JP7423261B2 - 透明部材および撮像装置並びに透明部材の製造方法 - Google Patents
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Description
図1は、本発明にかかる透明部材の一実施形態であって、厚さ方向(基材表面の法線と平行な方向)の断面を示す模式図である。同図において、本発明にかかる透明部材10は、樹脂基材16の上に、多孔質層14と多孔質層が樹脂基材16に侵入した混合層15からなる親水性被膜を有している。本発明において、「透明」とは、可視光に対する透過率が20%以上の特性を意味する。
(1)太陽光と酸素によりに、樹脂基材表面が酸化劣化する。
(2)雨による吸水や太陽光による温度変化によって樹脂基材が膨張・収縮する。
<多孔質層>
多孔質層14は、バインダー11によってシリカ粒子12が互いに接合され、シリカ粒子12間およびバインダー11内に空隙13を含むネットワーク構造を有している。つまり、ネットワーク構造とは、シリカ粒子同士がバインダーで互いに接合されて形成された構造である。多孔質層14の空隙率は、40%以上55%以下であることが好ましい。多孔質層14の空隙率が40%以上である場合は、膜の内部応力を適度に保つことで屋外暴露環境時に膜のクラックの発生を抑制することができ、ヘイズの上昇を抑制し、親水性を維持できる。また、多孔質層14の空隙率が55%以下である場合は、親水膜のヘイズを小さくすることができ、透明性を保つことができる。さらに、バインダー11とシリカ粒子12が親水性であるため、多孔質層14は親水性を有しており、多孔質層14の表面における水に対する接触角は30°以下となる。また、多孔質層14の膜厚は100nm以上800nm以下であることが好ましい。多孔質層14の膜厚が100nmより小さい場合は、混合層15と多孔質層14のネットワーク構造による樹脂基材16のクラックの発生の抑制が十分でなく、膜のクラックが発生してしまい、ヘイズの上昇を抑制し、親水性を維持することができない場合がある。また、多孔質層14の膜厚が800nmより大きい場合は、親水性被膜の内部応力が増加することで、膜のクラックが発生してしまい、ヘイズの上昇を抑制し、親水性を維持することができない場合がある。
(式1) 空隙率=100×(多孔質層の屈折率-1.46)÷(1.00-1.46)
シリカ粒子12の平均粒子径は、10nm以上60nm以下であることが好ましい。シリカ粒子12の平均粒子径が10nm以上である場合は、粒子間にできる空隙13を適度に大きくすることができ、所望の空隙率を実現し、膜の内部応力を適度に保つことができる。そのため、屋外暴露環境時に膜のクラックの発生を抑制することができ、ヘイズの上昇を抑制し、親水性を維持することができる。また、シリカ粒子12の平均粒子径が60nm以下であると、粒子間にできる空隙13のサイズを適度に小さくすることができ、空隙13やシリカ粒子12による光の散乱を発生させることなく、ヘイズの上昇を抑制することができ好ましい。
バインダー11は、親水性被膜の耐摩耗性および環境信頼性並びにシリカ粒子12との密着力によって適宜選択することが可能であるが、シリカ粒子12との親和性が高く多孔質層の耐摩耗性を向上させる、シリカバインダーを用いることが好ましい。シリカ(SiO2)バインダーの中でも、シリケートの加水分解縮合物を用いることがより好ましく、4官能シリケートの加水分解縮合物を用いることがさらに好ましい。
混合層15はシリカ粒子同士がバインダーで互いに接合されて形成されたネットワーク構造の空隙に樹脂基材16が侵入した層であり、樹脂基材16の多孔質層14が設けられた側に設けられている。バインダーとシリカ粒子とで形成されたネットワーク構造の空隙に侵入した樹脂基材16の最上部からネットワーク構造の最下部までの範囲が混合層15である。屋外環境に設置された際に、太陽光と酸素によって樹脂基材16は酸化劣化し得る。しかし、混合層によって酸素に接触する樹脂基材16の表面積を減少させることができるため、樹脂基材16の酸化劣化を抑制することができる。さらに混合層15と多孔質層14が連続したネットワーク構造を有することで、樹脂基材16の酸化劣化に伴う応力を緩和しクラックの発生を抑制する。
樹脂基材16の材質としては、透明なアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル等の樹脂を用いることができる。樹脂基材16の形状は限定されることはなく、板状であってもフィルム状であってもよく、また、平板状であっても、曲面、凹面または凸面を有する形状、例えば半球状のドーム形状等であってもよい。なお、樹脂基材の可視光に対する透過率は、50%以上であることが好ましい。
次に、本発明にかかる透明部材の製造方法についてその一例を説明する。
本発明にかかる透明部材の製造方法は、樹脂基材16の上に多孔質層14と混合層15を形成する工程を有する。
多孔質層14中に残留する溶媒は、3.0mg/cm3以下であることが好ましい。
図2は、本発明の撮像装置の一実施形態を示す模式図であり、図2(a)は定点観察型の監視カメラ、図2(b)はパン・チルト・ズーム駆動が可能な旋回型の監視カメラである。図2(a)および(b)に示す撮像装置は、装置本体1および2に、保護カバーとして機能する本発明にかかる透明部材(保護カバー)3を有し、装置本体1および2は、映像データを取得する光学系を備える。また、透明部材3は、少なくとも装置本体1および2の光学系を覆い、外部からの塵や衝撃から防御する。図2(a)の保護カバー3は平面形状の箱型、図2(b)の保護カバー3は半球形状のドーム型となっているが、保護カバー3の形状はこれらに限定されない。
(塗工液の調製)
まず、本発明にかかる透明部材の製造に用いる塗工液について説明する。
ケイ酸エチル12.48gにエタノール13.82gと硝酸水溶液(濃度3%)を加え、室温で10時間攪拌し、シリカバインダー溶液(固形分濃度12.0質量%)を調製した。
鎖状シリカ粒子の2-プロパノール(IPA)分散液(商品名:IPA-ST-UP、日産化学工業株式会社製、固形分濃度15.5質量%)20.00gを、溶媒としてIPA(沸点:82.5℃)85.00gとジグライム(沸点:162.0℃)15.00gを用いて希釈した後に(1)で調製したシリカバインダー溶液2.60gを加えて室温で10分間攪拌した。その後、50℃で1時間攪拌してシリカ粒子塗工液Aを調製した。動的光散乱法による粒度分布測定(商品名:ゼータサイザーナノZS、マルバーン社製)により、シリカ粒子塗工液A中に、平均粒径15nmのシリカ粒子が円相当径で平均95nmに連なった鎖状シリカ粒子が分散していることを確認した。
溶媒としてIPA85.00gとジブチルエーテル(沸点:140.8℃)15.00gを用いること以外はシリカ粒子塗工液Aと同様にしてシリカ粒子塗工液Bを調製した。
溶媒としてIPA85.00gとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:140.0℃)15.00gを用いること以外はシリカ粒子塗工液Aと同様にしてシリカ粒子塗工液Cを調製した。
溶媒としてIPA70.00gと2-ヘプタノン(沸点:151.0℃)30.00gを用いること以外はシリカ粒子塗工液Aと同様にしてシリカ粒子塗工液Dを調製した。
溶媒としてIPA70.00gとジグライム30.00gを用いること以外はシリカ粒子塗工液Aと同様にしてシリカ粒子塗工液Eを調製した。
溶媒としてIPA100.00gを用いること以外はシリカ粒子塗工液Aと同様にしてシリカ粒子塗工液Fを調製した。
溶媒としてIPA70.00gとテトラヒドロフラン(沸点:66.0℃)30.00gを用いること以外はシリカ粒子塗工液Aと同様にしてシリカ粒子塗工液Gを調製した。
溶媒としてIPA105.00gとジグライム30.00gを用いること以外はシリカ粒子塗工液Aと同様にしてシリカ粒子塗工液Hを調製した。
直径(φ)50mm厚さ4mmの光透過率が約80%のポリカーボネート基材(nd=1.58、νd=30.2)に、シリカ粒子塗工液Aを適量滴下し、2000rpmで20秒スピンコートを行なった。その後熱風循環オーブン中で90℃15分間加熱し、多孔質層および混合層が形成された透明部材を作成した。シリカ粒子の平均フェレ径は15nmであった。
シリカ粒子塗工液Aの代わりにシリカ粒子塗工液Bを用いた以外は実施例1と同様にして、透明部材を作成した。
シリカ粒子塗工液Aの代わりにシリカ粒子塗工液Cを用いた以外は実施例1と同様にして、透明部材を作成した。
シリカ粒子塗工液Aの代わりにシリカ粒子塗工液Dを用いた以外は実施例1と同様にして、透明部材を作成した。
シリカ粒子塗工液Aの代わりにシリカ粒子塗工液Eを用いた以外は実施例1と同様にして、透明部材を作成した。
実施例1と同様にして作成した透明部材に対して、さらにシリカ粒子塗工液Fを用いてコート行った。コートは、シリカ粒子塗工液Fを適量滴下し、2000rpmで20秒スピンコートを行ない、熱風循環オーブン中で90℃15分間加熱する一連の工程を2度繰り返し、透明部材を作成した。
シリカ粒子塗工液Aの代わりにシリカ粒子塗工液Fを用いた以外は実施例1と同様にして、透明部材を作成した。
実施例1と同様にして作成した親水性被膜付き透明部材に対して、さらにシリカ粒子塗工液Fを用いてコート行った。コートは、シリカ粒子塗工液Fを適量滴下し、2000rpmで20秒スピンコートを行ない、熱風循環オーブン中で90℃15分間加熱する一連の工程を3度繰り返し、親水性被膜付き透明部材を作成した。
シリカ粒子塗工液Aの代わりにシリカ粒子塗工液Gを用いた以外は実施例1と同様にして、透明部材を作成した。
シリカ粒子塗工液Aの代わりにシリカ粒子塗工液Hを用いた以外は実施例1と同様にして、透明部材を作成した。
次に、実施例および比較例で作成した透明部材の評価方法について説明する。
(1)多孔質層と混合層の膜厚の測定
分光エリプソメータ(商品名:VASE、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製)を用いて波長380nmから800nmの範囲で測定し多孔質層および混合層の膜厚を求めた。
分光エリプソメータ(商品名:VASE、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製)を用い、波長380nmから800nmまで測定し、解析から多孔質層の屈折率を求め、式1を用いて多孔質層の空隙率を算出した。
集束イオンビーム装置(商品名:SMI3050、エスアイアイ・ナノテクノロジー製)により膜を切り出し、混合層の膜厚方向の断面が観察できるように薄片化した。混合層の膜厚方向の断面状態を走査型透過電子顕微鏡(商品名:S-5500日立ハイテクノロジー製)により、倍率100000倍の視野で明視野観察を行った。その後、観察した観察画像の画像処理を行った。画像処理方法としては、image Pro PLUS(メディアサイバネティクス社製)など市販の画像処理ソフトを用いた。所定の画像領域において、必要であれば適宜コントラスト調整を行い混合層の膜厚を算出し、1μmの長さの範囲における膜厚ばらつきを算出した。
全自動接触角計(商品名:DM-701、共和界面科学株式会社製)を用い、23℃50%RHで純水2μlの液滴を接触した時の接触角を測定した。
ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いヘイズを測定した。
透明部材をキセノンウェザーメーター(商品名:スーパーキセノンウェザーメーター SX75、スガ試験機株式会社製)に投入した。光照射強度を180W/m2に設定し、光照射と放水を18分、光照射のみを1時間42分を1サイクルとして、合計300サイクルの計600時間試験し評価した。試験後の透明部材の接触角を(4)接触角の測定と同様にして測定した。この屋外暴露試験は、100時間が実際の屋外暴露1年に相当する。
接触角が30°以下であれば、透明部材の表面に水滴ができるのを十分に抑制することができる。またヘイズが1以下であれば、撮影時に明瞭な画像が取得することができる。したがって、初期値および屋外暴露試験後の値が、いずれにおいても接触角が30°以下でヘイズが1以下であれば良と評価し、いずれかが接触角が30°より大きいあるいはヘイズが1より大きい場合は不良とした。
SPM(商品名:L-trace&NanoNaviII、SIIナノテクノロジー社製)を用いて、2μm×2μmの範囲の表面形状を測定し、そこからRaを算出した。
実施例1~6および比較例1~4についての測定結果および評価結果を表1に示す。
11 バインダー
12 シリカ粒子
13 空隙
14 多孔質層
15 混合層
16 樹脂基材
1 装置本体
2 装置本体
3 透明部材(保護カバー)
30 撮像装置
31 光学系(レンズ)
32 イメージセンサ
33 映像エンジン
34 圧縮出力回路
35 出力部
36 筐体
Claims (16)
- 樹脂からなる樹脂層と、
複数のシリカ粒子と、前記複数のシリカ粒子を接合するバインダーと、前記樹脂と、を有し、前記樹脂層の上に配置された混合層と、
前記複数のシリカ粒子と、前記複数のシリカ粒子を接合するバインダーと、を有し、空隙が設けられ、前記混合層の上に配置された多孔質層と、を有し、
前記混合層の膜厚が20nm以上160nm以下であり、
前記混合層の厚さ方向の断面の前記樹脂層の表面に沿った1μmの長さの範囲における膜厚ばらつきが15%以下であり、
前記多孔質層の膜厚が100nm以上800nm以下であることを特徴とする透明部材。 - 前記多孔質層の前記混合層が設けられた側とは逆の表面の表面平均面粗さRaが2nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明部材。
- 前記混合層の膜厚が、前記シリカ粒子の平均フェレ径よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の透明部材。
- 前記シリカ粒子の平均フェレ径が10nm以上60nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の透明部材。
- 前記バインダーが、シリカバインダーであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透明部材。
- 前記混合層の前記複数のシリカ粒子は、前記多孔質層の前記複数のシリカ粒子と、前記バインダーを介して接合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の透明部材。
- 前記樹脂層の可視光に対する透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の透明部材。
- 前記樹脂の材質は、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステルからなる群から選ばれるいずれか1つまたは複数であることを特徴とする請求項7に記載の透明部材。
- 前記多孔質層の前記混合層が設けられた側とは逆の表面における水に対する接触角が30°以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の透明部材。
- 筐体と請求項1から9のいずれか1項に記載の透明部材とで囲まれた空間内に、光学系と、前記光学系を介して映像を取得するイメージセンサと、を備える撮像装置。
- 樹脂からなる樹脂層の上にシリカを含む層が形成された透明部材の製造方法であって、
前記樹脂からなる樹脂基材の上に複数のシリカ粒子とバインダーとなる成分とを含む分散液を塗布し、該分散液を硬化することにより、前記複数のシリカ粒子と前記複数のシリカ粒子を接合するバインダーと前記樹脂とを有する混合層と、前記複数のシリカ粒子と前記複数のシリカ粒子を接合するバインダーを有し、空隙が設けられた多孔質層と、を形成する工程を有し、
前記混合層の膜厚が20nm以上160nm以下であり、
前記混合層の厚さ方向の断面の前記樹脂層の表面に沿った1μmの長さの範囲における膜厚ばらつきが15%以下であり、
前記多孔質層の膜厚が100nm以上800nm以下であること、
を特徴とする透明部材の製造方法。 - 前記シリカ粒子の平均フェレ径が、前記混合層の膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項11に記載の透明部材の製造方法。
- 前記シリカ粒子が鎖状シリカ粒子であり、
前記鎖状シリカ粒子を構成する個々の粒子の平均フェレ径が、前記混合層の膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項11または12に記載の透明部材の製造方法。 - 前記分散液は、前記樹脂の溶解性が相対的に高い溶媒と、前記樹脂の溶解性が相対的に低い溶媒とを含むことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の透明部材の製造方法。
- 前記樹脂の溶解性が相対的に高い溶媒の沸点が、前記樹脂の溶解性が相対的に低い溶媒の沸点より高いことを特徴とする請求項14に記載の透明部材の製造方法。
- 前記樹脂がポリカーボネートであり、
前記樹脂の溶解性が相対的に高い溶媒が、ジグライム、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ヘプタノンから選ばれ、
前記樹脂の溶解性が相対的に低い溶媒が2-プロパノールであることを特徴とする請求項14または15に記載の透明部材の製造方法。
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