JP7475586B2 - 免疫抑制剤のスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
一方で、免疫の過剰亢進等に起因する炎症性疾患に苦しむ患者は多く、新しい免疫抑制剤による治療効果の改善が求められている。
また、近年では、免疫担当細胞が発現する分子を標的とした抗体による医薬品も開発が進んでいる。
すなわち、特許文献2には、カイコに被検物質を投与する工程、及び、該被検物質がカイコの筋肉を収縮させるか否かを評価する工程を含む「被検物質が自然免疫を活性化させるか否かを評価する方法」が記載されている。
そして、ヒトの免疫を抑制するものとして既に知られている「物質」や「菌感染」や「高温ストレス、飢餓ストレス等のストレス」で、実際に上記した「菌Aによるカイコの感染死」が促進されることをも見出すことによって、該方法がヒトに対する免疫抑制剤のスクリーニング方法として有力であることを確認して本発明を完成するに至った。
被験物質を投与していないときのカイコの生存率に比較して、被験物質を投与しているときのカイコの生存率が小さくなる被験物質を免疫抑制剤として選択することを特徴とする免疫抑制剤のスクリーニング方法を提供するものである。
被験物質を投与していないときのカイコのLD50に比較して、被験物質を投与しているときの菌AのLD50が小さくなる被験物質を免疫抑制剤として選択することを特徴とする免疫抑制剤のスクリーニング方法を提供するものである。
(1)被験物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程
(2)対照物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程
(3)カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(1)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程
(4)カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(2)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程
(5)工程(3)で測定される生存率又はLD50の方が、工程(4)で測定される生存率又はLD50より小さくなる被験物質を免疫抑制剤として選択する工程
の全ての工程を有する前記の免疫抑制剤のスクリーング方法を提供するものである。
ここでの「免疫機能」とは、ヒト等の哺乳類が有する免疫機能のことであり、具体的には、例えば、ヒト等の哺乳類が有する自然免疫機能であったり、獲得免疫の獲得し易さであったりする。
また、カイコ感染モデルを用いて、哺乳類における抗菌活性が評価可能であることも、既に本発明者らによって報告されている。
本発明は、カイコを利用した免疫抑制剤のスクリーニング方法であり、カイコを用いて行われた検討結果に基づいてなされたものであるが、ヒト等の哺乳類における免疫抑制剤のスクリーニング方法として成立する。
具体的には、黄色ブドウ球菌MSSA1株のLD50値で測られるカイコの感染感受性は、上記した処理によって、それぞれ、(1)100倍程度、(2)20倍程度、(3)64倍以上、(4)100倍程度の増大が見られた(実施例参照)。
従って、カイコの免疫を抑制する物質(をスクリーニングする方法)が見いだされたならば、該方法はヒト等の哺乳類の免疫を抑制する物質(をスクリーニングする方法)となり得ることが確認された。
特に、ヒトで免疫抑制作用が知られているベタメタゾン(betamethasone)が、カイコに対しても免疫抑制作用を示したことから、カイコをヒトの免疫抑制剤のスクリーニングに用いることができることが確認された。
また、候補化合物の体内動態や毒性(ADMET)を探索(スクリーニング)の初期段階で考慮することができるので、本発明によって、新しい免疫抑制剤の探索が可能になる。従来のスクリーニング方法では漏らしていた(新免疫抑制剤として発見・発明できていなかった)例えば「免疫抑制効果は極めて高い訳ではないが体内動態が良好な物質」を、「免疫抑制剤」として選択する(漏らさない)ことができる。
例えば、「免疫機能が過剰亢進した際の症状」を治療する剤を、初期の段階からスクリーニングすることが可能である。それによって、例えば、ヒトでの治験の最終段階で不合格となる確率を減らすことができる。
本発明のスクリーニング方法は、少数の「最終的に免疫活性剤として(確実に)成立する物質」のスクリーニングに適用することもできるが、特に、免疫抑制剤の絞り込みの初期段階に適用することは、本発明の前記効果を発揮し易いために好ましい。従って、本発明は、「免疫抑制剤の候補となり得る物質」のスクリーニング方法であるとも言える。
注射の場合、菌Aを溶媒若しくは分散媒中に分散させた液を用いることが好ましく、該液の1回の投与体積は、カイコ1gあたり、1~200μL/gが好ましく、5~150μL/gがより好ましく、20~100μL/gが特に好ましい。
また、該被験物質が菌Bであって、前記「被験物質の投与」が、カイコを該菌Bに感染させることであってもよい。すなわち、菌Bをカイコに投与して、該カイコを菌Bに感染させることでもよい。
ここで、「菌B」には、菌Bの生菌と死菌が含まれ、例えば、生菌体、湿潤菌、乾燥菌等が含まれる。
また、「菌B由来物」としては、菌Bの一部分(菌Bを構成する部分)、菌Bの産生物、菌Bに何らかの処理を施した菌体処理物等が挙げられる。
菌B由来物の具体例としては、例えば、菌Bの培養上清物等の培養物;懸濁物;希釈物;濃縮物;ペースト化物;噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等の乾燥物;液状化物;希釈物;破砕物;加熱殺菌処理物、放射線殺菌処理物等の殺菌加工物;該培養物からの抽出物;酵素処理物;等が挙げられる。
このとき、該菌Bとしては、例えば、土壌細菌、海洋細菌、河川細菌、発酵用細菌、人体又は動植物常在菌等が好ましいものとして挙げられる。中でも、土壌細菌が、多様性並びに取得の容易性の点等から特に好ましい。
(1)被験物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程
(2)対照物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程
(3)カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(1)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程
(4)カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(2)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程
(5)工程(3)で測定される生存率又はLD50の方が、工程(4)で測定される生存率又はLD50より小さくなる被験物質を免疫抑制剤として選択する工程
工程(1)は、被験物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程である。
工程(1)における被験物質としては、前記したものが挙げられる。
また、投与量としては、特に限定はないが、溶液又は分散液として実際にカイコに投与するときの該液の1回の体積としては、カイコ1gあたり、1~200μL/gが好ましく、5~150μL/gがより好ましく、20~100μL/gが特に好ましい。
また、被験物質である菌Bをカイコに投与して、該カイコを菌Bに感染させることも好ましい。
工程(2)は、対照物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程である。
被験物質を投与していないときのカイコの生存率やLD50は、比較のために測定することが必須であるが、その際の投与としては、何も投与しない、生理食塩水を投与する、投与した被験物質の「溶媒若しくは分散媒」と同じ「溶媒若しくは分散媒」を投与する、等が挙げられる。
中でも、投与した被験物質の溶媒若しくは分散媒のみを、被験物質を投与したときの溶媒若しくは分散媒の量(体積)と同量(同体積)を投与することが好ましい。すなわち、工程(2)の「対照物質」としては、「工程(1)で投与した被験物質の溶媒若しくは分散媒」と同一のもの(液)であることが好ましい。
工程(3)は、カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(1)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程である。
菌Aの種類、菌Aの投与方法(カイコを菌Aに感染させることを含む)、投与(感染)後の経過時間等は、前記した通りである。
本発明において、使用される「一定割合の死亡(生存率)」は、丁度50%だけに限定されず、例えば、「20%~80%内の1点」等でもよい。すなわち、50%と同等のスクリーニングができるならば、本明細書中で「LD50」なる記載は、50%のみに限定されない。
工程(4)は、カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(2)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程である。
すなわち、比較のために、工程(2)で、対照物質を投与したカイコ群にも菌Aを投与する工程である。なお、本発明に用いる「LD50」なる表現は、上記した通り、丁度「50%の死」には限定されない。
菌A、対照物質、経過時間、温度、生存率、LD50等に関する事項は、前記記載や上記工程(3)における記載事項と同様である。
被験物質又は対照物質をカイコに投与してから、経時させてから、菌Aをカイコに投与してもよく;被験物質又は対照物質、及び、菌Aを、カイコに実質的に同時に投与してもよく;菌Aをカイコに投与してから、被験物質又は対照物質をカイコに投与してもよいが、被験物質又は対照物質をカイコに投与してから、経時させて、菌Aをカイコに投与することが、後記する理由等から好ましい。
また、被験物質が、菌Bの死菌、菌B由来物、菌に由来しない化合物等である場合にも、1分~20分が好ましく、直ちに(経時させない)~10分が特に好ましい。
このことは、「菌Aによる感染死の促進」は、工程(1)で投与した被験物質が免疫を抑制していることを意味する。
上記理由からも、前記した通り、被験物質(又は対照物質)をカイコに投与して、経時させて免疫を抑制させてから、菌Aをカイコに投与することが好ましい。
工程(5)は、工程(3)で測定される生存率又はLD50の方が、工程(4)で測定される生存率又はLD50より小さくなる被験物質を免疫抑制剤として選択する工程である。
被験物質を投与したカイコ群と、対照物質を投与したカイコ群とは、菌A(の種類、投与量等)、飼育条件、経過時間等について、実質的に同一である(同一で比較する)ことが好ましい。
「生存率」は、菌Aの投与量一定の場合のカイコ群同士で比較する。
本発明は、前記の免疫抑制剤のスクリーニング方法を用いることを特徴とする免疫担当細胞の機能抑制剤のスクリーニング方法でもある。
従って、本発明は、原理・作用・機序に遡った「免疫担当細胞の機能抑制剤のスクリーニング方法」でもある。
本発明は、前記の免疫抑制剤のスクリーニング方法を用いることを特徴とするサイトカイン産生抑制剤のスクリーニング方法でもある。
従って、本発明は、原理・作用・機序に遡った「サイトカイン産生抑制剤のスクリーニング方法」でもある。
本発明は、前記の免疫抑制剤のスクリーニング方法を用いることを特徴とする細胞毒性物質のスクリーニング方法でもある。
従って、本発明は、原理・作用・機序に遡った「細胞毒性物質のスクリーニング方法」でもある。
以下の実施例で用いたカイコは、他に明記されていない限り、5令1日目のカイコに、終夜、餌(1g/larva)を与えた5令2日目のカイコである。
<高温におけるカイコの感染感受性の増大>
高温(温度ストレス)によって、カイコの黄色ブドウ球菌感染に対する感受性が増大することを確かめた。
5令2日目のカイコに対し、異なる用量の黄色ブドウ球菌(MSSA1株)を注射し、27℃(通常条件)、及び、37℃(高温条件)で、餌を与えずに飼育した。
<飢餓によるカイコの感染感受性の増大>
飢餓ストレスによって、カイコの黄色ブドウ球菌感染に対する感受性が増大することを確かめた。
対照群(飢餓ストレスなし)では、分離された5令1日目のカイコに餌(1g/larva)を与え、5令2日目のカイコを用いて黄色ブドウ球菌(MSSA1株)感染実験を行い、黄色ブドウ球菌(MSSA1株)のカイコに対するLD50を求めた。
<クリプトコッカス感染によるカイコの感染感受性の増大>
真菌であるクリプトコッカスに感染させたカイコでは、黄色ブドウ球菌感染に対する感受性の増大することを確かめた。
カイコに対して、被験物質として、4倍に濃縮し「クリプトコッカス(C. neoformans)」の培養液を血液内に注射(50μL/larva)した群(C. neoformans pre-感染群)、及び、対照物質として、生理食塩水(50μL/larva)を注射した群に対して、それぞれ異なる用量の黄色ブドウ球菌(MSSA1株)を注射し、27℃でカイコを飼育した。その後、カイコの生存数を経時的に観察した。
<ベタメタゾン(Betamethasone)投与によるカイコの感染感受性の増大>
ステロイドであるベタメタゾン(Betamethasone)を投与したカイコでは、黄色ブドウ球菌感染に対する感受性が増大することを確かめた。
対照物質として10%DMSO、又は、被験物質として「ベタメタゾン(Betamethasone)20mg/mLの濃度で溶解した10%DMSO」をカイコに注射し、直後に異なる用量の黄色ブドウ球菌(MSSA1株)を注射して、27℃で餌を与えずに飼育した。
ヒトで免疫を抑制するステロイドとして知られているベタメタゾン(Betamethasone)を投与したカイコにおいて、黄色ブドウ球菌感受性が、対照群に比べて100倍上昇した(図4参照)。
<土壌細菌ライブラリーの培養上清によるカイコの感染感受性の増大>
発明者らの研究室に保管されている土壌細菌ライブラリーの中に、その培養上清を注射するとカイコの黄色ブドウ球菌(MSSA1株)に対する感染感受性を増大させるものが7種存在した。
それら7種のうち6種は、土壌細菌単独ではカイコを殺傷しなかった。
土壌細菌、又は、「土壌細菌の培養上清等の菌由来物」を被験物質とすることで、免疫抑制剤のスクリーニングができることが確かめられた。
土壌細菌(ライブラリー)を対象として、「新しい免疫抑制剤」の発見の可能性がある。例えば、土壌細菌(ライブラリー)等を対象として、本発明の新しい「免疫抑制剤のスクリーニング方法」が成立する。
Claims (9)
- カイコに感染死をもたらす菌Aをカイコに投与して該カイコの生存率又は菌AのLD50を測定する免疫抑制剤のスクリーニング方法であって、
被験物質を投与していないときのカイコの生存率又は菌AのLD50に比較して、被験物質を投与しているときのカイコの生存率又は菌AのLD50が小さくなる被験物質を免疫抑制剤として選択する免疫抑制剤のスクリーニング方法であり(ただし、上記及び下記「LD50」は、使用したカイコの「20%~80%内の1点」が死ぬ点に内挿したときの菌Aの量を示す)、
以下の工程(1)ないし(5)
(1)被験物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程
(2)対照物質を、複数のカイコよりなるカイコ群に投与する工程
(3)カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(1)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程
(4)カイコに感染死をもたらす菌Aを、上記工程(2)を行ったカイコ群に投与して、該カイコ群の生存率、又は、菌AによるLD50を測定する工程
(5)工程(3)で測定される生存率又はLD50の方が、工程(4)で測定される生存率又はLD50より小さくなる被験物質を免疫抑制剤として選択する工程
の全ての工程を有することを特徴とする免疫抑制剤のスクリーング方法。 - 上記工程(3)と上記工程(4)において、上記カイコ群に投与する菌Aの量を同一量とする請求項1に記載の免疫抑制剤のスクリーング方法。
- 上記被験物質が菌B若しくは菌B由来物である請求項1又は請求項2に記載の免疫抑制剤のスクリーニング方法。
- 前記被験物質が菌Bであって、上記「被験物質の投与」が、該カイコを該菌Bに感染させることである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の免疫抑制剤のスクリーニング方法。
- 上記菌Bが土壌細菌である請求項3又は請求項4に記載の免疫抑制剤のスクリーニング方法。
- 上記菌Aが黄色ブドウ球菌である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の免疫抑制剤のスクリーニング方法。
- 請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の免疫抑制剤のスクリーニング方法を用いることを特徴とする免疫担当細胞の機能抑制剤のスクリーニング方法。
- 請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の免疫抑制剤のスクリーニング方法を用いることを特徴とするサイトカイン産生抑制剤のスクリーニング方法。
- 請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の免疫抑制剤のスクリーニング方法を用いることを特徴とする細胞毒性物質のスクリーニング方法。
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|---|
| 石井健一ほか,カイコをモデル宿主とする自然免疫・感染症研究の最前線,蚕糸・昆虫バイオテック,2015年,Vol.84, No.3,pp.173-179 |
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