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JP7427240B2 - 表面構造体、およびそれを用いた液滴の回収方法 - Google Patents
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表面構造体、およびそれを用いた液滴の回収方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 [刊行物名] Communication Chemistry 2,90(2019) [発行者名] Springer Nature [発行年月日] 令和1年8月6日 [刊行物等] [集会名] The 9th East Asia Symposium on Functional Dyes and Advanced Materials [主催者名] EAS9 Organizing Committee [開催日] 平成1年9月19日 [刊行物等] [刊行物名] 新学術領域研究(研究領域提案型)領域番号2606「高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築」令和元年度 最終国際会議 ・最終公開シンポジウム 要旨集 [発行者名] 新学術領域研究(研究領域提案型)領域番号2606「高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築」 [発行年月日] 令和1年10月23日 [刊行物等] [集会名] 新学術領域研究(研究領域提案型)領域番号2606「高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築」令和元年度最終国際会議・最終公開シンポジウム [主催者名] 新学術領域研究(研究領域提案型)領域番号2606「高次複合光応答分子システムの開拓と学理の構築」 [開催日] 平成1年10月25日 [刊行物等] [刊行物名] 化学 2020年1月号(Vol.75 No.1)44~50頁 [発行者名] 化学同人 [発行年月日] 令和1年12月18日 [刊行物等] [刊行物名] 2019(令和元)年度 龍谷大学大学院理工学研究科物質化学専攻 博士論文公聴会 博士論文概要 [発行者名] 龍谷大学大学院理工学研究科物質化学専攻 [発行年月日] 令和2年2月21日 [刊行物等] [集会名] 博士論文公聴会 [主催者名] 龍谷大学大学院理工学研究科物質化学専攻 [開催日] 令和2年2月21日 [刊行物等] [刊行物名] バイオサイエンスとインダストリー(B&I)、78(2)120~122頁 [発行者名] (一財)バイオインダストリー協会 [発行年月日] 令和2年3月10日
本発明は、表面構造体、およびそれを用いた液滴の回収方法に関する。
地球の温暖化に伴い乾燥地域が拡大し、水不足の解決方法が求められている。乾燥地域では地下水源が限られる一方で、空気中には霧が発生することがあり、霧を効率的に回収できれば有力な水源となり得る。霧粒は重量が小さいため物質表面に付着しやすいが、体積に対して表面積が大きいために迅速に蒸発する傾向があり、回収は容易ではない。
オーストラリア原産のテングシロアリは、巣作りのために雨季に飛行する。このシロアリの翅の表面は、霧粒を付着させ、大きな水滴にしてから表面から排除する機能を備えている(非特許文献1)。この表面構造を模倣し、霧粒を効率的に収集して液滴に転換させることができれば、乾燥地域における水不足への有力な対策となると考えられる。しかし、テングシロアリの翅は数ミリメーターの大きさであり、その表面の微細構造を3Dプリンター等により忠実に再現することは難しい。このような微細構造は、半導体の集積回路の製造に用いられるフォトリソグラフィーにより再現することはできるが、フォトリソグラフィーには大規模な装置と多くの工程が必要であり、より簡便に微細構造を製造する技術が必要とされている。
一方、ジアリールエテン誘導体1o、2o
Figure 0007427240000001
Figure 0007427240000002
の微結晶膜に紫外線を照射すると、微結晶膜表面にそれぞれの閉環体1cと2c
Figure 0007427240000003
Figure 0007427240000004
が針状結晶として成長することが知られていた。
また、ジアリールエテン誘導体1cの針状結晶を有する表面は、静止した水滴は弾くが、落下する水滴は吸着し、霧粒の吸着力は低い(非特許文献2)。一方、ジアリールエテン誘導体2cの針状結晶を有する表面は、大きな水滴も小さな霧粒も跳ね返す性質を持っていた(特許文献1)。しかし、これらの針状結晶の構造を霧粒の回収に用いる方法は知られていなかった。
特開2014-34583号公報
ACS Nano 2010,4,1,129-136 Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,6470-6473
本発明の課題は、テングシロアリの翅の表面構造を模倣して、微小液滴を効率的に回収できる表面構造体を提供することである。
本発明者らは、物質表面に、光の照射により制御可能な、サイズの異なる2種のジアリールエテン誘導体の針状結晶を成長させると、テングシロアリの翅の表面構造を模した表面構造が形成されることを見出した。さらに、電鋳法により表面構造を転写した鋳型を作成し、この鋳型を用いることで、テングシロアリの翅の表面構造を模した表面構造体を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、基材上に、長さが1.5~30μmであり直径が1~6μmである第1針状構造、および長さが1~5μmであり直径が0.05~1μmである第2針状構造を有し、前記第1針状構造および第2針状構造が金属、または樹脂からなる、表面構造体に関する。
また、本発明は、前記表面構造体に、微小液滴を吸着させる第1工程、および吸着された微小液滴を回収する第2工程を含む、微小液滴の回収方法に関する。
また、本発明は、基材上に、下記構造式(3c):
Figure 0007427240000005
で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶、および
下記構造式(4c):
Figure 0007427240000006
で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶を有する、超撥水性表面構造体に関する。
(構造式(3c)および(4c)において、
、およびRは、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基またはシアノ基を表し、
、およびRは、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基を表し、
、R、R、およびRは、各々独立に、トリメチルシリル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、またはイソプロピル基を表し、
~Rは、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい鎖状または環状のアルキル基、または、ハロゲン原子を表す。)
構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体が下記構造式(1c):
Figure 0007427240000007
で表される化合物であり、
構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体が下記構造式(2c):
Figure 0007427240000008
で表される化合物であることが好ましい。
構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の長さが、構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の長さの8倍以上であり、構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の直径が、構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の直径の7倍以上であることが好ましい。
構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶、および構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶を含有する層が、基材表面に、1~10μmの範囲内の厚みで形成されていることが好ましい。
また、本発明は、(a)前記超撥水性表面構造体の表面に金属膜を形成する工程、(b)上記金属膜上に電気めっきを行う工程、および(c)電気めっきから金属膜を剥離する工程を含む、鋳型の製造方法に関する。
本発明の表面構造体は、サイズの異なる第1および第2の針状構造を有することにより、超撥水性を示す。この表面構造体に微小液滴を落下すると小さな液滴は付着するが、大きな液滴は弾かれて移動する。表面構造体に空気中の微小液滴を吸着させることにより、気体中に存在する微小液滴を効率的に回収できる。
表面構造体のSEM画像および模式図を示す。 表面構造体に対する水滴の付着性を示す。
<<表面構造体>>
本発明の表面構造体は、基材上に、長さが1.5~30μmであり直径が1~6μmである第1針状構造、および長さが1~5μmであり直径が0.05~1μmである第2針状構造を有し、前記第1針状構造および第2針状構造が金属、または樹脂からなることを特徴とする。
第1針状構造の長さは、1.5~30μmであるが、10~30μmが好ましく、15~20μmがより好ましい。第1針状構造の直径は、1~6μmであるが、1~3μmが好ましく、1~2μmがより好ましく、1.5~2μmがさらに好ましい。第2針状構造の長さは、1~5μmであるが、1.5~2μmが好ましく、1.8~2μmがより好ましい。第2針状構造の直径は、0.05~1μmであるが、0.1~0.5μmが好ましく、0.1~0.3μmがより好ましく、0.1~0.2μmがさらに好ましい。第1および第2の針状構造の大きさを以上の範囲とした表面構造体では、小さな液滴は付着するが、大きな液滴は弾かれて移動する。
第1針状構造の針状結晶の長さは、第2針状構造の針状結晶の長さの8倍以上であることが好ましく、9倍以上であることがより好ましい。また、第1針状構造の直径が、第2針状構造の直径の7倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがより好ましい。また、第1針状構造は、第2針状構造よりも長いことが好ましいため、基材表面に、2つの針状構造からなる層が1.5~20μmの厚みで形成されることが好ましい。
第1針状構造、および第2針状構造は、それぞれ、基材に対して60°~90°の傾きを有することが好ましい。
基材上の第1針状構造の密度は1mmあたり50000~80000本が好ましく、60000~70000本がより好ましく、65000~70000本がさらに好ましい。また、第2針状構造の密度は1mmあたり600000~900000本が好ましく、700000~800000本がより好ましい。
本発明の表面構造体は、テングシロアリの翅の表面構造を模倣しているが、2つの針状構造は金属または樹脂からなるため、後述の鋳型を用いると安価に作製できる。金属としては、ニッケルが挙げられる。樹脂としては、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメタクリル酸ブチル(poly(n-butyl methacrylate))、ポリメチルアクリレート(poly(methyl acrylate))、ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー(Zeonex polymer)が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。2つの針状構造の構成材料は同一である必要はないが、製造コストの観点からは同一であることが好ましい。
本発明の超撥水性表面構造体の表面に対して、水滴の接触角は90°以上であることが好ましく、100°以上であることがより好ましい。一般には、表面に落とした水滴の接触角が90°未満である場合を親水性、90°以上である場合を撥水性と区別されている。さらに、接触角が150°を超える表面は、超撥水性と言われる。このような超撥水性を有する表面の代表的なものがハスの葉の表面であることから、前記超撥水性は「ロータス効果」と呼ばれることもある。
第1および第2の針状構造を担持する基材の材質は特に限定されず、例えば、金属、樹脂、ガラスなどが挙げられる。製造コストの観点からは、第1および/または第2の針状構造と同じ材質であることが好ましい。本発明の表面構造体を、後述する霧粒の回収に用いる場合には、本発明の表面構造体を、ネットや板等の支持体に担持すればよい。
本発明の表面構造体は、第1および第2の針状構造に加えて、任意の表面構造を有していてもよい。このような表面構造としては、板状結晶を立てて敷き詰めた表面構造が挙げられる。
本発明の表面構造体の製造方法は特に限定されないが、例えば、後述する鋳型を用いた方法が挙げられる。
<<微小液滴の回収方法>>
本発明の微小液滴の回収方法は、前記表面構造体に、微小液滴を吸着させる第1工程、および吸着された微小液滴を回収する第2工程を含む。
前記表面構造体は、テングシロアリの翅の表面構造を模倣しているため、テングシロアリの翅と同様に微小液滴を吸着する性質を有する。第1工程で表面構造体に吸着される微小液滴の大きさは1~200μmが好ましく、10~180μmがより好ましい。200μmを超える微小液滴は、表面構造体に弾かれる傾向がある。微小液滴としては水が好ましい。具体例としては、霧粒が挙げられる。また、微小液滴が存在する空間は、気体が存在し真空でなければ特に限定されないが、空気が存在する空間であることが好ましい。
微小液滴の吸着方法としては、表面構造体に、微小液滴を含む気体を噴霧する方法や、微小液滴を含む気体が存在する空間に表面構造体を担持する方法が挙げられる。例えば、霧の発生している空間に本発明の表面構造体を静置することにより、表面構造体の表面に霧粒を吸着させることができる。
第2工程では、第1工程で吸着された微小液滴を回収できれば、具体的な回収方法は特に限定されず、例えば表面構造体を傾けることにより重力で流して回収することができる。第1工程で吸着された微小液滴が小さすぎる場合には、微小液滴同士を接触させて大きな液滴を形成してから回収してもよい。
<<超撥水性表面構造体>>
また、本発明の超撥水性表面構造体は、基材上に、下記構造式(3c):
Figure 0007427240000009
で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶、および
下記構造式(4c):
Figure 0007427240000010
で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶を有することを特徴とする。
構造式(3c)および(4c)において、R、およびRは、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基またはシアノ基を表す。R、およびRは、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基を表す。この中でも、R、およびRは各々独立にメトキシ基、メチル基が好ましく、R、およびRは各々独立にメチル基、エチル基が好ましい。
、R、R、およびRは、各々独立に、トリメチルシリル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、またはイソプロピル基を表すが、トリメチルシリル基がより好ましい。
~Rは、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい鎖状または環状のアルキル基、または、ハロゲン原子を表す。アルキル基は炭素数1~4が好ましい。アルキル基の置換基としては、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、メトキシ基,エトキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、ヨウ素、塩素などが挙げられる。R~Rは、以上に挙げたなかでも水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、メトキシ基が好ましい。
構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体は、下記構造式(1c):
Figure 0007427240000011
で表される化合物であることが好ましい。また、構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体は、下記構造式(2c):
Figure 0007427240000012
で表される化合物であることが好ましい。
構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶は、基材上に塗布された構造式(3o):
Figure 0007427240000013
で表されるジアリールエテン開環体の微小結晶に、紫外線を照射することによって形成できる。同様に、構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶は、基材上に塗布された構造式(4o):
Figure 0007427240000014
で表されるジアリールエテン開環体の微小結晶に、紫外線を照射することによって形成できる。(3c)および(4c)の針状結晶は、基材の種類によらずにエピタキシャル成長する。
(3o)、(3c)、(4o)、(4c)は、いずれも光応答性を有しており、開環体(3o)に紫外線を照射すると閉環体(3c)となり、閉環体(3c)に可視光を照射すると開環体(3o)となる。同様に、開環体(4o)に紫外線を照射すると閉環体(4c)となり、閉環体(4c)に可視光を照射すると開環体(4o)となる。
本発明の超撥水性表面構造体は、光照射による分子構造の変化に伴って結晶構造の変化が起こり、結晶構造の変化によって撥水性の可逆的変化が可能となる。基材上に構造式(3o)および(4o)の開環体の微小結晶が存在する表面は、平滑である。これに紫外光を照射すると、前記開環体は、構造式(3c)および(4c)の閉環体に変化し、前記層の表面から針状に結晶が成長し、平滑な結晶面は消失する。前記針状の結晶が成長した層表面に可視光を照射すると、前記閉環体は前記開環体に変化して前記針状の結晶は消失し、元の平滑な結晶面に戻る。針状結晶を焼失させるために照射する可視光の波長は特に限定されず、例えば360~830nmであればよい。構造式(3c)および(4c)の針状結晶は構造式(3o)および(4o)の微小結晶から生じるため、針状結晶は基材上の構造式(3o)および(4o)の微小結晶の上に形成されていることが好ましい。
より具体的には、構造式(3c)の針状結晶の長さは1.5~30μmが好ましく、10~30μmがより好ましく、15~20μmがより好ましい。構造式(3c)の針状結晶の直径は、1~6μmが好ましく、1~3μmがより好ましく、1~2μmがさらに好ましく、1.5~2μmがさらにより好ましい。構造式(4c)の針状結晶の長さは、1~5μmが好ましく、1.5~2μmがより好ましく、1.8~2μmが更に好ましい。構造式(4c)の針状結晶の直径は、0.05~1μmが好ましく、0.1~0.5μmがより好ましく、0.1~0.3μmがさらに好ましく、0.1~0.2μmがさらにより好ましい。
構造式(3c)の針状結晶の長さは、構造式(4c)の針状結晶の長さの8倍以上であることが好ましく、9倍以上であることがより好ましい。また、構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の直径が、構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の直径の7倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがより好ましい。構造式(3c)の針状結晶は、構造式(4c)の針状結晶よりも長いことが好ましいため、基材表面に、ジアリールエテン閉環体の針状結晶の層が1~3μmの厚みで形成されることが好ましく、1~2μmの厚みで形成されることがより好ましい。
本発明の超撥水性表面構造体の表面に対して、水滴の接触角は120°以上であることが好ましく、150°以上であることがより好ましい。また、本発明の超撥水性表面構造体に可視光を照射した場合、撥水性が低下し、水滴の接触角が110°~120°に低下する。
針状結晶を担持する基材の材質は、その上でジアリールエテン閉環体の針状結晶を成長させることができれば限定されず、例えば、ガラス、金属、樹脂などが挙げられる。金属としてはニッケル、鉄、ステンレス、アルミニウムなどが挙げられる。樹脂としては、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオレフィン、ポリカーボネート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
本発明の超撥水性表面構造体は、所望の超撥水性を有する限り、構造式(3c)および(4c)の針状結晶に加えて、任意の表面構造を有していてもよい。このような表面構造としては、板状結晶を立てて敷き詰めた表面構造が挙げられる。
<<超撥水性表面構造体の製造方法>>
超撥水性表面構造体は、(a)構造式(3o)で表されるジアリールエテン開環体の微小結晶、および構造式(4o)で表されるジアリールエテン開環体の微小結晶を含む溶液を、基材上に塗布する工程、および(b)塗布面に紫外線を照射することによって、構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶、および構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶を形成する工程により製造できる。
工程(a)で使用する溶液の溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、THF等が挙げられる。前記溶液中、構造式(3o)の化合物と構造式(4o)の化合物のモル比(3o:4o)は、80:120~120:80が好ましく、95:105~105:95がより好ましく、等モル比であることが最も好ましい。また、構造式(3o)の微小結晶、および構造式(4o)の微小結晶の濃度は、それぞれ、100~500mg/mLであることが好ましい。
工程(a)において微小結晶を含む溶液を塗布した後、溶媒を乾燥することが好ましい。乾燥条件は特に限定されず、常圧室温でもよい。
工程(b)において照射する紫外線の波長は、254~313nmが好ましい。照射する紫外線のエネルギーは5~30Wが好ましい。また、紫外線を照射した後に、30~40℃の範囲内の温度で24時間~1週間程度保持することが好ましく、これにより針状結晶の成長を促進することができる。構造式(3c)および(4c)の針状結晶は、前記保持温度を上げるとサイズが大きく超撥水性効果が低下する傾向にあるため、前記範囲内の温度で保持することが好ましい。
<<鋳型の製造方法、及びその鋳型を用いた表面構造体の製造方法>>
上述の表面構造体がジアリールエテン閉環体の針状結晶により構成される場合には、可視光に暴露されることによりジアリールエテン閉環体が開環体に変換され、針状構造が失われてしまう。そのため、可視光に暴露される環境で表面構造体を使用する場合には、表面構造体をジアリールエテン閉環体以外の、可視光への感受性のない、樹脂や金属等の材料により構成することが好ましい。このような微細な表面構造を樹脂や金属等の材料で製造する方法としては、鋳型を用いる方法が挙げられる。
鋳型は、ジアリールエテン閉環体の針状結晶により構成される、上述の超撥水性表面構造体を元に製造できる。母型との寸法誤差を100mm±2.5μm程度に低減できるため、電鋳法が好ましい。電鋳では、(a)超撥水性表面構造体の表面に金属膜を形成する工程、(b)上記金属膜上に電気めっきを行う工程、および(c)電気めっきから金属膜を剥離する工程を含む方法により鋳型を製造できる。
(a)工程では、超撥水性表面構造体の表面に金属膜を形成し、導電性を付与する。使用する超撥水性表面構造体は、ジアリールエテン閉環体の針状結晶により構成されたものであることが好ましい。金属膜の形成方法は、蒸着、スパッタリング等が挙げられる。膜を構成する金属は金、白金、金-パラジウム等が挙げられる。金属膜の厚さは1nm~40nmが好ましい。1nm~30nmがより好ましく、1nm~20nmがさらに好ましい。
(b)工程では、(a)工程で形成された金属膜上に電気めっきを行う。めっき金属としては、亜鉛、クロム、ニッケル等が挙げられる。電気めっきには一般的な条件を用いることができる。
(c)工程では、電気めっきから金属膜を剥離する。具体的な剥離方法は、電気めっきを傷つけずに金属膜を剥離できれば特に限定されず、トリアジンジチオール蒸着技術等が挙げられる。
以上の方法により、厚膜のめっき金属上に超撥水性表面構造体の反転形状が転写された鋳型が得られる。当該鋳型に金属や樹脂等を接触させることにより、金属上に表面構造体の形状が転写される。
(実施例1)構造式(1c)と(2c)の針状結晶を有する超撥水性表面構造体
開環体である構造式(1o)と(2o)を等モル比になるように秤量し(1o:8.4mg、2o:10.3mg)、クロロホルム30mLに溶解させた。この溶液を2cm四方にカットしたガラス基材に滴下し、常圧室温暗所下で乾燥させることで、構造式(1o)と(2o)の微小結晶を含む混合薄膜を作成した。この薄膜における水の接触角は123°であった。この薄膜に紫外光(波長313nm)を5分間照射した。その後、暗所で30℃において9日間保存することによって針状結晶を成長させ、超撥水性表面構造体を得た。
得られた超撥水性表面構造体をSEM(走査電子顕微鏡)で観察した。表面のSEM画像を図1e、断面のSEM画像を図1hに示す。構造式(1c)の針状結晶は直径平均約1.5μm、高さ約16μmであり、構造式(2c)の針状結晶は直径約0.2μm、高さ約1.9μmであった。また、針状結晶の密度は、構造式(1c)は1mmあたり6.7×10本であり、構造式(2c)は1mmあたり7.1×10本であった。得られた超撥水性表面構造体における水の接触角は164°であった。得られた超撥水性表面構造体の模式図を図1bに示す。
(比較例1)構造式(1c)の針状結晶を有する表面構造体
開環体である構造式(1o)8.4mgのみをクロロホルム30mLに溶解させた以外は、実施例1と同じ手順により表面構造体を得た。得られた表面構造体の表面のSEM画像を図1d、断面のSEM画像を図1gに示す。得られた超撥水性表面構造体の模式図を図1aに示す。
(比較例2)構造式(2c)の針状結晶を有する表面構造体
開環体である構造式(2o)10.3mgのみをクロロホルム30mLに溶解させた以外は、実施例1と同じ手順により表面構造体を得た。得られた表面構造体の表面のSEM画像を図1f、断面のSEM画像を図1iに示す。得られた超撥水性表面構造体の模式図を図1cに示す。
なお、図1d~fおよびhにおいてスケールバーは5μmを示し、図1gおよびiにおいてスケールバーは10μmを示す。
(測定例)各表面構造体に対する水滴の付着性
実施例1、比較例1~2の表面構造体の表面に、市販の霧吹きで純水を噴霧し、微小水滴が表面と衝突する瞬間をハイスピードカメラ(1000fps)で撮影した。図2a~dに、3msの間に表面構造体上で弾かれた水滴の動きを示す。矢印は水滴の移動方向を示す。丸印は表面に吸着された水滴を示す。
図2eに、実施例1の表面構造体の表面に吸着し弾かれなかった水滴数(Non-bouncing)、霧吹き1(直径40~400mmの微水滴を生成)から放出され表面から弾かれた水滴数(Bouncing(Spr.1))、および霧吹き2(直径40~400mmの微水滴を生成)から放出され表面から弾かれた水滴数(Bouncing(Spr.2))と、水滴の直径との分布を示す。同様に、図2fに比較例1の表面構造体の表面における各水滴の分布を示し、図2gに比較例2の表面構造体の表面における各水滴の分布を示す。
図2f~gに示すように、比較例1~2の表面構造体ではNon-bouncingとBouncing(Spr.1)の分布の重なりが大きかった。これに対して、図2eに示すように、実施例1の表面構造体では、Non-bouncingとBouncing(Spr.1)の分布の重なりが小さく、直径が約100μm以下の水滴は表面に吸着され、それより大きな水滴は弾かれる傾向がみられた。

Claims (7)

  1. 基材上に、
    長さが10~30μmであり直径が1~6μmである第1針状構造、および
    長さが1~5μmであり直径が0.05~1μmである第2針状構造を有し、
    前記第1針状構造および第2針状構造が金属、または樹脂からなる、表面構造体。
  2. 基材上に、
    長さが1.5~30μmであり直径が1~6μmである第1針状構造、および
    長さが1~5μmであり直径が0.05~0.5μmである第2針状構造を有し、
    前記第1針状構造および第2針状構造が金属、または樹脂からなる、表面構造体。
  3. 請求項1または2に記載の表面構造体に、微小液滴を吸着させる第1工程、および
    吸着された微小液滴を回収する第2工程
    を含む、微小液滴の回収方法。
  4. (a)超撥水性表面構造体の表面に金属膜を形成する工程、
    (b)上記金属膜上に電気めっきを行う工程、
    (c)電気めっきから金属膜を剥離し、超撥水性表面構造体の反転形状が転写された鋳型を得る工程、および
    (d)鋳型に金属または樹脂を接触させて表面構造体の形状を転写する工程
    を含む、請求項1または2に記載の表面構造体の製造方法であって、
    前記超撥水性表面構造体が、
    基材上に、下記構造式(3c):
    Figure 0007427240000015
    で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶、および
    下記構造式(4c):
    Figure 0007427240000016
    で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶を有する、表面構造体の製造方法
    (構造式(3c)および(4c)において、
    、およびRは、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基またはシアノ基を表し、
    、およびRは、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基を表し、
    、R、R、およびRは、各々独立に、トリメチルシリル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、またはイソプロピル基を表し、
    ~Rは、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい鎖状または環状のアルキル基、または、ハロゲン原子を表す。)
  5. 構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体が下記構造式(1c):
    Figure 0007427240000017
    で表される化合物であり、
    構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体が下記構造式(2c):
    Figure 0007427240000018
    で表される化合物である、
    請求項に記載の表面構造体の製造方法
  6. 構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の長さが、構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の長さの8倍以上であり、
    構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の直径が、構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶の直径の7倍以上である、
    請求項4または5に記載の表面構造体の製造方法
  7. 構造式(3c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶、および構造式(4c)で表されるジアリールエテン閉環体の針状結晶を含有する層が、基材表面に、1~10μmの範囲内の厚みで形成されていることを特徴とする、請求項4~6のいずれかに記載の表面構造体の製造方法
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