器16cとを備えている。主容器16aは、作用極18を収容するためのものである。電極触媒前駆体12の処理は、主容器16a内で行われる。
第1副容器16bは、対極20を収容するためのものである。第1副容器16bは、小径の第1連結管16dを介して主容器16aに連結されている。対極20を第1副容器16bに収容するのは、電極触媒前駆体12を処理する際に、電極触媒前駆体12を対極20から隔離し、電極触媒前駆体12と作用極18とを効率良く接触させるためである。
第2副容器16cは、塩橋24を介して、主容器16a内の酸性水溶液14と参照極22とを電気的に接触させるためのものである。第2副容器16cは、小径の第2連結管16eを介して主容器16aに連結されている。
第2副容器16c内の酸性水溶液14には、塩橋24の一端が挿入されている。塩橋24は、参照極22と主容器16a内の酸性水溶液14とを電気的に接続するためのものである。塩橋24には、相互コンタミによる電極触媒前駆体12の汚染、参照極22の汚染などを抑制するためのバルブ26が設けられている。
[1.3. 作用極]
作用極18は、酸性水溶液14中に浮遊している電極触媒前駆体12を低電位状態にするための電極である。換言すれば、作用極18は、電極触媒前駆体12に電位サイクルを付与することによって、電極触媒前駆体12から金属元素M2を溶出させる反応を促進させるための電極である。作用極18の一端は、主容器16aに収容された酸性水溶液14中に浸漬されている。また、作用極18の他端は、電位保持装置(図示せず)に接続されている。
作用極18の材料及び形状は、このような電気化学反応を生じさせることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
作用極18の材料としては、例えば、貴金属、カーボン、導電性無機化合物などがある。作用極18の形状としては、例えば、棒状、板状、メッシュ状、ワイヤ状などがある。
図1に示す例において、作用極18は、貴金属メッシュ電極からなる。貴金属メッシュ電極は、酸性水溶液14に溶解しにくく、かつ、酸性水溶液14内に浮遊している電極触媒前駆体12との接触効率が高いので、作用極18として好適である。
作用極18として貴金属メッシュ電極を用いる場合、電極触媒前駆体12の平均粒子径(d1)に対する貴金属メッシュ電極の孔径(d2)の比(=d2/d1)は、電極触媒前駆体12の処理効率に影響を与える。
ここで、「電極触媒前駆体12の平均粒子径(d1)」とは、レーザー回折散乱法により測定された粉末の粒径のメディアン径(d50)をいう。
「貴金属メッシュ電極の孔径(d2)」とは、メッシュの目開き(線と線の間の径)をいう。
2/d1比が小さくなりすぎると、電極触媒前駆体12と作用極18との接触頻度が低下する。従って、d2/d1比は、1超である必要がある。
一方、d2/d1比が大きくなりすぎると、かえって電極触媒前駆体12と作用極18との接触頻度が低下する。従って、d2/d1比は、1000以下である必要がある。
[1.4. 対極]
対極20は、作用極18の対になる電極である。対極20の一端は、第1副容器16bに収容された酸性水溶液14中に浸漬されている。また、対極20の他端は、電位保持装置(図示せず)に接続されている。
対極20の材料及び形状は、目的とする電気化学反応を生じさせることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
対極20の材料としては、例えば、貴金属、カーボン、導電性無機化合物などがある。対極20の形状としては、例えば、棒状、板状、メッシュ状、ワイヤ状などがある。
[1.5. 参照極]
参照極22は、作用極18の基準となる電極である。電極触媒前駆体12から金属元素M2を選択的に溶出させるためには、作用極18を、電極触媒前駆体12に含まれる貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に維持する必要がある。参照極22があると、作用極18をこのような電位に維持するのを容易化するという利点がある。
但し、対極20に参照極としての機能を持たせることもできる。このような場合には、参照極22を省略することもできる。
図1において、電極触媒製造装置10は、電解液28を収容するための第3副容器30を備えている。参照極22の一端は、第3副容器30に収容された電解液28中に浸漬されている。また、参照極22の他端は、電位保持装置(図示せず)に接続されている。さらに、第3副容器30内の電解液28には、塩橋24の他端が挿入されている。
参照極22の材料及び形状は、目的とする電気化学反応を生じさせることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
参照極22としては、例えば、貴金属電極、銀-塩化銀電極、可逆水素電極などがある。参照極22の形状としては、例えば、棒状、板状、メッシュ状などがある。電解液28としては、例えば、硫酸水溶液、過塩素酸す溶液、硝酸水溶液などがある。
[1.5. 電位保持装置]
電位保持装置(図示せず)は、作用極18を、電極触媒前駆体12に含まれる貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持するためのものである。電位保持装置は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
電位保持装置としては、例えば、ポテンショスタット、充放電装置などがある。
[1.6. 攪拌装置]
攪拌装置(図示せず)は、酸性水溶液14を攪拌するためのものである。攪拌装置は、酸性水溶液14を攪拌することが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
酸性水溶液14に作用極18を浸漬した状態で酸性水溶液14を攪拌すると、電極触媒前駆体12と作用極18との接触頻度が増大する。その結果、電極触媒前駆体12からの金属元素M2の溶出速度が増大する。
[1.7. バブリング装置]
バブリング装置(図示せず)は、酸性水溶液14に酸素をバブリングさせるためのものである。また、酸素は、酸性水溶液14中に浮遊している電極触媒前駆体12を高電位状態にするためのものである。バブリング装置は、酸性水溶液14に酸素をバブリングすることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
[2. 電極触媒の製造方法]
本発明に係る電極触媒の製造方法は、
本発明に係る電極触媒製造装置を用いて、酸性水溶液中に分散している電極触媒前駆体に電位サイクルを付与し、電極触媒を得る第1工程と、
酸性水溶液から前記電極触媒を分離し、洗浄する第2工程と
を備えている。
[2.1. 第1工程]
まず、本発明に係る電極触媒製造装置10を用いて、酸性水溶液14中に分散している電極触媒前駆体12に電位サイクルを付与し、電極触媒を得る(第1工程)。電極触媒装置10を用いた電極触媒前駆体12の処理は、具体的には、以下の手順で行われる。
まず、容器16内に酸性水溶液14を入れ、バブリング装置(図示せず)を用いて酸性水溶液14を酸素でバブリングすることにより酸性水溶液14を酸素で満たす。
次に、酸性水溶液14に、貴金属元素M1と、貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含む合金触媒粒子前駆体を備えた電極触媒前駆体12を分散させる。
さらに、電位保持装置(図示せず)を用いて作用極18の電位を貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持しながら、攪拌装置(図示せず)を用いて酸性水溶液14を攪拌する。
これにより、合金触媒粒子前駆体から金属元素M2の一部又は全部が溶出し、合金触媒粒子前駆体より金属元素M2の含有量が少ない合金触媒粒子を備えた電極触媒が得られる。
このような方法により金属元素M2の溶出が促進されるのは、酸性水溶液14中において、合金触媒粒子前駆体と作用極18とが接触した時の低電位状態と、合金触媒粒子前駆体と酸素とが接触した時の高電位状態とが繰り返されるため、すなわち、合金触媒粒子前駆体に擬似的な電位サイクルが作用するためである。
[2.2. 第2工程]
次に、酸性水溶液から前記電極触媒を分離し、洗浄する(第2工程)。これにより、本発明に係る電極触媒が得られる。電極触媒の分離方法、洗浄方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。
[3. 電極触媒]
本発明に係る電極触媒は、合金触媒粒子を備えている。電極触媒は、合金触媒粒子のみからなるものでも良く、あるいは、導電性材料からなる担体の表面に合金触媒粒子が担持されているものでも良い。
[3.1. 合金触媒粒子]
合金触媒粒子は、
貴金属元素M1と、
前記貴金属元素M1より卑な金属元素M2
を含む。
[3.1.1. 組成]
[A. 貴金属元素M1、金属元素M2
貴金属元素M1、及び、金属元素M2の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[B. Cu以外の金属元素M2の総含有量]
金属元素M2(Cuを除く)の総含有量は、電極触媒の性能に影響を与える。一般に、金属元素M2の総含有量が多くなるほど、効率点性能(低電流密度・高電圧作動条件)が向上する。このような効果を得るためには、金属元素M2の総含有量は、0.1at%超が好ましい。
一方、金属元素M2の総含有量が過剰になると、燃料電池環境下でM2が溶出し、活性及び出力が低下する。従って、金属元素M2の含有量は、13at%未満が好ましい。
[C. Cuの含有量]
貴金属系の合金触媒中にCuが含まれていると、燃料電池で使用している際にCuが溶出し、その後、アノード上に析出して性能が低下する場合がある。従って、Cu含有量は、少ないほど良い。
本発明に係る方法は、電極触媒前駆体に電位サイクルを付与する際に、Cuを使用しない。そのため、実質的にCuを含まない電極触媒を得ることができる。具体的には、本発明に係る方法を用いると、Cu含有量は、6at%未満、3at%未満、あるいは、1%未満となる。
[3.1.2. 合金触媒粒子の構造]
合金触媒粒子は、中実粒子であっても良く、あるいは、コア粒子の表面がシェルで被覆されたコアシェル粒子であっても良い。
さらに、合金触媒粒子は、コアシェル粒子からコアを溶出させることにより得られる中空ナノ粒子であっても良い。
本発明に係る方法を用いると、平均粒径が5nm以上15nm以下の中空ナノ粒子構造を有する合金触媒粒子を備えた電極触媒を得ることができる。
ここで、合金触媒粒子の「粒径」とは、電子顕微鏡観察下で測定される粒子の最大寸法をいう。
合金触媒粒子の「平均粒径」とは、無作為に選択された50個以上の合金触媒粒子の粒径の平均値をいう。
[3.2. 担体]
担体は、導電性材料からなる。担体の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3.3. 用途]
本発明に係る燃料電池用触媒は、固体高分子形燃料電池のカソード用触媒として好適であるが、アノード用触媒としても用いることができる。
[4. 作用]
貴金属元素M1と、貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含む合金触媒は、貴金属元素M1のみを含む触媒に比べて、高い性能を示す。しかしながら、このような合金触媒を燃料電池環境下において使用すると、合金触媒に含まれる余分な金属元素M2が溶出しやすい。その結果、合金触媒そのものの性能が低下し、あるいは、溶出した金属元素M2のイオンが電解質のプロトンとイオン交換するために、電池性能が低下する。
これに対し、酸素で満たした酸性水溶液中に合金触媒粒子前駆体を含む電極触媒前駆体を分散させ、酸性水溶液中に作用極を浸漬し、作用極の電位を貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持しながら、酸性水溶液を撹拌すると、電極触媒前駆体は、作用極と接触した時に低電位状態となる。また、電極触媒前駆体が作用極から離脱して、酸性水溶液中の酸素と接触した時には、高電位状態となる。
すなわち、このような方法を用いると、相対的に多量の電極触媒前駆体に対して、効率よく電位サイクルを付与することができる。その結果、短時間で合金触媒粒子前駆体から金属元素M2を溶出させることができる。また、金属銅と接触させることなく合金触媒粒子前駆体に電位サイクルを付与することができるので、触媒表面にCuを含まない合金触媒粒子を備えた電極触媒を得ることができる。
(実施例1、比較例1~3)
[1. 試料の作製]
[1.1. 電極触媒前駆体の作製]
Pt前駆体、Ni前駆体、及び担体を水・アルコール混合溶媒中に分散させ、攪拌した。この分散液に、還元剤としてNaBH4を滴下した。還元剤の滴下終了後、55分間攪拌を行った。分散液から回収した固形分を洗浄・ろ過し、100℃で乾燥させ、コアシェル粒子/C触媒(電極触媒前駆体)を得た。
[1.2. 電極触媒の作製]
[1.1. 実施例1]
図1に示す電極触媒製造装置10を用いて、コアシェル粒子/C触媒(電極触媒前駆体)の処理を行った。すなわち、1M硫酸水溶液(酸性水溶液14)を容器16に入れた。硫酸水溶液の温度を60℃に保ち、酸素でバブリングし、硫酸水溶液を酸素で満たした。その後、作用極18を0V(vs. RHE)となるように電位保持し、硫酸水溶液を3時間攪拌した。その後、ろ過、超純水による洗浄、及び乾燥を行い、電極触媒を得た。
[1.2. 比較例1]
図1に示す容器16に、1M硫酸水溶液(酸性水溶液14)を入れ、硫酸水溶液の温度を60℃に保った。その後、コアシェル粒子/C触媒(電極触媒前駆体)を投入し、3時間攪拌した。その後、ろ過、超純水による洗浄、及び乾燥を行い電極触媒を得た。
[1.3. 比較例2]
非特許文献1に記載の方法を用いて、電極触媒(中空PtNi/Cナノ触媒)を作製した。すなわち、室温の1M硫酸溶液中にコアシェル粒子/C触媒(電極触媒前駆体)を加えて12時間攪拌した。さらに、処理液から回収した固形部を洗浄・ろ過し、中空PtNi/Cナノ触媒を得た。
[1.4. 比較例3]
特許文献1に記載の方法を用いて、電極触媒を作製した。すなわち、1M硫酸水溶液を容器に入れた。硫酸水溶液の温度を60℃に保ち、酸素でバブリングし、硫酸水溶液を酸素で満たした。その後、溶液中に銅メッシュを入れ、硫酸水溶液を3時間攪拌した。その後、ろ過、超純水による洗浄、及び乾燥を行い、電極触媒を得た。
[2. 試験方法]
[2.1. 組成分析]
各電極触媒について、ICP分析を行った。
[2.2. HAADF-STEM観察]
各電極触媒について、電極触媒の高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡(HAAD-FTEM)観察を行った。
[3. 結果]
[3.1. 組成分析]
表1に、各触媒のICP分析結果を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)実施例1は、Ni量が最も少ない。また、実施例1のNi/Pt比は、約1/7であった。
(2)比較例3は、Niを低減できているが、Cuのコンタミがあった。比較例3のNi/Pt比は約1/6であり、実施例1に比べてNiが相対的に多い。
Figure 0007378888000001
[3.2. HAADF-STEM観察]
図2に、実施例1で得られた電極触媒のHAAD-FTEM像を示す。多くの粒子の中心部において輝度が弱く、粒子内部が空洞になっている様子がうかがえる。また、これらの粒径は、5~15nmであった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る電極触媒製造装置は、固体高分子形燃料電池の電極触媒の製造に用いることができる。
本発明に係る電極触媒は、自動車用動力源、定置型小型発電機等に用いられる固体高分子形燃料電池の空気極の電極触媒として用いることができる。

Claims (8)

  1. 貴金属元素M1と、前記貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含む合金触媒粒子前駆体を備えた電極触媒前駆体を分散させた酸性水溶液を収容するための容器と、
    前記酸性水溶液に電気的に接触させるための作用極及び対極と、
    前記作用極を前記貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持するための電位保持装置と、
    前記酸性水溶液を攪拌するための攪拌装置と、
    前記酸性水溶液に酸素をバブリングさせるためのバブリング装置と
    を備えた電極触媒製造装置。
    但し、
    前記「貴金属元素M1」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
    前記「金属元素M2」とは、前記合金触媒粒子前駆体から溶出させる対象となる元素であって、第2貴金属元素M 21 、並びに、前記貴金属元素M 1 及び前記第2貴金属元素M 21 以外の金属元素M 22 からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
    前記「第2貴金属元素M 21 」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であって、前記貴金属元素M 1 より卑であるものをいう。
  2. 前記作用極の電位制御を精密に行うための参照極をさらに備えた請求項1に記載の電極触媒製造装置。
  3. 前記作用極は、貴金属メッシュ電極からなる請求項1又は2に記載の電極触媒製造装置。
  4. 前記電極触媒前駆体の平均粒子径(d1)に対する前記貴金属メッシュ電極の孔径(d2)の比(=d2/d1)は、1超1000以下である請求項3に記載の電極触媒製造装置。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の電極触媒製造装置を用いて、酸性水溶液中に分散している電極触媒前駆体に電位サイクルを付与し、電極触媒を得る第1工程と、
    前記酸性水溶液から前記電極触媒を分離し、洗浄する第2工程と
    を備えた電極触媒の製造方法。
  6. 前記第1工程は、
    前記容器内に前記酸性水溶液を入れ、前記バブリング装置を用いて前記酸性水溶液を酸素でバブリングすることにより前記酸性水溶液を酸素で満たし、
    前記酸性水溶液に、前記貴金属元素M1と、前記貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含む合金触媒粒子前駆体を備えた電極触媒前駆体を分散させ、
    前記電位保持装置を用いて前記作用極の電位を前記貴金属元素M1の還元電位よりも低い電位に保持しながら、前記攪拌装置を用いて前記酸性水溶液を攪拌し、
    これによって、前記合金触媒粒子前駆体より前記金属元素M2の含有量が少ない合金触媒粒子を備えた前記電極触媒を得る
    ものからなる請求項5に記載の電極触媒の製造方法。
  7. 以下の構成を備えた電極触媒。
    (1)前記電極触媒は、合金触媒粒子を備えている。
    (2)前記合金触媒粒子は、貴金属元素M1と、前記貴金属元素M1より卑な金属元素M2とを含み、前記金属元素M2(Cuを除く)の総含有量が0.1at%超13at%未満であり、Cuの含有量が6at%未満である。
    但し、
    前記「貴金属元素M1」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
    前記「金属元素M2」とは、第2貴金属元素M21、並びに、前記貴金属元素M1及び前記第2貴金属元素M21以外の金属元素M22からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をいい、
    前記「第2貴金属元素M21」とは、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、及び、Osからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であって、前記貴金属元素M1より卑であるものをいい、
    前記合金触媒粒子は、前記貴金属元素M 1 がPdであり、前記金属元素M 2 がCoであるものを除く。
  8. 前記合金触媒粒子は、平均粒径が5nm以上15nm以下の中空ナノ粒子構造を有する請求項7に記載の電極触媒。
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