以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はここに記載の特定の方法論、プロトコル及び試薬には、これらは変わりうるので、限定されないことを理解されたい。また、ここで使用される用語は、特定の実施態様を説明するためのみのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないこともまた理解されたい。別の定義がなされない限り、ここで使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
次に、本発明の要素を説明する。これらの要素は特定の実施態様と共に列挙されているが、更なる実施態様を創出するために、それらを任意の方法及び任意の数で組み合わせてもよいことを理解されたい。様々に説明された実施例及び好ましい実施態様は、明示的に説明された実施態様のみに本発明を限定するように解釈されるべきではない。この説明は、明示的に説明された実施態様を任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施態様を裏付け、包含すると理解されるべきである。更に、この出願における全ての説明された要素のあらゆる並び替えと組み合わせが、文脈がそうでないことを示さない限り、本出願の説明により開示されているとみなされるべきである。
好ましくは、ここで使用される用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)”, H.G.W. Leuenberger, B. Nagel,及びH. Kolbl編, Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland, (1995)に記載されている通りに定義される。
本発明の実施には、特に明記しない限り、当該分野の文献で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技術の一般的な方法が用いられる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版, J. Sambrook等編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)。
本明細書と続く特許請求の範囲を通して、文脈が他の定義を必要としない限り、「含む(comprise)」という語、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形語は、述べられたメンバー、整数又は工程又はメンバー群、整数群又は工程群を包含することを意味し、任意の他のメンバー、整数又は工程又はメンバー群、整数群又は工程群を除外することを意味していないことが理解される。本発明を記載する文脈において(特に特許請求の範囲において)使用される「a」及び「an」及び「the」という用語及び類似の引用は、ここで別の定義を示さない限り又は明らかに文脈と矛盾しない限り、単数と複数の双方を包含すると解釈される。ここでの値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る個々の各値を個別に参照する簡単な方法となることを意図している。ここで別の定義が示されない限り、個々の各値は、ここで個々に記載されているかのように、明細書に組み込まれている。ここに記載された全ての方法は、ここに別の方法が示されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施されうる。ここで提供されるありとあらゆる例、又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく例証することを意図しており、特許請求の範囲に記載等された発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の如何なる文言も、本発明の実施に不可欠な請求項非記載の要素を示していると解釈されるべきではない。
本明細書の全体を通して幾つかの文献が引用される。ここで引用される各文献(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、説明書等々を含む)は、上記又は下記にかかわらず、その全体が出典明示によりここに援用される。ここの如何なるものも、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を与えられないという自認として解釈されるべきではない。
本発明によれば、トスカーナウイルス由来のウイルスエスケープタンパク質NSs(N)はIFN応答の強力な阻害剤であり、RNAによってコードされた対象のペプチド又はタンパク質の発現を増強するためにRNAトランスフェクションと組み合わせて使用できることが観察された。
一実施態様では、本発明の方法はインビトロ法である。一実施態様では、本発明の方法は、例えば手術による、ヒト又は動物対象からの細胞の除去を含むか又は含まない。本発明の方法から得られる細胞は、対象に投与されうる。細胞は、対象に対して自己、同系、同種異系又は異種でありうる。トランスフェクトされた細胞は、当該分野で知られた任意の手段を使用して対象に導入されうる。
他の実施態様では、細胞は、患者などの対象に存在していてもよい。これらの実施態様では、本発明の方法は、対象へのRNAの投与を含むインビボ方法である。
本発明の一実施態様では、例えば一又は複数のリプログラミング因子などの、発現されるペプチド又はタンパク質をコードするRNAの導入、あるいはRNAの最初の導入(例えば、トランスフェクションを繰り返す場合)の前、同時及び/又は後に、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子が細胞に提供される。一実施態様では、RNAの導入あるいはRNAの最初の導入(例えば、トランスフェクションを繰り返す場合)の後、好ましくは直後に、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子が細胞に提供される。
特に好ましい一実施態様では、ウイルス由来因子をコードするRNAを細胞に導入することにより、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子が細胞に提供される。本発明の一実施態様では、ウイルス由来因子をコードするRNAは、発現されるペプチド又はタンパク質をコードするRNAの導入、あるいは発現されるペプチド又はタンパク質をコードするRNAの最初の導入(例えば、トランスフェクションを繰り返す場合)の前、同時、及び/又は後に、細胞に導入される。一実施態様では、ウイルス由来因子をコードするRNAは、発現されるペプチド又はタンパク質をコードするRNAの導入、あるいは発現されるペプチド又はタンパク質をコードするRNAの最初の導入(例えば、トランスフェクションを繰り返す場合)の後、好ましくは直後に、細胞に導入される。
ブニヤウイルス科には、動物に感染するオルソブニヤウイルス属、フレボウイルス属、ハンタウイルス属、及びナイロウイルス属、及び植物に感染するトスポウイルス属が含まれる。フレボウイルスは、スナバエ熱群とウークニエミ群で構成される。リフトバレー熱ウイルス(RVFV)、トスカーナウイルス(TOSV)、スナバエ熱シチリアウイルス(SFSV)、及びプンタトロウイルス(PTV)を含むスナバエ熱群の幾つかのメンバーは、ヒトに対して病原性である。TOSVは、L(大)、M(中)、S(小)と指定される三つのセグメントを含む、マイナスセンス一本鎖RNAゲノムを保有するエンベロープウイルスである。Lセグメントはウイルスポリメラーゼ(L)をコードし、Mセグメントはエンベロープ糖タンパク質Gn及びGcをコードし、Sセグメントは核タンパク質(N)をコードする。加えて、Sセグメントはまたアンビセンス式で非構造タンパク質NSsをコードする。フレボウイルスNSsタンパク質は、宿主の自然免疫応答からのウイルス回避において重要な役割を果たす。
本発明によれば、「トスカーナウイルスNSsタンパク質」という用語は、トスカーナウイルス由来の非構造タンパク質NSsに関する。特に、この用語は、次のアミノ酸配列を含むタンパク質に関する:
MQSRAVILKHRSGSGHKRSLPRFYIDCDLDTFDFEKGCSLIENEFPIYINNYEVVYKSKPTLSHFLIEKEFPAVLGPGMISAVRTRLYEPTMRELYQESIHQLKRNNKKYLLSALRWPTGIPTLEFIDYYFEELLFLSEFDPGSIQRYLKLLVKASGLYNSTIEEQLVEIHRRVLIEGKKHGLTAFDLPGNDILGDICVVQAARVTRLVAKTFSKMTRDTHLMIYFSISPVELVLNKLDKKEDKRAKAKGLMSMCAARSYDYFMRTDLGFRETALSTFWAKDWPTLQETILSDKRCLKEDMRVTKWLPSPPHYPPL(配列番号:1)。
「トスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアント」という用語は、トスカーナウイルスNSsタンパク質と同様の機能を示す任意のタンパク質、特に任意のウイルス由来タンパク質に関する。特定の一機能は、細胞においてペプチド又はタンパク質をコードするRNAの発現を高めることである。従って、この用語には、トスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的断片又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的配列バリアント又はその断片を含むタンパク質が含まれる。
アミノ酸配列(ペプチド又はタンパク質)に関する「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわち、N末端及び/又はC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えば、オープンリーディングフレームの3’末端を欠く切断型オープンリーディングフレームの翻訳によって、取得可能である。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、例えば、切断型オープンリーディングフレームが翻訳を開始する役割を果たす開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5’末端を欠く切断型オープンリーディングフレームの翻訳によって、取得可能である。アミノ酸配列の断片は、例えばアミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。
「バリアント」という用語には、全てのスプライスバリアント、翻訳後修飾バリアント、コンフォメーション、アイソフォーム、及び種ホモログ、特に細胞によって自然に発現されるものが含まれる。
本発明の目的では、アミノ酸配列の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアント及び/又はアミノ酸置換バリアントを含む。アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列における単一又は二つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、一又は複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、得られる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入もまた可能である。アミノ酸付加バリアントは、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上のアミノ酸など、一又は複数のアミノ酸のアミノ及び/又はカルボキシ末端融合を含む。アミノ酸欠失バリアントは、1、2、3、5、10、20、30、50、又はそれ以上のアミノ酸の除去など、配列からの一又は複数のアミノ酸の除去によって特徴付けられる。欠失はタンパク質のどの位置にあってもよい。タンパク質のN末端及び/又はC末端に欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端及び/又はC末端切断バリアントとも呼ばれる。アミノ酸置換バリアントは、配列内の少なくとも一つの残基が除去され、その場所に別の残基が挿入されていることを特徴とする。相同タンパク質又はペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置にある修飾、及び/又はアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換するものが好ましい。好ましくは、タンパク質バリアントのアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電した又は未荷電のアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖に関連したアミノ酸のファミリーの一つの置換が含まれる。天然に生じるアミノ酸は、一般に、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非荷電の極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸の4ファミリーに分類される。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸としてまとめて分類される場合がある。
好ましくは、所定のアミノ酸配列と、該所定のアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の度合は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であろう。類似性又は同一性の度合は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は約100%であるアミノ酸領域に対して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200のアミノ酸からなる場合、類似性又は同一性の度合は、好ましくは、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200のアミノ酸、好ましくは連続アミノ酸に対して与えられる。好ましい実施態様では、類似性又は同一性の度合は、参照アミノ酸配列の全長に対して与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアライメントは、好ましくは最良配列アラインメントを使用し、例えばAlignを使用し、標準設定を使用し、好ましくはEMBOSS::needle,Matrix:Blosum62,Gap Open 10.0,Gap Extend0.5を使用する、当該分野で既知のツールを用いて行うことができる。
「配列類似性」は、同一であるか保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセントを示す。二つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸又はヌクレオチドのパーセントを示す。
「パーセント同一性」という用語は、最良のアライメント後に得られた、比較される二つの配列間で同一であるアミノ酸残基のパーセントを示すことが意図され、このパーセントは純粋に統計的であり、二つの配列間の差はランダムにその全長にわたって分布している。二つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、これらの配列を最適に整列させた後に比較することにより実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を特定し比較するために、セグメント毎に又は「比較ウインドウ」により実施される。比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業のほか、Smith及びWaterman(1981, Ads App. Math. 2, 482)の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman及びWunsch(1970, J. Mol. Biol. 48, 443)の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson及びLipman(1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 85, 2444)の類似性検索法によって、又はこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータープログラム(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wis.)のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)によって、作り出されうる。
パーセント同一性は、比較されている二つの配列間の同一位置の数を決定し、この数を比較される位置の数で除算し、得られた結果に100を掛けて、これら二つの配列間のパーセント同一性を得ることによって計算される。
本発明によれば、相同アミノ酸配列は、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98又は少なくとも99%の同一性を示す。
ここに記載のアミノ酸配列バリアントは、例えば組換えDNA操作により、当業者により容易に調製されうる。置換、付加、挿入又は欠失を有するペプチド又はタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook等(1989)に詳細に記載されている。更に、ここに記載のペプチド及びアミノ酸バリアントは、例えば、固相合成及び類似の方法などの既知のペプチド合成技術を用いて容易に調製することができる。
本発明は、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語に含まれる、ここに記載のペプチド又はタンパク質の誘導体を含む。本発明によれば、タンパク質及びペプチドの「誘導体」は、タンパク質及びペプチドの修飾形態である。そのような修飾は、任意の化学修飾を含み、タンパク質又はペプチドに関連する任意の分子、例えば炭水化物、脂質及び/又はタンパク質又はペプチドの単一又は複数の置換、欠失及び/又は付加を含む。一実施態様では、タンパク質又はペプチドの「誘導体」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護/ブロッキング基の導入、タンパク分解性切断又は抗体又は別の細胞リガンドへの結合から生じる修飾アナログを含む。「誘導体」という用語はまた前記タンパク質及びペプチドの全ての機能的な化学的均等物にも拡張される。好ましくは、修飾ペプチドは、増加した安定性及び/又は増加した免疫原性を有する。
一実施態様では、本発明の方法は、(i)細胞外IFNによるIFN受容体の結合を防止すること、及び/又は(ii)細胞内IFNシグナル伝達を阻害することを更に含みうる。これは、細胞に(i)細胞外IFNによるIFN受容体の結合を防ぐ薬剤及び/又は(ii)細胞内IFNシグナル伝達を阻害する薬剤を提供することによって達成することができる。
一実施態様では、細胞は処理されて(i)細胞外IFNによるIFN受容体の結合を防止し、及び/又は(ii)発現されるペプチド又はタンパク質をコードするRNAの導入、あるいはRNAの最初の導入(例えば、トランスフェクションが繰り返される場合)の前、同時及び/又は後に細胞内IFNシグナル伝達を阻害する。一実施態様では、細胞は処理されて、(i)細胞外IFNによるIFN受容体の結合を防止し、及び/又は(ii)RNAの導入、あるいはRNAの最初の導入(例えば、トランスフェクションが繰り返される場合)の後、好ましくは直後に細胞内IFNシグナル伝達を阻害する。
インターフェロンは、抗ウイルス、抗増殖及び免疫調節活性を特徴とする重要なサイトカインである。インターフェロンは二つのタイプに分類されうる。IFN-γは唯一のII型インターフェロンである;他の全てはI型インターフェロンである。I型とII型のインターフェロンは、遺伝子構造(II型インターフェロン遺伝子には三つのエクソンがある;I型は一つ)、染色体の位置(ヒトでは、II型は染色体12に位置する;I型インターフェロン遺伝子は結合され、染色体9上にある)、及びそれらが生成される組織型(I型インターフェロンは遍在的に合成され、II型はリンパ球によって合成される)において異なる。I型インターフェロンは細胞受容体への結合を互いに競合的に阻害するが、II型インターフェロンには異なる受容体がある。本発明によれば、「インターフェロン」又は「IFN」という用語は、好ましくは、I型インターフェロン、特にIFN-α及びIFN-βに関する。
IFNは、ウイルス複製サイクルを妨げる可能性がある多量の抗ウイルス遺伝子の発現を誘導する。本発明によれば、「抗ウイルス活性エフェクタータンパク質」という用語は、その転写がI型IFNによってシグナル伝達されるIFN刺激遺伝子(ISG)によってコードされる一群のタンパク質に関する。これらのタンパク質は、侵入するウイルスを排除することを目的として、異なるウイルス成分とウイルスライフサイクルの異なる段階を標的とする。「抗ウイルス活性エフェクタータンパク質」は、ウイルス転写を個別にブロックし、ウイルスRNAを分解させ、翻訳を阻害し、タンパク質機能を改変してウイルス複製の全工程を制御する様々なエフェクター経路に関与している。そのようなタンパク質には、2’,5’-オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)、特に2’,5’-オリゴアデニル酸合成酵素1(OAS1)、RNA依存性プロテインキナーゼR(PKR)、及びRNaseLが含まれる。PKRとOASは両方ともdsRNAによって直接活性化される。従って、dsRNAはこれらの抗ウイルス活性エフェクタータンパク質の発現を誘導し、それらの活性化にもまた必要である。
本発明によれば、「細胞外IFNによるIFN受容体の結合を防止する」という用語は、その特異的受容体でのIFN、特にI型IFNの相互作用の阻害、すなわち遮断又は低減、従ってIFN機能の阻害又は低減に関する。細胞外IFNによるIFN受容体の結合は、例えば、細胞外IFNのための結合剤の提供により防止されうる。細胞外IFNによるIFN受容体の結合を防止することに一又は複数のタンパク質又はペプチド、例えばここに開示されるタンパク質又はペプチド、例えば細胞外IFNのための一又は複数の結合剤が関与する本発明の態様は、例えば核酸を細胞に導入することによる、これら一又は複数のタンパク質又はペプチドをコードする核酸、特にRNAの細胞への提供を含みうる。
例えば、B18Rタンパク質は、強力な中和活性を持つマウス、ヒト、ウサギ、ブタ、ラット、及びウシのI型インターフェロンに特異性を有するワクシニアウイルスでコードされたI型インターフェロン受容体である。B18Rタンパク質はWestern Reserveワクシニアウイルス株のB18R遺伝子によってコードされる。60~65kDの糖タンパク質はインターロイキン-1受容体に関連しており、クラスIIサイトカイン受容体ファミリーに属する他のI型IFN受容体とは異なり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。B18Rタンパク質は、ヒトIFNアルファに対して高い親和性(KD,174pM)を有している。ウイルス宿主応答修飾因子の中で、B18Rタンパク質は、可溶性細胞外、並びに細胞表面タンパク質として存在し、自己分泌及び傍分泌IFN機能の両方の遮断を可能にするという点で独特である。B18Rタンパク質は、ヒト細胞上のIFN-アルファ1、IFN-アルファ2、IFN-アルファ-8/1/8、及びIFN-オメガの抗ウイルス効力を阻害することが示されている。可溶性B18Rタンパク質は、IFN-アルファ、ベータ、デルタ、カッパを含むI型インターフェロンを中和するのに非常に強力である。
細胞外IFNによるIFN受容体の結合は、例えばIFN、特に細胞外IFNのレベルを低下させることにより、更に防止されうる。一実施態様では、細胞外IFNによるIFN受容体の結合は、IFN遺伝子発現を妨げることにより防止される。例えば、C型肝炎ウイルスのセリンプロテアーゼNS3/4Aタンパク質複合体は、IFNプロモーター活性を妨害し低下させることができ、IFN遺伝子発現の特異的な阻害剤である。
本発明によれば、「細胞内IFNシグナル伝達」という用語は、その特異的受容体と相互作用するIFNにより活性化される細胞内シグナル伝達事象及びエフェクター機能、特に抗ウイルス機能に関し、IFNにより誘導されるタンパク質、特に抗ウイルス活性のエフェクタータンパク質の機能を含む。特に、「細胞内IFNシグナル伝達」という用語には、PKR依存性経路の一部であるタンパク質、特にPKR及びeIF2-アルファ、及び/又はOAS依存性経路の一部であるタンパク質、特にOAS及びRNaseLによって発揮されるシグナル伝播及びエフェクター機能、特に抗ウイルス機能が含まれる。
「細胞内IFNシグナル伝達の阻害」という用語は、細胞内IFNシグナル伝達の阻害又は低減に関し、細胞内IFNシグナル伝達に関与するタンパク質、特にPKR依存性経路及び/又はOAS依存性経路の一部であるタンパク質の発現、活性又は活性化を阻害することにより達成されうる。例えば、多くのウイルスは、PKR及びOAS/RNase L経路に対抗する機構を進化させてきた。これらの機構は、細胞内IFNシグナル伝達を阻害するために本発明によって使用されうる。細胞内IFNシグナル伝達の阻害に一又は複数のタンパク質又はペプチド、例えばここに開示されるタンパク質又はペプチド、例えばPKR依存性経路及び/又はOAS依存性経路を阻害する一又は複数のタンパク質又はペプチドが関与する本発明の態様は、例えば核酸を細胞に導入することによる、これらの一又は複数のタンパク質又はペプチドをコードする核酸、特にRNAの細胞への提供を含みうる。
本発明によれば、PKR依存性経路は、PKRの活性又は活性化を阻害し又は低減する薬剤によって、又はeIF2-アルファを脱リン酸化するか又はそのリン酸化を防止し、それによってPKR誘発シグナルを停止する薬剤によって阻害されうる。例えば、細胞内IFNシグナル伝達は、PKRシグナル伝達カスケードに対するウイルス防御機構の任意のものを利用することにより、本発明によって阻害されうる。この点に関し、本発明は、デコイdsRNA(例えば、アデノウイルスVAI RNA;エプスタイン-バーウイルスEBER;HIV TAR)、PKR分解をもたらす化合物(例えば、ポリオウイルス2Apro)、例えばウイルスdsRNAを隠すことによってPKRの活性化を阻害する化合物(例えば、ワクシニアウイルスE3/E3L;レオウイルスσ3;インフルエンザウイルスNS1、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)US11)、二量体化を遮断する化合物(例えば、インフルエンザウイルスp58IPK;C型肝炎ウイルスNS5A)、偽基質(例えば、ワクシニアウイルスK3/K3L;HIV Tat)又は基質の脱リン酸化(例えば、単純ヘルペスウイルスICP34.5)の使用を含みうる。ワクシニアウイルスE3は、dsRNAに結合して隔離し、PKR及びOASの活性化を防ぐ25kDaのdsRNA結合タンパク質(遺伝子E3Lによってコードされる)である。E3はPKRに直接結合でき、その活性を阻害し、eIF2-アルファのリン酸化が低減される。ワクシニアウイルス遺伝子K3Lは、PKRの非リン酸化可能偽基質として作用し、eIF2-アルファのリン酸化を競合的に阻害するeIF2-アルファサブユニットの10.5kDaのホモログをコードする。ワクシニアウイルスC7/C7LはeIF2-アルファのリン酸化を阻害する。HSV-1由来のICP34.5タンパク質は、細胞性PP1ホスファターゼの調節サブユニットとして機能し、それを方向付けしてeIF2-アルファを脱リン酸化し、それによってPKR誘導シグナルを停止する。マウスサイトメガロウイルス(MCMV)タンパク質m142及びm143は、PKR活性化、翻訳開始因子eIF2のリン酸化、及びその後のタンパク質合成シャットオフを阻害するdsRNA結合タンパク質として特徴付けられている。
デコイRNAは、酵素を実際の基質ではなく偽基質に結合させ、よって酵素の活性を遮断するために、酵素のRNA基質と類似の構造を有する偽基質RNAである。
本発明によれば、「RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低下させる」という用語は、PKRの活性が人によって低下しない/低下しなかった正常な状況、特に細胞内の正常な状況と比較した、PKRのより低い程度のホモ二量体化、PKRのより低い程度の自己リン酸化及び/又はeIF2-アルファなどのPKRのキナーゼ基質である標的のより低い程度のリン酸化をもたらす処置に関する。好ましくは、前記用語は、PKRのより低い程度の自己リン酸化及び/又はPKRのキナーゼ基質である標的のより低い程度のリン酸化をもたらす全ての処置を含む。
一実施態様では、細胞におけるRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の活性を低下させることは、PKRの発現及び/又は活性の阻害剤で細胞を処理することを含む。本発明によれば、「発現及び/又は活性を阻害する」という語句は、発現及び/又は活性の完全な又は本質的に完全な阻害、及び発現及び/又は活性の低下を含む。
一実施態様では、前記PKR阻害剤はPKRタンパク質に向けられ、好ましくはPKRに特異的である。PKRは様々な方法で、例えばPKR自己リン酸化及び/又は二量体化の阻害、PKR偽活性化因子の提供、又はPKR偽基質の提供を通じて、阻害されうる。PKR阻害剤は、上で検討されたウイルス防御機構に関与する薬剤でありうる。例えば、ワクシニアウイルスE3Lは、おそらくdsRNA活性化因子を隔離することにより、ウイルス感染細胞のPKRを阻害するdsRNA結合タンパク質をコードする。ワクシニアウイルスによってもまたコードされるK3は、PKRに結合することにより、偽基質阻害剤として機能する。よって、ワクシニアウイルスE3Lの提供は、PKRの阻害をもたらしうる。アデノウイルスVAI RNA、HIV Tat又はエプスタイン・バーウイルスEBER1 RNAの提供は、PKR偽活性化をもたらしうる。よって、例えば、ここに記載されるもののようなPKR活性を遮断する全てのウイルス因子、すなわちウイルス由来の阻害剤が、PKRの活性を低下させるために使用されうる。
一実施態様では、PKR阻害剤は化学的阻害剤である。好ましくは、PKR阻害剤は、RNA誘導性PKR自己リン酸化の阻害剤である。好ましくは、PKR阻害剤はPKRのATP結合部位特異的阻害剤である。
一実施態様では、PKR阻害剤は6,8-ジヒドロ-8-(1H-イミダゾール-5-イルメチレン)-7H-ピロロ[2,3-g]ベンゾチアゾール-7-オンである。一実施態様では、PKR阻害剤は2-アミノプリンである。
更なる実施態様では、PKRの活性の阻害剤は、PKRに特異的に結合する抗体である。抗体のPKRへの結合は、PKRの機能を、例えば結合活性又は触媒活性を阻害することにより、妨げうる。
一実施態様では、ワクシニアウイルスE3及び/又はK3などの一又は複数のウイルス由来阻害剤で細胞を処理し、並びに一又は複数の化学的PKR阻害剤、例えば6,8-ジヒドロ-8-(1H-イミダゾール-5-イルメチレン)-7H-ピロロ[2,3-g]ベンゾチアゾール-7-オン及び/又は2-アミノプリンで細胞を処理することにより、細胞におけるPKRの活性を低下させることが想定される。
本発明によれば、OAS依存性経路は、OAS及び/又はRNaseLの活性又は活性化を阻害し又は低減する薬剤によって阻害されうる。例えば、ワクシニアウイルスE3は、dsRNAに結合して隔離し、OASの活性化を防ぐ25kDaのdsRNA結合タンパク質(遺伝子E3Lによってコードされる)である。
本発明によれば、「OASの活性を低下させる」という用語は、好ましくは、2’,5’-オリゴアデニル酸のより低い程度の産生、従ってRNaseLの活性化をもたらす処置に関する。
一実施態様では、細胞におけるOAS及び/又はRNaseLの活性を低下させることは、OAS及び/又はRNaseLの発現及び/又は活性の阻害剤で細胞を処理することを含む。本発明によれば、「発現及び/又は活性を阻害する」という語句は、発現及び/又は活性の完全な又は本質的に完全な阻害と発現及び/又は活性の低下を含む。
一実施態様では、次に「標的タンパク質」と呼ばれるPKR、OAS又はRNaseLの発現の阻害は、例えば、転写を阻害するか又は転写物の分解を誘導することにより、標的タンパク質をコードする転写物、すなわちmRNAの産生を阻害するか又はそのレベルを低減させることにより、及び/又は例えば、標的タンパク質をコードする転写物の翻訳を阻害することにより、標的タンパク質の産生を阻害することにより、起こりうる。一実施態様では、前記阻害剤は、標的タンパク質をコードする核酸に特異的である。特定の実施態様では、標的タンパク質の発現の阻害剤は、標的タンパク質をコードする核酸に選択的にハイブリダイズし、それに特異的であり、それにより、その転写及び/又は翻訳を阻害(例えば、低下)する阻害性核酸(例えば、アンチセンス分子、リボザイム、iRNA、siRNA、又はそれをコードするDNA)である。
一実施態様では、細胞外IFNによるIFN受容体の結合の防止は、オートクリン及び/又はパラクリンIFN機能を阻害する。一実施態様では、細胞外IFNによるIFN受容体の結合の防止は、細胞外IFNのためのウイルス結合剤などの細胞外IFNのための結合剤を提供することを含む。一実施態様では、細胞外IFNのためのウイルス結合剤は、ウイルスインターフェロン受容体である。一実施態様では、細胞外IFNのためのウイルス結合剤はワクシニアウイルスB18Rである。一実施態様では、細胞外IFNのためのウイルス結合剤は、結合剤をコードする核酸の形態で細胞に提供され、ここで、核酸は好ましくはRNAである。
一実施態様では、細胞内IFNシグナル伝達を阻害することは、一又は複数のIFN誘導性抗ウイルス活性エフェクタータンパク質を阻害することを含む。一実施態様では、IFN誘導性抗ウイルス活性エフェクタータンパク質は、RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)、2’,5’-オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)及びRNaseLからなる群から選択される。一実施態様では、細胞内IFNシグナル伝達を阻害することは、PKR依存性経路及び/又はOAS依存性経路を阻害することを含む。一実施態様では、PKR依存性経路の阻害は、eIF2-アルファリン酸化の阻害を含む。一実施態様では、eIF2-アルファリン酸化を阻害することは、PKRを阻害すること、及び/又はeIF2-アルファを模倣する偽基質を提供することを含む。一実施態様では、eIF2-アルファを模倣する偽基質は、eIF2-アルファを模倣するウイルス偽基質である。一実施態様では、eIF2-アルファを模倣するウイルス偽基質はワクシニアウイルスK3である。一実施態様では、eIF2-アルファを模倣するウイルス偽基質は、ウイルス偽基質をコードする核酸の形態で細胞に提供され、ここで、核酸は好ましくはRNAである。一実施態様では、PKRを阻害することは、少なくとも一種のPKR阻害剤で細胞を処理することを含む。一実施態様では、PKR阻害剤は、RNA誘導性PKR自己リン酸化を阻害する。一実施態様では、PKR阻害剤は、PKRのATP結合部位特異的阻害剤である。一実施態様では、PKR阻害剤はイミダゾロ-オキシインドール化合物である。一実施態様では、PKR阻害剤は、6,8-ジヒドロ-8-(1H-イミダゾール-5-イルメチレン)-7H-ピロロ[2,3-g]ベンゾチアゾール-7-オン及び/又は2-アミノプリンである。一実施態様では、PKR阻害剤はPKRのウイルス阻害剤である。一実施態様では、PKRのウイルス阻害剤はワクシニアウイルスE3である。一実施態様では、PKRのウイルス阻害剤は、阻害剤をコードする核酸の形態で細胞に提供され、核酸は好ましくはRNAである。一実施態様では、PKRを阻害することは、PKR遺伝子の発現のサイレンシングを含む。一実施態様では、OAS依存性経路の阻害は、RNaseLの活性化の阻害を含む。一実施態様では、OAS依存性経路の阻害は、OASの阻害を含む。一実施態様では、OASの阻害は、少なくとも一種のOAS阻害剤で細胞を処理することを含む。一実施態様では、OAS阻害剤はOASのウイルス阻害剤である。一実施態様では、OASのウイルス阻害剤はワクシニアウイルスE3である。一実施態様では、OASのウイルス阻害剤は、阻害剤をコードする核酸の形態で細胞に提供される。
一実施態様では、(i)細胞外IFNによるIFN受容体の結合の防止及び/又は(ii)細胞内IFNシグナル伝達の阻害の工程は、(i)ワクシニアウイルスB18R及び/又は(ii)ワクシニアウイルスE3又はワクシニアウイルスK3、又はその両方で細胞を処理することを含む。一実施態様では、ワクシニアウイルスB18R及び/又はワクシニアウイルスE3及び/又はワクシニアウイルスK3は、ワクシニアウイルスB18R及び/又はワクシニアウイルスE3及び/又はワクシニアウイルスK3を、同じ又は二つ以上の異なる核酸分子上の何れかでコードする核酸の形態で細胞に提供され、好ましくは核酸は、好ましくは細胞内で発現されるRNAと場合によってはトスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子をコードするRNAと共に細胞に導入されるRNAである。
トスカーナウイルス由来のウイルスエスケープタンパク質NS(N)は、IFN応答の成功裡の阻害のためにEKB(E3、K3、B18R)を置換できる。従って、本発明の方法は、一実施態様では、細胞に(i)細胞外IFNによるIFN受容体の結合を妨げる薬剤及び/又は(ii)細胞内IFNシグナル伝達を阻害する薬剤を提供することは含まない。従って、本発明の方法は、一実施態様では、ワクシニアウイルスB18R及び/又はワクシニアウイルスE3及び/又はワクシニアウイルスK3を細胞に提供することは含まず、好ましくはワクシニアウイルスB18R、ワクシニアウイルスE3及びワクシニアウイルスK3の何れかを細胞に提供することは含まない。
本発明によれば、上記のIFN阻害剤(トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子を含む)の代わりに、タンパク質をコードする核酸を提供できることを理解されたい。ここで使用される「核酸の形態で提供される」という語句は、この可能性を説明するためのものである。例えば、細胞は、タンパク質をコードする核酸、特にRNAでトランスフェクトされ得、核酸はタンパク質を産生するように細胞内で発現されうる。
本発明によれば、核酸は、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、より好ましくはRNA、最も好ましくはインビトロ転写RNA(IVT RNA)である。核酸には、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換えにより産生された分子及び化学的に合成された分子が含まれる。本発明によれば、核酸は、一本鎖又は二本鎖で線状又は共有結合的に閉環した分子として存在しうる。本発明によれば、核酸は単離されうる。「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介してインビトロで増幅されており、(ii)クローニングにより組換え的に産生され、(iii)例えば、ゲル電気泳動による切断及び分離によって精製され、又は(iv)例えば化学合成によって合成されていることを意味する。核酸は、細胞への導入、すなわち細胞のトランスフェクションのために、特に、DNA鋳型からのインビトロ転写により調製されうるRNAの形態で、用いられうる。RNAは、配列の安定化、キャッピング、及びポリアデニル化により、適用前に更に修飾されうる。
一を超えるペプチド又はタンパク質の発現のための核酸、特にRNAとして、異なるペプチド又はタンパク質が異なる核酸分子に存在するオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされる核酸型あるいは異なるペプチド又はタンパク質が同じ核酸分子に存在するオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされる核酸型の何れかを使用できる。従って、一を超えるリプログラミング因子をコードするRNAなど、一を超えるペプチド又はタンパク質をコードするRNAは、異なるペプチド又はタンパク質をコードする異なるORFを含む異なるRNA分子の混合物、又は異なるペプチド又はタンパク質をコードする異なるORFを含む単一のRNA分子に関連しうる。
本発明の文脈において、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくは完全に又は実質的にリボヌクレオチド残基から構成される分子に関する。「リボヌクレオチド」という用語は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。「RNA」という用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的又は完全に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、及び一又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は改変によって天然に生じるRNAとは異なる修飾RNAなどの組換え産生RNAを含む。そのような改変は、例えばRNAの一又は複数のヌクレオチドでのRNAの末端又は内部などへの非ヌクレオチド材料の付加を含みうる。RNA分子中のヌクレオチドは、非天然発生ヌクレオチド又は化学合成ヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドをまた含みうる。これらの改変されたRNAは、アナログ、特に天然に生じるRNAのアナログと称されうる。本発明によれば、RNAにはmRNAが含まれる。
「mRNA」という用語は「メッセンジャーRNA」を意味し、DNA鋳型を使用して産生され、ペプチド又はタンパク質をコードする転写物に関する。典型的には、mRNAは5’-UTR、タンパク質コード領域、3’-UTR、及びポリ(A)配列を含む。mRNAは、DNA鋳型からのインビトロ転写によって産生されうる。インビトロ転写方法は当業者に知られている。例えば、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
本発明によれば、一又は複数のリプログラミング因子をコードするRNAなどのペプチド又はタンパク質(ここでは目的のペプチド又はタンパク質とも呼ばれる)をコードするRNAは、ペプチド又はタンパク質をコードするmRNAあるいはペプチド又はタンパク質をコードするレプリコンRNAなどの自己複製RNAでありうる。更に、本発明による細胞への提供のためのトスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子をコードするRNAは、ウイルス由来因子をコードするmRNAあるいはウイルス由来因子をコードするレプリコンRNAなどの自己複製RNAでありうる。本発明の一実施態様では、目的のペプチド又はタンパク質をコードするmRNAである目的のペプチド又はタンパク質をコードするRNAは、ウイルス由来因子をコードするmRNAであるウイルス由来因子をコードするRNAと共に共トランスフェクトされる。本発明の一実施態様では、目的のペプチド又はタンパク質をコードするレプリコンRNAである目的のペプチド又はタンパク質をコードするRNAは、ウイルス由来因子をコードするmRNAであるウイルス由来因子をコードするRNAと共に共トランスフェクトされる。レプリコンRNAがトランスレプリコンRNAである場合、アルファウイルス非構造タンパク質をコードするRNA、例えばmRNA(ここでは機能的アルファウイルス非構造タンパク質を発現するためのRNAコンストラクトとも呼ばれる)もまた共トランスフェクトされうる。「共トランスフェクション」とは、同じ時点又は異なる時点の何れかでの異なる核酸のトランスフェクションを意味する。
本発明の一実施態様では、RNAは、一本鎖自己複製RNAなどの自己複製RNAである。一実施態様では、自己複製RNAはプラスセンスの一本鎖RNAである。一実施態様では、自己複製RNAは、ウイルスRNA又はウイルスRNAに由来するRNAである。一実施態様では、自己複製RNAはアルファウイルスゲノムRNAであるか、アルファウイルスゲノムRNAに由来する。一実施態様では、自己複製RNAはウイルス遺伝子発現ベクターである。一実施態様では、ウイルスはセムリキ森林ウイルスである。一実施態様では、自己複製RNAは一又は複数の導入遺伝子を含む。一実施態様では、RNAがウイルスRNAであり又はウイルスRNAに由来する場合、導入遺伝子は、構造タンパク質をコードするウイルス配列などのウイルス配列を部分的又は完全に置き換えうる。一実施態様では、自己複製RNAはインビトロ転写RNAである
アルファウイルスは、プラス鎖RNAウイルスの典型的な代表例である。アルファウイルスのゲノムは、非構造タンパク質(ウイルスRNAの転写、修飾及び複製と、タンパク質修飾に関与)及び構造タンパク質(ウイルス粒子の形成)をコードしている。ゲノムには典型的には二つのオープンリーディングフレーム(ORF)がある。4つの非構造タンパク質(nsP1-nsP4)が典型的にはゲノムの5’末端付近で始まる第一ORFによって一緒にコードされる一方、アルファウイルス構造タンパク質は、第一ORFの下流に見出され、ゲノムの3’末端付近まで伸長する第二ORFによって一緒にコードされる。典型的には、第一ORFは第二ORFよりも大きく、比率は約2:1である。アルファウイルスに感染した細胞では、非構造タンパク質をコードする核酸配列のみがゲノムRNAから翻訳される一方、構造タンパク質をコードする遺伝情報は、真核生物のメッセンジャーRNAに類似したRNA分子であるサブゲノム転写物から翻訳可能である(mRNA; Gould等, 2010, Antiviral Res., vol. 87 pp. 111-124)。感染後、つまりウイルスライフサイクルの初期段階において、(+)鎖ゲノムRNAは非構造ポリタンパク質(nsP1234)をコードするオープンリーディングフレームの翻訳のためにメッセンジャーRNAのように直接作用する。一部のアルファウイルスには、nsP3とnsP4のコード配列の間にオパール停止コドンがある:nsP1、nsP2、及びnsP3を含むポリタンパク質P123は、翻訳がオパール停止コドンで終了すると産生され、加えてnsP4を含むポリタンパク質P1234は、このオパールコドンのリードスルーによって産生される(Strauss及びStrauss, Microbiol. Rev., 1994, vol. 58, pp. 491-562;Rupp等, 2015, J. Gen. Virology, vol. 96, pp. 2483-2500)。nsP1234は自己タンパク質分解により断片nsP123及びnsP4に分解される。ポリペプチドnsP123及びnsP4は会合し、(+)鎖ゲノムRNAを鋳型として使用して、(-)鎖RNAを転写する(-)鎖レプリカーゼ複合体を形成する。典型的には後の段階で、nsP123断片は完全に個々のタンパク質nsP1、nsP2、及びnsP3に切断される(Shirako及びStrauss, 1994, J. Virol., vol. 68, pp. 1874-1885)。4つのタンパク質全てが、鋳型としてゲノムRNAの(-)相補鎖を使用して、新しい(+)鎖ゲノムを合成する(+)鎖レプリカーゼ複合体を形成する(Kim等, 2004, Virology, vol. 323, pp. 153-163,Vasiljeva等, 2003, J. Biol. Chem. vol. 278, pp. 41636-41645)。
アルファウイルス構造タンパク質(コアヌクレオカプシドタンパク質C、エンベロープタンパク質E2、及びエンベロープタンパク質E1,ウイルス粒子の全構成要素)は、典型的には、サブゲノムプロモーターの制御下で単一のオープンリーディングフレームによってコードされる(Strauss & Strauss, Microbiol. Rev., 1994, vol. 58, pp. 491-562)。サブゲノムプロモーターは、シスで作用するアルファウイルス非構造タンパク質によって認識される。特に、アルファウイルスレプリカーゼは、鋳型としてゲノムRNAの(-)相補鎖を使用して(+)鎖サブゲノム転写物を合成する。(+)鎖サブゲノム転写物は、アルファウイルス構造タンパク質をコードする(Kim等, 2004, Virology, vol. 323, pp. 153-163,Vasiljeva等, 2003, J. Biol. Chem. vol. 278, pp. 41636-41645)。サブゲノムRNA転写物は、構造タンパク質を一つのポリタンパク質としてコードするオープンリーディングフレームの翻訳のための鋳型として機能し、ポリタンパク質が切断されて構造タンパク質を生成する。宿主細胞におけるアルファウイルス感染の後期には、nsP2のコード配列内に位置するパッケージングシグナルにより、構造タンパク質によってパッケージされた出芽ビリオンへのゲノムRNAの選択的なパッケージングが保証される(White等, 1998, J. Virol., vol. 72, pp. 4320-4326)。
本発明の実施態様では、自己複製RNAは、シスレプリコン又はトランスレプリコンであるRNAレプリコンでありうる。例えば、アルファウイルス構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームは、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームに置き換えられうる。アルファウイルスベースのトランス複製システムは、二つの別個の核酸分子上のアルファウイルスヌクレオチド配列エレメントに依存している:一方の核酸分子がウイルスレプリカーゼ(典型的にはポリタンパク質nsP1234として)をコードし、他方の核酸分子がトランスの前記レプリカーゼ(従って、トランス複製システムと命名)によって複製可能である。トランス複製には、所定の宿主細胞においてこれら双方の核酸分子の存在が必要である。トランスでレプリカーゼによって複製可能な核酸分子は、アルファウイルスレプリカーゼによる認識及びRNA合成を可能にする所定のアルファウイルス配列エレメントを含んでいなければならない。
本発明によれば、「RNA複製」は、一般に、所定のRNA分子(鋳型RNA分子)のヌクレオチド配列に基づいて合成されたRNA分子を意味する。合成されるRNA分子は、例えば鋳型RNA分子と同一又は相補的でありうる。一般に、RNA複製はDNA中間体の合成を介して起こりうるか、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)を介したRNA依存性RNA複製によって直接起こりうる。アルファウイルスの場合、RNA複製はDNA中間体を介しては起こらないが、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)によって媒介される:鋳型RNA鎖(第一RNA鎖)<又はその一部>は、第一RNA鎖又はその一部に相補的な第二RNA鎖の合成の鋳型となる。次に、場合によっては、第二RNA鎖<又はその一部>は、第二RNA鎖又はその一部に相補的な第三RNA鎖の合成のための鋳型となりうる。それにより、第三RNA鎖は、第一RNA鎖又はその一部と同一である。よって、RNA依存性RNAポリメラーゼは、鋳型の相補的RNA鎖を直接合成でき、(相補的中間鎖を介して)同一のRNA鎖を間接的に合成できる。
レプリカーゼ、好ましくはアルファウイルスレプリカーゼによって複製可能な核酸コンストラクトは、レプリコンと呼ばれる。本発明によれば、「レプリコン」という用語は、RNA依存性RNAポリメラーゼによって複製され得、<DNA中間体なしで>RNAレプリコンの一又は複数の同一又は本質的に同一のコピーを生じるRNA分子を定義する。「DNA中間体なし」とは、RNAレプリコンのコピーを形成する過程においてデオキシリボ核酸(DNA)コピー又はレプリコンの相補鎖が形成されないこと、及び/又はRNAレプリコンのコピー又はその相補鎖を形成する過程においてデオキシリボ核酸(DNA)分子が鋳型として使用されないことを意味する。レプリカーゼ機能は、典型的には、機能的アルファウイルス非構造タンパク質によって提供される。
本発明のRNAレプリコンは、好ましくは5’複製認識配列と3’複製認識配列を含む。複製認識配列は、機能的アルファウイルス非構造タンパク質によって認識されうる核酸配列である。
一実施態様では、5’複製認識配列と3’複製認識配列は、機能的アルファウイルス非構造タンパク質の存在下で本発明によるRNAレプリコンの複製を方向付けることができる。よって、単独で又は好ましくは一緒に存在する場合、これらの認識配列は、機能的アルファウイルス非構造タンパク質の存在下でRNAレプリコンの複製を方向付ける。
機能的アルファウイルス非構造タンパク質は、シス(レプリコンのオープンリーディングフレームによって目的のタンパク質としてコードされる)又はトランス(別個のレプリカーゼコンストラクトのオープンリーディングフレームによって目的のタンパク質としてコードされる)で提供されることが好ましく、それはレプリコンの5’複製認識配列と3’複製認識配列の両方を認識することができる。
本発明によるRNAレプリコンは、好ましくは一本鎖RNA分子である。本発明によるRNAレプリコンは、典型的には(+)鎖RNA分子である。一実施態様では、本発明のRNAレプリコンは、単離された核酸分子である。
本発明によれば、RNAレプリコンは、以下からなる群から選択されるアルファウイルスに由来しうる:バーマフォレストウイルス複合体(バーマフォレストウイルスを含む);東部ウマ脳炎複合体(7種類の抗原性の東部ウマ脳炎ウイルスを含む);ミデルバーグウイルス複合体(ミデルバーグウイルスを含む);ヌドゥムウイルス複合体(ヌドゥムウイルスを含む);セムリキ森林ウイルス複合体(ベバルウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルスとそのサブタイプのウナウイルス、オニョンニョンウイルスとそのサブタイプのイグボオラ(Igbo-Ora)ウイルス、ロスリバーウイルスとそのサブタイプのベバルウイルス、ゲタウイルス、サギヤマウイルス、セムリキ森林ウイルスとそのサブタイプのメトリ(Me Tri)ウイルスを含む);ベネズエラ馬脳炎複合体(カバソウウイルス、エバーグレーズウイルス、モッソダスペドラスウイルス、ムカンボウイルス、パラマナウイルス、ピクスナウイルス、リオネグロウイルス、トロカラウイルスとそのサブタイプのビジューブリッジウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスを含む);西部馬脳炎複合体(オーラウイルス、ババンキウイルス、キズラガハウイルス、シンドビスウイルス、オッケルボウイルス、ワタロアウイルス、バギークリークウイルス、フォートモーガンウイルス、ハイランドJウイルス、西部馬脳炎ウイルスを含む);及びサーモン膵臓病ウイルスを含む幾つかの未分類ウイルス;睡眠病ウイルス;サザンゾウアザラシウイルス;トネートウイルス。より好ましくは、アルファウイルスは、セムリキ森林ウイルス複合体(セムリキ森林ウイルスを含む上記のウイルス型を含む)、西部馬脳炎複合体(シンドビスウイルスを含む上記のウイルス型を含む)、東部ウマ脳炎ウイルス(上記のウイルス型を含む)、ベネズエラ馬脳炎複合体(ベネズエラ馬脳炎ウイルスを含む上記のウイルス型を含む)からなる群から選択される。更に好ましい実施態様では、アルファウイルスはセムリキ森林ウイルスである。別の更に好ましい実施態様では、アルファウイルスはシンドビスウイルスである。別の更に好ましい実施態様では、アルファウイルスはベネズエラ馬脳炎ウイルスである。
本発明によるRNA分子は、場合によっては、更なる特徴、例えば、5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)配列、及び/又はコドン使用頻度の適応によって特徴付けられうる。詳細は次に記載される。
幾つかの実施態様では、本発明によるRNA(mRNA及び/又はレプリコンRNA)は、5’キャップを含む。
「5’-キャップ」、「キャップ」、「5’-キャップ構造」、「キャップ構造」という用語は、前駆体メッセンジャーRNAなどの幾つかの真核生物一次転写物の5’末端に見出されるジヌクレオチドを指すために同義的に使用される。5’キャップは、(場合によっては修飾された)グアノシンが5’から5’の三リン酸結合(又は所定のキャップアナログの場合は修飾三リン酸結合)を介してmRNA分子の最初のヌクレオチドに結合する構造である。この用語は、通常のキャップ又はキャップアナログを指す場合がある。
「5’キャップを含むRNA」又は「5’キャップを備えたRNA」又は「5’キャップで修飾されたRNA」又は「キャップ化RNA」とは、5’-キャップを含むRNAを指す。例えば、RNAに5’キャップを提供することは、該5’キャップの存在下でのDNA鋳型のインビトロ転写により達成することができ、該5’キャップは生成されたRNA鎖に同時転写的に組み込まれ、又はRNAは、例えば、インビトロ転写により生成され得、5’キャップは、キャッピング酵素、例えば、ワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合されうる。キャップ化RNAでは、(キャップ化)RNA分子の最初の塩基の3’位が、ホスホジエステル結合を介してRNA分子の次の塩基(「第二の塩基」)の5’位に結合する。
宿主細胞又は宿主生物への各RNAの導入後の初期段階においてタンパク質をコードする核酸配列の翻訳が望まれる場合、RNA分子上のキャップの存在が強く好まれる。例えば、キャップの存在により、RNAによってコードされる目的の遺伝子が、それぞれのRNAを宿主細胞に導入した後の初期段階において効率的に翻訳される。「初期段階」とは、典型的には、RNA導入後の最初の1時間以内、又は最初の2時間以内、又は最初の3時間以内を意味する。
機能的レプリカーゼの非存在下で翻訳が起こることが望まれる場合、又は僅かなレベルのレプリカーゼしか宿主細胞に存在しない場合、RNAレプリコンのキャップの存在がまた好ましい。例えば、たとえレプリカーゼをコードする核酸分子が宿主細胞に導入されたとしても、導入後の初期段階ではレプリカーゼのレベルは典型的には少ないであろう。本発明によれば、機能的アルファウイルス非構造タンパク質を発現するためのRNAコンストラクトが5’キャップを含むことが好ましい。
特に、本発明によるRNAレプリコンが、機能的アルファウイルス非構造タンパク質をコードする第二の核酸分子(例えばmRNA)と共に使用又は提供されない場合、RNAレプリコンが5’キャップを含むことが好ましい。独立して、RNAレプリコンは、機能的アルファウイルス非構造タンパク質をコードする第二の核酸分子と共に使用又は提供される場合でも、5’キャップをまた含んでいてもよい。
「通常の5’キャップ」という用語は、天然に生じるる5’キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップを意味する。7-メチルグアノシンキャップでは、キャップのグアノシンは、修飾が7位のメチル化からなる修飾グアノシンである。
本発明の文脈において、「5’-キャップアナログ」という用語は、通常の5’-キャップに似ているが、好ましくはインビボで及び/又は細胞中で、それに結合した場合にRNAを安定化する能力を有するように修飾されている分子構造を意味する。キャップアナログは、通常の5’キャップではない。
真核生物mRNAの場合、5’キャップはmRNAの効率的な翻訳に関与していると一般的に説明されている:一般的に、真核生物では、内部リボソーム進入部位(IRES)が存在しないならば、翻訳はメッセンジャーRNA(mRNA)分子の5’末端でのみ開始される。真核細胞は、核内での転写中にRNAに5’キャップを提供できる:新しく合成されたmRNAは、例えば転写物が20~30ヌクレオチドの長さに達すると、通常5’キャップ構造で修飾される。先ず、5’末端ヌクレオチドpppN(pppは三リン酸を表す;Nは任意のヌクレオシドを表す)は、RNA5’-トリホスファターゼ及びグアニリルトランスフェラーゼ活性を有するキャッピング酵素によって細胞内で5’GpppNに変換される。その後、GpppNは(グアニン-7)-メチルトランスフェラーゼ活性を持つ第二の酵素によって細胞内でメチル化され、モノメチル化m7GpppNキャップを形成しうる。一実施態様では、本発明において使用される5’キャップは、天然5’キャップである。
本発明において、天然5’キャップジヌクレオチドは、典型的には、非メチル化キャップジヌクレオチド(G(5’)ppp(5’)N;GpppNとも呼ばれる)及びメチル化キャップジヌクレオチド((m
7G(5’)ppp(5’)N;m
7GpppNとも呼ばれる)からなる群から選択される。m
7GpppN(ここで、NはGである)は、次式で表される:
本発明のキャップ化RNAは、インビトロで調製することができ、従って、宿主細胞のキャッピング機構に依存しない。キャップ化RNAをインビトロで作製するために最も頻繁に使用される方法は、4つ全てのリボヌクレオシド三リン酸及びキャップジヌクレオチド、例えばm7G(5’)ppp(5’)G(m7GpppGとも呼ばれる)の存在下で細菌又はバクテリオファージRNAポリメラーゼでDNA鋳型を転写することである。RNAポリメラーゼは、次の鋳型ヌクレオシド三リン酸(pppN)のα-リン酸のm7GpppGのグアノシン部分の3’-OHによる求核攻撃で転写を開始し、中間体m7GpppGpN(ここで、NはRNA分子の第二塩基である)を生じる。競合するGTP開始産物pppGpNの形成は、インビトロ転写中にキャップとGTPのモル比を5~10に設定することによって抑制される。
本発明の好ましい実施態様では、5’キャップ(存在する場合)は5’キャップアナログである。これらの実施態様は、RNAがインビトロ転写により得られ、例えばインビトロ転写RNA(IVT-RNA)である場合に特に適している。キャップアナログは、インビトロ転写によるRNA転写物の大規模な合成を促進することが初期に記載されている。
メッセンジャーRNAについて、幾つかのキャップアナログ(合成キャップ)がこれまで一般的に記載されており、それらは全て本発明の文脈で使用することができる。理想的には、より高い翻訳効率及び/又はインビボ分解に対する耐性の増加及び/又はインビトロ分解に対する耐性の増加を伴うキャップアナログが選択される。
好ましくは、一方向でのみRNA鎖に取り込むことができるキャップアナログが使用される。Pasquinelli等(1995, RNA J., vol., 1, pp. 957-967)は、インビトロ転写中、バクテリオファージRNAポリメラーゼは転写の開始に7-メチルグアノシン単位を使用し、それによりキャップを持つ転写物の約40~50%が逆方向のキャップジヌクレオチドを保有している(つまり、最初の反応生成物はGpppm
7GpNである)ことを証明した。正しいキャップを持つRNAと比較して、逆キャップを持つRNAは、核酸配列のタンパク質への翻訳に関して機能的ではない。よって、キャップを正しい方向に取り込み、すなわち、m
7GpppGpNなどに本質的に対応する構造を持つRNAが得られることが望ましい。キャップ-ジヌクレオチドの逆組み込みは、メチル化グアノシン単位の2’-又は3’-OH基の何れかの置換により阻害されることが示されている(Stepinski等, 2001; RNA J., vol. 7, pp. 1486-1495;Peng等, 2002; Org. Lett., vol. 24, pp. 161-164)。そのような「アンチリバースキャップアナログ」の存在下で合成されるRNAは、通常の5’キャップm
7GpppGの存在下でインビトロ転写されるRNAよりも効率的に翻訳される。そのために、メチル化グアノシン単位の3’OH基がOCH
3で置換された一つのキャップアナログが、例えばHoltkamp等, 2006, Blood, vol. 108, pp. 4009-4017(7-メチル(3’-O-メチル)GpppG;アンチリバースキャップアナログ(ARCA))によって記載されている。ARCAは、本発明による適切なキャップジヌクレオチドである。
本発明の好ましい実施態様では、本発明のRNAは、デキャッピングを本質的に受けない。これは、一般に、培養哺乳動物細胞に導入された合成mRNAから生成されるタンパク質の量は、mRNAの自然分解によって制限されるため、重要である。mRNA分解の一つのインビボ経路は、mRNAキャップの除去で始まる。この除去は、調節サブユニット(Dcp1)と触媒サブユニット(Dcp2)を含むヘテロ二量体ピロホスファターゼによって触媒される。触媒サブユニットは、三リン酸架橋のα及びβリン酸基の間を切断する。本発明では、その切断のタイプに対して感受性でないか又は感受性が低いキャップアナログを選択し又は存在させうる。この目的に適したキャップアナログは、式(I)によるキャップジヌクレオチドから選択されうる:
上式中、R
1は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアリール、及び置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から選択され、
R
2及びR
3は、H、ハロ、OH、及び置換されていてもよいアルコキシからなる群から独立して選択されるか、又はR
2及びR
3は一緒になってO-X-Oを形成し、Xは置換されていてもよいCH
2、CH
2CH
2、CH
2CH
2CH
2、CH
2CH(CH
3)、及びC(CH
3)
2からなる群から選択され、又はR
2は、R
2が結合している環の4’位の水素原子と組み合わされて-O-CH
2-又は-CH
2-O-を形成し、
R
5は、S、Se、及びBH
3からなる群から選択され、
R
4及びR
6は、O、S、Se、及びBH
3からなる群から独立して選択され、
nは1、2、又は3である。
R1、R2、R3、R4、R5、R6の好ましい実施態様は、国際公開第2011/015347A1号に開示されており、本発明において適宜選択されうる。
例えば、本発明の好ましい実施態様では、本発明のRNAはホスホロチオエートキャップアナログを含む。ホスホロチオエートキャップアナログは、三リン酸鎖中の三つの非架橋O原子の一つがS原子で置換された、すなわち、式(I)のR4、R5又はR6の一つがSである、特定のキャップアナログである。ホスホロチオエートキャップアナログは、J. Kowalska等, 2008, RNA, vol. 14, pp. 1119-1131によって、望ましくないデキャッピング過程の解決手段として、従ってインビボでのRNAの安定性を高める解決手段として記載されている。特に、5’-キャップのベータリン酸基において酸素原子を硫黄原子に置換すると、Dcp2に対して安定化される。本発明において好ましいその実施態様では、式(I)のR5はSであり;R4とR6はOである。
本発明の更に好ましい実施態様では、本発明のRNAは、ホスホロチオエートキャップアナログを含み、RNA5’キャップのホスホロチオエート修飾が「アンチリバースキャップアナログ」(ARCA)修飾と組み合わされる。それぞれのARCA-ホスホロチオエートキャップアナログは、国際公開第2008/157688A2号に記載されており、それらは全て本発明のRNAに使用することができる。その実施態様では、式(I)のR2又はR3の少なくとも一方はOHではなく、好ましくはR2及びR3の一方はメトキシ(OCH3)であり、R2及びR3の他方は好ましくはOHである。好ましい実施態様では、酸素原子は、ベータリン酸基において硫黄原子と置換される(従って、式(I)のR5はSであり;R4及びR6はOである)。ARCAのホスホロチオエート修飾により、α、β、及びγホスホロチオエート基が、翻訳及びデキャッピング機構の両方でキャップ結合タンパク質の活性部位内に正確に位置させられると考えられる。これらのアナログの少なくとも幾つかは、本質的にピロホスファターゼDcp1/Dcp2に耐性がある。ホスホロチオエート修飾ARCAは、ホスホロチオエート基を欠く対応するARCAよりも、eIF4Eに対する親和性が遥かに高いと記載されている。
本発明において特に好ましいそれぞれのキャップアナログ、すなわちm
2’
7,2’-OGpp
spGは、ベータ-S-ARCAと呼ばれる(国際公開第2008/157688A2号;Kuhn等, Gene Ther., 2010, vol. 17, pp. 961-971)。よって、本発明の一実施態様では、本発明のRNAは、ベータ-S-ARCAで修飾される。ベータ-S-ARCAは、次の構造で表される:
一般に、架橋リン酸の酸素原子を硫黄原子に置き換えると、HPLCでのその溶出パターンに基づいてD1及びD2と命名されるホスホロチオエートジアステレオマーが生成される。簡単に言えば、「ベータ-S-ARCA」又は「ベータ-S-ARCA(D1)」のD1ジアステレオマーは、ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマー(ベータ-S-ARCA(D2))と比較してHPLCカラムで最初に溶出し、従って保持時間が短くなるベータ-S-ARCAのジアステレオマーである。HPLCによる立体化学配置の決定は、国際公開第2011/015347A1号に記載されている。
本発明の第一の特に好ましい実施態様では、本発明のRNAは、ベータ-S-ARCA(D2)ジアステレオマーで修飾される。ベータ-S-ARCAの二つのジアステレオマーは、ヌクレアーゼに対する感度が異なる。ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマーを保有するRNAは、Dcp2切断に対してほぼ完全に耐性である一方(非修飾ARCA5’-キャップの存在下で合成されたRNAと比較して僅か6%の切断)、ベータ-S-ARCA(D1)5’-キャップを持つRNAは、Dcp2切断に対して中間の感度を示す(71%の切断)ことが示されている。更に、Dcp2切断に対する安定性の増加は、哺乳動物細胞におけるタンパク質発現の増加と相関することが示されている。特に、ベータ-S-ARCA(D2)キャップを保有するRNAは、β-S-ARCA(D1)キャップを保有するRNAよりも哺乳動物細胞でより効率的に翻訳されることが示されている。従って、本発明の一実施態様では、本発明のRNAは、ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマーのPβ原子のものに対応する式(I)の置換基R5を含むP原子での立体化学配置を特徴とする式(I)によるキャップアナログで修飾される。その実施態様では、式(I)のR5はSであり;R4及びR6はOである。加えて、式(I)のR2又はR3の少なくとも一方は好ましくはOHではなく、好ましくはR2及びR3の一方はメトキシ(OCH3)であり、R2及びR3の他方は好ましくはOHである。
第二の特に好ましい実施態様では、本発明のRNAは、ベータ-S-ARCA(D1)ジアステレオマーで修飾される。この実施態様は、ワクチン接種などのために、キャップ化RNAを未成熟抗原提示細胞に移すのに特に適している。ベータ-S-ARCA(D1)ジアステレオマーは、各キャップ化RNAを未成熟抗原提示細胞に移すと、RNAの安定性を高め、RNAの翻訳効率を高め、RNAの翻訳を延長し、RNAの総タンパク質発現を増加させ、及び/又は前記RNAによってコードされる抗原又は抗原ペプチドに対する免疫応答を増加させるのに特に適していることが実証されている(Kuhn等, 2010, Gene Ther., vol. 17, pp. 961-971)。従って、本発明の別の実施態様では、本発明のRNAは、ベータ-S-ARCAのD1ジアステレオマーのPβ原子のものに対応する式(I)の置換基R5を含むP原子での立体化学配置を特徴とする式(I)によるキャップアナログで修飾される。それぞれのキャップアナログ及びその実施態様は、国際公開第2011/015347A1号及びKuhn等, 2010, Gene Ther., vol. 17, pp. 961-971に記載されている。置換基R5を含むP原子での立体化学配置がベータ-S-ARCAのD1ジアステレオマーのPβ原子のものに対応する国際公開第2011/015347A1号に記載されている任意のキャップアナログを本発明で使用することができる。好ましくは、式(I)のR5はSであり;R4及びR6はOである。加えて、式(I)のR2又はR3の少なくとも一方は好ましくはOHではなく、好ましくはR2及びR3の一方はメトキシ(OCH3)であり、R2及びR3の他方は好ましくはOHである。
一実施態様では、本発明のRNAは、何れか一つのリン酸基がボラノリン酸基又はホスホセレノエート基によって置換されている式(I)による5’キャップ構造で修飾される。このようなキャップは、インビトロ及びインビボの両方で安定性が向上している。場合により、それぞれの化合物は2’-O-又は3’-O-アルキル基を有する(ここで、アルキルは好ましくはメチルである);それぞれのキャップアナログは、BH3-ARCA又はSe-ARCAと呼ばれる。mRNAのキャッピングに特に適した化合物には、国際公開第2009/149253A2号に記載されているように、β-BH3-ARCA及びβ-Se-ARCAが含まれる。これらの化合物については、ベータ-S-ARCAのD1ジアステレオマーのPβ原子のものに対応する式(I)の置換基R5を含むP原子の立体化学配置が好ましい。
「非翻訳領域」又は「UTR」という用語は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子の領域、又はmRNA分子などのRNA分子の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレーム(5’-UTR)の5’(上流)及び/又はオープンリーディングフレーム(3’-UTR)の3’(下流)に存在しうる。
3’-UTRは、存在する場合、タンパク質のコード領域の終止コドンの下流の遺伝子の3’末端に位置するが、「3’-UTR」という用語はポリ(A)テールを含まないことが好ましい。よって、3’-UTRはポリ(A)テール(存在する場合)の上流にあり、例えばポリ(A)テールに直接隣接している。
5’-UTRは、存在する場合、タンパク質のコード領域の開始コドンの上流の遺伝子の5’末端に位置する。5’-UTRは5’-キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば5’-キャップに直接隣接している。
本発明によれば、5’-及び/又は3’-非翻訳領域は、これらの領域が、オープンリーディングフレームに関連付けられて、前記オープンリーディングフレームを含むRNAの安定性及び/又は翻訳効率が増加するように、オープンリーディングフレームに機能的に連結されうる。
幾つかの実施態様では、本発明によるmRNAは、5’-UTR及び/又は3’-UTRを含む。
好ましい実施態様では、本発明によるmRNAは、
(1)5’-UTR、
(2)オープンリーディングフレーム、及び
(3)3’-UTR
を含む。
UTRは、RNAの安定性と翻訳効率に関係している。特定の5’及び/又は3’非翻訳領域(UTR)を選択することにより、ここに記載される5’キャップ及び/又は3’ポリ(A)テールに関する構造改変に加えて、両方を改善できる。UTR内の配列要素は一般に、翻訳効率(主に5’-UTR)及びRNA安定性(主に3’-UTR)に影響を与えると理解される。RNAの翻訳効率及び/又は安定性を高めるために活性な5’-UTRが存在することが好ましい。独立して又は追加的に、RNAの翻訳効率及び/又は安定性を高めるために活性な3’-UTRが存在することが好ましい。
第一核酸配列(例えばUTR)に関して、「翻訳効率を高めるために活性な」及び/又は「安定性を高めるために活性な」という用語は、第一核酸配列が、第一核酸配列の非存在下での第二核酸配列の翻訳効率及び/又は安定性との比較において翻訳効率及び/又は安定性が増加するような形で前記第二核酸配列の翻訳効率及び/又は安定性を、第二核酸配列を有する共通転写物において、改変可能であることを意味する。
3’-UTRは典型的には200~2000ヌクレオチド、例えば500~1500ヌクレオチドの長さを有する。免疫グロブリンmRNAの3’非翻訳領域は比較的短く(約300ヌクレオチド未満)、他の遺伝子の3’非翻訳領域は比較的長い。例えば、tPAの3’非翻訳領域は約800ヌクレオチド長であり、第VIII因子のそれは約1800ヌクレオチド長であり、エリスロポエチンのそれは約560ヌクレオチド長である。哺乳動物mRNAの3’非翻訳領域は、典型的にはAAAUAAヘキサヌクレオチド配列として知られる相同領域を有している。この配列はおそらくポリ(A)付着シグナルであり、しばしばポリ(A)付着部位の10~30塩基上流に位置する。3’-非翻訳領域は、折り畳まれてエキソリボヌクレアーゼの障壁として作用するか、RNA安定性を高めることが知られているタンパク質(例えばRNA結合タンパク質)と相互作用するステムループ構造をもたらしうる一又は複数の逆方向反復を含みうる。
幾つかの実施態様では、本発明によるRNAは、3’-ポリ(A)配列を含む。
本発明によれば、一実施態様では、ポリ(A)配列は、少なくとも20、好ましくは少なくとも26、好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも80、好ましくは少なくとも100、好ましくは500まで、好ましくは400まで、好ましくは300まで、好ましくは200まで、特に150までのAヌクレオチド、特に約120のAヌクレオチドを含むか又はそれから本質的になるか又はそれからなる。この文脈において、「から本質的になる」とは、ポリ(A)配列の殆どのヌクレオチド、典型的には「ポリ(A)配列」のヌクレオチド数の典型的には少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%がAヌクレオチド(アデニル酸)であることを意味するが、残りのヌクレオチドが、例えばUヌクレオチド(ウリジル酸)、Gヌクレオチド(グアニル酸)、Cヌクレオチド(シチジル酸)などのAヌクレオチド以外のヌクレオチドであることを許容する。この文脈において、「からなる」とは、ポリ(A)配列内の全てのヌクレオチド、すなわちポリ(A)配列内のヌクレオチド数の100%がAヌクレオチドであることを意味する。「Aヌクレオチド」又は「A」という用語はアデニル酸を意味する。
実際、約120のAヌクレオチドの3’ポリ(A)配列は、トランスフェクトされた真核細胞のRNAのレベル、並びに3’ポリ(A)配列の上流(5’)に存在するオープンリーディングフレームから翻訳されるタンパク質のレベルに有益な影響を与えることが実証されている(Holtkamp等, 2006, Blood, vol. 108, pp. 4009-4017)。
本発明は、コード鎖に相補的な鎖に反復dTヌクレオチド(デオキシチミジル酸)を含むDNA鋳型に基づいて、RNA転写中、すなわちインビトロ転写RNAの調製中に付けられる3’ポリ(A)配列を提供する。ポリ(A)配列(コード鎖)をコードするDNA配列は、ポリ(A)カセットと呼ばれる。
本発明の好ましい実施態様では、DNAのコード鎖に存在する3’ポリ(A)カセットは、本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)の等しい分布を有するランダム配列によって中断される。そのようなランダム配列は、長さが5~50、好ましくは10~30、より好ましくは10~20ヌクレオチドでありうる。そのようなカセットは、国際公開第2016/005004A1号に開示されている。国際公開第2016/005004A1号に開示されている任意のポリ(A)カセットが本発明において使用されうる。本質的にdAヌクレオチドからなるが、四つのヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)の等しい分布を持ち、例えば5~50ヌクレオチド長を有するランダム配列によって中断されるポリ(A)カセットが、DNAレベルで大腸菌内のプラスミドDNAの絶え間ない増殖を示し、RNAレベルで、RNAの安定性と翻訳効率のサポートに関して有益な特性と依然として関連している。
従って、本発明の好ましい実施態様では、ここに記載のRNA分子に含まれる3’ポリ(A)配列は、本質的にAヌクレオチドからなるが、四つのヌクレオチド(A、C、G、U)の等しい分布を有するランダム配列によって中断される。そのようなランダム配列は、5~50、好ましくは10~30、より好ましくは10~20ヌクレオチド長でありうる。
ここで特定される核酸配列、特に転写可能なコード核酸配列は、前記核酸配列と相同又は異種でありうる発現制御配列と機能的に連結され得、「相同」という用語は、核酸配列がまた自然に発現制御配列に機能的に連結されるという事実を意味し、「異種」という用語は、核酸配列が自然には発現制御配列に機能的に連結されないという事実を意味する。
転写可能な核酸配列あるいはペプチド又はタンパク質をコードする核酸配列と、発現制御配列は、それらが転写可能な又はコード核酸配列の転写又は発現が発現制御配列の制御下又は影響下にあるように互いに共有結合しているならば、互いに「機能的に」結合している。核酸配列が機能的なペプチド又はタンパク質に翻訳される場合、コード配列に機能的に連結された発現制御配列の誘導は、コード配列あるいは所望のペプチド又はタンパク質に翻訳することができないコード配列にフレームシフトを引き起こすことなく、前記コード配列の転写をもたらす。
「発現制御配列」という用語は、本発明によれば、プロモーター、リボソーム結合配列、及び遺伝子の転写又はRNAの翻訳を制御する他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施態様では、発現制御配列を調節することができる。発現制御配列の正確な構造は、種又は細胞型によって変わりうるが、通常は、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等、それぞれ転写と翻訳の開始に関与する5’-非転写配列及び5’-及び3’-非翻訳配列を含む。より具体的には、5’-非転写発現制御配列は、機能的に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を含む。発現制御配列は、エンハンサー配列又は上流アクチベーター配列をまた含みうる。
「プロモーター」又は「プロモーター領域」という用語は、RNAポリメラーゼの認識及び結合部位を提供することにより前記コード配列の発現を制御する遺伝子のコード配列の上流(5’)のDNA配列を意味する。プロモーター領域は、前記遺伝子の転写の調節に関与する更なる因子のための更なる認識又は結合部位を含みうる。プロモーターは、原核生物又は真核生物の遺伝子の転写を制御しうる。プロモーターは「誘導性」であり得、誘導因子に応答して転写を開始するか、転写が誘導因子によって制御されていない場合は「構成的」でありうる。誘導性プロモーターは、誘導因子が存在しない場合、ごく僅かしか発現されないか、全く発現されない。誘導因子の存在下で、遺伝子は「スイッチオン」されるか、又は転写のレベルが増加する。これは、通常、特定の転写因子の結合によって媒介される。
本発明による好ましいプロモーターの例は、SP6、T3又はT7ポリメラーゼのプロモーターである。
本発明によれば、「発現」という用語は、その最も一般的な意味で使用され、RNA及び/又はタンパク質の発現を含む。また、核酸の部分発現も含む。更に、発現は一過性又は安定的でありうる。RNAに関して、「発現」又は「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖がアミノ酸配列のアセンブリを指示してペプチド又はタンパク質を作る細胞のリボソームでの過程に関する。
本発明の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはタンパク質に翻訳されうる。本発明によれば、「転写」という用語は、「インビトロ転写」を含み、ここで、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが無細胞系でインビトロ合成される過程に関する。好ましくは、クローニングベクターが転写物の産生に適用される。これらのクローニングベクターは一般に転写ベクターと命名され、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。本発明によれば、RNAは好ましくはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得ることができる。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼの任意のプロモーターでありうる。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクター中に導入することにより、得ることができる。cDNAは、RNAの逆転写により得ることができる。
「発現の増強」、「増強された発現」又は「増加した発現」などの用語は、本発明の文脈において、所定数のRNA分子により発現されるペプチド又はタンパク質の量が同数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の量よりも多いことを意味し、RNA分子の発現は、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子の細胞への提供対トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子の細胞への非提供など、RNAの増強された又は増加した発現を生じる条件を除いて同じ条件下で実施される。これに関連して、「同じ条件」とは、同じペプチド又はタンパク質をコードする同じRNA配列が同じ手段によって同じ細胞に導入され、細胞が同じ条件下(発現の増強又は増加を生じる条件を除く)で培養され、ペプチド又はタンパク質の量が同じ手段で測定される状況を意味する。ペプチド又はタンパク質の量は、モル又は重量、例えばグラム、又は質量又はポリペプチド活性で与えられ得、例えばペプチド又はタンパク質が酵素である場合、それは触媒活性として与えられうるか、あるいはペプチド又はタンパク質が抗体又は抗原又は受容体である場合、それは結合親和性として与えられうる。一実施態様では、「発現の増強」、「増強された発現」又は「増加した発現」などの用語は、本発明の文脈において、所定数のRNA分子により、所定の期間内に発現されるペプチド又はタンパク質の量が、同じ数のRNA分子によって同じ期間内に発現されるペプチド又はタンパク質の量よりも高いことを意味する。例えば、所定数のRNA分子によって特定の時点で発現されるペプチド又はタンパク質の最大値は、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の最大値よりも高い場合がある。他の実施態様では、所与の数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の最大値は、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の最大値よりも高い必要はないが、所定の期間内に所定数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の平均量は、同じ数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の平均量よりも高い場合がある。後者の場合は、ここでは「より高いレベルの発現」又は「増加したレベルの発現」と呼ばれ、発現のより高い最大値及び/又は発現のより高い平均値に関する。あるいは又は加えて、「発現の増強」、「増強された発現」又は「増加した発現」などの用語は、本発明の文脈において、ペプチド又はタンパク質がRNA分子によって発現される時間が、ペプチド又はタンパク質が同じRNA分子によって発現される時間よりも長くなりうることをまた意味する。よって、一実施態様では、「発現の増強」、「増強された発現」又は「増加した発現」などの用語は、本発明の文脈において、RNAが安定して存在し発現される期間が、同数のRNA分子が安定して存在し発現される期間よりも長いため、所定数のRNA分子により発現されるペプチド又はタンパク質の量が、同数のRNA分子によって発現されるペプチド又はタンパク質の量よりも多いことをまた意味する。これらの場合は、ここでは「発現期間の増加」とも呼ばれる。好ましくは、そのようなより長い期間は、細胞中へのRNAの導入後又は最初の導入後(例えば繰り返しトランスフェクションの場合)の少なくとも48時間、好ましくは少なくとも72時間、より好ましくは少なくとも96時間、特に少なくとも120時間、又は更に長い間の発現を意味する。
RNAの発現レベル及び/又は発現期間は、例えば、ELISA手順、免疫組織化学手順、定量的画像解析手順、ウエスタンブロット、質量分析、定量的免疫組織化学手順、又は酵素アッセイを使用することにより、RNAによってコードされるペプチド又はタンパク質の発現の量、例えば発現した全量及び/又は所定の期間に発現した量、及び/又は発現の時間を測定することにより、決定されうる。
本発明によれば、特定のペプチド又はタンパク質に関して「コードするRNA」という用語は、適切な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、RNAを発現させて前記ペプチド又はタンパク質を産生できることを意味する。好ましくは、本発明によるRNAは、細胞翻訳機構と相互作用して、それがコードするペプチド又はタンパク質を提供することができる。
特定の実施態様では、本発明によるRNAは、単一タイプのRNA分子、異なるRNA分子の集団、例えば、場合によっては異なるペプチド及び/又はタンパク質をコードする異なるRNA分子の混合物、全細胞RNA、RNAライブラリー、又はその一部、例えば、未分化細胞、特に胚性幹細胞などの特定の幹細胞などの特定の細胞型で発現されるRNA分子のライブラリー、又は未分化細胞、特に分化細胞に対して胚性幹細胞のような幹細胞における濃縮発現したRNAなどのRNA分子のライブラリーの画分を含む。よって、本発明によれば、「RNA」という用語は、RNA分子の混合物、全細胞RNA又はその画分を含み得、それは、細胞からのRNAの単離を含むプロセス及び/又は組換え手段、特にインビトロ転写によって得ることができる。
本発明によって使用されるRNAは、既知の組成を有し得(この実施態様では、どのペプチド又はタンパク質がRNAにより発現されるかが好ましくは知られている)、又はRNAの組成は部分的又は完全に未知でありうる。あるいは、本発明によって使用されるRNAは既知の機能を有していてもよく、又はRNAの機能は部分的又は完全に未知であってもよい。
好ましくは、本発明によれば、細胞で発現されるRNAが、インビトロ又はインビボの何れか、好ましくはインビトロで、前記細胞に導入される。RNAは、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子を細胞に提供する前、後、及び/又は同時に細胞に細胞に導入されうる。好ましくは、細胞におけるRNAの発現が望まれる限り、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子が提供される。本発明による方法の一実施態様では、細胞に導入されるRNAは、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られる。
本発明によれば、RNAは、インビトロ又はインビボの何れか、好ましくはインビトロで細胞に導入されうる。RNAがインビトロで導入される細胞は、好ましくは、本発明の方法によるインビトロでのRNAの発現に続いて、患者に投与されうる。
「トランスフェクション」という用語は、核酸、特にRNAの細胞への導入に関する。本発明の目的のために、「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸の導入又はそのような細胞による核酸の取り込みをまた含み、ここで、細胞は対象、例えば患者に存在しうる。従って、本発明によれば、ここに記載の核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロ又はインビボで存在し得、例えば、細胞は、患者の器官、組織、及び/又は生物の一部を形成しうる。本発明によれば、トランスフェクションは一過性又は安定でありうる。トランスフェクションの幾つかの適用では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。通常、トランスフェクション過程で導入された核酸は核ゲノムには組み込まれないため、外来核酸は有糸分裂によって希釈され又は分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞及びその娘細胞のゲノムに残ることが望まれる場合、安定したトランスフェクションが行われなければならない。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
本発明によれば、核酸を細胞に導入する、すなわち移入し又はトランスフェクトするのに有用な任意の技術を使用することができる。好ましくは、RNAは標準的な技術により細胞にトランスフェクトされる。そのような技術には、エレクトロポレーション、リポフェクション及びマイクロインジェクションが含まれる。本発明の特に好ましい一実施態様では、RNAがエレクトロポレーションにより細胞に導入される。エレクトロポレーション又はエレクトロパーミアビリゼーションは、外部から加えられた電場によって引き起こされる細胞形質膜の電気伝導率と透過性の有意な増加に関連している。通常、分子生物学では、ある物質を細胞に導入する方法として使用される。本発明によれば、タンパク質又はペプチドをコードする核酸を細胞に導入すると、前記タンパク質又はペプチドの発現が生じることが好ましい。
細胞は、コードされたペプチド又はタンパク質を細胞内で(例えば、細胞質及び/又は核内で)発現し得、コードされたペプチド又はタンパク質を分泌し得、又は表面にそれを発現しうる。
本発明によれば、細胞は、単離された細胞でありうるか、又は器官、組織及び/又は生物の一部を形成しうる。本発明によれば、核酸の投与は、ネイキッド核酸として、又は投与試薬と組み合わせて達成される。好ましくは、核酸の投与はネイキッド核酸の形態である。好ましくは、RNAは、RNase阻害剤などの安定化物質と組み合わせて投与される。本発明は、核酸を細胞に繰り返し導入して、長期間にわたって持続的に発現させることをまた想定している。
本発明によれば、核酸は特定の細胞に向けられうる。そのような実施態様では、細胞に核酸を投与するために使用される担体(例えば、レトロウイルス又はリポソーム)は、結合したターゲティング分子を有しうる。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体などの分子、又は標的細胞上の受容体に対するリガンドが、核酸担体に取り込まれるか、又は結合されうる。リポソームによる核酸の投与が望ましい場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質が、ターゲティング及び/又は吸収を可能にするためにリポソーム製剤に取り込まれうる。そのようなタンパク質には、特定の細胞型に特異的なカプシドタンパク質又はその断片、内在化されるタンパク質に対する抗体、細胞内部位を標的とするタンパク質等々が含まれる。
本発明によれば、「細胞へのRNAの導入」という用語は、RNAが細胞の一部にただ導入され、細胞の一部がトランスフェクトされないままである実施態様を含み、好ましくはその実施態様に関する。一を超えるRNA分子、例えば、リプログラミング因子の機能セットを発現する一を超えるRNA分子又は目的のタンパク質をコードするRNA及びトスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能性バリアントを含むウイルス由来因子をコードするRNAが細胞に導入される場合、その用語は、全てのRNA分子が細胞の一部にただ導入され、細胞の一部がトランスフェクトされないままであるか又は前記RNA分子の必ずしも全てではないものによってトランスフェクトされたままである実施態様が含まれ、好ましくはその実施態様に関する。何れにせよ、本発明に従って一を超えるRNA分子、例えば、リプログラミング因子の機能セットを発現する一を超えるRNA分子が細胞に導入される場合、目的は、例えば単一細胞内でリプログラミング因子の機能セットを発現させるために全てのRNA分子を細胞に導入することである。
「細胞生存率の向上」、「向上した細胞生存率」又は「増加した細胞生存率」などの用語は、本発明の文脈において、所定の条件下での生存又は生細胞の量が他の条件下での生存又は生細胞の量よりも多いことを意味し、ここで、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子の細胞への提供対トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子の細胞への提供なしなど、向上した又は増加した細胞生存率をもたらす条件を除いて同じ条件下で培養が実施される。これに関連して、「同じ条件」とは、同じ細胞が使用され、細胞が同じ条件で(向上した又は増加した細胞生存率をもたらす条件を除く)培養され、細胞生存率が同じ手段によって測定される状況を意味する。「同じ条件」はまた細胞へのRNAの導入又は繰り返し導入を包含する。
「細胞」又は「宿主細胞」という用語は、好ましくはインタクトな細胞、すなわち、酵素、細胞小器官、又は遺伝物質などのその正常な細胞内成分を放出していないインタクトな膜を有する細胞に関する。インタクトな細胞は、好ましくは、生存可能細胞、すなわち、その正常な代謝機能を実行できる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば、外因性核酸で形質転換又はトランスフェクトできる任意の細胞に関する。「細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば、大腸菌)又は真核細胞を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類の細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来し得、初代細胞及び細胞株を含みうる。具体例には、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄幹細胞及び胚性幹細胞が含まれる。他の実施態様では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球又はマクロファージである。一実施態様では、細胞は、ここに記載の体細胞である。一実施態様では、細胞はバリア機能を有する細胞である。好ましくは、細胞は、ここに記載の線維芽細胞などの線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、又は内皮細胞、例えば心臓の内皮細胞、肺の内皮細胞、又は臍静脈内皮細胞である。好ましくは、細胞はヒト細胞である。
線維芽細胞は、細胞外マトリックスとコラーゲンを合成し、創傷治癒に重要な役割を果たす細胞型である。線維芽細胞の主な機能は、細胞外マトリックスの前駆体を連続的に分泌することにより、結合組織の構造的完全性を維持することである。線維芽細胞は、動物の結合組織の最も一般的な細胞である。線維芽細胞は形態的に不均一であり、その位置と活動に応じて多様な外観を持つ。
ケラチノサイトは、ヒトの皮膚の最外層である表皮の主要な細胞型である。ケラチノサイトの主な機能は、熱、紫外線、水分損失などの環境損傷から皮膚とその下の組織を保護するケラチン層の形成である。
上皮は、身体全体の腔と構造の表面を覆う細胞で構成される組織である。多くの腺もまた上皮組織から形成される。それは結合組織の上にあり、二つの層は基底膜によって分離される。ヒトでは、上皮は主要な体組織に分類され、他の組織は結合組織、筋肉組織及び神経組織である。上皮細胞の機能には、分泌、選択的吸収、保護、経細胞輸送、感覚の検出が含まれる。
内皮は血管の内面を覆う細胞の薄い層であり、管腔内の循環血液と血管壁の残りの部分との間に界面を形成する。これらの細胞は内皮細胞と呼ばれる。内皮細胞は、心臓から最小の毛細血管まで、循環系全体を覆っている。内皮組織は特殊なタイプの上皮組織である。
本発明の文脈における「組換え」という用語は、「遺伝子工学により作られた」ことを意味する。好ましくは、本発明の文脈における組換え細胞などの「組換え体」は、天然には生じない。
ここで使用される「天然に生じる」という用語は、対象が天然に見出すことができるという事実を意味する。例えば、(ウイルスを含む)生物中に存在し、自然の源から単離することができ、実験室において人間によって意図的に改変されていないペプチド又は核酸は天然に生じている。
細胞で発現されるRNAは、一又は複数の目的のペプチド又はタンパク質をコードする。従って、RNAは、一又は複数の目的のペプチド又はタンパク質をコードする一又は複数のオープンリーディングフレーム(ORF)を含みうる。細胞で発現されるRNAは、様々な目的のペプチド又はタンパク質、特に、特定の細胞型で発現されると特定の機能を果たすことができるため、特定の細胞型で発現されると対象となるペプチド又はタンパク質をコードしうる。
本発明によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、2つ以上、好ましくは3つ以上、好ましくは4つ以上、好ましくは6つ以上、好ましくは8つ以上、好ましくは10以上、好ましくは13以上、好ましくは16以上、好ましくは20以上、及び好ましくは50まで、好ましくは100又は好ましくは150までの、ペプチド結合を介して互いに連結された連続アミノ酸を含む物質を意味する。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは少なくとも151のアミノ酸を有するペプチドを意味するが、ここでは「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は通常同義語として使用される。
「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本発明によれば、アミノ酸成分だけでなく糖及びリン酸構造などの非アミノ酸成分もまた含む物質を含み、エステル、チオエーテル又はジスルフィド結合などの結合を含む物質もまた含む。
本発明によるRNAは、単一のペプチド又はタンパク質、又は複数のペプチド又はタンパク質をコードしうる。複数のペプチド又はタンパク質は、単一のポリペプチド(融合ポリペプチド)として又は別個のペプチド又はタンパク質としてコードされうる。ポリタンパク質又は融合ポリペプチドは、場合によっては自己触媒的なプロテアーゼ切断部位(例えば、口蹄疫ウイルス2Aタンパク質)又はインテインによって分離された個々のポリペプチドを含みうる。
本発明によれば、一実施態様では、RNAは薬学的に活性なRNAを含むか又はそれからなる。「薬学的に活性なRNA」は、薬学的に活性なペプチド又はタンパク質をコードするRNAでありうる。
「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」は、治療有効量で対象に投与されたとき、対象の状態又は病状に対して正の又は有利な効果を有する。好ましくは、薬学的に活性なペプチド又はタンパク質は治癒的又は対症的性質を有し、疾患又は障害の一又は複数の症状を回復させ、緩和し、軽減し、逆転し、その発症を遅らせ、又はその重症度を和らげるために投与されうる。薬学的に活性なペプチド又はタンパク質は予防的性質を有してもよく、疾患の発症を遅らせるため、又はそのような疾患又は病的状態の重症度を和らげるために使用されうる。「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」という用語は、タンパク質又はポリペプチド全体を含み、その薬学的に活性な断片をまた意味しうる。それはまたペプチド又はタンパク質の薬学的に活性なアナログを含みうる。「薬学的に活性なペプチド又はタンパク質」という用語には、抗原であるペプチド及びタンパク質が含まれ、すなわち、ペプチド又はタンパク質は、治療的又は部分的もしくは完全に保護的でありうる免疫応答を対象に誘発する。
一実施態様では、薬学的に活性なペプチド又はタンパク質は、免疫学的に活性な化合物又は抗原又はエピトープであるか、又はそれらを含む。
本発明によれば、「免疫学的に活性な化合物」という用語は、好ましくは免疫細胞の成熟を誘導し及び/又は抑制し、サイトカイン生合成を誘導し及び/又は抑制し、及び/又はB細胞による抗体産生を刺激することにより体液性免疫を改変することによって、免疫応答を改変する任意の化合物に関する。一実施態様では、免疫応答は、抗体応答(通常、免疫グロブリンG(IgG)を含む)の刺激を伴う。免疫学的に活性な化合物は、限定されないが、抗ウイルス及び抗腫瘍活性を含む強力な免疫刺激活性を有し、免疫応答の他の側面をまたダウンレギュレートすることができ、例えば広範囲のTH2媒介疾患の治療に有用なTH2免疫応答から免疫応答をシフトさせる。
本発明によれば、「抗原」又は「免疫原」という用語は、免疫応答を誘発する任意の物質を包含する。特に、「抗原」は、抗体又はTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質に関する。本発明によれば、「抗原」という用語は、少なくとも一つのエピトープを含む任意の分子を含む。好ましくは、本発明の文脈における抗原は、場合によってはプロセシング後に、好ましくは抗原に特異的な免疫反応を誘導する分子である。本発明によれば、免疫反応の候補である任意の適切な抗原を使用することができ、免疫反応は体液性免疫反応と細胞性免疫反応の両方でありうる。本発明の実施態様の文脈において、抗原は、好ましくは、細胞、好ましくは抗原提示細胞により、MHC分子の文脈で提示され、抗原に対する免疫反応をもたらす。抗原は、好ましくは、天然に生じる抗原に対応するか又は由来する産物である。そのような天然に生じる抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、及び他の感染性因子及び病原体を含みうるか、又はそれらに由来し得、又は抗原はまた腫瘍抗原でありうる。本発明によれば、抗原は、天然に生じる産物、例えばウイルスタンパク質、又はその一部に対応しうる。好ましい実施態様では、抗原は表面ポリペプチド、すなわち、細胞、病原体、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン、又は腫瘍の表面に天然に提示されるポリペプチドである。抗原は、細胞、病原体、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン、又は腫瘍に対する免疫応答を誘発しうる。
「病原体」という用語は、生物、好ましくは脊椎動物に疾患を引き起こし得る病原性生物由来物質を意味する。病原体には、微生物、例えば細菌、単細胞真核生物(原生動物)、真菌、並びにウイルスが含まれる。
「エピトープ」、「抗原ペプチド」、「抗原エピトープ」、「免疫原性ペプチド」及び「MHC結合ペプチド」という用語は、ここでは互換的に使用され、抗原などの分子の抗原決定基、すなわち、免疫系によって認識され、例えば、特にMHC分子の文脈で提示される場合、T細胞によって認識される免疫学的に活性な化合物の部分又は断片を意味する。タンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続又は不連続部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸長でありうる。本発明によれば、エピトープは、細胞の表面上のMHC分子などのMHC分子に結合し得、よって、「MHC結合ペプチド」又は「抗原ペプチド」でありうる。「主要組織適合性複合体」という用語と「MHC」という略語は、MHCクラスI及びMHCクラスII分子を含み、全ての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質又は分子は、免疫反応においてリンパ球と抗原提示細胞又は罹患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質又は分子がペプチドに結合し、T細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、T細胞に対して自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)と非自己抗原(例えば、侵入微生物の断片)の両方を提示する。好ましいそのような免疫原性部分は、MHCクラスI又はクラスII分子に結合する。ここで使用される場合、免疫原性部分は、そのような結合が当該技術分野で知られている任意のアッセイを使用して検出可能である場合、MHCクラスI又はクラスII分子に「結合」すると言われる。「MHC結合ペプチド」という用語は、MHCクラスI及び/又はMHCクラスII分子に結合するペプチドに関する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは典型的には8~10アミノ酸長であるが、より長い又は短いペプチドも効果的でありうる。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは典型的には10~25アミノ酸長であり、特に13~18アミノ酸長であるが、より長い及びより短いペプチドが効果的でありうる。
一実施態様では、本発明による目的のタンパク質は、標的生物のワクチン接種に適したエピトープを含む。当業者には、免疫生物学及びワクチン接種の原理の一つが、治療される疾患に対して免疫学的に関連する抗原で生物を免疫することにより疾患に対する免疫保護反応が生じるという事実に基づいていることが分かるであろう。本発明によれば、抗原は、自己抗原及び非自己抗原を含む群から選択される。非自己抗原は、好ましくは、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、アレルゲン又は寄生虫抗原である。抗原は、標的生物に免疫応答を誘発することができるエピトープを含むことが好ましい。例えば、エピトープは、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、アレルゲン、又は腫瘍に対して免疫応答を誘発しうる。
幾つかの実施態様では、非自己抗原は細菌抗原である。幾つかの実施態様では、抗原は、鳥、魚、及び家畜を含む哺乳動物を含む動物に感染する細菌に対する免疫応答を誘発する。好ましくは、免疫応答が誘発される細菌は病原性細菌である。
幾つかの実施態様では、非自己抗原はウイルス抗原である。ウイルス抗原は、例えば、ウイルス表面タンパク質由来のペプチド、例えばカプシドポリペプチド又はスパイクポリペプチドでありうる。幾つかの実施態様では、抗原は、鳥、魚、及び家畜を含む哺乳動物を含む動物に感染するウイルスに対する免疫応答を誘発する。好ましくは、免疫応答が誘発されるウイルスは病原性ウイルスである。
幾つかの実施態様では、非自己抗原は真菌由来のポリペプチド又はタンパク質である。幾つかの実施態様では、抗原は、鳥、魚、及び家畜を含む哺乳動物を含む動物に感染する真菌に対する免疫応答を誘発する。好ましくは、免疫応答が誘発される真菌は病原性真菌である。
幾つかの実施態様では、非自己抗原は、単細胞真核生物寄生虫由来のポリペプチド又はタンパク質である。幾つかの実施態様では、抗原は、単細胞真核生物寄生虫、好ましくは病原性単細胞真核生物寄生虫に対する免疫応答を誘発する。病原性単細胞真核生物寄生虫は、例えば、プラスモジウム属、例えば熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫又は卵形マラリア原虫、リーシュマニア属、又はトリパノソーマ属、例えばクルーズトリパノソーマ又はブルセイトリパノソーマに由来しうる。
幾つかの実施態様では、非自己抗原はアレルゲン性ポリペプチド又はアレルゲン性タンパク質である。アレルゲン性タンパク質又はアレルゲン性ポリペプチドは、減感作としても知られているアレルゲン免疫療法に適している。
幾つかの実施態様では、抗原は自己抗原、特に腫瘍抗原である。腫瘍抗原とその決定は、当業者に知られている。
本発明の文脈において、「腫瘍抗原」又は「腫瘍関連抗原」という用語は、限られた数の組織及び/又は器官において、又は特定の発達段階で特異的に発現される通常の条件下にあるタンパク質に関し、例えば、腫瘍抗原は、胃組織、好ましくは胃粘膜、生殖器、例えば精巣、栄養膜組織、例えば胎盤、又は生殖系列細胞で特異的に発現される正常な条件下にあり得、一又は複数の腫瘍又はがん組織で発現又は異常発現される。この文脈において、「限られた数」は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下を意味する。本発明の文脈における腫瘍抗原には、例えば、分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、すなわち所定の分化段階で所定の細胞型に特異的に発現される正常な状態にあるタンパク質、がん/精巣抗原、すなわち精巣で、時には胎盤で特異的に発現される正常な状態にあるタンパク質、及び生殖系列特異的抗原が含まれる。本発明の文脈において、腫瘍抗原は、好ましくはがん細胞の細胞表面に随伴しており、好ましくは正常組織では発現されないか、又は稀にしか発現されない。好ましくは、腫瘍抗原又は腫瘍抗原の異常な発現により、がん細胞が特定される。本発明の文脈において、対象、例えばがん疾患を患っている患者のがん細胞によって発現される腫瘍抗原は、好ましくは、前記対象の自己タンパク質である。好ましい実施態様では、本発明の文脈における腫瘍抗原は、特に非必須の組織又は器官、すなわち免疫系により損傷を受けた場合に対象の死に至らない組織又は器官においてあるいは免疫系がアクセスできないか又は殆どアクセスできない身体の器官又は構造内で正常条件下で発現される。好ましくは、腫瘍抗原のアミノ酸配列は、正常組織で発現される腫瘍抗原とがん組織で発現される腫瘍抗原との間で同一である。
本発明において有用でありうる腫瘍抗原の例は、p53、ART-4、BAGE、ベータ-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質、例えばクローディン-6、クローディン-18.2及びクローディン-12、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、又はMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メランA、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、-2、-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、p190マイナーBCR-abL、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1又はRU2、SAGE、SART-1又はSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE及びWTである。特に好ましい腫瘍抗原には、クローディン-18.2(CLDN18.2)及びクローディン-6(CLDN6)が含まれる。
本発明に従って、ここに記載のRNAを使用することにより免疫応答を誘導し又は増強することが望まれる場合、RNAによりコードされる抗原又はエピトープ又はそのプロセシング産物は、樹状細胞などの抗原提示細胞上に発現される主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質により提示されうる。ついで、MHCペプチド複合体は、T細胞などの免疫細胞によって認識され得、その活性化に至る。よって、抗原タンパク質又はペプチドをコードするRNAに関連して使用される好ましい細胞は、樹状細胞などの抗原提示細胞である。
よって、本発明は、抗原をコードするRNAがエクスビボで抗原提示細胞に、例えば患者から採取された抗原提示細胞に導入されて、抗原を発現し、場合によってはエクスビボでクローン増殖された抗原提示細胞が患者に、例えば同じ患者に移植される実施態様を想定する。トランスフェクトされた細胞は、当該分野で知られた任意の手段を使用して、好ましくは静脈内、腔内、腹腔内又は腫瘍内投与により滅菌形態で患者に導入されうる。
一実施態様では、特に抗原が関与する疾患を有する哺乳動物を治療することが望まれる場合、抗原をコードするRNAを哺乳動物に投与することができる。同RNAは、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子をコードするオープンリーディングフレームを含み得、又はトスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスのNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子をコードするオープンリーディングフレームを含むRNAが加えて投与されうる。RNAは哺乳類の抗原提示細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞又は他の細胞)に取り込まれる。RNAの抗原翻訳産物が形成され、その産物がT細胞による認識のために細胞の表面に提示される。
本発明の方法は、抗原をコードするRNAを発現するための抗原提示細胞を含みうる。この目的のために、本発明の方法は、樹状細胞などの抗原提示細胞中への抗原をコードするRNAの導入を含みうる。樹状細胞などの抗原提示細胞のトランスフェクションのために、抗原をコードするRNAを含む薬学的組成物を使用してもよい。RNAを樹状細胞又は他の抗原提示細胞に標的化する送達ビヒクルを患者に投与して、インビボで起こるトランスフェクションを生じさせることができる。
幾つかの実施態様では、薬学的に活性なペプチド又はタンパク質が免疫応答を誘発する抗原である必要はない。適切な薬学的に活性なタンパク質又はペプチドは、サイトカイン及び免疫系タンパク質、例えば免疫学的に活性な化合物(例えば、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレシン、セレチン、ホーミング受容体、T細胞受容体、免疫グロブリン)、ホルモン(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコールアミン、ゴナドトロピン、栄養ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシ成長ホルモン、レプチン等)、成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、増殖因子(例えば、表皮増殖因子、神経増殖因子、インスリン様増殖因子等)、増殖因子受容体、酵素(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、コレステロール生合成又は分解性、ステロイド産生酵素、キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アロマターゼ、シトクロム、アデニル酸又はグアニル酸シクラーゼ、ノイラミダーゼ等)、受容体(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合タンパク質(成長ホルモン又は増殖因子結合タンパク質等)、転写及び翻訳因子、腫瘍増殖抑制タンパク質(例えば、血管新生を阻害するタンパク質)、構造タンパク質(コラーゲン、フィブロイン、フィブリノーゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、ミオシンなど)、血液タンパク質(トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、プロテインC、フォンウィルブランド因子、アンチトロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)又は修飾第VIII因子、抗凝固剤等からなる群から選択されうる。一実施態様では、本発明による薬学的に活性なタンパク質は、リンパ系ホメオスタシスの調節に関与するサイトカイン、好ましくはT細胞の発生、プライミング、増殖、分化及び/又は生存に関与し、好ましくはこれを誘導し又は増強するサイトカインである。一実施態様では、サイトカインはインターロイキン、例えばIL-2、IL-7、IL-12、IL-15、又はIL-21である。
ここに記載のペプチド又はタンパク質を発現する細胞は、様々な疾患、特に前記ペプチド又はタンパク質の提供が治療又は予防効果をもたらす疾患の治療又は予防治療に使用されうる。例えば、ウイルスに由来する抗原の発現は、前記ウイルスにより引き起こされるウイルス性疾患の治療に有用でありうる。腫瘍抗原の発現は、がん細胞が前記腫瘍抗原を発現するがん疾患の治療に有用でありうる。
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を意味する。疾患はしばしば特定の症状や兆候に関連する病状として解釈される。疾患は、感染症などの元々外部からの因子によって引き起こされうるか、又は自己免疫疾患などの内部機能障害によって引き起こされうる。
本発明によれば、「疾患」という用語はがん疾患をまた意味する。「がん疾患」又は「がん」という用語(医学用語:悪性新生物)は、細胞群が、制御されない増殖(正常な限界を超えた分裂)、浸潤(隣接組織への侵入及び破壊)及びしばしば転移(リンパ又は血液を介して体内の他の部位に広がる)を示す疾患クラスを意味する。がんのこれら三つの悪性特性は、それらを、自己限定されており、浸潤も転移もしない良性腫瘍と区別する。殆どのがんは腫瘍、すなわち細胞(新生物細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)の異常な増殖によって形成される腫脹又は病変を形成するが、白血病のような一部はそうではない。がんの例には、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、神経膠腫及び白血病が含まれる。より具体的には、そのようながんの例には、骨がん、血液がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内悪性メラノーマ、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、性器及び生殖器の癌腫、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、膀胱のがん、腎臓のがん、腎細胞癌腫、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉性がん、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、及び下垂体腺腫が含まれる。本発明による「がん」という用語は、がん転移をまた含む。
「感染症」という用語は、個体から個体へ、又は生物から生物へ伝染する可能性があり、微生物因子(例えば、風邪)によって引き起こされるあらゆる疾患を意味する。感染性疾患の例には、ウイルス感染症、例えばAIDS(HIV)、A型、B型又はC型肝炎、ヘルペス、帯状疱疹(水疱)、風疹(風疹ウイルス)、黄熱病、デング熱等フラビウイルス、インフルエンザウイルス、出血性感染症(マールブルグ又はエボラウイルス)、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)、細菌感染症、例えばレジオネラ病(レジオネラ)、性感染症(例えば、クラミジア又は淋病)、胃潰瘍(ヘリコバクター)、コレラ(ビブリオ)、結核、ジフテリア、大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ又は連鎖球菌(破傷風)による感染;マラリア、睡眠病、リーシュマニア症などの原虫病原体による感染;トキソプラズマ症、すなわち、マラリア原虫、トリパノソーマ、リーシュマニア及びトキソプラズマによる感染;又は例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、ブラストミセス・デルマチチジス、又はカンジダ・アルビカンスにより引き起こされる真菌感染症が含まれる。
「自己免疫疾患」という用語は、身体がそれ自体の組織の何らかの構成要素に対して免疫原性(すなわち免疫系)応答を作り出す任意の疾患を意味する。言い換えれば、免疫系は、身体内の一部の組織又は系を自己として認識し、それが異物であるかのように標的にして攻撃する能力を失う。自己免疫疾患は、主に一つの器官が影響を受けるもの(例えば、溶血性貧血や抗免疫性甲状腺炎)と、自己免疫疾患の過程が多くの組織に拡散するもの(例えば、全身性エリテマトーデス)に分類できる。例えば、多発性硬化症は、脳と脊髄の神経線維を囲む鞘を攻撃するT細胞によって引き起こされると考えられている。これは、調整の失調、弱さ、及び視界不良をもたらす。自己免疫疾患は当該技術分野で知られており、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、溶血性貧血、抗免疫甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、乾癬等々を含む。
ここに記載のRNAは、インビトロ又はインビボで、細胞、特にT細胞などの免疫エフェクター細胞においてT細胞受容体又は人工T細胞受容体を発現させるのにまた有用である。よって、一実施態様では、ここに記載のRNAによってコードされるペプチド又はタンパク質は、T細胞受容体又は人工T細胞受容体の一又は複数の鎖である。
そのようなT細胞受容体又は人工T細胞受容体を発現するように操作された細胞は、T細胞受容体又は人工T細胞受容体によって結合されるここに記載の抗原などの抗原の発現を特徴とする疾患、特にここに記載の疾患の治療に有用である。T細胞受容体又は人工T細胞受容体を発現する改変T細胞による養子細胞移植療法は、有望な治療法である。例えば、患者のT細胞は、患者の罹患細胞上の抗原に特異的に向けられたT細胞受容体又は人工T細胞受容体を発現するように遺伝子操作(遺伝子改変)され得、その後患者に注入される。
よって、更なる態様では、本発明は、T細胞受容体の鎖又は人工T細胞受容体の鎖をコードする一又は複数のRNA分子をT細胞又はその前駆体に導入し、トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子を細胞に提供する工程を含む免疫反応性細胞を産生する方法を提供する。
本発明の文脈における「免疫反応性細胞」又は「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。「免疫反応性細胞」は、好ましくは、MHC分子との関連で細胞の表面に発現されるか又は細胞の表面に提示される抗原などの抗原に結合し、免疫応答を媒介することができる。例えば、そのような細胞は、サイトカイン及び/又はケモカインを分泌し、微生物を殺し、抗体を分泌し、感染した又はがん性の細胞を認識し、場合によってはそのような細胞を排除する。例えば、免疫反応性細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、及び樹状細胞を含む。好ましくは、本発明の文脈において、「免疫反応性細胞」はT細胞、好ましくはCD4+及び/又はCD8+T細胞である。本発明によれば、「免疫反応性細胞」という用語は、適切な刺激で免疫細胞(T細胞、特にTヘルパー細胞、又は細胞溶解性T細胞など)に成熟できる細胞をまた含む。免疫反応性細胞は、CD34+造血幹細胞、未熟及び成熟T細胞、並びに未熟及び成熟B細胞を含む。抗原に曝露されたときの、T細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への分化は、免疫系のクローン選択に類似している。
大部分のT細胞には、幾つかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)がある。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファ及びベータ(TCRα及びTCRβ)遺伝子から生成され、α-及びβ-TCR鎖と呼ばれる二つの別個のペプチド鎖で構成される。γδT細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に別個のT細胞受容体(TCR)を持つT細胞の小サブセットを表す。しかし、γδT細胞では、TCRは一つのγ鎖と一つのδ鎖で構成されている。この群のT細胞は、αβT細胞よりもはるかに一般的ではない(全T細胞の2%)。本発明の好ましい実施態様では、T細胞受容体はα-及びβ-TCR鎖を含む。T細胞受容体のα鎖及びβ鎖をコードするRNAは、別個の核酸分子、すなわちRNA分子、又は代わりに単一のRNA分子に含まれている場合がある。従って、細胞におけるT細胞受容体の発現には、異なるT細胞受容体鎖をコードする別個のRNA分子の共トランスフェクション、又は異なるT細胞受容体鎖をコードする一種類のみのRNA分子のトランスフェクションが必要とされる。
T細胞などの免疫エフェクター細胞にモノクローナル抗体の特異性などの任意の特異性を付与する、ここで「人工T細胞受容体」、「キメラ抗原受容体(CAR)」又は「キメラT細胞受容体」と呼ばれる操作受容体が産生されている。そのようなT細胞は、標的細胞の認識のために抗原のプロセシング及び提示を必ずしも必要とせず、むしろ標的細胞上に存在する任意の抗原を認識しうる。本発明によれば、人工T細胞受容体は、抗原結合ドメイン、例えば抗体の抗原結合部分及びT細胞受容体、例えば単鎖可変断片(scFv)、T細胞シグナル伝達ドメイン、例えばCD3-ゼータのエンドドメイン、及び場合によっては一又は複数の同時刺激ドメイン、例えばCD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、及びCD278(ICOS)を含みうる。
ここに記載のRNAは、体細胞を幹様細胞、すなわち、幹細胞特性を有する細胞にインビトロ又はインビボでリプログラミングし又は脱分化することにおいてまた有用である。これには、細胞のリプログラミング又は脱分化プロセスを開始するために、インビトロ又はインビボでのリプログラミング因子の一過性発現が含まれうる。よって、一実施態様では、ここに記載のRNAによりコードされるペプチド又はタンパク質は、幹細胞特性を有する細胞への体細胞のリプログラミングを可能にする因子である。幹様細胞は、胚又は胎児を生成することなく、本発明によって提供されうる。幹細胞特性、特に多能性を有する細胞への体細胞の脱分化は、体細胞への体細胞の脱分化を誘導するRNAコード化因子(リプログラミング転写因子(rTF)又はリプログラミング因子とも呼ばれる)を導入し、細胞を培養して細胞を脱分化させることにより、なされうる。脱分化した後、細胞は、神経、造血、筋肉、上皮、及び他の細胞型などの同じ又は異なる体細胞型に再分化するように誘導されうる。よって、そのような幹様細胞は、「細胞療法」による変性疾患の治療に医学的用途があり、心臓、神経、内分泌、血管、網膜、皮膚、筋肉骨格障害、及び他の疾患の治療における新規治療戦略に利用できる。
従って、本発明は、また、(i)体細胞を含む細胞集団を提供する工程、(ii)トスカーナウイルスNSsタンパク質又はトスカーナウイルスNSsタンパク質の機能的バリアントを含むウイルス由来因子を体細胞に提供する工程、(iii)一又は複数のリプログラミング因子をコードするRNAを体細胞に導入する工程、及び(iv)幹細胞特性を有する細胞の発生を可能にする工程を含む、幹細胞特性を有する細胞を提供するための方法に関する。
一実施態様では、一又は複数のリプログラミング因子は、OCT4及びSOX2を含む。一又は複数のリプログラミング因子は、KLF4及び/又はc-MYC及び/又はNANOG及び/又はLIN28を更に含みうる。一実施態様では、一又は複数のリプログラミング因子は、OCT4、SOX2、KLF4及びc-MYCを含み、LIN28と場合によってはNANOGを更に含みうる。一実施態様では、一又は複数のリプログラミング因子は、OCT4、SOX2、NANOG、及びLIN28を含む。
一実施態様では、本方法は、少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で体細胞を培養する工程を更に含み、少なくとも一種のヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、好ましくはバルプロ酸、酪酸ナトリウム、トリコスタチンA及び/又はスクリプタイドを含む。
一実施態様では、幹細胞特性を有する細胞の発生を可能にする工程は、胚性幹細胞培養条件下で体細胞を培養することを含む。
一実施態様では、幹細胞の特徴は、胚性幹細胞の形態を含む。
一実施態様では、幹細胞特性を有する細胞は、正常な核型を有し、テロメラーゼ活性を発現し、胚性幹細胞に特徴的な細胞表面マーカーを発現し、及び/又は胚性幹細胞に特徴的な遺伝子を発現する。
一実施態様では、幹細胞特性を有する細胞は多能性状態を示す。
一実施態様では、幹細胞特性を有する細胞は、三つ全ての一次胚葉の高度な派生物に分化する発生能を有する。
一実施態様では、体細胞は、肺線維芽細胞、包皮線維芽細胞又は皮膚繊維芽細胞などの線維芽細胞である。好ましくは、体細胞はヒト細胞である。
一実施態様では、RNAは、エレクトロポレーション又はリポフェクションにより体細胞に導入される。一実施態様では、RNAは体細胞に繰り返し導入される。
一実施態様では、ここに開示されるリプログラミング因子をコードするRNAの体細胞への導入は、長期間にわたって、好ましくは少なくとも10日間、好ましくは少なくとも11日間、より好ましくは少なくとも12日間にわたって、前記因子の発現をもたらす。そのような長期の発現を達成するためには、好ましくはエレクトロポレーションを使用して、RNAを細胞に1回を超えて定期的に(すなわち、繰り返し)導入することが好ましい。好ましくは、RNAは、長期間にわたって一又は複数の因子の発現を確実にするために、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、より好ましくは少なくとも4回、更により好ましくは少なくとも5回から好ましくは6回まで、より好ましくは7回まで、又は更には8、9又は10回まで、好ましくは少なくとも10日間、好ましくは少なくとも11日間、より好ましくは少なくとも12日間の期間にわたって細胞に導入される。好ましくは、RNAの反復導入間に経過する期間は、24時間から120時間、好ましくは48時間から96時間である。一実施態様では、RNAの反復導入間に経過する期間は、72時間以下、好ましくは48時間又は36時間以下である。一実施態様では、次のエレクトロポレーションの前に、細胞を以前のエレクトロポレーションから回復させることができる。何れの場合でも、条件は、リプログラミング過程をサポートする量と期間で因子が細胞内で表現されるように選択されるべきである。
「幹細胞」とは、自己再生し、未分化のままであり、かつ分化する能力を有する細胞である。幹細胞は、少なくともそれが自然に存在する動物の寿命の間、無制限に分裂できる。幹細胞は最終分化していない;それは分化経路の最終段階にはない。幹細胞が分裂すると、各娘細胞は幹細胞のままであるか、又は最終分化に向かう過程に乗り出しうる。
全能性幹細胞は、全能性分化特性を有し、完全な生物に発達することができる細胞である。この特性は、精子による卵母細胞の受精後の8細胞期までの細胞が有している。これらの細胞を単離して子宮に移植すると、完全な生物になりうる。
多能性幹細胞は、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉の層に由来する様々な細胞及び組織に発達することができる細胞である。受精後4~5日に発生される、胚盤胞の内部にある内部細胞塊に由来する多能性幹細胞は「胚性幹細胞」と呼ばれ、様々な組織細胞に分化できるが、新しい生物を形成することはできない。
多分化能幹細胞は、それらの組織及び起源の器官に固有の細胞型のみに通常は分化する幹細胞である。多分化能幹細胞は、胎児期、新生児期、成人期の様々な組織や器官の成長と発達だけでなく、成人組織の恒常性の維持と組織損傷時に再生を誘導する機能にも関与している。組織特異的な多分化能細胞は、総称して「成体幹細胞」と呼ばれる。
「胚性幹細胞」又は「ESC」は、胚に存在するか、胚から単離された幹細胞である。それは、生物に存在するありとあらゆる細胞に分化する能力を有する多能性、又は一を超える細胞型に分化する能力を有する多分化能性でありうる。
ここで使用される場合、「胚」とは、その発生の初期段階にある動物を意味する。これらの段階は、三つの胚芽層が定義され樹立される着床と原腸形成、並びにそれぞれの器官と器官系への胚葉の分化によって特徴付けられる。三つの胚葉は内胚葉、外胚葉、及び中胚葉である。
「胚盤胞」とは、受精卵が卵割を受け、流体で満たされた空洞を取り囲む球形の細胞層が形成されているか、又は形成された発生初期の胚である。この球状の細胞層は栄養外胚葉である。栄養外胚葉の内部には、内部細胞塊(ICM)と呼ばれる細胞クラスターがある。栄養外胚葉は胎盤の前駆体であり、ICMは胚の前駆体である。
体性幹細胞とも呼ばれる成体幹細胞は、成体に見出される幹細胞である。成体幹細胞は、分化した組織に見出され、それ自体を再生し得、幾つかの制限付きで分化して、その起源の組織の特殊化した細胞型を生じ得る。例には、間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞が含まれる。
「分化細胞」とは、より特殊化した形態又は機能への進行性の発達的変化を受けた成熟細胞である。細胞分化は、明らかに特殊化した細胞型に成熟するときに細胞が受ける過程である。分化細胞は異なる特徴を有し、特定の機能を果たし、分化の少ない対応物よりも分裂する可能性が低くなる。
「未分化」細胞、例えば、未成熟、胚、又は原始細胞は、典型的には非特異的な外観を有し、複数の非特異的な活動を実施し得、分化細胞によって典型的に実施される機能において、もしあったとしても不十分に機能しうる。
「体細胞」とは、任意の全ての分化細胞を指し、幹細胞、生殖細胞、又は配偶子は含まない。好ましくは、ここで使用される「体細胞」は最終分化細胞を指す。一実施態様では、体細胞は、肺線維芽細胞、包皮線維芽細胞又は皮膚線維芽細胞などの線維芽細胞、又はケラチノサイトである。
一実施態様では、体細胞は、間葉系表現型を有する胚性幹細胞由来の体細胞である。好ましい実施態様では、体細胞は、線維芽細胞、例えば胎児線維芽細胞又は出生後の線維芽細胞又はケラチノサイト、好ましくは毛包由来ケラチノサイトである。更なる実施態様では、線維芽細胞は肺線維芽細胞、包皮線維芽細胞又は皮膚繊維芽細胞である。特定の実施態様では、線維芽細胞は、カタログ番号CCL-186の下でアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託され、カタログ番号CRL-2097の下にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託され、又はカタログ番号CRL-2522の下にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託され、カタログ番号PC501A-HFFの下にSBI System Biosciencesによって流通され、又はカタログ番号P10857の下にInnoprotによって流通された線維芽細胞である。一実施態様では、線維芽細胞は成人のヒト皮膚線維芽細胞である。好ましくは、体細胞はヒト細胞である。本発明によれば、体細胞は遺伝的に改変されうる。
ここで使用される場合、「コミットされた」とは、特定の機能に永続的にコミットされたとみなされる細胞を意味する。コミットされた細胞はまた「最終分化細胞」とも呼ばれる。
ここで使用される場合、「分化」とは、特定の形態又は機能に対する細胞の適応を意味する。細胞では、分化は、よりコミットされた細胞に導く。
ここで使用される場合、「脱分化」とは、形態又は機能の特殊化の喪失を意味する。細胞では、脱分化は、コミットが少ない細胞に導く。
ここで使用される場合、「リプログラミング」とは、細胞の遺伝的プログラムのリセットを意味する。リプログラムされた細胞は、好ましくは多能性を示す。
「脱分化した」及び「リプログラムされた」という用語又は類似の用語は、幹細胞特性を有する体細胞由来細胞を示すためにここでは互換的に使用される。しかしながら、前記用語は、機構的又は機能的考慮により、ここで開示される主題を限定することを意図していない。
ここで使用される場合、「生殖細胞」は、精母細胞又は卵母細胞などの生殖性細胞、又は生殖性細胞に発達する細胞を意味する。
ここで使用される場合、「多能性」とは、胎盤の細胞又は子宮の他の支持細胞を除く任意の細胞型を生じさせることができる細胞を意味する。
「幹細胞特性を有する細胞」という用語は、分化した体細胞性非幹細胞に由来するが、幹細胞、特に胚性幹細胞に典型的な一又は複数の特徴を示す細胞を示すためにここでは使用される。そのような特徴には、胚性幹細胞の形態、例えばコンパクトなコロニー、高い核対細胞質比及び顕著な核小体、正常核型、テロメラーゼ活性の発現、胚性幹細胞に特徴的な細胞表面マーカーの発現、及び/又は胚性幹細胞に特徴的な遺伝子の発現が含まれる。胚性幹細胞に特徴的な細胞表面マーカーは、例えば、ステージ特異的胎児抗原-3(SSEA-3)、SSEA-4、腫瘍関連抗原-1-60(TRA-1-60)、TRA-1-81、及びTRA-2-49/6Eからなる群から選択される。胚性幹細胞に特徴的な遺伝子は、例えば、内因性OCT4、内因性NANOG、増殖及び分化因子3(GDF3)、reduced expression 1(REX1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚細胞特異的遺伝子1(ESG1)、developmental pluripotency-associated 2(DPPA2)、DPPA4、及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)からなる群から選択される。一実施態様では、幹細胞に典型的な一又は複数の特徴には多能性が含まれる。一実施態様では、幹細胞特性を有する細胞は多能性状態を示す。一実施態様では、幹細胞の特徴を有する細胞は、三つ全ての一次胚葉の高度な派生物に分化する発生能を有する。一実施態様では、一次胚葉は内胚葉であり、高度な派生物は腸様上皮組織である。更なる実施態様では、一次胚葉は中胚葉であり、高度な派生物は横紋筋及び/又は軟骨である。更に別の実施態様では、一次胚葉は外胚葉であり、高度な派生物は神経組織及び/又は表皮組織である。好ましい一実施態様では、幹細胞特性を有する細胞は、神経細胞及び/又は心臓細胞に分化する発生能を有する。本発明によれば、一般に、「幹細胞特性を有する細胞」、「幹細胞の性質を有する細胞」、「幹様細胞」、「リプログラム細胞」及び「脱分化細胞」という用語又は類似の用語は類似の意味を有し、ここでは互換的に使用される。
本発明による「リプログラミング因子」という用語は、幹細胞特性を有する細胞への体細胞のリプログラミングを、場合によっては更なるリプログラミング因子などの更なる薬剤と共に誘導するタンパク質及びペプチド並びにその誘導体及びバリアントを含む。例えば、「リプログラミング因子」という用語は、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4、及びc-MYCを含む。
リプログラミング因子は、あらゆる動物種(例えば哺乳類及びげっ歯類)のものでありうる。哺乳類の例には、ヒト及び非ヒト霊長類が含まれるが、これらに限定されない。霊長類には、ヒト、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザル、及び任意の他の新世界又は旧世界サルが含まれるが、これらに限定されない。げっ歯類には、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の一実施態様では、幹細胞特性を有する細胞への体細胞のリプログラミングを可能にすることができるリプログラミング因子は、(i)OCT4及びSOX2、(ii)OCT4、SOX2、及びNANOGとLIN28の一方又は両方、(iii)OCT4、SOX2、及びKLF4とc-MYCの一方又は両方からなる群から選択される因子のアセンブリを含む。一実施態様では、前記リプログラミング因子は、OCT4、SOX2、NANOG及びLIN28、OCT4、SOX2、KLF4及びc-MYC、又はOCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、NANOG及びLIN28を含む。
OCT4は、真核生物POU転写因子の転写因子であり、胚性幹細胞の多能性の指標である。それは母性発現されるオクトマー結合タンパク質である。卵母細胞、未分化胚芽細胞の内部細胞塊、及び始原生殖細胞にもまた存在することが観察されている。遺伝子POU5F1はOCT4タンパク質をコードしている。遺伝子名の同義語には、OCT3、OCT4、OTF3及びMGC22487が含まれる。特定の濃度でのOCT4の存在は、胚性幹細胞が未分化のままであるために必要である。好ましくは、「OCT4タンパク質」又は単に「OCT4」は、ヒトOCT4に関する。
Sox2は、単一のHMG DNA結合ドメインを持つ転写因子をコードするSox(SRY関連HMGボックス)遺伝子ファミリーのメンバーである。SOX2は、分化するその能力を阻害することにより、神経前駆細胞を制御することが見出されている。因子の抑制は、脳室帯からの剥離をもたらし、これに細胞周期の終了が続く。また、これらの細胞は、前駆細胞と初期の神経分化マーカーの喪失により、その前駆細胞の特性を失い始める。好ましくは、「SOX2タンパク質」又は単に「SOX2」は、ヒトSOX2に関する。
NANOGはNK-2型ホメオドメイン遺伝子であり、胚性幹細胞の再生と分化に重要な遺伝子の発現を調節することにより、おそらく幹細胞多能性を維持する上で重要な役割を果たすことが提案されている。NANOGは、そのC末端に異常に強い二つの活性化ドメインが埋め込まれた転写活性化因子として機能する。NANOG発現の減少は、胚性幹細胞の分化を誘導する。好ましくは、「NANOGタンパク質」又は単に「NANOG」はヒトNANOGに関する。
LIN28は、RNA結合モチーフ:低温ショックドメインと一対のレトロウイルス型CCHCジンクフィンガーの、異常な対形成を伴う保存された細胞質タンパク質である。哺乳類では、多様な型の未分化細胞に豊富にある。多能性哺乳動物細胞では、LIN28はポリ(A)結合タンパク質とのRNase感受性複合体、及びショ糖勾配のポリソーム画分で観察されており、mRNAの翻訳に関連していることが示唆される。好ましくは、「LIN28タンパク質」又は単に「LIN28」はヒトLIN28に関する。
Krueppel様因子(KLF4)はジンクフィンガー転写因子であり、様々な組織、例えば結腸、胃、皮膚の有糸分裂後上皮細胞で強く発現している。KLF4は、これらの細胞の最終分化に不可欠であり、細胞周期の調節に関与している。好ましくは、「KLF4タンパク質」又は単に「KLF4」はヒトKLF4に関する。
MYC(cMYC)はプロトオンコジーンであり、広範囲のヒトがんで過剰発現している。特異的に変異し又は過剰発現すると、細胞増殖が増加し、癌遺伝子として機能する。MYC遺伝子は、エンハンサーボックス配列(Eボックス)での結合とヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)のリクルートを通じて、全ての遺伝子の15%の発現を調節する転写因子をコードする。MYCは、転写因子のMYCファミリーに属し、これにはN-MYC及びL-MYC遺伝子もまた含まれる。MYCファミリーの転写因子は、bHLH/LZ(ベーシック・へリックス・ループ・へリックスロイシンジッパー)ドメインを含む。好ましくは、「cMYCタンパク質」又は単に「cMYC」はヒトcMYCに関する。
ここでのOCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4又はc-MYCなどの特定の因子への言及は、これらの因子の全てのバリアントも含むように理解されるべきである。特に、細胞によって自然に発現されるこれらの因子の全てのスプライスバリアント、翻訳後修飾バリアント、コンフォメーション、アイソフォーム、及び種ホモログも含むように理解されるべきである。
本発明によれば、ペプチド又はタンパク質のバリアントは、好ましくは、それが由来するペプチド又はタンパク質の機能特性を有する。そのような機能特性は、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4、及びc-MYCについてそれぞれここに記載される。好ましくは、ペプチド又はタンパク質のバリアントは、動物分化細胞のリプログラミングにおいて、それが由来するペプチド又はタンパク質と同じ特性を有する。好ましくは、バリアントは動物分化細胞のリプログラミングを誘導し又は増強する。
「リプログラミング因子の機能セット」は、幹細胞特性を有する細胞に体細胞をリプログラミングするのに有用なリプログラミング因子のセットであり、すなわち、体細胞で発現されたときのリプログラミング因子のセットは、幹細胞特性を有する細胞への体細胞のリプログラミングを行うのに十分である。
本発明の一実施態様では、リプログラミング因子の機能セットは、リプログラミングを達成するように細胞内に全て存在しなければならないリプログラミング因子より多くを含みうる。従って、本発明は、RNAレプリコンのセットなどのRNA分子のセットが異なるリプログラミング因子をコードする実施態様を含む。例えば、異なるRNA分子は、異なるリプログラミング因子をコードする異なるオープンリーディングフレームを含みうる。これらの異なるRNA分子、すなわちRNA分子のセットは、細胞に同時接種されて、リプログラミング因子の機能的なセットを提供しうる。
「miRNA」(マイクロRNA)という用語は、標的mRNAの分解を誘導及び/又は翻訳を防止することにより、ESC自己再生/分化及び細胞周期進行に関連するものを含む多くの細胞機能を調節する、真核細胞に見出される21~23ヌクレオチド長の非コードRNAに関する。miRNAは、標的メッセンジャーRNA転写物(mRNA)の相補配列に結合し、通常は翻訳抑制又は標的分解及び遺伝子サイレンシングをもたらす転写後調節因子である。適切な組み合わせのmiRNAは、インビトロで幹細胞の特性を有する細胞への体細胞の直接的な細胞リプログラミングを誘導できることが見出された。例えば、miRNAクラスター302~367は体細胞リプログラミングを増強することが観察された。
好ましくは、幹細胞特性を有する細胞の発生を可能にする工程は、胚性幹細胞培養条件下、好ましくは多能性幹細胞を未分化状態に維持するのに適した条件下で体細胞を培養することを含む。
好ましくは、幹細胞特性を有する細胞の発生を可能にするために、細胞は一又は複数のDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤及び/又は一又は複数のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の存在下で培養される。好ましい化合物は、5’-アザシチジン(5’-azaC)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、デキサメタゾン、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム(NaBu)、スクリプタイド及びバルプロ酸(VPA)からなる群から選択される。好ましくは、細胞は、バルプロ酸(VPA)の存在下で、好ましくは0.5から10mMの間、より好ましくは1から5mMの間の濃度、最も好ましくは約2mMの濃度で培養される。
本発明の方法は、あらゆる型の体細胞の脱分化をもたらすために使用することができる。使用されうる細胞には、本発明の方法により脱分化され又はリプログラムされうる細胞、特に完全に又は部分的に分化した、より好ましくは最終分化した細胞が含まれる。好ましくは、体細胞は、前胚、胚、胎児、及び出生後の多細胞生物に由来する二倍体細胞である。使用されうる細胞の例には、限定されないが、胎児及び新生児線維芽細胞又は成人線維芽細胞などの線維芽細胞、ケラチノサイト、特に初代ケラチノサイト、より好ましくは毛髪由来のケラチノサイト、脂肪細胞、上皮細胞、表皮細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、心臓細胞、食道細胞、筋肉細胞、メラニン細胞、造血細胞、骨細胞、マクロファージ、単球、及び単核細胞が含まれる。使用されうる細胞の例には、血液由来の内皮細胞及び内皮前駆細胞、及び尿由来の上皮細胞が含まれる。
本発明の方法を使用することができる細胞は、任意の動物種のもの;例えば哺乳類及びげっ歯類でありうる。本発明によって脱分化され再分化されうる哺乳動物細胞の例には、限定されないが、ヒト及び非ヒト霊長類細胞が含まれる。本発明を実施することができる霊長類細胞には、限定されないが、ヒト、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザル、及び任意の他の新世界又は旧世界サルの細胞が含まれる。本発明が実施されうるげっ歯類細胞には、限定されないが、マウス、ラット、モルモット、ハムスター及びスナネズミ細胞が含まれる。
本発明に従って調製された脱分化細胞は、多能性幹細胞と同じ要件の多くを示すと予想され、胚性幹細胞に使用される条件下で、例えば、ES細胞培地又は胚細胞の増殖を維持する任意の培地で増殖させ維持することができる。胚性幹細胞は、培養中の照射されたマウス胚性線維芽細胞又はヒト線維芽細胞(例えば、ヒト包皮線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト子宮内膜線維芽細胞、ヒト卵管線維芽細胞)などの不活化胎児線維芽細胞で維持されると、インビトロでその多能性を保持する。一実施態様では、ヒトフィーダー細胞は、直接分化によりリプログラムされた細胞の同じ培養物に由来する自己フィーダー細胞でありうる。
更に、ヒト胚性幹細胞は、マウス胎児線維芽細胞で馴化された培地中のマトリゲル上で成功裏に増殖させることができる。ヒト幹細胞は、長期間培養で増殖でき、特定の培養条件下では未分化のままである。
所定の実施態様では、細胞培養条件は、細胞の分化を阻害するか、そうでなければ細胞の脱分化を増強することができ、例えば、細胞の非ES細胞、栄養外胚葉又は他の細胞型への分化を防ぐ因子と細胞を接触させることを含みうる。
本発明に従って調製された脱分化細胞は、細胞の表現型の変化を監視し、それらの遺伝子及びタンパク質発現を特徴付けることを含む方法によって評価することができる。遺伝子発現はRT-PCRにより決定でき、翻訳産物は免疫細胞化学及びウェスタンブロッティングにより決定できる。特に、脱分化細胞は、トランスクリプトミクスを含む当該分野でよく知られた技術を使用して、遺伝子発現のパターンと、胚幹細胞などの未分化多能性制御細胞に予想される発現パターンに類似した遺伝子発現のパターンをリプログラムされた細胞が示すかどうかを決定するために特徴付けることができる。
この点に関して、脱分化細胞の次の遺伝子の発現を評価できる:OCT4、NANOG、LIN28、増殖及び分化因子3(GDF3)、reduced expression 1(REX1)、線維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚細胞特異的遺伝子1(ESG1)、developmental pluripotency-associated 2(DPPA2)、DPPA4、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)、胚性抗原-3(SSEA-3)、SSEA-4、腫瘍関連抗原-1-60(TRA-1-60)、TRA-1-81、及びTRA-2-49/6E。
リプログラムされた細胞が比較されうる未分化又は胚性幹細胞は、分化体細胞と同じ種に由来しうる。あるいは、リプログラムされた細胞が比較されうる未分化又は胚性幹細胞は、分化体細胞とは異なる種に由来しうる。
幾つかの実施態様では、未分化細胞で特異的に発現される所定の遺伝子がリプログラムされた細胞においても発現される場合、リプログラムされた細胞と未分化細胞、例えば胚性幹細胞との間に遺伝子発現パターンの類似性が存在する。例えば、分化体細胞では典型的には検出できない所定の遺伝子、例えばテロメラーゼを使用して、リプログラミングの程度を監視することができる。同様に、所定の遺伝子については、発現の欠如を使用してリプログラミングの程度を評価することができる。
テロメラーゼ活性の誘導によって特徴付けられる自己再生能力は、脱分化細胞で監視できる幹細胞の別の特徴である。
核型分析は、有糸分裂細胞からの染色体の広がり、スペクトル核型分析、テロメア長のアッセイ、全ゲノムハイブリダイゼーション、又は当該技術分野で周知の他の技術によって実施されうる。
本発明を使用して、適切な因子をコードするRNAが、一又は複数の体細胞に、例えば、エレクトロポレーションにより取り込まれる。取り込み後、細胞は、好ましくは、脱分化細胞の維持を支援する条件(すなわち、幹細胞培養条件)を使用して培養される。その後、脱分化細胞を増殖させ、誘導して、細胞療法に必要とされる様々な型の体細胞に再分化させることができる。本発明に従って得られた脱分化細胞は、インビトロ又はインビボで一又は複数の所望の体細胞型に分化するように誘導することができる。
好ましくは、本発明に従って得られた脱分化細胞は、三つの胚性胚葉、すなわち内胚葉、中胚葉、及び外胚葉の何れかから細胞を生じさせうる。例えば、脱分化細胞は、骨格筋、骨格、皮膚の真皮、結合組織、泌尿生殖器系、心臓、血液(リンパ細胞)、及び脾臓(中胚葉);胃、結腸、肝臓、膵臓、膀胱;尿道のライニング、気管の上皮部分、肺、咽頭、甲状腺、副甲状腺、腸(内胚葉);又は中枢神経系、網膜と水晶体、脳と感覚、神経節と神経、色素細胞、頭部結合組織、表皮、毛髪、乳腺(外胚葉)に分化しうる。本発明に従って得られた脱分化細胞は、当該分野で知られた技術を使用して、インビトロで又はインビボで再分化されうる。
本発明の一実施態様では、この発明の方法から得られるリプログラムされた細胞を使用して、分化した子孫を産生する。従って、一態様では、本発明は、(i)この発明の方法を使用してリプログラムされた細胞を得ること;及び(ii)リプログラムされた細胞の分化を誘導して分化細胞を産生することを含む、分化細胞を産生する方法を提供する。工程(ii)はインビボ又はインビトロで実施されうる。更に、分化は、例えば、リプログラムされた細胞が導入されている身体、器官、又は組織内に加えられ得又はインサイツで存在する適切な分化因子の存在により、誘導されうる。分化細胞は、細胞、組織、及び/又は臓器移植の分野で有利に使用される細胞、組織、及び/又は臓器を誘導するために使用することができる。所望されるならば、例えば、リプログラミングの前に体細胞に遺伝子組換えを導入することができる。本発明の分化細胞は、好ましくは、胚性幹細胞又は胚性生殖細胞の多能性を有さず、本質的に、組織特異的な部分的又は完全に分化した細胞である。
本発明の方法の一つの利点は、本発明により得られるリプログラムされた細胞が、細胞株の事前の選択又は精製又は樹立なしに分化できることである。従って、所定の実施態様では、リプログラムされた細胞を含む細胞の異種集団は、所望の細胞型に分化される。一実施態様では、本発明の方法から得られた細胞の混合物は、一又は複数の分化因子に曝露され、インビトロで培養される。
ここに開示された方法によって得られたリプログラムされた細胞を分化させる方法は、リプログラムされた細胞の透過処理の工程を含みうる。例えば、ここに記載のリプログラミング技術によって産生された細胞、又は代わりにリプログラムされた細胞を含む細胞の異種混合物は、一又は複数の分化因子又は細胞抽出物又は分化因子を含む他の調製物への曝露の前に透過処理されうる。
例えば、分化細胞は、少なくとも一種の分化因子の存在下で未分化のリプログラムされた細胞を培養し、培養物から分化細胞を選択することにより得られうる。分化細胞の選択は、分化細胞上に存在する所定の細胞マーカーの発現などの表現型に基づいて、又は機能的アッセイ(例えば、特定の分化した細胞型の一又は複数の機能を実行する能力)に基づいてもよい。
別の実施態様では、本発明に従ってリプログラムされた細胞は、それらのDNA配列の付加、欠失、又は修飾により遺伝的に修飾される。
本発明に従って調製されたリプログラムされた細胞又は脱分化細胞、又はリプログラムされた細胞又は脱分化細胞に由来する細胞は、研究及び治療に有用である。リプログラムされた多能性細胞は、限定されないが皮膚、軟骨、骨骨格筋、心筋、腎臓、肝臓、血液及び造血、血管前駆体及び血管内皮、膵ベータ、ニューロン、グリア、網膜、神経、腸、肺、肝臓の細胞を含む体内の細胞の任意のものに分化されうる。
リプログラムされた細胞は、再生/修復療法に有用であり、それを必要とする患者に移植されうる。一実施態様では、細胞は患者の自己由来である。
本発明に従って提供されるリプログラムされた細胞は、例えば、心臓病、神経病、内分泌病、血管病、網膜病、皮膚病、筋骨格障害、及び他の疾患の治療における治療ストラテジーで使用されうる。
例えば、限定は意図されないが、本発明のリプログラムされた細胞は、年齢又はがん放射線療法及び化学療法などのアブレーション療法によりその天然細胞が枯渇した動物の細胞を補充するために使用できる。別の非限定的な例では、本発明のリプログラムされた細胞は、臓器再生及び組織修復に有用である。本発明の一実施態様では、リプログラムされた細胞を使用して、ジストロフィー筋肉及び心筋梗塞などの虚血性イベントによって損傷した筋肉を含む損傷した筋肉組織を再活性化することができる。本発明の別の実施態様では、ここに開示されるリプログラムされた細胞を使用して、外傷又は手術後のヒトを含む動物の瘢痕を回復させることができる。この実施態様では、本発明のリプログラムされた細胞は、静脈内など全身的に投与され、損傷細胞によって分泌された循環サイトカインによって動員された新たに外傷を受けた組織の部位に移動する。本発明の別の実施態様では、リプログラムされた細胞は、修復又は再生を必要とする治療部位に局所的に投与されうる。
ここに記載の薬剤、例えば核酸、特にRNA、並びに細胞は、特にここに記載の治療に使用される場合、薬剤と場合によっては一又は複数の薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む薬学的組成物又はキットの形態で存在しうる。
薬学的組成物は好ましくは無菌であり、有効量の核酸を含む。
薬学的組成物は通常、均一な剤形で提供され、当該技術分野で知られている方法で調製されうる。薬学的組成物は、例えば、溶液又は懸濁液の形態でありうる。
薬学的組成物は、塩、緩衝物質、保存料、担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含み得、それらの全てが好ましくは薬学的に許容される。「薬学的に許容される」という用語は、薬学的組成物の活性成分の作用を妨げない材料の非毒性を意味する。
薬学的に許容可能ではない塩を、薬学的に許容される塩を調製するために使用してもよく、本発明に含まれる。この種の薬学的に許容される塩は、非限定的な形で、次の酸から調製された塩を含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等々。薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩などのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としてまた調製されうる。
薬学的組成物での使用に適した緩衝物質には、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、及び塩中のリン酸が含まれる。
薬学的組成物での使用に適した保存料には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン及びチメロサールが含まれる。
「担体」という用語は、適用を促進し、強化し又は可能にするために活性成分と組み合わされる、天然又は非天然(合成)の性質の有機又は無機成分を意味する。本発明によれば、「担体」という用語は、患者への投与に適した一又は複数の適合性のある固体又は液体充填剤、希釈剤又はカプセル化物質をまた含む。
非経口投与のための可能な担体物質は、例えば、滅菌水、グルコース溶液、リンゲル、乳酸リンゲル、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
ここで使用される「賦形剤」という用語は、薬学的組成物中に存在し得、例えば担体、結合剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、保存料、乳化剤、緩衝液、香料、又は着色料などの活性成分ではない全ての物質を示すことを意図している。
ここに記載の薬学的組成物は、注射又は注入を含む非経口投与によるなど、任意の一般的な経路を介して投与されうる。投与は、好ましくは非経口的、例えば静脈内、動脈内、皮下、リンパ節内、皮内又は筋肉内である。
非経口投与に適した組成物は、通常、活性化合物の滅菌水性又は非水性調製物を含み、これは好ましくはレシピエントの血液と等張である。適合性のある担体と溶媒の例は、リンゲル液と等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常、無菌の固定油が溶液又は懸濁媒質として使用される。
ここに記載の薬剤及び組成物は、好ましくは有効量で投与される。「有効量」とは、単独で又は更なる用量と一緒に、所望の反応又は所望の効果を達成する量を意味する。特定の疾患又は特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、病気の進行を遅くすること、特に、病気の進行を中断し又は逆転させることを含む。疾患又は状態の治療における所望の反応はまた前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防でありうる。
ここに記載の薬剤又は組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズ及び体重を含む患者の個々のパラメーター、治療期間、付随する治療(存在する場合)のタイプ、特定の投与経路、及び類似の要因に依存する。従って、ここに記載の薬剤の投与量は、これらのパラメーターの幾つかに依存しうる。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(又は異なる、より局所的な投与経路により達成される効果的により高い用量)が使用されうる。
本発明を、限定のためではなく、例示のためにのみ解釈されるべきである次の図及び実施例により詳細に説明する。説明及び実施例に基づいて、更なる実施態様が当業者に利用可能であり、同様に本発明の範囲内である。