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JP7429169B2 - アズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法 - Google Patents
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JP7429169B2 - アズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法 - Google Patents

アズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 第36回三重大学定期記者懇談会にてアズキ由来糖代謝酵素阻害剤及びその製造方法に関する研究について公開(令和1年10月31日)
特許法第30条第2項適用 Journal of Food Science Volume84,Issue11 Pages 3172-3178にてアズキ由来糖代謝酵素阻害剤及びその製造方法に関する研究について公開(令和1年10月15日)
特許法第30条第2項適用 2019年度日本食品科学工学会中部支部大会にてアズキ由来糖代謝酵素阻害剤及びその製造方法に関する研究について公開(令和1年12月14日)
本発明は、アズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法に関し、特に、糖の吸収に関与する糖分解酵素の活性阻害に有効に作用するアズキ由来抽出物の製造方法に関する。
アズキ(小豆:Vigna angularis)は、主に煮熟(炊きあげ)による加熱により軟らかく加工され、赤飯等の料理の食材、あるいは、砂糖が加えられ「小倉あん」等の製菓用食材に加工され、古来より常食されてきた。アズキの果皮には、ポリフェノール、サポニン、さらには糖分子と結合した配糖体等も含有されていることが知られている。これらの成分は、アズキの煮汁、すなわち熱水抽出物からの分析を通じて、抗アレルギー活性、血糖降下活性、細胞接着阻害、高脂血症予防、骨代謝調節等の効果が報告されている(特許文献1等参照、非特許文献1、2、3、4、5等参照)。
アズキに含有される成分をはじめとする天然物の内、特に糖代謝関連の成分、作用についての研究が進められている。特に、糖代謝の異常により血糖値の制御が困難となり、糖尿病の主要因となる。糖尿病が重症化すると、失明、末梢部位の壊死等を引き起こす。糖尿病は生活習慣病の一種であり、不規則な食生活、生活習慣の蓄積から発症が懸念される。そうすると、日常の食生活、生活習慣から対策を講ずることにより、発症を抑制できる可能性がある。
この点を踏まえ、食品等に由来する天然物化合物に含有されるポリフェノールと糖代謝との関連性を示唆する知見が報告されている(非特許文献6、7等参照)。しかしながら、糖代謝と含有成分との具体的な関連性については未解明であった。その後、ポリフェノールのカテキン類と糖代謝酵素との関連性が報告されている(非特許文献8等参照)。
特許第6023398号公報 特許第6031328号公報
T.Itoh et al., Biosci.Biotechnol.Biochem.,68(12),2421-2426(2004) T.Itoh et al., Biosci.Biotechnol.Biochem.,69(3),448-454(2005) T.Itoh et al., Nutrition, 25,134-141(2009) T.Itoh et al., Nutrition, 25,318-321(2009) T.Itoh et al., Phytother.Res.,26(7),1003-1011(2012) 小嶋道之 他,日本食品科学工学会誌,第54巻,第1号,50-53(2007) 齊藤優介 他,日本食品科学工学会誌,第54巻,第12号,563-567(2007) Tae Joung Ha et al., Food Chemistry, 266,483-489(2018)
一連の経緯を踏まえ、発明者は古来より常食されてきたアズキの種子に含有される成分について鋭意検討を重ねた結果、アズキ中のカテキン類が種類に応じて糖代謝(糖分解)に関連する酵素に作用する知見を得た。すなわち、アズキ中のカテキン類が糖代謝、高血糖の改善、予防に有効性を示す可能性を示唆する。
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、アズキの種子に含有される成分を活用した糖分解酵素阻害剤の製造方法を提供する。
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1)水にアズキを浸漬して浸漬液を得る浸漬工程と、浸漬液と含水したアズキを分離し、浸漬液を回収する浸漬液回収工程と、回収した浸漬液を加熱する加熱工程とを行い、(+)-カテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドおよび(+)-エピカテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドを含有し、α-グルコシダーゼの酵素活性を阻害するアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
(2)前記浸漬工程における浸漬時間は、8~12時間である上記(1)に記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
(3)前記浸漬工程におけるアズキの浸漬に使用する水の量は、アズキ重量と同量~2倍量である上記(1)または(2)に記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
(4)前記加熱工程における温度は、90~100℃である上記(1)から(3)のいずれかに記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
(5) 前記加熱工程における加熱時間は、60~120分間である上記(1)から(4)のいずれかに記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
(6) 前記浸漬工程における浸漬時間は、8~12時間であり、前記浸漬工程におけるアズキの浸漬に使用する水の量は、アズキ重量と同量~2倍量であり、前記加熱工程における温度は、90~100℃であり、前記加熱工程における加熱時間は、60~120分間である上記(1)に記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
本発明は、水にアズキを浸漬して浸漬液を得る浸漬工程と、浸漬液と含水したアズキを分離し、浸漬液を回収する浸漬液回収工程と、回収した浸漬液を加熱する加熱工程とを行い、(+)-カテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドおよび(+)-エピカテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドを含有し、α-グルコシダーゼの酵素活性を阻害するアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法である。
このため、(+)-カテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドおよび(+)-エピカテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドを含有するアズキ由来糖分解酵素阻害剤を製造できる。
アズキ由来糖分解酵素阻害剤の調製を説明する概略工程図である。 抽出物の高速液体クロマトグラフィーのピークのチャートである。 C7GのNMRスペクトルデータである。 E7GのNMRスペクトルデータである。 カテキンのNMRスペクトルデータである。 C7GとE7Gの高速液体クロマトグラフィーのピークのチャートである。
実施形態のアズキ由来糖分解酵素阻害剤(糖分解調節アズキ由来抽出物)について、図1の概略工程図を用い、調製の過程を説明する。はじめに、未処理のアズキ〔小豆(Adzuki beans):Vigna angularis〕は、適宜水洗の後、水(実施形態においては超純水)に浸漬され、浸漬液が得られる(「浸漬工程」)。浸漬時間は季節の気温の変動を考慮して8ないし12時間(8~12時間)である。アズキの浸漬に使用する水の量は、アズキ重量と同量ないし2倍量(同量~2倍量)である。
水への浸漬により生じた浸漬液は淡赤褐色を呈している。浸漬液と含水したアズキは分離(水切り)され浸漬液のみ回収される。通常、アズキの浸漬液(水浸漬液)は渋味等の雑味を除くため廃棄される。そして含水したアズキについては、その後加熱され、適量の砂糖等が添加されて製菓材料の一種である小倉あん等に加工される。実施形態のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の着目点は、アズキのあんの製造に際して、一般的に廃棄されるアズキの浸漬液を出発点としていることである。
浸漬液に対する70ないし90重量%のメタノール水溶液の添加は、後述する実施例における検出成分の相違に起因する。実施例における実験では、浸漬液に濃度勾配のメタノール(初期は0から徐々に100とする)を添加してHPLC(高速液体クロマトグラフィー)に供した。そして、ピークの検出時のメタノールの濃度を規定した。
さらに、分離工程に先立ち、浸漬液は加熱される(「加熱工程」)。浸漬液の加熱は煮沸温度であり、90ないし100℃(90~100℃)である。加熱時間は60ないし120分間(60~120分間)である。
メタノール水溶液による分離により生じたメタノール上清は乾固され乾固物が得られる(「乾固工程」)。乾固により浸漬液に溶出した目的成分の粉末を得ることができる。こうして、加熱工程なしの乾固物(a)と加熱工程ありの乾固物(b)の2系統が調製される。
アズキの水浸漬液から調製された乾固物(a)及び乾固物(b)には、式(1)の「(+)-カテキン 7-O-β-D-グルコピラノシド」が共通して含有される。以降、当該カテキンを「C7G」と称する。C7Gの構造のカテキンは、植物由来の組成であり、アズキの水浸漬液における存在も確認された。
Figure 0007429169000001
加えて、加熱工程ありの乾固物(b)については、式(2)の「(+)-エピカテキン 7-O-β-D-グルコピラノシド」が含有される。以降、当該エピカテキンを「E7G」と称する。E7Gのエピカテキンは、後述実施例のHPLCによるピーク位置の分析から存在が確認された。C7GとE7Gは異性体の関係であり、C7Gが加熱を受けて一部の構造が変化しE7Gに至ったものと考えられる。
Figure 0007429169000002
一連の工程を踏まえてアズキの水浸漬液から調製された乾固物(乾固物(a)及び乾固物(b))について、実施例のとおり、糖分解酵素の阻害の活性を示すことが見いだされた。従って、糖分解酵素の阻害活性の存在を根拠として、アズキの水浸漬由来の乾固物はアズキ由来糖分解酵素阻害剤として機能するといえる。
糖代謝の作用機序については、概ね次のとおりである。ヒトが食事等により経口摂取した糖質(いわゆるデンプン、炭水化物)は、唾液、膵液中のα-アミラーゼによりまず二糖類に分解される。その後、二糖類は、小腸粘膜上皮細胞の刷子縁から分泌されるα-グルコシダーゼにより単糖類に分解され、小腸から吸収される。糖類の吸収後には、血糖値の急上昇となり、インシュリンの分泌と血糖値の急低下、さらには細胞内への過剰な糖の蓄積等の慢性疾患の原因となり得る。
そのため、糖質の分解に関与するα-アミラーゼまたはα-グルコシダーゼの酵素活性を阻害することにより、最終産物である単糖の生成は低下し、血糖値の急上昇は抑制可能となり得る。現状、2型糖尿病の治療薬としてアカルボース(Acarbose)、ボグリボース(Voglibose)、ミグリトール(Miglitol)等が処方されている。そこで、前述のアズキ由来糖分解酵素阻害剤がこれらの治療薬、予防薬と同等に酵素活性阻害を発揮するとの実施例の知見から、糖尿病等の糖代謝の異常の予防に有効である。
アズキ由来糖分解酵素阻害剤は、既存の糖尿病の治療薬と比較して、α-グルコシダーゼの酵素活性の阻害効果が高いことが見いだされる。さらに、アズキ由来糖分解酵素阻害剤に含有されるC7Gのカテキン及びE7Gのエピカテキンのカテキン類は、α-アミラーゼ及びα-グルコシダーゼの酵素活性を阻害する。特に、E7Gのエピカテキンはα-アミラーゼ及びα-グルコシダーゼに作用し、α-グルコシダーゼの酵素活性阻害の効果が高い。
当該効果は新たな知見である。従前、カテキン類のポリフェノール、配糖体等による種々の薬理活性効果についてはある程度の関連性が報告されている。しかしながら、カテキン類の構造の相違により、酵素の種類毎に効果に差異が生じることが明らかとなった。従って、既存の2型糖尿病の治療薬の代替ないし補完の目的から、アズキ由来糖分解酵素阻害剤は極めて有望といえる。加えて、糖質由来の肥満改善への応用も期待される。
アズキ由来糖代謝調節剤(糖代謝調節アズキ由来抽出物)を糖代謝異常、糖尿病の改善のための予防剤または治療剤として用いる場合、経口投与の剤型は錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤等の適宜である。また、注射薬、座薬、点滴薬、スプレー薬、点鼻薬等とすることもできる。列記の薬剤においては、アズキ由来糖代謝調節剤を単独としても他の薬剤を加えて併用しても良い。
本発明のアズキ由来糖代謝調節剤は、天然物であり、古くから食用されているアズキに由来する抽出物である。そのことから、アズキ由来糖代謝調節剤は常用する食品と馴染み良い。よって、新たにアズキ由来糖代謝調節剤を添加したアズキ由来糖代謝調節剤含有食品を作ることができる。
アズキ由来糖代謝調節剤(糖代謝調節アズキ由来抽出物)を添加可能な食品は、具体的に、水ようかん、ようかん、小倉あん、どら焼き、アズキのムース、アイスクリーム、飴(キャンデー)、キャラメル、カスタードプディング、コーヒーゼリー、グミ、ババロア、マシュマロ、カステラ、ホットケーキ、クッキー、フルーツジュース、炭酸飲料等がある。さらにはサプリメントとなる錠剤等も挙げられる。
列記のアズキ由来糖分解調節剤含有食品を製造するに際し、アズキ由来糖分解調節剤の含有量は、当該食品自体の味覚及び添加後の味の変化、他の添加成分、1回当たりの喫食量、喫食頻度、季節性、販売形態、さらに年齢、性別を加味した需要者層等を総合的に考慮して規定される。食品に添加するアズキ由来糖分解調節剤の量は自由であり、例えば0.01重量%ないし50重量%(0.01重量%~50重量%)としても良い。
〔アズキ由来成分の抽出〕
原料となるアズキ(Vigna angularis)に北海道産の小豆(品種:エリモショウズ)を用いた。所定量のアズキを軽く水洗し、アズキ重量と同重量の室温(およそ15℃)の超純水し浸漬し10時間静置した。浸漬後の浸漬液(上清)と含水したアズキとを分離した。浸漬液を2種類に取り分け、一方の浸漬液はそのままとした。他方の浸漬液を90分間煮沸して室温に冷却した。こうして、アズキの水浸漬のみの浸漬液(以降、「上清(1)」と称する。)と、加熱済みの浸漬液(以降、「上清(2)」と称する。)の2種類を得た。上清(1)及び上清(2)はともに淡い紫褐色であった。
〔HPLC分析〕
ODSカラム(ナカライテスク株式会社製,COSMOSIL 5C18-AR,4.6×150mm)を使用した。ODSカラムは分析に先立ちメタノールを通して平均化した。検出波長は210nmとした。
上清(1)または上清(2)のHPLCへの挿通(インジェクション)に際し、水(超純水)とメタノールの濃度勾配のメタノール水溶液を移動相に用いた(流速1mL/min)。移動相の濃度勾配の制御にはCDS Lite(エル・エイソフト社製)を使用し80分間記録した。
移動相のグラジエントプログラムの条件は以下とした。
0ないし15分目:超純水100%を維持
15ないし45分目:超純水100%からメタノール100%に徐々に濃度上昇
45ないし60分目:メタノール100%を維持
60ないし75分目:メタノール100%から超純水100%へ徐々に濃度降下
試料の挿通量は2μg(濃度0.2mg/mL,体積10μL)ないし10μg(濃度1mg/mL,体積10μL)に調製した。
図2はHPLCのピークチャートである。縦軸は検出電位(mV)、横軸はリテンションタイム(min)である。「上段」のチャートは上清(1)のHPLC検出結果であり、「下段」は上清(2)のHPLC検出結果である。上段のリテンションタイムにピークIとピークIIを検出した。。そして、下段のリテンションタイムにピークI、ピークII、ピークIIIを検出した。
上段の上清(1)のピークI及びIIに検出された成分と、下段の上清(2)のピークI、II及びIIIに検出された成分のそれぞれについて、対応するピークの位置に応じて単離し乾固した。
〔糖分解酵素阻害作用の測定〕
はじめに上段の上清(1)(水浸漬)及び下段の上清(2)(水浸漬及び加熱)の両試料について、全体として(各成分を包含した状態として)、糖分解に関連する2種類の酵素活性に対する阻害効果を測定した。酵素として、α-アミラーゼ及びα-グルコシダーゼを使用した。
・α-グルコシダーゼ活性阻害試験
α-グルコシダーゼ活性阻害試験に際し、96well(穴)プレートを使用し、酵母由来のα-グルコシダーゼを使用した。α-グルコシダーゼは0.2U/mLに0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.7)により調製した。試験群には酵素溶液を50μL/well注入し、対照群にはリン酸緩衝液を50μL/well注入した。各wellに対し、試料として0.001ないし10mg/mLに調製した試料溶液をwellあたり50μL添加した。37℃、10分間、事前インキュベートした後、1個のwellあたり20μLの基質溶液PNPG(p-ニトロフェニル-β-D-グルコシド)溶液を添加し、37℃、30分間、インキュベートした。当該インキュベートの後、直ちに、1個のwellあたり120μLの0.6M炭酸水素ナトリウム溶液を添加し、酵素反応を停止させた。反応停止後、すぐにプレートリーダー(AWARENESS TECHNOLOGY Inc.製,CHROMATE MODEL4300)を使用し、405nmにおける吸光度を測定し、活性を算出した。なお、IC50については以下の公式を用いた。結果は表1である。
IC50=10〔{log(A/B)・(50-C)・1/(D-C)}
+log(B)〕
式中、A:50%を挟む2点のうち高い濃度
B:50%を挟む2点のうち低い濃度
C:Bにおける阻害率
D:Aにおける阻害率
Figure 0007429169000003
・α-アミラーゼ活性阻害試験
α-アミラーゼ活性阻害試験に際し、96well(穴)プレートを使用し、ブタ膵臓由来のα-アミラーゼを使用した。α-アミラーゼは0.6U/mLに60mMの塩化ナトリウムを含む0.1Mのリン酸緩衝液(pH6.7)により調製した。試験群には酵素溶液を50μL/well注入し、対照群には前出の塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝液を50μL/well注入した。各wellに対し、試料として0.001ないし10mg/mLに調製した試料溶液をwellあたり50μL添加した。37℃、10分間、事前インキュベートした後、1個のwellあたり20μLの基質溶液CNP-G(2-クロロ-4-ニトロフェニル-α-D-マルトトリオシド)溶液を添加し、37℃、30分間、インキュベートした。当該インキュベートの後、直ちに、1個のwellあたり120μLの0.6M炭酸水素ナトリウム溶液を添加し、酵素反応を停止させた。反応停止後、すぐにプレートリーダー(AWARENESS TECHNOLOGY Inc.製,CHROMATE MODEL4300)を使用し、405nmにおける吸光度を測定し、活性を算出した。なお、IC50については前出のα-グルコシダーゼ活性阻害試験と同じ公式を用いた。結果は表2である。
Figure 0007429169000004
〔糖分解酵素阻害作用の測定の考察〕
表1のα-グルコシダーゼ活性阻害試験の結果及び表2のα-アミラーゼ活性阻害試験より、いずれの酵素に対しても上清(1)(水浸漬)及び上清(2)(水浸漬及び加熱)はその濃度依存的に阻害活性を発揮した。従って、アズキの水浸漬液中に溶出した成分は、糖分解に関与する2種類の酵素に対して反応阻害を発揮することを確認した。
〔溶出成分の構造決定〕
図2において、上段の上清(1)のピークI及びIIに検出された成分と、下段の上清(2)のピークI、II及びIIIに検出された成分のそれぞれについて、1H-NMRを用い構造決定した。併せて、LC-MSを用いて分子量を特定した。なお、1H-NMRによる構造決定に際し、日本栄養・食糧学会誌,第62巻,第1号,3-11(2009),堀他のスペクトルデータを参照した。構造帰属は表3のスペクトルデータを用いた。
Figure 0007429169000005
構造決定の結果、ピークIIの成分の構造はCompoundIの「(+)-カテキン 7-O-β-D-グルコピラノシド(C7G),MW:452」として構造決定した。C7GのNMRのスペクトルは図3である。
ピークIIIの成分の構造はCompoundIIの「(+)-エピカテキン 7-O-β-D-グルコピラノシド(E7G),MW:452」として構造決定した。E7GのNMRのスペクトルは図4である。
ピークIの成分の構造はCompoundIIIの「(+)-カテキン,MW:290」として構造決定した。カテキンのNMRのスペクトルは図5である。
Figure 0007429169000006
Figure 0007429169000007
Figure 0007429169000008
〔C7G,E7Gの糖分解酵素阻害作用の測定〕
アズキの水抽出物中はカテキンに加えてC7Gを含有し、さらに加熱後にE7Gも含有していることを確認した。そこで、C7GとE7Gの単独成分による糖分解酵素の阻害活性を測定した。測定手法は、前出のα-グルコシダーゼ活性阻害試験及びα-アミラーゼ活性阻害試験と同様とした。α-グルコシダーゼ活性阻害試験の結果は表4であり、α-アミラーゼ活性阻害試験の結果は表5である。
Figure 0007429169000009
Figure 0007429169000010
〔C7G,E7Gの糖分解酵素阻害作用の測定の考察〕
C7G及びE7Gは、それぞれ単独においても糖分解に関与するα-アミラーゼとα-グルコシダーゼの酵素に対しそれぞれ阻害活性を示すことが明らかとなった。また、C7GとE7Gは同様に濃度依存的ではあるものの、生化学的試験においてはE7Gの方がC7Gよりも酵素活性の阻害能力が高い傾向にある。
〔E7Gの生成要因〕
前出の図2のHPLCのリテンションタイムのチャートより、上段の上清(1)と下段の上清(2)の相違は水浸漬のみか、水浸漬に加熱されていることである。ここで、C7GとE7Gは相互に同分子量であり、両分子は異性体の関係にある。そのため、C7Gが加熱されることにより、C7GからE7Gが生成するのかを確認した。
分取したC7Gを超純水に溶解し(濃度0.05mg/mL)、90分間煮沸温度により加熱した。C7Gのみと、同C7Gの加熱後の2種類をHPLCにより検出した。ODSカラム(ナカライテスク株式会社製,COSMOSIL 5C18-AR,4.6×150mm)を使用した。ODSカラムは分析に先立ちメタノールを通して平均化した。検出波長は210nmとした。
C7Gのみと、同C7Gの加熱後の2種類のHPLCへの挿通(インジェクション量:10μL)に際し、水(超純水)20%とメタノール20%のメタノール水溶液を移動相に用いた(流速1mL/min)。HPLCのリテンションタイムのピークは図6のチャートとなった。
上段はC7Gのみの溶液のピークである。リテンションタイム3分を過ぎたあたりにC7Gのピークが存在する。下段はC7Gの加熱溶液のピークである。リテンションタイム3分を過ぎたあたりのC7Gのピークとともに、6分を過ぎたあたりにも別のピークが存在する。このピークを、単離したE7Gと比較検討を行った結果、E7Gであることが判明した。
当該HPLCの結果から、C7Gは加熱によりE7Gに変化することを確認した。さらに、C7Gの加熱とE7Gの生成との間において検量線を作成し、C7GからE7Gへの変化量を調べた。検量線から判断すると、C7Gの約20%は加熱によりE7Gに変化したことが判明した。
〔糖分解酵素阻害作用のまとめ〕
アズキを水に浸漬して得た抽出物として、上清(1)(乾固物(a))、上清(2)(乾固物(b))、C7G、E7Gと、既存の2型糖尿病の治療薬としてアカルボース(Acarbose)のそれぞれについて、α-アミラーゼとα-グルコシダーゼの両酵素について50%阻害濃度(IC50)を求めた。既存薬のアカルボースを対照群としてアズキ抽出成分の良否を比較した。結果は表6である。
Figure 0007429169000011
アカルボースはα-アミラーゼに対して非常に強力に阻害活性を発揮している。これに対し、アズキ抽出成分の活性はアルカボースと比較して温和である。この中において、成分が単離されたC7GとE7Gは、単純な水抽出物、及びその加熱物と比較してより高い活性を示した。特に、生化学的試験においてはEG7はC7Gと比較して阻害活性が高い。
次にアカルボースのα-グルコシダーゼに対する阻害活性は、生化学的試験においてはアズキ抽出成分の全般に対してかなり劣る。さらに詳しく見ると、C7GとE7Gはα-グルコシダーゼに対し強力な阻害活性を有する。さらに、E7GはC7Gと比較してα-グルコシダーゼに対しより強力な阻害活性を有する傾向がある。
このように、E7Gによるα-グルコシダーゼに対する阻害効果は初めての知見である。それゆえ、アズキの成分に由来する糖分解酵素、特にはα-グルコシダーゼの阻害効果は有用であり、アズキ由来糖分解酵素阻害剤として単独使用、もしくは既存薬との並行使用により、血糖値代謝異常、糖尿病等の予防、改善に大きく貢献することが期待できる。
〔製剤例〕
アズキの水抽出物またはその加熱物であるアズキ由来糖分解酵素阻害剤を含有する薬剤を試作した。具体的には、アズキ由来糖分解酵素阻害剤は、乾固物(a)または乾固物(b)、もしくは、C7GまたはE7Gの単独ないし混合物としても良い。左欄に組成、右欄に配合割合(重量パーセント表記)を開示する。むろん、剤型、配合量等は適宜である。
〈製剤例1:錠剤〉
セルロース 30.00
ステアリン酸カルシウム 2.50
二酸化ケイ素 1.50
デンプン粉末 49.40
乳糖 10.00
アズキ由来糖分解酵素阻害剤 6.60
(合計) 100.00
〈製剤例2:カプセル剤〉
乳糖 50.00
アズキ由来糖分解酵素阻害剤 50.00
(合計) 100.00
上記の成分を公知のカプセル内に封入する。
本発明のアズキの水抽出物またはその加熱物であるアズキ由来糖分解酵素阻害剤は、食品由来であるため、通常の食事から無理なく摂取が可能となる。また、有効成分を高めて薬剤とすることにより、糖代謝異常の改善に効果を有し予防、治療に有効な薬剤とすることができる。
(以上)

Claims (6)

  1. 水にアズキを浸漬して浸漬液を得る浸漬工程と、前記浸漬工程後に浸漬液と含水したアズキを分離し、浸漬液を回収する浸漬液回収工程と、回収した浸漬液を加熱する加熱工程とを行い、(+)-カテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドおよび(+)-エピカテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドを含有し、α-グルコシダーゼの酵素活性を阻害するアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
  2. 前記浸漬工程における浸漬時間は、8~12時間である請求項1に記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
  3. 前記浸漬工程におけるアズキの浸漬に使用する水の量は、アズキ重量と同量~2倍量である請求項1または2に記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
  4. 前記加熱工程における温度は、90~100℃である請求項1から3のいずれかに記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
  5. 前記加熱工程における加熱時間は、60~120分間である請求項1から4のいずれかに記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
  6. 前記浸漬工程における浸漬時間は、8~12時間であり、前記浸漬工程におけるアズキの浸漬に使用する水の量は、アズキ重量と同量~2倍量であり、前記加熱工程における温度は、90~100℃であり、前記加熱工程における加熱時間は、60~120分間である請求項1に記載のアズキ由来糖分解酵素阻害剤の製造方法。
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