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JP7428101B2 - ターボ分子ポンプ - Google Patents
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本発明は、ターボ分子ポンプに関する。
ターボ分子ポンプでは、ロータがアルミ材で製作される。アルミ材の強度や耐久性に関する許容温度は、他の金属に比べて比較的低い。一般に、ターボ分子ポンプが排気作用を発揮する高速回転状態には、ロータは高い遠心力の作用により高い引張応力状態にある。引張応力状態においてロータ温度が許容温度以上となると永久歪みが急激に増加し、クリープ変形によるロータの寿命の低下が問題となる。特許文献1に記載の発明では、ロータの表面に熱輻射率の高い黒色ニッケルメッキ層を形成し、ロータからステータ翼やスペーサなどの周辺部材へ効率よく放熱させることでロータ温度の上昇を抑制している。
特開2010-112202号公報
しかしながら、ロータからの熱輻射を受けるステータ翼やスペーサの温度が高いとロータ温度上昇の抑制が効果的に行われないという問題があった。すなわち、ステータ翼やスペーサの熱がベースへ十分に伝達されないと、熱輻射によるロータからステータ翼やスペーサへの熱移動効果が十分に得られないという問題があった。
本発明の態様によるターボ分子ポンプは、複数段のロータ翼と、前記複数段のロータ翼に対して、ポンプ軸方向に交互に設けられる複数段のステータ翼と、ポンプ軸方向に前記複数段のステータ翼と交互に積層され、前記複数段のステータ翼とともに積層体を構成する複数のスペーサリングと、前記複数段のロータ翼および前記積層体が収容されるポンプケーシングと、を備え、前記ポンプケーシングの内周面には、該ポンプケーシングの基材の放射率よりも高い放射率を有する第1の高放射率層が形成され、および/または、前記積層体の内の前記内周面に対向する領域には、前記積層体の基材の放射率よりも高い放射率を有する第2の高放射率層が形成されている。
本発明によれば、ロータ温度の上昇をより効果的に低減することができる。
図1は、ターボ分子ポンプの断面図である。 図2は、ポンプロータの冷却方法を説明する図である。 図3は、黒色ニッケルメッキ層の構造を示す模式図である。 図4は、比較例を示す図である。 図5は、変形例を示す図である。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、ターボ分子ポンプ1の概略構成を模式的に示した断面図である。ターボ分子ポンプ1は、複数段のステータ翼30と複数段のロータ翼40とで構成されるターボポンプ段と、ステータ31とロータ円筒部41とで構成されるネジ溝ポンプ段とを有している。なお、本実施の形態では磁気軸受式のターボ分子ポンプを例に説明するが、ボールベアリングのような他の軸受形式のターボ分子ポンプにも適用可能である。また、ネジ溝ポンプ段を有しないターボポンプ段のみのターボ分子ポンプにも、本発明は適用可能である。
ロータ翼40およびロータ円筒部41はポンプロータ4aに形成されている。ポンプロータ4aは、不図示のボルトによりロータ軸であるシャフト4bに締結されている。シャフト4bは、ベース3に設けられた磁気軸受34,35,36によって磁気浮上支持される。詳細な図示は省略したが、各磁気軸受34~36は電磁石と変位センサとを備えている。変位センサによりシャフト4bの浮上位置が検出される。
複数段のステータ翼30は、ポンプロータ4aの軸方向に設けられた複数段のロータ翼40に対して交互に配置されている。各ステータ翼30は、スペーサリング33を介してポンプ軸方向に積層され、位置決めされている。ケーシング20の固定フランジ20bをボルトによりベース3に固定すると、ステータ翼30とスペーサリング33との積層体がベース3とケーシング20との間に挟持される。ステータ31は、図示上端付近に形成されたフランジ状の固定部311をボルト21でベース3に固定することにより、ベース3に取り付けられている。本実施の形態では、ステータ31の内周面にネジ溝が形成されているが、一般には、ステータ31またはロータ円筒部41のいずれかにネジ溝が形成されている。ベース3には、冷却水パイプ39(以下、冷却水管路とも呼ぶ)が設けられている。
ポンプロータ4aが締結されたシャフト4bは、モータ10により回転駆動される。磁気軸受が作動していない時には、シャフト4bは非常用のメカニカルベアリング37a,37bによって支持される。ポンプロータ4aが締結されたシャフト4bをモータ10により高速回転すると、ケーシング20の吸気口20a側の気体は、ターボポンプ段(ロータ翼40、ステータ翼30)により排気された後、後段に設けられたネジ溝ポンプ段(ロータ円筒部41、ステータ31)によりさらに排気され、排気ポート38から排出される。排気ポート38には補助ポンプが接続される。
排気するガスの流量が増加すると、排気に伴って発生する熱によりポンプロータ4aの温度が上昇する。特に、磁気軸受方式のターボ分子ポンプの場合、ポンプロータ4aおよびシャフト4bは磁気浮上しているため、熱が逃げ難く温度も上昇しやすい。図1に示すターボ分子ポンプ1の場合、後述するように、熱輻射や気体分子によりロータ翼40からステータ翼30に伝えられた熱エネルギーを、スペーサリング33を介した伝熱によりベース3へ放熱すると共に、熱輻射を利用してスペーサリング33からケーシング20へ放熱することで、ポンプロータ4aの温度上昇を抑制するようにしている。
図2は、ポンプロータ4aの冷却方法を説明する図であり、図1に示したターボ分子ポンプ1の一部を示す図である。ケーシング20の内部には、複数段のロータ翼40が形成されたポンプロータ4aと、複数段のステータ翼30と、複数のスペーサリング33とが収容されている。複数段のステータ翼30は、各ステータ翼30が上下一対のスペーサリング33により挟持されるように積層されている。複数段のステータ翼30と複数段のスペーサリング33との積層体は、ベース3上に載置されている。
図2の破線矢印51で示すように、気体分子による伝熱や熱輻射を利用してロータ翼40から対向するステータ翼30へとポンプロータ側の熱エネルギーをステータ側へ移動させ、ポンプロータ4aを冷却する。ロータ翼40からステータ翼30へ移動した熱エネルギーは、破線矢印52で示すようにステータ翼30とスペーサリング33との積層部分と移動し、さらに、破線矢印52で示すように積層部分を下流側(図示下側)へと移動する。そして、積層部分の下流側に移動した熱エネルギーは、ベース3を通って冷却水パイプ39内を流れる冷却水へと排熱される。
なお、ネジ溝ポンプ段(ロータ円筒部41、ステータ31)への堆積物の堆積を防止するため、ベース3にヒータを配置し、冷却水管路39を流れる冷却水とともにネジ溝ポンプ段を温調してもよい。
本実施の形態では、ロータ翼40からステータ翼30への熱輻射による熱移動をより効果的とするために、ロータ翼40およびステータ翼30に放射率を高めるための表面処理を、例えば、図2のハッチングで示す領域に施している。なお、図2では、積層されたスペーサリング33の全段の外周面330、および、ケーシング20の内周面200における全段の外周面330が対向する面に、高放射率層を形成したが、一部の段の外周面330およびそれらに対向する内周面200に高放射率層を形成しても良い。
ポンプロータ4aおよびステータ翼30の材料としては、一般的にアルミ材が用いられる。そのため、ポンプロータ4aおよびステータ翼30の表面の放射率を高くする表面処理としては、例えば、黒色ニッケルメッキ処理(放射率0.7程度)、黒色アルマイト処理(放射率0.9程度)、黒色塗装処理(放射率0.9程度)などがあるが、これらに限定されない。なお、アルミニウム材を表面処理なしで使用した場合には放射率は酸化面で放射率0.1~0.2程度であり、アルミ材の耐腐食処理として使用されるニッケルメッキ処理の場合の放射率は放射率0.2程度である。
図3は黒色ニッケルメッキ層の構造を示す模式図である。基材であるアルミ母材Mの表面に無電解メッキ法でNi-P(ニッケル-リン)層401を形成する。次に、Ni-P層401を下地として、Ni-P層402を無電解メッキ法により形成する。最後に、Ni-P層402の表面をエッチング処理して黒色酸化被膜403の層を形成する。なお、図3のNi-P層402を省略して、Ni-P層401に黒色酸化被膜403を形成しても良い。
さらに、本実施の形態では、図2の矢印54で示すように、熱輻射によりスペーサリング33からケーシング20へと放熱するようにした。それにより、ポンプロータ4aに対する冷却効果の向上が図れ、ロータ温度上昇の抑制効果をさらに高めることができる。具体的には、ポンプロータ4aおよびステータ翼30の場合と同様に、ケーシング20の内周面200、および、その内周面200に対向するスペーサリング33の外周面330に放射率を高くする表面処理を施した。一般に、スペーサリング33はアルミ材で形成され、ケーシング20にはステンレス材等の鋼材が用いられる。そして、アルミ材やステンレス材で形成される各基材のハッチングで示す領域に、黒色ニッケルメッキ層、黒色アルマイト層、黒色塗装層を形成することで、ケーシング20の内周面200およびスペーサリング33の外周面330を放射率がより高い高放射率層とするようにした。
例えば、内周面200および外周面330に高放射率の表面処理を施さない場合、ステータ翼30とスペーサリング33との積層体の熱エネルギーは、ほぼ破線矢印53で示す伝熱経路のみで放熱することになる。そのような場合、積層体の熱エネルギーの放熱効果をより高める方法として、図4の符号Aで示す領域のように、破線矢印53で示す伝熱経路の断面積をより大きくする方法がある。しかし、ステータ翼30およびロータ翼40の翼長さを短くして、スペーサリング33Aの径方向の厚さを増加させる必要があるため、排気性能の低下という新たな問題が生じることになる。
一方、本実施の形態では、スペーサリング33からケーシング20への熱輻射を放熱に利用するので、破線矢印54で示す伝熱経路の断面積を増加させる必要がない。そのため、排気性の低下を招くことなく放熱性能の向上を図ることができる。例えば、スペーサ外周面に黒体塗料を塗布した場合、排気速度3000L/sクラスのポンプにおいて、水素ガス流量28mbarL/s、背圧38Paの条件で、ケーシング20の温度が36.1℃から37.1℃へ1℃上昇した。これは、ケーシング20の温度上昇分を熱量が全て黒体塗料を塗布した影響によるものと仮定した場合には、約3℃のスペーサ温度低下に相当する。
なお、図4に示す積層体は、複数段のスペーサ30の内、下流側の複数段のスペーサとステータ翼との接触面積を、上流側の複数段のスペーサとステータ翼との接触面積よりも広くしている。この構成の積層体を有する真空ポンプに本発明を適用してもよい。この場合、上述したように、排気性能が低下するがロータ翼の温度がより低減される。すなわち、ロータ翼温度の低減を重視した設計が必要な場合は図4の積層体構造を採用すればよい。
換言すると、本発明は図4の積層体構造を積極的に除外するものではない。
(変形例)
上述した実施形態では、図2に示すように、ステータ翼30とスペーサリング33との積層部分において、スペーサリング33の外周面330だけがケーシング20の内周面と対向する構造であった。そのため、スペーサリング33の外周面330に高放射率の表面処理を施した。しかし、ステータ翼30とスペーサリング33との積層部分が、図5の変形例に示すスペーサリング33Bのような構成の場合、ステータ翼30の外周面300もケーシング20の内周面と対向している。そのような構成の場合には、ステータ翼30の外周面300にも高放射率の表面処理を施すのが、熱輻射による放熱性能向上のために好ましい。
なお、上述した実施の形態では、図2や図5に示すように、ケーシング20の内周面200と、その内周面に対向する部材の面すなわちステータ翼30とスペーサリング33との積層体の外周面との両方に、高放射率の表面処理を施したが、いずれか一方に施す構成であっても構わない。いずれの場合も、高放射率の表面処理を施さない場合に比べて、熱輻射によるケーシング20への放熱性能が向上する。
上述した実施の形態では、図2のように、全段のロータ翼40およびステータ翼30の互いに対向する面に高放射率の表面処理を施す構成としたが、一部の段に高放射率の表面処理が施されていても良い。また、ロータ翼40およびステータ翼30の表面に高放射率の表面処理を施さずに基材の表面が露出した状態の構成の場合でも、ケーシング20の内周面200およびステータリング33の外周面330に高放射率の表面処理を施すことで、熱輻射によるステータ翼30とスペーサリング33との積層部分からの放熱を向上させることができる。例えば、図5に示す構造において、全段のロータ翼40およびステータ翼30に高放射率の表面処理を施さない構成であった場合でも、ステータ翼30の外周面300のみに高放射率の表面処理を施すことで、積層部分の熱輻射による放熱効果を、表面処理を施さなかった場合に比べて高くすることができる。
ところで、高速回転するポンプロータ4aが破壊した場合には、破壊したポンプロータ4aがスペーサリング33とステータ翼30との積層体に衝突し、さらに、積層体がポンプロータ4aの回転エネルギーによって回転するようにケーシング20に衝突し、急停止する。そのため、ケーシング20に過大な急停止トルクが加わることになる。しかし、上述したように、ケーシング20の内周面200やスペーサリング33の外周面330に黒色ニッケルメッキ層や黒色アルマイト層を形成すると、ケーシング20やスペーサリング33の表面硬度が高められ、ロータ破壊時にスペーサリング33がケーシング20に対して滑ることで急停止時間が延び、急停止トルクを低減することができる。
上述した例示的な実施の形態および変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
[1]一態様に係るターボ分子ポンプは、複数段のロータ翼と、前記複数段のロータ翼に対して、ポンプ軸方向に交互に設けられる複数段のステータ翼と、ポンプ軸方向に前記複数段のステータ翼と交互に積層され、前記複数段のステータ翼とともに積層体を構成する複数のスペーサリングと、前記複数段のロータ翼および前記積層体が収容されるポンプケーシングと、を備え、前記ポンプケーシングの内周面には、該ポンプケーシングの基材の放射率よりも高い放射率を有する第1の高放射率層が形成され、および/または、前記積層体の内の前記内周面に対向する領域には、前記積層体の基材の放射率よりも高い放射率を有する第2の高放射率層が形成されている。
例えば、図2に示すように、ケーシング20の内周面200やスペーサリング33の外周面330に、それらの基材(ステンレス材やアルミ材)の放射率よりも高い放射率を有する高放射率層を形成することで、熱輻射によるスペーサリング33からケーシング20への放熱を向上させるとことができる。
[2]上記[1]に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記複数段のロータ翼の少なくとも一部の段のロータ翼には、該ロータ翼の基材の放射率よりも高い放射率を有する第3の高放射率層が形成され、前記高放射率層が形成されたロータ翼に対向するステータ翼には、該ステータ翼の基材の放射率よりも高い放射率を有する第4の高放射率層が形成されている。
図2に示す例では、複数段のロータ翼40および複数段のステータ翼30の全てに高放射率層が形成されているが、一部の段のロータ翼40とそれに対向するステータ翼30とに高放射率層を形成するようにしても良い。そのような場合であっても、ケーシング20の内周面200およびスペーサリング33の外周面330に高放射率層を形成することで、スペーサリング33からケーシング20への熱輻射による放熱の向上を図ることができる。
[3]上記[1]または[2]に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記積層体が載置され、前記積層体を冷却する冷却水管路が配設されたベースを有する。図2に示すように、ステータ翼30とスペーサリング33との積層体の熱は、矢印54で示す熱輻射により積層体の外周面300からケーシング20の内周面200へ放熱されると共に、破線矢印53で示すように冷却水管路39が配設されたベース3へと伝熱により放熱される。
[4]上記[1]から[3]までのいずれか一項に記載のターボ分子ポンプにおいて、高放射率層は黒ニッケルメッキ層または黒色アルマイト層である。ケーシング20の内周面200やスペーサリング33の外周面330に形成される高放射率層を、黒ニッケルメッキ層や黒色アルマイト層とすることで、ケーシング20やスペーサリング33の表面硬度が高められ、ロータ破壊時にスペーサリング33がケーシング20に対して滑ることで急停止時間が延び、急停止トルクを低減することができる。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
1…ターボ分子ポンプ、3…ベース、4a…ポンプロータ、20…ケーシング、30…ステータ翼、40…ロータ翼、33,33A,33B…スペーサリング、200…内周面、300,330…外周面

Claims (4)

  1. 複数段のロータ翼と、
    前記複数段のロータ翼に対して、ポンプ軸方向に交互に設けられる複数段のステータ翼と、
    ポンプ軸方向に前記複数段のステータ翼と交互に積層され、前記複数段のステータ翼とともに積層体を構成する複数のスペーサリングと、
    前記複数段のロータ翼および前記積層体が収容されるポンプケーシングと、を備え、
    前記ポンプケーシングの内周面と、前記積層体の内の前記内周面と対向する領域との間には隙間が形成されており、
    前記ポンプケーシングの前記内周面には、該ポンプケーシングの基材の放射率よりも高い放射率を有する第1の高放射率層が形成され、および/または、前記積層体の内の前記内周面に対向する前記領域には、前記積層体の基材の放射率よりも高い放射率を有する第2の高放射率層が形成されていることで、熱輻射により前記スペーサリングから前記ポンプケーシングへ放熱させる、ターボ分子ポンプ。
  2. 請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、
    前記複数段のロータ翼の少なくとも一部の段のロータ翼には、該ロータ翼の基材の放射率よりも高い放射率を有する第3の高放射率層が形成され、
    前記高放射率層が形成されたロータ翼に対向するステータ翼には、該ステータ翼の基材の放射率よりも高い放射率を有する第4の高放射率層が形成されている、ターボ分子ポンプ。
  3. 請求項1または2に記載のターボ分子ポンプにおいて、
    前記積層体が載置され、前記積層体を冷却する冷却水管路が配設されたベースを有する、ターボ分子ポンプ。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のターボ分子ポンプにおいて、
    前記高放射率層は黒ニッケルメッキ層または黒色アルマイト層である、ターボ分子ポンプ。
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