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JP7452412B2 - 拡散経路の探索方法 - Google Patents
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JP7452412B2 - 拡散経路の探索方法 - Google Patents

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Description

本発明は、拡散経路の探索方法に関する。
各種材料について更なる性能向上を目的として、新規材料の探索や、物質を構成する元素の一部を置換する置換元素の探索等が盛んに行われている。
上述のように新規材料や、置換元素等の探索を行う上で、目的とする物質の結晶内において、目的とする反応、機能等に影響を与える原子がどのような経路を通って移動、拡散するかを正確に把握することが好ましい。
しかしながら、結晶内は元素が密に詰まっていることが多く、結晶を構成する原子間には僅かな隙間しかないように見える。このため、拡散経路を調べたい原子について、原子半径やイオン半径、van der Waals半径で原子の大きさを見積もると、結晶内の複数の隙間の大きさを比較して、該原子の拡散経路を特定することは困難であった。
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、結晶内における原子の拡散経路を効率的に探索することができる拡散経路の探索方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
拡散経路探索に用いる結晶に含まれる、複数の原子の位置を設定する初期構造設定工程と、
前記初期構造設定工程で位置を設定した、複数の前記原子を用いて分子動力学計算を行う計算工程と、
前記計算工程で得られた、複数の前記原子の座標データについてウェーブレット解析を行い、複数の前記原子が動きやすい方向を求める分析工程と、
前記分析工程の結果から、複数の前記原子が動きやすい方向に位置する構造モデルを複数作成する構造モデル作成工程と、
前記構造モデル作成工程で作成した複数の前記構造モデルから、原子の拡散経路を探索する拡散経路探索工程と、を有する拡散経路の探索方法を提供する。
本発明の一態様によれば、結晶内における原子の拡散経路を効率的に探索することができる拡散経路の探索方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係るシミュレーション装置のハードウェア構成図である。 本発明の実施形態に係るシミュレーション装置の機能を示すブロック図である。 実施例1において拡散経路の探索を行ったLiMnの初期構造を示す模式図である。 実施例1において求めたLiMnのLi原子の拡散経路を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
本実施形態の拡散経路の探索方法は、以下の工程を有することができる。
拡散経路探索に用いる結晶に含まれる、複数の原子の位置を設定する初期構造設定工程。
初期構造設定工程で位置を設定した、複数の原子を用いて分子動力学計算を行う計算工程。
計算工程で得られた、複数の原子の座標データについてウェーブレット解析を行い、複数の原子が動きやすい方向を求める分析工程。
分析工程の結果から、複数の原子が動きやすい方向に位置する構造モデルを複数作成する構造モデル作成工程。
構造モデル作成工程で作成した複数の構造モデルから、原子の拡散経路を探索する拡散経路探索工程。
本発明の発明者は、結晶内における原子の拡散経路の効率的な探索方法について鋭意検討を行った。原子レベルの大きさで結晶構造を見ると、原子が密に詰まっている。しかし、原子が協奏的に動くと結晶内で過渡的な空間が形成され、拡散経路となる場合が多い。そこで、原子集団の揺らぎを複数の特徴的な動きに変換してこの動きを解析することで、特定の現象を見出すことが可能となる。
そこで、本実施形態の拡散経路の探索方法は、分子動力学法の結果から、ウェーブレット解析を用いて結晶内の複数の原子の動きを解析する。これにより、複数の原子が動きやすい方向を導き出し、該動きやすい方向に原子を配置した構造モデルから拡散経路を探索することで、効率的に拡散経路を導き出せることを見出し、本発明を完成させた。
各工程について以下に説明する。
(初期構造設定工程)
初期構造設定工程では、拡散経路探索に用いる結晶に含まれる、複数の原子の位置を設定することができる。すなわち、計算工程で用いる結晶が有する原子の初期座標を設定できる。
初期構造設定工程において、拡散経路探索に用いる結晶に含まれる複数の原子の位置を設定する具体的な方法は特に限定されない。例えば実験的に求めた、もしくは文献等に開示されている、該結晶の結晶構造に基づいて各原子の原子配置を設定し、初期構造とすることができる。
初期構造設定工程において設定する初期構造には、拡散経路の探索を行う原子である拡散原子が含まれていても良く、含まれていなくても良い。すなわち、拡散原子を除いた骨格構造のみであっても良い。本実施形態の拡散経路の探索方法では、拡散原子以外の原子の移動により形成される空間の大きさから拡散経路を探索するため、拡散原子を含まない状態の結晶について計算、探索を行っても、その結果に大きな差異がないためである。
(計算工程)
計算工程では、初期構造設定工程で位置を設定した、複数の原子を用いて分子動力学計算を行うことができる。
分子動力学計算は、原子の物理的な動きのコンピューターシミュレーション手法であり、ニュートンの運動方程式を数値的に解くことにより、原子の位置の時間発展を求めることができる。従って、計算工程を実施することで、初期構造設定工程で設定した複数の原子の座標の時系列変化を求めることができる。
分子動力学計算では、原子と原子間相互作用の情報は、ポテンシャルエネルギーを記述するための関数形と、そのパラメータセット(力場)で表される。
計算工程において分子動力学計算で用いる力場の種類は特に限定されるものではなく、各種力場を用いることができる。例えば金属/合金系ではEAMやMEAM等、無機化合物系ではBuckingham、BKS、Clay-FF、CVFF_aug等、半導体系ではTersoff等、有機化合物系ではPCFF、Compass、MMFF、OPLS-AA、AMBER、CHARMM、UFF等を用いることができる。また、分極力場であるX-Pol、AMBER分極力場、CHARMM分極力場等や、反応力場であるReaxFF等の既存の力場や、必要に応じて自作した力場から選択された力場を用いることができる。
既存の力場では対象となる原子の電荷が規定されていない場合がある。その場合、RESP(Restrained ElectroStatic Potential)電荷やAM1-BCC(Bond Charge Correction)電荷等を用いることもできる。
分子動力学計算に用いるプログラム(ソフトウェア)についても特に限定されないが、例えば、LAMMPSやDL_POLY、Gromacs(Groningen Machine for Chemical Simulations)、AMBER、CHARMM、NAMD等の既存のプログラムや自作のプログラムから選択されたプログラムを用いることができる。
分子動力学計算を行う際の設定環境としては、例えば真空中や、溶媒が含まれる場合には周期境界条件下とすることができる。
分子動力学計算を行う際のニュートンの運動方程式を解くための数値積分法についても特に限定されないが、例えばベルレ法や、速度ベルレ法、Leap-frog法、予測子-修飾子法等から選択された方法を用いることができる。
分子動力学計算を行う時間幅は特に限定されるものではないが、結晶を構成する複数の原子の動きやすい方向が把握でき、かつ計算コストを抑制できるように選択することが好ましい。分子動力学計算を行う時間幅としては、例えば0.5fs以上2fs以下とすることができる。
また、温度の制御方法としても特に限定されないが、例えば、速度スケーリング法、Nose-Hoover熱浴法、Nose-Hoover chain法、Berendsen熱浴法、Andersen熱浴法、Langevin動力学法等から選択された方法を用いることができる。
周期境界条件下における圧力の制御方法についても特に限定されないが、例えば、Berendsen法、Parinello-Rahman法等から選択された方法を用いることができる。
静電相互作用やvan der Waals相互作用といった長距離相互作用の計算にはカットオフ法を用いることができる。特に、周期境界条件下での静電相互作用の計算にParticle-Mesh Ewald法や多重極展開法等を用いることができる。
計算工程における分子動力学計算は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の各種記憶媒体、ディスプレイ等の出力装置、キーボード等の入力装置、各種周辺機器等を備えた通常のコンピューターシステムを用いて実施することができる。なお、コンピューターシステムとしては、例えばネットワークサーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ等が挙げられる。
具体的には、例えば記憶媒体等に既述の分子動力学計算のプログラムを格納しておき、係るプログラムをCPUにより実行すると共に、RAM等の記憶媒体に格納された、またはキーボード等の入力装置から入力された初期構造や、条件を読み込むことにより実現することができる。
(分析工程)
分析工程では、計算工程で得られた、複数の原子の座標データについてウェーブレット解析を行い、複数の原子が動きやすい方向を求めることができる。
ウェーブレット解析は周波数解析の手法の一つであり、時間と周波数にかかわる信号情報を同時に抽出できる解析手法である。ウェーブレットとは「さざなみ」と訳され、時間的な流れの中で生成・消滅する一時的な波である。任意の時系列データをウェーブレットの和として表現するのがウェーブレット変換である。よく比較されるフーリエ変換は、任意の時系列データを無限に続く恒久的な波の和として表現する。ウェーブレット変換は不規則な変動を表すデータの解析に有効な方法である。以下にウェーブレット変換について説明する。
時刻tによって変化する信号f(t)があるとする。信号f(t)に対してフーリエ変換を行うとスペクトルに関する情報、すなわち周波数に関する情報は得られるが、時間に関する情報は失われてしまう。そこで考案されたのが窓フーリエ変換である。これは、対象を経時的に解析するために信号の一部を「窓関数」を用いて切り出し、この窓をずらしながら信号のスペクトルを次々に解析する。しかし、一般に周波数の分解能は窓関数のサイズに反比例するため、決まったサイズの窓関数を用いる窓フーリエ変換では様々な周波数に対する解像度が一定にならない。
これに対して、ウェーブレット変換はマザーウェーブレットΨ(t)という基底関数を拡大縮小・平行移動させるウェーブレット関数を用いることで、各々の周波数に合わせた時間幅に適応して解析を行うことが可能となり、周波数に対する解像度が一定となる。ウェーブレット関数は伸張と位置を決める2つの実数パラメータa、bを用いて、以下の式(1)のように定義される。
Figure 0007452412000001

ウェーブレット変換でのウェーブレット係数W(a,b)は、対象となる信号f(t)とウェーブレット関数の内積で以下の式(2)のように定義される。
Figure 0007452412000002

式(2)中のW(a,b)は、t=bにおいてf(t)の中にΨa,b(t)の成分がどれだけ含まれるかを表す。
ウェーブレット変換には連続ウェーブレット変換と離散ウェーブレット変換がある。連続ウェーブレット変換で用いられるマザーウェーブレットは、主に、Mexican Hat、Meyer wavelet、Morlet waveletなどがある。各マザーウェーブレットで計算速度や時間-周波数の各領域で得られる情報などの違いがあるが、どのデータにどのマザーウェーブレットが適するかの一般的な判断基準は明らかではなく、対象毎に判断することになる。本実施形態の拡散経路の探索方法では、以下の式(3)で定義されるMorlet waveletを用いることができる。
Figure 0007452412000003

式(3)中のσは窓関数の窓の中に入っている波の数を表す。ウェーブレット変換では周波数に合わせた解析が可能であるため、振幅に合わせて周波数が変化するような非調和的な動きの解析も対象となる。
前述のウェーブレット係数W(a,b)では、tの範囲が-∞から∞である。しかし、実際に解析に用いるデータは有限の幅をもつ。このため、境界付近のデータの信頼性は低くなることから、解析時には時系列の端の部分は取り除くことが好ましい。また、一般に有限の幅のデータ解析では、低周波数は境界の影響を特に受け、高周波数では1つの波の中にデータ数が少なく離散的になり、データの信頼性が低くなる。そのため、低周波数と高周波数と取り除いた部分を用いて解析を行うことが好ましい。
ここで、N個の物体の集まりから位置の時系列データq(t)(n=0,・・・,3N)を得たとする。初めにウェーブレット変換を各自由度に対して行い、変換データq´n(t,ωl)、ωl=2πl/Tを得る。ここで、Tは時系列データの長さであり、実際の計算では連続ウェーブレット変換をM個の離散的な時系列データで近似している。また、上記の理由から、周波数ωlの範囲を、l=M1,・・・,M2 (0<M1<M2≦(M/2)-1)、および、l=M-M2,・・・,M-M1としたローパスフィルタを施す。以上のウェーブレット成分を用いて、行列A={An,l}を作成する。上記の周波数内にある場合はAn,l=q´n(t,ωl)となり、それ以外は0となる。
分析工程では、原子が動きやすい方向、すなわち原子が大きく動く方向を求めることが好ましい。そして、一般に遅い運動は大きな振幅をもつ、すなわちゆっくりと大きく動く。ウェーブレット変換で得られた時系列データからゆっくりとした動きを取り出すために、以下の式(4)で定義される特異値分解を用いる。
Figure 0007452412000004

行列Aは上記の通り、あるタイムステップにおける時系列データの対象物の自由度を行成分に、周波数を列成分に持つ。Aの左特異ベクトルUは時系列データの空間での動きの特徴を示す。また、右特異ベクトルVは周波数での振幅の特徴を表し、Σは振幅を表す。
ある振幅に対応するU、Vの列ベクトルが、それぞれ、その振幅をもつ空間の動きと周波数の特徴を表す。Uの列ベクトル方向に信号を射影することで、その方向の動的性質が得られる。
上述のように、分析工程では、計算工程で得られた複数の原子の座標データについてウェーブレット解析を行うことで、結晶を構成する原子の動的性質を解析できる。分析工程では、原子が動きやすい方向、すなわち原子が大きく動く方向を求めるため、例えば大きな特異値を有する左特異ベクトルを求め、該左特異ベクトルへ射影した射影トラジェクトリを算出できる。
(構造モデル作成工程)
構造モデル作成工程では、分析工程の結果から、複数の原子が動きやすい方向に位置する構造のモデルを複数作成することができる。
具体的には例えば、初期構造設定工程で設定した複数の原子の座標を、分析工程で算出した、各原子が動きやすい方向に位置を変化させた構造モデルを、その移動距離等を変え、複数作成することができる。
本実施形態の拡散経路の探索方法では、拡散原子の拡散経路を探索することを目的とする。このため、構造モデル作成工程では、拡散経路となりうる、結晶を構成する少なくとも一部の原子が大きく振幅する場合の構造モデルを作成することが好ましい。そこで、分析工程で得られた結果のうち、大きな特異値をもつ左特異ベクトル方向へ原子を動かした場合の構造モデルを作成することが好ましい。
(拡散経路探索工程)
拡散経路探索工程では、構造作成工程で作成した複数の構造モデルから、拡散経路の探索を行う原子、すなわち拡散原子の拡散経路を探索することができる。具体的には例えば、作成した複数の構造モデルを比較し、拡散原子以外の結晶を構成する原子について、原子間距離が拡散原子の原子半径よりも拡がっている部分を拡散経路として認定することができる。
以上に説明した本実施形態の拡散経路の探索方法によれば、分子動力学計算の結果を基にウェーブレット解析を用いて原子の動きやすい方向を導き出し、該方向に動かした構造モデルを用いて拡散経路の探索を行っている。このため、原子が平均位置に存在する実験等で得られる静的な結晶構造からでは見出すことが困難であった拡散経路を、効率的に探索することができる。
また、上述のように分子動力学計算結果から、原子の揺らぎを反映させた構造モデルを使用して拡散経路探索を行うため、より現実に近い構造での拡散経路の探索が可能になる。
[シミュレーション装置]
本実施形態のシミュレーション装置は、結晶内における原子の拡散経路を効率的に探索するためのシミュレーション装置である。このため、拡散経路探索装置ともいえ、以下の部材を有することができる。
拡散経路探索に用いる結晶に含まれる、複数の原子の位置を設定する初期構造設定部。
初期構造設定部で位置を設定した、複数の原子を用いて分子動力学計算を行う計算部。
計算部で算出した、複数の原子の座標データについてウェーブレット解析を行い、複数の原子が動きやすい方向を求める分析部。
分析部の結果から、複数の原子が動きやすい方向に位置する構造モデルを複数作成する構造モデル作成部。
構造モデル作成部で作成した複数の構造モデルから、原子の拡散経路を探索する拡散経路探索部。
図1に示したハードウェア構成図に示すように、本実施形態のシミュレーション装置10は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)12やROM(Read Only Memory)13と、補助記憶装置14と、入出力インタフェース15と、出力装置である表示装置16等を含むコンピューターシステムとして構成できる。これらは、バス17で相互に接続されている。なお、補助記憶装置14や表示装置16は、外部に設けられていてもよい。
CPU11は、シミュレーション装置10の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU11は、ROM13または補助記憶装置14に格納された、例えば後述するプログラム(シュミレーションプログラム)を実行して、分子動力学計算や、ウェーブレット解析、拡散経路の探索等を行うことができる。
RAM12は、CPU11のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
ROM13は、プログラム(シュミレーションプログラム)等を記憶することができる。
補助記憶装置14は、SSD(Solid State Drive)や、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、シミュレーション装置の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納できる。
入出力インタフェース15は、タッチパネル、キーボード、表示画面、操作ボタン等のユーザインタフェースと、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとの双方を含む。
表示装置16は、モニタディスプレイ等である。表示装置16では、解析画面が表示され、入出力インタフェース15を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
図1に示したシミュレーション装置10の各機能は、例えばRAM32やROM33等の主記憶装置または補助記憶装置14からプログラム(シミュレーションプログラム)等を読み込ませ、CPU11により実行することにより、RAM12等におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うと共に、入出力インタフェース15および表示装置16を動作させることで実現できる。
図2に、本実施形態のシミュレーション装置10の機能ブロック図を示す。
図2に示すように、シミュレーション装置10は、受付部21、処理装置22、出力部23を有することができる。これらの各部は、シミュレーション装置10が有するCPU、記憶装置、各種インタフェース等を備えたパーソナルコンピュータ等の情報処理装置において、CPUが予め記憶されている例えば後述するシミュレーション方法や、プログラムを実行することでソフトウェアおよびハードウェアが協働して実現される。
各部の構成について以下に説明する。
(A)受付部
受付部21は、処理装置22で実行される処理に関係するユーザーからのコマンドやデータの入力を受け付ける。受付部21としてはユーザーが操作を行い、コマンド等を入力するキーボードやマウス、ネットワークを介して入力を行う通信装置、CD-ROM、DVD-ROM等の各種記憶媒体から入力を行う読み取り装置などが挙げられる。
(B)処理装置
処理装置22は、初期構造設定部221、計算部222、分析部223、構造モデル作成部224、拡散経路探索部225を有することができる。
(B-1)初期構造設定部
初期構造設定部221では、拡散経路探索に用いる結晶に含まれる、複数の原子の位置を設定できる。
初期構造設定部で設定する複数の原子の位置についてのデータは、データベース等に収録されているデータであってもよく、実験結果から算出した計算値であってもよい。
(B-2)計算部
計算部では初期構造設定部で位置を設定した、複数の原子を用いて分子動力学計算を行うことができる。分子動力学計算については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
(B-3)分析部
分析部223では、計算部222で算出し、得られた複数の原子の座標データについてウェーブレット解析を行い、複数の原子が動きやすい方向を求めることができる。ウェーブレット解析については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
(B-4)構造モデル作成部
構造モデル作成部224では、分析部223での分析結果から、複数の原子が動きやすい方向に位置する構造モデルを複数作成できる。
(B-5)拡散経路探索部
拡散経路探索部225では、構造モデル作成工程で作成した複数の構造モデルから、原子の拡散経路を探索できる。具体的には例えば、構造モデル作成部で作成した複数の構造モデルを比較し、拡散原子以外の結晶を構成する原子について、原子間距離が拡散原子の原子半径よりも拡がっている部分を拡散経路として認定することができる。
(C)出力部
出力部23は、ディスプレイ等を有することができる。拡散経路探索部225で得られた探索結果を出力部23に出力できる。出力するシミュレーション結果の内容は特に限定されないが、例えば出力部23に、図4に示すように探索した探索経路を画像として出力し、表示することができる。
以上に説明した本実施形態のシミュレーション装置によれば、分子動力学計算の結果を基にウェーブレット解析を用いて原子の動きやすい方向を導き出し、該方向に動かした構造モデルを用いて拡散経路の探索を行っている。このため、原子が平均位置に存在する実験等で得られる静的な結晶構造からでは見出すことが困難であった拡散経路を、効率的に探索することができる。
また、上述のように分子動力学計算結果から、原子の揺らぎを反映させた構造モデルを使用して拡散経路探索を行うため、より現実に近い構造での拡散経路の探索が可能になる。
[プログラム]
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
本実施形態のプログラムは、結晶内における原子の拡散経路を効率的に探索するためのプログラムに関し、コンピュータを以下の各部として機能させることができる。
拡散経路探索に用いる結晶に含まれる、複数の原子の位置を設定する初期構造設定部。
初期構造設定部で位置を設定した、複数の原子を用いて分子動力学計算を行う計算部。
計算部で算出した、複数の原子の座標データについてウェーブレット解析を行い、複数の原子が動きやすい方向を求める分析部。
分析部の結果から、複数の原子が動きやすい方向に位置する構造モデルを複数作成する構造モデル作成部。
構造モデル作成部で作成した複数の構造モデルから、原子の拡散経路を探索する拡散経路探索部。
本実施形態のプログラムは、例えば既述のシミュレーション装置のRAMやROM等の主記憶装置または補助記憶装置の各種記憶媒体に記憶させておくことができる。そして、係るプログラムを読み込ませ、CPUにより実行することにより、RAM等におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うと共に、入出力インタフェースおよび表示装置を動作させて実行できる。このため、シミュレーション装置で既に説明した事項については説明を省略する。
上述した本実施形態のプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供してもよい。また、本実施形態のプログラムをインターネットなどのネットワークを介して提供、配布するように構成してもよい。
本実施形態のプログラムは、CD-ROM等の光ディスクや、半導体メモリ等の記録媒体に格納した状態で流通等させてもよい。
以上に説明した本実施形態のプログラムによれば、分子動力学計算の結果を基にウェーブレット解析を用いて原子の動きやすい方向を導き出し、該方向に動かした構造モデルを用いて拡散経路の探索を行っている。このため、原子が平均位置に存在する実験等で得られる静的な結晶構造からでは見出すことが困難であった拡散経路を、効率的に探索することができる。
また、上述のように分子動力学計算結果から、原子の揺らぎを反映させた構造モデルを使用して拡散経路探索を行うため、より現実に近い構造での拡散経路の探索が可能になる。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順により、LiMnにおけるLi原子の拡散経路の探索を行った。
(初期構造設定工程)
LiMnの初期構造の設定を行った。具体的には、図3に示すようにセル内に、リチウム原子31と、マンガン原子32と、酸素原子33とが配置されたLiMnの初期構造30を設定した。なお、図3中、同じハッチングの原子は同種類の原子であることを示している。
(計算工程)
次に、分子動力学計算を用いて、初期構造設定工程で位置を設定した、リチウム原子31、マンガン原子32、および酸素原子33の座標の時系列変化を求めた。
分子動力学計算は、ソフトウェアとしてLAMMPSを用い、力場は名古屋大学石沢らの開発した力場を用いて行った。そして、各原子の座標を入力し、結晶中の環境設定とした。
また、分子動力学計算を行う際の速度の計算方法として速度ベルレ法を用い、時間幅を1fsとした。温度の制御方法としてNose-Hoover chain法を用い、設定温度を300Kとした。
長距離相互作用の計算はParticle-Mesh Ewald法を用いた。
上記条件下で10ナノ秒の分子動力学計算を行った。
(分析工程)
計算工程で得られた、複数の原子の座標の変化についてウェーブレット解析を行い、複数の原子が動きやすい方向を求めた。
なお、計算工程で得られた結果を分析工程に供する際、平均値が0となるように以下の式(5)により修正した。
Figure 0007452412000005

なお、上記式中のx(t)は、ウェーブレット解析で使用したトラジェクトリ、x´(t)は計算工程で得られたトラジェクトリ、<x´>はその時間平均を表す。
ウェーブレット解析の計算には自作のPythonコードを使用し、特異値分解には、Pythonの数値計算ライブラリNumpyを使って解いた。時系列全体の長さは1nsであり、時系列の数はM=200である。解析に使用する時系列データは0.1ns以上0.9ns以下とした。さらに、M=15、M=50のローパスフィルタを使用した。
(構造モデル作成工程)
分析工程の結果から、初期構造設定工程で設定した複数の原子の座標を、分析工程で算出した、各原子が動きやすい方向に位置を変化させた構造モデルを、その移動距離等を変え、複数作成した。
(拡散経路探索工程)
構造作成工程で作成した複数の構造から、拡散原子の拡散経路を探索した。
一般に、遅い運動は大きな振幅をもつ、すなわちゆっくりと大きく動く。このため、分析工程では、計算工程で得られたトラジェクトリを用いて大きな特異値をもつ10個の左特異ベクトルへ射影した射影トラジェクトリを算出した。そして、拡散経路探索工程では、それらの中で拡散経路となりうる空間が得られるかを確認した。具体的には、構造モデル作成工程において、上記左特異ベクトル方向に原子を動かし、拡散経路探索工程において、図3中の中央部に配置されたリチウム原子31Aから、該リチウム原子31Aの近傍にある他の4つのリチウム原子31との間に連続的な空間が形成されているかを確認した。
拡散経路探索工程で得られた拡散原子の拡散経路を図4に示す。
図4に示すように、リチウム原子の拡散経路として、拡散経路411~414が見出された、係る拡散経路はセルの中央部に配置されたリチウム原子31A(図3を参照)と、該リチウム原子31Aの周囲に配置されたリチウム原子との間をつなぐように形成されている。
係る拡散経路411~414は、これまでに報告されているLiMnにおけるリチウム原子の拡散経路とも一致しており、本実施例で用いた拡散経路の探索方法が実際の現象に即したものであることを確認できた。

Claims (1)

  1. 拡散経路探索に用いる結晶に含まれる、複数の原子の位置を設定する初期構造設定工程と、
    前記初期構造設定工程で位置を設定した、複数の前記原子を用いて分子動力学計算を行う計算工程と、
    前記計算工程で得られた、複数の前記原子の座標データについてウェーブレット解析を行い、複数の前記原子が動きやすい方向を求める分析工程と、
    前記分析工程の結果から、複数の前記原子が動きやすい方向に位置する構造モデルを複数作成する構造モデル作成工程と、
    前記構造モデル作成工程で作成した複数の前記構造モデルから、原子の拡散経路を探索する拡散経路探索工程と、を有する拡散経路の探索方法。
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