以下、図面に基づいて、本願の開示する空気調和機等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜変形しても良い。
<空気調和機の構成>
図1は、本実施例の空気調和機1の一例を示す説明図である。図1に示す空気調和機1は、1台の室外機2と、N台の室内機3とを有する(Nは2以上の自然数)。室外機2は、液管4及びガス管5で並列に各室内機3と接続する。そして、室外機2と室内機3とが液管4及びガス管5等の冷媒配管で接続することで、空気調和機1の冷媒回路6が形成されている。
<室外機の構成>
図2は、室外機2およびN台の室内機3の一例を示す説明図である。室外機2は、圧縮機11と、四方弁12と、室外熱交換器13と、室外機膨張弁14と、第1の閉鎖弁15と、第2の閉鎖弁16と、アキュムレータ17と、室外機ファン18と、制御手段19とを有する。これら圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、室外機膨張弁14、第1の閉鎖弁15、第2の閉鎖弁16及びアキュムレータ17を用いて、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて冷媒回路6の一部を成す室外側冷媒回路を形成する。
圧縮機11は、例えば、インバータにより回転数が制御される図示しないモータの駆動に応じて、運転容量を可変できる高圧容器型の能力可変型圧縮機である。圧縮機11は、その冷媒吐出側と四方弁12の第1のポート12Aとの間を吐出管21で接続している。また、圧縮機11は、その冷媒吸入側とアキュムレータ17の冷媒流出側との間を吸入管22で接続している。
四方弁12は、冷媒回路6における冷媒の流れる方向を切替えるための弁であって、第1~第4のポート12A~12Dを備えている。第1のポート12Aは、圧縮機11の冷媒吐出側との間を吐出管21で接続している。第2のポート12Bは、室外熱交換器13の一方の冷媒出入口との間を室外冷媒管23で接続している。第3のポート12Cは、アキュムレータ17の冷媒流入側との間を室外冷媒管26で接続している。そして、第4のポート12Dは、第2の閉鎖弁16との間を室外ガス管24で接続している。
室外熱交換器13は、冷媒と、室外機ファン18の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気とを熱交換させる。室外熱交換器13は、その一方の冷媒出入口と四方弁12の第2のポート12Bとの間を室外冷媒管26で接続している。室外熱交換器13は、その他方の冷媒出入口と第1の閉鎖弁15との間を室外液管25で接続している。室外熱交換器13は、空気調和機1が冷房運転を行う場合に凝縮器として機能し、空気調和機1が暖房運転を行う場合に蒸発器として機能する。
室外機膨張弁14は、室外液管25に設けられており、図示しないパルスモータで駆動する電子膨張弁である。室外機膨張弁14は、パルスモータに与えられるパルス数に応じて開度が調整されることで、室外熱交換器13に流入する冷媒量、又は、室外熱交換器13から流出する冷媒量を調整するものである。室外機膨張弁14の開度は、空気調和機1が暖房運転を行っている場合、圧縮機11の冷媒吸入側の冷媒過熱度が目標吸入冷媒過熱度となるように調整される。また、室外機膨張弁14の開度は、空気調和機1が冷房運転を行っている場合、全開とされる。
アキュムレータ17は、その冷媒流入側と四方弁12の第3のポート12Cとの間を室外冷媒管26で接続している。更に、アキュムレータ17は、その冷媒流出側と圧縮機11の冷媒流入側との間を吸入管22で接続している。アキュムレータ17は、室外冷媒管26からアキュムレータ17の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを圧縮機11に吸入させる。
室外機ファン18は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器13の近傍に配置されている。室外機ファン18は、図示しないファンモータの回転に応じて、図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器13において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
また、室外機2には、複数のセンサが配置されている。吐出管21には、圧縮機11から吐出される冷媒の圧力、すなわち吐出圧力を検出する吐出圧センサ31と、圧縮機11から吐出された冷媒の温度、すなわち吐出温度を検出する吐出温度センサ32とが配置されている。室外冷媒管26のアキュムレータ17の冷媒流入口近傍には、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ33と、圧縮機11に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが配置されている。
室外熱交換器13と室外機膨張弁14との間の室外液管25には、室外熱交換器13に流入する冷媒の温度、又は、室外熱交換器13から流出する冷媒の温度を検出するための冷媒温度センサ35が配置されている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が配置されている。
制御手段19は、空気調和機1全体を制御する。図3は、室外機2の制御手段19の一例を示すブロック図である。制御手段19は、取得部41と、通信部42と、記憶部43と、制御部44とを有する。取得部41は、前述した各種センサのセンサ値を取得する。通信部42は、各室内機3の通信部と通信する通信インタフェースである。記憶部43は、例えば、フラッシュメモリであって、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値等の運転状態量、圧縮機11や室外機ファン18の駆動状態、各室内機3から送信される運転情報(例えば、運転・停止情報、冷房/暖房等の運転モード等を含む)、室外機2の定格能力及び各室内機3の要求能力、などを記憶する。
また、記憶部43は冷媒回路6に残存する冷媒量を推定する推定モデルを記憶している。本実施例では、冷媒回路6に残存する冷媒量として、例えば相対的な冷媒量を用いている。具体的には、本実施例の記憶部43は冷媒回路6の冷媒不足率(冷媒が規定量充填されているときを100%としたとき、この規定量からの減少分を指す。以下、同様)を推定する推定モデルを記憶している。推定モデルは、第1の冷房用推定モデル43Aと、第2の冷房用推定モデル43Bと、第3の冷房用推定モデル43Cと、第1の暖房用推定モデル43Dと、第2の暖房用推定モデル43Eと、第3の暖房用推定モデル43Fとを有する。
制御部44は、通信部42を介して各種センサでの検出値を定期的(例えば、30秒毎)に取り込み、各室内機3から送信される運転情報を含む信号が通信部42を介して入力される。制御部44は、これら入力された各種情報に基づいて、室外機膨張弁14の開度調整や圧縮機11の駆動制御を行う。更に、制御部44は、上述した各推定モデルを用いて冷媒不足率を推定する。
<室内機の構成>
図2に示すように、室内機3は、室内熱交換器51と、室内機膨張弁52と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内機ファン55とを有する。これら室内熱交換器51、室内機膨張弁52、液管接続部53及びガス管接続部54は、後述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路6の一部を成す室内機冷媒回路を構成する。
室内熱交換器51は、冷媒と、室内機ファン55の回転により図示しない吸込口から室内機3の内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させる。室内熱交換器51は、その一方の冷媒出入口と液管接続部53との間を室内液管56で接続している。また、室内熱交換器51は、その他方の冷媒出入口とガス管接続部54との間を室内ガス管57で接続している。室内熱交換器51は、空気調和機1が暖房運転を行う場合、凝縮器として機能する。これに対して、室内熱交換器51は、空気調和機1が冷房運転を行う場合、蒸発器として機能する。
室内機膨張弁52は、室内液管56に設けられており、電子膨張弁である。室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合、すなわち、室内機3が冷房運転を行う場合、室内機膨張弁52の開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(ガス管接続部54側)での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。また、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合、すなわち室内機3が暖房運転を行う場合、室内機膨張弁52の開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(液管接続部53側)での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度や目標冷媒過冷却度とは、室内機3で十分な冷房能力あるいは暖房能力を発揮するのに必要な冷媒過熱度および冷媒過冷却度である。
室内機ファン55は、樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内機ファン55は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機3の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ放出する。
室内機3には各種のセンサが設けられている。室内液管56には、室内熱交換器51と室内機膨張弁52との間に、室内熱交換器51に流入する冷媒の温度、又は室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を検出する液側冷媒温度センサ61が配置されている。室内ガス管57には、室内熱交換器51から流出又は室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62が配置されている。室内機3の図示しない吸込口付近には、室内機3の内部に流入する室内空気の温度、すなわち吸込温度を検出する吸込温度センサ63が配置されている。
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和機1の空調運転時の冷媒回路6における冷媒の流れや各部の動作について説明する。尚、図1における矢印は暖房運転時の冷媒の流れを示している。
空気調和機1が暖房運転を行う場合、四方弁12は、第1のポート12Aと第4のポート12Dとが連通し、第2のポート12Bと第3のポート12Cとが連通するように切替えている。これにより、冷媒回路6は、各室内熱交換器51が凝縮器として機能し、室外熱交換器13が蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。尚、説明の便宜上、暖房運転時の冷媒の流れは、図2に示す実線矢印で表記する。
冷媒回路6が上記の状態で圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出された冷媒は、吐出管21を流れて四方弁12に流入し、四方弁12から室外ガス管24を流れて、第2の閉鎖弁16を介してガス管5へと流入する。ガス管5を流れる冷媒は、各ガス管接続部54を介して各室内機3に分流する。各室内機3に流入した冷媒は、各室内ガス管57を流れて各室内熱交換器51に流入する。各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により各室内機3の内部に取り込まれた室内空気との間で熱交換することで凝縮する。つまり、各室内熱交換器51が凝縮器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒によって加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることで、各室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
各室内熱交換器51から各室内液管56に流入した冷媒は、各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過して減圧される。ここで、目標冷媒過冷却度は、各室内機3で要求される冷房能力に基づいて定められるものである。
各室内機膨張弁52で減圧された冷媒は、各室内液管56から各液管接続部53を介して液管4に流出する。液管4で合流した冷媒は、第1の閉鎖弁15を介して室外機2に流入する。室外機2の第1の閉鎖弁15に流入した冷媒は、室外液管25を流れ、室外機膨張弁14を通過して減圧される。室外機膨張弁14で減圧された冷媒は、室外液管25を流れて室外熱交換器13に流入し、室外機ファン18の回転によって室外機2の図示しない吸込口から流入した外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器13から室外冷媒管26へと流出した冷媒は、四方弁12、室外冷媒管26、アキュムレータ17及び吸入管22の順に流入し、圧縮機11に吸入されて再び圧縮され、四方弁12の第1のポート12A及び第4のポート12D経由で室外ガス管24に流出する。
また、空気調和機1が冷房運転を行う場合、四方弁12は、第1のポート12Aと第2のポート12Bとが連通し、第3のポート12Cと第4のポート12Dとが連通するように切替えている。これにより、冷媒回路6は、各室内熱交換器51が蒸発器として機能し、室外熱交換器13が凝縮器として機能する冷房サイクルとなる。尚、説明の便宜上、冷房運転時の冷媒の流れは、図2に示す破線矢印で表記する。
冷媒回路6の状態で圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出された冷媒は、吐出管21を流れて四方弁12に流入し、四方弁12から室外冷媒管26を流れて、室外熱交換器13に流入する。室外熱交換器13に流入した冷媒は、室外機ファン18の回転により室外機2の内部に取り込まれた室外空気との間で熱交換することで凝縮する。つまり、室外熱交換器13が凝縮器として機能し、室外熱交換器13で冷媒によって加熱された室内空気が図示しない吹出口から室外に吹き出す。
室外熱交換器13から室外液管25へと流入した冷媒は、開度が全開とされている室外機膨張弁14を通過して減圧される。室外機膨張弁14で減圧された冷媒は、第1の閉鎖弁15を介して液管4を流れて各室内機3に分流する。各室内機3に流入した冷媒は、各液管接続部53を通じて室内液管56を流れて室内熱交換器51の冷媒出口で冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となる開度に調整された室内機膨張弁52を通過して減圧される。室内機膨張弁52で減圧された冷媒は、室内液管56を流れて室内熱交換器51に流入し、室内機ファン55の回転によって室内機3の図示しない吸入口から流入した室内空気と熱交換を行って蒸発する。つまり、各室内熱交換器51が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒によって冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることで、各室内機3が設置された室内の冷房が行われる。
室内熱交換器51からガス管接続部54を介してガス管5へ流れる冷媒は、室外機2の第2の閉鎖弁16を介して室外ガス管24に流れて四方弁12の第4のポート12Dに流入する。四方弁12の第4のポート12Dに流入した冷媒は、第3のポート12Cからアキュムレータ17の冷媒流入側に流入する。アキュムレータ17の冷媒流入側から流入した冷媒は、吸入管22を介して流入し、圧縮機11に吸入されて再び圧縮されることになる。
制御手段19内の取得部41は、室外機2内の吐出圧センサ31、吐出温度センサ32、吸入圧力センサ33、吸込温度センサ63、冷媒温度センサ35及び外気温度センサ36のセンサ値を取得する。更に、取得部41は、各室内機3の液側冷媒温度センサ61、ガス側温度センサ62及び吸込温度センサ63のセンサ値を取得する。
図4は、空気調和機1の冷凍サイクルを示すモリエル線図である。空気調和機1の冷房運転時は、室外熱交換器13が凝縮器として機能し、室内熱交換器51が蒸発器として機能する。また、空気調和機1の暖房運転時は、室外熱交換器13が蒸発器として機能し、室内熱交換器51が凝縮器として機能する。
圧縮機11は、蒸発器から流入する低温低圧のガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒(図4の点Bの状態になった冷媒)を吐出する。尚、圧縮機11が吐出するガス冷媒の温度が吐出温度であり、吐出温度は、吐出温度センサ32で検出する。
凝縮器は、圧縮機11からの高温高圧のガス冷媒を空気と熱交換して凝縮させる。この際、凝縮器では、潜熱変化によってガス冷媒が全て液冷媒となった後は顕熱変化によって液冷媒の温度が低下して過冷却状態となる(図4の点Cの状態)。尚、ガス冷媒が潜熱変化で液冷媒へと変化している際の温度が高圧飽和温度であり、凝縮器の出口における過冷却状態となっている冷媒の温度が熱交出口温度である。高圧飽和温度は、吐出圧力センサ31で検出した圧力値(図4に「HPS」と表記している圧力値P2)に相当する温度である。熱交出口温度は、冷媒温度センサ35で検出する。
膨張弁は、凝縮器から流出した低温高圧の冷媒を減圧して、ガスと液とが混合した気液二相冷媒(図4の点Dの状態になった冷媒)となる。
蒸発器は、流入した気液二相冷媒を空気と熱交換して蒸発させる。この際、蒸発器では、潜熱変化によって気液二相冷媒が全てガス冷媒となった後は顕熱変化によってガス冷媒の温度が上昇して過熱状態(図4の点Aの状態)となり、圧縮機11に吸入される。尚、液冷媒が潜熱変化でガス冷媒へと変化している際の温度が低圧飽和温度である。低圧飽和温度は、吸入圧力センサ33で検出した圧力値(図4に「LPS」と表記している圧力値P1)に相当する温度である。また、蒸発器で過熱されて圧縮機11に吸入される冷媒の温度が吸入温度である。吸入温度は、吸入温度センサ34で検出する。
なお、凝縮器から流出する際に過冷却状態となっている冷媒の冷媒過冷却度は、高圧飽和温度から凝縮器として機能している熱交換器の冷媒出口における冷媒温度(上述した熱交出口温度)を減じて算出できる。また、蒸発器から流出する際に過熱状態となっている冷媒の冷媒過熱度は、低圧飽和温度から吸入温度を減じて算出できる。
<推定モデルの構成>
推定モデルは、複数の運転状態量の内、任意の運転状態量(特徴量)を用いて回帰分析法の一種である重回帰分析法で生成されている。重回帰分析法では、複数のシミュレーション結果(数値計算により冷媒回路を再現して、残存する冷媒量に対して運転状態量がどのような値となるかを計算した結果)から得られた回帰式のうち、P値(生成した推定モデルの精度に運転状態量が与える影響度合いを示す値(所定の重みパラメータ))が一番小さく、かつ、補正値R2(生成した推定モデルの精度を示す値)が0.9以上1.0以下の間のできるだけ大きい値となる回帰式を選択して推定モデルとして生成する。ここで、P値および補正値R2は、重回帰分析法で推定モデルを生成する際に、当該推定モデルの精度に関わる値であり、P値が小さいほど、また、補正値R2が1.0に近い値であるほど、生成された推定モデルの精度が高くなる。その結果、冷房時の冷媒不足率が0~30%の場合では、例えば、冷媒過冷却度、外気温度、高圧飽和温度及び圧縮機11の回転数といった運転状態量を特徴量とする。冷房時の冷媒不足率が40~70%の場合では、例えば、吸入温度、外気温度及び圧縮機11の回転数といった運転状態量を特徴量とする。暖房時の冷媒不足率が0~20%の場合では、例えば、運転状態量として室外機膨張弁14の開度を特徴量とする。また、暖房時の冷媒不足率が30%~70%の場合では、例えば、吸入冷媒過熱度(吸入温度から低圧飽和温度を減じて求められる)、外気温度、圧縮機11の回転数及び室外機膨張弁14といった運転状態量を特徴量とする。
推定モデルは、第1の冷房用推定モデル43Aと、第2の冷房用推定モデル43Bと、第3の冷房用推定モデル43Cと、第1の暖房用推定モデル43Dと、第2の暖房用推定モデル43Eと、第3の暖房用推定モデル43Fとを有する。本実施例では、これら各推定モデルは、後述するシミュレーション結果を用いて生成されて、予め空気調和機1の制御手段19に記憶されている。
第1の冷房用推定モデル43Aは、冷媒不足率が0%~30%(第1の範囲)の場合に有効な推定モデルであって、冷媒不足率を高精度に推定できる第1の回帰式である。第1の回帰式は、例えば、(α1×冷媒過冷却度)+(α2×外気温度)+(α3×高圧飽和温度)+(α4×圧縮機11の回転数)+α5である。係数α1~α5は、推定モデル生成の際に決定されるものとする。制御部44は、第1の回帰式に、取得部41にて取得された現在の冷媒過冷却度、外気温度、高圧飽和温度及び圧縮機11の回転数を代入することで、現時点での冷媒回路6の冷媒不足率を算出する。尚、冷媒過冷却度、外気温度、高圧飽和温度及び圧縮機11の回転数を代入する理由は、第1の冷房用推定モデル43Aの生成時に使用した特徴量を使用するためである。冷媒過冷却度は、例えば、(高圧飽和温度-熱交出口温度)で算出できる。外気温度は、外気温度センサ36で検出する。高圧飽和温度は、吐出圧力センサ31で検出した圧力値を温度変換した値である。圧縮機11の回転数は、圧縮機11の図示しない回転数センサで検出する。
第2の冷房用推定モデル43Bは、冷媒不足率が40%~70%(第2の範囲)の場合に有効な推定モデルであって、冷媒不足率を高精度に推定できる第2の回帰式である。第2の回帰式は、例えば、(α11×吸入温度)+(α12×外気温度)+(α13×圧縮機11の回転数)+α14である。係数α11~α14は、推定モデル生成の際に決定されるものとする。制御部44は、第2の回帰式に、取得部41にて取得された現在の吸入温度、外気温度及び圧縮機11の回転数を代入することで、現時点での冷媒回路6の冷媒不足率を算出する。尚、吸入温度、外気温度及び圧縮機11の回転数を代入する理由は、第2の冷房用推定モデル43Bの生成時に使用した特徴量を使用するためである。吸入温度は、吸入温度センサ34で検出する。外気温度は、外気温度センサ36で検出する。圧縮機11の回転数は、圧縮機11の図示しない回転数センサで検出する。
ところで、前述したように、第1の回帰式で求めることができる冷媒不足率は0%~30%であり、第2の回帰式で求めることができる冷媒不足率は40%~70%である。この場合、冷媒不足率が30%~40%である場合は、第1の回帰式を用いると冷媒不足率は30%と算出され、第2の回帰式を用いると冷媒不足率は40%と算出される。つまり、冷媒不足率が30%~40%である場合に、冷媒不足率が30%以下での寄与度の高い冷媒過冷却度、冷媒不足率が40%以上での寄与度の高い吸入温度の何れも変化が小さく、有効な推定モデルを生成できない。従って、第1の回帰式あるいは第2の回帰式を用いると、図5Aに示すようにどちらのモデルを使用するのかによって冷媒不足率が大きく異なる。
第3の冷房用推定モデル43Cは、上記のような第1の回帰式あるいは第2の回帰式のいずれを使用しても冷媒不足率を推定できない範囲も含めて、冷媒不足率が0%~70%の範囲をカバーできる冷房時冷媒不足率算出式である。図5Bに示すように、冷房時冷媒不足率算出式は、第1の回帰式の推定結果である冷媒不足率と第2の回帰式の推定結果である冷媒不足率との間を、シグモイド係数を使用したシグモイド曲線で連続的につなぐものである。具体的には、冷房時冷媒不足率算出式は、(シグモイド係数×第1の回帰式で求めた冷媒不足率)+((1-シグモイド係数)×第2の回帰式で求めた冷媒不足率)である。制御部44は、第1の回帰式および第2の回帰式に取得部41にて取得された現在の運転状態量を代入してそれぞれ算出された冷媒不足率を冷房時冷媒不足率算出式に代入して、現時点での冷媒回路6の冷媒不足率を算出する。
ここで、シグモイド係数の算出は、運転状態量のいずれかを用いる。本実施例では、サブクールが0となると第1の回帰式による結果がほぼ一定となってしまうことを考慮し、サブクールが5℃のときに、シグモイド係数が0.5となる計算式とした。
p=1/(1+exp-(sc-5))
p:シグモイド係数
sc:サブクール値
このようにシグモイド係数を決定して第3の冷房用推定モデル43Cに用いることで、冷媒不足率が0%~30%、つまり、冷媒不足率が第1の範囲であるときは、第3の冷房用推定モデル43Cによる推定値において第1の推定モデル43Aの推定値が支配的となり、また、冷媒不足率が40%~70%、つまり、冷媒不足率が第2の範囲であるときは、第3の冷房用推定モデル43Cによる推定値において第2の推定モデル43Bの推定値が支配的となる。
なお、シグモイド係数の算出は上述した方法に限らず、実際の冷媒不足率が30%以上であるとき、つまり、実際の冷媒不足率が第1の範囲でないときは、第3の冷房用推定モデル43Cによる推定値において第2の冷房用推定モデル43Bの推定値が支配的となるように、また、実際の冷媒不足率が40%以下であるとき、つまり、実際の冷媒不足率が第2の範囲でないときは、第3の冷房用推定モデル43Cによる推定値において第1の冷房用推定モデル43Aの推定値が支配的となるように、シグモイド係数を決定すればよい。
第1の暖房用推定モデル43Dは、冷媒不足率が0%~20%(第3の範囲)の場合に有効な推定モデルであって、冷媒不足率を高精度に推定できる第4の回帰式である。第4の回帰式は、例えば、(α31×室外機膨張弁14の開度)+α32である。制御部44は、第4の回帰式に、取得部41にて取得された現在の室外機膨張弁14の開度を代入することで、冷媒不足率を算出する。尚、室外機膨張弁14の開度を代入する理由は、第1の暖房用推定モデル43Dの生成時に使用した特徴量を使用するためである。
第2の暖房用推定モデル43Eは、冷媒不足率が30%~70%(第4の範囲)の場合に有効な推定モデルであって、冷媒不足率を高精度に推定できる第5の回帰式である。第5の回帰式は、例えば、(α41×吸入過熱度)+(α42×外気温度)+(α43×圧縮機11の回転数)+(α44×室外機膨張弁14の開度)+α45である。係数α41~α45は、推定モデル生成の際に決定されるものとする。制御部44は、第5の回帰式に、取得部41にて取得された現在の吸入過熱度、外気温度、圧縮機11の回転数及びメイン側の膨張弁の開度を代入することで、現時点での冷媒回路6の冷媒不足率を算出する。尚、吸入過熱度、外気温度、圧縮機11の回転数及びメイン側の膨張弁の開度を代入する理由は、第2の暖房用推定モデル43Eの生成時に使用した特徴量を使用するためである。吸入過熱度は、例えば、(吸入温度-低圧飽和温度)で算出できる。外気温度は、外気温度センサ36で検出する。圧縮機11の回転数は、圧縮機11の図示しない回転数センサで検出する。膨張弁の開度は、図示しないセンサで検出する。
また、前述したように、第4の回帰式で求めることができる冷媒不足率は0%~20%であり、第5の回帰式で求めることができる冷媒不足率は30%~70%である。この場合、冷媒不足率が20%~30%である場合は、第4の回帰式を用いると冷媒不足率は20%と算出され、第5の回帰式を用いると冷媒不足率は30%と算出される。つまり、冷媒不足率が20%~30%である場合に、冷媒不足率が20%以下での寄与度の高い室外機膨張弁14の開度、冷媒不足率が30%以上での寄与度の高い吸入過熱度の何れも変化が小さく、有効な推定モデルを生成できない。従って、第4の回帰式あるいは第5の回帰式を用いると、図6Aに示すようにどちらのモデルを使用するのかによって冷媒不足率が大きく異なる。
第3の暖房用推定モデル43Fは、上記のような第4の回帰式あるいは第5の回帰式のいずれを使用しても冷媒不足率を推定できない範囲も含めて、冷媒不足率が0%~70%の範囲をカバーできる暖房時冷媒不足率算出式である。図6Bに示すように、暖房時冷媒不足率算出式は、第4の回帰式の推定結果である冷媒不足率と第5の回帰式の推定結果である冷媒不足率との間を、シグモイド係数を使用したシグモイド曲線で連続的に繋ぐものである。具体的には、暖房時冷媒不足率算出式は、(シグモイド係数×第5の回帰式で求めた冷媒不足率)+((1-シグモイド係数)×第4の回帰式で求めた冷媒不足率)である。制御部44は、第4の回帰式および第5の回帰式に取得部41にて取得された現在の運転状態量を代入してそれぞれ算出された冷媒不足率を暖房時冷媒不足率算出式に代入して、現時点での冷媒回路6の冷媒不足率を算出する。
ここで、シグモイド係数の算出は、冷房運転時と同様に運転状態量のいずれかを用いる。本実施例では、室外膨張弁14の開度を全閉:0/全開:100としたときに室外膨張弁14の開度が全開となると第4の回帰式による結果がほぼ一定となってしまうことを考慮し、室外膨張弁14の開度が90のときに、シグモイド係数が0.5となる計算式とした。
p=1/(1+exp-(D-90))
p:シグモイド係数
D: 室外膨張弁14の開度
このようにシグモイド係数を決定して第3の暖房用推定モデル43Fに用いることで、冷媒不足率が0%~20%、つまり、冷媒不足率が第3の範囲であるときは、第3の暖房用推定モデル43Fによる推定値において第1の暖房用推定モデル43Dの推定値が支配的となり、また、冷媒不足率が30%~70%、つまり、冷媒不足率が第4の範囲であるときは、第3の暖房用推定モデル43Fによる推定値において第2の暖房用推定モデル43Eの推定値が支配的となる。
なお、シグモイド係数の算出は上述した方法に限らず、実際の冷媒不足率が20%以上であるとき、つまり、実際の冷媒不足率が第3の範囲でないときは、第3の暖房用推定モデル43Fによる推定値において第2の暖房用推定モデル43Eの推定値が支配的となるように、また、実際の冷媒不足率が30%以下であるとき、つまり、実際の冷媒不足率が第4の範囲でないときは、第3の暖房用推定モデル43Fによる推定値において第1の暖房用推定モデル43Dの推定値が支配的となるように、シグモイド係数を決定すればよい。
以上に説明したように、冷房運転時は、第1の回帰式、第2の回帰式及び冷房時冷媒不足率算出式を使用して冷媒不足率を推定する。冷房時の冷媒過冷却度が第1の閾値(図5のTv1)より大きい値である場合は、第1の回帰式を選択する方が第2の回帰式を選択するより冷媒不足率を精度よく推定できる。また、冷房時の冷媒過冷却度が第1の閾値より小さい値である場合は、第2の回帰式を選択する方が第1の回帰式を選択するより冷媒不足率を精度よく推定できる。そして、冷房時の冷媒過冷却度が第1の閾値付近の値である場合は、いずれの回帰式を用いるかで冷媒不足率の推定値が大きく変わる。そこで、冷房時は、第1の回帰式と第2の回帰式とを含んだ冷房時冷媒不足率算出式を選択する。これにより、冷房時の冷媒不足率を精度よく推定できる。
また、暖房運転時は、第4の回帰式、第5の回帰式及び暖房時冷媒不足率算出式を使用して冷媒不足率を推定する。暖房時のメイン膨張弁の開度が第2の閾値未満(図6のTv2)の場合は、第4の回帰式を選択する方が第5の回帰式を選択するよりもりも冷媒不足率を精度よく推定できる。また、暖房時のメイン膨張弁の開度が第2の閾値未満でない場合は、第5の回帰式を選択する方が第4の回帰式を選択するより冷媒不足率を精度よく推定できる。そして、暖房時のメイン膨張弁の開度が第1の閾値付近の値である場合は、いずれの回帰式を用いるかで冷媒不足率の推定値が大きく変わる。そこで、暖房時は、第4の回帰式と第5の回帰式とを含んだ暖房時冷媒不足率算出式を選択する。これにより、暖房時の冷媒不足率を精度よく推定できる。
<推定処理の動作>
図7は、推定処理に関わる制御手段19の処理動作の一例を示すフローチャートである。尚、制御手段19は、事前に生成された第1の冷房用推定モデル43A、第2の冷房用推定モデル43B、第3の冷房用推定モデル43C、第1の暖房用推定モデル43D、第2の暖房用推定モデル43E、第3の暖房用推定モデル43Fを保持しているものとする。図7において制御手段19内の制御部44は、取得部41を通じて運転状態量を運転データとして収集する(ステップS11)。制御部44は、収集した運転データから任意の運転状態量を抽出するデータフィルタリング処理を実行する(ステップS12)。制御部44は、データクレンジング処理を実行する(ステップS13)。制御部44は、各回帰式又は各冷媒不足率算出式を用いて、現時点の冷媒回路6の冷媒不足率を算出し(ステップS14)、図7に示す処理動作を終了する。
データフィルタリング処理は、複数の運転状態量の全てを使用するのではなく、所定フィルタ条件に基づき、複数の運転状態量の内、冷媒不足率を算出するのに必要な一部の運転状態量のみを抽出する。生成された推定モデルの各回帰式や各冷媒不足率算出式に、データフィルタリング処理を行った(異常値や突出値を除いた)運転状態量を代入することで、より正確に冷媒不足率を推定できる。
所定のフィルタ条件は、第1のフィルタ条件と、第2のフィルタ条件と、第3のフィルタ条件とを有する。第1のフィルタ条件は、例えば、空気調和機1の全運転モード共通に抽出するデータのフィルタ条件である。第2のフィルタ条件は、冷房運転時に抽出するデータのフィルタ条件である。第3のフィルタ条件は、暖房運転時に抽出するデータのフィルタ条件である。
第1のフィルタ条件は、例えば、圧縮機11の駆動状態、運転モードの識別、特殊運転の排除、取得した値における欠損値の排除、各回帰式の生成に際し与える影響の大きい運転状態量について変化量が小さい値の選択、等である。圧縮機11の駆動状態は、圧縮機が安定して運転していることで冷媒回路6に冷媒が循環していないと冷媒不足率を推定できないために判断する必要のある条件であり、圧縮機11の立ち上がり時等の過渡期に検出した運転状態量を除外するために設けられるフィルタ条件である。
運転モードの識別とは、冷房運転時及び暖房運転時に取得した運転状態量のみを抽出するためのフィルタ条件である。従って、除湿運転時や送風運転時に取得した運転状態量は除外される。特殊運転の排除とは、例えば、油回収運転や除霜運転といった冷房運転時や暖房運転時と比べて冷媒回路6の状態が大きく異なる特殊運転時に取得した運転状態量を除外するフィルタ条件である。欠損値の排除とは、冷媒不足率の判定に使用する運転状態量に欠損値があった場合、当該運転状態量を用いて各回帰式を生成すれば精度が落ちる可能性があるため、欠損値を含む運転状態量を除外するフィルタ条件である。
各回帰式や各冷媒不足率算出式に代入する運転状態量について変化量が小さい値の選択とは、空気調和機1の運転状態が安定している状態の運転状態量のみを抽出するフィルタ条件であり、各回帰式や各冷媒不足率算出式による推定精度を上げるために必要な条件である。尚、影響の大きい運転状態量とは、例えば、冷房運転時の冷媒不足率が0~30%の場合に使用する冷媒過冷却度、冷房運転時の冷媒不足率が40~70%の場合に使用する吸入温度や、暖房運転時の吸入過熱度等である。
第2のフィルタ条件には、例えば、熱交出口温度の排除、サブクールの異常、吐出温度の異常等がある。
熱交出口温度の排除は、外気温度センサ36と熱交出口温度センサ35とが近い場所に配置されていることにより、冷房運転時に熱交出口温度センサ35で検出した熱交出口温度が外気温度センサ36で検出した外気温度より低くなることがないことを考慮したフィルタ条件であり、外気温度より低い熱交出口温度を除外するフィルタ条件である。
サブクール異常は、冷房負荷が極端に大きいあるいは小さいことに起因して異常に高いあるいは以上に低い冷媒過冷却度検出されたときにこれを除外するフィルタ条件である。吐出温度の異常は、冷房負荷が小さいことに起因して圧縮機11に吸入される冷媒量が減少する所謂ガス欠状態時に検出した吐出温度を除外するフィルタ条件である。
第3のフィルタ条件は、例えば、吐出温度の異常等である。暖房運転時に暖房負荷の大きさに起因して吐出温度が高くなって吐出温度保護制御が実行されると、例えば、圧縮機11の回転数を低下させることで吐出温度が低下するため、このときに検出した吐出温度を除外するフィルタ条件である。
データクレンジング処理は、取得した全て運転状態量を冷媒不足率の推定に使用するのではなく、誤った推定を行うおそれがある運転状態量を除外するための処理である。具体的には、取得した運転状態量を平滑化してノイズ抑制やデータ数制限等がある。データの平滑化によるノイズ抑制とは、該当区間の平均値を算出し、各モデルにおいて例えば冷媒過冷却度、吸入温度、吸入冷媒過熱度の移動平均をとることで、ノイズを抑える処理である。データ数制限とは、例えば、データ数が少ないものは信頼性が低いため排除する処理である。例えば、1日分の入力データをフィルタリング処理して残ったデータ数がX個以上であれば冷媒不足率の推定に使用、それより少なければ、その日のデータはすべて使用しない。つまり、データクレンジング処理では、推定モデルの各回帰式や各冷媒不足率算出式に異常値や突出値を除いた運転状態量を代入することで、より正確に冷媒不足率を推定できる。
図8は、重回帰分析処理に関わる制御手段19の処理動作の一例を示すフローチャートである。重回帰分析処理とは、例えば、データフィルタリング処理及びデータクレンジング処理後の現在の運転状態量(センサ値)を推定モデルの各回帰式や各冷媒不足率算出式に代入することで、現時点の冷媒回路6の冷媒不足率を算出する処理である。図8において制御手段19内の制御部44は、現在が冷房運転中であるか否かを判定する(ステップS21)。制御部44は、現在が冷房運転中の場合(ステップS21:Yes)、第3の冷房用推定モデル43Cを使用して現在の運転状態量を代入し(ステップS22)、図8に示す処理動作を終了する。その結果、制御部44は、第3の冷房用推定モデル43Cを使用して現時点での冷媒不足率を算出する。
制御部44は、現在が冷房運転中でない場合(ステップS21:No)、すなわち暖房運転中の場合、第3の暖房用推定モデル43Fを使用して現在の運転状態量を代入し(ステップS23)、図8に示す処理動作を終了する。その結果、制御部44は、第3の暖房用推定モデル43Fを使用して現時点での冷媒不足率を算出する。
<回帰式の生成方法>
次に第1~第6の回帰式の生成に使用する特徴量について説明する。第1~第3の回帰式を使用する冷房運転時では、重回帰分析法により第1~第6の回帰式の生成を行う際に使用する特徴量として、例えば、冷媒過冷却度、外気温度、高圧飽和温度、圧縮機11の回転数、吸入温度等の各運転状態量を用いる。そして、これら各運転状態量は、シミュレーションにより得た結果を使用する。また、第4~第6の回帰式を使用する暖房運転時では、重回帰分析の特徴量として、例えば、吸入過熱度、外気温度、圧縮機11の回転数、室外機膨張弁14の開度等の各運転状態量を用いる。そして、これら各運転状態量は、シミュレーションにより得た結果を使用する。
具体的には、空気調和機1の設計段階で、一例として室内機3が4台運転している場合に外気温度を異ならせてシミュレーションを行い、特徴量と冷媒不足率との関係をシミュレーション毎に取得する。シミュレーションを行う際の条件としては、例えば、外気温度を20℃、25℃、30℃、35℃及び40℃と変化させる。なお、シミュレーションを行うに際しては、外気温度の他のパラメータを加えてもよく、例えば、室内機3の運転台数を1~4台と異ならせてもよい。
図9は、冷房運転時の室外熱交換機における冷媒出口側の冷媒過冷却度と冷媒不足率の関係についてのシミュレーション結果の一例を示す説明図である。図9に示す冷媒過冷却度は、冷媒不足率が0%~30%までは右肩下がりで減少し、冷媒不足率が30%から60%までは変化なしとなっている。つまり、冷房運転時に冷媒不足率0~30%である場合は、冷媒回路6における冷媒量の不足が冷媒過冷却度の値に大きな影響を与えるということである。なお、図9において冷媒不足率が60%以上であるときの冷媒過冷却度がマイナスの値となっているが、実際は冷媒過冷却度が0℃未満とはならないため、これはシミュレーションでのみ現れる値である。従って、冷媒不足率が60%以上であるときの冷媒過冷却度は、回帰式の生成に使用しない。
図10は、冷房運転時の吸入温度と冷媒不足率の関係についてのシミュレーション結果の一例を示す説明図である。図10に示す吸入温度は、冷媒不足率が40~70%のとき増加する傾向にある。つまり、冷房運転時の冷媒不足率が40~70%である場合は、冷媒回路6における冷媒量の不足が吸入温度の値に大きな影響を与えるということである。なお、図10において冷媒不足率が70%以上であるときの吸入温度はほとんど変化しないため、これ以上の冷媒不足率を吸入温度で推測するのは難しい。従って、冷媒不足率が70%以上であるときの吸入温度は、回帰式の生成に使用しない。
図11は、暖房運転時の室外機膨張弁14の開度と冷媒不足率の関係についてのシミュレーション結果の一例を示す説明図である。図11に示す室外機膨張弁14の開度は、冷媒不足率が0~20%の場合に変化するのに対し、冷媒不足率が20%を超えると、室外機膨張弁14の開度の変化が概ね無くなる。つまり、暖房運転時の冷媒不足率が0~20%である場合は、冷媒回路6における冷媒量の不足が室外機膨張弁14の開度に大きな影響を与えるということである。なお、上述したように、冷媒不足率が20%を超えると、室外機膨張弁14の開度の変化が概ね無くなる。従って、冷媒不足率が20%を超えたときの室外機膨張弁14の開度は、回帰式の生成に使用しない。
図12は、吸入過熱度と冷媒不足率の関係についてのシミュレーション結果の一例を示す説明図である。図12に示す吸入過熱度は、冷媒不足率が増加するときに吸入過熱度が大きくなる傾向にあり、冷媒不足率が30%を超えると吸入過熱度が大きく上昇する。つまり、暖房運転時の冷媒不足率が30%を超えると、冷媒回路6における冷媒量の不足が吸入過熱度に大きな影響を与えるということである。なお、図12において冷媒不足率が30%より小さいときの吸入過熱度の変化が緩やかであるため、これ以下の冷媒不足率を吸入過熱度で推測するのは難しい。従って、冷媒不足率が30%より小さい時の吸入過熱度は、回帰式の生成に使用しない。
<実施例1の効果>
実施例1の空気調和機1では、冷媒回路6に充填される冷媒の冷媒不足率の推定に関わる運転状態量を用いて重回帰分析法で生成された推定モデルと、現在の運転状態量とを用いて、冷媒不足率を推定する。推定モデルを生成する際に使用する運転状態量は、前述したように空気調和機1を様々な環境下で運転した場合を想定したシミュレーションによって求められたものであるため、この推定モデルを用いた冷媒不足率の推定は、いかなる環境下で行っても正確な推定が行える。その結果、冷媒回路6をデフォルト状態に整えることなく、現時点の冷媒不足率を推定できる。
空気調和機1に搭載される推定モデルは、複数の運転状態量の内、冷媒回路6に充填される冷媒の冷媒不足率の推定に与える影響の大きい運転状態量を用いて回帰分析法で予め生成される。この推定モデルでは、全ての運転状態量を使用するのではなく、推定モデルに与える影響の大きい運転状態量を選択して推定モデルを生成するため、高精度な推定モデルを生成できる。
空気調和機1は、影響の大きい同一種の運転状態量の内、運転状態量の変化量が所定範囲内の運転状態量のみを用いて回帰分析法で生成される。例えば、冷房運転時の冷媒不足率の推定モデルである第1の回帰式を生成する場合は、冷媒不足率が0%~30%のときの冷媒過冷却度を用いる。また、冷房運転時の冷媒不足率の推定モデルである第2の回帰式を生成する場合は、冷媒不足率が40%~70%のときの吸入温度を用いる。その結果、安定した高精度の推定モデルを生成できる。
空気調和機1は、冷房運転時の影響の大きい運転状態量として、凝縮器として機能する当該凝縮器出口の冷媒過冷却度、高圧飽和温度、低圧飽和温度及び圧縮機11の吸入温度を用いて回帰分析法で生成される。その結果、冷房運転時の高精度な冷房用推定モデルを生成できる。
空気調和機1は、暖房運転時の影響の大きい運転状態量として、圧縮機11の吸入過熱度及び膨張弁の開度を用いて回帰分析法で生成される。その結果、暖房運転時の高精度な暖房用推定モデルを生成できる。
空気調和機1は、冷房用推定モデルと、冷房運転時の現在の運転状態量とを用いて、冷房運転時の冷媒不足率を推定すると共に、暖房用推定モデルと、暖房運転時の現在の運転状態量とを用いて、暖房運転時の冷媒不足率を推定する。その結果、運転状態毎に異なる推定モデルを使用することで、冷媒不足率を高精度に推定できる。
空気調和機1は、第1の冷房用推定モデル43Aと第2の冷房用推定モデル43Bとをシグモイド曲線で繋いだ第3の冷房用推定モデル43Cに現在の運転状態量を代入することで、冷房運転時の冷媒不足率を高精度に推定できる。
空気調和機1は、第1の暖房用推定モデル43Dと第2の暖房用推定モデル43Eとをシグモイド曲線で繋いだ第3の暖房用推定モデル43Fに現在の運転状態量を代入することで、暖房運転時の冷媒不足率を高精度に推定できる。
空気調和機1は、最初に冷媒回路6に充填された冷媒の冷媒量からの冷媒不足率に応じて異なる複数の推定モデルを組み合わせた推定モデルを有する。その結果、空気調和機1は、冷媒不足率を正確に推定できる。
第1の冷房用推定モデル43Aは、運転状態量として、凝縮器として機能する当該凝縮器の冷媒過冷却度を用いて、冷媒不足率を推定する。その結果、空気調和機1は、冷房運転時に冷媒不足率を高精度に推定できる。
第2の冷房用推定モデル43Bは、運転状態量として、圧縮機11の吸入温度を用いて、冷媒不足率を推定する。その結果、空気調和機1は、冷房運転時に冷媒不足率を高精度に推定できる。
第1の暖房用推定モデル43Dは、運転状態量として室外機膨張弁14の開度を用いて、冷媒不足率を推定する。その結果、空気調和機1は、暖房運転時に冷媒不足率を高精度に推定できる。
第2の暖房用推定モデル43Eは、運転状態量として圧縮機11の吸入過熱度を用いて、冷媒不足率を推定する。その結果、空気調和機1は、暖房運転時に冷媒不足率を高精度に推定できる。
第3の冷房用推定モデル43Cは、第1の冷房用推定モデル43Aの推定結果と第2の冷房用推定モデル43Bの推定結果との間をシグモイド曲線で補間する。その結果、冷房運転時の冷媒不足率が0~70%の範囲で、正確な冷媒不足率を推定できる。
第3の暖房用推定モデル43Fは、第1の暖房用推定モデル43Dの推定結果と第2の暖房用推定モデル43Eの推定結果との間をシグモイド曲線で補間する。その結果、暖房運転時の冷媒不足率が0~70%の範囲で、正確な冷媒不足率を推定できる。
重回帰分析処理において、データフィルタリング処理及びデータクレンジング処理後の現在の運転状態量(センサ値)を推定モデルの各回帰式に代入する。本実施例では、推定モデルの各回帰式の生成は、シミュレーションで得た特徴量を用いており、シミュレーションで得た特徴量には異常な値や他と比べて突出して大きいあるいは小さい値は含まれていない。このような、異常値や突出値を含まない特徴量を用いて生成された推定モデルの各回帰式や各冷媒不足率算出式に、データフィルタリング処理及びデータクレンジング処理を行って異常値や突出値を除いた運転状態量を代入することで、より正確に冷媒不足率を推定できる。
尚、以上に説明した実施例では、空気調和機1の設計段階で各運転状態量のシミュレーション結果を求め、学習機能を有するサーバなどの端末にシミュレーション結果を学習させて得られた推定モデルを制御手段19が予め記憶している場合を例示した。これに代えて、空気調和機1との間を通信網110で接続するサーバ120が存在し、このサーバ120が第1~第6の回帰式を生成して空気調和機1に送信するようにしてもよい。この実施の形態につき、以下に説明する。