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JP7403109B2 - アルミニウム合金製ボルトおよびその製造方法 - Google Patents
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JP7403109B2 - アルミニウム合金製ボルトおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金製ボルトおよびその製造方法に関し、特に、頭部と、頭部の下端面から下方に伸びる首下部とを有し、頭部と首下部の境界領域に首下丸み部が形成されたアルミニウム合金製ボルトおよびその製造方法に関する。
一般に、機械的な構造物を構成する複数の部材の連結ないしは締結にはボルトが用いられるが、自動車のような軽量化の要求が強い構造物を構成する複数の部材の連結ないしは締結には、軽量であることからアルミニウム合金製ボルトが用いられることがある。
アルミニウム合金の強度は、鋼より低いため、結晶粒を微細化して、強度を向上させている。即ち、結晶粒を微細化するほど結晶粒界の面積が増大し、高いエネルギー状態を保つために、強度が向上する(例えば、特許文献1参照)。
特開2011-190493号公報
しかしながら、結晶粒界は結晶粒内よりもエネルギー状態が高いため、優先的に腐食される。このため、結晶粒を微細化して強度を向上させた場合、一方で、応力腐食割れの感受性が高くなるという問題があった。
そこで、本発明は、高強度で、耐応力腐食割れ性の高いアルミニウム合金製ボルトおよびその製造方法の提供を目的とする。
アルミニウム合金製ボルトについては、上述のように結晶粒を微細化した場合に応力腐食割れの感受性が高くなるが、特に使用時にかかる応力が大きい領域や表面領域から腐食が発生する。このことから、アルミニウム合金製ボルトにおいて、使用時に大きな応力がかかる領域、および表面近傍の領域の結晶粒を部分的に粗大化することで、高強度を維持しながら、耐応力腐食割れ性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の第1の態様は、
頭部と、前記頭部から下方に伸びる首下部とを有し、前記頭部と前記首下部の間に首下丸み部が形成され、前記首下部にねじ部が形成されている、中心軸Cを備えたアルミニウム合金製ボルトであって、
前記首下部と前記首下丸み部の境界である前記アルミニウム合金製ボルトの表面上のR止まりから一定の距離L下方にある前記首下部の表面から、内方に向かって広がり前記頭部方向に湾曲した下面と、前記下面の前記頭部側に、前記下面から一定の距離Tで設けられた上面と、前記アルミニウム合金製ボルトの表面とに囲まれた湾曲領域が規定され、
前記湾曲領域を構成するアルミニウム合金の第1結晶粒の平均結晶粒径は、前記ねじ部に隣接するねじ部隣接領域の内方の首下部内部を構成するアルミニウム合金の第2結晶粒の平均結晶粒径より大きいことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトである。
本発明の第2の態様は、
頭部と、前記頭部から下方に伸びる首下部とを有し、前記頭部と前記首下部の間に首下丸み部が形成され、前記首下部にねじ部が形成されている、中心軸Cを備えたアルミニウム合金製のボルトであって、
前記首下部のねじ部に隣接するねじ部隣接領域を構成するアルミニウム合金の第3結晶粒の平均結晶粒径は、前記ねじ部隣接領域の内方の首下部内部を構成するアルミニウム合金の第2結晶粒の平均結晶粒径より大きいことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトである。
本発明の第3の態様は、
アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
前記棒材に据え込み加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された据え込み中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
前記据え込み中間体の前記本体部にロール圧造を行い、前記本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する工程と、
前記ロール圧造中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部および前記本体部で結晶粒を粗大化させる工程と、
前記熱処理後のロール圧造中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法である。
本発明の第4の態様は、
アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
前記棒材に据え込み加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された据え込み中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
前記据え込み中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部で結晶粒を粗大化させる工程と、
前記熱処理後の据え込み中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法である。
本発明の第5の態様は、
アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
前記棒材に据え込み加工または絞り加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部が形成された据え込み中間体または絞り中間体とを作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
前記据え込み中間体または絞り中間体に焼鈍しを行い、前記テーパ部の塑性歪を緩和する工程と、
前記焼鈍し後の据え込み中間体または絞り中間体の本体部の、ねじが形成される領域にロール圧造を行い、前記本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する工程と、
前記ロール圧造中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記本体部で結晶粒を粗大化させる工程と、
前記本体部のねじが形成される領域にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法である。
本発明の第6の態様は、
アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
前記棒材に絞り加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された絞り中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
前記絞り中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部で結晶粒を粗大化させる工程と、
前記熱処理後の絞り中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法である。
本発明の第7の形態は、
アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
前記棒材に絞り加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された絞り中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
前記絞り中間体の前記本体部にロール圧造を行い、前記本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する工程と、
前記ロール圧造中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部および前記本体部で結晶粒を粗大化させる工程と、
前記熱処理後のロール圧造中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法である。
本発明では、アルミニウム合金製ボルトの湾曲領域および/またはねじ部隣接領域の結晶粒を粗大化して、他の部分の結晶粒より大きくすることにより、高強度でかつ耐応力腐食割れ性に優れたアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
7000系アルミニウム合金の相当塑性歪と平均結晶粒径との関係を示す。 アルミニウム合金の平均結晶粒径と応力腐食割れの耐久性との関係を示す。 アルミニウム合金製ボルトを締結した場合の、ボルト内の応力分布を示す。 アルミニウム合金製ボルトの各部分の名称を示す。 アルミニウム合金製ボルトの各部分の名称を示す。 実施例1にかかるアルミニウム合金製ボルトであり、(a)は断面の模式図、(b)~(d)は断面写真を示す。 実施例1にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 ロール圧造工程を説明する図である。 7000系アルミニウム合金製ボルトの熱処理(T6処理)条件を示す。 実施例2にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 比較例1にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 比較例2にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 実施例3にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 実施例4にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 6000系アルミニウム合金の相当塑性歪と平均結晶粒径との関係を示す。 実施例5にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 6000系アルミニウム合金製ボルトの熱処理(T6処理)条件を示す。 実施例6にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 実施例6にかかるアルミニウム合金製ボルトの断面写真を示す。 実施例7にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。 実施例8にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す。
実施の形態1(7000系アルミニウム合金)
発明の実施の形態1では、7000系(Al-Zn-Mg-(Cu))のアルミニウム合金をボルト材料に用いる。図1は、7000系のアルミニウム合金材料に歪を付与した後、熱処理(T6処理)を行った場合の、相当塑性歪と平均結晶粒径との関係を示す。図1中、白丸は材質A7050BD-H14、黒丸は材質A7050BD-Oのアルミニウム合金で、いずれも引抜棒である。白丸は加工硬化された硬質材(H14材)、黒丸は焼鈍しが行われた軟質材(O材)である。図1中に黒丸で示した材質A7050BD-Oの測定データを表1に示す。
Figure 0007403109000001
特に、焼鈍しにより歪を除去した黒丸の軟質材において、付与した相当塑性歪が0.9から0.1に向かって小さくなるに従って、熱処理後に平均結晶粒径が大きくなる傾向が顕著である。このように、熱処理前に付与する歪量を制御することにより、アルミニウム合金材料の平均結晶粒径を制御できることがわかる。
図2は、図1と同じ材料について、平均結晶粒径と応力腐食割れの耐久性との関係を示す図である。横軸は材料の平均結晶粒径、縦軸は耐久時間である。応力腐食割れの耐久性は、「JIS H8711:アルミニウム合金の応力腐食割れ試験方法」に基づいて行なわれた。図2からわかるように、平均結晶粒径が大きくなるほど、応力腐食割れに対する耐久時間が長くなる。即ち、平均結晶粒径が大きくなるほど、耐応力腐食割れ性が向上することがわかる。
図3は、アルミニウム合金製ボルトをナットに締結した場合の、ボルト内の応力分布を示す。図3(a)に示すボルトの頭部下の「首下丸み部」、ボルトに形成したねじ上端の「ねじ切り上がり部」、およびボルトがナットとかみ合う部分の上端部である「第1ねじ山谷底部」の3カ所において特に応力が集中していることがわかる。応力が集中している場所は、図3(b)に赤色で表示されている。
ここで、図4、5に、アルミニウム合金製ボルトの各部分の名称を示す。図4に示すように、アルミニウム合金製ボルトは、頭部、首下部、および頭部と首下部とをつなぐ首下丸み部からなる。首下丸み部は、頭部の下から、直径が暫時減少する部分、即ち頭部の下からR止まりまでの部分をいう。首下丸み部の高さ(中心軸C方向の距離)をRとする。
R止まりの位置のボルト表面の下方(首下部側)に距離Lで設けられた下面端から、中心軸Cに向かって上方(頭部側)に湾曲した下面と、下面の上方(頭部側)に、下面から一定の距離Tで設けられた上面と、ボルトの表面とに囲まれた領域に湾曲領域が規定される。また、首下部の周囲で、ねじ形成部を除く部分(ねじの谷部より内部)にねじ部隣接領域が規定される。ねじ部隣接領域の内部は、首下部内部となる。
上面および下面が、ボルトの表面と交わる部分を、それぞれ上面端および下面端とよぶ。また、R止まりから下面端までの中心軸Cに平行方向の距離をL、下面端から下面の頂部までの中心軸Cに平行な高さ(中心軸C方向の距離)をHとする。なお、上面および下面は、上方に凸の平面または曲面であり、下面のうち、最も上方(頭部側)にある位置が頂部となる。頂部は中心軸Cと重なる位置であることが好ましい。
R止まりから下面端までの距離Lは、好適には0≦L≦1.5Rの範囲である。
上面と下面の距離Tは、好適には0<T≦Rの範囲内であり、より好適には、0.5R≦T≦Rの範囲内である。
一方、湾曲領域の下面端から、湾曲領域の下面の頂部までの中心軸Cに平行方向の高さHは、好適には0<H≦3Rの範囲内であり、より好適にはR≦H≦2Rの範囲内である。
また、図4に示すように、首下部のねじ呼び径(ねじの外径)をdとした場合、ねじ部隣接領域の深さ(中心軸Cに垂直な方向の、ねじ谷底からの距離)はd/10と規定される。
図4、5により規定される各領域のうち、湾曲領域、首下部内部、ねじ部隣接領域をそれぞれ構成する結晶粒を、第1結晶粒、第2結晶粒、第3結晶粒と定義し、図5に示している。
なお、本明細書では、ボルトの位置関係を簡潔に示すため、中心軸Cに対して、頭部が形成される側を「上」といい、これと反対側(首下部ないしはねじ部が形成される側)を「下」という。中心軸Cに平行な面を断面とする。
以下において、本発明にかかるアルミニウム合金製ボルトについて、実施例を参照しながら説明する。
<実施例1>
図6は、本発明の実施例1にかかる7000系アルミニウム合金製ボルトであり、(a)は断面の模式図、(b)~(d)は断面写真を示す。アルミニウム合金製ボルトは、湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒を粗大化した構造となっている。(c)、(d)は湾曲領域を拡大した断面写真である。(c)において、上下の領域は通常の結晶粒径の領域、四角で囲んだ領域は、結晶粒が粗大化した領域である。
断面写真から切断法により測定した湾曲領域の平均結晶粒径は、最小が40μm程度、最大が100μm程度である。湾曲領域では、結晶粒は中心軸C方向に楕円状に粗大化し、粗大化した結晶粒の長軸方向と中心軸Cとのなす角度は0°~45°である。
即ち、湾曲領域の第1結晶粒の平均結晶粒径d、およびねじ部隣接領域の第3結晶粒の平均結晶粒径dが、首下部内部のような他の部分の第2結晶粒の平均結晶粒径dより大きくなる。即ち、d>dかつd>dとなる。d=dであってもかまわない。
、dは、例えば40μm以上で1000μm以下、好適には40μm以上で500μm以下である。dは、例えば1μm以上で40μm未満、好適には1μm以上で30μm以下、より好適には1μm以上で20μm以下である。
図7は、本発明の実施例1にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造方法を示す図である。材料のアルミニウム合金には、例えば、7000系アルミニウム合金(Al-Zn-Mg-(Cu))のA7050BD-Oが用いられる。製造方法は、以下の工程(1)~(7)を含む。
(1)切断
アルミニウム合金の引抜棒(棒材)1を準備し、所定の長さに切断する。引抜棒1は、予め結晶粒が微細化され、高強度のものが用いられる。結晶粒の大きさdは、上述のように、例えば、1μm以上、40μm未満である。
(2)据え込み
金型(図示せず)内に配置された引抜棒1に対して、ハンマー等で下向きの押圧力を加えて据え込み加工を施し、引抜棒1の上端を塑性変形させ、大径部2およびテーパ部3を形成した据え込み中間体を作製する。なお、これらの大径部2およびテーパ部3は、後で説明するように最終的には頭部(ボルトヘッド)5となる。一方、引抜棒1のテーパ部3より下側の本体部4は塑性変形せず、そのままの状態で首下部となる。
(2)据え込み工程により、テーパ部3近傍で、結晶粒に塑性歪が付与され、この部分で、後述する熱処理により結晶粒の粗大化が起きる。結晶粒に与えられた塑性歪は、相当塑性歪ε換算で、0<ε≦0.5であり、好適には0.05≦ε≦0.2である(相当塑性歪を表す「ε」は正しくは「εの上にバー」で表される。以下において同様)。
(3)ロール圧造
据え込み中間体の本体部4にロール圧造を行って塑性歪を付与し、本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する。図7中、破線で囲んだ部分がロール圧造範囲である。後述する熱処理により本体部4の表面および表面近傍で結晶粒が粗大化する。
図8は、ロール圧造工程を示す概略図である。据え込み工程を行った据え込み中間体の本体部4のロール圧造範囲を固定ロールと可動ロールで挟まれるように配置し、可動ロールで加圧しながら固定ロールおよび可動ロール矢印の方向に回転させる。これにより、据え込み中間体の本体部4の表面および表面近傍の結晶に塑性歪が付与される。結晶粒に与えられた塑性歪は、相当塑性歪ε換算で、0<ε≦0.5であり、好適には0.05≦ε≦0.2である。
ロール圧造工程として、平ダイス式、プラネタリ式等の回転加工法を用いても構わない。
(4)頭部成形
大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行い、頭部(ボルトヘッド)5の成形を行う。
(5)溶体化処理/(6)時効処理
頭部成形工程を行った頭部成形中間体に対して、熱処理、即ち溶体化処理および時効処理を行う。図9は、溶体化処理および時効処理の温度ダイアグラムである。図9に示すように、溶体化処理では、例えば475℃に昇温して、1~3時間保持する。続いて、例えば水中に入れて急冷した後、時効処理を行う。時効処理は、例えば100~150℃の温度で、20~30時間保持して行う。
熱処理工程により、(2)据え込み工程および(3)ロール圧造工程で塑性歪を付与した部分で、結晶粒の粗大化が起きる。
(7)ねじ転造
(7)ねじ転造により、本体部4の表面にねじを形成する。この工程によってねじ部を構成する結晶粒のみ微細化する。以上の工程で、実施例1にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。断面写真に示すように、(2)据え込み工程および(3)ロール圧造工程で、所定の大きさの塑性歪を与えた領域、図4で言えば湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒が、その後の熱処理により粗大化しているのがわかる。
このように、実施例1のアルミニウム合金製ボルトでは、湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒を粗大化し、湾曲領域の平均結晶粒径d、およびねじ部隣接領域の結晶粒の平均結晶粒径dが、例えば首下部内部のような他の部分の結晶粒の平均粒径dより大きくなる(d>dかつd>d)。
これにより、ボルト締結時に応力が集中し、応力腐食割れが起きやすい、首下丸み部、ねじ切り上がり部、および第1ねじ山谷底部(図3参照)において、結晶粒を粗大化し、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。また、首下部内部のような他の部分の結晶粒は、微細なままであるため、高強度も維持できる。この結果、耐応力腐食割れ性に優れ、高強度のアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
<実施例2>
図10は、本発明の実施例2にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図である。実施例2では、湾曲領域の結晶粒のみを粗大化し、ねじ部隣接領域の結晶粒は粗大化しない。材料のアルミニウム合金には、例えば、7000系アルミニウム合金のA7050BD-Oが用いられる。
実施例1と同様に、(1)アルミニウム合金の引抜棒1を準備し、所定の長さに切断する切断工程、および(2)金型内に配置し、ハンマー等で下向きの押圧力を加えて据え込み加工を施し、引抜棒1の上端を塑性変形させ、大径部2およびテーパ部3を形成する据え込み工程を行う。
(2)据え込み工程により、テーパ部3に塑性歪が付与される。結晶粒に与えられた塑性歪は実施例1と同様に、相当塑性歪ε換算で、0<ε≦0.5であり、好適には0.05≦ε≦0.2である。
実施例1のような本体部4のロール圧造を行うことなく、(3)大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行い、頭部5の成形を行う。
頭部成形を行った頭部成形中間体に対して、熱処理、即ち(4)溶体化処理および(5)時効処理を行う。熱処理には、図9に示すT6処理が用いられる。これにより、(2)据え込み工程で塑性歪を付与した湾曲領域で、結晶粒の粗大化が起きる。
(6)ねじ転造により、本体部4にねじ6を形成する。この工程によってねじ部を構成する結晶粒のみ微細化する。以上の工程で、実施例2にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。
図10の断面写真に示すように、実施例2にかかるアルミニウム合金製ボルトでは、湾曲領域の結晶粒が粗大化される。
実施例2のアルミニウム合金製ボルトでは、首下丸み部(図3参照)において耐応力腐食割れ性に優れ、高強度のアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
<比較例1>
図11は、比較例1にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図である。材料のアルミニウム合金には、O材、例えばA7050BD-Oが用いられる。
比較例1では、実施例2の(2)据え込み工程に代えて、(2)絞り加工工程で、大径部2とテーパ部3とを形成する。即ち、引抜棒1の、首下丸み部に対応する位置から下端部にわたって絞り加工(絞り成形加工)を施して、本体部4を形成する。絞り加工が行われた部分では、横断面の直径が小さくなるとともに、本体部4の長さは中心軸C方向に伸び、本体部4内ではアルミニウム合金材料の流動が起こり、大きな加工歪が付与される。
(2)絞り加工の後、(3)ロール圧造工程により、絞り加工中間体の本体部4にロール圧造を行って塑性歪を付与し、本体部の表面にはさらに塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する。図中、破線で囲んだ部分がロール圧造範囲である。
(3)ロール圧造の後、(4)頭部成形工程により、大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行い、頭部5の成形を行う。
頭部成形を行った頭部成形中間体に対して、実施例1、2と同様の熱処理(溶体化処理および時効処理)工程(T6処理)を行った後に、(5)ねじ転造により、本体部4にねじ6を形成する。このねじ転造工程によってねじ部を構成する結晶粒のみ微細化する。以上の工程で、比較例1にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。
図11の断面写真に示すように、比較例1では、結晶粒の粗大化は認められない。即ち、(2)絞り加工工程で、大径部2、テーパ部3および本体部4を形成する際に付与された大きな加工歪に加えて、(3)ロール圧造工程および(4)頭部成形工程でさらに付与された加工歪により、首下丸み部に、例えば相当塑性歪で0.5を超えるような十分な塑性歪が導入されたため、熱処理によって結晶粒の粗大化は発生せず、結晶粒は微細化した。このため、首下丸み部は微細組織であり、平均結晶粒径は小さく、耐応力腐食割れ性は向上しなかった。
<比較例2>
図12は、比較例2にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図である。材料のアルミニウム合金には、O材、例えばA7050BD-Oが用いられる。
製造工程は、上述の比較例1と同様に、(2)絞り加工工程までは同じである。
比較例1のような本体部4にロール圧造を行うことなく、(3)頭部成形工程により、大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行い、頭部5の成形を行う。
頭部成形を行った頭部成形中間体に対して、実施例1、2と同様の熱処理(溶体化処理および時効処理)工程(T6処理)を行った後に、(4)ねじ転造により、本体部4にねじ6を形成する。このねじ転造工程によってねじ部を構成する結晶粒のみ微細化する。以上の工程で、比較例2にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。
図12の断面写真に示すように、比較例2でも、首下丸み部において結晶粒の粗大化は認められない。
以下の表2は、実施例1、2および比較例1、2の応力腐食割れ試験における耐久性の比較である。材料のアルミニウム合金はA7050BD-O(O材)である。
Figure 0007403109000002
表2に示すように、成形方法に据え込み工程を用いた実施例1、2では、ロール圧造を行い、湾曲領域およびねじ部隣接領域の双方で結晶粒を粗大化させた実施例1において、引張強さ574MPaで応力腐食割れ耐久時間が1000時間以上であった。また、ロール圧造を行わず、湾曲領域のみ結晶粒を粗大化させた実施例2において、引張強さ579MPaで応力腐食割れ耐久時間が581時間であった。いずれも高い耐久性を示した。
これに対して、成形方法に絞り工程を用いて、結晶粒が粗大化していない比較例1、2では、応力腐食割れ耐久時間が110、120時間となり、耐久性が不十分となった。
このことからも、据え込み工程を行うことで、湾曲領域に塑性歪みを付与し、熱処理工程で結晶粒が粗大化し、耐久性が向上していることがわかる。
<実施例3>
図13は、本発明の実施例3にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図である。実施例3では、材料のアルミニウム合金にH14材、例えばA7050BD-H14が用いられる。
製造工程は、実施例1と同様に、(1)アルミニウム合金の引抜棒1を準備し、所定の長さに切断する切断工程、および(2)金型内に配置し、ハンマー等で下向きの押圧力を加えて据え込み加工を施し、引抜棒1の上端を塑性変形させ、大径部2およびテーパ部3を形成する据え込み工程を行い据え込み中間体を作製する。据え込み工程により、テーパ部3で、塑性歪が付与される。
続いて、(3)頭部成形工程を行い、大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行って頭部5を形成する。
続いて、(4)焼鈍し工程を行い、据え込み工程により形成されたテーパ部3の塑性歪みを緩和する。
次に、(5)ロール圧造工程を行い、本体部4のねじ6を形成するロール圧造範囲にロール圧造を行って、本体部4のねじ形成部の表面およびその近傍に塑性歪を付与する。ロール圧造は、例えば図8に示す方法で行われる。
次に、(6)ねじ転造工程により、本体部4にねじ部6を形成する。この工程によってねじ部を構成する結晶粒のみ微細化する。
最後に、ねじ転造工程を行ったねじ転造中間体に対して、熱処理、即ち(7)溶体化処理および(8)時効処理を行う。熱処理には、図9に示すT6処理が用いられる。これにより、ねじ部6に隣接するねじ部隣接領域のみ結晶粒が粗大化する。以上の工程で、実施例3にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。
図13の断面写真に示すように、実施例3にかかるアルミニウム合金製ボルトでは、首下丸み部の結晶粒は粗大化されず、ねじ部6に隣接するねじ部隣接領域の結晶粒のみ粗大化できる。
このように、実施例3の方法を用いることで、特にねじ部での耐応力腐食割れ性が優れたアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
<実施例4>
図14は、本発明の実施例4にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図である。実施例4では、材料のアルミニウム合金に、O材、例えばA7050BD-O、またはH14材、例えばA7050BD-H14が用いられる。
製造工程では、実施例3の(2)据え込み工程に代えて、(2)絞り工程で、大径部2とテーパ部3とを形成し絞り中間体を作製する。続く(3)頭部成形工程で、大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行って頭部5を形成する。
以降の工程(4)~(8)は、実施例3と同じである。以上の工程で、実施例4にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。
図14の断面写真に示すように、実施例4にかかるアルミニウム合金製ボルトでは、据え込み工程に代えて絞り工程を用いることで、O材、H14材の材質によらず、首下丸み部の結晶粒は粗大化されず、ねじ部隣接領域の結晶粒のみ粗大化できる。
このように、実施例4の方法を用いることで、特にねじ部での耐応力腐食割れ性が優れたアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
なお、アルミニウム合金製ボルトの表面には、陽極酸化被膜、化成処理被膜、絶縁被膜等が形成されても構わない(以下の実施の形態2も同じ)。
実施の形態2(6000系アルミニウム合金)
本発明の実施の形態2では、6000系(Al-Mg-Si)のアルミニウム合金をボルト材料に用いる場合について説明する。図15は、6000系のアルミニウム合金材料に歪を付与した後、熱処理(T6処理)を行った場合の、相当塑性歪と平均結晶粒径との関係を示す。黒丸は、材質A6056-H12のアルミニウム合金で、冷間加工を行い、加工硬化させた引抜棒である。付与した相当塑性歪が0.22近傍で、熱処理後に平均結晶粒径が大きくなる傾向にある。このように、熱処理前に付与する歪量を制御することにより、アルミニウム合金材料の平均結晶粒径を制御できることがわかる。図15中に黒丸で示した材質A6056-H12の測定データを表3に示す。
Figure 0007403109000003
<実施例5>
図16は、本発明の実施例5にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図である。材料のアルミニウム合金には、例えば、6000系アルミニウム合金のA6056-H12が用いられる。
図16の製造工程は、図10に示す実施例2の製造工程とほぼ同様であり、以下に簡単に説明する。
(1)切断
アルミニウム合金の引抜棒(棒材)1を準備し、所定の長さに切断する。引抜棒1は、予め結晶粒が微細化され、高強度のものが用いられる。結晶粒の大きさdは、上述のように、例えば、1μm以上、40μm未満である。
(2)据え込み
引抜棒1を金型内に配置し、ハンマー等で下向きの押圧力を加えて据え込み加工を施し、上端を塑性変形させて大径部2およびテーパ部3を形成する。据え込み工程により、テーパ部3に塑性歪が付与される。結晶粒に与えられ塑性歪は、相当塑性歪ε換算で、0.1≦ε≦0.5であり、好適には0.2≦ε≦0.4である。
(3)頭部成形
大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行い、頭部(ボルトヘッド)5の成形を行う。なお、本体部4のロール圧造は行わない。
(4)溶体化処理/(5)時効処理
頭部成形工程を行った頭部成形中間体に対して、熱処理、即ち溶体化処理および時効処理を行う。図17は、溶体化処理および時効処理の温度ダイアグラムである。図17に示すように、溶体化処理では、例えば550℃に昇温して、1~10時間保持する。続いて、例えば水中に入れて急冷した後、時効処理を行う。時効処理は、例えば140~200℃の温度で、3~24時間保持して行う。熱処理工程により、据え込み工程で塑性歪を付与したテーパ部3で、結晶粒の粗大化が起きる。
(6)ねじ転造
ねじ転造により、本体部4の表面にねじを形成する。この工程によってねじ部を構成する結晶粒のみ微細化する。以上の工程で、実施例5にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。図16の断面写真1、2に示すように、(2)据え込み工程で、所定の大きさの塑性歪を与えた領域、即ち湾曲領域の結晶粒が、その後の熱処理により粗大化していることがわかる。
このように、実施例5のアルミニウム合金製ボルトでは、湾曲領域の結晶粒が粗大化し、湾曲領域の平均結晶粒径dが、例えば首下部内部のような他の部分の結晶粒の平均粒径dより大きくなる(d>d)。これにより、ボルト締結時に応力が集中し、応力腐食割れが起きやすい、首下丸み部(図3参照)において、結晶粒を粗大化し、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。また、断面写真2から分かるように、首下部内部のような他の部分の結晶粒は、微細なままであるため、高強度も維持できる。この結果、耐応力腐食割れ性に優れ、高強度のアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
<実施例6>
図18は、実施例6にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図である。材料の6000系アルミニウム合金には、H12材、例えばA6056-H12が用いられる。
実施例6では、実施例5の(2)据え込み工程に代えて、(2)絞り加工工程で、大径部2とテーパ部3とを形成する。即ち、引抜棒1の、首下丸み部に対応する位置から下端部にわたって絞り加工(絞り成形加工)を施して、本体部4を形成する。絞り加工が行われた部分では、横断面の直径が小さくなるとともに、本体部4の長さは中心軸C方向に伸び、本体部4内ではアルミニウム合金材料の流動が起こり、大きな加工歪が付与される。結晶粒に与えられ塑性歪は、相当塑性歪ε換算で、0.1≦ε≦0.5であり、好適には0.2≦ε≦0.4である。
(2)絞り加工の後、(3)頭部成形工程により、大径部2とテーパ部3とにプレス加工を行い、頭部5の成形を行う。
頭部成形を行った頭部成形中間体に対して、実施例5と同様の熱処理((4)溶体化処理および(5)時効処理)工程(図17参照)を行った後に、(6)ねじ転造により、本体部4にねじ6を形成する。以上の工程で、実施例6にかかるアルミニウム合金製ボルトが完成する。
図18の断面写真1、2に示すように、(2)絞り工程および(6)ねじ転造工程で所定の大きさの塑性歪を与えた領域、即ち湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒が、その後の熱処理により粗大化しているのがわかる。
図19は、実施例6にかかるアルミニウム合金製ボルトの各領域の断面拡大写真および結晶粒径の測定結果である。(b)湾曲領域では結晶粒が粗大化し、結晶粒径dは64μmあるいは123μmとなっている。(c)首下部内部では結晶粒は微細化したままで、結晶粒径dは35μmあるいは39μmとなっている。また(d)ねじ部隣接領域では結晶粒が粗大化し、結晶粒径dは107μmとなっている。
なお、実施例6では、ロール圧造工程を行わなくてもねじ部隣接領域で結晶粒が粗大化しいている。これは、棒材の準備工程、(1)切断工程、および(2)絞り加工工程で、ねじ部隣接領域に相当する領域の材料が流動し、図15に示される相当塑性歪0.22程度の加工歪が付与されたためである。
比較例2で述べたように、7000系アルミニウム合金を用いて絞り加工を行った場合は、結晶粒の粗大化は認められなかったのに対して、実施例5のように、6000系アルミニウム合金を用いた場合は、湾曲領域およびねじ部隣接領域で結晶粒の粗大化が認められた。この理由として、図1、15に示すように、7000系アルミニウム合金と6000系アルミニウム合金では、結晶粒が粗大化するのに必要な塑性歪の量が異なるためと推察される。即ち、7000系アルミニウム合金の場合は、(2)絞り工程および(6)ねじ転造工程で、例えば相当塑性歪εが0.7以上となるような過剰な塑性歪が導入されたため、熱処理によって結晶粒の粗大化は発生せず、結晶粒は微細化した。これに対し、6000系アルミニウム合金の場合は(2)絞り工程で適正な塑性歪が付与されたため、十分に結晶粒を粗大化させることができたと考えられる。
以下の表4は、実施例5、6のアルミニウム合金製ボルトの応力腐食割れ試験における耐久性の比較である。材料のアルミニウム合金はA6056-H12である。
Figure 0007403109000004
表4に示すように、6000系アルミニウム合金を材料に用いた場合、成形方法が据え込み加工(実施例5)か、絞り加工(実施例6)かにかかわらず、約400MPaの引っ張り強さで、応力腐食割れ耐久時間が2000Hr以上と高い耐久性が得られた。これは、6000系アルミニウム合金を材料に用いた場合、成形方法によらず湾曲領域では結晶粒の粗大化が起きているためと考えられる。
<実施例7>
図20は、本発明の実施例7にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図であり、実施例5の製造工程(図16参照)が、さらにロール圧造工程を含むものである。材料のアルミニウム合金には、例えば、6000系アルミニウム合金のA6056-H12が用いられる。
図20に示す製造工程は、図16に示す実施例5の製造工程とほぼ同様であるが、さらに(2)据え込み工程後に、本体部4に(3)ロール圧造工程が行なわれる。(3)ロール圧造工程は、実施例1の工程と同様である(例えば図8参照)。
(3)ロール圧造工程では、据え込み中間体の本体部4にロール圧造を行って塑性歪を付与し、本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する。図20中、破線で囲んだ部分がロール圧造範囲であり、この工程により本体部4の表面および表面近傍で結晶粒が粗大化する。結晶粒に与えられ塑性歪は、相当塑性歪ε換算で、0.1≦ε≦0.5であり、好適には0.2≦ε≦0.4である。
(3)ロール圧造工程後には、実施例5と同様に、(4)頭部形成、(5)溶体化処理、(6)時効処理、および(7)ねじ転造の各工程が行なわれ、アルミニウム合金製ボルトが完成する。
断面写真1、2に示すように、(2)据え込み工程および(3)ロール圧造工程で、所定の大きさの塑性歪を与えた領域、断面写真1で言えば湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒が、その後の熱処理により粗大化している。
このように、実施例7のアルミニウム合金製ボルトでは、湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒が粗大化し、湾曲領域の平均結晶粒径d、ねじ部隣接領域の平均結晶粒径dが、例えば首下部内部のような他の部分の結晶粒の平均粒径dより大きくなる(d>d、d>d2))。これにより、ボルト締結時に応力が集中し、応力腐食割れが起きやすい、首下丸み部(図3参照)において、結晶粒を粗大化し、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。また、断面写真2から分かるように、首下部内部のような他の部分の結晶粒は微細なままであるため、高強度も維持できる。この結果、耐応力腐食割れ性に優れ、高強度のアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
<実施例8>
図21は、本発明の実施例8にかかるアルミニウム合金製ボルトの製造工程を示す図であり、実施例6の製造工程(図18参照)が、さらにロール圧造工程を含むものである。材料のアルミニウム合金には、例えば、6000系アルミニウム合金のA6056-H12が用いられる。
図21に示す製造工程は、図18に示す実施例5の製造工程とほぼ同様であるが、さらに(2)絞り工程後に、本体部4に(3)ロール圧造工程が行なわれる。(3)ロール圧造工程は、実施例1の工程と同様である。図21中、破線で囲んだ部分がロール圧造範囲であり、この工程により本体部4の表面および表面近傍で結晶粒が粗大化する。結晶粒に与えられ塑性歪は、相当塑性歪ε換算で、0.1≦ε≦0.5であり、好適には0.2≦ε≦0.4である。
(3)ロール圧造工程後には、実施例6と同様に、(4)頭部形成、(5)溶体化処理、(6)時効処理、および(7)ねじ転造の各工程が行なわれ、アルミニウム合金製ボルトが完成する。
断面写真1、2に示すように、(2)据え込み工程および(3)ロール圧造工程で、所定の大きさの塑性歪を与えた領域、断面写真1で言えば湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒が、その後の熱処理により粗大化しているのがわかる。
このように、実施例8のアルミニウム合金製ボルトでは、湾曲領域およびねじ部隣接領域の結晶粒が粗大化し、湾曲領域の平均結晶粒径d、ねじ部隣接領域の平均結晶粒径dが、例えば首下部内部のような他の部分の結晶粒の平均粒径dより大きくなる(d>d、d>d2))。これにより、ボルト締結時に応力が集中し、応力腐食割れが起きやすい、首下丸み部(図3参照)において、結晶粒を粗大化し、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。また、断面写真2から分かるように、首下部内部のような他の部分の結晶粒は微細なままであるため、高強度も維持できる。この結果、耐応力腐食割れ性に優れ、高強度のアルミニウム合金製ボルトを得ることができる。
本発明にかかるアルミニウム合金製ボルトは、自動車、鉄道、船舶、航空機、移動体車両など各種輸送機械のような軽量化の要求が強い構造物の連結や締結に利用できる。
1 引抜棒
2 大径部
3 テーパ部
4 本体部
5 頭部
6 ねじ部

Claims (23)

  1. 頭部と、前記頭部から下方に伸びる首下部とを有し、前記頭部と前記首下部の間に首下丸み部が形成され、前記首下部にねじ部が形成されている、中心軸Cを備えたアルミニウム合金製ボルトであって、
    前記首下部と前記首下丸み部の境界である前記アルミニウム合金製ボルトの表面上のR止まりから一定の距離L下方にある前記首下部の表面から、内方に向かって広がり前記頭部方向に湾曲した下面と、前記下面の前記頭部側に、前記下面から一定の距離Tで設けられた上面と、前記アルミニウム合金製ボルトの表面とに囲まれた湾曲領域が規定され、
    前記湾曲領域を構成するアルミニウム合金の第1結晶粒の平均結晶粒径は、前記ねじ部に隣接するねじ部隣接領域の内方の首下部内部を構成するアルミニウム合金の第2結晶粒の平均結晶粒径より大きいことを特徴とするアルミニウム合金製ボルト。
  2. 上記第1結晶粒の平均結晶粒径は、40μm以上で、1000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  3. 上記第1結晶粒の平均結晶粒径は、40μm以上で、500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  4. 前記第1結晶粒の長軸方向と、前記中心軸Cのなす角度は、0°~45°であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアルミニウム合金製ボルト。
  5. 前記距離Lは、0≦L≦1.5R(Rは、前記首下丸み部の、前記中心軸C方向の高さ)の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  6. 前記距離Tは、0<T≦Rの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  7. 前記距離Tは、0.5R≦T≦Rの範囲内にあることを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  8. 前記下面が前記首下部の表面と交わる下面端から前記下面の頂部までの前記中心軸Cに平行な高さHは、0<H≦3Rの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  9. 前記高さHは、R≦H≦2Rの範囲内であることを特徴とする請求項8に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  10. 頭部と、前記頭部から下方に伸びる首下部とを有し、前記頭部と前記首下部の間に首下丸み部が形成され、前記首下部にねじ部が形成されている、中心軸Cを備えたアルミニウム合金製のボルトであって、
    前記首下部のねじ部に隣接するねじ部隣接領域を構成するアルミニウム合金の第3結晶粒の平均結晶粒径は、前記ねじ部隣接領域の内方の首下部内部を構成するアルミニウム合金の第2結晶粒の平均結晶粒径より大きいことを特徴とするアルミニウム合金製ボルト。
  11. 上記第3結晶粒の平均結晶粒径は、40μm以上で、1000μm以下であることを特徴とする請求項10に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  12. 上記第3結晶粒の平均結晶粒径は、40μm以上で、500μm以下であることを特徴とする請求項10に記載のアルミニウム合金製ボルト。
  13. 上記第2結晶粒の平均結晶粒径は、1μm以上、40μm未満であることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のアルミニウム合金製ボルト。
  14. 前記アルミニウム合金は、6000系アルミニウム合金、または7000系アルミニウム合金であることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載のアルミニウム合金製ボルト。
  15. アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
    前記棒材に据え込み加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された据え込み中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
    前記据え込み中間体の前記本体部にロール圧造を行い、前記本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する工程と、
    前記ロール圧造中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部および前記本体部で結晶粒を粗大化させる工程と、
    前記熱処理後のロール圧造中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  16. アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
    前記棒材に据え込み加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された据え込み中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
    前記据え込み中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部で結晶粒を粗大化させる工程と、
    前記熱処理後の据え込み中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  17. アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
    前記棒材に据え込み加工または絞り加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部が形成された据え込み中間体または絞り中間体とを作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
    前記据え込み中間体または絞り中間体に焼鈍しを行い、前記テーパ部の塑性歪を緩和する工程と、
    前記焼鈍し後の据え込み中間体または絞り中間体の本体部の、ねじが形成される領域にロール圧造を行い、前記本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する工程と、
    前記ロール圧造中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記本体部で結晶粒を粗大化させる工程と、
    前記本体部のねじが形成される領域にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  18. アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
    前記棒材に絞り加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された絞り中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
    前記絞り中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部で結晶粒を粗大化させる工程と、
    前記熱処理後の絞り中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  19. アルミニウム合金からなる棒材を準備する工程と、
    前記棒材に絞り加工を行い、直径が大きくなった大径部と、本体部と、それらを接続するテーパ部とが形成された絞り中間体を作製する工程であって、前記テーパ部に塑性歪を付与する工程と、
    前記絞り中間体の前記本体部にロール圧造を行い、前記本体部の表面および表面近傍に塑性歪が付与されたロール圧造中間体を作製する工程と、
    前記ロール圧造中間体に熱処理を行い、前記塑性歪が付与された前記テーパ部および前記本体部で結晶粒を粗大化させる工程と、
    前記熱処理後のロール圧造中間体の本体部にねじを形成する工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  20. 前記アルミニウム合金は7000系アルミニウム合金であり、
    前記テーパ部、および/または前記本体部および表面近傍に付与された相当塑性歪εが、0<ε≦0.5であることを特徴とする請求項15~17のいずれかに記載のアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  21. 前記相当塑性歪εが、0.05≦ε≦0.2であることを特徴とする請求項20に記載のアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  22. 前記アルミニウム合金は6000系アルミニウム合金であり、
    前記テーパ部、および/または前記本体部および表面近傍に付与された相当塑性歪εが、0.1≦ε≦0.5であることを特徴とする請求項15、16、18および19のいずれかに記載のアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
  23. 前記相当塑性歪εが、0.2≦ε≦0.4であることを特徴とする請求項22に記載のアルミニウム合金製ボルトの製造方法。
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