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JP7417090B2 - 摩擦圧接用鋼板、複合部材および自動車用部材 - Google Patents
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JP7417090B2 - 摩擦圧接用鋼板、複合部材および自動車用部材 - Google Patents

摩擦圧接用鋼板、複合部材および自動車用部材 Download PDF

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Description

本開示は、摩擦圧接用鋼板、複合部材および自動車用部材に関する。
部材を接合して接合継手を製造する方法の1つとして、摩擦圧接接合が知られている。摩擦圧接接合とは、部材同士を摩擦しながら加圧することにより、部材同士を固相接合する技術である。部材同士の摩擦は、例えば、一方の部材の圧接面を回転対称形状(例えば円状又は多角形形状)とし、これを高速回転させることにより行われる。
摩擦圧接接合の特徴のひとつは、接合部において部材の溶融又は攪拌が生じない点にある。溶接は、部材を溶融及び再凝固させることにより接合部を形成する接合方法であり、接合継手の接合部では、部材が混じり合っている。一方、摩擦圧接接合によって形成された接合継手では、部材が混じり合った領域は存在しないか、又は極めて小さい。摩擦圧接接合によって形成された接合継手の接合部の断面を観察すると、摩擦圧接面を介して部材が分かれている様子が判別できる。
例えば特許文献1及び特許文献2に摩擦圧接接合の方法が開示されている。
また、特に近年では、重ね合わされた上板と下板に対して、リベットなどの接続部材を回転させながら上板の上面に押圧し、上板を貫通させて、接続部材と下板とを摩擦圧接する接合技術などが検討されている。
上記のような摩擦圧接により接続部材を介して上下の板を接合した継手として、例えば、特許文献3には、下板として引張強度が1000MPa以上の高強度鋼板、接続部材として炭素を0.17~0.45%、クロムを0.70~1.5%、モリブデンを0.15~0.80%含む合金スチールを用いた接合継手が開示されている。
特開2006-297398号公報 特開2004-141933号公報 特表2013-514888号公報
摩擦圧接接合は、異種金属部材を容易に接合することができるので、近年その適用範囲が広がりつつある。
一方、本発明者らは、摩擦圧接接合を高炭素鋼部材に適用した場合に、接合強度が確保し難い現象を見出した。本発明者らの検討の結果、鋼部材の摩擦圧接接合部に亀裂が生じやすく、この亀裂欠陥が接合強度を低下させていることを見出した。
摩擦圧接接合部における亀裂は、摩擦圧接接合の終了後になんら外力が加えられなかった接合継手に発生していることから、接合継手に加えられた外力に惹起されたものではなく、自然発生したものと推定された。
例えば、特許文献3では、摩擦圧接接合継手の下板として引張強さ1000MPa以上の高強度鋼板を用いることが開示されているが、高強度鋼板の成分及び組織について何ら記載されてなく、高強度鋼板を用いた場合の亀裂の発生について考慮されていない。
本開示は、引張強さが780MPa以上である鋼板を用いて摩擦圧接を行った場合に、摩擦圧接接合部における亀裂の発生が抑制される摩擦圧接用鋼板並びにそれを用いた複合部材及び自動車用部材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本開示の要旨は次の通りである。
<1> 質量%で、
C含有量が、表面から深さ0.2mmよりも内部の領域において0.25~0.70%であり、かつ少なくとも片面側の表面から深さ45μmまでの領域において0.25%未満であり、
Si:0.10~3.50%、
Mn:0.50~8.00%、
P:0.020%以下、
S:0.050%以下、
Al:3.000%以下、及び
N:0.010%以下であり、
残部が、Fe及び不純物からなる鋼成分を有し、
引張強さが780MPa以上である、
摩擦圧接用鋼板。
<2> 前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.300%以下、
Nb:0.300%以下、及び、
V:0.30%以下
からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む<1>に記載の摩擦圧接用鋼板。
<3> 前記Feの一部に代えて、質量%で、
Cr:5.0%以下、及び、Mo:2.00%以下の1種又は2種を含む<1>又は<2>に記載の摩擦圧接用鋼板。
<4> 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cu:2.00%以下、及び、Ni:10.0%以下の1種又は2種を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の摩擦圧接用鋼板。
<5> 前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.020%以下を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の摩擦圧接用鋼板。
<6> 前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ca:0.003%以下、
REM:0.05%以下、
Mg:0.05%以下、及び
Zr:0.05%以下
からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の摩擦圧接用鋼板。
<7> 表面にZn及びAlの少なくとも一方を含むめっき層が形成されている<1>~<6>のいずれか1つに記載の摩擦圧接用鋼板。
<8> 第1の板材と、
<1>~<7>のいずれか1つに記載の摩擦圧接用鋼板であって、前記片面側に前記第1の板材が重ね合わされた第2の板材と、
頭部及び軸部を有し、前記第1の板材と前記第2の板材とを接続する接続部材と、
を含み、
前記接続部材の前記軸部が前記第1の板材を貫通して前記軸部の先端部が前記第2の板材の前記片面側と接合されており、前記第1の板材が前記接続部材の前記頭部と前記第2の板材との間で固定された構造を有する、
複合部材。
<9> <8>に記載の複合部材を備えた自動車用部材。
本開示によれば、引張強さが780MPa以上である鋼板を用いて摩擦圧接を行った場合に、摩擦圧接接合部における亀裂の発生が抑制される摩擦圧接用鋼板並びにそれを用いた複合部材及び自動車用部材が提供される。
引張強さが780MPa以上である鋼板を用いて摩擦圧接した接合継手の板厚方向の断面を示すSEM画像である。 図1における領域Aを拡大して示すSEM画像である。 2枚の板材とリベット状の接続部材を用いて摩擦圧接により接合する方法の一例を示す概略図である。 2枚の板材と棒状の接続部材を用いて摩擦圧接により接合する方法の他の例を示す概略図である。
本開示の一例である実施形態について説明する。
なお、本開示において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。また、本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明者らは、鋼板にリベット等の接続部材を摩擦圧接によって接合して接合継手を製造する場合、C含有量が比較的多い高強度鋼板を用いた場合に摩擦圧接接合部に亀裂が発生する原因について詳細に調査した。
摩擦圧接接合部における亀裂状欠陥について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、引張強さが780MPa以上である高炭素量(C含有量:0.37%)の鋼板を用いて摩擦圧接した接合継手の板厚方向の断面を示すSEM画像であり、図2は、図1における領域Aを拡大して示すSEM画像である。なお、図1及び図2において、10は上板(アルミニウム合金)、20は下板(鋼板)、30は接続部材(リベット)であり、32はリベットの頭部、34はリベットの軸部、40は下板20と接続部材30との接合部である。図1及び図2に見られるように、リベット34と下板の鋼板20との接合部40の端部に亀裂状の欠陥が生じている。
本発明者らは摩擦圧接による接合継手の接合部端部に生じる亀裂の原因について検討、実験を重ねた結果、水素脆化が亀裂の原因となっている可能性があると考えた。通常、水素脆化は、鋼の強度が高いほど生じやすいとされている。
そして、本発明者らは、鋼板の内部ではC含有量が比較的高く、表層ではC含有量が比較的低い鋼板を用いて摩擦圧接により接合した接合継手であれば、接合部端部における亀裂の発生が抑制されることを実験的に見出し、本開示を完成するに至った。接合部端部における亀裂の発生が抑制されるメカニズムは定かでないが、接合部では接合部端部の硬さが低くなったことで、水素脆化感受性が低下し、亀裂状の欠陥が発生しにくくなると考えられる。
すなわち、本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、質量%で、
C含有量が、表面から深さ0.2mmよりも内部の領域において0.25~0.70%であり、かつ少なくとも片面側の表面から深さ45μmまでの領域において0.25%未満であり、
Si:0.10~3.50%、
Mn:0.50~8.00%、
P:0.020%以下、
S:0.050%以下、及び
Al:3.000%以下、
N:0.010%以下であり、
残部が、Fe及び不純物からなる鋼成分を有し、
引張強さが780MPa以上である、摩擦圧接用鋼板である。
[鋼成分]
本開示に係る摩擦圧接用鋼板の鋼成分について具体的に説明する。
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、C含有量が、表面から深さ0.2mmよりも内部の領域において0.25~0.70%であり、かつ少なくとも片面側の表面から深さ45μmまでの領域において0.25%未満であり、Si:0.10~3.50%、Mn:0.50~8.00%、P:0.020%以下、S:0.050%以下、Al:3.000%以下、及びN:0.010%以下であり、残部が、Fe及び不純物からなる鋼成分を有する。また、本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、上記鋼成分におけるFeの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.300%以下、
Nb:0.300%以下、
V:0.30%以下、
Cr:5.0%以下、
Mo:2.00%以下、
Cu:2.00%以下、
Ni:10.0%以下、
B:0.020%以下、
Ca:0.003%以下、
REM:0.05%以下、
Mg:0.05%以下、及び
Zr:0.05%以下
からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでもよい。
以下、各元素の含有量を限定した理由について説明する。
C含有量
表面から深さ0.2mmよりも内部の領域(内部領域):0.25~0.70%
少なくとも片面側の表面から深さ45μmまでの領域(表層領域):0.25%未満
Cは、鋼の焼入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。内部領域のC含有量が0.25%未満であると、高い引張強さが得られないので、下限を0.25%とする。好ましい下限は0.30%である。摩擦圧接用鋼板の内部を高炭素量にすることで、鋼板及び接合継手の強度を向上させることができる。しかし、C含有量が0.70%を超えると、強度が向上しすぎて加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、上限を0.70%とする。強度と加工性をバランスよく確保するには、C含有量は0.30~0.55%が好ましい。
一方、摩擦圧接用鋼板の少なくとも片面側の表面から45μmの深さまでの表層領域におけるC含有量は0.25質量%未満とする。鋼板の表層領域におけるC含有量を0.25%未満とすることで内部よりも硬さが低くなり、摩擦圧接した場合の接合部端部における亀裂の発生を抑制することができる。
摩擦圧接用鋼板の内部と表層とで炭素量の差を大きくすることにより、継手強度の向上と、亀裂発生の抑制との両方を達成することができる。摩擦圧接用鋼板の少なくとも片面側の表面から45μmの深さまでの領域におけるC含有量は、0.22質量%以下、0.20質量%以下、又は0.15質量%以下でもよい。
摩擦圧接用鋼板の表層部と内部のC含有量をそれぞれ上記範囲とするには、後述するように、例えば、C含有量が0.25~0.70%である鋼板を用い、鋼板の表面から45μmの深さまでの領域におけるC含有量が0.25質量%未満となるように脱炭処理する方法、C含有量が0.25~0.70%である鋼板を、C含有量が0.25%未満である鋼板で挟んで熱間圧延してクラッド鋼とする方法が挙げられる。
また、片面側のみに摩擦圧接を施す場合には、片面のみ表層領域におけるC含有量を0.25%未満としてもよい。たとえば、C含有量が0.25%未満の鋼板とC含有量が0.25~0.70%である鋼板を1枚ずつ重ねたクラッド鋼としてもよい。
Si:0.10~3.50%
Siは、固溶強化及び組織強化により、鋼の強度を高める元素である。Si含有量が0.10%未満であると、高い引張強さが得られないので、下限を0.10%とする。一方、Si含有量が3.50%を超えると、加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、上限を3.50%とする。強度と加工性をバランスよく確保するには、0.50~2.00%が好ましい。
Mn:0.50~8.00%
Mnは、鋼の強度を高める元素である。Mn含有量が0.50%未満であると、高い引張強さが得られないので、下限を0.50%とする。一方、Mn含有量が8.00%を超えると、加工性が劣化するとともに継手強度も低下するので、上限を8.00%とする。強度と加工性をバランスよく確保するには、1.00~4.80%が好ましい。より好ましくは、1.50~2.50%である。
P:0.020%以下
Pは、不純物であり、脆化を起こす元素である。P含有量が0.020%を超えると、継手強度を得ることが難しいので、上限を0.020%とする。
S:0.050%以下
Sは、Pと同様に、不純物であり脆化をおこす元素である。また、Sは、鋼中で粗大なMnSを形成し、鋼の加工性を低下させるとともに継手強度も低下させる元素である。S含有量が0.050%を超えると、所要の継手強度を得ることが難しく、また、鋼の加工性が低下するので、上限を0.050%とする。
Al:3.000%以下
Alは、脱酸作用をなす元素であり、また、フェライトを安定化し、セメンタイトの析出を抑制する元素である。Alは、脱酸、及び、鋼組織の制御のため含有させるが、Alは酸化し易く、Al含有量が3.000%を超えると、介在物が増加して加工性が低下するとともに継手強度も低下するので、上限を3.000%とする。加工性を確保する点で、好ましい上限は1.200%である。脱酸、及び、鋼組織の制御のため、Al含有量の好ましい下限値は、0.030%である。
N:0.010%以下
Nは、鋼板の強度を高める元素であるが、鋼中で粗大な窒化物を形成し、鋼の成形性を劣化させる作用をなす元素である。N含有量が0.010%を超えると、鋼の成形性の劣化、継手強度の低下が顕著となるので、上限を0.010%とする。
残部:Fe及び不純物
残部は、Fe及び不純物である。不純物とは、鉱石、スクラップ等の原材料に含まれる成分、又は、製造の過程で混入する成分が例示され、意図的に摩擦圧接用鋼板に含有させたものではない成分を指す。
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、Feの一部に代えて上記以外の元素(任意元素)を含んでもよい。以下に本開示の摩擦圧接用鋼板に含み得る任意元素について説明する。なお、以下の任意元素は含まない、すなわち含有量が0%でもよいし、含む場合の下限値は0%超であってもよい。
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、鋼板組織の粗大化を抑制するため、Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.300%以下、
Nb:0.300%以下、及び、
V:0.30%以下
からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
Ti:0.300%以下
Tiは、析出物を形成し、鋼板組織を細粒とする元素である。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.010%以上である。一方、過剰に含有すると、製造性が低下し、加工時に割れが生じるだけでなく継手強度の低下も起こすので、0.300%を上限とすることが好ましく、より好ましくは0.200%以下である。
Nb:0.300%以下
Nbは、微細な炭窒化物を形成し結晶粒の粗大化を抑制する元素である。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.01%以上である。過剰に含有すると、靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度低下を引き起こすため、上限を0.300%とすることが好ましく、より好ましくは0.200%以下である。
V:0.30%以下
Vは、微細な炭窒化物を形成し結晶粒の粗大化を抑制する元素である。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.03%以上である。過剰に含有すると、靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度低下を引き起こすため、上限を0.30%とすることが好ましく、より好ましくは0.25%以下である。
Cr:5.0%以下
Mo:2.00%以下
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、鋼の強度の向上のため、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:5.0%以下、及び、Mo:2.00%以下の1種又は2種を含有してもよい。
Cr及びMoは、鋼の強度の向上に寄与する元素である。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.05%以上である。ただし、Cr含有量が5.0%を超え、又はMo含有量が2.00%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく継手強度の低下を招くので、Cr含有量の上限は5.0%とすることが好ましく、Mo含有量の上限は2.00%とすることが好ましい。
Cu:2.00%以下
Ni:10.0%以下
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、鋼の強度向上のため、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:2.00%以下、及び、Ni:10.0%以下の1種又は2種を含有してもよい。
Cu及びNiは、鋼の強度の向上に寄与する元素である。含有効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.10%以上である。ただし、Cu含有量が2.00%を超え、Ni含有量が10.0%を超えると、酸洗時や熱間加工時に支障が生じることがあるだけでなく継手強度の低下を招くことがあるので、Cu含有量の上限は2.00%とすることが好ましく、Ni含有量の上限は10.0%とすることが好ましい。
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、熱間圧延工程における成形性の向上のため、Feの一部に代えて、質量%で、
Ca:0.003%以下、
REM0.05%以下、
Mg:0.05%以下、及び
Zr:0.05%以下からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
Ca、REM(rare earth metal)、Mg、及びZrは、脱酸後の酸化物や、熱間圧延鋼板中に存在する硫化物を微細化し、成形性の向上に寄与する元素である。ただし、Caの含有量が0.003%を超え、REMの含有量が0.05%を超え、Mg、又はZrの各含有量が0.05%を超えると、鋼の加工性が低下する。そのため、Ca含有量の上限を0.003%とし、REM含有量の上限を0.05%とし、Mg、及びZrの各含有量の上限を0.05%とすることが好ましい。
なお、含有効果を得るため、Ca含有量は0.0005%以上、REMは0.001%以上、Mgは0.001%以上、Zrは0.001%以上とすることが好ましい。
なお、「REM」とはSc、Y、及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種又は2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、REMは、REMの含有量が上記の範囲となるように、ミッシュメタルの形で含有させてもよい。
B:0.020%以下
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.020%以下を含んでもよい。
Bは、粒界に偏析して粒界強度を高める元素である。含有効果を得るため、0.0001%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.0008%以上である。一方、過剰に含有すると靭性を阻害し製造困難になるだけでなく継手強度低下を引き起こすため、上限を0.020%とすることが好ましく、より好ましくは0.010%以下である。
[引張強さ]
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、引張強さが780MPa以上である。これにより、本開示に係る摩擦圧接用鋼板を用いて摩擦圧接によって接合継手を製造した場合に継手強度が高く、母材(鋼板)が高強度の板状部材を得ることができる。本開示に係る摩擦圧接用鋼板の引張強さは、好ましくは、980MPa以上であり、より好ましくは1180MPa以上であり、さらに好ましくは1470MPa以上である。
[鋼組織]
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、上述した鋼成分及び引張強さを有していれば、組織は特に限定されないが、摩擦圧接による接合継手を作製した場合に、接合部における亀裂の発生を抑制する観点から、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、及び焼き戻しベイナイトからなる群より選ばれる1種又は2種以上の組織を含むことが好ましい。
[摩擦圧接用鋼板の製造方法]
本開示に係る摩擦圧接用鋼板の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法によって好適に製造することができる。
まず、転炉で上述した成分に調整された鋼を溶製して連続鋳造法によりスラブとし、スラブを高温状態のまま、あるいは、室温まで冷却した後、加熱炉に挿入し、1100~1300℃の温度範囲で加熱し、その後、800~950℃の温度範囲で仕上圧延を行う。仕上げ圧延温度から400~700℃まで水冷し、その後空冷する。
次いで、冷間圧延によって所望の厚みを有する鋼板にする。なお、本開示に係る摩擦圧接用鋼板の厚みは特に限定されず、摩擦圧接接合後の用途に応じて厚みを設定すればよい。例えば、0.8~3.5mmの厚さにする。
冷間圧延後、表層を脱炭処理する。表層部におけるC含有量を0.25%未満にすることができれば脱炭処理の条件は特に限定されず、例えば、露点5℃、及び温度800℃の環境で鋼板を3分保持後、これを空冷する脱炭処理条件とすることが好ましい。
また、接合継手の用途に応じて、摩擦圧接用鋼板内部の組織制御が必要な場合、脱炭処理後に熱処理等による組織制御を行えば、表層のC含有量が低い状態で、所望の内部組織を得ることができる。また、脱炭が生じる温度域や雰囲気で組織制御することにより、所望の内部組織制御と脱炭を同時に行ってもよい。
なお、本開示に係る摩擦圧接用鋼板の製造方法は限定されず、上述の製造方法は一例に過ぎない。例えば、冷間圧延まで実施せず、熱間圧延した鋼板の表層を脱炭処理してもよい。例えば、本開示における前述した鋼成分を有する高炭素鋼板と、C含有量が0.25質量%未満の低炭素鋼板とを貼り合わせて熱間圧延したクラッド鋼とし、冷間圧延した後、焼鈍することによって本開示に係る摩擦圧接用鋼板を製造してもよい。このとき、両者を貼り合わせた後に表層を構成する低炭素鋼板の厚みを45μm以上とする。
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、表面にZn及びAlの少なくとも一方を含むめっき層が形成されている摩擦圧接用めっき鋼板としてもよい。
前述の鋼成分を有する鋼板にアルミめっき、アルミ-亜鉛めっき、亜鉛めっきを施してもよい。
アルミめっき工程、アルミ-亜鉛めっき工程、又は亜鉛めっき工程は常法を採用することができる。例えば、アルミめっきであれば、浴中Si濃度は5~12%が適しており、アルミ-亜鉛めっきでは、浴中Zn濃度は40~50%が適している。また、アルミめっき層中にMgやZnが混在しても、アルミ-亜鉛めっき層中にMgが混在してもよい。
なお、めっき工程における雰囲気については、無酸化炉を有する連続式めっき設備でも無酸化炉を有しない連続式めっき設備でも通常の条件とすることでめっき可能である。また、亜鉛めっき方法であれば、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきなどいかなる方法と取ってもよい。
めっき前に鋼板表面に、NiプレめっきやFeプレめっき、その他めっき性を向上させる金属プレめっきを施してもよい。また、めっき層表面に異種の金属めっきや無機系化合物又は有機系化合物の皮膜などを付与してもよい。
例えば自動車用、家電用、建材用として使用される高強度表面処理鋼板は、その多くが溶融亜鉛めっき鋼板であり、溶融亜鉛めっきを施す場合は、通常、焼鈍とめっきが同じ設備(又は同一設備列)で同時に行われる。本開示に係る摩擦圧接用めっき鋼板を製造する場合、溶融亜鉛めっきのように、焼鈍及びめっきを同時に行った場合や、焼鈍の後、電気めっき、有機複合皮膜を施してもよい。
めっき量としては、めっきの目的である防食作用を発揮させる観点から、3mg/m以上であることが好ましく、溶接時のブローホールなどの欠陥の発生を抑制する観点から、800g/m以下であることが好ましい。
[接合継手の製造方法]
本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、他の部材を摩擦圧接によって接合して接合継手を製造するために用いられる。本開示に係る摩擦圧接用鋼板を用いて接合継手を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上板(第1の板材)と下板(第2の板材)を重ね合わせ、リベット等の頭部と軸部を有する接続部材を用い、接続部材の軸部(先端部)を上板に対して加圧しながら高速で回転させることで上板を貫通し、接続部材の軸部の先端部が下板と接合するとともに、上板が接続部材の頭部と下板との問で固定された接合継手(複合部材)を製造する場合に、下板として本開示に係る摩擦圧接用鋼板を好適に用いることができる。なお、下板の片面側のみ脱炭層を有する場合は、下板の脱炭層側に上板を重ね合わせて摩擦圧接によって接合する。
図3は、2枚の板材とリベット状の接続部材を用いて摩擦圧接により接合する方法の一例を示す概略図である。
図3に示す接合継手では、下板2Bとして本開示に係る摩擦圧接用鋼板を用いて上板3と下板2Bが重ね合わされており、リベット状の接続部材1Bが上板3を貫通して下板2Bと摩擦圧接により接合されている。上板3は、リベット状の接続部材1Bの頭部12と下板2Bとによって挟まれて固定されている。
上板3は、接続部材の軸部11が貫通して下板2Bと摩擦圧接し得るものであれば特に限定されず、例えば、樹脂板、金属板等を用いることができる。金属板としては、例えば、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の軽金属板、鋼板等が挙げられる。
なお、上板3は、接続部材1Bの軸部11が貫通する予定の箇所に、貫通孔31Bを有していてもよい。
また、上板3として、同種又は異種の板材を複数枚重ね合わせて用いてもよい。すなわち、上板3と下板2Bは、直接重ね合わされていてもよいし、他の板材を介して重ね合わされていてもよい。
このような多種多様の上板3を含むものであっても、下板2Bとして本開示に係る摩擦圧接用鋼板を用いて接合継手10Bを製造することで、接続部材1Bと下板2Bとの摩擦圧接部(接合部)の継手強度が優れた接合継手10Bが得られる。
上板3として鋼板を用いる場合は、接続部材1Bと下板2Bとの摩擦圧接をより確実に行わせるために、下板2Bとなる本開示に係る摩擦圧接用鋼板よりも引張強さが低い鋼板を、上板3として用いることが好ましい。
上板3及び下板2Bは、少なくとも接合対象部分が板状の構造を有していればよく、板材全体が板状の構造を有していなくてもよい。
また、接続部材も頭部12と軸部11を有するリベット状に限定されない。
図4は、2枚の板材と棒状の接続部材を用いて摩擦圧接により接合する方法の他の例を示す概略図である。図4に示す実施形態では、接合継手10Aは、円柱状又は多角柱状の軸部を有する棒状の接続部材が使用されている。かかる接合継手10Aは、下板2Bである本開示に係る摩擦圧接用鋼板の上面に上板3が重ね合わされて、その上方側(摩擦圧接用鋼板とは反対側)から棒状の接続部材1が上板3を貫通して、接続部材1の下方側先端部(底面)と下板2Bとが摩擦圧接により接合されている。
このような接続部材1を用いて摩擦圧接を行った場合、接続部材1の上板3から突出する部分を上方側から専用工具で叩いてかしめることで、接続部材1のかしめ部と下板2Bとの問で上板3を固定することができる。
上板と下板とを重ねわせた積層体に対して、接続部材を回転させながら押圧する際の加圧力F(kN)及び回転数は、接続部材の軸部が上板を貫通し、下板と摩擦圧接できれば特に限定されず、例えば5kN以上の加圧力で、1000rpm8000rpmの回転数が挙げられる。
本開示に係る摩擦圧接用鋼板と他の部材とを摩擦圧接によって接合することで、接合部端部における亀裂の発生が抑制され、優れた継手強度を有する接合継手を得ることができる。そのため、本開示に係る摩擦圧接用鋼板は、例えば、自動車の車体部品や建築物の構造体など、摩擦圧接を利用した様々な構造部品の製造に適用することが可能である。
例えば、本開示の別の態様に係る自動車用部材は、上述された実施形態に係る接合継手(複合部材)を有する。これにより、継手強度に優れる自動車用部材とすることができる。なお、自動車用部材の種類は特に限定されない。
以下、実施例によって本開示に係る摩擦圧接用鋼板をより具体的に説明する。尚、本開示に係る摩擦圧接用鋼板はこれらの実施例に限定されるものではない。
[摩擦圧接用鋼板の製造]
表1に示す化学成分を有する材料を実験室にて溶解して鋳込んだインゴットを熱間圧延(加熱温度1250℃、圧延温度(仕上げ圧延温度)900℃のち500℃まで水冷却、その後空冷)した後、冷間圧延にて厚さ1.40mmとした。なお、表1に示す成分以外の残部はFe及び不純物である。
冷間圧延後に焼鈍炉にて焼鈍して表層を脱炭層とした鋼板、及び表層に脱炭層のない鋼板を作製した。焼鈍は、鋼板の表面温度を800℃まで30℃/sで上昇させた後、表2に記載の時間にて保持した後に50℃/sで冷却した。また、雰囲気は5%Hを含むNガス雰囲気として、露点は-30℃および5℃の二通りとした。
また、実験室にて溶解して鋳込んだインゴットを熱間圧延する際に、表1の成分番号1の成分系を軟鋼(C含有量は表2における「深さ45μmまでの炭素量[%]」に相当)で表裏面を挟んだクラッド鋼板(No.38、39)、および成分番号1の成分系の鋼板と軟鋼とを一枚ずつあわせて圧延したクラッド鋼板(No.40)を作製した。このクラッド鋼板を冷延し、焼鈍して供試した。
上記のようにして摩擦圧接用鋼板No.1~40を製造した。
なお、各表における下線は本開示の範囲から外れることを意味する。
[鋼板の引張強さの測定]
得られた鋼板に対して、JIS5号の引張試験片を作製してJIS Z 2241:2011に準拠して引張試験を行い、引張強さを測定した。
[C含有量の測定]
摩擦圧接用鋼板の表面から45μmまでの表層領域におけるC含有量、及び内部のC含有量の測定方法は以下の通りとした。
鋼板表層のC含有量については、グロー放電発光分光分析により、鋼板表面から深さ方向のC含有量分布を分析した。摩擦圧接用鋼板における内部のC含有量は、摩擦圧接用鋼板の表面を0.2mm削った後に切粉試料として高周波燃焼法にて分析した。
表層領域におけるC含有量は、表2に「深さ45μmまでの炭素量[%]」として記載した。また、内部のC含有量は、表1に示すインゴットのC含有量と同じであった。
[摩擦圧接]
これらの鋼板に摩擦圧接を行った。摩擦圧接は、1000MPa級の銅製の丸棒(直径4.5mm、長さ7mm)を用い、上記の得られた鋼板No.1~40に対してそれぞれ摩擦圧接を行って接合継手を製造した。摩擦圧接は、上記にて作製した鋼板に加圧力7kN、回転数5000rpmにて実施した。加圧時間は1.5sとした。
[評価]
上記摩擦圧接により得られた接合継手の摩擦圧接面の中心を通り摩擦圧接面に垂直な面で切断し断面を顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、亀裂欠陥の有無を判断した。
また、鋼板の引張試験において、引張強さが780MPaを下回るものを強度不足と判断した。また、鋼板製造中に破断が生じて又は圧延ができずに次工程での試験ができないものなどは製造困難と判断した。
本開示における鋼成分を有し、引張強さが780MPa以上である鋼板(本発明例)を用いた接合継手は、接合部における亀裂欠陥は見られなかった。一方、本開示における鋼成分を有さず、引張強さが780MPa未満である鋼板(比較例)を用いた接合継手では、接合部における亀裂欠陥が見られた。
なお、鋼板番号13~16(参考例)は内部領域におけるC含有量が0.25%未満であり、接合部における亀裂が発生しない成分系である。
3、10 上板
2B、20 下板
1B、1、30 接続部材
10A、10B 接合継手
11 軸部
12 頭部
31B 貫通孔
32 頭部
34 軸部
、40 接合部

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C含有量が、表面から深さ0.2mmよりも内部の領域において0.25~0.70%であり、かつ少なくとも片面側の表面から深さ45μmまでの領域において0.25%未満であり、
    Si:0.10~3.50%、
    Mn:0.50~8.00%、
    P:0.020%以下、
    S:0.050%以下、
    Al:3.000%以下、及び
    N:0.010%以下であり、
    残部が、Fe及び不純物からなる鋼成分を有し、
    引張強さが780MPa以上である、
    摩擦圧接用鋼板。
  2. 前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ti:0.300%以下、
    Nb:0.300%以下、及び、
    V:0.30%以下
    からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1に記載の摩擦圧接用鋼板。
  3. 前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Cr:5.0%以下、及び、Mo:2.00%以下の1種又は2種を含む請求項1又は請求項2に記載の摩擦圧接用鋼板。
  4. 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cu:2.00%以下、及び、Ni:10.0%以下の1種又は2種を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の摩擦圧接用鋼板。
  5. 前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.020%以下を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の摩擦圧接用鋼板。
  6. 前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ca:0.003%以下、
    REM:0.05%以下、
    Mg:0.05%以下、及び
    Zr:0.05%以下
    からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の摩擦圧接用鋼板。
  7. 表面にZn及びAlの少なくとも一方を含むめっき層が形成されている請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の摩擦圧接用鋼板。
  8. 第1の板材と、
    請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の摩擦圧接用鋼板であって、前記片面側に前記第1の板材が重ね合わされた第2の板材と、
    頭部及び軸部を有し、前記第1の板材と前記第2の板材とを接続する接続部材と、
    を含み、
    前記接続部材の前記軸部が前記第1の板材を貫通して前記軸部の先端部が前記第2の板材の前記片面側と接合されており、前記第1の板材が前記接続部材の前記頭部と前記第2の板材との間で固定された構造を有する、
    複合部材。
  9. 請求項8に記載の複合部材を備えた自動車用部材。
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