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JP7410388B2 - 塗装めっき鋼板 - Google Patents
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JP7410388B2 - 塗装めっき鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装めっき鋼板に関する。
家電用、建材用などに、従来の成形加工後に塗装されていたポストコート鋼板製品に代わって、着色した有機皮膜を被覆したプレコート鋼板が使用されるようになってきた。こプレコート鋼板は、防錆処理を施した鋼板やめっき鋼板に着色した有機皮膜を被覆したもので、美麗な外観を有しながら、十分な加工性を有し、耐食性が良好であるという特性を有している。
プレコート鋼板(以下、塗装鋼板とも称する)は、需要家がその製品のために求める塗膜を前もって形成して出荷される鋼板であり、需要家にて塗装やそれに関連する作業を省くことができるとともに、そのような作業のための設備も不要になるため、様々な分野においてその利用が拡大している。初期のプレコート鋼板においては、塗装を施す下地鋼板として、クロメートによる防錆処理を施したクロメート化成処理鋼板が用いられていた。その後、クロメート化成処理皮膜から溶出する可能性のある6価のクロムの毒性問題から、クロメート化成処理塗装鋼板に代わり、6価クロム非含有防錆処理を施した下地鋼板を使用するクロメートフリー型塗装鋼板が注目されるに至り、近年家電分野ではその利用が特に増大している。一方、屋外での長期にわたる耐食性が要求される建材分野ではクロメート型塗装鋼板が主流として利用されている。
建材分野へのクロメートフリー型塗装鋼板の適用拡大を目的に、クロメート化成処理の有する高い耐食性をクロメートフリー処理でも実現するため、これまでに多くの検討がなされてきている。しかし、要求性能を十分に満足するクロメートフリー処理の提供には至っていない。
一方、最近、クロメートフリー処理の下地となるめっき鋼板の高耐食化も進み、従来主流であった亜鉛めっき鋼板から、アルミニウムやマグネシウム、シリコン等を添加した亜鉛合金系のめっき鋼板も利用されることで、これらの亜鉛合金系めっき鋼板に対しても高い耐食性を有するクロメートフリー処理が求められるようになってきた。
これまでにも亜鉛合金めっき鋼板のクロメートフリー後処理に関する検討事例はなされている。
例えば、特許文献1には、耐食性、耐アルカリ性や耐溶剤性などの耐洗浄剤性、皮膜密着性、塗料密着性および印刷密着性などの密着性、耐湿変色性や耐結露性などの耐水性に優れ、且つ加工性および摺動性にも優れるクロムフリー表面処理亜鉛系めっき鋼板が提案されている。
特許文献1には、上記鋼板を提供する技術として、分子内に特定の官能基を2個以上と、特定の親水性官能基を1個以上含有し、特定の分子量である有機ケイ素化合物(C)と、特定の構造単位を有する水系ウレタン樹脂(E)と、特定の構造を有するカチオン性フェノール樹脂(F)の3成分を特定の比率で含有する造膜成分(c)と、チタンフッ化水素酸(H)、ジルコンフッ化水素酸(I)、リン酸化合物(J)と、バナジウム(IV)化合物(K)の4成分を特定の比率で含有するインヒビター成分(d)と、ポリエチレンワックス(L)と、水性媒体と、からなり、pHが4~6である水系金属表面処理剤を塗布乾燥することにより、各成分を含有する複合皮膜を形成することが記載されている。
特許文献2には、環境調和性に加えて端面耐食性にも優れたクロムフリー塗装鋼板が提案されている。
特許文献2には、上記鋼板を提供する技術として、次の技術が記載されている。
亜鉛系めっき鋼板を下地鋼板とし、該下地鋼板のめっき皮膜の上層に、ガラス転移温度Tgが0℃以上ポリウレタンとガラス転移温度Tgが-10℃以下のポリウレタンを所定の質量比で混合した水分散性ポリウレタンと、シリカと、ジルコニウム化合物と、シランカップリング剤とを含む化成処理剤を用いて化成処理層を形成する。更に、該化成処理層の上層に下塗り塗膜層と上塗り塗膜層とを形成する。これにより、化成処理層の臨界剥離強度が5mN以上と高くなり、環境に悪影響を及ぼすことなく、塗装鋼板の耐食性、特に端面耐食性が顕著に向上する。
特許文献3には、クロムを含まなくとも加工密着性を十分に担保しながら優れた耐軒下耐食性を付与する下地処理層を形成させる塗装鋼板用水系下地処理組成物が提案されている。
特許文献3には、上記組成物を提供する技術として、特定の有機ケイ素化合物と、ヘキサフルオロ金属酸と、特定のカチオン性基を有するウレタン樹脂と、バナジウム化合物と、水性媒体を含有する下地処理組成物において、ウレタン樹脂のカチオン性基及び全アミン価が特定の値を有することで、加工密着性を十分に担保しながら優れた耐軒下耐食性を付与する下地処理層が得られることが記載されている。
特許文献4には、被覆する前の前処理用に又は処理用の水性組成物を用いる金属表面の被覆法が提案されている。
特許文献4には、次の技術が記載されている。
水性組成物が水の他に、(a)少なくとも1種の加水分解可能な又は/及び少なくとも部分的に加水分解されたシラン、(b)少なくとも1種の金属キレート、(c)少なくとも1種の有機塗膜形成剤、並びに、(d)塗膜形成助剤として少なくとも1種の長鎖アルコール又は/及び(e)少なくとも1種の粒子形の無機化合物を含有させる。
清潔な、酸漬した、洗浄した又は/及び前処理した金属表面を水性組成物と接触させ、金属表面に塗膜を形成させる。塗膜を引き続き乾燥させ、部分的に又は完全に塗膜を緊密にし、場合により付加的に硬化させる。乾燥及び場合により硬化もさせた塗膜が、0.01~10μmの範囲の層厚を有する。
特開2011-106029号公報 特開2011-219832号公報 特開2014-214315号公報 特表2006-519308号公報
しかし、いずれの特許文献の技術においても、耐食性について、塗装めっき鋼板の、家電用途又は建材用途等への適用を満足するものではない。また、いずれの特許文献の技術においても、アルミニウム、マグネシウムなどを含有する亜鉛系めっき鋼板の加工部(曲げ加工、プレス加工等による加工部)によりめっき層又は塗膜に生じたクラックに対する、耐食性の向上、特に加工部の白錆の抑制について配慮されていない。
そのため、これら性能を満足する塗装めっき鋼板が要望されている。
そこで、本発明は、有害な六価クロムを利用することなく、曲げ加工、プレス加工等によりめっき層又は塗膜にクラックが生じても、白錆の発生を抑えながら、高い耐食性も有するクロメートフリー型の塗装めっき鋼板を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段は、次の態様を含む。
<1>
鋼板と、
前記鋼板の片面または両面に設けられ、亜鉛を含有するめっき層と、
前記鋼板の片面に設けられた前記めっき層上、又は前記鋼板の両面に設けられた前記めっき層の少なくとも一方上に設けられた化成処理皮膜と、
前記化成処理皮膜上に設けられた1層以上の塗膜と、
を有し、
前記化成処理皮膜、および、前記化成処理皮膜に接する塗膜のいずれか、または両方に、シラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基および硫黄含有基のいずれか一つ以上を有するカルボン酸誘導体を、前記化成処理皮膜固形分または前記化成処理皮膜に接する塗膜固形分に対して0.01質量%以上40質量%以下の濃度で含有する塗装めっき鋼板。
<2>
前記カルボン酸誘導体を、前記化成処理皮膜固形分または前記化成処理皮膜に接する塗膜固形分に対して0.5質量%以上40質量%以下の濃度で含有する<1>に記載の
塗装めっき鋼板。
<3>
前記めっき層が、アルミニウムを0.5質量%以上60質量%以下で含有し、残部が亜鉛及び不純物からなる<1>又は<2>に記載の塗装めっき鋼板。
<4>
前記めっき層が、更にマグネシウムを0.5質量%以上15質量%以下で含有する<3>に記載の塗装めっき鋼板。
<5>
前記化成処理皮膜に接する塗膜の平均膜厚が、4μm以上である<1>~<4>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
<6>
前記化成処理皮膜に接する塗膜が、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、および、ウレタン樹脂のいずれか一つ以上を含む<1>~<5>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
<7>
前記化成処理皮膜に接する塗膜が、バナジン酸塩、タングステン酸塩、けい酸塩、および、りん酸塩のいずれか一つ以上を含む<1>~<6>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
<8>
前記化成処理皮膜が、シランカップリング剤、およびジルコニウム化合物のいずれか一つ以上を含む<1>~<7>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
<9>
前記化成処理皮膜が、シリカ、りん酸及びその塩、ふっ化物、並びに、バナジウム化合物のいずれか一つ以上を含む<1>~<8>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
<10>
前記化成処理皮膜が、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂のいずれか一つ以上を含む<1>~<9>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
<11>
前記塗装めっき鋼板に対して、板温20℃で、鋼板の圧延方向に、板厚の3倍の厚みを曲率半径とする曲げ加工を施した後、CCT-JASO M609に準拠した下記条件(1)で示される複合サイクル腐食試験を30サイクル行った腐食試験片について、
前記めっき層の曲げ方向の縦断面の観察により、
前記腐食試験片の曲げ加工部に形成されている、前記めっき層のクラック部を除く前記めっき層の任意の幅200μmの範囲において、
前記めっき層のクラック部を起点に、前記めっき層と前記化成処理皮膜に接している塗膜との間に形成している腐食生成物のうち、腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計が、
条件(2)を満たす<1>~<10>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
-条件(1)-
(A)塩水噴霧処理:35℃で、2時間、5%塩化ナトリウム水溶液を噴霧する塩水噴霧
(B)乾燥処理:60℃で、4時間、乾燥する乾燥処理
(C)湿潤処理:50℃、95%RHで、2時間、湿潤する湿潤処理
ただし、(A)、(B)および(C)の順での処理が一サイクルとする。
-条件(2)-
前記腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)/200(μm)×前記めっき層のクラック部の個数<0.5
<12>
前記塗装めっき鋼板に対して、板温20℃で、鋼板の圧延方向に、板厚の3倍の厚みを曲率半径とする曲げ加工を施した後、CCT-JASO M609に準拠した下記条件(1)で示される複合サイクル腐食試験を15サイクル行った腐食試験片について、
前記めっき層の曲げ方向の縦断面の観察により、
前記腐食試験片の曲げ加工部に形成されている、前記めっき層のクラック部を除く前記めっき層の任意の幅200μmの範囲において、
前記めっき層のクラック部を起点に、前記めっき層と前記化成処理皮膜に接している塗膜との間に形成している腐食生成物のうち、腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計が、
条件(2)を満たす<1>~<10>のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
-条件(1)-
(A)塩水噴霧処理:35℃で、2時間、5%塩化ナトリウム水溶液を噴霧する塩水噴霧
(B)乾燥処理:60℃で、4時間、乾燥する乾燥処理
(C)湿潤処理:50℃、95%RHで、2時間、湿潤する湿潤処理
ただし、(A)、(B)および(C)の順での処理が一サイクルとする。
-条件(2)-
前記腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)/200(μm)×前記めっき層のクラック部の個数<0.5
本発明によれば、有害な六価クロムを利用することなく、曲げ加工、プレス加工等によりめっき層又は塗膜にクラックが生じても、白錆の発生を抑えながら、高い耐食性も有するクロメートフリー型の塗装めっき鋼板が提供できる。
腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)を測定する方法を説明するための模式図である。
以下、本発明の塗装鋼板の一例について説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
「好ましい態様の組み合わせ」は、より好ましい態様である。
本明細書において、「めっき成分として亜鉛のみを含有するめっき層」を「亜鉛めっき層」、めっき成分として亜鉛に加え、アルミニウム、マグネシウム等を含有するめっき層」を「亜鉛合金めっき層」、「亜鉛めっき層」、「亜鉛合金めっき層」および「亜鉛を含有するめっき層」を総称して「亜鉛系めっき層」とも称する。
また、「亜鉛めっき層を有する鋼板」を「亜鉛めっき鋼板」、「亜鉛合金めっき層を有する鋼板」を「亜鉛合金めっき鋼板」、「亜鉛系めっき層を有する鋼板」を「亜鉛系めっき鋼板」とも称する。
本発明の塗装めっき鋼板は、
鋼板と、
前記鋼板の片面または両面に設けられ、亜鉛を含有するめっき層と、
前記鋼板の片面に設けられた前記めっき層上、又は前記鋼板の両面に設けられた前記めっき層の少なくとも一方上に設けられた化成処理皮膜と、
前記化成処理皮膜上に設けられた1層以上の塗膜と、
を有する。
そして、本発明の塗装めっき鋼板は、化成処理皮膜、および、化成処理皮膜に接する塗膜のいずれか、または両方に、シラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基および硫黄含有基のいずれか一つ以上を有するカルボン酸誘導体を、化成処理皮膜固形分または化成処理皮膜に接する塗膜固形分に対して0.5質量%以上40質量%以下の濃度で含有する。
本発明の塗装めっき鋼板は、上記構成により、有害な六価クロムを利用することなく、曲げ加工、プレス加工等によりめっき層又は塗膜にクラックが生じても、白錆の発生を抑えながら、高い耐食性も有するクロメートフリー型の塗装めっき鋼板となる。
本発明の塗装めっき鋼板は、次の知見により見出さされた。
ここで、クロメートフリー型の塗装めっき鋼板において、腐食が発生する界面は、めっき層と化成処理皮膜との界面、めっき層と化成処理皮膜に接する塗膜との界面、化成処理皮膜と化成処理層に接する塗膜との界面のいずれかである。しかし、化成処理皮膜は数十~数百ナノメートルオーダーと化成処理皮膜に接する塗膜に比して小さく、走査型電子顕微鏡による断面観察では明確には界面が特定できない。また、化成処理皮膜の厚みに対し、生成する腐食生成物の厚みの方が厚いため、いずれの界面で腐食生成物が形成されているかを特定できない。よって、特に断りの無い限り、腐食が発生する個所は、めっき層と化成処理皮膜に接している塗膜との間(以下、「化成処理皮膜に接している塗膜」を「下層塗膜」とも称する)とする。つまり、各界面に形成する腐食生成物は、めっき層と下層塗膜との間に形成する腐食生成物と称する。
なお、めっき層と下層塗膜との間には化成処理皮膜を形成しているが、化成処理皮膜は通常ナノメートルオーダーの膜厚であり、膜厚のむらなどが生じた場合、直接、めっき層と塗膜が接することもあるため、めっき層と下層塗膜との界面にも、腐食生成物が形成されることがある。
まず、本発明者らは、曲げ加工、プレス加工等を行った時に白錆が発生しやすい理由について明らかにするべく、次の検討を行った。
一般的なクロメートフリー化成処理と塗装を施した塗装めっき鋼板とクロメート化成処理と塗装を施した塗装めっき鋼板について、曲げ加工を行った塗装めっき鋼板を複合サイクル試験により腐食促進試験を行い、腐食試験後の断面観察を行った。その結果、本発明者らは、次の知見を得た。
一般的なクロメートフリー化成処理を施した場合、亜鉛めっき層を有する亜鉛めっき鋼板を原板とする塗装めっき鋼板(以下「塗装亜鉛めっき鋼板」)と、アルミニウム、マグネシウム等を含有する亜鉛合金めっき層を有する亜鉛合金めっき鋼板を原板とする塗装めっき鋼板(以下「塗装亜鉛合金めっき鋼板」)とでは加工部の腐食挙動に違いがある。
塗装亜鉛めっき鋼板では、曲げ加工部に発生したクラック部から亜鉛めっき層全体が腐食する挙動であった。これに対し、塗装亜鉛合金めっき鋼板においては、曲げ加工により生じためっき層のクラック部を起点として、めっき層と化成処理皮膜に接する塗膜との間も腐食が進行する。これは、亜鉛合金めっき層では、亜鉛よりも酸化性の高い、アルミニウム、マグネシウム等も含むことで、亜鉛めっき層に比べてめっき成分の溶出又は保護性の腐食生成物の形成能が高いこと、めっき層と化成処理皮膜に接する塗膜との間に存在する酸化性の高い特定のめっき層を介してクラック部からめっき層内方へのめっき成分の溶出又は腐食生成物の形成による酸化が進むことで、白錆の発生につながったものと推定された。
一方、クロメートを含有する化成処理及び塗装を施した塗装めっき鋼板については、亜鉛めっき層、アルミニウム、マグネシウム等を含有する亜鉛合金めっき層を有する鋼板に拠らず曲げ加工により生じためっき層又は塗膜のクラック部を起点としためっき層と化成処理皮膜に接する塗膜との間も腐食は進行しにくく、白錆の発生も小さかった。この理由については、クロメート化成処理ではその化成処理皮膜の高い酸化能と、めっき層を構成する金属又はその酸化物と化成処理皮膜との親和性が高いことで、迅速かつ強固に化成処理皮膜がめっき層の表面との結合を形成することができ、これが加工部耐食性に有効である。
さらに、クロメート化成処理液中に含有するシリカ成分との結合性も高いことで、化成処理皮膜とめっき層及び塗膜との強固に結合し、化成処理皮膜とめっき層及び塗膜との結合を一層高めている。よって、クロメート化成処理のような加工部耐食性をクロメートフリー化成処理でも実現するためには、めっき成分と化成処理皮膜及びそれに接する塗膜の両方と高い結合を有する成分を導入することが有効である。
このように、亜鉛めっき鋼板及び亜鉛合金めっき鋼板を原板とする塗装亜鉛系めっき鋼板のいずれにおいても、白錆の抑制には鋼板の耐食性は維持しながら、めっき成分の溶出を適度に制御することが重要である。特に塗装亜鉛合金めっき鋼板においては、めっき層と化成処理皮膜に接する塗膜との間の腐食の進行を抑制することが重要である。
そのためには、従来の塗装亜鉛めっき鋼板に加え、塗装亜鉛合金めっき鋼板においても、アルミニウム、マグネシウム等のめっき成分とも、高い結合性を有する成分として、カルボン酸誘導体が有効であり、かつ化成処理皮膜及び化成処理皮膜に接する塗膜との結合を高める成分として、シラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基、および硫黄含有基のいずれか一つ以上を有していることで、アルミニウム、マグネシウム等を含む塗装亜鉛合金めっき鋼板における加工部耐食性をクロメート化成処理と同等に高め、塗装亜鉛めっき鋼板においても従来のクロメートフリー処理に比べ加工部耐食性を高められる。
より具体的には、次の通りである。
本発明者らは、アルミニウム、マグネシウムを含有する亜鉛合金めっき層を有する亜鉛合金めっき鋼板を原板とする塗装亜鉛合金めっき鋼板における、めっき層と下層塗膜との間の腐食に着目し、詳細に調査検討を行った。そして、本発明者らは、次の知見を得た。
クロメート化成処理又はクロメートフリー化成処理を施した塗装めっき鋼板に曲げ加工を行い、複合サイクル腐食試験を実施した試料を、走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分析装置を用いて、めっき層と下層塗膜との間の腐食状態を観察したところ、曲げ加工によるめっき層のクラック部を起点として、めっき層が腐食し、腐食生成物がクラック部又は塗膜に堆積している。
さらにクロメートフリー化成処理を施した塗装めっき鋼板では、クラック部からめっき層と下層塗膜との間で腐食が進行する。
一方、クロメート化成処理では同様の界面での腐食は見られず、クロメートフリー化成処理における特有の挙動と考えられた。
そこで、本発明者らは、クロメートフリー化成処理において、クロメート化成処理と同様に、めっき層と下層塗膜との間の界面耐食性を実現するべく、クロメート化成処理とクロメートフリー化成処理における違いを検討した。その結果、本発明者らは、次の知見を得た。
クロメート化成処理では、めっき層及び鋼板の表面に、酸素及び水を透過させないバリア効果、クロメート化成処理皮膜表面に疵がついて、めっき層及び鋼板が露出したときの自己修復機能、加えてクロメート化成処理では一般的に含有されることの多い塗膜中のシリカ成分との効果によって、めっき層と化成処理皮膜、及び、化成処理皮膜と化成処理皮膜に接する塗膜が強く結合することで、界面耐食性を高めている。
そして、本発明者らは、このめっき層と下層塗膜との間の界面に着目し、クロメートフリー化成処理でも高い結合を有する手段について鋭意検討した。そして、本発明者らは、これらのめっき層と下層塗膜との間の界面の腐食を抑制するために界面の結合力を高めることに着目をした。そこで、本発明者らは、界面結合性を高める添加物質について鋭意検討した。その結果、次の知見が得られた。
カルボン酸誘導体が亜鉛めっき鋼板と、アルミニウム、マグネシウムを含有する亜鉛合金めっき鋼板に有効であり、さらにカルボン酸誘導体分子中にシラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基又は硫黄含有基を有していると特に効果的である。
カルボン酸誘導体が、アルミニウム、マグネシウム等を含有する亜鉛合金めっき層と界面結合力を高める理由については、カルボン酸誘導体は、めっき層の構成元素である、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの塩基性の表面水酸基に対して酸-塩基反応及び錯形成反応によりめっき層の表面との結合に寄与するためと考えられた。
ただし、カルボン酸誘導体を化成処理皮膜および化成処理皮膜に接する塗膜に導入するだけでは、その効果は不十分であった。すなわち、めっき層の表面と結合するだけでなく、化成処理皮膜及び下層塗膜にも結合することで、めっき層と化成処理皮膜及び下層塗膜を強固に結合することが、めっき層と下層塗膜との間の界面の結合性をより向上するには重要である。カルボン酸誘導体に、シラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基又は硫黄含有基を有していると、これらが化成処理皮膜及び塗膜と結合し、さらにカルボン誘導体がめっき層と結合することで、結果として、めっき層と化成処理皮膜、及び、化成処理皮膜と化成処理皮膜に接する塗膜の結合をより強固なものにすると考えられた。
ここで、シラノール基を有するカルボン酸誘導体は、シラノール基が化成処理皮膜及び化成処理皮膜に接する塗膜の樹脂官能基及び無機成分と結合する。さらにめっき層に対してもシラノール基はめっき層の表面の水酸基が共有結合を形成する。
ビニル基、ビニレン基、アリル基又は硫黄含有基を有するカルボン酸誘導体は、カルボキシル基部分がめっき層との界面結合に寄与する。ビニル基、ビニレン基、又はアリル基は、化成処理皮膜及び下層塗膜とグラフト反応によりさらに強固な結合となることで、めっき層と化成処理皮膜、及び、化成処理皮膜と下層塗膜の界面結合力をさらに高める。硫黄含有基は、めっき層との吸着反応、化成処理膜及び下層塗膜とチオウレタン化反応、並びに、エン・チオール反応により、同様に強固な結合を形成することで、めっき層と化成処理皮膜、及び、化成処理皮膜と下層塗膜の界面結合力をさらに高める。
また、通常、これらのカルボン酸誘導体は、分子中にアルキル基を含有していることも多いが、アルキル基は化成処理皮膜及び下層塗膜中の有機部位との親和性があるため、めっき層と化成処理皮膜、及び、化成処理皮膜と下層塗膜の界面結合力をより高める。
このような複合効果により、シラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基又は硫黄含有基を有するカルボン酸誘導体は、平衡酸素分圧が小さく、表面酸化しやすい、アルミニウムおよびマグネシウムに対しても、酸塩基反応と錯形成反応により、めっき層と化成処理皮膜及び下層塗膜との結合を高め、複合サイクル腐食試験後の曲げ加工部の白錆発生が大きく抑制され、めっき層と下層塗膜との間の界面腐食も抑制できる。
さらに、このシラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基および硫黄含有基のいずれか一つ以上を有するカルボン酸誘導体は、亜鉛めっき層に対しても有効であり、加工部耐食性をさらに高められる。
以上の知見により、本発明の塗装めっき鋼板は、上記構成により、有害な六価クロムを利用することなく、曲げ加工、プレス加工等によりめっき層又は塗膜にクラックが生じても、白錆の発生を抑えながら、高い耐食性も有するクロメートフリー型の塗装めっき鋼板となることが見出された。
以下、本発明の塗装めっき鋼板を詳細に説明する。
<鋼板>
鋼板は、めっき層が形成される対象の鋼板である。鋼板は、特に限定されるものではない。鋼板としては、例えば、極低C型(フェライト主体組織)、Al-k型(フェライト中にパーライトを含む組織)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等のいずれの型の鋼板を用いてもよい。
<亜鉛系めっき層>
亜鉛系めっき層(亜鉛を含有するめっき層)は、亜鉛と共に、不純物を含むめっき層を対象とする。具体的には、亜鉛系めっき層としては、亜鉛めっき層、亜鉛-アルミニウム-マグネシウムめっき層、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム-シリコンめっき層、亜鉛-アルミニウムめっき層、亜鉛-アルミニウム-シリコンめっき層等が挙げられる。
亜鉛系めっき層は、異種金属元素または不純物として、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を少量含有しためっき層も挙げられる。
特に、亜鉛系めっき層は、耐食性の観点から、亜鉛に加え、アルミニウムを含むめっき層、アルミニウムおよびマグネシウムを含有するめっき層であることが好ましい。つまり、亜鉛合金めっき鋼板を原板に用いると、亜鉛めっき鋼板よりも優れた耐食性が得られるので好ましい。
具体的には、亜鉛系めっき層は、アルミニウムを0.5質量%以上60質量%以下で含有し、残部が亜鉛及び不純物からなるめっき層が好ましく、アルミニウムを0.5質量%以上60質量%以下、更にマグネシウムを0.5質量%以上15質量%以下で含有し、残部が亜鉛及び不純物からなるめっき層がより好ましい。
亜鉛、アルミニウム、マグネシウムのいずれも含む亜鉛合金めっき層としては、亜鉛-アルミニウム-マグネシウムめっき層、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム-シリコンめっき層が例示され、各成分の割合によって、Zn-6%Al-3%Mgめっき層、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Siめっき層、Zn-55%Al-2%Mg-1.6%Siめっき層、これらめっき層に微量のNi、Cr、Ti等を含有するめっき層等が種々存在する。
亜鉛系めっき層の形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法でもよい。
亜鉛系めっき層の鋼板片面あたりの付着量は、特に限定されないが、15g・m-2以上140g・m-2以下であることが好ましい。より好ましくは30g・m-2以上90g・m-2以下である。
亜鉛系めっき層の付着量が、15g・m-2未満であると、付着量が小さすぎて不めっき部分が発生し、めっきによる防食効果が発揮されないことがある。また、亜鉛系めっき層の付着量が140g・m-2超であると、耐食性は高いが、めっきが黒く変色する現象は発生しにくい。
<カルボン酸誘導体>
カルボン酸誘導体は、シラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基および硫黄含有基のいずれか一つ以上を有するカルボン酸誘導体が適用される。
カルボン酸誘導体は、カルボン酸に加え、その塩が挙げられる。また、カルボン酸誘導体は、分子中のカルボキシル基の水酸基に他のヘテロ原子が置換した化合物である、酸無水物、ハロゲン化アシル化合物、エステル化合物、アミド化合物、ニトリル化合物等もあげられる。カルボン酸誘導体は、金属(亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等)、及びその酸化物と錯形成することができ、めっき層と下層塗膜との間の界面結合力の向上に寄与する。
シラノール基を有するカルボン酸誘導体において、シラノール基はシランカップリング剤のシリル基に結合したアルコキシ基又はハロゲンが加水分解することで生成する。そのため、シラノール基を有するカルボン酸誘導体は、加水分解前のアルコキシ基やハロゲンが結合した状態のシランを有するカルボン酸誘導体も含む。
シラノール基を有するカルボン酸誘導体は、化成処理皮膜中又は化成処理皮膜に接する下層塗膜中の反応基と重合したり、シラノール基同士が自己縮合したシロキサン結合となることで、分子同士を連結する。また、シラノール基を有するカルボン酸誘導体は、めっき層及び鋼板の金属、並びに、その酸化物の水酸基と脱水縮合することで結合する。そのため、めっき層と下層塗膜との間の界面結合力の向上に寄与する。
シラノール基を有するカルボン酸誘導体は、特に限定されないが、具体例としては、(3-トリエトキシシリル)プロピルこはく酸無水物、(3-トリメトキシシリル)プロピルこはく酸無水物、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミントリアセテート三ナトリウム塩等が挙げられる。また、シランカップリング剤とカルボン酸塩を反応させることで、一分子中にシラノール基とカルボン酸誘導体基の両方を有する物質も挙げられる。
ビニル基、ビニレン基、又はアリル基を有するカルボン酸誘導体は、特に限定されないが、具体例としては、アンゲリカ酸無水物、アリルこはく酸無水物、3-アセトアミドフタル酸無水物、2-ブテン-1-イルこはく酸無水物、クロトン酸無水物、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、2-ドデセン-1-イルこはく酸無水物、イタコン酸無水物、2-オクテニルこはく酸無水物、オレイン酸無水物、(2,7-オクタジエン-1-イル)こはく酸無水物、フマルアルデヒド酸メチル、クロトン酸メチル、3-メトキシアクリル酸メチル、1-(カルバモイルメチル)シクロヘキサン酢酸、こはく酸アミド、スクシンアミド酸メチルなどが挙げられる。
硫黄含有基を有するカルボン酸誘導体において、硫黄含有基としては、次の基が挙げられる。
1)スルフィド(-S-)を有する基(例えば、チオフェン環基、ジチイン環基、チアゾリル基、又はこれらの縮合環基)
2)ジスルフィド(-S-S-)を有する基
3)チオール基(-SH)
4)アルキルチオ基(-SR:R=アルキル基)
5)アリールチオ基(-SAr:Ar=アリール基)
6)チオカルボン酸基(チオ酢酸、チオプロピオン酸、チオグリコール酸等)、チオカルボン酸のアルキルエステル基、チオカルボン酸の塩)
硫黄含有基を有するカルボン酸誘導体は、特に限定されないが、具体例としては、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジカルボン酸無水物、(アセチルチオ)酢酸、3-(アセチルチオ)プロピオン酸、S-(N,N-ジメチルチオカルバモイル)チオグリコール酸、メチレンビス(チオグリコール酸)、3-(メチルチオ)プロピオン酸、2,2‘-チオジグリコール酸、S-アリル-L-システイン、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)、4,4‘-ジチオ二酪酸、(メチルチオ)酢酸エチル、3-(メチルチオ)プロピオン酸エチル、3-[(2-メトキシ-2-オキソエチル)チオ]プロピオン酸メチル、(メチルチオ)酢酸メチル、3-メチルチオフェン-2-カルボン酸メチル、3-(メチルチオ)プロピオン酸メチル、酢酸メチルチオメチル、5-メチル-2-チオフェンカルボン酸、3-(メチルチオ)プロピオン酸、酢酸3-(メチルチオ)プロピルが挙げられる。
シラノール基、ビニル基、ビニレン基、アリル基および硫黄含有基のいずれか一つ以上を有するカルボン酸誘導体の含有量は、化成処理皮膜固形分または下層塗膜固形分に対して、0.01質量%以上40質量%以下(好ましくは0.5質量%以上40質量%以下)である。
カルボン酸誘導体の含有量が0.01質量%未満であると、めっき層と下層塗膜との間の界面結合性の向上を十分に高められない場合がある。
カルボン酸誘導体の含有量が40質量%超であると、カルボン酸誘導体の含有量が高すぎて他成分の割合が低くなり、耐食性以外の性能を十分に得ることが難しくなる場合がある。
より好ましくは、カルボン酸誘導体の含有量は、化成処理皮膜においては1質量%以上30質量%以下、下層塗膜においては0.5質量%以20質量%以下である。さらに好ましくは、カルボン酸誘導体の含有量は、化成処理皮膜においては1質量%以上20質量%以下、下層塗膜においては0.5質量%以上10質量%以下である。
<化成処理皮膜(以下、「皮膜」とも称する)>
化成処理皮膜は、めっき鋼板表面に付着した油分などの不純物及び表面酸化物を脱脂工程及び洗浄工程で取り除いた後、化成処理により形成する。
化成処理皮膜は、樹脂、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物、シリカ、りん酸及びその塩、ふっ化物、並びに、バナジウム化合物から選択されるいずれか一つ以上を含んでもよい。これら物質を含むと、さらに、化成処理液塗布後の成膜性、水分や腐食性イオン等の腐食因子に対する皮膜のバリア性(緻密性)、めっき面への皮膜密着性などが向上し、皮膜の耐食性の底上げに寄与する。
特に、化成処理皮膜が、シランカップリング剤、およびジルコニウム化合物のいずれか一つ以上を含むと、皮膜に架橋構造を形成し、さらにめっき表面との結合も強化するため、皮膜の密着性やバリア性を高めることができる。
また、化成処理皮膜が、シリカ、りん酸及びその塩、ふっ化物、並びに、バナジウム化合物のいずれか一つ以上を含むと、インヒビターとして、めっきや鋼表面に沈殿皮膜や不動態皮膜を形成することで、耐食性を向上することができる。
[樹脂]
樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の有機樹脂を使用することができる。めっき鋼板との密着性を更に高めるためには、分子鎖中に強制部位や極性官能基をもつ樹脂(ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等)の少なくとも一つを使用することが好ましい。樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂の含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上85質量%以下が好ましい。より好ましくは0質量%以上60質量%以下、より好ましくは、1質量%以上40質量%以下である。樹脂の含有量が、85質量%超であると、その他の皮膜構成成分の割合が低下し、耐食性以外の皮膜として求められる性能が低下する場合がある。
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤としては、前述のシラノール基を有するカルボン酸誘導体以外の化合物であり、種々のシラン化合物を用いることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル〔3-(メチルジエトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランなどが挙げられる。
これらの中でも、シランカップリング剤として、グリシジルエーテル基を有するシランカップリング剤(例えば、グリシジルエーテル基を有するγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)を使用すると、下層塗膜の加工密着性が特に向上する。更に、トリエトキシタイプのシランカップリング剤を使用すると、下地処理剤の保存安定性を向上させることができる。これは、トリエトキシシランが水溶液中で比較的安定であり、重合速度が遅いためであると考えられる。
シランカップリング剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
[ジルコニウム化合物]
ジルコニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモ二ウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムナトリウム等が挙げられる。
ジルコニウム化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、炭酸ジルコニウム化合物は、樹脂と架橋反応し、ジルコニウムと樹脂との架橋構造を有する皮膜を形成する。また、炭酸ジルコニウム化合物は、塗布して乾燥させる際に炭酸イオンが揮発し、残ったジルコニウム同士が酸素を介して結合し、高分子量化する。この過程で-Zr-OH基がめっき層の表面とZr-O-M結合(M:めっき層中の金属元素)を形成する。
[シランカップリング剤及びジルコニウム化合物の合計の含有量]
シランカップリング剤及びジルコニル塩の含有量は、皮膜中に5質量%以上80質量%以下で含有することが好ましい。より好ましくは、20質量%以上70質量%である。含有量が5質量%未満であると、基材との密着性や耐食性の向上効果が得られない場合があり、80質量%超であると、加工性が低下する場合がある。
[シリカ]
シリカとは、微細な粒径を持つために水中に分散させた場合に安定に水分散状態を維持できるシリカを総称して言うものである。シリカは、塗装めっき鋼板の耐食性を向上させるとともに、下層塗膜の密着性を向上させるのに有効である。
シリカとしては、特に制限はないが、例えば、一次粒子径が5~50nmのコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ微粒子であることが好ましい。シリカとしては、例えば、「スノーテックスN」、「スノーテックスC」、「スノーテックスUP」、「スノーテックスPS」(いずれも日産化学工業製)、「アデライトAT-20Q」(旭電化工業製)など市販のシリカゲル、又はアエロジル#300(日本アエロジル製)などの粉末シリカ、などを用いることができる。シリカは、必要とされる性能に応じて、適宜選択すればよい。
シリカは1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上30質量%以下が好ましい。より好ましくは、1質量%以上20質量%以下である。シリカの含有量が、30質量%超であると、皮膜が脆くなり、塗装めっき鋼板を成形加工する際の加工追従性が低下する場合がある。
[りん酸及びその塩]
りん酸及びその塩としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類及びそれらの塩;リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類及びそれらの塩;フィチン酸等の有機リン酸類及びそれらの塩等が挙げられる。なお、りん酸の塩として、アンモニウム塩以外の塩としては、Na、Mg、Al、K、Ca、Mn、Ni、Zn、Fe等との金属塩が挙げられる。
りん酸及びその塩は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
りん酸及びその塩の含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上20質量%以下が好ましい。より好ましくは、1質量%以上10質量%以下である。
りん酸及びその塩の含有量が、20質量%超であると、皮膜が脆くなり、塗装めっき鋼板を成形加工する際の皮膜の加工追従性が低下する場合がある。
[ふっ化物]
ふっ化物としては、例えば、ジルコンフッ化アンモニウム、ケイフッ化アンモニウム、チタンフッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、チタンフッ化水素酸、ジルコンフッ化水素酸などが挙げられる。
ふっ化物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ふっ化物の含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上20質量%以下が好ましい。より好ましくは、1質量%以上10質量%以下である。ふっ化物の含有量が20質量%超であると、皮膜が脆くなり、塗装めっき鋼板を成形加工する際の皮膜の加工追従性が低下する場合がある。
[バナジウム化合物]
バナジウム化合物としては、例えば、五酸化バナジウム、メタバナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウム等の5価のバナジウム化合物を還元剤で2~4価に還元したバナジウム化合物;三酸化バナジウム、二酸化バナジウム、オキシ硫酸バナジウム、オキシ蓚酸バナジウム、バナジウムオキシアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、三塩化バナジウム、リンバナドモリブデン酸、硫酸バナジウム、二塩化バナジウム、酸化バナジウム等の酸化数4~2価のバナジウム化合物等が挙げられる。
バナジウム化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
バナジウム化合物の含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上20質量%以下が好ましい。より好ましくは、1質量%以上10質量%以下である。バナジウム化合物の含有量が20質量%超であると、皮膜が脆くなり、塗装めっき鋼板を成形加工する際の皮膜の加工追従性が低下する場合がある。
[化成処理剤の形成方法]
化成処理剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、各々の皮膜形成成分を混合し、ディスパーで攪拌し、溶解もしくは分散する方法が挙げられる。各々の皮膜形成成分の溶解性、又は分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等を添加してもよい。化成処理剤中には、その性能が損なわれない範囲内で、pH調整のために酸、アルカリ等を添加してもよい。
化成処理皮膜を形成するには、化成処理剤をめっき鋼板に塗布し、塗布膜を加熱乾燥する。
化成処理剤の塗布方法は、特に限定されず、一般に公知の塗装方法、例えば、ロールコート、エアースプレー、エアーレススプレー、浸漬などを利用する方法が可能である。
加熱乾燥温度としては、50~250℃がよい。50℃未満では、水分の蒸発速度が遅く充分な成膜性が得られないので、防錆力が不足することがある。250℃を超えると、有機物であるシランカップリング剤のアルキル部分が熱分解等のため変性を起こし、密着性や耐食性が低下することがある。加熱温度は70~160℃がより好ましい。
加熱乾燥方法は、特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独又は組み合わせた方法が挙げられる。例えば、熱風乾燥を利用する場合、加熱乾燥時間は1秒~5分が好ましい。
[めっき鋼板片面あたりの化成処理皮膜の付着量]
めっき鋼板片面あたりの化成処理皮膜の付着量は、固形分にして10~1000mg/mが好ましい。10mg/m未満では充分な加工密着性と耐食性が確保されず、1000mg/mを超えると加工密着性が低下することがある。
めっき鋼板片面あたりの化成処理皮膜の付着量は、より好ましくは20~800mg/m、最も好ましくは50~600mg/mである。
<塗膜>
塗膜は、化成処理皮膜の上に形成する、1層以上の膜である。塗膜は、塗装めっき鋼板片面につき1~3層設けることが多い。塗膜が2層以上の複層の場合は、化成処理皮膜に接する塗膜(下層塗膜)は特にプライマー塗膜と呼ばれることもあり、塗膜と化成処理皮膜との密着性及び耐食性の担保を目的とすることが多い。一方、上層の塗膜は、着色による意匠性やバリア性、その他の表面機能性の担保を目的とすることが多い。なお、ここで示す塗膜とは、特に断らない限りは、化成処理皮膜と接する塗膜を示すものとする。
塗膜は、例えば、樹脂を含む。塗膜は、顔料を含むことが好ましい。塗膜には、これらの成分以外にも、レベリング剤、消泡剤、着色剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含んでもよい。なお、塗膜を形成するための塗布液は、溶剤に、上記各成分を分散又は溶解して得ることが好ましい。
[樹脂]
樹脂は、特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂が挙げられる。
樹脂としては、これら樹脂を、ブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチルメチル混合メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート樹脂、又はこれらの混合系の架橋剤成分により架橋させた樹脂も挙げられる。
樹脂としては、電子線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂なども挙げられる。
これらの中でも、バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、および、ウレタン樹脂のいずれか一つ以上が好ましい。
これらのバインダー樹脂は単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
樹脂の含有量は、塗膜固形分に対して、20~90質量%が好ましい。樹脂の含有量が20質量%未満であると、マトリックスとなる成分が少ないため、加工等によりクラック等が生じやすく、耐食性等へ影響も生じることがある。また、顔料の含有量が90質量%を超えると、防錆顔料などの含有が少ないため、塗膜としての耐食性や密着性を担保できないことがある。加工性と耐食性等の観点から、樹脂の含有量は、30~80質量%がより好ましい。
[顔料]
顔料としては、防錆顔料、着色顔料、体質顔料とに大別される。
防錆顔料として、バナジン酸塩、タングステン酸塩、けい酸塩、りん酸塩等が挙げられる。
着色顔料としては、公知の無機及び有機着色顔料が挙げられる。無機着色顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。有機着色顔料としてはハンザエロー、ピラゾロンオレンジ、フタロシアニン、アゾ系顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
これらの中でも、耐食性の向上の観点から、顔料としては、防錆顔料が好ましい。つまり、下層塗膜は、バナジン酸塩、タングステン酸塩、けい酸塩、および、りん酸塩のいずれか一つ以上を含むことが好ましい。
ここで、バナジン酸塩としては、バナジン酸カルシウム、バナジン酸マグネシウム、メタバナジン酸アンモニウム、バナジン酸カリウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸りん、酸化バナジウム等が挙げられる。
タングステン酸塩としては、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸マグネシウム等が挙げられる。
けい酸塩としては、けい酸ナトリウム、けい酸カリウム、けい酸リチウム、カルシウムイオン交換シリカ等が挙げられる。
りん酸塩としては、りん酸二水素ナトリウム、りん酸二水素カリウム、りん酸水素二カリウム、トリポリりん酸ナトリウム、トリポリりん酸アルミニウム、トリポリりん酸マグネシウム、りん酸二水素ナトリウム一水和物、りん酸二水素ナトリウム二水和物、次亜りん酸カルシウム等が挙げられる。
顔料の含有量は、塗膜固形分に対して、5~70質量%が好ましい。顔料の含有量が5質量%未満であると、塗膜の剛性と凝集力とが低下することにより、塗装めっき鋼板のプレス加工の際に塗膜表面が金型と擦れた時に塗膜剥離が発生(塗膜齧り)しやすくなることがある。また、顔料の含有量が70質量%を超えると、加工性が低下することがある。耐食性、耐薬品性および加工性のバランスの観点から、顔料の含有量は、15~70質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
[塗膜の膜厚]
塗膜の膜厚は、4μm以上(例えば4~50μm)が好ましい。塗膜の膜厚とは、塗膜が複層の場合、複層の合計の膜厚を意味する。
ただし、塗膜が複層の場合、下層塗膜(化成処理皮膜に接する塗膜)は4~15μmが好ましい。膜厚が4μm未満であると、十分な耐食性および耐薬品性が得られないことがある。一方、膜厚が15μmを超えると、加工性が低下することがある。耐食性、耐薬品性、および加工性の良好なバランスの観点から、下層塗膜の膜厚は、4~10μmの範囲がより好ましい。
また、下層塗膜よりも上層の塗膜の膜厚は5~30μmが好ましい。膜厚が5μm未満では耐薬品性や耐食性が低下することが懸念されるばかりでなく、色の隠蔽性が低下し、意匠性が十分に得られないことがある。また、膜厚が30μmを超えると加工性が悪くなる。上層の塗膜の厚みは、10~25μmであることがより好ましい。
なお、上層の塗膜が複層の場合、上層の塗膜の膜厚とは、各塗膜の膜厚を意味する。
[塗膜の形成方法]
塗膜は、塗布液を塗布後、塗布膜を乾燥及び硬化して形成する。
塗膜の塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、浸漬法、カーテンフロー法、ロールコート法、バーコート法、静電法、刷毛塗り法、T-ダイ法、ラミネート法、スプレー法などが挙げられる。また、ウェット・オン・ウェットコート法、多層同時コート法も挙げられる。
加熱及び硬化は、熱風、近赤外線、遠赤外線、高周波誘導加熱、これらの複合による加熱法など、任意の方法が適用可能である。
<塗装めっき鋼板の特性>
塗装めっき鋼板は、次の特性(耐食特性)を有することが好ましい。
塗装めっき鋼板に対して、板温20℃で、鋼板の圧延方向に、板厚の3倍の厚みを曲率半径とする曲げ加工を施した後、CCT-JASO M609に準拠した下記条件(1)で示される複合サイクル腐食試験を30サイクル又は15サイクル行った腐食試験片について、
めっき層の曲げ方向の縦断面の観察により、
腐食試験片の曲げ加工部に形成されている、めっき層のクラック部を除くめっき層の任意の幅200μmの範囲において、
めっき層のクラック部を起点に、めっき層と化成処理皮膜に接している塗膜との間に形成している腐食生成物のうち、腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計が、条件(2)を満たす特性。
-条件(1)-
(A)塩水噴霧処理:35℃で、2時間、5%塩化ナトリウム水溶液を噴霧する塩水噴霧
(B)乾燥処理:60℃で、4時間、乾燥する乾燥処理
(C)湿潤処理:50℃、95%RHで、2時間、湿潤する湿潤処理
ただし、(A)、(B)および(C)の順での処理が一サイクルとする。
-条件(2)-
腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)/200(μm)×めっき層のクラック部の個数<0.5
本耐食特性を満たす塗装めっき鋼板は、クロメートフリー化成処理を施した塗装めっき鋼板でも、曲げ加工、プレス加工等でめっき層にクラックが生じてもめっき層と下層塗膜との界面腐食が抑制され、白錆の発生が抑制され易くなる。
ここで、「めっき層のクラック部を除くめっき層の任意の幅200μm」とは、基準となる任意のめっき層のクラック部の上端縁部を起点とするめっき層の幅200μmの領域(図1中、a+b=200μm参照)を示す。
また、腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)は、「めっき層のクラック部を除くめっき層の任意の幅200μm」において、めっき層と下層塗膜との間に形成されている、厚み2μm以上の腐食生成物が形成されている領域の長さの合計((図1中、c+d+e=長さの合計参照)を示す。
また、めっき層と化成処理皮膜に接している塗膜との間に形成している腐食生成物が、クラック部から連続して形成せずに断片的に形成していたり、領域によって厚みが異なる場合、条件(2)における「腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)」は、厚みが2μm以上である腐食性生物の領域の長さのみを合計したものとする。
さらに、めっき層と化成処理皮膜に接している塗膜との間に形成している腐食生成物は、通常、塗装亜鉛系合金めっき鋼板においてみられる腐食挙動であるが、腐食が進行すると塗装亜鉛めっき鋼板と同様、めっき層全体も腐食する。つまり、条件(2)における「腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)」は、めっき層が完全に腐食していない領域の直上に生成している腐食性生物を示している。
なお、耐食特性のその他条件については、後述する実施例で示す通りである。
ここで、図1中、Aは基準となる任意のめっき層のクラック部の上端縁部、Bは基準となる任意のめっき層のクラック部に隣接するめっき層のクラック部の上端縁部を示す。
また、10は鋼板、12はめっき層、14は化成処理皮膜、16Aは下層塗膜、16Bは下層塗膜上に有する塗膜(上層塗膜)、18は腐食性生物を示す。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
(1)亜鉛系めっき鋼板
表1に示す、両面に亜鉛系めっき層を有する亜鉛系めっき鋼板を準備した。亜鉛系めっき鋼板には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。亜鉛系めっき鋼板は、表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥して使用した。
(2)化成処理皮膜の形成
化成処理皮膜を形成するための化成処理剤は、表2から表5および表15から表16に示すカルボン酸誘導体と、表6に示す樹脂、表7に示すシランカップリング剤、表8に示すジルコニウム化合物、表9に示すシリカ、表10に示すりん酸及びその塩、表11に示すふっ化物、表12に示すバナジウム化合物を、表17に示す配合量(乾膜濃度=化成処理膜の固形分に対する質量%)で配合し、分散機を用いて攪拌することで調製した。
次いで、前記(1)で準備した亜鉛系めっき鋼板の両面に片面あたり100mg/mの付着量になるようにロールコーターで、化成処理剤を塗装し、100℃の鋼板到達温度で乾燥させることで化成処理皮膜を形成した。
なお、表17中の化成処理皮膜の各成分の含有量(乾膜の濃度)は、皮膜固形分に対する質量%である。
(3)塗膜
塗膜を形成するための塗布液は、表2から表5および表15から表16に示すカルボン酸誘導体と、表13に示す樹脂、表14に示す顔料を、表17に示す配合量(乾膜濃度=塗膜の固形分に対する質量%)で配合し、分散機を用いて攪拌することで調製した。
次いで、前記(2)で準備した、化成処理皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板の両面に所定の膜厚になるようにロールコーターで、塗布液を塗装し、220℃の鋼板到達温度で乾燥させることで塗膜を形成した。
なお、塗膜が2層の場合は、さらに化成処理皮膜に接する塗膜(下層塗膜)上に、日本ペイントコーティングス社製FLC100塗料を15μmになるようにロールコーターで塗装し、230℃の基板到達温度で乾燥させることで塗膜を形成した。
なお、表17中の塗膜の各成分の含有量(乾膜の濃度)は、塗膜固形分に対する質量%である。
(4)評価方法及び評価基準
上記(3)で得られた塗装めっき鋼板から試験板を採取し、試験板について、下記に示す評価方法および評価基準にて評価した。
(クロスカット白錆幅)
試験板(50×100mmサイズ)の端面をテープシールし、鋼板にカッターナイフで鋼板素地まで疵がつくようにクロスカットを入れた後、CCT-JASO M609に準拠した複合サイクル腐食試験を60サイクル実施した。試験後の試験板のクロスカットからのめっきの白錆幅の最大値を測定し、下記の評価基準で評価した。
評点5:白錆幅が2mm未満
評点4:白錆幅が2mm以上4mm未満
評点3:白錆幅が4mm以上6mm未満
評点2:白錆幅が6mm以上8mm未満
評点1:白錆幅が8mm以上
(エリクセン加工部の白錆)
試験板(50×100mmサイズ)の端面をテープシールした後、試験板中央に6mmのエリクセン押し出しを行い、CCT-JASO M609に準拠した複合サイクル腐食試験を60サイクル実施した。試験後の試験板のエリクセン加工により押し出された円形部におけるめっき白錆割合を測定し、下記の評価基準で評価した。
評点5:白錆の面積割合が20%未満
評点4:白錆の面積割合が20%以上30%未満
評点3:白錆の面積割合が30%以上40%未満
評点2:白錆の面積割合が40%以上50%未満
評点1:白錆の面積割合が50%以上
(耐食特性(条件式(2)の値))
板温20℃で、鋼板の圧延方向(L方向)に、試験板を、同じ板厚の試験板が6枚重ねられた積層鋼板に挟むようにして板厚の3倍の厚みを曲率半径とするU字曲げ加工を施した。
次に、曲げ加工を施した試験板の端部をシールした後、折り曲げ面を鉛直上向きになるように固定した。そして、その状態で、試験板に対して、CCT-JASO M609に準拠し、既述した条件(1)に示す複合サイクル腐食試験を30サイクル又は15サイクル実施した。
次に、試験板のめっき層の曲げ方向の縦方向(つまり、めっき層の曲げ方向、かつ、めっき層の厚み方向に沿った方向)に沿って切断した。
次に、切断した試験板の縦断面(つまり、めっき層の曲げ方向、かつ、めっき層の厚み方向に沿った方向に沿って切断した断面)を走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分析により元素分析し、めっき層、化成処理皮膜、塗膜と共に、腐食生成物を同定した。
次に、めっき層のクラック部を除くめっき層の任意の幅200μmの範囲において、腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計を測定した。そして、既述の条件(2)の左辺(腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)/200(μm)×めっき層のクラック部の個数)を下記基準で評価した。
評点5:条件(2)の左辺が0.2未満
評点4:条件(2)の左辺が0.2以上0.3未満
評点3:条件(2)の左辺が0.3以上0.4未満
評点2:条件(2)の左辺が0.4以上0.5未満
評点1:条件(2)の左辺が0.5以上
なお、条件(1)に示す複合サイクル腐食試験を30サイクル実施した結果は、表17の「条件(2)<0.5(30cycle)」の欄に表記する。
また、条件(1)に示す複合サイクル腐食試験を15サイクル実施した結果は、表17の「条件(2)<0.5(15cycle)」の欄に表記する。
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、有害な六価クロムを利用することなく、曲げ加工、プレス加工等によりめっき層又は塗膜にクラックが生じても、白錆の発生を抑えながら、高い耐食性も有することがわかる。

Claims (12)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板の片面または両面に設けられ、亜鉛を含有するめっき層と、
    前記鋼板の片面に設けられた前記めっき層上、又は前記鋼板の両面に設けられた前記めっき層の少なくとも一方上に設けられた化成処理皮膜と、
    前記化成処理皮膜上に設けられた1層以上の塗膜と、
    を有し、
    前記化成処理皮膜、および、前記化成処理皮膜に接する塗膜のいずれか、または両方に、シラノール基、ビニル基、ビニレン基、及びアリル基のいずれか一つ以上を有するカルボン酸誘導体を、前記化成処理皮膜固形分または前記化成処理皮膜に接する塗膜固形分に対して0.01質量%以上40質量%以下の濃度で含有する塗装めっき鋼板。
  2. 前記カルボン酸誘導体を、前記化成処理皮膜固形分または前記化成処理皮膜に接する塗膜固形分に対して0.5質量%以上40質量%以下の濃度で含有する請求項1に記載の
    塗装めっき鋼板。
  3. 前記めっき層が、アルミニウムを0.5質量%以上60質量%以下で含有し、残部が亜鉛及び不純物からなる請求項1又は請求項2に記載の塗装めっき鋼板。
  4. 前記めっき層が、更にマグネシウムを0.5質量%以上15質量%以下で含有する請求項3に記載の塗装めっき鋼板。
  5. 前記化成処理皮膜に接する塗膜の平均膜厚が、4μm以上である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
  6. 前記化成処理皮膜に接する塗膜が、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、および、ウレタン樹脂のいずれか一つ以上を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
  7. 前記化成処理皮膜に接する塗膜が、バナジン酸塩、タングステン酸塩、けい酸塩、および、りん酸塩のいずれか一つ以上を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
  8. 前記化成処理皮膜が、シランカップリング剤、およびジルコニウム化合物のいずれか一つ以上を含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
  9. 前記化成処理皮膜が、シリカ、りん酸及びその塩、ふっ化物、並びに、バナジウム化合物のいずれか一つ以上を含む請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
  10. 前記化成処理皮膜が、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂のいずれか一つ以上を含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
  11. 前記塗装めっき鋼板に対して、板温20℃で、鋼板の圧延方向に、板厚の3倍の厚みを曲率半径とする曲げ加工を施した後、CCT-JASO M609に準拠した下記条件(1)で示される複合サイクル腐食試験を30サイクル行った腐食試験片について、
    前記めっき層の曲げ方向の縦断面の観察により、
    前記腐食試験片の曲げ加工部に形成されている、前記めっき層のクラック部を除く前記めっき層の任意の幅200μmの範囲において、
    前記めっき層のクラック部を起点に、前記めっき層と前記化成処理皮膜に接している塗膜との間に形成している腐食生成物のうち、腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計が、
    条件(2)を満たす請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
    -条件(1)-
    (A)塩水噴霧処理:35℃で、2時間、5%塩化ナトリウム水溶液を噴霧する塩水噴霧
    (B)乾燥処理:60℃で、4時間、乾燥する乾燥処理
    (C)湿潤処理:50℃、95%RHで、2時間、湿潤する湿潤処理
    ただし、(A)、(B)および(C)の順での処理が一サイクルとする。
    -条件(2)-
    前記腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)/200(μm)×前記めっき層のクラック部の個数<0.5
  12. 前記塗装めっき鋼板に対して、板温20℃で、鋼板の圧延方向に、板厚の3倍の厚みを曲率半径とする曲げ加工を施した後、CCT-JASO M609に準拠した下記条件(1)で示される複合サイクル腐食試験を15サイクル行った腐食試験片について、
    前記めっき層の曲げ方向の縦断面の観察により、
    前記腐食試験片の曲げ加工部に形成されている、前記めっき層のクラック部を除く前記めっき層の任意の幅200μmの範囲において、
    前記めっき層のクラック部を起点に、前記めっき層と前記化成処理皮膜に接している塗膜との間に形成している腐食生成物のうち、腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計が、
    条件(2)を満たす請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の塗装めっき鋼板。
    -条件(1)-
    (A)塩水噴霧処理:35℃で、2時間、5%塩化ナトリウム水溶液を噴霧する塩水噴霧
    (B)乾燥処理:60℃で、4時間、乾燥する乾燥処理
    (C)湿潤処理:50℃、95%RHで、2時間、湿潤する湿潤処理
    ただし、(A)、(B)および(C)の順での処理が一サイクルとする。
    -条件(2)-
    前記腐食生成物の厚みが2μm以上である領域の長さの合計(μm)/200(μm)×前記めっき層のクラック部の個数<0.5
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