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JP7488752B2 - 超硬合金工具 - Google Patents
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Description

本発明は、炭化タングステン(以下、WCということがある)基超硬合金工具(以下、超硬工具ということがある)であって、特に、鉱山土木用削孔工具(削岩ビットのチップ、鉱山土木用ボタンビットのゲージチップ等)、切削工具(ドリル、インサート、フライス、回転式切断工具等)、塑性加工具(プレス金型、鍛造用のダイ、鉄鋼用圧延ロール等)に適用可能なものに関する。
超硬合金工具は、WC硬質相とCo結合相とを有する超硬合金が用いられている。この超硬合金の特性は、WC粒子の粒径とCo含有量によって左右され、また、耐摩耗性と耐欠損性との間には二律相反の関係があることが知られている。そして、従来から、この二律相反の関係の関係を解消すべく、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、硬質相に9.5質量%以上含まれるWC粒子につき、4.5~7.5μmの粒子が50~75%、1.5~4.5μmの粒子が15~40%(ただしWC全体を100%としたときの面積比)の範囲にあり、(4.5~7.5μmのWC合計面積)/(1.5~4.5μmのWC合計面積)=2/1~5/1の関係を満たし、かつ1μm以下のWC粒子の面積比が3%以下である超硬工具が記載されており、該超硬工具は耐欠損性を低下させることなく耐摩耗性が向上しているとされている。
また、例えば、特許文献2には、M12C型複炭化物を表層部の主成分とし、表層部WC平均粒度が、内質部のそれよりも0.3~0.7倍に小さくなる組織傾斜を有するとともに、表層部の結合金属が内部側に移動した濃度傾斜を有している超硬工具が記載されており、該超硬工具は、耐摩耗性、耐欠損性に優れているとされている。
さらに、例えば、特許文献3には、WCおよびCoを含んで作製された柱状のチップ本体を有し、前記チップ本体の軸方向に沿う先端部は、先端側へ向かうに従い縮径するように形成され、前記チップ本体の先端部には、Coを主成分とし、長さが5~25μmとされたバインダープールが複数設けられ、前記先端部の単位面積あたりに含まれる前記バインダープールの数が、該先端部における外面近傍よりもそのチップ内側で少なくされている超硬工具が記載され、該超硬工具は、耐摩耗性、耐欠損性に優れているとされている。
特開平8-302441号公報 特開2006-188749号公報 特開2014-214426号公報
近年、超硬工具に対して、より一層の耐摩耗性、耐欠損性が求められている。例えば、削孔工具に対しては、高出力・高周波削岩機による削孔事例が増加し、削孔工具への負荷は増加する傾向にあって、より一層の耐摩耗性、耐欠損性を含む耐久性が求められている。また、例えば、切削工具では、一段と高速化、高効率化の切削加工に対し、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、耐久性が求められ、また、塑性加工具についても同様である。
本発明は、前記事情や、前記提案を鑑みてなされたもので、優れた耐摩耗性や耐欠損性を有し、耐久性の優れた超硬工具を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る超硬工具は、
Coを2.0~30.0質量%を含み、残部がWCおよび不可避的不純物からなる組成を有し、結合相を形成しているCo結晶粒のうちの面心立方構造を有する結晶粒の面積割合につき、その表面から深さ50μmまでの表面領域の値(A)が50.0~100.0面積%、その表面から50μmを超える内部領域の値(B)が30.0~90.0面積%であり、かつ、A/Bが0.70~3.33である。
さらに、前記実施形態に係る超硬工具は、以下の各事項の一つ以上を満足してもよい。
(1)Crを0.2~3.5質量%および/またはVCを0.2~3.7質量%含有すること。
(2)Niを0.4~21.0質量%含有すること。
(3)前記内部領域において、ビッカース硬度が1500Hv以上であること。
(4)破壊靭性値が12.00MPa・m1/2以上であること。
(5)鉱山土木用ボタンビットのチップであること。
前記によれば、耐摩耗性、耐欠損性、靭性に優れた超硬工具を得ることができる。
実施例Aのゲージチップ(バリスティックタイプ)の側面の模式図である。 実施例Aのボタンビットの側面の模式図である。 図2のボタンビットのゲージ径を説明する模式図である。 ラトラ試験機の断面の模式図である。 図4に示すラトラ試験機の側面の模式図である。 回転式切断工具(ロータリーダイカッター)の模式図である。
本発明者は、WCとCoを有する超硬工具に関し、特に、Coの結晶構造の分布について、鋭意検討した。その結果、面心立方構造のCo結晶粒の占める面積割合につき、超硬工具の表面、すなわち、被処理物である岩盤や被切削物に接する面を含む超硬工具の表面近傍領域における値(A)と、超硬工具内部における値(B)が、それぞれ、所定の値であり、かつ、A/Bが所定範囲にあるとき、超硬工具の耐摩耗性、耐欠損性、靭性が優れるという知見を得たのである。
以下では、本発明の一実施形態に係る超硬工具について説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「M~N」(M、Nは共に数値)で表現するときは、その範囲は上限値(N)および下限値(M)を含んでおり、上限値(N)と下限値(M)の単位は同じである。
<組成>
まず、本実施形態に係る超硬工具の組成について説明する。
<<Co>>
本実施形態に係る超硬工具の組成は、Coを2.0~30.0質量%含み、残部がWCと不可避的不純物である。Coの含有量をこの範囲とした理由は、2.0質量%未満であると、焼結時に緻密化が進行しづらくなって内部欠陥が残りやすくなり、その結果、組織としての均一性が損われ超硬工具の機械的強度が低下し、一方、30.0質量%を超えると、超硬工具の耐摩耗性が低下するためである。超硬工具が削孔工具(削孔チップ)のとき、Coの含有割合は、3.0~10.0質量%であることがより好ましい。
<<その他の元素>>
本実施形態に係る超硬工具は、Cr、V、Nb、Ta、Ti、Ni、Hf、Zrの1種類または2種以上を含有してもよい。これらの元素は、炭化物、複合炭化物、窒化物、炭窒化物として添加されてもよい。以下、これら元素について説明する。
CrとVは、焼結時にWCの粒子成長を抑制する働きがあり、この抑制を行うためにCrとして0.2~3.5質量%および/またはVCとして0.2~3.7質量%を添加してもよい。
Niは、超硬工具の用途によって結合相を形成するCoの代替として、Co含有割合の20~70%、すなわち、0.4~21.0質量%含有させてもよい。
Nb、Ta、Tiは、超硬工具の高温硬さ、クリープ強度を向上させる働きがあり、この向上を確実に行うために炭化物等として0.2~3.0質量%添加してもよい。
ZrとHfは、高温靭性、高温抗折力などの高温機械特性を向上させる働きがあり、この向上を確実に行うために炭化物等として0.2~3.0質量%添加してもよい。
<<不可避的不純物>>
本実施形態に係る超硬工具は、製造工程において不可避的に混入する元素を1.0質量%以下含有することが許容される。
<Co結晶粒の結晶構造の分布>
本実施形態に係る超硬工具は、面心立方構造(fcc結晶構造)を有するCo結晶粒の面積割合が、その表面、すなわち、表面に存在する黒皮、塗装等の表面層に接する超硬工具本体の最も深い谷底(最も超硬工具本体の内部にある部分)を起点として、この起点からの深さが50μmのまでの表面領域の値(A)が50.0~100.0面積%、その表面から深さが50μmを超える内部領域の値(B)が30.0~90.0面積%であり、かつ、A/Bが0.70~3.33であることが好ましい。
面心立方構造を有するCo結晶粒の面積%と面積%の比が、この範囲を満足すると、耐亀裂伝搬性が向上し、優れた耐摩耗性を維持し、耐欠損性も向上する。
なお、超硬工具が削孔工具(削孔チップ)のとき、前記表面領域の値(A)は60.0~97.0面積%、前記内部領域の値(B)は40.0~90.0面積%、前記A/Bは0.70~2.20が好ましい。
この耐亀裂伝搬性が向上し、優れた耐欠損性を示し、耐摩耗性も向上するという性質により、本実施形態に係る超硬工具は、削孔工具として用いたとき、例えば、一軸圧縮強度が150MPa以上の硬岩(例:花崗岩)の削岩、高圧力作動ハンマーで使用される削孔工具として好適といえる。
この耐亀裂伝搬性が向上し優れた耐欠損性を示す理由は、定かではないところがあるが、超硬工具の使用中に発生した工具表面のクラックの表面から内部に向かう進展が、面心立方構造を有するCo結晶粒が最密六方晶構造(hcp結晶構造)へ変化することによって抑制されて、際だった優れた耐欠損性を与え、さらに、最密六方晶構造のCo結晶粒は高強度であるため耐摩耗性も向上するためと推定している。また、最密六方晶構造のすべり系が3個(1面×3方向)であるのに対し、面心立方構造はすべり系が12個(4面×3方向)あるため延性に富み、歪み代があり、耐衝撃性が高いため際だった優れた耐欠損性を与えると考えている。
ここで、面心立方構造(fcc結晶構造)を有するCo結晶粒の面積割合は、超硬工具の表面に垂直な断面において複数の観察視野(例えば、3視野)を設定し、各観察視野の黒皮、塗装等の表面層に接する超硬工具本体の最も深い谷底(最も超硬工具本体の内部にある部分)を起点として深さを測定し、前記表面領域と前記内部領域における面積率を求めて、その平均値をとることによって得る。
具体的には以下の「Co結晶粒の結晶粒界の画定と結晶構造の決定」の手順に従う。
<Co結晶粒の結晶粒界の画定と結晶構造の決定>
<<Co結晶粒の結晶粒界の画定>>
電子後方散乱回折を用いた結晶方位測定によりCo結晶の結晶粒界を特定する。まず、工具表面に垂直な面(縦断面)を耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、イオンミリング装置を用いて断面イオン加工を行って、測定面を作製する。次に、結晶方位測定を、EBSD測定装置と、解析ソフトを用いて行う。EBSD測定装置の電子線の加速電圧は15kV、測定視野は20μm×30μm、結晶方位測定の測定点間隔(Step Size)は0.05μmとする。EBSD測定装置で得られたデータを、解析ソフトを用いて処理する。
<<Co結晶粒の結晶の決定>>
ここで、測定した結晶方位は測定面上を離散的に調べたものであり、隣接測定点間の中間までの領域をその測定結果で代表させることにより測定面全体の方位分布として求めるものである。なお、測定点で代表させた領域(以下、ピクセルということがある)として正六角形状のものが例示できる。
このピクセルのうち隣接するもの同士の間で5度以上の結晶方位の角度差がある場合、または隣接するピクセルの片方のみが面心立方構造または最密六方晶構造を示す場合は、これらピクセルの接する領域の辺を粒界とする。そして、この粒界とされた辺により囲まれた領域を1つの結晶粒と定義する。ただし、隣接するピクセル全てと5度以上の方位差がある、あるいは、隣接する面心立方構造を有する測定点がないような、単独に存在するピクセルは結晶粒とせず、2ピクセル以上が連結しているものを結晶粒として取り扱う。このようにして、粒界の判定を行い、結晶粒を特定し、結晶粒構造毎にその結晶粒の占める面積%を算出する。
<ビッカース硬度>
本実施形態に係る超硬工具は、その内部領域において、ISO6507、またはASTM E385規定された方法により荷重490N(50kgf)で測定するビッカース硬度が1400Hv以上であることが好ましい。ビッカース硬度が1500Hv以上であると、前記超硬工具は、より一層、耐摩耗性、耐欠損性、靭性に優れる。
なお、ビッカース硬度の上限値は特段の制約がないが、後述する実施例の製造法では1550Hv程度が上限になる。
<破壊靭性値>
本実施形態に係る超硬工具は、破壊靭性値(K1c)が12.00MPa・m1/2以上であることが好ましい。破壊靭性値が12.00MPa・m1/2以上であると、前記超硬工具は、耐摩耗性、耐欠損性、靭性がより一層優れる。
ここで、破壊靭性値の測定は、公知のものが使用でき、例えば、JIS R1607で規定された方法により測定する圧痕とクラック長から靭性値を算出するIF法、十分なクラック長が得られない領域ではSEPB法やSEVNB法を用いて測定を行う。
なお、破壊靭性の上限値は特段の制約がないが、後述する実施例の製造法では25.00MPa・m1/2程度が上限になる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例A>
以下、実施例Aとして、超硬工具がボタンビット(BB036A)の削孔チップである場合を例として挙げて本発明を説明する。
図1に示すボタンビット用削孔チップを得るべく、各実施例において、6個のφ(T:直径)が10mmのバリスティックタイプ(ゲージチップ)と3個のφ(T:直径)が9mmのバリスティックタイプ(フェイスチップ)を、以下の手順により製造した。
すなわち、原料粉末の準備工程、配合・混合とプレス成形工程、焼結工程、加圧処理工程、バリ取り工程、再焼結工程を経て製造した。
1.原料粉末の準備工程
原料粉末として、いずれも3.0μmの平均粒径を有するWC粉末とCo粉末、および、いずれも0.1~3.0μmの平均粒径を有するCr粉末、VC粉末を用意した。
2.配合・混合とプレス成形工程
用意した原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにパラフィンワックスを加えて、エタノールを85%含む溶媒中で24時間ボールミルを使って混合し、減圧乾燥した後、20%の圧縮率となるように、圧粉体にプレス成形した。
なお、表1に示す配合割合が、ボタンビット用削孔チップの組成である。
3.焼結工程
プレス成形した圧粉体を20Pa以下の真空中で、4℃/minの昇温温度で1350~1500℃の範囲内の温度に60分間保持して焼結し、焼結後、Arガスを使用して6℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
4.加圧処理工程(HIP処理およびS-HIP処理)
次に、7℃/minの昇温温度で1320℃まで昇温し、900MPaの圧力で60分間保持してHIP処理を行った。その後、6℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
また、HIP処理に代えて、焼結とHIP処理を同時に行うS-HIP処理を行った。S-HIP処理は、3℃/minの昇温温度で1350~1500℃間に真空加熱した後、その到達温度域でArガス雰囲気下の5MPaにて90分間の加圧をした処理を行った。その後は、3/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
5.バリ取り工程
次に、必要に応じて以下(1)~(3)のいずれかのバリ取り加工を行った。
(1)バレル研磨
設備 振動式バレル研磨機
容量 20リットル
周波数 60Hz
研磨メディア 珪藻土
(2)プロファイル研磨
砥粒 #200のダイヤモンド砥粒
周速 1000m/min
ストローク数 90回/min
切込量 0.1mm
(3)サンドブラスト
エア圧 0.3~0.2MPa
ブラストガン Φ19mm
アルミナ径 425~300μm(FA46)
単位面積当たりの処理時間 3~6s/cm
6.再焼結工程
1Pa以下の真空中で、5℃/minの昇温温度に1100℃まで昇温し、60分間保持して再焼結した後、15℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
このようにして、得られた実施例1~7のバリスティックタイプの各チップに対して、その中から任意の1個を取り出し、前述の方法により面心立方構造を有する結晶粒の面積割合を求めた。結果を表2に示す。ここで、EBSD装置は、カールツァイス社製 走査型電子顕微鏡Ultra55、EDAX/TSL社製 OIM Data Collectionを、解析ソフトとして、EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.7.3を用いた。また、ビッカース硬度は前述の方法により、破壊靭性値はIF法によりそれぞれ測定した。
これに対して、比較例1~7として、各比較例において実施例と同じ形状のφ10mmのバリスティックタイプ(ゲージチップ)6個とφ9mmのバリスティックタイプ(フェイスチップ)3個を、実施例の原料粉と同じ原料粉を用い、再焼結工程を有しない点以外は実施例と同じ製造工程に従って作製し、実施例と同様に面心立方構造を有する結晶粒の面積割合を求めた。結果を表2に示す。
Figure 0007488752000001
Figure 0007488752000002
削孔試験
実施例1~7、比較例1~7のバリスティックタイプチップを図3に示すゲージ径Gが47.0mmのボタンビットのヘッドに、6個のチップ径Tが10mmの前記チップをゲージチップとして、3個のチップ径Tが9mmの前記チップをフェイスチップとして、それぞれ取り付けて、以下の削孔試験を行った。
1.削孔試験装置(穿孔装置)の仕様
打撃圧 20MPa
打撃周波数 93Hz
推力 8MPa
回転圧 7.5MPa
2.削孔
削孔長さ(1回当たり) 4m
削孔径 45mm
岩盤-軸圧縮強度 210MPa
3.再研磨
10回の削孔(合計40mの削孔)が終了する毎に実施
そして、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
(1)5回の削孔(合計20mの削孔)の終了毎に削孔チップの形状を観察し、
(2)ゲージ径測定治具を用い、ボタンビットのゲージ径Gが44mm未満になった時点
で摩耗、あるいは、チップ径の1/3以上の長さに欠損(部分的な欠損、全欠損のいずれか)の有無を目視で観察し、ゲージチップ、フェイスチップに関わらず9個あるチップのうちの3個以上に欠損が発生した際に寿命と判断し、寿命に至るまでの総削孔長さ(メートル)を測定した。
Figure 0007488752000003
表3から明らかなように、実施例1~7の削孔チップは、20m削孔直後のチップには異常が発生せず、総切削長が長く、いずれも優れた耐摩耗性、耐欠損性、靭性を示した。一方、比較例1~7の削孔チップは、20m削孔直後のチップに欠損が発生したものがあり、いずれも、総削孔長が短く、早期に、欠損、摩耗が発生した。
<実施例B>
以下、実施例Bとして、一辺の長さが10mmの立方体形状の試験片を作成し、図4、5に示すラトラ試験を行って、同試験片の耐摩耗性、耐欠損性、靭性について評価を行った。
試験片の作成は、原料粉末の準備工程、配合・混合とプレス成形工程、焼結工程、加圧処理工程、研磨工程、再焼結工程を経て製造した。
1.原料粉末の準備工程
原料粉末として、いずれも1.0μmの平均粒径を有するWC粉末とCo粉末、および、いずれも0.1~3.0μmの平均粒径を有するCr粉末、VC粉末を用意した。
2.配合・混合とプレス成形工程
用意した原料粉末を、表4に示される配合組成に配合し、さらにパラフィンワックスを加えて、エタノールを85%含む溶媒中で24時間ボールミルを使って混合し、減圧乾燥した後、20%の圧縮率となるように、圧粉体にプレス成形した。
なお、表4に示す配合割合が、試験片の組成である。
3.焼結工程
プレス成形した圧粉体を20Pa以下の真空中で、4℃/minの昇温温度で1350~1500℃の範囲内の温度に60分間保持して焼結し、焼結後、Arガスを使用して6℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
4.加圧処理工程(HIP処理およびS-HIP処理)
次に、7℃/minの昇温温度で1320℃まで昇温し、900MPaの圧力で60分間保持してHIP処理を行った。その後、6℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
また、HIP処理に代えて、焼結とHIP処理を同時に行うS-HIP処理を行った。S-HIP処理は、3℃/minの昇温温度で1350~1500℃間に真空加熱した後、その到達温度域でArガス雰囲気下の5MPaにて90分間の加圧をした処理を行った。その後は、3/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
5.研磨工程
平面研削盤を使用し、#140砥石を用いて試験片の6面を研磨した。
6.再焼結工程
1Pa以下の真空中で、5℃/minの昇温温度に1100℃まで昇温し、60分間保持して再焼結した後、15℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
このようにして、得られた実施例11~15の試験片を、実施例Aと同様に面心立方構造を有するCo結晶粒の面積割合を求めた。結果を表5に示す。
これに対して、比較例11~15を、実施例の原料粉と同じ原料粉を用い、再焼結工程を有しない点以外は実施例と同じ製造工程に従って作製し、実施例と同様に面心立方構造を有するCo結晶粒の面積割合を求めた。結果を表5に示す。
Figure 0007488752000004
Figure 0007488752000005
ラトラ試験
実施例11~15、および、比較例11~15の各試験片に対して、図4に断面の模式図、図5に側面の模式図を示すラトラ試験機を用いて、欠損率を評価した。
ラトラ試験の条件は次のとおりであった。
ラトラ試験の容器の寸法 内径φ110mm
長さ 200mm
ボール φ20mm アルミナボール(総質量 480g)
容器の回転数 250rpm
試験時間 180分
試験片の試験前の質量と試験後の質量を比較し、次の欠損率を求めて、試験片の耐摩耗性、耐欠損性、靭性について評価を行った。結果を表6に示す。
欠損率(%)=(試験前の質量-試験後の質量)/(試験前の質量)×100
Figure 0007488752000006
表6から明らかなように、実施例11~15の試験片は、試験後の欠損率(%)が小さく、いずれも優れた耐摩耗性、耐欠損性、靭性を有するといえる。一方、比較例11~15の試験片は欠損率(%)が高く、耐摩耗性、耐欠損性、靭性が劣っていることは明らかである。
<実施例C>
以下、実施例Cとして、超硬工具が図6に示すような回転式切断工具(ロータリーダイカッター)である場合を例に挙げて説明する。
回転式切断工具は、原料粉末の準備工程、配合・混合とプレス成形工程、焼結工程、加圧処理工程、再焼結工程、研磨工程を経て製造した。
1.原料粉末の準備工程
原料粉末として、いずれも1.0μmの平均粒径を有するWC粉末とCo粉末、および、いずれも0.1~3.0μmの平均粒径を有するCr粉末、VC粉末を用意した。
2.配合・混合とプレス成形工程
用意した原料粉末を、表7に示される配合組成に配合し、さらにパラフィンワックスを加えて、エタノールを85%含む溶媒中で24時間ボールミルを使って混合し、減圧乾燥した後、20%の圧縮率となるように、圧粉体にプレス成形した。
なお、表7に示す配合割合が、回転式切断工具の組成である。
3.焼結工程
プレス成形した圧粉体を20Pa以下の真空中で、4℃/minの昇温温度で1350~1500℃の範囲内の温度に60分間保持して焼結し、焼結後、Arガスを使用して6℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
4.加圧処理工程(HIP処理)
次に、7℃/minの昇温温度で1320℃まで昇温し、900MPaの圧力で60分間保持してHIP処理を行った。その後、6℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
5.再焼結工程
1Pa以下の真空中で、5℃/minの昇温温度に1100℃まで昇温し、60分間保持して再焼結した後、15℃/minの冷却速度で50℃まで冷却した。
6.研磨工程
仕上がり面粗さ(Rz)が0.8μmとなるように、以下のような研磨加工を行った。
加工機:円筒研磨機およびマシニングセンター
砥石番手:♯140(荒加工)~♯1000(仕上げ加工)
このようにして、得られた実施例21~23の回転式切断工具に対して、実施例Aと同じ手段を用いて面心立方構造を有する結晶粒の面積割合を求めた。結果を表8に示す。
これに対して、比較例21~23を、実施例の原料粉と同じ原料粉を用い、再焼結工程を有しない点以外は実施例と同じ製造工程に従って作製し、実施例と同様に面心立方構造を有する結晶粒の面積割合を求めた。結果を表8に示す。
Figure 0007488752000007
Figure 0007488752000008
耐久性の評価
図6に模式的に示す回転式切断工具を組み立て、
回転数 600rpm
押付圧力 1.5MPa
刃先突き出し量 1.5μm
として、10万回転毎に刃先の状態を目視により確認し、欠損が認められた時点までの累積回転数を寿命に至るまでの回転数とした。結果を表9に示す。表9において、寿命とは、寿命に至るまでの回転数である。
Figure 0007488752000009
表9から明らかなにように、実施例21~23の累積回転数は高く、いずれも優れた耐摩耗性、耐欠損性、靭性を有するといえる。一方、比較例21~23の試験片は累積回転数が低く、耐摩耗性、耐欠損性、靭性が劣っていることは明らかである。
1 バリスティックタイプチップ(ゲージチップ)
2 チップバリスティックタイプ(フェイスチップ)
3 ボタンビット
4 ラトラ試験機の容器
5 障害板
6 試験片
7 アルミナボール
8 ダイカットロール
9 アンビルロール
10 刃先
11 ベアラ
T バリスティックタイプチップのチップ径
G ボタンビットのゲージ径
R 回転方向

Claims (6)

  1. Coを2.0~30.0質量%を含み、残部がWCおよび不可避的不純物からなる組成を有し、結合相を形成しているCo結晶粒のうちの面心立方構造を有する結晶粒の面積割合につき、その表面から深さ50μmまでの表面領域の値(A)が50.0~100.0面積%、その表面から50μmを超える内部領域の値(B)が30.0~90.0面積%であり、かつ、A/Bが0.70~3.33であることを特徴とする超硬工具。
  2. Crを0.2~3.5質量%および/またはVCを0.2~3.7質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の超硬工具。
  3. Niを0.4~21.0質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の超硬工具。
  4. 前記内部領域のビッカース硬度が1500Hv以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の超硬工具。
  5. 破壊靭性値が12.00Mpam1/2以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の超硬工具。
  6. 前記超硬工具は、鉱山土木用ボタンビットのチップであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の超硬工具。
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