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JP7496112B2 - プロドラッグ及び医薬組成物 - Google Patents
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JP7496112B2 - プロドラッグ及び医薬組成物 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 [1] ウェブサイト掲載日 平成31年3月25日 ウェブサイトのアドレス https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/74146 <資 料>『北海道大学学術成果コレクション』ウェブサイト公開資料 [2] 開催日 令和元年11月16日 集会名 The 4th Taiwan-Japan Bilateral Conference on Phosphatase 開催場所 Just Sleep Taipei National Taiwan University (台北市) <資 料>学術集会プログラム及び要旨集抜粋 <資 料>学術集会発表資料 [3] 開催日 令和元年11月25日~26日 集会名 The 15th Nanjing University-Hokkaido University-NIMS Joint Symposium 開催場所 School of Chemistry and Chemical Engineering Nanjing University (南京市) <資 料>学術集会プログラム及び要旨集の該当箇所抜粋 <資 料>学術集会発表資料
本発明は、PPM1ファミリーに属するPPM1D(Protein Phosphatase Magnesium‐Dependent 1、 Delta)に対する新規のプロテインホスファターゼ阻害剤に関する。
プロテインホスファターゼはリン酸化タンパク質を脱リン酸化する酵素であり、生体内で糖代謝、平滑筋収縮、細胞周期、DNA複製、転写、翻訳、細胞接着、細胞活性化・分化などの制御、生体の免疫系や神経系の維持に作用しているといわれている。従って、プロテインホスファターゼ阻害剤は種々の医薬になる可能性があることから広く探索されている。プロテインホスファターゼの中でもセリン/スレオニンホスファターゼ(Ser/Thrホスファターゼ)は、化学的性質及び遺伝子構造よりPP1、PP2A、PP2B、PP2C(PPM1)ファミリーの4種に分類されている。このPPM1ファミリーは、特にDNA修復機構、ストレス応答、シグナル伝達、細胞増殖などの細胞機能の制御に関与していることから、特にその阻害剤の開発は注目されている。
PPM1D/Wip1は、癌抑制タンパク質p53によって発現誘導されるSer/Thrホスファターゼとして同定された(例えば、非特許文献1参照。)。PPM1Dは、p53経路やDNA損傷応答に関与するタンパク質を脱リン酸化するネガティブフィードバック機構を介して細胞周期を制御している。PPM1Dは、多様な悪性腫瘍で変異や過剰発現が見つかっており、癌化学療法の標的として注目を浴びている(例えば、非特許文献2~4参照。)。さらに、PPM1Dは生体内において恒常的に発現していること、また、ノックアウトマウスを用いた研究から、PPM1Dが、精子形成や老化、免疫応答にも関与していることが示唆されている(非特許文献5)。
現在まで、数種の有力なPPM1D阻害剤が発表されている。PPM1D阻害剤としては、例えば、非特許文献6に記載の多環式化合物、GSK2830371(CAS No.1404456-53-6)(非特許文献7)、非特許文献8、9、特許文献1に記載の第一級アルコールを有するケイ素化合物等が報告されている。
国際公開第2010/041401号
Fiscella et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1997,vol.94(12),p. 6048-6053. Tan et al.,Clinical Cancer Research,2009,vol. 15(7),p. 2269-2280. Yap et al.,Nature Reviews Cancer,2009,vol. 9,p. 167-181. Busque et al.,STEM CELLS,2018,vol.36,p. 1287-1294. Choi et al.,Molecular and Cellular Biology, 2002, vol. 22(4), p.1094-1105. Rayter et al.,Oncogene, 2008, vol.27, p. 1036-1044. Gilmartin et al.,Nature Chemical Biology, 2014, vol.10, p. 181-187. Yagi et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2012, vol.22(1), p.729-732. Ogasawara et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry, 2015, vol.23(19), p.6246-6249 Simonin et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2012, vol.22(2), p.1151-1155.
非特許文献6~9、特許文献1等に記載されているPPM1D阻害剤は、癌細胞内で阻害効果を発揮し、また優れたがん細胞増殖抑制効果を発揮することから、悪性腫瘍治療薬として有用である。しかし、細胞透過性が不十分であり、より細胞への透過性が高く、PPM1D阻害活性も十分であるPPM1D阻害剤が求められている。すなわち、本発明は、細胞透過性が高いPPM1D阻害剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、非特許文献8、9、又は特許文献1に記載のケイ素化合物のうち、カルボキシ基を有するケイ素化合物について、カルボキシ基をアミノアルキルエステル化することにより、PPM1D阻害活性を低下させ、かつ細胞透過性を高められること、この誘導体は、細胞内に取り込まれると、分解されて元のカルボキシ基となり、高いPPM1D阻害活性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の、PPM1D阻害剤等を提供するものである。
[1] 下記一般式(1)
Figure 0007496112000001
[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~12の炭化水素基であり;nは1又は2であり;pは1~6の整数であり;Xは、置換基を有していてもよい炭素数3~36の炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環式基である。]
で表される化合物からなる、PPM1D阻害剤。
[2] 前記Xが、デカヒドロナフタレン環から誘導された脂環式基である、前記[1]のPPM1D阻害剤。
[3] 細胞内のPPM1D活性を阻害するために用いられる、前記[1]又は[2]のPPM1D阻害剤。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかのPPM1D阻害剤を有効成分とする、医薬用組成物。
[5] 癌治療に用いられる、前記[4]の医薬用組成物。
本発明に係るPPM1D阻害剤は、PPM1D阻害活性に重要なカルボキシ基が、アミノアルキルエステル化された化合物からなる。アミノアルキルエステル化によってカルボキシ基がブロックされたことにより、PPM1D阻害活性は低下し、かつ細胞透過性が向上する。このため、当該PPM1D阻害剤は、in vivoにおけるPPM1D阻害剤として好適であり、PPM1Dの阻害により治療又は予防効果が期待される疾患の治療に用いられる医薬用組成物の有効成分として非常に有用である。
実施例2において、化合物SL-176、SL-180、及びSL-183のPPM1D活性のin vitroアッセイの結果を示した図である。 実施例2において、化合物SL-176、SL-180、及びSL-183のヒト乳癌細胞株MCF7を用いた細胞生存性アッセイの結果を示した図である。 実施例2において、5-CFDA又は5-ABFDAで処理したMCF7細胞の、処理後2、5、又は15分後の蛍光画像である。 実施例2において、化合物SL-176で処理したMCF7細胞の細胞抽出物のLC-MS/MSクロマトグラムである。 実施例2において、化合物SL-183で処理したMCF7細胞の細胞抽出物のLC-MS/MSクロマトグラムである。 実施例2において、抗癌剤エトポシド、化合物SL-176、及びSL-183のH1299細胞及びH1299(PMD-9)細胞を用いた細胞生存性アッセイの結果を示した図である。
本発明及び本願明細書において、「Cy-z(y及びzは、y<zを充たす正の整数である。)」は、炭素数がy以上z以下であることを意味する。
本発明に係るPPM1D阻害剤は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ということがある。)からなる。当該化合物中のアミノアルキルエステル部分、すなわち、NH-(CH)p-O-CO-基がカルボキシ基である化合物は、in vitroの反応系において、PPM1D阻害活性を示す化合物である。なお、一般式(1)中、pは1~6の整数である。
Figure 0007496112000002
一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~12の炭化水素基である。当該炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基が挙げられ、さらに直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アラルキル基、又は芳香族炭化水素基が好ましい。さらに、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、又はC6-10アリール-C1-6アルキル基(炭素数6~10のアリール基で置換された炭素数1~6のアルキル基)が好ましい。より詳細には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基が好ましい。さらに、ベンジル基、フェネチル基等のフェニル-C1-4アルキル基(フェニル基で置換された炭素数1~4のアルキル基)が好ましい。これらのシリル基上の置換基R、R及びRは、同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
一般式(1)中、(R)(R)(R)Si-の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(n-プロピル)シリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ(n-ブチル)シリル基、トリ(sec-ブチル)シリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
一般式(1)中、Xは、置換基を有していてもよい炭素数3~36の炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環式基を示す。ここで、炭素数3~36の炭化水素基としては、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素いずれでもよく、また飽和でも不飽和でもよい。より好ましくは、炭素数3~24の直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数6~24の環状の脂肪族炭化水素基(脂環式基)である。
当該炭化水素基の例としては、C3-24アルキル基、C3-24アルケニル基、C3-24アルキニル基、炭素数3~24の環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素基が挙げられる。C3-24アルキル基の例としては、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等のC3-6アルキル基が好ましい。C3-24アルケニル基としては、1-プロペン-1-イル基、2-プロペン-1-イル基、イソプロペニル基、1-ブテン-1-イル基、2-ブテン-1-イル基、3-ブテン-1-イル基、1-ブテン-2-イル基、2-ブテン-2-イル基、3-ブテン-2-イル基等のC3-8アルケニル基が好ましい。C3-24アルキニル基としては、プロピニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等のC3-8アルキニル基が好ましい。
炭素数3~24の環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素基としては、例えば、5又は6員環状の飽和又は不飽和の炭化水素を1~3個有する環状構造を有する炭化水素基が挙げられる。当該炭化水素基としては、脂環式基であってもよく、アリール基であってもよい。脂環式基としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ビシクロウンデカン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、ノルボルナン、ピネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、リモネン、テトラヒドロナフタレン等の環化合物から誘導される脂環式基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
これらの炭化水素基には、ヒドロキシ基、ニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換スルホニル基、ハロゲン原子、トリ置換シリル基及びトリ置換シリルオキシ基から選ばれる1~4個の置換基を有していてもよい。ここで、アルコキシ基及びアルキルチオ基の炭素数は1~6が好ましい。アルコキシカルボニル基の炭素数は2~7が好ましい。また、トリ置換シリルオキシ基としては、前記の(R)(R)(R)Si-O-基が好ましい。置換スルホニル基としては、メタンスルホニル基等のC 1-4アルカンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられる。これらの置換基は1~4個有していてもよい。
Xで表される複素環式基としては、窒素原子又は酸素原子を含む5又は6員の複素環式基が挙げられる。具体的にはピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
当該複素環には、アリール基、アラルキル基、アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アシルオキシ基及びアラルキルオキシ基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。アルキルアミノ基としてはメチルアミノ基、エチルアミノ基等の炭素数1~6のアルキルアミノ基が挙げられる。アルケニルアミノ基としては、プロペニルアミノ基、2-メチレン-プロピルアミノ基等が挙げられる。アシルオキシ基としてはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としてはベンジルオキシ基等が挙げられる。
一般式(1)中、nは1又は2である。すなわち、化合物(1)は、炭素数3~36の炭化水素又は複素環が、アミノアルキルエステル基に加えて、1個又は2個の(R)(R)(R)Si-O-基で置換された化合物である。nが2の場合、2個の(R)(R)(R)Si-O-基は、同種の基であってもよく、異種の基であってもよい。
化合物(1)としては、R、R及びRがそれぞれ独立して、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、又はC6-10アリール-C1-6アルキル基であり、Xが、炭素数3~24の環状構造を有する飽和又は不飽和炭化水素基である化合物が好ましく;(R)(R)(R)Si-が、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(n-プロピル)シリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ(n-ブチル)シリル基、トリ(sec-ブチル)シリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基であり、Xが炭素数6~24の脂環式基又はアリール基であり、nが1又は2であり、pが1~6の整数である化合物がより好ましく;(R)(R)(R)Si-が、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(n-プロピル)シリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ(n-ブチル)シリル基、トリ(sec-ブチル)シリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基であり、Xが炭素数6~24の脂環式基であり、nが1又は2であり、pが1~6の整数である化合物がさらに好ましく;(R)(R)(R)Si-が、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(n-プロピル)シリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ(n-ブチル)シリル基、トリ(sec-ブチル)シリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基であり、Xがデカヒドロナフタレン基(デカヒドロナフタレンから誘導された脂環式基)又はテトラデカヒドロフェナントレン基(テトラデカヒドロフェナントレンから誘導された脂環式基)であり、nが1又は2であり、pが1~6の整数である化合物がよりさらに好ましい。
本発明の化合物としては、例えば、下記一般式(2-1)で表される化合物が挙げられる。一般式(2-1)中、(R)(R)(R)Si-基及びpは、それぞれ、一般式(1)と同じである。一分子中、2個ある(R)(R)(R)Si-基は、同種の基であってもよく、異種の基であってもよい。
Figure 0007496112000003
一般式(2-1)中、(R)(R)(R)Si-基は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(n-プロピル)シリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ(n-ブチル)シリル基、トリ(sec-ブチル)シリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基が好ましい。
化合物(1)は、例えば、少なくとも第3級カルボキシ基と1又は2個のヒドロキシ基を備える炭素数3~36の炭化水素又は複素環に対して、当該ヒドロキシ基をシリル化して(R)(R)(R)Si-基を導入した後、当該第3級カルボキシ基をアミノアルキルエステル化することにより合成できる。炭素数3~36の炭化水素又は複素環のヒドロキシ基への(R)(R)(R)Si-基の導入は、例えば、非特許文献8、9、又は特許文献1に記載の方法で合成できる。シリル化後の第3級カルボキシ基を有するケイ素化合物のアミノアルキルエステル化反応は、常法により行うことができる。
化合物(1)は、塩を形成してもよく、その塩を形成する酸又は塩基としては、塩酸、硫酸などの鉱酸;酢酸、コハク酸、クエン酸等の有機酸;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。また、本発明のアミノアルキルエステル化合物は、水和物等の形態であってもよい。
化合物(1)は、第3級カルボキシ基がアミノアルキルエステル化されていることにより、細胞膜への親和性が高く、細胞透過性に優れている。加えて、当該第3級カルボキシ基はPPM1D阻害活性に重要な部位であり、アミノアルキルエステル化されてブロックされることによって、ブロックされる前の化合物よりもPPM1D阻害活性は低下している。当該化合物が細胞内へ取り込まれると、恐らくは細胞内の酵素によりアミノアルキルエステル部分が加水分解され、第3級カルボキシ基を有するケイ素化合物となる。このケイ素化合物は非常に高いPPM1D阻害活性を有する。つまり、化合物(1)は、細胞外ではPPM1D阻害活性は低いが、細胞透過性に優れており、細胞内に取り込まれると高いPPM1D阻害活性を示す。このため、細胞内のPPM1D活性を阻害するために用いられるPPM1D阻害剤として非常に有用である。
化合物(1)は、PPM1Dを阻害すること及び癌細胞の増殖を抑制することから、悪性腫瘍治療薬に代表される医薬の有効成分として有用である。また、化合物(1)又はその塩は、低分子化合物であることから、免疫原性等の問題がない。また、経口投与も可能であり、投与経路もあまり制限されないため、特に、ヒトを含む哺乳類に対する医薬の有効成分として有用である。
化合物(1)又はその塩を医薬組成物に含有せしめる場合、必要に応じて薬学的に許容される担体と配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能である。該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられるが、経口剤が好ましい。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
薬学的に許容される担体としては、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が用いられる。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
経口用固形製剤を調製する場合は、化合物(1)に賦形剤、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
経口用液体製剤を調製する場合は、化合物(1)に、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて、常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。
注射剤を調製する場合は、化合物(1)に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。
坐剤を調製する場合は、化合物(1)に当業界において公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド等を加えた後、常法により製造することができる。
軟膏剤を調製する場合は、化合物(1)に通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。
貼付剤を調製する場合は、通常の支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。
前記の各製剤中の化合物(1)の含有量は、患者の症状、その剤形等により一定ではないが、一般に経口剤では約0.05~1000mg、注射剤では約0.01~500mg、坐剤では約1~1000mg程度である。
また、これらの製剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人(体重60kg)1日あたり約0.05~5000mg程度であり、0.1~1000mgが好ましく、これを1日1回又は2~3回程度に分けて投与するのが好ましい。
化合物(1)は、PPM1Dの阻害により治療又は予防効果が期待される疾患の治療に用いられる医薬用組成物の有効成分として非常に有用である。当該疾患としては、例えば、悪性腫瘍(癌)が挙げられ、例えば、頭頚部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられる。
化合物(1)は、免疫抑制剤や抗ホルモン薬の有効成分としても有用である。例えば、化合物(1)は臓器移植などにおける免疫抑制剤としても有用である。
化合物(1)を有効成分とするPPM1D阻害剤及び医薬用組成物が投与される動物は、特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物や、ニワトリ、ウズラ、カモ等の鳥類等が挙げられる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<His-PPM1D(1-420)の調製>
PPM1Dタンパク質(Protein ID:O15297/cDNA ID:U70385)は、触媒ドメイン(1位から420位)をコードしたcDNAをpColdI ベクター(TaKaRa社)に導入し、Hisタグ融合タンパク質として大腸菌を用いて発現させた。精製はBD-TALON樹脂(CLONTECH社)を用いた金属アフィニティークロマトグラフィーによって行い、溶出バッファー(150mM イミダゾール、PBS(pH7.5)、500mM NaCl、10% グリセロール、0.2% エタノール、1mM 2-メルカプトエタノール)を用いて目的タンパク質の溶出を行った。溶出されたPPM1Dタンパク質は透析バッファー(50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.1mM EGTA、0.02% 2-メルカプトエタノール)に対して16時間透析した後、50% グリセロールストック(酵素濃度1μM)として-80℃で保存した。
このPPM1Dの触媒ドメインのHisタグ融合タンパク質(His-PPM1D(1-420))を、PPM1D活性の測定に用いた。
<PPM1D活性(ホスファターゼ活性)のin vitroアッセイ>
基質には、p53の15位リン酸化Ser含有ペプチド(Ac-Val-Glu-Pro-Pro-Leu-Ser(P)-Gln-Glu-Thr-Phe-Ser-Asp-Leu-Trp-NH:Ser(P)はリン酸化Serを示す)を用いた。当該ペプチドは、Fmocアミノ酸(Novabiochem社製)を用いたFmoc固相法によって、固相ペプチド合成した。ペプチド画分は、Vydac C8(22×250mm)を使用した逆相HPLCにより手動で精製した。HPLCピークは、MALDI-TOF-MSで分析した。
ホスファターゼ活性は、放出された遊離リン酸塩を、BIOMOL GREEN Reagent(Enzo life sciences社製)を使用して測定することにより実施した。全てのアッセイは、2nM His-PPM1D(1-420)を含む反応用バッファー(50mM Tris-HCl(pH7.5)、50mM NaCl、30mM MgCl、0.1mM EGTA、0.02% 2-メルカプトエタノール、0.5% DMSO)中で、30℃、6分間実施した。
<細胞生存性アッセイ>
ヒト乳癌細胞株MCF7及びヒト非小細胞肺癌細胞株H1299(いずれも、ATCCから入手)を用いた。H1299にHA-PPM1Dを過剰発現させた形質転換細胞H1299(PMD-9)株は、非特許文献9に記載の方法で樹立した。
まず、96ウェルの平底プレートに、1×10個/ウェルの細胞を播種し、24時間インキュベートした。24時間インキュベート後の細胞を被験化合物で処理した。処理から3日後に、細胞の生存率を、MTSアッセイ又はビルケルチュルク計算盤(Erma社製)を用いて調べた。データのフィッティングは、KaleidaGraph4.0(HUKINKS)によって実施した。
<蛍光プローブを使用した細胞内取り込み率アッセイ>
まず、MCF7細胞を35mmディッシュに播種し、24時間インキュベートした。24時間インキュベート後、細胞を0.1μM 5-CFDA又は5-ABFDAで処理した。細胞は、蛍光顕微鏡(BZ-9000、キーエンス社製)で観察した。
<代謝分析>
代謝産物抽出物は、被験化合物で6時間処理した後に、10cmディッシュで90%コンフルエンシーであるMCF7細胞から、10%のPBSを含む10mLの氷冷アセトンを使用して調製した。当該代謝産物抽出物を、室温で一晩インキュベートした後、上澄みを乾燥させた。乾燥した抽出物を、100μLのアセトンで再懸濁させたものを、超音波処理した後、15,000rpmで5分間遠心処理して不溶性画分を沈殿除去した。得られた蒸発濃縮上清を、LC-MS/MSシステムに注入して分析した。当該システムでは、10×1mm ガードカラムを備えたInertSustainSwift C18(100×1mm、3μm)を用いてクロマトグラフィーを実施した。FT-MS及びFT-MS/MSは、ネガティブESIモードで、LTQ-Orbitrap XLにより300-1200m/zのスキャンで実施した。
[実施例1]
カルボキシ基がブロックされていない化合物SL-176、化合物SL-176のアルキルシリルエーテルがヒドロキシ基に置換された化合物SL-188、化合物SL-176のカルボキシ基がアミノアルキル基に置換された化合物SL-177、及び化合物SL-176のカルボキシ基がアミノアルキルエステル基に置換された化合物SL-180、SL-183を合成した。化合物A~I、及び化合物SL-176は、非特許文献10に記載の方法で合成した。
Figure 0007496112000004
Figure 0007496112000005
Figure 0007496112000006
上記式中、TESはトリエチルシリル基であり、TBSはtert-ブチルジメチルシリル基であり、Phthはフタロイル基であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。
5mL容試験管に化合物SL-176(16.6mg、36.3μmol)と炭酸セシウム(23.7mg、72.6μmol)を入れて、当該試験管内の空気をアルゴンで置換した後、乾燥ジメチルホルムアミド(0.24mL)に溶解させた。当該試験管に、遮光下でN-(2-ブロモエチル)フタルイミド(19.4 mg、76.3μmol)を加え、室温で5.5時間撹拌した。その後、氷冷して飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることによって、反応を停止させた。次いで、反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、有機層を水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。除媒後、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製して、不純物を含有する化合物Kが得られた。これを再度、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=4/1)精製し、純粋な化合物K(21.1mg、92%)を淡黄色液体として得た。化合物Kの分析結果は以下の通りであった。
IR (ATR): ν 2950, 2932, 2876, 2854, 1777, 1716, 1468, 1428, 1391, 1227, 1202, 1068, 1026, 836, 717 cm-1;
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 0.00 (6H, s), 0.54 (6H, q, J = 8.1 Hz), 0.86 (9H, s), 0.92 (9H, t, J = 7.5 Hz), 0.95-1.04 (1H, m), 1.19 (3H, s), 1.20-1.34 (5H, m), 1.52-1.68 (4H, m), 1.73 (1H, dd, J = 13.8, 2.9 Hz), 1.96 (1H, td, J = 11.5, 2.9 Hz), 3.71 (1H, brs), 3.93 (1H, ddd, J = 14.3, 6.3, 4.6 Hz), 3.98 (1H, ddd, J = 14.3, 6.3, 4.6 Hz), 4.07-4.12 (1H, m), 4.28 (1H, ddd, J = 11.5, 5.7, 4.6 Hz), 4.35 (1H, ddd, J = 11.5, 6.3, 4.6 Hz), 7.70-7.74 (2H, m), 7.83-7.87 (2H, m);
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ -5.01, 5.04, 7.00, 17.97, 18.28, 19.86, 25.83, 27.87, 34.42, 35.57, 37.02, 37.36, 39.31, 42.41, 46.32, 61.07, 67.49, 71.18, 123.28, 131.99, 133.96, 167.94, 178.25;
HRMS (FD): Calcd for C34H56NO6Si2 (M+H)+: 630.3646, found: 630.3627.
Figure 0007496112000007
5mL容試験管に化合物K(21.1mg、33.5μmol)を入れて、当該試験管内の空気をアルゴンで置換した後、無水エタノール(0.67mL)に溶解させた。当該試験管に、エチレンジアミン(22μL、33.5μmol)を加え、50℃で2時間撹拌した。その後、放冷して、減圧下で揮発性成分を除去した後、残渣をベンゼンで希釈して減圧濃縮する操作を3回行った。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=5/1の後、塩化メチレン/メタノール/トリエチルアミン=1:0:0~20:1:0~40:2:1)で精製し、化合物SL-180(14.9 mg、88%)を無色液体として得た。化合物SL-180の分析結果は以下の通りであった。
IR (ATR): ν 2950, 2934, 2876, 2858, 2360, 1726, 1462, 1229, 1068, 1007, 860, 773 cm-1;
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 0.02 (6H, s), 0.58 (6H, q, J = 8.1 Hz), 0.88 (9H, s), 0.96 (9H, t, J = 8.0 Hz), 1.05-1.16 (1H, m), 1.29 (3H, s), 1.25-1.45 (5H, m), 1.57-1.76 (4H, m), 1.83 (1H, dd, J = 13.8, 3.5 Hz), 2.08 (1H, td, J = 11.5, 3.5 Hz), 2.92 (2H, t, J = 5.8 Hz), 3.76 (1H, brs), 4.02-4.11 (2H, m), 4.12-4.16 (1H, m);
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ -5.01, 5.08, 7.01, 17.97, 18.46, 20.04, 25.82, 28.02, 34.43, 35.66, 37.37, 39.48, 41.12, 42.61, 46.49, 66.68, 67.43, 71.16, 178.52;
HRMS (FD): Calcd for C26H54NO4Si2 (M+H)+: 500.3591, found: 500.3613.
Figure 0007496112000008
50mL容ナスフラスコに、化合物SL-176(215 mg、0.471 mmol)と炭酸セシウム(307 mg、0.942 mmol)を入れて、当該ナスフラスコ内の空気をアルゴンで置換した後、乾燥ジメチルホルムアミド(4.0mL)に溶解させた。当該ナスフラスコに、tert-ブチルN-(4-ブロモブチル)カルバマート(238 mg、0.942 mmol)(非特許文献10)の乾燥ジメチルホルムアミド(3.4mL)溶液を加え、乾燥ジメチルホルムアミド(2.0mL)で洗い込んだ後、室温で19時間撹拌した。その後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることによって、反応を停止させた。次いで、反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、有機層を水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。除媒後、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製し、化合物L(287mg、97%)を無色液体として得た。化合物Lの分析結果は以下の通りであった。
IR (ATR): ν 2935, 2876, 1718, 1365, 1230, 1178, 1133, 1068, 1025, 1007, 908, 773, 733 cm-1;
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 0.02 (6H, s), 0.59 (6H, q, J = 8.0 Hz), 0.88 (9H, s), 0.96 (9H, t, J = 8.0 Hz), 1.04-1.14 (1H, m), 1.26 (3H, s), 1.28-1.46 (5H, m), 1.43 (9H, s), 1.50-1.73 (8H, m), 1.80 (1H, dd, J = 13.2, 2.9 Hz), 2.08 (1H, td, J = 11.5, 2.9 Hz), 3.14 (2H, d, J = 6.3 Hz), 3.74-3.78 (1H, brs), 4.05 (2H, q, J = 5.7 Hz), 4.12-4.15 (1H, m);
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ -5.01, 5.09, 7.01, 17.97, 18.43, 20.01, 25.82, 26.01, 26.03, 26.67, 27.98, 28.37, 28.54, 34.45, 35.66, 37.39, 39.38, 40.16, 42.55, 46.35, 63.82, 67.47, 71.19, 79.11, 155.90, 178.53;
HRMS (FD): Calcd for C33H66NO6Si2 (M+H)+: 628.4429, found: 628.4413.
Figure 0007496112000009
50mL容ナスフラスコに、化合物L(287 mg、0.456mmol)と2,6-ルチジン(0.48mL、4.1mmol)を入れて、当該ナスフラスコ内の空気をアルゴンで置換した後、乾燥ジクロロメタン(9.9mL)に溶解させた。当該ナスフラスコを-50℃に冷却した後、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート(0.496 mL、2.74mmol)を加え、0℃で2時間撹拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えることによって、反応を停止させた。次いで、反応液を酢酸エチルで3回抽出し、有機層を水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。除媒後、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(富士シリシア製NH Silica Gel (DM 1020)、 ヘキサン/酢酸エチル=1/1~0/1の後、クロロホルム/メタノール=40:1~20:1~10:1~3:1)で精製し、化合物SL-183(204mg、85%)を無色液体として得た。化合物SL-183の分析結果は以下の通りであった。
IR (ATR): ν 2932, 2875, 2857, 1724, 1463, 1230, 1180, 1134, 1068, 1025, 961, 835, 742, 723 cm-1;
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 0.02 (6H, s), 0.59 (6H, q, J = 8.0 Hz), 0.88 (9H, s), 0.96 (9H, t, J = 8.0 Hz), 1.04-1.14 (1H, m), 1.27 (3H, s), 1.28-1.44 (5H, m), 1.48-1.74 (8H, m), 1.81 (1H, dd, J = 13.8, 2.9 Hz), 2.08 (1H, td, J = 11.5, 2.9 Hz), 2.72 (2H, m), 3.76 (1H, brs), 4.00-4.09 (2H, m), 4.13-4.16 (1H, m);
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ -5.07, 5.03, 6.95, 14.05, 17.91, 18.38, 19.97, 22.58, 25.76, 25.98, 27.93, 30.10, 31.52, 34.40, 35.61, 37.35, 39.30, 41.70, 42.51, 46.29, 64.06, 67.43, 71.15, 178.52;
HRMS (FD): Calcd for C28H58NO4Si2 (M+H)+: 528.3904, found: 528.3923.
[参考例1]
第3級カルボン酸を有する下記式で表される化合物について、in vitroにおけるホスファターゼ活性と細胞生存性を調べた(n=3)。ClogD(分布係数の計算値)は、親油性の最も一般的に使用される測定パラメーターであり、オンラインプラットフォーム「chemicalize」(ChemAxon社製)を用いて求めた。測定結果を表1に示す。表中のIC50は、平均±S.D.である。
Figure 0007496112000010
Figure 0007496112000011
デカヒドロナフタレン基に結合している-OR101及び-OR102が、水素である化合物SL-188や嵩の小さいtert-ブチル基である化合物SL-189は、in vitroのホスファターゼ活性アッセイの結果得られたIC50が大きく、PPM1D阻害活性が非常に小さかった。また、細胞生存アッセイで得られたIC50も大きく、細胞増殖に対する阻害活性も比較的小さかった。これに対して、第3級カルボン酸を有する化合物のうち、-OR101及び-OR102が疎水性の嵩高い基である化合物SL-176、SL-194、SL-195、及びSL-196は、PPM1D阻害活性が高く、細胞増殖に対する阻害活性が高かった。特に、-OR101及び-OR102の両方がトリアルキルシリル基である化合物SL-176及びSL-196は、in vitro においてPPM1D特異的に脱リン酸化活性を抑制し、癌由来の細胞の細胞生存率を大きく低下させた。これらの結果から、第3級カルボン酸を有し、かつ立体的に嵩高い疎水性分子であることが、PPM1D阻害活性に重要であることがわかった。
[実施例2]
SL-176等の第3級カルボン酸をアミノアルキルエステル化した化合物について、in vitroにおけるホスファターゼ活性と細胞生存性を調べた(n=9)。測定結果を表2、図1及び図2に示す。表中のIC50は、平均±S.D.であり、「構造」欄には、SL-196中の第一級カルボン酸に相当する部分の構造を示す。
Figure 0007496112000012
図1及び表1に示すように、第3級カルボキシ基がアミノアルキルエステル化又はアミノアルキル化した化合物SL-177、SL-180及びSL-183は、in vitroのホスファターゼ活性はほとんどなかった。当該結果から、PPM1D阻害剤SL-176の第3級カルボキシ基をアミノアルキルエステル化した化合物は、それ自身のPPM1D阻害活性は失われており、このアミノアルキルエステル化はPPM1D阻害活性をマスクすることが明らかとなった。
一方で、化合物SL-177、SL-180及びSL-183の細胞生存アッセイで得られたIC50は、化合物SL-176と同様に小さく、細胞増殖抑制能を有することが示された。特に、アミノアルキルエステル化した化合物SL-180及びSL-183は、化合物SL-176よりも細胞増殖に対する阻害活性は高かった。また、図2に示すように、化合物SL-180及びSL-183は、用量反応曲線の閾値の濃度範囲が狭く、シャープな細胞増殖抑制効果を示した。当該結果から、これらの化合物は、狭い濃度範囲で効果的に作用可能な癌細胞増殖抑制能をもつPPM1D阻害剤であることがわかった。
MCF7細胞を、0.1μMの5-CFDA(5-カルボキシフルオレセインジアセテート)又は5-ABFDA(5-アミノブチルフルオレセインジアセテート)で処理し、処理後2、5、又は15分後に、蛍光顕微鏡を用いて蛍光イメージングを観察した。結果を図3に示す。この結果、5-ABFDAは処理直後に細胞に取り込まれ、5-ABFDAは5-CFDAよりも非常に速い取り込みを示した。当該結果から、アミノアルキルエステル基を持つ化合物は、カルボキシ基を持つ化合物よりも、細胞への取り込み効率が高いことが示された。アミノアルキルエステル化した化合物SL-180及びSL-183が化合物SL-176よりも高い細胞増殖抑制能を示したのは、アミノアルキルエステル基部分によって細胞透過性が高くなり、細胞への取り込み効率が向上したためと推察された。
化合物SL-183の細胞内代謝物を調べた。MCF7細胞を化合物SL-183で6時間処理し、得られた細胞懸濁液をアセトンに加えて抽出物を得た。得らえた抽出物を、LC-MS/MSで直接分析した。比較対象として、化合物SL-176についても同様にして細胞内代謝物を調べた。図4に、化合物SL-176で処理した細胞の抽出物のLC-MS/MSクロマトグラムを示し、図5に、化合物SL-183で処理した細胞の抽出物のLC-MS/MSクロマトグラムを示す。
図4に示すように、化合物SL-176処理細胞の抽出物では、リテンション時間が19.66分であり、MSスペクトルは、m/z 455の質量を示した。MS/MSスペクトルでは、2つのイオン、m/z 131.08及び209.11が検出された。一方で、図5に示すように、化合物SL-183処理細胞の抽出物では、リテンション時間が18.92分であり、MSスペクトルは、m/z 455の質量を示した。MS/MSスペクトルでは、2つのイオン、m/z 131.08及び209.11が検出された。つまり、化合物SL-183処理細胞の抽出物のMSスペクトル及びMS/MSスペクトルでは、化合物SL-176処理細胞の抽出物と同じMSフラグメントが観察された。当該結果から、細胞内に取り込まれた化合物SL-183は、化合物SL-176に変換されて高いPPM1D阻害機能を発揮することがわかった。すなわち、化合物SL-176等の第3級カルボン酸をもつPPM1D阻害剤を、そのカルボキシ基をアミノアルキルエステル化した化合物(1)は、細胞内に取り込まれる前にはPPM1D阻害活性を示さず、標的細胞内に取り込まれると高いPPM1D阻害活性を示すプロドラッグとして好適であることが示された。
さらに、化合物SL-183で処理したH1299細胞及びH1299(PMD-9)細胞の細胞生存性を調べた。比較対象として、化合物SL-176又は抗癌剤エトポシドを用いて同様に細胞生存性を調べた。H1299細胞及びH1299(PMD-9)細胞を、それぞれ、10mg/mLのエトポシド、10μMの化合物SL-176、又は10μMの化合物SL-183で処理し、処理から3日後の細胞の生存率を調べた。結果を図6に示す(n=3、平均値±標準偏差)。図中、「***」は、p<0.001(t検定)を示す。
図6に示すように、抗癌剤エトポシドは、H1299(PMD-9)細胞よりもH1299細胞の生存率を有意に抑制した。これに対して、化合物SL-176とSL-183はいずれも、H1299細胞よりもH1299(PMD-9)細胞に対して、強力な細胞増殖阻害を示した。この細胞増殖阻害能は、化合物SL-183のほうが化合物SL-176よりも強力であった。当該結果は、化合物SL-183が、細胞レベルでPPM1D特異性を発揮することを示す。

Claims (4)

  1. 下記式(1a)で表される化合物からなる、細胞内に取り込まれるとPPM1D阻害活性を示す、プロドラッグ
    Figure 0007496112000013
    [式中、R 101 は(C Si-基であり、R 102 はtBu(CH Si-基であり、pは1~6の整数である。]
  2. 細胞内のPPM1D活性を阻害するために用いられる、請求項1記載のプロドラッグ
  3. 請求項1又は2に記載のプロドラッグを有効成分とする、医薬用組成物。
  4. 癌治療に用いられる、請求項に記載の医薬用組成物。
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