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JP7415532B2 - コンクリート構造物の補修工法 - Google Patents
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Description

本発明は、下面を含むコンクリート表面に劣化部分が生じたコンクリート構造物の補修工法に関する。
従来より、コンクリート構造物の長寿命化が求められており、これを実現するべく、高強度に加えて中性化、塩害、凍害等に対して高い耐久性を有する材料の一つとして、超高強度繊維補強コンクリートが開発されている。超高強度繊維補強コンクリート(Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete, UFC)は、超高強度モルタルと、超高強度モルタルに高い靱性やひび割れ抑制機能を付与する高強度鋼繊維と、により構成された、耐久性100年対応の高性能コンクリートである。
ところが、超高強度繊維補強コンクリートを構成する超高強度モルタルは、高い圧縮強度を発現するために熱養生が必要とされるものが一般的である。このため、現場打設ではなく2次製品として利用される場合が多く、例えば修復用パネル材として数多くのコンクリート構造物の補修工法に採用されている。
このような中、常温養生であっても高い圧縮強度を発現することのできる超高強度モルタルとして、特許文献1~特許文献5で示す高強度モルタル組成物が開発されている。特許文献1の高強度モルタル組成物は、特定の粒度分布を有しC3S、C3Aを含有するセメントと、特定の粒度を有する細骨材及び無機質微粉末と、シリカフュームと、減水剤と、消泡剤とを組み合わせることにより、流動性の向上と、常温養生による強度向上を可能にしている。
特許第5336300号公報 特許第5702608号公報 特許第5592806号公報 特許第5592807号公報 特許第5997807号公報
このような特許文献1~5の超高強度モルタル組成物に、高強度鋼繊維を添加した超高強度繊維補強コンクリートは、常温養生型であることから、流し込みによる現場打設方法であれば、例えば上面断面修復工のようなコンクリート構造物の補修工法に採用し、薄肉化を図りつつ、補修後のコンクリート構造物に対して高い耐久性を確保することが可能である。
その一方で、例えばコンクリート床版の下面を補修するような、下面断面修復工に、上記の超高強度繊維補強コンクリートを適用しようとすると、その打設方法として、左官工法、吹付工法、床版の上面や側面からの充填流し込み工法、圧入充填工法が挙げられる。しかし、左官工法では、コンクリート床版の下面における広い範囲を補修しようとすると多大な人力と作業時間を有し、吹付工法では、粉塵やリバウンド材が施工現場周辺に飛散しやすく、環境保全の点で課題を有する。床版の上面や側面からの充填流し込み工法では、床版の上部から施工するため、床版上部を供用しながら施工することに制限が生じる。また、普通の圧縮強度のモルタルを圧入充填する場合、断面修復では、必要な耐久性を確保することが困難である。
これらの不具合を解消できる方法が圧入充填工法であるが、超高強度繊維補強コンクリートを構成する高強度鋼繊維が、ポンプ圧送に用いるホースに刺さるもしくは繊維ダマになって詰まるなどして、圧入充填作業に支障が生じる。このように、下面断面修復工に、超高強度繊維補強コンクリートをそのまま採用するには、多くの課題が生じている。
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、コンクリート構造物の下面を含むコンクリート表面を補修するにあたり、断面厚さを同等以下に抑えつつ長寿命化を実現することの可能な、圧入充填工法によるコンクリート構造物の補修工法を提供することである。
かかる目的を達成するため、本発明のコンクリート構造物の補修工法は、コンクリート構造物の下面を含むコンクリート表面に生じた劣化部分をはつり取ったのち、はつり面に対向して型枠を配置し、該型枠と前記はつり面との間に、補修材を圧入充填するコンクリート構造物の補修工法において、前記補修材が、圧縮強度100N/mm2以上のセメント系組成物と、収縮低減材料及び/又は膨張材と、非鉄繊維と、を含み、前記セメント系組成物1m3当たりの前記収縮低減材料の単位量は、10~60kg/m3であり、前記セメント系組成物1m3当たりの前記膨張材の単位量は、10~40kg/m3であり、前記セメント系組成物に対して外割りで、前記非鉄繊維を0.01~4.0vol.%混入し、前記セメント系組成物が、セメント、シリカフューム、水、減水剤、消泡剤、細骨材、及び無機質微粉末を含み、前記細骨材と前記無機質微粉末との混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40~80質量%、かつ、粒径0.075m m以下の粒群を30~80質量%含有され、セメント及びシリカフュームの合計量100質量%に対して、無機質微粉末を10~60質量%含むことを特徴とする。
本発明のコンクリート構造物の補修工法によれば、補修材に超高強度モルタルとして、圧縮強度100N/mm2以上のセメント系組成物と、収縮低減材料及び/又は膨張材を含む材料を採用する。これにより、補修材を圧入充填する際に充填厚さを薄くして薄肉施工を行っても、硬化後の補修材に生じやすい自己収縮や乾燥収縮ひび割れを、収縮低減材料及び/又は膨張材により抑制できる。そして、非鉄繊維をさらに含むことから、非鉄繊維の架橋効果により、不慮の事態によりひび割れが生じた場合にも、剥落を抑制することが可能となる。また、高強度鋼繊維のように重量増加もないため、セメント組成物の耐久性を高めつつ軽量化を維持することが可能となる。さらに、耐久性を確保できるため、鉄筋のかぶり厚さを低減できる。加えて、断面修復した構造物の表面に露出した鉄繊維の錆により、美観を損ねることがない。
したがって、水分や塩分等の劣化因子の侵入を抑制でき、高強度鋼繊維を用いることなく、補修後のコンクリート構造物に、超高強度繊維補強コンクリートを補修材に採用した場合と同等の高い耐久性を確保することが可能となる。また、薄肉化に伴って軽量化を図ることもできるため、補修後のコンクリート構造物において設計荷重の変更も不要となる。
さらに、高強度鋼繊維を使用しないため、補修材の圧入充填作業に、スクイーズ式ポンプ等の小型ポンプを採用することができる。これにより、作業空間が狭隘である等制約のある環境にあっても、効率よく補修作業を行うことが可能となる。また、高強度鋼繊維を採用する場合のように、繊維ダマができにくくホースを痛めることもなく、現場での圧入充填作業の施工性を大幅に向上することが可能となる。
また、型枠を用いて補修材を圧入充填するため、吹付工法で補修する場合と比較して、リバウンド材や粉塵が周辺に飛散することなく、例えば、補修対象が、海上に位置する桟橋のコンクリート床版であるような場合にも、海域を汚染することなく周辺環境の保全に配慮した修復作業を行うことが可能となる。また、左官工法と比較して、一度の作業で広範囲に圧入充填することも可能となり、工期短縮及び工費削減に大きく寄与することが可能となる。
本発明のコンクリート構造物の補修工法は、前記はつり面に対して前記型枠を、前記コンクリート表面の位置より近接して配置することを特徴とする。
本発明のコンクリート構造物の補修工法によれば、補修後のコンクリート構造物の自重を補修前より低減し軽量化を図ることが可能になるとともに、軽量化に伴って、長期供用により生じる剥落を抑制することが可能となる。また、使用するコンクリート量を減らすこともでき、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
本発明のコンクリート構造物の補修工法は、前記セメント系組成物の水粉体比が、30%以下であることを特徴とする。
本発明のコンクリート構造物の補修工法によれば、セメント系組成物の水粉体比を30%以下とすることにより粘性が高くなることから、ブリーディングが抑制されるためコンクリート構造物に対する補修材の付着性能を高めることができ、また、補修材の強度向上を図ることが可能となる。
本発明のコンクリート構造物の補修工法は、前記セメントは、C3Sを40.0~75.0質量%及びC3Aを2.7質量%未満含有され、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であることを特徴とする。また、前記補修材のモルタルフロー値が、150mm以上であることを特長とする。
本発明のコンクリート構造物の補修工法によれば、セメント系組成物が、常温養生のみで早期に高い圧縮強度を発現できる材料であるため、工期を大幅に短縮しつつ、硬化後の補修材に高い圧縮強度を確実に確保することが可能となる。また、ブリーディング水を抑制できるため、補修材を、コンクリートのはつり面に対して確実に付着させることが可能となる。
本発明によれば、補修材として、圧縮強度100N/mm2以上のセメント系組成物と、収縮低減材料及び/又は膨張材を含む材料を採用し、高強度鋼繊維を用いることなく自己収縮及び乾燥収縮ひび割れを抑制するため、圧入充填工法を採用できるとともに、補修後のコンクリート構造物に対して断面厚さを同等以下に抑えつつ、長寿命化を実現することが可能となる。
本発明の実施の形態における構造物の補修工法の手順を示す図である。 本発明の実施の形態における圧入施工試験を実施した際の補修材の配合、及び図4に示す比較例1及び2、実施例1~6の自己収縮ひずみを測定した配合を示す図である。 本発明の実施の形態における添加した膨張材、収縮低減材料、非鉄繊維の主成分を示す図である。 本発明の実施の形態における自己収縮ひずみと材齢の関係を示す図である。
本発明は、コンクリート構造物を補修する方法の1つである圧入充填工法に関する発明であって、超高強度繊維補強コンクリートを構成する超高強度モルタルとして適用されるような、圧縮強度100N/mm2以上のセメント系組成物と、収縮低減材料及び/又は膨張材とを含む材料を補修材として用いる。これにより、補修材の圧入充填を可能にしつつ、補修材にUFCを採用した場合と同等の効果、つまり、補修後のコンクリート構造物に対して、補修した補修材のひび割れや剥落を抑制でき、断面厚さを増やすことなく耐久性100年を確保できる、といった効果を実現するものである。
以下に、コンクリート構造物の補修工法の詳細を、桟橋のコンクリート床版下面を補修する場合を事例に挙げ、図1~4を用いて説明する。なお、補修対象となるコンクリート表面は、コンクリート構造物の下面のみでなく、下面からコンクリート構造物の側端部に至る広い領域を補修対象としてもよい。
≪コンクリート構造物の補修工法≫
図1(a)で示すように、桟橋のコンクリート床版1には、下面のコンクリート表面11にコンクリートの剥落等の劣化部分12が生じている。そこで、図1(b)で示すように、この劣化部分12をはつり取って鉄筋13を露出させる。本実施の形態では、高圧水を噴射させて、またはブレーカーなどの機械で鉄筋13が露出するまで、劣化部分12のコンクリートをはつり取っている。
次に、図1(c)で示すように、劣化部分12をはつり取ることにより形成されたはつり面14と対向するようにして、かつ、コンクリート床版1のコンクリート表面11があった位置よりも鉄筋13に近接させて、つまり鉄筋13のかぶり厚を低減する位置に型枠2を設置する。なお、露出させた鉄筋13には、必要に応じて、防錆材等を塗布する。
こののち、図1(d)で示すように、スクイーズ式ポンプ等の小型ポンプ3から圧送ホース4を介して、はつり面14と型枠2との間に補修材5を圧入充填する。本実施の形態では、補修材5を、型枠2に圧送ホース4の挿入孔を設けて下方から上方に向けて圧入充填したが、これに限定されるものではなく、はつり表面14と型枠2との間に対して側方から圧入充填してもよい。
上記のコンクリート構造物の補修工法によれば、補修前のコンクリート床版1より高い耐久性を確保しながら、鉄筋13のかぶり厚を低減させることができる。また、全ての工程がコンクリート床版1の下面側での作業となるため、桟橋のコンクリート床版1上は交通開放等、供用した状態で補修作業を行うことができる。なお、はつり面14と型枠2との間の必要個所に、補強鉄筋、メッシュ部材(鋼繊維、非鉄繊維、ステンレス金網)、連続繊維などの補強材を設置したうえで、これらを埋設するようにして、補修材5を充填してもよい。
また、図1(c)で示すように、型枠2を用いて補修材5を圧入充填するため、吹付工法で補修する場合と比較して、モルタル材料や粉塵が周辺に飛散することなく、補修対象が桟橋のコンクリート床版1であっても、海域を汚染することなく周辺環境の保全に配慮した修復作業を行うことが可能となる。さらに、左官工法と比較して一度の作業で広範囲に圧入充填することも可能となり、工期短縮及び工費削減に大きく寄与することが可能となる。
≪補修材≫
上記のコンクリート床版1の補修工法に用いる補修材5は、圧縮強度100N/mm2以上のセメント系組成物に、膨張材と収縮低減材料のいずれか一方、もしくは膨張材及び収縮低減材料を添加したものである。さらには、必要に応じて非鉄繊維を添加している。
採用するセメント系組成物はいずれを用いてもよい。以下に、補修材5に含むセメント系組成物として採用可能な高強度モルタル組成物の事例を示す。
≪高強度モルタル組成物(セメント系組成物)≫
高強度モルタル組成物は、セメントと、シリカフュームと、水と、減水剤と、消泡剤と、細骨材と、無機質微粉末とを含む。
セメントの鉱物組成は、C3S量が40.0~75.0質量%であり、C3A量が2.7質量%未満である。セメントのC3S量は、好ましくは45.0~73.0質量%、より好ましくは48.0~70.0質量%であり、さらに好ましくは50.0~68.0質量%である。C3A量は好ましくは2.3質量%未満であり、より好ましくは2.1質量%未満であり、さらに好ましくは1.9質量%未満である。C3S量が40.0質量%未満では圧縮強度が低くなる傾向があり、75.0質量%を超えるとセメントの焼成自体が困難となる傾向がある。また、C3A量が2.7質量%以上では流動性が悪くなる。なお、C3A量の下限値は特に限定されないが、0.1質量%程度である。
また、セメントのC2S量は好ましくは9.5~40.0質量%、より好ましくは10.0~35.0質量%であり、さらに好ましくは12.0~30.0質量%である。C4AF量は好ましくは9.0~18.0質量%、より好ましくは10.0~15.0質量%であり、さらに好ましくは11.0~15.0質量%である。このようなセメントの鉱物組成の範囲であれば、高強度モルタル組成物の高い圧縮強度及び高い流動性を確保できる。
セメントの粒度は、45μmふるい残分が、上限で25.0質量%未満であり、好ましくは20.0質量%未満であり、より好ましくは18.0質量%未満であり、さらに好ましくは16.0質量%である。45μmふるい残分の下限は0.0質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。セメントの粒度がこの範囲であれば、高い圧縮強度を確保でき、また、このセメントを使用して調製したモルタルスラリーは適度な粘性があるため、繊維を添加した場合には、十分な分散性が確保できる。
シリカフュームは、金属シリコン、フェロシリコン、電融ジルコニア等を製造する際に、発生する排ガス中のダストを集塵して得られる副産物であり、主成分は、アルカリ溶液中で溶解する非晶質のSiO2である。シリカフュームの平均粒子径は、好ましくは0.05~2.0μm、より好ましくは0.10~1.5μm、さらに好ましくは0.18~0.28μmである。このようなシリカフュームを用いることで、モルタル組成物の高い圧縮強度及び高い流動性を確保できる。
セメントを基準としたシリカフューム含有量は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは10~18質量%である。また、高強度モルタル組成物1m3当たりのシリカフュームの単位量は、好ましくは35~380kg/m3、より好ましくは58~253kg/m3、さらに好ましくは116~228kg/m3である。
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等を使用することができる。低水セメント比での流動性確保の観点から、減水剤として、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤を用いることがより好ましい。
セメントとシリカフュームの合計量100質量%に対して、減水剤を好ましくは0.5~6.0質量%、より好ましくは1.0~4.0質量%、さらに好ましくは1.8~3.0質量%である。また、高強度モルタル組成物1m3当たりの減水剤の単位量は、好ましくは7~86kg/m3、より好ましくは13~58kg/m3、さらに好ましくは18~43kg/m3である。
消泡剤としては、特殊非イオン配合型界面活性剤、ポリアルキレン誘導体、疎水性シリカ、ポリエーテル系等が挙げられる。この場合、セメントとシリカフュームの合計量100質量%に対して、消泡剤を好ましくは0.01~2.0質量%、より好ましくは0.02~1.5質量%、さらに好ましくは0.03~1.0質量%である。
高強度モルタル組成物1m3当たりの消泡剤の単位量は、好ましくは0.13~29kg/m3、より好ましくは0.26~22kg/m3、さらに好ましくは0.39~15kg/m3である。
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を使用することができる。なお、細骨材の粒度は、10mmふるいを全部通り、5mmふるいを85質量%以上通過する。
無機質微粉末としては、石灰石粉、珪石粉、砕石粉等を使用することができる。無機質微粉末は、石灰石粉、珪石粉、砕石粉等を比表面積が2500cm2/g以上となるまで粉砕又は分級した微粉末であり、細骨材の微粒分を補う目的で配合され、高強度モルタル組成物の流動性を改善することができる。
本実施形態に係る細骨材と無機質微粉末との混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40~80質量%、好ましくは45~80質量%を含み、より好ましくは50~75質量%を含む。また、上記混合物は、粒径0.075mm以下の粒群を30~80質量%、好ましくは35~70質量%を含み、より好ましくは40~65質量%を含む。
無機質微粉末の含有量が30質量%以下では、モルタルスラリーの粘性が低すぎるため非鉄繊維が十分に分散しない恐れがある。無機質微粉末の含有量が90質量%を超えると、微粉量が多すぎて粘性が高くなり、所定のフローを出すためには水セメント比を増やす必要があるため強度低下に繋がる恐れがある。
セメント及びシリカフュームの合計量100質量%に対して、細骨材を10~60質量%、無機質微粉末を10~60質量%含むことが好ましく、細骨材を15~50質量%、無機質微粉末を15~50質量%含むことがより好ましく、細骨材を15~30質量%、無機質微粉末を15~30質量%含むことがさらに好ましい。また、高強度モルタル組成物1m3当たりの細骨材及び無機質微粉末の単位量は、好ましくは140~980kg/m3、より好ましくは300~900kg/m3、さらに好ましくは600~900kg/m3である。
セメントとシリカフュームの合計量100質量%に対して、水を好ましくは10~25質量%、より好ましくは12~20質量%、さらに好ましくは13~18質量%を含む。高強度モルタル組成物1m3当たりの単位水量は、好ましくは180~280kg/m3、より好ましくは190~270kg/m3、さらに好ましくは200~250kg/m3である。
上記の高強度モルタル組成物は、ブリーディング水が抑制され、また流動性の向上と常温養生による強度向上が可能となっている。このため、図1(d)で示すように、はつり面14がコンクリート床版1の下面にあっても、ブリーディング水の影響を受けることなく、補修材5をコンクリート床版1に確実に付着させることが可能となる。
なお、高強度モルタル組成物に含まれるセメントの比表面積や製造方法、無機質微粉末の比表面積等、高強度モルタル組成物の詳細は、特許第5997807号公報に譲る。
次に、高強度モルタル組成物とともに添加される、収縮低減材料、膨張材、非鉄繊維について、以下に説明する。
≪収縮低減材料≫
収縮低減材料としては、無機系物質では収縮低減材として、珪灰石、石英等が挙げられ、また有機系物質では収縮低減剤として、低級アルコールアルキレンオキサイド付加物やエーテル型非イオン表面活性剤等を使用することができる。高強度モルタル組成物の1m3あたりの収縮低減剤の単位量は、10~60kg/m3、好ましくは10~40kg/m3である。収縮低減剤が10kg/m3未満では、十分な収縮低減効果が得られず、60kg/m3より多くなると、補修材5の粘性が増加して空気を巻き込み、圧縮強度が低下する。また、硬化するまでの時間が大幅に遅れる。
≪膨張材≫
膨張材としては、生石灰、石膏、マグネシア、石灰系、エトリンガイト系等を使用することができる。高強度モルタル組成物の1m3あたりの膨張材の単位量は、10~40kg/m3、好ましくは15~30kg/m3である。膨張材が10kg/m3未満では、膨張効果が小さく、補修材5の最終的な収縮ひずみが大きくなり、ひび割れ抑制効果が得られない。また、40kg/m3より多くなると、遅れ膨張が生じて圧縮強度が低下する。
上記の収縮低減材料及び膨張材を用いることで、高強度鋼繊維を用いることなく、自己収縮や乾燥収縮ひびわれの抑制効果を高めることが可能になる。また、高強度鋼繊維を添加しないことに伴い、補修材5をスクイーズ式ポンプ等の小型ポンプで圧入充填することも可能となる。なお、収縮低減材料及び膨張材は、いずれか一方のみを添加してもよいし、両者を併せて添加してもよい。
≪非鉄繊維≫
非鉄繊維としては、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、PBO繊維、バサルト繊維、ジュート繊維等を単独または複数併用して使用することができる。非鉄繊維は、補修材5に対して外割で、0.01~4.0vol.%、好ましくは0.05~2.0vol.%を含む。非鉄繊維が、0.01vol.%未満では、十分な剥落低減効果及び収縮低減効果が得られず、一方、4.0vol.%より多くなると、繊維ダマが生じてポンプが閉塞したり、補修材5の流動性が低下する。
非鉄繊維の繊維長は、圧送ホース4の直径及び断面修復厚さよりも短いものが好ましい。
補修材5は、非鉄繊維をさらに含むことで、非鉄繊維の架橋効果により、不慮の事態によりひび割れが生じた場合にも、剥落を抑制することが可能となる。また、高強度鋼繊維を含む場合のように、断面修復した構造物の表面に露出した鉄繊維の錆により、美観を損ねることがない。なお、非鉄繊維は、セメント組成物に必ずしも添加しなくてもよい。
≪補修材の作製方法≫
上述する補修材5は、セメント、シリカフューム、細骨材、無機質微粉末、消泡剤、膨張材(を添加する場合)を二軸強制練りミキサに投入して空練りしたのち、減水剤、収縮低減剤(を添加する場合)を含む練混ぜ水をミキサ内に投入して数分間練混ぜを行う。その後、非鉄繊維をさらに投入し撹拌することにより作製される。なお、収縮低減剤に替えて収縮低減材を採用する場合は、空練りの工程時に添加する。
こうして作製された補修材5において、モルタルフロー値(JIS R 5201に規定されたモルタルフロー試験による0打モルタルフロー値)は、150mm以上が好ましく、200mm以上であればより好ましい。
また、空気量(JIS A 1128に規定された「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法-空気室圧力方法」による)は、3.5%以下が好ましい。
さらに、圧縮強度は(JSCE-G 505に規定された「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」による)、材齢28日に試験し、100N/mm2以上が好ましく、120N/mm2以上がより好ましい。
なお、高強度モルタル組成物(セメント系組成物)の水粉体比は、モルタルの粘性及び強度の観点から30%以下が好ましい。これは、水粉体比が30%以下になるとモルタルの粘性が高くなることから、ブリーディングが抑制されるため、コンクリート床版1に対する補修材5の付着性能を高めることができるとともに、補修材5の強度向上を実現できる。ここで、水粉体比を算定する際の粉体は、セメント、シリカフューム、無機質微粉末、膨張材、及び収縮低減材を含み、水分は、水と減水剤と収縮低減剤を含む。
≪補修材の圧入施工試験≫
以下に、図2に示す配合で作製したケース1及びケース2の補修材5について、圧入施工試験を実施し、正常に圧送できることを確認した。なお、図2において、特殊プレミックス粉体とは、セメント、シリカフューム、及び無機質微粉末を、あらかじめ混合した材料をいう。
補修材5は、ケース1では非鉄繊維としてナイロン繊維(有機繊維A)を添加し、ケース2では非鉄繊維としてナイロン繊維(有機繊維A)とポリプロピレン繊維(有機繊維B)を添加した。また、ケース1及びケース2ともに高強度モルタル組成物の配合に、膨張材(EX)を粉体の内割で、また収縮低減剤(SR)を水の内割で添加している。
≪補修材の圧縮強度≫
上記の補修材5を所定の型枠に流し込んで供試体を製作し、圧縮強度試験を行った。図2をみると、ケース1及びケース2ともに、圧縮強度が100N/mm2を大きく超えていることが分かる。
≪補修材の自己収縮ひずみ≫
図2で示すように、収縮低減剤、膨張材及び有機繊維を適宜組み合わせて添加した補修材5を6種類(実施例1~6)作製した。図3に、実施例1~6で用いた収縮低減剤(A、B)、膨張材、及び有機繊維(A、B)の主成分を示す。また、これら実施例1~6について、材齢と自己収縮ひずみとの関係を図4に示す。
上記の実施例1~6及び比較例1~2について、図4をみると、高強度モルタル組成物のみの比較例2と高強度モルタル組成物に高強度鋼繊維を添加した比較例1とでは、材齢28日で350μ程度、材齢182日で450μ程度の差が生じていた。しかし、高強度鋼繊維を添加しなくても、収縮低減材料、膨張材、及び有機繊維のいずれかを適宜添加した実施例1~6はいずれも自己収縮ひずみが、高強度鋼繊維を添加した比較例1の値におおよそ収束する結果となった。
特に、実施例4は、材齢98日を過ぎると、比較例1より自己収縮ひずみが低減している様子がわかる。また、有機繊維を添加していない実施例2についても、材齢が増加するごとに自己収縮ひずみが、高強度鋼繊維を添加した比較例1の数値に近づいている様子がわかる。さらに、実施例1と実施例4とを比較すると、収縮低減剤を同量添加した場合であっても、実施例4のように、主成分をグリコールエーテル系誘導体とする収縮低減剤Bを添加すると、より高い収縮低減効果が得られる様子がわかる。
また、実施例5と実施例6をみると、実施例6のように非鉄繊維としてナイロン繊維(有機繊維A)とポリプロピレン繊維(有機繊維B)の2種類を混合しても、非鉄繊維としてナイロン繊維(有機繊維A)のみを添加した実施例5との間で大きな差異がみられず、添加する非鉄繊維はナイロン繊維もしくはポリプロピレン繊維のいずれでもよいことが分かる。
上記のとおり、補修材5に、UFCを構成する高強度モルタル組成物と、収縮低減材料及び/又は膨張材を含む材料、もしくはさらに非鉄繊維を添加した材料を採用する。そして、これを、図1(a)~(d)で示すように、スクイーズ式ポンプのような小型ポンプ3を用いた圧入充填工法により、充填厚さが30mmといった薄肉施工を行っても、高い圧縮強度を確保できるとともに、自己収縮ひずみを小さくして硬化後の補修材5に生じやすい自己収縮ひび割れと乾燥収縮ひび割れを抑制できる。
したがって、水分や塩分等の劣化因子の侵入を抑制でき、高強度鋼繊維を用いることなく、補修後のコンクリート床版1に、超高強度繊維補強コンクリートを補修材に採用した場合と同等の高い耐久性、つまり、断面厚さを増やすことなく耐久性100年を実現することが可能となる。
また、薄肉化に伴って軽量化を図ることもできるため、補修後のコンクリート床版1において設計荷重の変更も不要となる。さらに、補修材5の圧入充填作業に、スクイーズ式ポンプ等の小型ポンプ3を採用できるため、作業空間が狭隘である等制約のある環境にあっても、効率よく修復作業を行うことが可能となる。また、高強度鋼繊維を採用する場合のように繊維ダマができにくく圧送ホース4を痛めることもなく、現場での圧入充填作業の施工性を大幅に向上することが可能となる。
本発明の補修材5、及び補修材5を用いた構造物の補修工法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、補修材5には、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、ポリマーエマルジョン、ポリマーディスパージョン等を必要に応じて1種以上添加してもよい。
さらに、本実施の形態では、補修対象面をコンクリート床版1の下面としたが、これに限定されるものではなく、コンクリート床版1の上面であってもよいし、他の構造物の壁面等であってもよい。
1 コンクリート床版(コンクリート構造物)
11 コンクリート表面
12 劣化部分
13 鉄筋
14 はつり面
2 型枠
3 小型ポンプ
4 圧送ホース
5 補修材

Claims (5)

  1. コンクリート構造物の下面を含むコンクリート表面に生じた劣化部分をはつり取ったのち、はつり面に対向して型枠を配置し、該型枠と前記はつり面との間に、補修材を圧入充填するコンクリート構造物の補修工法において、
    前記補修材が、圧縮強度100N/mm2以上のセメント系組成物と、収縮低減材料及び/又は膨張材と、非鉄繊維と、を含み、
    前記セメント系組成物1m3当たりの前記収縮低減材料の単位量は、10~60kg/m3であり、
    前記セメント系組成物1m3当たりの前記膨張材の単位量は、10~40kg/m3であり、
    前記セメント系組成物に対して外割りで、前記非鉄繊維を0.01~4.0vol.%混入し、
    前記セメント系組成物が、セメント、シリカフューム、水、減水剤、消泡剤、細骨材、及び無機質微粉末を含み、
    前記細骨材と前記無機質微粉末との混合物は、粒径0.15mm以下の粒群を40~80質量%、かつ、粒径0.075m m以下の粒群を30~80質量%含有され、
    セメント及びシリカフュームの合計量100質量%に対して、無機質微粉末を10~60質量%含むことを特徴とするコンクリート構造物の補修工法。
  2. 請求項1に記載のコンクリート構造物の補修工法において、
    前記はつり面に対して前記型枠を、前記コンクリート表面の位置より近接して配置することを特徴とするコンクリート構造物の補修工法。
  3. 請求項1または2に記載のコンクリート構造物の補修工法において、
    前記セメント系組成物の水粉体比は、30%以下であることを特徴とするコンクリート構造物の補修工法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修工法において、
    前記セメントが、C 3 Sを40.0~75.0質量%及びC 3 Aを2.7質量%未満含有され、かつ、45μmふるい残分が25.0質量%未満であることを特徴とするコンクリート構造物の補修工法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のコンクリート構造物の補修工法において、
    前記補修材のモルタルフロー値が、150mm以上であることを特長とするコンクリート構造物の補修工法。
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