一態様において、本発明は、単独で存在するヘテロ多量体であって、当該ヘテロ多量体は、第1の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチド及び第2の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドを含む、ヘテロ二量体の免疫グロブリンヒンジドメインを含み、
(i)第1の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドは、次のアミノ酸置換:P243K、A244K、P245K、N/E246K及びL247Kを含み、且つ
(ii)第2の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドは、次のアミノ酸置換:P243D、A244D、P245D、N/E246D及びL247Dを含み、
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う、
単独で存在するヘテロ多量体を対象とする。
別の態様において、本発明は、単独で存在するヘテロ多量体であって、当該ヘテロ多量体は、第1の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチド及び第2の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドを含む、ヘテロ二量体の免疫グロブリンヒンジドメインを含み、
(i)第1の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドは、次のアミノ酸置換:A244Hを含み、且つ
(ii)第2の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドは、次のアミノ酸置換:N/E246D及びL247Dを含み、
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う、
単独で存在するヘテロ多量体を対象とする。
別の態様において、本発明は、単独で存在するヘテロ多量体であって、当該ヘテロ多量体は、第1の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチド及び第2の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドを含む、ヘテロ二量体の免疫グロブリンヒンジドメインを含み、
(i)第1の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドは、次のアミノ酸置換:H237K、T238K、A244K及びN/E246Kを含み、且つ
(ii)第2の免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドは、次のアミノ酸置換:H237D、T238D、A244D及びN/E246Dを含み、
アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う、
単独で存在するヘテロ多量体を対象とする。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体の各ヒンジドメインポリペプチドは、L248C置換をさらに含む。
ある特定の実施形態では、各免疫グロブリンヒンジドメインポリペプチドは、CH3ドメインをさらに含む。一実施形態では、1つのCH3ドメインは、F405L、F405A、F405D、F405E、F405H、F405I、F405K、F405M、F405N、F405Q、F405S、F405T、F405V、F405W又はF405Yの変異を含み、他方のCH3ドメインは、K409R変異を含み、アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う。一実施形態では、1つのCH3ドメインは、T366W変異を含み、他方のCH3ドメインは、T366S、L368A、Y407Vの各変異を含み、アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う。一実施形態では、1つのCH3ドメインは、K/R409D及びK370Eの各変異を含み、他方のCH3ドメインは、D399K及びE357Kの各変異を含み、アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う。
特定の実施形態では、ヘテロ二量体の抗体は、392位及び409位に負荷電アミノ酸(例えば、K392D及びK409Dの置換)を含む第1の重鎖、及び356位及び399位に正荷電アミノ酸(例えば、E356K及びD399Kの置換)を含む第2の重鎖を含む。他の特定の実施形態では、ヘテロ二量体の抗体は、392位、409位及び370位に負荷電アミノ酸(例えば、K392D、K409D及びK370Dの置換)を含む第1の重鎖、及び356位、399位及び357位に正荷電アミノ酸(例えば、E356K、D399K及びE357Kの置換)を含む第2の重鎖を含む。関連する実施形態では、第1の重鎖は、抗CGRP受容体抗体に由来し、第2の重鎖は、抗PAC1受容体抗体に由来する。関連する他の実施形態では、第1の重鎖は、抗PAC1受容体抗体に由来し、第2の重鎖は、抗CGRP受容体抗体に由来する。
一実施形態では、1つのCH3ドメインは、Y349C変異を含み、他方のCH3ドメインは、E356C又はS354Cの変異のいずれかを含み、アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う。一実施形態では、1つのCH3ドメインは、Y349C及びT366Wの各変異を含み、他方のCH3ドメインは、E356C、T366S、L368A及びY407Vの各変異を含み、アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う。一実施形態では、1つのCH3ドメインは、Y349C及びT366Wの各変異を含み、他方のCH3ドメインは、S354C、T366S、L368A、Y407Vの各変異を含み、アミノ酸残基の付番は、Kabatに記載されているEUインデックスに従う。
ある特定の実施形態では、免疫グロブリンヒンジ領域は、IgG1ヒンジ領域である。
ある特定の実施形態では、ヘテロ多量体は、二重特異性又は多重特異性の抗体である。
本明細書で使用する場合、「抗原結合タンパク質」という用語は、1つ又は複数の標的抗原に特異的に結合するタンパク質を指す。抗原結合タンパク質には、抗体及びその機能的断片を含めることができる。「機能的抗体断片」とは、完全長の重鎖及び/又は軽鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、それでもなお抗原に特異的に結合することができる、抗体の一部である。機能的抗体断片としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片、及び相補性決定領域(CDR)断片が挙げられるが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、又はラクダ科の動物などの任意の哺乳動物源に由来するものとすることができる。機能的抗体断片は、標的抗原の結合について、インタクトな抗体と比肩することができ、断片は、インタクトな抗体の修飾(例えば、酵素的又は化学的切断)によって産生され得るか、又は組換えDNA技術又はペプチド合成を使用して新規に合成され得る。
抗原結合タンパク質はまた、単一のポリペプチド鎖又は複数のポリペプチド鎖に組み込まれた1つ又は複数の機能的抗体断片を含むタンパク質を含むこともできる。例えば、抗原結合タンパク質としては、以下に限定されないが、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ(例えば、欧州特許第404,097号明細書、国際公開第93/11161号パンフレット、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.90:6444-6448,1993を参照);イントラボディ;ドメイン抗体(単一のVL若しくはVHドメイン又はペプチドリンカーによって結合した2つ以上のVHドメイン、Ward et al.,Nature,Vol.341:544-546,1989を参照);マキシボディ(Fc領域に融合した2つのscFv、Fredericks et al.,Protein Engineering,Design & Selection,Vol.17:95-106,2004及びPowers et al.,Journal of Immunological Methods,Vol.251:123-135,2001を参照);トリアボディ;テトラボディ;ミニボディ(CH3ドメインに融合したscFv、Olafsen et al.,Protein Eng Des Sel.,Vol.17:315-23,2004を参照);ペプチボディ(Fc領域に付着した1つ又は複数のペプチド、国際公開第00/24782号パンフレットを参照);線状抗体(相補的軽鎖ポリペプチドとともに一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)、Zapata et al.,Protein Eng.,Vol.8:1057-1062,1995を参照);小モジュラー免疫薬(米国特許公報第20030133939号明細書を参照);及び免疫グロブリン融合タンパク質(例えば、IgG-scFv、IgG-Fab、2scFv-IgG、4scFv-IgG、VH-IgG、IgG-VH、及びFab-scFv-Fc)を挙げることができる。
「多重特異性」とは、抗原結合タンパク質が、2つ以上の異なる抗原に特異的に結合することができることを意味する。「二重特異性」とは、抗原結合タンパク質が、2つの異なる抗原に特異的に結合することができることを意味する。本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質は、類似の結合アッセイ条件下で、他の無関係なタンパク質に対するその親和性と比較して、標的抗原に対して有意に高い結合親和性を有し、その結果、その抗原を識別することができる場合に、標的抗原に「特異的に結合する」。抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、平衡解離定数(KD)≦1×10-6Mを有し得る。抗原結合タンパク質は、KDが≦1×10-8Mである場合に「高親和性」を伴って抗原に特異的に結合する。
親和性は様々な技術を使用して決定され、その一例は、親和性ELISAアッセイである。様々な実施形態では、親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore(登録商標)によるアッセイ)によって決定される。この方法を使用して、会合速度定数(ka、単位:M-1s-1)及び解離速度定数(kd、単位:s-1)を測定することができる。次いで、平衡解離定数(KD、単位:M)を、運動速度定数の比(kd/ka)から計算することができる。一部の実施形態では、親和性は、Rathanaswami et al.Analytical Biochemistry,Vol.373:52-60,2008に記載されている結合平衡除外法(Kinetic Exclusion Assay:KinExA)などの速度論的方法によって決定される。KinExAアッセイを使用して、平衡解離定数(KD、単位:M)及び会合速度定数(ka、単位:M-1s-1)を測定することができる。解離速度定数(kd、単位:s-1)は、これらの値(KD×ka)から計算することができる。他の実施形態では、親和性は、平衡/溶液法によって決定される。ある特定の実施形態では、親和性は、FACS結合アッセイによって決定される。
一部の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質は、kd(解離速度定数)によって測定される結合親和力が、約10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10s-1以下(値が低いほど結合親和力が高いことを示す)、及び/又はKD(平衡解離定数)によって測定される結合親和性が、約10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、10-15、10-16M以下(値が低いほど結合親和性が高いことを示す)などの望ましい特性を示す。
本明細書で使用する場合、「結合ドメイン」と互換的に使用される「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原と相互作用し、その抗原に対する特異性及び親和性を抗原結合タンパク質に付与するアミノ酸残基を含有する抗原結合タンパク質の領域を指す。
本明細書で使用する場合、「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域(「最小認識単位」又は「超可変領域」とも呼ばれる)を指す。3つの重鎖可変領域CDR(CDRH1、CDRH2及びCDRH3)及び3つの軽鎖可変領域CDR(CDRL1、CDRL2及びCDRL3)が存在する。「CDR領域」という用語は、本明細書で使用する場合、単一の可変領域に存在する3つのCDR(即ち、3つの軽鎖CDR又は3つの重鎖CDR)の群を指す。2つの鎖の各々におけるCDRは、通常、フレームワーク領域によって整列させられ、標的タンパク質の特異的エピトープ又はドメインと特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端まで、天然に存在する軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は両方とも、通常、以下のこれらの要素の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4と一致する。これらのドメインの各々において位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための付番方式が考案されている。この付番方式は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987及び1991,NIH,Bethesda,MD)又はChothia & Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:878-883に定義されている。所与の抗体の相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)は、この方式を使用して同定することができる。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の一部の実施形態では、結合ドメインは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖可変断片(scFv)、又はナノボディを含む。一実施形態では、両方の結合ドメインがFab断片である。別の実施形態では、1つの結合ドメインはFab断片であり、他方の結合ドメインはscFvである。
抗体をパパインで消化すると、「Fab」断片と呼ばれる2つの同じ抗原結合性断片(その各々が単一の抗原結合部位を有する)及び残部の「Fc」断片(免疫グロブリン定常領域を含有する)が産生される。Fab断片は、可変ドメイン、並びに軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)の全てを含有する。このように、「Fab断片」は、1つの免疫グロブリン軽鎖(軽鎖可変領域(VL)及び定常領域(CL))並びに1つの免疫グロブリン重鎖のCH1領域及び可変領域(VH)から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。Fc断片は炭水化物を示し、抗体の1つのクラスを別のクラスから識別する多くの抗体エフェクター機能(結合補体及び細胞受容体など)に関与する。「Fd断片」は、免疫グロブリン重鎖に由来するVHドメイン及びCH1ドメインを含む。Fd断片は、Fab断片の重鎖成分を表す。
「Fab’断片」は、CH1ドメインのC末端に、抗体ヒンジ領域に由来する1つ又は複数のシステイン残基を有するFab断片である。
「F(ab’)2断片」は、ヒンジ領域で、重鎖間のジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab’断片を含む二価の断片である。
「Fv」断片は、抗体由来の完全抗原認識及び結合部位を含有する最小の断片である。この断片は、緊密な非共有会合での、1つの免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び1つの免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)の二量体からなる。この構成において、各可変領域の3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面に抗原結合部位を規定する。単一の軽鎖又は重鎖の可変領域(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFv断片の半分)は、抗原を認識し、結合する能力を有するが、VH及びVLの両方を含む結合部位全体よりも親和性は低い。
「単鎖可変抗体断片」又は「scFv断片」は、抗体のVH領域及びVL領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在し、任意選択により、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするペプチドリンカーを、VH領域とVL領域の間に含む(例えば、Bird et al.,Science,Vol.242:423-426,1988;及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.85:5879-5883,1988を参照)。
「ナノボディ」は、重鎖抗体の重鎖可変領域である。そのような可変ドメインは、そのような重鎖抗体の完全に機能的な最小の抗原結合性断片であり、分子質量はわずか15kDaである。Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853-57,2004を参照されたい。軽鎖を欠く機能的重鎖抗体は、ある特定の種の動物、例えば、コモリザメ、テンジクザメ、並びにラクダ科(Camelidae)、例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びラマでは天然に生じる。これらの動物において、抗原結合部位は、単一ドメインであるVHHドメインになる。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成し、即ち、これらの機能的抗体は、構造H2L2を有するのみの重鎖のホモ二量体(「重鎖抗体」又は「HCAbs」と呼ぶ)である。ラクダ化VHHは、報告によれば、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含有し、CH1ドメインを欠くIgG2定常領域及びIgG3定常領域と再結合する。ラクダ化VHHドメインは、抗原に高親和性で結合し(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.,Vol.276:26285-90,2001)、溶液で高い安定性を有する(Ewert et al.,Biochemistry,Vol.41:3628-36,2002)ことが判明している。ラクダ化重鎖を有する抗体を生成する方法は、例えば、米国特許公報第2005/0136049号明細書及び同第2005/0037421号明細書に記載されている。別の足場は、サメV-NAR足場とより密接に適合するヒト可変様ドメインから作製することができ、長い貫通性のループ構造のフレームワークを提供し得る。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の特定の実施形態では、結合ドメインは、所望の抗原に特異的に結合する抗体又は抗体断片の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む。
本明細書において「可変ドメイン」(軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH))と互換的に使用される「可変領域」は、抗体の抗原への結合に直接関与する、免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖のそれぞれにおける領域を指す。上記のように、可変軽鎖領域及び可変重鎖領域は、同じ一般構造を有し、各領域は4つのフレームワーク(FR)領域を含み、それらの配列は、広範に保存され、3つのCDRによって連結されている。フレームワーク領域は、β-シート構造を採用し、CDRは、β-シート構造を連結するループを形成し得る。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によってそれらの三次元構造中に保持され、他方の鎖のCDRとともに抗原結合部位を形成する。
標的抗原に特異的に結合する結合ドメインは、a)これらの抗原に対する既知の抗体、又はb)抗原タンパク質若しくはその断片を使用する新規な免疫化法により、ファージディスプレイにより、又は他の常法により得られる新規な抗体若しくは抗体断片に由来するものとすることができる。二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインの起源である抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体とすることができる。ある特定の実施形態では、結合ドメインの起源である抗体は、モノクローナル抗体である。これらの又は他の実施形態では、抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であり、IgG1型、IgG2型、IgG3型、又はIgG4型のものとすることができる。
「モノクローナル抗体」(又は「mAb」)という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る可能性のある天然の変異以外は同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、通常、様々なエピトープに対する様々な抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、個別の抗原部位又はエピトープに対するものである。モノクローナル抗体は、当技術分野において公知の任意の技術を使用して、例えば、免疫化スケジュールの完了後にトランスジェニック動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって産生することができる。脾臓細胞は、当技術分野において公知の任意の技術を使用して、例えば、脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを産生することによって不死化することができる。ハイブリドーマを産生する融合手順において使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは非抗体産生性であり、融合効率が高く、酵素が欠損しているため、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持するある特定の選択培地の中では増殖が不可能である。マウス融合において使用するのに好適な細胞株の例としては、Sp-20、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag41、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG1.7及びS194/5XXOBulが挙げられ、ラット融合において使用される細胞株の例としては、R210.RCY3、Y3-Ag1.2.3、IR983F及び4B210が挙げられる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2及びUC729-6である。
一部の例では、動物(例えば、ヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)を標的抗原で免疫化し、免疫化した動物から脾臓細胞を採取し、採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合し、それにより、ハイブリドーマ細胞を生成し、ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立し、標的抗原に結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによって、ハイブリドーマ細胞株が産生される。
ハイブリドーマ細胞株によって分泌されたモノクローナル抗体は、当技術分野において公知の任意の技術、例えば、プロテインA-Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどを使用して精製することができる。ハイブリドーマ又はmAbsをさらにスクリーニングして、例えば、標的抗原を発現している細胞に結合する能力、標的抗原リガンドが、そのそれぞれの受容体への結合をブロック若しくは妨害する能力、又は受容体のいずれもを機能的にブロックする能力など、特定の性質を有するmAbsを、例えば、cAMPアッセイを使用して同定することができる。
一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインは、ヒト化抗体に由来するものでもよい。「ヒト化抗体」は、領域(例えば、フレームワーク領域)が、対応するヒト免疫グロブリン由来の領域を含むように修飾された抗体を指す。一般に、ヒト化抗体は、最初に非ヒト動物で作られたモノクローナル抗体から産生することができる。典型的には抗体の非抗原認識部分に由来する、このモノクローナル抗体のある特定のアミノ酸残基は、対応するアイソタイプのヒト抗体における対応する残基と相同となるように修飾される。ヒト化は、例えば、様々な方法を使用し、齧歯類の可変領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置換することによって実行することができる(例えば、米国特許第5,585,089号明細書及び同第5,693,762号明細書;Jones et al.,Nature,Vol.321:522-525,1986;Riechmann et al.,Nature,Vol.332:323-27,1988;Verhoeyen et al.,Science,Vol.239:1534-1536,1988を参照)。別の種において生成された抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスヒトFRに移植することができる。コンセンサスヒトFRを作り出すために、複数のヒト重鎖アミノ酸配列又はヒト軽鎖アミノ酸配列に由来するFRを整列させて、コンセンサスアミノ酸配列を同定することができる。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインの起源とすることができる標的抗原に対して生成される新規な抗体は、完全ヒト抗体とすることができる。「完全ヒト抗体」は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来するか、又はそれを示す、可変領域及び定常領域を含む抗体である。完全ヒト抗体の産生を実施するために提供される1つの具体的な手段は、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性のIg遺伝子が不活性化されたマウスに、ヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を導入することは、任意の所望の抗原で免疫化することができる動物であるマウスにおいて、完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)を産生させる一手段である。完全ヒト抗体を使用すると、マウスのmAb又はマウス由来のmAbを治療剤としてヒトに投与することによって生じることがあり得る免疫原性及びアレルギー性の応答を最小化することができる。
完全ヒト抗体は、内因性の免疫グロブリンの産生がなく、ヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(通常はマウス)を免疫化することによって産生することができる。この目的のための抗原は、通常、6つ以上の連続アミノ酸を有し、任意選択により、担体にコンジュゲートされる(ハプテンなど)。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2551-2555;Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255-258;及びBruggermann et al.,1993,Year in Immunol.7:33を参照されたい。そのような方法の一例では、トランスジェニック動物は、マウスの免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖をコードする内因性のマウス免疫グロブリン遺伝子座を無能化し、ヒト重鎖タンパク質及び軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を含有するヒトゲノムDNAの大型断片をマウスゲノムに挿入することによって作製される。次いで、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の完全補体より少ない補体を有する部分的に修飾された動物を交雑して、所望の免疫系修飾を全て有する動物を得る。免疫原が投与されると、これらのトランスジェニック動物は、その免疫原に免疫特異性があるが、可変領域を含めて、マウスのアミノ酸配列ではなく、ヒトのアミノ酸配列を有する抗体を産生する。そのような方法の追加詳細については、例えば、国際公開第96/33735号パンフレット及び国際公開第94/02602号パンフレットを参照されたい。ヒト抗体を作製するためのトランスジェニックマウスに関連するさらなる方法は、米国特許第5,545,807号明細書、同第6,713,610号明細書、同第6,673,986号明細書、同第6,162,963号明細書、同第5,939,598号明細書、同第5,545,807号明細書、同第6,300,129号明細書、同第6,255,458号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,874,299号明細書及び同第5,545,806号明細書、PCT公報の国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第90/04036号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/30498号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、及び欧州特許第546073B1号明細書及び欧州特許出願公開第EP546073A1号明細書に記載されている。
上記のトランスジェニックマウスは、本明細書では「HuMab」マウスと称し、再配列されていないヒト重鎖(ミュー及びガンマ)及びカッパ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を、内因性のミュー及びカッパ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異とともに含有する(Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859)。したがって、マウスは、マウスIgM又はカッパの発現の減少を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチ及び体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgGカッパモノクローナル抗体を生成する(Lonberg et al.,前出;Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546)。HuMabマウスの調製は、Taylor et al.,1992,Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen et al.,1993,International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al.,1994,J.Immunol.152:2912-2920;Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859;Lonberg,1994,Handbook of Exp.Pharmacology 113:49-101;Taylor et al.,1994,International Immunology 6:579-591;Lonberg and Huszar,1995,Intern.Rev.Immunol.13:65-93;Harding and Lonberg,1995,Ann.N.Y Acad.Sci.764:536-546;Fishwild et al.,1996,Nature Biotechnology 14:845-851に詳細に記載されており、これらの文献はあらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、米国特許第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,789,650号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,814,318号明細書、同第5,874,299号明細書、及び同第5,770,429号明細書、並びに米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22646号パンフレット、及び国際公開第92/03918号パンフレットを参照されたい。その全ての開示内容は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらのトランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を産生するために利用される技術は、国際公開第98/24893号パンフレット、及びMendez et al.,1997,Nature Genetics 15:146-156にも開示されており、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
ヒト由来抗体はまた、ファージディスプレイ技術を使用して生成することもできる。ファージディスプレイは、例えば、Dower et al.,国際公開第91/17271号パンフレット、McCafferty et al.,国際公開第92/01047号パンフレット、及びCaton and Koprowski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6450-6454(1990)に記載されており、その各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ファージ技術によって産生される抗体は、通常、細菌において、抗原結合断片、例えば、Fv断片又はFab断片として産生され、このため、エフェクター機能を欠く。エフェクター機能は、2つの戦略のうち1つによって導入することができる。即ち、断片を操作して、必要に応じ、哺乳動物細胞で発現する完全な抗体にするか、又はエフェクター機能を誘発することができる第2の結合部位を有する二重特異性抗体断片にするか、のいずれかとすることができる。通常、抗体のFd断片(VH-CH1)及び軽鎖(VL-CL)は、PCRによって別々にクローン化され、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリーにおいてランダムに組み換えられ、その後、特定の抗原に結合するために選択することができる。抗体断片はファージ表面に発現し、Fv又はFab(したがって抗体断片をコードするDNAを含有するファージ)の抗原結合による選択は、パニングと呼ばれる手順である抗原結合及び再増幅を数ラウンド行うことによって実現される。抗原に特異的な抗体断片は濃縮され、最終的に単離される。ファージディスプレイ技術はまた、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる、齧歯類モノクローナル抗体のヒト化のための手法において使用することもできる(Jespers,L.S.,et al.,Bio/Technology 12,899-903(1994)を参照)。これについては、マウスモノクローナル抗体のFd断片を、ヒト軽鎖ライブラリーと組み合わせて提示することが可能であり、得られたハイブリッドFabライブラリーは、次いで、抗原を用いて選択することができる。これにより、マウスFd断片は、選択を誘導するテンプレートを提供する。続いて、選択されたヒト軽鎖は、ヒトFd断片ライブラリーと組み合わされる。得られたライブラリーの選択により、完全なヒトFabが得られる。
ある特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は抗体である。本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、2つの軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kDa)及び2つの重鎖ポリペプチド(それぞれ約50~70kDa)を含む四量体の免疫グロブリンタンパク質を指す。「軽鎖」又は「免疫グロブリン軽鎖」という用語は、アミノ末端からカルボキシル末端までに、単一の免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)及び単一の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)を含むポリペプチドを指す。免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)は、カッパ(κ)又はラムダ(λ)とすることができる。「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」という用語は、アミノ末端からカルボキシル末端までに、単一の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)、免疫グロブリンヒンジ領域、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)及び任意選択により、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン4(CH4)を含むポリペプチドを指す。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)として分類され、抗体のアイソタイプを、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。IgGクラス抗体及びIgAクラス抗体は、サブクラス、即ち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4並びにIgA1及びIgA2に、それぞれさらに分けられる。IgG抗体、IgA抗体、及びIgD抗体の重鎖は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有し、IgM抗体及びIgE抗体の重鎖は、4つのドメイン(CH1、CH2、CH3及びCH4)を有する。免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、サブタイプを含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来するものとすることができる。抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインとの間(即ち、軽鎖と重鎖との間)、及び抗体重鎖のヒンジ領域間の、ポリペプチド間ジスルフィド結合を介して連結されている。
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、ヘテロ二量体の抗体(本明細書では「ヘテロ免疫グロブリン」又は「ヘテロIg」と互換的に使用される)であり、これは2つの異なる軽鎖及び2つの異なる重鎖を含む抗体のことである。
ヘテロ二量体の抗体は、任意の免疫グロブリン定常領域を含むことができる。「定常領域」という用語は、本明細書で使用する場合、可変領域以外の抗体の全てのドメインを指す。定常領域は、抗原の結合に直接には関与しないが、種々のエフェクター機能を発揮する。上記のように、抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、特定のアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM)及びサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)に分けられる。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型又はラムダ型の軽鎖定常領域、例えば、5つの抗体アイソタイプ全てに見出されるヒトのカッパ型又はラムダ型の軽鎖定常領域とすることができる。
ヘテロ二量体の抗体の重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型又はミュー型の重鎖定常領域、例えば、ヒトのアルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型又はミュー型の重鎖定常領域とすることができる。一部の実施形態では、ヘテロ二量体の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。一実施形態では、ヘテロ二量体の抗体は、ヒトIgG1免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。別の実施形態では、ヘテロ二量体の抗体は、ヒトIgG2免疫グロブリン由来の重鎖定常領域を含む。
一実施形態では、本開示の二重特異性抗体はDuobody(商標)である。Duobodyは、DuoBody(商標)テクノロジープラットフォーム(Genmab A/S)によって、例えば、国際公開第2008/119353号パンフレット、国際公開第2011/131746号パンフレット、国際公開第2011/147986号パンフレット、及び国際公開第2013/060867号パンフレット、Labrijn A F et al.,PNAS,110(13):5145-5150(2013)、Gramer et al.,mAbs,5(6):962-973(2013)、並びにLabrijn et al.,Nature Protocols,9(10):2450-2463(2014)に記載されているように作製することができる。この技術を使用して、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有する第1の単一特異性抗体の半分を、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有する第2の単一特異性抗体の半分と組み合わせることができる。得られたヘテロ二量体は、第1の抗体に由来する1つの重鎖及び1つの軽鎖と、第2の抗体に由来する1つの重鎖及び1つの軽鎖とを対にして含有する。両方の単一特異性抗体が異なる抗原の異なるエピトープを認識する場合、得られるヘテロ二量体は二重特異性抗体である。
DuoBody(商標)プラットフォームについては、単一特異性抗体の各々は、CH3ドメイン中に単一の点変異を有する重鎖定常領域を含む。これらの点変異により、得られる二重特異性抗体のCH3ドメイン間では、変異のない単一特異性抗体のどちらのCH3ドメイン間よりも、強い相互作用が可能になる。各単一特異性抗体の単一の点変異は、重鎖定常領域のCH3ドメイン中の残基366位、368位、370位、399位、405位、407位又は409位(EU付番)とすることができる(国際公開第2011/131746号パンフレットを参照)。さらに、単一の点変異は、1つの単一特異性抗体の中で、他方の単一特異性抗体に対して異なる残基に位置する。例えば、1つの単一特異性抗体は、変異F405L(EU付番;残基405でのフェニルアラニンからロイシンへの変異)、又はF405A、F405D、F405E、F405H、F405I、F405K、F405M、F405N、F405Q、F405S、F405T、F405V、F405W及びF405Yの各変異のうち1つを含むことができ、他方の単一特異性抗体は、変異K409R(EU付番;残基409でのリシンからアルギニンへの変異)を含むことができる。単一特異性抗体の重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1アイソタイプ)とすることができ、DuoBody(商標)技術によって産生される二重特異性抗体は、修飾されて、Fc媒介性エフェクター機能を改変する(例えば、低減する)こと、及び/又は半減期を改善することができる。Duobody(商標)を作製する一方法は、以下:(i)1つの対となる点変異(即ち、K409Rと、F405L(又はF405A、F405D、F405E、F405H、F405I、F405K、F405M、F405N、F405Q、F405S、F405T、F405V、F405W及びF405Yの各変異のうち1つ)(EU付番))とをCH3ドメイン中に含有する2つの親IgG1の発現を分離すること;(ii)in vitroにて許容酸化還元条件下で親IgG1を混合して、半分子の組換えを可能にすること;(iii)還元剤を除去して、鎖間ジスルフィド結合を再酸化させること;及び(iv)クロマトグラフィーによる又は質量分析(MS)による方法を使用して、交換効率及び最終産物を分析することを含む(Labrijn et al.,Nature Protocols,9(10):2450-2463(2014)を参照)。
二重特異性抗体を作製する別の例示的な方法は、ノブイントゥーホール技術(Ridgway et al.,Protein Eng.,9:617-621(1996);国際公開第2006/028936号パンフレット)によるものである。二重特異性抗体を作製するための主要な欠点であるIg重鎖の誤対形成の問題は、この技術において、IgG中でCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸を変異させることによって低減される。2つの重鎖が直接的に相互作用するCH3ドメイン内の位置で、小さい側鎖(ホール)を有するアミノ酸が1つの重鎖の配列の中に導入され、大きい側鎖(ノブ)を有するアミノ酸が他方の重鎖の、相手として相互作用する残基位置に導入される。一部の例では、本開示の抗体は、二重特異性抗体を優先的に形成するために、2つのポリペプチド間の界面で相互作用する選択されたアミノ酸を変異させることによってCH3ドメインが修飾されている、免疫グロブリン鎖を有する。二重特異性抗体は、同じサブクラス又は異なるサブクラスの免疫グロブリン鎖から構成され得る。一例では、gp120及びCD3に結合する二重特異性抗体は、T366W(EU付番)変異を「ノブ鎖」に含み、T366S、L368A、Y407V(EU付番)の各変異を「ホール鎖」に含む。ある特定の実施形態では、例えば、Y349C変異を「ノブ鎖」に導入し、E356C変異又はS354C変異を「ホール鎖」に導入することによって、追加の鎖間ジスルフィド架橋がCH3ドメイン間に導入される。ある特定の実施形態では、R409D、K370Eの各変異が「ノブ鎖」に導入され、D399K、E357Kの各変異が「ホール鎖」に導入される。他の実施形態では、Y349C、T366Wの各変異が鎖のうちの1つに導入され、E356C、T366S、L368A、Y407Vの各変異が相手側の鎖に導入される。一部の実施形態では、Y349C、T366Wの各変異が1つの鎖に導入され、S354C、T366S、L368A、Y407Vの各変異が相手側の鎖に導入される。一部の実施形態では、Y349C、T366Wの各変異が1つの鎖に導入され、S354C、T366S、L368A、Y407Vの各変異が相手側の鎖に導入される。さらに他の実施形態では、Y349C、T366Wの各変異が1つの鎖に導入され、S354C、T366S、L368A、Y407Vの各変異が相手側の鎖に導入される(全てEU付番)。
二重特異性抗体を作製するさらに別の方法は、CrossMab技術である。CrossMabは、2つの完全長抗体の各半分で構成されるキメラ抗体である。この技術は、鎖を正確に対形成するために、2つの技術:(i)2つの重鎖間の正確な対形成に有利なノブイントゥーホールと;(ii)軽鎖の誤対形成を回避する非対称を導入するための、2つのFabのうち1つの重鎖と軽鎖との間の交換とを組み合わせている。Ridgway et al.,Protein Eng.,9:617-621(1996);Schaefer et al.,PNAS,108:11187-11192(2011)を参照されたい。CrossMabは、2つ以上の標的を標的化するために、又は1つの標的に対して2:1形式などの二価性を導入するために、2つ以上の抗原-結合ドメインを組み合わせることができる。
特定の重鎖とその同族の軽鎖との会合を促進するために、重鎖及び軽鎖の両方は、相補的アミノ酸置換を含有し得る。本明細書で使用する場合、「相補的アミノ酸置換」とは、一方の鎖における正荷電アミノ酸への置換と、他方の鎖における負荷電アミノ酸置換とを対にすることを指す。例えば、一部の実施形態では、重鎖は、荷電アミノ酸を導入するために少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、対応する軽鎖は、荷電アミノ酸を導入するために少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、重鎖に導入される荷電アミノ酸は、軽鎖に導入されるアミノ酸の反対の電荷を有する。ある特定の実施形態では、1つ又は複数の正荷電残基(例えば、リシン、ヒスチジン又はアルギニン)を、第1の軽鎖(LC1)に導入することができ、1つ又は複数の負荷電残基(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)を、LC1/HC1の結合界面で、対になる重鎖(HC1)に導入することができ、一方、1つ又は複数の負荷電残基(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)を、第2の軽鎖(LC2)に導入することができ、1つ又は複数の正荷電残基(例えば、リシン、ヒスチジン又はアルギニン)を、LC2/HC2の結合界面で、対になる重鎖(HC2)に導入することができる。静電相互作用は、界面で反対に荷電した残基(極性)が引き合うため、LC1をHC1と対形成させ、且つLC2をHC2と対形成させるように誘導することになる。界面で同じ荷電残基(極性)を有する重鎖/軽鎖の対(例えば、LC1/HC2及びLC2/HC1)は、反発することになり、結果として不所望なHC/LCの対形成が抑制される。
これらの及び他の実施形態では、重鎖のCH1ドメイン又は軽鎖のCLドメインは、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、そのため、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ又は複数の正荷電アミノ酸は、1つ又は複数の負荷電アミノ酸で置換される。或いは、重鎖のCH1ドメイン又は軽鎖のCLドメインは、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、そのため、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ又は複数の負荷電アミノ酸は、1つ又は複数の正荷電アミノ酸で置換される。一部の実施形態では、F126、P127、L128、A141、L145、K147、D148、H168、F170、P171、V173、Q175、S176、S183、V185及びK213から選択されるEU位置でのヘテロ二量体の抗体中の第1の及び/又は第2の重鎖のCH1ドメインにおける1つ又は複数のアミノ酸は、荷電アミノ酸で置換される。ある特定の実施形態では、負荷電又は正荷電のアミノ酸で置換するのに好ましい残基はS183(EU付番方式)である。一部の実施形態では、S183は正荷電アミノ酸で置換される。代替的な実施形態では、S183は負荷電アミノ酸で置換される。例えば、一実施形態では、S183は、第1の重鎖において負荷電アミノ酸(例えば、S183E)で置換され、S183は、第2の重鎖において正荷電アミノ酸(例えば、S183K)で置換される。
軽鎖がカッパ軽鎖である実施形態では、F116、F118、S121、D122、E123、Q124、S131、V133、L135、N137、N138、Q160、S162、T164、S174及びS176から選択される位置(カッパ軽鎖におけるEU及びKabat付番)の、ヘテロ二量体の抗体中の第1の及び/又は第2の軽鎖のCLドメインにおける1つ又は複数のアミノ酸は、荷電アミノ酸で置換される。軽鎖がラムダ軽鎖である実施形態では、T116、F118、S121、E123、E124、K129、T131、V133、L135、S137、E160、T162、S165、Q167、A174、S176及びY178から選択される位置(ラムダ鎖におけるKabat付番)の、ヘテロ二量体の抗体中の第1の及び/又は第2の軽鎖のCLドメインにおける1つ又は複数のアミノ酸は、荷電アミノ酸で置換される。一部の実施形態では、負荷電又は正荷電のアミノ酸で置換するのに好ましい残基は、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖のいずれかのCLドメインのS176(EU及びKabat付番方式)である。ある特定の実施形態では、CLドメインのS176は、正荷電アミノ酸で置換される。代替的な実施形態では、CLドメインのS176は、負荷電アミノ酸で置換される。一実施形態では、S176は、第1の軽鎖において正荷電アミノ酸(例えば、S176K)で置換され、S176は、第2の軽鎖において負荷電アミノ酸(例えば、S176E)で置換される。
CH1ドメイン及びCLドメインにおける相補的アミノ酸置換に加えて、又はその代替として、ヘテロ二量体の抗体中の軽鎖及び重鎖の可変領域は、荷電アミノ酸を導入するために1つ又は複数の相補的アミノ酸置換を含有していてもよい。例えば、一部の実施形態では、ヘテロ二量体の抗体の重鎖のVH領域又は軽鎖のVL領域は、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、そのため、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ又は複数の正荷電アミノ酸は、1つ又は複数の負荷電アミノ酸で置換される。或いは、重鎖のVH領域又は軽鎖のVL領域は、野生型IgGアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含み、そのため、野生型IgGアミノ酸配列中の1つ又は複数の負荷電アミノ酸は、1つ又は複数の正荷電アミノ酸で置換される。
VH領域内のV領域界面残基(即ち、VH領域及びVL領域のアセンブリーを媒介するアミノ酸残基)には、Kabatの1位、3位、35位、37位、39位、43位、44位、45位、46位、47位、50位、59位、89位、91位及び93位が含まれる。VH領域中のこれらの界面残基のうち1つ又は複数は、荷電(正荷電又は負荷電)アミノ酸で置換することができる。ある特定の実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabat39位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸、例えば、リシンに置換される。代替的な実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabat39位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸、例えば、グルタミン酸に置換される。一部の実施形態では、第1の重鎖のVH領域中のKabat39位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸(例えばG39E)に置換され、第2の重鎖のVH領域中のKabat39位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸(例えば、G39K)に置換される。一部の実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabat44位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸、例えば、リシンに置換される。代替的な実施形態では、第1の及び/又は第2の重鎖のVH領域中のKabat44位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸、例えば、グルタミン酸に置換される。ある特定の実施形態では、第1の重鎖のVH領域中のKabat44位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸(例えば、G44E)に置換され、第2の重鎖のVH領域中のKabat44位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸(例えば、G44K)に置換される。
VL領域内のV領域界面残基(即ち、VH領域及びVL領域のアセンブリーを媒介するアミノ酸残基)には、Kabatの32位、34位、35位、36位、38位、41位、42位、43位、44位、45位、46位、48位、49位、50位、51位、53位、54位、55位、56位、57位、58位、85位、87位、89位、90位、91位及び100位が含まれる。VL領域中の1つ又は複数の界面残基は、荷電アミノ酸、好ましくは、同族の重鎖のVH領域に導入されたものと反対の電荷を有するアミノ酸で置換することができる。一部の実施形態では、第1の及び/又は第2の軽鎖のVL領域中のKabat100位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸、例えば、リシンに置換される。代替的な実施形態では、第1の及び/又は第2の軽鎖のVL領域中のKabat100位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸、例えば、グルタミン酸に置換される。ある特定の実施形態では、第1の軽鎖のVL領域中のKabat100位のアミノ酸は、正荷電アミノ酸(例えば、G100K)に置換され、第2の軽鎖のVL領域中のKabat100位のアミノ酸は、負荷電アミノ酸(例えば、G100E)に置換される。
ある特定の実施形態では、本発明のヘテロ二量体の抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖、並びに第1の軽鎖及び第2の軽鎖を含み、第1の重鎖は、アミノ酸置換を44位(Kabat)、183位(EU)、392位(EU)及び409位(EU)に含み、第2の重鎖は、アミノ酸置換を44位(Kabat)、183位(EU)、356位(EU)及び399位(EU)に含み、第1の及び第2の軽鎖は、アミノ酸置換を100位(Kabat)及び176位(EU)に含み、アミノ酸置換は前記の各位置に荷電アミノ酸を導入する。関連する実施形態では、第1の重鎖の44位(Kabat)のグリシンがグルタミン酸で置換され、第2の重鎖の44位(Kabat)のグリシンがリシンで置換され、第1の軽鎖の100位(Kabat)のグリシンがリシンで置換され、第2の軽鎖の100位(Kabat)のグリシンがグルタミン酸で置換され、第1の軽鎖の176位(EU)のセリンがリシンで置換され、第2の軽鎖の176位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第1の重鎖の183位(EU)のセリンがグルタミン酸で置換され、第1の重鎖の392位(EU)のリシンがアスパラギン酸で置換され、第1の重鎖の409位(EU)のリシンがアスパラギン酸で置換され、第2の重鎖の183位(EU)のセリンがリシンで置換され、第2の重鎖の356位(EU)のグルタミン酸がリシンで置換され、及び/又は第2の重鎖の399位(EU)のアスパラギン酸がリシンで置換される。
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、インタクトな抗体のパパイン消化によって生成することができる免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、即ちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択により、CH4ドメインを含む。ある特定の実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリン由来のFc領域である。一部の実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG2免疫グロブリン由来のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。Fc領域は、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、及び貪食などのエフェクター機能を保持し得る。他の実施形態では、Fc領域は、本明細書にさらに詳細に記載されるように、エフェクター機能を低減又は排除するように修飾される場合がある。
本発明の抗原結合タンパク質の、一部の実施形態では、Fc領域のカルボキシル末端に位置する結合ドメイン(即ち、カルボキシル末端の結合ドメイン)はscFvである。ある特定の実施形態では、scFvは、ペプチドリンカーによって連結された重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを含む。可変領域は、VH-VL又はVL-VHの向きで、scFv内に配置され得る。例えば、一実施形態では、scFvは、N末端からC末端までに、VH領域、ペプチドリンカー及びVL領域を含む。別の実施形態では、scFvは、N末端からC末端までに、VL領域、ペプチドリンカー及びVH領域を含む。scFvのVH領域及びVL領域は、1つ又は複数のシステイン置換を含有して、VH領域とVL領域との間にジスルフィド結合形成を可能にすることができる。そのようなシステインのクランプは、抗原-結合性配置における2つの可変ドメインを安定化させる。一実施形態では、VH領域中の44位(Kabat付番)及びVL領域中の100位(Kabat付番)は、それぞれシステイン残基で置換される。
ある特定の実施形態では、scFvは、そのアミノ末端で、ペプチドリンカーを介してFc領域のカルボキシル末端(例えば、CH3ドメインのカルボキシル末端)に融合されるか、そうでなければ連結される。したがって、一実施形態では、得られる融合タンパク質が、N末端からC末端までに、CH2ドメイン、CH3ドメイン、第1のペプチドリンカー、VH領域、第2のペプチドリンカー、及びVL領域を含むように、scFvはFc領域に融合される。別の実施形態では、得られる融合タンパク質が、N末端からC末端までに、CH2ドメイン、CH3ドメイン、第1のペプチドリンカー、VL領域、第2のペプチドリンカー、及びVH領域を含むように、scFvはFc領域に融合される。「融合タンパク質」は、1つより多い親タンパク質又はポリペプチドに由来するポリペプチド成分を含むタンパク質である。通常、融合タンパク質は、1つのタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質由来のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列と一緒にインフレームに付加され、任意選択によりリンカーによって、その配列から分離される、融合遺伝子から発現する。この融合遺伝子は、その後、組換え宿主細胞によって発現されて、単一の融合タンパク質を産生することができる。
「ペプチドリンカー」とは、1つのポリペプチドを別のポリペプチドに共有結合させる約2~約50アミノ酸のオリゴペプチドを指す。ペプチドリンカーは、scFv中でVHドメインとVLドメインとを連結するために使用される。ペプチドリンカーはまた、scFv、Fab断片、又は他の機能的抗体断片をFc領域のアミノ末端又はカルボキシル末端に連結して、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質を作り出すために使用することもできる。好ましくは、ペプチドリンカーは、少なくとも5アミノ酸長である。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、約5アミノ酸長~約40アミノ酸長である。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、約8アミノ酸長~約30アミノ酸長である。さらに他の実施形態では、ペプチドリンカーは、約10アミノ酸長~約20アミノ酸長である。
好ましくは、必ずしもというわけではないが、ペプチドリンカーは、20の標準的なアミノ酸の中のアミノ酸、特に、システイン、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及び/又はセリンを含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシン、セリン及びアラニンなど、立体障害のない大多数のアミノ酸で構成される。したがって、一部の実施形態において好ましいリンカーには、ポリグリシン、ポリセリン、及びポリアラニン、又はこれらのうちいずれかの組合せが含まれる。一部の例示的なペプチドリンカーとしては、以下に限定されないが、ポリ(Gly)2~8、特に(Gly)3(配列番号22)、(Gly)4(配列番号23)、(Gly)5(配列番号24)、(Gly)6(配列番号25)及び(Gly)7(配列番号26)、並びにポリ(Gly)4Ser、ポリ(Gly-Ala)2~4及びポリ(Ala)2~8が挙げられる。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは(GlyxSer)nであり、ここで、x=3又は4であり、n=2、3、4、5又は6である。そのようなペプチドリンカーとしては、「L5」(GGGGS又は「G4S」;配列番号27)、「L9」(GGGSGGGGS;又は「G3SG4S」;配列番号28)、「L10」(GGGGSGGGGS;又は「(G4S)2」;配列番号29)、「L15」(GGGGSGGGGSGGGGS;又は「(G4S)3」;配列番号31)、及び「L25」(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS;又は「(G4S)5」;配列番号32)が挙げられる。一部の実施形態では、scFv中でVH領域とVL領域とを連結しているペプチドリンカーは、L15又は(G4S)3リンカー(配列番号31)である。これらの及び他の実施形態では、カルボキシル末端の結合ドメイン(例えば、scFv又はFab)をFc領域のC末端に連結しているペプチドリンカーは、L9若しくはG3SG4Sリンカー(配列番号28)又はL10(G4S)2リンカー(配列番号29)である。
本発明の二重特異性抗原結合タンパク質に使用することができるペプチドリンカーの他の特定の例としては、(Gly)5Lys(配列番号1);(Gly)5LysArg(配列番号2);(Gly)3Lys(Gly)4(配列番号3);(Gly)3AsnGlySer(Gly)2(配列番号4);(Gly)3Cys(Gly)4(配列番号5);GlyProAsnGlyGly(配列番号6);GGEGGG(配列番号7);GGEEEGGG(配列番号8);GEEEG(配列番号9);GEEE(配列番号10);GGDGGG(配列番号11);GGDDDGG(配列番号12);GDDDG(配列番号13);GDDD(配列番号14);GGGGSDDSDEGSDGEDGGGGS(配列番号15);WEWEW(配列番号16);FEFEF(配列番号17);EEEWWW(配列番号18);EEEFFF(配列番号19);WWEEEWW(配列番号20);及びFFEEEFF(配列番号21)が挙げられる。
本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の重鎖定常領域又はFc領域は、抗原結合タンパク質のグリコシル化及び/又はエフェクター機能に影響する1つ又は複数のアミノ酸置換を含んでいてもよい。免疫グロブリンのFc領域の機能の1つは、免疫グロブリンがその標的に結合するときに免疫系に伝達することである。これは、一般に「エフェクター機能」と呼ばれる。伝達は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)及び/又は補体依存性細胞障害(CDC)につながる。ADCC及びADCPは、免疫系の細胞の表面のFc受容体へのFc領域の結合を介して媒介される。CDCは、補体系のタンパク質、例えばC1qと、Fcとの結合を介して媒介される。一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、ADCC活性、CDC活性、ADCP活性を含むエフェクター機能、及び/又は抗原結合タンパク質のクリアランス若しくは半減期を増強するために、定常領域に1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。エフェクター機能を増強することができる例示的なアミノ酸置換(EU付番)としては、以下に限定されないが、E233L、L234I、L234Y、L235S、G236A、S239D、F243L、F243V、P247I、D280H、K290S、K290E、K290N、K290Y、R292P、E294L、Y296W、S298A、S298D、S298V、S298G、S298T、T299A、Y300L、V305I、Q311M、K326A、K326E、K326W、A330S、A330L、A330M、A330F、I332E、D333A、E333S、E333A、K334A、K334V、A339D、A339Q、P396L、又は上記のもののいずれかの組合せが挙げられる。
他の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、エフェクター機能を低減するために、定常領域に1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。エフェクター機能を低減することができる例示的なアミノ酸置換(EU付番)としては、以下に限定されないが、C220S、C226S、C229S、E233P、L234A、L234V、V234A、L234F、L235A、L235E、G237A、P238S、S267E、H268Q、N297A、N297G、V309L、E318A、L328F、A330S、A331S、P331S又は上記のいずれかの組合せが挙げられる。
グリコシル化は、抗体、特にIgG1抗体のエフェクター機能の要因となり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、結合タンパク質のグリコシル化のレベル又はタイプに影響を及ぼす1つ又は複数のアミノ酸置換を含んでいてもよい。ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N結合又はO結合のいずれかである。N結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作り出される。O結合型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースのうち1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリシンを使用することもできる。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質のグリコシル化は、1つ又は複数のグリコシル化部位を、例えば、結合タンパク質のFc領域に付加することによって増加される。抗原結合タンパク質へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列のうち1つ又は複数を含有するようにアミノ酸配列を改変することによって簡便に実現することができる(N結合型グリコシル化部位の場合)。改変は、1つ又は複数のセリン残基若しくはトレオニン残基の、開始配列への付加又は開始配列による置換によってなされることもできる(O結合型グリコシル化部位の場合)。容易にするために、抗原結合タンパク質アミノ酸配列は、DNAレベルでの変化によって、特に、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように、予め選択された塩基の位置で標的ポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって、改変することができる。
本発明はまた、炭水化物構造が改変されて、エフェクター活性が改変されている二重特異性抗原結合タンパク質分子、例えば、フコシル化がないか又は減少して、ADCC活性の向上を示す抗原結合タンパク質の産生も包含する。フコシル化を減少させる又は排除する様々な方法が当技術分野において公知である。例えば、ADCCエフェクター活性は、抗体分子のFcγRIII受容体への結合によって媒介され、これは、CH2ドメインのN297残基でのN結合型グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、高い親和性でこの受容体に結合し、FcγRIII媒介性エフェクター機能を天然のフコシル化抗体よりも効率的に誘発する。例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素がノックアウトされているCHO細胞における非フコシル化抗体の組換え産生は、ADCC活性が100倍増加した抗体を生じる(Yamane-Ohnuki et al.,Biotechnol Bioeng.87(5):614-22,2004を参照)。同様の効果は、フコシル化経路におけるアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素又は他の酵素の活性を減少させることによって、例えば、siRNA若しくはアンチセンスRNA処理、酵素をノックアウトするための細胞株の操作、又は選択的グリコシル化阻害剤を用いる培養によって、実現することができる(Rothman et al.,Mol Immunol.26(12):1113-23,1989を参照)。一部の宿主細胞株、例えば、Lec13又はラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、フコシル化レベルがより低い抗体を天然に産生する(Shields et al.,J Biol Chem.277(30):26733-40,2002及びShinkawa et al.,J Biol Chem.278(5):3466-73,2003を参照)。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞において抗体を組換え産生することによる、二分された炭水化物のレベルの増加もまた、ADCC活性を増加させることが判明している(Umana et al.,Nat Biotechnol.17(2):176-80,1999を参照)。
他の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質のグリコシル化は、1つ又は複数のグリコシル化部位を、例えば、結合タンパク質のFc領域から除去することによって、低減又は排除される。N結合型グリコシル化部位を排除又は改変するアミノ酸置換により、抗原結合タンパク質のN結合型グリコシル化を低減又は排除することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質は、N297Q、N297A、又はN297GなどのN297位(EU付番)での変異を含む。特定の一実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質は、N297G変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。N297変異を含む分子の安定性を向上させるために、分子のFc領域はさらに操作されてもよい。例えば、一部の実施形態では、Fc領域における1つ又は複数のアミノ酸は、二量体状態でジスルフィド結合形成を促進するためにシステインで置換される。したがって、IgG1 Fc領域のV259、A287、R292、V302、L306、V323、又はI332(EU付番)に対応する残基は、システインで置換され得る。好ましくは、残基の特定の対が、互いにジスルフィド結合を優先的に形成するようにシステインで置換され、このため、ジスルフィド結合のスクランブルが制限又は防止される。好ましい対としては、以下に限定されないが、A287C及びL306C、V259C及びL306C、R292C及びV302C、並びにV323C及びI332Cが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質は、R292C及びV302Cに変異を有するヒトIgG1抗体由来のFc領域を含む。このような実施形態では、Fc領域は、N297G変異も含む場合がある。
例えば、サルベージ受容体(salvage receptor)結合エピトープの組み込み又は付加による(例えば、適切な領域の変異による、又はエピトープをペプチドタグに組み込み、続いて、例えば、DNA若しくはペプチド合成によって、いずれかの末端又は中央で抗原結合タンパク質に融合させることによる;例えば、国際公開第96/32478号パンフレットを参照)、或いはPEG又は他の水溶性ポリマー、例えば、多糖ポリマーなどの分子の付加による、血清半減期を延長するための本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の修飾もまた望ましい場合がある。サルベージ受容体結合エピトープは、好ましくは、Fc領域の1つ又は2つのループ由来の任意の1つ又は複数のアミノ酸残基が抗原結合タンパク質中の類似の位置に移入される領域を構成する。より一層好ましくは、Fc領域の1つ又は2つのループ由来の3つ以上の残基が移入される。さらにより好ましくは、エピトープがFc領域(例えば、IgG Fc領域)のCH2ドメインから採取され、抗原結合タンパク質のCH1、CH3、若しくはVH領域、又は1つより多いそのような領域に移入される。或いは、エピトープがFc領域のCH2ドメインから採取され、抗原結合タンパク質のCL領域若しくはVL領域、又はその両方に移入される。Fc変異体及びそのサルベージ受容体との相互作用の説明については、国際出願である、国際公開第97/34631号パンフレット及び国際公開第96/32478号パンフレットを参照されたい。
本発明は、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質及びその成分をコードする、1つ又は複数の単独で存在する核酸を含む。本発明の核酸分子には、単鎖及び二本鎖の両方の形態のDNA及びRNA、並びに対応する相補的配列が含まれる。DNAには、例えば、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成されたDNA、PCRによって増幅されたDNA及びそれらの組合せが含まれる。本発明の核酸分子には、完全長遺伝子又はcDNA分子並びにそれらの断片の組合せが含まれる。本発明の核酸は、優先的にはヒト供給源に由来するが、本発明には非ヒト種に由来するものも含まれる。
免疫グロブリン又はその領域(例えば、可変領域、Fc領域など)又は目的のポリペプチド由来の該当するアミノ酸配列は、直接タンパク質配列解析法によって決定することができ、好適なコードヌクレオチド配列は普遍コドン表に従ってデザインすることができる。或いは、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の結合ドメインの起源となり得る、モノクローナル抗体をコードするゲノムDNA又はcDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、そのような抗体を産生する細胞から単離し、配列決定することができる。
本明細書において「単独で存在するポリヌクレオチド」と互換的に使用される「単独で存在する核酸」は、天然に存在する供給源から単離された核酸の場合、核酸が単離された生物のゲノムに存在する隣接遺伝子配列から分離された核酸である。例えば、PCR産物、cDNA分子又はオリゴヌクレオチドなど、鋳型から酵素的に、又は化学的に合成された核酸の場合、このようなプロセスから得られる核酸は、単独で存在する核酸であると理解される。単独で存在する核酸分子は、別個の断片の形態の核酸分子、又はより大きな核酸コンストラクトの成分としての核酸分子を指す。好ましい一実施形態では、核酸は、不純にする内因性物質を実質的に含まない。核酸分子は、好ましくは、実質的に純粋な形態で、且つ標準的な生化学的方法(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)に概説されているもの)によるその成分ヌクレオチド配列の同定、操作、及び回収を可能にする量又は濃度で、少なくとも1回単離されたDNA又はRNAから誘導されている。このような配列は、好ましくは、通常、真核生物遺伝子に存在する内部非翻訳配列又はイントロンによって中断されないオープンリーディングフレームの形態で提供及び/又は構築される。非翻訳のDNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’側又は3’側に存在することができ、この場合、これは、コード領域の操作又は発現を妨害しない。特に明記しない限り、本明細書に記載される任意の単鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5’方向と呼ばれる。新生RNA転写産物の5’から3’への産生の方向は、転写方向と呼ばれ、RNA転写産物の5’末端の5’側にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれ、RNA転写産物の3’末端の3’側にあるRNA転写産物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
本発明はまた、中程度にストリンジェントな条件下、より好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸にハイブリダイズする核酸も含む。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響する基本パラメーター及び好適な条件を考案するためのガイダンスは、Sambrook,Fritsch,and Maniatis(1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,chapters 9 and 11;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,sections 2.10 and 6.3-6.4)、によって示されており、例えば、DNAの長さ及び/又は塩基組成に基づいて当業者が容易に決定することができる。中程度にストリンジェントな条件を達成する1つの方法は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)、約50%ホルムアミドのハイブリダイゼーション緩衝液、6×SSCを含有する予洗溶液、及び約55℃のハイブリダイゼーション温度(又は、約50%ホルムアミドを含有するものなどの他の類似のハイブリダイゼーション溶液、及び約42℃のハイブリダイゼーション温度)、並びに0.5×SSC、0.1%SDS中の約60℃の洗浄条件の使用を含む。一般に、高度にストリンジェントな条件は、およそ68℃、0.2×SSC、0.1%SDSで洗浄すること以外は上記のようなハイブリダイゼーション条件として定義される。SSPE(l×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、及び1.25mM EDTA、pH7.4である)は、ハイブリダイゼーション緩衝液及び洗浄緩衝液中のSSC(l×SSCは、0.15M NaCl及び15mMクエン酸ナトリウムである)に置換することができ、ハイブリダイゼーションが完了した後、15分間洗浄を行う。当然のことながら、当業者に知られており、以下にさらに説明されるように、ハイブリダイゼーション反応及び二本鎖の安定性を決定する基本原理を適用することにより、所望の程度のストリンジェンシーを達成するために必要に応じて、洗浄温度及び洗浄塩濃度を調節することができる(例えば、Sambrook et al.,1989を参照)。核酸を未知の配列の標的核酸へとハイブリダイズする場合、ハイブリッド長はハイブリダイズする核酸の長さであると仮定する。既知の配列の核酸がハイブリダイズされる場合、ハイブリッド長は、両核酸の配列を整列させ、最適な配列相補性の領域又は領域群を同定することによって決定することができる。50塩基対長未満であると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)より5~10℃低くなければならず、ここで、Tmは、以下の式に従って決定される。18塩基対長未満のハイブリッドの場合、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18塩基対長を超えるハイブリッドの場合、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)、(式中、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である)(1×SSCの[Na+]=0.165M)。好ましくは、このようなハイブリダイズする核酸の各々は、少なくとも15ヌクレオチド(又はより好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、若しくは少なくとも20ヌクレオチド、若しくは少なくとも25ヌクレオチド、若しくは少なくとも30ヌクレオチド、若しくは少なくとも40ヌクレオチド、又は最も好ましくは少なくとも50ヌクレオチド)の長さ、或いはそれがハイブリダイズする本発明の核酸の長さの少なくとも25%(より好ましくは少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、及び最も好ましくは少なくとも80%)である長さを有し、且つそれがハイブリダイズする本発明の核酸と、少なくとも60%の配列同一性(より好ましくは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、及び最も好ましくは少なくとも99.5%)を有する。ここで、配列同一性は、上でより詳細に記載されているように、ハイブリダイズする核酸の配列を、重複及び同一性が最大となり、配列ギャップが最小になるように整列させたときの、当該核酸の配列を比較することによって決定される。
本明細書に記載される抗原結合タンパク質の変異体は、ポリペプチドをコードするDNAにおけるヌクレオチドの部位特異的な変異誘発により、カセット若しくはPCR変異誘発、又は当技術分野において周知の他の技術を使用して、変異体をコードするDNAを産生し、その後、本明細書に概説するように、細胞培養物中で組換えDNAを発現させることによって調製することができる。しかしながら、約100~150残基までを有する変異体CDRを含む抗原結合タンパク質は、確立された技術を使用してin vitro合成によって調製することができる。変異体は、典型的には、天然の類似体と同様の定性的生物学的活性、例えば抗原への結合を示す。このような変異体は、例えば、抗原結合タンパク質のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入及び置換の任意の組合せを行って、最終コンストラクトに至るのであるが、但し、最終コンストラクトは所望の特性を保持するものとする。アミノ酸の変化はまた、グリコシル化部位の数又は位置を変化させるなど、抗原結合タンパク質の翻訳後プロセスを改変する場合もある。ある特定の実施形態では、抗原結合タンパク質変異体は、エピトープ結合に直接関与するアミノ酸残基を修飾する目的で調製される。他の実施形態では、本明細書に記載の目的のため、エピトープ結合に直接関与しない残基、又はエピトープ結合に何ら関与しない残基の修飾が望ましい。CDR領域及び/又はフレームワーク領域のいずれかにおける変異誘発が企図される。抗原結合タンパク質のアミノ酸配列における有用な修飾をデザインするために、当業者は共分散分析技術を使用することができる。例えば、Choulier,et al.,Proteins 41:475-484,2000;Demarest et al.,J.Mol.Biol.335:41-48,2004;Hugo et al.,Protein Engineering 16(5):381-86,2003;Aurora et al.,米国特許出願公開第2008/0318207A1号明細書;Glaser et al.,米国特許出願公開第2009/0048122A1号明細書;Urech et al.,国際公開第2008/110348A1号パンフレット;Borras et al.,国際公開第2009/000099A2号パンフレットを参照されたい。共分散分析によって決定されるそのような修飾は、抗原結合タンパク質の効力、薬物動態学的、薬力学的及び/又は製造可能性の特性を改善することができる。
本発明はまた、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の1つ又は複数の成分(例えば、可変領域、軽鎖、重鎖、修飾された重鎖、及びFd断片)をコードする1つ又は複数の核酸を含むベクターを含む。「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移入するために使用される任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を指す。ベクターの例としては、以下に限定されないが、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター及び発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターが挙げられる。「発現ベクター」又は「発現コンストラクト」という用語は、本明細書で使用する場合、特定の宿主細胞において作動可能に連結されるコード配列の発現に必要な、所望のコード配列及び適切な核酸制御配列を含有する組換えDNA分子を指す。発現ベクターは、転写、翻訳に影響を及ぼすか又はそれを制御し、且つイントロンが存在する場合、それに作動可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含むことができるが、これに限定されない。原核生物での発現に必要な核酸配列には、プロモーター、任意選択によりオペレーター配列、リボソーム結合部位、及び場合によりその他の配列が含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、並びに終結シグナル及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。分泌シグナルペプチド配列もまた、任意選択により発現ベクターによってコードされ、目的のコード配列に作動可能に連結されることが可能であり、これにより、所望の場合、細胞から目的のポリペプチドがより容易に単離されるように、組換え宿主細胞に発現ポリペプチドを分泌させることができる。例えば、一部の実施形態では、シグナルペプチド配列は、表6A、6B、7A、7B、9及び10に列挙されたポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に付加/融合され得る。ある特定の実施形態では、MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC(配列番号32)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、表6A、6B、7A、7B、9及び10のポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に融合される。他の実施形態では、MAWALLLLTLLTQGTGSWA(配列番号33)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、表6A、6B、7A、7B、9及び10のポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に融合される。さらに他の実施形態では、MTCSPLLLTLLIHCTGSWA(配列番号34)のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドは、表6A、6B、7A、7B、9及び10のポリペプチド配列のいずれかのアミノ末端に融合される。本明細書に記載されるポリペプチド配列のアミノ末端に融合され得る他の好適なシグナルペプチド配列には、MEAPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号35)、MEWTWRVLFLVAAATGAHS(配列番号36)、METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号37)、METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号38)、MKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号39)、及びMEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号40)が含まれる。他のシグナルペプチドは当業者に知られており、例えば、特定の宿主細胞における発現を促進又は最適化するために、表6A、6B、7A、7B、9及び10に列挙されたポリペプチド鎖のいずれかに融合され得る。
通常、本発明の二重特異性抗原タンパク質を産生するために宿主細胞中で使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための配列、並びに二重特異性抗原結合タンパク質の成分をコードする外因性ヌクレオチド配列のクローン化及び発現のための配列を含有する。集合的に「隣接配列」と呼ばれるこのような配列は、ある特定の実施形態において、典型的には、以下のヌクレオチド配列:プロモーター、1つ又は複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナー及びアクセプタースプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるべきポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、並びに選択マーカーエレメントのうち1つ又は複数を含む。これらの配列の各々を以下に記載する。
任意選択により、ベクターは、「タグ」コード配列、即ち、ポリペプチドコード配列の5’末端又は3’末端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含有することができ、このオリゴヌクレオチドタグ配列は、ポリHis(ヘキサHisなど)、FLAG、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)、myc、又は市販の抗体が存在する別の「タグ」分子をコードする。このタグは、通常、ポリペプチドが発現すると、ポリペプチドに融合され、宿主細胞からのポリペプチドの親和性精製又は検出のための手段としての役目をすることができる。親和性精製は、例えば、タグに対する抗体を親和性マトリックスとして使用するカラムクロマトグラフィーによって実現することができる。任意選択により、その後、ある特定の切断用ペプチダーゼを使用するなどの様々な手段によって、精製されたポリペプチドからタグを除去することができる。
隣接配列は、同種性(即ち、宿主細胞と同一の種及び/又は株に由来する)、異種性(即ち、宿主細胞の種又は株以外の種に由来する)、ハイブリッド(即ち、1つより多い供給源に由来する隣接配列の組合せ)、合成、又は天然とすることができる。したがって、隣接配列の供給源は、任意の原核生物若しくは真核生物、任意の脊椎動物若しくは無脊椎動物、又は任意の植物とすることができるが、但し、その隣接配列が宿主細胞機構において機能し、且つ宿主細胞機構によって活性化され得るものとする。
本発明のベクターに有用な隣接配列は、当技術分野において周知の複数の方法のいずれかによって得ることができる。典型的には、本明細書において有用な隣接配列は、マッピング及び/又は制限エンドヌクレアーゼ消化によって事前に同定されていることになるため、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用し、適切な組織源から単離することができる。場合により、隣接配列の全ヌクレオチド配列が既知であり得る。この場合、隣接配列は、核酸合成又はクローン化の常法を使用して合成することができる。
隣接配列の全てが既知であるか、又はその一部のみが既知であるかを問わず、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を使用して、並びに/又は同じ若しくは別の種に由来するオリゴヌクレオチド及び/若しくは隣接配列断片などの好適なプローブを用いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、隣接配列を得ることができる。隣接配列が不明である場合、隣接配列を含有するDNAの断片は、例えば、コード配列又は1つ若しくは複数の別の遺伝子さえ含有し得るDNAの大型断片から単離することができる。単離は、制限エンドヌクレアーゼ消化によって適切なDNA断片を産生し、続いてアガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth,CA)又は当業者に公知の他の方法を使用して単離することにより実現することができる。この目的を達成するのに適した酵素の選択は、当業者には容易に分かるであろう。
複製起点は、通常、市販のものを購入した原核生物発現ベクターの一部であり、その起点は、宿主細胞におけるベクターの増幅に役立つ。選択したベクターが複製起点部位を含有しない場合、既知の配列に基づいて化学的に合成し、ベクターにライゲートしてもよい。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs,Beverly,MA)に由来する複製起点は、ほとんどのグラム陰性菌に適しており、様々なウイルス性の起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、又はパピローマウイルス、例えば、HPV若しくはBPVなど)が哺乳動物細胞におけるベクターのクローン化に有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターには必要でない(例えば、SV40起点は、ウイルス初期プロモーターも含有するという理由でのみ、使用されることが多い)。
転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドコード領域の3’末端側に位置し、転写を終結させる働きをする。通常、原核細胞における転写終結配列は、G-Cに富む断片とそれに続くポリT配列である。この配列はライブラリーから容易にクローン化されるか、又はベクターの一部として、市販品を購入する場合さえあるが、既知の核酸合成の方法を使用して容易に合成することもできる。
選択マーカー遺伝子は、選択培養培地中で増殖させた宿主細胞の生存及び増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核生物の宿主細胞に、抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン又はカナマイシンに対する耐性を付与するタンパク質;(b)細胞の栄養要求性欠損を補完するタンパク質;又は(c)複合培地又は限定培地からは利用不能の重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。特異的選択マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子及びテトラサイクリン耐性遺伝子である。有利なことには、ネオマイシン耐性遺伝子もまた、原核生物の宿主細胞及び真核生物の宿主細胞の両方における選択に使用することができる。
他の選択遺伝子を使用して、発現される遺伝子を増幅してもよい。増幅は、増殖又は細胞生存に重要なタンパク質の産生に必要とされる遺伝子が、組換え細胞の累代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞に好適な選択マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)及びプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体を、この形質転換体のみが唯一、ベクター中に存在する選択遺伝子によって生存するように適合されている選択圧下に置く。選択圧は、培地中の選択剤の濃度が連続的に増加する条件下で形質転換された細胞を培養することによって課され、それにより、選択遺伝子と、本明細書中に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の1つ又は複数の成分などの別の遺伝子をコードするDNAとの両方の増幅を導く。その結果、増幅されたDNAから多量のポリペプチドが合成される。
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、シャイン・ダルガーノ配列(原核生物)又はコザック配列(真核生物)によって特徴付けられる。このエレメントは、典型的には、プロモーターの3’側、及び発現されることになるポリペプチドのコード配列の5’側に位置する。ある特定の実施形態では、1つ又は複数のコード領域は、内部リボソーム結合部位(IRES)に作動可能に連結され得、単一のRNA転写産物から2つのオープンリーディングフレームの翻訳を可能にする。
真核生物の宿主細胞発現系においてグリコシル化が所望されるなどの場合には、グリコシル化又は収率を向上させるために、種々のプレ配列又はプロ配列を操作することができる。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を改変するか、又はプロ配列を付加することができ、これもグリコシル化に影響し得る。最終タンパク質産物は-1位(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)に、発現に付随する1つ又は複数の追加のアミノ酸を有する場合があり、これは、完全には除去されていなくてもよい。例えば、最終タンパク質産物は、アミノ末端に結合した、ペプチダーゼ切断部位に見出される1つ又は2つのアミノ酸残基を有し得る。代わりに、幾つかの酵素切断部位を使用すると、酵素が成熟ポリペプチド内のこのような領域で切断する場合、所望のポリペプチドがわずかに切断された形態を生じ得る。
本発明の発現ベクター及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、ポリペプチドをコードする分子に作動可能に連結されたプロモーターを含有する。「作動可能に連結された」という用語は、本明細書で使用する場合、所与の遺伝子の転写及び/又は所望のタンパク質分子の合成を指令することができる核酸分子が産生されるように、2つ以上の核酸配列が連結されていることを指す。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結された」ベクター中の制御配列は、タンパク質コード配列の発現が制御配列の転写活性と適合する条件下で行われるように、タンパク質コード配列にライゲートされる。より具体的には、プロモーター及び/又はエンハンサー配列(シス作用性転写制御エレメントの任意の組合せを含む)は、それが適切な宿主細胞又は他の発現系においてコード配列の転写を刺激又は調節する場合、そのコード配列に作動可能に連結されている。
プロモーターは、構造遺伝子(一般に、約100~1000bp以内)の開始コドンの上流(即ち5’側)に位置し、構造遺伝子の転写を制御する非転写配列である。通常、プロモーターは、2つのクラス:誘導性プロモーター及び構成的プロモーターの一方に分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の有無又は温度の変化などの培養条件の何らかの変化に応じ、その制御下で、DNAからの転写レベルの増加を開始する。一方、構成的プロモーターは、それが作動可能に連結されている遺伝子を均一に、即ち遺伝子発現に対する制御をほとんど又は全く行わずに転写する。種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。好適なプロモーターは、供給源DNAから制限酵素消化によりプロモーターを除去し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することによって、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の、例えば、重鎖、軽鎖、修飾された重鎖、又は他の成分をコードするDNAに作動可能に連結される。
酵母宿主とともに使用するのに好適なプロモーターも当技術分野において周知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとともに使用されるのが有利である。哺乳動物宿主細胞とともに使用するのに好適なプロモーターは周知であり、以下に限定されないが、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2型など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが含まれる。他の好適な哺乳動物プロモーターとしては、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーター及びアクチンプロモーターが挙げられる。
対象となり得るさらなるプロモーターとしては、以下に限定されないが、SV40初期プロモーター(Benoist and Chambon,1981,Nature 290:304-310);CMVプロモーター(Thornsen et al.,1984,Proc.Natl.Acad.U.S.A.81:659-663);ラウス肉腫ウイルスの3’側の長い末端反復に含有されるプロモーター(Yamamoto et al.,1980,Cell 22:787-797);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444-1445);メタロチオニン(metallothionine)遺伝子由来のプロモーター及び調節配列(Prinster et al.,1982,Nature 296:39-42);及びベータ-ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物プロモーター(Villa-Kamaroff et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727-3731);又はtacプロモーター(DeBoer et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21-25)が挙げられる。組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されている以下の動物転写制御領域も対象とする:膵腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al.,1984,Cell 38:639-646;Ornitz et al.,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399-409;MacDonald,1987,Hepatology 7:425-515);膵ベータ細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115-122);リンパ球系細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al.,1984,Cell 38:647-658;Adames et al.,1985,Nature 318:533-538;Alexander et al.,1987,Mol.Cell.Biol.7:1436-1444);精巣細胞、乳房細胞、リンパ球系細胞及びマスト細胞において活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Leder et al.,1986,Cell 45:485-495);肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al.,1987,Genes and Devel.1:268-276);肝臓において活性であるアルファ-フェト-タンパク質遺伝子制御領域(Krumlauf et al.,1985,Mol.Cell.Biol.5:1639-1648;Hammer et al.,1987,Science 253:53-58);肝臓において活性であるアルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al.,1987,Genes and Devel.1:161-171);骨髄細胞において活性であるベータグロビン遺伝子制御領域(Mogram et al,1985,Nature 315:338-340;Kollias et al,1986,Cell 46:89-94);脳におけるオリゴデンドロサイト細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al.,1987,Cell 48:703-712);骨格筋において活性であるミオシン軽鎖2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283-286);及び視床下部において活性である性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al.,1986,Science 234:1372-1378)。
エンハンサー配列をベクターに挿入し、高等真核生物によって、二重特異性抗原結合タンパク質の成分(例えば、軽鎖、重鎖、修飾された重鎖、Fd断片)をコードするDNAの転写を増加させることができる。エンハンサーは、DNAのシス作用性エレメントであり、通常、約10~300bp長で、プロモーターに作用して転写を増加させる。エンハンサーは、方向及び位置に比較的依存せず、転写単位に対して5’側及び3’側の両方の位置に見出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能な複数のエンハンサー配列が知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ-フェト-タンパク質、及びインスリン)。しかしながら、典型的には、ウイルス由来のエンハンサーが使用される。当技術分野において公知のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例示的な増強エレメントである。エンハンサーは、ベクターにおいてコード配列の5’側又は3’側のいずれに位置してもよいが、典型的には、プロモーターから5’側の部位に位置する。適切な天然又は異種性のシグナル配列(リーダー配列又はシグナルペプチド)をコードする配列を発現ベクターに組み込んで、細胞外への抗体の分泌を促進することができる。シグナルペプチド又はリーダーの選択は、抗体が産生されることになる宿主細胞の型に依存し、異種性のシグナル配列が天然のシグナル配列に取って代わることができる。シグナルペプチドの例は、上に記載されている。哺乳動物宿主細胞において機能する他のシグナルペプチドには、米国特許第4,965,195号明細書に記載されているインターロイキン-7(IL-7)のシグナル配列;Cosman et al.,1984,Nature 312:768に記載されているインターロイキン-2受容体のシグナル配列;欧州特許第0367566号明細書に記載されているインターロイキン-4受容体シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号明細書に記載されているI型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド;欧州特許第0460846号明細書に記載されているII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチドが含まれる。
提供される発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築してもよい。そのようなベクターは、所望の隣接配列の全てを含有していてもしていなくてもよい。本明細書に記載される隣接配列のうち1つ又は複数がベクターに最初から存在していない場合、それらを個々に取得してベクターにライゲートしてもよい。隣接配列の各々を取得するために使用される方法は、当業者に周知である。発現ベクターを宿主細胞に導入し、それにより、本明細書に記載される核酸によってコードされる融合タンパク質を含むタンパク質を産生することができる。
ある特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質の異なる成分をコードする核酸を、同じ発現ベクターに挿入してもよい。そのような実施形態では、軽鎖及び重鎖が同じmRNA転写産物から発現されるように、配列内リボソーム侵入部位(IRES)により、単一のプロモーターの制御下で、2つの核酸が分離されてもよい。代わりに、2つの核酸は、軽鎖及び重鎖が2つの別個のmRNA転写産物から発現されるように、2つの別個のプロモーターの制御下にあってもよい。
同様に、IgG-scFv二重特異性抗原結合タンパク質については、軽鎖をコードする核酸は、修飾された重鎖(重鎖及びscFvを含む融合タンパク質)をコードする核酸と同じ発現ベクターにクローン化されてもよく、その場合、2つの核酸は単一のプロモーターの制御下にあってIRESによって分離されるか、又は2つの核酸は2つの別個のプロモーターの制御下にある。IgG-Fab二重特異性抗原結合タンパク質については、3つの成分の各々をコードする核酸は、同じ発現ベクターにクローン化されてもよい。一部の実施形態では、IgG-Fab分子の軽鎖をコードする核酸、及び第2のポリペプチド(C末端のFabドメインのもう半分を含む)をコードする核酸は、1つの発現ベクターにクローン化され、一方、修飾された重鎖(重鎖及びFabドメインの半分を含む融合タンパク質)をコードする核酸は、第2の発現ベクターにクローン化される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の全ての成分は、同じ宿主細胞集団から発現される。例えば、1つ又は複数の成分が別個の発現ベクターにクローン化される場合でも、宿主細胞に両方の発現ベクターを同時トランスフェクトして、1つの細胞が二重特異性抗原結合タンパク質の全ての成分を産生するようにする。
ベクターが構築され、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質の成分をコードする1つ又は複数の核酸分子が、1つ又は複数のベクターの適切な部位に挿入された後、完成したベクターは、増幅及び/又はポリペプチド発現に好適な宿主細胞に挿入することができる。したがって、本発明は、二重特異性抗原結合タンパク質の成分をコードする1つ又は複数の発現ベクターを含む、単独で存在する宿主細胞を包含する。「宿主細胞」という用語は、本明細書で使用する場合、核酸で形質転換されているか、又は形質転換されることが可能であり、それにより、目的の遺伝子を発現する細胞を指す。この用語には、目的の遺伝子が存在する限り、親細胞の子孫の形態又は遺伝的構造が元の親細胞と同一であるか否かにかかわらず、親細胞の子孫が含まれる。好ましくは少なくとも1つの発現制御配列(例えば、プロモーター又はエンハンサー)に作動可能に連結された、本発明の単独で存在する核酸を含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」である。
抗原結合タンパク質の発現ベクターの選択された宿主細胞への形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又は他の既知の技術を含む周知の方法によって実現することができる。選択される方法は、ある程度、使用される宿主細胞の型に応じることになる。これらの方法及び他の好適な方法は、当業者に周知であり、例えば、前出のSambrook et al.,2001に示されている。
宿主細胞は、適切な条件下で培養されると抗原結合タンパク質を合成し、抗原結合タンパク質はその後、(宿主細胞がそれを培地に分泌する場合は)培養培地から、又は(それが分泌されない場合は)それを産生する宿主細胞から直接的に、採取することができる。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性(グリコシル化又はリン酸化など)に望ましいか又は必要であるポリペプチドの修飾、及び生物学的に活性な分子へのフォールディングの容易さなどの様々な要因に依存することになる。
例示的な宿主細胞には、原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞が含まれる。原核生物の宿主細胞には、グラム陰性微生物又はグラム陽性微生物などの真正細菌、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えば、エシェリキア属(Escherichia)、例えば、大腸菌(E.coli)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、例えば、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属(Serratia)、例えば、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、及びシゲラ属(Shigella)、並びにバチルス属(Bacillus)、例えば、枯草菌(B.subtilis)及びB.リケニフォルミス(B.licheniformis)、シュードモナス属(Pseudomonas)及びストレプトミセス属(Streptomyces)が含まれる。真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、組換えポリペプチドに好適なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的なパン酵母は、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかしながら、ピキア属(Pichia)、例えば、P.パストリス(P.pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、シュワニオミセス属(Schwanniomyces)、例えば、シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、並びに糸状菌、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えば、A.ニデュランス(A.nidulans)、A.ニガー(A.niger)などの複数の他の属、種及び株が、ここで一般に利用可能であり、有用である。
グリコシル化された抗原結合タンパク質の発現のための宿主細胞は、多細胞生物由来とすることができる。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルスの株及び変異体、並びにツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)及びカイコ(Bombyx mori)などの宿主由来の、対応する昆虫の許容宿主細胞が同定されている。このような細胞のトランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体、及びカイコ(Bombyx mori)NPVのBm-5株が公に入手可能である。
脊椎動物宿主細胞もまた好適な宿主であり、このような細胞からの抗原結合タンパク質の組換え産生は常法となっている。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当技術分野において周知であり、以下に限定されないが、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection:ATCC)から入手可能な不死化細胞株、例えば、以下に限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えば、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216,1980);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293細胞又は懸濁培養での増殖用にサブクローン化された293細胞、(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頚癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44-68,1982);MRC 5細胞又はFS4細胞;哺乳動物の骨髄腫細胞、及び複数の他の細胞株が挙げられる。別の実施形態では、それ自体の抗体は作製しないが、異種性抗体を作製及び分泌する能力を有するB細胞系統由来の細胞株を選択することができる。一部の実施形態では、CHO細胞が、本発明の二重特異性抗原結合タンパク質を発現するのに好ましい宿主細胞である。
二重特異性抗原結合タンパク質の産生のために、宿主細胞は上記の核酸又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされ、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように改変された従来の栄養培地中で培養される。加えて、選択マーカーによって分離された転写単位の複数のコピーを有する新規なベクター及びトランスフェクトされた細胞株は、抗原結合タンパク質の発現に特に有用である。したがって、本発明はまた、本明細書に記載される二重特異性抗原結合タンパク質を調製する方法であって、本明細書に記載される1つ又は複数の発現ベクターを含む宿主細胞を、当該1つ又は複数の発現ベクターによってコードされる二重特異性抗原結合タンパク質の発現を可能にする条件下にて培養培地中で培養するステップと、培養培地から二重特異性抗原結合タンパク質を回収するステップとを含む方法も提供する。
本発明の抗原結合タンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養することができる。ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44,1979;Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255,1980;米国特許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,927,762号明細書;同第4,560,655号明細書;若しくは同第5,122,469号明細書;国際公開第90103430号パンフレット;国際公開第87/00195号パンフレット;又は米国再発行特許第30,985号明細書に記載されている培地のいずれかを、宿主細胞の培養培地として使用することができる。これらの培地のうちいずれかは、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)薬物など)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース又は同等のエネルギー源を補充することができる。他に必要な任意の栄養補助物質もまた、当業者に公知の適切な濃度で含めてもよい。温度及びpHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
宿主細胞を培養すると、二重特異性抗原結合タンパク質は、細胞内、細胞膜周辺腔内で産生されること、又は培地中に直接分泌されることが可能である。抗原結合タンパク質が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、粒状の破片である宿主細胞又は溶解した断片を、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去する。二重特異性抗原結合タンパク質は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、陽イオン若しくは陰イオン交換クロマトグラフィー、又は好ましくは、親和性リガンドとして目的の抗原又はプロテインA若しくはプロテインGを使用するアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づくポリペプチドを含むタンパク質を精製するために使用することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13,1983)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575,1986)。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラス(controlled pore glass)又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースを用いて実現することができるよりも、流速を速く、処理時間を短くすることが可能である。タンパク質がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。回収されるべき特定の二重特異性抗原結合タンパク質に応じて、エタノール沈殿、逆相HPLC、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製のための他の技術もまた可能である。
CZH01
多重特異性抗原結合タンパク質及び半減期が延長された治療用タンパク質を生成する能力は、多くの治療候補を臨床へと推し進めるために最重要である。これはしばしば、広範なタンパク質デザインを行い、その成功の度合いは様々であることを意味する。いずれにせよ、2つの異なるFc部分が一緒になって、ヘテロ二量体を形成する。これを実現するためには、タンパク質の天然配列に変化を起こさなければならない。従来、そのような変化は、Fc部分のCH3-CH3’界面に焦点が当てられ、そこに、電荷対変異デザイン及びノブイントゥーホールデザインが挿入されてきた。
モノクローナル抗体中の2つの重鎖は、2つの主な接触点:Fc-CH3及びヒンジを有することを認めることができる(図1)。ヒンジ領域は、Fcを2つのFabドメインに連結し、続いて、Fabの自由回転を可能にする柔軟な構造を示さなければならず、このFabの自由回転は、これらの弾頭部(Fab)がその標的と係合するために接近の角度を正確にとるのに必要であり、一方、Fc領域は、FcγR、FcRn及びC1qのような複数の結合相手と相互作用し得る。ヒンジ領域の周囲が柔軟であるにもかかわらず、この界面は、強力で構造的に堅いモチーフの「CPPC」モチーフによって媒介されている(図1~3)。ここでは、プロリン残基が極めて特異的で安定した二次構造を導入し、その二次構造は、システイン残基の-SH側鎖がその相手側と接触し、ジスルフィド結合を形成することを可能にする。さらに、この同じ堅いフレームは、CPPCモチーフの上流及び下流に広がる可能性が高く、このモチーフの近傍にあるそれらの残基の側鎖もまた、安定した立体構造を呈する可能性が高いことを示唆する。
蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank「PDB」)で利用可能なヒト完全長IgG1抗体(PDB 1HZH)の唯一の結晶構造は、部分的にインタクトなCPPCモチーフのみを示し、そこでは、第2のシステイン(C242)がジスルフィド結合を形成せず、2つのポリペプチド鎖において各側鎖が242位で逆方向を指している(図2)。CPPCモチーフのインタクトな構造を示す、マウスIgG1抗体の構造情報が存在するが、この2種間の配列の差違(図3)では、ヒトIgG1におけるCys242の下流の残基の側鎖の空間配置の正確な予測は不可能であった。したがって、CPPCモチーフの天然配列を維持しながら、「荷電ジッパーヒンジ01」(Charged Zipper Hinge01:CZH01)と命名された一連の反対荷電残基を、その同じ領域の下流に挿入した(図4)。この「荷電ジッパー」は、反対荷電の重鎖同士を引きつけること、及び同じ荷電の鎖同士を反発させることの両方を行うであろうと考えられる。
この仮説を試験するため、これらの変異を抗体Xに挿入し、HEK293細胞中に一過的に発現させ、次いで、単一ステップタンパク質精製(プロテインA、その後にCEX)を行った。新たに生成された抗体が2つの異なる重鎖(それぞれ、負荷電及び正荷電)から構成されているかどうかを検証するために、詳細な減少及び非減少質量分析(reduced and non-reduced mass spec)アッセイを実行した。実際、その結果は、この戦略により、Fc-CH3領域に追加の変異を一切行わずに、重鎖の対形成を促進することに成功していたことを示した(図4~6)。リシンの鎖(243~247)がアスパラギン酸の鎖(243~247)と向かい合って相互作用する可能性が最も高い。
CZH11
さらに、マウスIgG2分子の構造分析は、1つの鎖の残基246及び247と、相手側の鎖の残基244とが、互いに指し合うそれらの側鎖を有することを示す(図9)。これらの残基は、Cys242の下流、及びCPPCモチーフの近傍にあり、立体構造的な安定性を示唆している。さらに、荷電残基は、構造的空間的配置の中に適合し得る側鎖を有し、このため、CPPC界面を妨害しない。Asn246及びLeu247は、両方とも負荷電アスパラギン酸残基で置換した。これらの2つの残基と対にするために、反対側の鎖のAla244を単一のヒスチジンで置換し、反対の荷電残基(Asp246及びAsp247)と生産的接触を産み出すか、又は反発効果を示すかのいずれかができるようにした(図9及び10)(CZH11)。合理的デザインであるかを試験するために、この変異体を発現させ、精製した。驚くべきことに、実際、これら3つの残基がトライアッド(triad)を形成し、ヒンジの二量体化を促進するのに十分であることが、質量分析により確認された(図10)。
CZH09
次に、CPPC領域の上流領域を試験して、この配列の操作が、重鎖の二量体化を促進することもできるかどうかを検証した。2つの電荷対変異、Ala244Lys/Asp及びGlu246Lys/Aspを、Cys242残基の下流に維持しながら、2つの追加の電荷対変異、His237Lys/Asp及びThr238Lys/Aspを、Cys239残基の上流に挿入した(CZH09)(図7)。データは、CPPCモチーフの上流に挿入されたCPMが、重鎖の二量体化も促進することができることを示す。
CH3 CPM
さらに、ヒンジ領域に挿入されたCPM(電荷対変異)は、Fc-CH3領域に以前に挿入されたCPMと適合性がある。いわゆる「v11」CH3 CPM(1つのCH3領域中のD399K及び他方のCH3領域中のK409D/K392D)を、CZH01、CZH09及びCZH11の各変異を含有する分子に加えた(図11及び12)。その結果は、ヒンジ領域に挿入された3つのCPM(CZH01、CZH09及びCZH11)の全てが、Fc-CH3 CPMの存在下においても、重鎖の対形成の促進に成功したことを示した。
ヒンジ領域において操作されたこれらの新規な変異の影響を査定するために、安定性アッセイを行い、これらの新規な変異体の熱安定性値を、野生型分子との比較で調査した。データは、CZH01、CZH09及びCZH11のTmデータが、CH3-CPM v11が存在しない対照のCZH00(73.3℃)、及びCH3-CPM v11が存在するCZH00(70.7℃)と比較して遜色がないことを示す(表1)。