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JP7513577B2 - ケミカルセンサ装置 - Google Patents
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Description

本発明の実施形態は、ケミカルセンサ装置に関する。
グラフェンFET(Field Effect Transistor)を用いて溶液中の検体を検出するケミカルセンサがある。
特開2019-41626号公報
本発明の実施形態は、緩衝液の電位を安定化させつつ、電気二重層の厚膜化が可能なケミカルセンサ装置の提供を目的とする。
本発明の実施形態によれば、ケミカルセンサ装置は、0.5mM以上6mM以下の塩素イオンを含み、2価のカチオンを含まない緩衝液と、前記緩衝液中に浸漬される表面を有し、グラフェンを含むFET(Field Effect Transistor)素子であるセンサ素子と、前記緩衝液中に浸漬され、前記緩衝液に電位を与え、表面に塩化銀を有する銀/塩化銀電極と、前記センサ素子の前記表面に設けられた核酸アプタマーと、を備える。
実施形態のケミカルセンサ装置を用いたモジュールの一例を示す概略構成図である。 図1に示す分子取り込みユニットの一例を示す模式図である。 図1に示す分子取り込みユニットの他の例を示す模式図である。 図3に示す分子取り込みユニットの流路チップの模式図である。 実施形態のケミカルセンサ装置を用いたモジュールの他の例を示す概略構成図である。 実施形態のケミカルセンサ装置を用いたモジュールのさらに他の例を示す概略構成図である。 実施形態のセンサチップの一例を示す模式図である。 実施形態のセンサカートリッジの一例を示す模式図である。 実施形態のケミカルセンサ装置の一例を示す模式図である。 実施形態のケミカルセンサ装置の他の例を示す模式図である。 実験に用いたセンサチップの模式図である。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。 図11のセンサチップを用いた実験結果を表すグラフである。
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
図1は、実施形態のケミカルセンサ装置を用いたモジュールの一例を示す概略構成図である。
分子取り込みユニット10が、吸気配管50と排気配管52に接続されている。排気配管52には、吸排気装置43が接続されている。吸排気装置43は、例えば、ポンプまたはファンである。吸排気装置43の駆動により、吸気配管50を介して、分子取り込みユニット10に検体雰囲気が取り込まれる。図1に示すケミカルセンサ装置における検出対象は、検体雰囲気中に含まれる分子(標的分子)である。
分子取り込みユニット10は、緩衝液の供給源に接続されている。例えば、分子取り込みユニット10は、配管54を介して、緩衝液が貯留された緩衝液タンク41に接続されている。緩衝液は、例えば、リン酸緩衝液、またはHEPES(ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸)緩衝液を含む。また、緩衝液は、0.5mM以上6mM以下の塩素イオンを含む。
緩衝液タンク41から緩衝液が分子取り込みユニット10に供給される。分子取り込みユニット10は、標的分子を含む可能性のある検体雰囲気を緩衝液に曝露する。
分子取り込みユニット10は、配管57を介してセンサ素子30に接続されている。配管57には、必要に応じて、バルブ72が接続されている。また、分子取り込みユニット10は、必要に応じて、排液するための配管53に接続され、配管53にはバルブ73が接続されている。
センサ素子30は、排液するための配管65に接続され、配管65にはバルブ64が接続されている。
図2は、分子取り込みユニット10の一例を示す模式図である。
分子取り込みユニット10は、検体雰囲気を緩衝液にバブリングさせる混合タンク11を有する。混合タンク11は、配管54を介して、緩衝液タンク41と接続されている。配管54には、ポンプ12及びバルブ71が接続されている。バルブ71を開き、ポンプ12を駆動させることで、緩衝液タンク41に貯留された緩衝液100が混合タンク11内に供給される。
吸気配管50の一端部には、混合タンク11の外に位置する雰囲気捕集口50aが形成されている。吸気配管50の他端部は、混合タンク11内の緩衝液100中に位置する。排気配管52の一端部は混合タンク11内の緩衝液100より上部の気相部に位置し、排気配管52の他端部は排気口となっている。排気配管52における混合タンク11と排気口の途中に吸排気装置43が繋がっている。吸排気装置43を駆動させることにより、雰囲気捕集口50aから吸気配管50内に取り込まれた検体雰囲気は、混合タンク11内の緩衝液にバブリングされ、検体雰囲気中の標的分子は緩衝液に溶解する。
混合タンク11は、配管57を介して、センサ素子30に接続されている。配管57に、バルブ72及びポンプ13が接続されている。バルブ72を開き、ポンプ13を駆動させることで、混合タンク11内の緩衝液100が、センサ素子30に供給される。
図3は、図1に示す分子取り込みユニット10の他の例を示す模式図である。
図4は、図3に示す流路チップ111の模式図である。
この分子取り込みユニットは、流路チップ111と、流路チップ111に重ね合わされる蓋112と、流路チップ111と蓋112との間に配置される多孔質膜121とを有する。
また、図4に示すように、流路チップ111には、溝117の一端部に接続した液体流入路113と、溝117の他端部に接続した液体流出路114が形成されている。図3に示すように、液体流入路113は緩衝液100が供給される配管54に接続され、液体流出路114はセンサ素子30と接続された配管57と接続されている。
なお、溝117の底面には必要に応じて凹凸を形成することができる。凹凸の形状としては、例えばカオティックミキサーと呼ばれる非対称なV字溝を形成することができる。このような凹凸を形成することで、層流になりやすいマイクロ流路内で攪拌が発生し、後述の多孔質膜121を介した標的分子の取り込み効率が向上する。
多孔質膜121は、溝117を覆っている。多孔質膜121上に蓋112が配置されている。蓋112は、シール部材(例えばゴム部材)122を介して、多孔質膜121に密着している。蓋112における多孔質膜121に対向する面に、溝117と鏡面対称に同じパターンで溝118が形成されている。
蓋112には、溝118の一端部に接続した吸気路115と、溝118の他端部に接続した排気路116が形成されている。吸気路115は検体雰囲気を取り込む吸気配管50に接続され、排気路116は排気配管52に接続されている。
バルブ71とバルブ72をそれぞれ開き、ポンプ12とポンプ13を駆動させることで、緩衝液タンク41に貯留された緩衝液100が、液体流入路113から溝117に供給される。緩衝液100は、多孔質膜121を透過しない。したがって、緩衝液100は、多孔質膜121の上方の溝118には流入しない。なお、ポンプ12とポンプ13はいずれか一方だけであっても構わない。
排気配管52に接続された吸排気装置43を駆動することにより、雰囲気捕集口50aから吸気配管50内に取り込まれた検体雰囲気は、吸気路115から溝118に流入する。検体雰囲気中の標的分子は多孔質膜121を透過して、緩衝液が供給された溝117に入り込み、溝117を流動している緩衝液に溶解する。
検体雰囲気に曝露された溝117内の緩衝液は、そのまま液体流出路114を流れて、センサ素子30へと供給される。
図5は、実施形態のケミカルセンサ装置を用いたモジュールの他の例を示す概略構成図である。
図5に示す例では、ケミカルセンサ装置における検出対象は、液中に含まれる分子(標的分子)である。標的分子を含む可能性のある検体溶液が貯留された検体溶液タンク42と、前述した緩衝液が貯留された緩衝液タンク41とが、三方弁74を介して、センサ素子30と接続されている。検体溶液タンク42は、配管53を介して三方弁74と接続されている。緩衝液タンク41は、配管51を介して三方弁74と接続されている。センサ素子30は、配管55を介して三方弁74と接続されている。この構成により、センサ素子30の表面を、検体溶液と緩衝液のそれぞれの溶液に、あるいは検体溶液と緩衝液との混合液に浸漬することができる。
また、図6に示すように、緩衝液タンク41とセンサ素子30との間に検体溶液注入部15を接続した構成でもよい。検体溶液注入部15に、緩衝液タンク41から緩衝液が供給される。また、検体溶液注入部15に注入装置16が接続されている。検体溶液注入部15に供給された緩衝液に、注入装置16から検体溶液が注入される。検体溶液が混合された緩衝液は、検体溶液注入部15からセンサ素子30に供給される。
センサ素子30は、例えば、図7に示すセンサチップ35の基板33上に設けられる。センサ素子30は、例えば、グラフェンを含むFET(Field Effect Transistor)素子である。グラフェン膜が基板33上に設けられる。
また、基板33上には、第1電極23、第2電極25、及び銀/塩化銀電極20が設けられている。第1電極23及び第2電極25の一方は、FETにおけるドレイン電極として機能し、他方はFETにおけるソース電極として機能する。銀/塩化銀電極20は、FETにおけるゲート電極として機能する。第1電極23と第2電極25との間をグラフェン膜を通じて電流(ドレイン電流)が流れることができる。
第1電極23及び第2電極25のそれぞれの一端部は、グラフェン膜に接している。第1電極23の他端部にはパッド24が設けられている。第2電極25の他端部にはパッド26が設けられている。銀/塩化銀電極20は、ゲート配線21を介してパッド22と接続されている。
基板33上には、基板33上の前述した要素を覆う絶縁膜31が設けられている。絶縁膜31には、センサ素子30の表面(グラフェン膜の表面)30aを露出させる開口部31aが形成されている。また、絶縁膜31には、銀/塩化銀電極20を露出させる開口部31bが形成されている。パッド24、パッド26、及びパッド22は、絶縁膜31から露出している。パッド24、パッド26、及びパッド22の露出部にそれぞれ金ワイヤWが接合される。
図7に示すセンサチップ35は、例えば、図8(a)及び(b)に示すセンサカートリッジ601に搭載される。センサカートリッジ601には、センサ素子30の表面及び銀/塩化銀電極20を露出させる開口部601aが設けられている。また、センサカートリッジ601には、センサチップ35の第1電極23、第2電極25、及び銀/塩化銀電極20と電気的に接続された内部配線602と、内部配線602と電気的に接続された端子603が設けられている。
図8(b)に示すように、センサカートリッジ601の端子603は、ソケット基板700のソケット部701に差し込まれる。
図9(a)及び(b)に、例えば、図1に示す配管57及び配管65にセンサ素子30を設置する例を示す。
配管57及び配管65には、開口部501が開けられており、開口部501の外周にはパッキン510が形成されている。センサ素子30は、例えば、前述したセンサチップ35の状態でセンサカートリッジ601に実装された形態となっている。
図9(b)に示すように、センサ素子30の表面を開口部501の部分に対向させて設置するとパッキン510によって気密にされて、センサ素子30の表面が配管57、65内に露出した状態となる。センサ素子30を実装した基板33やセンサカートリッジ601は、開口部501に対して着脱自在となっている。このような形態とすることにより、センサ素子30を交換部品や消耗部品として、配管57、65における開口部501が形成されたセンサ搭載部に着脱することが可能となる。
配管57、65内に露出したセンサ素子30の表面(グラフェン膜の表面)30aは、配管57、65内の緩衝液100に浸漬され、緩衝液中の標的分子をセンサ素子30のドレイン電流の変化などにより検出することができる。
センサ素子30とともに基板33上に混載された銀/塩化銀電極20も、開口部501から配管57、65内に露出した状態となる。銀/塩化銀電極20は配管57、65内の緩衝液100に浸漬され、緩衝液100に電位を与える。なお、銀/塩化銀電極20は、センサ素子30とともに基板33上に混載することに限らない。
例えば、図10(a)及び(b)に示すように、センサ素子30の表面を配管57、65内に露出させる開口部(第1開口部)501とは別の第2開口部502から銀/塩化銀電極20を配管57、65内に露出させて緩衝液100に浸漬させることもできる。または、銀/塩化銀電極20を配管57、65の内部に直接作り込んでしまっても構わない。
表面に塩化銀を有する銀/塩化銀電極20は塩素イオンを含む緩衝液に浸漬され、酸化還元反応を起こすことによって、緩衝液に電位を与える。緩衝液の電位は、ネルンストの式に従って、銀/塩化銀電極20の電位に対して一定の電位差に制御される。塩化銀(AgCl)との酸化還元反応(AgCl + e → Ag + Cl)により、緩衝液中の塩素イオン(Cl)が、緩衝液と銀/塩化銀電極20表面との間を緩衝液の電位が安定するまで移動する。銀/塩化銀電極のネルンスト式は、以下の式で表される。
Figure 0007513577000001
Eは電極電位、Eは標準電極電位、Rは気体定数、Tは温度、Fはファラデー定数、aAgは銀イオンの活量、aClは塩素イオンの活量である。ネルンスト式によれば銀電極と緩衝液間の電位差は、Clの活量によって決定される。
この原理を使用して、銀/塩化銀電極と緩衝液間を一定電位差に制御する基準電極がある。基準電極には、通常、銀/塩化銀電極と緩衝液との電位差を安定させるために、塩化カリウム飽和水溶液等の高塩濃度溶液が適用される。
ケミカルセンサには、銀/塩化銀電極の基準電極構成を用いた電位差制御を適用することができない。このような高塩濃度溶液では、センサ素子の表面に形成される電気二重層が薄く、デバイ遮蔽によって、センサ素子の表面付近でのイベント(例えば、センサ素子の表面に結合または吸着させたプローブ分子と標的分子との会合、標的分子と会合することによるプローブ分子の変形など)による電気特性の変化を検出しにくくなるためである。
本実施形態によれば、後述する実験に基づき、ケミカルセンサの緩衝液の電位を安定化させつつ、電気二重層の厚膜化を可能にする、緩衝液中における塩素イオンの好ましい濃度範囲を見いだした。
以下に、その実験結果について説明する。
図11は、実験に用いたセンサチップの模式図である。
基板33上に、Ch1~Ch7の7チャネルの測定系を設けた。各チャネルCh1~Ch7は、それぞれ、グラフェン膜を用いたセンサ素子30と、グラフェン膜に電気的に接続された一対の電極801、802を含む。一対の電極801、802のうちの一方はドレイン電極であり、他方はソース電極である。各チャネルCh1~Ch7のセンサ素子30の表面は、ウェル800に供給された緩衝液に浸漬される。また、チャネルCh2の上方において、銀/塩化銀電極20をウェル800内の緩衝液に浸漬させた。図11上の紙面奥行き方向において円柱形状の銀/塩化銀電極20が延び、チャネルCh2と向かい合っている。
図12~図18は、グラフェン膜を通じて電極801、802間を流れるドレイン電流Id(縦軸)の時間(横軸)による変化の測定結果を表すグラフである。ゲート電圧は、ドレイン電流の経時変化測定中常に印加した。図中のIdVgと記載しているタイミングで一旦経時変化測定を中断し、 ゲートスイープしてId vs Vg特性を取得した。また、長時間測定による乾燥等の影響を排除するため、IdVg測定の中間点で同組成の溶液に更新した。
図12は、10mMのHEPES緩衝液に1mMのKCl(塩化カリウム)を添加した緩衝液を用いた結果を表す。この測定では、銀/塩化銀電極20の電位Vgは500mVとした。
図13は、10mMのHEPES緩衝液に0.1mMのKClを添加した緩衝液を用いた結果を表す。この測定では、銀/塩化銀電極20の電位Vgは500mVとした。
図14は、1mMのHEPES緩衝液に1mMのKClを添加した緩衝液を用いた結果を表す。この測定では、銀/塩化銀電極20の電位Vgは460mVとした。
図15は、1mMのHEPES緩衝液に0.1mMのKClを添加した緩衝液を用いた結果を表す。この測定では、銀/塩化銀電極20の電位Vgは500mVとした。
図16は、1mMのHEPES緩衝液に0.01mMのKClを添加した緩衝液を用いた結果を表す。この測定では、銀/塩化銀電極20の電位Vgは500mVとした。
図17は、1mMのリン酸緩衝液に1mMのKClを添加した緩衝液を用いた結果を表す。この測定では、銀/塩化銀電極20の電位Vgは390mVとした。
図18は、1mMのリン酸緩衝液に0.1mMのKClを添加した緩衝液を用いた結果を表す。この測定では、銀/塩化銀電極20の電位Vgは500mVとした。
上記図12乃至18における銀/塩化銀電極20の電位Vgは、予めドレイン電流のゲート電圧依存性を取得した際にゲート電圧依存性が大きくなっている条件に設定している。具体的にはドレイン電流がホール伝導からエレクトロン伝導に切り替わる電荷中性点に対して、200mV低い電圧としている。ただし、溶液の電気分解を避けるためゲート電圧の最大設定値を700mVに制約しているため、電荷中性点が700mVを超えた場合には、700-200=500mVにゲート電圧を設定した。なお、ホール伝導においては、ドレイン電流のゲート電圧依存性は負の関係、エレクトロン伝導では正の関係にあるため、ゲート電圧に対してドレイン電流はV字状の形となり、その谷底となったところが電荷中性点として読み取ることが出来る(不図示)。後述の実験においても特別の注釈のない限り同様の手順でゲート電圧を設定している。
図13、図15、図16、及び図18に示すように、塩素イオン濃度が0.1mMと0.01mMではIdが不安定となっている。これは、希薄な塩素イオン濃度中における銀/塩化銀電極の近くで発生するClの増減により緩衝液電位が変動してしまい、センサ素子にドリフト電流が発生したためと考えられる。
図12、図14、及び図17に示すように、塩素イオン濃度が1mMでは、塩素イオン濃度が0.1mMと0.01mMの場合に比べて、Idを安定化させることができた。したがって、緩衝液の電位を安定化させ、Idのドリフトを抑制するために、緩衝液は1mM以上の塩素イオンを含むことが好ましい。
図19は、銀/塩化銀電極とセンサ素子の表面との距離dを変えて、Idの時間変化を測定した結果を表すグラフである。図11に示すセンサチップにおいて、距離dは、センサ素子30の表面からの銀/塩化銀電極20の下面の高さに対応する。この測定では、1mMのHEPES緩衝液に0.5mMのKClを添加した緩衝液を用いた。銀/塩化銀電極20の電位Vgは450mVとした。
図19の結果より、銀/塩化銀電極とセンサ素子との距離を制御することにより、0.5mMの塩素イオンを含む緩衝液を用いても、Idのドリフトを抑制できることが確認された。Idを安定化させるために、銀/塩化銀電極とセンサ素子の表面との距離dは、1mm以上が好ましく、2mm以上がさらに好ましい。
図7の構成において、銀/塩化銀電極20とセンサ素子30の表面30aとの距離dは、基板33の表面に平行な面内における距離である。図10(b)の構成において、銀/塩化銀電極20とセンサ素子30の表面30aとの距離dは、配管の第1開口部501に露出するセンサ素子30の表面と、配管の第2開口部502に露出する銀/塩化銀電極20との間の距離である。
図20は、緩衝液中のイオン濃度(横軸)と、デバイ長(縦軸)との関係を示すグラフである。
塩素イオンを含まない1mMのHEPES緩衝液を用いた場合、デバイ長は16nmであった。
1mMのHEPES緩衝液に1mMのKClを添加した緩衝液を用いた場合、デバイ長は8.3nmであった。
1mMのHEPES緩衝液に2mMのKClを添加した緩衝液を用いた場合、デバイ長は6.3nmであった。
1mMのHEPES緩衝液に4mMのKClを添加した緩衝液を用いた場合、デバイ長は4.6nmであった。
塩素イオンを含まない1mMのリン酸緩衝液を用いた場合、デバイ長は6.8nmであった。
1mMのリン酸緩衝液に1mMのKClを添加した緩衝液を用いた場合、デバイ長は5.6nmであった。
1mMのリン酸緩衝液に2mMのKClを添加した緩衝液を用いた場合、デバイ長は4.8nmであった。
1mMのリン酸緩衝液に4mMのKClを添加した緩衝液を用いた場合、デバイ長は3.9nmであった。
塩素イオンを含まない10mMのリン酸緩衝液を用いた場合、デバイ長は2.2nmであった。
例えば生体由来のプローブ分子をセンサ素子の表面に設ける場合、そのプローブ分子が核酸アプタマーであった場合には、そのサイズは4nmほどである。したがって、デバイ長が4nm以上であれば、センサ素子の表面上におけるプローブ分子と標的分子との会合や、標的分子と会合することによるプローブ分子の変形などによるセンサ素子表面の電気特性の変化を検出することができる。
図20に示すイオン濃度の変化によるデバイ長の変化の傾向から、1mMのリン酸緩衝液の場合には4mM以下、より好ましくは2mM以下の塩素イオンを含むとデバイ長を4nm以上にしやすく、1mMのHEPES緩衝液の場合には6mM以下、より好ましくは4mM以下の塩素イオンを含むとデバイ長を4nm以上にしやすい。
したがって、ここまでの実験結果より、0.5mM以上6mM以下の塩素イオンを含む緩衝液を用いることで、緩衝液の電位を安定化させつつ、電気二重層(デバイ長)の厚膜化が可能となる。
図21は、緩衝液中のKCl濃度(横軸)と、グラフェンFETの電荷中性点との関係を示すグラフである。
700mVより高いゲート電圧を印加すると水の電気分解が発生するおそれがあり、それに伴う気泡の発生、誤検出、損傷などが懸念されるため、グラフェンの電気特性の計測はゲート電圧が700mV以下で行うことが好ましい。ここで電荷中性点が700mV以上になってしまうと、グラフェンの電気特性を電荷中性点以下のホール伝導領域でしか測定できなくなってしまうため、仮にドレイン電流の変化が検出されたとしても、それが標的の検出を示す電荷の注入であるのか、あるいは意図せぬ物理的な損傷による抵抗変動なのかの識別が出来なくなってしまう。図21に示すKClの濃度の変化による電荷中性点の変化傾向より、KCl濃度が0.5mM以上であれば電荷中性点を水の電気分解が起きない範囲(700mV以下)で計測することが可能である。このことから、緩衝液中の塩素イオン濃度は、0.5mM以上が好ましい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
20…銀/塩化銀電極、30…センサ素子、33…基板、35…センサチップ、601…センサカートリッジ

Claims (6)

  1. 0.5mM以上6mM以下の塩素イオンを含み、2価のカチオンを含まない緩衝液と、
    前記緩衝液中に浸漬される表面を有し、グラフェンを含むFET(Field Effect Transistor)素子であるセンサ素子と、
    前記緩衝液中に浸漬され、前記緩衝液に電位を与え、表面に塩化銀を有する銀/塩化銀電極と、
    前記センサ素子の前記表面に設けられた核酸アプタマーと、
    を備えるケミカルセンサ装置。
  2. 前記緩衝液は、リン酸緩衝液またはHEPES(ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸)緩衝液を含む請求項1に記載のケミカルセンサ装置。
  3. 前記銀/塩化銀電極と、前記センサ素子の前記表面との距離が1mm以上である請求項1または2に記載のケミカルセンサ装置。
  4. 前記センサ素子及び前記銀/塩化銀電極を搭載した基板と、
    前記緩衝液が流れる内部に、前記センサ素子の前記表面及び前記銀/塩化銀電極を露出させる開口部を有する配管と、
    をさらに備える請求項1~3のいずれか1つに記載のケミカルセンサ装置。
  5. 前記基板は、前記開口部に対して着脱自在である請求項4に記載のケミカルセンサ装置。
  6. 前記緩衝液が流れる配管をさらに備え、
    前記配管は、前記センサ素子の前記表面を前記配管の内部に露出させる第1開口部と、前記銀/塩化銀電極を前記配管の内部に露出させる第2開口部とを有する請求項1~3のいずれか1つに記載のケミカルセンサ装置。
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