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JP7510133B2 - 肝臓オルガノイドの製造方法、肝臓オルガノイド製造用培地、肝臓オルガノイド、細胞製剤、及び被験物質の評価方法 - Google Patents
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JP7510133B2 - 肝臓オルガノイドの製造方法、肝臓オルガノイド製造用培地、肝臓オルガノイド、細胞製剤、及び被験物質の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、肝臓オルガノイドの製造方法、肝臓オルガノイド製造用培地、肝臓オルガノイド、細胞製剤、及び被験物質の評価方法に関する。
医薬品開発の薬物動態試験において、げっ歯類を用いたインビボ試験や、げっ歯類由来の初代(凍結)肝細胞を用いたインビトロ試験が行われている。しなしながら、種差があるためヒト特異的に発生する毒性を予測することが困難である。一方、ヒト初代(凍結)肝細胞ではロット間差が大きく、良質の肝細胞を安定して入手することが難しい。また、HepG2細胞等のヒト由来の肝癌細胞株はシトクロムP450(CYP)の活性が低く、CYPによる代謝に関連した毒性を評価できない。そのためより安定に使用できるヒト由来の肝細胞が必要とされている。
肝臓オルガノイドは2013年にHans Cleversらによって樹立された。この肝臓オルガノイドは、医薬品開発のための安定した肝細胞供給源として期待される(特許文献1~特許文献4を参照)。
特表2013-535201号公報 国際公開第2013/183571号 米国特許出願公開第2017/0191031号明細書 米国特許出願公開第2016/0266096号明細書
Liao J. K., et al, Rho Kinase (ROCK) Inhibitors, J Cardiovasc Pharmacol., 50 (1), 17-24, 2007. Dupont S., et al, Role of YAP/TAZ in mechanotransduction, Nature, 474(7350), 179-183, 2011.
本発明は、アルブミンの発現量に優れた肝臓オルガノイドの製造方法を提供することが課題である。
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]肝臓細胞凝集塊を、ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む分化用培地中で培養し、肝臓オルガノイドを得る分化工程を含む、肝臓オルガノイドの製造方法。
[2]前記分化工程において、前記肝臓細胞凝集塊と細胞外マトリックスとを接触させて培養する、[1]に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[3]前記分化用培地中に含まれる前記ジメチルスルフォキシドの体積分率が、0.1体積%以上である、[1]又は[2]に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[4]前記分化用培地が、さらに、EGF、FGF、HGF、及びIGFからなる群より選択される少なくとも1種の成長因子を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[5]前記分化用培地が、さらに、A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208、及びSJN2511からなる群より選択される少なくとも1種のTGF-β阻害剤を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[6]前記分化用培地が、さらに、DAPT、ジベンザゼピン、ベンゾジアゼピン、及びLY-411575からなる群より選択される少なくとも1種のNotch阻害剤を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[7]前記分化用培地が、さらに、デキサメタゾンを含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[8]前記分化工程の前に、さらに、上皮肝幹細胞を、ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む増殖用培地中で培養し、前記肝臓細胞凝集塊を得る増殖工程を有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[9]前記増殖用培地中に含まれるジメチルスルフォキシドの体積分率が、0.1体積%以上である、[8]に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[10]前記増殖用培地が、さらに、EGF、FGF、HGF、及びIGFからなる群より選択される少なくとも1種の成長因子を含有する、[8]又は[9]に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[11]前記増殖用培地が、さらに、ニコチンアミドを含有する、[8]~[10]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[12]前記増殖用培地が、さらに、Wntファミリーメンバー、R-スポンジン1~4、Norrin、及びGSK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種のWntアゴニストを含有する、[8]~[11]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[13]前記増殖用培地が、さらに、A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208、及びSJN2511からなる群より選択される少なくとも1種のTGF-β阻害剤を含有する、[8]~[12]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[14]前記増殖用培地が、さらに、Noggin、DAN、並びにCerberug及びGremlinを含むDAN様タンパク質、からなる群より選択される少なくとも1種のBMP阻害剤を含有する、[8]~[13]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
[15]ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む、肝臓オルガノイド製造用培地。
[16][1]~[14]のいずれかに記載の製造方法により製造された、肝臓オルガノイド。
[17]上皮肝幹細胞を培養して得られる肝臓オルガノイドであって、アルブミンの発現量が、前記上皮肝幹細胞を含む組織片のアルブミンの発現量に対して、2倍~1000倍である肝臓オルガノイド。
[18]CYP2C19の発現量が、前記上皮肝幹細胞を含む組織片のCYP2C19の発現量に対して、50%~200%である、[17]に記載の肝臓オルガノイド。
[19][16]~[18]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドを含有する細胞製剤。
[20][16]~[18]のいずれかに記載の肝臓オルガノイドに被験物質を接触させる工程、前記被験物質に対する前記肝臓オルガノイドの代謝能を評価する工程、を含む前記被験物質の評価方法。
本発明は以下の実施形態を含むものであるということもできる。
[P1]肝臓細胞塊の製造方法であって、肝臓オルガノイドを分化用培地中で分化させ、肝臓細胞塊を得る分化工程を含み、前記分化用培地が、ROCK阻害剤及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、及び、ジメチルスルフォキシドを含む、製造方法。
[P2]前記分化工程において、前記肝臓オルガノイドと細胞外マトリックスとを接触させて培養する、[P1]に記載の製造方法。
[P3]前記分化用培地が、前記分化用培地を100体積%として、前記ジメチルスルフォキシドを0.1体積%以上含む、[P1]又は[P2]に記載の製造方法。
[P4]前記分化用培地が、EGF、FGF、HGF及びIGFからなる群より選択される成長因子;A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208及びSJN2511からなる群より選択されるTGF-β阻害剤;DAPT、ジベンザゼピン(DBZ)、ベンゾジアゼピン(BZ)及びLY-411575からなる群より選択されるNotch阻害剤;及び、デキサメタゾン;からなる群より選択される少なくとも1つを更に含む、[P1]~[P3]のいずれかに記載の製造方法。
[P5]前記分化用培地が、ガストリン、B27サプリメント、N2サプリメント、及び、N-アセチルシステインからなる群より選択される少なくとも1つを更に含む、[P1]~[P4]のいずれかに記載の製造方法。
[P6]前記分化工程の前に、増殖用培地中で肝臓オルガノイドを増殖させる増殖工程を更に含み、前記増殖用培地が、ROCK阻害剤及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、及び、ジメチルスルフォキシドを含む、[P1]~[P5]のいずれかに記載の製造方法。
[P7]前記増殖工程において、前記肝臓オルガノイドと細胞外マトリックスとを接触させて培養する、[P6]に記載の製造方法。
[P8]前記増殖用培地が、前記増殖用培地を100体積%として、前記ジメチルスルフォキシドを0.1体積%以上含む、[P6]又は[P7]に記載の製造方法。
[P9]前記増殖用培地が、EGF、FGF、HGF及びIGFからなる群より選択される成長因子;ニコチンアミド;Wntファミリーメンバー、R-スポンジン1~4、Norrin及びGSK阻害剤からなる群より選択されるWntアゴニスト;A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208及びSJN2511からなる群より選択されるTGF-β阻害剤;及び、Noggin、DAN、並びにCerberug及びGremlinを含むDAN様タンパク質からなる群より選択されるタンパク質からなる群より選択されるBMP阻害剤;からなる群より選択される少なくとも1つを更に含む、[P6]~[P8]のいずれかに記載の製造方法。
[P10]前記増殖用培地が、ガストリン、B27サプリメント、N2サプリメント、及び、N-アセチルシステインからなる群より選択される少なくとも1つを更に含む、[P6]~[P9]のいずれかに記載の製造方法。
[P11]前記増殖工程を開始してから少なくとも1日後に前記分化工程を開始する、[P6]~[P10]のいずれかに記載の製造方法。
[P12]前記ROCK阻害剤が、Y-27632、Fasudil、Y39983、Wf-536、SLx-2119、Azabenzimidazole-aminofurazans、DE-104、H-1152P、ROKα inhibitor、XD-4000、HMN-1152、4-(1-aminoalkyl)-N-(4-pyridyl)cyclohexane-carboxamides、Rhostain、BA-210、BA-207、Ki-23095及びVAS-012からなる群より選択され、 前記YAP阻害剤が、Verteporfin、C3、CA3、(R)-PFI 2 hydrochloride、Super-TDU及びYAP-TEAD Inhibiter1からなる群より選択される、[P1]~[P11]のいずれかに記載の製造方法。
[P13]ROCK阻害剤及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、及び、ジメチルスルフォキシドを含む、肝臓オルガノイドを肝臓細胞塊に分化誘導するための分化用培地。
[P14]ROCK阻害剤及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、及び、ジメチルスルフォキシドを含む、肝臓オルガノイドを増殖させるための増殖用培地。
[P15][P1]~[P12]のいずれかに記載の製造方法により製造された、肝臓細胞塊。
[P16]200,000個/mL以上の密度で容器に収容された、肝臓細胞塊。
[P17][P15]又は[P16]に記載の肝臓細胞塊からなる細胞製剤。
[P18]被験物質の存在下で[P15]又は[P16]に記載の肝臓細胞塊を培養する工程と、前記肝臓細胞塊の応答を評価する工程と、を含む、前記被験物質の評価方法。
[P19][P15]又は[P16]に記載の前記肝臓細胞塊に被験物質を作用させる工程と、前記肝臓細胞塊の応答を評価する工程と、を含む、前記被験物質の評価方法。
本発明の実施形態によれば、アルブミンの発現量に優れた肝臓オルガノイドを製造することができる。
以下、実施形態を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
本明細書で例示する各成分、例えば、培地中に含まれる成分や各工程で用いられる成分は、特に言及しない限り、それぞれ1種を単独で用いることができ、または2種以上を併用して用いることができる。
本明細書で、「A~B」等の数値範囲を表す表記は、「A以上、B以下」と同義である。また、本明細書で、「A~B、好ましくはa~b」等との数値範囲を表す表記は、「A以上、B以下」、「A以上、b以下」、「a以上、B以下」、及び「a以上、b以下」と同義である。
本明細書において、「物質Xを含む培地」、「物質Xの存在下」とは、外来性(exogenous)の物質Xが添加された培地、外来性の物質Xを含む培地、又は外来性の物質Xの存在下を意味する。すなわち、当該培地中に存在する細胞又は組織が当該物質Xを内在的(endogenous)に発現、分泌又は産生する場合、内在的な物質Xは外来性の物質Xとは区別され、外来性の物質Xを含んでいない培地は内在的な物質Xを含んでいても「物質Xを含む培地」の範疇には該当しないものとする。
[肝臓オルガノイドの製造方法]
本実施形態の肝臓オルガノイドの製造方法は、肝臓細胞凝集塊をROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む分化用培地中で培養する分化工程を有する。
本実施形態の肝臓オルガノイドの製造方法は、分化工程の前に、さらに、上皮肝幹細胞を、ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む増殖用培地で培養し、肝臓細胞凝集塊を得る増殖工程を有することができる。増殖工程を行うことで、分化工程で用いる肝臓細胞凝集塊を得ることができる。
肝臓細胞凝集塊は市販されたものであってもよく、例えば、商品名「Mouse Hepatic Organoids」(カタログ番号「#70932」、ステムセルテクノロジーズ社)が挙げられる。
細胞凝集塊とは2個以上の細胞が接着して形成された凝集塊を示す。本実施形態の肝臓オルガノイドも細胞凝集塊の一形態である。また、肝臓オルガノイドとは、肝臓組織に解剖学的に近い構造を有する培養物を示す。
本明細書において、「分化させる」、「分化誘導する」とは、特定の細胞系譜に沿って分化するように働きかけることをいう。本実施形態の製造方法では肝臓細胞凝集塊を肝臓オルガノイドへと分化誘導する。
〈分化工程〉
分化工程では、肝臓細胞凝集塊を、ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む分化用培地中で培養し、肝臓オルガノイドへ分化させる。培養は、通常、浮遊培養が好ましい。分化工程の培養期間は、通常、5日間~15日間、好ましくは7日間~12日間である。
分化工程では、肝臓細胞凝集塊と細胞外マトリックス(以下、「ECM」ともいう)とを接触させて培養することが好ましい。肝臓オルガノイドと溶解させたECMとを混合し、ECMをゲル化させた後に、ゲル化したECMに分化用培地を重層して培養してもよい。本明細書では、肝臓オルガノイドを含む重合したECMに、分化用培地を重層して培養する態様を含めて、肝臓オルガノイドを分化用培地で培養することを「分化用培地中で培養する」と表現する。
ECMとしては、少なくとも2種類を含むECMが好ましい。例えば、コラーゲン及びラミニンを含むECMが挙げられる。ECMとしては、合成ECM、天然ECMが挙げられる。ECMとしては、ラミニン、エンタクチン及びコラーゲンIVを含む、マトリゲル(登録商標)(BDバイオサイエンス社)が好ましい。細胞外マトリックス材料は、細胞培養容器の上にコーティングされた状態のもの、及び溶解状態のものが挙げられる。
《分化用培地》
分化用培地は、ROCK阻害剤及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含有する。分化用培地には、さらに、細胞外マトリクスを含有することができる。分化用培地は、通常、基礎培地に、各種成分を添加して調製する。
基本培地としては、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、基礎培地(MEM)、ノックアウト-DMEM(KO-DMEM)、グラスゴー基本培地(G-MEM)、イーグル基礎培地(BME)、DMEM/ハムF12、Advanced DMEM/ハムF12、イスコフ改変ダルベッコ培地、ハムF-10、ハムF-12、199培地、及びRPMI1640培地等を挙げることができる。
基本培地としては、グルタミン、インシュリン、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びトランスフェリンを含有するDMEM/F12、RPMI1640;無血清培養に最適化され、インシュリンを既に含んでいるAdvanced DMEM/F12;及びAdvanced RPMI;が好ましい。Advanced DMEM/F12、及びAdvanced RPMI培地には、グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加することが好ましい。
ROCK阻害剤としては、Y-27632(CAS番号:146986-50-7)、Fasudil(CAS番号:105628-07-7)、Y39983(CAS番号:203911-26-6)、Wf-536(CAS番号:539857-64-2)、SLx-2119(CAS番号:911417-87-3)、Azabenzimidazole-aminofurazans(CAS番号:850664-21-0)、DE-104(非特許文献1参照)、H-1152P(非特許文献1参照)、ROKα inhibitor(非特許文献1参照)、XD-4000(非特許文献1参照)、HMN-1152(非特許文献1参照)、4-(1-aminoalkyl)-N-(4-pyridyl)cyclohexane-carboxamides(非特許文献1参照)、Rhostain(非特許文献1参照)、BA-210(非特許文献1参照)、BA-207(非特許文献1参照)、Ki-23095(非特許文献1参照)、及びVAS-012(非特許文献1参照)が挙げられる。これらの中でもY-27632が好ましい。分化用培地中に含まれるROCK阻害剤の終濃度は、通常、0.1μM~20μMである。ROCK阻害剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、終濃度とは、特定成分を培地に添加した結果、培地中に含まれる特定成分の濃度を示す。
YAP阻害剤としては、Verteporfin(CAS番号:129497-78-5)、ボツリヌス菌産生C3毒素(非特許文献2参照)、CA3(CAS番号:300802-28-2)、(R)-PFI 2 hydrochloride(CAS番号:1627607-87-7)、Super-TDU(CAS番号:1599441-71-0)、及びYAP-TEAD Inhibiter1(カタログ番号「S8164」、Selleck Chemicals社等)が挙げられる。分化用培地中に含まれるYAP阻害剤の終濃度は、通常、0.1μM~10μMである。YAP阻害剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
分化用培地中に含まれるジメチルスルフォキシドの体積分率は、好ましくは0.1体積%以上、より好ましくは0.3体積%以上、さらに好ましくは0.5体積%以上である。また、分化用培地中に含まれるジメチルスルフォキシドの体積分率は、通常、10体積%以下、好ましくは5体積%以下、より好ましくは3体積%以下である。上記の数値の範囲内であると、アルブミン産生能が高まった肝臓オルガノイドを得ることができる。
分化用培地は、さらに、EGF(上皮成長因子)、FGF(線維芽細胞成長因子)、肝細胞増殖因子(HGF)及びインスリン様成長因子(IGF)からなる群より選択される少なくとも1種の成長因子を含有することができる。
分化用培地中に含まれるEGFの終濃度は、通常、5ng/mL~500ng/mL、好ましくは25ng/mL~300ng/mL、さらに好ましくは50~100ng/mLである。
FGFとしては、FGF2、FGF4、FGF7、及びFGF10が挙げられ、これらの中でもFGF10が好ましい。分化用培地中に含まれるFGFの終濃度は、通常、20ng/mL~500ng/mL、好ましくは50ng/mL~500ng/mL、より好ましくは100~500ng/mLである。
分化用培地中に含まれるHGFの終濃度は、通常、1ng/mL~100ng/mL、好ましくは10ng/mL~100ng/mL、より好ましくは20ng/mL~100ng/mL、さらに好ましくは40ng/mL~100ng/mLである。
IGFとしては、IGF1が好ましい。分化用培地中に含まれるIGFの終濃度は、通常、5ng/mL~1000ng/mL、好ましくは10ng/mL~1000ng/mL、より好ましくは50ng/mL~1000ng/mLである。
分化用培地は、さらに、A83-01(CAS番号:909910-43-6)、SB-431542(CAS番号:301836-41-9)、SB-505124(CAS番号:694433-59-5)、SB-525334(CAS番号:356559-20-1)、LY364947(CAS番号:396129-53-6)、SD-208(CAS番号:627536-09-8)、及びSJN2511(CAS番号:446859-33-2)からなる群より選択される少なくとも1種のTGF-β阻害剤(形質転換因子β阻害剤)を含有することができる。
TGF-β阻害剤としては、A83-01が好ましく用いることができる。分化用培地中に含まれるTGF-β阻害剤の終濃度は、通常、0.01nM~600nMである。
分化用培地は、さらに、DAPT(CAS番号:208255-80-5)、ジベンザゼピン(DBZ)(CAS番号:209984-56-5)、ベンゾジアゼピン(BZ)(CAS番号:209986-17-4)、及びLY-411575(CAS番号:209984-57-6)からなる群より選択される少なくとも1種のNotch阻害剤を含有することができる。
Notch阻害剤としては、DAPTが好ましく用いることができる。分化用培地中に含まれるNotch阻害剤の終濃度は、通常、1μM~50μM、好ましくは5μM~30μM、より好ましくは5μM~20μMである。
分化用培地は、さらに、デキサメタゾン(CAS番号:50-02-2)を含むことができる。分化用培地に含まれるデキサメタゾンの終濃度は、1μM~50μMであってもよく、1μM~40μMであってもよく、1μM~35μMであってもよい。
分化用培地は、さらに、ガストリン、B27サプリメント(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、N2サプリメント(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、及びN-アセチルシステイン等の神経生物系サプリメントを含有することができる。
分化用培地中に含まれるガストリンの終濃度は、通常、5nM~15nM、好ましくは7nM~10nMである。
B27サプリメントは、ビオチン、コレステロール、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、レチノール、酢酸レチニル、亜セレン酸ナトリウム、トリヨードチロニン(T3)、DL-α-トコフェロール(ビタミンE)、アルブミン、インシュリン及びトランスフェリンを含む組成物であり、50倍液体濃縮液として市販されている。これらの成分のうち、少なくともリノレン酸、レチノール、酢酸レチニル及びトリヨードチロニン(T3)は核ホルモン受容体アゴニストである。
N2サプリメントは、500μg/mLヒトトランスフェリン、500μg/mLウシインシュリン、0.63μg/mLプロゲステロン、161μg/mLプトレシン及び0.52μg/mL亜セレン酸ナトリウムを含む組成物であり、100倍液体濃縮液として市販されている。
分化用培地中に含まれるN-アセチルシステインの終濃度は、通常、150ng/mL~250ng/mL、好ましくは170ng/mL~200ng/mLである。
〈増殖工程〉
増殖工程では、上皮肝幹細胞を、ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む増殖用培地で培養し、前記肝臓細胞凝集塊を得る。増殖工程を有することにより、アルブミン産生能が高い肝臓オルガノイドを製造することができる。
増殖工程では、肝臓オルガノイドと細胞外マトリックス(ECM)とを接触させて培養することが好ましい。例えば、実施例において後述するように、肝臓オルガノイドとECMとを混合し、ECMを重合させた後に、重合したECMに増殖用培地を重層して培養してもよい。本明細書では、肝臓オルガノイドを含む重合したECMに、増殖用培地を重層して培養する態様を含めて、肝臓オルガノイドを増殖用培地で培養することを「増殖用培地中で培養する」と表現する。増殖工程において使用するECMは、上述した、分化工程で使用するECMと同様であってよい。
上皮肝幹細胞は、肝臓断片又は肝臓胆管から単離される。これらの細胞を単離する方法は公知である。例えば、本明細書の実施例に記載のように、成体肝臓組織を解離することにより上皮肝幹細胞を含む細胞集団を得ることができる。組織の解離は酵素的解離により行うことができ、コラゲナーゼ、ディスパーゼ等の酵素を用いることができる。
《増殖用培地》
増殖用培地は、ROCK阻害剤及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、及び、ジメチルスルフォキシドを含む。増殖用培地において、ROCK阻害剤、YAP阻害剤としては、上述した分化用培地におけるものと同様のものを同様の濃度で用いることができる。また、増殖用培地は、増殖用培地を100体積%として、ジメチルスルフォキシド(CAS番号:67-68-5)を0.1体積%以上含むことが好ましく、0.3体積%以上含むことがより好ましく、0.5体積%以上含むことがさらに好ましい。また、増殖用培地は、増殖用培地を100体積%として、ジメチルスルフォキシド(CAS番号:67-68-5)を10体積%以下含むことが好ましく、5体積%以下含むことがより好ましく、3体積%以下含むことがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、アルブミン産生能が高まった肝臓細胞塊が得られる。
《その他の添加剤》
増殖用培地は、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)及びインスリン様成長因子(IGF)からなる群より選択される成長因子;ニコチンアミド(CAS番号:98-92-0);Wntファミリーメンバー、R-スポンジン1~4、Norrin及びGSK阻害剤からなる群より選択されるWntアゴニスト;A83-01(CAS番号:909910-43-6)、SB-431542(CAS番号:301836-41-9)、SB-505124(CAS番号:694433-59-5)、SB-525334(CAS番号:356559-20-1)、LY364947(CAS番号:396129-53-6)、SD-208(CAS番号:627536-09-8)及びSJN2511(CAS番号:446859-33-2)からなる群より選択されるTGF-β阻害剤;及び、Noggin、DAN、並びにCerberug及びGremlinを含むDAN様タンパク質からなる群より選択されるタンパク質からなる群より選択される骨形成タンパク質(BMP)阻害剤;からなる群より選択される少なくとも1つを更に含むことが好ましい。
増殖用培地におけるEGFの含有量は、上述した分化用培地におけるEGFの含有量と同様である。
増殖用培地は、FGFとして、上述した分化用培地におけるFGFと同様のものを同様の含有量で含むことができる。
増殖用培地におけるHGFの含有量は、上述した分化用培地におけるHGFの含有量と同様である。
増殖用培地は、IGFとして、上述した分化用培地におけるIGFと同様のものを同様の含有量で含むことができる。
増殖用培地におけるニコチンアミドの含有量は、5~15mMであってもよく、8~12mMであってもよい。
Wntアゴニストは、Wntファミリーメンバー、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3、R-スポンジン4、Norrin、GSK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。Wntファミリーメンバーとしては、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、Wnt16等が挙げられる。R-スポンジンとしては、R-スポンジン1又はR-スポンジン4が好ましく、R-スポンジン1が特に好ましい。
Wntアゴニストは、R-スポンジン1を含むことが好ましい。増殖用培地におけるWntアゴニストの含有量は、200ng/mL以上であってもよく、300ng/mL以上であってもよく、400ng/mL以上であってもよく、500ng/mL以上であってもよい。Wntアゴニストの含有量の上限は特に限定されないが、例えば600ng/mL程度であってもよい。
肝臓オルガノイドがヒト由来のものである場合、増殖用培地がTGF-β阻害剤を含むことが好ましい。TGF-β阻害剤としてはA83-01が好ましく用いられる。増殖用培地におけるTGF-β阻害剤の含有量は、0~20μMであってもよく、0~10μMであってもよい。
BMP阻害剤は、Nogginであることが好ましい。分化用培地におけるBMP阻害剤の含有量は、10~100ng/mLであってもよく、20~100ng/mLであってもよく、50~100ng/mLであってもよい。BMP阻害剤の含有量の上限は特に限定されないが、例えば150ng/mL程度であってもよい。
増殖用培地は、ガストリン、B27サプリメント(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、N2サプリメント(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、及び、N-アセチルシステインからなる群より選択される少なくとも1つを更に含むことが好ましい。増殖用培地において、ガストリン、B27サプリメント(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、N2サプリメント(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、N-アセチルシステインとしては、上述した分化用培地におけるものと同様のものを同様の濃度で用いることができる。
本実施形態の肝臓オルガノイドの製造方法において、増殖工程を行う場合には、増殖工程を開始してから少なくとも1日以上後に分化工程を開始することが好ましい。増殖工程の期間(培養期間)は、例えば1~15日間であってもよく、例えば1~5日間であってもよく、例えば2~4日間であってもよい。
肝臓オルガノイドが増殖したことは、Lgr5遺伝子又はLgr5タンパク質の発現量を測定することにより評価することができる。肝臓オルガノイドはLgr5タンパク質を発現する。
また、本実施形態の肝臓オルガノイドの製造方法において、肝臓細胞凝集塊が肝臓オルガノイドに分化したことは、肝細胞マーカーの発現や薬物代謝活性等を指標にして判定又は評価することができる。肝細胞マーカーとしては、例えば、アルブミン(ALB)、α-フェトプロテイン(AFP)、チロシン-アミノ基転移酵素(TAT)、プレグナンX受容体(PXR)等が挙げられる。肝細胞マーカーの発現量の測定は、遺伝子レベルで行ってもよいし、タンパク質レベルで行ってもよい。
肝臓細胞凝集塊の集団から、肝臓オルガノイドのみからなる集団を得る方法としては、例えば、肝臓オルガノイドに特徴的な細胞表面マーカーの存在を指標にして、肝臓細胞凝集塊を選別・分取する方法が挙げられる。
薬物代謝活性は、薬物代謝酵素の発現の検出又は薬物代謝アッセイによって評価することができる。薬物代謝酵素としては、例えば、シトクロムP450 2C19(CYP2C19)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、シトクロムP450 3A7(CYP3A7)、シトクロムP450 1A(CYP1A)、シトクロムP450 3A(CYP3A)、シトクロムP450 2B(CYP2B)、シトクロムP450 2D(CYP2D)、ウリジン二リン酸-グルクロン酸転移酵素(UGT)、硫酸転移酵素(SULT)等が挙げられる。
増殖工程及び分化工程における、培養温度等の条件は、動物細胞の培養において一般に採用されている条件とすればよい。具体的には、例えば、37℃、5%COの環境下で培養すればよい。
[肝臓オルガノイド]
本実施形態の肝臓オルガノイドは、上述した肝臓オルガノイドの製造方法により製造することができる。本実施形態の肝臓オルガノイドは、被験物質の代謝、薬物相互作用、肝毒性、トランスポーター活性等のインビトロ評価に好適に用いることができる。また、肝疾患患者に移植して肝疾患を治療する細胞製剤として利用することもできる。
本実施形態の肝臓オルガノイドのアルブミンの発現量は、培養に用いた上皮肝幹細胞を含む組織片のアルブミンの発現量に対して、好ましくは2倍~1000倍、より好ましくは2.5倍~100倍、さらに好ましくは3倍~50倍である。
本実施形態の肝臓オルガノイドのCYP2C19の発現量は、培養に用いた上皮肝幹細胞を含む組織片のCYP2C19の発現量に対して、好ましくは50%~200%、より好ましくは80%~180%倍、さらに好ましくは100%~150%である。
本実施形態の肝臓オルガノイドの密度は、好ましくは200,000個/mL以上である。
[細胞製剤]
本実施形態の細胞製剤は、上述したオルガノイドを含有する。本実施形態の細胞製剤中に含まれる肝臓オルガノイドの由来となる上皮肝幹細胞は、遺伝子工学的手法等により免疫原性が低減された肝臓組織由来であってもよいし、患者由来の肝臓組織由来であってもよいし、患者と免疫学的に適合した第3者の肝臓組織由来であってもよい。
本実施形態の細胞製剤は、各種肝疾患の治療に利用することができる。例えば、傷害や機能不全の肝臓組織の再生・再建用の材料としての利用が想定される。したがって、本実施形態の細胞製剤は再生医療用として用いることができる。
本実施形態の細胞製剤は、例えば、上述した肝臓オルガノイドを生理食塩水や緩衝液(例えば、リン酸系緩衝液)等に懸濁することによって製造することができる。治療上有効量の細胞を投与できるように、一回投与分の量として例えば1×10個~1×1010個の細胞を含有させるとよい。
本実施形態の細胞製剤の投与量は、使用目的、対象疾患、適用対象(レシピエント)の性別、年齢、体重、患部の状態、細胞の状態等を考慮して適宜調整することができる。また、本実施形態の細胞製剤の投与方法としては、肝臓への局所投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与等が挙げられる。
[被験物質の評価方法]
1実施形態において、本発明は、被験物質の存在下で、上述した製造方法により製造された肝臓オルガノイドを培養する工程と、前記肝臓オルガノイドの代謝能を評価する工程と、を含む、前記被験物質の評価方法を提供する。また、別の実施態様において、本発明は、上述した製造方法により製造された肝臓オルガノイドに被験物質を作用させる工程と、前記肝臓オルガノイドの応答を評価する工程と、を含む、前記被験物質の評価方法を提供する。
本実施形態の評価方法により、被験物質の代謝、薬物相互作用、肝毒性、トランスポーター活性等をインビトロで評価し、インビボにおける評価と一致した結果を得ることができる。
例えば、肝臓オルガノイドを用いて被験物質の代謝について試験することができる。被験物質としては特に制限されず、例えば、天然化合物ライブラリ、合成化合物ライブラリ、既存薬ライブラリ、代謝物ライブラリ等が挙げられる。被験物質には様々な分子サイズの有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例としては、核酸、ペプチド、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミン(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、A、D、E等)等が挙げられる。
医薬や栄養食品等の既存成分又は候補成分も好ましい被験物質の一つである。植物抽出液、細胞抽出液、培養上清等を被験物質として用いてもよい。また、2種類以上の被験物質を同時に添加することにより、被験物質間の相互作用、相乗作用等を調べることもできる。被験物質は天然物由来であってもよいし、人工的に合成されたものであってもよい。後者の場合には、例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なアッセイ系を構築することができる。
本実施形態の評価方法において、被験物質と肝臓オルガノイドとを接触させる期間は任意に設定可能である。接触期間は例えば10分間~3日間であってもよく、1時間~1日間であってもよい。被験物質と肝臓オルガノイドとの接触を複数回に分けて行ってもよい。
肝臓オルガノイドの応答の評価は、適切な分析方法により実施することができる。例えば、産生される代謝産物に応じて、質量分析、液体クロマトグラフィー、免疫学的手法等を採用することができる。免疫学的手法としては、例えば、蛍光免疫測定法(FIA法)、酵素免疫測定法(EIA法)等が挙げられる。
肝臓オルガノイドにおける薬物代謝酵素(例えば、シトクロム、UGT等)の発現を指標として被験物質の代謝を測定することもできる。薬物代謝酵素の発現はmRNAレベルで評価してもよいし、タンパク質レベルで評価してもよい。
本実施形態の評価方法により被験物質の毒性を試験することもできる。例えば、被験物質を接触させた後の肝臓オルガノイドの状態を調べ、被験物質の毒性を評価する。肝臓オルガノイドの状態としては、生存率、細胞形態、培養液中の肝障害マーカー(例えば、GOT、GPT等)の存在量等が挙げられる。
[実施例1]
(マウス肝臓細胞凝集塊の形成)
摘出したC57BL/6マウスの肝臓をPBSで洗浄後に手術用ハサミで細かくミンスした。ミンス後の肝臓を50mLチューブ中でコラゲナーゼとディスパーゼの混合溶液と37℃で2時間振とうしながら反応させた。反応後の肝臓懸濁液はメッシュサイズが100μmのセルストレーナー(カタログ番号「352360」、セルストレーナー(メッシュ100μm)、BDファルコン社)で濾過し、未分散の肝臓断片を除去した。濾過後の肝臓懸濁液は、遠心後、Advanced DMEM/F12で洗浄した。この洗浄操作を2回行った後、Advanced DMEM/F12で懸濁し、肝細胞懸濁液を調製した。この懸濁液から10,000個の肝細胞を50μLのマトリゲル(BDバイオサイエンス社)と混合し、24ウェル組織培養プレートに播種し、マトリゲルが完全に重合するまで37℃で5~10分間インキュベートした。続いて、マトリゲルが重合した後に、500μLの培地を重層して培養した。培養して得られたマウス肝臓細胞凝集塊は酵素的解離によって希釈し、継代した。
(マウス肝臓オルガノイドの分化誘導)
形成したマウス肝臓細胞凝集塊を酵素的解離した後、得られた1,000個の細胞を50μLのマトリゲル(BDバイオサイエンス社)と混合し、24ウェル組織培養プレートに播種し、マトリゲルが完全に重合するまで37℃で5~10分間インキュベートした。続いて、マトリゲルが重合した後に、500μLの増殖用培地を重層して4日間培養した。増殖用培地としては、表1に記載した組成の培地を用いた。
続いて、増殖用培地を重層して4日目に、全量の培地を分化用培地に交換した。以後、1日おきに培地を新しい分化用培地に交換した。分化用培地としては、表1に記載した組成の培地を用いた。
(タンパク質レベルでのアルブミン発現量の測定)
分化用培地に交換して9日後に新しい分化用培地に交換し、更に3日間培地を交換せずに培養を続けた。その後、培養上清を回収し、培地中のアルブミン産生値をELISA法により測定した。ELISA法は市販のキット(カタログ番号「E99-134」、ベチルラボラトリーズ社)を用いて行った。
また、培養上清を回収した後の細胞について、市販のキット(商品名「CellTiter-Glo」、プロメガ社)を用いてATP活性の測定を行った。
続いて、上述したELISA法により測定された波長450nmにおける吸光度を、上述したATP活性の測定値で除し、細胞量を補正してアルブミン産生量とした。表1にアルブミン産生量の測定結果を示す。
(遺伝子レベルでのアルブミン発現量の測定)
培養上清を回収した後の細胞について、更に、市販のキット(商品名「FastLane Cell cDNA Kit」、キアゲン社)を用いて、細胞から総リボ核酸(RNA)を抽出してcDNAを合成し、リアルタイム定量PCRによりアルブミン遺伝子のmRNAの発現量を測定した。リアルタイム定量PCRは、市販のキット(商品名「SYBR(R) Premix Ex Taq(TM)(Perfect Real Time)」、タカラバイオ株式会社)を用いて行った。また、内在性コントロールとしてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を用い、測定結果を補正した。表1にアルブミン産生量の測定結果を示す。
[実施例2~7]
増殖用培地及び分化用培地の組成を表1に示すものに変更した点以外は実施例1と同様にして肝臓細胞凝集塊を肝臓オルガノイドへと分化誘導し、アルブミン産生量の測定を行った。表1にアルブミン産生量の測定結果を示す。
[実施例8]
(ヒト肝臓細胞凝集塊の形成)
ヒト凍結浮遊肝細胞HMCS1S(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を融解し、Advanced DMEM/F12に加えて遠心した。上清を除いた後、Advanced DMEM/F12で洗浄した。この洗浄操作を2回行った後、Advanced DMEM/F12で懸濁し、肝細胞懸濁液を調製した。この懸濁液から60,000個の肝細胞を50μLのマトリゲル(BDバイオサイエンス社)と混合し、24ウェル組織培養プレートに播種し、マトリゲルが完全に重合するまで37℃で5~10分間インキュベートした。続いて、マトリゲルが重合した後に、500μLの増殖用培地を重層し培養した。増殖したヒト肝臓細胞凝集塊は酵素的解離によって希釈し、継代した。
(ヒト肝臓細胞凝集塊の分化誘導)
形成したヒト肝臓細胞凝集塊を酵素的解離した後、得られた10,000個の細胞を50μLのマトリゲル(BDバイオサイエンス社)と混合し、24ウェル組織培養プレートに播種し、マトリゲルが完全に重合するまで37℃で5~10分間インキュベートした。続いて、マトリゲルが重合した後に、500μLの増殖用培地を重層して10日間培養し、ヒト肝臓オルガノイドを得た。増殖用培地としては、表1に記載した組成の培地を用いた。
続いて、増殖用培地を重層して10日目に、全量の培地を分化用培地に交換した。以後、2日おきに培地を新しい分化用培地に交換した。分化用培地としては、表1に記載した組成の培地を用いた。
(遺伝子レベルでのアルブミン発現量の測定)
分化用培地に交換して10日後に、市販のキット(商品名「FastLane Cell cDNA Kit」、キアゲン社)を用いて、細胞から総リボ核酸(RNA)を抽出してcDNAを合成し、リアルタイム定量PCRによりアルブミン遺伝子のmRNAの発現量を測定した。リアルタイム定量PCRは、市販のキット(商品名「SYBR(R) Premix Ex Taq(TM)(Perfect Real Time)」、タカラバイオ株式会社)を用いて行った。また、内在性コントロールとしてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を用い、測定結果を補正した。表1にアルブミン産生量の測定結果を示す。
[比較例1]
(マウス肝臓細胞凝集塊の形成)
実施例1と同様にして、マウス肝臓細胞凝集塊を形成した。
(マウス肝臓オルガノイドの分化誘導)
形成したマウス肝臓細胞凝集塊を酵素的解離した後、得られた1,000個の細胞を50μLのマトリゲル(BDバイオサイエンス社)と混合し、24ウェル組織培養プレートに播種し、マトリゲルが完全に重合するまで37℃で5~10分間インキュベートした。続いて、マトリゲルが重合した後に、500μLの増殖用培地を重層して3日間培養した。増殖用培地としては、表2に記載した組成の培地を用いた。
続いて、増殖用培地を重層して3日目に、全量の培地を分化用培地に交換した。以後、1日おきに培地を新しい分化用培地に交換した。分化用培地としては、表2に記載した組成の培地を用いた。
(タンパク質レベルでのアルブミン発現量の測定)
分化用培地に交換して9日後に新しい分化用培地に交換し、更に3日間培地を交換せずに培養を続けた。その後、培養上清を回収し、培地中のアルブミン産生値をELISA法により測定した。ELISA法は市販のキット(カタログ番号「E99-134」、ベチルラボラトリーズ社)を用いて行った。
また、培養上清を回収した後の細胞について、市販のキット(商品名「CellTiter-Glo」、プロメガ社)を用いてATP活性の測定を行った。
続いて、上述したELISA法により測定された波長450nmにおける吸光度を、上述したATP活性の測定値で除し、細胞量を補正してアルブミン産生量とした。
(遺伝子レベルでのアルブミン発現量の測定)
培養上清を回収した後の細胞について、更に、市販のキット(商品名「FastLane Cell cDNA Kit」、キアゲン社)を用いて、細胞から総リボ核酸(RNA)を抽出してcDNAを合成し、リアルタイム定量PCRによりアルブミン遺伝子のmRNAの発現量を測定した。リアルタイム定量PCRは、市販のキット(商品名「SYBR(R) Premix Ex Taq(TM)(Perfect Real Time)」、タカラバイオ株式会社)を用いて行った。また、内在性コントロールとしてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を用い、測定結果を補正した。表2にアルブミン産生量の測定結果を示す。
[比較例2~4]
増殖用培地及び分化用培地の組成を表2に示すものに変更した点以外は比較例1と同様にして肝臓細胞凝集塊を肝臓オルガノイドへと分化誘導し、アルブミン産生量の測定を行った。表2にアルブミン産生量の測定結果を示す。
[比較例5]
(ヒト肝臓細胞凝集塊の形成)
実施例8と同様にして、ヒト肝臓細胞凝集塊を形成した。
(ヒト肝臓オルガノイドの分化誘導)
形成したヒト肝臓細胞凝集塊を酵素的解離した後、得られた10,000個の細胞を50μLのマトリゲル(BDバイオサイエンス社)と混合し、24ウェル組織培養プレートに播種し、マトリゲルが完全に重合するまで37℃で5~10分間インキュベートした。続いて、マトリゲルが重合した後に、500μLの増殖用培地を重層して10日間培養した。増殖用培地としては、表2に記載した組成の培地を用いた。
続いて、増殖用培地を重層して10日目に、全量の培地を分化用培地に交換した。以後、2日おきに培地を新しい分化用培地に交換した。分化用培地としては、表2に記載した組成の培地を用いた。
(遺伝子レベルでのアルブミン発現量の測定)
分化用培地に交換して10日後に、市販のキット(商品名「FastLane Cell cDNA Kit」、キアゲン社)を用いて、細胞から総リボ核酸(RNA)を抽出してcDNAを合成し、リアルタイム定量PCRによりアルブミン遺伝子のmRNAの発現量を測定した。リアルタイム定量PCRは、市販のキット(商品名「SYBR(R) Premix Ex Taq(TM)(Perfect Real Time)」、タカラバイオ株式会社)を用いて行った。また、内在性コントロールとしてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を用い、測定結果を補正した。表2にアルブミン産生量の測定結果を示す。
Figure 0007510133000001
Figure 0007510133000002
(遺伝子レベルでの各CYP発現量の測定)
実施例8および比較例5において、分化用培地に交換して10日後に、市販のキット(商品名「FastLane Cell cDNA Kit」、キアゲン社)を用いて、細胞から総リボ核酸(RNA)を抽出してcDNAを合成し、リアルタイム定量PCRにより各CYP遺伝子のmRNAの発現量を測定した。リアルタイム定量PCRは、市販のキット(商品名「SYBR(R) Premix Ex Taq(TM)(Perfect Real Time)」、タカラバイオ株式会社)を用いて行った。また、内在性コントロールとしてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を用い、測定結果を補正した。表3に凍結肝細胞の各CYP発現量に対して各CYP発現量の測定結果を示す。表3中の値は、GAPDH発現量を100%とした場合の割合(%)である。
Figure 0007510133000003
本発明によれば、アルブミンの発現量に優れた肝臓オルガノイドの製造方法を提供することができる。

Claims (10)

  1. 肝臓細胞凝集塊を、ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む分化用培地中で培養し、肝臓オルガノイドを得る分化工程を含み、
    前記分化工程において、前記肝臓細胞凝集塊と細胞外マトリックスとを接触させて培養し、
    前記分化用培地が、EGF、FGF、HGF、及びIGFからなる群より選択される少なくとも1種の成長因子;A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208、及びSJN2511からなる群より選択される少なくとも1種のTGF-β阻害剤;DAPT、ジベンザゼピン、ベンゾジアゼピン、及びLY-411575からなる群より選択される少なくとも1種のNotch阻害剤;及びデキサメタゾンを更に含有し、
    前記分化用培地中に含まれるジメチルスルフォキシドの体積分率が、0.5体積%以上3体積%以下である、肝臓オルガノイドの製造方法。
  2. 前記分化工程を5日間~15日間行う、請求項1に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  3. 前記分化工程の前に、さらに、上皮肝幹細胞を、ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含む増殖用培地中で培養し、前記肝臓細胞凝集塊を得る増殖工程を有する、請求項1又は請求項2に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  4. 前記増殖用培地中に含まれるジメチルスルフォキシドの体積分率が、0.1体積%以上である、請求項3に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  5. 前記増殖用培地が、さらに、EGF、FGF、HGF、及びIGFからなる群より選択される少なくとも1種の成長因子を含有する、請求項3又は請求項4に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  6. 前記増殖用培地が、さらに、ニコチンアミドを含有する、請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  7. 前記増殖用培地が、さらに、Wntファミリーメンバー、R-スポンジン1~4、Norrin、及びGSK阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種のWntアゴニストを含有する、請求項3~請求項6のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  8. 前記増殖用培地が、さらに、A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208、及びSJN2511からなる群より選択される少なくとも1種のTGF-β阻害剤を含有する、請求項3~請求項7のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  9. 前記増殖用培地が、さらに、Noggin、DAN、並びにCerberug及びGremlinを含むDAN様タンパク質、からなる群より選択される少なくとも1種のBMP阻害剤を含有する、請求項3~請求項8のいずれか一項に記載の肝臓オルガノイドの製造方法。
  10. ROCK阻害剤、及びYAP阻害剤からなる群より選択された少なくとも1つ、並びにジメチルスルフォキシドを含み、
    EGF、FGF、HGF、及びIGFからなる群より選択される少なくとも1種の成長因子;A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208、及びSJN2511からなる群より選択される少なくとも1種のTGF-β阻害剤;DAPT、ジベンザゼピン、ベンゾジアゼピン、及びLY-411575からなる群より選択される少なくとも1種のNotch阻害剤;及びデキサメタゾンを更に含み、
    前記ジメチルスルフォキシドの体積分率が、0.5体積%以上3体積%以下である、肝臓オルガノイド分化用培地。
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