以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
<インクジェット記録装置の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、画像形成部2と、記録媒体供給部3と、記録媒体集積部4とを備えている。画像形成部2は、記録媒体5に画像を形成する部分である。記録媒体供給部3は、画像形成部2に記録媒体5を供給する部分である。記録媒体集積部4は、画像形成部2によって画像が形成された記録媒体5を集積する部分である。
(記録媒体供給部)
記録媒体供給部3は、収納トレイ31と、前段搬送部32と、送り出し部33とを備えている。収納トレイ31は、記録媒体5を収納するトレイである。前段搬送部32は、収納トレイ31から画像形成部2まで記録媒体5を搬送するものである。送り出し部33は、収納トレイ31に収納された記録媒体5を前段搬送部32へと送り出すものである。
前段搬送部32は、2つの搬送ローラ321,322と、第1の搬送ベルト323とを備えている。2つの搬送ローラ321,322のうち、いずれか一方は駆動ローラ、他方は従動ローラである。第1の搬送ベルト323は、2つの搬送ローラ321,322に掛け渡されている。第1の搬送ベルト323は、2つの搬送ローラ321,322の回転にしたがって周回移動する。また、第1の搬送ベルト323は、送り出し部33によって送り出された記録媒体5を載せて、画像形成部2へと搬送する。
(記録媒体集積部)
記録媒体集積部4は、格納トレイ41と、後段搬送部42とを備えている。格納トレイ41は、画像が形成された記録媒体5を集積して格納するトレイである。後段搬送部42は、画像形成部2から格納トレイ41まで記録媒体5を搬送するものである。
後段搬送部42は、複数のスプロケット421,422,423と、第2の搬送ベルト424と、複数の爪部425とを備えている。スプロケットの数は必要に応じて変更可能であるが、図1は、3つのスプロケット421,422,423が設けられた例を示している。3つのスプロケット421~423のうち、1つのスプロケット421は画像形成部2の内部に配置され、残り2つのスプロケット422,423は記録媒体集積部4の内部に配置されている。第2の搬送ベルト424は、3つのスプロケット421~423に掛け回されている。第2の搬送ベルト424は、画像が形成された記録媒体5を搬送するものである。複数の爪部425は、第2の搬送ベルト424上に記録媒体5を保持すると共に、格納トレイ41の上方まで記録媒体5を搬送したときに記録媒体5の保持を解除することにより、格納トレイ41に記録媒体5を格納するものである。
(画像形成部)
図2は、図1に示す画像形成部2の内部構成を示す概略図である。
図2に示すように、画像形成部2は、搬送ドラム21と、受け渡しドラム22と、インク吐出部23とを備えている。搬送ドラム21、受け渡しドラム22およびインク吐出部23は、外装部20に収容されている。外装部20は、遮光空間を形成している。この遮光空間は、紫外線硬化型のインクが、紫外線照射部52による紫外線の照射によって硬化されないよう、光を遮断する空間である。外装部20には、作業員が遮光空間に出入りするための扉(図示せず)が設けられている。
搬送ドラム21は、記録媒体5を搬送する搬送部の一例として設けられている。搬送ドラム21は、インク吐出部23を経由するように記録媒体5を搬送する。また、搬送ドラム21は、記録媒体5に画像を形成するために、記録媒体5をドラム表面に保持しながら搬送する。搬送ドラム21による記録媒体5の搬送は、搬送ドラム21が矢印方向に回転することによって行われる。なお、本実施形態においては、搬送ドラム21によって搬送部を構成しているが、本発明はこれに限らず、たとえば、図示しない搬送ベルトまたは搬送ローラによって搬送部を構成してもよい。
受け渡しドラム22は、記録媒体供給部3から画像形成部2へと搬送されてきた記録媒体5を受け取ると共に、受け取った記録媒体5を搬送ドラム21へと渡すものである。
インク吐出部23は、複数の記録ヘッド25と、複数のキャリッジ26とを備えている。本実施形態においては、一例として、記録ヘッド25と、キャリッジ26とが、6つずつ設けられている。記録ヘッド25は、インクを吐出するヘッドである。また、記録ヘッド25は、搬送ドラム21の全幅にわたって延在するライン式のヘッドである。記録ヘッド25が吐出するインクは、紫外線硬化型のインクであり、より具体的には、紫外線硬化型のゲルインクである。ゲルインクは、液状のインクにゲル化剤を添加して得られるものである。
キャリッジ26は、記録ヘッド25を支持するものである。キャリッジ26には、インク供給部27が設けられている。インク供給部27は、記録ヘッド25にインクを供給する部分である。複数の記録ヘッド25は、搬送ドラム21の表面(外周面)に対向するように配置されている。複数のキャリッジ26は、X方向に所定の間隔で並んで配置されている。X方向は、第1の方向に相当する。
搬送ドラム21の周囲には、上述した受け渡しドラム22、スプロケット421、複数の記録ヘッド25、および複数のキャリッジ26の他に、紫外線照射部52と、冷却ファン53と、第1の加熱ローラ54と、第2の加熱ローラ55とが配置されている。
紫外線照射部52は、搬送ドラム21の表面に紫外線を照射する部分である。紫外線照射部52は、複数の記録ヘッド25による画像の形成位置よりも記録媒体5の搬送方向の下流側に配置されている。ここで記述する「画像の形成位置」は、搬送ドラム21によって搬送される記録媒体5に対して記録ヘッド25がインクを付着させる位置であり、画像の記録位置とも呼ばれる。また、「記録媒体5の搬送方向」は、搬送ドラム21によって記録媒体5が搬送される方向である。
紫外線照射部52は、たとえば、紫外線照射ランプによって構成される。紫外線照射ランプは、搬送ドラム21の全幅にわたって延在し、搬送ドラム21によって搬送される記録媒体5に紫外線を照射する。記録ヘッド25が記録媒体5に付着させたインクは、紫外線の照射によって硬化する。冷却ファン53は、搬送ドラム21の表面を冷却するものである。冷却ファン53は、搬送ドラム21に空気を吹き付けることにより、搬送ドラム21の表面を冷却する。
第1の加熱ローラ54は、複数の記録ヘッド25による画像の形成位置よりも記録媒体5の搬送方向の上流側に配置されている。第1の加熱ローラ54は、画像を形成する前の記録媒体5を加熱するものである。これに対して、第2の加熱ローラ55は、搬送ドラム21の表面を加熱するものである。第2の加熱ローラ55は、搬送ドラム21による記録媒体5の搬送方向において、冷却ファン53の下流側に配置されている。
図3は、図1に示す画像形成部2の一部を示す概略図である。図3は、図1と比べて画像形成部2を見る方向が90度異なる。
図3に示すように、インク吐出部23は、プリント位置P1とメンテナンス位置P2との間で移動可能に設けられている。プリント位置P1は、第1の位置として設定される位置である。プリント位置P1は、インク吐出部23が搬送ドラム21と対向する位置に設定されている。インク吐出部23は、プリント位置P1に配置されているときに、画像を形成するためのインクを吐出する。メンテナンス位置P2は、第2の位置として設定される位置である。インク吐出部23は、メンテナンス位置P2に配置されているときに、作業員によってメンテナンスされる。メンテナンス位置P2は、プリント位置P1からずれた位置に設定されている。具体的には、メンテナンス位置P2は、プリント位置P1から記録媒体5の搬送方向と交差する方向にずれた位置に設定されている。記録媒体5の搬送方向と交差する方向は、図3の左右方向、すなわちY方向である。図3において、メンテナンス位置P2は、プリント位置P1から右方向にずれた位置に設定されている。インク吐出部23をメンテナンス位置P2に移動させた状態では、インク吐出部23が搬送ドラム21とは対向せず、搬送ドラム21から離れて配置される。
なお、プリント位置P1とメンテナンス位置P2との間でインク吐出部23を移動させる場合は、6つのキャリッジ26を1個ずつ移動させることもできるし、6つのキャリッジ26を複数個ずつ移動させることもできる。6つのキャリッジ26を複数個ずつ移動させる場合には、6つのキャリッジ26を同時に移動させる場合と、6つのキャリッジ26のうち任意に選択した2つ、3つ、4つまたは5つのキャリッジ26を同時に移動させる場合とが含まれる。プリント位置P1とメンテナンス位置P2との間でインク吐出部23を移動させるための構成は公知であるため、ここでは当該機構についての説明を省略する。
外装部20の内部には、メンテナンス桶60が設けられている。メンテナンス桶60は、インク吐出部23をメンテナンス位置P2に配置した場合に、メンテナンス位置P2でインク吐出部23の下方に位置するように設けられている。メンテナンス桶60は、メンテナンスに用いられる桶であり、ラック61に搭載されている。ラック61には、タンク62がセットされている。ラック61は、水平な棚板部61aを有するとともに、一対の側板63に固定されている。一対の側板63は、搬送ドラム21を回転可能に支持するもので、ラック61は、一方の側板63にねじ止め等によって固定されている。また、ラック61は、搬送ドラム21に対して位置決めされている。
タンク62は、メンテナンス位置P2でインク吐出部23から吐出されるインクを含む廃液を溜めておくためのタンクである。タンク62は、ラック61の棚板部61aに載せられている。タンク62は、廃液取り込み部62aを有している。廃液取り込み部62aは、タンク62の上部に設けられている。廃液取り込み部62aは、上向きに開口している。
図4は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置が備えるメンテナンス桶とこのメンテナンス桶を支持する支持部の構成を示す斜視図である。また、図5は、図4のA方向からメンテナンス桶とラックとを見た図である。図4および図5において、X方向は、水平方向に平行な方向であって、図2に示すX方向、すなわち複数のキャリッジ26の並び方向と平行な方向である。また、Y方向は、水平方向において、X方向と直交する方向であって、図2の奥行き方向と平行な方向である。また、Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向、すなわち鉛直方向である。
図4および図5に示すように、メンテナンス桶60は、平面視四角形に形成されている。メンテナンス桶60は、4つの側壁60aと、4つの底板60bと、1つの排液部60c(図5参照)とを備えている。各々の側壁60aは、鉛直に起立して配置されている。各々の側壁60aの高さ寸法H(図4参照)は、インク吐出部23のキャリッジ26をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させた場合でも、そのキャリッジ26に支持されている記録ヘッド25に側壁60aが接触しない寸法に設定されている。また、各々の側壁60aの高さ寸法Hは、メンテナンス位置P2で記録ヘッド25から吐出させたインクが底板60bの上面に当たって跳ね返ったときの跳ね返り高さよりも大きい寸法に設定されている。
各々の底板60bは、インクを含む廃液を排液部60cへと集めるために、水平面に対して傾いて配置されている。具体的には、各々の底板60bは、それぞれに対応する側壁60aとの境界部が最も高く、かつ、当該境界部から離れるにしたがって低くなるように、水平面に対して傾いて配置されている。各々の底板60bの上面は、廃液を受ける受け面60d(図4参照)を構成している。メンテナンス桶60には、受け面60dを加熱する加熱部69(図5参照)が付属している。加熱部69は、受け面60dによって受けたインクが、底板60bの傾斜によって沿って円滑に流れ落ちるように、受け面60dを加熱するものである。ここで、インクジェット記録装置1の制御部(図示せず)は、記録ヘッド25のクリーニングを実施する場合に、受け面60dの温度が第1の閾値温度よりも高くなるように、加熱部69を制御する。第1の閾値温度は、好ましくは、インクのゲル化温度に設定される。インクのゲル化温度は、インクの温度を高温から低温へと変化させる過程で、インクが液状からゲル状へと変化し始める温度である。インクのゲル化温度は、画像の形成に使用するインクの特性によって決まる。インクのゲル化温度は、たとえば、60度である。排液部60cは、4つの底板60bによって集められた廃液を排出する部分であって、下向きに開口している。排液部60cは、タンク62の廃液取り込み部62aの真上に配置されている。
ラック61の上部には、支持部70が設けられている。支持部70は、メンテナンス桶60を移動可能に支持するものである。支持部70は、Y方向の両側でメンテナンス桶60を支持している。本実施形態においては、一例として、支持部70がスライドレール71を用いて構成される。スライドレール71は、図6に示すように、第1レール部71a、第2レール部71bおよび第3レール部71cを備える3連式のレール構造を有している。第1レール部71aは、第2レール部71bよりもレール幅が広く、第2レール部71bをスライド自在に支持している。第2レール部71bは、第3レール部71cよりもレール幅が広く、第3レール部71cをスライド自在に支持している。スライドレール71は、第1レール部71a、第2レール部71bおよび第3レール部71cが互いにスライドすることにより、X方向に伸縮可能に構成されている。スライドレール71は、たとえば、オフィスのキャビネットやデスクなどに用いられるスライドレールと同様の構造を有する。
第1レール部71aは、ラック61の上部に固定され、第3レール部71cは、メンテナンス桶60に固定される。第1レール部71aは、たとえば、ねじ止め、接着、溶接等によってラック61に取り付けられている。第3レール部71cは、ブラケット72(図4および図5を参照)を介してメンテナンス桶60の側壁60aに固定されている。ブラケット72は、たとえば、金属製の板状部材、すなわち板金によって構成されている。ブラケット72は、たとえば、ねじ止め、接着、溶接等によってメンテナンス桶60(側壁60a)とスライドレール71(第3レール部71c)とに取り付けられている。
上記構成からなるスライドレール71を備える支持部70によってメンテナンス桶60を支持することにより、ラック61の上部でメンテナンス桶60をX方向に直線的に移動させることが可能となる。なお、支持部70は、スライドレールを用いた構成に限らず、メンテナンス桶60を移動可能なものであれば、どのような構成であってもよい。
メンテナンス桶60にはストッパー可動部64が取り付けられ、ラック61にはストッパー固定部65が取り付けられている。ストッパー可動部64およびストッパー固定部65は、メンテナンス桶60の移動後の位置を保持する保持部を構成するものである。「メンテナンス桶60の移動後の位置を保持する」とは、メンテナンス桶60をある位置から別の位置へと移動させた場合に、移動後の位置でメンテナンス桶60が動かないように、メンテナンス桶60の位置を保持することを意味する。
ストッパー可動部64は、L字形のプレート66を介してメンテナンス桶60の側壁60aに固定されている。ストッパー可動部64は、図7に示すように、ベース部64aと、操作部64bと、ピン部64cと、バネ64dとを備えている。ベース部64aは、プレート66に取り付けられる。操作部64bは、ピン部64cと一体構造になっている。操作部64bは、ピン部64cよりも大きな径で形成されている。ピン部64cは、横断面が円形のピン、すなわち丸ピンである。ピン部64cは、ベース部64aによって上下方向に移動自在に支持されている。バネ64dは、引っ張りコイルバネを用いて構成されている。バネ64dは、操作部64bを下方に付勢している。
一方、ストッパー固定部65は、図8に示すように、ラック61に設けられたアーム部61bに取り付けられている。アーム部61bは、X方向に突き出して配置され、このアーム部61bにねじ止め等によってストッパー固定部65が固定されている。ストッパー固定部65は、たとえば、金属製の板を断面略U字形に曲げ加工して得られるものである。ストッパー固定部65には、3つの貫通孔65a,65b,65cが設けられている。貫通孔の数は、必要に応じて増減可能である。3つの貫通孔65a,65b,65cのうち、貫通孔65bは、X方向において、貫通孔65aと貫通孔65cとの間に配置されている。各々の貫通孔65a,65b,65cの直径は、上述したピン部64cの直径よりも少し大きく設定されている。これにより、各々の貫通孔65a,65b,65cに対して、ピン部64cが挿入可能に構成されている。X方向におけるメンテナンス桶60の移動は、3つの貫通孔65a,65b,65cのうちのいずれか一つにピン部64cを挿入することによって規制される。このようにメンテナンス桶60の移動を規制した状態が、メンテナンス桶60の位置を保持した状態に相当する。本実施形態においては、ストッパー固定部65に3つの貫通孔65a,65b,65cが設けられているため、X方向の3箇所でメンテナンス桶60の位置を保持することが可能である。また、貫通孔の数を増やせば、より多くの箇所でメンテナンス桶60の位置を保持することが可能である。
ストッパー固定部65には、図7および図8に示すように、位置検知センサ67が取り付けられている。位置検知センサ67は、貫通孔65bの下方に配置されている。位置検知センサ67は、メンテナンス桶60の移動方向に相当するX方向において、メンテナンス桶60の位置を検知する位置検知部に相当するものである。本実施形態においては、X方向におけるメンテナンス桶60の位置が、予め決められた基準位置にあるときに、位置検知センサ67がオン状態となるように構成されている。位置検知センサ67は、たとえば、接触式センサであり、より具体的には、押しボタン式のセンサである。位置検知センサ67は、ボタン67aと復帰バネ(図示せず)とを有している。復帰バネは、ボタン67aを初期位置に復帰させるバネである。位置検知センサ67は、復帰バネのバネ力に抗してボタン67aが押された場合にオン状態となる。ボタン67aは、上下方向で貫通孔65bと対向するように配置されている。そして、ストッパー可動部64のピン部64cが貫通孔65bに挿入された場合に、ボタン67aがピン部64cにより押されて位置検知センサ67がオンする構成になっている。また、ストッパー可動部64のピン部64cが貫通孔65bに挿入されていない場合は、ボタン67aが復帰バネのバネ力により初期位置に復帰して位置検知センサ67がオフする構成になっている。
ここで、図9に示すように、ストッパー可動部64のピン部64cをストッパー固定部65の貫通孔65bに挿入した状態では、図10に示すように、メンテナンス桶60が基準位置Prに配置される。メンテナンス桶60を基準位置Prに配置すると、インク吐出部23の6つのキャリッジ26をメンテナンス位置P2に移動させた場合に、メンテナンス桶60の真上に6つのキャリッジ26が配置される。このため、各々のキャリッジ26が有する記録ヘッド25からインクを吐出させた場合、このインクはメンテナンス桶60に収容される。換言すると、メンテナンス桶60の基準位置Prは、6つの記録ヘッド25からインクを吐出させた場合に、全色のインクをメンテナンス桶60から外すことなく、メンテナンス桶60の受け面60dで各色のインクを受け止めることができる位置である。また、図8に示すように、ストッパー可動部64のピン部64cをストッパー固定部65の貫通孔65cに挿入した状態では、図11に示すように、メンテナンス桶60が基準位置PrよりもX1方向にずれた位置に配置される。また、図12に示すように、ストッパー可動部64のピン部64cをストッパー固定部65の貫通孔65aに挿入した状態では、図13に示すように、メンテナンス桶60が基準位置PrよりもX2方向にずれた位置に配置される。
なお、位置検知センサ67は、非接触式センサによって構成してもよい。また、位置検知部は、メンテナンス桶60の位置を検知可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。また、位置検知部は、X方向の複数の位置でメンテナンス桶60の位置を検知するものであってもよい。たとえば、本実施形態の場合、3つの貫通孔65a,65b,65cに対応して3つの位置検知センサ67を設けてもよい。
さらに、メンテナンス桶60には、取っ手68(図4および図5を参照)が取り付けられている。取っ手68は、U字形に形成されている。取っ手68は、X方向に面する側壁60aの外面にねじ止め等によって固定されている。また、取っ手68とストッパー可動部64は、同じ側壁60aに取り付けられている。
次に、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置1の動作について説明する。インクジェット記録装置1の動作には、画像形成のための動作と、メンテナンスのための動作とがある。
画像形成のための動作は、インク吐出部23をプリント位置P1に配置して行われる。
まず、画像形成の対象となる記録媒体5は、収納トレイ31から送り出し部33によって前段搬送部32へ送り出される。前段搬送部32では、記録媒体5が第1の搬送ベルト323によって搬送される。次に、記録媒体5は、受け渡しドラム22によって搬送ドラム21に受け渡される。
次に、記録媒体5は、搬送ドラム21の回転にしたがって搬送ドラム21の円周方向に搬送される。このとき、インク吐出部23に設けられている6つの記録ヘッド25のうち、画像の形成に用いるインクの色に対応する記録ヘッド25からインクが吐出される。たとえば、画像の形成に用いるインクの色が6色であれば、6つの記録ヘッド25からインクが吐出され、画像の形成に用いるインクの色が4色であれば、4つの記録ヘッド25からインクが吐出される。また、画像の形成に用いるインクの色が一色であれば、1つの記録ヘッド25からインクが吐出される。これにより、記録媒体5に画像が形成される。
次に、記録媒体5は、搬送ドラム21の回転にしたがって搬送されながら、紫外線照射部52による紫外線の照射位置を通過する。これにより、記録媒体5の画像形成面に付着しているインクが硬化する。次に、記録媒体5は、搬送ドラム21から第2の搬送ベルト424へと受け渡される。次に、記録媒体5は、第2の搬送ベルト424によって搬送された後、格納トレイ41に格納される。
以上の動作が、画像形成のための動作である。
メンテナンスのための動作は、インク吐出部23をメンテナンス位置P2に配置して行われる。インク吐出部23をメンテナンス位置P2に配置する場合は、6つのキャリッジ26のうちの全部または一部をメンテナンス位置P2に配置する。キャリッジ26をメンテナンス位置P2に配置する場合は、それに先立って、ストッパー可動部64のピン部64cをストッパー固定部65の貫通孔65bに挿入しておく。これにより、メンテナンス桶60が基準位置Prに配置される。
また、記録ヘッド25のクリーニングを実施するために、インク吐出部23をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させる場合は、すべてのキャリッジ26を同時にメンテナンス位置P2に移動させる。このとき、キャリッジ26の移動をキャリッジモータ(図示せず)の駆動によって行うものとすると、インクジェット記録装置1の制御部(図示せず)は、位置検知センサ67がオン状態になっている場合にのみ、キャリッジモータの駆動を許可するように制御する。たとえば、キャリッジモータの駆動を制御部によって制御する場合、この制御部は、位置検知センサ67がオン状態になっている場合にキャリッジモータの駆動を許可し、位置検知センサ67がオフ状態になっている場合にはキャリッジモータの駆動を禁止する。これにより、メンテナンス桶60が基準位置Prに配置されている場合にのみ、クリーニング目的で6つのキャリッジ26をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させることができる。キャリッジモータは、キャリッジ26を移動させるための駆動源(以下、「キャリッジ駆動源」という。)である。
上述のようにキャリッジ26をメンテナンス位置P2に移動させた場合、メンテナンス桶60は、図10に示すように、キャリッジ26の真下に配置される。そして、記録ヘッド25のクリーニングの実施時には、各々の記録ヘッド25がインクを吐出する。このとき、記録ヘッド25が吐出するインク、換言すると、画像の形成に使用されずに記録ヘッド25から吐き捨てられるインクは、メンテナンス桶60に収容される。メンテナンス桶60は、底板60bの受け面60dでインクを受ける。次に、インクは、底板60bの傾斜により受け面60dに沿って流れ落ち、排液部60cに達する。次に、インクは、排液部60cからタンク62の廃液取り込み部62aを通して、タンク62の内部へと流れ落ちる。これにより、記録ヘッド25をクリーニングするたびに、インクを含む廃液がタンク62に溜まる。
これに対し、記録ヘッド25の交換または調整(以下、「交換等」という。)を実施する場合、インクジェット記録装置1の制御部は、交換等の対象となる記録ヘッド25を支持しているキャリッジ26をキャリッジモータの駆動によってプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させる。こうしてキャリッジ26をメンテナンス位置P2に移動させたら、作業員は、交換等の対象となる記録ヘッド25の位置まで手を伸ばして作業する。このとき、図14に示すように、作業員100の立ち位置から見て遠い側の記録ヘッド25が交換等の対象になっている場合は、メンテナンス桶60が邪魔になって、作業員100の手が記録ヘッド25まで届かない、あるいは、手が届きにくいことがある。また、交換等の対象となる記録ヘッド25に作業員100の手が届いたとしても、記録ヘッド25の細部を目視で確認しにくかったり、交換等の作業がしにくかったりすることがある。
本実施形態においては、メンテナンス桶60が移動可能に設けられている。このため、図15に示すように、作業員100の立ち位置から見て遠い側の記録ヘッド25が交換等の対象になっている場合は、X1方向にメンテナンス桶60を移動させる。具体的には、作業員100は、ストッパー可動部64の操作部64bをつかんで上方に引き上げる。これにより、図16に示すように、ストッパー可動部64のピン部64cがストッパー固定部65の貫通孔65bから抜け出る。次に、作業員100は、片方の手で操作部64bを引き上げたまま、もう片方の手で取っ手68をつかんでメンテナンス桶60をX1方向に移動させる。ここでは一例として、メンテナンス桶60をX1方向に移動させているが、メンテナンス桶60を移動させる方向は、交換等のメンテナンス作業が容易に行える方向であればよく、X1方向に限定されるものではない。
上述のようにメンテナンス桶60を移動させると、ピン部64cの位置が貫通孔65bの位置からずれる。このため、操作部64bの引き上げを解除すると、ピン部64cの下端部はバネ64dのバネ力によってストッパー固定部65の上面に接触する。そして、ピン部64cの位置が貫通孔65cの位置に一致するまでメンテナンス桶60を移動させると、ピン部64cが貫通孔65cに挿入される。これにより、図11に示すように、メンテナンス桶60の位置が基準位置からX1方向にずれた位置で、メンテナンス桶60の移動が規制される。このため、交換等の対象になっている記録ヘッド25に対して、メンテナンス桶60を移動させた分だけ、作業員の立ち位置を近づけることができる。したがって、作業員の手が記録ヘッド25に簡単に届くようになる。よって、作業員は、記録ヘッド25のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
一方、上述のようにストッパー可動部64の操作部64bを引き上げた後、ピン部64cの位置が貫通孔65aの位置に一致するまでメンテナンス桶60をX2方向に移動させると、ピン部64cが貫通孔65aに挿入される。これにより、図13に示すように、メンテナンス桶60の位置が基準位置からX2方向にずれた位置で、メンテナンス桶60の移動が規制される。このため、X方向において作業員の立ち位置が反対側であっても、交換等の対象になっている記録ヘッド25に対して、メンテナンス桶60を移動させた分だけ、作業員の立ち位置を近づけることができる。したがって、作業員の手が記録ヘッド25に簡単に届くようになる。よって、作業員は、記録ヘッド25のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
以上説明したように、本発明の第1実施形態においては、メンテナンス桶60が移動可能に設けられている。このため、記録ヘッド25のメンテナンス作業を行うにあたってメンテナンス桶60が邪魔になる場合は、メンテナンス桶60を移動させることで、記録ヘッド25のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
また、本発明の第1実施形態においては、ストッパー可動部64とストッパー固定部65とによってメンテナンス桶60の移動を規制する構成になっている。このため、メンテナンス作業が容易に行える位置にメンテナンス桶60を移動させた場合に、その位置からメンテナンス桶60が移動しないように、メンテナンス桶60の位置を保持することができる。したがって、メンテナンス桶60の不用意な移動を抑制し、記録ヘッド25のメンテナンス作業を安全かつ確実に行うことができる。
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態と第1実施形態との相違点の一つは、メンテナンス桶60を手動で移動させるか自動で移動させるかという点にある。すなわち、上記第1実施形態においては、メンテナンス桶60を手動で移動させる構成であるのに対し、本第2実施形態においては、メンテナンス桶60を自動で移動させる構成を採用している。以下、本発明の第2実施形態について詳しく説明する。なお、本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様の構成部分に同じ符号を付し、重複する説明はできるだけ省略する。
図17は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。
図17に示すように、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置1は、制御部80を備えており、この制御部80に各種の制御対象部および情報入力部が接続されている。図17は、各種の制御対象部および情報入力部の一部を示している。
制御部80は、インクジェット記録装置1の動作を統括的に制御するものである。制御部80は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)とを有する。そして、制御部80は、ROMに格納された制御用のプログラムをCPUがRAMに読み出して実行することにより、各種の機能を実現する。その機能の一例として、制御部80は、位置検知部81と、第1の移動制御部82と、第2の移動制御部83と、ヘッド制御部84とを備えている。
位置検知部81は、メンテナンス桶60の移動方向においてメンテナンス桶60の位置を検知するものである。本第2実施形態において、メンテナンス桶60は、上記第1実施形態と同様にX方向に移動可能に設けられている。このため、位置検知部81は、X方向におけるメンテナンス桶60の位置を検知する。
第1の移動制御部82は、桶駆動源である桶移動用モータ29を介してメンテナンス桶60の移動を制御するものである。第1の移動制御部82は、記録ヘッド25の交換または調整を実施するための第1指令が操作表示部86によって発せられた場合に、メンテナンス桶60の移動を実施するようにキャリッジモータ28の駆動を制御する。
第2の移動制御部83は、インク吐出部23が有する6つのキャリッジ26の移動を制御するものである。本第2実施形態において、6つのキャリッジ26は、それぞれに対応するキャリッジモータ28の駆動により、プリント位置P1とメンテナンス位置P2との間を同時にまたは個別に移動可能な構成になっている。このため、第2の移動制御部83は、キャリッジ駆動源であるキャリッジモータ28を介して6つのキャリッジ26の移動を制御する。また、第2の移動制御部83は、記録ヘッド25のクリーニングを実施するための第2指令が操作表示部86によって発せられた場合に、位置検知部81によって検知されたメンテナンス桶60の位置が基準位置にあるか否かを判断する。そして、メンテナンス桶60の位置が基準位置にある場合にのみ、6つのキャリッジ26の移動を実施するようにキャリッジモータ28を駆動する。
ヘッド制御部84は、インク吐出部23が有する6つの記録ヘッド25を制御するものである。ヘッド制御部84は、記録媒体5に形成すべき画像データに基づいて、各々の記録ヘッド25の駆動を制御することにより、画像の形成に必要なインクを所定の記録ヘッド25から吐出させる。所定の記録ヘッド25は、画像データに基づいてヘッド制御部84が決定する。
制御部80には、制御の対象として、上述した前段搬送部32、送り出し部33、後段搬送部42の他に、複数のキャリッジモータ28と、桶移動用モータ29と、保持解除部43とが、電気的に接続されている。また、制御部80には、操作表示部86と、第1の温度センサ87と、第2の温度センサ88と、記憶部89と、通信部90とが、電気的に接続されている。
キャリッジモータ28は、キャリッジ26と1対1で対応するものである。本第2実施形態において、インク吐出部23は、6つのキャリッジ26と、6つのキャリッジモータ28とを有し、この点は上記第1実施形態と同様である。
桶移動用モータ29は、メンテナンス桶60を移動させるための桶駆動源の一例として設けられたものである。桶移動用モータ29は、たとえば、ステッピングモータによって構成される。ステッピングモータからなる桶移動用モータ29は、第1の移動制御部82から桶移動用モータ29へと与えられる駆動パルスにしたがって回転する。その際、桶移動用モータ29の回転方向は、駆動パルスの順序によって決まり、桶移動用モータ29の回転量(回転角)は、駆動パルスの数によって決まる。そこで、位置検知部81は、第1の移動制御部82から桶移動用モータ29へ与えられる駆動パルスに基づいて、メンテナンス桶60の位置をリアルタイムに検知する。
なお、本第2実施形態において、位置検知部81は、桶移動用モータ29に与えられる駆動パルスに基づいて、メンテナンス桶60の位置を検知するが、本発明はこれに限らない。たとえば、桶移動用モータ29の出力軸にロータリーエンコーダーを取り付け、位置検知部81は、ロータリーエンコーダーから出力される信号に基づいて、メンテナンス桶60の位置を検出してもよい。また、桶駆動源は、モータに限らず、たとえば、シリンダなどであってもよい。また、位置検知部81の構成としては、メンテナンス桶60の移動方向であるX方向に複数の位置検知センサを配置し、メンテナンス桶60の移動にともなう各位置検知センサのオンオフ状態の切り替わりに基づいて、メンテナンス桶60の位置を検知する構成であってもよい。
保持解除部43は、保持部による保持を解除するものである。保持部は、たとえば、上述した第1実施形態におけるストッパー可動部64およびストッパー固定部65によって構成される。これに対し、保持解除部43は、ストッパー可動部64の操作部64bをバネ64dの付勢力に抗して引き上げる電磁式のソレノイドを用いて構成される。保持解除部43は、ソレノイドに通電することにより、ストッパー可動部64のピン部64cをいずれかの貫通孔65a,65b,65cから引き抜く。保持解除部43の構成は、保持部による保持を解除可能なものであれば、どのような構成を採用してもよい。本実施形態において、「保持部による保持」とは、ストッパー可動部64のピン部64cが、ストッパー固定部65の3つの貫通孔65a,65b,65cのいずれかに挿入され、これによってメンテナンス桶60の移動が規制された状態をいう。また、「保持部による保持を解除する」とは、ストッパー可動部64のピン部64cが、ストッパー固定部65の3つの貫通孔65a,65b,65cのいずれかに挿入され状態のもとで、当該貫通孔からピン部64cを引き抜くこと、すなわちメンテナンス桶60をX方向に移動できる状態にすることを意味する。
操作表示部86は、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示部に、入力部としてのタッチセンサが重畳されたタッチパネルによって構成される。操作表示部86は、ユーザに対して各種の情報を表示すると共に、ユーザから各種の情報の入力を受け付ける。なお、操作表示部86は、表示部と操作入力部とが一体に構成されたものでもよいし、それらが別体に構成されたものでもよい。また、入力部は、タッチセンサに限らず、たとえば、ボタンやキーなどによって構成されていてもよいし、タッチセンサとボタン等とを組み合わせた構成になっていてもよい。
第1の温度センサ87は、第1の温度検知部に相当するものであって、メンテナンス桶60の受け面60dの温度を検知する。第1の温度センサ87は、受け面60dの温度を検知し、その検知結果を制御部80に入力する。これにより、制御部80は、受け面60dの温度をリアルタイムに把握することができる。
第2の温度センサ88は、第2の温度検知部に相当するものであって、キャリッジ26の温度を検知する。第2の温度センサ88は、各々のキャリッジ26の温度を個別に検知し、その検知結果を制御部80に入力する。これにより、制御部80は、各々のキャリッジ26の温度をリアルタイムに把握することができる。
記憶部89は、たとえば、不揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などによって構成される。記憶部89は、画像形成の対象となる画像データ等を記憶する。また、記憶部89は、制御部80がインクジェット記録装置1の各部の動作を制御する際に参照する各種の情報(電子データ)を記憶する。記憶部89に記憶される情報には、後述する第1の閾値温度に関する情報や第2の閾値温度に関する情報などが含まれる。
通信部90は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置(たとえば、パーソナルコンピュータなど)と通信可能に接続され、外部装置との間で各種のデータの送受信を行う。通信ネットワークは、たとえば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などである。第2の温度センサ88は、通信部90を介して通信ネットワークに接続されることにより、外部装置と各種のデータをやり取りする。また、制御部80は、たとえば、外部装置から送信されたページ記述言語(PDL:Page Description Language)を受信し、PDLに含まれる画像データに基づいて、搬送ドラム21、インク吐出部23などの動作を制御することにより、記録媒体5に画像を形成させる。
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置1の動作について説明する。インクジェット記録装置1の動作には、画像形成のための動作と、メンテナンスのための動作とがある。
画像形成のための動作は、上述した第1実施形態における動作を同様である。その際、各々の記録ヘッド25におけるインクの吐出動作は、ヘッド制御部84によって制御される。また、搬送ドラム21、インク吐出部23、前段搬送部32、送り出し部33、後段搬送部42などの動作は、制御部80によって制御される。
メンテナンスのための動作は、インク吐出部23をメンテナンス位置P2に配置して行われる。メンテナンス桶60は、インク吐出部23がプリント位置P1に配置されている場合に、基準位置に配置される。このため、インク吐出部23をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させる場合は、メンテナンス桶60が基準位置に存在する。
メンテナンスの作業を行う作業員は、操作表示部86を操作することにより、メンテナンスの内容と、メンテナンスの対象となる記録ヘッド25とを選択する。メンテナンスの内容には種々のものがあるが、本実施形態においては、一例として2つの内容を挙げる。一つは、記録ヘッド25のクリーニングであり、もう一つは、記録ヘッド25の交換または調整である。メンテナンスの内容が記録ヘッド25のクリーニングである場合は、すべての記録ヘッド25がメンテナンスの対象として自動的に選択される。この場合、作業員は、メンテナンス(クリーニング)の対象となる記録ヘッド25を選択する必要はない。ただし、本発明はこれに限らず、クリーニングの対象となる記録ヘッド25を作業員が選択可能な構成としてもよい。これに対して、メンテナンスの内容が記録ヘッド25の交換または調整である場合は、交換等の対象となる少なくとも1つの記録ヘッド25が作業員によって選択される。
こうしてメンテナンスの内容と、メンテナンスの対象となる記録ヘッド25とが作業員によって選択されると、操作表示部86は、記録ヘッド25の交換または調整を実施するための第1指令、または、記録ヘッド25をクリーニングするための第2指令を発する。具体的には、操作表示部86において作業員が選択したメンテナンスの内容が、記録ヘッド25の交換または調整であった場合は、操作表示部86は第1指令を発する。また、操作表示部86において作業員が選択したメンテナンスの内容が、記録ヘッド25のクリーニングであった場合は、操作表示部86は第2指令を発する。すなわち、操作表示部86は、各々の指令を発する発令部として機能する。
(第2指令を発する場合:メンテナンスの内容が記録ヘッド25のクリーニングである場合)
操作表示部86が第2指令を発した場合は、第2の移動制御部83は、位置検知部81によって検知されたメンテナンス桶60の位置が基準位置であるか否かを判断する。そして、メンテナンス桶60の位置が基準位置である場合は、第2の移動制御部83は、6つのキャリッジ26をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させるべく、6つのキャリッジモータ28を駆動する。これにより、クリーニングの対象となる6つの記録ヘッド25が、キャリッジ26とともにメンテナンス位置P2に配置される。このとき、メンテナンス桶60は、図10に示すように、キャリッジ26の真下、すなわち基準位置Prに配置される。そして、この配置状態にもとで、ヘッド制御部84は、記録ヘッド25のインク吐出動作を許可する。具体的には、ヘッド制御部84は、各々の記録ヘッド25を駆動することにより、各々の記録ヘッド25からインクを吐出させる。これにより、6つのキャリッジ26のすべてにおいて、記録ヘッド25のクリーニングが実施される。
これに対し、位置検知部81によって検知されたメンテナンス桶60の位置が基準位置Prではない、つまりメンテナンス桶60が基準位置Prとは異なる位置に存在する場合は、第2の移動制御部83は、6つのキャリッジ26をプリント位置P1に停止させたまま、操作表示部86にエラーを通知する。このエラーの通知を受けて、操作表示部86は、警告メッセージを表示する。この場合の警告メッセージは、メンテナンス桶60が基準位置に存在しないためにキャリッジ26を移動できない旨を作業員に知らせるメッセージである。この警告メッセージに代えて、または、警告メッセージと一緒に、警告音を発してもよいし、警告灯を点灯してもよい。あるいは、作業員が所持する携帯端末に対し、通信部90から警告メッセージを送信し、携帯端末の画面に警告メッセージを表示させてもよい。また、位置検知部81によって検知されたメンテナンス桶60の位置が基準位置ではない場合は、メンテナンス桶60の位置を基準位置Prへと戻すために、第1の移動制御部82が桶移動用モータ29を駆動する構成としてもよい。この構成を採用した場合は、作業員の手を煩わすことなく、メンテナンス桶60を自動で基準位置Prに復帰させた後、6つのキャリッジモータ28の駆動によって、6つのキャリッジ26をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させることができる。
(第1指令を発する場合:メンテナンスの内容が記録ヘッド25の交換または調整である場合)
操作表示部86が第1指令を発した場合は、制御部80は、加熱部69を停止状態に維持し、第2の移動制御部83は、位置検知部81によって検知されたメンテナンス桶60の位置が基準位置Prであるか否かを判断する。そして、メンテナンス桶60の位置が基準位置Prである場合は、第2の移動制御部83は、メンテナンス(交換または調整)の対象となる1つまたは複数のキャリッジ26をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させるべく、対応するキャリッジモータ28を駆動する。これにより、交換または調整の対象となる記録ヘッド25が、キャリッジ26とともにメンテナンス位置P2に配置される。なお、位置検知部81によって検知されたメンテナンス桶60の位置が基準位置Prではない場合は、上記同様に操作表示部86が警告メッセージを表示したり、第1の移動制御部82が桶移動用モータ29を駆動してメンテナンス桶60を自動で基準位置Prに復帰させたりすればよい。
上述のようにメンテナンス(交換または調整)の対象となる記録ヘッド25をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動させた後は、第1の移動制御部82は、交換等の対象となる記録ヘッド25の位置に応じて、メンテナンス桶60の移動を実施するように、桶移動用モータ29を駆動する。このとき、メンテナンス桶60の移動は、必ず実施してもよいし、必要に応じて実施してもよい。メンテナンス桶60の移動を常に実施する場合は、予め決められた作業員の立ち位置から見て、交換等の対象となる記録ヘッド25が、メンテナンス桶60のちょうど真上になるように、桶移動用モータ29を駆動すればよい。また、メンテナンス桶60の移動を必要に応じて実施する場合は、予め決められた作業員の立ち位置から見て、交換等の対象となる記録ヘッド25の位置が遠い場合に、桶移動用モータ29の駆動によってメンテナンス桶60を移動させればよい。メンテナンス桶60の移動の要否は、予め決めておくとよい。たとえば、作業員の立ち位置から見た場合に、最も遠い側から数えて2つ目または3つ目までの記録ヘッド25を対象に交換等のメンテナンス作業を行う場合は、第1の移動制御部82は、メンテナンス桶60の移動が必要であると判断し、それ以外は、メンテナンス桶60の移動が不要であると判断する。これにより、メンテナンス桶60の無用な移動を抑制することができる。
ここで、第1の移動制御部82は、桶移動用モータ29の駆動によってメンテナンス桶60を移動させる前に、受け面60dの温度を確認する。受け面60dの温度は、第1の温度センサ87によって検知されるため、第1の移動制御部82は、第1の温度センサ87の検知結果を基に、受け面60dの温度を確認する。そして、第1の移動制御部82は、受け面60dの温度が第1の閾値温度以上であれば、待ち状態となる。待ち状態は、受け面60dの温度が下がるのを待つ状態である。また、第1の移動制御部82は、受け面60dの温度が第1の閾値温度よりも低い場合に、メンテナンス桶60の移動を実施するように、桶移動用モータ29を駆動する。第1の閾値温度については、上記第1実施形態で述べたとおりである。
また、第1の移動制御部82が桶移動用モータ29の駆動によってメンテナンス桶60を移動させる場合は、それに先立って、制御部80は、キャリッジ26の温度が第2の閾値温度よりも低いか否かを確認する。第2の閾値温度は、上記第1の閾値温度と同じ条件、すなわちインクのゲル化温度に設定すればよい。制御部80は、キャリッジ26の温度が第2の閾値温度よりも低い場合に、保持部による保持を解除するように保持解除部43を動作させる。具体的には、上記のソレノイドへの通電によって保持解除部43を動作させる。これにより、ストッパー可動部64のピン部64cがストッパー固定部65の貫通孔65bから引き抜かれる。このため、保持部による保持が解除される。
このように、保持部による保持が解除されると、第1の移動制御部82は、桶移動用モータ29の駆動によってメンテナンス桶60を移動させる。その際、保持解除部43は、ピン部64cの位置が貫通孔65bの位置からずれた後、ソレノイドへの通電を遮断する。そうすると、ピン部64cの下端がストッパー固定部65の上面に接触しながら、メンテナンス桶60がX1方向(図11参照)またはX2方向(図13参照)に移動する。そして、ピン部64cの位置が貫通孔65cの位置に一致すると、ピン部64cがバネ64dの付勢力によって貫通孔65cに挿入され、ピン部64cの位置が貫通孔65aの位置に一致すると、ピン部64cがバネ64dの付勢力によって貫通孔65aに挿入される。これにより、図11または図13に示すように、メンテナンス桶60の位置が基準位置PrからX1方向またはX2方向にずれた位置で、メンテナンス桶60の移動が規制される。このため、交換等の対象になっている記録ヘッド25に対して、メンテナンス桶60を移動させた分だけ、作業員の立ち位置を近づけることができる。したがって、作業員の手が記録ヘッド25に簡単に届くようになる。よって、作業員は、記録ヘッド25のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
以上説明したように、本発明の第2実施形態においては、メンテナンス桶60が移動可能に設けられると共に、メンテナンス桶60の移動が自動で行われる構成になっている。このため、記録ヘッド25のメンテナンス作業を行う場合は、作業員が、メンテナンスの内容と、メンテナンスの対象となる記録ヘッド25とを、操作表示部86を用いて選択することにより、記録ヘッド25のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
また、本発明の第2実施形態において、第1の移動制御部82は、操作表示部86によって第1指令が発せられた場合に、メンテナンス桶60の移動を実施するように桶移動用モータ29を駆動する。このため、作業員の手を煩わすことなく、メンテナンス桶60を移動させることができる。
また、本発明の第2実施形態において、第1の移動制御部82は、操作表示部86によって第2指令が発せられた場合に、位置検知部81によって検知されたメンテナンス桶60の位置が基準位置Prである場合にのみ、6つのキャリッジ26をプリント位置P1からメンテナンス位置P2へと移動するようにキャリッジモータ28を駆動する。このため、キャリッジ26と一緒にメンテナンス位置P2に移動させた記録ヘッド25から吐出するインクまたは当該記録ヘッド25から垂れ落ちるインクを、メンテナンス桶60によって確実に受け止めることができる。
また、本発明の第2実施形態において、第1の移動制御部82は、第1の温度センサ87によって検知された受け面60dの温度が第1の閾値温度よりも低い場合に、メンテナンス桶60の移動を実施するように桶移動用モータ29を駆動する。これにより、メンテナンス桶60の受け面60dに付着したインクがゲル化した状態、すなわちインクの粘度が高い状態で、メンテナンス桶60の移動が行われるため、メンテナンス桶60の移動中または移動後に排液部60cからインクが垂れ落ちることを抑制できる。
また、本発明の第2実施形態において、保持解除部43は、第2の温度センサ88によって検知されたキャリッジ26の温度が第2の閾値温度よりも低い場合に、保持部による保持を解除する。これにより、メンテナンス位置P2にキャリッジ26を移動させた場合に、このキャリッジ26が支持する記録ヘッド25からインクが垂れ落ちにくい状況下で、メンテナンス桶60を移動させることができる。このため、メンテナンス位置P2において、記録ヘッド25から垂れ落ちたインクが、タンク62以外の位置に付着することを抑制できる。
<変形例等>
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件、あるいは、その構成要件の組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
たとえば、上記実施形態においては、インク吐出部23における記録ヘッド25およびキャリッジ26の数を6つとしたが、本発明はこれに限らず、記録ヘッド25およびキャリッジ26の数は、6つより少なくてもよいし、6つより多くてもよい。
また、上記実施形態においては、スライドレール71を用いて支持部70を構成することにより、メンテナンス桶60が直線的に移動する方式となっているが、メンテナンス桶60の移動は、直線的な移動に限らない。たとえば、メンテナンス桶60の移動は、回転移動や旋回移動などであってもよい。すなわち、メンテナンス桶60の移動方式は、特定の方式に限定されるものではない。
また、上記実施形態においては、ラック61上でメンテナンス桶60が移動する構成を採用したが、本発明はこれに限らず、メンテナンス桶60がラック61と共に移動する構成を採用してもよい。具体的には、たとえば、一対の側板63からラック61を分離させて、ラック61の下部にキャスター等を取り付けることにより、メンテナンス桶60とラック61とを一体に移動可能な構成を採用してもよい。ただし、固定したラック61上でメンテナンス桶60が移動する構成を採用すれば、メンテナンス桶60がラック61と共に移動する構成を採用する場合に比べて、ラック61が他の部材と干渉することを回避できるという利点がある。
また、上記実施形態においては、6つのキャリッジ26の並び方向と平行な方向であるX方向にメンテナンス桶60が移動可能な構成を採用したが、本発明はこれに限らず、たとえば、搬送ドラム21による記録媒体5の搬送方向と交差(直交)する方向、すなわち図4におけるY方向にメンテナンス桶60が移動可能な構成であってもよい。また、メンテナンス桶60が移動可能な方向は、鉛直下方であってもよいし、それ以外の方向であってもよい。すなわち、メンテナンス桶60の移動方向は、特定の方向に限定されるものではない。
また、メンテナンス桶60を移動させる目的は、記録ヘッド25のクリーニングや部品交換などのメンテナンスに限らず、他の目的であってもよい。すなわち、メンテナンス桶60を移動させる目的は、特定の目的に限定されるものではない。
また、本明細書においては、「平行」および「直交」などの用語を使用したが、各々の用語は、厳密な「平行」および「直交」のみを意味する用語ではなく、厳格な意味での「平行」および「直交」を含み、かつ、各構成要素がそれぞれの機能を発揮し得る範囲において「略平行」および「略直交」の意味をも含む用語である。